説明

後発酵茶抽出物の精製物及びそれを配合した飲食品

【課題】茶本来の色・風味が少なく、各種飲食品への配合性が良好であり、かつ食後の口内に残る食事の油っぽさを低減できるプーアル茶抽出物の精製物の製造方法、及びその精製物を含有する飲食品を提供する。
【解決手段】(1)プーアル茶葉に熱水を加えて抽出物を得る抽出工程、(2)前記プーアル茶葉と抽出物とを分離する分離工程、(3)次の(a)〜(c)からなる工程のうちの一つを実施する精製工程;(a)前記の抽出物と有機溶媒を接触させ、前記の抽出物を有機溶媒に転溶し、有機溶媒画分を回収する精製工程、(b)前記の抽出物を冷却することにより、溶液中に生じる析出物と非析出物とに分別する精製工程、又は(c)前記の抽出物をカラムクロマト処理により極性、電荷、分子サイズの違いによって分画する精製工程を備えることを特徴とするプーアル茶抽出物の精製物の製造方法によって達成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、後発酵茶抽出物の精製物及びそれを配合した飲食品などに関する。
【背景技術】
【0002】
揚げ物などのように油を多く含む料理は、食べた後に油っぽさが口内に残るため、次に食べる料理の味に影響する。このため、料理を飲み込んだ後に、飲用することで口内の油っぽさを取り除いてすっきりさせて、一口一口の食事をよりおいしくできる飲料が求められている。このような要求に対して、例えばウーロン茶に関する研究が行われている(特許文献1、非特許文献1)。
本発明における後発酵茶とは、いわゆる製茶工程に、微生物やカビを介在させた発酵工程を含むものであり、プーアル茶、碁石茶、阿波番茶、ミエン、ラペソウ等があげられ、代表的なものとしてプーアル茶がある。プーアル茶については、ウーロン茶ほどには研究が進んでいなかった。プーアル茶の効果としては脂質吸収抑制効果が知られているが、口内に残る油っぽさを低減するという観点についての研究は十分に行われていなかった。
また、発酵茶あるいはそのエキス類については、色調が褐色〜黒色であるため、透明または薄い着色の飲食品に配合すると、ほとんど褐色〜黒色に着色されてしまうため、製品の色調を損なうという問題があった。さらに、プーアル茶には製造中の微生物やカビによる発酵中に発生する独特のカビ臭さ、土臭さがあり、飲食品に配合すると製品本来の風味を損なうという問題があった。このため、プーアル茶の抽出物を飲食品に用いるには、透明〜薄い色には用いることが困難であり、使用可能なものが限定されてしまうという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7−111858号公報
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】林由佳子ら、”Oolong tea is suitable beverage for fatty foods(脂っこい食事にあうウーロン茶)”、[online]、2010年9月22日、「第20回ヨーロッパ味と匂学会」(The 20th CONGRESS of the European Chemoreception Research Organization)(9月14日〜18日・フランス・アヴィニヨン)、[2011年6月17日検索]、インターネット<URL: http://www.suntory.co.jp/news/2010/10889.html>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上記した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、茶本来の色・風味が少なく、各種飲食品への配合性が良好であり、かつ食後の口内に残る食事の油っぽさを低減できるプーアル茶抽出物の精製物の製造方法を提供すること、及びその精製物を含有する飲食品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、溶媒分画などの精製処理により得られるプーアル茶抽出物の精製物が、飲食品自体の色、風味に影響を与えることなく、口内の油っぽさを低減することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
こうして、上記課題を達成するための第1の発明に係るプーアル茶抽出物の精製物の製造方法は、(1)プーアル茶葉に熱水を加えて抽出物を得る抽出工程、(2)前記プーアル茶葉と抽出物とを分離する分離工程、(3)次の(a)〜(c)からなる工程のうちの一つを実施する精製工程;(a)前記抽出物と有機溶媒を接触させ、前記抽出物を有機溶媒に転溶し、有機溶媒画分を回収する精製工程、(b)前記抽出物を冷却することにより、溶液中に生じる析出物と非析出物とに分別する精製工程、又は(c)前記抽出物をカラムクロマト処理により、極性、電荷、分子サイズの違いにより分画する精製工程を備えることを特徴とする。
【0007】
前記有機溶媒は、亜酸化窒素、アセトン、エタノール、エチルメチルケトン、グリセリン、酢酸エチル、酢酸メチル、ジクロロメタン、食用油脂、1,1,1,2-テトラフルオロエタン、1,1,2-トリクロロエテン、二酸化炭素、1-ブタノール、2-ブタノール、ブタン、1-プロパノール、2-プルパノール、プロピレングリコール、ヘキサン、メタノールからなる群から選択される少なくとも一つであることが好ましく、これまで実際に飲食品用途に使用されているチャ抽出物での製造実績より、アセトン、エタノール、酢酸エチルからなる群から選択される少なくとも一つであることが更に好ましい。
前記プーアル茶抽出物を水に溶解し、0.03%質量濃度としたときに、測色色差計による測定データであるL(明度)、a(色相[赤〜緑])、b(色相「黄〜青」)について、L≧95、a≦0、かつb≧0であることが好ましい。
また、第2の発明に係る飲食品は、上記第1の発明によって製造されたプーアル茶抽出物の精製物を含有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、茶本来の色・風味が少なく、各種飲食品への配合性が良好であり、かつ食後の口内に残る食事の油っぽさを低減できるプーアル茶抽出物の精製物が得られる。この精製物は、色が薄いので、透明〜薄い色の飲食品にも用いることができる。
また、プーアル茶抽出物の精製物を飲食品に配合することで、その飲食品の摂取により、食後の口内に残る食事の油っぽさを低減できる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
次に、本発明の実施形態について、詳細に説明する。本発明の技術的範囲は、下記の実施形態によって限定されるものではなく、発明の要旨を変更することなく、様々に改変して実施することができる。また、本発明の技術的範囲は、均等の範囲にまで及ぶものである。
【0010】
<抽出工程>
プーアル茶とは、中国雲南省南部から南西部を原産地とする中国茶(黒茶)の一種であり、生茶と熟茶の2種類がある。すなわち、加熱によって酸化発酵を止めた緑茶を、コウジカビで発酵させたものが熟茶であり、経年により熟成させたものが生茶である。生茶の場合、加熱時に完全に酵素が失活しておらず、その後に天日乾燥をする際に更なる酵素発酵が起こると言われている。本発明においては、いずれのプーアル茶の茶葉も使用可能である。
プーアル茶葉に熱水を加えて抽出物を得る。このとき水の量は、特に限定されないが、プーアル茶葉の質量に対して、約3倍量〜約40倍量を用いることができる。水の量が少ないと、プーアル茶葉からの抽出が十分に行われないので、製造経費が高価となってしまう。一方、水の量が多いと、十分な抽出物が得られるものの、処理液量が多くなるので、後の工程に手間が掛かる。
熱水の温度としては、特に限定されないが、約60℃〜約100℃(好ましくは、約70℃〜約95℃)とすることができる。
また、抽出時間としては、特に限定されないが、約5分間〜約60分間とすることができる。抽出時間が短いと十分な抽出が行われず、抽出時間が長いと全工程が長くなり、製造経費の上昇につながる。
このようにして、抽出物が得られる。
【0011】
<分離工程>
次に、プーアル茶葉と抽出物(エキス)とを分離する。そのような方法として、例えばろ過、遠心分離法などが例示される。こうして、ほとんどの固形物を取り除いた抽出物が得られる。
<濃縮工程>
抽出物の容量を減少させて、後の工程をより円滑に進められるように、濃縮工程を行うことができる。そのような方法として、例えば煮沸濃縮、真空濃縮、凍結濃縮、膜濃縮などが例示される。
【0012】
<精製工程>
次に、抽出物から目的とする精製物を得るために、精製工程を実施する。精製工程の実施方法としては、(a)抽出物と有機溶媒を接触させ、前記の抽出物を有機溶媒に転溶し、回収した有機溶媒画分から溶媒を除去する方法(有機溶媒法)、(b)抽出物を冷却することにより、溶液中に生じる析出物と非析出物とに分別し、ろ過、または遠心分離により固液分離する方法(冷却法)、又は(c)抽出物をカラムに充填した吸着担体に選択的に吸着させて分離するカラムクロマト処理により、極性、電荷、分子サイズの違いにより分画し、回収した画分から溶媒を除去する方法(カラムクロマト法)とがある。
溶媒を除去する方法は煮沸・減圧(真空)・凍結乾燥・膜濃縮などの方法を単独で、または複数のものを組み合わせることにより行える。精製物の形態としては、液状、スラリー、半固形、固体の状態が挙げられる。
このようにして、最終目的とするプーアル茶抽出物の精製物を得る。
【0013】
<プーアル茶抽出物の精製物の特性>
上記プーアル茶抽出物の精製物を水に溶解し、0.03%質量濃度とし、この溶液を測色色差計により測定する。測色色差計は、物体の明度:L(0(黒)〜100(白)の値をとる)、色相:a(緑(−)〜赤(+)を表す)、色相:b(黄(+)〜青(−)を表す)を測定し、各パラメータをXYZ(Lab)の三軸に表現できる。a軸、b軸共に数値が大きいほど強い色(彩度が高い)を表す。
プーアル茶抽出物の精製物の水溶液の測定データは、L≧95、a≦0、かつb≧0となる。
また、プーアル茶抽出物の精製物は、茶本来の色・風味が少なく、各種飲食品への配合性が良好であり、かつ食後の口内に残る食事の油っぽさを低減できる。
【0014】
<プーアル茶抽出物の精製物を含有する飲食品>
プーアル茶抽出物の精製物は、着色に対する影響が少なく、かつ食後の油っぽさを軽減できるので、各種の飲食品に添加できる。そのような飲食品としては、例えば炭酸飲料、茶飲料、スポーツ飲料、アルコール飲料、果汁飲料、果汁入り清涼飲料水、果肉飲料、野菜系飲料、豆乳・豆乳飲料、コーヒー飲料、粉末飲料、濃縮飲料、栄養飲料、ゼリー飲料、ゼリー、プリン、牛乳・加工乳、乳飲料、ヨーグルト、乳酸菌飲料、氷菓、アイスクリーム、キャンディー、ガム、グミキャンディー、錠菓などが例示される。
【0015】
次に、本発明を実施例および試験例により詳細に説明するが、本発明は、これらの実施例および試験例によって限定されるものではない。
<実施例1> プーアル茶抽出物の精製物の調製
プーアル茶葉を1kgに対して熱水15kgを加え、90℃で30分間抽出し(抽出工程)、茶殻を除くためにろ過した後(分離工程)、そのろ過液12kgに酢酸エチル12kgを加えて振とうし、静置、分配した。その酢酸エチル画分を分取、減圧下(0.067mPa)で脱溶媒の後、噴霧乾燥し、本願発明の茶精製物を15g得た(精製工程)。これを0.03%質量濃度となるように脱イオン水に添加し、本発明の飲料を調整した。
【0016】
<比較例1> プーアル茶熱水抽出物の調製
プーアル茶葉を1kgに対して熱水15kgを加え、90℃で30分間抽出し、茶殻を除くためにろ過した後、そのろ液を減圧濃縮、噴霧乾燥を行い、150gの比較用茶抽出物を得た。これを0.03%質量濃度となるように脱イオン水に添加し、比較例1の飲料を調整した。
<比較例2>
比較例1で得たプーアル茶熱水抽出物を一般に飲用するプーアル茶と同等の風味になる0.25%質量濃度となるように脱イオン水に添加し、比較例2の飲料を調整した。
<比較例3> 緑茶熱水抽出物の調整
緑茶葉を1kgに対して熱水15kgを加え、90℃で30分間抽出し、茶殻を除くためにろ過した後、そのろ液を減圧濃縮、噴霧乾燥を行い、150gの比較用茶抽出物を得た。これを一般に飲用する緑茶と同等の風味になる0.25%質量濃度となるように脱イオン水に添加し、比較例3の飲料を調整した。
【0017】
<比較例4> 緑茶抽出物の精製物の調整
緑茶葉を1kgに対して熱水15kgを加え、90℃で30分間抽出し、茶殻を除くためにろ過した後、そのろ過液12kgに酢酸エチル12kgを加えて振とうし、静置、分配した。その酢酸エチル画分を分取、減圧下(0.067mPa)で脱溶媒の後、噴霧乾燥し、比較用茶精製物を100g得た。これを質量濃度となるように脱イオン水に添加し、比較例4の飲料を調整した。
【0018】
<試験例1>
実施例1及び比較例1〜4の飲料について、官能評価及び色調の評価を行った。これらの評価結果を表1に示す。
官能評価は選抜された22名のパネラーにより行った。パネラーの選抜方法は、閾値レベルの5つの基本味(甘味・酸味・苦味・塩味・旨味)を4つ以上認識できることとした。
官能評価の方法は、まず市販の唐揚げをパネラーが摂取した後、内容が分からないように試験例1及び比較例1〜4の飲料サンプル(それぞれ50mLづつ)のいずれか1種類を摂取した。パネラーは官能評価前の1時間の飲食を控え、官能評価を実施する時間帯は午前中とした。また、飲料サンプルの温度は10±1℃に調整し、3桁の乱数を記載した容器に入れた。供試する飲料サンプルの順序も乱数によりパネラー毎に変えた。評価の間、口をゆすぐために、パネラーは無塩クラッカーを摂取した。
【0019】
官能評価の項目は、飲料サンプルを飲む前後での唐揚げの、「油っぽさの強さ」で、15cmの直線の両端から1.25cmに印をつけ、左側を「強い」、右側を「弱い」とした線尺度法を用いた。評価項目の点数は、直線の右端からの長さとした。飲料を飲む前後での唐揚げの「油っぽさ」の低減率を下式より算出し評価した。
低減率(%)
=((飲む前の評価点−飲んだ後の評価点)/飲む前の評価点)×100
色調の評価については、色差計ZE−2000(日本電色工業株式会社製)にてL,a,bを測定し、脱イオン水との色差ΔEを算出し評価した。
表色基準;
L(明度):0[暗黒色]・・・・・・・100[明白色]
a(色相):(+)[赤]・・・(0)・・・(−)[緑]
b(色相):(+)[黄]・・・(0)・・・(−)[青]
ΔE(色差):ΔE=(ΔL+Δa+Δb1/2
水との色差:((100−L)+a+b1/2
【0020】
【表1】

【0021】
実施例1の飲料は飲む前後で、食品の油っぽさを低減する効果をし、水との式差が少なく色調への影響が少ないことがわかった。また、比較例1の飲料は水との式差が大きく色調への影響が大きい。
さらに、比較例2〜4の飲料は食品の油っぽさを低減する効果は少なかった。
以上の結果から、本発明の精製物を配合した飲料は、食品の油っぽさを低減する効果を示し、色調への影響が少ないことがわかった。
<実施例2> 茶飲料
実施例1で得られたプーアル茶抽出物の精製物を市販の緑茶飲料に0.03%質量濃度となるように添加し、本発明の茶飲料を調整した。
<比較例5>
比較例1で得られたプーアル茶熱水抽出物を市販の緑茶飲料に0.03%質量濃度となるように添加し、比較例5の茶飲料を調整した。
<比較例6>
比較例3で得られた緑茶熱水抽出物を市販の緑茶飲料に0.03%質量濃度となるように添加し、比較例6の茶飲料を調整した。
【0022】
<比較例7>
比較例4で得られた緑茶抽出物の精製物を市販の緑茶飲料に0.03%質量濃度となるように添加し、比較例7の茶飲料を調整した。
<試験例2>
実施例2及び比較例5〜7の茶飲料と市販の緑茶飲料について、官能評価及び色調の評価を試験例1と同様に行い、市販の緑茶飲料との色差を下式より算出した。
緑茶飲料との色差:(例.実施例2)
{(L緑茶飲料−L実施例2+(a緑茶飲料−a実施例2+(b緑茶飲料−b実施例2}1/2
これらの結果を表2に示す。
【0023】
【表2】

実施例2の茶飲料は飲む前後で、食品の油っぽさを低減する効果を示し、緑茶飲料との色差が少なく色調への影響が少ないことがわかった。
【0024】
<実施例3> アルコール飲料
実施例1で得られたプーアル茶抽出物の精製物を市販のビールに0.03%質量濃度となるように添加し、本発明のアルコール飲料を調整した。
<実施例4>
プーアル茶葉を1kgに対して熱水15kgを加え、90℃で30分間抽出後、茶殻を除くためにろ過し、ろ過液12kgを得た。得られたろ過液を10℃に冷却し、2時間保持した後、遠心分離(3000G)をし、得られた上清を噴霧乾燥することで、本願発明の茶精製物を80g得た。得られたプーアル茶抽出物の精製物を市販のビールに0.03%質量濃度となるように添加し、本発明のアルコール飲料を調整した。
<実施例5>
プーアル茶葉を1kgに対して熱水15kgを加え、90℃で30分間抽出後、茶殻を除くためにろ過し、ろ過液12kgを得た。ステンレスカラムに充填した合成吸着剤(XAD―16、オルガノ社製)500mlを、予め水により洗浄し、得られたろ過液12kgをSV(空間速度)=4(h−1)の通液速度でカラムに通液した。次いで、2Lの水で洗浄し、溶出液を回収し、噴霧乾燥を行い、本願発明の茶精製物を70g得た。得られたプーアル茶抽出物の精製物を市販のビールに0.03%質量濃度となるように添加し、本発明のアルコール飲料を調整した。
【0025】
<試験例3>
実施例3〜5のアルコール飲料と対照品として市販のビールについて、官能評価と色調の評価をパネラー5人により行った。
官能評価の方法は市販の唐揚げを摂取した後、実施例3〜5と対照品を50mL摂取し、飲料を飲んだ後に残る唐揚げの「油っぽさ」を評価した。
色調の評価は目視検査とし、本発明品と対照品の色調の変化を評価した。
その結果、実施例3〜5のプーアル茶抽出物の精製物を添加したアルコール飲料はいずれも市販のビールと比較して飲料を飲んだ後に残る唐揚げの「油っぽさ」が少なく、色調の変化は見られなかった。
<実施例6> 炭酸飲料
実施例1で得られたプーアル茶抽出物の精製物を市販のコーラ飲料に0.03%質量濃度となるように添加し、本発明の炭酸飲料を調整した。得られた炭酸飲料と対照品として市販のコーラについて官能評価と色調の評価を試験例3と同様にしてパネラー5人により行った。
その結果、プーアル茶抽出物の精製物を添加した炭酸飲料は市販のコーラ飲料と比較して飲料を飲んだ後に残る唐揚げの「油っぽさ」が少なく、色調の変化は見られなかった。
【0026】
<実施例7> 氷菓
砂糖15%(質量濃度、以下同じ)、クエン酸0.5%、氷菓用安定剤0.2%、香料0.2%、実施例1で得られたプーアル茶精製物0.03%を混合溶解し、均質化、殺菌、冷却、エージング、フリージングを行い、本発明の氷菓を調整した。また、対照品として、同様の製法により、プーアル茶抽出物の精製物無添加の氷菓も調整した。得られた氷菓と対照品について、官能評価と色調の評価をパネラー5人により行った。
官能評価の方法は市販の唐揚げを摂取した後、本発明品と対照品を30mL摂取し、氷菓を食べた後に残る唐揚げの「油っぽさ」を評価した。
色調の評価は目視検査とし、本発明品と対照品の色調の変化を評価した。
その結果、プーアル茶抽出物の精製物を添加した氷菓は無添加品と比較して、氷菓を食べた後に残る唐揚げの「油っぽさ」が少なく、色調の変化は見られなかった。
【0027】
<実施例8> キャンディー
砂糖50%(質量濃度、以下同じ)、水飴33%、香料0.5%、実施例1で得られたプーアル茶抽出物の精製物0.1%を120〜170℃で混合溶解後、成型し本発明品のキャンディーを調整した。また、対照品として、同様の製法により、プーアル茶抽出物の精製物無添加のキャンディーも調整した。得られたキャンディーと対照品について官能評価と色調の評価をパネラー5人により行った。
官能評価の方法は市販の唐揚げを摂取した後、本発明品と対照品を3g摂取し、キャンディーを食べた後に残る唐揚げの「油っぽさ」を評価した。色調の評価は目視検査とし、本発明品と対照品の色調の変化を評価した。
その結果、プーアル茶抽出物の精製物を添加したキャンディーは無添加品と比較して、キャンディーを食べた後に残る唐揚げの「油っぽさ」が少なく、色調の変化は見られなかった。
【0028】
<実施例9> ガム
ガムベース24%(質量濃度、以下同じ)に、還元麦芽糖水飴25%、還元乳糖38%、還元麦芽糖水飴シロップ7%、還元澱粉糖化物2.5%、香料0.5%、実施例1で得られたプーアル茶抽出物の精製物0.1%を80℃で混合溶解後、冷却、圧延して本発明品のガムを調整した。また、対照品として、同様の製法により、プーアル茶抽出物の精製物無添加のガムも調整した。得られたガムと対照品について官能評価と色調の評価をパネラー5人により行った。
官能評価の方法は市販の唐揚げを摂取した後、本発明品と対照品を3g、1分間摂取し、ガムを噛んだ後に残る唐揚げの「油っぽさ」を評価した。色調の評価は目視検査とし、本発明品と対照品の色調の変化を評価した。
その結果、プーアル茶抽出物の精製物を添加したガムは無添加品と比較して、ガムを噛んだ後に残る唐揚げの「油っぽさ」が少なく、色調の変化は見られなかった。
【0029】
<実施例10> 錠菓
ソルビトール93%(質量濃度、以下同じ)、アスパルテーム0.5%、乳化剤2%、香料3%、実施例1で得られたプーアル茶抽出物の精製物0.1%を混合後、打錠して本発明品の錠菓を調整した。また、対照品として、同様の製法により、プーアル茶精製物抽出物の無添加の錠菓も調整した。得られた錠菓と対照品について官能評価と色調の評価をパネラー5人により行った。
官能評価の方法は市販の唐揚げを摂取した後、本発明品と対照品を0.2g摂取し、錠菓を食べた後に残る唐揚げの「油っぽさ」を評価した。色調の評価は目視検査とし、本発明品と対照品の色調の変化を評価した。
その結果、プーアル茶抽出物の精製物を添加した錠菓は無添加品と比較して、錠菓を食べた後に残る唐揚げの「油っぽさ」が少なく、色調の変化は見られなかった。
このように本実施例によれば、茶本来の色・風味が少なく、各種飲食品への配合性が良好であり、かつ食後の口内に残る食事の油っぽさを低減できるプーアル茶抽出物の精製物が得られた。さらに、この精製物は色が薄いため、透明〜薄い色の飲食品にも用いることができた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)プーアル茶葉に熱水を加えて抽出物を得る抽出工程、(2)前記プーアル茶葉と抽出物とを分離する分離工程、(3)次の(a)〜(c)からなる工程のうちの一つを実施する精製工程;(a)前記の抽出物と有機溶媒を接触させ、前記の抽出物を有機溶媒に転溶し、有機溶媒画分を回収する精製工程、(b)前記の抽出物を冷却することにより、溶液中に生じる析出物と非析出物とに分別する精製工程、又は(c)前記の抽出物をカラムクロマト処理により極性、電荷、分子サイズの違いによって分画する精製工程を備えることを特徴とするプーアル茶抽出物の製造方法。
【請求項2】
前記有機溶媒は、アセトン、エタノール、酢酸エチルからなる群から選択される少なくとも一つであることを特徴とする請求項1に記載のプーアル茶抽出物の精製物の製造方法。
【請求項3】
前記プーアル茶抽出物の精製物を0.03%の質量濃度となるように水に溶解したときに、測色色差計による測定データであるL(明度)、a(色相[赤〜緑])、b(色相「黄〜青」)について、L≧95、a≦0、かつb≧0であることを特徴とする請求項1または2に記載のプーアル茶抽出物の精製物の製造方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一つによって製造されたプーアル茶抽出物の精製物を含有することを特徴とする飲食品。

【公開番号】特開2013−9641(P2013−9641A)
【公開日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−145679(P2011−145679)
【出願日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【出願人】(000204181)太陽化学株式会社 (244)
【Fターム(参考)】