説明

形質細胞から抗体を産生する方法

本発明は、限られた数の形質細胞を培養することを含む、モノクローナル抗体を含む抗体を産生する方法に関する。また、抗体の機能、結合の特異性、エピトープ特異性、および/または毒素もしくは病原体を中和するそれらの能力を判別するために、培養された形質細胞によって産生された抗体に検定を行うことにより、抗体を同定する方法にも関する。本発明はまた、本発明の方法により産生される抗体および抗体断片、ならびに抗体および抗体断片を用いる方法にも関する。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
本出願は、2008年10月22日に出願された英国特許出願第0819376.5号、2009年5月27日に出願された米国特許仮出願第61/181,582号、共に2009年7月27日に出願されたPCT出願第PCT/US2009/051851号および米国特許出願第12/509,731号に対する優先性を主張する。
【0002】
形質細胞は、最終分化した非増殖性細胞であり、非常に高速(1日あたり1細胞につき約30〜50ピコグラムに相当する1秒あたり数千個の分子)で抗体を分泌する。
【0003】
形質細胞からの抗体、例えば、モノクローナル抗体の単離は、免疫グロブリン遺伝子のクローン作成および発現に依存する。これは、形質細胞から単離されたVHおよびVLスクランブル遺伝子のファージディスプレイライブラリーを用いるか、または単細胞PRCを用いて、単形質細胞からの対になったVHおよびVL遺伝子の単離によって行われ得る。しかしながら、形質細胞によって産生された抗体をスクリーニングするため、免疫グロブリン遺伝子をクローン化し、コードされた抗体の特異性および機能特性を判別するために組換え型で発現する必要がある。この方法は、煩雑で、費用が高く、多大な時間を要し、ハイスループットに適合せず、また形質細胞全範囲のうちのわずかな断片によって産生される希少な抗体の回収にも非効率的である。
【0004】
したがって、形質細胞から抗体、例えばモノクローナル抗体の単離およびスクリーニングに対するハイスループットに適合する、より効果的な方法を同定する必要がある。
【発明の概要】
【0005】
本発明は、一部において、免疫グロブリン遺伝子のクローン化および発現に依存することなく抗体の特徴付けを可能にする、形質細胞から抗体を産生する効率的なハイスループット検出法の開発に基づく。本発明を使用して産生される抗体は、結合検定、機能検定、および/または中和検定を含む多重スクリーニングを実施することにより特徴付けられる。本発明は、形質細胞によって産生された希少な抗体の同定のための方法を提供する。
【0006】
したがって、本発明の一実施態様において、本発明は、限られた数の形質細胞を培養することにより形質細胞から抗体を産生する方法を提供する。一実施形態において、本発明は単細胞培養物中において形質細胞を培養することにより形質細胞からモノクローナル抗体を産生する方法を提供する。本発明の方法は、さらに抗体もしくは抗体断片に関する特徴付けを含み得る。抗体および抗体断片の特徴付けとしては、限定されないが、抗体もしくは抗体断片の機能を判別するための機能検定、抗体もしくは抗体断片の結合特異性を判別する結合検定、抗体もしくは抗体断片により同定されるエピトープ検定および/または抗体もしくは抗体断片の毒素または病原菌を中和する能力を判別する中和検定の実施が挙げられる。
【0007】
別の実施形態において、本発明は抗体もしくは抗体断片を産生する方法を提供する。この方法は、限られた数の形質細胞を培養し、所望の特性を伴った抗体を産生する培養物を同定し、産生された抗体をコードする核酸を単離し、および宿主細胞に核酸を発現させることを含む。
【0008】
本発明の他の実施態様において、本発明は、本発明の方法によって産生される単離された抗体もしくは抗体断片を提供する。本発明はまた、本発明の単離された抗体もしくは抗体断片を使用して、様々な疾患または疾病を診断するまたは/および治療する方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】末梢血液から単離され、間葉系間質細胞の単層で50日間培養されたCD138+形質細胞によるIgGの累積産生量を示す。
【図2】(A)末梢血液、および(B)骨髄から単離された単形質細胞を含む培養物中の、CD138+形質細胞によるIgGの累積産生量を示す。
【図3】IgG、IgA、IgM、およびIgEの存在について、末梢血液から単離され、間葉系間質細胞の単層で培養されたCD138高形質細胞の10日目の培養上清の検査結果を示す。
【図4】hMSC−TERT細胞上で培養され、上清中で検出可能な抗体の量を産生するために十分長く生存する形質細胞の割合として発現した場合の、IgG、IgAまたはIgM抗体を産生する分泌細胞(ASC)の平板効率を示す。
【図5】破傷風トキソイド(TT)追加免疫の7日後に採取した末梢血液から単離された形質細胞から破傷風トキソイド特異IgGを分泌する形質細胞についての同定を示す。
【図6】破傷風トキソイドのワクチンを10年間接種したドナーの血液から単離された、培養された形質細胞から回収された、VHおよびVLのクローニングおよび発現によって産生された組換え抗体の破傷風トキソイドとの結合を示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明は、免疫グロブリン遺伝子のクローン化および発現に依存することなく抗体の特徴付けを可能にする、形質細胞から抗体を産生する効率的なハイスループット検出法の開発に基づく。本発明の一実施態様において、本発明は、限られた数の形質細胞を培養することにより形質細胞から抗体を産生する方法を提供する。本発明を使用して産生される抗体は、結合検定、機能検定、および/または中和検定を含む多重スクリーニングを用いて簡便に特徴付けることが可能であり、また、現場で、すなわち、形質細胞が培養されたウェル内で実施することも可能である。
【0011】
本明細書で使用されるとき、用語「形質細胞」は、末梢血液内、骨髄、組織液または体液に認められるか、またはB細胞からインビトロで生成される、細胞を分泌する全ての一次抗体(ASC)を含む。近年生成された形質細胞は、「形質芽細胞」と称される。自然生成した形質芽細胞は、概して血液内、特に末梢血液内で発見される。形質芽細胞は、B細胞をTLR作動薬などの多クローン性活性剤を含む様々な刺激によって活性化することで、インビトロで生成されることも可能である。形質芽細胞は、TLR作動薬のような多クローン性活性剤を含む様々な刺激を用いてB細胞を活性化させることで、インビトロでも生成され得る。本明細書で、用語「形質細胞」は「形質細胞」、「形質芽細胞」およびASCのいずれをも含むものとする。
【0012】
理論上は、任意の数の形質細胞を、所望の特性の抗体を産生し、同定するため培地内で培養することが可能である。実際は、培養され得る形質細胞の数は、多クローン性細胞の培養物において生存する多数のVHおよびVL遺伝子配列およびその組み合わせをクローン化し、発現することが可能な技術によって制限されている。一実施形態において、「限られた数の形質細胞」は、すなわち、約100個以下、90個以下、80個以下、70個以下、60個以下、50個以下、45個以下、40個以下、35個以下、30個以下、25個以下、20個以下、17個以下、15個以下、12個以下、10個以下、9個以下、8個以下、7個以下、6個以下、5個以下、4個以下、3個以下、2個以下または1個以下の数の形質細胞を指す。
【0013】
一実施形態において、本発明は1培養物あたりの形質細胞を低濃度にして培養することで形質細胞から抗体を産生する方法を提供する。1培養物あたり低濃度の形質細胞とは、概して、1培養物あたり約1個〜約10個、または約1個〜約15個、または約1個〜約20個、または約1個〜約25個、または約1個〜約30個、または約1個〜約40個、または約1個〜約50個、または約1個〜約60個、または約1個〜約70個、または約1個〜約80個、または約1個〜約90個、または約1〜約100個の細胞数を含む。
【0014】
別の実施形態において、本発明は1培養物あたりの形質細胞が低濃度の細胞になるように希釈されるよう形質細胞を培養することで、形質細胞から抗体を産生する方法を提供する。さらに別の実施形態において、本発明は減少された数の形質細胞を培養することで、形質細胞から抗体を産生する方法を提供する。単離されたその形質細胞は、例えば、生物学的起源から、下記に説明されるように減少し得る。本明細書において、「減少された数の形質細胞」は、上記で説明された「限られた数の形質細胞」と互換可能に使用される。
【0015】
培養物中の所望の細胞数を採取する技術は当該技術分野でよく知られている。このような技術としては、限定されないが、限界希釈法または細胞分類および細胞沈着が挙げられる。例えば、限定された数または減少された数の形質細胞を含む培養は細胞分別機を用いた単細胞沈着、または形質細胞の懸濁液を1個、2個、3個、またはそれ以上の細胞を含むような十分な培地、例えば、マイクロタイター培養プレートにおいて1ウェルあたり5個、10個、15個、20個、25個、30個、40個、50個、60個、70個、80個、90個または100個の細胞が生存する培地で希釈することにより達成され得る。
【0016】
一実施形態において、単形質細胞が培養される。単形質細胞によって産生された抗体の単クローン性の特質を考慮すると、単細胞培養物中における形質細胞の培養はモノクローナル抗体群を産生する。したがって、一実施形態において、本発明は単細胞培養物中において形質細胞を培養することを含む、形質細胞からモノクローナル抗体を産生する方法を提供する。
【0017】
本明細書で使用される「単細胞培養」は「単形質細胞の培養」と互換可能に使用され、平均して単形質細胞を含む培養物に関連する。したがって、マルチウェルプレートにおいて、例えば、96ウェルプレート、384ウェルプレート、または1536ウェルプレートにおいて、大抵のウェルは単形質細胞を含み、幾つかのウェルは形質細胞を含まず、また幾つかの他のウェルは1つ以上の形質細胞を含むであろう。幾つかの実施形態において、形質細胞は、おおむね1ウェルあたり1細胞未満、例えば、0.8細胞/ウェル、0.6細胞/ウェル、0.5細胞/ウェル、0.3細胞/ウェルまたは0.1細胞/ウェルの培養物中で培養され得る。培養物中の単細胞を採取する技術は、ここではマイクロタイター培養プレートにおいて、平均1つもしくは1つ未満の細胞が生存することを除いて、上記に説明された技術と同様である。
【0018】
本発明は、さらに抗体もしくは抗体断片を産生する方法を提供する。この方法は、所望の特性で抗体を産生する培養物を同定する方法、産生された抗体をコードする核酸を単離する方法、および宿主細胞で核酸を発現する方法の本発明のいずれかの方法に従って、限られた数の形質細胞を培養することを含む。
【0019】
不死化によって抗体産生細胞のクローンへ増殖することが可能なメモリーB細胞と異なり、(Traggiai et al.,2004,Nat Med10:871−875;Lanzavecchia et al,2007,Curr Opin Biotechnol.18:523−528)、形質細胞は分裂せず、また刺激されたり、不死化されることがない。故に、これらの「抗体工場」を任意の有効な方法で使用するため、形質細胞は培養物中で生存を維持されなければならない。形質細胞は、継続して抗体を産生し、分泌する。また、それ故に抗体の大きさによって経過時間を増加する。形質細胞はインビボで長期にわたって生存するが、インビトロで1日以上は生存しない(実験データ示さず)。したがって、本発明は、限定されないが、外因性成分または培養される形質細胞の生存を延長する成分を含む培地中の単形質細胞を含む形質細胞を培養することによって抗体を産生する方法を提供する。
【0020】
概して、培養された形質細胞の生存は、抗体の特徴付けに必要な多数の抗体を産生されるように、いわゆる、培地が、限定されないが、結合検定、中和検定または機能を判別する、あるいは抗体を特徴付ける他の検定を含むスクリーニング検査で使用され得る十分な抗体を含むように、十分な時間延長される。培養物は、単離され得る所望の特異性の抗体およびモノクローナル抗体を産生するため増殖され、配列され、発現され得る免疫グロブリン遺伝子を含む。
【0021】
形質細胞の生存、限定されないが、単形質細胞を含む生存は、培養物中で、短期または長期間延長される可能性がある。本明細書で使用されるとき、「短期間」とは、少なくとも2週間〜約9日間を指す。すなわち、2日、3日、4日、5日、6日、7日、8日、または約9日間である。本明細書で使用されるとき、「長期間」とは少なくとも10日間を指す。例えば、10日、15日、20日、25日、30日、35日、40日、45日、50日、60日、70日、80日、90日、100日、110日、120日、130日、140日または約150日間である。
【0022】
短期間の形質細胞の生存の延長によって産生する抗体の量は、長期間生存を延長された形質細胞が産生する抗体の量より少ない可能性があるが、本明細書で説明されるように、短期間の形質細胞の生存の延長はより簡単で、速く、より低コストであり、特に、繊細な抗体の検定においてスクリーニングする際に有用である。長期にわたる形質細胞の生存の延長は、特に抗体の特徴付けが、多重スクリーニング検定または低感受性についての検定を必要とする場合に好適である。
【0023】
一実施形態において、培地に存在する外因性成分は短期間、培養された形質細胞の生存を延長する。別の実施形態において、外因性成分は長期間にわたって培養された形質細胞の生存を延長する。外因性成分は、形質細胞または1つ以上の非形質細胞によって発現された受容体の1つ以上のリガンドにすることができる。
【0024】
培養された形質細胞の生存の延長に有用な形質細胞によって発現された受容体に対するリガンドは、例えば、限定されないが、サイトカイン、ケモカイン、または他のリガンドを含む。一実施形態において、リガンドは、IL−5、IL−6、ストロマ細胞由来因子−1(SDF−1)、TNF−α、またはCD44のリガンド、例えばヒアルロン酸である。別の実施形態において、外因性成分は、IL−5、IL−6、ストロマ細胞由来因子−1(SDF−1)、TNF−α、CD44のリガンド、例えばヒアルロン酸、およびその組み合わせから成る基から選択された1つ以上のリガンドを含み、培養された形質細胞の生存を短期間または長期間延長するために有用である。
【0025】
培養された形質細胞の生存を延長するために有用な非形質細胞としては、例えば、限定されないが、間葉系間質細胞、線維芽細胞または破骨細胞が挙げられる。一実施形態において、非形質細胞は、間葉系間質細胞、線維芽細胞または破骨細胞であり、培養された形質細胞の生存を短期間または長期間延長するために有用である。別の実施形態において、非形質細胞は、間葉系間質細胞であり、培養された形質細胞の生存を短期間または長期間延長するために有用である。間葉系間質細胞は、哺乳類間葉系間質細胞であり得、限定されないが、ヒト間葉系間質細胞を含む。間葉系間質細胞は、選択的に培養物中での使用前に不死化され得る。
【0026】
本発明の一実施形態において、形質細胞は、例えば、単細胞培養物中において、培養物中で約3日〜約7日間または約5日〜約9日間、形質細胞によって発現された受容体の1つ以上のリガンドの存在下において培養される。別の実施形態において、形質細胞は、例えば、単細胞培養物中において、培養物中で約5日〜7日間、または約10日間、または約15日間、または約20日間、または約25日間、または約30日間、または約35日間、または約40日間、または約45日間、または50日間以上、1つ以上の非形質細胞型の存在下において培養される。さらに別の実施形態において、形質細胞は、例えば、単細胞培養物中において、培養物中で約5日〜7日間、または約10日間、または約15日間、または約20日間、または約25日間、または約30日間、または約35日間、または約40日間、または約45日間、または約50日間以上、間葉系間質細胞の存在下において培養される。さらに別の実施形態において、形質細胞は、例えば、単細胞培養物中において、培養物中で約5日〜7日間、または約10日間、または約15日間、または約20日間、または約25日間、または約30日間、または約35日間、または約40日間、または約45日間、または約50日間、または約55日間、または約60日間、または約65日間、または約70日間以上、1つ以上の非形質細胞型および形質細胞によって発現される1つ以上の受容体に対するリガンドの存在下において培養される。
【0027】
一実施形態において、培養された細胞の平板効率は、少なくとも約30%であってよく、別の実施形態での平板効率は、少なくとも約40%であってよく、別の実施形態での平板効率は、少なくとも約50%であってよく、別の実施形態での平板効率は少なくとも約55%であってよく、別の実施形態での平板効率は少なくとも約60%以上であってよい。
【0028】
本明細書で使用されるとき、用語「平板効率」は、上清中の抗体の検出可能な量を産生するのに十分長く生存する形質細胞の割合について言及する。
【0029】
培養される形質細胞は、任意の所望の種から採取され得る。一実施形態において、形質細胞はネズミ、ラット、ウサギ、ラクダ、または、サルの形質細胞である。別の実施形態において、培養された形質細胞はヒトの形質細胞であり産生された抗体はヒト抗体である。さらに別の実施形態において、ヒトモノクローナル抗体は、単細胞培養物中においてヒト形質細胞を培養することによって産生される。
【0030】
形質細胞、例えば、ヒト形質細胞は、ヒトの末梢血液から単離され得る。これらのヒト形質細胞は、「末梢血液形質細胞」または「循環形質細胞」として言及され得る。形質細胞、例えばヒト形質細胞はまた、限定されないが、ヒトの滑液、脳脊髄液および滲出液を含む、骨髄、組織液または体液から単離され得る。用語「組織」は、人体内に生存するいずれかの組織を対象とすることを意図し、心臓組織、神経組織、筋肉組織、被覆組織、結合組織、および胸腺、脾臓、リンパ節のようなリンパ器官を含み得る。
【0031】
形質細胞は概して、CD138の発現によって特徴付けられ、また選択的に、さらにCD27、CD38、CD9、CD44およびMHCクラスII分子の発現によって特徴付けられる。一実施形態において、細胞は、CD138の発現に従って、末梢血液、組織、骨髄、体液から単離され得る。CD138に加えて、CD27、CD38、CD9、CD44およびMHCクラスII分子のような表面マーカーも、単離手順を向上し、形質細胞サブセット(Arce et al.,2004,J Leukoc Biol,75:1022−1028)を同定するため使用され得る。別の実施形態において、形質細胞は、磁気微粒子を用いて単離され得る。さらに別の実施形態において、形質細胞は、固定化抗CD138抗体でコーティングされた磁気微粒子を用いて単離され得る。またさらに別の実施形態において、磁気微粒子を用いた形質細胞の濃縮は、細胞分類に続いて行われ得る。
【0032】
一実施形態において、形質細胞は、ワクチン接種の後にヒトのドナーの末梢血液から単離され得る。ワクチン接種とは、免疫反応を誘発する性質を持つ任意の抗原の投与を指す。ワクチンは、当業者に、現在既知であるか、または後に利用可能となるいずれのワクチンであってもよく、破傷風トキソイド、インフルエンザ、黄熱、破傷風ジフテリア、B型肝炎、天然痘および癌のワクチンが挙げられるが、これらに限定されない。別の実施形態において、ワクチン接種は、追加ワクチン接種であり得る。形質細胞は、ワクチン接種から4日、5日、6日、7日、8日、9日、10日またはそれよりさらに経過したドナーから単離され得る。一実施形態において、形質細胞は、既知の病原体に反応しているドナーから単離され得る。別の実施形態において、形質細胞は、未知の病原体に反応しているドナーから単離され得る。さらなる実施形態において、形質細胞は、アレルギーを持つドナーから単離されて得る。さらに別の実施形態において、形質細胞は、定常状態下のドナーから単離され得る。またさらに別の実施形態において、形質細胞は、自己免疫疾患を持つドナーから単離され得る。
【0033】
別の実施形態において、形質細胞は、B細胞の刺激によってインビトロで生成され得る。この刺激は、ナイーブB細胞またはメモリーB細胞の多クローン性または抗原特異的な刺激を含む、当該技術分野で知られるいずれの方法によっても実施され得る(Bernasconi et al,2002,Science,298:2199−2202)。
【0034】
本発明の方法は、いずれのアイソタイプのいずれの抗体を分泌する形質細胞の培養にも使用され得る。一実施形態において、形質細胞は、IgG形質細胞であり得、別の実施形態において、形質細胞は、IgA形質細胞であり得、別の実施形態において、形質細胞は、IgM形質細胞であり得、別の実施形態において、形質細胞は、IgD形質細胞であり得、またさらなる実施形態において、形質細胞はIgE形質細胞であり得る。さらに別の実施形態において、形質細胞の単離群は、2つ以上のアイソタイプを含む形質細胞の混合群であり得る。
【0035】
単離されたヒト形質細胞は、酵素結合免疫吸着スポット(ELISPOT)検定(Bernasconi et al,2002,Science,298:2199−2202)を用いて計数することができる。この検定は、関心対象の細胞によって分泌された生成物を可視化し、それにより検定によって産生された各スポットが単細胞を示すことにより機能する。
【0036】
一実施形態において、ヒト形質細胞は、限界希釈法または単細胞沈着により単細胞として播種され得る。一実施態様において、ヒト形質細胞は、間葉系間質細胞の存在下で単細胞として播種され得る。別の実施形態において、ヒト形質細胞は多クローン性培養物として播種され得る。形質細胞は、間葉系間質細胞の存在下で多クローン性細胞培養物として播種され得る。多クローン性ヒト形質細胞培養物は、代替として、限界希釈法を用いて、単細胞培養物に分けられ得る。別の実施態様において、多クローン性ヒト形質細胞培養物は、単細胞沈着を用いて単細胞培養物に分けられ得る。
【0037】
間葉系間質細胞は、線維芽細胞様細胞であるが、線維芽細胞より優れた分化能を有し、また、骨芽細胞、軟骨細胞および脂肪細胞に分化し得る。間葉系間質細胞は、異種群として発見され、それらの属する組織の支持構造を形成する。骨髄において、間葉系間質細胞は、造血細胞の増殖および分化また白血球細胞の維持のために必要とされる。初代間葉系間質細胞は、適切な培地で単離され、老化する前の制限された時間のみであるが、幾つかの通過細胞へ培養される。テロメラーゼ逆転写酵素の形質転換(TERT)は、生理学的増殖利率および機能特性を維持する間、インビトロで無限に拡大する間葉系間質細胞を不死化するために使用されてきた。
【0038】
培養物に使用される間葉系間質細胞は、骨髄由来の間葉系間質細胞にすることができる。間葉系間質細胞は、哺乳類間葉系間質細胞、例えば、ヒト間葉系間質細胞にすることができる。本発明の方法に使用する間葉系間質細胞は、適切な培地での培養よって付着性骨髄細胞から単離され得る。この培地はヒドロコルチゾンを含む。間葉系間質細胞は、また他の組織に由来され得る。
【0039】
実践的な理由から、間葉系間質細胞は、本発明の方法で使用する前に不死化され得る。本明細書で、「不死化された」とは、増殖の接触依存性阻害を受ける能力を含む、形質細胞を持続することを可能にする全ての特性を維持する間、間葉系間質細胞が増殖能を向上させたということを意味する。一実施形態において、間葉系間質細胞は、合流点に達した後少なくとも約1週間生存する可能性がある。別の実施形態において、不死化された間葉系間質細胞は、合流点に達した後少なくとも約2週間生存するか、または合流点に達した後少なくとも約3週間、または合流点に達した後4週間またはそれ以上生存する可能性がある。
【0040】
間葉系間質細胞は、当該技術分野で知られるいずれの方法によっても不死化され得る。一実施形態において、間葉系間質細胞は、テロメラーゼ逆転写酵素遺伝子の形質転換によって不死化される。別の実施形態において、間葉系間質細胞は、Mihara et al.,2003 Br J Haematol120:846−849において説明されている方法に従って、TERTの形質転換によって不死化され得る。
【0041】
上記に述べられるように、本発明は、抗体もしくは抗体断片を産生する方法を提供する。限られた数の形質細胞を培養する方法は、所望の特性を持つ抗体を産生する培養物を同定すること、産生された抗体をコードする核酸を単離すること、および宿主細胞で核酸を発現することを含む。
【0042】
本明細書で使用される用語「断片」および「抗体断片」は、本発明の抗体のいずれかの断片を指すために互換可能に使用される。一実施形態において、抗体断片は抗体断片の抗原結合活動を保持する。別の実施形態において、抗体断片は、10個、20個、30個、40個、50個、60個、70個、80個、90個、100個、150個、200個、300個、400個、500個、600個、700個、800個、900個または1000個以上の連続したアミノ酸を含んでもよい。典型的な抗体断片は、1つ以上のFc、Fab、Fab’、F(ab’)、Fv、scFv断片、重鎖、軽鎖、蝶番領域、抗原結合部位、一本鎖抗体またそれらの任意の部位を含み得る。
【0043】
本明細書で使用される用語「核酸」は、限定されないが、ゲノムDNA、cDNA、およびmRNAを含む、全ての型の核酸を包含する。抗体もしくは抗体断片のクローニングおよび異種発現は、当業者の範囲内である(Wrammert et al.,2008 Nature 453,667−671 & Meijer et al.,2006 J Mol Biol 358,764−772)における分子生物学および組換え型DNAの従来の技術を用いて実施される。このような技術は文献、例えば、Sambrook,1989,Molecular Cloning;A Laboratory Manual,Second Editionにおいて完全に説明される。VH/VL配列および発現の回収においては、Tiller et al.,J Immunol Methods 2008 329:112−124の方法を使用することが可能である。
【0044】
一実施形態において、抗体は真核細胞内の適切なベクターまたはウイルスを用いて発現される。真核細胞は、CHO、293T、293F、または酵母細胞であり得る。別の実施形態において、抗体は、原核細胞内の適切なベクターまたはファージを用いて発現される。原核細胞は、細菌性細胞、例えば、E.coli細胞であり得る。さらなる実施形態において、異種発現系は無細胞系であり得る。
【0045】
本発明の方法によって産生された抗体および抗体断片は、既知の手順(Coligan et al Eds Current Protocol in Immunology1:2.7)を用いて簡単に単離され得る。一実施形態において、モノクローナル抗体またはその抗体断片を含む、本発明の抗体もしくは抗体断片は、遠心単離または親和性クロマトグラフィーによって培養上清から単離され得る。別の実施形態において、抗体もしくは抗体断片は、その結合特異性に従って単離され得る。例えば、抗体は、適切な固定化抗原を含む固体支持体へ適用されることによって単離され得る。さらなる実施形態において、抗体は、抗IgG、抗IgE、抗IgA、抗IgDまたは抗IgM抗体を用いて単離され、場合によっては固定化され得る。
【0046】
Igを分泌する形質細胞または特定の抗体は、免疫親和法を用いて単離され得る。まず、分泌された生成物は適切な共有結合捕獲試薬を用いて、分泌細胞の表面上で捕獲され得る。それから捕獲した生成物は、蛍光標識された二次抗体または抗原を用いて露呈され得る(Manz et al.,1998 Int Immunol10、1703−1711)。
【0047】
抗体の特徴付け
形質細胞は、表面免疫グロブリンを発現しないため、アイソタイプまたは抗原特異性に従って選択されることは不可能である。形質細胞によって産生された抗体は、したがって、特徴付けられるために単離されなければならない。現在のところ、形質細胞からヒトモノクローナル抗体を作る当該技術分野で主に使用されている方法は2つある。これらのうちの一つは免疫のあるドナーの全骨髄から調製された抗体のディスプレイライブラリーをスクリーニングすることである(Williamson et al.,1993 Proc Natl Acad Sci USA 90、4141−4145)。しかしながら、この方法は骨髄試料の入手の可能性に制限されている。
【0048】
第2の方法は、単細胞PCRを用いて、追加免疫の後に続く個別形質細胞からのIg遺伝子の回復の後で、循環形質細胞の単離を含む。(Wrammert et al.,2008 Nature 453,667−671&Meijer et al.,2006 J Mol Biol 358,764−772)この方法は、追加免疫の6〜8日後、循環形質細胞の大規模な破片は、免疫抗原に対して特異的であるという事実に基づいている。この手引きは、しかしながら、抗体特異性が評価され得る前に実施されるために、多数の遺伝子クローニングおよび発現作業が求められ、したがって、形質細胞の反応が複雑な病原体のような多重抗原に対して向けられた場合、実用性がない。ヒト形質細胞の長期培養システムの発達は、したがって関心対象の抗体を産生する形質細胞を選択し得るため、インビトロで結合検定、機能検定およびさらなる抗体特徴付けを行うために十分な抗体を回収するために特に有用である。
【0049】
形質細胞または他の細胞を分泌する抗体から抗体を単離する代替方法は、顕微操作に基づき、細胞が半固体培地内で固定される第1のステップ(HarrimanWD et al J Immunol Methods 341;135−145 2009)を含み、分泌された抗体は蛍光プローブを用いて現場で検出される。一度同定されると、形質細胞は、顕微操作によって回収され、またVHおよびVL遺伝子は増殖され、配列される。短期培養および分泌された抗体の局所検出に基づくこれらの方法は、細胞を分泌する抗体の顕微操作に特別な装置を必要とし、ウイルスまたは毒性の中和のような機能特性の抗体を検査することに適さない。本発明の方法は、いかなる顕微操作にも基づかず、あるいは顕微操作を必要とせず、また産生される抗体が限定されないが、結合検定、機能検定および/または中和検定を含む多重検定によってスクリーニングされるようにする。一実施形態において、本発明は、限られた数の形質細胞を培養し、抗体を特徴付けることを含む、形質細胞から抗体を産生する方法を提供し、この方法は形質細胞を分泌する抗体を回収するための顕微操作を含まない。
【0050】
本発明は、本発明の方法によって単離された抗体もしくは抗体断片の特徴付けを含む。一実施形態において、抗体の特徴付けは、抗体もしくは抗体断片の結合特異性を判別することを含み得る。別の実施形態において、抗体の特徴付けは抗体もしくは抗体断片によって認識されたエピトープを判別することを含み得る。単離された抗体もしくは抗体断片および/または抗体および抗体断片によって認識されたエピトープは当該技術分野で知られるいずれの手段によっても判別され得る。一実施形態において、結合特異性および/または認識されたエピトープは単離された抗体もしくは抗体断片を標識化し、標識化された抗体もしくは抗体断片を抗原ライブラリーへ提示し、また同種抗原と結合される標識化された抗体もしくは抗体断片を検出することにより判別され得る。別の実施形態において、標識化された抗体もしくは抗体断片は固定化された抗原分子を含む精製用カラムに適用されることができ、またカラム上の標識化された抗体もしくは抗体断片の有無は、抗体特異性および/または認識されたエピトープの指示として使用され得る。特別な抗原で免疫性を与えられてきた、または特別な病原体へ露呈されてきたドナーの末梢血液から単離された形質細胞形質細胞は抗原または病原体と結合する抗体もしくは抗体断片を産生する。それにも関わらず、病原体、特に複雑な病原体は、多数の抗原を含む可能性が高く、また結合特異性および/または特別な抗体もしくは抗体断片の認識されたエピトープも解明される。
【0051】
本発明の単細胞方法は、抗体をコードする核酸から特別な抗体を産生する単形質細胞が既知の方法を用いて単離される方法を提供する(Wrammert et al.,2008 Nature 453,667−671&Meijer et al.,2006 J Mol Biol358,764−772)。一実施形態において、抗体の特徴付けは、抗体もしくは抗体断片をコードする核酸を配列することを含み得る。核酸の配列は、当該技術分野で知られるいずれの方法によっても実施され得る。一実施形態において、核酸の配列は連鎖停止を用いて実施されてよく、放射性、蛍光性あるいは他の染料が使用され得る。他の態様において、核酸は自動配列方法を用いて実施され得る。
【0052】
別の実施形態において、特徴付けは抗体タンパクの配列を含み得る。抗体タンパクは当該技術分野で知られるいずれの方法によっても配列され得る。一実施形態において、抗体タンパクはN末端分析、C末端分析またはエドマン分解によって配列され得る。N末端分析は、i)タンパク質が、選択的にアミノ末端アミノ酸を標識化するであろう試薬と反応することと、ii)タンパク質を加水分解することと、iii)クロマトグラフィーおよび基準との比較によってアミノ末端アミノ酸を判別することと、を含み得る。この態様で、限定されないが、サンガー試薬、塩化ダンシルのようなダンシル誘導体、およびフェニルイソチオシアネートを含む、いずれの標識試薬も使用され得る。C末端分析は、タンパク質をカルボキシペプチダーゼと培養すること、および時間に対するアミノ酸濃度の一部を産生するため一定間隔で試料を取得することを含み得る。
【0053】
抗体タンパクの配列に続いて、本発明はまた同定された抗体配列に基づき、化学的に結合タンパク質を合成することを含む。化学合成は、当該技術分野で知られる任意の方法に従って実施され得る。一実施形態において、化学合成はアミノ酸のカルボキシ基を不溶性固体支持体に結合すること、および固定化された抗体のアミノ基が次の抗体のカルボキシ基に順序通り反応することにより実施され得る。この方法は、完全タンパク質が固定支持体から割裂され得る段階において、必要とされるアミノ酸配列が産生されるまで、および正しいタンパク質の折り畳みに適合あるいは誘発されるまで繰り返される。
本発明は、本発明のいずれかの方法によって産生される抗体もしくは抗体断片を含む。
【0054】
抗体の製薬学的用途
本発明は、本発明のいずれかの方法によって産生された抗体もしくは抗体断片の治療における使用、例えば、アレルギー、感染状態もしくは疾病、癌、自己免疫状態もしくは疾病における治療で提供する。
【0055】
用語「アレルギー」は、限定されないが、アレルギー皮膚炎、アレルギー性鼻炎、血管性浮腫、過敏症、アスピリン過敏症、ぜんそく、アトピー性皮膚炎、トリアレルギー、カナリアアレルギー、ネコアレルギー、化学物質過敏症、ニワトリアレルギー、結膜炎、慢性疲労、接触性皮膚炎、化粧品アレルギー、牛乳アレルギー、皮膚炎、イヌアレルギー、薬物反応、アヒルアレルギー、ちりアレルギー、イエダニアレルギー、湿疹、ガチョウアレルギー、草アレルギー、花粉症、頭痛、不整脈、蕁麻疹、児童の過活動、低血糖症、呼吸および接触アレルギー、乳糖不耐症、片頭痛、ミルクアレルギー、ダニアレルギー、じんましん、オウムアレルギー、インコアレルギー、通年性鼻炎、ハトアレルギー、鼻炎、ウルシの木アレルギー、サリチル塩基過敏症、静脈洞炎、吹き出物発疹、ツバメアレルギー、シチメンチョウアレルギー、Ucaria、および酵母アレルギーを含む、非寄生抗原により引き起こされる過敏性反応の全ての型を含む。
【0056】
用語「感染症」は、病原性微生物因子の存在による、任意の臨床的な顕性の疾患、限定されないが、ウイルス、バクテリア、原虫、寄生生物および菌類を含む。用語「感染症」は限定されないが、AIDS、エイズ関連症候群、水痘、風邪、サイトメガロ・ウイルス感染、コロラドダニ熱、デング熱、エボラ出血熱、手足口病、肝炎、単純ヘルペス、帯状疱疹、HPV、インフルエンザ(flu)、ラッサ、はしか、マールブルグ出血熱、伝染性単核球症、おたふく風邪、ノロウイルス、ポリオウイルス感染症、進行性多巣性白質脳症、狂犬病、風疹、SARS、天然痘、ウイルス性脳炎、ウイルス性胃腸炎、ウイルス性髄膜炎、ウイルス性肺炎、ウエストナイル病、黄熱、炭疽、細菌性髄膜炎、ボツリヌス中毒症、ブルセラ症、カンピロバクター感染症、ネコ引っ掻き病、コレラ、ジフテリア、発疹チフス、淋病、レジオネラ膿痂疹、ハンセン病、レプトスピラ症、リステリア症、ライム病、類鼻疽、リウマチ熱、MRSA感染症、ノカルジア症、百日咳、疫病、肺炎球菌性肺炎、オウム病、Q熱、ロッキー山発疹熱(RMSF)、サルモネラ症、猩紅熱、細菌性赤痢、梅毒、破傷風、トラコーマ、結核、ツラレミア、腸チフス、チフス性尿路感染症、アフリカトリパノソーマ症、アメーバ症、回虫症、バベシア症、シャーガス病、肝吸虫症、クリプトスポリジウム症、神経嚢虫症、裂頭条虫症、メジナ虫症、エキノコックス症、蟯虫症、肝蛭症、肥大吸虫症、フィラリア症、自由生息アメーバ感染症、ランブル鞭毛虫症、顎口虫症、小形条虫症、イソスポーラ症、カラアザール、リーシュマニア症、マラリア、メタゴニムス症、ハエ蛆症、オンコセルカ症、シラミ寄生症、蟯虫感染、疥癬、住血吸虫症、条虫症、トキソカラ症、トキソプラズマ症、施毛虫症、旋毛虫病、鞭虫症、トリコモナス症、トリパノソーマ症、アスペルギルス症、ブラストミセス症、カンジダ症、コクシジオイデス症、クリプトコッカス症、ヒストプラスマ症、足白癬、感染性海綿状脳症、牛海綿状脳症、クロイツフェルトヤコブ病、クールー、致死性家族性不眠症およびアルパーズ病を含む。
【0057】
用語「自己免疫疾患」は、免疫システムが自己抗原に対して反応する全ての型の疾患、限定されないが、関節リウマチ、1型糖尿病、橋本甲状腺炎、グレーブス病、強皮症、セリアック病、クローン病、潰瘍性大腸炎、シェーグレン症候群、多発性硬化、ギラン・バレー症候群、グッドパスチャー症候群、アジソン病、ヴェーゲナー肉芽腫、原発性硬化性胆管炎、硬化性胆管炎、自己免疫性肝炎、関節リウマチ、自己免疫性甲状腺疾患、全身性エリテマトーデス、乾癬、乾癬性関節炎、交感性眼炎、自己免疫ニューロパシー、自己免疫性卵巣炎、自己免疫性精巣炎、自己免疫性リンパ増殖症候群、抗リン脂質症候群、紅斑性狼瘡、多内分泌不全症候群、多腺性自己免疫症候群1型、多腺性自己免疫症候群2型、免疫性血小板減少性紫斑病、悪性貧血、重症筋無力症、混合性結合組織疾患、原発性糸球体腎炎、白斑、自己免疫性溶血性貧血、自己免疫性血小板減少症、セリアック病、疱疹状皮膚炎、天疱瘡、尋常性天疱瘡、落葉状天疱瘡、水疱性類天疱瘡、自己免疫性心筋炎、自己免疫性脈管炎、自己免疫性眼疾患、円形脱毛、自己免疫性アテローム性動脈硬化、ベーチェット病、自己免疫性脊髄症、自己免疫性血友病、自己免疫性間質性膀胱炎、自己免疫性尿崩症、自己免疫性子宮内膜症、再発性多発性軟骨炎、強直性脊椎炎、自己免疫性じんましん、腫瘍随伴免疫症候群、皮膚筋炎、ミラーフィッシャー症候群および、IgA腎症を含む。
【0058】
本発明は、本発明のいずれかの方法によって産生される抗体もしくは抗体断片をアレルギー、感染状態もしくは感染症および自己免疫状態もしくは自己免疫疾患の治療のための薬剤の製造において使用においても提供する。
【0059】
本発明は、本発明のいずれかの方法によって産生される抗体もしくは抗体断片を投与することを含む、アレルギー、感染状態もしくは感染症および自己免疫状態もしくは自己免疫疾患の治療法もさらに提供する。
【0060】
本発明はまた、本発明のいずれかの方法によって産生される抗体もしくは抗体断片を形成すること、または抗体もしくは抗体断片のようなものをコードする核酸を、薬剤的に許容可能な組成物へ形成することを含む。一実施形態において、医薬組成物は、本発明のいずれかの方法で産生された1つ以上の単離された抗体もしくは抗体断片を含み得る。別の実施形態において、医薬組成物は、本発明のいずれかの方法によって産生された単離された抗体もしくは抗体断片を2個、3個、4個、5個またはそれを以上の数を含み得る。
【0061】
医薬組成物は、投与を可能にするために、薬剤的に許容可能なキャリアを含有し得る。キャリアは、組成物を受け取る個体に有害な抗体の産生物をそれ自体が誘導してはならず、毒素であってはならない。好適なキャリアは、タンパク質、ポリペプチド、リポソーム、多糖、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、高分子アミノ酸、アミノ酸共重合体および不活性ウイルス粒子など、広範囲に、ゆっくりと代謝される高分子を含み得る。
【0062】
特定の実施形態において、薬剤上許容可能な塩、例えば、塩酸塩、水素酸塩、リン酸塩および硫酸塩のような鉱酸塩、酢酸塩、プロピオン酸塩、マロン酸エステルおよび安息香酸エステルのような有機酸の塩が使用され得る。
【0063】
幾つかの実施形態において、医薬組成物は、水、生理食塩水、グリセロールおよびエタノールのような液体も含み得る。加えて、湿潤剤または乳化剤のような補助物質またはpH緩衝物質が組成物中に存在することができ、またこれらの物質は、医薬組成物が、患者によって摂取されるように、錠剤、丸薬、糖衣錠、カプセル、液体、ジェル、シロップ、スラリー、および懸濁液として形成されることを可能にし得る。
【0064】
医薬組成物は、限定されないが、経口、静脈注射、筋肉内、動脈内、髄内、腹腔内、髄腔内、脳室内、経皮、局所、皮下、鼻腔内、腸内、舌下腺、膣内または直腸投与を含むいかなる投与法によっても投与され得る。
【0065】
医薬組成物は、5.5〜8.5のpHを有してよく、幾つかの実施形態において6〜8のpH、またさらなる実施形態において約7のpHを有し得る。pHは、緩衝剤の使用によって維持され得る。組成物は無精子症および/または発熱物質を使用していないものであり得る。組成物は、ヒトに対して、等張であり得る。
【0066】
別の実施形態において、本発明のいずれかの方法によって産生された、単離された抗体もしくは抗体断片は、診断試薬を形成するため診断用の賦形剤と併用され得る。一実施形態において、診断試薬は、本発明のいずれかの方法によって産生された単離された抗体もしくは抗体断片を1つ以上含み得る。例えば、診断試薬は、本発明のいずれかの方法によって産生された単利された抗体もしくは抗体断片を2個、3個、4個、5個またはそれ以上を含み得る。
【0067】
診断用賦形剤は、患者に対して診断試薬の投薬を可能にするため、薬剤的に許容可能なキャリアを含んでもよい。キャリアは、組成物を受け取る個体に有害な抗体の産生物をそれ自体が誘導してはならず、毒素であってはいけない。好適なキャリアは、タンパク質、ポリペプチド、リポソーム、多糖、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、高分子アミノ酸、アミノ酸共重合体および不活性ウイルス粒子など、広範囲に、ゆっくりと代謝される高分子を含み得る。
【0068】
特定の実施形態において、薬剤上許容可能な塩、例えば、塩酸塩、水素酸塩、リン酸塩および硫酸塩のような鉱酸塩、酢酸塩、プロピオン酸塩、マロン酸エステルおよび安息香酸エステルのような有機酸の塩が使用され得る。
【0069】
幾つかの実施形態において、医薬組成物は、水、生理食塩水、グリセロールおよびエタノールのような液体も含み得る。加えて、湿潤剤または乳化剤のような補助物質またはpH緩衝物質が組成物中に存在し得る。
【0070】
診断試薬は、インビボ、インビトロ、またはエクスビボで診断に使用され得る。インビボの使用において、診断試薬は、任意の投与法、限定されないが、経口、静脈注射、筋肉内、動脈内、髄内、腹腔内、髄腔内、脳室内、経皮、局所、皮下、鼻腔内、腸内、舌下腺、膣内または直腸投与によって投与され得る。
【0071】
診断用試薬は、5.5〜8.5のpHを有してよく、幾つかの実施形態において、6〜8のpH、またさらなる実施形態において約7のpHを有し得る。pHは、緩衝剤の使用によって維持され得る。組成物は無精子症および/または発熱物質を使用していないものであり得る。組成物は、ヒトに対して、等張であり得る。
【0072】
一実施形態において、診断試薬は、抗体の標識化を含む。標識は、酵素標識を含む、蛍光標識、放射性標識、ハプテンおよび生体標識から選択され得る。
【0073】
診断試薬は、特定の抗原の有無を確認するために使用され得る。この情報は、特別な病原体の有無を判別するために推定されることが可能であり、またしたがって、特別な疾患または疾病の有無を判別するために推定されることが可能である。一実施形態において、疾病は、アレルギー、感染状態もしくは感染症または自己免疫状態もしくは自己免疫疾患である可能性がある。診断試薬を用いて達成された情報は、特定の患者における治療における適切な経過を判別するために使用され得る。特に、診断試薬は、アレルゲンの有無を判別するために使用され得る。
【0074】
用語「アレルゲン」は、個体における過敏性反応を刺激することができるいずれの非寄生抗原をも含み、限定されないが、ネコ、毛皮、ふけ、ゴキブリ、萼、羊毛、イエダニ、イエダニ排出、ペニシリン、サルファ剤、サリチル酸塩、局部麻酔を含む麻酔薬、セロリ、根用セロリ、トウモロコシ(corn)、トウモロコシ(maize)、小麦、卵、胚乳、果物、かぼちゃ、マメの鞘、豆、エンドウ、ナッツ、落花生、大豆、ミルク、海鮮物、ゴマ、豆、しょうゆ、木の実、ピーカン、アーモンド、虫さされ、ハチさされ毒、カリバチさされ毒、蚊さされ、カビ胞子、ラテックス、金属、花粉、ライグラスおよびオオアワガエリを含む草、ブタクサ、シャゼンソウ、イラクサ、ヨモギ、アカザおよびギシギシを含む雑草、およびカバノキ、ハンの木、ハシバミ、シデ、トチノキ、柳、ポプラ、プラタナス、シナノキ、オリーブ、セイヨウトネリコを含む木を含む。
【0075】
タンパク質精製における単離された抗体の使用
本発明はまた、本発明のいずれかの方法によって産生された単離された抗体もしくは抗体断片を固定支持体の上に固定化する方法も含む。用語「固体支持体」は、固体もしくは半固体支持体の両方を含み、単離された抗体もしくは抗体断片を固定するために使用され得るいずれの支持体も包含する。固体支持体は、ジェル、メッシュ、ガラス球または電磁ビーズを含むビーズ、カラム、管、マイクロタイタープレートのウェル、プラスチックシートを含み得る。本発明のいずれかの方法によって産生された固定化された抗体もしくは抗体断片は、タンパク質精製において使用され得る。一実施形態において、固定化された抗体は免疫親和性クロマトグラフィーで使用され得る。関心のタンパク質を含む溶液は、本発明のいずれかの方法によって産生された固定化された抗体もしくは抗体断片を含む固定支持体に適用されることができ、またそれらは、関心のタンパク質への特異性を有すると周知である。抗体もしくは抗体断片は、例えば、ビーズ上で固定化されることができ、幾つかの実施形態において、カラム内に保持され得る。
【0076】
概要
用語「含む(comprising)」は、「含む(including)」および「から成る」を包含する。例えば、Xを「含む」組成物は、Xのみから成るか、またはさらに別のものを含むことがあり、例えばX+Yが挙げられる。
【0077】
単語「おおむね」は「完全に」を除外しない。例えば、Yを「おおむね使用していない」組成物とは、Yを完全に使用していない可能性がある。必要であれば、用語「おおむね」は、本発明の定義から除外され得る。
【0078】
用語、数値xに関する「約」は、例えば、X±10%を意味する。
【0079】
本明細書で使用される用語「疾病」は、概して、用語「疾患」および「状態」(病状における使用として)と同義であるか、または互換可能に使用され、人体もしくは動物体の異常状態またはそれらの一部の通常に機能しているものの損傷部分の全てを反映し、典型的に、兆候や症状を区別することによって明らかにされ、またヒトや動物が生命の持続または質の低下を引き起こす。
【0080】
本明細書で使用されるとき、患者の「治療」に対する言及は、治療と同様に防止および予防を含むことを意図する。用語「患者」は、ヒトを含む全ての哺乳類を意味する。概して、患者はヒトである。
【実施例】
【0081】
本発明の例示的実施形態を、下記の実施例に提供する。下記の実施例は、説明のために、かつ本発明の使用に際して当業者を補助するために示されるに過ぎない。本実施例は、多少なりとも本発明の範囲を限定することを意図するものではない。
【0082】
実施例1.間葉系間質細胞培養物中における形質細胞
本発明人は、細胞を分泌する抗体を含む基準の方法(Pittenger et al.,1999 Science 284:143−147;Bieback et al,2004 Stem cells 22:625−634;Dominici et al,2006,Cytotherapy 8:315−317;Sotiropoulou et al 2006,Stem Cells 24:462−471)に従って通常の骨髄から確率されたヒト間葉系間質細胞の初代培養物を観察した。これらの細胞を、ELISPOTによって検出し、また形質細胞として同定した。間葉系間質細胞培養物中における形質細胞は、インビトロで3週間後も検出可能であった(データ示さず)。
【0083】
実施例2.50日間までのヒト形質細胞の培養物
産生された抗体が培養時間の関数として累算し得るように個々の形質細胞を生存させ続けることができる培養システムを発達させるために、本発明人は、基準の方法に従って調製された初代間葉系間質細胞の異なる発生源を試験した。簡潔に言えば、組織培養フラスコをあらかじめ1時間、FCSでコーティングした。骨髄細胞を、30%FCSおよび10−8Mデキサメタゾンを追加された完全IMDM培地において、一晩接着させた。非接着細胞を洗い流し、また接着細胞を完全DMEM−10%FCS中で培養した。7株のうち3株はヒト形質細胞の指示された生存を試験したが、数回の継代の後で増殖が止まった。その後の実施形態において、テロメラーゼ逆転写酵素遺伝子と共に形質転換によって不死化された間葉系間質細胞(MSC−TERT)を使用した。これらの細胞はMihara et alによって単離されたものである(Br J Haematol 2003,120,846−849)。
【0084】
末梢血液単核細胞を、PE標識化抗CD138モノクローナル抗体で染色し、抗PE微粒子(Miltenyi)を用いて強化し、さらに細胞分類によってCD138陽性細胞を単離するため精製した。回収されたIgGを分泌する形質細胞の数を、アイソタイプ特定ELISPOTを用いて判別した。異なる数のCD138陽性細胞を、96ウェル培養プレート内で、10%ウシ胎仔血(Hyclone)、非必須アミノ酸、ピルビン酸塩およびグルタマックス(GIBCO)を追加したRPMI1640と共に、間葉系間質細胞単層上に播種した。平板の際に実施したELISPOTに基づき、図1に表された培養物は7個のIgGを分泌する細胞を含んだ。培養上清の半分を異なる時間に採取し、また新しい培地に差し替えた。さらに18日、34日目の培地は完全に取り除き、新しい培地に差し替えた。1培養物あたりのIgG産生物の一日の率および1形質細胞あたりのIgG産生物の推定の一日の率を判別した。図1で示したように、約7細胞の本発明の培養群によって産生されたIgGの量は、676pg/日の産生物の率および96pg/細胞/日の推定の産生物の率と一致して、50日間にわたって培養の線形時間関数として増加する。
【0085】
実施例3.3週間の個々の形質細胞の培養物
末梢血液または骨髄からの形質細胞は、抗PE微粒子および細胞分類に続いて、PE共役抗CD138抗体を用いて単離し、また間葉系間質細胞単層上に96ウェルプレート内で0.5細胞/ウェルで播種した。培養物を含むIgGは、標準の試料によって22〜23日間観察した。培地を16日目に変更した。モノクローナル培養物中でのIgG産生物の率は、培養の全期間にわたって72〜134pg/細胞/日の率であり定数だった。(図2a、生成した末梢血液(4培養);図2b、生成した骨髄(5培養))。
【0086】
5つの限界希釈法実験において、血液および骨髄形質細胞の平板効率は30%〜65%である(データ示さず)。加えて、多クローン性培養物から回収した形質細胞は、Ig分泌の一定の率が維持される単細胞培養物中で再度平板され得る(データ示さず)。IgGの線累積は、常に高い率でIgGを分泌する個々の細胞の保存と一致している。培養された形質細胞によるIgG産生物は、TLA作動薬によって刺激されたメモリーB細胞の完全に廃止された増殖および分化の段階において、照射による影響を受けない(データ示さず)。
【0087】
実施例4.IgG、IgA、IgMおよびIgEを産生する形質細胞の培養物
IgG、IgA、IgMおよびIgEを産生する末梢血液CD138陽性細胞を、健康なドナーから単離し、617同型培養物において、間葉系間質細胞単層を含む384ウェルプレート内で5細胞/ウェルで平板した。10日目の培養上清を、アイソタイプ特定ELISAを用いて、IgG、IgA、IgMおよびIgEの存在を試験した。4つのアイソタイプの合計量を、培養上清内で測定した(図3に示す)。IgG、IgA、IgMおよびIgE形質細胞の産生力の中央値は、10日間で860、770、1100および1800pgであって、すなわちそれぞれ86、77、110および180pg/細胞/日であった。
【0088】
実施例5.インビトロでの形質細胞生存の効率
ヒト形質細胞を生成した末梢血液を、CD138発現に従って7人のドナーから単離し、1または25細胞/ウェルで播種した。培養の初期に細胞を分泌するIgG、IgA、IgM抗体の数は、アイソタイプ特定ELISPOTによって算出した。平板効率を、ポアソン分布分析に従って細胞を分泌するIgG、IgA、IgM抗体を基に算出し、IgGは50%〜74%、IgAは31%〜78%およびIgMは0%〜26%の間で変動した(図4に示す)。加えて、多クローン性培養物から回収された形質細胞は、Ig分泌の一定の率を維持する単細胞培養物中において再度プレーティングされ得る(図示せず)。
【0089】
実施例6.希少なIgEモノクローナル抗体の単離
形質細胞を、アレルギー患者の末梢血液から単離し、10個の384ウェルマイクロプレート内で、hMSC−TERT単層上で1細胞/ウェルで平板した。5つの培養上清は、IgE生成物を陽性とした。IgE陽性培養物は、RT−PCRを受け、2対のVH/VL遺伝子を回収し、配列した(表1)。V遺伝子は、Wardemann et al.,(Science301,1374−1377,2003)に説明される方法に従って、軽鎖またはヒトIgG1もしくはIgEの重鎖の発現のため、発現ベクターにクローン化した。IgGまたはIgE抗体を293T細胞の一過性導入によって産生した。この実施例は希少な形質細胞を回収するため、および代表のIgEモノクローナル抗体を単離するための可能性を示す。
【0090】
【表1】

【0091】
実施例7.間葉系間質細胞の存在下で培養された形質細胞からの抗原特定モノクローナル抗体の単離
形質細胞を、破傷風トキソイド(TT)と共に追加免疫ワクチンの7日後のドナーの末梢血液から単離し、また384ウェルマイクロプレート内で、MSC−TERT単層上で、クローン状態で播種した。10日目の培養上清を、TT特定IgG抗体(OD405)およびTT特定抗体を産生するモノクローナル培養物を同定したのと同様に、合計IgG(ng/培養物)が存在するか分析した(図5に示す)。この実施例は追加免疫付与に続いて抗原特異的な形質細胞の多数を同定する可能性を示す。
【0092】
実施例8.IL−6の存在下で培養された形質細胞からの抗体を中和する強力で広く反応するインフルエンザAの単離
季節性インフルエンザワクチンで7日前に免疫を与えられたドナーからのCD138陽性細胞を、10ng/mlIL−6の存在下、0.5細胞/ウェルで、16の384細胞/ウェルに播種した。6日および8日目の培養上清を、3回のパラレルELISAにおいて、抗原として組換え型H5またはH9バキュロウイルス由来組換え血球凝集素(HA)および無関連破傷風トキソイド(TT)を用いて試験した。スクリーンされた4,928の培養上清のうち、12個がH5HAに結合し、25個がH9HAに結合し、54個がH5およびH9に結合した。最も高い過剰摂取の合図があった後半の幾つかは、RT−PCRを受け、2対のVH/VL遺伝子は回収された。2つのモノクローナル抗体、FI6およびFI28はV、DおよびJ遺伝子断片(IGHV3−3001、IGHD3−901、IGHJ402およびIGKV4−101)を共有したが、N領域、IGKJ使用量、体細胞変異のパターンにおいて一致しなかった。したがってそれらは、クローン的に関係していなかった。
【0093】
FI6およびFI28のV遺伝子を、発現ベクターへクローン化し、および組換え抗体を、293T細胞を導入することによって産生した。それらの特異性を、異なる亜類型に属する組換え型HAのパネルを用いてELISAによって調査した(表2)。FI6は1群(H1、H5およびH9)また2群(H3およびH7)を含む、試験した全てのインフルエンザA HA亜類と結合したが、インフルエンザBからのHAとは結びつかなかった。対照的に、FI28は、1群HAのみと結合した。
【0094】
【表2】

【0095】
次に、1群およびグループ23インフルエンザA亜類型を中和する能力について、偽ウイルスおよび感染ウイルスを用いて、FI6およびFI28を試験した。FI6は、注目すべきことに、抗原的に相違する分岐群0、1、2.1、2.2および2.3に属する6つのH5分離株、および2つのH7トリ分離株を含む(表3)全ての偽ウイルスを中和した。加えて、FI6は、最近のH1N1分離株A/cal/04/09(表4)による流行病までの70年間の期間を通して、2つのH3N2ウイルスおよび4つのH1N1ウイルスを含む全ての試験された感染ウイルスを中和した。対照的に、FI28は、全てのH5偽ウイルスを中和したが、全ての試験された感染ウイルスおよびH7偽ウイルスの中和は失敗した(表3および4)。
【0096】
【表3】

【0097】
【表4】

【0098】
上記に説明された方法において、5〜10日間において、約8〜16ng/mlで50μLのモノクローナル抗体を送達したことに気づくだろう。この量および抗体の濃度は多重検定を実施するために十分である。これらの検定はELISAのような結合検定(5μLを使用して標準の浅い384プレート型内で実施され得る)だけでなく、偽型中和のような感度の範囲内である機能検定もまた含む(表3に示す)。重要なことに、多重平行検定を実施する能力は、多重抗原変異体への結合を可能にする抗体を分泌する希少な形質細胞を急速に同定するため必須である。
【0099】
実施例9.ワクチン接種から10年後の末梢血液から単離し、培養した形質細胞からの破傷風トキソイド特定モノクローナル抗体の分離
CD138+HLA−DR+CD62L+形質細胞を、破傷風トキソイド(TT)ワクチンを受けたドナーの10年後の末梢血液から細胞分類によって単離した。合計1,700個の細胞を、384ウェルマイクロプレート細胞内で、0.5細胞/ウェルで播種し、また細胞培養上清は破傷風トキソイド特定IgG抗体の存在を確認するため、ELISAによって7日目にスクリーンした。1つの破傷風トキソイド特定培養物を同定し、8日目には、VH/VL遺伝子はRT−PCRによって回収し、配列した(表5に示す)。遺伝子を発現ベクターにクローン化し、組換え抗体(TT14)を293T細胞の一時的トランスフェクションによって産生した。抗体は、ELISA法によって破傷風トキソイドまたは無関連の抗原(陰性制御)へ結合するために異なる濃度で試験した(図6に示す)。
【0100】
【表5】

【0101】
本発明を実施するための代替の方法があり、本発明の精神および範囲から逸脱することなく様々な修正が行われ得るということに留意されたい。したがって、本実施形態は、制限的ではなく、例示的なものであると考慮されるべきであり、また本発明は、本明細書で与えられた詳細に限定される、添付の特許請求項の範囲および等価物内で修正され得る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
限られた数の形質細胞を培養することを含む、形質細胞から抗体を産生する方法。
【請求項2】
前記培養される形質細胞の数が10個以下である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
単細胞培養で形質細胞を培養することを含む、形質細胞からモノクローナル抗体を産生する方法。
【請求項4】
前記抗体がヒト抗体であり、前記形質細胞がヒト形質細胞である、請求項1、2、または3に記載の方法。
【請求項5】
前記形質細胞が、前記形質細胞の生存を延長させる外因性成分を含む培養培地中で培養される、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記培養される形質細胞の生存が、前記抗体が前記抗体の特徴付けに必要とされる数量で産生されるために十分な時間延長される、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記培養培地から前記抗体を単離することをさらに含む、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記形質細胞の前記生存が短期間または長期間延長される、請求項5〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記形質細胞の前記生存が短期間延長され、前記短期間が約5日〜約7日である、請求項5〜8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記形質細胞の前記生存が長期間延長され、前記長期間が少なくとも10日である、請求項5〜8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記形質細胞の前記生存が少なくとも20日間、または少なくとも30日間延長される請求項5〜8または10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記形質細胞の前記生存を強化する前記外因性成分が、非形質細胞型または前記形質細胞によって発現される受容体に対するリガンドを含む、請求項5〜9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記外因性成分が、IL−5、IL−6、ストロマ細胞由来因子1(SDF−1)、TNF−α、CD44に対するリガンド、およびそれらの組み合わせから成る群から選択される1つ以上のリガンドを含む、請求項5〜9または12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記形質細胞の前記生存を強化する前記外因性成分が非形質細胞を含み、前記非形質細胞が、間葉系間質細胞、線維芽細胞、または破骨細胞である請求項5〜12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記形質細胞が、末梢血液、骨髄、組織、もしくは体液から単離されるか、またはインビトロでB細胞から生成される、請求項1〜14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
抗体または抗体断片を産生する方法であって、
a.請求項1〜15のいずれか一項に記載の方法に従って限られた数の形質細胞を培養するステップと、
b.所望の特性を有する抗体を産生する培養物を同定するステップと、
c.産生された前記抗体をコードする核酸を単離するステップと、
d.宿主細胞内で核酸を発現させるステップと、
を含む、方法。
【請求項17】
請求項16に記載の方法によって産生される、単離された抗体もしくは抗体断片。
【請求項18】
治療における使用、診断用薬として、アレルゲンの検出における使用、感染症または自己免疫疾患の診断における使用、または薬学的組成物中での使用のための、請求項17に記載の抗体もしくは抗体断片。
【請求項19】
アレルギー、自己免疫疾患、または感染症での治療で使用される、請求項17に記載の前記抗体または前記抗体断片を含む薬学的組成物。
【請求項20】
前記抗体または前記抗体断片の特徴付けをさらに含み、前記抗体もしくは抗体断片の特徴付けは、前記抗体または前記抗体断片の機能を判別するための機能検定、前記抗体もしくは前記抗体断片、または前記抗体もしくは前記抗体断片によって認識されるエピトープの結合特異性を判別するための結合検定、および/または前記抗体もしくは抗体断片が毒素または病原体を中和する能力を判別するための中和検定を行うことを含む、請求項1〜16のいずれか一項に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2012−506251(P2012−506251A)
【公表日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−532738(P2011−532738)
【出願日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【国際出願番号】PCT/IB2009/007375
【国際公開番号】WO2010/046775
【国際公開日】平成22年4月29日(2010.4.29)
【出願人】(511017287)インスティテュート・フォー・リサーチ・イン・バイオメディシン (4)
【氏名又は名称原語表記】INSTITUTE FOR RESEARCH IN BIOMEDICINE
【Fターム(参考)】