説明

後側方障害物検知装置

【課題】自車両が低速で走行する場合であっても、非報知対象物であるガードレール等の静止物が、報知対象物である他車両等の移動物として検知されることを防止することが可能な後側方障害物検知装置を提供する。
【解決手段】自車両の後側方領域内の対象物の存在を検知する後側方障害物検知装置であって、対象物を非報知対象物と報知対象物に分類する対象物分類部と、自車両の走行速度に応じて、対象物を非報知対象物に分類する条件を制御する非報知対象物分類条件制御部とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自車両周辺における障害物と衝突する危険性をドライバーに報知する後側方障害物検知装置に関し、より特定的には、障害物を非報知対象物と報知対象物とに分類可能な後側方障害物検知装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の車両には、自車両の左右後側方領域内の対象物をミリ波レーダ等によって検知可能な周辺監視装置(後側方障害物検知装置)が装備されている。当該周辺監視装置によれば、この検知された対象物は、ドライバーに報知する対象である報知対象物(走行中の他車両等の移動物)と、ドライバーに報知しない対象である非報知対象物(ガードレールや、交通標識等の静止物)とに分類され、報知領域(警報領域)内に報知対象物が存在すると、ドライバーに報知されることが知られている(例えば、特許文献1)。
【0003】
また、特許文献1に記載の周辺監視装置によれば、2つのレーダービームを照射することで、検知した対象物を、上記した非報知対象物(静止物)と報知対象物(移動物)とに分類可能であることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−533991号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1に記載されているような従来の周辺監視装置では、この周辺監視装置を搭載する自車両が低速で走行する場合に、静止物(非報知対象物)であるガードレールが自車両の報知領域内に存在すると、当該ガードレールが移動物(報知対象物)として検知され、不要にドライバーに報知が実行されることがある。この一因としては、自車両が低速で走行する場合には、自車両に搭載された周辺監視装置のレーダから照射された電磁波がガードレールの形状細部に沿って多点で反射するため、電磁波の反射波形の凹凸度合いが大きくなり、信号処理の過程で移動物と判定されやすくなることが挙げられる。一方、自車両が高速で走行する場合には、ガードレールからの反射波形が比較的平滑化されるため、凹凸の小さい平坦な反射波形となり、信号処理の過程で静止物と判定されやすい。
【0006】
それ故に、本発明の目的は、自車両が低速で走行する場合であっても、非報知対象物である静止物(ガードレール等)が報知対象物である移動物として検知されることを防止することが可能な後側方障害物検知装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明は以下の構成を採用した。すなわち第1の局面は、自車両の後側方領域内の対象物の存在を検知する後側方障害物検知装置であって、対象物を非報知対象物と報知対象物に分類する対象物分類部と、自車両の走行速度に応じて、対象物を非報知対象物に分類する条件を制御する非報知対象物分類条件制御部とを備える。
【0008】
第2の局面は、第1の局面において、非報知対象物分類条件制御部は、自車両の走行速度が所定の閾値よりも小さい場合に、対象物を非報知対象物に分類する条件を、対象物が非報知対象物として分類されやすくなるように制御する。
【0009】
第3の局面は、第2の局面において、非報知対象物分類条件制御部は、自車両の走行速度が所定の閾値よりも小さい場合に、対象物を非報知対象物として検知する検知角度の範囲である非報知対象物検知範囲の大きさを、自車両の走行速度が所定の閾値よりも大きい場合における非報知対象物検知範囲の大きさよりも大きくする。
【0010】
第4の局面は、第3の局面において、非報知対象物分類条件制御部は、自車両の走行速度が所定の閾値よりも小さい場合に、自車両の走行速度が小さくなるほど、非報知対象物検知範囲の大きさを段階的に、又は連続的に大きく変更する。
【0011】
第5の局面は、第2の局面において、非報知対象物分類条件制御部は、自車両の走行速度が所定の閾値よりも小さい場合に、対象物の速度の範囲である非報知対象物速度範囲の大きさを、自車両の走行速度が所定の閾値よりも大きい場合における非報知対象物速度範囲の大きさよりも大きくする。
【0012】
第6の局面は、第5の局面において、非報知対象物分類条件制御部は、自車両の走行速度が所定の閾値よりも小さい場合に、自車両の走行速度が小さくなるほど、非報知対象物速度範囲の大きさを段階的に、又は連続的に大きく変更する。
【0013】
第7の局面は、第1から第6の局面のいずれかにおいて、報知対象物は移動物であり、非報知対象物は静止物である。
【0014】
第8の局面は、第3又は第4の局面において、非報知対象物検知範囲は、対象物を報知対象物として検知する検知角度の範囲である報知対象物検知範囲とは異なる範囲に設定される。
【0015】
また、上記目的を達成するために、上述した本発明の後側方障害物検知装置の各構成が行うそれぞれの処理は、一連の処理手順を与える後側方障害物検知装置の制御方法としても捉えることができる。この方法は、一連の処理手順をコンピュータに実行させるためのプログラムの形式で提供される。このプログラムは、コンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録された形態で、コンピュータに導入されてもよい。
【発明の効果】
【0016】
第1の局面によれば、自車両の走行速度に応じて対象物を非報知対象物に分類する条件が制御される。このことにより、自車両が低速で走行するときや、高速で走行するときのように走行速度が異なっても、対象物を非報知対象物に分類する条件が適切に制御される。
【0017】
第2の局面によれば、自車両の走行速度が所定の閾値よりも小さい場合(すなわち、自車両が低速で走行する場合)、自車両が高速で走行する場合よりも対象物が非報知対象物に分類されやすい条件が設定される。このことにより、自車両が低速で走行する際に生じる、非報知対象物が報知対象物として検知されることを防止することができる。
【0018】
第3の局面によれば、自車両が低速で走行する場合、自車両が高速で走行する場合よりも非報知対象物検知範囲の大きさを大きくすることにより、対象物が非報知対象物に分類されやすい条件を設定することができる。
【0019】
第4の局面によれば、自車両が低速で走行する場合、自車両の走行速度が小さくなるほど、非報知対象物検知範囲の大きさがより大きく設定される。このことにより、自車両の走行速度が小さくなるほど、より大きく設定された非報知対象物検知範囲に基づいて、対象物を非報知対象物に適切に分類することが可能となる。
【0020】
第5の局面によれば、自車両が低速で走行する場合、自車両が高速で走行する場合よりも非報知対象物速度範囲の大きさを大きくすることにより、対象物が非報知対象物に分類されやすい条件を設定することができる。
【0021】
第6の局面によれば、自車両が低速で走行する場合、自車両の走行速度が小さくなるほど、非報知対象物速度範囲の大きさがより大きく設定される。このことにより、自車両の走行速度が小さくなるほど、より大きく設定された非報知対象物速度範囲に基づいて、対象物を非報知対象物に適切に分類することが可能となる。
【0022】
第7の局面によれば、対象物は、非報知対象物と報知対象物に分類され、報知対象物として分類された移動物(走行する他車両等)の存在のみをドライバーに報知し、非報知対象物として分類された静止物(ガードレール等)の存在を不要に報知しないことが可能となる。
【0023】
第8の局面によれば、非報知対象物検知範囲は報知対象物検知範囲と異なる範囲に設定されることにより、対象物を非報知対象物と報知対象物とにより正確に分類することができる。
【0024】
上述のように、本発明の後側方障害物検知装置によれば、自車両が低速で走行する場合であっても、非報知対象物である静止物(ガードレール等)が報知対象物である移動物として検知されることを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の一実施形態に係る後側方障害物検知装置1の概略構成を示す機能ブロック図
【図2】レーダ装置2における検知角度範囲の一例を示す図
【図3】自車両100が高速で走行する際の非報知対象物検知範囲120の一例を示す図
【図4】自車両100が低速で走行する際の非報知対象物検知範囲120の一例を示す図
【図5】非報知率と不要報知率の一例を示すグラフ
【図6】後側方障害物検知装置1が実行する非報知対象物分類条件制御処理の一例を示すフローチャート
【図7】自車両の車速と検知角度の関係の一例を示すグラフ
【図8】本発明の一実施形態における不要報知率の一例を示すグラフ
【図9】変形例における自車両100の車両速度と非報知対象物速度範囲との関係を示す模式図
【図10】変形例における後側方障害物検知装置1が実行する非報知対象物分類条件制御処理の一例を示すフローチャート
【図11】変形例における自車両100の車両速度と非報知対象物速度範囲の関係の一例を示すグラフ
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、図面を参照しつつ、本発明の一実施形態に係る後側方障害物検知装置について説明する。なお、本実施形態に係る後側方障害物検知装置は、自車両に搭載され、自車両が走行する際の、自車両の左右後側方領域の対象物を検知し、検知した対象物を報知の対象となる報知対象物(例えば、他車両等の移動物)と報知の対象とならない非報知対象物(例えば、ガードレール等の静止物)に分類したうえで、報知領域内の報知対象物の存在を報知する装置である。図1は、本発明の実施形態に係る後側方障害物検知装置1の構成の一例を示すブロック図である。図2は、本発明の実施形態に係るレーダ装置2における検知角度範囲の一例を示す図である。
【0027】
図1、図2を参照して後側方障害物検知装置1の構成及び後側方障害物検知装置1の周辺装置について説明する。図1に示されるように、本実施形態に係る後側方障害物検知装置1には、レーダ装置2及び車両センサ3からの情報が入力され、後側方障害物検知装置1は、報知器4に対して報知を指示する情報を出力する。
【0028】
レーダ装置2は、自車両100の所定の位置に設置され(例えば、自車両100の左右のサイドミラー、フェンダボディ、若しくはリアバンパー内に組み込まれ)、自車両100の左右側方にある対象物を検知する。レーダ装置2は、自車両100の側方に向けて電磁波を照射し、当該レーダ装置2の検知範囲内(電磁波の照射範囲内)に存在する対象物(他車両、自転車、ガードレール、交通標識など)を検知する。
【0029】
具体的には、レーダ装置2は、単一もしくは複数のレーダービーム(電磁波)を照射して、その反射波を受信する。そして、レーダ装置2は、自車両100の側方に存在する対象物を検知し、当該対象物を検知した情報を、後側方障害物検知装置1に出力する。なお、レーダ装置2は、検知した対象物毎に情報を出力する。また、レーダ装置が複数の対象物を検知している場合、レーダ装置2は、対象物を検知した情報を対象物毎にそれぞれ後側方障害物検知装置1に出力する。
【0030】
車両センサ3は、自車両100の所定の位置に設置され、自車両100の各種状態(例えば、自車両100の走行速度や、操舵状態)を検知する。そして、車両センサ3は、自車両100の各種状態を示す情報を後側方障害物検知装置1に出力する。
【0031】
報知器4は、ドライバーに報知対象の存在を視覚的、或いは聴覚的に報知する。報知器4は、例えば、警告灯等の表示装置や、警報ブザー等の警報装置である。後側方障害物検知装置1からの報知の実行指示に基づいて、例えば、警告灯が点灯し、警報ブザーの警告音が出力される。
【0032】
次に、後側方障害物検知装置1の構成について説明する。後側方障害物検知装置1は、例えばCPU、ROM、RAMなどを有したマイクロコンピュータを備えて構成され、その機能構成として、検知条件設定部10と、対象物分類部20と、非報知対象物分類条件制御部30と、報知領域設定部40と、存在判定部50と、報知制御部60とを備える。後側方障害物検知装置1は、例えば、上記したROMに予め格納された制御プログラムをCPUに実行させることによって、検知条件設定部10と、対象物分類部20と、非報知対象物分類条件制御部30と、報知領域設定部40と、存在判定部50と、報知制御部60として動作する。
【0033】
検知条件設定部10は、その機能構成として、報知対象物検知条件設定部11と、非報知対象物検知条件設定部12とを備える。
【0034】
報知対象物検知条件設定部11は、レーダ装置2が検知した対象物を、報知対象物として分類するための条件を設定する。報知対象物検知条件設定部11は、例えば、対象物の検知角度の範囲(報知対象物検知範囲)を設定する。具体的には、報知対象物検知条件設定部11は、自車両100の電源が投入されると、予めデータ保存用内部メモリ(例えば、不揮発性メモリ)に記憶された報知対象物検知範囲を示す情報を読み込み、当該情報を内部メモリ(例えば、RAM)に記憶する。そして、報知対象物検知条件設定部11は、内部メモリに記憶させた報知対象物検知範囲を示す情報を対象物分類部20に出力する。報知対象物検知範囲には、具体的には、図2(a)に示される報知対象物検知範囲110が設定され、例えば、自車両100の長手方向に対して20°〜30°程度傾いた斜め後方を中心に、30°〜50°程度の検知幅(検知角度範囲)を有する。なお、後述するが、対象物の自車両100に対する相対角度が、報知対象物検知範囲110が示す検知角度の範囲であることを必要条件として、対象物は報知対象物に分類される。
【0035】
非報知対象物検知条件設定部12は、レーダ装置2が対象物を非報知対象物として分類するための条件を設定する。非報知対象物検知条件設定部12は、例えば、対象物の検知角度の範囲(非報知対象物検知範囲)を設定する。具体的には、非報知対象物検知条件設定部12は、自車両100の電源が投入されると、予めデータ保存用内部メモリ(例えば、不揮発性メモリ)に記憶された非報知対象物検知範囲を示す情報を読み込み、当該情報を内部メモリ(例えば、RAM)に記憶する。また、非報知対象物検知条件設定部12は、後述する非報知対象物分類条件制御部30の指示に基づいて、非報知対象物検知範囲の検知角度の範囲を変更し、内部メモリに記憶された非報知対象物検知範囲を示す情報を、変更後の非報知対象物検知範囲を示す情報に更新する。そして、非報知対象物検知条件設定部12は、内部メモリに更新記憶させた非報知対象物検知範囲を示す情報を対象物分類部20に出力する。非報知対象物検知範囲には、具体的には、図2(a)に示される非報知対象物検知範囲120が設定され、例えば、自車両100の真横方向を中心に、120°〜150°程度の検知幅(検知角度範囲)を有する。なお、後述するが、対象物の自車両100に対する相対角度が、非報知対象物検知範囲120が示す検知角度の範囲であることを必要条件として、対象物は非報知対象物に分類される。また、以下の説明において、非報知対象物検知範囲120の検知幅を表わす際には、自車両100の長手方向に対して垂直な方向(真横方向)から時計回りに正方向である検知角度θを用いて表わすものとする(図2(b)参照)。例えば、検知角度θが75°であるとは、検知幅(検知角度範囲)が150°(−75°〜75°)であることを表わす。
【0036】
対象物分類部20は、検知条件設定部10が出力した報知対象物検知範囲110や非報知対象物検知範囲120を示す情報や非報知対象物速度範囲を示す情報、レーダ装置2が検知した対象物の検知情報、及び車両センサ3が出力した自車両100の状態を示す情報に基づいて、レーダ装置2が検知した対象物を、報知対象物と非報知対象物に分類する。具体的には、まず、対象物分類部20は、レーダ装置2が照射した照射波と受信した反射波とのドップラー変調特性や、送受信タイミング等の情報を用いて、自車両100に対する対象物の相対位置、相対速度、相対角度、及び相対距離等の対象物に関する情報を算出する。また、対象物分類部20は、車両センサ3の出力情報に基づいて、自車両100の走行速度を算出する。そして、対象物分類部20は、上記対象物の相対角度が報知対象物検知範囲110の検知角度の範囲であることを必要条件として、他の分類条件(相対速度が所定の範囲内である等)を満たすことにより、対象物を報知対象物に分類する。また、対象物分類部20は、上記対象物の相対角度が非報知対象物検知範囲120の検知角度の範囲であることを必要条件として、他の分類条件(相対速度が所定の範囲内である等)を満たすことにより、対象物を非報知対象物に分類する。そして、対象物分類部20は、報知対象物に関する情報(相対位置、相対速度、相対距離等の情報)を存在判定部50に出力し、非報知対象物に関する情報(相対位置、相対速度、相対距離等の情報)及び自車両100の走行速度に関する情報を非報知対象物分類条件制御部30に出力する。
【0037】
非報知対象物分類条件制御部30は、対象物分類部20が出力した自車両100の走行速度に基づいて、非報知対象物検知範囲120の検知角度θの大きさを決定する。そして、非報知対象物分類条件制御部30は、非報知対象物検知条件設定部12に対して、非報知対象物検知範囲120の検知角度を、決定した検知角度θに変更するように指示する。
【0038】
報知領域設定部40は、報知対象物の存在を報知する領域(報知領域)を設定する。具体的には、図2に示されるように、自車両100の後側方領域であって、レーダ装置2が検知する領域のうち、ドライバーからは死角になりやすい報知領域130を設定する。この報知領域には、例えば自車両100のピラーにより死角となりやすい領域や、目視が困難な領域が設定されるが、車両によってピラーの位置や目視が困難な領域は異なるため、車両の特性に応じて報知領域が設定される。そして、報知領域設定部40は、設定した報知領域を示す情報を存在判定部50に出力する。
【0039】
存在判定部50は、対象物分類部20が出力した報知対象物に関する情報と報知領域設定部40が出力した報知領域を示す情報に基づいて、報知対象物(他車両等の移動物)が報知領域内に存在するか否かを判定する。そして、存在判定部50は、その判定結果を示す情報を報知制御部60に出力する。なお、存在判定部50は、報知対象物の一部が報知領域内に存在する場合に、報知対象物が報知領域内に存在すると判定してもよいし、報知対象物の全部が報知領域内に存在する場合に、報知対象物が報知領域内に存在すると判定してもよい。
【0040】
報知制御部60は、存在判定部50が出力した判定結果を示す情報に基づいて、報知を制御する指示を報知器4に出力する。具体的には、存在判定部50による判定結果が肯定であるとき(すなわち、報知対象物が報知領域内に存在するとき)、報知制御部60は、報知器4に対して報知の実行を指示する。一方、存在判定部50による判定結果が否定であるとき(すなわち、報知対象物が報知領域内に存在しないとき)、報知制御部60は、報知器4に対して報知の実行を指示せず、或いは、実行していた報知を終了させる指示を行う。
【0041】
次に、図3、図4を参照しつつ、非報知対象物分類条件制御部30による非報知対象物検知範囲120の検知角度θの制御について説明する。図3は、自車両100が高速で走行する際の非報知対象物検知範囲120を示す図であり、図4は、自車両100が低速で走行する際の非報知対象物検知範囲120を示す図である。なお、図3、図4に示す矢印が車速の大きさを表している。また、図3、図4では、自車両の左側方に報知対象物(他車両)及び非報知対象物(ガードレール)が存在する場合について図示しているが、自車両の右側方に報知対象物及び非報知対象物が存在する場合も同様である。
【0042】
まず、図3を参照しつつ、自車両100が高速で走行する際に行われる非報知対象物検知範囲120の検知角度θの制御について説明する。図3に示されるように、自車両100は、高速(例えば、その速度は90km/h)で走行している。この場合、自車両100に搭載されたレーダ装置2から照射された電磁波に対するガードレール300からの反射波の波形は比較的平滑化されるため、凹凸の小さい平坦な反射波形となり、対象物分類部20は、反射波の信号処理の過程でガードレール300を非報知対象物(静止物)に分類することは容易である。具体的には、図5(a)に示されるように、自車両100が高速で走行する際には、検知角度θの大きさに関わらず、非報知対象物が報知対象物と検知されて不要な報知が実行される率(以下、不要報知率と称す)は低いままである。一方、報知対象物が非報知対象物と検知されて報知が実行されない率(以下、非報知率と称す)は、検知角度θが大きくなるほど増加する。したがって、検知角度θには、初期設定される小さな値(例えば60°)をそのまま用いることにより、不要報知率を低いままに、非報知率を低下させて、報知対象物(移動物である他車両200)と非報知対象物(静止物であるガードレール300)とを適切に分離することができる。なお、図5(a)は、検知角度θと非報知率及び不要報知率との関係を示すグラフであり、検知角度θ以外の他の分類条件は一定である。
【0043】
次に、図4を参照しつつ、自車両100が低速で走行する際に行われる非報知対象物検知範囲120の検知角度θの制御について説明する。図4に示されるように、自車両100は、低速(例えば、その速度は40km/h)で走行している。この場合、自車両100に搭載されたレーダ装置2から照射された電磁波は、ガードレール300の形状細部に沿って多点で反射するため、電磁波の反射波形の凹凸度合いが大きくなり、対象物分類部20は、反射波の信号処理の過程でガードレール300を非報知対象物(静止物)に分類することは容易ではない。具体的には、図5(b)に示されるように、自車両100が低速で走行する際には、検知角度θが小さいほど不要報知率が高くなる。なお、図5(b)は、検知角度θと非報知率及び不要報知率との関係を示すグラフであり、検知角度θ以外の他の分類条件は一定である。
【0044】
そこで、本実施形態では、自車両100が所定の閾値(以下、この閾値をV0とする)よりも小さい速度で走行する場合には、非報知対象物検知範囲120の検知角度θが大きくなるように変更される。具体的には、図4に示されるように、非報知対象物検知範囲120の検知角度θは、初期設定(図3参照)よりも大きくなるように変更される。このことにより、ガードレール300を非報知対象物(静止物)として分類する精度を向上させることができる。具体的には、図5(b)に示されるように、自車両100が低速で走行する際には、検知角度θが大きくなると、不要報知率は低下する。一方、非報知率は若干増加するものの、不要報知率の低下に比べると微々たるものである。したがって、検知角度θには、初期設定される小さな値(例えば60°)をそのまま用いるのではなく、大きな値(例えば75°)を用いることによって、不要報知率を低下させて、報知対象物(移動物である他車両200)と非報知対象物(静止物であるガードレール300)を適切に分離することができる。また、図5(c)に示されるように、自車両100の走行速度が小さくなるほど、不要報知率は増加する。したがって、自車両100の走行速度が小さいほど、検知角度θの大きさをより大きく設定することが好ましい。なお、図5(c)は、自車両の車両速度と不要報知率との関係を示すグラフであり、車両速度以外の他の分類条件は一定である。
【0045】
以下に、図6を参照して、後側方障害物検知装置1が実行する、非報知対象物検知範囲120の検知角度θを制御する処理(非報知対象物分類条件制御処理)について説明する。図6は、後側方障害物検知装置1の各機能部が実行する処理の詳細を示すフローチャートの一例である。後側方障害物検知装置1は、例えば、自車両100のIG電源がオン状態に設定された場合に図6のフローチャートの処理を開始する。なお、図6に示されるフローチャートの処理は、所定のタイミング(例えば、レーダ装置2がレーダを照射するタイミング)で繰り返し実行される。
【0046】
まず、ステップS1において、後側方障害物検知装置1の検知条件設定部10は、データ保存用内部メモリ(例えば、不揮発性メモリ)に記憶された検知範囲を示す情報を参照し、検知範囲を設定する。具体的には、報知対象物検知条件設定部11は、予めデータ保存用内部メモリに記憶された報知対象物検知範囲110を示す情報を読み込み、当該情報を内部メモリ(例えば、RAM)に記憶する。そして、報知対象物検知条件設定部11は、内部メモリに記憶させた報知対象物検知範囲110を示す情報を対象物分類部20に出力する。同様に、非報知対象物検知条件設定部12は、予めデータ保存用内部メモリに記憶された非報知対象物検知範囲120を示す情報を読み込み、当該情報を内部メモリに記憶する。そして、非報知対象物検知条件設定部12は、内部メモリに記憶させた非報知対象物検知範囲120を示す情報を対象物分類部20に出力する。その後、処理はステップS2に移る。
【0047】
ステップS2において、後側方障害物検知装置1の対象物分類部20は、自車両100の車両速度Vを算出する。具体的には、対象物分類部20は、車両センサ3の出力情報に基づいて、自車両100の走行速度を算出する。その後、処理はステップS3に移る。
【0048】
ステップS3において、後側方障害物検知装置1の非報知対象物分類条件制御部30は、ステップS2で算出された車両速度Vが閾値V0よりも小さいか否かを判定する。具体的には、非報知対象物分類条件制御部30は、対象物分類部20が出力した自車両100の車両速度Vと、予めメインメモリ(例えばROM)に読み込まれた閾値V0とを比較して、車両速度Vが閾値V0よりも小さいか否かを判定する。この判定結果がYESの場合、処理はステップS4に移り、NOの場合、処理はステップS5に移る。
【0049】
ステップS4において、後側方障害物検知装置1の非報知対象物分類条件制御部30は、非報知対象物検知範囲120の検知角度θを車両速度Vの大きさに応じた角度に設定する。具体的には、非報知対象物分類条件制御部30は、車両速度Vの大きさに対応して予めメインメモリ(例えばROM)に読み込まれた非報知対象物検知範囲120の検知角度θを参照して、車両速度Vに対応する検知角度θを設定する。例えば、ROMに記憶されている車両速度Vと検知角度θの関係が図7(a)のグラフに示される関係であるとき、非報知対象物分類条件制御部30は、車両速度Vが65km/hのとき、検知角度θとして70°を設定する。なお、図7(a)において、車両速度Vが80km/h以上で検知角度θが60°となるが、これはステップS3で判定される閾値V0が80km/hであることを示す。すなわち、車両速度Vが所定の閾値V0以上である場合(ステップS3:NO)には、検知角度θの値は一定であり、変更されない(なお、この一定の値は、後述する初期検知角度θ0の値である)。また、車両速度Vと検知角度θの関係は、図7(a)に示されるステップ状の関係に限られるものではなく、図7(b)に示される線形の関係であってもよい。ただし、検知角度θは、車両速度Vが小さくなるほど増加するように設定される。その後、処理はステップS6に移る。
【0050】
ステップS5において、後側方障害物検知装置1の非報知対象物分類条件制御部30は、非報知対象物検知範囲120の検知角度θを初期設定された初期検知角度θ0に設定する。具体的には、非報知対象物分類条件制御部30は、予めデータ保存用内部メモリ(例えば不揮発性メモリ)に初期値として記憶された非報知対象物検知範囲120の初期検知角度θ0を参照して、この値を検知角度θとして設定する。したがって、ステップS1で内部メモリ(例えばRAM)に記憶された検知角度θの値がθ0である場合には、検知角度は変更されず、ステップS1で内部メモリ(例えばRAM)に記憶された検知角度θが後述のステップS6の処理によって変更されている場合には、再び初期値θ0に戻される。その後、処理はステップS6に移る。
【0051】
ステップS6において、後側方障害物検知装置1の非報知対象物検知条件設定部12は、ステップS4又はステップS5で設定された非報知対象物検知範囲120の検知角度θの値を内部メモリ(例えばRAM)に更新して記憶させる。具体的には、非報知対象物検知条件設定部12は、非報知対象物分類条件制御部30の指示に基づいて、非報知対象物検知範囲120の検知角度θの大きさを変更し、内部メモリに更新記憶させ、処理を終了する。
【0052】
以上に説明したように、本実施形態によれば、内部メモリ(RAM)に記憶された非報知対象物検知範囲120の検知角度θに基づいて、非報知対象物検知範囲120が設定される(図6のステップS1)。そして、車両速度Vが閾値V0より小さければ、検知角度θは、車両速度Vに応じた値(初期検知角度θ0よりも大きな値)に設定され(ステップS3でYES、ステップS4)、車両速度Vが閾値V0以上であれば、検知角度θは、初期検知角度θ0に設定される(ステップS3でNO、ステップS5)。そして、この設定された検知角度θが内部メモリに上書き記憶され(ステップS6)、再びこの検知角度θに基づいて非報知対象物(静止物)と報知対象物(移動物)とに分類される。したがって、自車両100の車両速度Vが変わる度に、非報知対象物検知範囲120の検知角度θが変更され、この検知角度θに基づいて報知対象物と非報知対象物とに分類される。このことにより、自車両の車両速度Vが小さい場合であっても、非報知対象物検知範囲120の検知角度θが車両速度Vに応じた大きな値に変更されることにより、非報知対象物(例えば、ガードレール等の静止物)が報知対象物(例えば、他車両等の移動物)として検知されることを防止することができる。
【0053】
以上に示したように、本実施形態の後側方障害物検知装置1によれば、自車両100の車両速度Vが小さくても、非報知対象物検知範囲120の検知角度θが、車両速度Vの大きさに応じて、初期検知角度θ0よりも大きな値に変更されるので、不要報知率は低減される(図5(b)参照)。したがって、本実施形態の後側方障害物検知装置1によれば、自車両100の車両速度が小さい場合であっても、非報知対象物であるガードレール300等が報知対象物として検知されること、すなわち不要報知率を低減させることが可能となる(図8参照)。
【0054】
[変形例]
なお、上記実施形態において、非報知対象物検知条件設定部12は、対象物を非報知対象物として分類するための条件として非報知対象物検知範囲120を設定するものとした。しかし、対象物を非報知対象物として分類するための条件は、これに限られるものではなく、例えば、以下のような変形例であってもよい。
【0055】
変形例において、非報知対象物検知条件設定部12は、例えば、対象物の相対速度であって自車両の走行方向成分として検知される相対速度の範囲(非報知対象物速度範囲)を設定する。具体的には、非報知対象物検知条件設定部12は、自車両100の電源が投入されると、予めデータ保存用内部メモリ(例えば、不揮発性メモリ)に記憶された非報知対象物速度範囲を示す情報を読み込み、当該情報を内部メモリ(例えば、RAM)に記憶する。また、非報知対象物検知条件設定部12は、非報知対象物分類条件制御部30の指示に基づいて、非報知対象物速度範囲を変更し、内部メモリに記憶された非報知対象物速度範囲を示す情報を、変更後の非報知対象物速度範囲を示す情報に更新する。そして、非報知対象物検知条件設定部12は、内部メモリに更新記憶させた非報知対象物速度範囲を示す情報を対象物分類部20に出力する。
【0056】
このとき、対象物分類部20は、対象物の上記相対速度(相対速度の自車両の走行方向の成分)が非報知対象物速度範囲が示す範囲内であることを必要条件として、他の分類条件(相対角度が所定の範囲内である等)を満たすことにより、対象物を非報知対象物(例えば、ガードレール等の静止物)に分類する。そして、対象物分類部20は、非報知対象物に関する情報(相対位置、相対速度、相対距離等の情報)及び自車両100の走行速度に関する情報を非報知対象物分類条件制御部30に出力する。
【0057】
また、非報知対象物分類条件制御部30は、対象物分類部20が出力した自車両100の走行速度に基づいて、非報知対象物速度範囲の大きさを決定する。そして、非報知対象物分類条件制御部30は、非報知対象物検知条件設定部12に対して、非報知対象物速度範囲の大きさを決定した大きさに変更するように指示する。
【0058】
次に、図9を参照しつつ、非報知対象物分類条件制御部30による非報知対象物速度範囲の制御について説明する。図9は、自車両100の走行速度と非報知対象物速度範囲との関係を示す模式図であり、図9(a)は、自車両100が高速で走行する際の非報知対象物速度範囲を示す図であり、図9(b)は、自車両100が低速で走行する際の非報知対象物速度範囲を示す図である。なお、図9において相対速度成分Vxは非報知対象物の相対速度の自車両100の走行方向の成分の値を示し、Vxに付記された矢印の大きさが、非報知対象物速度範囲の大きさを示すものとする。
【0059】
まず、図9(a)を参照しつつ、自車両100が高速で走行する際に行われる非報知対象物速度範囲の制御について説明する。図3に示されるように、自車両100は、高速(例えば、その速度は90km/h)で走行している。この場合、自車両100に搭載されたレーダ装置2から照射された電磁波に対するガードレール300(非報知対象物である静止物)からの反射波の波形は比較的平滑化されるため、凹凸の小さい平坦な反射波形となり、対象物分類部20は、反射波の信号処理の過程でガードレール300を非報知対象物に分類することは容易である。具体的には、反射波は平坦な反射波形であるため、対象物(非報知対象物)の相対速度成分Vxは大きな値にはならない。したがって、非報知対象物速度範囲は、小さな範囲であっても相対速度成分Vxは非報知対象物速度範囲内の値となる。したがって、非報知対象物速度範囲の大きさには、初期設定される小さな値(例えば−2km/h〜2km/h)をそのまま用いることにより、対象物を適切に非報知対象物(静止物)に分類することができ、不要報知率を低下させることができる。
【0060】
次に、図9(b)を参照しつつ、自車両100が低速で走行する際に行われる非報知対象物速度範囲の制御について説明する。図9(b)に示されるように、自車両100は、低速(例えば、その速度は40km/h)で走行している。この場合、自車両100に搭載されたレーダ装置2から照射された電磁波は、ガードレール300(非報知対象物である静止物)の形状細部に沿って多点で反射するため、電磁波の反射波形の凹凸度合いが大きくなり、対象物分類部20は、反射波の信号処理の過程でガードレール300を非報知対象物に分類することは容易ではない。具体的には、反射波は凹凸度合いの大きな反射波形であるため、対象物(非報知対象物)の相対速度成分Vxは大きな値となってしまう。したがって、非報知対象物速度範囲が小さな範囲であると、非報知対象物の相対速度成分Vxは非報知対象物速度範囲外の値となり、非報知対象物(静止物)は報知対象物(移動物)として分類されてしまうことがある。
【0061】
そこで、変形例では、自車両100が所定の閾値V0よりも小さい速度で走行する場合には、非報知対象物速度範囲の大きさが大きくなるように変更される。具体的には、図9(b)に示されるように、非報知対象物速度範囲は、初期設定(図9(a)参照)よりも大きくなるように変更される。したがって、非報知対象物の相対速度成分Vxが大きな値であっても、相対速度成分Vxは非報知対象物速度範囲内になる。このことにより、ガードレール300を非報知対象物(静止物)として分類する精度を向上させることができる。
【0062】
以下に、図10を参照して、変形例における後側方障害物検知装置1が実行する、非報知対象物速度範囲の大きさを制御する処理(非報知対象物分類条件制御処理)について説明する。図10は、変形例において後側方障害物検知装置1の各機能部が実行する処理の詳細を示すフローチャートの一例である。また、図10のフローチャートにおいて図6のフローチャートと同一の処理については、同一のステップ番号を付してその説明を省略する。後側方障害物検知装置1は、例えば、自車両100のIG電源がオン状態に設定された場合に図10のフローチャートの処理を開始する。なお、図10に示されるフローチャートの処理は、所定のタイミング(例えば、レーダ装置2がレーダを照射するタイミング)で繰り返し実行される。
【0063】
まず、ステップS11において、後側方障害物検知装置1の検知条件設定部10は、データ保存用内部メモリ(例えば、不揮発性メモリ)に記憶された非報知対象物速度範囲を示す情報を参照し、非報知対象物速度範囲を設定する。具体的には、非報知対象物検知条件設定部12は、予めデータ保存用内部メモリに記憶された非報知対象物速度範囲を示す情報を読み込み、当該情報を内部メモリに記憶する。そして、非報知対象物検知条件設定部12は、内部メモリに記憶させた非報知対象物速度範囲を示す情報を対象物分類部20に出力する。その後、処理はステップS2に移る。
【0064】
ステップS14において、後側方障害物検知装置1の非報知対象物分類条件制御部30は、非報知対象物速度範囲を車両速度Vの大きさに応じた角度に設定する。具体的には、非報知対象物分類条件制御部30は、車両速度Vの大きさに対応して予めメインメモリ(例えばROM)に読み込まれた非報知対象物速度範囲を参照して、車両速度Vに対応する非報知対象物速度範囲を設定する。例えば、ROMに記憶されている自車両100の車両速度Vと非報知対象物速度範囲の関係が図11(a)のグラフに示される関係であるとき、非報知対象物分類条件制御部30は、車両速度Vが65km/hのとき、非報知対象物速度範囲として−3km/h〜3km/hを設定する。なお、図11のグラフでは、縦軸の非報知対象物速度範囲の値は範囲の上限値のみを示しており、範囲の下限値は上限値の値を−1倍したものである。すなわち、非報知対象物速度範囲が−3km/h〜3km/hのとき、図11のグラフでは縦軸の値は3km/hとなる。また、図11(a)において、車両速度Vが80km/h以上で非報知対象物速度範囲は−2km/h〜2km/hとなるが、これはステップS3で判定される閾値V0が80km/hであることを示す。すなわち、車両速度Vが所定の閾値V0以上である場合(ステップS3:NO)には、非報知対象物速度範囲の大きさは一定であり、変更されない(なお、この一定の大きさは、後述する初期非報知対象物速度範囲の大きさである)。また、車両速度Vと非報知対象物速度範囲の関係は、図11(a)に示されるステップ状の関係に限られるものではなく、図11(b)に示される線形の関係であってもよい。ただし、非報知対象物速度範囲は、車両速度Vが小さくなるほど増加するように設定される。その後、処理はステップS16に移る。
【0065】
ステップS15において、後側方障害物検知装置1の非報知対象物分類条件制御部30は、非報知対象物速度範囲を初期設定された初期非報知対象物速度範囲に設定する。具体的には、非報知対象物分類条件制御部30は、予めデータ保存用内部メモリ(例えば不揮発性メモリ)に初期値として記憶された初期非報知対象物速度範囲を参照して、この範囲を非報知対象物速度範囲として設定する。したがって、ステップS1で内部メモリ(例えばRAM)に記憶された非報知対象物速度範囲の大きさが初期非報知対象物速度範囲である場合には、非報知対象物速度範囲は変更されず、ステップS1で内部メモリ(例えばRAM)に記憶された非報知対象物速度範囲が後述のステップS6の処理によって変更されている場合には、再び初期非報知対象物速度範囲に戻される。その後、処理はステップS16に移る。
【0066】
ステップS16において、後側方障害物検知装置1の非報知対象物検知条件設定部12は、ステップS14又はステップS15で設定された非報知対象物速度範囲の大きさを内部メモリ(例えばRAM)に更新して記憶させる。具体的には、非報知対象物検知条件設定部12は、非報知対象物分類条件制御部30の指示に基づいて、非報知対象物速度範囲の大きさを変更し、内部メモリに更新記憶させ、処理を終了する。
【0067】
以上に説明したように、本変形例によれば、内部メモリ(RAM)に記憶された非報知対象物速度範囲に基づいて、非報知対象物速度範囲が設定される(図10のステップS11)。そして、車両速度Vが閾値V0より小さければ、非報知対象物速度範囲は、車両速度Vに応じた大きさ(初期非報知対象物速度範囲よりも大きな範囲)に設定され(ステップS3でYES、ステップS14)、車両速度Vが閾値V0以上であれば、非報知対象物速度範囲は、初期非報知対象物速度範囲の大きさに設定される(ステップS3でNO、ステップS5)。そして、この設定された非報知対象物速度範囲が内部メモリに上書き記憶され(ステップS16)、再びこの非報知対象物速度範囲に基づいて非報知対象物と報知対象物とに分類される。したがって、自車両100の車両速度Vが変わる度に、非報知対象物速度範囲が変更され、この非報知対象物速度範囲に基づいて報知対象物と非報知対象物とに分類される。このことにより、自車両の車両速度Vが小さい場合であっても、非報知対象物速度範囲が車両速度Vに応じた大きな範囲に変更されることにより、非報知対象物が報知対象物として検知されることを防止することができる。
【0068】
以上に示したように、本変形例の後側方障害物検知装置1によれば、自車両100の車両速度Vが小さくても、非報知対象物速度範囲が、車両速度Vの大きさに応じて、初期非報知対象物速度範囲よりも大きな値に変更されるので、不要報知率は低減される。
【0069】
また、上記実施形態や変形例において、車両速度Vは閾値V0より小さいか否かに基づいて後続のステップが異なるものとした(図6のステップS3)。しかし、車両速度Vを閾値V0と比較するステップはなく(すなわち、図6のステップS3は割愛され)、車両速度Vの大きさに基づいて、検知角度θ、又は非報知対象物速度範囲の大きさが決定されるものとしてもよい。ただし、この場合も、検知角度θ及び非報知対象物速度範囲の大きさは、車両速度Vが小さくなるほど段階的又は連続的に増加するように設定される。
【0070】
また、上記実施形態において、非報知対象物検知範囲120は、自車両100の真横方向を中心に、120°〜150°程度の検知幅(検知角度範囲)を有するものとしたが、自車両100の真横方向を中心としたのは例示に過ぎず、これに限られるものではない。
【0071】
また、上記変形例において、非報知対象物検知条件設定部12は、非報知対象物速度範囲として、対象物の相対速度であって自車両の走行方向成分として検知される相対速度の範囲を設定するものとした。しかし、これに代え、非報知対象物速度範囲には、対象物の絶対速度であって自車両の走行方向成分として検知される絶対速度の範囲が設定されるものとしてもよい。さらに、非報知対象物速度範囲に用いられる、対象物の上記相対速度の成分又は上記絶対速度の成分は、自車両の走行方向成分に限られるものではない。
【0072】
また、上記実施形態や変形例において、実行される非報知対象物検知範囲制御処理の処理順序、設定値、判定に用いられる値等は、単なる一例に過ぎず、本発明の範囲を逸脱しなければ他の順序や値であっても、本発明を実現できることは言うまでもない。
【0073】
また、上記実施形態や変形例の後側方障害物検知装置1において実行される各種処理のプログラムは、不揮発性メモリ等の記憶媒体を通じて後側方障害物検知装置1に供給されるだけでなく、有線又は無線の通信回線を通じて後側方障害物検知装置1に供給されてもよい。なお、上記プログラムを記憶する情報記憶媒体としては、不揮発性メモリの他に、CD−ROM、DVD、或いはそれらに類する光学式ディスク状記憶媒体、フレキシブルディスク、ハードディスク、光磁気ディスク、磁気テープ等であってもよい。
【0074】
以上、本発明を詳細に説明してきたが、上述の説明はあらゆる点において本発明の例示に過ぎず、その範囲を限定しようとするものではない。本発明の範囲を逸脱することなく種々の改良や変形を行うことができることは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0075】
本発明に係る後側方障害物検知装置は、ドライバーにとって死角となりやすい後側方領域における障害物の存在を報知する装置などとして有用である。
【符号の説明】
【0076】
1 後側方障害物検知装置
2 レーダ装置
3 車両センサ
4 報知器
10 検知範囲設定部
11 報知対象物検知条件設定部
12 非報知対象物検知条件設定部
20 対象物分類部
30 非報知対象物分類条件制御部
40 報知領域設定部
50 存在判定部
60 報知制御部
100 自車両
110 報知対象物検知範囲
120 非報知対象物検知範囲
130 報知対象領域
200 他車両(報知対象物)
300 ガードレール(非報知対象物)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自車両の後側方領域内の対象物の存在を検知する後側方障害物検知装置であって、
前記対象物を非報知対象物と報知対象物に分類する対象物分類部と、
前記自車両の走行速度に応じて、前記対象物を非報知対象物に分類する条件を制御する非報知対象物分類条件制御部とを備える、後側方障害物検知装置。
【請求項2】
前記非報知対象物分類条件制御部は、前記自車両の走行速度が所定の閾値よりも小さい場合に、前記対象物を非報知対象物に分類する条件を、前記対象物が非報知対象物として分類されやすくなるように制御する請求項1に記載の後側方障害物検知装置。
【請求項3】
前記非報知対象物分類条件制御部は、前記自車両の走行速度が前記所定の閾値よりも小さい場合に、前記対象物を非報知対象物として検知する検知角度の範囲である非報知対象物検知範囲の大きさを、前記自車両の走行速度が前記所定の閾値よりも大きい場合における前記非報知対象物検知範囲の大きさよりも大きくする、請求項2に記載の後側方障害物検知装置。
【請求項4】
前記非報知対象物分類条件制御部は、前記自車両の走行速度が前記所定の閾値よりも小さい場合に、前記自車両の走行速度が小さくなるほど、前記非報知対象物検知範囲の大きさを段階的に、又は連続的に大きく変更する、請求項3に記載の後側方障害物検知装置。
【請求項5】
前記非報知対象物分類条件制御部は、前記自車両の走行速度が前記所定の閾値よりも小さい場合に、前記対象物の速度の範囲である非報知対象物速度範囲の大きさを、前記自車両の走行速度が前記所定の閾値よりも大きい場合における前記非報知対象物速度範囲の大きさよりも大きくする、請求項2に記載の後側方障害物検知装置。
【請求項6】
前記非報知対象物分類条件制御部は、前記自車両の走行速度が前記所定の閾値よりも小さい場合に、前記自車両の走行速度が小さくなるほど、前記非報知対象物速度範囲の大きさを段階的に、又は連続的に大きく変更する、請求項5に記載の後側方障害物検知装置。
【請求項7】
前記報知対象物は移動物であり、前記非報知対象物は静止物である、請求項1から6のいずれかに記載の後側方障害物検知装置。
【請求項8】
前記非報知対象物検知範囲は、前記対象物を報知対象物として検知する検知角度の範囲である報知対象物検知範囲とは異なる範囲に設定される、請求項3又は4に記載の後側方障害物検知装置。
【請求項9】
自車両の後側方領域内の対象物の存在を検知する後側方障害物検知装置における当該対象物を分類する制御方法であって、
前記対象物を非報知対象物と報知対象物に分類する対象物分類ステップと、
前記自車両の走行速度に応じて、前記対象物を非報知対象物に分類する条件を制御する非報知対象物分類条件制御ステップとを備える、制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2013−2987(P2013−2987A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−134984(P2011−134984)
【出願日】平成23年6月17日(2011.6.17)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】