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形質細胞様樹状細胞性白血病細胞株の形質転換体、及びその利用
説明

形質細胞様樹状細胞性白血病細胞株の形質転換体、及びその利用

【課題】形質細胞様樹状細胞性白血病細胞株に対して、既に備えている機能を増強したり、新たな機能を付加したりする技術の提供。
【解決手段】PMDC05等の形質細胞様樹状細胞性白血病細胞株に対して、共刺激因子及び/又は共刺激シグナルに関連する因子である機能調節タンパク質CD80をコードする遺伝子を導入することによって、当該細胞の機能の増強や新たな機能の付加が可能となり、形質細胞様樹状細胞性白血病細胞株の抗原提示能の増強、および、該抗原提示細胞と、細胞障害性T細胞前駆細胞とを接触させ、細胞障害性T細胞を誘導することが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、形質細胞様樹状細胞性白血病細胞株の形質転換体に関する。更に、本発明は、当該形質転換体の作製方法、当該形質転換体を利用した各種方法に関する。
【背景技術】
【0002】
樹状細胞は、抗原提示細胞として機能する免疫細胞の一種であり、哺乳類の免疫系の一部を担っている。樹状細胞は、抗原を取り込むと活性化され、リンパ節や脾臓等において、取り込んだ抗原に特異的なT細胞やB細胞を、直接的又は間接的に活性化する。現在、樹状細胞は、発現している表面抗原分子によって、形質細胞様樹状細胞(Plasmacytoid dendritic cell、pDC)、骨髄系樹状細胞(myeloid dendritic cell、mDC)等に分類されている。
【0003】
形質細胞様樹状細胞は、形質細胞に類似した形態を有し、CD4、HLA−DR、CD123、及びCD45RAが陽性で、分化マーカー(CD3、CD19、CD13、及びCD11c)が陰性であることが知られている(非特許文献1参照)。また、この形質細胞様樹状細胞は、IFN−αを含むインターフェロンの産生を担っており、獲得免疫や自然免疫において、重要な役割を果たすことが明らかにされている(非特許文献1参照)。
【0004】
一方、正常な形質細胞様樹状細胞の悪性カウンターパートであるCD4CD56白血病細胞の存在が報告されている(非特許文献2−4参照)。従来、白血病患者から樹立された形質細胞様樹状細胞性白血病細胞株として、GEN2.2株及びCAL−1株が報告されている(非特許文献5−6参照)。GEN2.2株は、急性形質細胞様樹状細胞性白血病(pDC−derived acute leukemia、pDCL)の患者から単離された株であり(非特許文献5参照)、CAL−1株は、芽球型NK細胞リンパ腫患者から単離された株である(非特許文献6参照)。更に、本発明者等は、pDC白血病患者から形質細胞様樹状細胞性白血病細胞株PMDC05の樹立に成功している(非特許文献7参照)。当該PMDC05株は、正常な形質細胞様樹状細胞において認められる表面形質、Toll様受容体発現、抗原提示能、サイトカイン産生能等を有していることに加え、維持培養の際に支持細胞やサイトカインを必要としないという利点があり、免疫反応における形質細胞様樹状細胞の機能に関する研究や、樹状細胞を用いた腫瘍や感染症の細胞免疫療法への応用が期待できる生物材料として注目を浴びている。
【0005】
従来樹立されている形質細胞様樹状細胞性白血病細胞株は、臨床的利用価値を有するものであるが、当該細胞の機能を増強させたり、新たな機能を付加ことによって、その利用価値を高める手法については、十分に検討されていないのが現状である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Soumelis V.et al.,Eur J Immunol 2006;36:2286−92
【非特許文献2】Chaperot L.et al.,Blood 2001;97:3210−7
【非特許文献3】Feuillard J.et al.,Blood 2002;99:1556−63.
【非特許文献4】Jacob MC.et al.,Haematologica 2003;88:941−55.
【非特許文献5】Chaperot L.et al.,J Immunol 2006;176:248−55.
【非特許文献6】Maeda T.et al.,Int J Hematol 2005;81:148−54.
【非特許文献7】Narita M.et al.,Leukemia Research 2009;33:1224−32
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、形質細胞様樹状細胞性白血病細胞株に対して、既に備えている機能を増強したり、新たな機能を付加したりする技術を提供することである。また、本発明は、形質細胞様樹状細胞性白血病細胞株の抗原提示能を向上させる技術を提供することも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者等は、前記課題を解決すべく鋭意検討を行ったところ、驚くべきことに、形質細胞様樹状細胞性白血病細胞株に対して、機能調節タンパク質をコードする遺伝子を導入することによって、当該細胞の機能の増強や新たな機能の付加が可能になることを見出した。特に、本発明者等は、形質細胞様樹状細胞性白血病細胞株に対して、共刺激因子又は共刺激に関連する因子をコードする遺伝子を導入することによって、当該細胞の抗原提示能を顕著に向上させ得ることを見出した。本発明は、これらの知見に基づいて、更に検討することにより完成したものである。
【0009】
即ち、本発明は、下記に掲げる態様の発明を提供する。
項1. 形質細胞様樹状細胞性白血病細胞株に、機能調節タンパク質をコードする遺伝子が導入されてなることを特徴とする、形質転換体。
項2. 形質細胞様樹状細胞性白血病細胞株が、PMDC05株である、項1に記載の形質転換体。
項3. 機能調節タンパク質が、共刺激因子及び/又は共刺激シグナルに関連する因子である、項1又は2に記載の形質転換体。
項4. 機能調節タンパク質が、CD80である、項3に記載の形質転換体。
項5. 形質細胞様樹状細胞性白血病細胞株に、機能調節タンパク質をコードする遺伝子を導入する工程を含む、形質細胞様樹状細胞性白血病細胞株の形質転換体の作製方法。
項6. 形質細胞様樹状細胞性白血病細胞株が、PMDC05である、項5に記載の作製方法。
項7. 形質細胞様樹状細胞性白血病細胞株に、共刺激因子及び/又は共刺激シグナルに関連する因子をコードする遺伝子を導入する工程を含む、形質細胞様樹状細胞性白血病細胞株の抗原提示能を増強する方法。
項8. 形質細胞様樹状細胞性白血病細胞株が、PMDC05である、項7に記載の増強方法。
項9. 下記(1)及び(2)工程を含む、細胞障害性Tリンパ球の調製方法:
(1)形質細胞様樹状細胞性白血病細胞株に、共刺激因子及び/又は共刺激シグナルに関連する因子をコードする遺伝子が導入されてなる形質転換体に抗原を接触させる、又は当該形質転換開において抗原をコードしている遺伝子を発現させることにより、抗原提示細胞を調製する工程、並びに
(2)上記工程で得られた抗原提示細胞と、細胞障害性T細胞前駆細胞とを接触させ、細胞障害性T細胞を誘導する工程。
項10. 形質細胞様樹状細胞性白血病細胞株が、PMDC05株である、項9に記載の調製方法。
項11. 下記(I)〜(III)工程を含む、免疫応答に関与する物質のスクリーニング方法:
(I)形質細胞様樹状細胞性白血病細胞株に、機能調節タンパク質をコードする遺伝子が導入されてなる形質転換体と、被検物質とを接触させる工程、
(II)被験物質を接触させた形質転換体の特性と、被験物質を接触させていない形質転換体の特性とを分析して比較する工程、及び
(III)前記工程(II)を比較結果に基づいて、前記形質転換体の特性を変化させる被験物質を選択する工程。
項12. 形質細胞様樹状細胞性白血病細胞株が、PMDC05株である、項11にスクリーニング方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、形質細胞様樹状細胞性白血病細胞株に対して、既に備えている機能を増強したり、新たな機能を付加したりすることができるので、免疫応答の分子学的解明に寄与する生物材料を提供できるだけでなく、免疫疾患や癌の診断・治療等の医療分野で有益な生物材料を提供することもできる。
【0011】
また、形質細胞様樹状細胞性白血病細胞株に対して、共刺激因子又は共刺激に関連する因子をコードする遺伝子を導入することによって、当該細胞の抗原提示能を顕著に増強させることができるので、細胞傷害性T細胞を用いた悪性腫瘍や感染症に対する細胞免疫療法の開発に貢献することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】形質細胞様樹状細胞性白血病細胞株(PMDC05)と当該細胞にCD80を導入した形質転換体(PMDC11株)について、細胞表面に発現しているCD80をフローサイトメトリーで測定した結果である。
【図2】形質細胞様樹状細胞性白血病細胞株(PMDC05)と当該細胞にCD80を導入した形質転換体(PMDC11株)について、抗原提示能を評価した結果である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
1.形質細胞様樹状細胞性白血病細胞株の形質転換体
本発明の形質転換体は、形質細胞様樹状細胞性白血病細胞株に、機能調節タンパク質をコードする遺伝子が導入されてなることを特徴とする。以下、本発明について、詳細に説明する。
【0014】
本発明において、「形質細胞様樹状細胞性白血病細胞」とは、形質細胞に形態が類似しウィルス感染により大量のI型インターフェロン(IFN)を産生する形質細胞様樹状細胞の悪性カウンターパートである白血病細胞である。
【0015】
形質細胞様樹状細胞性白血病細胞の形態上の特徴としては、骨髄系樹状細胞と同様、樹状又は樹枝状の突起を有していることが挙げられる。
【0016】
形質細胞様樹状細胞性白血病細胞の表現型として、具体的には、ヘルパーTリンパ球及びNK細胞の表面マーカーであるCD4及びCD56が共に陽性であり;形質細胞様樹状細胞の表面マーカーであるCD123が陽性であり;抗原提示細胞の表面マーカーであるCD86及びHLA−DRが陽性であり;且つ分化マーカーであるCD3、CD11c、CD13、CD14、CD16及びCD19が陰性であるものが例示される。また、形質細胞様樹状細胞性白血病細胞のその他の表面マーカーとして、例えば、:CD2、CD8、CD20、CD40、及びCD57が陰性であり、CD7、CD33、CD54、HLA−ABC、及びBDCA4が陽性であるものが挙げられる。
【0017】
また、形質細胞様樹状細胞性白血病細胞の特徴の一つとして、TLR(Toll like receptor)7及び9を発現していることが挙げられる。
【0018】
更に、形質細胞様樹状細胞性白血病細胞の他の特徴として、単独で抗原提示能を有していることが挙げられる。形質細胞様樹状細胞性白血病細胞の抗原提示能は、インターロイキン−3(IL−3)、CpG DNA、リポポリサッカライド(LPS)等によって更に増強することもある。
【0019】
また、形質細胞様樹状細胞性白血病細胞株として、簡便には、細胞寄託機関から入手することもできる。例えば、形質細胞様樹状細胞性白血病細胞株として、CAL−1(独立行政法人産業技術総合研究所 特許生物寄託センターにてFERM P−20595として寄託)が公知である。また、本出願人は、pDCL患者(ヒト)から樹立した形質細胞様樹状細胞性白血病細胞株として、PMDC05株を所有しており、本細胞株は自己寄託とし、申請により分譲を認めることとする。PMDC05株の分譲を求める者は、国立大学法人新潟大学医学部保健学科検査技術科学専攻基礎生体情報学 高橋益廣教授(電話番号025−227−2387)から、必要に応じてPMDC05株の分譲を受けることができる。
【0020】
PMDC05株は、正常な形質細胞様樹状細胞において認められる表面形質、Toll様受容体発現、抗原提示能、サイトカイン産生能等を有していることに加え、維持培養の際に支持細胞やサイトカインを必要としないという利点があり、本発明において、形質細胞様樹状細胞の性状や機能の研究および細胞免疫療法における抗原提示細胞として好適に使用される。また、PMDC05株は、本発明によって、機能の増強や新たな機能の付加を行い易いという点でも、利点がある。
【0021】
本発明において、形質細胞様樹状細胞性白血病細胞株に導入される遺伝子としては、機能調節タンパク質をコードしているものであれば、特に制限されない。
【0022】
機能調節タンパク質とは、形質細胞様樹状細胞性白血病細胞株が既に有している機能に関連するタンパク質だけでなく、形質細胞様樹状細胞性白血病細胞株が有していない機能に関連するタンパク質が含まれる。
【0023】
形質細胞様樹状細胞性白血病細胞株が既に有している機能に関連するタンパク質としては、例えば、共刺激因子、共刺激シグナルに関連する因子、サイトカイン、Toll様受容体等が挙げられる。より具体的には、共刺激因子として、CD80、CD28、CD40、CD154、CD86等が挙げられる。共刺激シグナルに関連する因子としては、CD83、CD1a等が挙げられる。サイトカインとしては、IL−1,−2、−4、−6、−10、−12、−17、M−CSF、IFN−α、−β、−γ、TNF−α等が挙げられる。
【0024】
また、形質細胞様樹状細胞性白血病細胞株が有していない機能に関連するタンパク質としては、具体的には、CD40L等が挙げられる。
【0025】
これらの機能調節タンパク質は公知であり、そのアミノ酸配列や、それをコードする遺伝子の塩基配列も公知である。
【0026】
本発明において、導入する遺伝子がコードしている機能調節タンパク質の種類については、特に制限されず、形質細胞様樹状細胞性白血病細胞株に備えさせる所望の特性に応じて適宜設定することができる。例えば、形質細胞様樹状細胞性白血病細胞株の抗原提示能を増強させる場合であれば、導入する遺伝子がコードしている機能調節タンパク質として、共刺激因子及び/又は共刺激シグナルに関連する因子が好ましく、CD80が特に好ましい。
【0027】
また、導入する機能調節タンパク質をコードしている遺伝子は、野生型遺伝子以外に、その遺伝子産物のアミノ酸配列における数個(例えば1〜10個、好ましくは1〜6個、更に好ましくは1〜4個、より好ましくは1〜3個、特に好ましくは1又は2個)のアミノ酸が置換、欠失、及び/又は挿入されており、且つ、野生型の遺伝子産物と同等の機能を有する変異遺伝子産物をコードしている変異遺伝子であってもよい。
【0028】
また、本発明において、形質細胞様樹状細胞性白血病細胞株に導入される機能調節タンパク質は、1種であっても、また2種以上であってもよい。
【0029】
機能調節タンパク質をコードしている遺伝子を形質細胞様樹状細胞性白血病細胞株に導入するには、当該遺伝子が発現可能な状態で導入されることを限度として特に制限されず、動物細胞のトランスフェクションにおいて通常使用される形質転換法で行うことができる。具体的には、機能調節タンパク質をコードしている遺伝子を形質細胞様樹状細胞性白血病細胞株へ導入する方法として、ベクターを使用する方法;リン酸カルシウム法;リポフェクション法;エレクトロポレーション法;マイクロインジェクション法等が例示される。これらの中でも、導入効率の点から、ベクターを使用する方法が好ましい。ベクターを使用する場合には、ベクターとして、ウイルスベクター、非ウイルスベクター、人工ウイルス等を用いることができるが、レンチウィルス、アデノウイルス及びレトロウイルス等のウイルスベクターが、安全性の観点から好ましい。
【0030】
斯して形質細胞様樹状細胞性白血病細胞株に機能調節タンパク質をコードする遺伝子が導入された形質転換体は、導入された機能調節タンパク質の種類に応じて、当該細胞の機能が増強されたり、新たな機能が付加されている。機能調節タンパク質をコードする遺伝子が形質細胞様樹状細胞性白血病細胞株に導入されていることの確認は、導入された機能調節タンパク質が発現しているか否か、或いは導入された機能調節タンパク質の種類に応じた機能増強や機能付加が認められるか否かを指標として行うことができる。また、機能調節タンパク質をコードする遺伝子と共に緑色蛍光蛋白や薬剤耐性遺伝子を導入しておいた場合には、緑色色素や薬剤存在下での生育を指標として、機能調節タンパク質をコードする遺伝子が導入された形質転換体を選択することもできる。
【0031】
斯してえられた形質転換体は、野生株である形質細胞様樹状細胞性白血病細胞株と同じ条件で培養することができる。当該形質転換体の培養条件としては、具体的には、10容量%FBS(fetal bovine serum)を含むIMDM(Iscove’s modified Dulbecco’s medium)培地で、37℃、5%COの条件が例示される。
【0032】
斯して得られる形質転換体は、野生株である形質細胞様樹状細胞性白血病細胞株の機能が増強されていたり、新たな機能が付加されているので、免疫疾患や癌の診断・治療等の医療分野や、免疫応答の基礎研究およびがんや重症感染症に対する細胞免疫療法等において利用可能である。
【0033】
2.形質細胞様樹状細胞性白血病細胞株の抗原提示能の増強方法
前述する機能調節タンパク質として、共刺激因子及び/又は共刺激シグナルに関連する因子を使用する場合、形質細胞様樹状細胞性白血病細胞株が有する抗原提示能を増強させることができる。従って、本発明は、形質細胞様樹状細胞性白血病細胞株に、共刺激因子及び/又は共刺激シグナルに関連する因子をコードする遺伝子を導入する工程を含む、形質細胞様樹状細胞性白血病細胞株の抗原提示能の増強方法をも提供する。
【0034】
当該増強方法において、使用される形質細胞様樹状細胞性白血病細胞株の種類、共刺激因子及び/又は共刺激シグナルに関連する因子の種類、遺伝子の導入方法等については、前記「1.形質転換体」の欄の記載の通りである。当該増強方法において、形質細胞様樹状細胞性白血病細胞株として、好適にはPMDC05株が使用される。
【0035】
3.細胞障害性Tリンパ球の調製方法
前述するように、形質細胞様樹状細胞性白血病細胞株に、共刺激因子及び/又は共刺激シグナルに関連する因子をコードする遺伝子が導入されてなる形質転換体は、抗原提示能が向上しており、細胞障害性Tリンパ球を誘導し易いという特性を備えている。従って、本発明は、下記(1)及び(2)工程を含む、細胞障害性Tリンパ球の調製方法をも提供する。
(1)形質細胞様樹状細胞性白血病細胞株に、共刺激因子及び/又は共刺激シグナルに関連する因子をコードする遺伝子が導入されてなる形質転換体に抗原を接触させる、又は当該形質転換において抗原をコードしている遺伝子を発現させることにより、抗原提示細胞を調製する工程、並びに
(2)上記工程で得られた抗原提示細胞と、細胞障害性T細胞前駆細胞とを接触させ、細胞障害性T細胞を誘導する工程。
【0036】
上記工程(1)において使用される形質転換体としては、好ましくはPMDC05株に共刺激因子及び/又は共刺激シグナルに関連する因子をコードする遺伝子が導入されてなる形質転換体が挙げられ、更に好ましくはPMDC05株にCD80をコードする遺伝子が導入されてなる形質転換体が挙げられる。
【0037】
また、上記工程(1)において、使用される抗原としては、特に制限されず、例えば、癌細胞(白血病細胞を含む)や感染症の病原菌に特異的に発現しているタンパク質が例示される。上記工程(1)において、抗原提示細胞を調製するための具体的条件については、特に制限されず、例えば、従来採用されている抗原提示細胞の調製条件を採用することができる。
【0038】
上記工程(2)において、使用される細胞障害性T細胞前駆細胞については、特に制限されないが、最終的に得られる細胞障害性T細胞を投与するする患者の末梢血から得られるものが好適である。また、上記工程(2)において、細胞障害性T細胞を誘導するための具体的条件については、特に制限されず、従来採用されている細胞障害性T細胞の誘導条件を採用することができる。
【0039】
また、上記工程(1)及び(2)は、各々の工程を順次行ってもよいが、両工程を同時に行ってもよい。上記工程(1)及び(2)を同時に行うには、例えば、上記形質転換体と、抗原と、細胞障害性T細胞前駆細胞とを混合培養する方法が挙げられる。
【0040】
斯して調製された細胞障害性Tリンパ球は、癌(白血病を含む)や感染症の治療に使用することができる。
【0041】
4.免疫応答に関与する物質のスクリーニング方法
前述するように、形質細胞様樹状細胞性白血病細胞株に、機能調節タンパク質をコードする遺伝子が導入されてなる形質転換体は、当該細胞の機能が増強されたり、新たな機能が付加されているので、免疫応答における形質細胞様樹状細胞のメカニズムに関する研究や、免疫応答に関与する物質のスクリーニングに利用することができる。従って、本発明は、下記(I)〜(III)工程を含む、免疫応答に関与する物質のスクリーニング方法をも提供する。
(I)形質細胞様樹状細胞性白血病細胞株に、機能調節タンパク質をコードする遺伝子が導入されてなる形質転換体と、被検物質とを接触させる工程、
(II)被験物質を接触させた形質転換体の特性と、被験物質を接触させていない形質転換体の特性とを分析して比較する工程、
(III)前記工程(II)を比較結果に基づいて、前記形質転換体の特性を変化させる被験物質を選択する工程。
【0042】
上記工程(I)において使用される形質転換体としては、好ましくはPMDC05株に共刺激因子及び/又は共刺激シグナルに関連する因子をコードする遺伝子が導入されてなる形質転換体が挙げられ、更に好ましくはPMDC05株にCD80をコードする遺伝子が導入されてなる形質転換体が挙げられる。
【0043】
前記工程(I)において、被験物質としては、公知物質又は新規物質のいずれであってもよく、タンパク質、ペプチド、低分子有機化合物、核酸、糖類等のいずれであってもよい。また、被験物質は、天然由来であっても、合成されたものであってもよい。前記工程(I)において、前記形質転換体と被検物質とを接触させる方法については、特に制限されず、例えば、前記形質転換体が生育可能な培地中に、前記形質転換体と被検物質とを共存させて37℃で5%COの条件下でインキュベートすればよい。
【0044】
前記工程(II)において、被験物質を接触させた形質転換体の特性と、被験物質を接触させていない形質転換体の特性との比較は、例えば、形態変化の有無、タンパク質の発現量の差、mRNAの発現量の差等に基づいて行うことができる。
【0045】
前記工程(III)では、前記工程(II)の結果を踏まえて、前記形質転換体の特性を変化させる被験物質が選択される。斯して選択される被験物質は、免疫応答に関与する候補物質である。当該スクリーニング方法で選択された被験物質は、癌(白血病)や免疫疾患の治療薬の候補物質となり得る。例えば、前記(II)において、前記形質転換体の抗原提示能の差が認められ、前記工程(III)で当該抗原提示能の差に基づいて候補物質を選択した場合には、選択された被験物質は、樹状細胞の抗原提示機能に関与する薬剤の候補にもなり得る。
【実施例】
【0046】
以下に、実施例等に基づいて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。
【0047】
実施例1: 形質細胞様樹状細胞性白血病細胞株の形質転換体の作製
白血病性形質細胞様樹状細胞株PMDC05(国立大学法人新潟大学医学部保健学科検査技術科学専攻基礎生体情報学にて保存)に対して、ヒトCD80をコードする遺伝子を導入した形質転換体を以下の手順に従って作製した。第3世代RRLレンチウィルスベクターに組み込んだCD80遺伝子をPMDC05に導入することにより形質転換体を作製した。PMDC05への遺伝子導入は、5x10個の細胞ペレットに組換えレンチウィルス浮遊液200μlと硫酸プロタミン(5μg/ml)を加え800g,30分間遠心した後、10容量%のFBSを含むIMDM培養液(GlutaMAX 31980030, Invitrogen)を800μl加えた。細胞浮遊液を12ウェルプレートに移し再度800g,30分間遠心したのち1晩培養した。翌日培養液を替えて2〜3日培養し、抗CD80モノクローナル抗体で染色した後セルソーティングを行い、CD80導入細胞を選択した。細胞が増殖した後、再度CD80モノクローナル抗体で染色し、蛍光強度が強い細胞のソーティングを行いPMDC11とした。
【0048】
得られた形質転換体(PMDC11株)におけるCD80の発現を確認するために、蛍光色素で標識した抗CD80抗体による染色を行った。抗CD80抗体による染色には、形質転換をした後に3ヵ月間、10容量%のFCSを含むIMDM培地(GlutaMAX 31980030, Invitrogen)で継代培養を行った細胞を用いた。また、比較のために、白血病性形質細胞様樹状細胞PMDC05株についても、同様に染色を行った。
【0049】
抗CD80抗体によって細胞を染色した後に、フローサイトメトリーで分析を行った。結果を図1に示す。この結果から、白血病性形質細胞様樹状細胞PMDC05株では、CD80が発現していないものの、CD80を用いて形質転換した形質転換体PMDC11株ではCD80が発現していることが確認された。
【0050】
実施例2: 形質転換体PMDC11株の抗原提示能の評価
上記実施例1で作製した形質転換体PMDC11株の抗原提示能を評価するために以下の試験を行った。具体的には、種々の細胞数のPMDC11を刺激細胞とし、1ウェルあたり1×10個のアロリンパ球を反応細胞とした混合白血球培養(MLC)を行った。刺激細胞を60Gyの放射線照射を行い、分裂を阻止した後に反応細胞に添加した。混合リンパ球培養を5日間行った後、H-thymidineを培養に加え、その取り込みをシンチレーションカウンターで測定することにより、PMDC11の抗原提示能を評価した。コントロールとしてCD80遺伝子を導入していないPMDC05を用いた。
【0051】
得られた結果を図2に示す。図1の縦軸は、1細胞当たりのH−thymidineの取り込み量(cpm)であり、抗原刺激に反応して分裂したリンパ球のDNAに取り込まれたH−thymidineの値、即ち抗原提示能を反映している。この結果から、白血病性形質細胞様樹状細胞PMDC05株でも、抗原提示能が認められたが、形質転換体PMDC11株では、PMDC05株を上回る顕著に高い抗原提示能があることが明らかとなった。
【0052】
以上の結果から、白血病性形質細胞様樹状細胞にCD80等の機能調節遺伝子を導入して作成された形質転換体は、白血病性形質細胞様樹状細胞自体の機能が増強されており、より有用性が高い生物材料になり得ることが確認された。



【特許請求の範囲】
【請求項1】
形質細胞様樹状細胞性白血病細胞株に、機能調節タンパク質をコードする遺伝子が導入されてなることを特徴とする、形質転換体。
【請求項2】
形質細胞様樹状細胞性白血病細胞株が、PMDC05である、請求項1に記載の形質転換体。
【請求項3】
機能調節タンパク質が、共刺激因子及び/又は共刺激シグナルに関連する因子である、請求項1又は2に記載の形質転換体。
【請求項4】
機能調節タンパク質が、CD80である、請求項3に記載の形質転換体。
【請求項5】
形質細胞様樹状細胞性白血病細胞株に、機能調節タンパク質をコードする遺伝子を導入する工程を含む、形質細胞様樹状細胞性白血病細胞株の形質転換体の作製方法。
【請求項6】
形質細胞様樹状細胞性白血病細胞株が、PMDC05である、請求項5に記載の作製方法。
【請求項7】
形質細胞様樹状細胞性白血病細胞株に、共刺激因子及び/又は共刺激シグナルに関連する因子をコードする遺伝子を導入する工程を含む、形質細胞様樹状細胞性白血病細胞株の抗原提示能を増強する方法。
【請求項8】
形質細胞様樹状細胞性白血病細胞株が、PMDC05である、請求項7に記載の増強方法。
【請求項9】
下記(1)及び(2)工程を含む、細胞障害性Tリンパ球の調製方法:
(1)形質細胞様樹状細胞性白血病細胞株に、共刺激因子及び/又は共刺激シグナルに関連する因子をコードする遺伝子が導入されてなる形質転換体に抗原を接触させる、又は当該形質転換において抗原をコードしている遺伝子を発現させることにより、抗原提示細胞を調製する工程、並びに
(2)上記工程で得られた抗原提示細胞と、細胞障害性T細胞前駆細胞とを接触させ、細胞障害性T細胞を誘導する工程。
【請求項10】
形質細胞様樹状細胞性白血病細胞株が、PMDC05株である、請求項9に記載の調製方法。
【請求項11】
下記(I)〜(III)工程を含む、免疫応答に関与する物質のスクリーニング方法:
(I)形質細胞様樹状細胞性白血病細胞株に、機能調節タンパク質をコードする遺伝子が導入されてなる形質転換体と、被検物質とを接触させる工程、
(II)被験物質を接触させた形質転換体の特性と、被験物質を接触させていない形質転換体の特性とを分析して比較する工程、及び
(III)前記工程(II)を比較結果に基づいて、前記形質転換体の特性を変化させる被験物質を選択する工程。
【請求項12】
形質細胞様樹状細胞性白血病細胞株が、PMDC05株である、請求項11にスクリーニング方法。




【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−5756(P2013−5756A)
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−140566(P2011−140566)
【出願日】平成23年6月24日(2011.6.24)
【出願人】(304027279)国立大学法人 新潟大学 (310)
【Fターム(参考)】