説明

形状記憶シールを備えたガラス化装置

生体標本用の冷凍容器にシールを作り出すための閉鎖装置は、形状記憶材料の温度誘発性相変態を利用して、アクチュエータを密封状態と開封状態の間で切り替わらせる。温度誘発は、生体標本の極低温ガラス化中に起こる普通の温度変化内で自然に起こる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2008年11月10日に「形状記憶シールを備えたガラス化装置」(Vitrification Device with Shape Memory Seal)の名称で出願された米国非仮特許出願第12/267794号の継続出願である。前記非仮特許出願を参考文献としてここに援用する。
【0002】
前記出願第12/267794号は、2008年11月10日に「形状転換ガラス化装置」(Shape−Shifting Vitrification Device)の名称で出願された米国非仮特許出願第12/267708号の一部継続出願である。前記非仮特許出願を参考文献としてここに援用する。
【0003】
前記非仮特許出願第12/267708号、それ自体は、「形状記憶ガラス化冷凍容器」(Shape Memory Vitrification Cryocontainer)の名称で2007年11月12日に出願された米国仮特許出願第60/987,110号に対する優先権を主張している。前記仮出願を参考文献としてここに援用する。
【0004】
本発明は、生体標本の冷凍保存のための装置の分野に属する。
【背景技術】
【0005】
生命科学では、貴重な(単数又は複数の)細胞の生物活性を長期に亘り休止させることを目的に、冷凍保存技術が実践されている。冷凍保存の成功の1つの要因は、氷の結晶が形成されるという有害効果を低減又は排除することである。冷凍保存時に水が氷へと凍ってゆく自然傾向を阻止するには、高度な方法が必要である。
冷凍保存
【0006】
氷結晶形成を最小限にする1つの方法は、「緩慢凍結」と呼ばれている。緩慢凍結の最初の工程は、浸透性及び非浸透性の凍害保護物質(「CPA」)を含む水溶液(「緩慢凍結媒体」)を用いて、単一細胞又は複数細胞を脱水することである。単一細胞又は複数細胞は、少量の緩慢凍結媒体と共に「生体標本」を構成する。次いで、生体標本は、適した冷凍容器、即ち、極低温温度で使用するのに適した容器に入れられる。ここで使用されている「極低温温度」とは、−80℃より冷たい温度を意味している。緩慢凍結冷凍保存には、生体標本を、室温からその最終的な極低温貯蔵温度まで、即ち、典型的には液体窒素(「LN2」)の大気圧下沸点である−196℃まで冷凍することが伴う。この温度範囲の一部、即ち、大凡−6℃から下へ−30℃までについては、冷凍速度はプログラム可能なフリーザーによって厳密に0.1−0.3℃/分に制御される。−30℃から−196℃までの冷凍は、冷凍容器をLN2に押し込むことによって実現される。緩慢凍結プロセスは完了するまでに2−3時間掛かり、よってその名が付いている。このプロセスにより、氷の結晶は、実際に、単一細胞又は複数細胞を取り囲んでいるCPAの中に形成され、単一細胞又は複数細胞内では最小限になる。緩慢凍結は、胚及び精子の様な含水量の少ない細胞には有効であるが、卵母細胞及び胚盤胞の様な含水量の多い細胞でも巧くいくとは限らない。この欠陥、高い機器費用、及び高い時間消費が、ガラス化と呼ばれる代わりの冷凍保存方法の開発をもたらした。
ガラス化
【0007】
ガラス化は、細胞に損傷を負わせる氷の形成を完全に回避しようとしている点で、緩慢凍結とは異なる。緩慢凍結と同様、ガラス化の最初の工程は、「ガラス化媒体」と呼ばれるCPA含有流体を使用して、単一細胞又は複数細胞をできる限り多分に脱水することである。次いで、生体標本(緩慢凍結の場合と同じ定義)は、LN2の様な極低温流体への浸漬によって急速に冷凍される。冷凍速度とCPA濃度を適切に組み合わせることで、細胞内水分は、規則的で損傷を負わせる結晶質の氷の状態というより、むしろ固体で無害のガラス様(ガラス質)の状態を獲得することになる。ガラス化は、水分子をランダムな配列で閉じ込める流体粘度の急激な上昇、と書き表すことができる。しかしながら、ガラス化媒体は、緩慢凍結媒体より高いレベルのCPAを含んでおり、ガラス質状態以外では細胞にとって毒性がある。従って、脱水及び解凍(氷が形成されないので「加温」と呼ばれる)時の細胞のガラス化媒体への暴露時間は、細胞損傷を回避するべく慎重に制御されなくてはならない。ガラス化と緩慢凍結の終点は同じ、つまり、LN2の様なクリオゲン内での長期貯蔵である。
【0008】
10℃/分の冷凍速度が可能であったなら、ガラス化は、凍害保護物質を一切用いずに実現することもできよう。60%w/wのCPA濃度を有する極めて有毒なガラス化媒体は、普通の冷凍速度でガラス化させることができる。市販のガラス化媒体は、上記境界の間のCPA処方と最小冷凍可能速度を有している。CPA濃度と最小冷凍可能速度の間の反比例関係は良く知られている。ガラス化媒体の毒性効果を最小限にするためのキーは、そのCPA濃度を最小化することである。従って、素早く冷凍することが望ましく、速ければ速いほど良い。上記に鑑みて、この分野で起こるべくして起こった初期の発見は、生体標本を直接LN2に押し込んで急速冷凍を実現することであった。このプロセスを円滑化し、制御するため、直接の押し込みを可能にする担持装置が作り出された。例を挙げると、電子顕微鏡グリッド、オープンプルストロー(open pulled straw)、クリオループ(Cryoloop)(商標)、ナイロンメッシュ、及びクリオトップ(Cryotop)である。クリオループは、ハンプトンリサーチ(Hampton Research)社の商標である。これらの装置は、生体標本が冷凍用クリオゲン、典型的にはLN2、と直接接触するという点で「開放型担持具」に分類される。開放型担持具は、生体標本の急速加温も可能にした。
【0009】
しかしながら、LN2は無菌ではない。LN2は、細菌種及び真菌種を含んでいるかもしれず、それらは温められると生存能力を持つ。更に、LN2内に長期貯蔵状態に保たれているガラス化された細胞は、前記LN2に人工的に入れられたウイルス性病原体に感染し得ることが報告されている。従って、開放型担持具にはガラス化された生体標本の感染の可能性がある。
【0010】
感染の可能性が、生体標本が冷凍容器内に入れられてLN2内での冷凍前に密封される閉鎖型冷凍容器の開発をもたらした。冷凍容器は、長期貯蔵中に生体標本を、病原体を含んでいるクリオゲンから隔離する貯蔵装置としての役目も果たす。
現在のガラス化用冷凍容器の限界
【0011】
米国特許第7,316,896号「卵の凍結及び貯蔵用の用具と方法」(Egg freezing and storing tool and method)(‘896号装置)には、ガラス化用の閉鎖型冷凍容器が記載されている。この装置は、細いプラスチック管(公称外径(OD)が0.25mmで壁厚が0.02mm)を備えている。典型的な生体標本は、0.125mmのODを有するヒト卵母細胞を含むことになろう。それが、ガラス化媒体を用いて脱水され、管に引き入れられる。無菌容器を作り出すべく加熱シール形成装置を用いて管の両端に熱シールが施される。熱シールのうち一方は生体標本に非常に近接して作成されることから、熱が細胞を傷める懸念がある。
【0012】
米国特許出願第2008/0220507号「極低温ガラス化により保存させるべき規定体積の物質を充填するためのキット」(Kit for Packaging Predetermined Volume of Substance to be Preserved by Cryogenic Vitrification)(‘507号装置)には、管内管閉鎖型冷凍容器の概念が記載されている。管は共にプラスチックから製作されている。内側の管は、生体標本が設置される一方の端にチャネルが作成されるように修正が加えられている。そうして、装入される側である内側の管が外側の管内に設置される。次に、外側の管の装入側の端が加熱シールされて無菌の冷凍容器を作り出す。
【0013】
加熱シール形成は、ガラス化冷凍容器のプラスチックを溶融する能力を持つ高価なシール装置が必要になる。これにより、安全に遂行するために速さが求められるもう1つの工程がプロセスに追加されることになる。これらの障害を克服するシール形成の概念が必要とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】米国非仮特許出願第12/267794号
【特許文献2】米国非仮特許出願第12/267708号
【特許文献3】米国仮特許出願第60/987,110号
【特許文献4】米国特許第7,316,896号
【特許文献5】米国特許出願第2008/0220507号
【発明の概要】
【0015】
本発明の概要を、本発明を理解するための手引きとして提供する。それは、必ずしも、本発明の最も一般的な実施形態を記述しているのでもなければ、ここに開示されている本発明のあらゆる種類を記述しているわけでもない。
改良された閉鎖型ガラス化冷凍容器
【0016】
本発明は、冷凍容器を密封及び開封する閉鎖装置を備えた閉鎖型ガラス化冷凍容器を備えている。閉鎖装置は、形状記憶材料の固有の材料特性を利用している。形状記憶材料は、高温のオーステナイトと低温のマルテンサイトの2つの結晶構造で存在する。オーステナイト相は、堅さと超弾性の性質を特徴とする。マルテンサイト相は、柔らかくて可鍛性がある。物体のそのオーステナイト相における形状を「記憶形状」と呼ぶ。形状記憶材料が、そのオーステナイト相からマルテンサイト相に冷却され、そして変形した場合、それを加熱してそのオーステナイト相に戻せば、そのオーステナイト形状に戻るであろう。これらの2つの相の行き来が、好都合にも本発明に組み入れることができる設計オプションを可能にする。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】形状記憶材料(一方向形状記憶を呈する)の結晶状態と温度の関係を示す図である。
【図2】形状記憶材料(二方向形状記憶を呈する)の結晶状態と温度の関係を示す図である。
【図3】形状記憶材料と非形状記憶付勢ばねを接合することによって作られたアクチュエータを示している。
【図4】二方向形状記憶ばねを示している。
【図5】形状記憶材料と非形状記憶ロールピンを接合することによって作られたロールピンアクチュエータを示している。
【図6】形状記憶閉鎖装置を示している。
【図7】シャトル、シース、及び冷凍容器の特徴を示している。
【図8】組み立てられた冷凍容器の特徴を示している。
【図9】形状記憶ロールピンを組み込んだストッパを示している。
【図10】本発明に適したニチノール変態温度を表している。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下の詳細な説明では、本発明の様々な実施形態と特徴が開示されている。これらの実施形態と特徴は、例示であり制限を課すものではない。
【0019】
「約」という用語がここで使用されている場合、それは、温度に関する場合を除き、また特に別途指示の無い限り、所与の値の+/−20%内を意味する。温度に関しては、「約」は+/−2℃を意味する。
【0020】
本発明を使用すれば、様々な生体細胞を無菌で冷凍保存(例えば、ガラス化)することができる。細胞の1つの分類は、精子、卵母細胞、胚、桑実胚、胚盤胞、及び他の初期胚細胞の様な、哺乳類の発生細胞である。これらの細胞は、生殖補助処置ではごく普通に冷凍保存される。細胞のもう1つの分類に、再生医療で使用される幹細胞がある。最も広範な分類は、本発明の利用可能な冷凍速度と協調するガラス化媒体を使用してガラス化させることができるあらゆる細胞である。
形状記憶効果
【0021】
形状記憶効果は、Ag−Cd、Au−Cd、Cu−Al−Ni、Cu−Zn−Al、Cu−Zn−Si、Cu−Zn−Sn、Cu−Sn、Cu−Zn、Fe−Pt、Fe−Mn−Si、In−Ti、Mn−Cu、Mn−Si、Ni−Ti、Ni−Al、その他の様な或る特定の金属の合金に存在する。このグループの中では、Ni−Tiの合金が、商業的に最も普及している異体であり、ニチノールと呼ばれている。本発明は、広範囲に様々な形状記憶合金で実現することができる。使用される特定の合金は、当業者が選択すればよい。本発明の理解を促すため、この説明の欄ではニチノールの形状記憶材料としての性質を使用して本発明の特徴を説明してゆく。
【0022】
形状記憶効果は、物体が2つの異なる結晶状態で存在し得る現象である。第1の高温状態にある物体は、剛性を有し、固有の定形状を備えている。この物体は、冷却されると、容易に変形可能な状態へ変化する。当該物体は、材料を加熱することによって、その変形可能性を喪失させ、その固有の定形状に形態変化させて戻すことができる。材料科学は、これらの物理的状態の間の行き来は、材料の温度誘発性相変化によって引き起こされる現象であることを我々に教えてくれる。
【0023】
図1は、「一方向」形状記憶材料の挙動を示している温度誘発性形状記憶相変化の図である。形状記憶材料は、オーステナイト(図像100)とマルテンサイト(図像120)の2つの結晶構造で存在する。オーステナイト相は、堅さと超弾性の性質を特徴とする。マルテンサイト相は、柔らかく、可鍛性がある。オーステナイト物体の形状は「記憶形状」と呼ばれる。オーステナイト相の物体は、冷却によってマルテンサイトへ変態させることができる。柔らかいマルテンサイトのとき、物体は、変形させることができる。このマルテンサイト物体は、加熱によって変態させてオーステナイトへ戻すことができる。この相変換があると、物体の形状は、(多少の力を加えれば)「記憶形状」に戻るであろう。定オーステナイト形状から非定マルテンサイト形状への変態は、一方向形状記憶と呼ばれる。
【0024】
ここで使用されている「変態」という用語は、記憶形状を備えた或る相への、又は記憶形状を備えた或る相からの、相変化をいう。変態温度帯域は、変態が開始するときと、それが終了するときの温度の差である。マルテンサイトからオーステナイトへの変態140は、A(オーステナイト開始)142からA(オーステナイト終了)144までの温度の範囲に亘って起こる。同様に、オーステナイトからマルテンサイトへの変態160は、M(マルテンサイト開始)162からM(マルテンサイト終了)164までの温度の範囲に亘って起こる。オーステナイト変態とマルテンサイト変態は、異なる変態温度帯域内で起こる。この現象は、変態ヒステリシス180と呼ばれ、加熱されてオーステナイトに50%変態している物体と冷却されてマルテンサイトに50%変態復帰している物体の間の温度スプレッドである。全変態温度スパン182は、物体を100%マルテンサイトと100%オーステナイトの間で変態させるのに必要な温度範囲である。ニチノールでは、全変態温度スパンは大凡50℃である。形状記憶材料の重要な特性は、或る物体が、その物体の加熱及び冷却の履歴に依って、変態温度帯域の間の或る温度で、そのオーステナイト相190かそのマルテンサイト相192の何れかになり得ることである。
【0025】
ニチノールでは、変態温度142、144、162、及び164は、Ni対Ti原子比と、ニチノールの合金形成後の治金加工によって決まる。ニチノールのオーステナイト記憶形状は、材料がオーステナイト相にあるときに治金加工によって作られる。
【0026】
図2は、二方向形状記憶を呈する形状記憶材料での温度誘発性形状記憶相変化の図である。殆どの形状記憶材料は一方向形状記憶を呈するが、それらを鍛えて二方向形状記憶を呈するようにすることができる。これらの材料は、オーステナイト(図像200)とマルテンサイト(図像210)の2つの結晶構造で存在する。二方向形状記憶材料から製作された物体は、相に応じた2つの固有の形状を有することになる。オーステナイト物体は、「オーステナイト形状」を有していることをいう。マルテンサイト物体の形状は、「マルテンサイト形状」と呼ばれる。どちらの形状も、安定していて区別が付く。よって、どちらも「記憶」形状である。温度転換220及び240は、形状記憶材料を相の間で切り替え、結果として形状変化を生じさせる。変態ヒステリシス252と全変態温度スパン254は、一方向形状記憶材料の場合と同じ意味を有する。
螺旋ばね形状記憶アクチュエータ
【0027】
図3は、どの様に、一方向形状記憶合金で作られたばねが、非形状記憶材料で作られたばねと組み合わされて、螺旋ばね形状記憶アクチュエータと呼ばれる温度感応アクチュエータが形成されるかを示している。アイテム300は、自身のオーステナイト相、即ち記憶形状にある螺旋状のニチノールばねである。螺旋の内側は空いた円筒形空間302になっている。ばねは、温度がマルテンサイト開始温度より上である限り、普通のばねの様に作用する。しかしながら、ニチノールばねは、冷却されてマルテンサイトに変態すると、比較的弱い力で圧縮又は変形320させることができる。それは、圧縮力が取り除かれると、この圧縮された状態に保たれることになる。冷却されたマルテンサイトのニチノールばねが再加熱されてオーステナイト相に戻れば、その記憶形状300が復元される。
【0028】
アイテム340は、鋼、真鍮、又はアルミニウムの様な非形状記憶ばね材料から作られた付勢ばねである。それは、プラスチックの様な非金属で作ることもできる。
【0029】
2つのばねを組み合わせ、それらの端を動作可能に係合させると、螺旋ばね形状記憶アクチュエータが形成される。アクチュエータは、その温度が上昇及び下降すると、その結果、その中の形状記憶材料がそのオーステナイト相とマルテンサイト層の間で切り替わることで、展開及び収縮する。
【0030】
アイテム360と380は、そのマルテンサイト相とオーステナイト相それぞれにおける螺旋ばね形状記憶アクチュエータの詳細を示している。アクチュエータは、付勢ばね362がニチノールばね364の空いた円筒形空間内に設置されて構成されている。2つのばねは、それらの端366と368で一体に取り付けられている。ニチノールばねがその圧縮可能なマルテンサイト相にあれば、付勢ばねが勝っており、アクチュエータの全長370は圧縮される。アクチュエータがニチノールばねのオーステナイト変態温度より上に熱せられると(アイテム380)、ニチノールばねはその記憶形状に展開し、アクチュエータの長さ382が増すことになる。このオーステナイト変態では、ニチノールばねがその記憶形状を獲得しようとすることから発生する力は、付勢ばねによる反力に打ち勝つであろう。
【0031】
オーステナイトアクチュエータが、そのマルテンサイト終了温度より下に冷却されれば、その中に入っているニチノールばねは、マルテンサイトへ変態することになる。ニチノールばねは、その堅さを喪失し、可鍛性を来し、もはや付勢ばねに打ち勝つことができなくなる。従って、アクチュエータはそのマルテンサイト長さ370を獲得しようとする。アクチュエータが、物理的に、この長さに収縮することが妨げられれば、何であれそれを妨げているものに「1Wアクチュエータ収縮力」384が掛かることになる。よって、形状記憶アクチュエータは、温度駆動式クランプとして使用することができる。
【0032】
アクチュエータの或る代わりの構成は、ニチノールばねのオーステナイト長さを、付勢ばねの長さより短くするというものである。付勢ばねは、圧縮されて、このオーステナイトのニチノールばねと接合されることになろう。次いで、その様なアクチュエータを、そのマルテンサイト変態温度より下に冷却すれば、それは拘束を課している部材に対してアイテム384の矢印と反対の方向に力を働かせるであろう。この力を、「1Wアクチュエータ展開力」と呼ぶことにしよう。よって、形状記憶アクチュエータは、プッシュ又はプルの何れのクランプとして設計することもできる。
【0033】
図4は、どの様に、二方向形状記憶材料を使用して、螺旋ばねアクチュエータを製作することができるかを示している。二方向ニチノールばね400は、そのオーステナイト相にあり、展開時の長さ402を有している。これは、そのオーステナイト形状である。そのマルテンサイト形状420は、より短い長さ422を有するばねである。オーステナイトの二方向ニチノールばねは、そのマルテンサイト終了温度より下に冷却されれば、形態学的に、そのマルテンサイト形状に変化するであろう。このマルテンサイト変態中に、アクチュエータが短い長さ422を実現しようとするのを拘束された場合、拘束を課している部材には力404が働くことになる。この力を「2Wアクチュエータ収縮力」と呼ぶことにしよう。オーステナイトの二方向ばねの長さが、そのマルテンサイト形状よりも短い場合、拘束を課している部材に対するマルテンサイト変態誘発性の力は、矢印404と反対の方向になる。この力を「2Wアクチュエータ展開力」と呼ぶことにしよう。
円筒形の形状記憶アクチュエータ
【0034】
図5は、円筒形の形状記憶アクチュエータ500の横断面図を示している。円筒形の形状記憶アクチュエータは、一方向形状記憶ロールピン構成要素502が普通の金属製付勢ロールピン504と動作可能に係合(例えば接合)されて構成されている。付勢ロールピンは、ばねの様な性質を有している。アクチュエータは、形状記憶ロールピン構成要素がそのマルテンサイト相にあるときは、特徴的な開口直径506を有する。アクチュエータがそのオーステナイト終了温度より上に温められると、形状記憶ロールピン構成要素はそのオーステナイト相へ、即ちその記憶形状520へ変態することになる。この形状は、特徴的な直径522を有するロールピンである。このオーステナイト変態では、ニチノールのロールピンがその記憶形状を獲得しようとすることから発生する力は、付勢ロールピンによる反力に打ち勝つであろう。オーステナイトのロールピンは、そのマルテンサイト終了温度より下に冷却されれば、そのマルテンサイトの特徴的な直径506に戻ろうとするであろう。アクチュエータがこの特徴的な直径を実現しようとするのを拘束された場合、拘束を課している部材には押圧力540が働くことになる。
【0035】
ロールピンアクチュエータは、マルテンサイト変態によってその形状が縮まるように作ることもできる。この構成は、図5の「加熱」と「冷却」を入れ替えることにより表すことができる。マルテンサイト変態から発生する力は、締め付け力542ということになる。
極低温容器閉鎖装置
【0036】
図6は、螺旋ばね形状記憶アクチュエータの締め付け能力に依存した極低温容器閉鎖装置を示している。閉鎖装置600は、螺旋ばね形状記憶アクチュエータ602、端キャップ604、及びラッチ用スリーブ606を備えている。これらの構成要素は608と610で取り付けられている。閉鎖装置は、アクチュエータがその相対的に閉じられている状態616であるマルテンサイト相で示されている。閉鎖装置は、そのマルテンサイト及びオーステナイト変態温度より上及び下への温度変化に伴い軸線612に沿って自由に展開及び収縮できる。アイテム620は、自身の展開した状態622であるオーステナイト相まで温められた後の閉鎖装置を示している。
【0037】
ラッチ用スリーブの端面図640は、極低温容器(図7のアイテム760)の係止用タング(図7のアイテム746)を係合させるのに使用されているラッチ642を示している。
【0038】
図7は、閉鎖装置によって閉鎖して密封することができる例示的な冷凍容器の略円筒形要素の縦断面を示している。冷凍容器は、生体標本のガラス化に使用することができ、同時係属の米国特許出願第12/267708に更に詳しく記載されている。
【0039】
冷凍容器は、シャトル700とシース740を備えている。
【0040】
シャトルは、ストッパ702と、生体標本712を保持するためのチャネル710を提供するべく端に切欠708が切られた管704を備えている。生体標本は、極低温(例えば−80℃及びそれより下)へ急速冷凍することによってガラス化されることになっている。生体標本は、ガラス化媒体714と冷凍保存されることになっている1つ又はそれ以上の細胞716を備えていてもよい。シャトルの直径718は、生体標本の直径より大きい。典型的な生体標本は、体積が0.5マイクロリットルであり、直径約1mmに相当する。従って、シャトルに適した直径は約2mmである。
【0041】
ストッパは、シャトルがシースに装入されたとき、シースとシールを形成するように適度な勾配720を有している。適した勾配角度は、ストッパの長手方向軸線に対して約1°から15°の範囲であってもよい。ストッパは、シールを維持するのを助けるため、極低温温度で弾性を有する材料で作られるべきである。テフロン(登録商標)(Teflon)は適した材料である。
【0042】
シース740は、管状本体742と外面上の係止用タング746を備えている。シースの一端は密封されている744。シースに適した内径748は、シャトルの直径が2mmであるとき、2.1−2.5mmである。
【0043】
アイテム760は、閉鎖装置の装着の準備が整った組み立て後の冷凍容器である。生体標本が入っているシャトルは、シースの開口端750の中へ、ストッパがシースに係合するまで進められる。ストッパを着座させるには手の力しか必要としない。
【0044】
図8は、どの様に、閉鎖装置800が冷凍容器720と組み合わされて、生体標本の長期極低温貯蔵のための無菌シールが形成されるかを示している。高温で展開した状態のオーステナイト相にある閉鎖装置の開口端802が、冷凍容器のストッパ端824に外挿されて、捻られ、その結果、ラッチ806が冷凍容器側の係止用タング822に係合する。そうして組み立て済み冷凍容器840が形成される。閉鎖装置の端キャップ804は、ストッパ824に押し当てられている。
【0045】
閉鎖装置は、次に、冷やされたピンセットで把持されてもよい。これにより、閉鎖装置はそのマルテンサイト相へ変態させられ、収縮しようとする。これにより、今度は、1W収縮力がストッパに掛けられることになり、その結果、装置が密封される。次いで、アッセンブリ全体をLN2に浸漬して、ガラス化を起こさせる。それは、密封された状態に保たれており、長期極低温貯蔵庫に置くことができる。装置がそのオーステナイト開始温度より下に保たれている限り、締め付け力は維持され、冷凍容器は密封された状態に保たれる。
【0046】
生体標本を回復させることが必要になると、冷凍容器は、極低温貯蔵庫から温水槽(例えば、体温である37℃)へ移される。水槽は、ニチノールアクチュエータを、そのオーステナイト相へ変態させるほどに温かく、閉鎖装置は展開する。すると、それを取り外すことができるようになり、ストッパを抜いて、シャトルを生体標本の回復のためにシースから取り出すことができる。
生体標本に適した材料
【0047】
ヒト生殖細胞のような生体標本は、冷凍容器の様々な構成要素と接触するかもしれない。ヒト生殖細胞は、或る特定の材料には不都合な反応を示す。その様な反応を引き起こさない材料は、「非胎児毒性」と呼ばれる。よって、端キャップ、ラッチ用スリーブ、シャトル、及びシースとして適切な材料には、極低温用役に適した非胎児毒性材料が含まれる。サーリン(Surlyn)8921の様なアイオノマー樹脂が適している。我々の試験により、ニチノールは規格化された試験に照らして非胎児毒性であり、従って同様に適していることが示されている。ニチノールは、極低温温度で使用することができる。
代わりの閉鎖装置
【0048】
図9は、ガラス化冷凍容器を密封するのに形状記憶アクチュエータを使用する代わりの方法を示している。シャトルにはストッパ900を組み込むことができ、そのため、密封するのに外部閉鎖装置を必要としない。ストッパは、基部904内に一体成形された2つのロールピンアクチュエータ906、908を備えている。開口902は、アクチュエータを環境に曝す。2つのアクチュエータは、比較的均一なシール圧力が提供されるように180度オフセットされている(横断面図A−A及びB−B参照)。装入温度(例えば室温)では、アクチュエータはそれらのオーステナイト相にあり、相対的に潰れた又は収縮した状態である。シャトルのシースへの装入と着座は、上の説明と同様である。次いで、ストッパは、冷やされたピンセットで、アクチュエータに近い点を把持されることになる。これによりアクチュエータは、それらのマルテンサイト相に変態させられ、それらのマルテンサイト形状910に展開しようとする。これによりストッパはシースの内壁に押し付けられ、シールを作り出す。次いで、アッセンブリ全体をLN2に浸漬して、ガラス化を起こさせる。アクチュエータがそれらのオーステナイト開始温度より下に保たれている限り、押圧力は維持され、冷凍容器は密封された状態に保たれる。
【0049】
生体標本を回復させることが必要になると、冷凍容器は、極低温貯蔵庫から温水槽(例えば、体温である37℃)へ移される。水槽は、アクチュエータを、それらのオーステナイト相へ変態させて収縮させるほどに温かく、よってストッパが弛む。すると、ストッパを取り外すことができるようになり、生体標本の回復のためにシャトルをシースから取り出すことができる。
ガラス化用途に使用される形状記憶アクチュエータに適したニチノール等級
【0050】
ガラス化では、生体標本は、室温(約20℃)で装入されるのが普通である。ガラス化及び貯蔵は、通常、液体窒素(約−196℃)の中で行われる。加温は、通常、体温の温水槽(約37℃)で行われる。従って、適したニチノール等級の属性は、
1.最初にそのオーステナイト終了温度より上に温められた後、室温でそのオーステナイト相にあり、
2.37℃までにその記憶形状に戻ることができ、
3.冷凍用クリオゲンより冷たくないマルテンサイト終了温度を有している、
ことである。
【0051】
図10は、典型的なニチノール変態温度プロフィール1000を示している。全変態温度スパン1002は、典型的には約50℃である。温度尺1020は、上記(3)を満たす最低可能マルテンサイト終了温度である最小温度1022を特定している。普通のニチノールでは、この限界は、変態が起きるであろう最小温度である約−100℃である。ニチノール合金は、鉄又はクロムを添加することで改質することができ、そうすれば最小温度がLN2の温度(−196℃)へ引き下げられるであろう。最大温度1024は上の(2)を満たす必要がある。ニチノールの記憶形状は、オーステナイト終了温度より数度下以内で実質的に復元する。最大温度は40℃に設定することができる。従って、この用途に適した、意外にも広範囲のニチノール合金がある。ニチノール変態温度プロフィール1040は、終点(1042と1044)が最小温度限界と最大温度限界それぞれを越えない限り、温度尺の何処に置かれてもよい。
ニチノールのガラス化用閉鎖装置への適用についての他の注目すべき所見
【0052】
1.他の形状記憶作動用途とは違い、冷凍容器を密封及び開封するのに必要な広い温度スパンが、ガラス化プロセスで自然に起こる。
2.変態ヒステリシスは、変態運動が温度変換帯域に限られるようにしている。形状記憶合金を活用する場合「デッドゾーン」は極めて当たり前に見られる。この制限は、ガラス化閉鎖装置には影響しない。
3.温度変換帯域内では、運動は常に一方向である。この制限は、ガラス化冷凍容器には影響しない。
【0053】
或る好適なニチノール合金は、オーステナイト終了温度が0℃から10℃の範囲のものである。この合金を用いた閉鎖装置なら、室温では信頼性高く開いた状態に留まるであろうし、標本が温められたときには簡単に開くであろう。
代わりの実施形態
【0054】
この開示は、ガラス化冷凍容器を密封及び開封するのに形状記憶材料を使用している幾つかの実施形態を提供している。それは、形状記憶材料のオーステナイト相とマルテンサイト相の間での切り替わりから、また幾つかの事例では付勢ばねと連携して、有効な運動を作り出す。この有効な運動が、今度は、シール面に印加されて、シールを作る(冷凍中)か又はシールを破る(加温中)。我々は、本発明で1Wアクチュエータ収縮力を呈するアクチュエータをどの様に利用することができるかを説明してきた。また、我々は、押圧力を呈するロールピンアクチュエータをどの様に利用することができるかを説明してきた。以下は、形状記憶材料を使用して適したシールを製作する他の可能なやり方である。
1.2W収縮力を作り出すニチノールばねから成る2Wアクチュエータを備えた閉鎖装置。この方法は、以上に説明されている冷凍容器設計を使用する。
2.閉鎖装置のための或る代わりの設計は、1W又は2W展開力をその閉鎖力として使用することができる。
3.閉鎖装置の或る代わりの設計は、ロールピンアクチュエータから引き出される締め付け力を使用することができる。
結論
【0055】
本開示は、1つ又はそれ以上の異なる代表的な実施形態に関連付けて説明してきたが、当業者には、本開示の範囲から逸脱することなく、様々な変更を加えることができ、また本開示の要素に等価物を置き換えることができることが理解頂けるであろう。更に、本開示の本質的な範囲又は教示から逸脱することなく、特定の状況に適合させるべく多くの修正を加えることができる。従って、本開示は、本発明を実施するための考えられている最良の形態として開示されている特定の実施形態に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0056】
100、200 オーステナイト結晶構造
120、210 マルテンサイト結晶構造
140、220 マルテンサイトからオーステナイトへの変態
142 オーステナイト開始
144 オーステナイト終了
160、240 オーステナイトからマルテンサイトへの変態
162 マルテンサイト開始
164 マルテンサイト終了
180、252 変態ヒステリシス
182、254 全変態温度スパン
190 オーステナイト相
192 マルテンサイト相
300 記憶形状にある螺旋状のニチノールばね
302 円筒形空間
320 ニチノールばねの圧縮又は変形
340 非形状記憶ばね材料の付勢ばね
360 マルテンサイト相の螺旋ばね形状記憶アクチュエータ
362 付勢ばね
364 ニチノールばね
366、368 ばね端
370、382 アクチュエータの全長
380 オーステナイト相の螺旋ばね形状記憶アクチュエータ
384 アクチュエータ収縮力
400 二方向ニチノールばね
402、422 ばねの長さ
404 アクチュエータ収縮力
420 マルテンサイト形状
500 形状記憶アクチュエータ
502 一方向形状記憶ロールピン構成要素
504 普通の金属製付勢ロールピン
506 開口直径、マルテンサイト時の直径
520 記憶形状
522 記憶形状時の直径、オーステナイト時の直径
540 押圧力
542 締め付け力
602 螺旋ばね形状記憶アクチュエータ
604 端キャップ
606 ラッチ用スリーブ
608、610 取り付け点
612 軸
616 アクチュエータの相対的に閉じられている状態、マルテンサイト相
622 アクチュエータの展開した状態、オーステナイト相
640 ラッチ用スリーブの端面図
642 ラッチ
700 シャトル
702 ストッパ
704 管
708 切欠
710 チャネル
712 生体標本
714 ガラス化媒体
716 細胞
718 シャトルの直径
720 勾配
740 シース
742 管状本体
744 密封端
746 係止用タング
748 シースの内径
750 シースの開口端
760 組み立て後の冷凍容器
800 閉鎖装置
802 開口端
804 端キャップ
806 ラッチ
820 冷凍容器
822 係止用タング
824 ストッパ端
840 組み立て済み冷凍容器
900 ストッパ
902 開口
904 基部
906、908 ロールピンアクチュエータ
910 マルテンサイト形状
1000 ニチノール変態温度プロフィール
1002 全変態温度スパン
1020 温度尺
1022 最小温度
1024 最大温度
1040 ニチノール変態温度プロフィール
1042、1044 終点
オーステナイト開始温度
オーステナイト終了温度
マルテンサイト開始温度
マルテンサイト終了温度

【特許請求の範囲】
【請求項1】
形状記憶材料で構成された形状記憶アクチュエータを備えている冷凍容器用の閉鎖装置において、前記アクチュエータは、前記閉鎖装置が極低温温度まで冷却されると、付勢されて、自動的に、前記冷凍容器を密封する力を提供する、閉鎖装置。
【請求項2】
前記アクチュエータは、前記閉鎖装置を前記冷凍容器に取り付けるための手段を備えている、請求項1に記載の閉鎖装置。
【請求項3】
前記形状記憶材料は、前記閉鎖装置が体温まで温められると、前記密封力が取り除かれ、それにより前記冷凍容器が開封されるように選択されている、請求項1に記載の閉鎖装置。
【請求項4】
前記密封力は、前記形状記憶材料のマルテンサイト変態に起因し、前記力の前記解除は、前記形状記憶材料のオーステナイト変態に起因する、請求項1に記載の閉鎖装置。
【請求項5】
前記形状記憶材料はニチノール合金である、請求項1に記載の閉鎖装置。
【請求項6】
前記ニチノール合金は、前記合金の前記マルテンサイト終了温度が約−100℃未満になるように、鉄又はクロムを含んでいる、請求項5に記載の閉鎖装置。
【請求項7】
前記ニチノール合金は、一方向形状記憶合金である、請求項5に記載の閉鎖装置。
【請求項8】
前記形状記憶アクチュエータは、ニチノールばねと同軸に置かれた付勢ばねを備えており、前記ばねそれぞれの両端は動作可能に係合されている、請求項7に記載の閉鎖装置。
【請求項9】
前記力は、展開力か又は収縮力の何れかである、請求項8に記載の閉鎖装置。
【請求項10】
前記形状記憶アクチュエータは、ニチノールロールピンと動作可能に係合している付勢ロールピンを備えている、請求項7に記載の閉鎖装置。
【請求項11】
前記力は、締め付け力か又は押圧力の何れかである、請求項10に記載の閉鎖装置。
【請求項12】
前記ニチノールは、二方向形状記憶合金である、請求項5に記載の閉鎖装置。
【請求項13】
前記形状記憶アクチュエータは、螺旋ばねを備えている、請求項12に記載の閉鎖装置。
【請求項14】
前記力は、展開力か又は収縮力の何れかである、請求項13に記載の閉鎖装置。
【請求項15】
前記形状記憶アクチュエータは、ロールピンを備えている、請求項12に記載の閉鎖装置。
【請求項16】
前記力は、締め付け力か又は押圧力の何れかである、請求項15に記載の閉鎖装置。
【請求項17】
生体標本を極低温温度でガラス化させ、貯蔵するための冷凍容器において、
a.勾配の付いたストッパを自身の端部分に受け入れるように構成されているシャトルと、
b.前記ストッパを受け入れ且つ前記ストッパに押し当てられてシール形成する寸法の開口端を備えているシースと、を備えており、
前記ストッパは、前記極低温温度では、前記シースと共に無菌シールを形成するのに十分な弾性を有している、冷凍容器。
【請求項18】
形状記憶閉鎖装置を更に備えている冷凍容器であって、前記形状記憶閉鎖装置は、前記閉鎖装置が前記極低温温度にあるとき、前記ストッパに対してシール形成する力を前記シースに送達するように構成されている、請求項17に記載の冷凍容器。
【請求項19】
前記シースは、少なくとも1つの係止用タングを備え、前記閉鎖装置は少なくとも1つのラッチを備えており、それに従い、前記閉鎖装置の第1部分は前記ラッチを前記タングに係合させることによって前記シースと動作可能に係合するように構成されており、前記閉鎖装置の第2部分は前記ストッパに係合するように構成されており、前記閉鎖装置は、前記極低温温度に近づくと変形して前記無菌シールを確立するように構成されている、請求項18に記載の冷凍装置。
【請求項20】
前記閉鎖装置の前記変形により、前記ストッパが前記シャトルの中へ押し込まれる、請求項19に記載の冷凍容器。
【請求項21】
前記閉鎖装置の前記変形は、前記閉鎖装置の温度が前記極低温温度より上に上昇すると取り除かれる、請求項20に記載の冷凍容器。
【請求項22】
前記形状記憶閉鎖装置は、前記ストッパに固定されていて、前記閉鎖装置が実質的に前記極低温温度より上にあるときの第1の収縮形態との間で自動的に変態し、前記閉鎖装置は、前記閉鎖装置が前記極低温温度になると展開配置に変態する、請求項18に記載の冷凍容器。
【請求項23】
前記ストッパは、前記閉鎖装置が前記展開配置にあるときは、前記シャトルの内壁部分を圧迫するように構成されており、前記ストッパは、前記閉鎖装置が前記収縮形態にあるときは、前記シャトルの前記内壁部分から離れる方向に引っ込むように構成されている、請求項22に記載の冷凍容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公表番号】特表2011−503189(P2011−503189A)
【公表日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−534125(P2010−534125)
【出願日】平成20年11月11日(2008.11.11)
【国際出願番号】PCT/US2008/083118
【国際公開番号】WO2009/064721
【国際公開日】平成21年5月22日(2009.5.22)
【出願人】(508064322)ヴァンス プロダクツ インコーポレイテッド (6)
【氏名又は名称原語表記】VANCE PRODUCTS INCORPORATED
【Fターム(参考)】