説明

彩色蓄光成形体

【課題】 高輝度で且つ多彩に発光し、更に、蓄光材料として耐水性蓄光材を用いて耐水性を付与した彩色蓄光成形体を提供する。
【解決手段】 蓄光材料及び着色材料を含有する透光性彩色蓄光層と、蓄光材料を含有する蓄光層と、基材とをこの順に設けてなる彩色蓄光成形体。必要に応じて反射層を設け、耐水性蓄光材を用いて耐水性を付与する。前記反射層が酸化チタン、金属、炭酸カルシウム、貝殻及びパールからなる白色系粉体または粒状体の中の何れか一種または二種以上を組み合わせたものを含み、前記基材が合成樹脂成形体、金属成形体、セラミックス成形体及び紙の中の少なくとも何れか一種からなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、着色材料と蓄光材料を含有する透光性彩色蓄光層と、蓄光材料を含有する蓄光層と、基材とをこの順に成形することにより高輝度で且つ多彩に発光し、更に、蓄光材料として耐水性蓄光材を用いて耐水性を付与した彩色蓄光成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、蓄光顔料は、その発光色が黄系〜紫系の色がほとんどであり、暖色系の色は少ないことから使用する範囲も限られていた。また、特許文献1に記載された発明によれば、基材フィルムの上面に蓄光顔料を含むインキで印刷した蓄光印刷層を形成し、この上に着色透明インキで着色透明印刷層を形成した蓄光印刷シートが開示されている。しかし、この蓄光印刷シートは、一色の蓄光顔料でも着色透明インキに応じた色を発現できるとあるも、着色透明印刷層を透過する際に着色材に光が吸収されて輝度が低下すると共に彩色性と視認性が低下すると言った問題があった。更に、従来の蓄光顔料は、風雨など自然環境に直接曝されることによって変質し易く、特に蓄光顔料に使用されている硫化亜鉛(ZnS)タイプと、アルミン酸塩タイプのうちアルミン酸塩タイプはYellowish GreenかGreenish Blueが耐水性に問題があり、グリーン系又はブルー系の蓄光顔料は、水分によって変質し、白化現象を起こして輝度が著しく低下するために屋外などで使用する場合は水分に接しないようにしなければならず、防水対策がコストアップの原因になるばかりでなく、耐久性と施工性の点で問題があった。また、本願出願人は、以前に耐水性蓄光材又は蛍光材、その製造方法及びこれらを用いた塗料組成物及びインキ組成物の発明についての特許出願をした。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−73995号公報
【特許文献2】特許第3257942号公報
【特許文献3】特許第3257947号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記欠点を解消し更に彩色性と耐水性に優れた彩色蓄光成形体を得るために、本願発明者は鋭意研究した結果、着色材料と蓄光材料を含有する透光性彩色蓄光層と、蓄光材料を含有する蓄光層と、基材とをこの順に成形した彩色蓄光成形体は、前記特許文献1記載の発明のように輝度が低下することなく彩色性を向上させるばかりでなく、前記着色材料の透過光と蓄光材料の発光とのコンビネーションにより、更なる多彩な色調が得られることを知見して本発明に至ったものであり、本願発明の主たる目的は、従来品に比較して輝度の低下がなく且つ多彩な彩色性及び耐水性に優れた彩色蓄光成形体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記の課題を解決するために、本発明は、蓄光材料及び着色材料を含有する透光性彩色蓄光層と、蓄光材料を含有する蓄光層と、基材とをこの順に設けてなることを特徴とする彩色蓄光成形体とする(請求項1)。
【0006】
また、前記の課題を解決するために、本発明は、蓄光材料及び着色材料を含有する透光性彩色蓄光層と、蓄光材料を含有する蓄光層と、反射層と、基材とをこの順に設けてなることを特徴とする彩色蓄光成形体とする(請求項2)。
【0007】
また、前記の課題を解決するために、本発明は、蓄光材料及び着色材料を含有する透光性彩色蓄光層と、蓄光材料を含有する蓄光層と、透明性基材または半透明性基材(以下「透明性基材等」と称する)と、反射層とをこの順に設けてなることを特徴とする彩色蓄光成形体とする(請求項3)。
【0008】
また、前記の課題を解決するために、本発明は、透明性基材等を前記透光性彩色蓄光層側に隣接して設けてなることを特徴とする前記の彩色蓄光成形体とする(請求項4)。
【0009】
また、前記の課題を解決するために、本発明は、前記基材に代えて透明性基材等を前記透光性彩色蓄光層側に隣接して設けてなることを特徴とする前記の彩色蓄光成形体とする(請求項5)。
【0010】
また、前記の課題を解決するために、本発明は、前記反射層が酸化チタン、金属、炭酸カルシウム、貝殻及びパールからなる白色系粉体または粒状体の中の何れか一種または二種以上を組み合わせたものを含むことを特徴とする前記の彩色蓄光成形体とすることが好ましい(請求項6)。
【0011】
また、前記の課題を解決するために、本発明は、前記基材が合成樹脂成形体、金属成形体、セラミックス成形体及び紙の中の少なくとも何れか一種からなることを特徴とする前記の彩色蓄光成形体とすることが好ましい(請求項7)。
【0012】
また、前記の課題を解決するために、本発明は、前記蓄光材料が、減圧下において蓄光材料の粒子表面に密着被覆させたアルコキシシラン又は/及びアルコキシシラン縮合物に由来する防水性シリカ層で前記蓄光材料の粒子表面を密着被覆してなる耐水性蓄光材料であることを特徴とする前記の彩色蓄光成形体とすることが好ましい(請求項8)。
【発明の効果】
【0013】
本願発明に係る彩色蓄光成形体は、前記のように構成したことにより、従来の同種の蓄光印刷シート等に比較して著しく輝度が高く且つ多彩に発光し、更に、耐水性が向上する効果を奏する。即ち、蓄光材料及び着色材料を含有する透光性彩色蓄光層を透過した紫外線が蓄光層中の蓄光材料を発光させ、この発光が着色材料を透過することによって、その着色材料に応じた彩色に発光すると同時に、透光性彩色蓄光層に含まれる蓄光材料はその蓄光材料固有の色に発光し、これら両者のコンビネーションによって、より多彩に発光し優れた彩色性と視認性を発現する効果を奏する。また、酸化チタン粉体、金属粉体、炭酸カルシウム粉体及び貝殻粉体等を含む合成樹脂製の反射層を設けたものは、蓄光層中の蓄光材料の発光を乱反射させる結果、更なる高輝度で均一な彩色が得られる効果を奏する。更に、耐水性蓄光材料を用いたものは彩色蓄光成形体自体が耐水性を備えているので改めて防水処理を施す必要がない。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】第1〜3実施の形態に係る彩色蓄光成形体の構成を示す説明図である。
【図2】第4〜6実施の形態に係る彩色蓄光成形体の構成を示す説明図である。
【図3】第7〜8実施の形態に係る彩色蓄光成形体の構成を示す説明図である。
【図4】耐水性蓄光材料の製造工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明を実施するための形態(以下「実施の形態」と称する)について、以下に図に基づいて詳細に説明する。しかし、本発明は、かかる実施の形態に限定されるものではない。本願発明の実施の形態に係る彩色蓄光成形体は、蓄光材料及び着色材料を含む透光性彩色蓄光層と、蓄光材料を含む蓄光層と、基材とをこの順に設け、必要に応じて反射層を設けることを特徴とする。
【0016】
本願発明の第1実施の形態に係る彩色蓄光成形体1は、請求項1、7記載の発明を含み、図1(a)に示すように、基材13の表面に蓄光材料を含む蓄光層12を形成し、この蓄光層12の表面に蓄光材料及び着色材料を含む透光性彩色蓄光層11が形成されてなる。基材13は透明性基材等及び不透明性基材を含み、透明性基材等としては、特に限定されるものではないが、例えば、透明乃至半透明の合成樹脂又はガラスなどの成形体が好ましい。不透明性基材としては、例えば、酸化チタンや炭酸カルシウム等充填材をブレンドした不透明合成樹脂成形体、金属成形体、セラミックス成形体、紙等が好ましい。透光性彩色蓄光層11が紫外線等を透過する透光性を有する限りにおいて前記着色材料は透明着色材料に限定されず、例えば、溶剤可溶性顔料、有機顔料、染料等の着色材料と蓄光顔料等の蓄光材料を分散混合したインキまたは塗料を印刷または塗布して形成される。或いは前記着色材料と蓄光材料を合成樹脂に分散混合したフィルム、シート又は成形体等に形成してもよい。着色材料は透明着色材以外に微細粒子からなる無機顔料など透光性を保持する添加量の範囲内で使用可能であり、蛍光着色材料は鮮明で視認性を向上することから特に好ましい。また、蓄光材料の種類は特に限定されず、市販の蓄光材料を使用可能であるが、なるべく高輝度発光を呈する蓄光材料を使用することが好ましい。
【0017】
ここで、本発明の実施の形態に使用する蓄光材料は、何らかのエネルギーで刺激を受け、吸引したエネルギーを可視光線又はそれに近い波長の紫外線、赤外線などの光として放出し、刺激停止後も持続してこの現象を呈する性質を有する蓄光性物質または蛍光性物質であって、蓄光顔料や蛍光顔料も含まれる。前者の蓄光性物質として、例えば、硫化亜鉛と硫化カドミウム(硫化カドミウムは安全性に問題あり現在は使用されていない)の結晶に少量の銅を賦活剤として加えたものは、その組成によって黄〜赤色を発光し、硫化亜鉛に少量の銅を賦活剤として加えたものは、緑色の発光を呈し、また、アルミン酸塩に賦活剤としてユーロピウム(Eu)を加えたもの、或いは共賦活剤として希土類元素又は遷移金属を加えたものは緑色又は青色の発光を呈する。
【0018】
また、前記蓄光性物質に対して蛍光性物質は、ある物質が光の照射を受け、他の波長の光を発するときに生ずる光学効果、即ち紫外線が液体、固体に当たったときに可視光線としての蛍光を発する物質であって、主として、カルシウム、バリウム、マグネシウム、カドミウム(カドミウムは安全性に問題あり現在は使用されていない)等の酸化物、硫化物、珪酸塩、リン酸塩、タングステン酸塩等を主成分とし、蛍光を発する物質を言う。また、蛍光性物質の中には有機系と無機系のものがあり、無機系物質の中には紫外線照射を停止した後でも蛍光を発する所謂蓄光性を有するものがあるが、このような物質も本願発明に含まれるものとする。
【0019】
近年、(Sr,M)O-(Mg,M)O-(Si,Ge)O系の蛍光母体(M=Ca,Sr,Ba,M=Be,Zn,Cd)に対してEuで賦活すると共にLn(Sc,Y,La,Ce,Pr,Nd,Sm,Cd,Tb,Dy,Ho,Er,Tm,Yb,Lu,In,Bi,Snから選択された一種の元素)で共賦活させ、かつ、ハロゲン元素(F,Cl,Br,Iから選択された一種の元素)を含有させることにより、青色から緑色発光のEu賦活珪酸塩蓄光性蛍光体が開示されている(特許文献2及び特許文献3参照)。係る蓄光性蛍光体も本願発明に含まれるものとする。
【0020】
次に、本願発明の第2実施の形態に係る彩色蓄光成形体1は、請求項2、6、7記載の発明を含み、図1(b)に示すように、第1実施の形態に係る彩色蓄光成形体1において、基材13と蓄光層12との中間に反射層14を設けた以外は第1実施の形態に係る彩色蓄光成形体1と同様である。反射層14は、素材が特に限定されるものではないが、例えば、酸化チタン、金属、炭酸カルシウム、貝殻及びパールからなる白色系粉体又は粒状体の中の何れか一種または二種以上を組み合わせたものを分散混合したインキまたは塗料を印刷または塗布するか、或いは前記粉体又は粒状体を合成樹脂に分散混合したフィルム、シート又は成形体等に形成してもよい。このような反射層を設けることにより彩色が鮮明になるばかりでなく、蓄光材料が、前記粉体又は粒状体の種類により、例えば、金属色、パール、貝殻等の独特の光沢を有し且つ散乱光となりムラがなく均一に発光する。
【0021】
次に、本願発明の第3実施の形態に係る彩色蓄光成形体1は、請求項3、6、7記載の発明を含み、図1(c)に示すように、第2実施の形態に係る彩色蓄光成形体1において、基材13に代えて透明性基材等13Bを用い、反射層14をこの透明性基材等13Bの裏側に設ける以外は第2実施の形態に係る彩色蓄光成形体1と同様である。
【0022】
次に、第4、第5、第6実施の形態に係る彩色蓄光成形体1は、請求項4記載の発明を含み、図2(a)(b)(c)に示すように、第1、第2、第3実施の形態に係るそれぞれの彩色蓄光成形体1において、透明性基材等を前記透光性彩色蓄光層側にそれぞれ隣接して設ける以外は前記第1、第2、第3実施の形態に係る彩色蓄光成形体1と同様である。
【0023】
次に、第7、8実施の形態に係る彩色蓄光成形体1は、請求項5記載の発明を含み、図3(a)(b)に示すように、第1、第2実施の形態に係るそれぞれの彩色蓄光成形体1において、前記基材に代えて透明性基材等を前記透光性彩色蓄光層側にそれぞれ隣接して設ける以外は前記第1、第2実施の形態に係る彩色蓄光成形体1と同様である。
【0024】
前記本願発明の第1実施の形態〜第8実施の形態に記載の蓄光材料に代えて耐水性蓄光材料を用いる以外は前記第1実施の形態〜第8実施の形態に記載と同様にして耐水性彩色蓄光成形体が得られる。ここに用いる耐水性蓄光材料は耐水性を有する限りにおいて特に限定されないが、本願出願人が以前に出願した発明に係る耐水性蓄光材料が好ましい。この耐水性蓄光材料は、図4に示すように、蓄光材を100℃で3時間位加熱乾燥する乾燥工程(21)、蓄光材をアルコキシシラン又は/及びアルコキシシラン縮合物を含有するゾルゲル溶液に浸漬する工程(22)、蛍光材を真空器に入れて、−0.08MPa以下の減圧下に約10時間放置して減圧処理する工程(23)、約100℃から約500℃に昇温し、約500℃の雰囲気中で約15時間熱処理し、約500℃から常温まで徐々に降温し自然冷却させる乾燥・熱処理工程(24)及び篩い掛け粒揃え工程(25)を経て製造される。得られた耐水性蓄光材料は、蓄光材料の粒子表面に密着被覆させたアルコキシシラン又は/及びアルコキシシラン縮合物に由来する防水性シリカ層で粒子表面が密着被覆されており、この耐水性蓄光材料を水中に投じて1ヶ月以上放置しても輝度の低下や変質を生じないことが確認されている。
【0025】
前記本願発明の第1実施の形態〜第8実施の形態に記載の耐水性彩色蓄光成形体において、透光性彩色蓄光層11の表面に透明の合成樹脂フィルム等の保護層を設けてもよい。従来の汎用蓄光材料を用いた印刷シートにあって特に屋外仕様の場合は、蓄光材料が雨水などで変質することを防止するために保護フィルムを貼り合わせていたが効果は充分ではなかった。この点、本願発明の耐水性彩色蓄光成形体は、このような雨水による変質防止用保護フィルムを貼り合わせなくても充分に耐水性及び耐光性を備えている。
【実施例1】
【0026】
以下に実施例を挙げて本発明について説明するが、本発明はこれらの実施例によって何ら限定されるものではない。
基材となる100ミクロン厚のポリエステルフィルム上に、濃度が10質量%からなる酸化チタンの水系エマルジョン溶液を塗布し、その後乾燥して目付けが100g/mの固形物からなる反射層付き基材を得た。次に、セイコーアドバンス社製のメジウムに、暗視下で青色蓄光を呈する三菱化学社製蓄光材を質量比で100:100となるように混合した蓄光溶液を調製し、この蓄光溶液を前記反射層付き基材の反射層面に塗布し、その後乾燥して目付けが200g/mの蓄光層を形成した。次に、セイコーアドバンス社製のメジウムと、暗視下で青色蓄光を呈する三菱化学社製蓄光材と、シンロイヒ社製赤色蛍光着色材を質量比で100:100:1となるように混合した着色蓄光溶液を調製し、この着色蓄光溶液を前記反射層付き基材の蓄光層面に塗布し、その後乾燥して目付けが100g/mの透光性彩色蓄光層を形成して第2実施の形態に係る彩色蓄光成形体1を得た。前記の彩色蓄光成形体を蛍光灯で励起し、暗色下に置いたところ鮮やかな桃色に彩色蓄光を呈した。
【実施例2】
【0027】
前記実施例1において、蓄光層に含有する蓄光材と透光性彩色蓄光層に含有する蓄光材及び蛍光着色材について、それぞれ色の組み合わせを変えて用いる以外は前記実施例1と同様の彩色蓄光成形体を形成し、得られた彩色蓄光成形体について明視下及び暗視下における彩色発光性を比較した。更に、前記彩色蓄光成形体について、620Lxで5分間常用光源蛍光ランプD65で励起した後、暗視下で1分間放置後に輝度(mcd/m)を測定し比較した。測定結果は、表1に示すとおりである。更に、蓄光層を前記出願に係る耐水性蓄光材料に置き換えた彩色蓄光成形体を作成し耐水性試験を行った。
【0028】
【表1】

【0029】
表1において、透光性彩色蓄光層に赤色Rの着色材を用いた場合、暗視下では透光性彩色蓄光層のみの部分は茶色に発光し、黄色に発光する蓄光材を含む蓄光層と重なる部分(YY)は橙色に発光し、白色に発光する蓄光材を含む蓄光層と重なる部分(YW)は赤桃色に発光し、青色に発光する蓄光材を含む蓄光層と重なる部分(WB)は桃色に発光する。同様に、着色材にLP又はDPを用いた場合について総合的に判断すると、透光性彩色蓄光層に含まれる着色材の透過光と蓄光層に含まれる蓄光材料の発光とのコンビネーションにより多彩な着色光が得られることが分かる。また、透光性彩色蓄光層のみの部分(比較例)と蓄光層と重なる部分(実施例)との輝度を比較すると、着色材が赤色Rの場合、比較例の輝度が、217に対して実施例YYの場合が616、実施例YWの場合が505、実施例WBの場合が470と、比較例に対して2〜3倍近く輝度が向上している。同様に着色材がLPの場合は4〜10倍近く輝度が向上し、着色材がDPの場合は2〜5倍近く輝度が向上している。これは本願発明の透光性彩色蓄光層に含まれる蓄光材と蓄光層に含まれる蓄光材との相乗効果によるものと推定される。また、前記耐水性蓄光材料に置き換えた彩色蓄光成形体についての耐水性試験の結果、水中に投じて1ヶ月以上放置しても輝度の低下や変質を生じないことが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明は、前記の構成を採ることによって、従来にない高輝度で多彩な彩色性に優れた彩色蓄光成形体を提供する。また、耐水性彩色蓄光成形体は、屋外で自然環境に直接曝される建物の壁面や歩道などに埋め込んで使用する蓄光性避難・誘導標識などでも、特別なシーリング防水処理が一切不要となり、コスト低減と施工性の向上が図られ、その他、建物の内外装材等にも広く用いられ、経済的にも極めて有用である。
【符号の説明】
【0031】
1:彩色蓄光成形体、11:透光性彩色蓄光層、12:蓄光層、13:基材、13B:透明性基材等、14:反射層、21:乾燥工程、22:ゾルゲル溶液浸漬工程、23:減圧処理工程、24:乾燥・熱処理工程、25:篩い掛け粒揃え工程


【特許請求の範囲】
【請求項1】
蓄光材料及び着色材料を含有する透光性彩色蓄光層と、蓄光材料を含有する蓄光層と、基材とをこの順に設けてなることを特徴とする彩色蓄光成形体。
【請求項2】
蓄光材料及び着色材料を含有する透光性彩色蓄光層と、蓄光材料を含有する蓄光層と、反射層と、基材とをこの順に設けてなることを特徴とする彩色蓄光成形体。
【請求項3】
蓄光材料及び着色材料を含有する透光性彩色蓄光層と、蓄光材料を含有する蓄光層と、透明性基材または半透明性基材と、反射層とをこの順に設けてなることを特徴とする彩色蓄光成形体。
【請求項4】
透明性基材または半透明性基材を前記透光性彩色蓄光層側に隣接して設けてなることを特徴とする請求項1、2または3記載の彩色蓄光成形体。
【請求項5】
前記基材に代えて透明性基材または半透明性基材を前記透光性彩色蓄光層側に隣接して設けてなることを特徴とする請求項1または2記載の彩色蓄光成形体。
【請求項6】
前記反射層が酸化チタン、金属、炭酸カルシウム、貝殻及びパールからなる白色系粉体または粒状体の中の何れか一種または二種以上を組み合わせたものを含むことを特徴とする請求項2、3、4または5の何れかに記載の彩色蓄光成形体。
【請求項7】
前記基材が合成樹脂成形体、金属成形体、セラミックス成形体及び紙の中の少なくとも何れか一種からなることを特徴とする請求項1、2、3、4または5の何れかに記載の彩色蓄光成形体。
【請求項8】
前記蓄光材料が、減圧下において蓄光材料の粒子表面に密着被覆させたアルコキシシラン又は/及びアルコキシシラン縮合物に由来する防水性シリカ層で前記蓄光材料の粒子表面を密着被覆してなる耐水性蓄光材料であることを特徴とする請求項1、2、3、4、5、6または7の何れかに記載の彩色蓄光成形体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−189558(P2011−189558A)
【公開日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−55934(P2010−55934)
【出願日】平成22年3月12日(2010.3.12)
【出願人】(000006172)三菱樹脂株式会社 (1,977)
【Fターム(参考)】