説明

往復動圧縮機

【課題】往復動式の圧縮部から生じる振動源と設置対象部である建屋床部との間の振動エネルギーを、電気エネルギーとして有効に利用すると共に振動エネルギーを減衰させ、省エネ効果が得られつつ防振効果も得られる往復動圧縮機を提供する。
【解決手段】往復動式の圧縮部20a,20b,21,22が取り付けられた台盤3を振動吸収用の弾性支持部材30を介して建屋床部6に設置した往復動圧縮機1であって、前記弾性支持部材30の上端と前記台盤3との間に圧力や振動を電圧に変換する上部圧電体4を介設し、前記弾性支持部材30の下端と前記建屋床部6との間に圧力や振動を電圧に変換する下部圧電体4aを介設した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、往復動圧縮機に関するもので、特に発電式振動低減装置を備えた往復動圧縮機に関する。
【背景技術】
【0002】
台盤上に往復動方式の圧縮部を配設した往復動圧縮機が知られている。
【0003】
このような往復動圧縮機においては、往復動方式の各段圧縮部の駆動により不釣合慣性力(交番荷重)が発生し、この不釣合慣性力により台盤が振動するため、台盤は複数の弾性支持部材(ばね部材)を介して建屋床部に支持され、台盤の両端部と建屋床部とは、複数のダンパーを介して連結されている(特許文献1)。
【0004】
また特許文献2に記載された発電プラントの制振機構を参照すれば、台盤の振動が各段圧縮部に影響を与えないように、台盤の内部を縦方向に延びる壁と横方向に延びる壁で仕切った格子構造に構成し、格子にバネ要素、質量要素、減衰要素などの動吸振器や吸振ゴムブロックによる制振機構を設け、上記台盤をいわゆる防振ベッドとしたものが考えられる(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4029227号公報
【特許文献2】特開2007−16599号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、特許文献1に記載された発明の制振機構(弾性支持部材、ダンパー)は、往復動方式の圧縮部と建屋床部との間の相対的な振動を、制振機構の弾性変形によって吸収し、伝わり難くするものであり、制振作用のみを解消するようにしているだけで、振動のエネルギーを有効に利用することを考慮していなかった。
【0007】
また、特許文献2に記載された発電プラントの制振機構は、コストアップにつながり、しかも特許文献1に記載された発明と同様に制振作用のみを解消するようにしているだけで、振動のエネルギーを有効に利用することを考慮していなかった。
【0008】
そこで、本発明の目的は、往復動式の圧縮部から生じる振動源と設置対象部である建屋床部との間の振動エネルギーを、電気エネルギーとして有効に利用すると共に振動エネルギーを減衰させ、省エネ効果が得られつつ防振効果も得られる往復動圧縮機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために本発明は、往復動式の圧縮部が取り付けられた台盤を振動吸収用の弾性支持部材を介して建屋床部に設置した往復動圧縮機であって、前記弾性支持部材の上端と前記台盤との間に圧力や振動を電圧に変換する上部圧電体を介設し、前記弾性支持部材の下端と前記建屋床部との間に圧力や振動を電圧に変換する下部圧電体を介設したことを特徴とする。
【0010】
上記構成によれば、台盤が振動することによって、弾性支持部材の上端と台盤との間に介設した圧電体と、弾性支持部材の下端と建屋床部との間に介設した圧電体とに外力を作用させて電気エネルギーとして取り出すことができる。そして、前記圧電素子によって振動エネルギーを電気エネルギーに変換するに伴って、振動エネルギーを低減することが可能となる。
【0011】
前記上部圧電体は、前記台盤の下面に接する板部材と、前記弾性支持部材の上端に接する板部材と、これら板部材の間に介設された弾性部材と、該弾性部材に埋設された圧電素子とからなり、前記下部圧電体は、前記弾性支持部材の下端に接する板部材と、前記建屋床部に接する板部材と、これら板部材の間に介設された弾性部材と、該弾性部材に埋設された圧電素子とからなるものであってよい。
【0012】
また前記圧電体は、前記圧電素子の過剰な変形を防止するために、前記板部材同士の近接を制限するストッパ部材を有するのが好ましい。
【0013】
また前記往復動式の圧縮部の吸入口フィルタ装置が、前記圧縮部の駆動に伴う吸気圧力の変動により振動する振動部材を有し、該振動部材に圧力や振動を電圧に変換する圧電体を設けてもよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、往復動式の圧縮部から生じる振動源と設置対象部である建屋床部との間の振動エネルギーを、電気エネルギーとして有効に利用すると共に振動エネルギーを減衰させ、省エネ効果が得られつつ防振効果も得られる往復動圧縮機を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】図1は、本発明の一実施形態に係る往復動圧縮機を示す正面図である。
【図2】図2は、図1の左側面図である。
【図3】図3は、図1に示す台盤と建屋床部との間に設けられる弾性支持部材及び圧電体を示す概略図である。
【図4】図4は、圧電体の一例を示す断面図である。
【図5】図5は、圧電体の作用を示すブロック図である。
【図6】図6は、本発明の一実施形態に係る往復動圧縮機の吸入口フィルタ装置を一部分解し、底板と遮蔽板に圧電体を取り付けた状態を示す概略図である。
【図7】図7は、図6の底板に圧電素子を埋設した状態を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の好適な実施形態を添付図面に基づいて説明する。
【0017】
図1及び図2に示すように、本発明にかかる往復動圧縮機1は、台盤3上に往復動式の圧縮部20〜22が取り付けられ、台盤3と建屋床部6との間に複数の弾性支持部材(コイルスプリング等のばね部材)30を介して支持され、また台盤3の両端部と建屋床部6との間に複数のダンパー31を介して連結されている。往復動式の圧縮部20〜22は、第1段圧縮部20a,20b、第2段圧縮部21、第3段圧縮部22で構成されている。
【0018】
圧縮機フレーム10に、外部から空気を導入するための吸入口フィルタ装置11a,11bが併設され、各吸入口フィルタ装置11a,11bの流出口12にそれぞれ第1段圧縮部20a,20bが接続され、空気の流れに沿って低圧側から順に第2段圧縮部21、第3段圧縮部22が直列に接続されている。また第1段圧縮部20a,20bと第2段圧縮機21の間に第1段インタークーラ25が接続され、第2段圧縮部21と第3段圧縮部22の間に第2段インタークーラ26が接続され、第3段圧縮部22の下流側に吐出口23が設けられ、圧縮した空気を生成するようになっている。
【0019】
圧縮機フレーム10の中心にモータ19の回転運動を往復運動に変換するクランク機構18が設けられ、クランク機構18に各段圧縮部20a,20b,21,22がX形に連結されている。各段圧縮部20a,20b,21,22には、それぞれ空気を加圧するためのシリンダ・ピストン機構(図示せず)を有している。
【0020】
なお、各段インタークーラ25,26は、内部に常温の工業用水が流されて空気を冷却するようになっており、さらに冷却した空気をドレンセパレータ(気液分離容器)28,29により気液分離し、集めたドレンをドレン排出システム(図示せず)で往復動圧縮機1の外に排出する。
【0021】
各段圧縮部20a,20b,21,22、各段インタークーラ25,26、圧縮機フレーム10等が載置された台盤3は、例えばH型鋼やチャンネル鋼を所要の形状に組み上げて構成されている。
【0022】
本発明の特徴は、台盤3が振動する振動エネルギーを電気エネルギーに変換し、これによって電気エネルギーを有効に利用し、振動エネルギーを減衰させることにある。
【0023】
このため、本発明は、図3に示すように弾性支持部材30の上端と台盤3との間に板部材40,41を介して圧力や振動を電圧に変換する上部圧電体4を介設し、また弾性支持部材30の下端と建屋床部6との間にも板部材40a,41aを介して圧力や振動を電圧に変換する下部圧電体4aを介設している。
【0024】
上部圧電体4は、例えば図3及び図4に示すように台盤3の下面に接して取り付けた板部材40と、弾性支持部材30の上端に接するように取り付けた板部材41との間に弾性部材42を収容し、この弾性部材42に多数の圧電素子43を埋設して構成される。
【0025】
同様に下部圧電体4aも、弾性支持部材30の下端に接する板部材41aと、建屋床部6上面に接する板部材40aと、これら板部材40a,41aの間に弾性部材42aを収容し、この弾性部材42aに多数の圧電素子43aを埋設して構成される。
【0026】
弾性部材42,42aは、天然ゴムや合成ゴム等さまざまなものを採用することができ、弾性変形が自在で、台盤3と建屋床部6との間に作用する振動を、圧電素子43,43aに押圧力として作用するように構成されている。
【0027】
圧電素子43(43a)は、外部から加えられた力を電圧に変換するピエゾ素子などの受動素子で、外力によって圧電素子43(43a)が圧縮変形、又は、撓み変形した際に、電荷が発生する圧電効果を利用したものである。
【0028】
圧電素子43(43a)の構造としては、薄手の受動素子本体と金属板を貼り合わせて円形又は楕円形に形成したものや、2枚の受動素子本体を貼り合わせたものや、多数の受動素子本体を積層したものなど各種公知のものが考えられる。
【0029】
このような圧電素子43(43a)を弾性部材42(42a)に埋設し、弾性部材42(42a)を上下から板部材40(40a),41(41a)で挟んで圧電体4(4a)を構成する。この圧電体4(4a)を台盤3の下面と弾性支持部材30の上端との間に介設し、また弾性支持部材30の下端と建屋床部6上面との間にも介設し、各段圧縮部20a,20b,21,22等から繰り返し加えられる交番荷重による垂直方向の押圧力によって圧電素子43(43a)が歪むことで発電する。
【0030】
なお、各圧電素子43(43a)には、図示してないが夫々電極が設けてあり、台盤3の振動に伴って圧縮力等の外力が板部材40(40a),41(41a)から弾性部材42(42a)を介して圧電素子43(43a)に作用すると、図示してない電極及び電気配線から図5に示すように蓄電装置5に電気が蓄電されるようになっている。
【0031】
往復動圧縮機1を駆動させるに伴って、台盤3には交番荷重による振動が継続的に発生するが、この振動による押圧力で各圧電素子43(43a)が過剰に変形し、圧電素子43(43a)が破壊されるのを防止するために、各圧電体4(4a)には、例えば図4に示すように弾性部材42の内部に棒状部材44を埋設し、板部材40,41同士の近接を制限するストッパ部材を設けておくのがよい(図4は、上部圧電体4のストッパ部材44を示しているが、下部圧電体4aも同様である)。なお、ストッパ部材44は、圧電素子43の破壊を防止するために板部材40,41同士の近接を制限するものであるので、いずれかの板部材、例えば板部材40の片側より弾性部材42内に向けて棒状に突設するストッパ部材44aでもよく、あるいは板部材40,41の外縁を互いに対向するように突設した縁部44b,44bであってもよい。
【0032】
以下、本実施形態による往復動圧縮機1の作用について説明する。
【0033】
往復動圧縮機1が駆動されると、各段圧縮部20a,20b,21,22内のピストン(図示せず)の往復動に伴って台盤3が上下に継続的に振動し、この振動は板部材40を介して弾性部材42に伝達する。弾性部材42には圧電素子43が埋設されており、振動を圧電素子43に押圧力として作用させ、圧電素子43が変形する。台盤3の上下方向の継続的な振動は、台盤3と弾性支持部材30との間に介設された上部圧電体4の圧電素子43を変形させるだけでなく、弾性支持部材30の弾力によって、弾性支持部材30と建屋床部6との間に介設された下部圧電体4aの圧電素子43aも同時に変形させる。
【0034】
このように、台盤3の振動エネルギーが上下の圧電素子43,43aに加わることで、電圧に変換される。圧電素子43,43aから得られた出力を蓄電装置5に貯めておき、必要に応じて発電し、電力供給(工場内の照明や非常電源等)することができる。
【0035】
また圧電素子43,43aによって振動エネルギーを電気エネルギーに変換するに伴って弾性部材42が弾性変形することで、本来の弾性支持部材30に作用する振動エネルギーを低減することが可能となる。
【0036】
ところで、本実施形態の往復動圧縮機1では、吸入口フィルタ装置11a,11bにも圧電体4を装着して、振動エネルギーを電気エネルギーに変換するようにしており、以下これについて述べる。
【0037】
吸入口フィルタ装置11aは、流出口12を介して第1段圧縮部20aに接続され、吸入口フィルタ装置11bも同様にして第1段圧縮部20bに接続されている。吸入口フィルタ装置11a,11bは、図6に示すように円筒状の本体14の上側にカバー13を取り付け、下側に底板16を取り付け、内部に遮蔽板15を設けている。遮蔽板15及び底板16が請求項4で云う振動部材に相当する。
【0038】
カバー13と遮蔽板15との間にフィルタエレメント17が組み込まれている。外部から吸入した空気をフィルタエレメント17で浄化した後、流出口12より空気を第1段圧縮部20a,20bへ供給する。
【0039】
遮蔽板15及び底板16の片面に、内部に圧電素子43を収容した圧電体4を密着して装着する。圧電素子43は、図示してないが電極が設けられ、電気配線が施されている。
【0040】
なお、圧電体4は、遮蔽板15及び底板16の双方でなく、遮蔽板15または底板16のいずれか一方に装着してもよい。底板16に装着する場合は、圧電体4を底板16の外側(下側)に装着すると、電気配線が容易となる。
【0041】
第1段圧縮部20a,20bのピストン(図示せず)の往復動による間欠的な吸気、吐出で気体(空気)の脈動圧により遮蔽板15、底板16は、あたかも太鼓のごとく膜振動するので、その振動エネルギーが遮蔽板15及び底板16に密着して装着された圧電体4に加わることで、内部に収容された圧電素子43が歪んで電圧に変換される。圧電素子43から得られた出力を蓄電装置5に貯めておき、必要に応じて発電するようにする。
【0042】
また図7に示すように、底板16の内部に圧電素子43を多数収容して、底板16そのものを音圧で発生する振動エネルギーを電気エネルギーに変換する音圧(振動)発電板としてもよい。すなわち、この場合は、音圧(振動)発電板が請求項4の振動部材であり、かつ振動部材が弾性部材であると共に圧電素子43を埋設した圧電体4cでもある。
【0043】
本実施形態の往復動圧縮機1によれば、台盤3と建屋床部6との間を、圧電体4、弾性支持部材30、圧電体4aでつなぐことで台盤3と建屋床部6の双方に圧電体4,4aを設けることができ、当該振動源からの振動を圧電体4,4aによって受け止め、エネルギー減衰の少ない状態での発電が可能となり、より効率のよい発電を行うことが可能となる。
【0044】
したがって、これまで問題点とされていた台盤3に生じる振動を逆利用して、その振動エネルギーを電気という形で取り出して、有効に利用することが可能となる。
【0045】
さらには、圧電体4,4aによって振動エネルギーを電気エネルギーに変換するに伴って弾性部材42が弾性変形することで、本来の弾性支持部材30に作用する振動エネルギーを低減することが可能となり、弾性支持部材30の耐久性の向上を図ると共に防振性能を向上させることも可能となる。
【0046】
また吸入口フィルタ装置11の底板16に圧電素子43を収容し、底板16を音圧(振動)発電板とすれば、音圧で発生する振動エネルギーを電気エネルギーに変換することもでき、さらに効率のよい発電を行うことが可能となる。
【0047】
近年、地球環境改善のため、環境負荷の少ない圧縮機の開発が求められているが、本実施形態の往復動圧縮機1によれば、これまで往復動圧縮機1の交番荷重による振動エネルギーをやわらげるために防振対策にコストを費やしていたのを、振動エネルギーを電気的エネルギーに変換するようにして、むしろ欠点を長所にしたものである。
【符号の説明】
【0048】
1 往復動圧縮機
3 台盤
4,4a,4c 圧電体
5 蓄電装置
6 建屋床部
10 圧縮機フレーム
11a,11b 吸入口フィルタ装置
15 遮蔽板
16 底板
20a,20b 第1段圧縮部
21 第2段圧縮部
22 第3段圧縮部
30 弾性支持部材
40,40a,41,41a 板部材
42,42a 弾性部材
43,43a 圧電素子
44,44a,44b ストッパ部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
往復動式の圧縮部が取り付けられた台盤を振動吸収用の弾性支持部材を介して建屋床部に設置した往復動圧縮機であって、
前記弾性支持部材の上端と前記台盤との間に圧力や振動を電圧に変換する上部圧電体を介設し、
前記弾性支持部材の下端と前記建屋床部との間に圧力や振動を電圧に変換する下部圧電体を介設したことを特徴とする往復動圧縮機。
【請求項2】
前記上部圧電体は、前記台盤の下面に接する板部材と、前記弾性支持部材の上端に接する板部材と、これら板部材の間に介設された弾性部材と、該弾性部材に埋設された圧電素子とからなり、
前記下部圧電体は、前記弾性支持部材の下端に接する板部材と、前記建屋床部に接する板部材と、これら板部材の間に介設された弾性部材と、該弾性部材に埋設された圧電素子とからなる請求項1記載の往復動圧縮機。
【請求項3】
前記圧電体は、前記圧電素子の過剰な変形を防止するために、前記板部材同士の近接を制限するストッパ部材を有する請求項2記載の往復動圧縮機。
【請求項4】
前記往復動式の圧縮部の吸入口フィルタ装置が、前記圧縮部の駆動に伴う吸気圧力の変動により振動する振動部材を有し、該振動部材に圧力や振動を電圧に変換する圧電体を設けた請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の往復動圧縮機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−270668(P2010−270668A)
【公開日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−122978(P2009−122978)
【出願日】平成21年5月21日(2009.5.21)
【出願人】(000000099)株式会社IHI (5,014)
【出願人】(000198352)株式会社IHI回転機械 (27)