説明

徐放剤

【課題】単位時間当たりの揮発性化合物の放出量を増加させる。
【解決手段】上方を開口した容器2と、容器2の開口部を閉塞する透湿非透水性シート3と、容器2の内部に複数個の小穴を有する中棚4とを備え、中棚4上に潮解性化合物5を収納し、中棚4上又は容器下部の少なくともいずれか一方に揮発性化合物が含浸されたポリ乳酸又はポリ乳酸共重合体(ポリ乳酸樹脂6)を収納する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、揮発性化合物を徐々に放出する徐放剤に関し、特に、揮発性化合物の保持材として生分解性ポリマーを用いた徐放剤に関する。
【背景技術】
【0002】
天然由来薬剤は、揮発性の高いものが多く、薬効の高い成分を無駄なく有効に活用するにためには、その成分の揮発(蒸発)を制御する必要がある。揮発(蒸発)を制御するための方法の一つとして、多孔質体、生分解性ポリマーなどを用いる方法がある。
【0003】
しかし、多孔質体への含浸は、細孔から揮発成分が短期間で放出される恐れがあり、実用化には向かない。また、生分解性ポリマーは、マイクロカプセル化の技術によるDDS(Drug Delivery System)などで医療分野への研究・応用が盛んであるが、これらマイクロカプセル化の技術を揮発性化合物に適応することは困難である。
【0004】
また、高分子材料の成形・加工に広く用いられている溶融混練法を用いる場合、200℃程度まで高温にしなければならないため、揮発性化合物を生分解性ポリマーに取り込むことができない。
【0005】
このような問題点を改善するために、本件発明者は、環境適応型の生分解性ポリマー(ポリ乳酸又はポリ乳酸共重合体)と超臨界二酸化炭素(scCO)(超臨界点:7.38MPa、31.1℃)を利用した加工技術を駆使し、揮発性化合物を生分解性ポリマーに取り込ませ、揮発性化合物を徐々に放出させることのできる「徐放剤」を開発している(例えば、特許文献1、2参照。)。
【特許文献1】特開2008−037858号公報
【特許文献2】特開2011−068577号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の生分解性ポリマーを用いた徐放剤は、空気中に存在する水分(湿気)により分解を行うものであった。このため、単位時間当たりの揮発性化合物の放出量を増加させることが困難であった。
【0007】
本発明は、このような従来の実情に鑑みて提案されたものであり、単位時間当たりの揮発性化合物の放出量を増加させることができる徐放剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、鋭意検討の結果、潮解性化合物を用い、空気中の水(水蒸気)を積極的に取り込むことにより、単位時間当たりの揮発性化合物の放出量を増加させることができることを見出し、本発明に至った。
【0009】
すなわち、本発明に係る徐放剤は、揮発性化合物が含浸されたポリ乳酸又はポリ乳酸共重合体と、潮解性化合物とを含むことを特徴としている。
【0010】
また、本発明に係る徐放器は、上方を開口した容器体と、上記容器体の開口部を閉塞する透湿非透水性シートと、上記容器体の内部に複数個の小穴を有する中棚と、上記中棚上に、揮発性化合物が含浸されたポリ乳酸又はポリ乳酸共重合体と、潮解性化合物とを含む徐放剤を収納することを特徴としている。
【0011】
また、本発明に係る徐放器は、少なくとも一部が透湿非透水性シートで構成された袋体内に、揮発性化合物が含浸されたポリ乳酸又はポリ乳酸共重合体と、潮解性化合物とを含む徐放剤を収納することを特徴としている。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、潮解性化合物がポリ乳酸又はポリ乳酸共重合体の加水分解を促進させるため、揮発性化合物の放出量を増加させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本技術を適用した徐放器の構成例を示す図である。
【図2】本技術を適用した徐放器の他の構成例を示す図である。
【図3】PLLArCLへのヒバ油の含浸実験における圧力の影響(40℃、3時間)を示すグラフである。
【図4】PLLArTEMCへのヒバ油の含浸実験における圧力の影響(40℃、3時間)を示すグラフである。
【図5】PLLArDXOへのヒバ油の含浸実験における圧力の影響(40℃、3時間)を示すグラフである。
【図6】PLLArCLへのヒバ油の含浸実験における時間の影響(40℃、14MPa)を示すグラフである。
【図7】PLLArTEMCへのヒバ油の含浸実験における時間の影響(40℃、14MPa)を示すグラフである。
【図8】PLLArDXOへのヒバ油の含浸実験における時間の影響(40℃、14MPa)を示すグラフである。
【図9】PLLArCLへのヒバ油の含浸実験における温度の影響(14MPa、3時間)を示すグラフである。
【図10】PLLArTEMCへのヒバ油の含浸実験における温度の影響(14MPa、3時間)を示すグラフである。
【図11】PLLArDXOへのヒバ油の含浸実験における温度の影響(14MPa、3時間)を示すグラフである。
【図12】CaCl飽和水溶液におけるポリ乳酸の分解試験(37℃、pH4.8)の結果を示すグラフである。
【図13】CaCl飽和水溶液におけるポリ乳酸共重合体(PLLArCL)の分解試験(37℃、pH4.8)の結果を示すグラフである。
【図14】CaCl飽和水溶液におけるポリ乳酸共重合体の分解試験と徐放試験(37℃、pH4.8)の結果を示すグラフである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら下記順序にて詳細に説明する。
1.徐放剤
2.徐放剤の製造方法
3.徐放器
4.実施例
【0015】
<1.徐放剤>
本技術における徐放剤は、揮発性化合物が含浸されたポリ乳酸又ポリ乳酸共重合体と、潮解性化合物とを含有する。
【0016】
揮発性化合物としては、目的に応じて、忌避成分、殺虫成分、香り成分等を用いることができる。具体的には、例えば、ヒバ油、d−リモネン、メントン、メントール、プレゴン、カルボン、ネロリドール、テルピネオール、セドロール、ピレトリン、アレスリン、ヒドラメチルノン、ペルメトリン、フタルスリン、硫酸ニコチン、クマリン、ユーカリエキス、ラベンダーエキス、ハーブエキス、木酢液、ヒノキチオール、ワサオール、trans−2−ヘキセナール、trans−3−ヘキセナール、cis−3−ヘキセナール、カテキン、タケオール、ひまし油、10−ウンデセン酸、アリルカラシ油、イソチオシアン酸アリル、カプサイシンなどが挙げられ、これらの中から1種又は2種以上を用いることができる。
【0017】
ポリ乳酸又はポリ乳酸共重合体は、L-ラクチド(以下、L−LAと記す)をモノマーとして合成される。これらの中でも、揮発性物質の含浸量や分解性などの改質を目的として、L−LAと環状モノマーとのポリ乳酸共重合体を用いることが好ましい。環状モノマーとして、例えば、環状エステル、環状カーボネート、環状エステルエーテルを用いることができる。具体的には、環状エステルとしてグリコリド、D,L−ラクチド、β−プロピオラクトン、γ−ブチロラクトン、δ−バレロラクトン、β−メチル−δ−バレロラクト、ε−カプロラクトン、DL−マバロノラクトンなど、環状カーボネートとして、エチレンカーボネート、トリメチレンカーボネート、1−メチルトリメチレンカーボネート、2,2−ジメチルトリメチレンカーボネート、テトラメチレンカーボネートなど、環状エステルエーテルとして、1,5−ジオキセパン−2−オン、モルフォリン−2,5−ジオン、3,6−ジメチルモルフォリン−2,5−ジオン、(R)−or(S)−3−メチル−4−オキサ−6−ヘキサノライド(MOHEL)、エチレンオキシド、5−メチル−5−ベンジロキシカルボニル−1,3−ジオキサン−2−オンなどを用いることができる。
【0018】
潮解性化合物は、空気中の水(水蒸気)を取り込んで自発的に水溶液となる化合物である。潮解性化合物が取り込んだ水により、ポリ乳酸又はポリ乳酸共重合体の加水分解を促進させ、揮発性化合物の放出量を増加させることができる。潮解性化合物としては、塩化カルシウム、炭酸カリウム、塩化マグネシウム、水酸化ナトリウム、クエン酸などが挙げられる。
【0019】
このような構成の徐放剤は、揮発性化合物が含浸されたポリ乳酸又はポリ乳酸共重合体と、潮解性化合物とを含有することにより、潮解性化合物がポリ乳酸又はポリ乳酸共重合体の加水分解を促進させるため、揮発性化合物の放出量を増加させることができる。
【0020】
また、潮解性化合物とポリ乳酸又ポリ乳酸共重合体との混合状態は、潮解性化合物が吸湿した水によりポリ乳酸又はポリ乳酸共重合体が加水分解可能であれば、特に限定されるものではなく、用途に応じて様々な形態をとることができる。例えば、再結晶やでん粉系の接着剤により潮解性化合物をポリ乳酸又はポリ乳酸共重合体に固着させ、これを散布するようにしてもよい。また、後述するように除湿器や除湿シートに、揮発性化合物を含浸させたポリ乳酸又はポリ乳酸共重合体を使用するようにしてもよい。
【0021】
次に、本技術における徐放剤の具体例として、シロアリ防除剤を例に挙げて説明する。具体例として示すシロアリ防除剤は、揮発性化合物としてシロアリに対して強力な忌避効果を有するヒバ油が含浸されたポリ乳酸又ポリ乳酸共重合体と、潮解性化合物とを含有するものである。
【0022】
現在、シロアリは全世界で2、891種が記録されており、そのうち建物に被害を与える「建築物加害種」とされているのは83種といわれている。現在、日本に分布するシロアリは22種のみで、このうち6種が建築物に被害を与えてきた。なかでも、日本で甚大な被害を与えているシロアリは、ほとんどが“イエシロアリ”と“ヤマトシロアリ”の2種類で、防除の対象とされている。
【0023】
シロアリの被害は、主に建築物の土台や束柱(つかばしら)、大引きなど建築床下部分の建築材であり、被害が進行すると柱の沈下、床の歪み、建具の立てつけの悪化といった症状が顕著になり、修繕が必要とされるが、症状が顕著に進行してなくても強度の低下が、地震や台風のときの倒壊の要因になることは明らかである。日本では、木造建築が現在でも多く存在しており、これら建築物は地震や台風などによる被害は比較的多く、これら災害による倒壊の原因の多くは、腐朽・蟻害であるとされている。
【0024】
本技術の具体例と示すシロアリ防除剤は、ヒバ油が含浸されたポリ乳酸又ポリ乳酸共重合体と、潮解性化合物とを含有するため、木材腐敗防止の湿度対策のための除湿剤としても機能する。これにより、除湿剤が吸湿した水により防除剤の基材(ポリ乳酸やその共重合体)の分解を促進し、ヒバ油の気散を促進させることができる。また、吸湿により生じた水溶液にはヒバ油が含まれるため、これを希釈し散布することにより、シロアリ防除を施すことができる。
【0025】
なお、本技術は、シロアリ防除剤への適用だけでなく、例えば、湿度が高い環境を利用したカビ防止剤、芳香剤などにも適用することができる。
【0026】
<2.徐放剤の製造方法>
次に、前述した徐放剤の製造方法について説明する。本技術における徐放剤の製造方法は、ポリ乳酸又はポリ乳酸共重合体を合成する合成工程と、ポリ乳酸又はポリ乳酸共重合体に揮発性化合物を含浸させる含浸工程と、潮解性化合物を混合する混合工程とを有する。
【0027】
合成工程では、L−LAの重合又はL−LAと環状モノマーとを開環重合することによりポリ乳酸又はポリ乳酸共重合体を得る。ポリ乳酸共重合体は、所定量のLLAと環状モノマーとを、シュレンクチューブに仕込み、触媒を加え、脱気とアルゴンガス置換をした後、所定温度のオイルバスにて開環重合させて合成する。ここで、LLAと環状モノマーとのモル比は、L−ラクチドが70モル%以上100%未満の割合であることが好ましい。これにより、揮発性化合物の含浸量が増加し、単位時間当たりの揮発性化合物の放出量を増加させることができる。
【0028】
次の含浸工程では、ポリ乳酸又はポリ乳酸共重合体に揮発性化合物を含浸させる。含浸方法は、一般的な混練法や溶媒溶解法を用いることができるが、超臨界流体を用いた超臨界含浸法を用いることが好ましい。超臨界含浸法を用いるより、低沸点化合物を含浸することができるだけでなく、溶媒溶解法のように残存有機溶媒や溶媒除去時の揮発性化合物の揮発が問題となることがない。
【0029】
超臨界流体を用いた超臨界含浸法は、具体的には、基材であるポリ乳酸又はポリ乳酸共重合体と揮発性化合物とを高圧セルに封入し、所定の温度及び圧力に設定するとともに、例えば二酸化炭素を高圧セルに供給した後、超臨界二酸化炭素の状態にし、この状態を所定時間放置して、揮発性化合物の含浸を行うものである。そして、揮発性化合物含浸後、背圧弁を解放し圧力を低下させることによって超臨界二酸化炭素を気体の状態に戻し、基材から放散除去し、揮発性化合物が含浸された基材を得る。なお、超臨界流体は、揮発性化合物の沸点、ポリ乳酸共重合体の融点等に応じて、二酸化炭素(臨界温度:304.1K,臨界圧力:7.38MPa)、エタン(臨界温度:305.45K,臨界圧力:18.7MPa)、窒素(臨界温度:126K,臨界圧力:3.4MPa)等を用いることができる。
【0030】
次の混合工程では、潮解性化合物を揮発性化合物が含浸されたポリ乳酸又はポリ乳酸共重合体に混合する。混合は、潮解性化合物が吸湿した水によりポリ乳酸又はポリ乳酸共重合体が加水分解可能であれば、特に限定されるものではなく、例えば、再結晶により潮解性化合物をポリ乳酸又はポリ乳酸共重合体に固着しても、でん粉系の接着剤で潮解性化合物をポリ乳酸又はポリ乳酸共重合体に固着しても構わない。
【0031】
<3.徐放器>
次に、前述した徐放剤を用いた徐放器について説明する。具体例として示す徐放器は、例えば、床下に設置してシロアリ防除器として使用するものである。
【0032】
図1は、本技術を適用した徐放器の構成例を示す図である。この徐放器1は、上方を開口した容器2と、容器2の開口部を閉塞する透湿非透水性シート3と、容器2の内部に複数個の小穴を有する中棚4とを備え、中棚4上に潮解性化合物5を収納し、容器下部に揮発性化合物が含浸されたポリ乳酸又はポリ乳酸共重合体(以下、ポリ乳酸樹脂6と記す。)を収納する。
【0033】
容器2は、ポリエチレン、ポリプロピレン等の熱可塑性樹脂等の非透水性の素材により、上方に開口部7を有する略円筒上に形成されている。容器2の開口部の周縁にはフランジ8が全周に亘って設けられており、内面には後述の中棚4を載せるための複数のリブ9が容器本体底面から立設されている。なお、容器2は、内部の除湿の状態が目視できるよう透視可能な素材により形成されていることが好ましい。
【0034】
透湿非透水性シート3は、湿気は通すが水分は透過しないシートであり、一般的には数ミクロン以下の微細孔を有する熱可塑性樹脂シートが挙げられる。この透湿性非透水シート3は、容器2の開口部7を閉塞するように容器2の開口部7周縁に設けられているフランジ8に接合されている。なお、使用前は、図示しないアルミシート等の非透湿性シートによって容器2のフランジ8上で透湿非透水性シートを覆うように取り付けられており、使用時にはこれを取り外して使用するようになっている。
【0035】
中棚4は、熱可塑性樹脂等の素材で成形されており、容器2の内部に設けられた複数のリブ9上に載置される。中棚4には、潮解性化合物5が吸湿して潮解した際の潮解液が容器2下部に滴下するように複数の小穴10が設けられている。
【0036】
このように構成された徐放器1を床下に設置すると、透湿非透水シート3を通して潮解性化合物5が床下内の湿気を吸湿し、潮解性化合物5は潮解して液状になり、中棚4の小穴10より容器2の下部に滴下し、吸湿液として貯留される。これにより、容器下部に収納されたポリ乳酸樹脂6の加水分解の速度を向上させることができ、揮発性化合物の単位時間あたりの放出量も向上させることができる。
【0037】
また、中棚4上にポリ乳酸樹脂6を収納してもよい。この場合、ポリ乳酸樹脂6の加水分解によって中棚4の小穴10より容器2の下部の吸湿液中に落下する。これにより、加水分解の速度を向上させることができ、揮発性化合物の単位時間あたりの放出量も向上させることができる。
【0038】
したがって、揮発性化合物としてシロアリに対して強力な忌避効果を有するヒバ油を用いれば、ヒバ油の単位時間あたりの放出量が増加するため、床下内のシロアリ防除を強力に行うことができる。また、吸湿液にはヒバ油が含まれるため、これを希釈し散布することにより、シロアリ防除を施すことも可能となる。
【0039】
また、図2は、本技術を適用した徐放器の他の構成例を示す図である。この徐放器は、図1に示す徐放器と同様の用途に使用できるものである。
【0040】
この図2に示す徐放器11は、少なくとも一部が透湿性シートで構成された袋体内に、潮解性化合物15と、揮発性化合物が含浸されたポリ乳酸又はポリ乳酸共重合体(以下、ポリ乳酸樹脂16と記す。)とを収納する。
【0041】
袋体は、例えば非透湿性シート12及び透湿非透水性シート13の周辺部が接着されることにより形成される。袋体内部には、潮解性化合物15とポリ乳酸樹脂16とが所定割合で混合された状態で収納される。
【0042】
非透湿性シート12は、ポリエチレン、ポリプロピレン等の非透湿でかつ非透水性の素材から構成される。
【0043】
透湿非透水性シート13は、透湿非透水性シート3と同様に、湿気は通すが水分は透過しないシートであり、一般的には数ミクロン以下の微細孔を有する熱可塑性樹脂シートが挙げられる。
【0044】
このように構成された徐放器11を、透湿非透水性シート13を上側にして床下に設置すると、透湿非透水シート13を通して潮解性化合物15が床下内の湿気を吸湿する。潮解性化合物15が潮解して液化すると、ポリ乳酸樹脂16の加水分解が促進され、透湿非透水性シート13から揮発性化合物が放出される。
【0045】
なお、上記説明した実施の形態において、内部に潮解性化合物とポリ乳酸樹脂とともに必要により他の添加剤を一緒に混合することも可能である。他の添加剤としては。香料、消臭剤、防カビ剤、抗菌剤、増粘剤等を挙げることができる。
【実施例】
【0046】
<4.徐放剤>
以下、実施例を挙げて本発明をさらに説明する。ここでは、先ず、生分解性ポリマーとしてポリ乳酸を改質させたポリ乳酸共重合体を作製した。そして、ポリ乳酸又はポリ乳酸共重合体に揮発性化合物を含浸させ、潮解性化合物を用いて、徐放性について評価した。揮発性化合物としては、シロアリ防除剤に使用されるヒバ油を用い、潮解性化合物としては、塩化カルシウム(CaCl)を用いた。なお、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0047】
<4.1 ポリ乳酸ランダム共重合体の合成>
生分解性ポリマーとして、ポリ乳酸(以下、PLLAと記す。)の改質を目的として、L-ラクチド(以下、L−LAと記す)と環状モノマーとの共重合体を用いた。環状モノマーとして、環状エステルであるε−カプロラクトン(以下、CLと記す。)、環状カーボネートであるテトラメチレンカーボネート(以下、TEMCと記す。)、環状エステルエーテルである1、5−ジオキセパン−2−オン(以下、DXOと記す。)を用いて、ポリ乳酸共重合体を合成した。
【0048】
[L−LA/CLランダム共重合体の合成]
ポリ乳酸を改質するためにL−LAと共重合させるモノマーとしてCLを用い、L−LAとCLの仕込比を90/10、80/20、70/30として、反応式(1)に示すL−LA/CLランダム共重合体(以下、PLLArCLと記す。)を合成した。
【0049】
【化1】

【0050】
重合用シュレンクチューブに触媒としてオクチル酸スズを量り入れ、L−LA/CLのモノマー仕込比を所定の比率で加えた。M/C比は3000mol/molとした。チューブ内をアルゴンガス置換して、150℃のオイルバス中で24時間反応させた。反応後、オイルバスからチューブを取り出し、ポリマーを冷却後、固化したポリマーをクロロホルムに溶解してメタノール中で再沈殿を行い、真空乾燥器で3時間乾燥させた。得られたポリマーの収率を求めた後、分子量(M)・分子量分布(M/M)、組成比(L−LA/CL)、融点(T)・融解熱(ΔH)・ガラス転移点(T)をそれぞれGPC(ゲル浸透クロマトグラフィー)、H NMR(核磁気共鳴装置)、DSC(示差走査熱量計)により測定した。表1に、これらの測定結果を示す。
【0051】
【表1】

【0052】
L−LAとCLとの共重合(90/10)は、Mが7.1×10となっており、比較的高分子量のポリマーを得ることができた。得られた共重合体の組成比は、仕込比とほぼ同じで91/9であった。DSCの結果においては、Tが152.7℃、ΔHが24.9J/g、Tは48.3℃であり、TやTはポリ乳酸と同じように高い値を示した。また、結晶性の大きさを示すΔHも大きな値であり、結晶性の高いポリマーであった。M/C比を2000mol/molにして共重合を行ったところ、収率は3000mol/molとほとんど変化はなかったが、Mの減少や共重合体中のL−LA含量がやや低下していた。L−LA含有量の低下に伴い、共重合体のTは組成比91/9のものよりやや低くなっていた。仕込比80/20の共重合では、収率82.5%、分子量6.8×10、組成比81/19の共重合体が得られた。仕込比70/30の共重合体では、仕込比80/20の共重合体よりも収率、Mが減少していた。参考として、ポリ乳酸(三井化学(株)製、レイシアH−100)の物性値を表1に記載した。このポリ乳酸は、Mが7.8×10と高く、TやTは169.3℃、59.6℃と高い値を示した。また、結晶性の大きさを示すΔHは32.0J/gであり、結晶性の高いポリマーであった。これらのポリマーを後述するヒバ油の含浸実験でフィルムとして使用した。
【0053】
[L−LA/TEMCランダム共重合体の合成]
L−LAと共重合させるモノマーとして、前記CLのラクトン類とは構造の異なる二酸化炭素と類似構造を有するテトラメチレンカーボネート(TEMC)を用いた。共重合はPLLArCLと同様の方法により行い、反応式(2)に示すL−LA/TEMCランダム共重合体(以下、PLLArTEMCと記す。)を合成した。また、PLLArCLと同様の方法により、ポリマーの収率、分子量(M)・分子量分布(M/M)、組成比(L−LA/TEMC)、融点(T)・融解熱(ΔH)・ガラス転移点(T)を測定した。表2に、これらの測定結果を示す。
【0054】
【化2】

【0055】
【表2】

【0056】
L−LAとTEMCとの共重合(M/C比3000mol/mol)において、仕込比90/10と80/20で合成した共重合体のMは7.6×10と6.2×10であり、高分子量のポリマーを得ることができた。M/C比2000mol/molで合成した共重合体のMnはやや低く、5.6×10であり、M/C比に依存するように低下した。DSCによる測定結果では、組成比88/12の共重合体は、Tが129.0℃、ΔHが14.6J/g、Tが51.1℃であり、Mや組成比がほぼ同じPLLArCLと比べてTとΔHは低く、Tは逆に高かった。PLLArTEMC(組成比86/14)も同様の結果であった。
【0057】
[L−LA/DXOランダム共重合体の合成]
L−LAと共重合させるモノマーとして、前記環状エステルや前記環状カーボネートとは異なる環状エステルエーテルであるDXOを用いた。共重合はPLLArCLと同様の方法により行い、反応式(3)に示すL−LA/DXOランダム共重合体(以下、PLLArDXOと記す。)を合成した。また、PLLArCLと同様の方法により、ポリマーの収率、分子量(M)・分子量分布(M/M)、組成比(L−LA/DXO)、融点(T)・融解熱(ΔH)・ガラス転移点(T)を測定した。表3に、これらの測定結果を示す。
【0058】
【化3】

【0059】
【表3】

【0060】
L−LAとDXOとの共重合において、仕込比90/10で合成した共重合体の収率とMは86.7%と5.1×10となっており、比較的Mの高い共重合体を高収率で得ることができた。この共重合体の組成比は、仕込比と同じ比率であった。熱的特性においては、ほぼ同じ組成比のPLLArCLよりもTやTがやや高くなっており、さらに、ΔHは約1.5倍高い値を示していた。また、この共重合体の熱的特性は、PLLArTEMCよりもかなり高い値であった。L−LA仕込量の少ない共重合においても、得られた共重合体は分子量5.0×10以上の高収率で合成することができた。合成した共重合体の組成比は、仕込比よりもL−LA含有量が少し増加していた。M/C比2000mol/mol、仕込比80/20で共重合を行った場合、組成比は仕込比よりもL−LA含量が低下しやすかった。
【0061】
<4.2 scCOを用いた共重合体へのヒバ油の含浸実験>
[圧力が含浸量に及ぼす影響]
超臨界二酸化炭素(以下、scCOと記す。)中における各種ポリ乳酸共重合体へのヒバ油の含浸量を比較検討するために、圧力を10〜20MPaの範囲で実験を行った。その他の条件は、温度を40℃、時間は3時間とした。ヒバ油は杉山木材株式会社製のものを使用した。ポリ乳酸共重合体は前述で合成したものを用い、ソルベントキャスト法によりフィルム(厚さ約100μm)に成形した。これら共重合体へのヒバ油の含浸は、ステンレス製耐圧容器(0.5L容)にフィルム(0.3g)とヒバ油(2.0g)を量り入れ、scCO雰囲気下で攪拌(100rpm)しながら行った。3時間処理した後、圧力を2時間かけて緩やかに減圧し、サンプルを耐圧容器から取り出した。含浸処理後のサンプルは、ヒバ油の他にCOが含まれているので、精油含浸量はH NMRにより決定した。
【0062】
図3にPLLArCLへのヒバ油の含浸実験の結果を示す。ポリ乳酸の10MPaでのヒバ油の含浸率は4.4%であったが、圧力の増加に伴い含浸率は12MPaより高い圧力で急激に増加し、14MPaで含浸率は最大の7.4%であった。14MPaよりも高い圧力では逆に含浸率は減少し、17MPa以上では含浸率は6.0〜5.8%であり、圧力の影響はあまりみられなかった。
【0063】
組成比91/9のPLLArCLの含浸率は、10MPaで5.5%であり、ポリ乳酸の含浸率よりも増加していた。圧力を上げると、ポリ乳酸の実験と同様、含浸率が14MPaで最大値の8.0%となり、それ以上の圧力では含浸率が減少することが分かった。同様に、PLLArCL(組成比83/17)の含浸率は、10MPaで5.9%であり、14MPaで最大の9.2%であった。14MPaよりも高い圧力では、圧力の増加に伴い含浸率は減少し、20MPaにおいても含浸率は6.1%であった。PLLArCL(組成比72/28)の含浸率は、他の共重合体よりも全圧力の領域において、かなり高く、10MPaで8.6%であった。この値は、PLLArCL(組成比83/17)の最大含浸率に相当する量である。さらに、14MPaで最大含浸率12.8%を示した。このPLLArCLも、他の共重合体と同様、14MPa以上で含浸率が低下し、20MPaで6.5%にまで減少した。
【0064】
これらのPLLArCLへの含浸実験において、圧力が含浸率に大きな影響を与えていることが分かった。PLLArCLへの含浸実験では、圧力は12〜17MPaの範囲で含浸させることが好ましく、14MPaで最も含浸率が高かった。
【0065】
図4にPLLArTEMCへのヒバ油の含浸実験の結果を示す。PLLArCLと同様に含浸実験を行ったところ、TEMC含量の増加に伴い含浸量も増加した。
【0066】
組成比88/12のPLLArTEMCの含浸率は、10MPaで5.4%であり、ポリ乳酸よりも含浸率が増加していた。PLLArCLへの含浸実験でも見られたように圧力の上昇にともない、この共重合体の含浸率も増加し、14MPaで9.7%であった。ほぼ同じ組成比のPLLArCL(91/9)と比べると、同じ圧力でPLLArTEMC(88/12)の含浸率の方がやや高くなっていた。14MPa以上の圧力では、圧力の上昇に伴って含浸率が低下し、20MPaで含浸率が6.4%であった。PLLArTEMC(76/24)の含浸率は、10〜20MPaの圧力範囲において、88/12の共重合体よりも高く、14MPaの圧力で最大の12.1%であった。PLLArCLは、13〜15MPaとやや幅のある圧力領域で高含浸率の結果を得ることができたが、PLLArTEMCは、高含浸率が得られる圧力幅が小さかった。また、PLLArTEMC(76/24)は、圧力に関係なく、40℃、3時間の処理でわずかに融解していた。これは、PLLArTEMCのTやΔHがPLLArCLよりも低いことが原因であると考えられる。
【0067】
これらのPLLArTEMCへの含浸実験においては、圧力が含浸率に大きな影響を与えていることが分かった。PLLArTEMCの含浸実験でも、PLLArCLへの含浸実験と同様、12〜17MPaの範囲で含浸させることが好ましく、14MPaでの含浸が最も含浸率が高かった。
【0068】
図5にPLLArDXOへのヒバ油の含浸実験の結果を示す。PLLArCLと同様に含浸実験を行ったところ、DXO含量の増加に伴い含浸量も増加した。
【0069】
組成比が90/10の共重合体の含浸率は、全圧力領域において、ポリ乳酸の値よりも低かった。この共重合体の含浸率は、10MPaで3.6%と低く、14MPaで最大値6.7%を示したが、共重合体の中では最も低い値であった。14MPa以上の圧力では、含浸率の低下はあまりみられず、20MPaの圧力で含浸率が5.7%となり、ポリ乳酸の値とほぼ同じであった。組成比が82/18の共重合体の含浸率は、10MPaで4.0%であり、14MPaで最大値7.0%を示した。組成比73/27の共重合体の含浸率は、10MPaで5.8%、14MPaで最大値9.1%を示した。
【0070】
これらのPLLArDXOへの含浸実験において、他の共重合体と同様、14MPa前後で含浸率が最大値を示し、12〜17MPaの範囲で含浸させることが好ましいことが分かった。
【0071】
[処理時間の影響]
各種ポリ乳酸共重合体へのヒバ油の含浸実験において、処理時間が含浸率に及ぼす影響について検討した。処理時間を1〜5時間として実験を行った。その他の条件は、圧力を14MPa、温度を40℃とした。これら共重合体へのヒバ油の含浸は、「圧力が含浸量に及ぼす影響」で行った含浸実験と同じ方法で実験を行った。
【0072】
図6にPLLArCLへのヒバ油の含浸実験における処理時間の影響を示す。ポリ乳酸への含浸率は1時間で4.0%であったが、3時間の処理で含浸率は7.4%にまで増加した。さらなる時間の延長で含浸率は増加すると予想されたが、含浸率はほとんど変わらず7.0%であった。PLLArCLへの含浸における時間の影響については、組成比が88/12の共重合体は1時間で6.7%の含浸率を示しており、3時間の処理では、8.8%にまで増加していた。5時間の処理では、ポリ乳酸と同じように含浸率はほとんど変わらず8.5%であった。組成比が83/17、70/30の共重合体は、3時間の処理で最大の含浸率を示しており、それぞれ、9.2%、11.5%の含浸率であった。
【0073】
図7にPLLArTEMCへのヒバ油の含浸実験における処理時間の影響を示す。PLLArTEMCも、PLLArCL同様、共重合体中のL−LA含量の低下に伴い、ヒバ油の含浸率が上昇した。40℃、14MPa、1時間の処理の含浸実験において、PLLArTEMCの組成比89/11の含浸率が5.2%、組成比76/24の含浸率が9.7%であり、共重合体中のTEMC含有量の増加に伴い、含浸率が増加した。組成比76/24の共重合体における3時間の処理の含浸率は、12.1%であったが、5時間の処理の含浸率は、3時間とほぼ同じ値であった。これは、PLLArCL同様、3時間の処理でscCOによるポリマー中へのヒバ油の含浸は限界に達していると考えられる。
【0074】
図8にPLLArDXOへのヒバ油の含浸実験における処理時間の影響を示す。上記2つの共重合体と同様に、PLLArDXOも共重合体中のL−LA含量の低下に伴い、含浸率が増加した。組成比73/27の共重合体の含浸率は、他の組成比の共重合体よりも高い値を示しており、3時間の処理で9.1%であった。PLLArDXOも他の2つの共重合体と同様、3時間の処理までは含浸率は増加したが、3時間以降では含浸率はほぼ同じ値であった。これは、前述したようにscCOによるヒバ油の含浸は限界に達しているものと考えられる。
【0075】
以上の結果から、ヒバ油のポリ乳酸共重合体への含浸は、scCO流体下(40℃、14MPa)において、3〜5時間処理すればよいことが分かった。
【0076】
[処理温度の影響]
各種ポリ乳酸共重合体へのヒバ油の含浸実験において、温度についても設定温度を変更し、処理温度が含浸に及ぼす影響について検討した。圧力や時間は、上記実験において最適な条件であった14MPa、3時間とした。温度は、40、60、80、100℃に設定し、含浸実験を行った。
【0077】
図9にPLLArCLへのヒバ油の含浸実験における温度の影響を示す。横軸は温度、縦軸は含浸率を表す。ポリ乳酸への含浸率は、40℃で7.4%であったが、温度の上昇に伴い含浸率も増加し、100℃で約2倍の14.2%にまで増加した。組成比88/12の共重合体への含浸率は、40℃で6.2%、80℃で18.5%であった。80℃までは温度と含浸率は比例関係であったが、100℃で含浸率は急激に増加し、36.0%に達した。組成比83/17の共重合体への含浸率は、組成比88/12の共重合体よりもやや高く、100℃で37.5%であった。組成比72/28の共重合体への含浸率は、100℃で最大値40.2%を示した。各共重合体の含浸率は、100℃で高い値が得られたが、組成比83/17及び組成比72/28の共重合体は融解した。
【0078】
図10にPLLArTEMCへのヒバ油の含浸実験における温度の影響を示す。前述したようにポリ乳酸への含浸率は、温度の増加に伴い増加しており、100℃で14.2%であった。一方、組成比86/14のPLLArTEMCの含浸率は、40℃で9.7%であった。温度上昇に伴い含浸率は増加し、100℃で37.7%の値を示した。この共重合体は、80℃以下では融解は起こらなかったが、100℃で融解した。組成比76/24の共重合体は、40℃から100℃の温度範囲において融解した。この共重合体の含浸率は40℃で12.1%、100℃で40.2%を示した。PLLArTEMCの含浸率は、60℃以上で高い値を示し、PLLArCLよりも高かった。これは、PLLArTEMCがPLLArCLよりも同じ組成比においてTやΔHが低いことが原因であると考えられる。
【0079】
図11にPLLArDXOへのヒバ油の含浸実験における温度の影響を示す。組成比90/10の共重合体は、温度範囲40℃から80℃において、ポリ乳酸とほとんど同じ含浸率であったが、100℃で含浸率は大幅に増加していた。100℃でのこの共重合体の含浸率は、21.8%であった。組成比82/18の共重合体の含浸率は、40℃で8.3%、100℃で34.7%であった。組成比90/10と82/18のPLLArDXOの含浸曲線は、PLLArCL(88/12、83/17)と同じ傾向を示した。これは、両共重合体のTやTが同じ組成比で類似した値であったために温度に対する含浸率の変化が同じように推移したのではないかと考えられる。同じ組成比で比較した場合、PLLArCLの含浸率は、PLLArDXOの値より高い値を示した。PLLArDXO(90/10)のΔH(36.7J/g)は、PLLArCL(88/12)の値(28.6J/g)よりも高く、PLLArDXOの結晶性が高いことを示している。したがって、含浸率に対する温度の影響は、ポリマーのTやTに依存し、ΔHはポリマーの含浸率に影響を及ぼしていると考えられる。組成比82/18の共重合体は、100℃で融解した。PLLArDXO(75/25)は、80℃以上で融解した。PLLArDXO(75/25)の含浸率は、40℃で7.2%となっており、60℃以上で急激な増加を示し、100℃で43.0%であった。この共重合体の含浸曲線は、PLLArTEMCの線形と類似しており、含浸率の温度に対する影響が似ていることを示した。この共重合体のT(119.3℃)やT(25.4℃)は、PLLArTEMC(76/24)の値(T:107.4℃、T:28.4℃)と似ていることから、上記でも述べたように、含浸率における温度の影響は、ポリマーのTやTに依存していることが考えられる。
【0080】
図9〜図11に示す結果より、含浸率は温度の増加に伴い増加することが分かった。また、含浸時の処理温度を60℃〜100℃、より好ましくは80℃〜100℃とすることにより、高い含浸率が得られることが分かった。
【0081】
<4.3 ポリ乳酸共重合体の分解試験と徐放試験>
ポリ乳酸共重合体の分解試験として、加水分解を促進させるため、除湿剤を併用して行った。除湿剤としては、入手、価格、安全などの面において適切な潮解性化合物であるCaClを使用した。分解試験は、37℃のCaClの飽和水溶液(pH4.8)中にポリ乳酸共重合体を浸漬させて行った。
【0082】
図12にポリ乳酸(レイシアH−100)(三井化学(株)製)の分解試験の結果を示す。ポリ乳酸は約200日までは徐々に分解が進行し、196日(0.54年)で残存重量率は92%であったが、それ以降、分解はほとんど起こらず、1036日(2.84年)で90%の残存重量率であった。しかし、この日以降、分解が緩やかではあるが見られるようになり、残存重量率も減少し始めた。さらに、1344日(3.68年)からは分解速度が急激に速くなり、1568日(4.30年)には64%にまで減少していた。
【0083】
除湿剤の能力は1年以上維持することは困難であるので、使用期間は1年以内とすることを考えると分解速度はもう少し速い方が実用的であると考えられる。一般的に分子量が高いと分解速度は遅くなる傾向にあり、このポリ乳酸の分子量が7.8×10と比較的高いことから、分子量が低いものを使用すれば良いことになる。また、本件発明者は、特開2008−037858号公報、及び特開2011−068577号公報において、ポリ乳酸よりもポリ乳酸共重合体の方が、分解速度が速いことを報告している。
【0084】
そこで、低分子量のポリ乳酸共重合体を用いて、CaCl飽和水溶液(pH4.8)中において、37℃で分解試験を行った。
【0085】
図13にPLLArCLを用いて分解試験を行った結果を示す。分解試験には以下のPLLArCLを使用した。組成比81/19、50/50、19/81の共重合体を使用し、それぞれの分子量は、2.7×10、2.5×10、3.0×10であった。組成比19/81の共重合体は、ポリ乳酸と同じように分解は緩慢であり、112日(0.31年)でほとんど分解されておらず、残存重量率は98%であった。ポリ乳酸の成分が少ないと分解速度が遅いことが分かった。50/50の分解は、19/81よりもポリ乳酸の含有量が多くなるため、分解は少し早くなり、112日(0.31年)で89%にまで低下した。さらに、81/19を使用した場合、分解は極端に早くなり、56日(0.15年)で完全に分解された。これは、これら共重合体の分子量がほとんど同じであることから、ポリ乳酸の含有量を増やすことにより、分解速度が速くなることを示唆している。
【0086】
次に、PLLArCL、PLLArTEMC、PLLArDXOを用いて徐放試験を行った。徐放試験では、ポリ乳酸含有量が80%程度、分子量が5.0×10程度のポリ乳酸共重合体を使用した。表4に徐放試験で使用したポリ乳酸共重合体とヒバ油含浸率を示す。
【0087】
【表4】

【0088】
また、図14にポリ乳酸共重合体のCaCl飽和水溶液(pH4.8)における37℃での分解試験と含浸させたヒバ油の徐放試験の結果を示す。各分解時間の含浸率は、時間ごとにサンプリングしたポリ乳酸共重合体中の含浸率を測定し、分解前を100%として求めた値である。低分子量(2.7×10)のPLLArCL(81/19)の同溶液における分解試験は、図13に示すように分解速度は非常に早く、56日で完全に分解されていた。しかし、ほぼ同じ組成比のPLLArCL(82/18)(分子量5.9×10)は、分子量が2倍以上あるため、分解が遅く、84日(0.23年)においても、残存重量率が94%であった。この共重合体のヒバ油の徐放性は、用いた共重合体の中では最も高く、84日後の含浸率は67%であった。PLLArTEMC(87/13)の分解性は、PLLArCL(81/19)とよく似ており、84日後の残存重量率はほとんど同じであった。この共重合体の徐放性は、PLLArCL(82/18)よりもやや遅く、84日後の含浸率は71%であった。また、PLLArDXO(81/19)の分解性は、他の共重合体よりも高く、84日で残存重量率は83%であったが、徐放性は低く、含浸率は76%であった。
【0089】
以上の結果から、揮発性化合物が含浸されたポリ乳酸共重合体と、潮解性化合物とを含むことにより、加水分解を促進させ、揮発性化合物を放出させることができることが分かった。
【0090】
なお、本発明は、これらの実施例に限られることなく、例えば、ポリ乳酸共重合体の種類、組成比、分子量などを変更することにより分解性や徐放性を調整することができ、目的や環境に応じた商品設計が可能である。
【符号の説明】
【0091】
1 徐放器、 2 容器、 3 透湿非透水性シート、 4 中棚、 5 潮解性化合物、 6 ポリ乳酸樹脂、 7 開口部、 8 フランジ、 9 リブ、 10 小穴 11 徐放器、 12 非透湿性シート、 13 透湿非透水性シート、 15 潮解性化合物、 16 徐放剤

【特許請求の範囲】
【請求項1】
潮解性化合物と、揮発性化合物が含浸されたポリ乳酸又はポリ乳酸共重合体とを含む徐放剤。
【請求項2】
上記ポリ乳酸共重合体の基材に上記潮解性化合物が固着されてなる請求項1記載の徐放剤。
【請求項3】
上記潮解性化合物は、塩化カルシウム、炭酸カリウム、塩化マグネシウム、水酸化ナトリウム及びクエン酸から選択される少なくとも1種である請求項1又は2記載の徐放剤。
【請求項4】
上記ポリ乳酸共重合体は、L−ラクチドと環状エステルとの共重合体、L−ラクチドと環状カーボネートとの共重合体、及びL−ラクチドと環状エステルエーテルとの共重合体から選択される少なくとも1種から構成される請求項1乃至3のいずれか1項記載の徐放剤。
【請求項5】
上記揮発性化合物は、ヒバ油、d−リモネン、メントン、メントール、プレゴン、カルボン、ネロリドール、テルピネオール、セドロール、ピレトリン、アレスリン、ヒドラメチルノン、ペルメトリン、フタルスリン、硫酸ニコチン、クマリン、ユーカリエキス、ラベンダーエキス、ハーブエキス、木酢液、ヒノキチオール、ワサオール、trans−2−ヘキセナール、trans−3−ヘキセナール、cis−3−ヘキセナール、カテキン、タケオール、ひまし油、10−ウンデセン酸、アリルカラシ油、イソチオシアン酸アリル、カプサイシンから選択される少なくとも1種である請求項1乃至4のいずれか1項記載の徐放剤。
【請求項6】
上方を開口した容器と、
上記容器の開口部を閉塞する透湿非透水性シートと、
上記容器の内部に複数個の小穴を有する中棚と、
上記中棚上に、潮解性化合物を収納し、
上記中棚上又は上記容器下部の少なくともいずれか一方に揮発性化合物が含浸されたポリ乳酸又はポリ乳酸共重合体を収納する徐放器。
【請求項7】
少なくとも一部が透湿性シートで構成された袋体内に、潮解性化合物と、揮発性化合物が含浸されたポリ乳酸又はポリ乳酸共重合体とを収納する徐放器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2013−35779(P2013−35779A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−173093(P2011−173093)
【出願日】平成23年8月8日(2011.8.8)
【出願人】(504237050)独立行政法人国立高等専門学校機構 (656)
【Fターム(参考)】