説明

彫刻刀

【解決手段】把持柄に一対のガード腕4を互いに間隔をあけて設けるとともに両ガード腕4間で刃体5を設け、両ガード腕4で互いに離間する先端部9a間に間隙Sを設けている。刃体5の刃先5aを間隙Sの内側で間隙Sに面して設けている。
【効果】両ガード腕4により使用者の指や刃先5aを保護するばかりではなく、彫刻刀の使い勝手を良くすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、使用者の指や刃先を保護するガードを有する彫刻刀に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、下記特許文献1にかかる彫刻刀は、把持柄に取着された刃体の周囲を囲うループ状のガードを備えている。
【特許文献1】特許第3540719号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記特許文献1では、刃体の刃先に面する領域がループ状ガードの先端部により塞がれているため、使用者がその領域を見にくくなり、彫刻刀の使い勝手が悪くなる。
この発明は、ガードの形状を改良して彫刻刀の使い勝手を良くすることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0004】
後記実施形態の図面(図1〜3に示す第1実施形態、図4〜5に示す第2実施形態)の符号を援用して本発明を説明する。
請求項1の発明にかかる彫刻刀(第1〜2実施形態に対応)においては、把持柄1に一対のガード腕4を互いに間隔をあけて設けるとともに、把持柄1に設けた刃体5を挟む両側にこの両ガード腕4を配置し、この両ガード腕4で互いに離間する先端部9a間に間隙Sを設けている。
【0005】
請求項1の発明では、両ガード腕4により使用者の指や刃先5aを保護するとともに、両ガード腕4間の間隙Sにより使用者が刃体5による削り面Rを見易くなる。
請求項1の発明を前提とする請求項2の発明(第1〜2実施形態に対応)において、前記刃体5の先端部に設けた刃先5aを前記両ガード腕4間において前記間隙Sの内側で間隙Sに面して設けるかまたはこの間隙Sに設けている。請求項2の発明では、刃体5の刃先5aに面する領域で削り面Rが間隙Sにより開放されるため、使用者がその領域を見易くなる。
【0006】
請求項1または請求項2の発明を前提とする請求項3の発明(第1〜2実施形態に対応)において、前記両ガード腕4はそれぞれ前記先端部9aを含む鉤部9を有し、その鉤部9は互いに接近するように屈曲されている。請求項3の発明では、刃体5を挟む両側に両ガード腕4を配置する際に両ガード腕4間に十分な間隔を持たせても両鉤部9により先端部9a間の間隙Sを必要最小限に抑えることができるため、使用時に両ガード腕4を削り面Rに当てがった際に安定させるとともに、使用者の指や刃先5aをより一層保護することができる。
【0007】
請求項1または請求項2または請求項3の発明を前提とする請求項4の発明(第1実施形態に対応)において、前記両ガード腕4は、把持柄1側から延びる支持腕部6と、その支持腕部6から延びて前記先端部9aを有する案内腕部7とを備え、この両案内腕部7はそれぞれこの両支持腕部6間を結ぶ想定面Pを挟む両側のうち一方の側へ屈曲されて他方の側に面する案内面8を有し、前記刃体5の先端部に設けた刃先5aはこの両案内腕部7間に設けられている。請求項4の発明では、使用時に両案内腕部7の案内面8を削り面Rに当てがった際に把持柄1を削り面Rから離すことができるとともに、その案内面8に沿って把持柄1を移動させることにより削り動作を安定させることができる。
【0008】
請求項4の発明を前提とする請求項5の発明(第1実施形態に対応)において、前記刃先5aの一部は前記両案内腕部7の案内面8を互いに結ぶ載置面Qから突出している。請求項5の発明では、案内面8から適度に突出した刃先5aにより削り面Rを円滑に削ることができる。
【0009】
請求項1または請求項2または請求項3の発明を前提とする第6の発明(第2実施形態に対応)において、前記両ガード腕4は、それぞれこの両ガード腕4間を結ぶ想定面Pを挟む両側のうち一方の側へ屈曲される弾性を有し、前記刃体5の先端部に設けた刃先5aはこの両ガード腕4間に設けられている。第6の発明では、両ガード腕4を削り面Rに当てがう際に両ガード腕4に対する押し付け力を変えると両ガード腕4の屈曲度が変更されるため、削り面Rに対する把持柄1の離間距離や、削り面Rに対する両ガード腕4及び刃先5aの状態を使用し易いように変えることができる。
【0010】
請求項1から請求項5のうちいずれかの請求項の発明、または第6の発明を前提とする第7の発明(第1〜2実施形態に対応)において、前記両ガード腕4は把持柄1に対し一体成形されている。第7の発明では、両ガード腕4を把持柄1とともに容易に成形することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、両ガード腕4により使用者の指や刃先5aを保護するばかりではなく、彫刻刀の使い勝手を良くすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
まず、本発明の第1実施形態にかかる彫刻刀について図1〜3を参照して説明する。
図1に示す把持柄1は、ポリプロピレン樹脂等の硬質樹脂により成形されて把持柄1の外側に露出する主体部2と、その主体部2の硬質樹脂よりも柔軟なエラストマー樹脂等の軟質樹脂により成形されて主体部2の外側で把持柄1の外側に露出する表面部3とを備えている。図2(a)(b)にも示すように、この把持柄1の頭部側において、一対のガード腕4は、主体部2に対し一体成形され、把持柄1の延設方向に沿う長手方向Xに対し直交する幅方向Yの両側で、互いに間隔をあけて主体部2から延設されて不用意に撓まない程度の曲げ強度を有している。この両ガード腕4間で刃体5が主体部2に挿着されている。なお、この把持柄1の表面部3において幅方向Yの両側には凹状の指当部3aがこの両ガード腕4に隣接して形成されている。
【0013】
前記両ガード腕4は、長手方向Xに沿って延びる支持腕部6と、その支持腕部6から延びる案内腕部7とを備えている。この両案内腕部7はそれぞれこの両支持腕部6間を結ぶ幅方向Yに沿った想定面Pを挟む上下方向Zの両側のうち上側へ屈曲されて下側に面する案内面8を有している。この両案内腕部7はそれぞれ幅方向Yで互いに接近するように屈曲する鉤部9を有している。この両鉤部9は幅方向Yで相対向する先端部9aを含んでいる。この両先端部9aは互いに離間し、その両先端部9a間には間隙Sを持たせている。前記刃体5の先端部に形成された刃先5aは、平面視の場合、両案内腕部7間においてこの間隙Sの内側で間隙Sに面して配置され、この間隙Sにおける幅方向Yの寸法WSとほぼ等しい幅方向寸法W5を有している。この幅方向寸法WSと幅方向寸法W5とを比較した場合、一方を他方よりも大きく設定しても小さく設定してもよい。ちなみに、この幅方向寸法W5は2〜15mmに設定してもよく、この幅方向寸法WSは3〜15mmに設定するかまたはW5の0.5〜1.5倍に設定してもよい。図示しないが、この間隙Sに刃先5aを配置してもよい。側面視の場合、この刃先5aの一部は両案内腕部7の案内面8を互いに結ぶ載置面Qから下側へ突出しているが、刃先5aの全部をこの載置面Qから下側へ突出させてもよい。例えば、両ガード腕4全体のサイズにもよるが、0.1〜10mmぐらい突出させる。
【0014】
なお、図1において彫刻刀の全長Aは約165mmであり、図2(a)において両ガード腕4間の深さBは約30mmである。また、図2(a)において両ガード腕4間の最大幅方向寸法Cは把持柄1の最大幅方向寸法と同じかまたは把持柄1の最大幅方向寸法よりも大きくなっている。さらに、図2(b)においてこの両ガード腕4の上下方向Zの寸法は先端部9a側ほど次第に小さくなっている。
【0015】
図3に示すように、把持柄1を傾けて把持した状態で、両ガード腕4の案内腕部7の案内面8を削り面Rに当てがい、その削り面Rに沿って案内面8を滑らしながら刃先5aにより削り面Rを削り取る。その使用時、両ガード腕4により使用者の指や刃先5aを保護する。刃体5の刃先5aに面する領域で削り面Rが間隙Sにより開放されるため、使用者はその領域を見ながら削り作業を行うことができる。
【0016】
次に、本発明の第2実施形態にかかる彫刻刀について第1実施形態との相違点を中心に図4〜5を参照して説明する。
図4及び図5(a)に示すように、支持腕部6と案内腕部7とからなる両ガード腕4の全体は、それぞれ、長手方向Xに沿って延設され、軟質樹脂により成形されているため、この両ガード腕4間を結ぶ想定面Pを挟む上下両側へ屈曲される弾性を有している。両ガード腕4を硬質樹脂により成形する際にも、両ガード腕4に切込みを形成して撓み易くすることにより弾性を持たせることもできる。平面視の場合、刃体5の刃先5aは、両ガード腕4間において間隙Sの内側で間隙Sに面して配置され、間隙Sにおける幅方向Yの寸法とほぼ等しい幅方向寸法を有している。側面視の場合、この刃体5の全部は両ガード腕4間の内側に隠され、刃先5aにおける上下方向Zの寸法が両案内腕部7における上下方向Zの寸法と同じかまたは小さくなっているが、刃先5aの一部を両ガード腕4間の内側から外側へ若干突出させてもよい。
【0017】
まず、図5(a)に示すように、把持柄1を傾けて把持した状態で、両ガード腕4の案内腕部7を削り面Rに当てがう。次に、図5(b)に示すように、両ガード腕4を削り面Rに押し付けると、両ガード腕4がその弾性により撓んで屈曲され、両案内腕部7の案内面8が削り面Rに当てがわれる。その後、削り面Rに沿って案内面8を滑らしながら刃先5aにより削り面Rを削り取る。その使用時、両ガード腕4により使用者の指や刃先5aを保護する。刃体5の刃先5aに面する領域で削り面Rが間隙Sにより開放されるため、使用者はその領域を見ながら削り作業を行うことができる。両ガード腕4に対する押し付け力を解除すると、両ガード腕4の弾性により図5(a)の状態に戻る。
【0018】
前記両実施形態以外にも下記のように構成してもよい。
* 両ガード腕4を把持柄1に対し着脱可能に設ける。
* 両案内腕部7の鉤部9で先端部9aを球体形状または半球体形状に形成する。また、鉤部9をなくして支持腕部6と案内腕部7とからなる両ガード腕4を直線的に形成し、その場合も両案内腕部7の先端部9aを球体形状または半球体形状に形成する。
【0019】
* 把持柄1及び両ガード腕4の材質としては、金属や木や竹や紙など、樹脂以外のものであってもよい。
* 刃体5の材質としては、炭素鋼や炭素工具鋼やステンレス鋼であっても、また、それらの鋼を積層して接合した積層材であってもよい。
【0020】
* 刃体5の種類としては、丸刀や角刀を採用することができる。
* 第2実施形態において、両ガード腕4を表面部3と一体成形してもよい。
* 第2実施形態において両ガード腕4については、硬質材と軟質材とを複合させてもよく、例えば、硬質材の薄板の周囲に軟質材を設けてもよい。
【0021】
* 前記両ガード腕4において長手方向Xの長さを互いに相異させてもよい。
* 前記両ガード腕4の形状を幅方向Yで非対称にしてもよい。
* 図示しないが、把持柄の頭部から延びる刃体に沿って一本の支持腕部をその刃体に対し並べて把持柄の頭部から延設し、刃体の刃先の付近でこの支持腕部の先端部から両ガード腕を二股状に分岐させて設け、その両ガード腕間に刃先を配置する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】第1実施形態にかかる彫刻刀を示す斜視図である。
【図2】(a)は第1実施形態にかかる彫刻刀の頭部側を示す部分平面図であり、(b)はこの彫刻刀の頭部側を側面側から見た部分断面図である。
【図3】第1実施形態にかかる彫刻刀の使用状態を示す側面図である。
【図4】第2実施形態にかかる彫刻刀を示す斜視図である。
【図5】(a)(b)は第2実施形態にかかる彫刻刀の使用状態を示す側面図である。
【符号の説明】
【0023】
1…把持柄、4…ガード腕、5…刃体、5a…刃先、6…支持腕部、7…案内腕部、8…案内面、9…鉤部、9a…先端部、S…間隙、P…想定面、Q…載置面。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
把持柄に一対のガード腕を互いに間隔をあけて設けるとともに、把持柄に設けた刃体を挟む両側にこの両ガード腕を配置し、この両ガード腕で互いに離間する先端部間に間隙を設けたことを特徴とする彫刻刀。
【請求項2】
前記刃体の先端部に設けた刃先を前記両ガード腕間において前記間隙の内側で間隙に面して設けるかまたはこの間隙に設けたことを特徴とする請求項1に記載の彫刻刀。
【請求項3】
前記両ガード腕はそれぞれ前記先端部を含む鉤部を有し、その鉤部は互いに接近するように屈曲されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の彫刻刀。
【請求項4】
前記両ガード腕は、把持柄側から延びる支持腕部と、その支持腕部から延びて前記先端部を有する案内腕部とを備え、この両案内腕部はそれぞれこの両支持腕部間を結ぶ想定面を挟む両側のうち一方の側へ屈曲されて他方の側に面する案内面を有し、前記刃体の先端部に設けた刃先はこの両案内腕部間に設けられていることを特徴とする請求項1または請求項2または請求項3に記載の彫刻刀。
【請求項5】
前記刃先の一部は前記両案内腕部の案内面を互いに結ぶ載置面から突出していることを特徴とする請求項4に記載の彫刻刀。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−307803(P2007−307803A)
【公開日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−139441(P2006−139441)
【出願日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【出願人】(591139138)株式会社新学社 (13)
【出願人】(000001454)株式会社貝印刃物開発センター (123)