説明

形状転換ガラス化装置

本発明は、形状記憶材料を使用して新規な形状転換の特徴を作り出す、冷凍保存のガラス化法のための貯蔵装置(冷凍容器)において、冷凍容器の該当する熱伝達ゾーンを、生体標本の取り扱いに資する形状と急速な熱伝達に資する形状の間で熱的に変形させることができる、貯蔵装置である。この特徴は、形状記憶材料の温度誘発性相変態を利用している。温度誘発は、ガラス化中に起こる普通の温度変化内で自然に起こる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2008年11月10日出願の米国非仮特許出願第12/267708号「形状転換ガラス化装置」(Shape Shifting Vitrification Device)の継続出願である。前記非仮特許出願を参考文献として援用する。
【0002】
前記米国非仮特許出願第12/267708号、それ自体は、「形状記憶ガラス化冷凍容器」(Shape Memory Vitrification Cryocontainer)の名称で2007年11月12日に出願された米国仮特許出願第60/987,110号に対する優先権を主張している。前記仮特許出願を参考文献としてここに援用する。
【0003】
本発明は、生体標本の冷凍保存のための装置の分野に属する。
【背景技術】
【0004】
生命科学では、貴重な(単数又は複数の)細胞の生物活性を長期に亘り休止させることを目的に、冷凍保存技術が実践されている。冷凍保存の成功の1つの要因は、氷の結晶が形成されるという有害効果を低減又は排除することである。冷凍保存時に水が氷へと凍ってゆく自然傾向を阻止するには、高度な方法が必要である。
冷凍保存
【0005】
氷結晶形成を最小限にする1つの方法は、「緩慢凍結」と呼ばれている。緩慢凍結の最初の工程は、浸透性及び非浸透性の凍害保護物質(「CPA」)を含む水溶液(「緩慢凍結媒体」)を用いて、単一細胞又は複数細胞を脱水することである。単一細胞又は複数細胞は、少量の緩慢凍結媒体と共に「生体標本」を構成する。次いで、生体標本は、適した冷凍容器、即ち、極低温温度で使用するのに適した容器に入れられる。ここで使用されている「極低温温度」とは、−80℃より冷たい温度を意味している。緩慢凍結冷凍保存には、生体標本を、室温からその最終的な極低温貯蔵温度まで、即ち、典型的には液体窒素(「LN2」)の大気圧下沸点である−196℃まで冷凍することが伴う。この温度範囲の一部、即ち、大凡−6℃から下へ−30℃までについては、冷凍速度はプログラム可能なフリーザーによって厳密に0.1−0.3℃/分に制御される。−30℃から−196℃までの冷凍は、冷凍容器をLN2に押し込むことによって実現される。緩慢凍結プロセスは完了するまでに2−3時間掛かり、よってその名が付いている。このプロセスにより、氷の結晶は、実際に、単一細胞又は複数細胞を取り囲んでいるCPAの中に形成され、単一細胞又は複数細胞内では最小限になる。緩慢凍結は、胚及び精子の様な含水量の少ない細胞には有効であるが、卵母細胞及び胚盤胞の様な含水量の多い細胞でも巧くいくとは限らない。この欠陥、高い機器費用、及び高時間消費が、ガラス化と呼ばれる、代わりの冷凍保存方法の開発をもたらした。
ガラス化
【0006】
ガラス化は、細胞に損傷を負わせる氷の形成を完全に回避しようとしている点で、緩慢凍結とは異なる。緩慢凍結と同様、ガラス化の最初の工程は、「ガラス化媒体」と呼ばれるCPA含有流体を使用して、単一細胞又は複数細胞をできる限り多分に脱水することである。次いで、生体標本(緩慢凍結の場合と同じ定義)は、LN2の様な極低温流体への浸漬によって急速に冷凍される。冷凍速度とCPA濃度を適切に組み合わせることで、細胞内水分は、規則的で損傷を負わせる結晶質の氷の状態というより、むしろ固体で無害のガラス様(ガラス質)の状態を獲得することになる。ガラス化は、水分子をランダムな配列で閉じ込める流体粘度の急激な上昇、と書き表すことができる。しかしながら、ガラス化媒体は、緩慢凍結媒体より高いレベルのCPAを含んでおり、ガラス質状態以外では細胞にとって毒性がある。従って、脱水及び解凍(氷が形成されないので「加温」と呼ばれる)時の細胞のガラス化媒体への曝露時間は、細胞損傷を回避するべく慎重に制御されなくてはならない。ガラス化と緩慢凍結の終点は同じ、つまり、LN2の様なクリオゲン内での長期貯蔵である。
【0007】
10℃/分の冷凍速度が可能であったなら、ガラス化は、凍害保護物質を一切用いずに実現することもできよう。60%w/wのCPA濃度を有する極めて有毒なガラス化媒体は、普通の冷凍速度でガラス化させることができる。市販のガラス化媒体は、上記境界の間のCPA処方と最小冷凍可能速度を有している。CPA濃度と最小冷凍可能速度の間の反比例関係は良く知られている。ガラス化媒体の毒性効果を最小限にするためのキーは、そのCPA濃度を最小化することである。従って、素早く冷凍することが望ましく、速ければ速いほど良い。上記に鑑みて、この分野で起こるべくして起こった初期の発見は、生体標本を直接LN2に押し込んで急速冷凍を実現することであった。このプロセスを円滑化し、制御するため、直接の押し込みを可能にする担持装置が作り出された。例を挙げると、電子顕微鏡グリッド、オープンプルストロー(open pulled straw)、クリオループ(Cryoloop)(商標)、ナイロンメッシュ、及びクリオトップ(Cryotop)である。クリオループは、ハンプトンリサーチ(Hampton Research)社の商標である。これらの装置は、生体標本が冷凍用クリオゲン、典型的にはLN2、と直接接触するという点で「開放型担持具」に分類される。開放型担持具は、生体標本の急速加温も可能にした。
【0008】
しかしながら、LN2は無菌ではない。LN2は、細菌種及び真菌種を含んでいるかもしれず、それらは温められると生存能力を持つ。更に、LN2内に長期貯蔵状態に保たれているガラス化された細胞は、前記LN2に人工的に入れられたウイルス性病原体に感染し得ることが報告されている。従って、開放型担持具にはガラス化された生体標本の感染の可能性がある。
【0009】
感染の可能性が、生体標本が冷凍容器内に入れられてLN2内での冷凍前に密封される閉鎖型冷凍容器の開発をもたらした。冷凍容器は、長期貯蔵中に生体標本を、病原体を含んでいるクリオゲンから隔離する貯蔵装置としての役目も果たす。しかし、生体標本を保護する正にその表面が、ガラス化中の熱の除去を妨げ、冷凍速度及び加温速度を下げもする。この目的の対立のせいで、ガラス化に有効な閉鎖型冷凍容器の開発は難しい課題であることが判明している。
【0010】
図1は、有効な閉鎖型冷凍容器の競合する設計制約5項目の間の関係100を示している。これらの制約事項は、「安全なガラス化媒体」、「速い冷凍速度及び加温速度」、「無菌の細胞環境」、「標本の物理的保護」、及び「使い易さ」である。ガラス化には、速い冷凍速度及び加温速度が必要であり、速ければ速いほど良い。利用可能な冷凍速度により、細胞を毒することなく安全に使用することができるガラス化媒体中のCPAレベルが決まる。矢印102は、これら2つの要因が相互に関係していることを示している。閉鎖型冷凍容器は、生体標本を無菌環境に維持しなければならない。生体標本は長期貯蔵の間中この様に保たれなくてはならない。冷凍容器は、通常の取り扱いと事故的な手荒な取り扱い(例えば落下)の両方で、その物理的完全性を維持できるほどに頑丈でなければならない。閉鎖型冷凍容器は、普通に訓練された技術者が過度のフラストレーション無しに生体標本を処理できるようになっていなくてはならないし、技法上の軽微な誤差を許容することができなければならない。
現在のガラス化用冷凍容器の限界
【0011】
米国特許第7,316,896号「卵の凍結及び貯蔵用の用具と方法」(Egg freezing and storing tool and method)(‘896号装置)には、ガラス化用の閉鎖型冷凍容器が記載されている。この装置は、細いプラスチック管(公称外径(OD)が0.25mmで壁厚が0.02mm)を備えている。典型的な生体標本は、0.125mmのODを有するヒト卵母細胞を含むことになろう。それが、ガラス化媒体を用いて脱水され、管に引き入れられる。次いで、管の両端が加熱シールされて無菌容器を作り出す。室温で毒性を有するガラス化媒体への曝露は制限されるべきであるため、装入時は時間が要である。生体標本のガラス化に何がしかの遅延があれば、ガラス化媒体中の温かいCPAへの過剰曝露による細胞損傷に繋がるかもしれない。しかしながら、‘896号装置はサイズが極めて小さいため、その中へ生体標本を装入する行為は簡単ではない。‘896号装置の細さも、通常取り扱い時の頑丈さに関して疑問を呈する。更に、熱シールのうち一方は生体標本に非常に近接して作成されることから、熱が細胞を傷める懸念がある。
【0012】
米国特許出願第2008/0220507号「極低温ガラス化により保存させるべき規定体積の物質を充填するためのキット」(Kit for Packaging Predetermined Volume of Substance to be Preserved by Cryogenic Vitrification)(‘507号装置)には、管内管閉鎖型冷凍容器の概念が記載されている。管は共にプラスチックから製作されている。内側の管は、生体標本が設置される一方の端にチャネルが作成されるように修正が加えられている。そうして、装入される内側の管が外側の管内に設置される。次に、外側の管の装入端が加熱シールされて、無菌の冷凍容器を作り出す。‘507号装置は、規模的には‘896号装置より大きい寸法を有し、従って、より使い易くはある。しなしながら、装入される内側の管が外側の管内に設置されるようにするためには、両者の間に多少のクリアランスがなくてはならない。従って、生体標本と外側の管の間に空気の隙間が存在する。空気は熱伝導率が低いので、生体標本をクリオゲンから効果的に断熱する。‘507号装置では、冷凍速度が相対的に遅くなるため、より高いCPAレベルが必要となる。
【0013】
国際特許出願WO07/120829「哺乳類細胞の冷凍保存の方法」(Method of the cryopreservation of mammalian cells)(‘829号装置)には、ガラス化用の極細管の使用が記載されている。‘829号装置の1つの実施形態は、超微細な極細毛細管の石英管である。生体標本は、その様な装置の中に引き入れられてガラス化されることになる。格段に薄い壁断面(10ミクロン)と、プラスチックとの比較における石英の熱伝導率の高さとにより、発明人らは‘829号装置が高い(30,000℃/分より大きい)冷凍速度を有することになるものと主張している。しかしながら、サイズが小さく壁が薄いということは、非常に脆弱な容器であることを示唆しており、どの様に無菌シールが作られるかに関しては何も示されていない。
【0014】
1984年以来、ガラス化はヒト細胞を冷凍保存するのに使用されてきた。しかしながら、その緩慢凍結の同等物は、依然として、有力な冷凍保存方法である。適した冷凍容器の欠如が、ガラス化の実施を制限してきたのではないかと感じる。先行技術の冷凍容器は、図1の1つ又はそれ以上の設計制約事項を他の制約事項の利益のために無視するという妥協である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】米国非仮特許出願第12/267708号
【特許文献2】米国仮特許出願第60/987,110号
【特許文献3】米国特許第7,316,896号
【特許文献4】米国特許出願第2008/0220507号
【特許文献5】国際特許出願WO07/120829
【発明の概要】
【0016】
本発明の概要を、本発明を理解するための手引きとして提供する。それは、必ずしも、本発明の最も一般的な実施形態を記述しているのでもなければ、ここに開示されている本発明のあらゆる種類を記述しているわけでもない。
改良されたガラス化用冷凍容器
【0017】
本発明の目的は、改良された閉鎖型ガラス化冷凍容器を提供することである。本発明によって考案された装置は、図1の5つの属性全てを総体的に組み入れている。本発明は、小型化の進んだ脆弱な冷凍容器に解を求めるのではなく、むしろ新しい方向に進み、形状記憶材料の特徴を利用して新しい設計を作り出している。
【0018】
本発明は、装入及び抜取りの容易さと急速冷凍の両方を実現する変形可能な壁を備えた閉鎖型ガラス化冷凍容器を備えている。この特徴は、形状記憶材料の固有の材料特性を利用している。形状記憶材料は、高温のオーステナイトと低温のマルテンサイトの2つの結晶構造で存在する。オーステナイト相は、堅さと超弾性の性質を特徴とする。マルテンサイト相は、柔らかくて可鍛性がある。物体のそのオーステナイト相における形状を「記憶形状」と呼ぶ。形状記憶材料が、そのオーステナイト相からマルテンサイト相に冷却され、そして変形した場合、それを加熱してそのオーステナイト相に戻せば、そのオーステナイト形状に戻るであろう。これらの2つの相の行き来が、好都合にも本発明に組み入れることができる設計オプションを可能にする。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】ガラス化冷凍容器に要求される設計属性を示す図である。
【図2】形状記憶材料(一方向形状記憶を呈する)の結晶状態と温度の関係を示す図である。
【図3】形状記憶材料(二方向形状記憶を呈する)の結晶状態と温度の関係を示す図である。
【図4】シャトル、シース、及び組み立てられた冷凍容器の特徴を示している。
【図4A】シースの端部分の或る代わりの実施形態を示している。
【図5】本発明の形状転換の特徴を示している。
【図6】温度制御槽の特徴を示している。
【図7】体温ニチノールで構成されている冷凍容器を用いたガラス化プロセスを示している。
【図8】超弾性ニチノールで構成されている冷凍容器を用いたガラス化プロセスを示している。
【図9】二方向ニチノールで構成されている冷凍容器を用いたガラス化プロセスを示している。
【図10】可鍛性金属で構成されている冷凍容器を用いたガラス化プロセスを示している。
【図11】クリンプ付け用具の特徴を示している。
【図12】冷凍容器の壁が形状記憶部材と非形状記憶部材の混成である或る代わりの実施形態を示している。
【図13】変形可能な壁を有する冷凍容器を、形状記憶アクチュエータ閉鎖装置及び形状記憶アクチュエータ温度表示装置と組み合わせた或る実施形態を示している。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下の詳細な説明では、本発明の様々な実施形態と特徴が開示されている。これらの実施形態と特徴は、例示であり制限を課すものではない。
【0021】
「約」という用語がここで使用されている場合、それは、温度に関する場合を除き、また特に別途指示の無い限り、パラメータの所与の値の+/−20%内を意味する。温度については、「約」は所与の値の+/−2℃を意味する。
【0022】
本発明を使用すれば、様々な生体細胞を無菌で冷凍保存(ガラス化)することができる。細胞の1つの分類は、精子、卵母細胞、胚、桑実胚、胚盤胞、及び他の初期胚細胞の様な、哺乳類の発生細胞である。これらの細胞は、生殖補助処置ではごく普通に冷凍保存される。もう1つの分類に、再生医療で使用される幹細胞がある。最も広範な分類は、本発明の利用可能な冷凍速度と協調するガラス化媒体を使用してガラス化させることができるあらゆる細胞である。
形状記憶効果
【0023】
形状記憶効果は、Ag−Cd、Au−Cd、Cu−Al−Ni、Cu−Zn−Al、Cu−Zn−Si、Cu−Zn−Sn、Cu−Sn、Cu−Zn、Fe−Pt、Fe−Mn−Si、In−Ti、Mn−Cu、Mn−Si、Ni−Ti、Ni−Al、その他の様な或る特定の金属の合金に存在する。このグループの中では、Ni−Tiの合金が、商業的に最も普及している異体であり、ニチノールと呼ばれている。また、或る特定のポリマーにも形状記憶現象を呈するものがあり、形状記憶プラスチックと呼ばれている。本発明は、広範囲に様々な形状記憶合金又はプラスチックで実現することができる。使用される特定の合金又はプラスチックは、当業者が選択すればよい。本発明の理解を促すため、この説明の欄ではニチノールの形状記憶材料としての性質を使用して本発明の特徴を説明してゆく。
【0024】
形状記憶効果は、物体が2つの異なる結晶状態で存在し得る現象である。第1の高温状態にある物体は、剛性を有し、固有の定形状を備えている。この物体は、冷却されると、容易に変形可能な状態へ変化する。当該物体は、材料を加熱することによって、その変形可能性を喪失させ、その固有の定形状に形態変化させて戻すことができる。材料科学は、これらの物理的状態の間の行き来は、材料の温度誘発性相変化によって引き起こされる現象であることを我々に教えてくれる。
【0025】
図2は、「一方向」形状記憶材料の挙動を示している温度誘発性形状記憶相変化の図である。形状記憶材料は、オーステナイト(図像200)とマルテンサイト(図像210)の2つの結晶構造で存在する。オーステナイト相は、堅さと超弾性の性質を特徴とする。マルテンサイト相は、柔らかく、可鍛性がある。オーステナイト物体の形状は「記憶形状」と呼ばれる。オーステナイト相の物体は、冷却によってマルテンサイトへ変態させることができる。柔らかいマルテンサイトのとき、物体は、変形させることができる。このマルテンサイト物体は、加熱によって変態させてオーステナイトへ戻すことができる。この相変換があると、物体の形状は、(多少の力を加えれば)「記憶形状」に戻るであろう。定オーステナイト形状から非定マルテンサイト形状への変態は、一方向形状記憶と呼ばれる。
【0026】
機械的応力も、オーステナイト相からマルテンサイト相への変態を生じさせることができる。しかしながら、ひとたび応力が取り除かれると、材料はオーステナイトに復帰する。この属性は、超弾性と呼ばれており、大きな弾性変形を受け得る能力である。
【0027】
ここで使用されている「変態」という用語は、記憶形状を備えた或る相への、又は記憶形状を備えた或る相からの、相変化をいう。マルテンサイトからオーステナイトへの変態230は、A(オーステナイト開始)236からA(オーステナイト終了)238までの温度の範囲に亘って起こる。同様に、オーステナイトからマルテンサイトへの変態240は、M(マルテンサイト開始)246からM(マルテンサイト終了)248までの温度の範囲に亘って起こる。オーステナイト変態とマルテンサイト変態は、異なる温度帯域で起こる。この現象は、変態ヒステリシス252と呼ばれている。変態ヒステリシスは、加熱されてオーステナイトに50%変態している物体と冷却されてマルテンサイトに50%変態復帰している物体の間の温度スプレッドである。全変態温度スパン254は、物体を100%マルテンサイトと100%オーステナイトの間で変態させるのに必要な温度範囲である。ニチノールでは、全変態温度スパンは大凡50℃である。形状記憶材料の重要な特性は、或る物体が、その物体の加熱及び冷却の履歴に依って、変態温度帯域の間の或る温度で、そのオーステナイト相262かそのマルテンサイト相264の何れかになり得ることである。本発明を採用する方法は、室温で何れかの相にある形状記憶材料を利用する。所望の相は、1)温水槽(例えば、体温)内で温めてマルテンサイトをオーステナイトに変態させ、続いて室温まで冷却するか、又は2)ガラス化プロセスで容易に利用可能な極低温材料(例えば、ドライアイス、LN2、低温気体ヘリウム)を用いて冷凍してオーステナイトをマルテンサイトに変態させ、続いて室温まで温めるか、の何れかによって常に実現することができる。
【0028】
ニチノールでは、変態温度246、248、236、及び238は、Ni対Ti原子比と、ニチノールの合金形成後の治金加工によって決まる。ニチノールのオーステナイト記憶形状は、材料がオーステナイト相にあるときに治金加工によって作られる。
【0029】
図3は、二方向形状記憶を呈する形状記憶材料での温度誘発性形状記憶相変化の図である。殆どの形状記憶材料は一方向形状記憶を呈するが、それらを鍛えて二方向形状記憶を呈するようにすることができる。これらの材料は、オーステナイト(図像300)とマルテンサイト(図像310)の2つの結晶構造で存在する。二方向形状記憶材料から製作された物体は、相に応じた2つの固有の形状を有することになる。オーステナイト物体は、「オーステナイト形状」を有していることをいう。マルテンサイト物体の形状は、「マルテンサイト形状」と呼ばれる。どちらの形状も、安定していて区別が付く。一方向形状記憶では「記憶形状」が1つであったのに対し、二方向形状記憶には2つの「記憶形状」がある。温度転換320及び340は、形状記憶材料を相の間で切り替え、結果として形状変化を生じさせる。変態ヒステリシス352と全変態温度スパン354は、一方向形状記憶材料の場合と同じ意味を有する。
本発明の基本的構成要素
【0030】
図4は、代表的な冷凍容器の略管状要素の長手方向断面を示している。冷凍容器は、シャトル400とシース420を備えている。シャトルは、チャネル406及び472を提供するべく端に切欠404(断面470も参照のこと)が切られた管402を備えている。チャネル表示408が、チャネル上のどこに生体標本410を置くべきかを定めている。チャネル表示は、溝又は印刷された線とすることもできる。シャトルの直径412は、生体標本の直径より大きくなくてはならない。典型的な生体標本は、体積が0.5マイクロリットルであり、直径約1mmに相当する。従って、シャトルに適した直径は約2mmである。シャトルには整列表示414を備えて、シャトルをシース内に設置するときに、シャトルを対応するシース側の整列表示438と整列させるのに役立ててもよい。表示414及び438は、印刷されたラインとすることができる。
【0031】
シース420は、非形状記憶材料で作られている管状本体422と、形状記憶材料で作られている変形可能区間424と、端キャップ426を備えている。形状記憶材料は比較的高価であるので、複合構造はシステムのコストを削るのに役立つ。管状本体は、428で変形可能区間に取り付けられている。管状本体は、変形可能区間の外側に、両者の間にとまり嵌めが形成されるようにして配置されていてもよい。接合部は、接合部が無菌シールを形成して、極低温流体への浸漬に耐えられるようにするため、糊、溶接、又は他の接合手段によって強化することができる。端キャップは、430で変形可能区間に取り付けられている。以下で更に詳しく論じてゆくが、形状記憶材料は、適切な範囲の変態温度を有する如何なる材料とすることもできる。「体温ニチノール」が適している。
【0032】
図4Aは、シースの或る代わりの実施形態4A00の該当する熱伝達ゾーンの長手方向上面図を示している。変形可能区間4A02は、端キャップ4A04と管状本体4A08の外部に同心に、それらとの間にとまり嵌めが形成されるようにして配置されている。接合部(4A06と4A10)は、糊、溶接、又は他の手段を使って補強することもできる。変形可能区間を管の外部にするか内部にするかの選定は、少なくとも部分的には、変形可能区間対管状本体及び端キャップの熱膨張の相対係数によって決まる。
【0033】
本発明の基本的な構成要素は生体標本と接触するかもしれない。ヒト生殖細胞は、或る特定の材料に不都合な反応を示す。その様な反応を引き起こさない材料は、「非胎児毒性」と呼ばれる。よって、シャトル、シース、及び端キャップとして適切な材料には、極低温用役に適した非胎児毒性材料が含まれる。サーリン(Surlyn)8921の様なアイオノマー樹脂が適している。我々の試験により、ニチノールは非胎児毒性であり、従って同様に適していることが示されている。ニチノールは、極低温温度で使用することができる。
【0034】
変形可能区間の長さ432、直径434、及び壁厚436は、変形可能区間が形状転換サイクルを果たすことができるように選定されている。形状転換サイクルは、2つの作用、即ち、1)変形可能区間の壁が、生体標本に触れるように変形する作用と、2)変形した壁が、オーステナイト変態を生じさせる加温によって、実質的にその変形前の形状に復元して生体標本から離れる作用、で構成されている。容易に変形可能であることは、手持ち用具を使用して壁にクリンプを付けることができることを意味する。2mmのシャトル直径に適した変形可能区間の直径は2.1mm又はそれ以上である。適した壁厚は0.025から0.4mmの範囲にある(0.065mmが好適)。適した長さは、10から20mmの範囲にある。
【0035】
冷凍容器450の組み立ては、生体標本が入れられているシャトルの切欠端をシースの開口部440の中へ、シャトルの端が端キャップの内側表面456に接触するまで前進させることから開始される。このプロセス中は、シャトル側の整列表示414とシース側の整列表示438を整列させる。これを行うとき、変形可能区間側の生体標本位置表示492及び494(横断面490を参照)の向きを生体標本と合わせる。生体標本位置表示は、次に続く生体標本への又は同標本からの急速な熱伝達を目的として、変形可能区間上のクリンプを付けるのに適した位置を定めている。次いで、シースの開口端が熱融合される454。これにより無菌シール452が形成され、冷凍容器は今やクリンプ及びガラス化の準備が整った状態にある。十分に長い冷凍容器は、融合プロセスによって何がしかの熱が発生しても、生体標本に影響が及ぶのを防ぐ。4−6cmの長さ458は十分である。
【0036】
図5は、組み立てられた冷凍容器の該当する熱伝達ゾーンのクリンプが付けられる前500とクリンプが付けられた後520の長手方向上面図を示している。アイテム540及び560は、これらのアイテムの横断面である。分かり易くするために、シャトルのチャネルは、アイテム500及びアイテム520では省略されている。変形可能区間の壁は、マルテンサイト即ち可鍛性の相にあるニチノールである。
【0037】
アイテム500に示されている滴形状の生体標本502は、ガラス化媒体504と、冷凍保存させる1つ又はそれ以上の細胞506を備えている。横断面540を参照すると、生体標本548と冷凍容器544の壁の間には、生体標本がチャネル546に載せられた後、シースの壁に接触することなく、簡単に管状シース内に装入されるようにするのに十分なクリアランス542がある。
【0038】
アイテム520及び対応している横断面560を参照すると、変形可能区間の壁はクリンプが付けられている。生体標本位置表示550及び552は、生体標本の上方に位置し、更にチャネルを避けた、変形可能区間上の点を指し示すことで、クリンプ付けを案内している。位置表示は、変形可能区間上に十字の形状に印刷されたマークであってもよい。それらは、レーザーマーキングによって作成されていてもよい。クリンプ付けは、ピンセットの使用の様な普通の手段によって実現することができる。生体標本562の一部分がシースと直接接触するような十分なクリンプ付けが施される。シースが過剰にクリンプを付けられ、場合によっては変形可能区間を損傷するのを防ぐため、幾つかの実施形態では変形可能区間に定量の変形を加えるべく、下で論じられている修正されたピンセット1100(図11)を使用してもよい。この直接接触は、生体標本と周囲環境の間の非常に高い熱伝達率を可能にするであろう。
【0039】
変形可能区間の内部壁564は、変形可能区間が温められてその元の管状形状に戻されたときに、生体標本がそこから離れ、シャトルに付着したままになるように、疎水性であってもよい。必要であれば、変形可能区間の内壁は、ポリテトラフルオロエチレン(商標名テフロン(登録商標)(Teflon)で市販)又はポリキシレンポリマー(商標名パリレン(Parylene)で市販)の様な疎水性の非常に高い材料の層で被覆することによって、疎水性をより高めてもよい。
【0040】
次いで、冷凍容器をLN2(−196℃)の様な適したクリオゲンに曝露させることによってガラス化させる。冷却は極めて急速(例えば大凡1秒)であり、生体標本がガラス化する。
【0041】
次に冷凍容器は、所望の期間、極低温貯蔵の状態に保たれることになる。生体標本を回復させることが必要になると、冷凍容器は、極低温貯蔵庫から温水槽(例えば、体温である37℃)へ移される。水槽は、形状記憶シースを、その変形可能なマルテンサイト相からその堅いオーステナイト相へ変態させる、即ちオーステナイト変態に足るほどに温かい。これにより、シースは、抜取りに最適な形状である、その「記憶されている」円筒形状(アイテム500及び対応する横断面540)に戻される。生体標本は滴形状に復帰し、クリアランスが復元されて、シャトルが容易に取り出せるようになる。冷凍容器が開かれ、生体標本を回復させるためシャトルが取り出される。
【0042】
本発明の形状転換の特徴に加え、ニチノールの熱伝達面としての使用から追加の益がもたらされる。ニチノールは、冷凍容器を製作するのに使用される典型的なプラスチックより強い。更に、その熱伝導率はプラスチックより遥かに高い。これらの属性が一体に効果を発揮して、プラスチックより巧く熱を伝導する頑丈な変形可能区間を生み出す。
本発明を利用する方法
【0043】
本発明は、様々な方法で適用することができる。例外と特記されない限り、以下に説明されている例は、一方向ニチノールを利用している。
【0044】
ガラス化媒体を用いた生体標本の脱水は、通常は、室温、公称的に20℃で行われる。これは装入温度でもある。急速冷凍は、通常は、LN2を用いて−196℃で実現される。加温は、通常は、37℃で行われる。貯蔵時と使用時の200℃を上回る温度差は、典型的に約50℃であるニチノールの全変態温度スパンを大きく超えている。これは、オーステナイト終了温度が凡そ約37℃のニチノールは如何なる等級のものであっても、LN2によって、常にマルテンサイトへと変態することができることを意味する。これは、大気圧下沸点が−42℃の液体プロパンがクリオゲンとして使用された場合でも当てはまる。
【0045】
冷凍容器を製作するのに使用されるニチノールは、室温では変形可能であるとともに、37℃までに実質的にその記憶形状に復元している必要がある。これらの要件を実現させる1つの方法は、そのオーステナイト開始温度が室温より僅かに高く且つそのオーステナイト終了温度が体温である37℃ぐらいのニチノールを製造することである。例えば、オーステナイト開始温度は、20℃から25℃の範囲内とすることができる。オーステナイト終了温度は、37℃から40℃の範囲内とすることができる。オーステナイト開始温度とオーステナイト終了温度のこの組み合わせを実現させる方法は、「体温」ニチノール(例えば、Aが15℃から18℃の間でAが30から35℃の間)を製造するためのプロセスを、ニッケル対チタンの比、合金の熱加工、又は銅の様な第3の合金化元素を追加する量のうち1つ又はそれ以上を調節することによって修正することを含んでいる。
【0046】
意外にも、オーステナイト開始温度が室温より2乃至4℃下のニチノール合金も適している。当該合金は、そのオーステナイト開始温度を2−4℃上回っても、手でクリンプを付けることができるだけの可鍛性を依然として保持している。同様に、オーステナイト終了温度が体温より2−4℃上の合金も適している。ニチノールは、体温まで温められると、オーステナイト終了温度に完全に達しているわけではなくても、実質的に抜取りのためのその記憶形状を取り戻すであろう。
【0047】
オーステナイト開始温度が室温より2−4℃下から更に下のニチノールは、適度に冷やされた状態、望ましくは同様に冷やされた手持ち用具を用いてクリンプを付けられた状態に保たれるなら、使用することができる。従って、標準的な体温ニチノールは、使用することができる。体温ニチノールは、約15℃のオーステナイト開始温度と、約33℃のオーステナイト終了温度を有する。体温ニチノールは、室温(例えば20℃)では、手持ち用具を使ってクリンプを付けるには十分な可鍛性を有していないかもしれない。しかしながら、体温ニチノールは、装入中は可鍛性を維持するように、人為的に室温より下に保持することができる。適した保持温度は、0−10℃の範囲にある。体温ニチノールから製作された冷凍容器は、最初に、そのマルテンサイト終了温度より下まで冷却されなくてはならない。これは、冷凍容器を従来型のフリーザー内に入れるか、又はそれをLN2の中へ押し込むことにより、行うことができる。体温ニチノールがその可鍛性を維持するには、冷凍容器は、装入されてクリンプを付けられるときまで約15℃のそのオーステナイト開始温度より下に保たれなくてはならない。これは、室内を冷たく保つ、シースを冷蔵庫に入れておく、シースを温度制御された槽に入れておく、又はそれらの組合せの様な、数々の手段によって行うことができる。
【0048】
温度制御された槽の或る代表的な設計が、図6に示されている。槽600は、平坦な底部604と上部の溜め606を有する略球形の容器602を備えている。槽は、2つの部品を継目608で接合して作られていてもよい。ポリカーボネートの様な透明なプラスチックは、適した構造材料である。槽の内部には、オーステナイト開始温度より下の温度で溶ける材料が充填されている。融点が10℃のパラフィン610が適している。
【0049】
実施時、先ず、槽を冷蔵庫内で冷やしてパラフィンを凍らす。槽は、使用前に取り出され、溜めに水612が入れられる。水がパラフィンを温めると、パラフィンが溶け始める。すると、水とパラフィンは共に、パラフィンの融点で熱平衡になる。そこで、自身のマルテンサイト終了温度より下まで冷やされたシース614を溜めに浸漬させることができ、シースは槽の温度に維持されることになる。ピンセットの様な用具を用いてクリンプ付けが行われる場合、用具は、用具自体が変形可能区間に接触して同区間をオーステナイト開始温度より上に上昇させないように、同様に水槽温度で平衡化させることができる。
【0050】
図7に示されている様に、生体標本をガラス化するときになると、シースは溜めから取り出され、シャトルは生体標本と一体にシースの中へ入れられる。該当するガラス化熱伝達ゾーンは、横断面700として示されている。生体標本は視界から隠されており、よって変形可能区間上の生体標本位置表示702及び704が、クリンプを形成する最適位置を指し示す。クリンピング点720及び722を有する、修正が加えられたピンセットの様な手持ち式用具が、冷凍容器にクリンプを付けて横断面724を形成する。横断面724はクリンプを付けられた直後の冷凍容器を示している。可鍛性の体温ニチノールは、外部から力を加えなくてもそのクリンプを付けられた形状を維持する。クリンプ付けは、速いプロセスなので、体温ニチノールはその可鍛性を損なう温度まで温まらない。次いで、冷凍容器の入口が、熱シールの様な従来の手段によって密封される。
【0051】
その後、冷凍容器は、例えば、−196℃の液体窒素742が入っている極低温槽740に入れられる。冷却は極めて急速(例えば約1秒)であり、生体標本744がガラス化する。
【0052】
その後、冷凍容器は、所望の期間、極低温貯蔵状態に保たれてもよい。
【0053】
ガラス化した生体標本を回復させることが必要になると、冷凍容器は、液体窒素槽から、体温である37℃の水762が入っている温水槽760へ移される。水槽は、形状記憶シースを、その変形可能なマルテンサイト相からその堅いオーステナイト相へ変態させるに足るほどに温かい。これにより、シースは、その「記憶されている」円筒形状764に戻される。こうして、生体標本766は安全に温められ、シャトルを簡単に取り出すためのクリアランスが再び提供される。
【0054】
図8に示されている様に、オーステナイト終了温度が約10℃の様な低い温度のニチノール合金は、オーステナイト相にあるときは、ニチノールの超弾性的性質を生かすことによって使用することができる。横断面800は、室温ではオーステナイトであるニチノールから製作された冷凍容器を示している。シャトルが生体標本と一体に、上で説明されている様にシースと組み立てられる。次いで、無菌シールが形成される。生体標本位置表示802及び804は、冷凍容器の最適なクリンピング点を指し示している。オーステナイトのニチノールは、マルテンサイトに比べ、変形を実現するのにより高い力を必要とする。従って、オーステナイトを変形させるには、ピンセットではなく、一対の修正を加えられたピラーが必要である。そこで、その様な一対のピラーの接触点822及び824で冷凍容器にクリンプを付けて横断面820を形成する。冷凍容器がクリンプを付けられた状態を保てるように、ピラーはそのクリンプ付けの力を維持し続けなければならない。
【0055】
クリンプを付けられた冷凍容器842を保持する締め付けられたピラー対は、次いで、LN2 844が入っている極低温槽840に入れられる。冷却がLN2からピラーの接触点を介して伝わり、ガラス化を実現する。同時に、変形可能区間はマルテンサイトに変態する。ここでピラーを取り出すことができる。冷凍容器846は、そのクリンプを付けられた形状、即ち、熱伝達に最適な形状を維持し、それが加温中に遊隙になってゆく。冷凍容器は今や長期極低温貯蔵の準備が整った状態である。
【0056】
ガラス化された生体標本を回復させるには、冷凍容器を液体窒素槽から温水槽860(例えば体温である37℃)に移す。水862は、形状記憶シースを、その変形可能なマルテンサイト相から、その堅いオーステナイト相に変態させるに足るほど温かい。これにより、シースは、その「記憶されている」円筒形状864に戻される。こうして、生体標本866は安全に温められ、シャトルを簡単に取り出すためのクリアランスが再び提供される。
二方向形状記憶合金
【0057】
図9に示されている様に、本発明は、二方向ニチノールから製作された冷凍容器を用いて実装することもできる。一例として、−10℃のマルテンサイト終了温度と、37℃のオーステナイト終了温度を有する材料がある。この材料で作られたシースは、円筒形状のオーステナイト形状と、クリンプを付けられたマルテンサイト形状を有することができる。先に説明した様に、シャトルが生体標本と一体に、シースと組み立てられる。無菌シールが形成される。横断面900は、二方向ニチノールから製作されていて、ガラス化の準備が整っている冷凍容器を示している。クリンプ付け用具は一切必要なく、よって生体標本の位置表示は必要ない。
【0058】
ガラス化させるため、冷凍容器は、LN2 922が入っている極低温槽920に入れられる。冷却は、マルテンサイト変態を誘発し、変形可能区間をそのオーステナイト形状924からそのマルテンサイト形状926へ形状転換させる。この形状は、熱伝達に最適であり、加温中に遊隙になってゆく。急速冷却は、相変化と同時に、生体標本をガラス化する。そうすると、冷凍容器を長期極低温貯蔵庫に入れることができる。
【0059】
ガラス化された生体標本の回復は、他の実施形態と同じ工程に従う。冷凍容器は、液体窒素槽から温水槽940(例えば体温である37℃)に移される。水942は、変形可能区間をその記憶されているオーステナイト形状944(円筒)に形状転換させるオーステナイト変態を誘発するに足るほど温かい。こうして、生体標本946は安全に温められ、シャトルを簡単に取り出すためのクリアランスが再び提供される。
可鍛性金属
【0060】
図10に示されている様に、金、銀、銅、錫、及びアルミニウムの様な可鍛性金属は、ピンセットの様な手持ち用具を用いて容易に変形させることができる。それらは、速い熱伝達に資する高い熱伝導率を有している。シースは、可鍛性金属の変形可能区間を備えて製作することができる。シャトルが生体標本と一体に、このシースと組み立てられる。無菌シールが形成される。横断面1000は、変形可能区間が可鍛性金属から製作されている冷凍容器を示している。生体標本位置表示1002及び1004は、熱伝達に最適な形状を実現するのに最適なクリンプ付け位置を指し示している。クリンピング点1022及び1024を有する、修正が加えられたピンセットの様な手持ち用具が、冷凍容器にクリンプを付けて横断面1020を形成する。可鍛性金属は、外部から力を加えなくても、そのクリンプを付けられた形状を維持する。次いで、クリンプを付けられた冷凍容器は、LN2 1042の入った極低温槽1040に入れられる。冷却は極めて急速(例えば約1秒)であり、生体標本1044はガラス化する。冷凍容器は今や長期極低温貯蔵の準備が整った状態である。
【0061】
ガラス化した生体標本を回復させるには、冷凍容器1064を、LN2から温水槽1060(例えば体温である37℃)に移す。水1062は、生体標本1066を安全に温める。
【0062】
可鍛性金属の変形可能区間は、温度変化ではその円筒形状に復帰しない。形状を復元する1つのやり方は、シースの入口440(図4)で気圧供給源を適用することである。圧力がシースの内部空洞に印加され、クリンプを付けられた可鍛性金属の管をその元の円筒形状に機械的に復元する。約6.9Pa−344kPa(1−50psig)の圧力が適しており、約6.9−103kPa(1−15psig)の圧力が好適である。ヒト細胞は、高い(数百バール)圧力への短時間曝露に耐えることが示されている。従って、クリンプを付けられたシースを内からの空気圧を用いて外へ向けて変形できるようにするためのシースの設計パラメータは、普通は、生体標本によって制限されることはない。クリアランスが復元され、生体標本の回復のためにシャトルを簡単に取り出せるようになる。
【0063】
或る代わりの回復方法は、温められた冷凍容器1080からシャトルを取り出し、生体標本を残留させることである。次に、細針シリンジをシースの入口に挿して内部空洞に洗浄液を灌注することができる。生体標本は、シャトル上に無ければ、排流された洗浄液中に見つけることができる。
クリンプ付け用の器材
【0064】
図11は、変形可能区間にクリンプを付けるのに使用することができる、修正が加えられたピンセット1100と修正が加えられたピラー1120を示している。ピンセット(ピラー)は、確実に、クリンプが所定の深さになるようにするため、ストッパ1102(1122)を備えている。それらは、ユーザーが、クリンプを付けるときに、それら用具を変形可能区間側の生体標本位置表示と正しく整列させるのを支援するクリンピング表示1104(1124)も備えている。ジョー1106(1126)は、クリンプを付けるときに、変形可能な区間に所定の形状を与えるように修正されてもよい。機械的利点がより高いピラーは、ピンセットより多くのクリンピング力を掛けることができるであろう。この追加の力は、超弾性のニチノール合金にクリンプを付ける際に有用である。
代わりのシース構成と複合材料
【0065】
図12は、2つの互いに反対側のニチノール部分1202と2つの非ニチノール部分1204を備えて製作された複合壁を有する冷凍容器1200の横断面を示している。ニチノールの量の削減は、材料費を低く抑えるのに役立つ。非ニチノール面は、極低温温度に適している非胎児毒性材料から製作されている。冷凍容器の4つの面は、1206で表されている4つの場所で接合されている。冷凍容器内で、生体標本1208は、チャネル1210に載せられている。複合壁型冷凍容器は、装入及び抜取りに適した記憶形状を有している。ここで説明されている他の実施形態と同様に、この複合冷凍容器のニチノールは、可鍛性のマルテンサイトかオーステナイトの何れかとすることができる。従って、クリンプ付け用具を使用することによって、それにクリンプを付けて横断面1220を形成することができる。この形状は、熱伝達が改善されるように生体標本に接触1222する。37℃まで温めると、この冷凍容器は、その円筒形の記憶形状に復帰する。記憶形状は、生体標本を簡単に回復できるようにするクリアランスを復元する。
一般的考察
【0066】
ニチノールから製作されている形状記憶装置は、8%回復可能歪みに相応する。銅を基材とする形状記憶材料は、12%回復可能歪みに相応する。本発明は、少なくとも1%の回復可能歪みか非回復可能歪みの何れかに、破裂することなく耐えることができる材料を使用すれば効を奏する。回復可能歪みがより高いと、その結果、より深いクリンピングがもたらされ、それらの記憶形状への復帰を可能にしながらも熱伝達を向上させることができる。本発明は、利用可能な回復可能歪みをより効率良く利用することのできる非円形形状に適用し、更に速い冷凍速度を実現することができる。
形状記憶ポリマー
【0067】
形状記憶ポリマーは、形状記憶現象を呈するポリマーである。しかしながら、ポリマーの当該現象は、2つの変態温度帯域を有する形状記憶合金での様な2つの結晶状態から生じるのではない。形状記憶ポリマーについて理解するには、ガラス転移温度Tと呼ばれる1つの特性温度しか必要でない。記憶形状は、製作中に、Tより上の温度で確立される。その後、ポリマー部分は、異なる形状に変形させて、Tより下に冷却することができる。当該部分は、Tより下に保たれている限り、その変形形状を維持することになる。当該部分は、Tより上に加熱されると、その記憶形状に復帰する。こうして、冷凍容器は、形状記憶ポリマーの変形可能区間を備えて製作することができ、図8に教示されている方法を使用することにより、形状転換ガラス化冷凍容器として機能することになる。幾つかの実施形態では、適した形状記憶ポリマーは、プラスチックであってもよい。ベリフレックス(Veriflex)(登録商標)は、適した形状記憶ポリマーである。
【0068】
15℃のTを有する形状記憶ポリマーから製作されている冷凍容器は、室温でクリンプを付けられ、保持され、ガラス化させることができる。それは、極低温温度では、そのクリンプが付けられた形状を維持するであろう。冷凍容器は、Tより上に加熱されると、そのクリンプを付けられていない形状に戻ることができ、生体標本を取り出すことができる。
変形可能区間、形状記憶アクチュエータ閉鎖装置、及び形状記憶アクチュエータ温度表示器を備えた冷凍容器
【0069】
図13は、変形可能区間1310、形状記憶アクチュエータ閉鎖装置1320、及び形状記憶アクチュエータ温度表示器1330を備えた冷凍容器1300を示している。
【0070】
形状記憶アクチュエータ閉鎖装置は、形状記憶アクチュエータ1322と端キャップ1324を備えている。形状記憶アクチュエータは、形状記憶ばね1323と、従来の材料の付勢ばね1325を備えている。形状記憶ばねは、室温では、相対的に展開した記憶形状を有していて、付勢ばねより強い。端キャップは、従って、室温では冷凍容器の端部から押し離され、取り外すことができ、シャトル及び生体標本の装入及び抜取りが可能になる。しかしながら、冷やしたトングを用いて把持するなどによってアクチュエータが冷やされると、形状記憶ばねはマルテンサイトに変態し、付勢ばねより弱くなり、付勢ばねが端キャップを冷凍容器の端部にぴったり当てて引っ張る。こうして、持続的な閉鎖力が冷凍容器に印加されて、ガラス化及び貯蔵中、同容器を密封するのを助ける。
【0071】
温度表示装置は、形状記憶アクチュエータ1322、警戒ロッド1334、及び外側チャンバ1336を備えている。形状記憶アクチュエータは、普通は、極低温温度では潰れ、−130Cの失透温度の様なより高い温度で展開する。よって、冷凍容器が、検査又は他の理由で極低温貯蔵庫から取り出されると、ユーザーは、アクチュエータが温まって、温度警戒ロッドがチャンバから外に出る動きによって、失透の可能性がある旨の警告を受けることになる。
結論
【0072】
本開示は、1つ又はそれ以上の異なる代表的な実施形態に関連付けて説明してきたが、当業者には、本開示の範囲から逸脱することなく、様々な変更を加えることができ、また本開示の要素に等価物を置き換えることができることが理解頂けるであろう。更に、本開示の本質的な範囲又は教示から逸脱することなく、特定の状況に適合させるべく多くの修正を加えることができる。従って、本開示は、本発明を実施するための考えられている最良の形態として開示されている特定の実施形態に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0073】
100 閉鎖型冷凍容器の設計制約の関係
200、300 オーステナイト結晶構造
210、310 マルテンサイト結晶構造
230、320 マルテンサイトからオーステナイトへの変態
236 オーステナイト開始
238 オーステナイト終了
240、340 オーステナイトからマルテンサイトへの変態
246 マルテンサイト開始
248 マルテンサイト終了
252、352 変態ヒステリシス
254、354 全変態温度スパン
262 オーステナイト相
264 マルテンサイト相
400 シャトル
402 管
404 切欠
406、472 チャネル
408 チャネル表示
410 生体標本
412 シャトルの直径
414 整列表示
420 シース
422 管状本体
424 変形可能区間
426 端キャップ
432 変形可能区間の長さ
434 変形可能区間の直径
436 変形可能区間の壁厚
438 シース側の整列表示
440 シースの開口部、シース入口
450 冷凍容器
452 無菌シール
454 開口端部の熱融合
456 端キャップの内側表面
458 冷凍容器の長さ
470 断面
492、494 生体標本位置表示
4A00 シース
4A02 変形可能区間
4A04 端キャップ
4A08 管状本体
4A06、4A10 接合部
500 クリンプを付けられる前の冷凍容器
502 生体標本
504 ガラス化媒体
506 細胞
520 クリンプを付けられた後の冷凍容器
542 クリアランス
544 冷凍容器
546 チャネル
548 生体標本
550、552 生体標本の位置表示
562 生体標本
564 変形可能区間の内部壁
600 槽
602 球形の容器
604 底部
606 溜め
608 継目
610 パラフィン
612 水
614 シース
702、704 生体標本位置表示
740 極低温槽
742 液体窒素
744 生体標本
760 水槽
762 水
764 記憶されている円筒形状
766 生体標本
802、804 生体標本位置表示
822、824 ピラーの接触点
840 極低温槽
842 冷凍容器
844 液体窒素
846 冷凍容器
862 水
866 生体標本
922 液体窒素
920 極低温槽
924 オーステナイト形状
926 マルテンサイト形状
940 温水槽
942 水
944 記憶されているオーステナイト形状
966 生体標本
1002、1004 生体標本位置表示
1022、1024 クリンピング点
1040 極低温槽
1042 液体窒素
1044 生体標本
1060 温水槽
1062 水
1064 冷凍容器
1066 生体標本
1080 冷凍容器
1100 ピンセット
1120 ピラー
1102、1122 ストッパ
1104、1124 クリンピング表示
1106、1126 ジョー
1200 冷凍容器
1202 ニチノール部分
1204 非ニチノール部分
1206 接合場所
1208 生体標本
1210 チャネル
1300 冷凍容器
1310 変形可能区間
1320 形状記憶アクチュエータ閉鎖装置
1322 形状記憶アクチュエータ
1323 形状記憶ばね
1324 端キャップ
1325 付勢ばね
1330 形状記憶アクチュエータ温度表示器
1334 警戒ロッド
1336 外側チャンバ
オーステナイト開始温度
オーステナイト終了温度
マルテンサイト開始温度
マルテンサイト終了温度
転移温度

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体標本をガラス化するための冷凍容器において、
a.前記生体標本を保持するためのチャネルを備えているシャトルと、
b.変形可能区間を備えているシースと、を備えており、
前記シャトルと前記シースは、前記シャトルが前記シースの中へ装入されたときに、前記チャネルの少なくとも一部分が、前記変形可能区間内に置かれるような寸法であり、前記変形可能区間は、形状記憶材料を備えている、冷凍容器。
【請求項2】
前記形状記憶材料はプラスチックである、請求項1に記載の冷凍容器。
【請求項3】
前記形状記憶材料は金属である、請求項1に記載の冷凍容器。
【請求項4】
前記金属はニチノール合金であり、前記ニチノール合金は、
a.10℃から25℃の範囲のオーステナイト開始温度と、
b.30℃から45℃の範囲のオーステナイト終了温度と、を有する、請求項3に記載の冷凍容器。
【請求項5】
a.前記オーステナイト開始温度は20℃から25℃の範囲にあり、
b.前記オーステナイト終了温度は35℃から40℃の範囲にある、請求項4に記載の冷凍容器。
【請求項6】
前記金属のオーステナイト終了温度は25℃未満である、請求項3に記載の冷凍容器。
【請求項7】
a.前記シャトルは約2mmの直径を有し、
b.前記変形可能区間は管状形状を有し、
c.前記変形可能区間は、前記シャトル直径より少なくとも0.1mm大きい内径を有し、
d.前記変形可能区間は、10mmより長く、
e.前記変形可能区間の壁は、0.025から0.4mmの範囲の厚さを有している、請求項1に記載の冷凍容器。
【請求項8】
前記変形可能区間の前記壁は、手持ち用具によって、破裂させることなく、前記変形可能区間の最小内側スペーシングが約1mmになる点までクリンプを付けることができる、請求項7に記載の冷凍容器。
【請求項9】
a.前記変形可能区間の外部表面上には、前記変形可能区間のどこにクリンプを付けるべきかを指し示すべく、生体標本位置表示が設けられており、
b.前記シャトルと前記シース上には、この2つを組み立てるときにどのように整列させるかを指し示すべく、整列表示が設けられている、請求項1に記載の冷凍容器。
【請求項10】
a.前記チャネルの表面は、非胎児毒性であり、
b.前記変形可能区間の内側表面は、非胎児毒性であり、疎水性である、請求項1に記載の冷凍容器。
【請求項11】
a.形状記憶アクチュエータ閉鎖装置と、
b.形状記憶アクチュエータ温度表示器と、を更に備えている、請求項1に記載の冷凍容器。
【請求項12】
生体標本をガラス化するための冷凍容器において、
a.前記生体標本を保持するためのチャネルを備えているシャトルと、
b.変形可能区間を備えているシースと、を備えており、
前記シャトルと前記シースは、前記シャトルが前記シースの中へ装入されたとき、前記チャネルの少なくとも一部分が、前記変形可能区間内に置かれるような寸法であり、前記変形可能区間は、可鍛性金属材料を備えている、冷凍容器。
【請求項13】
前記可鍛性金属は、金、銀、銅、錫、又はアルミニウムである、請求項12に記載の冷凍容器。
【請求項14】
a.前記シャトルは約2mmの直径を有し、
b.前記変形可能区間は管状形状を有し、
c.前記変形可能区間は、前記シャトル直径より少なくとも0.1mm大きい内径を有し、
d.前記変形可能区間は、10mmより長く、
e.前記変形可能区間の壁は、0.025から0.4mmの範囲の厚さを有している、請求項12に記載の冷凍容器。
【請求項15】
前記変形可能区間の前記壁は、手持ち用具によって、破裂させることなく、前記変形可能区間の最小内側スペーシングが約1mmになる点までクリンプを付けることができる、請求項14に記載の冷凍容器。
【請求項16】
a.前記変形可能区間の外部表面上には、前記変形可能区間のどこにクリンプを付けるべきかを指し示すべく、生体標本位置表示が設けられており、
b.前記シャトルと前記シース上には、この2つを組み立てるときにどのように整列させるかを指し示すべく、整列表示が設けられている、請求項12に記載の冷凍容器。
【請求項17】
a.前記チャネルの表面は、非胎児毒性であり、
b.前記変形可能区間の内側表面は、非胎児毒性であり、疎水性である、請求項12に記載の冷凍容器。
【請求項18】
a.形状記憶アクチュエータ閉鎖装置と、
b.形状記憶アクチュエータ温度表示器と、を更に備えている、請求項12に記載の冷凍容器。
【請求項19】
生体標本をガラス化する方法において、
a.前記生体標本を、変形可能な壁を備えている極低温容器内部に設置する工程と、
b.前記変形可能な壁に、前記変更可能な壁が前記生体標本に接触して、それへの熱伝達率を上げるように、クリンプを付ける工程と、
c.前記変更可能な壁を、前記生体標本がガラス化されるように、極低温物質と接触させる工程と、から成る方法。
【請求項20】
前記変形可能な壁は、20℃から25℃の範囲のオーステナイト開始温度を有するニチノールを備えており、前記変形可能な壁にクリンプを付ける工程は、約20℃で行われる、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記変形可能な壁は、体温ニチノールを備えており、前記方法は、
a.前記生体標本の前記挿入に先立ち、前記変形可能な壁を、前記ニチノールのマルテンサイト終了温度より下の温度まで冷やす工程と、
b.クリンプ付け用具を、前記ニチノールの前記オーステナイト開始温度より下の温度まで冷やす工程と、
c.前記変形可能な壁にクリンプを付ける前記工程を、前記冷やされたクリンプ付け用具を使用して行う工程と、を更に含んでいる、請求項19に記載の方法。
【請求項22】
前記クリンプ付け用具は手持ち用具であり、前記変形可能な壁は表示を備えており、前記クリンプ付け用具は、前記のクリンプを付ける工程時に前記表示と整列される、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記変形可能な壁は、二方向形状記憶金属を備えており、前記二方向形状記憶金属のオーステナイト形状は、開放形状であり、且つ、前記二方向形状記憶金属のマルテンサイト形状は、クリンプを付けられた形状であり、前記クリンプを付ける前記工程は、前記変形可能な壁を、前記二方向形状記憶金属のマルテンサイト開始温度より下に冷却する工程を含んでいる、請求項19に記載の方法。
【請求項24】
a.前記生体標本を37℃まで温める工程と、
b.前記変形可能区間を、気体圧力を使用して、前記変形可能な壁が前記生体標本から離れるように展開する工程と、を更に含んでいる、請求項19に記載の方法。
【請求項25】
前記変形可能な壁は、室温で、そのオーステナイト相にあるニチノールであり、前記方法は、
a.前記変形可能な壁に一対のピラーを用いてクリンプを付け、保持する工程と、
b.前記変形可能な壁を前記極低温物質と接触させる前記工程の間、前記変形可能区間をクリンプを付けられた位置に保持する工程と、を更に含んでいる、請求項19に記載の方法。
【請求項26】
前記変形可能な壁は、可鍛性金属であり、表示を備えており、前記クリンプを付ける工程は、前記表示と整列させたクリンプ付け用具を用いて実現される、請求項19に記載の方法。
【請求項27】
或る方法によって加工された生体標本において、
a.前記生体標本を、変形可能な壁を備えている極低温容器内部に設置する工程と、
b.前記変形可能な壁に、当該壁が前記生体標本に接触するようにクリンプを付ける工程と、
c.前記変更可能な壁を、前記生体標本がガラス化されるように、極低温物質と接触させる工程と、から成る方法によって処理された生体標本。
【請求項28】
前記変形可能な壁はニチノールを含み、前記生体標本は、前記変更可能な壁を大凡体温の水槽に浸漬することによって前記生体標本を温める工程で更に処理され、その結果、前記生体標本は、前記極低温容器から前記変形可能な壁に接触することなく取り出せるように、前記変更可能な壁が記憶形状に変態する、請求項27に記載の生体標本。
【請求項29】
前記変形可能な壁の内部表面は、前記変形可能な壁がその記憶形状に変態したときに前記生体標本が前記壁から浮かせられるように、テフロン(登録商標)(Teflon)又は類似物で被覆されている、請求項28に記載の生体標本。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図4A】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公表番号】特表2011−514882(P2011−514882A)
【公表日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−534121(P2010−534121)
【出願日】平成20年11月11日(2008.11.11)
【国際出願番号】PCT/US2008/083089
【国際公開番号】WO2009/064708
【国際公開日】平成21年5月22日(2009.5.22)
【出願人】(508064322)ヴァンス プロダクツ インコーポレイテッド (6)
【氏名又は名称原語表記】VANCE PRODUCTS INCORPORATED
【Fターム(参考)】