説明

形状異方性金属微粒子の製造方法、着色組成物、感光性転写材料、黒色画像付き基板、カラーフィルター、並びに液晶表示素子

【課題】分散安定性が高い形状異方性金属微粒子を製造し得る形状異方性金属微粒子の製造方法、薄膜で高濃度の着色が得られる着色組成物を提供する。
【解決手段】分子中にメルカプト基を有する高分子分散剤の存在下で金属化合物の還元を行う工程を有することを特徴とする形状異方性金属微粒子の製造方法、及び該形状異方性金属微粒子の製造方法により得られる金属微粒子を、SP値が25.8MPa1/2以下の溶媒中に含有させてなる着色組成物である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、形状異方性金属微粒子の製造方法、該形状異方性金属微粒子を含む着色組成物、感光性転写材料、黒色画像付き基板、カラーフィルター、並びに液晶表示素子に関する。
【背景技術】
【0002】
黒色材料用着色組成物は、印刷インク、インクジェットインク、エッチングレジスト、ソルダーレジスト、プラズマデイスプレイパネル(PDP)の隔壁、誘電体パターン、電極(導体回路)パターン、電子部品の配線パターン、導電ペースト、導電フイルム、ブラックマトリックス等の遮光画像等に広く用いられている。前記遮光画像は液晶表示装置、プラズマディスプレイ表示装置、EL表示装置、CRT表示装置などの表示装置の周辺部に設けられた黒色の縁や、赤、青、緑の画素間の格子状やストライプ状の黒色の部、さらにTFT遮光のためのドット状や線状の黒色パターン等、いわゆるブラックマトリックス(以下、「BM」ともいう。)の他に各種遮光画像を含む。
【0003】
BMは表示コントラストを向上させるため、また薄膜トランジスター(TFT)を用いたアクティブマトリックス駆動方式の液晶表示装置の場合には光による電流リークによる画質低下を防止するために用いられており、高い遮光性(光学濃度ODで3以上)が必要である。
【0004】
一方で、近年は液晶表示装置がTVへ応用されるようになってきたが、TVでは透過率が低く、かつ高い色純度カラーフィルタを使用して高輝度を得るため、バックライトの輝度が高くなる傾向にあり、コントラストの低下や、周辺額縁部分の透けを防止するため、BMに高い遮光性が要求される。
【0005】
更にTVは、太陽光が入射する部屋に長期間設置される事から、太陽光によるTFTの劣化が懸念され、また、(1)ODが高いことで画像の引締まり感がでること、つまりコントラストが高いこと、及び(2)外光での液晶の白さが目立たなくなることの意味でもBMに高い遮光性が要求される。
【0006】
クロム等の金属膜を遮光層とするBMの形成方法としては、例えば、金属薄膜を蒸着法やスパッタリング法により作製し、該金属薄膜の上にフォトレジストを塗布し、次いでBM用パターンをもつフォトマスクを用いてフォトレジスト層を露光現像し、その後露出した金属薄膜をエッチングし、最後に金属薄膜上のレジスト層を剥離することによりBMを形成する方法がある(例えば、非特許文献1参照)。
【0007】
この方法は金属薄膜を用いるため、膜厚が小さくても高い遮光効果が得られるという利点がある。しかし、蒸着法やスパッタリング法という真空成膜工程やエッチング工程が必要となり、コストが高くなるとともに環境に対する負荷も無視できないという問題がある。また、金属膜であるため反射率が高く、強い外光の下では表示コントラストが低いという問題もある。これに対して、上記金属薄膜として、低反射クロム膜(金属クロムと酸化クロムとの2層からなるもの等)を用いるという手段があるが、更にコストアップとなることは否めない。
【0008】
また、他のBM形成方法としては、遮光性顔料、例えばカーボンブラックを含有する感光性樹脂組成物を用いる方法も知られている。該方法としては、例えば、透明基板にR、G、B画素を形成した後、この画素の上にカーボンブラック含有感光性樹脂組成物を塗布し、透明基板のR、G、B画素非形成面側から全面に露光する、セルフアライメント方式のBM形成方法が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
上記方法は、上記金属膜のエッチングによる方法に比較して製造コストは低くなるものの、十分な遮光性を得るためには膜厚が厚くなるという問題がある。その結果、BMとR、G、B画素との重なり(段差)が生じ、カラーフィルターの平坦性が悪くなって液晶表示素子のセルギャップムラが発生し、色ムラ等の表示不良につながることになる。
【0009】
一方、透明基板上に親水性樹脂を含有する感光性レジスト層を形成し、BM用パターンを有するフォトマスクを介して露光・現像して透明基板上にレリーフを形成し、この透明基板を無電解メッキの触媒となる金属化合物の水溶液に接触させ、金属化合物をレリーフ中に含有させ乾燥した後、熱処理を施し、その後、上記透明基板上のレリーフを無電解メッキ液に接触させることにより、粒径0.01〜0.05μmの遮光用の金属粒子がその内部に均一に分散されたBMを作製する方法が提案されている(例えば、特許文献2参照)。上記金属粒子としてはニッケル、コバルト、鉄、銅、クロムが記載され、具体例としては唯一ニッケルが示されている。
しかしながら、この方法は、露光現像工程を含むレリーフ形成−無電解メッキ触媒の付与−熱処理−無電解メッキという、水を扱う煩瑣な処理工程が多い。そのため、低コストでのBM製造を大きくは期待できない。
【0010】
また、以下の特許文献3には黒色パターンを作製する着色組成物に磁性フイラーを使った例があるが、これらの例は10ミクロン以上の厚膜であり、単位膜厚辺りの濃度が低く、薄膜で遮光性能が高い遮光画像を低コストで作製することができない。
【0011】
一方、以下の特許文献4、5には金属微粒子によるナノワイヤーを使って導電材料とした例があるが、これらは粒子を洗浄、濃厚化した場合凝集物が多く見られ、カラーフィルターの平坦性が悪くなると共に、色ムラ等の表示不良につながるため、表示装置用着色材料としては使用できない。
【0012】
また、形状異方性金属微粒子含有着色組成物を用い黒色パターンを作製する方法は、着色組成物にアスペクト比が2以上である金属微粒子を使った例がある(例えば、特許文献4参照)が、該金属微粒子を用い黒色カラーフィルターを作製すると、表示ムラが発生し、ブラックマトリックス基板としては十分といえるものではない事が分かった。
【0013】
表示ムラとは、ブラックマトリックス基板表面が平滑でない場合に、液晶の配向が乱れ、表示ムラの原因となると言われて、液晶表示装置にグレイのテスト信号を入力させた時に観察される淡いムラである。比較的くっきりした筋状に見える「スジムラ」は感光性樹脂層の形成時に生じた厚みムラ、露光のムラ、現像処理のムラ、熱処理のムラなど、配向制御用突起の形成時に発生しているものと、液晶表示装置として機能する際に、配向制御用突起と液晶の間のインターラクションにより発生するムラとが考えられるが、機構は定かではない。
【0014】
また、複数の金属微粒子が連結することによって形成される、鎖状の形状異方性金属微粒子の作製方法が特許文献5,6に開示されている。該特許は、いずれも、導電材料作製を目的とした金属微粒子の製造方法である。特許文献5,6記載の鎖状の形状異方性金属微粒子をカラーフィルターや液晶表示装置の様な光学材料用途に、粒子を洗浄、濃厚化した場合、分散安定性が低く、凝集物が多数発生し、カラーフィルターとしての平坦性が損なわれ、実用に値するものではない事が分かった。また、特許文献6に記載の方法では、非常に希薄な条件でしか鎖状に連結した粒子を得ることが出来ないため、製造に適さない。さらに、得られる粒子長が比較的単分散なものであれば、吸収帯が顕著に2つに分かれ、鮮やかな色を呈すると予測される。しかし、特許文献6に記載の方法では粒子長が揃っていないため、単一の粒子とは異なる幅広い吸収帯を得ることが出来るものの、所望の色調を有する粒子を得ることが難しい。上記のように、形状異方性により色調を調製し、表示材料として実用に値するような分散安定性を有した着色組成物の調製は困難であった。
さらに、これらの金属微粒子は、水から低級アルコールのような極性の高い溶媒には分散するが、低極性の有機溶媒に凝集無く分散する金属微粒子の調製は困難であった。
【特許文献1】特開昭62−9301号公報
【特許文献2】特許第3318353号公報
【特許文献3】特開2001−13678号公報
【特許文献4】特開2005−17322号公報
【特許文献5】特開2001−279304号公報
【特許文献6】WO2003/068674号公報
【非特許文献1】共立出版(株)発行「カラーTFT液晶ディスプレイ」第218〜220頁(1997年4月10日)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明は上記のごとき問題点に鑑みてなされたものであり、以下の目的を達成することを課題とする。すなわち、
本発明の目的は、分散安定性が高い形状異方性金属微粒子を製造し得る形状異方性金属微粒子の製造方法を提供することにある。
本発明の別の目的は、薄膜で高濃度の着色が得られる着色組成物、特に、遮光性能が高い遮光画像を低コストで作製することができ、環境性に優れる着色組成物及び感光性転写材料を提供すること、更に薄膜で遮光性能が高い遮光画像付き基板、カラーフィルター、及び液晶表示装置、を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記課題は以下の手段によって解決される。すなわち、
<1> 分子中にメルカプト基を有する高分子分散剤の存在下で金属化合物の還元を行う工程を有することを特徴とする形状異方性金属微粒子の製造方法である。
【0017】
<2> 前記形状異方性金属微粒子は複数の金属微粒子が連結することにより形成されていて、該複数の金属微粒子の連結長が変わることによって色調が異なることを特徴とする前記<1>に記載の形状異方性金属微粒子の製造方法である。
【0018】
<3> 前記形状異方性金属微粒子は、金属化合物と金属との複合微粒子から形成されていることを特徴とする前記<1>または<2>に記載の形状異方性金属微粒子の製造方法である。
【0019】
<4> 前記形状異方性金属微粒子は、紫外光、可視光、及び近赤外光の波長領域のうちの2つ以上の波長領域において極大吸収を有し、金属微粒子の連結長によって吸収波長を変化させられることを特徴とする前記2または3に記載の形状異方性金属微粒子の製造方法である。
【0020】
<5> 前記高分子分散剤は、分子鎖の末端に少なくとも2つ以上のメルカプト基を有することを特徴とする前記<1>から<4>のいずれかに記載の形状異方性金属微粒子の製造方法である。
【0021】
<6> 前記<1>から<5>のいずれかに記載の形状異方性金属微粒子の製造方法により得られる金属微粒子を、SP値が25.8MPa1/2以下の溶媒中に含有させてなることを特徴とする着色組成物である。
【0022】
<7> さらに、顔料を含むことを特徴とする前記<6>に記載の着色組成物である。
【0023】
<8> 前記顔料が、カーボンブラック、チタンブラック、及び黒鉛から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする、前記<7>に記載の着色組成物である。
【0024】
<9> 支持体上に少なくとも感光性遮光層を設けた感光性転写材料であって、前記感光性遮光層が前記<6>から<8>のいずれかに記載の着色組成物によって形成されることを特徴とする感光性転写材料である。
【0025】
<10> 前記<6>から<8>のいずれかに記載の着色組成物を用いて作製される遮光画像を有することを特徴とする遮光画像付き基板である。
【0026】
<11> 前記<9>に記載の感光性転写材料を用いて作製される遮光画像を有することを特徴とする遮光画像付き基板である。
【0027】
<12> 前記<6>から<8>のいずれかに記載の着色組成物を用いることを特徴とするカラーフィルターである。
【0028】
<13> 前記<6>から<8>のいずれかに記載の着色組成物を用いることを特徴とする液晶表示装置である。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、分散安定性が高い形状異方性金属微粒子を製造し得る形状異方性金属微粒子の製造方法を提供することができる。
また、本発明によれば、薄膜で高濃度の着色が得られる着色組成物、特に、遮光性能が高い遮光画像を低コストで作製することができ、環境性に優れる着色組成物及び感光性転写材料を提供すること、更に薄膜で遮光性能が高い遮光画像付き基板、カラーフィルター、及び液晶表示装置、を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
本発明の形状異方性金属微粒子の製造方法は、分子中にメルカプト基を有する高分子分散剤の存在下で金属化合物の還元を行う工程を有することを特徴としている。
以下、先ず、本発明の製造方法によって製造し得る形状異方性金属微粒子について説明する。
【0031】
<形状異方性金属微粒子>
本発明に係る形状異方性金属微粒子は複数の金属微粒子が鎖状に連結した粒子であり、分子中にメルカプト基を有する高分子分散剤を含む原料金属化合物溶液中で、金属化合物の還元を行うことによって製造されるものである。ひとつの粒子の大きさは、2nm〜100nmであることが好ましく、複数の金属粒子の連結長は5nm〜1000nmであることが好ましく、5nm〜500nmであることがさらに好ましい。
そして、複数の金属微粒子の連結長が変わることによって色調を異ならせることができる。例えば、2〜4個の粒子が連結した場合、赤色を呈し、5〜8個連結したものは、青〜緑色を呈する。
【0032】
本発明に係る形状異方性金属微粒子は、紫外光、可視光、及び近赤外光の波長領域のうちの2つ以上の波長領域において極大吸収を有し、金属微粒子の連結長によって吸収波長を変化させることができる。具体的には、4〜6の粒子が連結した粒子では、400nm近傍と600nm近傍で極大吸収を有するが、6〜8個の粒子が連結した粒子では、400nm近傍と700nm近傍で極大吸収を有する。
【0033】
[金属微粒子]
本発明で用いられる金属微粒子は特に限定されず、いかなるものを用いてもよい。本発明における金属微粒子としては、この中で長周期周期表(IUPAC1991)の例えば、元素周期表の第4周期、第5周期、及び第6周期からなる群から選ばれる金属を主成分として含むことが好ましく、また、第2族、第8族、第9族、第10族、第11族、第12族、第13族、及び第14族からなる群から選ばれる金属を主成分として含むことが好ましい。
【0034】
前記金属粒子として分散金属粒子の好ましい例は、例えば、銅、銀、金、白金、パラジウム、ニッケル、錫、コバルト、ロジウム、イリジウム、鉄、ルテニウム、オスミウム、マンガン、モリブデン、タングステン、ニオブ、タンタル、チタン、ビスマス、アンチモン、鉛、又はこれらの合金、から選ばれる少なくとも一種を挙げることができる。これらの金属は、利用される波長域である300〜800nmにおいて、金属粒子の表面プラズモン共鳴による光吸収ピークを有するという観点から適当である。さらに好ましい金属は、銅、銀、金、白金、パラジウム、ニッケル、錫、コバルト、ロジウム、イリジウム又はこれらの合金、より好ましい金属は、銅、銀、金、白金、錫又はこれらの合金から選ばれる少なくとも一種である。
【0035】
また、本発明の金属微粒子は、金属化合物と金属との複合微粒子でもよい。
[金属化合物]
本発明で言う「金属化合物」とは上記のごとき金属と金属以外の元素との化合物である。
金属と他の元素の化合物としては金属の酸化物、硫化物、硫酸塩、炭酸塩などがある。このうち硫化物が色調や微粒子形成のしやすさから特に好ましい。これら金属化合物の例としては酸化銅(II)、硫化鉄、硫化銀、硫化銅(II)、チタンブラックなどがあるが、硫化銀は色調、微粒子形成のしやすさや安定性の観点から特に好ましい。
【0036】
[複合微粒子]
本発明で言う金属化合物と金属との複合微粒子とは金属と金属化合物が結合して1つの粒子になったものをいう。この形状には特に制限はない。例えば粒子の内部と表面で組成の異なるもの、2種類の粒子が合一したもの等を挙げることができる。また、金属化合物と金属は、それぞれ1種でも2種以上であってもよい。金属化合物と金属との複合微粒子の具体例としては銀と硫化銀の複合微粒子、銀と錫の複合微粒子、銀と酸化銅(II)の複合微粒子などがある。
【0037】
本発明の金属微粒子溶液の製造方法では、まず分子中にメルカプト基を有する高分子分散剤を含む原料金属化合物溶液を用意する。
【0038】
上記金属化合物としては、使用する溶媒に溶解するものならば特に限定されないが、銅、銀、金、白金、パラジウム、ニッケル、錫、コバルト、ロジウム、イリジウム、鉄、ルテニウム、オスミウム、マンガン、モリブデン、タングステン、ニオブ、タンテル、チタン、ビスマス、アンチモン、鉛から選ばれる1種または複数の金属の硫酸塩、酢酸塩、硝酸塩、過塩素酸塩、塩酸塩などが挙げられるが、酢酸塩、硝酸塩、硫酸塩が好ましい。
【0039】
上記溶媒としては、例えば、水、有機溶媒等を挙げることができる。
上記有機溶媒としては特に限定されず、例えばアセトン等のケトン類、メトキシプロパノール、エトキシエタノール、プロパノールなどのアルコール類、1-アセトキシ-1-メトキシプロパン、ジエチルアミノエタノール、エチレングリコール等を挙げることができる。後処理として水洗沈降を使用する場合は、水溶性溶媒を用いることが好ましく、アセトン、メトキシプロパノール、エトキシエタノール、ジエチルアミノエタノールなどが好ましい。また、溶媒は1種類に限らず、複数を混合して用いても良い。
【0040】
上記溶媒中にはアミン含有化合物が含まれていることが好ましく、例えば、ジエチルアミノエタノール、エタノールアミン、プロパノールアミン、トリエタノールアミン、ジメチルアミノプロパノールなどのアルカノールアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、ジプロピレンアミン、エチレンジアミン、トリエチレンペンタミンなどの脂肪族アミン、ピペリジン、ピロリジン、Nメチルピロリジン、モルホリンなどのような脂環式アミン、アニリン、N−メチルアニリン、トルイジン、アニシジン、フェネチジンのような芳香族アミン、ベンジルアミン、キシレンジアミン、N−メチルベンジルアミンのようなアラルキルアミン等を挙げることができる。
【0041】
上記アミンとしては、アルカノールアミンが好ましく、エタノールアミン、プロパノールアミン、ジエチルアミノエタノールなどが好ましく、エタノールアミンがさらに好ましい。
【0042】
上記アミン含有化合物が含まれない場合は、塩基を加えて溶液のpHを8以上に保つことが好ましい。
【0043】
<形状異方性金属微粒子の製造方法>
既述の通り、本発明の形状異方性金属微粒子の製造方法は、分子中にメルカプト基を有する高分子分散剤の存在下で金属化合物の還元を行う工程を有するが、以下に、まず高分子分散剤について説明する。
【0044】
[高分子分散剤]
上記高分子分散剤は、高分子量の重合体中に金属表面に対する親和性の高いメルカプト基が導入されている。
【0045】
上記高分子分散剤は金属化合物の還元による金属コロイド粒子の生成及び生成後の溶媒中での分散を安定化する働きをしていると考えられる。
上記高分子分散剤の数平均分子量は600〜500000であることが好ましい。600未満であると分散安定性が十分ではないことがあり、500000を超えると粘度が高すぎて取り扱いが困難である場合がある。より好ましくは、1000〜300000であり、さらに好ましくは、3000〜100000である。
【0046】
本発明において使用できる高分子分散剤としては、例えば、下記一般式(1)で表される高分子化合物が好ましい。
【0047】
【化1】


[一般式(1)中、Rは単結合又は非金属原子からなる2から10価の連結基を表し、m、nは1から9を表し、Pは高分子骨格を表す。]
【0048】
一般式(1)中、Rは単結合又は非金属原子からなる2から10価の連結基を表すが、より具体的には、1から100個までの炭素原子、0個から10個までの窒素原子、0個から50個までの酸素原子、1個から200個までの水素原子、及び0個から20個までの硫黄原子のうちの少なくとも1種を含む原子団から成り立つものである。より具体的な連結基としては下記の構造単位が組み合わさって構成されるものを挙げることができる。
【0049】
【化2】

【0050】
これらの多価の連結基が置換基を有する場合、置換基としてはメチル基、エチル基等の炭素数1から20までのアルキル基、フェニル基、ナフチル基等の炭素数6から16までのアリール基、水酸基、カルボキシル基、スルホンアミド基、N−スルホニルアミド基、アセトキシ基のような炭素数1から6までのアシルオキシ基、メトキシ基、エトキシ基のような炭素数1から6までのアルコキシ基、塩素、臭素のようなハロゲン原子、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、シクロヘキシルオキシカルボニル基のような炭素数2から7までのアルコキシカルボニル基、シアノ基、t−ブチルカーボネートのような炭酸エステル基等を用いることができる。
【0051】
一般式(1)中、Pで表される高分子骨格は、特に限定はないが、ビニルモノマーの(共)重合体、エステル系ポリマー、エーテル系ポリマー、ウレタン系ポリマー、アミド系ポリマー、エポキシ系ポリマー、シリコーン系ポリマー及びこれらの変性物や共重合体から選ばれることが好ましく、ビニルモノマーの(共)重合体、エステル系ポリマー、エーテル系ポリマー及びこれらの変性物や共重合体から選ばれることがより好ましい。
さらに、溶媒に可溶であることが金属微粒子及び/又は金属化合物微粒子の分散性の観点で好ましい。
【0052】
また、本発明において使用できる高分子分散剤として、下記一般式(2)で表される高分子化合物も好適に使用することができる。
【0053】
【化3】

[一般式(2)中、Rは単結合又は非金属原子からなる2から10価の有機連結基を表し、Rは単結合又は非金属原子からなる2価の有機連結基を表し、m、nは1から9を表し、Pは高分子骨格を表す。]
【0054】
一般式(2)中、Rは、単結合又は非金属原子からなる2から10価の有機連結基を表すが、より具体的には、1から60個までの炭素原子、0個から10個までの窒素原子、0個から50個までの酸素原子、1個から100個までの水素原子、及び0個から20個までの硫黄原子のうちの少なくとも1種を含む原子団からから成り立つものである。
【0055】
で表される「非金属原子からなる2〜10価の有機連結基」としては、前記Rにおける場合と同様に、具体的な例として、前記同様の構造単位又は、該構造単位が組み合わさって構成される基が挙げられる。
これらのうち、Rで表される有機連結基の好ましい具体例を以下に示す。但し、本発明においては、これらに制限されるものではない。
【0056】
【化4】

【0057】
【化5】

【0058】
【化6】

【0059】
以上のRで表される連結基の中でも破線で囲んだものが、合成の容易さ、各種溶媒への溶解性の観点で特に好ましい。
【0060】
一般式(2)中、Rは、単結合又は非金属原子からなる2価の有機連結基を表すが、好ましくは置換基を有していてもよい、直鎖、分岐あるいは環状のアルキレン基、アリーレン基、ヘテロアリーレン基、アラルキレン基並びに、−S−、−C(=O)−、−N(R)−、−SO−、−SO 2 −、−CO 2 −、−N(R)SO 2 −あるいはこれらの基を2つ以上組み合わせた2価の基を挙げることができる。ここでRは水素原子又はアルキル基を挙げることができる。アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基等の炭素数1〜4個のアルキル基が挙げられる。
【0061】
一般式(2)中、Pは一般式(1)中のPと同義であり、好ましい例も同様である。
【0062】
以上の高分子分散剤は、メルカプト基を1個以上有する高分子化合物であるが、該高分子化合物は下記のいずれかによって合成することが可能である。
1.予め導入されたポリマー末端の官能基をメルカプト基に変換させる方法。
2.特開平9−3108に記載のチオカルボン酸存在下でラジカル重合を行い、末端にチオカルボン酸エステルを導入した後に加水分解を行い、末端にメルカプト基を1個有するポリマーを合成する方法。
3.一分子中に2個以上のメルカプト基を有する化合物と末端に炭素−炭素2重結合を有するポリマーとをラジカル発生剤存在下で反応させる方法。
これらの中でポリマー末端に複数の官能基を容易に導入できるため3.の方法が好ましい。
【0063】
次いで、1分子中に2個以上のメルカプト基を有する高分子分散剤について説明する。該高分子分散剤に使用し得る高分子化合物としては、脂肪族メルカプタン、芳香族メルカプタン、メルカプト基を有する複素環のいずれかを分子内に複数個有する化合物が挙げられる。
具体的には例えば、1,2−エタンジチオール、1,3−プロパンジチオール、1,4−ブタンジチオール、2,3−ブタンジチオール、1,5−ペンタンジチオール、1,6−ヘキサンジチオール、1,8−オクタンジチオール、1,9−ノナンジチオール、2,3−ジメルカプト−1−プロパノール、ジチオエリスリトール、2,3−ジメルカプトサクシン酸、1,2−ベンゼンジチオール、1,2−ベンゼンジメタンチオール、1,3−ベンゼンジチオール、1,3−ベンゼンジメタンチオール、1,4−ベンゼンジメタンチオール、3,4−ジメルカプトトルエン、4−クロロ−1,3−ベンゼンジチオール、2,4,6−トリメチル−1,3−ベンゼンジメタンチオール、4,4’−チオジフェノール、2−ヘキシルアミノ−4,6−ジメルカプト−1,3,5−トリアジン、2−ジエチルアミノ−4,6−ジメルカプト−1,3,5−トリアジン、2−シクロヘキシルアミノ−4,6−ジメルカプト−1,3,5−トリアジン、2−ジ−n−ブチルアミノ−4,6−ジメルカプト−1,3,5−トリアジン、エチレングリコールビス(3−メルカプトプロピオネート)、ブタンジオールビスメルカプトアセテート、エチレングリコールビスメルカプトアセテート、2,5−ジメルカプト−1,3,4−チアジアゾール、2,2’−(エチレンジチオ)ジエタンチオール、2,2−ビス(2−ヒドロキシ−3−メルカプトプロポキシフェニルプロパン)等の2個のメルカプト基を有する化合物、1,2,6−ヘキサントリオールトリチオグリコレート、1,3,5−トリチオシアヌル酸、2,4,6−トリメルカプト−1,3,5−トリアジン、トリメチロールプロパントリス(3−メルカプトプロピオネート)、トリメチロールプロパントリスメルカプトアセテート等の3個のメルカプト基を有する化合物、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキスメルカプトアセテート、ジペンタエリスリトールヘキサキス(3−メルカプトプロピオネート)、ジペンタエリスリトールヘキサキスメルカプトアセテート等の4個以上のメルカプト基を有する化合物が挙げられる。
【0064】
上記原料金属化合物溶液中に含まれる高分子分散剤の量は、原料金属化合物溶液中に含まれる金属質量と高分子分散剤質量の合計量に対して5質量%以上であることが好ましい。5質量%未満であると、還元時の分散安定性が低下するおそれがある。上限は特に限定されない。
【0065】
本発明の形状異方性金属微粒子の製造方法において、上記金属化合物の還元は、上記高分子分散剤を含む金属化合物溶液に還元性化合物を添加する方法、又は高分子分散剤を含む還元性化合物溶液に金属化合物溶液を添加する方法により行うことが出来る。分散安定性の観点から、前者の方が好ましい。さらに、前者の場合は、還元性化合物の代わりに紫外線等の光を用いて還元する方法も可能である。
【0066】
上記前者の方法について、以下説明する。
上記金属化合物を溶媒へ溶解し、さらに高分子分散剤とアミン含有化合物を加えて均一に混合する。上記金属化合物は、高分子分散剤とアミン含有化合物を加えた溶媒中に添加してもよい。
【0067】
還元を行うに際しての上記金属化合物溶液中の金属の濃度は特に限定されないが、通常10mmol/l以上であることが好ましい。10mmol/l未満であると、得られる金属コロイド溶液の金属濃度が低すぎて効率的ではない。収量を上げるという観点から、好ましくは50mmol/l以上、より好ましくは140mmol/l以上である。
【0068】
上記金属化合物溶液と高分子分散剤、アミン含有化合物を均一に混合した後、還元性化合物を添加する。還元反応は、−20℃以上300℃以下で行うことができ、0℃以上100℃以下であることが好ましい。
【0069】
上記アミン含有化合物を還元剤として用いることも可能である。その場合、アミン含有化合物は還元反応前には上記金属化合物溶液とは混合せず、上記金属化合物溶液と高分子分散剤を混合した後、添加する。
【0070】
上記アミンは上記金属化合物溶液中において、体積で3%以上であることが好ましく、6%以上であることがさらに好ましい。
【0071】
上記還元性化合物としては、アミンのほかに、水素化ホウ素ナトリウムなどのアルカリ金属水素化ホウ素塩、ヒドラジン化合物、クエン酸、酒石酸、アスコルビン酸、ギ酸、ホルムアルデヒド、亜ニチオン酸、スルホキシル酸塩誘導体、ハイドロキノン、ハイドロキノン誘導体、ヒドロキシルアセトンなどを使用することが出来る。これらは、単独または上記アミンと組み合わせて使用することが可能である。
【0072】
上記還元性化合物としては、トリエタノールアミン、アスコルビン酸、ハイドロキノン、ハイドロキノン誘導体、ヒドロキシルアセトンが好ましく、ヒドロキシルアセトンがさらに好ましい。
【0073】
上記還元性化合物の添加量は、上記金属化合物溶液の調整に使用する金属を還元するのに必要な量以上であることが好ましい。この量未満であると、還元が不十分となるおそれがある。また、上限は特に限定されない。
なお、後者の方法(高分子分散剤を含む還元性化合物溶液に金属化合物溶液を添加する方法により行うこと)も上記前者の方法に準じておこなうことが出来る。
【0074】
本発明において得られる形状異方性金属微粒子は、球形粒子が複数、鎖状にランダムに連結したものである。ひとつの粒子は2nm〜50nmが好ましく、5〜30nmがより好ましい。連結長は5〜1000nmが好ましく、5〜500nmがより好ましく、10〜300nmがより好ましい。
【0075】
上記形状異方性金属微粒子の連結長はできるだけ均一であることが好ましく、単分散性が高まれば、色材として好適に用いることができる。
【0076】
上記形状異方性金属微粒子の連結長、短軸長は、上記高分子分散剤の末端メルカプト基の数、分子量等によって変えることが出来る。上記高分子分散剤の種類が同じ場合は、上記形状異方性金属微粒子の連結長、短軸長は高分子分散剤の量、原料金属化合物の濃度、アミンの濃度、還元性化合物の量、温度によって変えることが出来る。
【0077】
本発明の形状異方性金属微粒子の製造方法により得られる金属微粒子の金属濃度は80質量%であることが好ましく、さらに好ましくは85質量%、より好ましくは90質量%である。
【0078】
本発明の形状異方性金属微粒子の製造方法により得られる金属コロイド溶液の固形分濃度としては特に限定されず、例えば、0.5〜60質量%とすることができる。
【0079】
本発明の形状異方性金属微粒子の製造方法により得られる金属微粒子溶液は、原料に由来する酢酸イオンなどの雑イオン、還元で生じた塩や、アミンを含む場合はこれらのイオン、アミンを加えない場合に使用したアルカリ等、過剰に加えられた還元剤等は、得られる金属微粒子溶液の安定性に悪影響を及ぼすおそれがあるので、除去しておくことが望ましい。これらの成分の除去としては、後処理として、電気透析、遠心分離、限外ろ過、デカンテーションなどの方法が用いられるが、遠心分離、限外ろ過、デカンテーション、溶媒抽出などの方法は同時に金属濃度を高められるので好ましい。特に、デカンテーションは特別な装置を必要とせず、容易に行えるため好ましい。
【0080】
本発明の形状異方性金属微粒子溶液の製造方法により得られる金属微粒子溶液は、上記の高分子分散剤に対する貧溶媒を加えることで金属微粒子が原料溶液中で容易に大きな凝集体を形成する。この凝集体を、貧溶媒で数度デカンテーションすることで不要なイオンなどの除去を行うことが出来、凝集体のスラリーを得ることができる。さらにこの後、凝集体スラリー中の残留貧溶媒を除くために、再分散溶媒にも溶解し、貧溶媒をも溶解することの出来る溶媒でデカンテーションを行うことで、再分散溶媒に溶解させうる金属微粒子凝集体スラリーを得ることができる。
【0081】
上記凝集体スラリーの固形分は30質量%以上であることが好ましく、60質量%以上がさらに好ましく、より好ましくは80質量%以上である。
【0082】
上記高分子分散剤に対する貧溶媒は、上記不純物を溶解させるものであることが望ましい。
【0083】
上記金属微粒子溶液中に上記高分子分散剤に対する貧溶媒を加えて凝集体を得た後は、デカンテーションではなく吸引濾過などによって凝集体を取り出すこともできる。この時、不純物を除去でき、かつ凝集体を溶解させない溶媒で凝集体を洗浄し、不純物を除いて凝集体のペーストを得ることができる。上記吸引濾過に用いるフィルターは孔径が100μm以下であることが好ましく、30μm以下であることがさらに好ましい。
【0084】
上記凝集体のペーストの固形分は特に限定されないが、80質量%以上であることが好ましい。
【0085】
上記金属微粒子の凝集体は、高分子分散剤に対する良溶媒を加えることによって分散した金属微粒子溶液を得ることが出来る。この時、再分散させるために攪拌、超音波分散、ビーズミル分散などによって凝集体を分散させることが出来る。
【0086】
上記金属微粒子溶液の合成にはアセトンなどの両親媒性溶媒を用いることが好ましい。また、還元剤やアミンも両親媒性であることが好ましい。この場合、イオンの除去等の観点から、上記高分子分散剤に対する貧溶媒としては水が好ましく、水除去のための洗浄溶媒としてはアセトン、メタノール、エタノール、プロパノールなどが好ましい。
【0087】
上記金属微粒子の凝集体のペースト中から不純物となる溶媒を除去するために、乾燥させることも可能である。
【0088】
上記高分子分散剤に対する良溶媒である再分散溶媒は、還元時に用いていたものと異なる種類でも用いることができる。
【0089】
一方、上記デカンテーションに代わって上記遠心分離を沈降手段として用いることもできる。この場合も、不純物を除去できるように数回溶剤を使って洗浄を行うことが望ましい。
【0090】
末端にメルカプト基を有する高分子分散剤存在下で原料金属化合物を還元することにより得られた金属微粒子溶液を、上記後処理を行うことにより、高分子分散剤と複数の粒子が連結した金属微粒子とからなる溶液を得ることが出来る。この場合、TG-DTAなどから得られる固形分量から、高分子分散剤と異方性金属微粒子の質量濃度を求めることができる。
【0091】
本発明の形状異方性金属微粒子の製造方法は、得られる連結した金属コロイドの粒子の連結数すなわち連結長、粒子径を制御することから、粒子径及び粒子形状の制御方法のひとつとみなされる。
【0092】
本発明の形状異方性金属微粒子は粒子の連結長によって明確に異なった色調を与えるため、任意の色調を有する粒子を任意の濃度で混合することにより、さらに異なった色調を有する色材を得ることも可能である。例えば、赤、青、緑の色調を有する金属微粒子を混合することによって黒色顔料を調製することも可能である。
【0093】
本発明における金属微粒子溶液は分子中にメルカプト基を有する上記高分子分散剤存在下で原料金属化合物を還元することにより得られたものであり、これに新たな高分子分散剤を加えても良い。新たに高分子分散剤を加えない場合、金属微粒子溶液の金属濃度をこれまでに比べてはるかに増加させることが出来る。従って、この金属微粒子を色材として用い、薄膜を形成する場合、これまでよりも膜厚を飛躍的に減少させることができる。さらに、これを導電性材料として用いたい場合においても、膜化したときに導電性を得るための加熱条件をより穏和に出来るため、耐熱性の低い材料用にも使用できるというメリットがある。
【0094】
[着色組成物]
本発明の着色組成物は、本発明の形状異方性金属微粒子の製造方法により得られる金属微粒子を、SP値が25.8MPa1/2以下の溶媒中に含有させてなる着色組成物である。すなわち、本発明の着色組成物は、既述の本発明の形状異方性金属微粒子を少なくとも1種含み、必要に応じて、顔料微粒子、バインダーとなるポリマー、光重合性モノマー、光重合開始剤、溶媒等を含有してもよい。
【0095】
ここで、SP値(溶解度パラメーター)は、凝集エネルギー密度の平方根で定義される数値であり、分子間力を表している。該SP値はポリマーや溶媒などの低分子化合物の極性を定量化できる一つの表示方法であり、下記に示す計算によっても、あるいは実測によっても得ることができる。
SP値(δ)=(ΔEv/V)1/2
上式において、ΔEvはモル蒸発エネルギーを、Vはモル体積を表す。
また、上記ΔEv及びVとしては、「ROBERT F.FEDORS著「POLYMER ENGINEERING AND FEBRUARY」(Vol.14、No.2、151〜153頁、1974年)」に記載の原子団のモル蒸発熱(△ei)の合計(ΔEv)とモル体積(vi)の合計(V)を用いることもできる。
【0096】
SP値が25.8Mpa1/2以下の溶媒としては、メチルエチルケトン、1−プロパノール、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、アセトン、シクロヘキサノン、n−メチルピロリドン、2−プロパノール、が挙げられ、メチルエチルケトン、1−プロパノール、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、シクロヘキサノンが好適に使用することができる。
【0097】
本発明の着色組成物は、印刷インク、インクジェットインク、フォトマスク作製材料、印刷用プルーフ作製用材料、エッチングレジスト、ソルダーレジスト、プラズマデイスプレイパネル(PDP)の隔壁、誘電体パターン、電極(導体回路)パターン、電子部品の配線パターン、導電ペースト、導電フイルム、ブラックマトリックス等の遮光画像等に用いることができる。好ましくはカラーフィルター及びこれに用いる表示装置カラー液晶表示装置等に用いるカラーフィルターの表示特性向上のために、着色パターンの間隔部、周辺部分、及びTFTの外光側等に遮光画像を設けるために好適に用いることができる。特に好ましくは、液晶表示装置、プラズマディスプレイ表示装置、EL表示装置、CRT表示装置などの表示装置の周辺部に設けられた黒色の縁や、赤、青、緑の画素間の格子状やストライプ状の黒色の部、さらに好ましくはTFT遮光のためのドット状や線状の黒色パターン等のブラックマトリックスとして好適に用いられる。
【0098】
[遮光画像作製用着色組成物]
前記着色組成物を、特に遮光画像作製用着色組成物として用いる場合について以下に詳述する。
遮光画像作製用着色組成物を用いて遮光層(パターニングする前の層)を形成した場合、遮光層の膜厚1μmあたりの光学濃度が1以上となることが好ましい。カラーフィルター作製の際、加熱工程時、金属微粒子が融着するのを防止することを考慮すると、上記着色組成物における形状異方性金属微粒子の含有量は、形成される遮光層に含まれる形状異方性金属微粒子の含有量が10〜90質量%、好ましくは10〜80質量%程度になるように調節することが好ましい。また、上記含有量は、形状異方性金属微粒子の平均粒径による光学濃度の変動を考慮しておこなうのが好ましい。
また、後述の感光性を有する着色組成物における形状異方性金属微粒子の含有量も同様である。
【0099】
本発明でいう「遮光画像」は、ブラックマトリックス(以下、「BM」ともいう。)を包含する意味で用いる。「BM」とは、液晶表示装置、プラズマディスプレイ表示装置、EL表示装置、CRT表示装置などの表示装置の周辺部に設けられた黒色の縁や、赤、青、緑の画素間の格子状やストライプ状の黒色の部、さらにTFT遮光のためのドット状や線状の黒色パターン等のことであり、このBMの定義は、例えば、菅野泰平著、「液晶ディスプレイ製造装置用語辞典」、第2版、日刊工業新聞社、1996年、p.64に記載されている。遮光画像の例としては、有機ELディスプレー(例えば、特開2004−103507号公報)、PDPのフロントパネル(例えば、特開2003−51261号公報)、PALCではバックライトの遮光等が挙げられる。
BMは表示コントラストを向上させるため、また薄膜トランジスター(TFT)を用いたアクティブマトリックス駆動方式の液晶表示装置の場合には光による電流リークによる画質低下を防止するため、高い遮光性(光学濃度ODで3以上)が必要である。
【0100】
本発明の遮光画像作製用着色組成物に用いられる形状異方性金属微粒子の平均粒径は、遮光層の透過光学濃度(O.D.)の観点から形状異方性金属微粒子の短軸長が4〜100nmの銀微粒子が好ましく、10から30nmであることがさらに好ましい。
【0101】
本発明においては、形状異方性金属微粒子は、分散されていることが望ましい。分散時における形状異方性金属微粒子の存在状態は特に限定されないが、形状異方性金属微粒子が安定な分散状態で存在していることが好ましく、例えば、コロイド状態であることがより好ましい。コロイド状態の場合には、例えば、形状異方性金属微粒子が実質的に形状異方性の微粒子状態で分散されていることが好ましい。
【0102】
ここで、微粒子溶液の調製時に用いたメルカプト基を有する高分子分散剤をさらに加えてもよく、異なる種類の分散剤を加えてもよい。分散剤としては、チオール基含有化合物、アミノ酸又はその誘導体、ペプチド化合物、多糖類及び多糖類由来の天然高分子、合成高分子及びこれらに由来するゲルなどを用いることができる。
【0103】
ここで用いるチオール基含有化合物の種類は特に限定されず、1個又は2個以上のチオール基を有する化合物であればいかなるものでもよい。チオール基含有化合物としては、例えば、アルキルチオール類(例えば、メチルメルカプタン、エチルメルカプタンなど)、アリールチオール類(例えば、チオフェノール、チオナフトール、ベンジルメルカプタンなど)、アミノ酸又はその誘導体(例えば、システイン、グルタチオンなど)、ペプチド化合物(例えば、システイン残基を含むジペプチド化合物、トリペプチド化合物、テトラペプチド化合物、5以上のアミノ酸残基を含むオリゴペプチド化合物など)、又は蛋白質(例えば、メタロチオネインやシステイン残基が表面に配置された球状蛋白質など)などを挙げることができるが、これらに限定されることはない。
【0104】
分散剤に用いられる高分子類としては、保護コロイド性のあるポリマーでゼラチン、ポリビニルアルコール、メチルセルロース、ヒドロキシプルピルセルロース、ポリアルキレンアミン、ポリアクリル酸の部分アルキルエステル、PVP及びPVP共重合体などがある。分散剤として用いることができるポリマーについては例えば「顔料の事典」(伊藤征司郎編、(株)朝倉書院発行、2000年)に記載されている。
【0105】
また、分散液には、親水性高分子、界面活性剤、防腐剤、又は安定化剤などを適宜配合してもよい。親水性高分子としては、水に溶解でき、希薄状態において実質的に溶液状態を維持できるものであればいかなるものを用いてもよい。例えば、ゼラチン、コラーゲン、カゼイン、フィブロネクチン、ラミニン、エラスチンなどのタンパク質及びタンパク質由来の物質;セルロース、デンプン、アガロース、カラギーナン、デキストラン、デキストリン、キチン、キトサン、ペクチン、マンナンなどの多糖類及び多糖類由来の物質などの天然高分子;ポバール、ポリアクリルアミド、ポリアクリル酸ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、ポリスチレンスルホン酸、ポリアリルアミンなどの合成高分子;又はこれらに由来するゲルなどを用いることができる。ゼラチンを用いる場合には、ゼラチンの種類は特に限定されず、例えば、牛骨アルカリ処理ゼラチン、豚皮膚アルカリ処理ゼラチン、牛骨酸処理ゼラチン、牛骨フタル化処理ゼラチン、豚皮膚酸処理ゼラチンなどを用いることができる。
【0106】
上記界面活性剤としては、アニオン系、カチオン系、ノニオン系、ベタイン系界面活性剤のいずれも使用でき、アニオン系及びノニオン系界面活性剤が特に好ましい。界面活性剤のHLB値は塗布液の溶媒が水系か有機溶剤系かにより一概に言えないが、溶媒が水系の場合は8〜18程度のものが好ましく、有機溶剤系の場合は3〜6程度のものが好ましい。
【0107】
なお、上記HLB値については、例えば「界面活性剤ハンドブック」(吉田時行、進藤信一、山中樹好編、工学図書(株)発行昭和62年)に記載されている。上記界面活性剤の具体例としては、プロピレングリコールモノステアリン酸エステル、プロピレングリコールモノラウリン酸エステル、ジエチレングリコールモノステアリン酸エステル、ソルビタンモノラウリル酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウリル酸エステルなどがある。界面活性剤の例についても前述の「界面活性剤ハンドブック」に記載されている。
【0108】
<顔料>
本発明の着色組成物には、顔料を含有せしめることにより、無彩色の黒を得ることができる。
顔料は一般に有機顔料と無機顔料とに大別されるが、本発明においては有機顔料が好ましい。好適に使用される顔料の例としては、アゾ系顔料、フタロシアニン系顔料、アントラキノン系顔料、ジオキサジン系顔料、キナクリドン系顔料、イソインドリノン系顔料、ニトロ系顔料を挙げることができる。該有機顔料の色相は、例えば黄色顔料、オレンジ顔料、赤色顔料、バイオレット顔料、青色顔料、緑色顔料、ブラウン顔料、黒色顔料等が好ましい。
なお、遮光画像作製用としては、カーボンブラック、チタンブラック、及び黒鉛から選ばれる少なくとも1種が好ましい。
感光性樹脂層に用いられる顔料を、色相別に分けて、以下に列挙するが、これらに限定されるものではない。
【0109】
1)レッド顔料
C.I.ピグメントレッド9、C.I.ピグメントレッド97、C.I.ピグメントレッド122、C.I.ピグメントレッド123、C.I.ピグメントレッド149、C.I.ピグメントレッド168、C.I.ピグメントレッド177、C.I.ピグメントレッド180、C.I.ピグメントレッド192、C.I.ピグメントレッド215、C.I.ピグメントレッド216、C.I.ピグメントレッド217、C.I.ピグメントレッド220、C.I.ピグメントレッド223、C.I.ピグメントレッド224、C.I.ピグメントレッド226、C.I.ピグメントレッド227、C.I.ピグメントレッド228、C.I.ピグメントレッド240、C.I.ピグメントレッド48:1、C.I.ピグメントレッド209、C.I.ピグメントレッド146、C.I.ピグメントレッド11、C.I.ピグメントレッド81、C.I.ピグメントレッド123、C.I.ピグメントレッド213、C.I.ピグメントレッド272、C.I.ピグメントレッド270、C.I.ピグメントレッド255、C.I.ピグメントレッド264、C.I.ピグメントレッド254、C.I.No.12085、C.I.No.12120、C.I.No.12140、C.I.No.12315等の有機顔料
【0110】
2)グリーン顔料
C.I.ピグメント・グリーン7、C.I.ピグメント・グリーン36、C.I.No.42053、C.I.No.42085、C.I.No.42095等の有機顔料
【0111】
3)ブルー顔料
C.I.ピグメント・ブルー15、C.I.ピグメント・ブルー15:1、C.I.ピグメント・ブルー15:4、C.I.ピグメント・ブルー15:6、C.I.ピグメント・ブルー22、C.I.ピグメント・ブルー60、C.I.ピグメント・ブルー64、C.I.No.42052、C.I.No.42090等の有機顔料
【0112】
4)イエロー顔料
Pigment Yellow(ピグメントイエロー) 12(C.I.No.21090)
例)Permanent Yellow(パーマネントイエロー) DHG(クラリアントジャパン(株)製)、Lionol Yellow(リオノールイエロー) 1212B(東洋インキ製造(株)製)、Irgalite Yellow(イルガライトイエロー) LCT(チバ・スペシャルティー・ケミカルズ(株)製)、Symuler Fast Yellow(シムラーファーストイエロー) GTF 219(大日本インキ化学工業(株)製)
Pigment Yellow(ピグメントイエロー) 13(C.I.No.21100)
例)Permanent Yellow(パーマネントイエロー) GR(クラリアントジャパン(株)製)、Lionol Yellow(リオノールイエロー) 1313(東洋インキ製造(株)製)
Pigment Yellow(ピグメントイエロー) 14(C.I.No.21095)
例)Permanent Yellow(パーマネントイエロー) G(クラリアントジャパン(株)製)、Lionol Yellow(リオノールイエロー) 1401−G(東洋インキ製造(株)製)、Seika Fast Yellow(セイカファーストイエロー) 2270(大日精化工業(株)製)、Symuler Fast Yellow(シムラーファーストイエロー) 4400(大日本インキ化学工業(株)製)
Pigment Yellow(ピグメントイエロー) 17(C.I.No.21105)
例)Permanent Yellow(パーマネントイエロー) GG02(クラリアントジャパン(株)製)、Symuler Fast Yellow(シムラーファーストイエロー) 8GF(大日本インキ化学工業(株)製)
Pigment Yellow(ピグメントイエロー) 155
例)Graphtol Yellow(グラフトールイエロー) 3GP(クラリアントジャパン(株)製)
Pigment Yellow(ピグメントイエロー) 180(C.I.No.21290)
例)Novoperm Yellow(ノボパームイエロー) P−HG(クラリアントジャパン(株)製)、PV Fast Yellow(ファーストイエロー) HG(クラリアントジャパン(株)製)
Pigment Yellow(ピグメントイエロー) 139(C.I.No.56298)
例)Novoperm Yellow(ノボパームイエロー) M2R 70(クラリアントジャパン(株)製)
【0113】
C.I.ピグメントイエロー20、C.I.ピグメントイエロー24、C.I.ピグメントイエロー17、C.I.ピグメントイエロー83、C.I.ピグメントイエロー86、C.I.ピグメントイエロー93、C.I.ピグメントイエロー109、C.I.ピグメントイエロー110、C.I.ピグメントイエロー117、C.I.ピグメントイエロー125、C.I.ピグメントイエロー137、C.I.ピグメントイエロー138、C.I.ピグメントイエロー139、C.I.ピグメントイエロー185、C.I.ピグメントイエロー147、C.I.ピグメントイエロー148、C.I.ピグメントイエロー153、C.I.ピグメントイエロー154、C.I.ピグメントイエロー166、C.I.ピグメントイエロー168、C.I.ピグメントイエロー185
【0114】
5)マゼンタ顔料
Pigment Red(ピグメントレッド) 57:1(C.I.No.15850:1)
例)Graphtol Rubine(グラフトールルビン) L6B(クラリアントジャパン(株)製)、Lionol Red(リオノールレッド) 6B−4290G(東洋インキ製造(株)製)、Irgalite Rubine(イルガライトルビン) 4BL(チバ・スペシャルティー・ケミカルズ(株)製)、Symuler Brilliant Carmine(シムラーブリリアントカーミン) 6B−229(大日本インキ化学工業(株)製)
Pigment Red(ピグメントレッド) 122(C.I.No.73915)
例)Hosterperm Pink(ホスターパームピンク) E(クラリアントジャパン(株)製)、Lionogen Magenta(リオノゲンマゼンタ) 5790(東洋インキ製造(株)製)、Fastogen Super Magenta(ファストゲンスーパーマゼンタ) RH(大日本インキ化学工業(株)製)
Pigment Red(ピグメントレッド) 53:1(C.I.No.15585:1)
例)Permanent Lake Red(パーマネントレイクレッド) LCY(クラリアントジャパン(株)製)、Symuler Lake Red(シムラーレイクレッド) C conc(大日本インキ化学工業(株)製)
Pigment Red(ピグメントレッド) 48:1(C.I.No.15865:1)
例)Lionol Red(リオノールレッド) 2B 3300(東洋インキ製造(株)製)、Symuler Red(シムラーレッド) NRY(大日本インキ化学工業(株)製)
Pigment Red(ピグメントレッド) 48:2(C.I.No.15865:2)
例)Permanent Red(パーマネントレッド) W2T(クラリアントジャパン(株)製)、Lionol Red(リオノールレッド) LX235(東洋インキ製造(株)製)、Symuler Red(シムラーレッド) 3012(大日本インキ化学工業(株)製)
Pigment Red(ピグメントレッド) 48:3(C.I.No.15865:3)
例)Permanent Red(パーマネントレッド) 3RL(クラリアントジャパン(株)製)、Symuler Red(シムラーレッド) 2BS(大日本インキ化学工業(株)製)
Pigment Red(ピグメントレッド) 177(C.I.No.65300)
例)Cromophtal Red(クロモフタルレッド) A2B(チバ・スペシャルティー・ケミカルズ(株)製)
【0115】
6)シアン顔料
Pigment Blue(ピグメントブルー) 15(C.I.No.74160)
例)Lionol Blue(リオノールブルー) 7027(東洋インキ製造(株)製)、Fastogen Blue(ファストゲンブルー) BB(大日本インキ化学工業(株)製)
Pigment Blue(ピグメントブルー) 15:1(C.I.No.74160)
例)Hosterperm Blue(ホスターパームブルー) A2R(クラリアントジャパン(株)製)、Fastogen Blue(ファストゲンブルー) 5050(大日本インキ化学工業(株)製)
Pigment Blue(ピグメントブルー) 15:2(C.I.No.74160)
例)Hosterperm Blue(ホスターパームブルー) AFL(クラリアントジャパン(株)製)、Irgalite Blue(イルガライトブルー) BSP(チバ・スペシャルティー・ケミカルズ(株)製)、Fastogen Blue(ファストゲンブルー) GP(大日本インキ化学工業(株)製)
Pigment Blue(ピグメントブルー) 15:3(C.I.No.74160)
例)Hosterperm Blue(ホスターパームブルー) B2G(クラリアントジャパン(株)製)、Lionol Blue(リオノールブルー) FG7330(東洋インキ製造(株)製)、Cromophtal Blue(クロモフタルブルー) 4GNP(チバ・スペシャルティー・ケミカルズ(株)製)、Fastogen Blue(ファストゲンブルー) FGF(大日本インキ化学工業(株)製)
Pigment Blue(ピグメントブルー) 15:4(C.I.No.74160)
例)Hosterperm Blue(ホスターパームブルー) BFL(クラリアントジャパン(株)製)、Cyanine Blue(シアニンブルー) 700−10FG(東洋インキ製造(株)製)、Irgalite Blue(イルガライトブルー) GLNF(チバ・スペシャルティー・ケミカルズ(株)製)、Fastogen Blue(ファストゲンブルー) FGS(大日本インキ化学工業(株)製)
Pigment Blue(ピグメントブルー) 15:6(C.I.No.74160)
例)Lionol Blue(リオノールブルー) ES(東洋インキ製造(株)製)
Pigment Blue(ピグメントブルー) 60(C.I.No.69800)
例)Hosterperm Blue(ホスターパームブルー) RL01(クラリアントジャパン(株)製)、Lionogen Blue(リオノゲンブルー) 6501(東洋インキ製造(株)製)
【0116】
7)ブラウン、ブラック顔料
C.I.ピグメントブラウン23、C.I.ピグメントブラウン25、C.I.ピグメントブラウン26、 Pigment Black(ピグメントブラック) 7(カーボンブラック C.I.No.77266)、TiO、TiO、TiNやこれらの混合物、黒鉛
例)三菱カーボンブラック MA100(三菱化学(株)製)、三菱カーボンブラック #5(三菱化学(株)製)、Black Pearls(ブラックパールズ) 430(Cabot Co.(キャボット社)製)、三菱マテリアルズ(株)製 12S、12M
【0117】
8)オレンジ顔料
C.I.ピグメントオレンジ36、C.I.ピグメントオレンジ43、C.I.ピグメントオレンジ51、C.I.ピグメントオレンジ55、C.I.ピグメントオレンジ59、C.I.ピグメントオレンジ61、C.I.ピグメントオレンジ
【0118】
9)バイオレット顔料
C.I.ピグメントバイオレット19、C.I.ピグメントバイオレット23、C.I.ピグメントバイオレット29、C.I.ピグメントバイオレット30、C.I.ピグメントバイオレット37、C.I.ピグメントバイオレット40、C.I.ピグメントバイオレット50
また、本発明で用いることのできる顔料としては、「顔料便覧、日本顔料技術協会編、誠文堂新光社、1989」、「COLOUR INDEX、THE SOCIETY OF DYES & COLOURIST、THIRD EDITION、1987」などを参照して適宜商品を選択できる。
【0119】
本発明においては、上記顔料の中でも、フタロシアニン系顔料が好ましく、例えば、C.I.ピグメントイエロー138、C.I.ピグメントイエロー139、C.I.ピグメントイエロー150、C.I.ピグメントイエロー185、C.I.ピグメントイエロー83等の酸性基を有する顔料が好ましい。特に好ましいものとしては、C.I.ピグメントイエロー138、C.I.ピグメントイエロー139、C.I.ピグメントイエロー150、C.I.ピグメントイエロー185、C.I.ピグメントイエロー83、C.I.ピグメントレッド254、C.I.ピグメントグリーン36、C.I.ピグメントブルー15、カーボンブラック等が挙げられる。
【0120】
顔料は、異方性金属微粒子の色相と補色関係にあるものを用いることが望ましい。また、顔料は1種でも2種以上を組み合せて用いてもよい。好ましい顔料の組合わせとしては、赤色系及び青色系の互いに補色関係にある顔料混合物と黄色系及び紫色系の互いに補色関係にある顔料混合物との組合せや、上記の混合物に更に黒色の顔料を加えた組み合わせや、青色系と紫色系と黒色系との顔料の組合せを挙げることができる。遮光層の顔料の含有量は、1〜70質量%の範囲が好ましく、1〜40質量%の範囲、更に1〜20質量%の範囲が好ましい。
【0121】
顔料は、遮光画像作製用着色組成物中に均一に分散されていることが好ましい。顔料の平均粒径は、5μm以下が好ましく、特に1μm以下が好ましく、更にカラーフィルター用としては0.5μm以下が好ましい。
【0122】
<感光性遮光画像作製用着色組成物>
本発明の遮光画像作製用着色組成物は感光性を有することが好ましい。感光性樹脂組成物を添加することで本発明の遮光画像作製用着色組成物に感光性を付与することができる。上記感光性樹脂組成物は、アルカリ可溶性バインダーポリマー、光重合開始剤、及びエチレン性不飽和二重結合を有する光の照射によって付加重合するモノマー(以下「光重合性モノマー」という場合がある。)等を含有する。
【0123】
上記感光性樹脂組成物は、アルカリ水溶液現像可能なものと、有機溶剤で現像可能なものとがある。安全性と現像液のコストとの点からは、アルカリ水溶液現像可能なものが好ましい。
上記感光性樹脂組成物は、光や電子線などの放射線を受容する部分が硬化するネガ型でも放射線未受容部が硬化するポジ型でもよい。
【0124】
上記ポジ型感光性樹脂組成物にはノボラック系の樹脂を用いたものが挙げられる。例えば、特開平7−43899号公報記載のアルカリ可溶性ノボラック樹脂系を使用することができる。また、特開平6−148888号公報記載の、ポジ型感光性樹脂層、即ち、該公報記載のアルカリ可溶性樹脂と感光剤として1,2−ナフトキノンジアジドスルホン酸エステルと該公報記載の熱硬化剤の混合物を含む感光性樹脂層を用いる事ができる。さらに、特開平5−262850号公報記載の組成物も活用可能である。
【0125】
ネガ型感光性樹脂組成物としては、ネガ型ジアゾ樹脂とバインダーからなる感光性樹脂、光重合性組成物、アジド化合物とバインダーとからなる感光性樹脂組成物、桂皮酸型感光性樹脂組成物等が挙げられる。その中でも特に好ましいのは光重合開始剤、光重合性モノマー及びバインダーを基本構成要素として含む光重合性組成物である。該光重合性組成物には、特開平11−133600号公報記載の「重合性化合物B」「重合開始剤C」「界面活性剤」「接着助剤」や、その他の組成物が利用できる。
例えば、ネガ型感光性樹脂組成物で、アルカリ水溶液現像可能な感光性樹脂組成物は、主成分としてカルボン酸基含有のバインダー(前述のアルカリ可溶な熱可塑性樹脂等のアルカリ可溶性バインダー)と光重合開始剤と光の照射によって付加重合することのできるエチレン性不飽和二重結合含有モノマー(以下「光重合性モノマー」という場合がある。)とを含んでいる。
【0126】
上記アルカリ可溶性バインダーとしては、側鎖にカルボン酸基を有するポリマー、例えば、特開昭59−44615号公報、特公昭54−34327号公報、特公昭58−12577号公報、特公昭54−25957号公報、特開昭59−53836号公報、及び特開昭59−71048号公報に記載されているようなメタクリル酸共重合体、アクリル酸共重合体、イタコン酸共重合体、クロトン酸共重合体、マレイン酸共重合体、部分エステル化マレイン酸共重合体などを挙げることができる。また側鎖にカルボン酸基を有するセルロース誘導体も挙げることができる。この他にも水酸基を有するポリマーに環状酸無水物を付加したものも好ましく使用することができる。特に、米国特許第4139391号明細書に記載のベンジル(メタ)アクリレートと(メタ)アクリル酸の共重合体やベンジル(メタ)アクリレートと(メタ)アクリル酸と他のモノマーとの多元共重合体も挙げることができる。
【0127】
上記アルカリ可溶性バインダーポリマーは、30〜400mgKOH/gの範囲の酸価と1000〜300000の範囲の重量平均分子量を有するものを選択して使用するのが好ましい。以上の他に、種々の性能、例えば、硬化膜の強度を改良するために、現像性等に悪影響を与えない範囲で、アルカリ不溶性のポリマーを添加してもよい。これらのアルカリ可溶なバインダーポリマーとしては、アルコール可溶性ナイロンあるいはエポキシ樹脂を挙げることができる。
【0128】
上記アルカリ可溶性バインダーポリマーは、感光性樹脂組成物の全固形分に対して通常、10〜95質量%、さらに20〜90質量%が好ましい。10〜95質量%の範囲では、感光性樹脂層の粘着性が高すぎることもなく、形成される層の強度及び光感度が劣ることもない。
【0129】
上記光重合開始剤としては、米国特許第2367660号明細書に開示されているビシナルポリケタルドニル化合物、米国特許第2448828号明細書に記載されているアシロインエーテル化合物、米国特許第2722512号明細書に記載のα−炭化水素で置換された芳香族アシロイン化合物、米国特許第3046127号及び同第2951758号の各明細書に記載の多核キノン化合物、米国特許第3549367号明細書に記載のトリアリールイミダゾール二量体とp−アミノケトンの組合せ、特公昭51−48516号公報に記載のベンゾチアゾール化合物とトリハロメチル−s−トリアジン化合物、米国特許第4239850号明細書に記載されているトリハロメチル−s−トリアジン化合物、米国特許第4212976号明細書に記載されているトリハロメチルオキサジアゾール化合物等が挙げられる。特に好ましくはトリハロメチル−s−トリアジン、トリハロメチルオキサジアゾール、トリアリールイミダゾール二量体である。
また、この他、特開平11−133600号公報に記載の「重合開始剤C」も好適なものとして挙げることができる。
これらの光重合開始剤又は光重合開始剤系は、単独でも、二種類以上を混合して用いてもよく、特に二種類以上を用いることが好ましい。また、感光性樹脂組成物の全固形分に対する光重合開始剤の含有量は、0.5〜20質量%が一般的であり、1〜15質量%が好ましい。
【0130】
露光感度が高く、黄ばみなどの着色が少なく、表示特性の良い例としては、ジアゾール系光重合開始剤と、トリアジン系光重合開始剤の組み合わせが挙げられ、中でも、2−トリクロロメチル5−(p−スチリルメチル)−1,3,4−オキサジアゾールと、2,4−ビス(トリクロロメチル)−6−[4−(N,N−ジエトキンカルボニルメチル)−3−プロモフェニル]−s−トリアジンの組み合わせが最も良い。
これらの光重合開始剤の比率は、ジアゾール系/トリアジン系の質量比率で、好ましくは95/5から20/80、より好ましくは90/10から30/70、最も好ましくは80/20から60/40である。
これらの光重合開始剤は、特開平1−152449号公報、特開平1−254918号公報、特開平2−153353号公報に記載されている。
さらに、好適な例としてはベンゾフェノン系も挙げられる。
【0131】
遮光画像作製用着色組成物の固形分全体に占める顔料の割合が15から25質量%付近の場合、上記光重合開始剤に、クマリン系化合物を混合することによっても、同様の効果が得られる。クマリン系化合物としては、7−[2−[4−(3−ヒドロキシメチルビペリジノ)−6−ジエチルアミノ]トリアジニルアミノ]−3−フェニルクマリンが最も良い。
これらの光重合開始剤とクマリン系化合物の比率は、光重合開始剤/クマリン系化合物の質量比率で、好ましくは20/80から80/20、より好ましくは30/70から70/30、最も好ましくは40/60から60/40である。
ただし、本発明に使用できる光重合性組成物はこれらに限定されるものではなく、公知のものの中から適宜選択することできる。
【0132】
上記光重合開始剤は、感光性樹脂組成物の全固形分に対して、0.5〜20質量%が一般的であり、1〜15質量%が好ましい。上記含有量が上記範囲内であると、光感度や画像の強度が低下を防止でき、十分に性能を向上させることができる。
【0133】
上記光重合性モノマーとしては、沸点が常圧で100℃以上の化合物を挙げることができる。例えば、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート及びフェノキシエチル(メタ)アクリレート等の単官能(メタ)アクリレート;ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパンジアクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(アクリロイルオキシプロピル)エーテル、トリ(アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、トリ(アクリロイルオキシエチル)シアヌレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンもしくはグリセリン等の多官能アルコールにエチレンオキシドやプロピレンオキシドを付加反応させた後で(メタ)アクリレート化したもの等の多官能(メタ)アクリレートを挙げることができる。
【0134】
さらに、特公昭48−41708号、同50−6034号、特開昭51−37193号の各公報に開示されているウレタンアクリレート類、特開昭48−64183号、特公昭49−43191号、同52−30490号の各公報に開示されているポリエステルアクリレート類、エポキシ樹脂と(メタ)アクリル酸の反応生成物であるエポキシアクリレート類等の多官能アクリレートやメタクリレートを挙げることができる。これらの中で、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレートが好ましい。上記光重合性モノマーは、単独でも2種類以上を混合して用いてもよい。上記光重合性モノマーの感光性樹脂組成物の全固形分に対する含有量は、5〜50質量%が一般的であり、10〜40質量%が好ましい。上記含有量が上記範囲内にあると光感度や画像の強度も低下せず、感光性遮光層の粘着性が過剰になることもない。
【0135】
上記感光性樹脂組成物は、上記成分の他に更に熱重合防止剤を含むことが好ましい。上記熱重合防止剤の例としては、例えば、ハイドロキノン、p−メトキシフェノール、p−t−ブチルカテコール、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、β−ナフトール、ピロガロール等の芳香族ヒドロキシ化合物、ベンゾキノン、p−トルキノン等のキノン類、ナフチルアミン、ピリジン、p−トルイジン、フェノチアジン等のアミン類、N−ニトロソフェニルヒドロキシルアミンのアルミニウム塩又はアンモニウム塩、クロラニール、ニトロベンゼン、4,4’−チオビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2−メルカプトベンズイミダゾール等が挙げられる。
【0136】
上記感光性樹脂組成物は、更に必要に応じて公知の添加剤、例えば、可塑剤、界面活性剤、密着促進剤、分散剤、可塑剤、垂れ防止剤、レベリング剤、消泡剤、難燃化剤、光沢剤、溶剤等を添加することができる。
【0137】
上記密着促進剤としては、例えばアルキルフェノール/ホルムアルデヒドノボラック樹脂、ポロビニルエチルエーテル、ポリビニルイソブチルエーテル、ポリビニルブチラール、ポリイソブチレン、スチレン−ブタジエン共重合体ゴム、ブチルゴム、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ゴム、アクリル樹脂系粘着剤、芳香族系、脂肪族系又は脂環族系の石油樹脂、シランカップリング剤等が挙げられる。
【0138】
また、本発明における形状異方性金属微粒子を銀コロイドのように水分散物として用いる場合には、上記感光性樹脂組成物として水系のもの用いることが必要である。このような感光性樹脂組成物としては特開平8−271727号公報の段落[0015]ないし[0023]に記載のものの他、市販のものとしては例えば、東洋合成工業(株)製の「SPP−M20」等が挙げられる。
【0139】
本発明の遮光画像作製用着色組成物(感光性のものを含む)を用いてブラックマトリックスを形成することで、薄膜でかつ光学濃度が高いブラックマトリックスを作製することができる。
【0140】
[遮光画像作製用感光性転写材料]
本発明においては、上記の感光性を有する遮光画像作製用着色組成物を用いて、遮光画像作製用感光性転写材料を作製し、これを用いてブラックマトリックス等の遮光画像を作製することができる。
上記感光性転写材料は、支持体上に少なくとも上記の感光性を有する遮光画像作製用着色組成物を用いて形成した感光性遮光層を設けたものであり、必要に応じて熱可塑性樹脂層、中間層、又は保護層等を設けることができる。
上記感光性遮光層の膜厚は0.2〜2μmの範囲が好ましく、特に0.2〜0.9μmの範囲が好ましい。
【0141】
<支持体>
本発明における支持体としては、ポリエステル、ポリスチレン等の公知の支持体を用いることができる。中でも2軸延伸したポリエチレンテレフタレートはコスト、耐熱性、寸法安定性の観点から好ましい。上記支持体の厚みは15〜200μm程度、より好ましくは30〜150μm程度が好ましい。上記支持体の厚みが上記範囲内にあると、ラミネーション工程時に熱によりトタン板状のしわが発生するのを効果的に抑制することができ、コスト上も有利である。
また上記支持体には必要に応じて特開平11−149008号公報に記載されている導電性層を設けてもよい。
【0142】
(熱可塑性樹脂層)
また、支持体と感光性遮光層、又は支持体と中間層の間に、アルカリ可溶性の熱可塑性樹脂層を設けることが好ましい。
上記熱可塑性樹脂層は、下地表面の凹凸(既に形成されている画像などによる凹凸等も含む)を吸収することができるようにクッション材としての役割を担うものであるため、当該凹凸に応じて変形しうる性質を有していることが好ましい。
【0143】
アルカリ可溶な熱可塑性樹脂層に含まれる樹脂としては、エチレンとアクリル酸エステル共重合体とのケン化物、スチレンと(メタ)アクリル酸エステル共重合体とのケン化物、ビニルトルエンと(メタ)アクリル酸エステル共重合体とのケン化物、ポリ(メタ)アクリル酸エステル、及び(メタ)アクリル酸ブチルと酢酸ビニル等との(メタ)アクリル酸エステル共重合体等のケン化物、等より選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。さらに「プラスチック性能便覧」(日本プラスチック工業連盟、全日本プラスチック成形工業連合会編著、工業調査会発行、1968年10月25日発行)による有機高分子のうちアルカリ水溶液に可溶なものを使用することもできる。また、これらの熱可塑性樹脂のうち、軟化点が80℃以下のものが好ましい。尚、本願明細書において、「(メタ)アクリル酸」とは、アクリル酸及びメタクリル酸を総称し、その誘導体の場合も同様である。
【0144】
上記アルカリ可溶な熱可塑性樹脂層に含まれる樹脂の中でも、重量平均分子量5万〜50万(Tg=0〜140℃)の範囲で、更に好ましくは重量平均分子量6万〜20万(Tg=30〜110℃)の範囲で選択して使用することができる。これらの樹脂の具体例としては、特公昭54−34327号、特公昭55−38961号、特公昭58−12577号、特公昭54−25957号、特開昭61−134756号、特公昭59一44615号、特開昭54−92723号、特開昭54−99418号、特開昭54−137085号、特開昭57−20732号、特開昭58−93046号、特開昭59−97135号、特開昭60−159743号、特開昭60−247638号、特開昭60−208748号、特開昭60−214354号、特開昭60−230135号、特開昭60−258539号、特開昭61−169829号、特開昭61−213213号、特開昭63−147159号、特開昭63−213837号、特開昭63−266448号、特開昭64−55551号、特開昭64一55550号、特開平2−191955号、特開平2−199403号、特開平2−199404号、特開平2−208602号、特願平4一39653号の各公報明細書に記載されているアルカリ水溶液に可溶な樹脂を挙げることができる。特に好ましいのは、特開昭63−147159号明細書に記載されたメタクリル酸/2一エチルヘキシルアクリレート/ベンジルメタクリレート/メチルメタクリレート共重合体である。
【0145】
また、上記した種々の樹脂の中から、好ましくは重量平均分子量3千〜3万(Tg=30〜170℃)の範囲で、更に好ましくは重量平均分子量4千〜2万(Tg=60〜140℃)の範囲で選択して使用することができる。これらの好ましい具体例は、上記の特許明細書に記載されているものの中から選ぶことができるが、特に好ましくは、特公昭55−38961号、特開平5−241340号の各公報に記載のスチレン/(メタ)アクリル酸共重合体が挙げられる。
【0146】
また、上記熱可塑性樹脂層には、熱可塑性樹脂層と支持体との接着力を調節するために、各種可塑剤、各種ポリマー、過冷却物質、密着改良剤、界面活性剤、又は離型剤等を加えることが可能である。好ましい可塑剤の具体例としては、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ジオクチルフタレート、ジヘプチルフタレート、ジブチルフタレート、トリクレジルフォスフェート、クレジルジフェニルフォスフェート、ビフェニルジフェニルフォスフェート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、エポキシ樹脂とポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレートとの付加反応生成物、有機ジイソシアナートとポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレートとの付加反応生成物、有機ジイソシアナートとポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレートとの付加反応生成物、ビスフェノールAとポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレートとの縮合反応生成物等を挙げることができる。上記熱可塑性樹脂層中の可塑剤の量は、該熱可塑性樹脂に対して、200質量%以下が一般的で、好ましくは20〜100質量%である。また、アルカリ可溶な熱可塑性樹脂層の厚みは6μm以上が好ましい。熱可塑性樹脂の厚みが6μm以上であれば、下地表面の凹凸を完全に吸収することができる。また、上限については、現像性、製造適性から約100μm以下が一般的であり、好ましくは約50μm以下である。
【0147】
本発明において、熱可塑性樹脂層を形成する際に用いる塗布液の溶媒としてはこの層を構成する樹脂を溶解するものであれば特に制限なく使用できる。上記溶媒としては、例えばメチルエチルケトン、シクロヘキサノン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、n−プロパノール、i−プロパノール等が挙げられる。
【0148】
(中間層)
本発明の感光性転写材料は、仮支持体と感光性遮光層との間に中間層を設けてもよい。
中間層を構成する樹脂としてはアルカリ可溶であれば特に制限はない。該樹脂の例としては、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリビニルピロリドン系樹脂、セルロース系樹脂、アクリルアミド系樹脂、ポリエチレンオキサイド系樹脂、ゼラチン、ビニルエーテル系樹脂、ポリアミド樹脂、及びこれらの共重合体を挙げる事ができる。またポリエステルのように通常はアルカリ可溶性でない樹脂にカルボキシル基やスルホン酸基を持つモノマーを共重合した樹脂も用いる事ができる。
これらの中で好ましいものはポリビニルアルコールである。ポリビニルアルコールとしては鹸化度が80%以上のものが好ましく、83から98%のものがより好ましい。
【0149】
中間層を構成する樹脂は2種類以上を混合して使用することが好ましく、特にポリビニルアルコールとポリビニルピロリドンとを混合して用いることが特に好ましい。両者の質量比はポリビニルピロリドン/ポリビニルアルコール=1/99〜75/25、さらに好ましくは10/90〜50/50の範囲が好ましい。上記質量比が上記の範囲内にあると中間層の面状が良好であり、その上に塗設した感光性遮光層との密着性がよく、さらに、酸素遮断性が低下して感度が低下するのを防止することができる。
【0150】
上記中間層には必要に応じて界面活性剤などの添加剤を添加してもよい。
上記中間層の厚みは0.1〜5μm、さらに好ましくは0.5〜3μmの範囲が好ましい。中間層の厚みが上記範囲内にあると、酸素遮断性を低下させることなく、また、現像時の中間層除去時間が増大するのを防止することができる。
中間層の塗布溶媒としては上記の樹脂が溶解すれば、特にその他の制限はないが、水が好ましい。水に前述の水混和性有機溶剤を混合した混合溶媒も好ましい。好ましい具体例としては次のようなものがある。水、水/メタノール=90/10、水/メタノール=70/30、水/メタノール=55/45、水/エタノール=70/30、水/1−プロパノール=70/30、水/アセトン=90/10、水/メチルエチルケトン=95/5(ただし比は質量比を表す。)。
【0151】
<感光性転写材料の作製>
本発明の感光性転写材料を作製するには、支持体に、本発明の感光性を有する遮光画像作製用着色組成物の溶液を、例えば、スピナー、ホワイラー、ローラーコーター、カーテンコーター、ナイフコーター、ワイヤーバーコーター、エクストルーダー等の塗布機を用いて塗布・乾燥させることにより形成することができる。アルカリ可溶性熱可塑性樹脂の層を設ける場合にも同様にして形成することができる。
【0152】
本発明の感光性転写材料は、上述のごとき感光性の本発明の遮光画像作製用着色組成物を用いて感光性遮光層を設けているため、薄膜でかつ光学濃度が高い遮光層を作製することができる。
【0153】
[遮光画像の作製方法]
本発明の遮光画像は、上記着色組成物又は感光性転写材料を用いて形成した遮光層をパターニングすることにより作製される。遮光層の膜厚は0.2〜2.0μm程度、好ましくは0.9μm以下である。本発明の遮光層は金属微粒子及び顔料微粒子を分散させたものであるため、上記のごとき薄膜でも十分な光学濃度(3.5以上)を発揮することができる。
【0154】
また、本発明の遮光画像作製用着色組成物を用いて遮光画像を作製する(パターンニングする)方法は特に限定はない。以下にブラックマトリックスのパターン形成方法の例を挙げる。
【0155】
第1の方法は、まず、形状異方性金属微粒子を含有し、感光性を有する本発明の遮光画像作製用着色組成物を基板に塗布して形状異方性金属微粒子含有した感光性遮光層を形成する。その後、露光現像によりパターン以外の部分の遮光層を除却することによりパターン形成を行い遮光画像を得る方法である。また、上述の中間層と同組成の層を上記感光性遮光層上に形成して保護層とすることもできる。この場合、塗布液の塗布は、スピンコート法によっておこなうのが好ましい。
【0156】
第2の方法は、まず、金属微粒子を含有し、非感光性の本発明の遮光画像作製用着色組成物を基板に塗布して金属微粒子を含有した遮光層を形成する。その後、該遮光層上に感光性レジスト液を塗布してレジスト層を形成する。次いで露光によりレジスト層を露光現像してレジスト層にパターンを形成した後、このパターンに応じて遮光層の非パターン部を溶解し、遮光層にパターンを形成する。最後にレジスト層を除却して、遮光画像を作製する方法である。
【0157】
第3の方法は、予め基板上のパターン以外の部分に塗布層を形成しておき、この上に形状異方性金属微粒子を含有し、非感光性の本発明の遮光画像作製用着色組成物を塗布して微粒子含有層を含有した遮光層を形成する。次いで、始めに形成した塗布層を上の遮光層とともに除却し、遮光画像が作製される。
【0158】
上記感光性転写材料を用いる遮光画像の作製方法としては、光透過性基板の上に、上記感光性転写材料を、感光性転写材料の感光性遮光層が接触するように配置して積層する。次に、感光性転写材料と光透過性基板との積層体から支持体を剥離し、その後、遮光画像用フォトマスクを介して上記層を露光した後現像して遮光画像を形成する方法である。
この遮光画像の製造方法は、煩瑣な工程をおこなうことを必要とせず、低コストである。
【0159】
(補助層)
本発明における補助層とは、以下に記述するいずれかの1以上の機能を有する層であり、耐衝撃性、耐薬品性、耐溶剤性の観点から、遮光画像層中に設けることが好ましい。
【0160】
1.基板と、本発明における樹脂層(光吸収層)との間の密着力を増すために、この界面に形成される層
2.基板と本発明における樹脂層との間、又は本発明における樹脂層と本発明における別の樹脂層との間に設けられ界面での反射を防止する層
3.光反射層と光吸収層との間の密着力を増すために、この界面に設けられる層
4.本発明における樹脂層上を保護するために設けられる層
5.本発明における樹脂層をフォトリソ法によりパターニングするために設けられる層
【0161】
本発明における補助層を用いた具体的な層構成の例としては、基板側より、遮光画像層/補助層、補助層/遮光画像層/補助層などが挙げられるが、特に限定されるものではない。
【0162】
(補助層用感光性樹脂組成物)
補助層用感光性樹脂組成物は、感光性樹脂組成物の記載成分以外に、必要に応じて、更に、黒色又は黒色以外の顔料、黒色又は黒色以外の染料、重合防止剤(禁止剤)、その他の界面活性剤、などを添加することができる。
前記顔料を用いる場合には、着色感光性樹脂組成物中に均一に分散されていることが望ましく、そのため粒径が0.1μm以下、特には0.08μm以下であることが好ましい。
上記黒色又は黒色以外の、顔料及び染料としては、ビクトリア・ピュアーブルーBO(C.I.42595)、オーラミン(C.I.41000)、ファット・ブラックHB(C.I.26150)、モノライト・エローGT(C.I.ピグメント・エロー12)、パーマネント・エローGR(C.I.ピグメント・エロー17)、パーマネント・エローHR(C.I.ピグメント・エロー83)、パーマネント・カーミンFBB(C.I.ピグメント・レッド146)、ホスターバームレッドESB(C.I.ピグメント・バイオレット19)、パーマネント・ルビーFBH(C.I.ピグメント・レッド11)ファステル・ピンクBスプラ(C.I.ピグメント・レッド81)モナストラル・ファースト・ブルー(C.I.ピグメント・ブルー15)、モノライト・ファースト・ブラックB(C.I.ピグメント・ブラック1)及びカーボン、C.I.ピグメント・レッド97、C.I.ピグメント・レッド122、C.I.ピグメント・レッド149、C.I.ピグメント・レッド168、C.I.ピグメント・レッド177、C.I.ピグメント・レッド180、C.I.ピグメント・レッド192、C.I.ピグメント・レッド215、C.I.ピグメント・グリーン7、C.I.ピグメント・ブルー15:1、C.I.ピグメント・ブルー15:4、C.I.ピグメント・ブルー22、C.I.ピグメント・ブルー60、C.I.ピグメント・ブルー64、C.I.ピグメント・バイオレット23、C.I.ピグメント・ブルー15:6、C.I.ピグメント・イエロー139、C.I.ピグメント・レッド254、C.I.ピグメント・グリーン36、C.I.ピグメント・イエロー138等が挙げられる。
こうして得られた感光性樹脂組成物を塗布液として、基板や仮支持体に塗布し乾燥して、反射防止層を含む感光性樹脂層が形成され、その後の工程を経て、本発明における遮光画像が形成される。
【0163】
<カラーフィルター>
本発明のカラーフィルターは、光透過性基板の上に、着色層からなり、互いに異なる色を呈する2以上の画素群を有し、上記画素群を構成する各画素は互いにブラックマトリックスにより離画されている構成を有し、上記ブラックマトリックスは、本発明の上記遮光画像作製用着色組成物又は感光性転写材料を用いて作製される。上記画素群は2つでも、3つでも4つ以上でもよい。例えば3つの場合は赤(R)、緑(G)及び青(B)の3つの色相が用いられる。赤、緑、青の3種の画素群を配置する場合は、モザイク型、トライアングル型等の配置が好ましく、4種以上の画素群を配置する場合ではどのような配置であってもよい。
【0164】
上記光透過性基板としては、表面に酸化珪素皮膜を有するソーダガラス板、低膨張ガラス板、ノンアルカリガラス板、石英ガラス板等の公知のガラス板あるいはプラスチックフィルム等が用いられる。
カラーフィルターを作製するには、光透過性の基板に常法により2以上の画素群を形成した後、上記のようにしてブラックマトリックスを形成してもよいし、或いは、最初にブラックマトリックスを形成し、その後2以上の画素群を形成してもよい。
本発明のカラーフィルターは上述のごときブラックマトリックスを備えているため、表示コントラストが高くまた平坦性に優れている。
【0165】
[液晶表示素子]
本発明の遮光画像作製用着色組成物は、液晶表示素子に好適に用いることもできる。液晶表示素子の一つとしては、少なくとも1つが光透過性の1対の基板の間に、カラーフィルター、液晶層及び液晶駆動手段(単純マトリックス駆動方式及びアクティブマトリックス駆動方式を含む)を少なくとも備えたものが挙げられる。上記カラーフィルターとして、上記のごとき複数の画素群を有し、上記画素群を構成する各画素が、互いに本発明によるブラックマトリックスにより離画されているカラーフィルターを用いることができる。上記カラーフィルターは平坦性が高いため、このカラーフィルターを備える液晶表示素子は、カラーフィルターと基板との間にセルギャップムラが発生せず、色ムラ等の表示不良が発生することがない。
【0166】
また、上記液晶表示素子の別の態様としては、少なくとも1つが光透過性の1対の基板の間に、カラーフィルター、液晶層及び液晶駆動手段を少なくとも備え、上記液晶駆動手段がアクティブ素子(例えばTFT)を有し、かつ各アクティブ素子の間に本発明の遮光画像作製用着色組成物又は感光性転写材料を用いて作製されるブラックマトリックスが形成されているものである。
【0167】
上記液晶表示素子に用いることのできる液晶としては、ネマチック液晶、コレステリック液晶、スメクチック液晶、強誘電液晶が挙げられる。
【0168】
<遮光画像付き基板>
本発明の遮光画像付き基板は、光透過性基板の上に遮光画像作製用着色組成物から形成された遮光層を前記のようにしてパターニングすることにより作製される。
【0169】
また、上記遮光画像付き基板は、カラーフィルターの作製のために用いることができる。
この遮光画像付き基板(ブラックマトリックス基板)における遮光画像の膜厚は0.2〜2.0μmが好ましく、特に0.2〜0.9μmが好ましい。上記ブラックマトリックス基板における遮光層は形状異方性金属微粒子を分散させたものであるため、上記のごとき薄膜でも十分な光学濃度を有する。
【0170】
本発明の遮光画像付き基板は、テレビ、パーソナルコンピュータ、液晶プロジェクター、ゲーム機、携帯電話などの携帯端末、デジタルカメラ、カーナビなどの用途に特に制限無く適用できる。
【0171】
<液晶表示素子、液晶表示装置>
本発明の液晶表示素子は、既述の本発明の遮光膜付き基板を用いて構成されたものである。本発明の遮光膜付き基板、詳細には、既述した本発明の微粒子含有組成物、表示装置用着色膜形成用インク、又は遮光材料を用いてなる遮光膜で構成されるので、高温環境に曝されることに伴う色味変化が少なく、色相が良好で高い光学濃度を有しており、表示画像のコントラストが高く、良好な表示品質の画像表示が可能である。
【0172】
液晶表示素子は、本発明の遮光膜付き基板を備えた液晶表示素子であれば、特に限定されるものではなく、公知の液晶表示素子の構成要素を更に用いて構成することができる。例えば、カラーフィルタ基板及びこれと対向配置された光透過性の基板と、これら基板間に設けられた液晶層と、液晶層の液晶を駆動する液晶駆動手段(単純マトリックス駆動方式及びアクティブマトリックス駆動方式を含む。)とを備え、カラーフィルタ基板として既述の本発明のカラーフィルタを用いた構成とすることができる。
【0173】
本発明の液晶表示装置は、本発明の液晶表示素子を用いて構成されたものである。本発明の液晶表示素子、詳細には、既述した本発明の遮光膜付き基板(本発明の微粒子含有組成物、表示装置用着色膜形成用インク、又は遮光材料)を用いて構成されるので、高温環境に曝されることに伴なう色味変化が少なく、色相が良好で高い光学濃度を有しており、表示画像のコントラストが高く、良好な表示品質の画像表示が可能である。
【0174】
本発明の液晶表示装置は、本発明の液晶表示素子を用いて作製した装置であれは、特に限定されるものではなく、公知の液晶表示装置の構成要素を更に用いて構成することができる。
なお、カラーTFT方式の液晶表示装置については、例えば「カラーTFT液晶ディスプレイ(共立出版(株)1996年発行)」に記載されている。
【0175】
本発明における遮光画像はこれらの公知の部材で構成される液晶表示装置に適用することができる。これらの部材については例えば「’94液晶ディスプレイ周辺材料・ケミカルズの市場(島 健太郎 (株)シーエムシー 1994年発行)」、「2003液晶関連市場の現状と将来展望(下巻)(表良吉 (株)富士キメラ総研 2003等発行)」に記載されており、LCDの種類としては、STN、TN、VA、IPS、OCS、及びR−OCB等が挙げられる。
【実施例】
【0176】
以下に実施例を示し本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
【0177】
<着色組成物>
[実施例1]
−ポリマーS−1の合成−
ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトプロピオネート)〔PEMP;堺化学工業(株)製〕1.22部、及び末端メタクリロイル化ポリメチルメタクリレート(AA−6、東亞合成(株)製)30.0部をメチルエチルケトン46.8部に溶解させ、窒素気流下、80℃で加熱した。これに2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)〔V−65、和光純薬工業(株)製〕0.03部を加えて更に窒素気流下で80℃で2時間加熱し、室温まで冷却した後、メチルエチルケトン78.1部を加えることで、以下に示すポリマーS−1の20%溶液(重量平均分子量18000;本発明に係る高分子分散剤)を得た。
【0178】
【化7】

【0179】
原料銀化合物溶液として、反応容器内に入れたアセトン45ml中に酢酸銀1.8gと上記ポリマーS−1を固形分重量で0.28g混合した。さらにエタノールアミンを7.5ml添加し、混合した。
【0180】
ここに、ヒドロキシルアセトン22.5mlを添加し、鮮やかで濃厚な緑色を呈する銀微粒子溶液を得た。ここで得られたコロイド溶液に水を加え、凝集体を形成させ、これを吸引濾過し、水洗を繰り返した後、銀コロイドペーストを得た。これをメチルエチルケトン(SP値19)に固形分重量が8質量%となるよう調整した。電子顕微鏡観察から、この銀粒子は粒径が10〜20nmの粒子が複数個連結したものであることを確認した。銀コロイド溶液の短波側極大吸収波長と長波側極大吸収波長、銀固形分濃度(86.6質量%)を表1に示す。銀固形分濃度は前述のようにして求めたものである。
【0181】
[実施例2〜6]
−ポリマーS−2の合成例−
ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトプロピオネート)〔PEMP;堺化学工業(株)製〕0.81部、及び末端メタクリロイル化ポリメチルメタクリレート(AA−6、東亞合成(株)製)30.0部をメチルエチルケトン46.2部に溶解させ、窒素気流下、80℃で加熱した。これに2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)〔V−65、和光純薬工業(株)製〕0.03部を加えて更に窒素気流下で80℃で2時間加熱し、室温まで冷却した後、メチルエチルケトン77.0部を加えることで、以下に示すポリマーS−2の20%溶液(重量平均分子量21000;本発明に係る高分子分散剤)を得た。
【0182】
【化8】

【0183】
原料の配合量、反応温度をそれぞれ表1に示すように変更したこと以外は実施例1と同様にして、銀微粒子溶液を得た。それぞれについて、平均粒径、粒子連結数、短波側極大吸収波長と長波側極大吸収波長、銀固形分濃度を実施例1と同様にして測定した結果を示す。
【0184】
[比較例1]
原料の配合量、反応温度をそれぞれ表1に示すように変更し、高分子分散剤として市販のディスパーピック161(ビックケミー社製)を使用したこと以外は実施例1と同様にして、銀微粒子溶液を得た。それぞれについて、平均粒径、粒子連結数、短波側極大吸収波長と長波側極大吸収波長、銀固形分濃度を実施例1と同様にして測定した結果を示す。
【0185】
【表1】

【0186】
[実施例7]
−ポリマーS−3の合成−
ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトプロピオネート)〔PEMP;堺化学工業(株)製〕6.58部、及びメトキシポリエチレングリコール#1000メタクリレート(NKエステル M−230G、新中村化学工業(株)製)30.0部をメチルエチルケトン54.9部に溶解させ、窒素気流下、80℃で加熱した。2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)〔V−65、和光純薬工業(株)製〕0.06部を加えて更に窒素気流下、80℃で2時間加熱し、室温まで冷却した後、メチルエチルケトン91.5部を加えることで、以下に示すポリマーS−3の20%溶液(重量平均分子量2200;本発明に係る高分子分散剤)を得た。
【0187】
【化9】

【0188】
《感光材料の作製》
−連結した金微粒子分散液の調製−
蒸留水3000gと1Nの水酸化ナトリウム水溶液150gを混合した溶液を調製した。この溶液に、上記化合物S−3を3.5g加え、完全に溶解するまで攪拌した。さらに水素化ホウ素ナトリウム3.6gを加え、溶解するまで攪拌した。この溶液をC液とする。
【0189】
蒸留水189gにテトラクロロ(III)金酸四水和物74.8gを混合した溶液を調製し、30分攪拌した。この溶液をD液とする。
ここで、液温を50℃に保ち攪拌しているC液中に、D液を添加し、金微粒子分散液を調製した。
【0190】
調製した金微粒子分散液に、硝酸でpH4に調製して金微粒子を凝集沈降させた。
凝集金微粒子液の上澄み液を除去し、これに蒸留水を加えてスターラーで攪拌して凝集金微粒子を分散した後1時間静置し、再度凝集金ナノ粒子を沈降させた。この上澄み液を除去し、凝集金微粒子を得た。この操作を数回繰り返して得た凝集金微粒子に、金が8質量%となるようメチルエチルケトンを加えブランソン社製 ソニファー(Sonifier)II型超音波ホモジナイザーを用いて20kHzの超音波を5分間照射した。その後、ブランソン社製モデル(Model)2000bdc−h 40:0.8型超音波ホモジナイザーで40kHzの超音波を10分間照射した。超音波照射の間は、試料液が25℃に維持されるよう、ヤマト科学社製クールニクスCTW400により冷却した。得られた試料液中の金微粒子は、算術平均粒径45nm、算術標準偏差34nmであった。金固形分濃度は、87.3質量%であった。金固形分濃度は前述のようにして求めたものである。
【0191】
<感光性遮光層用塗布液の調製>
下記組成を混合して、感光性遮光層用塗布液を調製した。
〔組成〕
・前記金微粒子分散液 100g
・メチルエチルケトン 39g
・フッ素系界面活性剤 0.1g
(商品名:F780F、大日本インキ化学工業(株)製)
・ヒドロキノンモノメチルエーテル 0.001g
・ベンジルメタクリレート/メタクリル酸共重合体 2.1g
(モル比=73/27、分子量30000)
・ビス[4−[N−[4−(4、6−ビストリクロロメチル−s−トリアジン−2−イル)フェニル]カルバモイル]フェニル]セバケート 0.1g
【0192】
〈保護層用塗布液の調製〉
下記組成を混合して、保護層用塗布液を調製した。
・ポリビニルアルコール 3.0g
(商品名:PVA205、(株)クラレ製)
・ポリビニルピロリドン 1.3g
(商品名:PVP−K30、アイエスピー・ジャパン社製)
・蒸留水 50.7g
・メチルアルコール 45.0g
【0193】
<感光材料の作製>
ガラス基板上に、スピンコーターを用いて乾燥膜厚が0.8μmになるように上記感光性遮光層用塗布液を塗布して100℃で5分間乾燥し感光性遮光層を形成した。次いで、この上にスピンコーターを用いて上記保護層用塗布液を乾燥膜厚が1.5μmになるように塗布して、100℃で5分間乾燥し保護層を形成して、感光材料を作製した。
【0194】
《ブラックマトリックスの作製》
超高圧水銀灯を有すプロキシミティー型露光機(日立電子エンジニアリング(株)製)で、基板とマスク(画像パターンを有す石英露光マスク)を垂直に立てた状態で、露光マスク面と保護層を塗布面の間の距離を200μmに設定し、露光量70mJ/cmでパターン露光した。次いで、現像処理液TCD(富士写真フイルム(株)製、アルカリ現像液)を用いて現像処理(33℃・20秒)を行った。画面サイズ10インチで、画素数が480×640であり、また、ブラックマトリックス幅が24μmで、画素部の開口が86μm×304μmであるブラックマトリックスを得た。
【0195】
《評価》
得られたブラックマトリックスについて下記の評価を行った。結果を下記表2に示す。
−光学濃度の測定−
膜の光学濃度は以下の方法で測定した。
まず、ブラックマトリックス作製前のガラス基板上に塗設された感光性遮光層に前記超高圧水銀灯を用いて塗布面側から500mJ/cmの露光を行った。次いでこの光学濃度(O.D.)をマクベス濃度計(商品名:TD−904、マクベス社製)を用いて測定した。別途、ガラス基板の光学濃度(OD0)を同様の方法で測定し、上記O.D.からOD0を差し引いて、膜の光学濃度とした。
【0196】
(液晶表示装置の作製)
上記で得られたブラックマトリックスを形成した基板を用いて、特開平11−242243号公報の第一実施例[0079]〜[0082]に記載の方法を用いて、液晶表示装置を作製したところ、誤作動なく表示することを確認した。
【0197】
《評価》
得られた液晶表示装置について、下記の評価を行った。結果を下記表1に示す。
−ムラの測定−
液晶表示装置にグレイのテスト信号を入力させた時に、目視及びルーペにて観察し、ムラの発生の有無を判断した。ムラがまったく観察されなかったものを○、ムラがわずかに確認できたものを△、ムラが顕著に確認できたものを×とした。
【0198】
[実施例8]
<連結した銀微粒子分散液の調製>
実施例2と同様にして、銀微粒子分散液を作製し、さらに、実施例7の金微粒子分散液の代わりに当該銀微粒子分散液を用いて、実施例7と同様にブラックマトリックスと液晶表示装置を作製し、同様の評価を行った。結果を下記表2に示す。
【0199】
[実施例9]
<連結した銀微粒子分散液の調製>
原料金属化合物溶液として、反応容器内に入れたアセトン380g中に酢酸銀17g、前記ポリマーS−3を3.0g、エタノールアミンを60g添加し、酢酸銀が完全に溶解するまで攪拌した。
【0200】
ここに、ヒドロキシルアセトン160gを添加し、400nmと710nmに特に高い吸収を持ち、可視域全体に吸収を有する銀微粒子溶液を得た。ここで得られたコロイド溶液は水洗を数回繰り返した後、メチルエチルケトンに溶解させ、固形分重量が8質量%となるよう調製した。電子顕微鏡観察から、この銀粒子は平均粒子径が10nmの粒子が複数個連結したものであることを確認した。銀固形分濃度は90.1質量%であった。銀固形分濃度は前述のようにして求めたものである。
【0201】
実施例7の金微粒子分散液の代わりに上記で作製した銀微粒子分散液を用いて、実施例7と同様にブラックマトリックスと液晶表示装置を作製し、同様の評価を行った。結果を下記表2に示す。
【0202】
[実施例10]
実施例8と同様に連結した銀微粒子を作製し、その200gの銀微粒子のアセトン分散物にポリマー(ビニルピロリドン/酢酸ビニル=60/40(質量比)共重合体、分子量5000)を0.95g添加して、30分間攪拌した。
次いで攪拌しながら、濃度7.2質量%の硫化ナトリウム水溶液を金属の硫化率が10%になるように添加した。
【0203】
尚、ここで言う「硫化率」とは金属微粒子のうち硫化されている割合で、硫化率0%は全く硫化されていない状態、100%は粒子全体が完全に硫化物になっている状態を表す。尚、硫化ナトリウム水溶液添加時の液温は23℃であった。
硫化ナトリウム水溶液添加後、そのまま30分間攪拌を続けた。
以上の工程で硫化銀のシェルを持つ銀コアシェル微粒子を作成した。
【0204】
粒子中のシェルの質量比は、0.11であった。この質量比は、粒子中の銀と硫黄のモル数から計算により求めた。両者のモル数は、ポリエチレンテレフタレート支持体の上に、粒子分散液をスピンコート塗布した試料を蛍光X線分析装置Type3370E(理学(株)製)を用いた蛍光X線分析で求めた。硫黄と銀のモル数をそれぞれms、mAとすると、シェルのAgSのモル数はms、コアのAgのモル数はmA−2msになる。
従って、シェルとコアの質量比は、
(ms/247.8):(mA−2ms/107.9)
になる。
【0205】
上記で作製した銀/硫化銀コアシェル粒子溶液を数回水で洗浄したのち、吸引ろ過によって凝集銀/硫化銀コアシェル粒子を取り出し、メチルエチルケトンを用いて8質量%となるよう調整した。実施例7の金微粒子のかわりにこの銀/硫化銀コアシェル粒子溶液を用いて、実施例7と同様にブラックマトリックスと液晶表示装置を作製し、同様の評価を行った。結果を下記表2に示す。
【0206】
[実施例11]
実施例1において、感光性遮光層用塗布液の調製の際に、金微粒子分散液に代えて、実施例8に記載の銀微粒子及びカーボンブラック(商品名:商品名:CFP−FF−949K、富士フイルムエレクトロニクスマテリアルズ(株)製)を用い、銀微粒子分散物の添加量に対しカーボンブラックの添加量を、銀微粒子:カーボンブラック=95:5(質量比)とした以外は、実施例7と同様にブラックマトリックスと液晶表示装置を作製し、同様の評価を行った。結果を下記表2に示す。
【0207】
[比較例2]
純水380gに、テトラクロロ(III)金酸四水和物41g、市販のディスパーピック190(ビックケミー社製)を10g、1NのNaOH水溶液80gを混合した。この溶液に水素化ホウ素ナトリウム3gを添加し、30分攪拌して500nmに高い吸収を持つ金微粒子を得た。ここで得られたコロイド溶液は限外ろ過によって濃縮した後、エタノールに溶解させ、固形分重量が8質量%となるよう調製した。全固形分重量中に占める金固形分濃度は70.5質量%であった。この金微粒子分散液をブランソン社製 ソニファー(Sonifier)II型超音波ホモジナイザーを用いて20kHzの超音波を5分間照射した。その後、ブランソン社製モデル(Model)2000bdc−h 40:0.8型超音波ホモジナイザーで40kHzの超音波を10分間照射した。超音波照射の間は、試料液が25℃に維持されるよう、ヤマト科学社製クールニクスCTW400 により冷却した。得られた試料液中の金微粒子は、算術平均粒径42nm、算術標準偏差56nmであった。
【0208】
上記で作製した金微粒子を用いて、塗布液組成を以下のように変更した以外は実施例7と同様にブラックマトリックスと液晶表示装置を作製し、同様の評価を行った。結果を下記表2に示す。
・前記金微粒子分散液 100g
・1−プロパノール 39g
・フッ素系界面活性剤 0.1g
(商品名:F780F、大日本インキ化学工業(株)製)
・ヒドロキノンモノメチルエーテル 0.001g
・ベンジルメタクリレート/メタクリル酸共重合体
(モル比=73/27、分子量30000) 2.1g
・ビス[4−[N−[4−(4、6−ビストリクロロメチル−s−トリアジン−2−イル)フェニル]カルバモイル]フェニル]セバケート 0.1g
【0209】
〈保護層用塗布液の調製〉
下記組成を混合して、保護層用塗布液を調製した。
・ポリビニルアルコール 3.0g
(商品名:PVA205、(株)クラレ製)
・ポリビニルピロリドン 1.3g
(商品名:PVP−K30、アイエスピー・ジャパン社製)
・蒸留水 50.7g
・メチルアルコール 45.0g
【0210】
[比較例3]
原料金属化合物溶液として、反応容器内に入れたアセトン180g中に酢酸銀6gを添加し、攪拌した。さらに、市販のディスパーピック161(ビックケミー社製)を3gとエタノールアミンを25g添加し、酢酸銀が完全に溶解するまで攪拌した。ここに、ヒドロキシルアセトン50gを添加し、黄色を呈する銀微粒子溶液を得た。この粒子は400nmに高い吸収を有し、算術平均粒径51nm、算術標準偏差63nmであった。
電子顕微鏡観察から、平均粒子径30nmの球形粒子であることがわかった。この銀微粒子を数回水洗することによって洗浄し、メチルエチルケトンに溶解させ、固形分重量が8質量%となるよう調製した。
【0211】
実施例7の金微粒子のかわりに上記で作製した銀微粒子を用いて、実施例7と同様にブラックマトリックスと液晶表示装置を作製し、同様の評価を行った。結果を下記表2に示す。
【0212】
[比較例4]
長さが平均100nm、幅が平均100nm、厚みが平均46nmである平板銀微粒子73.5gと、市販のディスパーピック161(ビックケミー社製)1.05gとメチルエチルケトン110.3gを混合した、これを超音波分散機(商品名:Ultrasonic generator model US-6000 ccvp, nissei社製)を用いて分散し、平板銀微粒子分散液を得た。
【0213】
実施例7の金微粒子分散液のかわりに上記で作製した銀微粒子分散液を用いて、実施例7と同様にブラックマトリックスと液晶表示装置を作製し、同様の評価を行った。結果を下記表2に示す。
【0214】
【表2】

【0215】
表2より、本発明に従う実施例7〜11においては、光学濃度が高く、表示ムラがまったく観察されなかった。これに対し、比較例2〜4においては、光学濃度及び表示ムラの評価において双方を同時に満足できる結果が得られなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
分子中にメルカプト基を有する高分子分散剤の存在下で金属化合物の還元を行う工程を有することを特徴とする形状異方性金属微粒子の製造方法。
【請求項2】
前記形状異方性金属微粒子は複数の金属微粒子が連結することにより形成されていて、該複数の金属微粒子の連結長が変わることによって色調が異なることを特徴とする請求項1に記載の形状異方性金属微粒子の製造方法。
【請求項3】
前記形状異方性金属微粒子は、金属化合物と金属との複合微粒子から形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の形状異方性金属微粒子の製造方法。
【請求項4】
前記形状異方性金属微粒子は、紫外光、可視光、及び近赤外光の波長領域のうちの2つ以上の波長領域において極大吸収を有し、金属微粒子の連結長によって吸収波長を変化させられることを特徴とする請求項2または3に記載の形状異方性金属微粒子の製造方法。
【請求項5】
前記高分子分散剤は、分子鎖の末端に少なくとも2つ以上のメルカプト基を有することを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の形状異方性金属微粒子の製造方法。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1項に記載の形状異方性金属微粒子の製造方法により得られる金属微粒子を、SP値が25.8MPa1/2以下の溶媒中に含有させてなることを特徴とする着色組成物。
【請求項7】
さらに、顔料を含むことを特徴とする請求項6に記載の着色組成物。
【請求項8】
前記顔料が、カーボンブラック、チタンブラック、及び黒鉛から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする、請求項7に記載の着色組成物。
【請求項9】
支持体上に少なくとも感光性遮光層を設けた感光性転写材料であって、前記感光性遮光層が請求項6から8のいずれか1項に記載の着色組成物によって形成されることを特徴とする感光性転写材料。
【請求項10】
請求項6から8のいずれか1項に記載の着色組成物を用いて作製される遮光画像を有することを特徴とする遮光画像付き基板。
【請求項11】
請求項9に記載の感光性転写材料を用いて作製される遮光画像を有することを特徴とする遮光画像付き基板。
【請求項12】
請求項6から8のいずれか1項に記載の着色組成物を用いることを特徴とするカラーフィルター。
【請求項13】
請求項6から8のいずれか1項に記載の着色組成物を用いることを特徴とする液晶表示装置。

【公開番号】特開2007−113060(P2007−113060A)
【公開日】平成19年5月10日(2007.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−305026(P2005−305026)
【出願日】平成17年10月19日(2005.10.19)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】