説明

後部車体構造

【課題】自動車の車体のねじり剛性を効率的に向上することができる後部車体構造、ひいては、高張力鋼板を用いた薄肉化による車体軽量化を効率的に向上できる後部車体構造を提供すること。
【解決手段】フロアパネル15と、前記フロアパネル15の左右に形成されたリアホイールハウス20及びリアストラットタワー25と、シートバックサイドパネル40L、40Rと、リアピラー50とを備えた後部車体構造10であって、車体後方から見たときに、前記フロアパネル15上におけるリアホイールハウス20L、20R間に配置され、左側上部と右側下部に連結され前記左側上部から前記右側下部に延在する第1の補強部材71と、前記第1の補強部材71と互いに交差して配置され右側上部と左側下部に連結され前記右側上部から前記左側下部に延在する第2の補強部材75とを備えることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、自動車用車体のねじり剛性を向上するための後部車体構造に関する。
【背景技術】
【0002】
周知のように、自動車の燃費や運動性能の向上、安全対策や装備充実にともなう重量増加を吸収するために、自動車の軽量化が求められており、そのために、例えば、高張力鋼板を用いた車体構造の薄肉化による車体の軽量化が進められている。
例えば、590MPa級高張力鋼板を用いて車体を軽量化した場合、車体強度を確保しつつ従来鋼板と比較して約40%程度の軽量化が実現可能とされ、非常に大きな成果を期待することができる。
【0003】
一方、自動車は、走行中に路面の凹凸から受ける力や路肩等に乗り上げた場合の衝撃等、種々の力を受けるため、車体強度に加えてねじり剛性が必要とされるが、高張力鋼板を用いて車体構造を薄肉化すると、車体強度が確保されても、ねじり剛性は、一般的に低下する。
これは、温度履歴や成分等により鋼板の引張強度が向上しても、鉄のヤング率は一定であるため、車体構造が薄肉化されると、断面二次極モーメントが小さくなり、その結果、ねじり剛性が低下するためである。
したがって、車体を薄肉化して軽量化する場合、ねじり剛性を向上することが必要である。
【0004】
車体のねじり剛性の評価は、例えば、図9に示すようなねじり剛性測定方法を用いて、図10に示すようなねじれ角又はねじれ角に対応する荷重を測定して行なう。
図9は、ホワイトボディ(車体)100のねじり剛性測定方法を示す概念図を、図10は、リアアクスルセンタ100Rを基準とするフロントアクスルセンタ100Fのねじれに基づくねじり剛性を説明する図である。
【0005】
ねじり剛性の測定は、例えば、図9(A)に示すように、ホワイトボディ100をリアアクスルセンタ(リアの車軸位置)100RでリアストラットRにより固定し、フロントストラットFを介してフロントアクスルセンタ(フロントの車軸位置)100Fにねじりトルクを負荷して得られる平均的なねじり剛性値GJにより評価される。(G;横弾性係数、J;断面極二次モーメント)
【0006】
フロントアクスルセンタ100Fに対するねじりトルクTは、例えば、図9(B)に、図9(A)におけるY−Y矢視図として示すように、左右のフロントストラットFL、FRにそれぞれダミーバー101の上端を取り付け、ダミーバー101の下端を取付けたシーソ台102を軸芯O周りに回動することにより負荷される。
【0007】
ねじり剛性値GJは、図10に、図9(A)におけるX−X矢視図として示すように、フロントアクスルセンタ100FにねじれトルクTを負荷した際に生じるフロントアクスルセンタ100Fにおける車体の左右の変位δL、δRに基づいて算出される。なお、図9において、二点鎖線及び実線で示した100Dは、それぞれねじりトルクTを負荷する前後のフロントアクスルセンタ100Fにおける車体(外形)を示している。
ここで、ねじりトルクTによるねじれ角θ(rad)は小さいので、
θ≒tanθ=((δL+δR)/B) ;(Bは、フロントアクスルセンタ100FにおけるねじりトルクT負荷に係る車体幅寸法)と近似することができるため、
ねじり剛性値GJ=(T/(θ/ホイールベース長さL))
=(T・B・ホイールベース長さL)/(δL+δR)
となる。(例えば、「自動車の強度」(株式会社 山海堂 1990年10月30日 第2刷発行)参照)
【0008】
上記車体のねじり剛性の向上に関して、後部車体構造に着目した技術として、例えば、特許文献1、2に示すような技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2003−137140号公報
【特許文献2】特開2006−335088号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、車体構造の薄肉化により軽量化を推進するためには、上記先行技術等だけでは充分とはいえず、高張力鋼板の将来の強度向上を睨んださらに有効な技術に対する強い要請がある。
【0011】
本発明は、このような事情を考慮してなされたもので、自動車の車体のねじり剛性を効率的に向上することができる後部車体構造、ひいては、高張力鋼板を用いた薄肉化により、車体軽量化を効率的に向上できる後部車体構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために、この発明は以下の手段を提案している。
請求項1に記載の発明は、フロアパネルと、前記フロアパネルの左右部分に形成されたリアホイールハウスと、前記リアホイールハウスに対応して設けられたストラットタワーと、トランクルームの前部に形成されたシートバックサイドパネルと、前記リアホイールハウスのそれぞれに接続された左右のリアピラーと、を備えた後部車体構造であって、前記フロアパネル上の前記シートバックサイドパネル又は前記トランクルーム内に配置される補強構造を備え、前記補強構造は、車体後方から見たときに、左側上部と右側下部に連結され前記左側上部から前記右側下部に延在する第1の補強部材と、前記第1の補強部材と互いに交差して配置され右側上部と左側下部に連結され前記右側上部から前記左側下部に延在する第2の補強部材とを有することを特徴とする。
【0013】
この発明に係る後部車体構造によれば、フロアパネル上のシートバックサイドパネル又はトランクルーム内に、後部車体構造の左側上部と右側下部に連結される第1の補強部材と、後部斜体構造の右側上部と左側下部に連結される第2の補強部材とを有し、第1の補強部材と第2の補強部材が互いに交差して配置された補強構造を備えているので、後部車体の長手方向と直交する断面において、第1の補強部材及び第2の補強部材の長さを大きく確保するとともに、第1の補強部材と第2の補強部材の左右側における交差角を小さく設定できる。
その結果、後部車体構造の上部をフロアパネルに対して左右方向にずらすモーメントの発生を効率的に抑制して、車体のねじり剛性を向上することができる。
なお、第1の補強部材及び第2の補強部材は、これら双方を含む面が、
(1)左右のリアストラットタワーにおいて負荷される荷重の中心を含む面と一致
(2)後部車体構造を側面から見たときに、左右のリアアクスルセンタを含む面と平行
(3)後部車体構造を側面から見たときに、左右のリアアクスルセンタを含む面とずれる方向
のいずれかに配置されていてもよい。
【0014】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の後部車体構造であって、前記左右のリアピラーは、前記第1の補強部材及び前記第2の補強部材より上方において接続されていることを特徴とする。
【0015】
この発明に係る後部車体構造によれば、第1の補強部材及び第2の補強部材より上方に配置された、例えば、アッパーバック、サイドクロスメンバ等により左右のリアピラーが連結されるので、第1の補強部材と第2の補強部材の上方における左右のリアピラー間の間隔に変位(接近、離間)が生じるのが抑制される。その結果、車体構造のねじりモーメントを効率的に向上することができる。
【0016】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は請求項2に記載の後部車体構造であって、前記第1の補強部材及び前記第2の補強部材は、左右の前記シートバックサイドパネルの上部及び下部に連結されていることを特徴とする。
【0017】
この発明に係る後部車体構造によれば、第1の補強部材及び第2の補強部材が、左右のシートバックサイドパネルの上部及び下部に連結されているので、トランクルーム内の空間を占有することなく空間を有効活用しつつねじり剛性を向上することができる。
【0018】
請求項4に記載の発明は、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の後部車体構造であって、前記第1の補強部材と、前記第2の補強部材は、それぞれの連結部が、回動可能に連結されていることを特徴とする。
【0019】
この発明に係る後部車体構造によれば、前記第1の補強部材と、前記第2の補強部材は、それぞれの連結部が、回動可能に連結されているので、いわゆるトラス構造を構成し、補強部材は引張を主体に荷重を受け、また、第1の補強部材、前記第2の補強部材に圧縮が生じても曲げモーメントを車体に伝達することがない。したがって、大きなねじれが生じても車体に与えるダメージを小さくすることができる。なお、この連結部は、ピン接合継手又はボールジョイントを用いて回動可能に連結することができる。
【0020】
請求項5に記載の発明は、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の後部車体構造であって、前記第1の補強部材と、前記第2の補強部材は、それぞれの連結部が、固定して連結されていることを特徴とする。
【0021】
この発明に係る後部車体構造によれば、第1の補強部材と第2の補強部材の各連結部が固定されているので、第1の補強部材及び第2の補強部材がそれぞれの連結部からのモーメントを受けることができ、その結果、ねじり剛性を効率的に向上することができる。
【0022】
請求項6に記載の発明は、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の後部車体構造であって、前記第1の補強部材と、前記第2の補強部材は、それぞれの下部の連結部が固定して連結され、かつそれぞれの上部の連結部が回動可能に連結されていることを特徴とする。
【0023】
この発明に係る後部車体構造によれば、補強材が受ける引張り応力に対し十分な強度を有する補強材であれば、線材、棒材または細い管等であっても、補強材として適用できる利点がある。たとえば、十分な引張り強度を有するピアノ鋼線または、炭素繊維部材も適用できる。
【0024】
請求項7に記載の発明は、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の後部車体構造であって、前記第1の補強部材と、前記第2の補強部材は、それぞれの下部の連結部が回動可能に連結され、かつそれぞれの上部の連結部が固定して連結されていることを特徴とする。
【0025】
この発明に係る後部車体構造によれば、構造をより単純化でき、かつ、強材が受ける引張り応力に対し十分な強度を有する補強材であれば、線材、棒材または細い管等であっても、補強材として適用できる利点がある。たとえば、十分な引張り強度を有するピアノ鋼線または、炭素繊維部材も適用できる。
【発明の効果】
【0026】
この発明に係る後部車体構造によれば、自動車の車体のねじり剛性を効率的に向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る車体の全体構造の概略を示す図である。
【図2】第1の実施形態に係る後部車体構造を示す斜視図である。
【図3】第1の実施形態に係る補強構造を車体後方から見た図である。
【図4】第1の実施形態に係る補強構造を側面から見た概略図である。
【図5】本発明の2の実施形態に係る補強構造を側面から見た概略図である。
【図6】本発明の3の実施形態に係る補強構造を側面から見た概略図である。
【図7】本発明の4の実施形態に係る補強構造を側面から見た概略図である。
【図8】本発明の5の実施形態に係る補強構造を側面から見た概略図である。
【図9】車体のねじり剛性測定方法の一例を示す概略図であり、(A)は車体構造の長手方向における荷重を負荷する位置を、(B)は、(A)におけるY−Y矢視図であり、車体の幅方向におけるトルク発生の概略を説明する図である。
【図10】車体のねじり剛性を説明する図であり、図9(A)におけるX−X矢視図であり、ねじりトルクを負荷する前後の車体の変位及びねじれ角を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、図1から図4を参照して、本発明の第1の実施形態について説明する。
図1は、本発明の第1の実施形態に係る車体構造の概略を示す図であり、符号1は、例えば、モノコックボディに係る車体構造を、符号10は後部車体構造を示している。
車体構造1は、構成する部材が、例えば、590MPa級高張力鋼により形成され、特に記載をしない場合、各部材は、スポット溶接により接続されている(なお、スポット溶接に関しては、適宜記載する。)。
【0029】
後部車体構造10は、図2に示すように、例えば、フロアパネル15と、リアホイールハウス20と、リアストラットタワー25と、シートバックパネル40と、リアピラー50と、アッパーバック60と、補強構造70とを備え、トランクスルー用の開口部41を有した構成とされている。
【0030】
リアホイールハウス20は、左右のリアホイールハウス20L、20Rを備え、後部車体構造10の幅方向内方に膨出するとともに幅方向外方及び下方に開口して形成されている。
また、リアホイールハウス20L、20Rは、フロアパネル15の左右部分に形成されたリアホイールハウス20L、20Rと対応する凹周縁部に、例えば、スポット溶接により接続されている。
【0031】
リアストラットタワー25は、左右のリアホイールハウス20と対応して設けられており、この実施形態では、例えば、後部車体構造10の前後方向におけるリアホイールハウス20の中央位置(リアアクスルセンタ10R)に、幅方向におけるリアホイールハウス20L、20R内側位置に隣接して形成されている。また、リアストラットタワー25の高さは、リアホイールハウス20より低く形成されている。
【0032】
シートバックパネル40は、この実施形態において、左右のシートバックサイドパネル40L、40Rと、上部壁部40Aとを備え、左右のシートバックサイドパネル40L、40Rの上縁部が上部壁部40Aに接続されている。
左右のシートバックサイドパネル40L、40Rは、例えば、スポット溶接により、それぞれ左右のリアピラー50及びリアホイールハウス20の前部上側(側部も含む)に上方を後方に向けて立設されており、シートの後側を支持するようになっている。
【0033】
また、シートバックパネル40は、組立てられて車両を構成した際に、トランクルーム30の前部に位置して、居室とトランクルーム30とを区分する隔壁として機能するとともに、左右のシートバックサイドパネル40L、40R、上部壁部40A、及びフロアパネル15で囲まれた開口部41がトランクスルーを構成するようになっている。
【0034】
リアピラー50は、例えば、フロアパネル15の側部及びリアホイールハウス20の周縁部にポット溶接されて、フロアパネル15に固定されている。
また、左右のリアピラー50は、第1の補強部材71及び第2の補強部材75の上側が、シートバックパネル40の上部壁部40A、及びアッパーバック60により連結されるとともに、左右のシートバックサイドパネル40L、40Rを介して第1の補強部材71及び第2の補強部材75と連結されている。
【0035】
アッパーバック60は、上述のように左右のリアピラー50を連結する部材であり、前縁部がシートバックパネル40の上部壁部40Aに、例えば、スポット溶接により接続され、後部車体構造10の左右を架け渡す構成とされている。
【0036】
補強構造70は、第1の補強部材71と、第2の補強部材75とを備え、シートバックパネル40に開口する開口部41に設けられている。すなわち、後部車体構造10を側面視したときに、第1の補強部材71及び第2の補強部材75の双方を含む面が、左右のリアアクスルセンタ10Rを含む面とずれた向きに間隔をあけて配置されている。
【0037】
第1の補強部材71は、例えば、外径が一定の略円筒形状の鋼管により形成され、一端が左側のシートバックサイドパネル40Lの開口部41側上部に位置する連結部42LAに連結され、他端が右側のシートバックサイドパネル40Rの開口部41側下部に位置する連結部42RBに連結され、連結部42LAと連結部42RBを結ぶ方向に延在している。
【0038】
また、第1の補強部材71は、連結部42LA、42RBにおいてシートバックパネル40に固定されないように、それぞれボルト(図示せず)により連結されていて、第1の補強部材71にモーメントが生じた場合に、連結部42LA、42RBにおいてわずかに回動するようになっている。
【0039】
第2の補強部材75は、第1の補強部材71と同様に略円筒形状の鋼管により形成されており、一端が右側のシートバックサイドパネル40Rの開口部41側上部に位置する連結部42RAに連結され、他端が左側のシートバックサイドパネル40Lの開口部41側下部に位置する連結部42LBに連結され、連結部42RAと連結部42LBを結ぶ方向に延在している。
【0040】
また、第2の補強部材75は、連結部42RA、42LBにおいてシートバックパネル40に固定されないように、それぞれボルト(図示せず)により連結されていて、第2の補強部材75にモーメントが生じた場合に、連結部42RA、42LBにおいてわずかに回動するようになっている。
【0041】
また、第1の補強部材71と第2の補強部材75とは、互いの中央部が交差して配置されるように互いに相手を収容する凹部が中央部に形成されており、車体後方から見たときに、第1の補強部材71と第2の補強部材75は、いわゆるタスキ掛けに配置されている。
【0042】
また、第1の補強部材71と第2の補強部材75の交差する部分は、機械的な連結がされずに互いに拘束されない構成とされており、第1の補強部材71、第2の補強部材75は、両端部が回動可能に支持されたトラス構造とされている。その結果、第1の補強部材71、第2の補強部材75が連結部42LA、42RB、42RA、42LBに曲げモーメントを発生させるのを抑制するようになっている。
【0043】
第1の実施形態に係る後部車体構造10によれば、左右のシートバックサイドパネル40L、40Rを介して後部車体構造10の左右が補強構造70により連結されているので車体のねじり剛性を向上することができる。
【0044】
また、後部車体構造10によれば、補強構造70が、シートバックパネル40の開口部41に配置されているので、トランクルーム30の空間を占有することなく空間を有効活用しつつねじり剛性を向上することができる。
【0045】
また、後部車体構造10によれば、第1の補強部材71と第2の補強部材75がそれぞれの連結部42LA、42RB、42RA、42LBにおいて、回動可能に連結されているので引張力を主体に荷重を受け、連結部42LA、42RB、42RA、42LBへの曲げモーメントの発生が抑制されるので、車体に与えるダメージを小さくすることができる。
【0046】
また、後部車体構造10によれば、補強部材のない車体に、外径φ20(厚さt=2.0mm)の2.29kgの鋼管からなる補強構造70を設けた場合に、ねじり剛性を27.54%向上できることを確認した。
【0047】
なお、第1の実施の形態においては、第1の補強部材71と第2の補強部材75が、シートバックサイドパネル40L、40Rに連結される場合について説明したが、例えば、第1の補強部材71、第2の補強部材75に形成したブラケットや、フロアパネル15、ホイールハウス20、リアピラー50等に形成したブラケットにより、第1の補強部材71と第2の補強部材75を、フロアパネル15、ホイールハウス20、リアピラー50等に直接固定してもよい。
【0048】
また、例えば、断面円形の円筒形状の第1、2の補強部材71、75を用いる場合について説明したが、例えば、断面が四角をはじめとする多角形状、楕円形状、その他周知の補強構造、又は中実の補強部材を用いた補強構造を適用してもよい。
また、第1の補強部材71と第2の補強部材75のそれぞれの長手方向の中央を太く形成した構成としてもよい。
【0049】
また、第1の補強部材71及び第2の補強部材75の上側および下側の連結をトラス構造とする場合に、ボルトで回動可能に連結される場合について説明したが、リベットをはじめとする他の部材を用いて連結してもよい。
【0050】
また、第1の補強部材71及び第2の補強部材75の上側および下側の連結部を、例えば、リベットやボルト等の締結部材を用い、又はアーク溶接等、他の溶接手段により固定して、ラーメン構造としてもよい。
また、例えば、第1の補強部材71及び第2の補強部材75の上側を固定して下側を回動可能に連結し、又は第1の補強部材71及び第2の補強部材75の上側を回動可能として下側を固定した構成としてもよく、用途に対応して固定又は回動可能に連結するかを適宜選択することができる。
【0051】
また、上記第1の補強部材と第2の補強部材とがそれぞれの中央部分で接続されていない構成に代えて、例えば、第1の補強部材及び第2の補強部材を互いの中央部分でリベット等により回動自在に接続し又は固定してもよい。
【0052】
また、アッパーバック60による左右のリアピラー50の連結に代えて、例えば、他のリアクロスメンバにより左右のリアピラーを連結してもよいし、左右のリアピラー50間を直接連結しない構成としてもよい。
【0053】
また、左右のシートバックサイドパネル40L、40Rが上部壁部40Aにより連結されたシートバックパネル40に代えて、左右のシートバックサイドパネル40L、40Rを連結しない構成としてもよい。
【0054】
次に、図5を参照して、本発明の第2の実施形態について説明する。
第2の実施形態に係る後部車体構造11が、第1の実施形態と異なるのは、補強構造70がシートバックパネル40の開口部41に配置されていたのに対して、補強構造80は、第1の補強部材71及び第2の補強部材75の下部が、シートバックパネル40とリアストラットタワー25の間で、リアホイールハウス20の前部上側(側部も含む)と連結され、上部が、シートバックパネル40とリアストラットタワー25の間の、リアピラー50及びアッパーバック60と連結され、上方を後方に向けて設けられている点である。
その他は、第1の実施形態と同様であるため、同一の符号を付して説明を省略する。
後部車体構造11によれば、ねじり剛性の点で優れている。
【0055】
次に、図6を参照して、本発明の第3の実施形態について説明する。
第3の実施形態に係る後部車体構造12が、第1の実施形態と異なるのは、補強構造85が、第1の補強部材71及び第2の補強部材75の下部が、シートバックパネル40とリアストラットタワー25の間で、リアホイールハウス20の前部上側(側部も含む)と連結され、上部が、リアストラットタワー25の後方で、リアピラー50及びアッパーバック60と連結され、上方を後方に向けるとともに、第1の補強部材71及び第2の補強部材75を含む面が、リアアクスルセンタ10Rを含む面と交差している点である。その他は、第1の実施形態と同様であるため、同一の符号を付して説明を省略する。
後部車体構造12によれば、固有振動数の調整が可能になる点で優れている。
【0056】
次に、図7を参照して、本発明の第4の実施形態について説明する。
第4の実施形態に係る後部車体構造13が、第1の実施形態と異なるのは、補強構造90が、第1の補強部材71及び第2の補強部材75の下部が、リアストラットタワー25の後方で、リアホイールハウス20の上側(側部も含む)と連結され、上部が、リアストラットタワー25の後方で、リアピラー50及びアッパーバック60と連結され、上方を後方に向けて設けられている点である。その他は、第1の実施形態と同様であるため、同一の符号を付して説明を省略する。
後部車体構造13によれば、補強部材の面外変形を防ぎ、ねじり剛性をより高める点で優れている。
【0057】
次に、図8を参照して、本発明の第5の実施形態について説明する。
第5の実施形態に係る後部車体構造14が、後部車体構造10と異なるのは、補強構造95が、第1の補強部材71及び第2の補強部材75の下部が、リアストラットタワー25の後方で、リアホイールハウス20の上側(側部も含む)と連結され、上部が、リアストラットタワー25の前方で、リアピラー50及びアッパーバック60と連結され、上方を前方に向けるとともに、第1の補強部材71及び第2の補強部材75を含む面が、リアアクスルセンタ10Rを含む面と交差している点である。その他は、第1の実施形態と同様であるため、同一の符号を付して説明を省略する。
後部車体構造14によれば、ストラットからの荷重を効率よくリアピラーに伝達する点で優れている。
【0058】
なお、上記第2〜第5の実施形態において、第1の補強部材71及び第2の補強部材75の下部をリアホイールハウス20の上側と連結し、上部を左右のリアピラー50及びアッパーバック60と連結するのに代えて、例えば、第1の実施形態におけるシートバックパネル40のような門形部材や枠形状部材の周縁部にフランジ等を形成してリアピラー50、ホイールハウス20及びフロアパネル15等に連結し、補強構造80、85、90、95が、この門形部材や矩形枠形部材を介してリアピラー50等に連結する構成としてもよい。
門形部材や矩形枠形部材を用いることにより、車体構造1のねじり剛性を大きく向上することができる。
【0059】
なお、本発明は、上記実施の形態に限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲において、種々の変更をすることが可能である。
例えば、上記実施形態においては、車体が高張力鋼により形成される場合について説明したが、車体構造の一部又は全部が高張力鋼以外の材料により形成されていてもよい。
【0060】
また、全体の車体構造1がモノコックボディからなる場合について説明したが、例えば、一部にフレーム構造を有するなど他の車体構造に適用してもよい。
【0061】
また、上記実施の形態においては、リアホイールハウス20の内側にリアストラットタワー25が隣接して設けられる場合について説明したが、リアストラットタワー25が、例えば、リアホイールハウス20の上側、リアホイールハウス20よりも内側又は後方等に形成されていてもよい。
また、本発明に係る後部車体構造10、11、12、13、14は、内燃機関を搭載した自動車のほか、ハイブリッド車、各車輪に電動機が設けられた電気自動車等に適用できることはいうまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0062】
自動車の車体構造のねじり剛性を効率的に向上することができるので、産業上利用可能である。
【符号の説明】
【0063】
1 車体構造
10 後部車体構造
10R リアアクスルセンタ
15 フロアパネル
20 リアホイールハウス
25 リアストラットタワー(ストラットタワー)
30 トランクルーム
40 シートバックパネル
40A 上部壁部
40L、40R シートバックサイドパネル
42LA、42LB、42RA、42RB 連結部
50 リアピラー
60 アッパーバック
70、80、85、90、95 補強構造
71 第1の補強部材
75 第2の補強部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フロアパネルと、
前記フロアパネルの左右部分に形成されたリアホイールハウスと、
前記リアホイールハウスに対応して設けられたストラットタワーと、
トランクルームの前部に形成されたシートバックサイドパネルと、
前記リアホイールハウスのそれぞれに接続された左右のリアピラーと、を備えた後部車体構造であって、
前記フロアパネル上の前記シートバックサイドパネル又は前記トランクルーム内に配置される補強構造を備え、
前記補強構造は、
車体後方から見たときに、左側上部と右側下部に連結され前記左側上部から前記右側下部に延在する第1の補強部材と、
前記第1の補強部材と互いに交差して配置され右側上部と左側下部に連結され前記右側上部から前記左側下部に延在する第2の補強部材と、を有することを特徴とする後部車体構造。
【請求項2】
請求項1に記載の後部車体構造であって、
前記左右のリアピラーは、前記第1の補強部材及び前記第2の補強部材より上方において接続されていることを特徴とする後部車体構造。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の後部車体構造であって、
前記第1の補強部材及び前記第2の補強部材は、
左右の前記シートバックサイドパネルの上部及び下部に連結されていることを特徴とする後部車体構造。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の後部車体構造であって、
前記第1の補強部材と、前記第2の補強部材は、
それぞれの連結部が、回動可能に連結されていることを特徴とする後部車体構造。
【請求項5】
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の後部車体構造であって、
前記第1の補強部材と、前記第2の補強部材は、それぞれの連結部が、固定して連結されていることを特徴とする後部車体構造。
【請求項6】
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の後部車体構造であって、
前記第1の補強部材と、前記第2の補強部材は、それぞれの下部の連結部が固定して連結され、かつそれぞれの上部の連結部が回動可能に連結されていることを特徴とする後部車体構造。
【請求項7】
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の後部車体構造であって、
前記第1の補強部材と、前記第2の補強部材は、それぞれの下部の連結部が回動可能に連結され、かつそれぞれの上部の連結部が固定して連結されていることを特徴とする後部車体構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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