説明

形状測定装置

【目的】 被測定面の表面の粗さや反射等の状態に拘わらず高分解能で光点位置を特定する。
【構成】 2次元CCDセンサ40のスリット像の出力信号は増幅回路32を介してコンパレータ18に入力される。コンパレータ18はしきい値電圧(Vth)と信号を比較し、しきい値電圧以上のときハイレベル信号を整形回路16に出力する。整形回路16は入力信号を遅延させることにより立ち上がり及び立ち下がり滑らかな対称の信号に波形整形して、スイッチ14が補正側Eの状態のときアナログデジタル変換器34を介して加重平均回路20に出力する。加重平均回路20は、入力された信号に基づいて整形回路16で遅延された時間を補正すると共に加重平均によって中心位置を求める。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、形状測定装置にかかり、特に、スリット光を被測定面に照射し被測定面からの反射光を受光することにより被測定面の形状を測定する形状測定装置に関する。
【0002】
【従来の技術】従来より、非接触にて被測定面の凸凹等の形状を三角測量法を用いて測定する形状測定装置がある(特公昭50−36374号公報、特開昭56−138204号公報、特開昭57−22508号公報、特開昭58−52508号公報等)。
【0003】これらの形状測定装置は、スリット状の光ビーム(以下、スリット光線という)を被測定面へ照射し、その照射した光の光軸と所定の角度をもって設けられたセンサにおける被測定面の反射光の受光位置によって表面形状等を測定する。詳細には図4に示すように、形状測定装置12は、半導体レーザー50等の光源、コリメートレンズ52及びロッドレンズ54等の拡散レンズを備えた光源装置62と、受光レンズ56及び2次元CCDセンサ40等の受光素子を備えた受光装置と、2次元CCDセンサ40に接続された演算回路10とから構成される。上記拡散レンズにはロッドレンズ54の他にシリンドリカルレンズを用いることができる。また、受光素子には、1次元CCDセンサ等を用いることができる。
【0004】この形状測定装置12によれば、半導体レーザー50の射出側には、球面レンズで構成されたコリメートレンズ52が配設されており、半導体レーザー50から射出されるレーザービームがコリメートレンズ52により被測定面に集束される。コリメートレンズ52の射出側にはロッドレンズ54が配設されており、コリメートレンズ52から射出されたレーザービームは、ロッドレンズ54に照射される。ロッドレンズ54は、円柱形状で入射されたレーザービームは円周方向にのみスリット状に発散される。また、シリンドリカルレンズは同一の断面凹部(または、凸部)が一方向に連続した柱状になっており、入射されたレーザービームは断面凹部が連続した方向と交差するスリット状に発散される。ロッドレンズ54の射出側には被測定面60Aが位置しており、ロッドレンズ54から射出されたスリット状のレーザービームが被測定面60Aに向かって照射される。
【0005】ロッドレンズ54によってスリット状に発散されたスリット光線は被測定面60Aに照射され、このスリット状に発散された光線と被測定面60Aとの交点が輝く、すなわち、被測定面60Aの形状に応じた形状に照明される。被測定面60Aに照射されたスリット光線は、受光レンズ56を介して、2次元CCDセンサ40に結像される。従って、この2次元CCDセンサ40上には、被測定面60A上の輝線の光の像(以下、スリット像という)が結像される。また、この2次元CCDセンサ40は、照射されたレーザービームの位置及び光強度に応じた電気信号を演算回路10に出力するようになっている。
【0006】上記受光装置の光軸は光源装置62の光軸と所定の角度θをもって取り付けられている。このため、被測定面60Aが光源装置62の光軸方向に段差がある場合には、被測定面60A上の光点の位置は、段差に応じて光源装置62の光軸方向に変位することになり、2次元CCDセンサ40上でのスリット像64は、図5(1)に示したように、光軸方向の段差が測定方向(図5紙面水平方向)の変位となって現れることになる。この2次元CCDセンサ40の図5紙面水平方向に対応する任意のライン(走査線)59A、59Bの出力信号は、図5(2)、(3)に示したようになる。2次元CCDセンサ40は、このような信号を演算回路10に出力する。この出力信号の振幅が大きい部位がライン上のスリット部分になる。すなわち、出力信号の振幅が大きい部位がラインとスリット像との交点(光点)位置に対応する。この位置の偏差を求めることによって、求めたライン間の段差を求めることができる。
【0007】従って、演算回路10は、入力された信号に基づいて、上記2次元CCDセンサ40上の全てのラインとスリット像64との交点位置(光点位置)を求めることによって、2次元CCDセンサ40上におけるスリット像64の位置を求め、求めた位置の各々の偏差を求めて、被測定面60Aの段差を求める。この段差を2次元CCDセンサ40の全てに亘って求めることによって測定対象物60の形状を測定することができる。
【0008】被測定面60A上に照射されるスリット光線は所定の幅を有しかつ、このスリット光線の幅方向が測定方向に対応するため、上記2次元CCDセンサ40上のラインとスリット像64との光点位置はスリット像の幅による範囲となり、位置を特定する分解能が低くなる。この分解能を向上させるためには、スリット像の幅によって定まる光点の位置範囲を特定する必要がある。この光点位置は、以下の式(1)に示したように、2次元CCDセンサ40の任意のラインから出力される信号の加重平均によって求めることができる。すなわち、任意のラインにおけるスリット像の位置範囲から位置を特定する場合、2次元CCDセンサ40に照射された各位置における光量を重みとして位置の加重平均を求める(図6(1)参照)。これにより、2次元CCDセンサ40上の光点がずれても、高い分解能で光点の位置を求めることができる。
【0009】
【数1】


【0010】但し、i=0、1、・・・Za:光点位置Zi :2次元CCDセンサにおける位置Ii :位置Zi に照射された光量。
【0011】なお、予め測定対象物60の基準面に対応する2次元CCDセンサ40上の所定の位置を基準位置と定めると、被測定面60Aの基準位置からの変位に応じて2次元CCDセンサ40上に像点の変位となって表れるので、2次元CCDセンサ40上のスリット像位置に応じて出力される信号に基づいて求めたスリット像64の位置と予め設定された基準の光点位置との偏差を求めることによって、基準面からの被測定面の変位を求めることができる。
【0012】しかしながら、上記加重平均法によって光点位置を求める方法では、被測定面60A上の表面粗さや表面の傷、表面反射率等の影響を受け易くなる。すなわち、被測定面60A上に傷がある場合には、その傷部における光ビームの乱反射が増加し、結果として図2(1)に示したように傷部の光量値が大きくなる。このため、この出力信号を加重平均すると、傷部に対応する位置の重みが大きくなり光点位置が2次元CCDセンサ40上のスリット像の幅の中心位置よりずれて求められる。これによって、傷のある部位と傷のない部位との偏差をとって段差を求めるとばらつきが生じ、適正な測定値を得ることができないことがある。
【0013】また、表面の状態が均一でなく、光ビームの反射が方向性を有しているような被測定面60Aを測定する場合には、同一の光量を照射しても2次元CCDセンサ40に照射される光量が一定にならずに、光量の分布が偏ってしまうため、上記と同様に求める光点位置がずれてしまう。
【0014】上記問題を解決するために、2次元CCDセンサ40から出力される信号を直流分再生回路(クランパ)によってクランピングして加重平均により位置を求めるクランプ法が考えられる。この場合には、2次元CCDセンサ40の出力信号に直流分を加えて、この信号波形の最小部を所定のレベル、例えば0Vに一致させる。上記の方法では、被測定面の全面に均一な乱反射光が照射されて信号波形の最小部が変動する場合は有効であるが、光量の分布が偏った場合や傷等によるノイズの影響を除去することができない。更に、信号波形の最小部を所定のレベルにしても、信号波形の最大部にノイズが含まれているため、出力信号のSN比が低下し、測定誤差が生じることがある。
【0015】また、上記の他の方法として、所定のしきい値Io以上の光ビームが2次元CCDセンサに照射された位置についてのみ単純な平均を行うことによって光点を求める平均法が考えられる。この場合には、2次元CCDセンサの出力信号及びしきい値Io信号をコンパレータに入力し、しきい値Io以上でハイレベルになる信号を出力させ、カウンタを用いて出力信号の立ち上がり、立ち下がりの時点のカウンタ値を2次元CCDセンサ上の位置Zb、Zcとする(図6(2)参照)。そして、求めた位置Zb、Zcの中心値Zdを、2次元CCDセンサ40上におけるスリット像64とラインとの交点の光点位置として求める。
【0016】しかしながら、上記のようにして求めた中心位置はカウンタのクロック幅で決定されるため、クロック幅またはクロック幅の1/2より高い分解能を得ることができない。この分解能を高くするためには高速のカウンタを用いなければならない。
【0017】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、上記事実を考慮して、スリット光を照射することによって被測定面の形状を測定する形状測定装置において、被測定面の表面の粗さや反射等の状態に拘わらず高分解能で光点位置を特定することができる形状測定装置の提供を目的とする。
【0018】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するために請求項1記載の発明は、被測定面へスリット光を照射する照射手段と、被測定面で反射された光を受光しかつ受光位置に応じた光強度信号を出力する位置検出手段と、受光した光の幅方向の受光位置に応じた光強度が予め定められた基準値以上のときハイレベルになる比較信号を出力する比較手段と、前記比較信号を左右対称でかつ中心を含む領域と、その信号の大きさが最大になるように波形整形した整形信号を出力する波形整形手段と、前記整形信号の光強度に対応する値を重みとして前記整形信号の受光位置に対応する値の加重平均を演算する加重平均演算手段と、を備えている。
【0019】請求項2記載の発明は、被測定面へスリット光を照射する照射手段と、被測定面で反射された光を受光しかつ受光位置に応じた光強度信号を出力する位置検出手段と、受光した光の幅方向の受光位置に応じた光強度が、予め定められた基準値以上のときハイレベルになる比較信号を出力する比較手段と、前記比較信号を左右対称でかつ中心を含む領域と、その信号の大きさが最大になるように波形整形した整形信号を出力する波形整形手段と、前記光強度信号と、前記整形信号との何れか一方を出力する切換手段と、前記切換手段から出力された信号の光強度に対応する値を重みとして該信号の受光位置に対応する値の加重平均を演算する加重平均演算手段と、を備えている。
【0020】
【作用】請求項1に記載の発明によれば、被測定面には照射手段によってスリット光が照射される。位置検出手段は、被測定面で反射された光を受光しかつ受光位置に応じた光強度信号を出力する。比較手段は、受光した光の幅方向の受光位置に応じた光強度が、予め定められた基準値以上のときハイレベルになる比較信号を出力する。波形整形手段は、比較信号が左右対称でかつ中心を含む領域が最大になるように波形を整形した整形信号を出力する。このような整形信号としては、立ち上がり勾配と立ち下がり勾配とが逆の略台形波形や、ガウス分布の波形がある。加重平均演算手段は、整形信号の光強度に対応する値を重みとして整形信号の受光位置に対応する値の加重平均を演算し、位置検出手段が受光した光の幅方向の中心位置を求める。このように、左右対称かつ中心を含む領域の重みを重くして加重平均するため、被測定面に傷等がある場合や被測定面の表面状態が一様でない場合でも、受光した光の中心を含む領域の重みを重くして中心位置を高い分解能で求めることができる。従って、被測定面における乱反射の影響による検出位置のずれを防止することができる。さらに、上記整形信号は基準値以上のときハイレベルにしてノイズを除去しているため、クランパによってクランピングされた信号のように、SN比が低下することなく、中心位置を精度よく求めることができる。
【0021】上記で説明したように、位置検出手段から出力される信号を整形しているため、処理時間が長くなる場合がある。また、被測定面の表面の状態によっては、信号波形を整形する必要がない場合もある。
【0022】そこで、請求項2に記載した発明の切換手段は、光強度信号と、整形信号との何れか一方を出力する。加重平均演算手段は、切換手段から出力された信号の光強度に対応する値を重みとして受光位置に対応する加重平均を演算する。これによって、光強度信号に対応する値をそのまま重みとして光強度信号の受光位置に対応する値を演算するか、整形信号の光強度信号に対応する値を重みとして整形信号の受光位置に対応する値を演算するかを切換手段によって切り換えることができる。従って、被測定面の表面の状態による影響が少ない場合や短い時間で処理したい場合は、加重平均手段に入力される信号を光強度信号に切り換えることにより、処理時間が長くなることなく、中心位置を求めることができる。また、高い分解能の測定が必要な場合には、整形信号が加重平均手段に入力されるように切り換えることによって実現できる。従って、被測定面の表面の状態に応じて最適な処理時間で処理することができる。
【0023】
【実施例】以下、図面を参照して、本発明の実施例を詳細に説明する。本実施例は、照射手段としての光源装置62から射出されたスリット光線が被測定面60Aで反射することによって得られるスリット像の光強度及び位置を、位置検出手段としての2次元CCDセンサ40により検出するようにしたものである。なお、本実施例における、2次元CCDセンサ40上の位置は、2次元CCDセンサ40に所定の周期(水平及び垂直)の同期型センサを用い、この水平同期信号HD、及び垂直同期信号VDの立ち上がり(立ち下がり)からの経過した時刻に2次元CCDセンサ40上の位置を対応させることによって特定することができる。また、本実施例に利用した形状測定装置12は、図4に示した従来例と略同様のため、同一部分には同一符号を付して詳細な説明は省略する。
【0024】図1に示したように、演算回路10は、増幅回路(AMP)32を備えており、増幅回路32の入力端は2次元CCDセンサ40に接続されている。増幅回路32は2次元CCDセンサ40から出力された信号を所定の増幅率で増幅して出力する。増幅回路32の出力端は切換手段としてのスイッチ14の一方の入力端及び比較手段としてのコンパレータ(CMP)18の一方の入力端に接続されている。コンパレータ18の他方の入力端には比較の基準となるしきい値の電圧(Vth)が入力されるように接続されている。このしきい値の電圧Vthは、予めノイズによる2次元CCDセンサ40の出力値を越えた値を定めることが好ましい。コンパレータ18の出力端は所定の時定数の充放電回路から構成された波形成形手段としての整形回路16の入力端に接続されている。整形回路16の出力端はスイッチ14の他方の入力端に接続されている。スイッチ14の出力端はアナログデジタル変換器(A/D)34の入力端に接続されており、アナログデジタル変換器34の出力端は荷重平均演算手段としての加重平均回路20に接続されている。
【0025】加重平均回路20は、中央演算処理装置(CPU)30、ランダムアクセスメモリ(RAM)28及びリードオンリーメモリ(ROM)26を備えたマイクロコンピュータで構成されており、これらはバス24によって接続されデータ及びコマンドが相互にやりとりが可能になっている。また、加重平均回路20は、外部の装置との入出力を行なう入出力回路(以下、I/O)22を備えており、I/O22はバス24に接続されている。I/O22には、信号線42の一方が接続されており、信号線42の他方はスイッチ14の切り換えを検出する切換センサ15に接続されている。この切換センサ15には、スイッチ14の状態に応じた信号、例えば、スイッチ14が増幅回路32とアナログデジタル変換器34とを接続した通過側Fの状態のときローレベル、整形回路16とアナログデジタル変換器34とを接続した補正側Eの状態のときハイレベルの何れかの信号を出力する(図1参照)。また、I/O22には、出力装置36が接続されており、加重平均回路20で求めた位置を表示、印刷または他の演算装置に出力可能になっている。
【0026】以下、本実施例の作用を説明する。半導体レーザー50からレーザービームが射出されると、コリメートレンズ52及びロッドレンズ54を介して被測定面60Aに照射される。ロッドレンズ54から射出されるレーザービームは、スリット状に発散され、被測定面60Aには、スリット状のレーザービーム(スリット光線)が照射される。被測定面60Aに照射されたスリット光線の輝線は、受光レンズ56により集光され2次元CCDセンサ40上に、被測定面60Aの段差に応じたスリット像64として結像される。2次元CCDセンサ40はスリット像64の位置及び光強度に応じた検出信号を演算回路10へ出力する(図4参照)。
【0027】演算回路10に入力されるスリット像64の検出信号は、増幅回路32によって所定の増幅率で増幅されてコンパレータ18に入力される。コンパレータ18は、2つの入力信号、すなわち、増幅回路32の出力信号としきい値電圧Vthの信号とを比較して、増幅回路32の出力信号がしきい値電圧Vth以上のレベルのときにハイレベルの信号を出力しかつしきい値電圧Vth未満のレベルのときローレベルの信号を出力する(図2(2)参照)。コンパレータ18から出力された信号は、整形回路16によって所定の時定数に応じて波形整形される。すなわち、整形回路16では、コンパレータ18から出力される信号のレベルがローレベルからハイレベルになるときは所定の時定数に応じて充電され、ハイレベルからローレベルになるときはこれを放電する。これにより、整形回路16は、コンパレータ18から出力される信号のレベルがローレベルからハイレベルになるときは徐々にレベルが増加する信号を出力し、ハイレベルからローレベルになるときは徐々にレベルが減少する信号を出力する。従って、整形回路16から出力される信号は、時定数に応じて整形した滑らかな信号になる(図2(3)参照)。
【0028】整形回路16から出力される信号は、アナログデジタル変換器34によって所定の時間でサンプリングされたアナログ信号に応じた値のデジタル信号に変換される。アナログデジタル変換器34で変換されたデジタル信号は加重平均回路20に入力される。
【0029】加重平均回路20は、詳細は後述するが2次元CCDセンサ40の1ライン(走査線)分の入力された信号に基づいて加重平均を行うことによって1ライン上のスリット像64の幅の中心位置(加重中心値)を求める。この中心位置を全てのラインについて求め、スリット像の中心位置の偏差を求める。この偏差は被測定面の段差に対応するため、ラインの位置と偏差とにより被測定面の形状を求めることができる。
【0030】次に、加重平均回路20の作動について図3R>3に示したフローチャートを参照して説明する。
【0031】先ず、ステップ102では、本ルーチンで使用される変数の初期値を設定する。すなわち、フラグFlagをリセットし、カウンタ値としてi、jに1をセットする。また、Io =0、遅延時間Tth、変数Ts 、最大サンプリング回数imax を取り込む。
【0032】なお、フラグFlagは、整形回路16とアナログデジタル変換器34とが接続状態にあると共に、整形回路16から出力される信号が所定の時定数で定まる時間を経過した状態がセット(Flag=1)、そうでない場合がリセット(Flag=0)に対応する。カウンタ値i、jは、2次元CCDセンサ40の水平同期信号(HD)の立ち上がり(または立ち下がり)からの経過時間を所定時間でサンプリングしたサンプル回数である。このサンプリング時間を2次元CCDセンサ40の1CCD素子(ピクセル)に対応するように換算することによって、2次元CCDセンサ40上のピクセル毎の位置に対応させることができる。
【0033】また、遅延時間Tthは、整形回路16の時定数で定まる立ち上がり信号の到達遅延時間を表している。変数Ts は、立ち上がり時刻を示す変数である。最大測定サンプリング回数imax は、水平同期信号の周期(1ライン)を上記所定時間でサンプリングした回数である。なお、2次元CCDセンサ40の1ピクセルに時間を対応させ1ラインが有するCCD素子の数を換算することによって、2次元CCDセンサ40の1ライン上のCCD素子の総和を用いることができる。
【0034】次のステップ104では、入力される信号の2次元CCDセンサ40の1ラインについて時刻Ti及び時刻Tiのときの光量Ijを記憶し、ステップ106へ進む。次のステップ106では、現在のカウンタ値i,jの時刻Ti及び光量Ijを取り込み、ステップ108へ進む。
【0035】ステップ108では、現在のカウンタ値i,jに対する時刻Tiの光量Ijが0を越えかつ前回の光量Ij-1 が0か否かを判断することによって、現在の時刻Tiが立ち上がり時刻か否かを判断する。立ち上がり時刻の場合は、ステップ110において現在取り込んだ時刻Tiを立ち上がり時刻を表す変数Tsにセットし、ステップ112へ進む。
【0036】ステップ112では、操作者がスイッチ14を切り換えた後に切換センサ15から出力される信号によってスイッチ14の状態が補正側Eか通過側Fかを判断する。すなわち、アナログデジタル変換器34に入力された信号が直接増幅回路32から出力された信号か、増幅回路32から出力された信号が整形回路16を介して出力された信号か否かを判断する。通過側Fの場合にはステップ114へ進み、加重平均回路20によって入力された信号をそのまま加重平均する。
【0037】すなわち、ステップ114では、S=S+Ijを演算することによって現在のカウンタ値iに対する時刻までの光量Iの総和を演算し、ステップ116へ進む。次のステップ116では、T=T+Ij・Tiを演算することによって時刻Tに光量Iで重み付けされた総和を演算する。
【0038】上記演算が終了するとステップ118において、メモリされたデータが終了したか否かを判断することによって1ラインについて上記処理が終了したか否かを判断し、終了でない場合にはステップ120において、i及びjを1インクリメントし、ステップ106へ戻り、上記の処理を繰り返す。
【0039】1ラインの処理が終了すると、ステップ122において、上記求めた各総和からTc=T/Sを演算することによって時間についての加重平均値Tcを求める。求めた値Tcを2次元CCDセンサ40上に対応する位置に換算する。これにより、2次元CCDセンサ40上の位置を求めることができる。
【0040】一方、ステップ112において、スイッチ14が補正側Eと判断された場合にはステップ124へ進む。
【0041】ステップ124では、Ti−Ts>Tthか否かを判断することによって立ち上がり時刻Tsから整形回路16の時定数で定まる遅延時間Tthを経過したか否かを判断する。遅延時間Tthを経過していない場合にはステップ114へ進み、上記と同様に各総和を求める。経過した場合にはステップ126において、フラグFlag=1か否かを判断することによりスイッチ14がセットか否かを判断する。フラグFlagがセットの場合には、スイッチ14が補正側Eであると共に、整形回路16から出力される信号が既に遅延時間Tthを経過した状態であるため、ステップ114へ進み、上記と同様に各総和を求める。フラグFlagがリセットの場合には、スイッチ14が補正側Eであると共に、整形回路16から出力される信号が遅延時間Tthを経過した当初の状態であるため、ステップ128において、j=j+Tthを演算すると共に演算されたカウントの光量Ijを読み取る。読み取りが終了するとフラグFlagをセットしてステップ114へ進む。次に、上記と同様に各総和を演算し(ステップ114、116)、1ラインについて処理を繰り返す(ステップ118、120)。1ラインの処理が終了すると、求めた各総和から時間についての加重平均値Tcを求め(ステップ122)、求めた値Tcを2次元CCDセンサ40上に対応する位置に換算する。これにより、2次元CCDセンサ40上の位置を求めることができる。
【0042】このように、スイッチ14が補正側Eで、2次元CCDセンサ40から出力された信号(図2(1)参照)がコンパレータ18及び整形回路16を介して加重平均回路20に入力された場合は、時間Tthを経過した後、時間Tth進んだときの時刻の光量Ijによって時刻Tiに重みが付される。従って、加重平均によって求める時間は、整形回路16で時間Tthだけ遅延された総時間Txo(図2(3)参照)が補正され、所定の光量以上の光が2次元CCDセンサ40に照射された位置間に対応する時間Tx(図2(2)参照)に等価になる。これによって、図2(4)に示したように、時間Txの間で立ち上がり及び立ち下がりが滑らかになる信号と等価な信号として加重平均を求めることができる。このため、2次元CCDセンサ40に照射されたスリット像64の中心位置を、精度良く求めることができる。
【0043】以上説明したように、演算回路10は、1ラインについての入力された信号に基づいて加重平均を行うことによってスリット像64の幅の中心位置を求める。求めたスリット像の中心位置の偏差を全てのラインについて求めることによって、被測定面の段差を求めることができる。このように、本実施例の形状測定装置12では、2次元CCDセンサ40の出力信号に基づいて演算回路10によって被測定面60Aの段差を算出する。
【0044】本実施例では、スリット像64の幅の中心位置を求める場合に、基準値以上の光量が照射された位置間で立ち上がり及び立ち下がりが滑らかかつ対称な信号に補正して、この対称な信号の加重平均をとるので、傷等の影響で光量の分布が異なっても、ずれることはなく確実かつ高い分解能で、中心位置を求めることができる。従って、求めたスリット像の位置は、実際の位置に対応して適正に求められ、最適な測定対象物の形状を得ることができる。
【0045】なお、本実施例ではロッドレンズを利用してスリット状の光を得る例について説明したが、スリット状の光を得る素子としてシリンドリカルレンズ、シリンドリカルミラー等を用いることもでき、回転多面鏡等のレーザービームをスキャンすることによりスリット状の光を得ることもできる。
【0046】また、本実施例では受光素子として2次元CCDセンサを用いた場合について説明したが、2次元CCDセンサに限定されるものではなく、1次元CCDセンサ、撮像管を用いたテレビジョンシステムによる位置検出方法を用いてセンサ上で2次元の位置を出力することのできる素子を利用してもよい。
【0047】また、本実施例では、スイッチを切り換えることによって出力される制御信号に基づいて加重平均回路は補正を行うようにしたが、本発明はこれに限定されるものではなく、常時コンパレータ及び整形回路を通過した2次元CCDセンサから出力される信号を、加重平均回路に入力するようにしてもよい。
【0048】また、本実施例では、操作者によってスイッチを切り換えた場合の例について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、スイッチを自動的に切り換えることによって加重平均回路に入力する信号の波形を整形してもよい。この場合は、制御信号が入力されることによってオンオフするスイッチ、例えばアナログスイッチを上記実施例に用いたスイッチと置き換える。このスイッチは、制御信号が入力されることによって、2次元CCDセンサの出力信号がそのまま加重平均回路へ出力される状態からコンパレータ及び整形回路によって波形整形された信号が加重平均回路へ出力される状態に切り換わるようにする。この場合、先ず、2次元CCDセンサの出力信号をそのままアナログデジタル変換して加重平均回路によって加重平均する。このとき、2次元CCDセンサに照射された位置についてのみ平均する。または、重みを1(光量を全て1)に対応させて加重平均する。この各演算値を比較し異なる場合に入力波形が対称でないと判断し、スイッチに制御信号を出力する。これによって、スイッチが作動し、波形が整形された信号を加重平均回路へ出力することができる。
【0049】
【発明の効果】以上説明したように請求項1に記載の発明によれば、被測定面の表面の状態に拘わらず、SN比が低下することなく、高い分解能で光の中心位置を求めて被測定面の形状を測定することができる、という優れた効果を有する。
【0050】請求項2に記載の発明によれば、加重平均手段に入力される信号を光強度信号か整形信号かに何れかを出力することによって、最適な処理時間で処理することができ、また被測定面の表面の状態に応じて処理することができる、という優れた効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例にかかる形状測定装置の構成を示すブロック図である。
【図2】(1)は、2次元CCDセンサ(受光面)上の1ラインにおける位置と光量との関係を示す線図である。(2)は、コンパレータの出力信号波形を示す線図である。(3)は、整形回路の出力信号波形を示す線図である。(4)は、加重平均回路における仮想的なスリット像に対する信号波形を示す線図である。
【図3】加重平均処理の演算処理の流れを示すフローチャートである。
【図4】形状測定装置の概略構成を示す斜視図である。
【図5】(1)は、形状測定装置の2次元CCDセンサ(受光面)上におけるレーザービームの照射状態を示す線図である。(2)、(3)は、2次元CCDセンサの出力信号を示す線図である。
【図6】(1)は、2次元CCDセンサの任意ラインの位置及び光量の特性曲線において加重平均による中心位置を示す線図である。(2)は、2点中心法によってスリット像の中心位置を求める状態を示すイメージ図である。
【符号の説明】
10 演算回路
12 形状測定装置
14 スイッチ(切換手段)
16 整形回路(波形成形手段)
18 コンパレータ(比較手段)
20 加重平均回路(加重平均演算手段)
34 アナログデジタル変換器
40 2次元CCDセンサ(位置検出手段)
60 測定対象物
60A 被測定面

【特許請求の範囲】
【請求項1】 被測定面へスリット光を照射する照射手段と、被測定面で反射された光を受光しかつ受光位置に応じた光強度信号を出力する位置検出手段と、受光した光の幅方向の受光位置に応じた光強度が、予め定められた基準値以上のときハイレベルになる比較信号を出力する比較手段と、前記比較信号を左右対称でかつ中心を含む領域と、その信号の大きさが最大になるように波形整形した整形信号を出力する波形整形手段と、前記整形信号の光強度に対応する値を重みとして前記整形信号の受光位置に対応する値の加重平均を演算する加重平均演算手段と、を備えた形状測定装置。
【請求項2】 被測定面へスリット光を照射する照射手段と、被測定面で反射された光を受光しかつ受光位置に応じた光強度信号を出力する位置検出手段と、受光した光の幅方向の受光位置に応じた光強度が、予め定められた基準値以上のときハイレベルになる比較信号を出力する比較手段と、前記比較信号を左右対称でかつ中心を含む領域と、その信号の大きさが最大になるように波形整形した整形信号を出力する波形整形手段と、前記光強度信号と、前記整形信号との何れか一方を出力する切換手段と、前記切換手段から出力された信号の光強度に対応する値を重みとして該信号の受光位置に対応する値の加重平均を演算する加重平均演算手段と、を備えた形状測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図4】
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【図5】
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【図3】
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【図6】
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【公開番号】特開平5−312534
【公開日】平成5年(1993)11月22日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平4−123414
【出願日】平成4年(1992)5月15日
【出願人】(000003551)株式会社東海理化電機製作所 (3,198)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【出願人】(000003609)株式会社豊田中央研究所 (4,200)