説明

後生的に沈黙化されたガン関連遺伝子のゲノムスクリーニング

【課題】ガン細胞で後生的に沈黙化された遺伝子、例えば、メチル化により沈黙化された遺伝子の同定方法、遺伝子発現の後生的な沈黙化を検出することによるガンの同定方法、結腸直腸ガンや胃ガンを患う被検体の治療方法などの提供。又、該方法を実践するための試薬の提供。
【解決手段】後生的に沈黙化された遺伝子の発現を再活性化させる少なくとも一つの薬剤と接触させたガン細胞で発現されたRNAには対応するが、ガン細胞に対応する正常細胞で発現されたRNAには対応しない核酸を含む核酸のサブトラクション産物と、アレイの相補的なヌクレオチド配列との核酸のサブトラクション産物の選択的ハイブリダイゼーションに適した条件下で接触させ、アレイのヌクレオチド配列の部分母集団との核酸のサブトラクション産物の選択的ハイブリダイゼーションを検出することにより、ガンと関連する後生的に沈黙化された遺伝子が同定される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2002年3月7日付で出願した米国特許出願第60/362,422号の米国特許法第119条(e)項(1)号に基づく優先権の恩典を主張するものであり、その内容の全体が参照として本明細書に組み入れられる。
【0002】
本発明は部分的に、米国立ガン研究所から与えられた助成金番号CA54396の下で政府の支援により実施された。米国政府は本発明において一定の権利を有する。
【0003】
発明の分野
本発明は一般には、ガン細胞で後生的に沈黙化された遺伝子の検出方法に関し、より具体的には、結腸直腸ガン細胞および胃ガン細胞を同定するのに有効なゲノムスクリーニングに関する。
【背景技術】
【0004】
背景情報
ガンは一般に、遺伝子の突然変異のような遺伝的変化が原因であると考えられているが、DNA配列の突然変異を引き起こすことのない、後生的な機構でも同じく、ガンが引き起こされることが明らかとなった。最も多く見られる後生的な変化には、遺伝子配列、特に5'上流の遺伝子調節配列のメチル化による遺伝子発現の沈黙化が含まれる。CpGジヌクレオチドの、特にCpGに富む領域(CpGアイランド)の、グアニンの5'側に位置するシトシン残基のメチル化は、より高等な真核生物では遺伝子発現の正常な調節に関与していることが多い。例えば、CpGアイランドの広範囲のメチル化は、選択された刷込み遺伝子、ならびに女性の不活性化X染色体上の遺伝子の転写不活化と関連している。通常はメチル化されていないCpGアイランドの異常なメチル化が同様に、不死化および形質転換細胞でも認められており、ヒトのガンで確定された腫瘍抑制遺伝子の転写不活化と関連付けられている。
【0005】
遺伝子発現の消失または欠陥のある遺伝子産物の発現を引き起こす突然変異を含む、ガン関連遺伝子の変化、および遺伝子転写のメチル化による沈黙化のような後生的な機構は、細胞が正常な増殖制御を喪失しやすいかどうか、従って、潜在的ガン細胞であるかどうかを決定するのに有効な指標となる。例えば、BRCA1遺伝子の突然変異は、乳ガンと関連付けられている。従って、例えば、乳ガンの家族歴がある女性からの細胞を用いて、その女性に、乳ガンの指標であるBRCA1の突然変異があるかどうか決定するため、診断学的検査を行うことができる。前立腺特異抗原(PSA)は、指標(この場合は前立腺ガンに対する)の別の例である。PSAの発現を引き起こす欠陥も体内におけるPSAの通常の機能も知られていないが、それでもなおPSAは、前立腺ガンにかかりやすい男性のまたは効果的な治療を施すことができるようなその疾患のごく初期段階での同定が可能とされることから、有用なガンの指標となる。最近になって、サイトカインシグナル伝達サプレッサー/サイトカイン誘導性SH2タンパク質ファミリーメンバーである、SOCS-1遺伝子の転写のメチル化による沈黙化が、肝細胞ガン、多発性骨髄腫、および急性白血病を含む、種々のガンで発見された。従って、SOCS-1遺伝子のメチル化状態を検出することを対象としたスクリーニング試験により、そのようなガンに関する診断情報が提供される可能性がある。
【0006】
ガンは多くの場合、疾患がかなり進行するまで、臨床的な徴候または症状を現さない沈黙の疾患であるため、ガンにかかりやすい個体の同定を可能とする、またはさらに初期段階でのガンの検出を可能とする指標の利用可能性または利用は、大きな利益となり得る。残念ながら、ほとんどのガンに対して、そのような指標を利用することができない。従って、多くのガン患者は、ガンが根治療法を必要とする段階となるまで、または治療不可能となるまで、医療援助を求めない。従って、ガン細胞を検出するために利用できる指標が必要とされている。本発明により、この必要性が満たされかつさらなる利点が提供される。
【発明の概要】
【0007】
発明の概要
本発明は、ガンと関連する、後生的に沈黙化された遺伝子、例えば、メチル化により沈黙化された遺伝子の同定方法に関する。一つの態様として、本発明は、少なくとも一つのガンと関連する、少なくとも一つの後生的に沈黙化された遺伝子の同定方法に関する。そのような方法は、例えば、ゲノムを代表するヌクレオチド配列のアレイを、後生的に沈黙化された遺伝子の発現を再活性化させる少なくとも一つの薬剤と接触させたガン細胞で発現されたRNAに対応するが、ガン細胞に対応する正常細胞で発現されたRNAに対応しない核酸を含む核酸のサブトラクション産物と、アレイの相補的なヌクレオチド配列との核酸のサブトラクション産物の選択的ハイブリダイゼーションに適した条件の下で接触させる段階; およびアレイのヌクレオチド配列の部分母集団との核酸のサブトラクション産物の選択的ハイブリダイゼーションを検出する段階により行うことができ、その際にガン細胞に対応する正常細胞で発現されたRNAに対応する核酸は、選択的ハイブリダイゼーションに適したそのような条件の下で、ヌクレオチド配列の部分母集団にハイブリダイズせず、それによってアレイのヌクレオチド配列の部分母集団に選択的にハイブリダイズする核酸のサブトラクション産物が、ガン細胞の後生的に沈黙化された遺伝子に相当し、その結果、少なくとも一つのガンと関連する、少なくとも一つの後生的に沈黙化された遺伝子が同定される。
【0008】
後生的に沈黙化された遺伝子の発現を再活性化させる薬剤は、例えば、メチル基転移酵素阻害剤(例えば、5-アザ-2'-デオキシシチジン; DAC)、ヒストン脱アセチル化酵素阻害剤(例えば、トリコスタチンA; TSA)、またはDACおよびTSAを組み合わせたような薬剤の組み合わせのような、任意のそのような薬剤とすることができる。従って、本態様の一つの局面として、核酸のサブトラクション産物には、DACとまたはTSAと接触させたガン細胞で発現されたRNAに対応する核酸が含まれる。別の局面として、核酸のサブトラクション産物には、DACおよびTSAと接触させたガン細胞で発現されたRNAに対応する核酸が含まれる。
【0009】
後生的に沈黙化されたガン関連遺伝子は、表1に掲載の遺伝子により本明細書に例示される。例えば、ガン細胞のDACとの接触により再活性化され得る後生的に沈黙化された遺伝子、即ち、メチル化により沈黙化された遺伝子は、PTGS2、CDKN2A、TIMP3、S100A10、SFRP1、SFRP2、SFRP4、SFRP5、CXX1、SEZZ6L、KIAA0786、TIMP2、PCDH8、FOLH1、SNRPN、HOXA1、GR03、DLX7により例示される。同様に、ガン細胞のDACおよびTSAとの接触により再活性化され得る後生的に沈黙化された遺伝子は、POR1、MBNL、TRADD、PDIP、RAD23B、RPL13、GNAI2、PPP1R21A、FPGT、TRIM32、またはその組み合わせにより例示される。
【0010】
本発明の方法により、例えば、一つまたは複数のガン腫および/または肉腫を含む、一つまたは複数のガンと関連する、後生的に沈黙化された遺伝子を同定することができる。そのような方法は、結腸直腸ガンと、胃ガンと、ならびに結腸直腸ガンおよび胃ガンと関連する、後生的に沈黙化された遺伝子を同定することにより本明細書に例示される。
【0011】
別の態様として、本発明は、少なくとも一つのガンと関連する、少なくとも一つのメチル化沈黙化遺伝子の同定方法に関する。そのような方法は、例えば、ゲノムを代表するヌクレオチド配列のアレイを、脱メチル化剤と接触させたガン細胞で発現されたRNAに対応する核酸を含むが、ガン細胞に対応する正常細胞で発現されたRNAに対応する核酸を含まない核酸のサブトラクション産物と、アレイの相補的なヌクレオチド配列との核酸のサブトラクション産物の選択的ハイブリダイゼーションに適した条件の下で接触させる段階; およびアレイのヌクレオチド配列の部分母集団との核酸のサブトラクション産物の選択的ハイブリダイゼーションを検出する段階により行うことができ、その際にガン細胞に対応する正常細胞で発現されたRNAに対応する核酸は、選択的ハイブリダイゼーションに適した前記の条件の下で、ヌクレオチド配列の部分母集団にハイブリダイズせず、それによってアレイのヌクレオチド配列の部分母集団に選択的にハイブリダイズする核酸のサブトラクション産物が、ガン細胞のメチル化沈黙化遺伝子に相当し、その結果、少なくとも一つのガンと関連する、少なくとも一つのメチル化沈黙化遺伝子が同定される。
【0012】
ガン細胞のRNAに対応する核酸は、DNA(例えば、cDNA)またはRNA(例えば、cRNA)とすることができる。一般に、細胞のRNAに対応する核酸は、例えば、放射性同位体、常磁性同位体、発光化合物、化学発光化合物、蛍光化合物、金属キレート、酵素、酵素に対する基質、受容体、または受容体に対するリガンドで検出可能に標識される;または例えば、アレイのヌクレオチド配列への核酸のハイブリダイゼーションが検出され得るように、検出可能に標識されたプローブを用いて検出可能である。
【0013】
本発明の方法によれば、少なくとも1つ(例えば、1、2、3、4、5、またはそれ以上)のメチル化沈黙化遺伝子を、少なくとも1つ(例えば、1、2、3、またはそれ以上)のガンと関連付けることができる。ガンは、例えば、一つまたは複数の特定の種類のガン、例えば、消化管/胃腸管ガン、肝臓ガン、皮膚ガン、乳ガン、卵巣ガン、前立腺ガン、リンパ腫、白血病、腎臓ガン、肺ガン、筋肉腫、骨肉腫、または脳腫瘍を含む、ガン腫または肉腫とすることができる。一つの例として、メチル化により沈黙化されたPTGS2、CDKN2A、TIMP3、S100A10、SFRP1、CXX1、SEZZ6L、KIAA0786、TIMP2、PCDH8、FOLH1、SNRPN、HOXA1、GR03、およびDLX7遺伝子が、単独でまたは組み合わせで、結腸直腸ガン、胃ガン、または結腸直腸ガンおよび胃ガンの両方と関連付けられるようにして同定された。別の例として、SFRP1、SFRP2、SFRP4、SFRP5遺伝子を含む、遺伝子ファミリーメンバーが、単独でまたは組み合わせで、結腸直腸ガンおよび/または胃ガンと関連するメチル化沈黙化遺伝子として同定された。
【0014】
本発明は同様に、調節不能な増殖を示すまたは示す素因を呈する細胞を同定するための方法に関する。そのような方法は、例えば、試験細胞において、表1に記載の少なくとも一つの遺伝子の後生的な沈黙化、またはその組み合わせを検出する段階、それにより試験細胞を、調節不能な増殖を示すまたは示す素因を呈する細胞と同定する段階により行うことができる。例えば、後生的な沈黙化遺伝子は、PTGS2、CDKN2A、TIMP3、S100A10、SFRP1、SFRP2、SFRP4、SFRP5、CXX1、SEZZ6L、KIAA0786、TIMP2、PCDH8、FOLH1、SNRPN、HOXA1、GR03、DLX7、POR1、MBNL、TRADD、PDIP、RAD23B、RPL13、GNAI2、PPP1R21A、FPGT、もしくはTRIM32遺伝子、またはそのような遺伝子の組み合わせとすることができる。調節不能な増殖を示す、または示す素因を呈する細胞は、新生物細胞とすることができ、これは例えば、胃腸ポリープの細胞のような前ガン状態の細胞とすることができる、またはガン細胞、例えば、結腸直腸ガン細胞もしくは胃ガン細胞のようなガン腫細胞、または肉腫細胞とすることができる。
【0015】
一つの態様として、後生的な沈黙化は、メチル化による沈黙化であり、調節不能な増殖を示すまたは示す素因を呈する細胞を同定するための方法は、メチル化による沈黙化を検出することにより行われる。メチル化による沈黙化は、例えば、CpGジヌクレオチドのメチル化されるシトシン残基を含む5'調節領域中の認識部位を切断する、メチル化感受性制限エンドヌクレアーゼと、遺伝子を含む核酸の5'調節領域を含む領域を接触させることにより検出することができ、核酸の切断により試験細胞の遺伝子のメチル化による沈黙化が示される。例えば、メチル化感受性制限エンドヌクレアーゼは、Acc III、Ban I、BstN I、Msp I、またはXma Iである。或いは、またはさらに、メチル化による沈黙化は、CpGジヌクレオチドのメチル化されるシトシン残基を含む5'調節領域中の認識部位を、CpGジヌクレオチドのシトシン残基がメチル化されていない場合に切断する、メチル化感受性制限エンドヌクレアーゼと、遺伝子を含む核酸の5'調節領域を含む領域を接触させることにより検出することができ、核酸が切断されないことにより試験細胞の遺伝子のメチル化による沈黙化が示される。例えば、メチル化感受性制限エンドヌクレアーゼはAcc II、 Ava I、BssH II、BstU I、Hpa II、またはNot Iである。
【0016】
遺伝子のメチル化による沈黙化は同様に、試験細胞の遺伝子を含む核酸の5'調節領域を、非メチル化シトシン残基またはメチル化シトシン残基のどちらかを選択的に修飾する化学試薬と接触させて、その接触により産生される産物を検出することにより検出することができ、その際に産物により遺伝子のCpGジヌクレオチドのシトシン残基のメチル化が示され、それによって試験細胞の遺伝子のメチル化による沈黙化が検出される。例えば、産物は、電気泳動法、クロマトグラフィー法、質量分析法、またはそのような方法の組み合わせにより検出することができる。
【0017】
本発明の一つの局面として、化学試薬はヒドラジンであり、それにより遺伝子のヒドラジン処理5'調節領域を産生させる。そのような方法は、遺伝子を含む核酸の断片を含む産物を発生させるため、ヒドラジン処理5'調節領域を、ヒドラジン修飾シトシン残基を切断する試薬と接触させる段階; 分子量に応じて断片を分離する段階; 遺伝子の5'調節領域中でシトシン残基を含むことが知られている位置のギャップを検出する段階をさらに含むことができ、その際にギャップにより遺伝子のCpGジヌクレオチドのシトシン残基のメチル化が示され、それによって試験細胞の遺伝子のメチル化による沈黙化が検出される。ヒドラジン修飾シトシン残基を切断する試薬は、例えば、ピペリジンとすることができる。
【0018】
本方法の別の局面として、化学試薬には重亜硫酸イオンが含まれ、それにより遺伝子の5'調節領域中の非メチル化シトシン残基が重亜硫酸塩修飾シトシン残基に変換される。そのような方法は、重亜硫酸塩修飾シトシン残基がウラシル残基に変換されるように、重亜硫酸イオン処理遺伝子をアルカリ条件に曝す段階; および試験細胞の重亜硫酸イオン処理遺伝子の5'調節領域中のウラシル残基の量または分布を検出する段階をさらに含むことができ、その際に対応する重亜硫酸イオン処理非メチル化遺伝子のアルカリ条件への暴露後のウラシル残基の量または分布と比較した、試験細胞由来の遺伝子の5'調節領域中のウラシル残基の量または分布の減少により、遺伝子の5'調節領域中のCpGジヌクレオチドのシトシン残基のメチル化が示され、それによって試験細胞の遺伝子のメチル化による沈黙化が検出される。ウラシル残基の量または分布は、例えば、アルカリ条件への暴露後の遺伝子の重亜硫酸塩修飾5'調節領域のヌクレオチド配列を決定することにより検出することができる。或いは、またはさらに、重亜硫酸イオン処理遺伝子配列をアルカリ条件への暴露後に、ウラシル残基を含む遺伝子の5'調節領域に選択的にハイブリダイズするオリゴヌクレオチドと接触させて、オリゴヌクレオチドの選択的ハイブリダイゼーションを検出することにより、ウラシル残基の量または分布を検出することができる。
【0019】
そのような方法で有用なオリゴヌクレオチドは、例えば、配列番号:23、24、111、112、115、116、119、120、125、126、129、130、133、134、139、140、143、または144に記載のヌクレオチド配列を有するオリゴヌクレオチドとすることができる。検出を容易にするため、一つの局面として、オリゴヌクレオチドは検出可能な標識を含むことができ、従って標識を検出することにより選択的ハイブリダイゼーションを検出する手段が得られる。検出可能な標識は、例えば、放射性同位体、常磁性同位体、発光化合物、化学発光化合物、蛍光化合物、金属キレート、酵素、酵素に対する基質、受容体、または受容体に対するリガンドを含む、好都合に検出可能な任意の標識とすることができる。別の局面として、オリゴヌクレオチドをプライマー伸長反応のための基質とすることができ、その際には、選択的ハイブリダイゼーションの検出にはプライマー伸長反応の産物の検出が含まれる。例えば、オリゴヌクレオチド(プライマー)は、SFRP1、SFRP2、SFRP4、またはSFRP5遺伝子のメチル化領域を含むヌクレオチド配列に選択的にハイブリダイズしかつその伸長を可能とすることができる、配列番号: 23、24、111、112、115、116、119、120、125、126、129、130、133、134、139、140、143、または144に記載のヌクレオチド配列を有するオリゴヌクレオチドのようなメチル化特異的プライマーとすることができる。
【0020】
ウラシル残基の量または分布は同様に、例えば、増幅に適した条件の下で、遺伝子の5'調節領域を、フォワード・プライマーおよびリバース・プライマーを含む増幅プライマー対と接触させることにより検出することができ、その際にプライマー対の少なくとも一つのプライマーは、ウラシル残基を含む5'調節領域のヌクレオチド配列に選択的にハイブリダイズするオリゴヌクレオチドを含み、増幅産物の産出によって、遺伝子の5'調節領域中のCpGジヌクレオチドのシトシン残基のメチル化が示され、その結果、試験細胞の遺伝子のメチル化による沈黙化が検出される。そのような方法に有用な増幅プライマー対は、表2および3に例示されており、そして例えば、SFRP1、SFRP2、SFRP4、またはSFRP5遺伝子の5'調節領域のメチル化を検出するのに有用なメチル化特異的プライマーである、配列番号:23および24、配列番号:111および112、配列番号:115および116、配列番号:119および120、配列番号:125および126、配列番号:129および130、配列番号:133および134、配列番号:139および140、または配列番号:143および144に記載のプライマー対を含む。
【0021】
さらに、ウラシル残基の量または分布は、増幅に適した条件の下で、遺伝子の5'調節領域を、フォワード・プライマーおよびリバース・プライマーを含む増幅プライマー対と接触させることにより検出することができ、その際にプライマー対の両プライマーは、シトシン残基を含む5'調節領域のヌクレオチド配列に選択的にハイブリダイズするが、ウラシル残基を含む5'調節領域の対応ヌクレオチド配列にハイブリダイズせず、そして増幅産物の産出によって、遺伝子の5'調節領域中のCpGジヌクレオチドのシトシン残基がメチル化されていないことが示され、その結果、試験細胞の遺伝子のメチル化による沈黙化が検出される。そのような方法に有用な増幅プライマー対は、表2および3に例示されており、そして例えば、SFRP1、SFRP2、SFRP4、またはSFRP5遺伝子の5'調節領域がメチル化されていないのを検出するのに有用な非メチル化特異的プライマーである、配列番号:25および26、配列番号:113および114、配列番号:117および118、配列番号:121および122、配列番号:127および128、配列番号:131および132、配列番号:135および136、配列番号:141および142、または配列番号:145および146に記載のプライマー対を含む。
【0022】
ウラシル残基の量または分布は同様に、増幅に適した条件の下で、遺伝子の5'調節領域を、第一増幅プライマー対および第二増幅プライマー対と接触させることにより検出することができ、第一増幅プライマー対は、フォワード・プライマーおよびリバース・プライマーを含み、第一プライマー対の少なくとも一つのプライマーは、ウラシル残基を含む遺伝子の5'調節領域のヌクレオチド配列に選択的にハイブリダイズするオリゴヌクレオチドを含み、そして第二増幅プライマー対は、フォワード・プライマーおよびリバース・プライマーを含み、第二プライマー対の両プライマーは、シトシン残基を含む遺伝子の5'調節領域のヌクレオチド配列に選択的にハイブリダイズするが、ウラシル残基を含む遺伝子の5'調節領域の対応ヌクレオチド配列にハイブリダイズせず、そして第一プライマー対により産出される増幅産物が、もしあれば、第一の長さを有し、そして第二プライマー対により産出される増幅産物が、もしあれば、第一の長さと異なる第二の長さを有し、増幅産物の長さによって、ウラシル残基および、従って、遺伝子の5'調節領域中のCpGジヌクレオチドのシトシン残基のメチル化が示され、その結果、試験細胞の遺伝子のメチル化による沈黙化が検出される。
【0023】
ガン関連遺伝子のメチル化による沈黙化は同様に、試験細胞を脱メチル化剤と接触させる段階、および遺伝子によりコードされるRNAの発現増加を、脱メチル化剤と接触されていない試験細胞のRNAの発現レベルと比較して検出する段階により同定することができる。そのような方法は、調節された増殖を示す対応細胞、または対応細胞の抽出物において、遺伝子の5'調節領域のCpGアイランド中のCpGジヌクレオチドのシトシン残基の、もしあれば、メチル化を検出する段階をさらに含むことができる。脱メチル化剤は、5-アザ-2'-デオキシシチジンのようなメチル基転移酵素阻害剤とすることができる。RNAの発現増加は、例えば、ノザンブロット解析、逆転写-ポリメラーゼ連鎖反応法、または本明細書に開示のヌクレオチド配列からなるアレイへの選択的ハイブリダイゼーションを含む、RNAを検出するための任意の方法により検出することができる。従って、本発明の方法は、高速大量処理の形式で実施することができ、その際に試験細胞、または試験細胞の抽出物には、複数の、試験細胞、もしくは試験細胞の抽出物、またはその組み合わせのうちの一つが含まれ; そして複数の、試験細胞、または試験細胞の抽出物のそれぞれが、同じもしくは異なる、またはその組み合わせである。本発明を実践する高速大量処理方法によれば、試験細胞、または試験細胞の抽出物は、アレイ(これはアドレス可能なアレイとすることができる)の、マイクロチップ、ガラススライド、またはビーズのような固体支持体上に配列することができる。
【0024】
本発明の方法により調べられる試験細胞は、細胞培養から得た細胞、例えば、樹立細胞株、または初代培養細胞とすることができる、または被検体、例えば、ヒトの被検体から得た試料を含むことができる。従って、試料は、臓器試料、組織試料、または細胞試料、例えば、消化管/胃腸管組織試料、肝臓試料、皮膚試料、リンパ節試料、腎臓試料、肺試料、筋肉試料、骨試料、または脳試料とすることができる。例えば、胃腸管試料には、胃試料、小腸試料、結腸試料、直腸試料、またはその組み合わせが含まれ得る。試料には同様に生体液試料、例えば、骨髄、血液、血清、リンパ液、脳脊髄液、唾液、喀痰、大便、尿、または射精液試料も含まれ、これらには、そのなかに細胞または細胞の産物、特に核酸が含まれ得る。
【0025】
本発明は同様に、少なくとも一つのガン関連遺伝子の転写の後生的な沈黙化を示す、細胞の調節不能な増殖を減少させるかまたは阻害する方法に関する。そのような方法は、例えば、細胞中の後生的に沈黙化された遺伝子によりコードされるポリペプチドの発現を回復させる段階、それによって細胞の調節不能な増殖を減少させるかまたは阻害する段階により実践することができる。例えば、細胞を脱メチル化剤(例えば、メチル基転移酵素阻害剤)、ヒストン脱アセチル化酵素阻害剤、またはその組み合わせと接触させることにより、その発現を回復させることができる。
【0026】
一つの態様として、後生的に沈黙化された遺伝子は、メチル化により沈黙化された遺伝子であり、その方法には、細胞を少なくとも一つの脱メチル化剤、例えば、DACと接触させる段階が含まれる。一つの局面として、細胞を脱メチル化剤とインビトロで、例えば、培養液または細胞の生存を助長するその他の媒体中で接触させることができる。必要に応じて、脱メチル化剤と接触させた細胞をさらに、被検体に投与することができる。別の局面として、調節不能な増殖を示す細胞が薬剤と接触するように、薬剤を被検体に投与することができる。
【0027】
別の態様として、その方法には、ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを細胞に導入する段階が含まれ、それによってポリペプチドがポリヌクレオチドから発現され、その結果、細胞中のポリペプチドの発現を回復させる。ポリヌクレオチドは、ベクター、例えば、ウイルス・ベクター中に含有させることができる、および/またはポリヌクレオチドの細胞への導入を促進するマトリクス、例えば、リポソームもしくは超微粒気泡の中に製剤化することができるが、それが必要とされるわけではない。細胞をポリヌクレオチドとエクスビボで接触させることにより、ポリヌクレオチドを細胞に導入することができ、その場合には、ポリヌクレオチドを含む細胞を被検体に投与することができるが、それが必要とされるわけではない。細胞をポリヌクレオチドとインビボで接触させることにより、ポリヌクレオチドを細胞に導入することもできる。
【0028】
後生的に沈黙化された遺伝子は、本明細書に開示の方法を用い、そして特定のガン細胞の種類のような特定の細胞の種類を調べて同定される任意の遺伝子とすることができる。結腸直腸ガン細胞で後生的に沈黙化された遺伝子は、表1に、そのGenBankアクセッション番号が掲載された遺伝子により本明細書に例示される。表1の遺伝子の一部を含むポリヌクレオチド配列は、例えば、表3に記載の増幅プライマー対(配列番号:149〜296; 例えば、配列番号:149および150、または配列番号:151および152など)を用いて、結腸直腸ガン細胞から得られる核酸のRT-PCRにより得ることができる。結腸直腸ガン細胞および/または胃ガン細胞で後生的に沈黙化された遺伝子は、検出可能な基底発現を示さず、かつDACで処理すると再発現するが、TSAでは再発現しない、PTGS2、CDKN2A、TIMP3、S100A10、SFRP1、CXX1、SEZZ6L、KIAA0786、TIMP2、PCDH8、FOLH1、およびSNRPN遺伝子; 基底発現レベルがDACで処理すると増加するが、TSAでは増加しない、HOXA1、GR03、およびDLX7遺伝子; ならびにTSA単独で上方制御される一方で、その基底発現およびDACによる上方制御が遺伝子間で異なる、POR1、MBNL、TRADD、PDIP、RAD23B、RPL13、GNAI2、PPP1R21A、FPGT、およびTRIM32遺伝子により例示される。
【0029】
本発明はさらに、患者のガン細胞が、少なくとも一つの遺伝子の発現の後生的な沈黙化を示す、ガン患者を治療するための方法に関する。そのような方法は、例えば、患者のガン細胞の一つまたは複数の後生的な沈黙化遺伝子の発現を回復させる段階により行うことができる。例えば、少なくとも一つの後生的な沈黙化遺伝子が、メチル化沈黙化遺伝子である場合、被検体のガン細胞のメチル化沈黙化遺伝子/遺伝子(複数)の発現を回復させるのに十分な量の脱メチル化剤を被検体に投与することにより、患者を治療することができる。或いは、またはさらに、患者のガン細胞での少なくとも一つのポリペプチドの発現に十分な条件の下で、一つまたは複数の後生的な沈黙化遺伝子によりコードされる、少なくとも一つのポリペプチドをコードする少なくとも一つのポリヌクレオチドを被検体に投与することにより、患者を治療することができる。ポリヌクレオチドを患者に投与する場合、ポリヌクレオチドは、ベクター(例えば、ウイルス・ベクター)、好ましくは発現ベクター中に含有させることができる、および/または標的ガン細胞によるポリヌクレオチドの取り込みを促進するマトリクス中に(例えば、リポソーム中に)製剤化することができる。
【0030】
本発明の方法により治療されるガンは、例えば、ガン腫または肉腫を含む、任意の種類のガンとすることができる。例えば、ガンが結腸直腸ガン、胃ガン、または結腸直腸ガンかつ胃ガンである場合、PTGS2、CDKN2A、TIMP3、S100A10、SFRP1、CXX1、SEZZ6L、KIAA0786、TIMP2、PCDH8、FOLH1、SNRPN、HOXA1、GRO3、DLX7、POR1、MBNL、TRADD、PDIP、RAD23B、RPL13、GNAI2、PPP1R21A、FPGT、TRIM32遺伝子、そのファミリーメンバー、またはその組み合わせを含む、一つまたは複数の後生的な沈黙化遺伝子の発現を回復させることにより、患者を治療することができる。SFRP1、SFRP2、SFRP4、およびSFRP5遺伝子を含む、SFRP遺伝子により、結腸直腸ガン細胞、胃ガン細胞、または両方で、遺伝子ファミリーの一つまたは複数が後生的に沈黙化されたその例が示される。
【0031】
本発明は同様に、ガン患者を治療するための治療方針を選択するための方法に関する。そのような方法は、例えば、本明細書に開示の方法に従って、ガンと関連する少なくとも一つのメチル化沈黙化遺伝子を同定する段階(即ち、ゲノムを代表するヌクレオチド配列のアレイを、核酸のサブトラクション産物と接触させる段階およびアレイのヌクレオチド配列の部分母集団との核酸のサブトラクション産物の選択的ハイブリダイゼーションを検出する段階); および患者のガン細胞で同定されたメチル化沈黙化遺伝子の一つまたは複数の発現を回復させるのに有効な薬剤を選択する段階により行うことができる。例えば、選択される薬剤は、同定されたメチル化沈黙化遺伝子をコードするポリヌクレオチド、例えば、PTGS2、CDKN2A、TIMP3、S100A10、SFRP1、CXX1、SEZZ6L、KIAA0786、TIMP2、PCDH8、FOLH1、SNRPN、HOXA1、GRO3、もしくはDLX7遺伝子、そのような遺伝子のファミリーメンバー、またはそのような遺伝子の組み合わせによりコードされるポリペプチドをコードするポリヌクレオチドとすることができる。メチル化沈黙化遺伝子の発現を回復させるために選択される薬剤は同様に、DACのような脱メチル化剤とすることもできる。
【0032】
従って、本発明はさらに、ガンと関連する細胞が少なくとも一つのメチル化沈黙化遺伝子を含む、結腸直腸ガン、胃ガン、または両方に苦しむ被検体の治療方法に関する。そのような方法は、例えば、少なくとも一つのメチル化沈黙化遺伝子の発現を回復させる薬剤の量を、ガンと関連する細胞のメチル化沈黙化遺伝子の発現を回復させるに足る被検体に投与する段階により行うことができる。その薬剤は、少なくとも一つのメチル化沈黙化遺伝子をコードするポリヌクレオチド、例えば、PTGS2、CDKN2A、TIMP3、S100A10、SFRP1、CXX1、SEZZ6L、KIAA0786、TIMP2、PCDH8、FOLH1、SNRPN、HOXA1、GR03、および/もしくはDLX7遺伝子、そのファミリーメンバーによりコードされるポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、またはその組み合わせとすることができる; またはDACのような脱メチル化剤とすることができる。結腸直腸ガン、胃ガン、または両方に苦しむ被検体を治療するのに有効な薬剤を、エクスビボでそのガンの細胞と接触させることができ、その後、その細胞を患者に投与して戻すことができる; または薬剤を患者のガン細胞部位に投与することができる。
【0033】
本発明はさらに、配列番号:1〜296のいずれか一つに記載のヌクレオチド配列を有する、単離されたオリゴヌクレオチドに、ならびに配列番号:1〜296に記載の単離されたオリゴヌクレオチドの少なくとも二つを含む、複数の単離されたオリゴヌクレオチドに関する。さらに、本発明は、表1に掲載の遺伝子のヌクレオチド配列を増幅できる、配列番号:1〜296に記載のフォワード・プライマーおよびリバース・プライマーを含む増幅プライマー対(例えば、配列番号:1および2、配列番号:3および4、配列番号:5および6など)に関する。一つの局面として、本発明の増幅プライマー対は、核酸のメチル化5'調節領域を特異的に増幅するために使用することができ、そのような増幅プライマー対は、メチル化5'調節領域を有するSFRPファミリーメンバーを増幅できる、配列番号:23および24、配列番号:111および112、配列番号:115および116、配列番号:119および120、配列番号:125および126、配列番号:129および130、配列番号:133および134、配列番号:139および140または配列番号:143および144により例示される。別の局面として、本発明の増幅プライマー対は、核酸の非メチル化5'調節領域を特異的に増幅するために使用することができ、そのような増幅プライマー対は、非メチル化5'調節領域を有するSFRPファミリーメンバーを増幅できる、配列番号:25および26、配列番号:113および114、配列番号:117および118、配列番号:121および122、配列番号:127および128、配列番号:131および132、配列番号:135および136、配列番号:141および142または配列番号:145および146により例示される。
【0034】
本発明は同様に、本発明の少なくとも一つの単離されたオリゴヌクレオチドを含む、例えば、複数のそのような単離されたオリゴヌクレオチドを含む、キットに関する。一つの態様として、本発明のキットの複数の単離されたオリゴヌクレオチドは、少なくとも一組の増幅プライマー対(例えば、フォワード・プライマーおよびリバース・プライマー)を含み、そして例えば、表2、表3、および/または表4に記載の増幅プライマー対を含む、複数組の増幅プライマー対を含むことができる。従って、本発明のキットは、例えば、一つまたは複数の種類のガン細胞でメチル化により沈黙化されていることが知られているまたはその疑いがある特定遺伝子のメチル化型または非メチル化型を増幅するのに有効な、メチル化特異的プライマー対および非メチル化特異的プライマー対を含む、一組のまたは複数組の、メチル化特異的増幅プライマー対、非メチル化特異的増幅プライマー対、またはメチル化特異的増幅プライマー対および非メチル化特異的増幅プライマー対の組み合わせを含むことができる。
【0035】
本発明のキットは、例えば、キットのオリゴヌクレオチドが有効なある目的に役立ち得る、追加試薬をさらに含むことができる。例えば、キットに一つまたは複数のメチル化特異的および/または非メチル化特異的増幅プライマーが含まれる場合、キットには、例えば、対照用ポリヌクレオチド(これはメチル化または非メチル化とすることができる); メチル化シトシン残基を修飾する一つまたは複数の試薬、および/または増幅反応を行うための一つもしくは複数の試薬がさらに含まれ得る。キットに、メチル化遺伝子配列にまたは非メチル化遺伝子配列に選択的にハイブリダイズする一つまたは複数のオリゴヌクレオチドが含まれる場合、キットには、例えば、メチル化感受性制限エンドヌクレアーゼがさらに含まれ得る。
【0036】
発明の詳細な説明
本発明は、細胞のゲノム、例えば、ガン細胞のゲノムで後生的に沈黙化された遺伝子を同定するための方法の開発に基づく。その方法は、メチル化および/またはヒストン脱アセチル化により沈黙化された遺伝子を含む、結腸直腸ガン(CRC)細胞で後生的に沈黙化された、74個の遺伝子の同定により例示される。本明細書に開示されるように、CRCおよび胃ガン(GC)においてSFRP1、SEZ6L、LPPH1およびCXX1遺伝子のメチル化による沈黙化の同定により例示されるような、腫瘍プロファイリングのパターンが明らかとなった。そのような腫瘍プロファイリングは、SFRP1遺伝子の関連ファミリーメンバーにまで及び、その際に、CRCおよびGCにおいて、SFRP2、SFRP4、およびSFRP5遺伝子の高メチル化も検出された(SFRP3遺伝子は5'調節領域中にCpGアイランドがない)。従って、本発明により、後生的に沈黙化されたガン関連遺伝子を同定するための方法が提供される、ならびに遺伝子発現の後生的な沈黙化と関連するガンの検出方法、そのようなガンを患う患者の治療方法、およびそのような方法を実践するのに有効な組成物がさらに提供される。
【0037】
遺伝子プロモーターの異常な高メチル化は、ガンにおける腫瘍抑制遺伝子の不活化と関連する主要な機構と見なされている。転写沈黙化は、メチル化および/またはヒストン脱アセチル化酵素(HDAC)活性により媒介されるが、メチル化が優位である。本明細書に開示されるように、ヒトCRCで後生的に沈黙化された遺伝子をスクリーニングするため、cDNAマイクロアレイに基づく解析を利用した。10,000個の遺伝子を超えるスクリーニングにより、プロモーターの高メチル化(即ち、メチル化による沈黙化)を示すいくつかのものと非メチル化プロモーターを有するその他のもの(これらについては、HDAC阻害により発現増加が引き起こされた)を含む、相当な数の後生的に沈黙化された遺伝子が同定された(実施例1を参照されたい)。開示の方法の有効性は、多くの高メチル化遺伝子が、その予測される機能または染色体位置に照らして、腫瘍形成における役割について高い潜在性を有することを決定することによりもたらされる。CRCおよびGCで選択的に高メチル化される、SFRP1遺伝子(これは、本明細書に開示されるように、同じくCRCで頻繁に高メチル化されていた遺伝子ファミリーに属する)を含む、遺伝子群が同定された。腫瘍抑制遺伝子の機能喪失に対する機構の示唆に加えて、本結果により、本質的に全てのCRCを検出できる分子指標パネルが提供される(図2を参照されたい)。
【0038】
ガンの進行は、遺伝学的に決定される遺伝子機能の変化によってだけでなく、後生的に決定される遺伝子機能の変化によっても促進される。後者には、遺伝子の転写喪失を伴う、遺伝子プロモーター中の異常に高メチル化されたCpGアイランドが含まれる。この、プロモーターの高メチル化が認知されると、そのような遺伝子座を同定するため、ガンのゲノムを無作為にスクリーニングする努力が高まった。高頻度のヘテロ接合性の喪失(LOH)の領域中のおよびゲノム全体中のCpGアイランドの高メチル化の同定を含む、これらの探索方法の全てが、腫瘍特異的に高メチル化されるCpGアイランドの同定に有用性があることが判明した。しかし、各方法とも、遺伝子プロモーターと関連性がなく、CpGアイランドのサブセットに対して利用されるメチル化感受性制限部位が潜在的に偏ったもしくは多数のアイランドにその部位がない、幾つかの部位を同定するのに、および/またはいったん異常な遺伝子座が同定されても、近隣の遺伝子を苦労して探索する必要性に苦しんだ。
【0039】
本開示のマイクロアレイに基づく戦略では、遺伝子発現状態を後生的な調節に結び付けて考えることによって以前の方法の不利な点が回避される。さらに、その研究方法により、ガンで高メチル化された遺伝子の沈黙化は、高密度のCpGアイランドのメチル化およびHDAC活性の両方に依存する可能性があるという観測結果(Cameronら、Nature Genet. 21:103〜107, 1999、これは参照として本明細書に組み入れられる)が引き出される。結腸ガン細胞を用いて例示されるように、開示の方法によって確実に、転写抑制が腫瘍形成に重要な役割を果たし得る新たな遺伝子が同定される。開示のゲノムスクリーニング法により、特定の腫瘍型に集中発生し、同時に単一遺伝子ファミリーの複数メンバーを含み得る、遺伝子の高メチル化事象の同定が飛躍的に可能となった(実施例1)。
【0040】
従って、ガンと関連する、後生的に沈黙化された遺伝子、例えば、メチル化により沈黙化された遺伝子を同定するための方法が提供される。一つの態様として、本発明により、少なくとも一つのガンと関連する、少なくとも一つの後生的に沈黙化された遺伝子の同定方法が提供される。本明細書では、「少なくとも一つの」という用語は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、またはそれ以上を意味する。例えば、開示のマイクロアレイ法により、結腸直腸ガン細胞で後生的に沈黙化されていた74個の遺伝子が同定された。さらに、CRCで後生的に沈黙化されたと同定された遺伝子のいくつかは同様に、胃ガン細胞でも後生的に沈黙化されていたことが確認された。従って、本方法により、CRCおよび/またはGCと関連する、後生的に沈黙化されている遺伝子が同定された。
【0041】
「後生的に沈黙化された」または「後生的な沈黙化」という用語は、遺伝子に関して使用される場合、遺伝的変化以外の機構により、遺伝子が転写されていないこと、または対応する対照細胞(例えば、正常細胞)における遺伝子の転写レベルに対して低下したレベルで転写されていることを意味する。遺伝子沈黙化の後生的な機構は、よく知られており、例えば、遺伝子の5'調節領域のCpGアイランドのCpGジヌクレオチドの高メチル化、および遺伝子転写が低下されるかまたは阻害されるような、例えば、ヒストンのアセチル化によるクロマチンの構造変化を含む。後生的な遺伝子沈黙化を検出するための方法が、本明細書に開示され、そしてその方法には、例えば、沈黙化が高メチル化による場合、後生的な沈黙化を取り除く薬剤との、例えば、脱メチル化剤との細胞の接触後の遺伝子の再発現(再活性化)を検出する段階が含まれる。
【0042】
本明細書では、「メチル化」または「高メチル化」という用語は、遺伝子に関して使用される場合、遺伝子と関連するCpGアイランドのCpGジヌクレオチドのシトシン残基が5'位でメチル化される、即ち、5'-メチルシトシンであることを意味する。「メチル化状態」という用語は、本明細書では、CpGアイランドのCpGジヌクレオチドのメチル化シトシン残基の、その有無を含めて、相対存在量について言及するために使用される。一般に、CpGアイランドのシトシン残基は、転写活性遺伝子ではメチル化されず、従って、CpGアイランドのメチル化シトシン残基の検出により、遺伝子発現が低下するかまたは阻害されることが示唆される。従って、上述のように、本明細書において「メチル化沈黙化」遺伝子とは、遺伝子の5'調節領域のCpGアイランドのCpGジヌクレオチドの高メチル化により、遺伝子が転写されていないこと、または対応する対照細胞(一般に、正常細胞)における遺伝子の転写レベルに対して低下したレベルで遺伝子が転写されていることを意味する。遺伝子発現のメチル化による沈黙化の結果は、細胞中で通常その遺伝子産物によるものとされるあらゆる機能が低下するかまたはなくなるほど、遺伝子を含む細胞が、その遺伝子によりコードされるポリペプチド(即ち、遺伝子産物)の量を減らされるか、または完全に失うことである。
【0043】
ガンと関連する後生的に沈黙化された遺伝子の同定方法は、例えば、ゲノムを代表するヌクレオチド配列のアレイを、核酸のサブトラクション産物(即ち、後生的に沈黙化された遺伝子の発現を再活性化させる少なくとも一つの薬剤と接触させたガン細胞で発現されたRNAに対応するが、ガン細胞に対応する正常細胞で発現されたRNAに対応しない核酸)と、アレイの相補的なヌクレオチド配列との核酸のサブトラクション産物の選択的ハイブリダイゼーションに適した条件の下で接触させる段階; およびアレイのヌクレオチド配列の部分母集団との核酸のサブトラクション産物の選択的ハイブリダイゼーションを検出する段階により行うことができ、その際にガン細胞に対応する正常細胞で発現されたRNAに対応する核酸は、選択的ハイブリダイゼーションに適したそのような条件の下で、ヌクレオチド配列の部分母集団にハイブリダイズせず、それによってアレイのヌクレオチド配列の部分母集団に選択的にハイブリダイズする核酸のサブトラクション産物が、ガン細胞の後生的に沈黙化された遺伝子に相当する(実施例1を参照されたい)。細胞の「RNAに対応する核酸」とは、mRNAもしくはポリA+ RNAのようなRNA、鋳型として細胞から得たRNAを用いて生成されるcDNA、または鋳型としてRNAもしくはcDNAを用いて生成されるcRNAを意味する。本発明の方法を実践するため、細胞のRNAに対応する核酸は一般に、例えば、放射性同位体、常磁性同位体、発光化合物、化学発光化合物、蛍光化合物、金属キレート、酵素、酵素に対する基質、受容体、または受容体に対するリガンドで検出可能に標識される; またはアレイのヌクレオチド配列との核酸のハイブリダイゼーションが検出され得るように、例えば、検出可能に標識されたプローブを用いて検出され得る。
【0044】
本明細書では、「ゲノムを代表するヌクレオチド配列のアレイ」という用語は、固体支持体、例えば、マイクロチップまたはガラススライドに連結されている、組織化されたヌクレオチド配列群を意味し、その配列は、細胞で発現された核酸に特異的かつ選択的にハイブリダイズすることができる。アレイは、被検細胞の由来生物および/または調べられる組織もしくは組織(複数)に基づいて選択される。一般に、アレイは、真核生物の細胞または細胞型、特に哺乳類の細胞または細胞型、および好ましくは所望の、一つまたは複数の組織の細胞を含む、ヒトの細胞(例えば、結腸直腸の上皮細胞)を代表する。一般に、ゲノムを「代表」するプローブのアレイにより、細胞で発現された核酸の少なくとも約10%、一般には少なくとも約20%または40%、通常は約50%〜70%、典型的には少なくとも約80%または90%、および特に細胞または生物で発現された核酸の95%〜99%またはそれ以上が同定されるものと思われる。当然のことながら、その代表数が大きくなれば、本発明の方法により、ガンで後生的に沈黙化された遺伝子の全てを同定できる可能性も高くなると思われる。特定のゲノムを代表するヌクレオチド配列を含むアレイは、周知の方法により調製することができる、または本研究(実施例1)で使用されるHuman GeneFilters(商標) Microarray(Release II)のアレイ(Research Genetics; 現在、Invitrogen社の子会社)により例示されるように、商業的供給源(例えば、Invitrogen社; Affymetrix)から入手することができる。
【0045】
後生的に沈黙化された遺伝子の発現を再活性化させる薬剤は、メチル基転移酵素阻害剤(例えば、5-アザ-2'-デオキシシチジン; DAC)、ヒストン脱アセチル化酵素阻害剤(例えば、トリコスタチンA; TSA)、またはDACおよびTSAを組み合わせたような薬剤の組み合わせとすることができる。そのような薬剤または薬剤(複数)で処理されたガン細胞のような細胞からRNAを単離することができ、そしてRNA、またはそのRNAのcDNA産物を、その薬剤/薬剤(複数)で処理されなかった対応細胞(例えば、ガン細胞)のRNA分子と、処理細胞でのみ発現されるRNA(またはcDNA)が単離され得るような条件の下で接触させることができ、このようにして核酸のサブトラクション産物が得られる。核酸のサブトラクション反応を行うための方法はよく知られており(Hedrickら、Nature 308: 149〜155, 1984、これは参照として本明細書に組み入れられる)、そしてそのような方法を行うためのキットは、商業的供給源(例えば、Gibco/BRL; 実施例1を参照されたい)から入手することができる。
【0046】
本発明の方法によれば、少なくとも1つ(例えば、1、2、3、4、5、またはそれ以上)の後生的に沈黙化された遺伝子を、少なくとも1つ(例えば、1、2、3、またはそれ以上)のガンと関連付けることができる。ガンは、例えば、一つまたは複数の特定の種類のガン、例えば、消化管/胃腸管ガン、肝臓ガン、皮膚ガン、乳ガン、卵巣ガン、前立腺ガン、リンパ腫、白血病、腎臓ガン、肺ガン、筋肉腫、骨肉腫、または脳腫瘍を含む、ガン腫または肉腫とすることができる。後生的に沈黙化されたガン関連遺伝子は、CRCおよび/またはGCと関連する、表1に掲載の遺伝子(そしてそれらにはGenBankアクセッション番号が付与されている; 例えば、URL「ncbi. nlm. nih. gov」のワールド・ワイド・ウェブを参照されたい)により本明細書に例示される。表1に関して、DACとの細胞の接触により再活性化され得る、CRC細胞で後生的に沈黙化された遺伝子(即ち、メチル化により沈黙化された遺伝子)は、PTGS2、CDKN2A、TIMP3、S100A10、SFRP1、CXX1、SEZZ6L、KIAA0786、TIMP2、PCDH8、FOLH1、SNRPN、HOXA1、GR03、およびDLX7遺伝子により例示される; そしてTSAとのガン細胞の接触により再活性化され得る、後生的に沈黙化された遺伝子は、POR1、MBNL、TRADD、PDIP、RAD23B、RPL13、GNAI2、PPP1R21A、FPGT、およびTRIM32遺伝子により例示される。さらに、本明細書に開示されるように、同定された後生的に沈黙化された遺伝子の関連ファミリーメンバー(例えば、SFRP1遺伝子に関連する、SFRP2、SFRP4、およびSFPR5遺伝子を含む)も同様に、後生的に沈黙化された可能性があり、そしてこれらは、単独でまたは組み合わせで、試験したCRC試料124個のうちの123個と関連性があった(実施例1; 図2を参照されたい)。
【0047】
通常はメチル化されていない遺伝子プロモーター領域中のCpGジヌクレオチドの異常なDNAメチル化と関連した遺伝子転写の沈黙化は、腫瘍形成において最も広く研究されている後生的な異常である。メチル-CpG-結合ドメイン、転写のコリプレッサー、クロマチン再構成タンパク質およびヒストン脱アセチル化酵素からなるタンパク質複合体の高メチル化DNA領域への結合により、転写が抑制化(沈黙化)されたクロマチン状態が引き起こされる。真核細胞では、グアノシン残基のすぐ5'側のシトシン残基のメチル化は、CGに乏しい領域で優先的に起こる。これに対して、CpGアイランドは一般に、X染色体の不活性化および親特異的刷込みの間(この場合、5'調節領域のメチル化が転写抑制と結び付く)を除いて、正常細胞ではメチル化されないままである。網膜芽細胞腫(Rb)遺伝子の新規メチル化が、ごく一部の網膜芽細胞腫で実証されており(Sakaiら、Am. J. Hum. Genet. 48:880, 1991)、VHL遺伝子の異常なメチル化が、散発性腎細胞ガン腫の一部で発見された(Hermanら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 91: 9700〜9704, 1994)。腫瘍抑制遺伝子の発現は同様に、通常はメチル化されていない5' CpGアイランドのDNAの新規メチル化によっても消失し得る(例えば、Issaら、Nature Genet. 7: 536, 1994 ; Merloら、Nature Med. 1: 686, 1995 ; Hermanら、Cancer Res. 56: 722, 1996を参照されたい)。
【0048】
CpGアイランドのプロモーター領域の異常なメチル化は同様に、ガンの発生とも関連していた。造血器悪性腫瘍では、例えば、E-カドヘリンの高メチル化(Graffら、Cancer Res. 55: 5195〜5199, 1995)、DAP-キナーゼの高メチル化(Katzenellenbogenら、Blood 93: 4347〜4353, 1999)、ならびに細胞周期調節因子p15INK4Bおよびp16INK4Aの高メチル化が、遺伝子不活化と関連している(Hermanら、Cancer Res. 57:837〜841 1997; Melkiら、Blood 95:3208〜3213, 2000 ; Ngら、Clin. Canc. Res. 7:1724〜1729, 2001)。高メチル化による転写沈黙化は同様に、CDKN2A遺伝子(Hermanら、Cancer Res. 55:4525〜4530, 1995)、MGMT(Estellerら、Cancer Res. 59: 793〜797, 1999)、およびMLH1遺伝子(Hermanら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 95:6870〜6875, 1998)でも検出された。
【0049】
染色体位置17p13.3のCpGアイランドの高メチル化は、ヒトのガンの多くの共通型において観測されており(Makosら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89:1929, 1992; Makosら、Cancer Res. 53:2715, 1993; Makosら、Cancer Res. 53:2719, 1993)、そして脳腫瘍、結腸ガン、および腎臓ガンにおける17p喪失およびp53突然変異のタイミングや頻度と符号している。通常はメチル化されていないプロモーター領域のCpGアイランドの高メチル化に関わる遺伝子転写の沈黙化は、腫瘍抑制遺伝子を不活化するためのコード領域の突然変異のもう一つの機構と見なされている(Baylinら、Cancer Cells 3:383, 1991; JonesおよびBuckley, Adv. Cancer Res. 54:1〜23, 1990)。この変化は同様に、第3染色体短腕(3p)上の腎臓ガンの腫瘍抑制遺伝子であるVHL(Hermanら、上記, 1994)、第6染色体長腕(6q)上のエストロゲン受容体遺伝子(Ottavianoら、Cancer Res. 54:2552, 1994)、および第11染色体短腕(11p)上のH19遺伝子(Steenmanら、Nature Genetics, 7: 433, 1994)の発現の喪失とも関連付けられている。SOCS-1遺伝子転写のメチル化による沈黙化は、肝細胞ガン、多発性骨髄腫、および急性白血病を含む、種々のガンと関連している(Yoshikawaら、Nat. Genet. 28:29〜35, 2001、これは参照として本明細書に組み入れられる)。
【0050】
従って、本発明により、試験細胞において、表1に記載の少なくとも一つの遺伝子の後生的な沈黙化、またはその組み合わせを検出することによって、調節不能な増殖を示すまたは示す素因を呈する細胞を同定するための方法が提供される。例えば、後生的に沈黙化された遺伝子は、PTGS2、CDKN2A、TIMP3、S100A10、SFRP1、SFRP2、SFRP4、SFRP5、CXX1、SEZZ6L、KIAA0786、TIMP2、PCDH8、FOLH1、SNRPN、HOXA1、GRO3、DLX7、POR1、MBNL、TRADD、PDIP、RAD23B、RPL13、GNAI2、PPP1R21A、FPGT、もしくはTRIM32遺伝子、またはそのような遺伝子の組み合わせとすることができる。調節不能な増殖を示す、または示す素因を呈する細胞は、新生物細胞とすることができ、これは例えば、胃腸ポリープの細胞のような前ガン状態の細胞とすることができる、またはガン細胞、例えば、結腸直腸ガン細胞もしくは胃ガン細胞のようなガン腫細胞、または肉腫細胞とすることができる。
【0051】
一つの態様として、本発明の方法には部分的に、試験細胞または試料中の遺伝子のメチル化状態を、調節された増殖を示す対応細胞中の対応遺伝子のメチル化状態と比較することが必要とされる。本明細書では、「対応(する)」という用語は、試験物質が比較されている基準物質を意味する。一般に、基準物質とは、試験物質が比較される対照または標準を示す。例えば、メチル化状態が調べられているSFRP遺伝子に対して、対応する非メチル化SFRP遺伝子とは、非メチル化SFRP遺伝子が、メチル化状態が調べられているSFRP遺伝子と同じ種類の遺伝子であること、例えば、試験遺伝子および対応する非メチル化遺伝子がともにヒトのSFRP1遺伝子であることを意味する。試験細胞に対して、調節された増殖を示す対応細胞とは一般に、正常細胞、即ち、健常者におけるその細胞集団に特徴的な細胞周期および増殖様式を有する細胞、例えば、調べられている試験細胞がCRC細胞である疑いがある場合、正常な結腸直腸の上皮細胞を指す。
【0052】
本発明の方法は、試験細胞、または全部もしくはメチル化状態について調べられる遺伝子の5'調節領域のCpGアイランドを含む一部分を含有する、細胞の核酸、特にゲノムDNAを含む試験細胞の抽出物、を含む試料を用いて実践することができる。一般に、試験細胞は、調節不能な増殖を示す細胞の疑いがある細胞、例えば、疑わしい病巣の生検試料である、または前ガン状態のもしくは悪性の細胞に近接する(または近接していた)細胞、例えば、疑わしい病巣部位の外側の1箇所または数箇所で採取される細胞試料であって、その試験細胞により、例えば、外科手術を行うべき度合いの指標が得られる、または切除縁から採取される細胞試料であって、その試験細胞は、ガンが完全に切除されたかどうかを決定するために、もしくはガンが再発したかどうかを決定するために有効である。
【0053】
本発明の方法により調べられる試験細胞は同様に、例えば、培養系が樹立された細胞と実質的に同じ増殖特性を示す初代培養細胞を樹立する目的で、または被検体に再投与するために細胞を処理するおよび/もしくは増殖させる目的で、被検体から得られかつ培養液中に入れられた初代細胞とすることができる。例えば、一つまたは複数のガン関連遺伝子の発現のメチル化による沈黙化を示す、結腸直腸の上皮細胞は、CRCを患うガン患者から得ることができる。沈黙化された遺伝子/遺伝子(複数)の発現を回復させる能力を目的として試験される一つまたは複数の薬剤を用いて、その細胞を培養液中で処理することが可能であり、それによってそのガン患者、または一つまたは複数の同一遺伝子のメチル化による沈黙化を特徴とするCRCを患う他の患者を治療するのに有効となり得る薬剤を同定する手段が提供される。
【0054】
試験細胞は、細胞を含む試料を得る臨床場面で通常使用される任意の方法で被検体から得ることができる。例えば、試験細胞(または試験細胞を含む試料)は、試験される細胞を含む器官または組織の針生検のような生検法により得ることができる。従って、試験細胞は、胃腸管試料(例えば、ポリープの生検)、肝臓試料、骨髄試料、皮膚試料、リンパ節試料、腎臓試料、肺試料、筋肉試料、骨試料、脳試料などから得ることができる。試験細胞は同様に、生体液成分、例えば、血液、リンパ液、脳脊髄液、唾液、喀痰、大便、尿、または射精液とすることもできる。適切な場合、試験細胞は同様に、結腸、子宮、腹腔などから試験細胞を得るための、例えば、洗浄により、または骨髄試料を得るための、例えば、吸引法により得ることもできる。
【0055】
本発明の方法は同様に、全部または調べられる遺伝子もしくは遺伝子(複数)の部分を含むCpGアイランド、を含む試験細胞の核酸、特にゲノムDNAを含む、試験細胞の抽出物を用いて実践することもできる。抽出物は、例えば、試験細胞を含む組織の凍結融解試料を含む、未精製抽出物とすることができる; 例えば、核マトリクスの成分を含み得る、部分的に精製されたゲノムDNAを含むことができる; または例えば、タンパク質分解酵素およびアルコール沈殿による処理後に得られる、実質的に精製されたゲノムDNAを含むことができる。ある種の態様として、試験細胞は同様に、パラフィン中に包埋される組織学的試料の成分とすることもできる。
【0056】
後生的な沈黙化にメチル化による沈黙化が含まれる場合、調節不能な増殖を示すまたは示す素因を呈する細胞を同定するための方法は、細胞の一つまたは複数の標的遺伝子のメチル化を検出する段階により行われる。核酸のCpGメチル化を検出するためのさまざまな周知の方法のいずれかを用いて、遺伝子のCpGアイランドのCpGジヌクレオチドのメチル化を検出することができる。そのような方法には、修飾の有無が検出可能とされるように、非メチル化シトシン残基またはメチル化シトシン残基のどちらかを選択的に修飾するが、その両方ではない一つまたは一連の化学試薬と遺伝子を接触させる段階; 配列の切断の有無が検出可能とされるように、CpGジヌクレオチドを含む認識部位を有し、CpGのメチル化シトシン残基が有るかCpGのメチル化シトシン残基が無いかのどちらかであるが、その両方ではない認識部位を切断するメチル化感受性制限エンドヌクレアーゼと遺伝子配列を接触させる段階; または遺伝子配列に選択的にハイブリダイズしかつCpGメチル化が存在するかどうかについて決定することを可能とする、オリゴヌクレオチド・プローブ、プライマー、または増幅プライマー対と遺伝子を含む核酸を接触させる段階が含まれる。そのような方法の例が本明細書に提供されており、そのような方法に対する変更および変形は、当技術分野においてよく知られている。
【0057】
標的遺伝子のメチル化は、例えば、CpGジヌクレオチドのメチル化されるシトシン残基を含む5'調節領域中の認識部位を切断する、メチル化感受性制限エンドヌクレアーゼと、遺伝子を含む核酸の5'調節領域を含む領域を接触させることにより検出することができ、核酸の切断によりメチル化および、故に、試験細胞の遺伝子のメチル化による沈黙化が示される。メチル化感受性制限エンドヌクレアーゼはよく知られており、例えば、Acc III、 Ban I、BstN I、MspI、およびXma Iを含む。或いは、またはさらに、メチル化による沈黙化は、CpGジヌクレオチドのメチル化されるシトシン残基を含む5'調節領域中の認識部位を、CpGジヌクレオチドのシトシン残基がメチル化されていない場合に切断する、メチル化感受性制限エンドヌクレアーゼと、遺伝子を含む核酸の5'調節領域を含む領域を接触させることにより検出することができ、核酸が切断されないことにより試験細胞の遺伝子のメチル化による沈黙化が示される。そのようなメチル化感受性制限エンドヌクレアーゼは、Acc II、 Ava I、BssH II、BstU I、Hpa II、およびNot Iにより例示される。
【0058】
メチル化感受性制限エンドヌクレアーゼによる標的遺伝子配列を含む核酸の切断の有無は、ポリヌクレオチド配列の長さまたは連続性を検出するのに有用な任意の方法を用いて同定することができる。例えば、標的遺伝子配列の切断は、切断部位の地図作製を可能とする、サザンブロット解析により、または相対サイズ、電荷、もしくはその組み合わせに基づいて核酸を分離する、その他の電気泳動法もしくはクロマトグラフィー法を用いて検出することができる。標的遺伝子の切断は同様に、オリゴヌクレオチド連結アッセイにより検出することもでき、このアッセイ法では、制限エンドヌクレアーゼとの接触後に、その標的遺伝子配列と、制限エンドヌクレアーゼ切断部位の上流かつ近傍に選択的にハイブリダイズする第一オリゴヌクレオチドならびにその切断部位の下流かつ近傍に選択的にハイブリダイズする第二オリゴヌクレオチドを接触させ、そしてさらに、切断されていない場合には、その二つのオリゴヌクレオチドは相互に近接してともに連結されるが、切断されている場合には、連結が起こらないように、リガーゼと接触させる。連結反応後、オリゴヌクレオチドのサイズまたはその他の関連パラメータを決定することにより、連結されたオリゴヌクレオチドを、連結されていないオリゴヌクレオチドと区別することができ、それによって制限エンドヌクレアーゼ活性の指標が得られる。
【0059】
遺伝子のメチル化による沈黙化は同様に、試験細胞の遺伝子を含む核酸の5'調節領域を、非メチル化シトシン残基またはメチル化シトシン残基のどちらかを選択的に修飾する化学試薬と接触させること、およびその接触により産生される産物を検出することにより検出することができ、その際に産物により遺伝子のCpGジヌクレオチドのシトシン残基のメチル化が示され、それによって試験細胞の遺伝子のメチル化による沈黙化が検出される。例えば、産物は、電気泳動法、クロマトグラフィー法、質量分析法、またはそのような方法の組み合わせにより検出することができる。
【0060】
本態様の一つの局面として、遺伝子を、シトシン残基を修飾するがメチル化シトシン残基を修飾しない、ヒドラジンと接触させ、次にヒドラジンで処理された遺伝子配列を、ヒドラジン修飾シトシン残基で核酸を切断する、ピペリジンのような試薬と接触させ、それによって断片を含む産物を生じさせる。例えば、電気泳動法、クロマトグラフィー法、または質量分析法を用いて、分子量に応じて断片を分離することと、その分離パターンを、同じように処理された対応する非メチル化遺伝子配列のパターンと比較することで、ギャップによりメチル化シトシン残基を含んだ試験遺伝子の位置が明らかとなる。従って、ギャップの存在により、試験細胞の標的遺伝子のCpGジヌクレオチドのシトシン残基のメチル化が示される。
【0061】
別の局面として、標的遺伝子を含む核酸を、重亜硫酸イオン、例えば、重亜硫酸ナトリウムを含む化学試薬と接触させて、非メチル化シトシン残基を重亜硫酸塩修飾シトシン残基に変換し、次いで重亜硫酸イオン処理遺伝子配列を、アルカリ条件に曝して、重亜硫酸塩修飾シトシン残基をウラシル残基に変換する。重亜硫酸ナトリウムは、シトシンの5,6-二重結合と容易に反応して(しかし、メチル化シトシンとはそれほど反応しない)脱アミノ化を起こし易いスルホン化シトシン反応中間体を形成し、その結果、スルホン化ウラシルを生じる。従って、スルホネート基は、アルカリ条件に曝すことにより除去可能であり、結果としてウラシルが形成される。その後、DNAを、例えば、PCRにより増幅し、全てのCpG部位のメチル化状態を決定するために塩基配列決定することができる。ウラシルは、Taqポリメラーゼによりチミンとして認識されるため、PCRを行うと、得られる産物には、最初の鋳型DNA中で5-メチルシトシンが存在していた場所にだけシトシンが含まれる。試験細胞の重亜硫酸イオン処理遺伝子配列中のウラシル残基の量または分布を、同様に処理された非メチル化対応配列と比較して、試験細胞由来の遺伝子でウラシル残基の量または分布の減少が検出されることにより、試験細胞の標的遺伝子中のCpGジヌクレオチドのシトシン残基のメチル化が示される。ウラシル残基の量または分布は同様に、重亜硫酸イオン処理標的遺伝子配列を、アルカリ条件への暴露後に、ウラシル残基を含むかまたはウラシル残基を欠くかのどちらかであるが、その両方ではない、標的遺伝子のヌクレオチド配列に選択的にハイブリダイズするオリゴヌクレオチドと接触させて、オリゴヌクレオチドの選択的ハイブリダイゼーション(またはそれがないこと)を検出することにより、検出することもできる。
【0062】
本明細書では、「選択的ハイブリダイゼーション」または「選択的にハイブリダイズする」または「特異的ハイブリダイゼーション」という用語は、中ストリンジェントのまたは高ストリンジェントの条件の下で、生じかつ安定である二つの核酸の相互作用を指す。従って、選択的ハイブリダイゼーションは、例えば、オリゴヌクレオチドと標的核酸との間で選択的に起こり、オリゴヌクレオチドと標的核酸以外の核酸(標的核酸に関連するが遺伝子ファミリーの別のメンバーをコードする核酸ではないものを含む)との間では実質的に起こらない。一般に、標的核酸に選択的にハイブリダイズするプローブまたはプライマーとして有用なオリゴヌクレオチドは、長さが少なくとも約12〜15ヌクレオチド、一般に、長さが少なくとも約18〜20ヌクレオチド、通常、長さが少なくとも約21〜25ヌクレオチド、および特に、長さが約26〜35ヌクレオチドである。本発明の方法を実践する際に有用なオリゴヌクレオチドの例は、配列番号:1〜296として本明細書に開示されている(表2、3および4を参照されたい)。
【0063】
選択的ハイブリダイゼーションを可能とする条件は、実験的に決定することができる、または例えば、ハイブリダイズするオリゴヌクレオチドおよび標的核酸の相対GC:AT(またはGC:AU)含量、ハイブリダイズするオリゴヌクレオチドの長さ、ならびにもしあれば、オリゴヌクレオチドとオリゴヌクレオチドがハイブリダイズする標的配列との間の誤対合の数に基づいて推測することができる(例えば、Sambrookら、「Molecular Cloning」: A laboratory manual(Cold Spring Harbor Laboratory Press 1989)を参照されたい)。従って、特定のレベルのストリンジェンシーを得るために使用される条件は、ハイブリダイズする核酸の性質により変化するものと思われる。他に考慮すべき点としては、核酸の一方を、例えば、フィルター膜に固定化させるかどうかという点が挙げられる。段階的に高くなるストリンジェンシー条件の例は、次の通りである: 約室温で2×SSC/0.1% SDS(ハイブリダイゼーション条件); 約室温で0.2×SSC/0.1% SDS(低ストリンジェンシー条件); 約42℃で0.2×SSC/0.1% SDS(中ストリンジェンシー条件); および約62℃で0.1×SSC(高ストリンジェンシー条件)。ハイブリダイゼーションおよび/または洗浄は、これらの条件のうちの一つだけ、例えば、高ストリンジェンシー条件を用いて行うことが可能であり、またはこれらの条件のいずれかを用いることが可能であり、例えば、列挙したステップのいずれかまたは全てを上記の順にそれぞれ10〜15分間繰り返して使用することもできる。
【0064】
標的遺伝子(例えば、表1に掲載の遺伝子)とのオリゴヌクレオチドの選択的ハイブリダイゼーションは、例えば、検出可能な標識を含むオリゴヌクレオチドを用いる方法を行うことにより検出することができる。検出可能な標識は、都合よくオリゴヌクレオチドに連結できかつ簡単に利用可能な装置を用いて検出できる、任意の分子とすることができる。例えば、検出可能な標識は、Cy3、Cy5、Fam、フルオレセイン、ローダミン、または緑色蛍光タンパク質もしくはその増強型か改良型のような蛍光化合物; イオウ-35、テクネシウム-99、リン-32、トリチウムまたはヨウ素-125のような放射性核種; 炭素-13、Gd-157、Mn-55、Dy-162、Cr-52またはFe-56のような常磁性磁気標識; エクオリンのような発光化合物; 化学発光化合物; 金属キレート; ルシフェラーゼもしくはβ-ガラクトシダーゼのような酵素、または酵素に対する基質; または受容体もしくは受容体に対するリガンド、例えば、ビオチンとすることができる。検出可能な標識を検出するための手段は、標識の特性に基づいて選択されるものと思われ、標識をオリゴヌクレオチドに連結するための手段についても同様である(例えば、Hermanson、「Bioconjugate Techniques」(Academic Press 1996)を参照されたい、これは参照として本明細書に組み入れられる)。
【0065】
選択的ハイブリダイゼーションは同様に、例えば、オリゴヌクレオチドをプライマー伸長反応のための基質として利用し、プライマー伸長反応が進行するのに十分な条件の下で、試料を、必要に応じて、検出可能なdNTP(例えば、蛍光標識dNTP、ジゴキシゲニン標識dNTP、またはビオチン標識dNTP)を含む、デオキシリボヌクレオチド(dNTP)、およびDNA依存的DNAポリメラーゼとさらに接触させ、そしてプライマー伸長反応の産物を検出することにより検出することができる。プライマー伸長反応を行うための条件は、当技術分野においてよく知られている(例えば、Sambrookら、上記、1989を参照されたい)。
【0066】
アルカリ条件への暴露後の、標的遺伝子配列を含む重亜硫酸イオン処理核酸中のウラシル残基の量または分布は同様に、PCRのような増幅反応により検出することもできる。増幅反応は、標的核酸への増幅プライマー対のフォワードおよびリバース・プライマーの選択的ハイブリダイゼーションを可能とする条件の下で行われる。一般に、反応は、緩衝水溶液中、約pH 7〜9、通常約pH 8で行われる。さらに、反応は一般に、標的核酸に対しプライマーのモル過剰にて、例えば、プライマー対ゲノムDNAが約100対1の比率で行われる。例えば、生物試料を用いる診断手順において、試料中の標的核酸の量が分からない場合、一般に少量のプライマーを添加するだけで、増幅反応が進行できるような十分なモル過剰になると思われるが、一連のプライマー量を、並行して行われる試料のなかで用いることができる。
【0067】
デオキシリボヌクレオシド三リン酸の、dATP、dCTP、dGTP、およびdTTPを、適当な量で、合成混合物(これは、プライマーをさらに含み得る)に、別々にまたは混合物として添加することができ、そして得られた溶液を、約1〜10分間、好ましくは1〜4分間、約90℃〜100℃まで加熱する。この加熱時間の後、溶液を室温にまで冷却させるが、これはプライマーのハイブリダイゼーションにとっては好ましい。この冷却させた混合物に、プライマー伸長反応を行うために適切な試薬、一般にはポリメラーゼを添加し、本明細書に開示される(実施例1を参照されたい)または当技術分野において他に知られる条件の下で反応を起こさせる。ポリメラーゼが熱安定性である場合、その他の試薬とともに添加することができる。ポリメラーゼは、プライマー伸長産物の合成を方向づけるのに有効な任意の酵素とすることができ、例えば、大腸菌(E. coli)DNAポリメラーゼI、大腸菌(E. coli)DNAポリメラーゼIのクレノー断片、T4 DNAポリメラーゼ、その他の利用可能なDNAポリメラーゼ、ポリメラーゼ突然変異タンパク質、逆転写酵素、および熱安定酵素を含む、当技術分野において周知でありかつ市販されているような、その他の酵素を含む。増幅産物は、配列決定法、オリゴマー制限法( Saikiら、BioTechnology 3:1008〜1012, 1985)、対立遺伝子特異的オリゴヌクレオチド・プローブ解析法(Connerら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 80:278, 1983)、オリゴヌクレオチド連結アッセイ(Landegrenら、Science 241:1077, 1988)、および同種のアッセイ(同様に、Landegrenら、Science 242:229〜237, 1988を参照されたい)により、メチル化されたものまたはメチル化されていないものとして同定することができる。
【0068】
一つの態様として、増幅は、増幅に適した条件の下で、標的遺伝子配列(例えば、表1に掲載の遺伝子)を、フォワード・プライマーおよびリバース・プライマーを含む増幅プライマー対と接触させることにより行われ、その際にプライマー対の少なくとも一つのプライマーは、ウラシル残基を含む標的遺伝子配列に選択的にハイブリダイズするオリゴヌクレオチドを含み、増幅産物の産出により、試験細胞の標的遺伝子のCpGジヌクレオチドのシトシン残基のメチル化が示される。別の態様として、増幅反応は、増幅に適した条件の下で、標的遺伝子配列を、フォワード・プライマーおよびリバース・プライマーを含む増幅プライマー対と接触させることにより行われ、その際にプライマー対の両プライマーは、シトシン残基を含む標的遺伝子配列に選択的にハイブリダイズするが、ウラシル残基を含む標的遺伝子配列にハイブリダイズせず、増幅産物の産出により、試験細胞の標的遺伝子のCpGジヌクレオチドのシトシン残基がメチル化されていないことが示される。
【0069】
さらに別の態様として、核酸のメチル化状態を検出するため、メチル化特異的PCR(MSP)のようなメチル化特異的反応を、単独で、または重亜硫酸塩処理と組み合わせて用いる(米国特許第6,265,171号; 米国特許第6,200,756号; および米国特許第6,017,704号を参照されたい、これらのそれぞれが参照として本明細書に組み入れられる; 同様に、実施例1も参照されたい)。MSPは、少数のメチル化対立遺伝子の検出およびパラフィン包埋材料を含む、少量の核酸試料の使用を可能とする特に感度の高い方法であり、そして同様に、例えば、単一試料中の非メチル化産物およびメチル化産物の同時検出を含む、多重解析に好都合に適合することができ、それによって内部対照が与えられる。
【0070】
MSP反応で使用される増幅プライマー対は、重亜硫酸塩未処理または非修飾DNAと、メチル化および非メチル化DNAとを特異的に識別するように設計する。非メチル化DNAに対するMSPプライマー対(非メチル化特異的プライマー対)は一般に、3'-CpG対中にチミジン残基を有し、メチル化DNA中に保持されているシトシン残基とこのチミジン残基とが区別される、そしてこの相補体がアンチセンス・プライマー用として設計される。センス(フォワード)プライマー中にはシトシンが存在せず、アンチセンス(リバース)プライマー中にはグアニンが存在しないので、通常、MSPプライマー対には、その配列中に比較的少量のシトシンまたはグアニン残基が含まれる; シトシンは修飾されてウラシルとなり、このウラシルは増幅産物中ではチミジンとして増幅される。MSP非メチル化(MSP(U))特異的プライマー対およびMSPメチル化(MSP(M))特異的プライマー対は、表2および3に例示されている。例えば、そのような方法に有用な増幅プライマー対には、例えば、SFRP1、SFRP2、SFRP4、またはSFRP5遺伝子の5'調節領域のメチル化を検出するのに有用なメチル化特異的プライマーである、配列番号:23および24、配列番号:111および112、配列番号:115および116、配列番号:119および120、配列番号:125および126、配列番号:129および130、配列番号:133および134、配列番号:139および140、または配列番号:143および144に記載のプライマー対; ならびにSFRP1、SFRP2、SFRP4、またはSFRP5遺伝子の5'調節領域のメチル化がないことを検出するのに有用な非メチル化特異的プライマーである、配列番号:25および26、配列番号:113および114、配列番号:117および118、配列番号:121および122、配列番号:127および128、配列番号:131および132、配列番号:135および136、配列番号:141および142、または配列番号:145および146に記載のプライマー対が含まれる。例示のメチル化特異的および非メチル化特異的プライマー対、ならびに表1に掲載されている遺伝子のような標的遺伝子の一部を含むヌクレオチド配列の利用可能性を考慮して、表1に掲載されているようなメチル化もしくは非メチル化遺伝子またはその他に同定された標的遺伝子の増幅のほか、SFRP遺伝子ファミリーメンバーのような、掲載の遺伝子に関連するファミリーメンバーの増幅に有用なさらなるメチル化特異的および非メチル化特異的プライマー対が、容易に作製され得ると認識されるものと思われる。
【0071】
従って、一つの局面として、MSPを、アルカリ処理後の重亜硫酸イオン処理標的遺伝子中のウラシル残基の量または分布を検出するために使用する。そのような方法は、増幅に適した条件の下で、遺伝子配列を、第一増幅プライマー対および第二増幅プライマー対と接触させる段階により行うことができ、第一増幅プライマー対は、フォワード・プライマーおよびリバース・プライマーを含み、第一プライマー対の少なくとも一つのプライマーは、ウラシル残基を含む標的遺伝子のヌクレオチド配列に選択的にハイブリダイズするオリゴヌクレオチドを含み、そして第二増幅プライマー対は、フォワード・プライマーおよびリバース・プライマーを含み、第二プライマー対の両プライマーは、シトシン残基を含む標的遺伝子に選択的にハイブリダイズするが、ウラシル残基を含む標的遺伝子配列にハイブリダイズせず、そして第一プライマー対により産出される増幅産物が、もしあれば、第一の長さを有し、そして第二プライマー対により産出される増幅産物が、もしあれば、第一の長さと異なる第二の長さを有し、増幅産物の長さによって、ウラシル残基の量または分布および、それ故、試験細胞の標的遺伝子におけるCpGジヌクレオチドのシトシン残基のメチル化が示される。
【0072】
ウラシル残基の量または分布は同様に、増幅に適した条件の下で、遺伝子の5'調節領域を、第一増幅プライマー対および第二増幅プライマー対と接触させる段階により行うことができ、第一増幅プライマー対は、フォワード・プライマーおよびリバース・プライマーを含み、第一プライマー対の少なくとも一つのプライマーは、ウラシル残基を含む遺伝子の5'調節領域のヌクレオチド配列に選択的にハイブリダイズするオリゴヌクレオチドを含み、そして第二増幅プライマー対は、フォワード・プライマーおよびリバース・プライマーを含み、第二プライマー対の両プライマーは、シトシン残基を含む遺伝子の5'調節領域のヌクレオチド配列に選択的にハイブリダイズするが、ウラシル残基を含む遺伝子の5'調節領域の対応ヌクレオチド配列にハイブリダイズせず、そして第一プライマー対により産出される増幅産物が、もしあれば、第一の長さを有し、そして第二プライマー対により産出される増幅産物が、もしあれば、第一の長さと異なる第二の長さを有し、増幅産物の長さによって、ウラシル残基および、それ故、遺伝子の5'調節領域のCpGジヌクレオチドのシトシン残基のメチル化が示され、それによって試験細胞の遺伝子のメチル化による沈黙化が検出される。
【0073】
調節不能な増殖を示すまたは示す疑いのある細胞の遺伝子(例えば、ガン関連遺伝子)のメチル化による沈黙化は同様に、試験細胞を脱メチル化剤と接触させる段階、およびその遺伝子によりコードされるRNAの発現増加を、脱メチル化剤と接触されていない試験細胞のRNAの発現レベルと比較して検出する段階により同定することができる。そのような方法は、調節された増殖を示す対応細胞、または対応細胞の抽出物において、遺伝子の5'調節領域のCpGアイランドのCpGジヌクレオチドのシトシン残基の、もしあれば、メチル化を検出する段階をさらに含む。脱メチル化剤は、DACのようなメチル基転移酵素阻害剤とすることができる。RNAの発現増加は、例えば、ノザンブロット解析、逆転写-ポリメラーゼ連鎖反応法、または本明細書に開示のヌクレオチド配列からなるアレイへの選択的ハイブリダイゼーションを含む、RNAを検出するための任意の方法により検出することができる。従って、本発明の方法は、高速大量処理の形式で実施することができ、その際に試験細胞、または試験細胞の抽出物には、複数の、試験細胞、もしくは試験細胞の抽出物、またはその組み合わせのうちの一つが含まれる; そして複数の、試験細胞、または試験細胞の抽出物のそれぞれが、同じもしくは異なる、またはその組み合わせである。
【0074】
本発明の方法を高速大量処理の形式に適用する際に、試験細胞、または試験細胞の抽出物は、アレイ(これはアドレス可能なアレイとすることができる)の、マイクロチップ、ガラススライド、またはビーズのような固体支持体上に配列することができ、その細胞(または抽出物)を、本明細書に開示のオリゴヌクレオチド・プローブまたはプライマー(もしくはプライマー対)と連続的にまたは並行して接触させることができる。アレイにまたはその他に再現可能な形態で配列される試料には、アドレス(即ち、アレイ上での位置)を割り当て可能であり、それによって試料の起源の同定が容易となる。試料をアレイに、特にアドレス可能なアレイに配列することのさらなる利点は、さまざまな時点で、試薬を添加するか試料の一つもしくは複数から試薬を除去するのに、または特定の試料に異なる試薬を添加するのに、自動システムを使用できることである。多数の試料を同時に調べることの利便性に加え、そのような高速大量処理試験により、単一試料の一定分量を二重、三重、またはそれ以上で調べるための手段が提供され、それによって得られる結果の有効性が高まる、および試験試料と同じ条件の下で対照試料を調べるための手段が提供され、それによって異なる試験から得られる結果を比較するための内部標準が得られる。好都合なことに、アレイのある位置の細胞または抽出物を、区別して標識されているかまたは区別できる産物を産生する反応物を含む、オリゴヌクレオチドのプローブまたはプライマー(もしくはプライマー対)の二つまたはそれ以上と接触させることができ、それによって多重アッセイを行うための手段が提供される。そのようなアッセイにより、試験細胞において後生的に沈黙化された遺伝子を同定するため、1つまたは複数の、特に2、3、4、5、10、15、20、またはそれ以上の遺伝子の試験が可能とされ得る。
【0075】
本発明により同様に、後生的に沈黙化された遺伝子(またはそれがないこと)を同定するためのプローブまたはプライマーとして有用となり得る、オリゴヌクレオチドが提供される。本明細書では、「オリゴヌクレオチド」、「ポリヌクレオチド」、または「核酸」という用語は広く、ホスホジエステル結合によりともに結合されている、二つまたはそれ以上のデオキシリボヌクレオチドまたはリボヌクレオチドの配列を意味するように使用される。「遺伝子」という用語は同様に、ゲノム中に含まれるポリヌクレオチド配列を指すようにも本明細書で使用される。しかし、当然のことながら遺伝子の一部を含む核酸は、細胞から単離できることまたはゲノムDNAとして、例えば、ハイブリダイゼーション反応またはPCR反応により調べることができる。従って、ゲノム中で、遺伝子が始まるまたは終わる特定のヌクレオチドの位置が必ずしも明確であるとは限らないが、本発明では、遺伝子は、本明細書で同定されたおよび/または調べられた種々の遺伝子に関して表1に示されるGenBankアクセッション番号に記載のヌクレオチド配列を少なくとも含む不連続の核酸であると考えられる。
【0076】
議論の便宜上、「オリゴヌクレオチド」という用語は本明細書では、プローブまたはプライマーとして使用されるポリヌクレオチドを指すように用いられる一方で、「ポリヌクレオチド」、または「核酸」という用語は、オリゴヌクレオチドを含む、二つまたはそれ以上のヌクレオチドからなる任意の配列を包含するようにより広く用いられる。さらに、「ヌクレオチド配列」という用語は、アレイ上に存在する分子を指すように用いられる。従って、当然ながら異なる核酸を都合よく区別するため、種々の用語が本明細書で使用される。従って、その用語には、遺伝子またはその一部、cDNA、合成ポリデオキシリボ核酸の配列などとできる、RNAおよびDNAが含まれる。一般に、オリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドは、一本鎖または二本鎖、ならびにDNA/RNAハイブリッドとすることができるが、当然ながらプローブまたはプライマーとして使用される二本鎖オリゴヌクレオチドの鎖は、例えば、そのオリゴヌクレオチドを含む溶液を、その特定のオリゴヌクレオチドの融解温度を超えるように加熱することで分離される。
【0077】
本明細書で使用される「オリゴヌクレオチド」、「ポリヌクレオチド」などの用語には、細胞から単離できる天然に存在する核酸分子のほか、例えば、制限エンドヌクレアーゼ消化により産生されるその断片、および例えば、化学合成法によりまたはPCRによるような酵素法により調製できる合成分子が含まれる。種々の態様として、本発明のオリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドは、ヌクレオシドもしくはヌクレオチド類似体、またはホスホジエステル結合以外の骨格結合、例えば、チオジエステル結合、ホスホロチオエート結合、ペプチド様結合もしくは合成ポリヌクレオチドを産生するためヌクレオチドを連結するのに有用な、当業者に周知の他の任意の結合を含むことができる(例えば、Tamら、Nucl. Acids Res. 22:977〜986, 1994; Eckerおよび Crooke, BioTechnology 13:351360, 1995を参照されたい、これらのそれぞれが参照として本明細書に組み入れられる)。天然に存在しない、ヌクレオチド類似体またはヌクレオチドもしくは類似体を連結する結合を組み込むことは、ポリヌクレオチドが例えば、組織培地、細胞、または生存被検体中を含む、核酸分解活性を含み得る環境に曝されるような場合、分解に対して感受性がより低くなるように(または、必要に応じて、より高くなるように)修飾ポリヌクレオチドを設計できるため、特に有用となり得る。
【0078】
一般に、ポリヌクレオチドを含むヌクレオチドは、天然に存在する、2'-デオキシリボースに連結されたアデニン、シトシン、グアニンもしくはチミンのようなデオキシリボヌクレオチド、またはリボースに連結されたアデニン、シトシン、グアニンもしくはウラシルのようなリボヌクレオチドである。しかし、ポリヌクレオチド(またはオリゴヌクレオチド)には同様に、天然には存在しない合成ヌクレオチドまたは天然に存在するヌクレオチドの修飾型を含む、ヌクレオチド類似体が含まれてもよい。そのようなヌクレオチド類似体は、当技術分野においてよく知られかつ市販されており、そのような類似体を含むポリヌクレオチドについても同様である(Linら、Nucl. Acids Res. 22:5220〜5234, 1994; Jellinekら、Biochemistry 34:11363〜11372, 1995; Pagratisら、Nature Biotechnol. 15:68〜73, 1997、これらのそれぞれが参照として本明細書に組み入れられる)。
【0079】
天然に存在するヌクレオチドおよびホスホジエステル結合を含むポリヌクレオチドは、化学的に合成することができるまたは適当なポリヌクレオチドを鋳型として用い、組換えDNA法により産生することができる。T7ポリメラーゼのような酵素は、ある種のヌクレオチド類似体をポリヌクレオチドに組み込むことができ、故に、適当な鋳型から組換え的にそのようなポリヌクレオチドを産生するために使用することができるが、相対的には、ヌクレオチド類似体またはホスホジエステル結合以外の共有結合を含むポリヌクレオチドは一般に、化学的に合成されるものと思われる(Jellinekら、上記, 1995)。従って、ポリヌクレオチドは、例えば、ジエチルホスホルアミダイトを用いるような自動化方法を含む、従来型のホスホトリエステルおよびホスホジエステル法のような方法(Beaucageら、Tetrahedron Lett., 22:1859〜1862, 1981を参照されたい)、またはオリゴヌクレオチドが改変型固体支持体上で合成される方法(米国特許第4,458,066号を参照されたい)により調製することができる。
【0080】
標的核酸に選択的にハイブリダイズできかつ遺伝子の発現および/またはメチル化(またはメチル化されていないこと;「非メチル化」)を検出するための試薬として使用できる、本発明のオリゴヌクレオチドは、標的遺伝子の約2000ヌクレオチド上流(5'側)または下流(3'側)以内の、および一般にシトシンのメチル化について調べられるCpGアイランドを含む領域の約1000ヌクレオチド以内の、通常は調べられる部位の約500ヌクレオチド以内のヌクレオチド配列に選択的にハイブリダイズするように設計される。さらに、上述のように、本発明のオリゴヌクレオチド、または本発明の方法に有用なオリゴヌクレオチドは、長さが少なくとも約12ヌクレオチド、一般に長さが少なくとも約14または15ヌクレオチド、通常は少なくとも約18〜20ヌクレオチドであり、オリゴヌクレオチドが標的核酸に選択的にハイブリダイズできるように、長さが約25、30、35またはそれ以上のヌクレオチドとすることができる(例えば、表2、3、および4を参照されたい)。当然ながらオリゴヌクレオチドの長さは、部分的には、標的遺伝子に依存するものと思われる。例えば、標的遺伝子が、実質的な配列類似性の領域を有する密接に関連する遺伝子ファミリーのうちの一つである場合、標的遺伝子との選択的ハイブリダイゼーションと、もしあれば、関連遺伝子配列/配列(複数)との最小限の交差ハイブリダイゼーションが確実とされるように、より長いオリゴヌクレオチドを使用することができる。
【0081】
本発明のオリゴヌクレオチドは、ゲノム座に対応する二本鎖核酸の少なくとも片方の鎖に(または介在配列が増幅されるような場合には両鎖のそれぞれに)実質的に相補的となるように設計され、それらのオリゴヌクレオチドがメチル化シトシン残基と非メチル化シトシン残基を区別するために使用されるような場合には、上述のように、適当なグアニンまたはシトシン残基を含むものと思われる。本発明のオリゴヌクレオチドは、1) 標的遺伝子のヌクレオチド配列のRT-PCRに有用な増幅プライマー対(例えば、表4、配列番号:149〜296を参照されたい); 2) 標的遺伝子のヌクレオチド配列のメチル化特異的もしくは非メチル化特異的増幅に有用な増幅プライマー対(例えば、表2、表中でMSP(M)はメチル化特異的プライマー対(例えば、配列番号:3および4)を示しそしてMSP(U)は非メチル化特異的プライマー対(例えば、配列番号:5および6)を示す、同様に、表3も参照されたい); または3) 重亜硫酸塩PCRに有用な増幅プライマー対(例えば、表2、配列番号:1および2を参照されたい)により例示される。
【0082】
従って、本発明により、配列番号:1〜296のいずれか一つから選択されるオリゴヌクレオチドが提供され、および配列番号:1〜296として記載のオリゴヌクレオチドの少なくとも二つ(例えば、2、3、4、5、またはそれ以上)を含む、そのようなオリゴヌクレオチドの複数がさらに提供され、その際に、場合によっては、例えば、標的配列がメチル化されているかメチル化されていないかに応じて、増幅プライマー対は、表1に掲載の遺伝子のヌクレオチド配列を増幅することができる。本発明により同様に、フォワード・プライマーおよびリバース・プライマーを含む増幅プライマー対、特に、表2、3および4に記載のフォワード・プライマー、リバース・プライマーまたはプライマー対の両方(例えば、配列番号:1および2、配列番号:3および4; 配列番号:5および6など)とできる、配列番号:1〜296のオリゴヌクレオチドの一つ、および特に二つを含むプライマー対が提供される。
【0083】
一つの局面として、本発明の増幅プライマー対は、核酸のメチル化5'調節領域を特異的に増幅するのに使用することができ、そのような増幅プライマー対は、メチル化5'調節領域を有するSFRPファミリーメンバーを増幅できる、配列番号:23および24、配列番号:111および112、配列番号:115および116、配列番号:119および120、配列番号:125および126、配列番号:129および130、配列番号:133および134、配列番号:139および140または配列番号:143および144により例示される(表2および3を参照されたい)。別の局面として、本発明の増幅プライマー対は、核酸の非メチル化5'調節領域を特異的に増幅するのに使用することができ、そのような増幅プライマー対は、非メチル化5'調節領域を有するSFRPファミリーメンバーを増幅できる、配列番号:25および26、配列番号:113および114、配列番号:117および118、配列番号:121および122、配列番号:127および128、配列番号:131および132、配列番号:135および136、配列番号:141および142または配列番号:145および146により例示される(表2および3を参照されたい)。
【0084】
本発明は同様に、本発明の少なくとも一つの単離されたオリゴヌクレオチドを含む、例えば、複数のそのような単離されたオリゴヌクレオチドを含む、キットに関する。一つの態様として、本発明のキットの複数の単離されたオリゴヌクレオチドは、少なくとも一組の増幅プライマー対(例えば、フォワード・プライマーおよびリバース・プライマー)を含み、そして例えば、表2、表3、および/または表4に記載の増幅プライマー対を含む、複数組の増幅プライマー対を含むことができる。従って、本発明のキットは、例えば、一つまたは複数の種類のガン細胞でメチル化により沈黙化されていることが知られているまたはその疑いがある特定遺伝子のメチル化型または非メチル化型を増幅するのに有効な、メチル化特異的プライマー対および非メチル化特異的プライマー対を含む、一組のまたは複数組の、メチル化特異的増幅プライマー対、非メチル化特異的増幅プライマー対、またはメチル化特異的増幅プライマー対および非メチル化特異的増幅プライマー対の組み合わせを含むことができる。
【0085】
本発明のキットは、例えば、キットのオリゴヌクレオチドが有効なある目的に役立ち得る、追加試薬をさらに含むことができる。例えば、キットに一つまたは複数のメチル化特異的および/または非メチル化特異的増幅プライマーが含まれる場合、キットには、例えば、対照用ポリヌクレオチド(これはメチル化または非メチル化とすることができる); メチル化シトシン残基を修飾する一つまたは複数の試薬、および/または増幅反応を行うための一つもしくは複数の試薬がさらに含まれ得る。キットに、メチル化遺伝子配列にまたは非メチル化遺伝子配列に選択的にハイブリダイズする一つまたは複数のオリゴヌクレオチドが含まれる場合、キットには、例えば、メチル化感受性制限エンドヌクレアーゼがさらに含まれ得る。本発明のキットは同様に、少なくとも第二のプライマー対を含むこともでき、そのプライマーは、上記に掲載されるプライマー対の一つとできるが、それが必要とされるわけではなく、例えば、ネスト化増幅反応に有効とすることができる。そのようなさらなるプライマー対は、標的遺伝子に関連するGenBankアクセッション番号(表1を参照されたい)の利用可能な配列情報を用い、標的遺伝子の増幅部分の予測配列に基づいて設計することができる。
【0086】
一つの態様として、本発明のキットは、同じ標的遺伝子に特異的な、メチル化特異的プライマー対および非メチル化特異的プライマー対を含み、それによってキットの使用者は特定の標的遺伝子がメチル化されているかメチル化されていないかを決定することができる。別の態様として、キットは、複数のそのようなメチル化特異的および非メチル化特異的プライマー対を含み、それによって使用者は一つまたは複数の標的遺伝子のメチル化を決定することができる。例えば、そのようなキットは、配列番号:3および4に記載のプライマー対(表2; MSP(M)を参照されたい)ならびに配列番号:5および6に記載のプライマー対(表2; MSP(U))を含むことができ、それによってS100A10遺伝子(同様に、GenBankアクセッション番号AA44051; 表1も参照されたい)の5'調節領域がメチル化されているかメチル化されていないかを決定するのに有用な増幅プライマー対が提供される。メチル化および/または非メチル化特異的プライマー対のさらなる組み合わせは、表2および3を参照することにより決定することができ、それによって異なる遺伝子のおよび/またはSFRP遺伝子ファミリーのような遺伝子ファミリーの異なるメンバーのメチル化状態の決定を可能とするキットが提供される。そのようなキットは、メチル化特異的または非メチル化特異的プライマー対を用いて産生される、予測増幅産物に選択的にハイブリダイズするオリゴヌクレオチドを含むプライマー対をさらに含むことができ、それによってネスト化増幅手順を行うのに有用な試薬が提供される。
【0087】
本発明のキットは同様に、キットのオリゴヌクレオチドに連結され得るかまたは組み込まれ得る検出可能な標識、または使用者の要求に応じ、特定の用途に対して選択され得るような複数の異なる検出可能な標識、および、必要に応じて、検出可能な標識をオリゴヌクレオチドに連結するかまたは組み込むための試薬を含むことができる。或いは、またはさらに、キットは、選択的ハイブリダイゼーション条件が容易に得られるようにハイブリダイゼーション反応を行うのに有用な一つもしくは複数の試薬を含むことができる; および/または一つもしくは複数の標準核酸、例えば、オリゴヌクレオチドが選択的にハイブリダイズするように設計される領域に対応するメチル化シトシン残基を含む標的SFRP1ヌクレオチドの標準配列、もしくは標的配列に対応する非メチル化シトシン残基を含む標的SFRP1ヌクレオチドの標準配列、またはその組み合わせを含むことができる。そのような標準により、例えば、試験細胞、またはその抽出物が適切に機能したことの確認が可能となること、または異なる時点で調べられたもしくは異なる起源から集められた試料間での比較が可能となることを含む、いくつかの利点が得られる。
【0088】
キットがプライマー伸長(または増幅)反応を行うのに有用な一つまたは複数のオリゴヌクレオチドを含む場合、キットは、そのオリゴヌクレオチドによって伸長反応の基質が供与されるような選択的ハイブリダイゼーション反応を行うための試薬; および/もしくはプライマー伸長(または増幅)反応を行うための一つまたは複数の試薬、例えば、dNTP(この一つまたは複数を検出可能に標識する或いは検出可能な標識を都合よく連結させるために修飾することができる); 一つまたは選択のポリメラーゼ; ならびに/または一つもしくは複数の標準となる標的核酸をさらに含むことができる。本発明のキットが、本明細書に例示されるもののような或いは本発明の方法を実践するのに有用な、二つまたはそれ以上のオリゴヌクレオチド(またはプライマー対)を含む場合、必要に応じて、当業者が一つまたは複数のオリゴヌクレオチド(またはプライマー対)を選択できる、便利な試薬情報がキットにより提供される。
【0089】
本発明は同様に、少なくとも一つのガン関連遺伝子の転写の後生的な沈黙化を示す、細胞の調節不能な増殖を減少させるかまたは阻害する方法に関する。そのような方法は、例えば、細胞中の後生的に沈黙化された遺伝子によりコードされるポリペプチドの発現を回復させる段階、それによって細胞の調節不能な増殖を減少させるかまたは阻害する段階により実践することができる。例えば、細胞を脱メチル化剤(例えば、メチル基転移酵素阻害剤)、ヒストン脱アセチル化酵素阻害剤、またはその組み合わせと接触させることにより、その発現を回復させることができる。
【0090】
一つの態様として、後生的に沈黙化された遺伝子は、メチル化により沈黙化された遺伝子であり、その方法には、細胞を少なくとも一つの脱メチル化剤、例えば、DACと接触させる段階が含まれる。一つの局面として、細胞を脱メチル化剤とインビトロで、例えば、培養液または細胞の生存を助長するその他の媒体中で接触させることができる。必要に応じて、脱メチル化剤と接触させた細胞をさらに、被検体に投与することができる。別の局面として、調節不能な増殖を示す細胞が薬剤と接触するように、薬剤を被検体に投与することができる。
【0091】
別の態様として、その方法には、ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを細胞に導入する段階が含まれ、それによってポリペプチドがポリヌクレオチドから発現され、その結果、細胞中のポリペプチドの発現を回復させる。ポリヌクレオチドは、ベクター、例えば、ウイルス・ベクター中に含有させることができる、および/またはポリヌクレオチドの細胞への導入を促進するマトリクス、例えば、リポソームもしくは超微粒気泡の中に製剤化することができるが、それが必要とされるわけではない。細胞をポリヌクレオチドとエクスビボで接触させることにより、ポリヌクレオチドを細胞に導入することができ、その場合には、ポリヌクレオチドを含む細胞を被検体に投与することができるが、それが必要とされるわけではない。細胞をポリヌクレオチドとインビボで接触させることにより、ポリヌクレオチドを細胞に導入することもできる。
【0092】
後生的に沈黙化された遺伝子は、本明細書に開示の方法を用い、そして特定のガン細胞の種類のような特定の細胞の種類を調べて同定される任意の遺伝子とすることができる。結腸直腸ガン細胞で後生的に沈黙化された遺伝子は、表1に、そのGenBankアクセッション番号が掲載された遺伝子により本明細書に例示される。表1の遺伝子の一部を含むポリヌクレオチド配列は、例えば、表3に記載の増幅プライマー対(配列番号:149〜296)を用いて、結腸直腸ガン細胞から得られる核酸のRT-PCRにより得ることができる。結腸直腸ガン細胞および/または胃ガン細胞で後生的に沈黙化された遺伝子は、検出可能な基底発現を示さず、かつDACで処理すると再発現するが、TSAでは再発現しない、PTGS2、CDKN2A、TIMP3、S100A10、SFRP1、CXX1、SEZZ6L、KIAA0786、TIMP2、PCDH8、FOLH1、およびSNRPN遺伝子; 基底発現レベルがDACで処理すると増加するが、TSAでは増加しない、HOXA1、GR03、およびDLX7遺伝子; ならびにTSA単独で上方制御される一方で、その基底発現およびDACによる上方制御が遺伝子間で異なる、POR1、MBNL、TRADD、PDIP、RAD23B、RPL13、GNAI2、PPP1R21A、FPGT、およびTRIM32遺伝子により例示される。
【0093】
本発明は同様に、ガン患者を治療するための治療方針を選択するための方法に関する。そのような方法は、例えば、本明細書に開示の方法に従って、ガンと関連する少なくとも一つのメチル化沈黙化遺伝子を同定する段階(即ち、ゲノムを代表するヌクレオチド配列のアレイを、核酸のサブトラクション産物と接触させる段階およびアレイのヌクレオチド配列の部分母集団との核酸のサブトラクション産物の選択的ハイブリダイゼーションを検出する段階); および患者のガン細胞で同定されたメチル化沈黙化遺伝子の一つまたは複数の発現を回復させるのに有効な薬剤を選択する段階により行うことができる。例えば、選択される薬剤は、同定されたメチル化沈黙化遺伝子をコードするポリヌクレオチド、例えば、PTGS2、CDKN2A、TIMP3、S100A10、SFRP1、CXX1、SEZZ6L、KIAA0786、TIMP2、PCDH8、FOLH1、SNRPN、HOXA1、GRO3、もしくはDLX7遺伝子、そのような遺伝子のファミリーメンバー、またはそのような遺伝子の組み合わせによりコードされるポリペプチドをコードするポリヌクレオチドとすることができる。メチル化沈黙化遺伝子の発現を回復させるために選択される薬剤は同様に、DACのような脱メチル化剤とすることもできる。
【0094】
従って、本発明により、患者のガン細胞が、少なくとも一つの遺伝子の発現の後生的な沈黙化を示す、ガン患者を治療するための方法が提供される。そのような方法は、例えば、患者のガン細胞の一つまたは複数の後生的な沈黙化遺伝子の発現を回復させる段階により行うことができる。例えば、少なくとも一つの後生的な沈黙化遺伝子が、メチル化沈黙化遺伝子である場合、被検体のガン細胞のメチル化沈黙化遺伝子/遺伝子(複数)の発現を回復させるのに十分な量の脱メチル化剤を被検体に投与することにより、患者を治療することができる。或いは、またはさらに、患者のガン細胞での少なくとも一つのポリペプチドの発現に十分な条件の下で、一つまたは複数の後生的な沈黙化遺伝子によりコードされる、少なくとも一つのポリペプチドをコードする少なくとも一つのポリヌクレオチドを被検体に投与することにより、患者を治療することができる。ポリヌクレオチドを患者に投与する場合、ポリヌクレオチドは、ベクター(例えば、ウイルス・ベクター)、好ましくは発現ベクター中に含有させることができる、および/または標的ガン細胞によるポリヌクレオチドの取り込みを促進するマトリクス中に(例えば、リポソーム中に)製剤化することができる。
【0095】
本発明の方法により治療されるガンは、例えば、ガン腫または肉腫を含む、任意の種類のガンとすることができる。例えば、ガンが結腸直腸ガン、胃ガン、または結腸直腸ガンかつ胃ガンである場合、PTGS2、CDKN2A、TIMP3、S100A10、SFRP1、CXX1、SEZZ6L、KIAA0786、TIMP2、PCDH8、FOLH1、SNRPN、HOXA1、GRO3、DLX7、POR1、MBNL、TRADD、PDIP、RAD23B、RPL13、GNAI2、PPP1R21A、FPGT、TRIM32遺伝子、そのファミリーメンバー、またはその組み合わせを含む、一つまたは複数の後生的な沈黙化遺伝子の発現を回復させることにより、患者を治療することができる。SFRP1、SFRP2、SFRP4、およびSFRP5遺伝子を含む、SFRP遺伝子により、結腸直腸ガン細胞、胃ガン細胞、または両方で、遺伝子ファミリーの一つまたは複数が後生的に沈黙化されたその例が示される。
【0096】
一つの態様として、ガンと関連する細胞が少なくとも一つのメチル化沈黙化遺伝子を含む、結腸直腸ガン、胃ガン、または両方に苦しむ被検体を治療するための方法が提供される。そのような方法は、例えば、少なくとも一つのメチル化沈黙化遺伝子の発現を回復させる薬剤の量を、ガンと関連する細胞のメチル化沈黙化遺伝子の発現を回復させるに足る被検体に投与する段階により行うことができる。その薬剤は、少なくとも一つのメチル化沈黙化遺伝子をコードするポリヌクレオチド、例えば、PTGS2、CDKN2A、TIMP3、S100A10、SFRP1、CXX1、SEZZ6L、KIAA0786、TIMP2、PCDH8、FOLH1、SNRPN、HOXA1、GR03、および/もしくはDLX7遺伝子、そのファミリーメンバーによりコードされるポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、またはその組み合わせとすることができる; またはDACのような脱メチル化剤とすることができる。結腸直腸ガン、胃ガン、または両方に苦しむ被検体を治療するのに有効な薬剤を、エクスビボでそのガンの細胞と接触させることができ、その後、その細胞を患者に投与して戻すことができる; または薬剤を患者のガン細胞部位に投与することができる。
【0097】
細胞中の一つまたは複数の遺伝子の転写のメチル化による沈黙化の結果として、その遺伝子産物/産物(複数)が細胞中に存在せず、それ故、コードされる遺伝子産物/産物(複数)がないことに関連した機能喪失が存在する。例えば、SFRP遺伝子ファミリーメンバーは、WNT/frizzledシグナル伝達に対抗することができる(Finchら、Proc. Natl. Acad. Sci., USA 94:6770〜6775, 1997; Rattnerら、Proc. Natl. Acad. Sci., USA 94:2859〜2963, 1997)。従って、一つまたは複数のSFRP遺伝子の機能喪失により、全体の腫瘍抑制経路が抑止される可能性がある。同様に、PCDH8遺伝子は、細胞接着分子ファミリーのメンバーをコードし、その機能の喪失が腫瘍の浸潤および転移に重要であることが知られている(Strehlら、Genomics 53:81〜89, 1998)。従って、本発明の方法は、後生的に沈黙化された、特にメチル化により沈黙化された遺伝子発現が原因で調節不能な増殖を示す細胞に、そのメチル化により沈黙化された遺伝子によりコードされるポリペプチドを投与すること、それによって調節された増殖を細胞に回復させることに基づく。本明細書に開示されるように、ポリペプチドは、細胞に直接投与することができる、細胞中に導入されかつそのポリペプチドをコードする外来性ポリヌクレオチドから、または細胞中の内在性メチル化沈黙化遺伝子の発現を回復させることにより発現させることができる。調節不能な増殖を示す細胞にポリペプチドを回復させることによって、また、例えば、軟寒天中で増殖する能力、増殖の接触阻止の欠如、またはプログラム化された細胞死に対する不応状態を含む、調節不能な増殖と一般に関連付けられる特性が軽減される。
【0098】
表1に示される一つまたは複数の遺伝子のような、一つまたは複数のメチル化沈黙化遺伝子の発現は、例えば、細胞をDAC(これが、細胞の複製の間に遺伝子に組み込まれると、転写可能とされる、非メチル化遺伝子を含む子孫細胞が生じる)のような脱メチル化剤と接触させて回復させることができる。脱メチル化剤と接触させる細胞は、培養細胞とすることができ、その際に脱メチル化剤は、細胞に対する毒性なしに、標的遺伝子の脱メチル化を引き起こすのに十分な量で細胞培地に添加される。培養細胞は、樹立細胞株の細胞とすることができる、または例えば、特定の脱メチル化剤との接触により標的遺伝子/遺伝子(複数)の発現が回復し得るか、および従って、被検体に投与された場合に有効となり得るかどうかを決定するため、被検体から取り出されかつエクスビボで接触されている、細胞とすることができる(これは細胞の混合集団であってもよい)。細胞のそのようなエクスビボ処理はまた、標的遺伝子の発現を回復させるのに有効となる可能性があり、その処理の後、その細胞(これを選択的に培養で増やすことができる)を被検体に投与して戻すことができる。そのような方法、ならびに本明細書に開示の処置方法のどれも、特定のガンを患う被検体を治療するのに有効な当技術分野においてその他周知の処置、または本方法と組み合わせて使用する場合に、新たに有効となり得る処置をさらに含むことができる。
【0099】
遺伝子発現のメチル化による沈黙化を示す細胞は同様に、脱メチル化剤を被検体に投与することにより、その薬剤とインビボで接触させることができる。都合がよければ、脱メチル化剤を、例えば、カテーテル法を用いて、被検体の調節不能な増殖を示す細胞の部位にもしくはその近傍に、またはその細胞の部位に向かって血液が流れている血管壁中に、投与することができる。同様に、治療される器官、またはその一部をシャント法により単離することができる場合、シャントを介して薬剤を投与することができ、それによって細胞を含む部位に薬剤を実質的に投与することができる。薬剤は同様に、全身にまたは本明細書に開示のもしくは当技術分野においてその他周知の他の経路を介して投与することができる。
【0100】
後生的な沈黙化遺伝子によって減少しているかまたは存在していないポリペプチドは同様に、そのポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを細胞に導入することで細胞に供給することができ、それによって細胞中でポリペプチドがポリヌクレオチドから発現される。従って、本発明により、インビボまたはエクスビボで実践可能な、遺伝子治療法が提供される。例えば、細胞がSFRP1遺伝子の転写のメチル化による沈黙化を特徴とする場合、GenBankアクセッション番号N32514(表1を参照されたい)に記載のヌクレオチド配列を有するポリヌクレオチドを標的細胞に導入することができる。
【0101】
ポリヌクレオチドは、ポリペプチドをコードする配列に加えて、操作可能に連結された転写調節要素、翻訳調節要素などを含むことができ、そして裸のDNA分子の形態とすることができるが、これをベクター中に含有させてもよく、またはポリヌクレオチドの特定細胞への移入を容易とするリポソームもしくは超微粒気泡のようなマトリクス中に製剤化してもよい。本明細書では、「操作可能に連結された」という用語は、二つまたはそれ以上の分子が、単一ユニットとして作用しかつ一方のもしくは両方の分子またはその組み合わせによる機能をもたらすように相互に配置される、二つまたはそれ以上の分子を指す。例えば、操作可能に連結されたコード配列からキメラポリペプチドが発現されるように、SFRP1遺伝子のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを、第二の(またはそれ以上の)コード配列に操作可能に連結することができる。キメラポリペプチドは、二つの(またはそれ以上の)コードされるポリペプチドが単一ポリペプチドに翻訳される、即ち、ペプチド結合を介して共有結合される、融合タンパク質とすることができる; または二つの別個のペプチドとして翻訳させることができ、翻訳されると、それらは相互に動作可能に会合して安定な複合体を形成することができる。同様に、所望のポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列を、調節要素に操作可能に連結することができ、その場合には、調節要素は細胞中で通常関連するポリヌクレオチド配列に効果を及ぼすのと同様な形で、調節要素はポリヌクレオチドにその調節効果を及ぼす。
【0102】
融合タンパク質は一般に、そのポリペプチド構成要素のそれぞれの特性のいくつかまたは全てを示し、そして、故に、細胞での遺伝子発現を回復させるのに役立ち得るし、さらなる利点をさらに与え得る。例えば、融合タンパク質は、細胞で融合タンパク質を発現させることまたは細胞に融合タンパク質を充填することにより、融合タンパク質がその活性をもたらす、核のような細胞内区画へのそのコードされるポリペプチドの移動が可能となるように、細胞区画局在化ドメインに操作可能に連結された、そのコード遺伝子の後生的な沈黙化によって普通なら減少しているかまたは存在していないポリペプチドを含むことができる。細胞区画化ドメインは、例えば、よく知られており、原形質膜局在化ドメイン、核局在化シグナル、ミトコンドリア膜局在化シグナル、小胞体局在化シグナルなどのほか、細胞からのポリペプチドの分泌を可能とするシグナルペプチドを含む(例えば、Hancockら、EMBO J. 10:4033〜4039, 1991; Bussら、Mol. Cell. Biol. 8:3960〜3963, 1988; 米国特許第5,776,689号を参照されたい、これらのそれぞれが参照として本明細書に組み入れられる)。融合タンパク質は同様に、融合タンパク質が所望のポリペプチドのタンパク質活性、例えば、WNT/frizzled活性に対抗する際のSFRPポリペプチド活性を有するという条件で、受容体に対するリガンドとして作用するペプチド、ポリペプチドが発現される細胞を同定するための、もしくは融合タンパク質を単離するためのタグとして有用なペプチド、または関心のあるその他のペプチドもしくはポリペプチドに操作可能に連結された所望のポリペプチドを含むことができる。ニッケルイオン、コバルトイオンなどのような二価陽イオンを用いて検出できる、ポリヒスチジン・タグ・ペプチド、例えば、His-6のようなペプチド・タグ; 抗FLAG抗体を用いて検出できる、FLAGエピトープ(例えば、Hoppら、BioTechnology 6:1204(1988); 米国特許第5,011,912号を参照されたい、これらのそれぞれが参照として本明細書に組み入れられる); エピトープに対する特異抗体を用いて検出できる、c-mycエピトープ; ストレプトアビジンまたはアビジンを用いて検出できる、ビオチン; およびグルタチオンを用いて検出できる、グルタチオンS-トランスフェラーゼは、当技術分野においてよく知られており、それらに操作可能に連結されたポリペプチドの存在を検出する手段を与える。例えば、実質的に精製された形でポリペプチドを得ることが望まれる場合、そのようなタグにより、操作可能に連結されたポリペプチドの単離を容易にすることができるというさらなる利点が得られ、そのようなポリペプチドは同様に、本発明の方法を実践するのに有効となる。
【0103】
後生的に沈黙化された遺伝子によりコードされるポリペプチドを別の方法でコードするポリヌクレオチドは、単独で使用することができる、またはポリヌクレオチドの標的細胞への導入を含め、ポリヌクレオチドの操作を容易にすることができる、ベクター中に含有させることができる。ベクターは、ポリヌクレオチドを操作するのに有効な、クローニング・ベクターとすることができる、またはポリヌクレオチドのほかに、特定細胞でポリヌクレオチドおよびコードされるポリペプチドを発現させるのに有効な調節要素を含む、発現ベクターとすることができる。発現ベクターは、例えば、コード化ポリヌクレオチドの持続転写を達成するのに必要な発現要素を含むことができる、またはポリヌクレオチドがベクターにクローニングされる前に、調節要素をポリヌクレオチドに操作可能に連結することができる。
【0104】
発現ベクター(または所望のポリペプチドをコードするポリヌクレオチド)は一般に、コード化ポリヌクレオチドの構成的なまたは、必要に応じて、誘導的なもしくは組織特異的なもしくは成長段階特異的な発現を与え得るプロモーター配列、ポリ-A認識配列、およびリボソーム認識部位もしくは内部リボソーム侵入部位、または組織特異的とすることができる、エンハンサーのようなその他の調節要素を含むかまたはコードする。ベクターは同様に、必要に応じて、原核生物のもしくは真核生物の宿主系またはその両方での複製に必要とされる要素を含むことができる。プラスミド・ベクターならびにバクテリオファージ、バキュロウイルス、レトロウイルス、レンチウイルス、アデノウイルス、ワクシニア・ウイルス、セムリキ森林ウイルスおよびアデノ随伴ウイルス・ベクターのようなウイルス・ベクターを含む、そのようなベクターは、よく知られており、そして商業的供給源(Promega, Madison WI; Stratagene, La Jolla CA; GIBCO/BRL, Gaithersburg MD)から購入可能であり、または当業者により構築可能である(例えば、Meth. Enzymol., Vol. 185, Goeddel(編) (Academic Press社, 1990); Jolly, Canc. Gene Ther. 1:51〜64, 1994; Flotte, J. Bioenerg. Biomemb. 25:37〜42, 1993; Kirshenbaumら、J. Clin. Invest. 92:381〜387, 1993を参照されたい; これらのそれぞれが参照として本明細書に組み入れられる)。
【0105】
テトラサイクリン(tet)誘導プロモーターは、所望のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを発現させるのに特に有効となり得る。tet誘導プロモーターに操作可能に連結されたポリヌクレオチドを含む被検体に、テトラサイクリン、またはテトラサイクリン類似体を投与すると、コードされるポリペプチドの発現が誘導される。ポリヌクレオチドは同様に、ポリペプチドの発現が個体の特定細胞に、または培養細胞の混合集団、例えば、器官培養中の特定細胞に限定されるように、組織特異的調節要素、例えば、α-フェトプロテイン・プロモーター(Kanaiら、Cancer Res. 57:461〜465, 1997; Heら、J. Exp. Clin. Cancer Res. 19:183〜187, 2000)もしくはアルブミン・プロモーター(Powerら、Biochem. Biophys. Res. Comm. 203:1447〜1456, 1994; Kuriyamaら、Int. J. Cancer 71:470〜475, 1997)のような肝細胞特異的調節要素; ミオグロビン・プロモーター(Devlinら、J. Biol. Chem. 264:13896〜13901, 1989; Yanら、J. Biol. Chem. 276:17361〜17366, 2001)のような筋肉細胞特異的調節要素; PSAプロモーター(Schuurら、J. Biol. Chem. 271:7043〜7051, 1996; Lathamら、Cancer Res. 60:334〜341, 2000)のような前立腺細胞特異的調節要素; エラスターゼ・プロモーター(Ornitzら、Nature 313:600〜602, 1985; Swiftら、Genes Devel. 3:687〜696, 1989)のような膵臓細胞特異的調節要素; ロイコシアリン(CD43)プロモーター(Shelleyら、Biochem. J. 270:569〜576, 1990; KudoおよびFukuda、J. Biol. Chem. 270:13298〜13302, 1995)のような白血球特異的調節要素; または同種のものに操作可能に連結することもできる。組織特異的調節要素を含む、その多くが市販されている調節要素は、当技術分野においてよく知られている(例えば、InvivoGen; San Diego CAを参照されたい)。
【0106】
ウイルス発現ベクターは、ポリヌクレオチドを細胞、特に被検体の細胞中に導入するのに特に有用となり得る。ウイルス・ベクターにより、比較的高い効率で宿主細胞に感染できかつ特定の細胞型に感染できるという利点が得られる。例えば、所望のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを、バキュロウイルス・ベクターにクローニングすることができ、次いでこれを昆虫宿主細胞に感染させるのに使用することができ、それによってコードされるポリペプチドを大量に産生させるための手段が提供される。ウイルス・ベクターは同様に、関心のある生物の細胞、例えば、哺乳類、鳥類または魚類宿主細胞のような脊椎動物の宿主細胞に感染するウイルス由来とすることもできる。ウイルス・ベクターは、本発明の方法を行う際に有用なポリヌクレオチドを標的細胞に導入するのに特に有用となり得る。特定の宿主系、特に哺乳類系で使用するためのウイルス・ベクターが開発されており、例えば、レトロウイルス・ベクター、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)に基づくもののようなその他のレンチウイルス・ベクター、アデノウイルス・ベクター、アデノ随伴ウイルス・ベクター、ヘルペスウイルス・ベクター、肝炎ウイルス・ベクター、ワクシニア・ウイルス・ベクターなどを含む(MillerおよびRosman, BioTechniques 7:980〜990, 1992; Andersonら、Nature 392:25〜30 Suppl., 1998; VermaおよびSomia, Nature 389:239〜242, 1997; Wilson, New Engl. J. Med. 334:1185〜1187 (1996)を参照されたい、これらのそれぞれが参照として本明細書に組み入れられる)。
【0107】
ポリヌクレオチド(これをベクター中に含有させることができる)は、当技術分野において周知の種々の方法のいずれかにより細胞に導入することができる(Sambrookら、上記、1989; Ausubelら、Current Protocols in Molecular Biology, John WileyおよびSons, Baltimore, MD (1987、および1995年分までの補遺)、これらのそれぞれが参照として本明細書に組み入れられる)。そのような方法には、例えば、トランスフェクション法、リポフェクション法、マイクロインジェクション法、エレクトロポレーション法および、ウイルス・ベクターでは、感染法が含まれ; ならびにポリヌクレオチドの細胞への導入を容易とできかつ細胞へのその導入前にポリヌクレオチドを分解から保護できる、リポソーム、超微粒気泡などの使用が含まれ得る。特に有効な方法には、循環系に注入できる、超微粒気泡へのポリヌクレオチドの取り込みが含まれる。超音波が腫瘍に伝達されるように超音波源を配置することができ、その際にポリヌクレオチドを含む循環している超微粒気泡が超音波によって腫瘍部位で破壊され、それによってポリヌクレオチドをガンの部位に供給することができる。特定の方法の選択は、例えば、ポリヌクレオチドが導入される細胞のほか、細胞が、培養で単離されるかどうか、または培養のもしくは原位置の組織もしくは器官の中に存在しているかどうかに依存するものと思われる。
【0108】
ウイルス・ベクターを用いた感染による細胞へのポリヌクレオチドの導入は、エクスビボまたはインビボで細胞へ核酸を効果的に導入できるという点で特に有利である(例えば、米国特許第5,399,346号を参照されたい、これは参照として本明細書に組み入れられる)。さらに、ウイルスは非常に特殊化されており、一種類または数種類の特定の細胞型に感染してその中で増殖する能力に基づき、ベクターとして選択することができる。従って、ベクター中に含まれる核酸を特定の細胞型に標的化するのにそれら固有の特殊性を利用することができる。従って、T細胞に感染させるのにHIVに基づくベクターを使用することができる、例えば、呼吸上皮細胞に感染させるのにアデノウイルスに基づくベクターを使用することができる、神経細胞に感染させるのにヘルペスウイルスに基づくベクターを使用することができる、など。ウイルスまたは非ウイルス・ベクターは同様に、受容体媒介事象を介した標的特異性が変化するように特定の受容体またはリガンドに対して修飾することができるが、アデノ随伴ウイルスのようなその他のベクターは、宿主細胞の範囲をさらに広く持ち得ることから、それ故、種々の細胞型に感染させるのに使用することができる。本発明のポリヌクレオチド、またはポリヌクレオチドを含むベクターは、細胞、例えば、ポリヌクレオチドを含むベクターの増殖を可能とする宿主細胞、またはポリヌクレオチドを含むウイルス・ベクターのパッケージングを可能とするヘルパー細胞に含まれてもよい。ポリヌクレオチドは、細胞に一過的に含まれてもよく、または、例えば、細胞のゲノムへの組込みによって安定的に維持されてもよい。
【0109】
本発明の方法は同様に、調節不能な増殖を示す細胞に所望のポリペプチドを直接供給することにより実践することもできる。ポリペプチドは、本明細書に開示の方法を用いて、産出かつ単離することができ、さらに必要に応じて、製剤化することができる。ポリペプチドを、ポリペプチドが細胞膜を横断できるような細胞の十分な透過性をもたらす条件の下で、細胞とインビトロで接触させることができる、または細胞中へ微量注入することができる。所望のポリペプチドを生物の細胞と原位置で接触させる場合、ポリペプチドは、細胞膜を越えた輸送を容易とするペプチドまたはポリペプチド成分、例えば、ヒト免疫不全ウイルス(HIV) TATタンパク質の形質導入ドメインを含む、融合タンパク質を含むことができる、およびポリペプチドに操作可能に連結された核局在化ドメインをさらに含むことができる。或いは、またはさらに、ポリペプチドを、細胞へのポリペプチドの移入を容易とするマトリクス中に製剤化することができる。
【0110】
生存被検体への投与の場合、本発明の治療方法を実践するのに有用な、脱メチル化剤、ポリヌクレオチド、またはポリペプチドのような薬剤は一般に、被検体への投与に適した組成物中に製剤化される。従って、本発明により、一つまたは複数の遺伝子の転写がメチル化により沈黙化されたことが原因で調節不能な増殖を示す細胞に対し、調節された増殖を回復させるのに有用な薬剤を含む組成物が提供される。従って、薬剤は、そのような調節不能な増殖と関連した病的状態に苦しむ被検体を治療するための薬物として有用である。
【0111】
そのような組成物には一般に、薬剤を製剤化するおよび薬剤を被検体に投与するのに許容され得る担体が含まれる。そのような許容される担体は、当技術分野においてよく知られており、例えば、水もしくは緩衝生理食塩溶液のような水溶液またはグリコール、グリセロール、オリーブオイルのようなオイルもしくは注射可能な有機エステルのようなその他の溶媒もしくは媒体を含む。許容される担体には、例えば、複合体の吸収を安定化させるまたは増加させるように作用する、生理的に許容される化合物が含まれてもよい。そのような生理的に許容される化合物には、例えば、グルコース、スクロースもしくはデキストランのような糖質、アルコルビン酸もしくはグルタチオンのような抗酸化剤、キレート剤、低分子量タンパク質またはその他の安定剤もしくは賦形剤が含まれる。当業者であれば、生理的に許容される化合物を含む、許容される担体の選択は、例えば、治療薬の物理化学的特性におよび組成物の投与経路(これは例えば、経口的もしくは経静脈的のような非経口的な方法、および注射、挿管による方法、または当技術分野において知られる他のそのような方法とすることができる)に依存することを理解するものと思われる。薬学的組成物には同様に、診断薬のような第二試薬、栄養物質、毒物、または治療薬、例えば、ガン化学療法薬が含まれてもよい。
【0112】
薬剤は、水中油型乳剤、マイクロエマルション、ミセル、混合ミセル、リポソーム、ミクロスフェアまたはその他のポリマーマトリクス内のような封入材料内に組み込むことができる(例えば、Gregoriadis, Liposome Technology, Vol. 1 (CRC Press, Boca Raton, FL 1984); Fraleyら、Trends Biochem. Sci., 6:77 (1981)、これらのそれぞれが参照として本明細書に組み入れられる)。例えば、リン脂質またはその他の脂質からなるリポソームは、作製かつ投与するのが比較的容易な、無毒性の、生理的に許容されるおよび代謝性の担体である。「ステルス」リポソーム(例えば、米国特許第5,882,679号; 米国特許第5,395,619号; および米国特許第5,225,212号を参照されたい、これらのそれぞれが参照として本明細書に組み入れられる)は、本発明の方法で有用な組成物を調製するのに特に有効な、そのような封入材料の例であり、治療薬が循環系に残存する時間を引き延ばすリポソームのような、その他の「マスク型」リポソームを同様にして、使用することもできる。例えば、陽イオン性リポソームを同様に、特定の受容体またはリガンドに対して修飾することができる (Morishitaら、J. Clin. Invest., 91: 2580〜2585 (1993)、これは参照として本明細書に組み入れられる)。さらに、ポリヌクレオチド薬剤は、例えば、アデノウイルス-ポリリジンDNA複合体を用いて細胞に導入することができる(例えば、Michaelら、J. Biol. Chem. 268:6866〜6869 (1993)、これは参照として本明細書に組み入れられる)。
【0113】
治療薬を含む組成物の投与経路は、部分的には、分子の化学構造に依存するものと思われる。ポリペプチドおよびポリヌクレオチドは、例えば、経口投与されると、消化管で分解される可能性があるので、特に有用でない。しかし、ポリペプチドを、例えば、内在性プロテアーゼによる分解を受けにくくさせるかまたは消化管を介して吸収されやすくさせるために、これを化学的に修飾するための方法が本明細書に開示されている或いは当技術分野において周知である(例えば、Blondelleら、上記、1995; EckerおよびCrook、上記、1995を参照されたい)。さらに、ポリペプチド薬剤は、D-アミノ酸を用いて調製することができる、またはドメイン構造を模倣する有機分子である、ペプチド模倣体に基づく; もしくはビニロガス・ペプトイド(vinylogous peptoid)のようなペプトイドに基づく一つもしくは複数のドメインを含むことができる。
【0114】
本明細書に開示の組成物は、例えば、経口もしくは非経口、例えば、静脈内、筋肉内、皮下、眼窩内、関節内、腹腔内、直腸内、大槽内を含む種々の経路により、または例えば、皮膚パッチもしくは経皮的イオン導入法を用いてそれぞれ、皮膚を介した受動的吸収もしくは促進吸収により個体に投与することができる。さらに、組成物は、注射、挿管により、経口的にまたは局所的に投与することが可能であり、その後者は、例えば、軟膏の直接塗布により受動的とすることが可能であり、または、例えば、点鼻薬もしくは吸入薬(この場合には、組成物の一成分は適当な噴霧剤である)を用いて、能動的とすることが可能である。薬学的組成物を同様に、病的状態の部位に、例えば、腫瘍に供給を行っている血管中に経静脈的にまたは経動脈的に投与することができる。
【0115】
本発明の方法を実践する際に投与される薬剤の総量を、単一用量として、比較的短時間にわたって大量瞬時投与または注入により被検体に投与することができる、または複数回用量を長時間にわたって投与する、分割治療手順により投与することができる。当業者であれば、被検体の病的状態を治療するための組成物の量は、被検体の年齢および全般的な健康状態のほかに投与経路および投与される治療薬の数を含む多くの要因に依存することを理解するものと思われる。これらの要因を考慮して、当業者は、必要とさる特定用量を調整するものと思われる。一般に、組成物の剤形ならびに投与の経路および頻度は、第I相および第II相臨床試験により、最初に、決定される。
【0116】
組成物は、錠剤、または溶液もしくは懸濁形態のような、経口製剤として製剤化することができる; または経腸的なもしくは非経口的な使用に適した有機のもしくは無機の担体もしくは賦形剤との混合剤を含むことができ、そして例えば、錠剤、小丸薬、カプセル剤、坐剤、溶剤、乳剤、懸濁剤、または使用に適したその他の形態のための通常は無毒性の、薬学的に許容される担体と調合することができる。担体は、上記に開示されるものに加えて、グルコース、ラクトース、マンノース、アラビアゴム、ゼラチン、マンニトール、デンプン糊、三ケイ酸マグネシウム、タルク、コーンスターチ、ケラチン、コロイダル・シリカ、ジャガイモ・デンプン、尿素、中鎖トリグリセリド、デキストラン、および固形状の、半流動性の、または液状の形態として、製剤を製造する際の使用に適したその他の担体を含むことができる。さらに助剤、分解防止剤、増粘剤または着色剤および芳香剤、例えば、トリウロース(triulose)のような安定乾燥剤を使用することができる(例えば、米国特許第5,314,695号を参照されたい)。
【0117】
以下の実施例は、本発明を限定するものではなく例示することを意図するものである。
【0118】
実施例1 後生的に沈黙化された結腸直腸ガン関連遺伝子のゲノムスクリーニング
本実施例により、ガン細胞で後生的に下方制御される遺伝子を検出するための方法が提供され、そして結腸直腸ガンで後生的に下方制御されかつ結腸直腸ガンの指標となる遺伝子を同定することによりその方法の有効性が確認される(同様に、Suzukiら、Nature Genet. 31:141〜149, 2002、これは参照として本明細書に組み入れられる)。
【0119】
方法
細胞培養および組織試料
細胞株は、10%ウシ胎児血清を添加したRPMI 1640または最小必須培地(MEM)中で培養した。結腸直腸ガンおよび正常結腸粘膜の組織試料は、臨床的に必要な外科手術時に得た標本由来とした。
【0120】
DACおよびTSA処理ならびにRNA調製
RKO細胞を5-アザ-2'-デオキシシチジン(DAC; Sigma)および/またはトリコスタチンA(TSA; Wako)で、報告されている(Cameronら、上記、1999)ように処理した。簡単に言えば、処理は、処理開始から24時間の時点で薬剤および培地を交換しながら、DAC(200 nM)にて48時間、その後、TSAを最終濃度300 nMまで(エタノールに溶解された1.5 mMストックから)添加してさらに24時間のインキュベーションで構成された。細胞を同様に、DAC単独でもしくはTSA単独で処理し、または同量のPBSおよび/もしくはエタノール、および/もしくは同量の薬剤を使って模擬処理した。結腸直腸ガン(CRC)細胞株の一部を同様に、RT-PCR解析で遺伝子発現レベルがより強いことを評価するために処理した; 処理は、24時間毎に薬剤および培地を交換しながら、5 μM DACにて72時間とした。総RNAをTRIZOL試薬(Gibco/BRL)により抽出し、マイクロアレイ解析、cDNAサブトラクションおよびRT-PCRのために使用した。
【0121】
cDNAサブトラクション
cDNAサブトラクションの前に、MESSAGE MAKER Reagent Assemblyキット(Gibco/BRL)を用いて総RNAからpoly A RNAを単離した。cDNAサブトラクションは、テスターとして処理済RKO細胞株、およびドライバーとして模擬処理細胞の組み合わせで、PCR-Select(商標) cDNAサブトラクションキット(Clontech)を用いて行った。合成されたcDNAはRsa Iで消化し、テスターcDNAはキットに含まれるアダプターに連結した。ハイブリダイゼーション後、ADVANTAGE cDNA PCRキット(Clontech)を用いて、サブトラクトされたcDNAのPCR増幅を行った。
【0122】
マイクロアレイ解析
マイクロアレイ解析は、Mammalian GeneFilters Microarrays(商標)システム(Research Genetics)を用いて行った。ジョン・ホプキンズ包括的マイクロアレイ中核施設(Johns Hopkins Comprehensive microarray core)で解析された遺伝子のうちの約5,000個に対するFilter(フィルター)を作製し、さらに5,000個の遺伝子に対するフィルターを購入した(Human GeneFilters Microarrays(商標) ReleaseII; Research Genetics)。合計10,814個の遺伝子とESTについて解析した。フィルターのハイブリダイゼーションは、製造元の推奨事項に従って行った。簡単に言えば、総RNA 5μgを、オリゴ(dT)12-18プライマーおよび32dCTPを用いて、SUPERSCRIPT II逆転写酵素(Gibco/BRL)で逆転写しかつ標識した。フィルターのハイブリダイゼーションは、12〜18時間、継続させた。PSCANプログラム(国立衛生研究所)を用いてデータを解析した。サブトラクション-マイクロアレイ解析の場合、cDNAサブトラクションからの2回目のPCR産物を、MULTIPRIME DNA標識システム(Amersham)を用いて33Pで標識した。ハイブリダイゼーションおよびデータ解析は、上述のように行った。マイクロアレイ解析を個別に各条件について少なくとも3回繰り返した、そして模擬処理細胞から得た総RNAに対するcDNAでアレイを探索させた結果を、サブトラクションPCR産物とのハイブリダイゼーションに対する結果と比較した。
【0123】
半定量RT-PCR
DNase I(Ambion)で処理した総RNA(2 μg)を、オリゴ(dT)12-18プライマーを用いて、SUPERSCRIPT II逆転写酵素(Gibco/BRL)で一本鎖DNAに逆転写した。PCR反応は、1×PCR用緩衝液(Gibco/BRL)、1.5 mM MgCl2、0.3 mM dNTP、各0.25 μM プライマーおよびTaqポリメラーゼ 2U (Gibco/BRL)を含有する容量50 μl中で行った。cDNA 100 ngをPCR増幅に使用し、そして全遺伝子を、それらの発現レベルの半定量的な相違を得るのに適した条件を決定するために複数サイクル数(20〜35サイクル)で増幅させた。cDNAの質および添加の正確性を裏付けるため、GAPDH遺伝子のPCR(25および28サイクル)を行った。増幅プライマー対は、表4に示すとおりとした(配列番号:149〜296)。
【0124】
メチル化の解析
ゲノムDNAの重亜硫酸塩修飾は報告の通り行った(Baylinら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 93:9821〜9826, 1996、これは参照として本明細書に組み入れられる)。メチル化状態は、二つの手順を用いて、重亜硫酸塩修飾ゲノムDNAのPCR解析により決定した。第一の手順では、調べる全遺伝子を重亜硫酸塩PCRにより解析し、続いて複数のメチル化CpG部位特異的制限酵素による消化を行った(COBRA; XiongおよびLaird, Nucleic Acids Res. 25:2532〜2534, 1997、これは参照として本明細書に組み入れられる)。第二の手順では、複数のガン細胞株および組織試料で解析される全遺伝子に対して、メチル化特異的PCR(MSP)を利用した(Baylinら、上記、1996)。全ての重亜硫酸塩PCRおよびMSPプライマーは、調べられる遺伝子の推定される転写開始部位周辺のゲノム配列に照らして設計した。
【0125】
SFRP遺伝子のメチル化および発現解析
SFRP2およびSFRP4遺伝子のメチル化の解析は、各遺伝子の5' CpGアイランドをカバーする三組の異なるMSPプライマー対を用いて行った。SFRP5遺伝子のメチル化の解析の場合、二組の異なるMSPプライマー対を用いた。RT-PCRの場合、SFRP2遺伝子のセンスおよびアンチセンス・プライマーはそれぞれ、エクソン2および3に対して設計した; SFRP4遺伝子のセンスおよびアンチセンス・プライマーはそれぞれ、エクソン2および5に対して設計した; ならびにSFRP5遺伝子のセンスおよびアンチセンス・プライマーはそれぞれ、エクソン2および3に対して設計した。各遺伝子について、細胞株における発現データに対して遺伝子のメチル化状態を最も良く評価したMSPプライマー対を使用した; これらのプライマーを同様に、初代CRC組織の解析にも使用した。
【0126】
結果
マイクロアレイ解析および上方制御された遺伝子の分類化
CRC細胞RKOで低用量のDAC(これはDNAメチル化を最小限度に遮断する)、および/またはTSA(これはヒストン脱アセチル化酵素(HDAC)活性を阻害する)による処理後に上方制御される遺伝子を同定するため、cDNAマイクロアレイ技術を利用した。初期の研究で、使用されるDACが低用量かつ細胞に対する処理時間が短いと、ほんのわずかな遺伝子座の脱メチル化(これは遺伝子発現の上方制御をもたらしたと思われる)(Cameronら、上記、1999)がもたらされる結果となった、そしてRKO細胞でその薬剤の組み合わせにより相加的に再活性化されることが知られていた(Cameronら、上記、1999; Toyotaら、Cancer Res. 60:4044〜4048, 2000)、フィルター上に配列された対照遺伝子を検出できなかったことからも明らかなように、結果的に不十分な感度となった。従って、模擬処理細胞(ドライバー)とDACかつTSA処理細胞(テスター)との間で最初にcDNAサブトラクションのステップを行うことにより、スクリーニングの感度を増加させた。その結果、第二ラウンドのサブトラクション後のPCR産物を、マイクロアレイ・ハイブリダイゼーションに対するプローブとして使用した。
【0127】
フィルター上に配列され、RKO細胞でメチル化されることが知られていた4つの対照遺伝子のうち、hMLH1遺伝子の再発現だけは検出することができなかった; しかし、その他の3つの対照遺伝子p16、TIMP3およびPTGS2(COX2)は、その後のPCR研究により確認されたように、うまく検出された。未知遺伝子の場合、模擬のフィルターでは発現を示さなかった遺伝子(即ち、模擬処置細胞から得たサブトラクトされていないcDNAで探索した場合には、空スポットと同じ強度を有する遺伝子)で、かつ模擬細胞と処理細胞との間のサブトラクション産物を用いて探索後には検出可能な発現を示した遺伝子を、模擬、DAC単独、TSA単独、または組み合わせによる薬剤処理に曝した細胞において引き続いて半定量RT-PCRで解析するために選択した。
【0128】
サブトラクション・マイクロアレイで調べた合計10,814個の遺伝子からは、74個がDACおよび/またはTSA処理により上方制御されていた。これらの74個の遺伝子を二つの群に分けることができた: 群1の遺伝子(n=51)、これらはTSA単独では発現の変化を示さず、低用量のDAC単独後では発現のわずかな増加を示したが、DACとTSAの組み合わせによりずっと強い誘導を示した(表1); および群2の遺伝子(n=23)、これらはTSA単独で上方制御を示し、DAC単独に対して可変の初期発現または応答を有する。さらに、群1の遺伝子を二つの群にさらに細分することができる: 群1aの遺伝子(n=24)、これらは模擬処理細胞では完全に不活化されている; および群1bの遺伝子(n=27)、これらはRT-PCRにより検出される基底発現を示す。
【0129】
56個の全ての非EST遺伝子(表1)は、染色体位置が特徴付けられていた; これらの遺伝子のうちの46個については、全ての利用可能なゲノム・データベースを探索することにより推定上の転写開始部位が同定された。さらに、56遺伝子のうちの27個ついては5' CpGアイランド(GC含量が60%を超える、GpCに対するCpG比が0.6を超えるおよび長さが最低200 bp)が同定された(Gardiner- GardenおよびFrommer, J. Mol. Biol. 20, 261〜282, 1987)。残りの遺伝子の推定される上流領域近傍にCpGアイランドを見つけられないのは、CpGに富む近位のプロモーターが存在しないこと、つまり制御領域を含むCpGアイランドが、利用可能なゲノムデータを用いて決定できたものよりもさらに上流に位置していたか、または同定された領域が本当の転写開始部位ではないことを示唆している可能性があると思われた。
【0130】
RKO細胞での5' CpGアイランドのメチル化の解析
同定されたCpGアイランドのメチル化状態は、重亜硫酸塩-PCRを、メチル化CpG部位特異的制限酵素(XiongおよびLaird、上記、1997)およびMSP(Hermanら、上記、1996)と組み合わせて用いて解析した、そしてその結果を発現状態と比較した。同定可能な5' CpGアイランドを有する群1aの遺伝子(3つの陽性対照遺伝子を含む)の12個全てが、RKO細胞でこれらの領域の高密度なメチル化を含み(表1)かつRT-PCRにより検出される基底発現を示さなかった。5' CpGアイランドが同定された群1bの遺伝子5個のうち、3つは部分的なメチル化(表1)を示し、これはその低い基底発現レベルと一致していた; その他の2つの遺伝子は、メチル化を示さなかった。対照的に、群2の遺伝子10個はどれも、基底発現とは無関係に、5' CpGアイランドのメチル化を示さなかった(表1)。
【0131】
CRC株での群1aの遺伝子のメチル化および発現解析
群1aの遺伝子をガンとの関連性についてさらに調べた。群1aの遺伝子のメチル化状態および発現を一連のCRC細胞8株で調べた。SFRP1、SEZ6L、PCDH8およびFOLH1遺伝子の高メチル化が、調べた全CRC株で検出された。細胞8株のうちの5株がKIAA0786遺伝子の完全なまたは顕著なメチル化を示した。CXX1遺伝子は、これがX染色体上に位置し、そして女性の細胞においては通常、一方の対立遺伝子が不活化されかつメチル化されておりそしてもう一方が活性でありかつメチル化されないため、特に関心があった。しかし、メチル化されたまたは顕著にメチル化されたCXX1遺伝子の対立遺伝子は、RKO細胞を含む、CRC 8株のうちの5株で検出されただけであり、HT29を除く全てが男性患者由来であった。SNRPN遺伝子は同様に、これがヒトでは母性的に刷り込まれそして沈黙化される対立遺伝子のプロモーター領域のCpGアイランドで高メチル化されるという点で注目すべきであり、そして、予想どおり、正常末梢血リンパ球は転写開始部位周辺のCpGアイランドで部分的なメチル化を示した(Sutcliffeら、Nature Genet. 8:52〜58, 1994)。対照的に、RKO、HCT116、およびSW480 CRC細胞は、完全なメチル化を示しかつ基底発現がなかった。S100A10および TIMP2遺伝子のメチル化は、RKO細胞でのみ観測された。重要なことには、メチル化されていた細胞株では、上記の遺伝子のそれぞれが基底発現を欠いていたが、これはDACとのインキュベーションにより回復された。メチル化がないにもかかわらず、KIAA0786遺伝子は、SW480細胞で基底発現されなかったが、DACで処理することで再活性化された。
【0132】
初代CRC組織での群1aの遺伝子のメチル化の解析
群1aの遺伝子のメチル化状態を初代結腸ガンおよび対応する正常結腸組織で調べた。初代CRC試料でSFRP1遺伝子のメチル化が著しく高い頻度(17/20)で観測されたが、その腫瘍と同一個体から得た正常17組織のうちの6組織では、またはその腫瘍もメチル化を示さなかった3個体の正常組織ではメチル化が観測されなかった。11症例では、腫瘍でも正常対照組織でもSFRP1遺伝子のメチル化が観測されたが、腫瘍ではより強いメチル化信号が示された。SFRP1遺伝子のメチル化を同様に、CRC以外の患者2人から得た正常結腸組織でも調べた; メチル化は検出されなかった。
【0133】
初代CRCでSEZ6LおよびKIAA0786遺伝子も同様に、非常に高頻度の高メチル化を示した(それぞれ、20症例のうちの13症例、そして20症例のうちの8症例)。しかし、SFRP1遺伝子と同様に、腫瘍にメチル化がなかった個体から得た正常結腸で、または腫瘍がメチル化されていた13個体(SEZ6L遺伝子)のうちの11個体のおよび8個体(KIAA0786遺伝子)のうちの4個体の正常結腸で、これらの遺伝子のメチル化が検出されなかった。SEZ6LおよびKIAA0786遺伝子のいくらかのメチル化がそれぞれ、2個体および4個体から得た正常結腸で検出されたが、腫瘍ではより強いメチル化信号が示された。
【0134】
予測どおり、女性患者から得た正常結腸粘膜を含む全組織試料では、X染色体上に位置するCXX1遺伝子の部分的なメチル化が示された。しかし、男性患者14人のうちの3人では、腫瘍特異的にCXX1遺伝子のメチル化が示された。どの初代CRC試料においてもS100A10およびTIMP2遺伝子のメチル化は観測されなかった。FOLH1およびPCDH8遺伝子は、調べた全てのCRC試料および正常対照組織で同程度にメチル化されていた。
【0135】
群1aの遺伝子のメチル化のパターンはCRCおよび胃ガンとリンクする
本結果から、SFRP1、SEZ6L、CXX1、KIAA0786、S100A10およびTIMP2遺伝子が腫瘍の発生および/または進行に関与していることが示唆される。従って、これらの遺伝子をその他のガン型の腫瘍細胞株で調べた。CRCおよび胃ガンではSFRP1、SEZ6L、LPPH1およびCXX1遺伝子の完全な高メチル化が見られたという点で、顕著な腫瘍プロファイリングのパターンが明らかとなったが、試験した他のガン型の全てで、一般に、ごく部分的にメチル化が観測されただけであったかまたはメチル化が観測されなかった(図1)。このパターンの例外はSFRP1遺伝子で顕著であった。SFRP1遺伝子のプロアポトーシス活性が乳ガン細胞MCF7で証明されており、この細胞は基底状態でこの遺伝子を発現していなかった(Melkonyanら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 94:13636〜13641, 1997)。本明細書に開示されるように、CpGアイランドの領域の完全なメチル化がMCF7細胞で、ならびにMDA MB231乳ガン細胞、および試験した前立腺ガン細胞4株のうちの2株で検出された(図1)。
【0136】
SFRP遺伝子ファミリーメンバーのメチル化および発現解析
上述の高メチル化遺伝子の分類、および最も興味深い遺伝子のうちの一つであるSFRP1遺伝子の潜在的役割をさらに特徴付けるため、CRC細胞で、さらなるSFRP遺伝子を調べた。同定されているSFRP遺伝子5個のうち、4個がその第一エクソン周辺に高密度なCpGアイランドを有することが分かっていた。5' CpGアイランドを欠いたSFRP3遺伝子は、試験したCRC細胞7株のそれぞれにおいて基底レベルで発現していた。しかし、非常に高い頻度で、CRC細胞株においてその他の3個のSFRP遺伝子のそれぞれが高メチル化され、その高メチル化が基底発現の欠如と関連していた。その発現はDAC処理により回復された。
【0137】
初代CRC組織(n=124)でのSFRP遺伝子のメチル化の解析は、特に関心があった。これらの遺伝子は、SFRP2遺伝子が結腸ガン(このガンではこの遺伝子が高メチル化される)を患う患者で微量にメチル化されたことを除いて、正常結腸ではメチル化されていなかった。さらに、正常結腸組織、およびその他の組織由来の細胞株は、プロモーターのメチル化がない場合にはこれらの遺伝子を発現した。しかし、初代CRC腫瘍では4個の遺伝子全てで高メチル化が観測された。頻度は、SFRP1遺伝子に対する拡張データを含めた、この大規模解析で異なっていた(SFRP1遺伝子、118/124、95.1%; SFRP2遺伝子、111/12、89.5%; SFRP4遺伝子、36/124、29.0%; およびSFRP5遺伝子、73/124、58.9%)。特筆すべきは、症例の24.1%(30/124)で、CpGアイランドを有する4個のSFRP遺伝子全てのメチル化が示され、少なくとも4個のうちの1個が、腫瘍124個のうちの123個(99.2%; 図2)でメチル化されていた。
【0138】
これらの結果から、初期のマイクロアレイ・データの論理的マイニングが遺伝子発見の結果に明らかに及んだことが実証される。この結果から同様に、CRCで、WNTガン遺伝子の活性の遮断を抑制できる遺伝子ファミリーの後生的な沈黙化の関与が明らかとされる。SFRP遺伝子ファミリーのこの高メチル化により、一般的なヒトのガンに対してこれまでに報告されている最も高い分子指標被覆率が提供されるものと思われる(Estellerら、Cancer Res. 61:3225〜3229, 2001)。
【0139】
ガン細胞の高メチル化遺伝子の転写沈黙化は、優性効果を持ったメチル化(Cameronら、上記、1999)とHDAC活性との間の相互作用に依存するという観測を利用して、そのような遺伝子を目的としてガン細胞のゲノムをスクリーニングする方法が開発されている。本結果は、プロモーターの高メチル化によって沈黙化されるガン遺伝子と関連するクロマチンの性質に関するこの概念の正当性を立証し、その方法によって腫瘍形成における役割について高い可能性を有する遺伝子が効果的に同定されることを実証している。
【0140】
転写抑制クロマチンの観点から、開示の戦略により、利用した阻害剤に対してさまざまな応答を有する遺伝子プロモーターに関する重要な情報が提供された。群1aの遺伝子に対する結果から、高密度にメチル化された遺伝子は、HDAC阻害だけに曝されても再発現しないことが確認された。対照的に、群2の遺伝子に対する結果から、HDAC単独阻害の後に再発現するかまたは発現を上方制御する遺伝子は、CpGアイランドがその5'領域に存在していようとも、プロモーターがメチル化されていないことが明らかとなった。本研究により、遺伝子のプロモーターがメチル化されていなかったにもかかわらず、細胞を脱メチル化剤DACで処理後に上方制御された遺伝子が開示される。同様の発見が以前にも報告されていた(Soengasら、Nature 409, 207〜211, 2001)。転写因子のような、上流遺伝子のメチル化が、二次的にこれらの遺伝子の活性化を引き起こす可能性がある一方で、別の可能性としては、DACのような、DNAメチル基転移酵素(DNMT)阻害剤は、そのメチル化能力を遮断することによる以外にこれらのタンパク質に影響を及ぼしていることである。最近の研究により、DNMTは直接的に、ならびにHDACおよびその他のコリプレッサー・タンパク質との相互作用を介して、そのメチル化活性とは無関係に転写を抑制する可能性があることが明らかとされた(Rountreeら、Nature Genet. 25:269〜277, 2000; Bachmanら、J. Biol. Chem. 276:32282〜32287, 2001; Fuksら、Nature Genet. 24:88〜91, 2000; Fuksら、EMBO J. 20:2536〜2544, 2001;Robertsonら、Nature Genet. 25:338〜342, 2000)。
【0141】
本研究では、最初に樹立細胞株を使用したが、これは培養でのみ改変される遺伝子の検出に偏りを生じる可能性がありまたはこの細胞株ではプロモーターの高メチル化は腫瘍特異的ではない(例えば、Smiragliaら、Hum. Mol. Genet. 10:1413〜1419, 2001を参照されたい)ので、対になった原発腫瘍と正常組織の慎重な解析から、開示の方法は、発現の変化が原発性腫瘍ならびに培養細胞の高メチル化された5' CpGアイランドと関連する遺伝子(11/12)を同定するのに効果的であることが示唆される。マイクロアレイ研究法により検出された12個の遺伝子のうちの7個(pl6、COX2、TIMP3、SEZ6L、SFRP1、KIAA0786およびCXX1)は、原発腫瘍でまたはCRC腫瘍においてこれらの遺伝子にメチル化があるCRC患者由来の正常結腸の領域のみで特異的にメチル化されていた。別の遺伝子TIMP2は、正常結腸、原発性CRC腫瘍またはPBLではメチル化されていなかったが、悪性リンパ腫では非常に高頻度で高メチル化されていた。9個目の遺伝子SNRPN(この遺伝子は刷込み遺伝子である)は、沈黙化された対立遺伝子のプロモーター中のメチル化を示した。その他の二つの遺伝子は、正常結腸でも原発性CRCでもメチル化されていた; S100A10遺伝子だけが原発性組織でメチル化されていなかった。この遺伝子の解析は広範囲に及ぶものではなかったが、前立腺ガンで下方制御されることが報告されている(Chetcutiら、Cancer Res. 61:6331〜6334, 2001)。
【0142】
開示のマイクロアレイ研究法により、腫瘍特異的に高メチル化される、相当数の遺伝子がさらに同定された。例えば、SFRP1遺伝子のようないくつかの遺伝子は、CRC患者由来の、全てではないが、いくつかの正常結腸粘膜組織でメチル化されていたが、CRCでない被検体ではメチル化されていなかった。CRCにおいて高い頻繁で高メチル化されていた遺伝子群に見られたように、正常組織におけるこのメチル化は、前ガン状態の変化が結腸の広い領域にわたって起こる、「領域効果(field effect)」を反映している可能性があり、またはいくつかのCpGアイランドが加齢に伴って正常結腸でメチル化されるようになる傾向を示している可能性がある(Toyotaら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 96: 8681〜8686, 1999)。正常組織にメチル化がない個体の年齢が53〜64歳に及んでいたことや、46歳の患者1人が正常および腫瘍組織の両方でメチル化を示していたことから、領域効果(field effect)である可能性がより高い。
【0143】
本研究法の利点は、同定された大部分の遺伝子が、腫瘍形成に重要な、周知の特性または推定機能を有するということである。例えば、大部分の群1aの遺伝子、およびその他の群の多くの遺伝子が、ガンで高頻度のLOHが起こる染色体領域に、例えば、SFRP1遺伝子は染色体8p12に、SEZ6L遺伝子は22q11に、およびTIMP2遺伝子は17q25(表1)に位置している。さらに、同定された遺伝子の多くが、ガンに関与する経路の構成要素をコードする。例えば、群1aの遺伝子のなかで、SFRP1は腫瘍遺伝子WNTのシグナル伝達に拮抗する(Finchら、上記、1997)、およびSFRP1遺伝子でトランスフェクトされた乳ガン細胞は、プロアポトーシス刺激に対する感度増加を示した(Melkonyanら、上記、1997)。SFRP1遺伝子の低発現が、大多数の乳ガンで観測された(Ugoliniら、Oncogene 18:1903〜1910, 1999; Ugoliniら、Oncogene 20: 5810〜5817, 2001)。マウスSEZ6遺伝子およびラットのラトロフィリン(latrophilin)の発現は脳に限定されるが、それらのヒトの相同体(SEZ6L遺伝子およびKIAA0786遺伝子)は、ヒトでのそれらの機能は不明のままであるが、それぞれ肺および乳ガンで高頻度に欠失される領域から同定された(Nishiokaら、Oncogene 19:6251〜6260, 2000; Whiteら、Oncogene 17:3513〜3519, 1998)。TIMP2は、マトリックスメタロプロテイナーゼの組織阻害因子(TIMP)ファミリーのメンバーであり、このファミリーには、高い頻度で、種々の悪性腫瘍にて高メチル化により不活化される遺伝子TIMP3(Bachmanら、Cancer Res. 59: 798〜802, 1999)が含まれる。アネキシンII軽鎖またはp11とも呼ばれるS100A10は、他のカルシウム結合タンパク質のアネキシンII重鎖とヘテロ四量体複合体を形成する(p36; Kubeら、Gene 102:255〜259, 1991)。p36およびp11タンパク質発現の高頻度の消失が、恐らくp36遺伝子のメチル化による沈黙化が原因となって、前立腺ガンで報告された(Chetcutiら、上記、2001)。CXX1は推定上のプレニル化タンパク質である(Frattiniら、Genomics 46:167〜169, 1997)。プレ-mRNAのスプライシングに関与する可能性があるSNRPN遺伝子は、プラダーウィリ症候群およびアンジェルマン症候群にかかわる領域15q11-q13上に位置している(Nichollsら、Trends Genet. 14:194〜200, 1998)。
【0144】
FOLH1およびPCDH8遺伝子も興味深い特徴を有する。葉酸代謝はDNAメチル化に影響を及ぼし、葉酸代謝酵素のメチレンテトラヒドロ葉酸還元酵素は、ヒトの悪性腫瘍に対する感受性に影響を及ぼす可能性がある(Matsuoら、Blood 97:3205〜3209, 2001; Songら、Cancer Res. 61:3272〜3275, 2001)。FOLH1は、葉酸摂取に関与し、ガンにおけるDNAメチル化に関与している可能性がある(Heston, W.D., Urology 3A Suppl:104〜112, 1997)。PCDH8は細胞間接着分子ファミリーのメンバーであり(Strehlら、Genomics 53:81〜89, 1998)、その機能の喪失が浸潤および転移に重要である。しかし、FOLH1およびPCDH8遺伝子は、腫瘍特異的なまたは腫瘍圧倒的なメチル化を示さなかった。FOLH1はもともと前立腺特異的膜抗原(PSMA)と見なされていた、そして前立腺ガンで強く発現される; 結腸直腸ガンでは調べられていない。正常組織では、PCDH8遺伝子は、胎児のおよび成人の脳で排他的に発現される。このように、FOLH1およびPCDH8遺伝子のメチル化は、これらの遺伝子がCRC細胞株で沈黙されかつDACを用いてそのような細胞を処理することによって再発現することから、遺伝子発現に関連した組織特異的な現象である可能性がある。
【0145】
SFRP遺伝子ファミリーの高メチル化を含め、胃腸ガンにおける複数遺伝子の高メチル化に対して頻繁に起こる選好性の同定から、クロマチン再構成における共通の異常が、プロモーターの高メチル化と関連した後生的な沈黙化に対して複数遺伝子(関連遺伝子のファミリーが含まれる)にバイアスをかけている可能性があることが示唆される。この結果から、正常細胞と比べてガン細胞で差次的に調節される遺伝子を同定するためのさらなる方法が示唆される。
【0146】
機能的な観点から、SFRP遺伝子の全てがWNT/frizzledシグナル伝達に対抗すると考えられている(Finchら、上記、1997; Rattnerら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 94:2859〜2863, 1997; Changら、Hum. Mol. Genet. 8:575〜583, 1999; Abu-Jawdehら、Lab. Invest. 79:439〜447, 1999)。従って、SFRP遺伝子の機能喪失により腫瘍抑制経路全体が抑制される可能性がある。例えば、APC遺伝子の突然変異が結腸ガンでよく見られ、これが構成的なWNT経路の作用を引き起こす可能性がある(Morinら、Science 275:1787〜1790, 1997; Behrensら、Science 280:596〜599, 1998)。初期の結果から、SFRP遺伝子の高メチル化をあらゆる組み合わせで有するCRC腫瘍の全体で、APC遺伝子の突然変異が頻繁に起こっていることが示唆された。しかし、APCはさらなる機能を有する(Mimori-KiyosueおよびTsukita, J. Cell Biol. 154:1105〜1109, 2001)。従って、その他の機構を介したWNT活性の阻害の喪失が、結腸直腸の腫瘍形成に重要な新たな機能的経路であることが示唆される。
【0147】
本開示の研究法により、個別のガン型において後生的な機構により沈黙化された全範囲の遺伝子を同定する手段が提供される。新たに同定された遺伝子のメチル化パターンにより、最初にスクリーニングされた特定のガン型、および関連する腫瘍型に対してはっきりと描き出される試験結果(図1を参照されたい)から、ヒトのガンのプロファイリングに対するプロモーターの高メチル化の重要性が確認される。特に、CRCおよび胃ガンは、誤対合修復機能の喪失によって、マイクロサテライト不安定性の表現形を示す数少ない腫瘍型のうちの一部である; いずれの場合にも、関連するのは、MLH1遺伝子のプロモーターに関する高メチル化事象であった(BaylinおよびHerman, Trends Genet. 16:168〜174, 2000、これは参照として本明細書に組み入れられる)。従って、そのような指標のパネルが、腫瘍形成を調節する経路を調べかつ操作するのに有効である。さらに、本結果により、特定型のヒトのガンの高感度検出のための包括的な指標パネルを構成するのに、限られた数の高メチル化遺伝子で十分であることが実証される。上記の方法により、その他の疾患においてそのような遺伝子パネルを同定するための手段が提供される。
【0148】
本発明を上記の実施例に関連して記述してきたが、当然のことながら、本発明の精神および範囲のなかでの変更および変形が包含される。従って、本発明は、特許請求の範囲によってのみ限定される。
(表1) RKO細胞でDACおよびTSA処置により上方制御される遺伝子



aGenBankアクセッション番号。bYes: CpGアイランドが、推定される転写開始部位周辺にまたは上流領域近傍に見られた; no: CpGアイランドが、推定される転写開始部位周辺にまたは上流領域近傍に見られなかった; uk: 上流のゲノム配列が未知である。cYes: 完全なメチル化; partial: 部分的なメチル化; no: メチル化なし。d陽性対照遺伝子。
(表2)メチル化の研究のためのプライマー配列


Y=CまたはT **R=AまたはG ***配列番号: - 左から右へ、上から下へ、1〜110まで番号を付けた; 代表的な配列番号が示してある
(表3)SFRP遺伝子に対するプライマー配列

図6に示したそして一次組織試料の分析で使用したプライマー
**配列番号: - 左から右へ、上から下へ、111〜148まで番号を付けた; 代表的な配列番号が示してある
(表4)



Acc. No.は、GenBankアクセッション番号。bのCpGアイランドで、「Yes」は、CpGアイランドが、推定される転写開始部位周辺にまたは上流領域近傍に見られた;「No」は、CpGアイランドが、推定される転写開始部位周辺にまたは上流領域近傍に見られなかった;「UK」は、上流のゲノム配列が未知である。cのメチル化で、「Yes」は完全なメチル化、「Partial」は部分的なメチル化、「No」はメチル化なし。dは陽性対照遺伝子。
** - 配列番号: - 左から右へ、上から下へ、149〜296まで番号を付けた; 代表的な配列番号が示してある。
【図面の簡単な説明】
【0149】
【図1】種々の起源由来の一連のヒトガン細胞株における群1aの6個の遺伝子(表1を参照されたい)のメチル化特異的PCR(MSP)解析のまとめを示す。遺伝子名が最上部に示されており、そして細胞株名が左側に示されている。黒枠は完全なメチル化を示し、灰枠および白枠はそれぞれ、部分的なメチル化およびメチル化なしを示す。「ND」は、決定されていないことを示す(MSPで増幅されないため)。
【図2】124個の原発性CRC試料におけるSFRP遺伝子のMSP解析のまとめを示す(実施例1を参照されたい)。遺伝子名が最上部に示されている。各列は原発性CRC腫瘍を示す。灰枠および白枠はそれぞれ、メチル化およびメチル化なしを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一つのガンと関連する、少なくとも一つのメチル化沈黙化遺伝子の同定方法であって、
a) 脱メチル化剤と接触させたガン細胞で発現されたRNAに対応する核酸分子を含むが、ガン細胞に対応する正常細胞で発現されたRNAに対応する核酸を含まない核酸のサブトラクション産物と、アレイの相補的なヌクレオチド配列との核酸のサブトラクション産物の選択的ハイブリダイゼーションに適した条件下で、ゲノムを代表するヌクレオチド配列のアレイを接触させる段階、および
b) アレイのヌクレオチド配列の部分母集団との核酸のサブトラクション産物の選択的ハイブリダイゼーションを検出する段階を含み、
その際にガン細胞に対応する正常細胞で発現されたRNAに対応する核酸分子は、選択的ハイブリダイゼーションに適した前記の条件下で、ヌクレオチド配列の部分母集団にハイブリダイズせず、
それによってアレイのヌクレオチド配列の部分母集団に選択的にハイブリダイズする核酸のサブトラクション産物が、ガン細胞のメチル化沈黙化遺伝子に相当し、その結果、少なくとも一つのガンと関連する、少なくとも一つのメチル化沈黙化遺伝子が同定される方法。
【請求項2】
RNAに対応する核酸分子にcDNAが含まれる、請求項1記載の方法。
【請求項3】
脱メチル化剤に5-アザ-2'-デオキシシチジンが含まれる、請求項1記載の方法。
【請求項4】
少なくとも一つのメチル化沈黙化遺伝子が一種類のガンと関連する、請求項1記載の方法。
【請求項5】
少なくとも一つのメチル化沈黙化遺伝子が少なくとも二種類のガンと関連する、請求項1記載の方法。
【請求項6】
少なくとも一つのメチル化沈黙化遺伝子にPTGS2、CDKN2A、TIMP3、S100A10、SFRP1、SFRP2、SFRP4、SFRP5、CXX1、SEZZ6L、KIAA0786、TIMP2、PCDH8、FOLH1、SNRPN、またはその組み合わせが含まれる、請求項1記載の方法。
【請求項7】
少なくとも一つのメチル化沈黙化遺伝子にHOXA1、GRO3、DLX7、またはその組み合わせが含まれる、請求項1記載の方法。
【請求項8】
少なくとも一つのガンはガン腫または肉腫である、請求項1記載の方法。
【請求項9】
少なくとも一つのガンは結腸直腸ガン、胃ガン、または結腸直腸ガンかつ胃ガンである、請求項6記載の方法。
【請求項10】
少なくとも一つのメチル化沈黙化遺伝子にSFRP1、SFRP2、SFRP4、SFRP5、またはその組み合わせが含まれる、請求項1記載の方法。
【請求項11】
少なくとも一つのガンは結腸直腸ガン、胃ガン、または結腸直腸ガンかつ胃ガンである、請求項10記載の方法。
【請求項12】
少なくとも一つのガンと関連する、少なくとも一つの後生的に沈黙化された遺伝子の同定方法であって、
a) 後生的に沈黙化された遺伝子の発現を再活性化させる少なくとも一つの薬剤と接触させたガン細胞で発現されたRNAに対応するが、ガン細胞に対応する正常細胞で発現されたRNAに対応しない核酸分子を含む核酸のサブトラクション産物と、アレイの相補的なヌクレオチド配列との核酸のサブトラクション産物の選択的ハイブリダイゼーションに適した条件下で、ゲノムを代表するヌクレオチド配列のアレイを接触させる段階、および
b) アレイのヌクレオチド配列の部分母集団との核酸のサブトラクション産物の選択的ハイブリダイゼーションを検出する段階を含み、
その際にガン細胞に対応する正常細胞で発現されたRNAに対応する核酸分子は、選択的ハイブリダイゼーションに適した前記の条件の下で、ヌクレオチド配列の部分母集団にハイブリダイズせず、
それによってアレイのヌクレオチド配列の部分母集団に選択的にハイブリダイズする核酸のサブトラクション産物が、ガン細胞の後生的に沈黙化された遺伝子に相当し、その結果、少なくとも一つのガンと関連する、少なくとも一つの後生的に沈黙化された遺伝子が同定される方法。
【請求項13】
後生的に沈黙化された遺伝子の発現を再活性化させる薬剤に、メチル基転移酵素阻害剤、ヒストン脱アセチル化酵素阻害剤、またはその組み合わせが含まれる、請求項12記載の方法。
【請求項14】
メチル基転移酵素阻害剤は5-アザ-2'-デオキシシチジンである、請求項13記載の方法。
【請求項15】
ヒストン脱アセチル化酵素阻害剤はトリコスタチンAである、請求項13記載の方法。
【請求項16】
核酸のサブトラクション産物に、5-アザ-2'-デオキシシチジン、トリコスタチンA、またはその組み合わせと接触させたガン細胞で発現されたRNAに対応する核酸分子が含まれる、請求項12記載の方法。
【請求項17】
少なくとも一つの後生的に沈黙化された遺伝子に、表1に記載の核酸分子、またはその組み合わせが含まれる、請求項12記載の方法。
【請求項18】
少なくとも一つの後生的に沈黙化された遺伝子に、メチル化沈黙化遺伝子が含まれる、請求項12記載の方法。
【請求項19】
少なくとも一つのメチル化沈黙化遺伝子にPTGS2、CDKN2A、TIMP3、S100A10、SFRP1、SFRP2、SFRP4、SFRP5、CXX1、SEZZ6L、KIAA0786、TIMP2、PCDH8、FOLH1、SNRPN、HOXA1、GRO3、DLX7、またはその組み合わせが含まれる、請求項18記載の方法。
【請求項20】
少なくとも一つの後生的に沈黙化された遺伝子にPOR1、MBNL、TRADD、PDIP、RAD23B、RPL13、GNAI2、PPP1R21A、FPGT、TRIM32、またはその組み合わせが含まれる、請求項16記載の方法。
【請求項21】
少なくとも一つのガンはガン腫または肉腫である、請求項12記載の方法。
【請求項22】
少なくとも一つのガンは結腸直腸ガン、胃ガン、または結腸直腸ガンかつ胃ガンである、請求項12記載の方法。
【請求項23】
調節不能な増殖を示すまたは示す素因を呈する細胞を同定するための方法であって、試験細胞において、表1に記載の核酸分子を含む少なくとも一つの遺伝子の後生的な沈黙化またはその組み合わせを検出する段階を含み、それにより試験細胞を、調節不能な増殖を示すまたは示す素因を呈する細胞と同定する方法。
【請求項24】
少なくとも一つの遺伝子にPTGS2、CDKN2A、TIMP3、S100A10、SFRP1、SFRP2、SFRP4、SFRP5、CXX1、SEZZ6L、KIAA0786、TIMP2、PCDH8、FOLH1、SNRPN、HOXA1、GRO3、DLX7、POR1、MBNL、TRADD、PDIP、RAD23B、RPL13、GNAI2、PPP1R21A、FPGT、TRIM32、またはその組み合わせが含まれる、請求項23記載の方法。
【請求項25】
調節不能な増殖を示すまたは示す素因を呈する細胞が新生物細胞である、請求項23記載の方法。
【請求項26】
新生物細胞が前ガン状態の細胞である、請求項25記載の方法。
【請求項27】
新生物細胞がガン細胞である、請求項25記載の方法。
【請求項28】
ガン細胞がガン腫または肉腫である、請求項27記載の方法。
【請求項29】
ガン細胞が結腸直腸ガン細胞または胃ガン細胞である、請求項27記載の方法。
【請求項30】
後生的な沈黙化にメチル化による沈黙化が含まれ、メチル化による沈黙化を検出する段階が含まれる、請求項23記載の方法。
【請求項31】
メチル化による沈黙化を検出する段階は、CpGジヌクレオチドのメチル化されるシトシン残基を含む5'調節領域中の認識部位を切断する、メチル化感受性制限エンドヌクレアーゼと、遺伝子を含む核酸分子の5'調節領域を含む領域を接触させる段階を含み、核酸分子の切断により試験細胞の遺伝子のメチル化による沈黙化が示される、請求項30記載の方法。
【請求項32】
メチル化感受性制限エンドヌクレアーゼはAcc III、Ban I、BstN I、Msp I、またはXma Iである、請求項31記載の方法。
【請求項33】
メチル化による沈黙化を検出する段階は、CpGジヌクレオチドのメチル化されるシトシン残基を含む5'調節領域中の認識部位を、CpGジヌクレオチドのシトシン残基がメチル化されていない場合に切断する、メチル化感受性制限エンドヌクレアーゼと、遺伝子を含む核酸分子の5'調節領域を含む領域を接触させる段階を含み、核酸分子が切断されないことにより試験細胞の遺伝子のメチル化による沈黙化が示される、請求項30記載の方法。
【請求項34】
メチル化感受性制限エンドヌクレアーゼはAcc II、 Ava I、BssH II、BstU I、Hpa II、またはNot Iである、請求項33記載の方法。
【請求項35】
メチル化による沈黙化を検出する段階は、試験細胞の遺伝子を含む核酸分子の5'調節領域を、非メチル化シトシン残基またはメチル化シトシン残基のどちらかを選択的に修飾する化学試薬と接触させる段階、およびその接触により産生される産物を検出する段階を含み、その際に産物により遺伝子のCpGジヌクレオチドのシトシン残基のメチル化が示され、それによって試験細胞の遺伝子のメチル化による沈黙化が検出される、請求項30記載の方法。
【請求項36】
産物を検出する段階に、電気泳動法、クロマトグラフィー法、質量分析法、またはその組み合わせが含まれる、請求項35記載の方法。
【請求項37】
化学試薬はヒドラジンであり、それにより遺伝子のヒドラジン処理5'調節領域が産生される、請求項35記載の方法であって、
遺伝子を含む核酸分子の断片を含む産物を産生させるため、ヒドラジン処理5'調節領域を、ヒドラジン修飾シトシン残基を切断する試薬と接触させる段階と、
分子量に応じて断片を分離する段階と、
遺伝子の5'調節領域中でシトシン残基を含むことが知られている位置のギャップを検出する段階とをさらに含み、ギャップにより遺伝子のCpGジヌクレオチドのシトシン残基のメチル化が示され、それによって試験細胞の遺伝子のメチル化による沈黙化を検出する方法。
【請求項38】
ヒドラジン修飾シトシン残基を切断する試薬がピペリジンである、請求項37記載の方法。
【請求項39】
化学試薬には重亜硫酸イオンが含まれ、それにより遺伝子の5'調節領域中の非メチル化シトシン残基が重亜硫酸塩修飾シトシン残基に変換される、請求項35記載の方法であって、
重亜硫酸塩修飾シトシン残基がウラシル残基に変換されるように、重亜硫酸イオン処理遺伝子をアルカリ条件に曝す段階と、
試験細胞の重亜硫酸イオン処理遺伝子の5'調節領域中のウラシル残基の量または分布を検出する段階とをさらに含み、
対応する重亜硫酸イオン処理非メチル化遺伝子のアルカリ条件への暴露後のウラシル残基の量または分布と比較した、試験細胞由来の遺伝子の5'調節領域中のウラシル残基の量または分布の減少により、遺伝子の5'調節領域中のCpGジヌクレオチドのシトシン残基のメチル化が示され、それによって試験細胞の遺伝子のメチル化による沈黙化を検出する方法。
【請求項40】
ウラシル残基の量または分布を検出する段階は、アルカリ条件への暴露後の遺伝子の重亜硫酸塩修飾5'調節領域のヌクレオチド配列を決定する段階を含む、請求項39記載の方法。
【請求項41】
ウラシル残基の量または分布を検出する段階は、重亜硫酸イオン処理遺伝子配列をアルカリ条件への暴露後に、ウラシル残基を含む遺伝子の5'調節領域に選択的にハイブリダイズするオリゴヌクレオチドと接触させる段階と、
オリゴヌクレオチドの選択的ハイブリダイゼーションを検出する段階とを含む、請求項39記載の方法。
【請求項42】
オリゴヌクレオチドは配列番号:23、24、111、112、115、116、119、120、125、126、129、130、133、134、139、140、143、または144に記載のヌクレオチド配列を有する、請求項41記載の方法。
【請求項43】
オリゴヌクレオチドには検出可能な標識が含まれ、選択的ハイブリダイゼーションを検出する段階にはその標識を検出する段階が含まれる、請求項41記載の方法。
【請求項44】
検出可能な標識は、放射性同位体、常磁性同位体、発光化合物、化学発光化合物、蛍光化合物、金属キレート、酵素、酵素に対する基質、受容体、または受容体に対するリガンドである、請求項43記載の方法。
【請求項45】
オリゴヌクレオチドはプライマー伸長反応のための基質であり、選択的ハイブリダイゼーションを検出する段階にはプライマー伸長反応の産物を検出する段階が含まれる、請求項41記載の方法。
【請求項46】
オリゴヌクレオチドは配列番号: 23、24、111、112、115、116、119、120、125、126、129、130、133、134、139、140、143、または144に記載のヌクレオチド配列を有する、請求項45記載の方法。
【請求項47】
ウラシル残基の量または分布を検出する段階は、
増幅に適した条件の下で、遺伝子の5'調節領域を、フォワード・プライマーおよびリバース・プライマーを含む増幅プライマー対と接触させる段階を含む、請求項39記載の方法であって、プライマー対の少なくとも一つのプライマーは、ウラシル残基を含む5'調節領域のヌクレオチド配列に選択的にハイブリダイズするオリゴヌクレオチドを含み、
増幅産物の産出によって、遺伝子の5'調節領域中のCpGジヌクレオチドのシトシン残基のメチル化が示され、その結果、試験細胞の遺伝子のメチル化による沈黙化が検出される方法。
【請求項48】
増幅プライマー対には、配列番号:23および24、配列番号:111および112、配列番号:115および116、配列番号:119および120、配列番号:125および126、配列番号:129および130、配列番号:133および134、配列番号:139および140、または配列番号:143および144に記載のプライマー対が含まれる、請求項47記載の方法。
【請求項49】
ウラシル残基の量または分布を検出する段階は、
増幅に適した条件の下で、遺伝子の5'調節領域を、フォワード・プライマーおよびリバース・プライマーを含む増幅プライマー対と接触させる段階を含む、請求項39記載の方法であって、プライマー対の両プライマーは、シトシン残基を含む5'調節領域のヌクレオチド配列に選択的にハイブリダイズするが、ウラシル残基を含む5'調節領域の対応ヌクレオチド配列にハイブリダイズせず、かつ
増幅産物の産出によって、遺伝子の5'調節領域中のCpGジヌクレオチドのシトシン残基がメチル化されていないことが示され、その結果、試験細胞の遺伝子のメチル化による沈黙化が検出される方法。
【請求項50】
増幅プライマー対には、配列番号:25および26、配列番号:113および114、配列番号:117および118、配列番号:121および122、配列番号:127および128、配列番号:131および132、配列番号:135および136、配列番号:141および142、または配列番号:145および146に記載のプライマー対が含まれる、請求項49記載の方法。
【請求項51】
ウラシル残基の量または分布を検出する段階は、
増幅に適した条件の下で、遺伝子の5'調節領域を、第一増幅プライマー対および第二増幅プライマー対と接触させる段階を含む、請求項39記載の方法であって、
第一増幅プライマー対は、フォワード・プライマーおよびリバース・プライマーを含み、該第一プライマー対の少なくとも一つのプライマーは、ウラシル残基を含む遺伝子の5'調節領域のヌクレオチド配列に選択的にハイブリダイズするオリゴヌクレオチドを含み、かつ
第二増幅プライマー対は、フォワード・プライマーおよびリバース・プライマーを含み、該第二プライマー対の両プライマーは、シトシン残基を含む遺伝子の5'調節領域のヌクレオチド配列に選択的にハイブリダイズするが、ウラシル残基を含む遺伝子の5'調節領域の対応ヌクレオチド配列にハイブリダイズせず、かつ
第一プライマー対により産出される増幅産物が、もしあれば、第一の長さを有し、第二プライマー対により産出される増幅産物が、もしあれば、第一の長さと異なる第二の長さを有し、
増幅産物の長さによって、ウラシル残基および従って、遺伝子の5'調節領域中のCpGジヌクレオチドのシトシン残基のメチル化が示され、その結果、試験細胞の遺伝子のメチル化による沈黙化が検出される方法。
【請求項52】
メチル化による沈黙化を検出する段階は、
a) 試験細胞を脱メチル化剤と接触させる段階と、
b) 遺伝子によりコードされるRNAの発現増加を、脱メチル化剤と接触されていない試験細胞のRNAの発現レベルと比較して検出する段階
とを含む、請求項30記載の方法。
【請求項53】
脱メチル化剤にメチル基転移酵素阻害剤が含まれる、請求項52記載の方法。
【請求項54】
メチル基転移酵素阻害剤に5-アザ-2'-デオキシシチジンが含まれる、請求項53記載の方法。
【請求項55】
高速大量処理の形式で実施される請求項23記載の方法であって、試験細胞または試験細胞の抽出物に、複数の試験細胞もしくは試験細胞の抽出物、またはその組み合わせのうちの一つが含まれる、方法。
【請求項56】
複数の試験細胞または試験細胞の抽出物のそれぞれが、同一もしくは異なる、またはその組み合わせである、請求項55記載の方法。
【請求項57】
調節された増殖を示す対応細胞、または対応細胞の抽出物において、遺伝子の5'調節領域のCpGアイランド中のCpGジヌクレオチドのシトシン残基の、もしあれば、メチル化を検出する段階をさらに含む、請求項55記載の方法。
【請求項58】
試験細胞または試験細胞の抽出物がアレイに配列される、請求項55記載の方法。
【請求項59】
アレイはアドレス可能なアレイである、請求項58記載の方法。
【請求項60】
試験細胞または試験細胞の抽出物は、マイクロチップ、ガラススライド、またはビーズ上に存在する、請求項55記載の方法。
【請求項61】
試験細胞には、被検体から得られた試料が含まれる、請求項23記載の方法。
【請求項62】
被検体はヒトの被検体である、請求項61記載の方法。
【請求項63】
試料には、臓器試料、組織試料、または細胞試料が含まれる、請求項61記載の方法。
【請求項64】
試料には、胃腸管試料、肝臓試料、皮膚試料、リンパ節試料、腎臓試料、肺試料、筋肉試料、骨試料、または脳試料が含まれる、請求項63記載の方法。
【請求項65】
胃腸管試料には、胃試料、小腸試料、結腸試料、または直腸試料が含まれる、請求項64記載の方法。
【請求項66】
試料には生体液が含まれる、請求項61記載の方法。
【請求項67】
生体液には骨髄、血液、血清、リンパ液、脳脊髄液、唾液、喀痰、大便、尿、または射精液が含まれる、請求項66記載の方法。
【請求項68】
少なくとも一つのガン関連遺伝子の転写の後生的な沈黙化を示す、細胞の調節不能な増殖を減少させるかまたは阻害する方法であって、細胞中の後生的な沈黙化遺伝子によりコードされるポリペプチドの発現を回復させる段階を含み、それによって細胞の調節不能な増殖を減少させるかまたは阻害する方法。
【請求項69】
ポリペプチドの発現を回復させる段階には、細胞を脱メチル化剤、ヒストン脱アセチル化酵素阻害剤、またはその組み合わせと接触させる段階が含まれる、請求項68記載の方法。
【請求項70】
脱メチル化剤にはメチル基転移酵素阻害剤が含まれる、請求項69記載の方法。
【請求項71】
後生的な沈黙化遺伝子には、メチル化沈黙化遺伝子が含まれ、細胞を少なくとも脱メチル化剤と接触させる段階が含まれる、請求項68記載の方法。
【請求項72】
細胞を脱メチル化剤と接触させる段階が培養液中で実施される、請求項71記載の方法。
【請求項73】
細胞を脱メチル化剤と接触させる段階に、細胞を含む被検体に薬剤を投与する段階が含まれる、請求項71記載の方法。
【請求項74】
脱メチル化剤は5-アザ-2'-デオキシシチジンである、請求項71記載の方法。
【請求項75】
ポリペプチドの発現を回復させる段階には、ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを細胞に導入する段階が含まれ、それによってポリペプチドがポリヌクレオチドから発現される、請求項68記載の方法。
【請求項76】
ポリヌクレオチドはベクター中に含まれる、請求項75記載の方法。
【請求項77】
ベクターはウイルス・ベクターである、請求項76記載の方法。
【請求項78】
ポリヌクレオチドを細胞に導入する段階には、細胞をポリヌクレオチドとエクスビボで接触させる段階が含まれる、請求項75記載の方法。
【請求項79】
ポリヌクレオチドを細胞に導入する段階には、細胞をポリヌクレオチドとインビボで接触させる段階が含まれる、請求項75記載の方法。
【請求項80】
後生的な沈黙化遺伝子には、表1に記載の核酸分子が含まれる、請求項75記載の方法。
【請求項81】
後生的な沈黙化遺伝子には、PTGS2、CDKN2A、TIMP3、S100A10、SFRP1、SFRP2、SFRP4、SFRP5、CXX1、SEZZ6L、KIAA0786、TIMP2、PCDH8、FOLH1、SNRPN、HOXA1、GRO3、DLX7、またはその組み合わせが含まれる、請求項68記載の方法。
【請求項82】
後生的な沈黙化遺伝子には、POR1、MBNL、TRADD、PDIP、RAD23B、RPL13、GNAI2、PPP1R21A、FPGT、TRIM32、またはその組み合わせが含まれる、請求項68記載の方法。
【請求項83】
患者のガン細胞が、少なくとも一つの遺伝子の発現の後生的な沈黙化を示す、ガン患者を治療するための方法であって、被検体のガン細胞の少なくとも一つの後生的な沈黙化遺伝子の発現を回復させる段階を含み、それによってガン患者を治療する方法。
【請求項84】
少なくとも一つの後生的な沈黙化遺伝子に、メチル化沈黙化遺伝子が含まれる、請求項83記載の方法。
【請求項85】
被検体のガン細胞のメチル化沈黙化遺伝子の発現を回復させるのに十分な量の脱メチル化剤を被検体に投与する段階を含む、請求項84記載の方法。
【請求項86】
被検体のガン細胞での少なくとも一つのポリペプチドの発現に十分な条件下で、少なくとも一つの後生的な沈黙化遺伝子によりコードされる、少なくとも一つのポリペプチドをコードする少なくとも一つのポリヌクレオチドを被検体に投与する段階を含む、請求項83記載の方法。
【請求項87】
ポリヌクレオチドはベクター中に含まれる、請求項86記載の方法。
【請求項88】
ベクターはウイルス・ベクターである、請求項87記載の方法。
【請求項89】
ポリヌクレオチドにマトリクスが含まれる、請求項86記載の方法。
【請求項90】
マトリクスはリポソームである、請求項89記載の方法。
【請求項91】
ガンはガン腫または肉腫である、請求項83記載の方法。
【請求項92】
ガンは結腸直腸ガン、胃ガン、または結腸直腸ガンかつ胃ガンである、請求項83記載の方法。
【請求項93】
少なくとも一つの後生的な沈黙化遺伝子には、PTGS2、CDKN2A、TIMP3、S100A10、SFRP1、CXX1、SEZZ6L、KIAA0786、TIMP2、PCDH8、FOLH1、SNRPN、HOXA1、GRO3、DLX7、POR1、MBNL、TRADD、PDIP、RAD23B、RPL13、GNAI2、PPP1R21A、FPGT、TRIM32、そのファミリーメンバー、またはその組み合わせが含まれる、請求項92記載の方法。
【請求項94】
少なくとも一つの後生的な沈黙化遺伝子には、SFRP1、SFRP2、SFRP4、SFRP5、またはその組み合わせが含まれる、請求項92記載の方法。
【請求項95】
以下の段階を含む、ガン患者を治療するための治療方針を選択するための方法:
a) メチル化沈黙化遺伝子の発現を再活性化させる少なくとも一つの薬剤と接触させた患者のガン細胞で発現されたRNAに対応するが、ガン細胞に対応する正常細胞で発現されたRNAに対応しない核酸分子を含む核酸のサブトラクション産物と、アレイの相補的なヌクレオチド配列との核酸のサブトラクション産物の選択的ハイブリダイゼーションに適した条件下で、ゲノムを代表するヌクレオチド配列のアレイを接触させる段階と
アレイのヌクレオチド配列の部分母集団との核酸のサブトラクション産物の選択的ハイブリダイゼーションを検出する段階とにより、ガンと関連する少なくとも一つのメチル化沈黙化遺伝子を同定する段階であって、
患者のガン細胞に対応する正常細胞で発現されたRNAに対応する核酸分子は、選択的ハイブリダイゼーションに適した前記の条件下で、ヌクレオチド配列の部分母集団にハイブリダイズせず、それによってアレイのヌクレオチド配列の部分母集団に選択的にハイブリダイズする核酸のサブトラクション産物が、患者のガン細胞のメチル化沈黙化遺伝子に相当する、段階; ならびに
b) 患者のガン細胞の少なくとも一つのメチル化沈黙化遺伝子の発現を回復させるのに有効な薬剤を選択し、それによってガン患者を治療するための治療方針を選択する段階。
【請求項96】
薬剤に、少なくとも一つのメチル化沈黙化遺伝子をコードするポリヌクレオチドが含まれる、請求項95記載の方法。
【請求項97】
ポリヌクレオチドに、PTGS2、CDKN2A、TIMP3、S100A10、SFRP1、CXX1、SEZZ6L、KIAA0786、TIMP2、PCDH8、FOLH1、SNRPN、HOXA1、GRO3、DLX7、そのファミリーメンバー、またはその組み合わせが含まれる、請求項96記載の方法。
【請求項98】
薬剤に、SFRP1、SFRP2、SFRP4、SFRP5、またはその組み合わせを含むポリヌクレオチドが含まれる、請求項97記載の方法。
【請求項99】
薬剤に脱メチル化剤が含まれる、請求項95記載の方法。
【請求項100】
脱メチル化剤は5-アザ-2'-デオキシシチジンである、請求項99記載の方法。
【請求項101】
CRCまたはGCと関連する細胞に少なくとも一つのメチル化沈黙化遺伝子が含まれる、結腸直腸ガン(CRC)、胃ガン(GC)、またはCRCおよびGCに罹患する被検体の治療方法であって、少なくとも一つのメチル化沈黙化遺伝子の発現を回復させる薬剤の量を、CRC、RC、またはCRCおよびGCと関連する細胞のメチル化沈黙化遺伝子の発現を回復させるに足る被検体に投与する段階を含む方法。
【請求項102】
薬剤に、少なくとも一つのメチル化沈黙化遺伝子をコードするポリヌクレオチドが含まれる、請求項101記載の方法。
【請求項103】
ポリヌクレオチドに、PTGS2、CDKN2A、TIMP3、S100A10、SFRP1、CXX1、SEZZ6L、KIAA0786、TIMP2、PCDH8、FOLH1、SNRPN、HOXA1、GRO3、DLX7、そのファミリーメンバー、またはその組み合わせが含まれる、請求項102記載の方法。
【請求項104】
ポリヌクレオチドに、SFRP1、SFRP2、SFRP4、SFRP5、またはその組み合わせが含まれる、請求項103記載の方法。
【請求項105】
ポリヌクレオチドはベクター中に含まれる、請求項102記載の方法。
【請求項106】
ベクターはウイルス・ベクターである、請求項105記載の方法。
【請求項107】
ポリヌクレオチドにマトリクスが含まれる、請求項102記載の方法。
【請求項108】
マトリクスはリポソームである、請求項107記載の方法。
【請求項109】
薬剤には、脱メチル化剤が含まれる、請求項101記載の方法。
【請求項110】
脱メチル化剤は5-アザ-2'-デオキシシチジンである、請求項105記載の方法。
【請求項111】
薬剤を投与する段階に、CRC、GC、CRCおよびGCの細胞を薬剤とエクスビボで接触させる段階が含まれる、請求項101記載の方法であって、エクスビボで接触された細胞を患者に投与する段階がさらに含まれる方法。
【請求項112】
薬剤を投与する段階に、患者のCRC、GC、CRCおよびGCの細胞部位に薬剤を投与する段階が含まれる、請求項101記載の方法。
【請求項113】
配列番号:1〜296のいずれか一つを含む、単離されたオリゴヌクレオチド。
【請求項114】
請求項113記載の単離オリゴヌクレオチドの少なくとも二つを含む、複数の単離オリゴヌクレオチド。
【請求項115】
表1の核酸分子の一部分を増幅できる、配列番号:1〜296に記載のフォワード・プライマーおよびリバース・プライマーを含む、増幅プライマー対。
【請求項116】
核酸分子のメチル化5'調節領域を特異的に増幅できる、請求項115記載の増幅プライマー対。
【請求項117】
配列番号:23および24、配列番号:111および112、配列番号:115および116、配列番号:119および120、配列番号:125および126、配列番号:129および130、配列番号:133および134、配列番号:139および140または配列番号:143および144を含む、請求項116記載の増幅プライマー対。
【請求項118】
核酸分子の非メチル化5'調節領域を特異的に増幅できる、請求項115記載の増幅プライマー対。
【請求項119】
配列番号:25および26、配列番号:113および114、配列番号:117および118、配列番号:121および122、配列番号:127および128、配列番号:131および132、配列番号:135および136、配列番号:141および142、または配列番号:145および146を含む、請求項118記載の増幅プライマー対。
【請求項120】
請求項113記載の少なくとも一つの単離オリゴヌクレオチドを含む、キット。
【請求項121】
複数の単離オリゴヌクレオチドを含む、請求項120記載のキット。
【請求項122】
前記の複数には、フォワード・プライマーおよびリバース・プライマーを含む少なくとも一組の増幅プライマー対が含まれる、請求項121記載のキット。
【請求項123】
複数組の増幅プライマー対を含む、請求項122記載のキット。
【請求項124】
増幅プライマー対には、メチル化特異的増幅プライマー対、非メチル化特異的増幅プライマー対、または少なくとも一組のメチル化特異的増幅プライマー対および少なくとも一組の非メチル化特異的増幅プライマー対を含む組み合わせが含まれる、請求項122記載のキット。
【請求項125】
メチル化シトシン残基を修飾する試薬をさらに含む、請求項120記載のキット。
【請求項126】
メチル化感受性制限エンドヌクレアーゼをさらに含む、請求項120記載のキット。
【請求項127】
増幅反応を行うための試薬をさらに含む、請求項120記載のキット。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−213480(P2009−213480A)
【公開日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−112783(P2009−112783)
【出願日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【分割の表示】特願2003−574800(P2003−574800)の分割
【原出願日】平成15年3月7日(2003.3.7)
【出願人】(502058666)ザ ジョンズ ホプキンス ユニバーシティー スクール オブ メディシン (3)
【Fターム(参考)】