説明

後方散乱X線検出性を高めるための厚みのあるドープ粘着テープ

【課題】航空機の製造プロセスで多くの粘着テープが使用されており、使用後は剥がれるが、テープが剥がされずにそのままになり、航空機組み立て後も残ったまま異物となることを防止するためのドープ粘着テープを提供する。
【解決手段】後方散乱X線技術により容易に検出される元素を含むドーパントを、粘着テープに塗布するか、基材か粘着剤に付加することで、部分組立品に残されたどんな粘着テープも検出することを特徴とする。ドーパントはヨウ素とすることができ、製造中にテープのバッキング層または粘着層に包含することができる。厚みの大きなテープとドーパントの両者を組み合わせて使用することにより、検出が促進される。構成要素が組み立てられた後に後方散乱X線検出装置を使用してドープ粘着テープが検出されると、ドープ粘着テープは取り除かれる。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
航空機製造では、機体への構成要素の組み立てを含む、手作業のプロセスが大部分を占めている。構成要素は、組立ラインで技術者たちにより手作業で嵌められ、取り付けられ、組み立てられる。時には組立プロセスを容易にするために治具や他の装置が使用されることもあるが、多くの手順において構成要素の測定、配置、取り付けは手作業で行うことが要求される。製造プロセスで便利なものとして提供される材料の一つに、一般的に入手可能な粘着テープがあり、それはよく「塗装テープ」と呼ばれている。この種のテープの片面には、簡単に、且つ、テープがきれいに剥がれるような粘着剤が塗布されている。特に、この粘着剤は、構成要素上に粘着剤を残さずに、テープが貼り付けられた表面素材から最小限の力で剥がれるように形成されている。このようなテープはホームセンターや塗装用品を扱う店で簡単に入手できる。
【0002】
このテープは、組立プロセス中の部品の配置を含めて、製造プロセス中に様々な用途で使用される。組立の間におけるこのテープの用途は非常に多く、それゆえに航空機の組立においても多量のテープが使用される。組立後、テープは剥がされ処分されるべきである。しかしながら、テープが剥がされずにそのままになり、航空機組み立て後も残ったまま「異物」となる可能性がある。これは様々な理由で好ましくない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
それゆえに、組立プロセス中に使用されたどんな粘着テープの跡であろうとすべてを検出し取り除くことが重要である。これらの観点及び他の観点から、ここに本発明が開示される。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の概要は、以下の詳細な説明でさらに述べられる単純な形態で概念の選択を紹介するために提供されるものであることを理解されたい。本発明の概要は、特許請求の範囲を限定することを目的としていない。
【0005】
開示される本発明の一実施形態によれば、ドープ粘着テープはバッキング層と粘着層とを含み、ドーパントがバッキング層または粘着層に付加される。ドーパントは、後方散乱X線検査プロセスを使用してドープ粘着テープの検出を促進する要素である。
【0006】
開示される本発明の別の実施形態によれば、ドープ粘着テープを製造する方法は、粘着テープを製造するための紙スラリーを生産する工程と、紙スラリーを使用して連続紙シートを形成する工程と、連続紙シートに粘着サイジングを塗布する工程とを含む。後方散乱X線検査プロセスにより粘着テープの検出を促進するドーパントが、製造プロセス中に付加される。こうして、粘着剤とドーパントを有する連続紙シートから一巻の粘着テープが形成される。
【0007】
開示される本発明の別の実施形態によれば、ドープ粘着テープを使用する方法は、組み立てられている第一の構成要素にドープ粘着テープを貼付する工程を含み、ドープ粘着テープは、後方散乱X線検査によるドープ粘着テープの検出を促進するドーパントを含む。第一の構成要素は第二の構成要素と組み立てられ、組立品は後方散乱X線検査プロセスにかけられる。
【0008】
他の実施形態は、以下の段落に記載されることを含んでもよい。
A.ドープ粘着テープは、
第一側面と第二側面を有するバッキング層、
バッキング層の第一側面に塗布される粘着層、及び
バッキング層または粘着層に付加されたドーパントであって、後方散乱X線検査プロセスを使用してドープ粘着テープの検出を促進する成分を含むドーパント
を含む。
B.段落Aに記載されたドープ粘着テープであって、バッキング層はヨウ素ベースのドーパントを含む紙層を有する。
C.段落Aに記載されたドープ粘着テープであって、粘着層はヨウ素ベースのドーパントを含む。
D.段落Aに記載されたドープ粘着テープであって、バッキング層は20milより厚い紙層とする。
E.段落Bに記載されたドープ粘着テープであって、ヨウ素はヨウ化カリウムを含む。
F.段落Cに記載されたドープ粘着テープであって、ヨウ素はヨウ化カリウムを含む。
G.段落Aのドープ粘着テープであって、ドーパントは、粘着剤を塗布する前に、ヨウ素を含む液体をバッキング層に噴霧することによってバッキング層に付加される。
【0009】
上述の特徴、機能および利点は、本開示のさまざまな実施形態において独立して達成可能であり、または他の実施形態において組み合わせてもよい。それらの詳細は、以下の説明および図面を参照して理解可能である
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】ここで開示される本発明の様々な実施形態による、様々な部品の組み立てに使用される厚みのあるドープ粘着テープの様々な適用例を示す。
【図2】ここで開示される本発明の様々な実施形態による、構成要素の組み立て後に残った厚みのあるドープ粘着テープを検出するための一つのシステムを示す。
【図3A】ここで開示される本発明の様々な実施形態による、組立プロセスで使用するための厚みのあるドープ粘着テープの様々な実施形態を示す。
【図3B】ここで開示される本発明の様々な実施形態による、組立プロセスで使用するための厚みのあるドープ粘着テープの様々な実施形態を示す。
【図4】ここで開示される本発明の様々な実施形態による、厚みのあるドープ粘着テープを製造するための製造プロセスフローの一つの実施形態を示す。
【図5】ここで開示される本発明の様々な実施形態による、構成要素の組立後に厚みのあるドープ粘着テープの残部を検出するための一つのプロセスフローを示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に述べる詳細な説明は、航空機の製造プロセスにおける、厚みのあるドープ粘着テープの使用に関するシステムと方法を対象にするものである。航空機組み立ての背景において様々な実施形態が記載されるが、本発明の適用例は、航空機製造そのものに限定されず、後方散乱X線検査プロセスを使用した、除去されていない粘着テープの検出が求められる他の用途にも適用可能であると理解されるべきである。これには、電子システム、推進システム、ロケット、宇宙船構成要素などの組み立てが含まれる。これから述べる発明の詳細な説明においては、例示としての添付図面及び本発明の様々な実施形態に言及する。図において、類似の参照番号は類似の要素を示す。
【0012】
航空機の製造は、それが民間機であろうと軍用機であろうと、大部分は、様々な構成要素や部分組立品を組み立てること、はめ込むこと、及び取り付けることを含む手作業のプロセスである。このプロセス中には、様々な異なる種のプロセスが含まれる。例えば、留め具が取り付けられる間に構成要素を一時的に適切な位置に保持するプロセス、組み立て前に構成要素を他の構成要素に対してひとまず配置するプロセス、またはある地点に関して測定を行なってそれを記録するプロセスなどが含まれる。
【0013】
一般的に入手可能な粘着テープの使用が組立プロセス中に有益な様々な用途が見いだされている。粘着テープは、ホームセンターで見られる、且つ、塗装用品としてよく宣伝されている、いわゆる「塗装テープ」の一つとすることができる。そのテープは、表面に容易に貼り付けられ、その後容易に除去することができる粘着剤を特徴とする。耐久性であること、または高い表面接着性能を期待される他のテープとは異なり、この粘着剤は、粘着剤のかすを残さず、テープを貼り付けた表面を引っ張ることなく、且つ、細かくちぎることなく、後で容易且つきれいにテープを剥がすことができる。塗装テープとして広く知られている銘柄は、the blue−colored ScotchBlue(登録商標) Multi−Surface 2090 Painter’s Tapeである。このテープは、少なくとも3/4”から3”までの範囲の様々な幅で入手可能である。類似の特性と特徴を有する他の銘柄も入手可能である。様々な銘柄または種のテープにも、相対的に長い/短い除去時間に設計された類似の粘着剤が含まれている。
【0014】
従来の粘着テープを使用すれば、組み立て中に二つの部品を配置したり貼り付けたりすることが容易になる。しかしながら、粘着テープは、組み立てられた部品から除去されずに残ってしまうこともある。従来の粘着テープの検出は、テープをドーピングして、後方散乱X線画像撮影技術を使用した可視性を増すことにより高めることができる。ドープ粘着テープを使用する一つの実施形態が図1に示されており、それは、ドープ粘着テープの使用可能性を示すために、様々な適用例を示している。これらの適用例は説明的な性質を有し、様々な他の適用例が容易に実現可能である。
【実施例】
【0015】
図1には、三枚のパネルが示されている。パネル102は継ぎ目101で第二のパネル105と接しており、第三のパネル104はこの両者のパネルの上に配置されている。この第三のパネル104は三片のドープ粘着テープ108a〜108c(これらは、見本108e、108fと共に、集合的に108とも表記される)により適切な位置に保持される。第三のパネル104をその他のパネル102及び105に貼り付けるために留め具が取り付けられる間、第三のパネル104を適切な位置に保持するようドープ粘着テープ108を利用して、第三のパネル104を配置することが保護被覆として必要である。このような実装態様において、ドープ粘着テープ108はパネル104を位置づけて保持するために使用されることは明らかであり、ドープ粘着テープを剥がして再び貼付することにより、パネル104を容易に再配置することが可能になる。何らかの理由で必要であれば、ドープ粘着テープ108は新しいテープと交換できる。そのプロセスが完了した後は、ドープ粘着テープ108は剥がして捨てることができる。
【0016】
図1はドープ粘着テープの別の適用例も示している。ドープ粘着テープ108dはパネル102に貼り付けられており、印(「+」)107で示されている。ペン、マジック、または鉛筆を使用して、組み立て作業員は、この印を付けることができる。この印は、ドリルで穴を開けるため、留め金を取り付け付けるため、または何か他の目的のための位置を示すことができる。それゆえに、穴を穿孔する場合、パネルそのものの上に印を付けずに、手作業で位置付けを行うことができる。
【0017】
図1のドープ粘着テープ108fは、ドープ粘着テープのさらに別の適用例、すなわち間隔116の印を付けること示している。これはその他の構成要素の位置付け、例えばドリルで穴を開けるための位置付けなどに使用してもよい。最後に、ドープ粘着テープ108eは保護の手段として使用してもよい。この場合、図のチューブ110は開口端を有している。製造プロセス中に、埃、ごみ、屑及びその他の破片が作業エリアに存在するかもしれない。開口部の端をドープ粘着テープで覆うことは、そのような破片が開口部に入るのを防ぐための簡単な方法である。それゆえに、導管が例えば油圧パイプであれば、その油圧パイプの孔をドープ粘着テープで覆うことにより、破片などが油圧系統に入るのを防ぐことができる。他の穴または孔も同様の理由で覆うことができる。
【0018】
この場合も、組立プロセスが完了したら、ドープ粘着テープを除去しなければならない。組立後のドープ粘着テープの除去は重要である。多くの場合、ドープテープは容易に視覚的に検出して取り除くことができる。しかしながら、従属部品が組み立てられて大きな組立品を構成する場合、それまでは容易に目に見えたドープ粘着テープの断片が目視検査で見過ごされてしまうかもしれない。人的エラーまたは見過ごしにより、組立後にテープの断片が残ってしまう恐れがあり、その後も隠れたままとなりうる。ドープ粘着テープは、所望の組立完了品の部品ではないため、異物とみなされる。異物は様々なシステムの工程を妨げて安全上の問題を引き起こす恐れがあるので、航空機を組み立てる際にはすべての異物を除去することが重要である。異物は除去する前に確認しなければならないが、それらは異物検出(「FOD」)プロセスと呼ばれる。
【0019】
異物検出のための一つの手法では、後方散乱X線検出を使用する。このプロセスは、当技術分野では周知であり、X線で表面を照射して様々な角度で散乱させることを含んでいる。散乱したX線ビームは解析され、完成した組立品において三次元物体の非破壊検査を可能にする。参考のために、これは「後方散乱X線検査」プロセスと呼ばれる。異物検出後、異物は除去できる。
【0020】
このような検査システムの一つが図2に示される。図2には、後方散乱X線検査システム200において、人的検査では容易に目視できない空隙を有する部分組立品202が図示されている。部分組立品202には粘着テープ204の断片が残っている。部分組立品202は、X線生成器206により生成されるX線ビームにより、後方散乱X線検査プロセスにかけられる。後方散乱X線検査装置は一つまたは複数のコリメータ受信機207を備える。コリメータ受信機207は、散乱したX線を表面から受信する。多くの医療用画像処理システムとは異なり、X線は、物体を介して伝達されるのとは対照的に、検出される物体によって反射される。X線生成器206とそれが受信するデータの制御は、コントローラ208により行われ、このコントローラによってコンピュータディスプレー210上に表示画像が生成される。表示画像は通常は白黒画像であり、本実施形態においては組立品212のパネルのX線画像とテープ214が表示される。この表示は、異物、すなわちドープ粘着テープが存在しているかどうかを確認するために、技術者によって視覚的に解析される。いったん検出されると、ドープ粘着テープは除去できる。後方散乱X線プロセスにより、これまでは目視検査が不可能であり、且つ検出不能な異物が含まれる可能性があった構成要素の検査が可能になる。
【0021】
後方散乱X線検査システム200は、テネシー州オークリッジのNUCSAFE(登録商標)により製造された装置のような市販の装置であってよい。この装置は固定されていてもよいし、またはロボットアーム、構台、または他の可動な機構に取り付けられてもよい。そのような後方散乱X線装置は粘着テープを検出できる可能性があるが、テープそのものが僅か約5.4mil(1mil=1/1000”)の厚さのクレープ紙から作られているので、そのような装置により従来の塗装テープを検出することは難しい。それゆえに、比較的低い質量密度(質量密度=密度×厚さ)のテープは、下位の原子番号6を有し比較的低密度である炭素の量が高いことに加え、厚みが少ないため、検出が難しくなる。
【0022】
本明細書に記載される様々な実施形態によれば、後方散乱X線装置による粘着テープの検出は、テープの質量密度を修正することにより促進することができ、少なくとも2つの方法で達成可能となる。第一の手法では、典型的には上位の高原子番号の化学元素を有する相対的に高密度の物質を含むドーパントが使用されることにより、後方散乱X線検査に対し、従来の粘着テープに使用される物質よりも高い可視性が提供される。第二の手法は、ドーパントを付加することに加え、テープの厚みを大きくすることである。
【0023】
ドーパントを使用して質量密度とそれに続いてコンプトン散乱特性を変化させることで、後方散乱X線検査プロセスを使用する際に、周囲の物質及び構造と比較して粘着テープの可視性が増す。ドーパントは炭素より上位の原子番号を有する元素を含んでいてもよく、これにより後方散乱X線プロセスの検出が促進される(より重い成分はX線を異なった方法で散乱するため)。付加される成分は、好適には、相対的に安価で使用するのに安全なものが選ばれるべきである。それゆえに、金は上位の原子番号を有するが、その使用はコスト高であろう。一方、鉛は非常に上位の原子番号を有するが、それを扱う際に安全上の問題を引き起こす可能性がある。相対的に安価で、安全で、且つ粘着テープに包含しやすい構成要素の一つはヨウ素である。ヨウ素は原子番号53を有し、医療用画像においてX線造影画像処理用に一般的に使用されている。(医療のX線技術は対象物を介したX線の透過に基づいていることが多く、本明細書に開示される後方散乱技術とは異なることに注意されたい。それでも、ヨウ素はX線画像処理において造影剤として効果的である。)
【0024】
ヨウ素ベースのドーパントを粘着テープに包含することは、少なくとも2つの方法で可能になる。これら二つの方法を図3A及び図3Bに示す。図3Aには、ドープ粘着テープ300aの断面図が示される。テープ300aは紙層301aと粘着層303aとを含むバッキング層を有する。粘着層はここでは「サイジング」とも言い、粘着層を塗布するプロセスを「サイジングする」とも言う。図3A(及び図3B)では、粘着層と紙層の厚さの縮尺比は、必ずしも正確でない。粘着層はアクリル系または他の何らかの種類としてもよい。さらに、バッキング層は、布、プラスチック、または他の種の合成物質から生成することができる。図3Aに示されるように、この実施形態は従来の塗装テープに使用される粘着剤の特性を変更するものではない。紙層301aは、クレープ紙、または塗装テープを形成するために使用されるその他の種の紙に基づくものでもよい。しかしながら、紙層301aは、ヨウ素302aを包含するように修正されており、ヨウ素302aは紙層内に点で示されている。ドープ粘着テープの本実施形態では、製紙過程で紙にヨウ素が付加される。この結果、ヨウ素は紙の中に均一に散りばめられる。粘着層303aは従来の方法で付加されてもよい。
【0025】
ヨウ素を粘着テープに含む別の実施形態が図3Bに示される。図3Bに示すように、この実施形態のテープ300bも紙層301bと粘着層303bとを含む。本実施形態では、紙にはヨウ素が全く含まれていない。そうではなく、ヨウ素302bは粘着層303bに含まれている。ヨウ素302bは紙に塗布される前に粘着剤の中に混入でき、次いでヨウ素を含む粘着剤を従来の方法で紙層301bに塗布する(サイジングする)ことができる。
【0026】
ヨウ素を粘着テープに包含させるために、他の実施形態が可能である。例えば、テープ上で、ヨウ素、またはヨウ化カリウムを含むヨウ素ベースの溶液(または他の形態)を紙層301bに噴霧し、次いで粘着剤をヨウ素の層の上に塗布してもよい。この結果、紙、ヨウ素(またはヨウ素ベースの化合物)、及び粘着剤からなる積層構造が形成される。具体的には、ヨウ素は紙と粘着剤との間に位置付けられる。別の実施形態では、粘着層が紙層に適用された後で、ヨウ素を粘着層に塗布することもできる。この結果、紙、粘着剤及びヨウ素からなる積層構造が形成される。他の変形例が可能で、当業者であれば開発できるであろう。
【0027】
ヨウ素を含むドープ粘着テープを製造するプロセスが図4に示されている。プロセス400は、工程402において紙パルプスラリーを生産することから開始される一連の工程として示される。一つの実施形態では、ヨウ素、ヨウ化カリウム、またはその他のヨウ素ベースの添加物が、工程404でスラリーに付加される。この結果、ヨウ素が紙そのものに包含される。このとき溶液を混合することにより、紙スラリーにヨウ素が均等に分配される。次に、工程406においてスラリーは紙処理装置により処理され、粘着テープ内で紙層として使用されるクレープ紙(またはその他の種の紙)が形成される。一つの実施形態では、スラリーは、スラリー紙を半固体化する加熱回転ドラム上を通過し、半固体紙は、ドラムが回転するときに大きな刃を使用してドラムから削り落とされ、乾燥されて連続紙シートを形成する(工程408)。その厚さは、回転速度、スラリー混合物、及び熱により制御することができる。その他の要因が含まれてもよい。乾燥後、連続紙シートが完成し408、次いで工程410でサイジングされる。工程410はサイジング(例えば、液体粘着剤)をテープの上に塗布することを含み、これは、粘着剤を紙の片面に噴霧、配置、またはそうでなければ適用することにより可能になる。工程412で粘着剤を付加することにより、ヨウ素がサイジングへ含まれるようにしてもよい。この場合、ドープ粘着層が紙の上に形成される。次に、工程414では、テープが所望の幅に切断され、巻かれ、包装される。その結果、ドープ粘着テープが完成する416。
【0028】
図4に示すように、工程404及び工程412でヨウ素を付加することは任意である。ヨウ素は、1)紙スラリー(紙層にヨウ素を生成する)、2)サイジング(粘着層にヨウ素を生成する)、または3)両者の組み合わせへ付加することができる。付加されるヨウ素の量は変更することができ、紙層の厚さ、及びヨウ素が紙とサイジングの両者に付加されるかどうかによって決定してもよい。(例えば、現在の塗装テープと比べて)紙層が厚くなり、ヨウ素が紙と粘着剤の両者に付加されるなら、後方散乱X線検出技術により最も簡単に検出可能なテープを生産することができる。紙及び粘着剤の一方だけにヨウ素を付加し厚い紙層を形成することにより、前述のテープより僅かに検出性は劣るが、検出可能なテープを生産することができる。紙の厚さと付加されるヨウ素の量次第で、この変形例は、ドープ粘着テープ検出に利用できる。
【0029】
上記に挙げた質量密度を増加させるための他の手法は、ドープ粘着テープの厚さを大きくすることである。一つの実施形態では、粘着テープに使用される紙は、およそ100mil(0.1”)(たとえば、80−120mil)の厚みに作製される。他の実施形態では、テープは、たとえば少なくとも20または50mil程度にまで薄くすることができるか、あるいは適用されるドープの相対的なレベルに基づき、さらに薄くすることができる。テープは厚くすることもできるが、これに関しては製造及び処理のコストが増加するなどの現実的な検討事項が伴う。
【0030】
従来の粘着テープに使用される紙の密度が250kg/mまたは0.009lbs./inだと仮定すると、この紙の1平方インチの質量密度は、次の方程式(1a〜1c)により算出される。
質量密度=密度×厚さ (1a)
質量密度=0.009lbs./in×0.005in (1b)
質量密度=0.000045lbs./in (1c)
しかし、厚さが100milまで増加すると、質量密度は方程式(2a)と(2b)により算出される。
質量密度=0.009lbs./in×0.1in (2a)
質量密度=0.0009lbs./in (2b)
テープの厚みが増すと、質量密度は20倍増加する(これは、方程式2bを方程式1cで除すことにより導き出される)。テープの検出能力は質量密度に対して直線的に変化するので、テープが厚くなれば、このようなテープは、後方散乱X線検査プロセスを使用して20倍以上検出可能になる。この例は、テープを厚くすることにより検出性が向上することを示しているが、先に述べた検討事項から、テープを極めて厚くすることは現実的ではない。
【0031】
ヨウ素のような、紙スラリーまたは粘着剤に付加されるのに必要なドーパントの量は、次の計算により導き出される。紙の主要な化学元素が炭素だとすると、炭素の原子番号は6であり、ヨウ素の原子番号は53である。組み合わせた原子番号59と重み係数を使用すると、炭素は検出性全体の6/59またはおよそ10%に寄与し、ヨウ素は検出性全体の53/59またはおよそ90%に寄与する。したがって、一つの実施形態では、紙スラリーのヨウ素に対する部分比率は、9対1となる。すなわち、紙スラリー9に対してヨウ素が1とういうことである。
【0032】
同様に、粘着剤の主要な化学元素が原子番号1を有する水素だと仮定する。粘着剤は検出性全体の1/54またはおよそ2%に寄与し、ヨウ素は検出性全体の53/54またはおよそ98%に寄与する。したがって、ヨウ素に対する粘着剤の部分比率は9.8対0.2となる。したがって、一つの実施形態では、部分比率は、粘着物9.8に対してヨウ素0.2であり、これは粘着剤49に対してヨウ素1と等しい。
【0033】
上述の例は、一つの実施形態の紙スラリーと粘着剤に必要とされる、ヨウ素のような、ドーパントの量に関する指標を示している。ドーパントの量を増やせば検出性がさらに高まると考えられる。他の実施形態では、他の要因に応じて他の比率を使用してもよい。
【0034】
他の変形例も可能である。別の実施形態では、紙層は従来の紙テープと同じ厚さでよく、紙、粘着剤、またはその両方に付加されるヨウ素の濃度を高めてもよい。用途によっては、この変形例は、X線検出技術によるテープの検出性を高めるのに十分である。さらに、ドープ粘着テープの検出性は被検査物質に関係する。例えば、ドープテープはプラスチック製または金属製の部品の組み立てに使用される。ドーピングの量、塗布方法、及び後方散乱X線プロセスを使用する検出を促進するために必要な紙の厚さは、プラスチック製または金属製の部品が検査されているかどうかに基づいて変更してもよい。それゆえに、実施形態によっては、従来の塗装テープ(およそ5.4mil)に使用される紙の粘着剤にドーパントを塗布するだけで十分である。本明細書における「ドープ粘着テープ」への言及は、結果として得られるテープを、特定の製造プロセスまたは上述の実施形態の一つに限定するものではない。
【0035】
本明細書に開示されるドーパントはヨウ素であり、水または他の適切な担体に溶かした適切な濃度のヨウ化カリウムの形態とすることができる。他のヨウ素ベースの化合物を使用してもよい。さらに、他の化合物を、ヨウ素の代わりにまたはヨウ素に付加して使用し、後方散乱X線検査プロセスにより比較的不透明な効果を提供するドーパントを形成してもよい。例えば、臭素と塩素はヨウ素と類似の原子番号を有するが、それらの元素は様々な形で有害または高価である。必須ではないが、どんな化合物でも安全で安価なドーパントとして使用されることが望ましい。それゆえに、極めて反応性に富んでいるまたは高価であるという理由で、検出するのに効果的でも好まれない化合物がある。
【0036】
ドープ粘着テープが生産された後の、その使用について、図5のプロセスフローで詳しく説明する。図5は、産業組み立てプロセスでドープ粘着テープを使用するためのプロセス500を開示しており、必ずしも航空機の組み立てに限定されるものではない。工程502において、ドープ粘着テープは、必要に応じて構成要素に塗布される。これは、前述の適用例のいずれかを含んでもよいが、それらに限定されない。工程504では、必要な組み立て関連のタスクが実行される。これは、構成要素を互いに対して配置すること、テープ上に位置または間隔の印を付けること、開口部を覆うことなどである。通常は、組み立て工程に続くある地点でテープが除去されるべきであるが、常に行われるというわけではない。
【0037】
しかしながら、上述のように、ドープ粘着テープは、塗布された構成要素上に意図せずに残されてしまう場合がある。工程506では、後方散乱X線検出技術を使用して、異物破片の検査が実行される。工程508では、上述のように、テープのドープ性により、テープの検出が容易に行われる。テープが検出されると、工程510が実行され、テープが除去される。テープが検出されなければ、工程512でプロセスが完了する。
【0038】
ここまで、紙ベースのドープ粘着テープの使用に基づく概念を示した。しかしながら、上述の概念と原理は紙ベースのテープのみを使用することに限定されず、その基材が紙ではない物質から作られたテープにも適用できる。それゆえに、裏当ての基材が布、プラスチック、発泡体、または他の種類の物質からなる粘着テープも、上述の概念から利益を得ることができる。特に、布またはプラスチックの裏当ては、裏当てそのものにドーパントを包含するように形成するか、ドープ粘着剤を基材の上に塗付することができる。
【0039】
本明細書に記載の主題は例示のみを目的として提供されており、限定的なものであることを意図していない。図示及び説明された実施形態及び適用例に正確に従わずに、且つ特許請求の範囲に規定される本発明の精神と範囲から逸脱せずに、様々な修正例及び変更例が可能である。
【符号の説明】
【0040】
101 継ぎ目
102、104、105 パネル
107 印
108a〜108f ドープ粘着テープ
116 間隔
200 システム
202 部分組立品
204 粘着テープ
206 X線生成器
207 コリメータ受信機
212 組立品
214 テープ
300a、300b ドープ粘着テープ
301a、301b 紙層
302a、302b ヨウ素
303a、303b 粘着層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドープ粘着テープを製造する方法であって、
粘着テープを製造するための紙スラリーを生産すること、
紙スラリーを使用して連続紙シートを形成すること、
連続紙シートに粘着サイジングを塗布すること、
後方散乱X線検査によるドープ粘着テープの検出を促進するドーパントを塗布し、塗布されたドーパントは紙スラリーまたは粘着サイジングに付加されること、及び
塗布される粘着剤とともに一巻の粘着テープを形成すること
を含む方法。
【請求項2】
連続紙シートは20milより厚くする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ドーパントはヨウ素を含み、連続紙シートを形成する前に紙スラリーに付加される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
ドーパントはヨウ素を含み、粘着サイジングを連続紙シートに塗布する前に粘着サイジングに付加される、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
連続紙シートはクレープ紙とする、請求項2に記載の方法。
【請求項6】
ドーパントはヨウ化カリウムを含む、請求項3または4に記載の方法。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか一項に記載の方法により製造されるドープ粘着テープ。
【請求項8】
ドープ粘着テープを使用するための方法であって、
組み立てられている第一の構成要素に、後方散乱X線検査プロセスによる検出を促進するドーパントを含むドープ粘着テープを塗布すること、
第一の構成要素を第二の構成要素と共に組み立てること、及び
組み立てられた第一の構成要素と第二の構成要素とを後方散乱X線検査プロセスにかけること
を含む方法。
【請求項9】
ドープ粘着テープが第一の構成要素の上に存在するかどうかを判定すること、及び
ドープ粘着テープが第一の構成要素の上に存在する場合、ドープ粘着テープを第一の構成要素から除去すること
をさらに含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
第一の構成要素と第二の構成要素が組み立てられた後に、ドープ粘着テープは外側からは簡単に見えなくする、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
ドープ粘着テープが第一の構成要素の上に存在するかどうかを判定することが、後方散乱X線検査装置を使用して第一の構成要素のX線画像を視覚的に分析することを含む、請求項10に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−14761(P2013−14761A)
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−134272(P2012−134272)
【出願日】平成24年6月13日(2012.6.13)
【出願人】(500520743)ザ・ボーイング・カンパニー (773)
【氏名又は名称原語表記】The Boeing Company
【Fターム(参考)】