徐放性ナノ粒子組成物
【課題】投与されるべきナノ粒子状作用薬と投与後その作用薬の放出を延長するように働く速度制御性ポリマーを含む徐放性ナノ粒子組成物の提供。
【解決手段】本発明に係る組成物は、(a)有効平均粒径が約1000nm未満の投与することができる溶解しにくい作用薬、
(b)上記作用薬の表面と会合している少なくとも1種類の表面安定剤、および
(c)医薬として許容される少なくとも1種類の速度制御ポリマー、
を含む徐放性のナノ粒子組成物であって、前記組成物が約2から約24時間またはそれ以上の範囲の期間、上記作用薬の制御された放出を提供する。
【解決手段】本発明に係る組成物は、(a)有効平均粒径が約1000nm未満の投与することができる溶解しにくい作用薬、
(b)上記作用薬の表面と会合している少なくとも1種類の表面安定剤、および
(c)医薬として許容される少なくとも1種類の速度制御ポリマー、
を含む徐放性のナノ粒子組成物であって、前記組成物が約2から約24時間またはそれ以上の範囲の期間、上記作用薬の制御された放出を提供する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薬物のような貧溶性薬剤を含有する制御放出性組成物に関する。特に、本発明は、貧溶性薬剤がナノ粒子形態にて存在する組成物に関する。本発明はまた、かかる組成物を含有する固体状経口投薬形態に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
制御放出は、組成物または投薬形態からの薬物のような薬剤の放出において、該薬剤が所望のプロフィールに従って長期間にわたって放出される放出を指す。制御放出プロフィールは、たとえば、持続放出性、長期放出性、脈動放出性および遅延放出性プロフィールを含む。即時放出性組成物とは対照的に、制御放出性組成物は、予定プロフィールに従って長期間にわたって被験者への薬剤の送達を可能にする。かかる放出速度は、長期間にわたって薬剤の治療的に有効なレベルをもたらし得、そしてそれにより慣用の急速放出性投薬形態に比べてより長い期間の薬理学的または診断的応答をもたらし得る。かかるより長い期間の応答は、対応する短期作用性の即時放出性製剤では達成されない多くの固有の利点を与える。たとえば、慢性疼痛の処置において、制御放出性処方物は、慣用の短期作用性処方物よりもしばしば高度に好ましい。
【0003】
制御放出性の製薬組成物および投薬形態は、薬物、医薬、活性剤、診断剤またはヒトを含めて動物に内服的に投与されるべき物質のような薬剤の送達プロフィールを改善するために設計される。制御放出性組成物は、典型的には、送達の速度論を最適にしてそれにより生物学的利用能、便宜性および患者のコンプライアンスを増大し並びに高い初期放出速度および所望されない場合の一様でない血液または組織レベルのような不適切な即時放出速度と関連した副作用を最小にすることにより、投与物質の効果を改善するために用いられる。
【0004】
用語生物学的利用能は、薬物が投与後に作用部位にて利用され得るようになる程度を述べるために用いられる。薬物のような薬剤が投与後に標的部位に利用され得るようになる程度およびタイミングは、投薬形態および種々の性質たとえば薬物の溶解速度を含めて、多くの因子により決定される。いくつかの薬物組成物は、活性成分それ自体の貧溶解性の故に貧生物学的利用能の難点がある、ということがよく知られている。
【0005】
数多くの方法が、貧溶性薬物の生物学的利用能を高めるために開発されてきた。薬剤のナノ粒子形態のような粒度減少は、化合物の溶解速度が粒度に関連づけられるので、一つのかかる方法である。ナノ粒子組成物は、極めて小さい粒度すなわち1ミクロン未満を有する貧水溶性薬物または薬剤粒子を含む。粒度の減少および従って表面積の増大と共に、組成物は、投与後急速に溶解されそして吸収される傾向にある。或る処方物について、この特性は、たとえば米国特許第5,145,684号(特許文献1)、第5,510,118号(特許文献2)、第5,534,270号(特許文献3)および第4,826,689号(特許文献4)(参照により特定的に合体される)に記載されているように、高度に望ましくあり得る。しかしながら、急速溶解は、制御放出の目標と反対にある。公知の制御放出性処方物は、この問題への解決を呈さない。
【0006】
活性化合物の制御放出を与える組成物の製造および使用についての先行技術の教示は、投与後薬物の放出を延長する種々の方法を提供する。しかしながら、これらの方法のいずれも、ナノ粒子処方物を投与する成功的な方法を示唆しない。
当該技術において知られた例示的制御放出性処方物は、薬物の制御放出がたとえば製剤の被膜の選択的破壊により、被膜を通じての放出により、薬物の放出に影響を及ぼすべき特殊マトリックスとの配合によりまたはこれらの技法の組合わせにより引き起こされるところの、特殊的に被覆されたペレット、ミクロ粒子、植込み体、タブレット、ミニタブレットおよびカプセルを含む。いくつかの制御放出性処方物は、投与後予定周期にて活性化合物の一回分投与量の脈動放出を与える。
【0007】
Acharya等の米国特許第5,110,605号(特許文献5)は、カルシウムポリカルボフィル−アルギネート制御放出性組成物に言及する。Krishnamurthy等の米国特許第5,215,758号(特許文献6)は、アルギン酸ナトリウムおよびカルシウム塩の制御放出性坐薬組成物に言及する。Friend等の米国特許第5,811,388号(特許文献7)は、経口投与される化合物の制御放出をもたらすための、アルギン酸塩、水膨潤性ポリマーおよび消化性炭化水素誘導体を含む固体状アルギン酸塩ベースの処方物に言及する。
【0008】
WO91/13612は、薬物がイオン交換樹脂で錯化されている組成物を用いての製薬の持続放出に言及する。この公開特許出願に記載されている特定のイオン交換樹脂は、ナトリウムポリスチレンスルホネート樹脂であるAMBERLITE IRP 69(登録商標)である。
Woods等の米国特許第5,811,425号(特許文献8)は、体組織と適合性の生分解性ポリマー、リポソームまたはマイクロエマルジョン中の薬物のマイクロカプセルマトリックスを形成させることにより作製された制御放出性薬物の注入可能なデポー形態に言及する。Lam等の米国特許第5,811,422号(特許文献9)は、あるクラスの薬物をポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリ乳酸とポリグリコール酸のコポリマー、ポリイプシロンカプロラクトン、ポリヒドロキシ酪酸、等のような生分解性ポリマーに結合させることにより得られた制御放出性組成物に言及する。
【0009】
De Frees等の米国特許第5,811,404号(特許文献10)は、薬物組成物の持続放出を与えるための、長い循環半減期を有するリポソームの使用に言及する。
ナノ粒子組成物は、貧水溶性薬剤を含有する製薬上受容され得る組成物に対する当該技術におけるニーズ向けであった。しかしながら、公知のナノ粒子組成物は、制御放出性処方物用に適合しない。制御放出性ナノ粒子組成物に対する当該技術におけるニーズが残存している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】米国特許第5,145,684号
【特許文献2】米国特許第5,510,118号
【特許文献3】米国特許第5,534,270号
【特許文献4】米国特許第4,826,689号
【特許文献5】米国特許第5,110,605号
【特許文献6】米国特許第5,215,758号
【特許文献7】米国特許第5,811,388号
【特許文献8】米国特許第5,811,425号
【特許文献9】米国特許第5,811,422号
【特許文献10】米国特許第5,811,404号
【発明の概要】
【0011】
発明の要約
本発明は、新規な制御放出性ナノ粒子組成物の驚くべきかつ予期されない発見に向けられる。制御放出性組成物は、患者において約2から約24時間またはそれより長い範囲の期間、合体された薬物または他の物質の治療的に有効な放出を与える。
【0012】
制御放出性ナノ粒子組成物は、該組成物中における包含の前に約1000nm未満の有効平均粒度を有するところの、結晶質もしくは無定形のナノ粒子状薬物もしくは他の薬剤または結晶質および無定形のナノ粒子状薬物もしくは他の薬剤の組合わせのような投与されるべきナノ粒子状薬物または他の薬剤を含む。組成物はまた、ナノ粒子状薬物または他の薬剤の表面と結合された少なくとも1種の表面安定剤を含む。加えて、制御放出性ナノ粒子組成物は、投与されたナノ粒子状薬物または薬剤の放出を延長してそれにより制御放出をもたらすようになるように機能する1種またはそれ以上の製薬上受容され得る速度制御性ポリマーを含む。随意に、1種またはそれ以上の補助賦形物質もまた、制御放出性組成物中に包含され得る。
【0013】
ナノ粒子形態の貧溶性薬物を含有する本発明による制御放出性組成物は、該薬物のサイズの減少により達成された改善生物学的利用能が投与後長期間にわたって有効血液濃度を維持するために利用され得る点で有利である。
好ましくは、制御放出性ナノ粒子組成物における包含前のナノ粒子状薬剤の有効平均粒度は、約1000nm未満、約800nm未満、約600nm未満、約400nm未満、約300nm未満、約250nm未満、約100nm未満または約50nm未満である。ナノ粒子組成物は、上記に記載された米国特許第5,145,684号(「'684特許」)において最初に記載された。
【0014】
本発明はまた、経口、直腸、頬および膣の経路を経るようないかなる慣用の方法でも投与されるために、タブレット形態または多粒子形態にての、上記に記載された制御放出性組成物用の投薬形態を提供する。タブレット形態は、たとえば、被覆タブレット、多層タブレット、マトリックスタブレット、等であり得る。多粒子形態は、たとえば、粒子、ペレット、ミニタブレット、等であり得る。
【0015】
本発明の第1の観点において、ナノ粒子状薬物または他の薬剤、少なくとも1種の表面安定剤および1種またはそれ以上の補助賦形物質が、速度制御性ポリマー物質での被覆に先だってタブレット形態に圧縮される。
第2の観点において、ナノ粒子状薬物または他の薬剤、少なくとも1種の表面安定剤、速度制御性ポリマー物質および1種またはそれ以上の補助賦形剤が一緒に圧縮されて、制御放出性マトリックスが形成される。制御放出性マトリックスは、随意に、追加的制御放出性質をもたらすように速度制御性ポリマーで被覆され得る。
【0016】
第3の観点において、ナノ粒子状薬物または他の薬剤、少なくとも1種の表面安定剤および1種またはそれ以上の補助賦形物質が、速度制御性ポリマー物質での被覆に先だって多層タブレットの形態に圧縮される。
第4の観点において、ナノ粒子状薬物または他の薬剤および少なくとも1種の表面安定剤が速度制御性ポリマー物質中に分散され、そして多層タブレットの形態に圧縮される。多層タブレットは、随意に、追加的制御放出性質をもたらすように速度制御性ポリマー物質で被覆され得る。別の観点において、かかる多層タブレットにおける第1層は本発明による制御放出性組成物を含み、そして第2層は瞬時放出性組成物のような慣用の活性成分含有組成物を含む。
【0017】
第5の観点において、ナノ粒子状薬物または他の薬剤および少なくとも1種の表面安定剤が、半透膜により取り囲まれた浸透剤含有の単一層または多層タブレッ中に合体され、しかして該半透膜はオリフィスを画定する。この具体的態様において、半透膜は胃腸液のような水性媒質に対して透過性であるが、しかし溶液にある場合のまたは他の形態にある場合の貧溶性薬物化合物に対して透過性でない。かかる浸透送達系は当該技術においてよく知られており、しかして半透膜を通じての流体の注入が浸透剤を膨潤させ、かくして薬物化合物が半透膜により画定されたオリフィスを通過するようにされる。
【0018】
第6の観点において、ナノ粒子状薬物または他の薬剤、少なくとも1種の表面安定剤、1種またはそれ以上の補助賦形剤、および速度制御性ポリマー物質が、一緒にされて多粒子形態にされる。多粒子形態は、好ましくは、離散粒子、ペレット、ミニタブレットまたはそれらの組合わせを含む。最終経口投薬形態において、多粒子形態は、たとえば硬質または軟質ゼラチンカプセル中に封入され得る。その代わりに、多粒子形態は、サッシェのような他の最終投薬形態中に合体され得る。離散粒子またはペレットを含む多粒子形態の場合、多粒子形態は、随意に追加的補助賦形剤と共に、タブレットの形態に圧縮され得る。圧縮多粒子タブレットは、随意に、追加的制御放出性質をもたらすように速度制御性ポリマー物質で被覆され得る。
【0019】
本発明は、更に、貧溶性薬物または他の薬剤がナノ粒子形態にて存在する制御放出性組成物の製造方法に関する。一つの観点において、該方法は、(1)投与されるべき貧溶性薬物または他の薬剤および表面安定剤を含むナノ粒子組成物を形成させ、(2)1種またはそれ以上の製薬上受容され得る速度制御性ポリマーを添加し、そして(3)投与用組成物の固体状投与量形態を形成させることを含む。製薬上受容され得る賦形剤もまた、投与用組成物に添加され得る。機械的摩砕、沈殿またはいかなる他の適当なサイズ減少法をも含み得るところの、ナノ粒子組成物を作製する方法は、当該技術において公知であり、そしてたとえば'684特許に記載されている。
【0020】
本発明の更に別の観点は、薬物または他の薬剤の長期投与を必要とするところのヒトを含めて哺乳類を、合体された薬物または他の薬剤を約2から約24時間またはそれより長い期間放出して所望効果を奏するところの、本発明の制御放出性ナノ粒子組成物で処置する方法を提供する。制御放出性ナノ粒子組成物は、経口、直腸、頬および膣の経路のようないかなる慣用の方法にても投与され得る。
【0021】
前記の一般的記載および以下の詳細な記載の両方共、例示的および説明的であり、そして請求の範囲に記載の発明の更なる説明をもたらすために意図されている、ということが理解されるべきである。他の目的、利点および新規な特徴は、以下の本発明の詳細な記載から当業者に容易に明らかであろう。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】図1は、30%Klucel(登録商標)ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)および3%ポリビニルピロリドン(PVP)を含むナノ粒子組成物を用いての、経時的に放出された累積%薬物(ナプロキセン)のグラフを示す;
【図2】図2は、15、25および35kPの硬度を有する3つの異なるナノ粒子組成物についての、経時的に放出された累積%薬物(ナプロキセン)のグラフを示す;
【図3】図3は、異なるタイプのヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)を含むナノ粒子組成物についての、経時的に放出された累積%薬物(ナプロキセン)のグラフを示す;
【図4】図4は、6つの異なるタイプのHPMCの一つを含むナノ粒子組成物についての、経時的に放出された累積%薬物(ナプロキセン)のグラフを示す;
【図5】図5は、変動量のLubritab(登録商標)(水素化植物油)を有するナノ粒子組成物についての、経時的に放出された累積%薬物(ナプロキセン)のグラフを示す;
【図6】図6は、噴霧乾燥されたナノ粒子処方物およびブレンドされた未加工薬物と安定剤の処方物についての、経時的に放出された累積%薬物(ナプロキセン)を比較するグラフを示す;
【図7】図7は、異なる濃度のMethocel(登録商標)K100LV(HPMC)を含むナノ粒子処方物についての、経時的に放出された累積%薬物(ナプロキセン)を比較するグラフを示す;
【図8】図8は、Klucel(登録商標)およびMethocel(登録商標)の直接的に圧縮されたおよび湿式粒状化されたナノ粒子処方物についての、経時的に放出された累積%薬物(ナプロキセン)を比較するグラフを示す;
【図9】図9は、直接的に圧縮されたMethocel(登録商標)タブレットからのナノ粒子状グリピジドの制御放出を示す;
【図10】図10は、(1)例12に記載されているような本発明による制御放出性被膜で被覆されたニフェジピン含有制御放出性マトリックスタブレットおよび(2)対照組成物についての、ヒトにおける一回分投与量の絶食投与後のニフェジピンの平均生体内血漿プロフィールを示す;
【図11】図11は、(1)例14に記載されているような本発明に従って製造されたニフェジピン制御放出性組成物および(2)対照組成物についての、ヒトにおける一回分投与量の絶食投与後のニフェジピンの平均生体内血漿プロフィールを示す;
【図12】図12は、10%および30%のCarbopol(登録商標)971P NFを含有するタブレットの制御放出パターンを示す;
【図13】図13は、5%のCarbopol(登録商標)971P NFおよびCarbopol(登録商標)974P−NFを含有するタブレットの制御放出パターンの比較を示す;そして
【図14】図14は、30%のEudragit(登録商標)銘柄RS POおよびRL POを含有するタブレットの制御放出パターンを示す。
【発明を実施するための形態】
【0023】
発明の詳細な記載
A.制御放出性ナノ粒子組成物
本発明は、新規な固体状投与量制御放出性ナノ粒子組成物の驚くべきかつ予期されない発見に向けられる。制御放出性組成物は、患者において長期間、合体されたナノ粒子状薬物または他の薬剤の有効血液レベルを与える、ということが期待される。かかる発見は、体積に関して大きい表面積をもたらすことになる薬物または他の薬剤のナノ粒子サイズが投与後薬物または他の薬剤の急速な溶解をもたらすことになる故、予期されなかった。急速溶解は、制御放出性組成物の目標とは見掛け上反対である。
ここにおいて用いられる「制御放出」は、組成物または投薬形態からの薬物のような薬剤の放出において、該薬剤が所望のプロフィールに従って約2から約24時間またはそれより長いような長期間にわたって放出される放出を意味する。一層長い期間にわたっての放出もまた、本発明の「制御放出」性の投薬形態として意図されている。
【0024】
本発明の固体状投与量制御放出性ナノ粒子組成物は、約1000nm未満の有効平均粒度を有するところの、投与されるべき結晶質または無定形のナノ粒子状薬物または他の薬剤、該薬物または薬剤の表面と結合された少なくとも1種の表面安定剤、および追加的に1種またはそれ以上の速度制御性ポリマーを含む。好ましくは、ナノ粒子状薬物の有効平均粒度は、約800nm未満、約600nm未満、約400nm未満、約300nm未満、約250nm未満、約100nm未満または約50nm未満である。薬物または他の薬剤の結晶質形態は、薬物または他の薬剤の非晶質または無定形相から見分けられ得る。
【0025】
1.ナノ粒子組成物
出発ナノ粒子組成物(1種またはそれ以上の速度制御性ポリマーの添加前)は、投与されるべき薬物または他の薬剤、および該ナノ粒子状薬物または薬剤の表面と結合された少なくとも1種の表面安定剤を含む。
a.投与されるべき薬剤
本発明のナノ粒子は、制御放出のために投与されるべき治療剤、診断剤または他の薬剤を含む。治療剤は、薬物または製薬であり得、そして診断剤は、典型的には、X線造影剤のような造影剤、またはいかなる他のタイプの診断物質でもある。薬物または診断剤は、離散結晶質相として、無定形相としてまたはそれらの組合わせとして存在する。結晶質相は、EPO275,796に記載されているもののような沈殿技法から生じる非晶質または無定形相とは相違する。
【0026】
本発明は、広く様々な薬物または診断剤でもって実施され得る。薬物または診断剤は、好ましくは本質的に純粋な形態にて存在し、貧水溶性であり、そして少なくとも1種の液状媒質中に分散可能である。「貧水溶性」により、薬物または診断剤が約30mg/ml未満好ましくは約10mg/ml未満好ましくは約1mg/ml未満の液状分散媒質中の溶解性を有するということが意味される。
【0027】
適当な薬物または診断剤は、制御放出性送達のために意図されるものを含む。好ましい薬物クラスは、クリアランスについて短い半減期を有するものを含む。
薬物は、たとえば鎮痛薬、抗炎症剤、駆虫薬、抗不整脈剤、ぜん息鎮静剤、抗生物質(ペニシリンを含めて)、抗凝固薬、抗うつ薬、抗糖尿病剤、抗てんかん薬、抗ヒスタミン薬、鎮咳薬、抗高血圧剤、抗ムスカリン剤、抗ミコバクテリア剤、抗腫瘍剤、解熱薬、免疫抑制薬、免疫賦活薬、抗甲状腺剤、抗ウイルス剤、抗不安鎮静薬(催眠薬および神経弛緩薬)、収れん薬、ベータ−アドレナリン受容体遮断剤、血液製品および代用品、気管支拡張薬、心臓筋収縮剤、化学療法薬、造影剤、コルチコステロイド、咳抑制薬(去痰薬および粘液溶解薬)、診断剤、診断画像剤、利尿薬、ドーパミン作用薬(抗パーキンソン剤)、止血薬、免疫剤、脂質調整剤、筋弛緩薬、タンパク質、ポリペプチド、副交感神経作用薬、副甲状腺カルシトニンおよびビホスホネート、プロスタグランジン、放射性製薬、ホルモン、性ホルモン(ステロイドを含めて)、抗アレルギー剤、刺激薬および食欲抑制薬、交感神経作用薬、甲状腺剤、ワクチン、血管拡張薬、およびキサンチンを含めて、様々な公知のクラスの薬物から選択され得る。
【0028】
これらのクラスの薬物および診断剤の記載並びに各クラス内の種のリストは、たとえば、Martindale,The Extra Pharmacopoeia,第29版(The Pharmaceutical Press,ロンドン,1989)(特定的に参照により合体される)に見られ得る。薬物または診断剤は、商業的に入手できおよび/または当該技術において知られた技法により製造され得る。
【0029】
本発明の実施において適当に用いられ得る貧水溶性薬物は、アルプラゾラム、アミオダロン、アムロジピン、アステミゾール、アテノロール、アザチオプリン、アゼラチン、ベクロメタソン、ブデソニド、ブプレノルフィン、ブタルビタール、カルバマゼピン、カルビドパ、セフォタキシム、セファレキシン、コレスチラミン、シプロフロキサシン、シサプリド、シスプラチン、クラリスロマイシン、クロナゼパム、クロザピン、シクロスポリン、ジアゼパム、ジクロフェナクナトリウム、ジゴキシン、ジピリダモール、ジバルプロックス、ドブタミン、ドキサゾシン、エナラプリル、エストラジオール、エトドラク、エトポシド、ファモチジン、フェロジピン、フェンタニルシトレート、フェキソフェナジン、フィナステリド、フルコナゾール、フルニソリド、フルルビプロフェン、フルボキサミン、フロセミド、グリピジド、グリブリド、イブプロフェン、イソソルビドジニトレート、イソトレチノイン、イスラジピン、イトラコナゾール、ケトコナゾール、ケトプロフェン、ラモトリジン、ランソプラゾール、ロペラミド、ロラタジン、ロラゼパム、ロバスタチン、メドロキシプロゲステロン、メフェナム酸、メチルプレドニソロン、ミドゾラム、モメタソン、ナブメトン、ナプロキセン、ニセルゴリン、ニフェジピン、ノルフロキサシン、オメプラゾール、パクリタキセル、フェニトイン、ピロキシカム、キナプリル、ラミプリル、リスペリドン、セルトラリン、シムバスタチン、テルビナフィン、テルフェナジン、トリアムシノロン、バルプロ酸、ゾルピデム、または上記の薬物のいずれかの製薬上受容され得る塩を含むが、しかしそれらに限定されない。
【0030】
b.表面安定剤
当該技術において公知でありそしてたとえば`684特許に記載されている有用な表面安定剤は、薬物または薬剤の表面に物理的に付着するがしかし薬物または薬剤に化学的に結合または相互作用しないものを含むと信じられる。表面安定剤は、薬物または薬剤の表面と、約1000nm未満の有効平均粒度を維持するのに十分な量にて結合される。更に、表面安定剤の個々の分子は、分子間架橋を本質的に含まない。
【0031】
適当な表面安定剤は、好ましくは、公知の有機および無機の製薬用賦形剤から選択され得る。かかる賦形剤は、種々のポリマー、低分子量オリゴマー、天然製品および界面活性剤を含む。好ましい表面安定剤は、非イオン性およびイオン性界面活性剤を含む。
表面安定剤の代表的な例は、ゼラチン、カゼイン、レシチン(ホスファチド)、デキストラン、アラビアガム、コレステロール、トラガカント、ステアリン酸、ベンザルコニウムクロライド、ステアリン酸カルシウム、グリセロールモノステアレート、セトステアリルアルコール、セトマクロゴール乳化性ロウ、ソルビタンエステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル(たとえば、セトマクロゴール1000のようなマクロゴールエーテル)、ポリオキシエチレンヒマシ油誘導体、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル(たとえば、商業的に入手できるTween(登録商標)(たとえば、Tween 20(登録商標)およびTween 80(登録商標)のような)(ICI Specialty Chemicals))、ポリエチレングリコール(たとえば、Carbowax 3550(登録商標)および934(登録商標)(Union Carbide))、ポリオキシエチレンステアレート、コロイド状二酸化ケイ素、リン酸塩、ナトリウムドデシルサルフェート、カルボキシメチルセルロースカルシウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、非晶質セルロース、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルピロリドン(PVP)、エチレンオキシドおよびホルムアルデヒドとの4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−フェノールポリマー(チロキサポール、スペリオンおよびトリトンとしても知られている)、ポロキサマー(たとえば、エチレンオキシドおよびプロピレンオキシドのブロックコポリマーであるPluronic F68(登録商標)およびF108(登録商標))、ポロキサミン(たとえば、エチレンジアミンへのプロピレンオキシドおよびエチレンオキシドの逐次付加から誘導された四官能性ブロックコポリマーであるところの、Poloxamine 908(登録商標)としても知られているTetronic 908(登録商標)(BASF Wyandotte Corporation,ニュージャージー州パーシッパニ))、Tetronic 1508(登録商標)(T−1508)(BASF Wyandotte Corporation)、ナトリウムスルホコハク酸のジアルキルエステル(たとえば、ナトリウムスルホコハク酸のジオクチルエステルであるAerosol OT(登録商標)(American Cyanamid))、ナトリウムラウリルサルフェートであるDuponol P(登録商標)(DuPont)、アルキルアリールポリエーテルスルホネートであるTriton X−200(登録商標)(Rohm and Haas)、スクロースステアレートおよびスクロースジステアレートの混合物であるCrodesta F−110(登録商標)(Croda Inc.)、Olin−IOG(登録商標)またはSurfactant 10−G(登録商標)(Olin Chemicals,コネチカット州スタンフォード)としても知られてるp−イソノニルフェノキシポリ(グリシドール)、Crodesta SL−40(登録商標)(Croda, Inc.)、およびC18H37CH2(CON(CH3)−CH2(CHOH)4(CH2OH)2であるSA9OHCO(Eastman Kodak Co.)、デカノイル−N−メチルグルカミド、n−デシル−β−D−グルコピラノシド、n−デシル−β−D−マルトピラノシド、n−ドデシル−β−D−グルコピラノシド、n−ドデシル−β−D−マルトシド、ヘプタノイル−N−メチルグルカミド、n−ヘプチル−β−D−グルコピラノシド、n−ヘプチル−β−D−チオグルコシド、n−ヘキシル−β−D−グルコピラノシド、ノナノイル−N−メチルグルカミド、n−ノニル−β−D−グルコピラノシド、オクタノイル−N−メチルグルカミド、n−オクチル−β−D−グルコピラノシド、オクチル−β−D−チオグルコピラノシド、等を含む。
【0032】
これらの表面安定剤の多くは、公知の製薬用賦形剤でありそしてAmerican Pharmaceutical AssociationおよびThe Pharmaceutical Society of Great Britainにより共同で出版されたHandbook of Pharmaceutical Excipients(The Pharmaceutical Press,1986)(特別に援用される)に詳細に記載されている。
【0033】
c.粒度
「約1000nm未満の有効平均粒度」により、光散乱技法により測定される場合、薬物/薬剤粒子の少なくとも50%が約1000nm未満の平均粒度を有する、ということが意味される。好ましくは粒子の少なくとも70%が有効平均すなわち約1000nm未満の平均粒度を有し、一層好ましくは粒子の少なくとも約90%が有効平均未満の平均粒度を有する。
【0034】
ここにおいて用いられる粒度は、当業者によく知られた慣用の粒度測定技法により測定されるような重量平均粒度に基づいて決定される。かかる技法は、たとえば、沈降フィールドフローフラクショネーション、光子相関分光分析、光散乱、およびディスク遠心を含む。「約1000nm未満の有効平均粒度」により、上記の技法により測定される場合、重量により粒子の少なくとも70%が約1000nm未満の粒度を有する、ということが意味される。好ましい具体的態様において、有効平均粒度は、約800nm未満、約600nm未満、約400nm未満、約300nm未満、約250nm未満、約100nm未満または約50nm未満である。
【0035】
ここにおいて用いられるところの、粒子の50%の平均直径Dv,50は、粒子の50%の体積平均直径、または粒子の50%が値未満の相当体積直径を有する該値を指す。
2.速度制御性ポリマー
本発明は、予期せぬことにナノ粒子組成物に優秀な制御放出性質を与える製薬上受容され得る速度制御性ポリマー(ここにおいて速度制御性ポリマー物質とも称される)を同定する。速度制御性ポリマーは、本発明の組成物または投薬形態からの薬物化合物の放出を遅らせることが可能であるところの、親水性ポリマー、疎水性ポリマーおよび疎水性と親水性のポリマーの混合物を含む。
【0036】
投与後に投与薬物または薬剤の有効な制御放出を引き起こすために特に有用な速度制御性ポリマーは、植物滲出物(アラビアガム)、海草抽出物(寒天)、植物種子ガムまたは粘質物(グアーガム)、穀物ガム(デンプン)、発酵ガム(デキストラン)、動物性製品(ゼラチン)、ヒドロキシアルキルセルロース(ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)のような)、およびナトリウムカルボキシメチルセルロース(CMC)、グアー、ペクチンおよびカラジーナン含む。追加的ポリマーは、ポリ(エチレン)オキシド、アルキルセルロース(エチルセルロースおよびメチルセルロースのような)、カルボキシメチルセルロース、親水性セルロース誘導体、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン、セルロースアセテート、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートフタレート、セルロースアセテートトリメリテート、ポリビニルアセテートフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートスクシネート、ポリビニルアセタルジエチルアミノアセテート、ポリ(アルキルメタクリレート)およびポリ(ビニルアセテート)を含む。他の適当な疎水性ポリマーは、アクリル酸またはメタクリル酸およびそれらのそれぞれのエステルから誘導されたポリマーおよび/またはコポリマー、ロウ、セラックおよび水素化植物油含む。2種またはそれ以上の速度制御性ポリマーは、組み合って用いられ得る。ポリマーは、商業的に入手できおよび/または当該技術において知られた技法により製造され得る。
【0037】
3.他の製薬用賦形剤
本発明による製薬組成物はまた、結合剤、希釈剤、滑剤、可塑剤、粘着防止剤、不透明化剤、懸濁剤、甘味料、風味剤、保存剤、緩衝剤、湿潤剤、崩壊剤、顔料および他の賦形剤のような、1種またはそれ以上の補助賦形剤を含み得る。かかる賦形剤は、当該技術において公知である。当業者により認識されるように、賦形剤の正確な選択およびそれらの相対量は、制御放出性組成物が合体される投薬形態にある程度依存する。
【0038】
適当な希釈剤は、たとえば、微晶質セルロース、ラクトース、二塩基性リン酸カルシウム、サッカライドおよび/または上記のいずれかの混合物のような製薬上受容され得る不活性充填剤を含む。希釈剤の例は、Avicel pH101、Avicel pH102およびAvicel pH112のような微晶質セルロース;ラクトース一水和物、ラクトース無水物およびPharmatose DCL21のようなラクトース;Emcompressのような二塩基性リン酸カルシウム;マンニット;デンプン;ソルビット;スクロース;およびグルコースを含む。希釈剤は、存在する場合、好ましくは投薬単位当たり約5mgから約800mg一層好ましくは投薬単位当たり約10mgから約600mg最も好ましくは投薬単位当たり約20mgから約400mgの量にて用いられる。
【0039】
結合剤の例は、種々のセルロースおよび架橋ポリビニルピロリドンである。
圧縮されるべき粉末の流動性に作用する薬剤を含めて、適当な滑剤は、Aerosil 200のようなコロイド状二酸化ケイ素;タルク、ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸およびシリカゲルである。
【0040】
甘味料の例は、スクロース、キシリット、サッカリンナトリウム、シクラミン酸塩、アスパルテームおよびアクサルフェームのようないかなる天然または人工の甘味料でもある。風味剤の例は、Magnasweet(MAFCOの商標)、風船ガムフレーバーおよびフルーツフレーバー、等である。
保存剤の例は、ソルビン酸カリウム、メチルパラベン、プロピルパラベン、安息香酸およびその塩、パラヒドロキシ安息香酸の他のエステル(ブチルパラベンのような)、アルコール(エチルまたはベンジルアルコールのような)、フェノール化合物(フェノールのような)または第4級化合物(ベンザルコニウムクロライドのような)である。適当な崩壊剤は、軽度に架橋されたポリビニルピロリドン、コーンスターチ、ジャガイモデンプン、トウモロコシデンプン、および変性デンプン、クロスカルメロースナトリウム、クロスポビドン、ナトリウムデンプングリコレート、並びにそれらの混合物を含む。
【0041】
4.ナノ粒子組成物および速度制御性ポリマーの量
本発明の制御放出性組成物中のナノ粒子状薬剤の相対量は、広く変動し得そしてたとえば制御放出性送達のために選択された該薬剤に依存し得る。貧溶性薬物または製薬上受容され得るその塩は、治療効果を引き出すのに十分であるいかなる量にても存在し得、そして当てはまる場合、実質的に一つの光学的に純粋なエナンチオマーの形態にてまたはエナンチオマーのラセミのもしくはそうでない混合物として存在し得る。本発明の制御放出性組成物中の貧溶性薬物化合物または製薬上受容され得るその塩の量は、適当には約1μgから約800mgの範囲好ましくは約0.25mgから約600mgの範囲一層好ましくは約1mgから約500mgの範囲にある。
【0042】
ナノ粒子状薬剤は、好ましくは表面安定剤と組み合って、本発明の制御放出性組成物中に、乾燥組成物の総重量を基準として重量により約95%ないし約5%好ましくは約80%ないし約10%の量にて存在し得る。
1種またはそれ以上の速度制御性ポリマーは、乾燥組成物の総重量を基準として重量により約5%ないし約95%好ましくは約10%ないし約65%の量にて存在し得る。
【0043】
5.制御放出を増強するための他の変動要素の最適化
1種またはそれ以上の速度制御性ポリマーの選択以外に、タブレットの硬度が、投与薬剤の長期制御放出に最も寄与する因子である。約10kPないし約50kPの硬度が好ましく、約30ないし約35kPの硬度が最も好ましい。速度制御性ポリマーの湿式粒状化および速度制御性ポリマーの濃度の増大のような因子はより制御的な放出を可能にするのに対して、速度制御性ポリマーのミクロン微粉化のような因子は投与薬剤のより即時的な放出を与える。
B.制御放出性ナノ粒子投薬形態を作製する方法
本発明の別の観点において、制御放出性ナノ粒子処方物を製造する方法が提供される。該方法は、(1)投与されるべき薬剤および好ましくは表面安定剤を含むナノ粒子組成物を形成させ、(2)1種またはそれ以上の速度制御性ポリマーを添加し、そして(3)投与用組成物の固体状投与量形態を形成させることを含む。製薬上受容され得る賦形剤もまた、投与用組成物に添加され得る。機械的摩砕、沈殿またはいかなる他の適当なサイズ減少法をも含み得るところの、ナノ粒子組成物を作製する方法は、当該技術において公知であり、そしてたとえば'684特許に記載されている。再分散剤または再分散剤の組合わせは、ナノ粒子状薬物の加工を容易にするために包含され得る。
【0044】
固体状投与量製薬処方物を作製する方法は当該技術において公知であり、そしてかかる方法は本発明において用いられ得る。本発明の例示的固体状投与量制御放出性処方物は、たとえば、1種またはそれ以上の速度制御性ポリマーを、投与されるべき薬剤のサイズ減少後に得られた未加工ナノ粒子混合物と一緒にすることにより製造され得る。生じた組成物は、経口投与用タブレットに処方され得る。その代わりに、1種またはそれ以上の速度制御性ポリマーは、噴霧乾燥されたナノ粒子分散体と一緒にされ得る。
【0045】
本発明による制御放出性組成物の経口投薬形態は、タブレットの形態にあり得または多粒子状であり得る。ここにおいて用いられる用語「タブレット」は、瞬時放出性(IR)タブレット、マトリックスタブレット、多層タブレットおよび多層マトリックスタブレット(1種またはそれ以上の被覆物質で随意に被覆され得る)を含むが、しかしそれらに限定されない。用語「タブレット」はまた、浸透送達系を含み、しかして該系においては、薬物化合物は浸透剤(および他の賦形剤)と一緒にされそして半透膜で被覆され、しかも該半透膜は、該薬物化合物が放出され得るところのオリフィスを画定する。本発明の実施において特に有用なタブレット経口投薬形態は、被覆IRタブレット、マトリックスタブレット、被覆マトリックスタブレット、多層タブレット、被覆多層タブレット、多層マトリックスタブレットおよび被覆多層マトリックスタブレットから成る群から選択されるものを含む。ここにおいて用いられる用語「多粒子」は、離散粒子、ペレット、ミニタブレット、およびそれらの混合物または組合わせを含む。経口形態が多粒子カプセルである場合、該多粒子を含有するような硬質または軟質ゼラチンカプセルが、適当に用いられ得る。本発明による多粒子経口投薬形態は、異なる試験管内および/または生体内放出特性を有する粒子、ペレットまたはミニタブレットの2つまたはそれ以上の集団の配合物を含み得る。たとえば、多粒子経口投薬形態は、適当なカプセル中に含有された瞬時放出性成分と遅延放出性成分の配合物からなり得る。
【0046】
所望するなら、多粒子は、制御放出性ポリマー物質を含有する層で被覆され得る。その代わりに、多粒子および1種またはそれ以上の補助賦形物質は、多層タブレットのようなタブレットに圧縮され得る。典型的には、多層タブレットは、同じまたは異なる放出特性を有する同じ活性成分の同じまたは異なるレベルを含有する2つの層を含み得る。その代わりに、多層タブレットは、各層において異なる活性成分を含有し得る。多層タブレットは、随意に、追加的制御放出性質をもたらすように制御放出性ポリマーで被覆され得る。
【0047】
本発明の一つの具体的態様において、速度制御性ポリマー物質は、貧溶性薬物化合物および必要とされ得るいかなる補助賦形剤をも含むタブレットに被膜として施用される。被膜は、タブレットにいかなる適当な技法によっても施用され得る。かかる技法は、当業者に明らかであろう。被膜の施用のために特に有用なものは、たとえば流動床被覆装置を用いてまたはサイドベント式コーティングパンを用いて行われる噴霧塗布の技法である。適当な補助賦形剤および/または添加剤は、被覆処方物に添加され得る。たとえば、可塑剤、滑剤、粘着防止剤、顔料および他の賦形剤を被覆処方物に添加することが望ましくあり得る。被膜は、制御放出の所望度を与えるのに十分であるいかなる量にてもタブレットに施用され得る。
【0048】
一つの具体的態様において、制御放出性組成物の製造方法は、(i)貧溶性薬物のナノ粒子分散体を随意に界面活性剤または表面安定剤の存在下で噴霧乾燥させて再分散性物質を形成させ、(ii)該再分散性物質を補助賦形剤とブレンドして配合物を形成させ、(iii)該配合物をタブレットに圧縮し、そして(iv)該タブレットを速度制御性ポリマー物質で被覆する工程を含む。
【0049】
別の具体的態様において、制御放出性組成物の製造方法は、(i)貧溶性薬物のナノ粒子分散体を随意に界面活性剤または表面安定剤の存在下で噴霧乾燥させて再分散性物質を形成させ、(ii)該再分散性物質を速度制御性ポリマー物質および随意に補助賦形剤とブレンドして配合物を形成させ、そして(iii)該配合物を圧縮してタブレットを形成させる工程を含む。この方法は、随意に、該タブレットを追加的速度制御性ポリマー物質で被覆する追加的工程を含み得る。
【0050】
1.ナノ粒子分散体の噴霧乾燥
ナノ粒子分散体の固体状投与量形態は、サイズ減少後のナノ粒子処方物を乾燥することにより製造され得る。好ましい乾燥方法は、噴霧乾燥である。噴霧乾燥過程は、薬物をナノ粒子サイズの粒子に変えるために用いられるサイズ減少過程後、ナノ粒子粉末を得るために用いられる。かかるナノ粒子粉末は、経口投与用タブレットに処方され得る。
【0051】
例示的噴霧乾燥過程において、ナノ粒子薬物懸濁液は、ぜん動ポンプを用いてアトマイザーに供給されそして微噴霧の液滴に噴霧化される。該噴霧は乾燥室中で熱空気と接触されて、該液滴からの水分の蒸発がもたらされることになる。生じた噴霧はサイクロン中に送られ、しかしてそこで粉末が分離されそして採集される。噴霧乾燥機は、回転アトマイゼーションノズルと並流配置に組み立てられ得、そしてナノ懸濁液は、ぜん動ポンプを用いて回転アトマイザーに供給され得る。
【0052】
2.タブレット化
本発明の制御放出性ナノ粒子処方物は、経口投与用タブレットの形態にあり得る。かかるタブレットの製造は、当該技術において知られた製薬用の圧縮または成形技法により得る。本発明のタブレットは、円盤形、円形、卵形、楕円形、円筒形、三角形、六角形、等のようないかなる適切な形状をも取り得る。
【0053】
タブレットは、被覆されても被覆されなくてもよい。被覆される場合、それらは、糖衣(嫌な味または臭いを覆うためにおよび酸化に対して保護するために)、皮膜被覆(同様な目的のための水溶性物質の薄い皮膜)または溶腸性被覆(胃液中での溶解に抵抗するが、しかし小腸において被膜の崩壊を可能にするために)され得る。
【0054】
当業者に知られたタブレット化技法は、たとえば、Remington's Pharmaceutical Sciencesの第18版,第89章,pp.1633〜1658(Mach Publishing Company,1990)(特定的に参照により合体される)に記載されている。最も簡単な手順において、成分(いかなる滑剤をも除いて)は、活性成分が均一に分散された処理量を有する混合物をもたらすように、一緒にブレンドされる。滑剤は次いで添加されそしてブレンドされ得、そして適切なタブレット化機械を用いてタブレットが圧縮される。
【0055】
タブレット化のために適した処方物は、たとえば、V形ブレンダー(Blend Master Lab Blender,Patterson Kelley Co.)を用いて製造される。例示的方法において、ナノ粒子組成物および1種またはそれ以上の速度制御性ポリマーはV形ブレンダーに添加されそして周期的にブレンドされ、ラクトース、ステアリン酸マグネシウムまたはPVPのような他の賦形剤の添加が後続され、そしてV形ブレンダー中での周期的ブレンディングが後続される。
【0056】
タブレット化は、たとえば、Carver Press(Carver Laboratory Equipment)を用いて成し遂げられ得る。かかる方法において、正確な量の材料がパンチ中に装填され、その後適切な圧力および時間間隔にて一緒にプレスされ、そして形成されたタブレットが取り出される。
タブレットを生じせしめる更に別の例示的方法は、湿式粒状化である。湿式粒状化は、水および/または粒状化用流体を乾燥物質(ナノ粒子組成物(薬物および表面安定剤を含む)、速度制御性ポリマーおよび添加剤)に混入することを含む。十分な粒状化後、この物質は粗目の篩を通じて篩われ、そして乾燥される。この物質は次いで細目の篩を通じて再び篩われ、そしてたとえばステアリン酸マグネシウムとブレンドされ、その後タブレット化されてタブレットが生じる。
【0057】
タブレットは、それらが妥当な硬度規定を満たすことを決定するために試験される。例示的タブレット硬度試験機は、Erweka TBH 30(Erweka Instruments,Inc.)である。
C.制御放出性ナノ粒子組成物または投薬形態の投与
本発明の更に別の観点は、薬物または他の薬剤の長期投与を必要とするところのヒトを含めて哺乳類を処置する方法を提供する。投与された制御放出性ナノ粒子組成物は、合体された薬物または他の薬剤を長期間にわたって放出して、約2から約24時間またはそれ以上の期間所望効果を奏する。
【0058】
一般に、本発明の組成物は、それを必要とする哺乳類被験者に、所望の生理学的効果を奏するのに十分であるレベルの薬物または薬剤を用いて、経口、直腸、頬または膣を通じてのようないかなる慣用の方法によっても投与されよう。哺乳類被験者は、家庭用動物または愛玩動物であり得るが、しかし好ましくはヒト被験者である。所望の生理学的結果を与えるのに必要とされる薬物または薬剤のレベルは、Goodman and GillmanおよびPhysician's Desk Referenceのような標準的教本を参照することにより、当業者により容易に決定される。
【0059】
次の例は、本発明を説明するために与えられている。しかしながら、本発明はこれらの例に記載された特定の条件または詳細に限定されるべきでない、ということが理解されるべきである。
【実施例】
【0060】
例1
この実験の目的は、ナノ粒子薬物処方物での合理的量の制御放出を実証するためであった。
【0061】
29%w/wの噴霧乾燥されたナノ粒子状ナプロキセン中間体(SDI)(93%w/wのナノ粒子状ナプロキセンおよび7%w/wの表面安定剤としてのポリビニルピロリドン(PVP)(篩#20)を含有する)、30%w/wのKlucel(登録商標)HPCポリマー(篩#40)、40%w/wのラクトース(Foremost#316Fast−fib,篩#40)および1%w/wのステアリン酸マグネシウム(Spectrum,篩#40)を次のように一緒にして、試験されるべき制御放出性ナノ粒子処方物タブレットを形成させた。
【0062】
噴霧乾燥されたナノ粒子状ナプロキセン中間体を形成するべき噴霧乾燥の前のナノ粒子状ナプロキセンの平均有効粒度は226nmであり、しかして粒子の90%は297nm未満のサイズを有していた。噴霧乾燥された粉末は、約26μmの平均粒度を有していた。ナプロキセンSDIについてのこの粒度情報は、次の例2〜10に適用され得る。
【0063】
(ナプロキセンSDI、PVP、Klucel(登録商標)(HPCポリマー)、ラクトースおよびステアリン酸マグネシウムについてこの例において与えられた給源もまた、次の例に適用され得る。)
ナプロキセンSDIおよびKlucel(登録商標)をV形ブレンダー(Blend Master Lab Blender,Patterson Kelley Co.)に添加し、そして10分間ブレンドした。次いでラクトースをブレンダーに添加し、そして10分間ブレンドした。最後に、ステアリン酸マグネシウムをブレンダーに添加し、そして3分間ブレンドした。
【0064】
この物質を、Carver Press(Carver Laboratory装置,型式#3912)を用いてタブレットに形成させた。生じたタブレットは、500mgの重量および約9ないし約12kPの硬度を有していた。
制御放出についての試験
Distek Dissolution System(Hewlett Packard Diode Array Spectrophotometer 8452AおよびHewlett Packard Flow Control装置型式89092Aと共に用いられる)を、制御放出についての試験において用いた。この器具の温度(37℃)および揺動は、それがタブレット中の薬物を溶解させようとするので身体系をシミュレートする。
【0065】
次のように調製されるpH7.4におけるリン酸塩緩衝剤を、試験媒質用に用いる。すなわち、230.0グラムの二塩基性リン酸ナトリウム無水物(J.T.Baker)および52.4グラムの一塩基性リン酸ナトリウム二水和物(J.T.Baker)を20.0リットルの脱イオン水に添加し、そして2時間2300rpmにて撹拌する。
【0066】
リン酸塩緩衝剤(900ml)およびタブレットを、Distek Systemの容器中に37℃にて入れた。タブレットを揺動して、40〜50分の範囲内でタブレットの溶解がもたらされた。かかる期間は、制御放出適用のために適合しない。
例2
この実験の目的は、ナノ粒子薬物処方物での制御放出を実証するためであった。
【0067】
形成されたタブレットの制御放出特性を改善するために、(i)タブレットの重量を500から750mgに増加させ、(ii)タブレットの硬度を9〜12から35〜37kPに増大させ、そして(iii)3%追加のPVPを3%のラクトースの代わりに結合剤として添加した。
ナプロキセンSDI(93%w/wのナノ粒子状ナプロキセンおよび7%w/wのPVPを含有する)、30%w/wのKlucel(登録商標)および3%w/wのPVP(Plasdone K−90(Povidone USP),ISP Technologies)を例1においてのように一緒にして、35〜37kPの硬度を有する750mgのタブレットを形成させた(PVPは、タブレット化に先だって、V形ブレンダー中にラクトースの添加後添加されそして追加的に5分間ブレンドされた)。タブレット中の各成分の量は、下記に与えられている(mg)。
【0068】
【表1】
【0069】
Distek Dissolution Systemでの試験後、それらの結果は、図1に示されているように、3時間の期間にわたっての薬物の定常的制御放出を実証した。
例3
この実験の目的は、ナノ粒子状薬剤の制御放出に対するタブレットの硬度の効果を決定することであった。
【0070】
3つの別個の硬度を、同時に試験した。すなわち、15kP、25kPおよび35kP。29%のナプロキセンSDI、30%のKlucel(登録商標)および3%のPVPを含むタブレットを、例1においてように作製した。タブレット処方物の各々における各成分の量は、下記に与えられている(mg)。
【0071】
【表2】
【0072】
図2に示された結果は、タブレットの硬度が増大するにつれてタブレットの制御放出特性も着実に強まることを実証している。約15kP、25kPおよび35kPの硬度を有するタブレットはナプロキセンをそれぞれ約65分、140分および240分間放出して、タブレットの硬度と投与薬剤の増強的制御放出の間の直接的相関関係を示した。
例4
この実験の目的は、2つの異なる速度制御性ポリマーの制御放出特性を比較することであった。すなわち、Klucel(登録商標)HPCおよびShinetzu(登録商標)L−HPC。
【0073】
タブレットを、20%のKlucel(登録商標)HPC(3%のPVP K−90なしで)でもっておよび20%のShinetzu(登録商標)L−HPCでもって例1においてのように作製した。タブレット処方物の各々における各成分の量は、下記に与えられている(mg)。
【0074】
【表3】
【0075】
生じたタブレットは、35kpの硬度を有していた。図3に示された結果は、ポリマーとして20%のKlucel(登録商標)を有するタブレットは3ないし4時間内で完全に放出しそしてポリマーとして20%のShinetzu(登録商標)L−HPCを有するタブレットはタブレットをわずか1時間で溶解せしめたことを実証している。
例5
この実験の目的は、速度制御性ポリマーとして用いられた異なる銘柄のMethocel(登録商標)ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)の制御放出特性を比較することであった。すなわち、(i)Methocel(登録商標)K4M、(ii)Methocel(登録商標)E4M、(iii)Methocel(登録商標)K15M、(iv)Methocel(登録商標)K100LV、(v)Methocel(登録商標)K100LVおよび(vi)Methocel(登録商標)E10M。
【0076】
タブレットを、Methocel(登録商標)HPMCの20%濃度を用いて例1においてように製造した。タブレット処方物の各々における各成分の量は、下記に与えられている(mg)。
【0077】
【表4】
【0078】
タブレットは、約35ないし約37kPの硬度を有していた。Distek Dissolutionシステムにおいて試験されたMethocel(登録商標)諸銘柄の各々は、図4に示されているように、ナノ粒子処方物に関してある程度の制御放出を発揮することが分かった。Methocel(登録商標)銘柄K4M、K15MおよびK100Mは極端量の制御放出(12時間で40〜50%)を与え、Methocel(登録商標)銘柄E4Mはわずか約3時間で溶解し、そしてMethocel(登録商標)銘柄K100LVおよびE10Mは約12ないし約14時間にわたっての放出を与えた。
例6
この例の目的は、ナノ粒子状薬剤の制御放出に対する水素化植物油(Lubritab(登録商標))の添加の効果を決定することであった。
【0079】
タブレットを、30%のKlucel(登録商標)を速度制御性ポリマーとして用いて例1においてのように製造した。3%のLubritab(登録商標)(Mendel,Penwest Company)が、これらのタブレットにおいて用いられた。タブレットは、20〜22kPの硬度を有していた。タブレット処方物の各々における各成分の量は、下記に与えられている(mg)。
【0080】
【表5】
【0081】
図5に示されているように、ナノ粒子処方物へのLubritab(登録商標)の添加は、投与薬剤の制御放出の増強を可能にし得る。0%のLubritab(登録商標)を含有する組成物は約60分にて完全に放出されたのに対して、20%のLubritab(登録商標)を含有する組成物は約175分にわたって放出された。
例7
この例の目的は、速度制御性ポリマーと混合された噴霧乾燥されたナノ粒子処方物の組成物と、速度制御性ポリマーとブレンドされた未微粉砕ナプロキセンおよび表面安定剤の粉末組成物の、制御放出性質を比較することであった。
【0082】
タブレットを、例1においてのように製造した。投与薬剤(ナプロキセン)および表面安定剤PVPの濃度は、両方の組成物について同じであった。すなわち、93%のナプロキセンおよび7%のPVP。用いられた速度制御性ポリマーは、20%の濃度におけるMethocel(登録商標)K100LVであった。タブレット処方物の各々における各成分の量は、下記に与えられている(mg)。
【0083】
【表6】
【0084】
タブレットは、30kPの硬度を有していた。図6に示されているように、速度制御性ポリマーとブレンドされた未加工薬物および表面安定剤の組成物は、速度制御性ポリマーと混合された噴霧乾燥されたナノ粒子処方物の組成物に比べて、より長期の放出を有していた。それらの結果は、速度制御性ポリマーとブレンドされた未加工薬物および安定剤の組成物の完全放出が約10時間後に起こったのに対して、速度制御性ポリマーと混合された噴霧乾燥されたナノ粒子処方物の完全放出は約13ないし約14時間後に起こることが予期された(後者の組成物の完全放出は、結果が分析された時、12時間後に起こっていなかった)、ということを指摘している。
例8
この例の目的は、ナノ粒子処方物の制御放出特性に対する速度制御性ポリマー濃度の効果を決定することであった。
【0085】
第1試験は5%のMethocel(登録商標)K100LVを含むナノ粒子処方物の制御放出特性を決定し、そして第2試験は10%のMethocel(登録商標)K100LVを含むナノ粒子処方物の制御放出特性を決定した。20%のMethocel(登録商標)K100LVを含むナノ粒子処方物の制御放出特性は、例9(図6)において得られそしてここに繰り返される。
【0086】
タブレットを例1においてのように製造し、しかしてタブレット処方物の各々における各成分の量は、下記に与えられている(mg)。
【0087】
【表7】
【0088】
図7に示された結果は、同一硬度および変動速度制御性ポリマー濃度を有するタブレットについて、最大速度制御性ポリマー濃度を有するタブレットが最も長期の薬物放出特性を有することを示している。5%ポリマー濃度を有するタブレットは約50分後に完全に放出し、10%ポリマー濃度を有するタブレットは約350分後に完全に放出し、そして20%ポリマー濃度を有するタブレットは約650分後に完全に放出した。かくして、ナノ粒子処方物における増大的ポリマー濃度は、投与薬剤の長期放出と直接的に相関づけられる。
例9
この例の目的は、ナノ粒子処方物の制御放出に対する湿式粒状化の効果を決定することであった。
【0089】
タブレットを、少量の水を各混合物中に添加して顆粒を形成させること以外は例1においてように形成させた。該顆粒は次いで粗目の篩を通じて篩われ、そして乾燥された。この物質は次いで細目の篩を通じて再び篩われ、そしてステアリン酸マグネシウムおよびラクトースとブレンドされ、その後タブレット化されてタブレットが生じせしめられた。タブレット処方物の各々における各成分の量は、下記に与えられている(mg)。
【0090】
【表8】
【0091】
図8に示された結果は、両方の速度制御性ポリマーすなわちKlucel(登録商標)HPCおよびMethocel(登録商標)HPMCについて、湿式粒状化から形成されたタブレットは通常の乾燥混合物よりもはるかに一層制御的な放出を示したことを指摘している。長期制御放出は、湿式粒状化技法により形成された顆粒の強い結合に因りそうである。この結合は、直接圧縮による物質の結合よりも強い。かくして、湿式粒状化は、制御放出を改善する。
例10
この例の目的は、グリピジドの制御放出性処方物を製造することであった。1−シクロヘキシル−3[[p−[2l(5−メチルピラジンカルボキシアミド)エチル]−フェニル]−スルホニル]−尿素としても知られているグリピジドは、経口スルホニル尿素である。
【0092】
10:3の比率におけるグリピジドおよびHPC−SLをDyno微粉砕機にて微粉砕して、ナノ粒子状グリピジド分散体を生成させた。この組成物は6時間微粉砕され、そしてグリピジドの平均有効粒度は約177nmであり、しかして粒子の約50%は約157nm未満のサイズを有しそして粒子の約90%は約276nm未満のサイズを有していた。
【0093】
このナノ粒子状グリピジド懸濁液を次の条件下でYamato GB−22(登録商標)噴霧乾燥機を用いて噴霧乾燥して、噴霧乾燥されたグリピジド中間体(SDI)を生成させた。すなわち、
入口温度: 115℃
出口温度: 50℃
乾燥用空気: 0.36m3/min
噴霧用空気: 2.5Kgf/cm2
タブレット用の粉末配合物は、750.0mgの総量について13mgのSDI、241.6mgのMethocel(登録商標)(K100LV)、483.3mgのラクトース(Foremost #316)および12.1mgのステアリン酸マグネシウムを含んでいた。各750.0mgタブレットは、10mgの薬物(グリピジド)を含有していた。
【0094】
賦形剤を篩い、ブレンドし、そしてCarverプレス機を用いて5,000lbにて10秒間圧縮した。これらのタブレットを、上記に記載されたような溶解システムを用いて分析した(274nmにて)。
図9に示された結果は、16時間にちょっと足りない(すなわち、約950分)の期間にわたっての薬物の定常的放出を指摘している。
【0095】
例11〜15において、別段記載されていなければ百分率はすべて重量による。用語「精製水」は、水濾過装置に通された水を指す。
例11
この例の目的は、ナノ粒子状ニフェジピンを含有する未被覆制御放出性タブレット処方物を製造することであった。
【0096】
水中のニフェジピンのコロイド分散体を製造した。この分散体は、10%(w/w)の薬物および2%のヒドロキシプロピルセルロースを含有していた。150mlのセル通過流量を用いる湿式法により記録されるMalvern Mastersizer S2.14(Malvern Instruments Ltd.,英国ウースターシャー州モールバーン)を用いて遂行された粒度分析により、次の粒度特性が明らかにされた。すなわち、Dv,90620nm、Dv,50313nm、Dv,10170nmであり、しかしてコロイド粒子の97.47%は直径1.03μm未満であった。(ここで、Dv,90620nmは粒子の90%が620nm未満のサイズを有していたことを指摘する、等)
ニフェジピン分散体は、噴霧乾燥のために一連の4つの均質化工程により製造された。分散体を、中剪断にて5分間均質化した。ナトリウムラウリルサルフェート(0.05%)を、更に5分間の中剪断における均質化に先だって添加した。この分散体を次いで精製水で50:50にて希釈し、そして更に10分間中剪断にて均質化した。最後に、マンニット(10%)を添加し、そしてこの混合物を15分間高剪断にて均質化した。噴霧乾燥されるべき混合物の最終含有物は、第1表に与えられている。
【0097】
【表9】
【0098】
かくして得られた混合物を、Buechi Mini B−191 Spray Drier装置(Buechi,スイス国)を用いて噴霧乾燥した。噴霧乾燥条件は、第2表に要約されている。かくして製造された噴霧乾燥されたニフェジピン粒子を次いでブレンドした。ブレンド処方物は、第3表に与えられている。
【0099】
【表10】
【0100】
前の工程後に得られた配合物を、11mm円形標準凹形工具を備えたFette E1タブレットプレス機(Wilheim Fette GmbH,独国シュワルツェムベック)を用いて、手動にてタブレット化した。生成されたタブレットは、122.7Nの平均タブレット硬度および29.7mg/タブレットの平均タブレット力価を有していた。試験管内溶解を、USP装置II(100rpm)を用いて、0.5%ナトリウムラウリルサルフェートを含有するpH6.8のリン酸塩−クエン酸塩緩衝剤中で行った。溶解データは、第4表に与えられている。
【0101】
【表11】
【0102】
【表12】
【0103】
例12
この例の目的は、ナノ粒子状ニフェジピンを含有する被覆された制御放出性タブレット処方物を製造することであった。
例11に従って製造されたタブレットを、第5表に詳述されたEudragit(登録商標)L被覆溶液で被覆した。被覆はManesty Accelacota 10"装置(Manesty Machine Ltd.,英国リバプール)を用いて遂行され、そして5.5%固形分重量増加の被覆レベルが達成された。被覆条件は、第6表に与えられている。
【0104】
【表13】
【0105】
【表14】
【0106】
試験管内溶解を、例1において用いられたのと同じ方法論に従って行った。すなわち、USP装置II(100rpm)を用いて、0.5%ナトリウムラウリルサルフェートを含有するpH6.8のリン酸塩−クエン酸塩緩衝剤。溶解データは、第7表に与えられている。
【0107】
【表15】
【0108】
図10は、(1)例12に記載されているような本発明による制御放出性被膜で被覆されたニフェジピン含有制御放出性マトリックスタブレットおよび(2)対照組成物についての、9人の絶食されたヒト志願者における平均生体内血漿プロフィールを示す。この調査は、完全に無作為化されかつ完全に交差された一回分投与量投与設計を有していた。該図から、例12に従って製造された制御放出性組成物は高レベルの利用能を示しおよび24時間の期間にわたっての良好な制御放出特性を示す、ということが分かり得る。
例13
この実施例の目的は、ナノ粒子のグリピジドを含有するコーティングしていない対照用の徐放性の錠剤調合物を調製することであった。
【0109】
グリピジドのコロイド状水分散物を調製した。分散物は薬物10%(w/w)およびヒドロキシプロピルセルロース3%を含有した。Malvern Mastersizer S2.14を用いて行なった粒径分析は細胞を通過する流れ150mlを用いてウェット法により記録され、粒径特性Dv,90650nm、Dv,50386nm、Dv,10290nmが明らかにされた。
【0110】
噴霧乾燥用のグリピジドの分散物は、水性のグリピジド分散物にマンニトール15%を撹拌しながら添加することにより調製した。噴霧乾燥される混合物の最終含量を表8に示す。
【0111】
【表16】
【0112】
こうして得られた混合物をBuchi Mini B−191噴霧乾燥システムを用いて噴霧乾燥した。噴霧乾燥条件を表9にまとめた。
【0113】
【表17】
【0114】
次に、こうして調製した噴霧乾燥したグリピジド粒子がブレンドされた。ブレンドの処方を表10に示した。
【0115】
【表18】
【0116】
前のステップの後に得られたブレンドを、9.5mmの円形の標準的な凹面金型を装着した一段式錠剤プレスを用いて錠剤にした。製造された錠剤は、平均錠剤硬さが149N、平均錠剤力価が9.1mg/錠であった。インビトロの溶解は、USP装置I(100rpm)を用いてKH2PO4緩衝液、pH7.5中で行なった。溶解データを表11に示す。
【0117】
【表19】
【0118】
例14
この実施例の目的は、遅効放出性のナノ粒子ニフェジピンカプセルを調製することであった。
ニフェジピンのコロイド状水分散物を調製した。分散物はニフェジピン10%(w/w)、ヒドロキシプロピルセルロース2%、および水に溶かしたラウリル硫酸ナトリウム0.1%を含有した。Malvern Mastersizer S2.14を用いて行なった粒径分析は細胞を通過する流れ150mlを用いてウェット法により記録され、粒径特性Dv,90=490nm、Dv,50=290nm、Dv,10=170nmが明らかにされた。
【0119】
噴霧乾燥用のニフェジピンの分散物は、精製した水を添加し、5分間ホモジナイズすることにより調製された。マンニトールを添加し、得られた混合物を15分間ホモジナイズした。噴霧乾燥される混合物の最終含量を表12に示す。
【0120】
【表20】
【0121】
こうして得られた混合物を、Buchi Mini B−191噴霧乾燥システムを用いて噴霧乾燥した。噴霧乾燥条件は表13にまとめた。
【0122】
【表21】
【0123】
次に、こうして調製した噴霧乾燥したニフェジピン粒子がブレンドされた。ブレンドの処方を表14に示した。
【0124】
【表22】
【0125】
得られたブレンドを、3.8mmのシャドウ凹面マルチチップ金型を装着したFette P2100ロータリー式錠剤プレス(Wilhelm Fette GmbH,Schwarzenbek,Germany)を用いて錠剤にした。錠剤は、平均設定硬さが56N、平均設定重量が34.46mgである。
こうして得られた錠剤を、Hi−Coater(Vector Corp.,Marion,IA,USA)中で表15に詳述したEudragit Sコーティング液によりコーティングした。固形物重量増10.03%のコーティングレベルを得た。
【0126】
【表23】
【0127】
こうして得られたコーティングされた小型の錠剤を硬いゼラチンカプセルに手で詰めてニフェジピン10mgのカプセル(1カプセル当たり小型錠剤9個)を形成した。インビトロの溶解は、USP装置II(100rpm)を用いてラウリル硫酸ナトリウム0.5%を含有するクエン酸−リン酸緩衝液、pH6.8中で行なった。得られたカプセルの溶解データを表16に示す。
【0128】
【表24】
【0129】
例15
この実施例の目的は、遅効放出性のナノ粒子ニフェジピンカプセルの対照を調製することであった。
ニフェジピン原料(Dv,90=673μm)、Explotab、およびAvicel pH102をGral25(NV−Machines Colett SA,Wommelgam,Belgium)中で1000rpmで10分間混合した。造粒が達成されるまで混合しながら精製水を少しずつ添加した。粒状物は50℃で18時間オーブン乾燥した。乾燥した粒状物を、Fitzmill M5A(The Fitzpatrick Co.Europe,Sint−Niklaas,Belgium)を用いて50メッシュのスクリーンを通して粉砕した。粒状物の最終含量を表17にまとめた。
【0130】
【表25】
【0131】
次に、こうして得られた粒状物(Dv,90=186μm)をブレンドした。ブレンドの処方を表18に示す。
【0132】
【表26】
【0133】
出発ニフェジピン原料および粉砕ニフェジピン粒状物の粒径分析を、1000mmレンズ(ニフェジピン原料)および300mmレンズ(粉砕ニフェジピン粒状物)を備えたMalvern Mastersizer Sを用いて行なって乾燥粉末法により記録し、表19に示した粒径特性が明らかにされた。
【0134】
【表27】
【0135】
得られたブレンドを、3.8mmのシャドウ凹面マルチチップ金型を装着したFette P2100ロータリー式錠剤プレスを用いて錠剤にした。錠剤は、平均設定硬さが47N、平均設定重量が35mgであった。
こうして得られた錠剤を、Hi−Coater中で表20に詳述したEudragit Sコーティング液によりコーティングした。固形物重量増10.34%のコーティングレベルを得た。
【0136】
【表28】
【0137】
こうして得られたコーティングされた小型の錠剤を硬いゼラチンカプセルに手で詰めてニフェジピン10mgのカプセル(1カプセル当たり小型錠剤9個)を形成した。インビトロの溶解は、USP装置II(100rpm)を用いてラウリル硫酸ナトリウム0.5%を含有するクエン酸−リン酸緩衝液、pH6.8中で行なった。得られたカプセルの溶解データを表21に示す。
【0138】
【表29】
【0139】
例16
図11は、(1)実施例14に記載した本発明に従って製造された徐放性組成物(ニフェジピンの10mgカプセル(Dv,90約500nm))、および(2)実施例15の記載に従って製造された対照組成物(ニフェジピンの10mgカプセル(Dv,90=186nm))に対する10人の絶食したヒト志願者中のニフェジピンの平均のインビボ血漿プロファイルを示す。調査は、ただ1回の服用による完全にランダム化し、完全に交差させた経口投与が計画された。図から、本発明に従って製造された徐放性組成物は、初期の誘導時間に続く急速かつ高レベルの活性利用度を示すことが分かる。
【0140】
本発明に従って製造された徐放性組成物は、相対生体利用度1.45(すなわち、対照と比較して生体利用度が45%向上した)を示したことに留意されたい。
例17
この実験の目的は、直接圧縮したナノ粒子ナプロキセン錠剤の制御された放出に及ぼすポリマーCarbopol(登録商標)およびEudragit(登録商標)の効果を判定することであった。Carbopol(登録商標)は、BF Goodrich,Cleveland,OHから入手できる架橋したポリアクリル酸エステル材料であり、Eudragit(登録商標)はRohm Pharma,Darmstadt,Germanyから入手できるメタクリル−アクリルコポリマーである。
【0141】
4種類の特定のポリマータイプおよびグレード、すなわちCarbopol(登録商標)グレード971P NF、Carbopol(登録商標)グレード974P NF、Eudragit(登録商標)グレードRS PO、およびEudragit(登録商標)グレードRL POについて試験した。使用する前に各ポリマーは#40メッシュを通してふるい分けした。
【0142】
錠剤はまず、噴霧乾燥した薬物の中間体(SDI)、Carbopol(登録商標)またはEudragit(登録商標)ポリマー、および下記に列挙した賦形剤を#40メッシュを通してふるい分けることのより調製された。
(1)ナプロキセン93%およびポリビニルピロリドン7%を含むSDI、
(2)賦形剤としてラクトース(NFラクトースの一水和物、Fast−Flo,Foremost Farms U.S.A.)、および
(3)賦形剤としてステアリン酸マグネシウム(Spectrum)。
【0143】
溶解用の錠剤を調製するために材料ブレンドを調合した。初めにSDIおよび各賦形剤をふるい分けした後、各々適正な量をV−ブレンダ(Blend Master Lab Blender,Patterson Kelley Co.)に加えた。ブレンドした後、調合物を自動化されたCarver Press(Carver,Inc.,Wabash Indiana)を使用して750mgの錠剤にプレスした。
【0144】
Distek Dissolution System中で、それぞれ個々の処方に対して特定のパラメーターで3個の錠剤を同時に試験した。Distek Dissolution Systemは、37℃に加熱した水槽ならびに37℃に加熱したリン酸緩衝液を入れる容器で構成される。緩衝液900mlを3ないし6個の別の容器に挿入し、同時に3ないし6個錠剤を試験した。撹拌棒を50rpmで回転する各容器中に配置した。錠剤が溶解するにしたがって、小型ポンプが緩衝液および薬物を容器から抜き取り、放出された薬物の量を決定するため分析された。
【0145】
図12〜14は、さまざまなレベルの硬さおよび濃度における各ポリマーの放出プロファイルを示す。図12は、Carbopol(登録商標)971P NFポリマー30%を含有する錠剤の制御された放出のプロファイルを示す。この試験における錠剤は40.6kPと31.1kPの両方で圧縮した。図12に示すように、この条件下では12時間の間わずかな薬物しか放出が可能でなかった。薬物ナプロキセンの約14〜15%が放出された。この速度で全錠剤が完全に溶解するには85から90時間を必要とすることになる。硬さの差(40.6および31.1kP)は、30%の高いポリマー濃度では差をほとんど示さないか、または顕著でなかった。
【0146】
図12はまた、Carbopol(登録商標)971P NF10%を含有する錠剤の結果を示す。この錠剤の硬さは30.0kPであった。22%の薬物全量が12時間にわたって放出された。これはCarbopol(登録商標)30%を含む錠剤と比べてCarbopol(登録商標)10%を含む錠剤の薬物放出速度の増加が穏やかなことを示す。Carbopol(登録商標)の濃度にかかわらずCarbopol(登録商標)ポリマーを含む錠剤は、錠剤の硬さの増加とともにより高レベルの制御された放出を示す。
【0147】
図13は、比較的低い硬さを有する濃度5%におけるCarbopol(登録商標)971P NFおよびCarbopol(登録商標)974P NFの比較(それぞれ12.4および11.9kP)を示す。Carbopol(登録商標)974P NFは、Carbopol(登録商標)971P NFの約3倍の薬物の放出をもたらした。これらの特殊な条件下でCarbopol(登録商標)971P NFは、12時間のうちにほとんどゼロのオーダーまで100%放出を可能にした。
【0148】
図14は、制御された放出に及ぼすポリマーEudragit(登録商標)のグレードRS POおよびRL POの効果を示す。このポリマーは実際に、より速やかな放出傾向を示した。低い硬さ(10.9kP)で濃度5%でEudragit(登録商標)RS POポリマーは、錠剤をわずか1時間のうちに溶解させた。これらグレードを濃度30%、硬さ22から27kPの間で試験した。これら条件下でEudragit(登録商標)RL POは、Eudragit(登録商標)RS POより速く作用し、3時間の時間枠の間に全ナプロキセンを放出した。一方、これら条件下でEudragit(登録商標)RS POは、6から7時間のうちに100%の放出を可能にした。
【0149】
Carbopol(登録商標)971P NFおよびCarbopol(登録商標)974P NFは最高レベルの制御された放出を可能にした。高い濃度および高い硬さでこのポリマーは、数日間(約90時間)にわたって全ナプロキセンを放出した。しかしながら、低い濃度および低い硬さでグレード971P NFは、13〜14時間にわたってほぼゼロの放出プロファイルを可能にした。Eudragit(登録商標)RS POおよびEudragit(登録商標)RL POは、Carbopol(登録商標)グレードと比較して異なるプロファイルをもたらした。Eudragit(登録商標)ポリマーは、低い硬さおよび濃度では薬物のより速やかな放出(1〜2時間)、高い硬さおよび濃度ではやや遅い放出(6〜7時間)を可能にした。最適の制御された放出プロファイルは、低い硬さおよび濃度のCarbopol(登録商標)ポリマーおよび高い硬さおよび濃度のEudragit(登録商標)ポリマーで見出された。
【0150】
本発明の方法および組成物においては本発明の精神と範囲を逸脱することなくさまざまな修正および変更を行なうことができることは当業技術者には明らかなはずである。したがって、もしそれらが添付の特許請求の範囲および同義語の範囲内にあるならば、本発明は本発明の修正および変更を対象として含むことを意味する。
【技術分野】
【0001】
本発明は、薬物のような貧溶性薬剤を含有する制御放出性組成物に関する。特に、本発明は、貧溶性薬剤がナノ粒子形態にて存在する組成物に関する。本発明はまた、かかる組成物を含有する固体状経口投薬形態に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
制御放出は、組成物または投薬形態からの薬物のような薬剤の放出において、該薬剤が所望のプロフィールに従って長期間にわたって放出される放出を指す。制御放出プロフィールは、たとえば、持続放出性、長期放出性、脈動放出性および遅延放出性プロフィールを含む。即時放出性組成物とは対照的に、制御放出性組成物は、予定プロフィールに従って長期間にわたって被験者への薬剤の送達を可能にする。かかる放出速度は、長期間にわたって薬剤の治療的に有効なレベルをもたらし得、そしてそれにより慣用の急速放出性投薬形態に比べてより長い期間の薬理学的または診断的応答をもたらし得る。かかるより長い期間の応答は、対応する短期作用性の即時放出性製剤では達成されない多くの固有の利点を与える。たとえば、慢性疼痛の処置において、制御放出性処方物は、慣用の短期作用性処方物よりもしばしば高度に好ましい。
【0003】
制御放出性の製薬組成物および投薬形態は、薬物、医薬、活性剤、診断剤またはヒトを含めて動物に内服的に投与されるべき物質のような薬剤の送達プロフィールを改善するために設計される。制御放出性組成物は、典型的には、送達の速度論を最適にしてそれにより生物学的利用能、便宜性および患者のコンプライアンスを増大し並びに高い初期放出速度および所望されない場合の一様でない血液または組織レベルのような不適切な即時放出速度と関連した副作用を最小にすることにより、投与物質の効果を改善するために用いられる。
【0004】
用語生物学的利用能は、薬物が投与後に作用部位にて利用され得るようになる程度を述べるために用いられる。薬物のような薬剤が投与後に標的部位に利用され得るようになる程度およびタイミングは、投薬形態および種々の性質たとえば薬物の溶解速度を含めて、多くの因子により決定される。いくつかの薬物組成物は、活性成分それ自体の貧溶解性の故に貧生物学的利用能の難点がある、ということがよく知られている。
【0005】
数多くの方法が、貧溶性薬物の生物学的利用能を高めるために開発されてきた。薬剤のナノ粒子形態のような粒度減少は、化合物の溶解速度が粒度に関連づけられるので、一つのかかる方法である。ナノ粒子組成物は、極めて小さい粒度すなわち1ミクロン未満を有する貧水溶性薬物または薬剤粒子を含む。粒度の減少および従って表面積の増大と共に、組成物は、投与後急速に溶解されそして吸収される傾向にある。或る処方物について、この特性は、たとえば米国特許第5,145,684号(特許文献1)、第5,510,118号(特許文献2)、第5,534,270号(特許文献3)および第4,826,689号(特許文献4)(参照により特定的に合体される)に記載されているように、高度に望ましくあり得る。しかしながら、急速溶解は、制御放出の目標と反対にある。公知の制御放出性処方物は、この問題への解決を呈さない。
【0006】
活性化合物の制御放出を与える組成物の製造および使用についての先行技術の教示は、投与後薬物の放出を延長する種々の方法を提供する。しかしながら、これらの方法のいずれも、ナノ粒子処方物を投与する成功的な方法を示唆しない。
当該技術において知られた例示的制御放出性処方物は、薬物の制御放出がたとえば製剤の被膜の選択的破壊により、被膜を通じての放出により、薬物の放出に影響を及ぼすべき特殊マトリックスとの配合によりまたはこれらの技法の組合わせにより引き起こされるところの、特殊的に被覆されたペレット、ミクロ粒子、植込み体、タブレット、ミニタブレットおよびカプセルを含む。いくつかの制御放出性処方物は、投与後予定周期にて活性化合物の一回分投与量の脈動放出を与える。
【0007】
Acharya等の米国特許第5,110,605号(特許文献5)は、カルシウムポリカルボフィル−アルギネート制御放出性組成物に言及する。Krishnamurthy等の米国特許第5,215,758号(特許文献6)は、アルギン酸ナトリウムおよびカルシウム塩の制御放出性坐薬組成物に言及する。Friend等の米国特許第5,811,388号(特許文献7)は、経口投与される化合物の制御放出をもたらすための、アルギン酸塩、水膨潤性ポリマーおよび消化性炭化水素誘導体を含む固体状アルギン酸塩ベースの処方物に言及する。
【0008】
WO91/13612は、薬物がイオン交換樹脂で錯化されている組成物を用いての製薬の持続放出に言及する。この公開特許出願に記載されている特定のイオン交換樹脂は、ナトリウムポリスチレンスルホネート樹脂であるAMBERLITE IRP 69(登録商標)である。
Woods等の米国特許第5,811,425号(特許文献8)は、体組織と適合性の生分解性ポリマー、リポソームまたはマイクロエマルジョン中の薬物のマイクロカプセルマトリックスを形成させることにより作製された制御放出性薬物の注入可能なデポー形態に言及する。Lam等の米国特許第5,811,422号(特許文献9)は、あるクラスの薬物をポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリ乳酸とポリグリコール酸のコポリマー、ポリイプシロンカプロラクトン、ポリヒドロキシ酪酸、等のような生分解性ポリマーに結合させることにより得られた制御放出性組成物に言及する。
【0009】
De Frees等の米国特許第5,811,404号(特許文献10)は、薬物組成物の持続放出を与えるための、長い循環半減期を有するリポソームの使用に言及する。
ナノ粒子組成物は、貧水溶性薬剤を含有する製薬上受容され得る組成物に対する当該技術におけるニーズ向けであった。しかしながら、公知のナノ粒子組成物は、制御放出性処方物用に適合しない。制御放出性ナノ粒子組成物に対する当該技術におけるニーズが残存している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】米国特許第5,145,684号
【特許文献2】米国特許第5,510,118号
【特許文献3】米国特許第5,534,270号
【特許文献4】米国特許第4,826,689号
【特許文献5】米国特許第5,110,605号
【特許文献6】米国特許第5,215,758号
【特許文献7】米国特許第5,811,388号
【特許文献8】米国特許第5,811,425号
【特許文献9】米国特許第5,811,422号
【特許文献10】米国特許第5,811,404号
【発明の概要】
【0011】
発明の要約
本発明は、新規な制御放出性ナノ粒子組成物の驚くべきかつ予期されない発見に向けられる。制御放出性組成物は、患者において約2から約24時間またはそれより長い範囲の期間、合体された薬物または他の物質の治療的に有効な放出を与える。
【0012】
制御放出性ナノ粒子組成物は、該組成物中における包含の前に約1000nm未満の有効平均粒度を有するところの、結晶質もしくは無定形のナノ粒子状薬物もしくは他の薬剤または結晶質および無定形のナノ粒子状薬物もしくは他の薬剤の組合わせのような投与されるべきナノ粒子状薬物または他の薬剤を含む。組成物はまた、ナノ粒子状薬物または他の薬剤の表面と結合された少なくとも1種の表面安定剤を含む。加えて、制御放出性ナノ粒子組成物は、投与されたナノ粒子状薬物または薬剤の放出を延長してそれにより制御放出をもたらすようになるように機能する1種またはそれ以上の製薬上受容され得る速度制御性ポリマーを含む。随意に、1種またはそれ以上の補助賦形物質もまた、制御放出性組成物中に包含され得る。
【0013】
ナノ粒子形態の貧溶性薬物を含有する本発明による制御放出性組成物は、該薬物のサイズの減少により達成された改善生物学的利用能が投与後長期間にわたって有効血液濃度を維持するために利用され得る点で有利である。
好ましくは、制御放出性ナノ粒子組成物における包含前のナノ粒子状薬剤の有効平均粒度は、約1000nm未満、約800nm未満、約600nm未満、約400nm未満、約300nm未満、約250nm未満、約100nm未満または約50nm未満である。ナノ粒子組成物は、上記に記載された米国特許第5,145,684号(「'684特許」)において最初に記載された。
【0014】
本発明はまた、経口、直腸、頬および膣の経路を経るようないかなる慣用の方法でも投与されるために、タブレット形態または多粒子形態にての、上記に記載された制御放出性組成物用の投薬形態を提供する。タブレット形態は、たとえば、被覆タブレット、多層タブレット、マトリックスタブレット、等であり得る。多粒子形態は、たとえば、粒子、ペレット、ミニタブレット、等であり得る。
【0015】
本発明の第1の観点において、ナノ粒子状薬物または他の薬剤、少なくとも1種の表面安定剤および1種またはそれ以上の補助賦形物質が、速度制御性ポリマー物質での被覆に先だってタブレット形態に圧縮される。
第2の観点において、ナノ粒子状薬物または他の薬剤、少なくとも1種の表面安定剤、速度制御性ポリマー物質および1種またはそれ以上の補助賦形剤が一緒に圧縮されて、制御放出性マトリックスが形成される。制御放出性マトリックスは、随意に、追加的制御放出性質をもたらすように速度制御性ポリマーで被覆され得る。
【0016】
第3の観点において、ナノ粒子状薬物または他の薬剤、少なくとも1種の表面安定剤および1種またはそれ以上の補助賦形物質が、速度制御性ポリマー物質での被覆に先だって多層タブレットの形態に圧縮される。
第4の観点において、ナノ粒子状薬物または他の薬剤および少なくとも1種の表面安定剤が速度制御性ポリマー物質中に分散され、そして多層タブレットの形態に圧縮される。多層タブレットは、随意に、追加的制御放出性質をもたらすように速度制御性ポリマー物質で被覆され得る。別の観点において、かかる多層タブレットにおける第1層は本発明による制御放出性組成物を含み、そして第2層は瞬時放出性組成物のような慣用の活性成分含有組成物を含む。
【0017】
第5の観点において、ナノ粒子状薬物または他の薬剤および少なくとも1種の表面安定剤が、半透膜により取り囲まれた浸透剤含有の単一層または多層タブレッ中に合体され、しかして該半透膜はオリフィスを画定する。この具体的態様において、半透膜は胃腸液のような水性媒質に対して透過性であるが、しかし溶液にある場合のまたは他の形態にある場合の貧溶性薬物化合物に対して透過性でない。かかる浸透送達系は当該技術においてよく知られており、しかして半透膜を通じての流体の注入が浸透剤を膨潤させ、かくして薬物化合物が半透膜により画定されたオリフィスを通過するようにされる。
【0018】
第6の観点において、ナノ粒子状薬物または他の薬剤、少なくとも1種の表面安定剤、1種またはそれ以上の補助賦形剤、および速度制御性ポリマー物質が、一緒にされて多粒子形態にされる。多粒子形態は、好ましくは、離散粒子、ペレット、ミニタブレットまたはそれらの組合わせを含む。最終経口投薬形態において、多粒子形態は、たとえば硬質または軟質ゼラチンカプセル中に封入され得る。その代わりに、多粒子形態は、サッシェのような他の最終投薬形態中に合体され得る。離散粒子またはペレットを含む多粒子形態の場合、多粒子形態は、随意に追加的補助賦形剤と共に、タブレットの形態に圧縮され得る。圧縮多粒子タブレットは、随意に、追加的制御放出性質をもたらすように速度制御性ポリマー物質で被覆され得る。
【0019】
本発明は、更に、貧溶性薬物または他の薬剤がナノ粒子形態にて存在する制御放出性組成物の製造方法に関する。一つの観点において、該方法は、(1)投与されるべき貧溶性薬物または他の薬剤および表面安定剤を含むナノ粒子組成物を形成させ、(2)1種またはそれ以上の製薬上受容され得る速度制御性ポリマーを添加し、そして(3)投与用組成物の固体状投与量形態を形成させることを含む。製薬上受容され得る賦形剤もまた、投与用組成物に添加され得る。機械的摩砕、沈殿またはいかなる他の適当なサイズ減少法をも含み得るところの、ナノ粒子組成物を作製する方法は、当該技術において公知であり、そしてたとえば'684特許に記載されている。
【0020】
本発明の更に別の観点は、薬物または他の薬剤の長期投与を必要とするところのヒトを含めて哺乳類を、合体された薬物または他の薬剤を約2から約24時間またはそれより長い期間放出して所望効果を奏するところの、本発明の制御放出性ナノ粒子組成物で処置する方法を提供する。制御放出性ナノ粒子組成物は、経口、直腸、頬および膣の経路のようないかなる慣用の方法にても投与され得る。
【0021】
前記の一般的記載および以下の詳細な記載の両方共、例示的および説明的であり、そして請求の範囲に記載の発明の更なる説明をもたらすために意図されている、ということが理解されるべきである。他の目的、利点および新規な特徴は、以下の本発明の詳細な記載から当業者に容易に明らかであろう。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】図1は、30%Klucel(登録商標)ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)および3%ポリビニルピロリドン(PVP)を含むナノ粒子組成物を用いての、経時的に放出された累積%薬物(ナプロキセン)のグラフを示す;
【図2】図2は、15、25および35kPの硬度を有する3つの異なるナノ粒子組成物についての、経時的に放出された累積%薬物(ナプロキセン)のグラフを示す;
【図3】図3は、異なるタイプのヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)を含むナノ粒子組成物についての、経時的に放出された累積%薬物(ナプロキセン)のグラフを示す;
【図4】図4は、6つの異なるタイプのHPMCの一つを含むナノ粒子組成物についての、経時的に放出された累積%薬物(ナプロキセン)のグラフを示す;
【図5】図5は、変動量のLubritab(登録商標)(水素化植物油)を有するナノ粒子組成物についての、経時的に放出された累積%薬物(ナプロキセン)のグラフを示す;
【図6】図6は、噴霧乾燥されたナノ粒子処方物およびブレンドされた未加工薬物と安定剤の処方物についての、経時的に放出された累積%薬物(ナプロキセン)を比較するグラフを示す;
【図7】図7は、異なる濃度のMethocel(登録商標)K100LV(HPMC)を含むナノ粒子処方物についての、経時的に放出された累積%薬物(ナプロキセン)を比較するグラフを示す;
【図8】図8は、Klucel(登録商標)およびMethocel(登録商標)の直接的に圧縮されたおよび湿式粒状化されたナノ粒子処方物についての、経時的に放出された累積%薬物(ナプロキセン)を比較するグラフを示す;
【図9】図9は、直接的に圧縮されたMethocel(登録商標)タブレットからのナノ粒子状グリピジドの制御放出を示す;
【図10】図10は、(1)例12に記載されているような本発明による制御放出性被膜で被覆されたニフェジピン含有制御放出性マトリックスタブレットおよび(2)対照組成物についての、ヒトにおける一回分投与量の絶食投与後のニフェジピンの平均生体内血漿プロフィールを示す;
【図11】図11は、(1)例14に記載されているような本発明に従って製造されたニフェジピン制御放出性組成物および(2)対照組成物についての、ヒトにおける一回分投与量の絶食投与後のニフェジピンの平均生体内血漿プロフィールを示す;
【図12】図12は、10%および30%のCarbopol(登録商標)971P NFを含有するタブレットの制御放出パターンを示す;
【図13】図13は、5%のCarbopol(登録商標)971P NFおよびCarbopol(登録商標)974P−NFを含有するタブレットの制御放出パターンの比較を示す;そして
【図14】図14は、30%のEudragit(登録商標)銘柄RS POおよびRL POを含有するタブレットの制御放出パターンを示す。
【発明を実施するための形態】
【0023】
発明の詳細な記載
A.制御放出性ナノ粒子組成物
本発明は、新規な固体状投与量制御放出性ナノ粒子組成物の驚くべきかつ予期されない発見に向けられる。制御放出性組成物は、患者において長期間、合体されたナノ粒子状薬物または他の薬剤の有効血液レベルを与える、ということが期待される。かかる発見は、体積に関して大きい表面積をもたらすことになる薬物または他の薬剤のナノ粒子サイズが投与後薬物または他の薬剤の急速な溶解をもたらすことになる故、予期されなかった。急速溶解は、制御放出性組成物の目標とは見掛け上反対である。
ここにおいて用いられる「制御放出」は、組成物または投薬形態からの薬物のような薬剤の放出において、該薬剤が所望のプロフィールに従って約2から約24時間またはそれより長いような長期間にわたって放出される放出を意味する。一層長い期間にわたっての放出もまた、本発明の「制御放出」性の投薬形態として意図されている。
【0024】
本発明の固体状投与量制御放出性ナノ粒子組成物は、約1000nm未満の有効平均粒度を有するところの、投与されるべき結晶質または無定形のナノ粒子状薬物または他の薬剤、該薬物または薬剤の表面と結合された少なくとも1種の表面安定剤、および追加的に1種またはそれ以上の速度制御性ポリマーを含む。好ましくは、ナノ粒子状薬物の有効平均粒度は、約800nm未満、約600nm未満、約400nm未満、約300nm未満、約250nm未満、約100nm未満または約50nm未満である。薬物または他の薬剤の結晶質形態は、薬物または他の薬剤の非晶質または無定形相から見分けられ得る。
【0025】
1.ナノ粒子組成物
出発ナノ粒子組成物(1種またはそれ以上の速度制御性ポリマーの添加前)は、投与されるべき薬物または他の薬剤、および該ナノ粒子状薬物または薬剤の表面と結合された少なくとも1種の表面安定剤を含む。
a.投与されるべき薬剤
本発明のナノ粒子は、制御放出のために投与されるべき治療剤、診断剤または他の薬剤を含む。治療剤は、薬物または製薬であり得、そして診断剤は、典型的には、X線造影剤のような造影剤、またはいかなる他のタイプの診断物質でもある。薬物または診断剤は、離散結晶質相として、無定形相としてまたはそれらの組合わせとして存在する。結晶質相は、EPO275,796に記載されているもののような沈殿技法から生じる非晶質または無定形相とは相違する。
【0026】
本発明は、広く様々な薬物または診断剤でもって実施され得る。薬物または診断剤は、好ましくは本質的に純粋な形態にて存在し、貧水溶性であり、そして少なくとも1種の液状媒質中に分散可能である。「貧水溶性」により、薬物または診断剤が約30mg/ml未満好ましくは約10mg/ml未満好ましくは約1mg/ml未満の液状分散媒質中の溶解性を有するということが意味される。
【0027】
適当な薬物または診断剤は、制御放出性送達のために意図されるものを含む。好ましい薬物クラスは、クリアランスについて短い半減期を有するものを含む。
薬物は、たとえば鎮痛薬、抗炎症剤、駆虫薬、抗不整脈剤、ぜん息鎮静剤、抗生物質(ペニシリンを含めて)、抗凝固薬、抗うつ薬、抗糖尿病剤、抗てんかん薬、抗ヒスタミン薬、鎮咳薬、抗高血圧剤、抗ムスカリン剤、抗ミコバクテリア剤、抗腫瘍剤、解熱薬、免疫抑制薬、免疫賦活薬、抗甲状腺剤、抗ウイルス剤、抗不安鎮静薬(催眠薬および神経弛緩薬)、収れん薬、ベータ−アドレナリン受容体遮断剤、血液製品および代用品、気管支拡張薬、心臓筋収縮剤、化学療法薬、造影剤、コルチコステロイド、咳抑制薬(去痰薬および粘液溶解薬)、診断剤、診断画像剤、利尿薬、ドーパミン作用薬(抗パーキンソン剤)、止血薬、免疫剤、脂質調整剤、筋弛緩薬、タンパク質、ポリペプチド、副交感神経作用薬、副甲状腺カルシトニンおよびビホスホネート、プロスタグランジン、放射性製薬、ホルモン、性ホルモン(ステロイドを含めて)、抗アレルギー剤、刺激薬および食欲抑制薬、交感神経作用薬、甲状腺剤、ワクチン、血管拡張薬、およびキサンチンを含めて、様々な公知のクラスの薬物から選択され得る。
【0028】
これらのクラスの薬物および診断剤の記載並びに各クラス内の種のリストは、たとえば、Martindale,The Extra Pharmacopoeia,第29版(The Pharmaceutical Press,ロンドン,1989)(特定的に参照により合体される)に見られ得る。薬物または診断剤は、商業的に入手できおよび/または当該技術において知られた技法により製造され得る。
【0029】
本発明の実施において適当に用いられ得る貧水溶性薬物は、アルプラゾラム、アミオダロン、アムロジピン、アステミゾール、アテノロール、アザチオプリン、アゼラチン、ベクロメタソン、ブデソニド、ブプレノルフィン、ブタルビタール、カルバマゼピン、カルビドパ、セフォタキシム、セファレキシン、コレスチラミン、シプロフロキサシン、シサプリド、シスプラチン、クラリスロマイシン、クロナゼパム、クロザピン、シクロスポリン、ジアゼパム、ジクロフェナクナトリウム、ジゴキシン、ジピリダモール、ジバルプロックス、ドブタミン、ドキサゾシン、エナラプリル、エストラジオール、エトドラク、エトポシド、ファモチジン、フェロジピン、フェンタニルシトレート、フェキソフェナジン、フィナステリド、フルコナゾール、フルニソリド、フルルビプロフェン、フルボキサミン、フロセミド、グリピジド、グリブリド、イブプロフェン、イソソルビドジニトレート、イソトレチノイン、イスラジピン、イトラコナゾール、ケトコナゾール、ケトプロフェン、ラモトリジン、ランソプラゾール、ロペラミド、ロラタジン、ロラゼパム、ロバスタチン、メドロキシプロゲステロン、メフェナム酸、メチルプレドニソロン、ミドゾラム、モメタソン、ナブメトン、ナプロキセン、ニセルゴリン、ニフェジピン、ノルフロキサシン、オメプラゾール、パクリタキセル、フェニトイン、ピロキシカム、キナプリル、ラミプリル、リスペリドン、セルトラリン、シムバスタチン、テルビナフィン、テルフェナジン、トリアムシノロン、バルプロ酸、ゾルピデム、または上記の薬物のいずれかの製薬上受容され得る塩を含むが、しかしそれらに限定されない。
【0030】
b.表面安定剤
当該技術において公知でありそしてたとえば`684特許に記載されている有用な表面安定剤は、薬物または薬剤の表面に物理的に付着するがしかし薬物または薬剤に化学的に結合または相互作用しないものを含むと信じられる。表面安定剤は、薬物または薬剤の表面と、約1000nm未満の有効平均粒度を維持するのに十分な量にて結合される。更に、表面安定剤の個々の分子は、分子間架橋を本質的に含まない。
【0031】
適当な表面安定剤は、好ましくは、公知の有機および無機の製薬用賦形剤から選択され得る。かかる賦形剤は、種々のポリマー、低分子量オリゴマー、天然製品および界面活性剤を含む。好ましい表面安定剤は、非イオン性およびイオン性界面活性剤を含む。
表面安定剤の代表的な例は、ゼラチン、カゼイン、レシチン(ホスファチド)、デキストラン、アラビアガム、コレステロール、トラガカント、ステアリン酸、ベンザルコニウムクロライド、ステアリン酸カルシウム、グリセロールモノステアレート、セトステアリルアルコール、セトマクロゴール乳化性ロウ、ソルビタンエステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル(たとえば、セトマクロゴール1000のようなマクロゴールエーテル)、ポリオキシエチレンヒマシ油誘導体、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル(たとえば、商業的に入手できるTween(登録商標)(たとえば、Tween 20(登録商標)およびTween 80(登録商標)のような)(ICI Specialty Chemicals))、ポリエチレングリコール(たとえば、Carbowax 3550(登録商標)および934(登録商標)(Union Carbide))、ポリオキシエチレンステアレート、コロイド状二酸化ケイ素、リン酸塩、ナトリウムドデシルサルフェート、カルボキシメチルセルロースカルシウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、非晶質セルロース、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルピロリドン(PVP)、エチレンオキシドおよびホルムアルデヒドとの4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−フェノールポリマー(チロキサポール、スペリオンおよびトリトンとしても知られている)、ポロキサマー(たとえば、エチレンオキシドおよびプロピレンオキシドのブロックコポリマーであるPluronic F68(登録商標)およびF108(登録商標))、ポロキサミン(たとえば、エチレンジアミンへのプロピレンオキシドおよびエチレンオキシドの逐次付加から誘導された四官能性ブロックコポリマーであるところの、Poloxamine 908(登録商標)としても知られているTetronic 908(登録商標)(BASF Wyandotte Corporation,ニュージャージー州パーシッパニ))、Tetronic 1508(登録商標)(T−1508)(BASF Wyandotte Corporation)、ナトリウムスルホコハク酸のジアルキルエステル(たとえば、ナトリウムスルホコハク酸のジオクチルエステルであるAerosol OT(登録商標)(American Cyanamid))、ナトリウムラウリルサルフェートであるDuponol P(登録商標)(DuPont)、アルキルアリールポリエーテルスルホネートであるTriton X−200(登録商標)(Rohm and Haas)、スクロースステアレートおよびスクロースジステアレートの混合物であるCrodesta F−110(登録商標)(Croda Inc.)、Olin−IOG(登録商標)またはSurfactant 10−G(登録商標)(Olin Chemicals,コネチカット州スタンフォード)としても知られてるp−イソノニルフェノキシポリ(グリシドール)、Crodesta SL−40(登録商標)(Croda, Inc.)、およびC18H37CH2(CON(CH3)−CH2(CHOH)4(CH2OH)2であるSA9OHCO(Eastman Kodak Co.)、デカノイル−N−メチルグルカミド、n−デシル−β−D−グルコピラノシド、n−デシル−β−D−マルトピラノシド、n−ドデシル−β−D−グルコピラノシド、n−ドデシル−β−D−マルトシド、ヘプタノイル−N−メチルグルカミド、n−ヘプチル−β−D−グルコピラノシド、n−ヘプチル−β−D−チオグルコシド、n−ヘキシル−β−D−グルコピラノシド、ノナノイル−N−メチルグルカミド、n−ノニル−β−D−グルコピラノシド、オクタノイル−N−メチルグルカミド、n−オクチル−β−D−グルコピラノシド、オクチル−β−D−チオグルコピラノシド、等を含む。
【0032】
これらの表面安定剤の多くは、公知の製薬用賦形剤でありそしてAmerican Pharmaceutical AssociationおよびThe Pharmaceutical Society of Great Britainにより共同で出版されたHandbook of Pharmaceutical Excipients(The Pharmaceutical Press,1986)(特別に援用される)に詳細に記載されている。
【0033】
c.粒度
「約1000nm未満の有効平均粒度」により、光散乱技法により測定される場合、薬物/薬剤粒子の少なくとも50%が約1000nm未満の平均粒度を有する、ということが意味される。好ましくは粒子の少なくとも70%が有効平均すなわち約1000nm未満の平均粒度を有し、一層好ましくは粒子の少なくとも約90%が有効平均未満の平均粒度を有する。
【0034】
ここにおいて用いられる粒度は、当業者によく知られた慣用の粒度測定技法により測定されるような重量平均粒度に基づいて決定される。かかる技法は、たとえば、沈降フィールドフローフラクショネーション、光子相関分光分析、光散乱、およびディスク遠心を含む。「約1000nm未満の有効平均粒度」により、上記の技法により測定される場合、重量により粒子の少なくとも70%が約1000nm未満の粒度を有する、ということが意味される。好ましい具体的態様において、有効平均粒度は、約800nm未満、約600nm未満、約400nm未満、約300nm未満、約250nm未満、約100nm未満または約50nm未満である。
【0035】
ここにおいて用いられるところの、粒子の50%の平均直径Dv,50は、粒子の50%の体積平均直径、または粒子の50%が値未満の相当体積直径を有する該値を指す。
2.速度制御性ポリマー
本発明は、予期せぬことにナノ粒子組成物に優秀な制御放出性質を与える製薬上受容され得る速度制御性ポリマー(ここにおいて速度制御性ポリマー物質とも称される)を同定する。速度制御性ポリマーは、本発明の組成物または投薬形態からの薬物化合物の放出を遅らせることが可能であるところの、親水性ポリマー、疎水性ポリマーおよび疎水性と親水性のポリマーの混合物を含む。
【0036】
投与後に投与薬物または薬剤の有効な制御放出を引き起こすために特に有用な速度制御性ポリマーは、植物滲出物(アラビアガム)、海草抽出物(寒天)、植物種子ガムまたは粘質物(グアーガム)、穀物ガム(デンプン)、発酵ガム(デキストラン)、動物性製品(ゼラチン)、ヒドロキシアルキルセルロース(ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)のような)、およびナトリウムカルボキシメチルセルロース(CMC)、グアー、ペクチンおよびカラジーナン含む。追加的ポリマーは、ポリ(エチレン)オキシド、アルキルセルロース(エチルセルロースおよびメチルセルロースのような)、カルボキシメチルセルロース、親水性セルロース誘導体、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン、セルロースアセテート、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートフタレート、セルロースアセテートトリメリテート、ポリビニルアセテートフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートスクシネート、ポリビニルアセタルジエチルアミノアセテート、ポリ(アルキルメタクリレート)およびポリ(ビニルアセテート)を含む。他の適当な疎水性ポリマーは、アクリル酸またはメタクリル酸およびそれらのそれぞれのエステルから誘導されたポリマーおよび/またはコポリマー、ロウ、セラックおよび水素化植物油含む。2種またはそれ以上の速度制御性ポリマーは、組み合って用いられ得る。ポリマーは、商業的に入手できおよび/または当該技術において知られた技法により製造され得る。
【0037】
3.他の製薬用賦形剤
本発明による製薬組成物はまた、結合剤、希釈剤、滑剤、可塑剤、粘着防止剤、不透明化剤、懸濁剤、甘味料、風味剤、保存剤、緩衝剤、湿潤剤、崩壊剤、顔料および他の賦形剤のような、1種またはそれ以上の補助賦形剤を含み得る。かかる賦形剤は、当該技術において公知である。当業者により認識されるように、賦形剤の正確な選択およびそれらの相対量は、制御放出性組成物が合体される投薬形態にある程度依存する。
【0038】
適当な希釈剤は、たとえば、微晶質セルロース、ラクトース、二塩基性リン酸カルシウム、サッカライドおよび/または上記のいずれかの混合物のような製薬上受容され得る不活性充填剤を含む。希釈剤の例は、Avicel pH101、Avicel pH102およびAvicel pH112のような微晶質セルロース;ラクトース一水和物、ラクトース無水物およびPharmatose DCL21のようなラクトース;Emcompressのような二塩基性リン酸カルシウム;マンニット;デンプン;ソルビット;スクロース;およびグルコースを含む。希釈剤は、存在する場合、好ましくは投薬単位当たり約5mgから約800mg一層好ましくは投薬単位当たり約10mgから約600mg最も好ましくは投薬単位当たり約20mgから約400mgの量にて用いられる。
【0039】
結合剤の例は、種々のセルロースおよび架橋ポリビニルピロリドンである。
圧縮されるべき粉末の流動性に作用する薬剤を含めて、適当な滑剤は、Aerosil 200のようなコロイド状二酸化ケイ素;タルク、ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸およびシリカゲルである。
【0040】
甘味料の例は、スクロース、キシリット、サッカリンナトリウム、シクラミン酸塩、アスパルテームおよびアクサルフェームのようないかなる天然または人工の甘味料でもある。風味剤の例は、Magnasweet(MAFCOの商標)、風船ガムフレーバーおよびフルーツフレーバー、等である。
保存剤の例は、ソルビン酸カリウム、メチルパラベン、プロピルパラベン、安息香酸およびその塩、パラヒドロキシ安息香酸の他のエステル(ブチルパラベンのような)、アルコール(エチルまたはベンジルアルコールのような)、フェノール化合物(フェノールのような)または第4級化合物(ベンザルコニウムクロライドのような)である。適当な崩壊剤は、軽度に架橋されたポリビニルピロリドン、コーンスターチ、ジャガイモデンプン、トウモロコシデンプン、および変性デンプン、クロスカルメロースナトリウム、クロスポビドン、ナトリウムデンプングリコレート、並びにそれらの混合物を含む。
【0041】
4.ナノ粒子組成物および速度制御性ポリマーの量
本発明の制御放出性組成物中のナノ粒子状薬剤の相対量は、広く変動し得そしてたとえば制御放出性送達のために選択された該薬剤に依存し得る。貧溶性薬物または製薬上受容され得るその塩は、治療効果を引き出すのに十分であるいかなる量にても存在し得、そして当てはまる場合、実質的に一つの光学的に純粋なエナンチオマーの形態にてまたはエナンチオマーのラセミのもしくはそうでない混合物として存在し得る。本発明の制御放出性組成物中の貧溶性薬物化合物または製薬上受容され得るその塩の量は、適当には約1μgから約800mgの範囲好ましくは約0.25mgから約600mgの範囲一層好ましくは約1mgから約500mgの範囲にある。
【0042】
ナノ粒子状薬剤は、好ましくは表面安定剤と組み合って、本発明の制御放出性組成物中に、乾燥組成物の総重量を基準として重量により約95%ないし約5%好ましくは約80%ないし約10%の量にて存在し得る。
1種またはそれ以上の速度制御性ポリマーは、乾燥組成物の総重量を基準として重量により約5%ないし約95%好ましくは約10%ないし約65%の量にて存在し得る。
【0043】
5.制御放出を増強するための他の変動要素の最適化
1種またはそれ以上の速度制御性ポリマーの選択以外に、タブレットの硬度が、投与薬剤の長期制御放出に最も寄与する因子である。約10kPないし約50kPの硬度が好ましく、約30ないし約35kPの硬度が最も好ましい。速度制御性ポリマーの湿式粒状化および速度制御性ポリマーの濃度の増大のような因子はより制御的な放出を可能にするのに対して、速度制御性ポリマーのミクロン微粉化のような因子は投与薬剤のより即時的な放出を与える。
B.制御放出性ナノ粒子投薬形態を作製する方法
本発明の別の観点において、制御放出性ナノ粒子処方物を製造する方法が提供される。該方法は、(1)投与されるべき薬剤および好ましくは表面安定剤を含むナノ粒子組成物を形成させ、(2)1種またはそれ以上の速度制御性ポリマーを添加し、そして(3)投与用組成物の固体状投与量形態を形成させることを含む。製薬上受容され得る賦形剤もまた、投与用組成物に添加され得る。機械的摩砕、沈殿またはいかなる他の適当なサイズ減少法をも含み得るところの、ナノ粒子組成物を作製する方法は、当該技術において公知であり、そしてたとえば'684特許に記載されている。再分散剤または再分散剤の組合わせは、ナノ粒子状薬物の加工を容易にするために包含され得る。
【0044】
固体状投与量製薬処方物を作製する方法は当該技術において公知であり、そしてかかる方法は本発明において用いられ得る。本発明の例示的固体状投与量制御放出性処方物は、たとえば、1種またはそれ以上の速度制御性ポリマーを、投与されるべき薬剤のサイズ減少後に得られた未加工ナノ粒子混合物と一緒にすることにより製造され得る。生じた組成物は、経口投与用タブレットに処方され得る。その代わりに、1種またはそれ以上の速度制御性ポリマーは、噴霧乾燥されたナノ粒子分散体と一緒にされ得る。
【0045】
本発明による制御放出性組成物の経口投薬形態は、タブレットの形態にあり得または多粒子状であり得る。ここにおいて用いられる用語「タブレット」は、瞬時放出性(IR)タブレット、マトリックスタブレット、多層タブレットおよび多層マトリックスタブレット(1種またはそれ以上の被覆物質で随意に被覆され得る)を含むが、しかしそれらに限定されない。用語「タブレット」はまた、浸透送達系を含み、しかして該系においては、薬物化合物は浸透剤(および他の賦形剤)と一緒にされそして半透膜で被覆され、しかも該半透膜は、該薬物化合物が放出され得るところのオリフィスを画定する。本発明の実施において特に有用なタブレット経口投薬形態は、被覆IRタブレット、マトリックスタブレット、被覆マトリックスタブレット、多層タブレット、被覆多層タブレット、多層マトリックスタブレットおよび被覆多層マトリックスタブレットから成る群から選択されるものを含む。ここにおいて用いられる用語「多粒子」は、離散粒子、ペレット、ミニタブレット、およびそれらの混合物または組合わせを含む。経口形態が多粒子カプセルである場合、該多粒子を含有するような硬質または軟質ゼラチンカプセルが、適当に用いられ得る。本発明による多粒子経口投薬形態は、異なる試験管内および/または生体内放出特性を有する粒子、ペレットまたはミニタブレットの2つまたはそれ以上の集団の配合物を含み得る。たとえば、多粒子経口投薬形態は、適当なカプセル中に含有された瞬時放出性成分と遅延放出性成分の配合物からなり得る。
【0046】
所望するなら、多粒子は、制御放出性ポリマー物質を含有する層で被覆され得る。その代わりに、多粒子および1種またはそれ以上の補助賦形物質は、多層タブレットのようなタブレットに圧縮され得る。典型的には、多層タブレットは、同じまたは異なる放出特性を有する同じ活性成分の同じまたは異なるレベルを含有する2つの層を含み得る。その代わりに、多層タブレットは、各層において異なる活性成分を含有し得る。多層タブレットは、随意に、追加的制御放出性質をもたらすように制御放出性ポリマーで被覆され得る。
【0047】
本発明の一つの具体的態様において、速度制御性ポリマー物質は、貧溶性薬物化合物および必要とされ得るいかなる補助賦形剤をも含むタブレットに被膜として施用される。被膜は、タブレットにいかなる適当な技法によっても施用され得る。かかる技法は、当業者に明らかであろう。被膜の施用のために特に有用なものは、たとえば流動床被覆装置を用いてまたはサイドベント式コーティングパンを用いて行われる噴霧塗布の技法である。適当な補助賦形剤および/または添加剤は、被覆処方物に添加され得る。たとえば、可塑剤、滑剤、粘着防止剤、顔料および他の賦形剤を被覆処方物に添加することが望ましくあり得る。被膜は、制御放出の所望度を与えるのに十分であるいかなる量にてもタブレットに施用され得る。
【0048】
一つの具体的態様において、制御放出性組成物の製造方法は、(i)貧溶性薬物のナノ粒子分散体を随意に界面活性剤または表面安定剤の存在下で噴霧乾燥させて再分散性物質を形成させ、(ii)該再分散性物質を補助賦形剤とブレンドして配合物を形成させ、(iii)該配合物をタブレットに圧縮し、そして(iv)該タブレットを速度制御性ポリマー物質で被覆する工程を含む。
【0049】
別の具体的態様において、制御放出性組成物の製造方法は、(i)貧溶性薬物のナノ粒子分散体を随意に界面活性剤または表面安定剤の存在下で噴霧乾燥させて再分散性物質を形成させ、(ii)該再分散性物質を速度制御性ポリマー物質および随意に補助賦形剤とブレンドして配合物を形成させ、そして(iii)該配合物を圧縮してタブレットを形成させる工程を含む。この方法は、随意に、該タブレットを追加的速度制御性ポリマー物質で被覆する追加的工程を含み得る。
【0050】
1.ナノ粒子分散体の噴霧乾燥
ナノ粒子分散体の固体状投与量形態は、サイズ減少後のナノ粒子処方物を乾燥することにより製造され得る。好ましい乾燥方法は、噴霧乾燥である。噴霧乾燥過程は、薬物をナノ粒子サイズの粒子に変えるために用いられるサイズ減少過程後、ナノ粒子粉末を得るために用いられる。かかるナノ粒子粉末は、経口投与用タブレットに処方され得る。
【0051】
例示的噴霧乾燥過程において、ナノ粒子薬物懸濁液は、ぜん動ポンプを用いてアトマイザーに供給されそして微噴霧の液滴に噴霧化される。該噴霧は乾燥室中で熱空気と接触されて、該液滴からの水分の蒸発がもたらされることになる。生じた噴霧はサイクロン中に送られ、しかしてそこで粉末が分離されそして採集される。噴霧乾燥機は、回転アトマイゼーションノズルと並流配置に組み立てられ得、そしてナノ懸濁液は、ぜん動ポンプを用いて回転アトマイザーに供給され得る。
【0052】
2.タブレット化
本発明の制御放出性ナノ粒子処方物は、経口投与用タブレットの形態にあり得る。かかるタブレットの製造は、当該技術において知られた製薬用の圧縮または成形技法により得る。本発明のタブレットは、円盤形、円形、卵形、楕円形、円筒形、三角形、六角形、等のようないかなる適切な形状をも取り得る。
【0053】
タブレットは、被覆されても被覆されなくてもよい。被覆される場合、それらは、糖衣(嫌な味または臭いを覆うためにおよび酸化に対して保護するために)、皮膜被覆(同様な目的のための水溶性物質の薄い皮膜)または溶腸性被覆(胃液中での溶解に抵抗するが、しかし小腸において被膜の崩壊を可能にするために)され得る。
【0054】
当業者に知られたタブレット化技法は、たとえば、Remington's Pharmaceutical Sciencesの第18版,第89章,pp.1633〜1658(Mach Publishing Company,1990)(特定的に参照により合体される)に記載されている。最も簡単な手順において、成分(いかなる滑剤をも除いて)は、活性成分が均一に分散された処理量を有する混合物をもたらすように、一緒にブレンドされる。滑剤は次いで添加されそしてブレンドされ得、そして適切なタブレット化機械を用いてタブレットが圧縮される。
【0055】
タブレット化のために適した処方物は、たとえば、V形ブレンダー(Blend Master Lab Blender,Patterson Kelley Co.)を用いて製造される。例示的方法において、ナノ粒子組成物および1種またはそれ以上の速度制御性ポリマーはV形ブレンダーに添加されそして周期的にブレンドされ、ラクトース、ステアリン酸マグネシウムまたはPVPのような他の賦形剤の添加が後続され、そしてV形ブレンダー中での周期的ブレンディングが後続される。
【0056】
タブレット化は、たとえば、Carver Press(Carver Laboratory Equipment)を用いて成し遂げられ得る。かかる方法において、正確な量の材料がパンチ中に装填され、その後適切な圧力および時間間隔にて一緒にプレスされ、そして形成されたタブレットが取り出される。
タブレットを生じせしめる更に別の例示的方法は、湿式粒状化である。湿式粒状化は、水および/または粒状化用流体を乾燥物質(ナノ粒子組成物(薬物および表面安定剤を含む)、速度制御性ポリマーおよび添加剤)に混入することを含む。十分な粒状化後、この物質は粗目の篩を通じて篩われ、そして乾燥される。この物質は次いで細目の篩を通じて再び篩われ、そしてたとえばステアリン酸マグネシウムとブレンドされ、その後タブレット化されてタブレットが生じる。
【0057】
タブレットは、それらが妥当な硬度規定を満たすことを決定するために試験される。例示的タブレット硬度試験機は、Erweka TBH 30(Erweka Instruments,Inc.)である。
C.制御放出性ナノ粒子組成物または投薬形態の投与
本発明の更に別の観点は、薬物または他の薬剤の長期投与を必要とするところのヒトを含めて哺乳類を処置する方法を提供する。投与された制御放出性ナノ粒子組成物は、合体された薬物または他の薬剤を長期間にわたって放出して、約2から約24時間またはそれ以上の期間所望効果を奏する。
【0058】
一般に、本発明の組成物は、それを必要とする哺乳類被験者に、所望の生理学的効果を奏するのに十分であるレベルの薬物または薬剤を用いて、経口、直腸、頬または膣を通じてのようないかなる慣用の方法によっても投与されよう。哺乳類被験者は、家庭用動物または愛玩動物であり得るが、しかし好ましくはヒト被験者である。所望の生理学的結果を与えるのに必要とされる薬物または薬剤のレベルは、Goodman and GillmanおよびPhysician's Desk Referenceのような標準的教本を参照することにより、当業者により容易に決定される。
【0059】
次の例は、本発明を説明するために与えられている。しかしながら、本発明はこれらの例に記載された特定の条件または詳細に限定されるべきでない、ということが理解されるべきである。
【実施例】
【0060】
例1
この実験の目的は、ナノ粒子薬物処方物での合理的量の制御放出を実証するためであった。
【0061】
29%w/wの噴霧乾燥されたナノ粒子状ナプロキセン中間体(SDI)(93%w/wのナノ粒子状ナプロキセンおよび7%w/wの表面安定剤としてのポリビニルピロリドン(PVP)(篩#20)を含有する)、30%w/wのKlucel(登録商標)HPCポリマー(篩#40)、40%w/wのラクトース(Foremost#316Fast−fib,篩#40)および1%w/wのステアリン酸マグネシウム(Spectrum,篩#40)を次のように一緒にして、試験されるべき制御放出性ナノ粒子処方物タブレットを形成させた。
【0062】
噴霧乾燥されたナノ粒子状ナプロキセン中間体を形成するべき噴霧乾燥の前のナノ粒子状ナプロキセンの平均有効粒度は226nmであり、しかして粒子の90%は297nm未満のサイズを有していた。噴霧乾燥された粉末は、約26μmの平均粒度を有していた。ナプロキセンSDIについてのこの粒度情報は、次の例2〜10に適用され得る。
【0063】
(ナプロキセンSDI、PVP、Klucel(登録商標)(HPCポリマー)、ラクトースおよびステアリン酸マグネシウムについてこの例において与えられた給源もまた、次の例に適用され得る。)
ナプロキセンSDIおよびKlucel(登録商標)をV形ブレンダー(Blend Master Lab Blender,Patterson Kelley Co.)に添加し、そして10分間ブレンドした。次いでラクトースをブレンダーに添加し、そして10分間ブレンドした。最後に、ステアリン酸マグネシウムをブレンダーに添加し、そして3分間ブレンドした。
【0064】
この物質を、Carver Press(Carver Laboratory装置,型式#3912)を用いてタブレットに形成させた。生じたタブレットは、500mgの重量および約9ないし約12kPの硬度を有していた。
制御放出についての試験
Distek Dissolution System(Hewlett Packard Diode Array Spectrophotometer 8452AおよびHewlett Packard Flow Control装置型式89092Aと共に用いられる)を、制御放出についての試験において用いた。この器具の温度(37℃)および揺動は、それがタブレット中の薬物を溶解させようとするので身体系をシミュレートする。
【0065】
次のように調製されるpH7.4におけるリン酸塩緩衝剤を、試験媒質用に用いる。すなわち、230.0グラムの二塩基性リン酸ナトリウム無水物(J.T.Baker)および52.4グラムの一塩基性リン酸ナトリウム二水和物(J.T.Baker)を20.0リットルの脱イオン水に添加し、そして2時間2300rpmにて撹拌する。
【0066】
リン酸塩緩衝剤(900ml)およびタブレットを、Distek Systemの容器中に37℃にて入れた。タブレットを揺動して、40〜50分の範囲内でタブレットの溶解がもたらされた。かかる期間は、制御放出適用のために適合しない。
例2
この実験の目的は、ナノ粒子薬物処方物での制御放出を実証するためであった。
【0067】
形成されたタブレットの制御放出特性を改善するために、(i)タブレットの重量を500から750mgに増加させ、(ii)タブレットの硬度を9〜12から35〜37kPに増大させ、そして(iii)3%追加のPVPを3%のラクトースの代わりに結合剤として添加した。
ナプロキセンSDI(93%w/wのナノ粒子状ナプロキセンおよび7%w/wのPVPを含有する)、30%w/wのKlucel(登録商標)および3%w/wのPVP(Plasdone K−90(Povidone USP),ISP Technologies)を例1においてのように一緒にして、35〜37kPの硬度を有する750mgのタブレットを形成させた(PVPは、タブレット化に先だって、V形ブレンダー中にラクトースの添加後添加されそして追加的に5分間ブレンドされた)。タブレット中の各成分の量は、下記に与えられている(mg)。
【0068】
【表1】
【0069】
Distek Dissolution Systemでの試験後、それらの結果は、図1に示されているように、3時間の期間にわたっての薬物の定常的制御放出を実証した。
例3
この実験の目的は、ナノ粒子状薬剤の制御放出に対するタブレットの硬度の効果を決定することであった。
【0070】
3つの別個の硬度を、同時に試験した。すなわち、15kP、25kPおよび35kP。29%のナプロキセンSDI、30%のKlucel(登録商標)および3%のPVPを含むタブレットを、例1においてように作製した。タブレット処方物の各々における各成分の量は、下記に与えられている(mg)。
【0071】
【表2】
【0072】
図2に示された結果は、タブレットの硬度が増大するにつれてタブレットの制御放出特性も着実に強まることを実証している。約15kP、25kPおよび35kPの硬度を有するタブレットはナプロキセンをそれぞれ約65分、140分および240分間放出して、タブレットの硬度と投与薬剤の増強的制御放出の間の直接的相関関係を示した。
例4
この実験の目的は、2つの異なる速度制御性ポリマーの制御放出特性を比較することであった。すなわち、Klucel(登録商標)HPCおよびShinetzu(登録商標)L−HPC。
【0073】
タブレットを、20%のKlucel(登録商標)HPC(3%のPVP K−90なしで)でもっておよび20%のShinetzu(登録商標)L−HPCでもって例1においてのように作製した。タブレット処方物の各々における各成分の量は、下記に与えられている(mg)。
【0074】
【表3】
【0075】
生じたタブレットは、35kpの硬度を有していた。図3に示された結果は、ポリマーとして20%のKlucel(登録商標)を有するタブレットは3ないし4時間内で完全に放出しそしてポリマーとして20%のShinetzu(登録商標)L−HPCを有するタブレットはタブレットをわずか1時間で溶解せしめたことを実証している。
例5
この実験の目的は、速度制御性ポリマーとして用いられた異なる銘柄のMethocel(登録商標)ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)の制御放出特性を比較することであった。すなわち、(i)Methocel(登録商標)K4M、(ii)Methocel(登録商標)E4M、(iii)Methocel(登録商標)K15M、(iv)Methocel(登録商標)K100LV、(v)Methocel(登録商標)K100LVおよび(vi)Methocel(登録商標)E10M。
【0076】
タブレットを、Methocel(登録商標)HPMCの20%濃度を用いて例1においてように製造した。タブレット処方物の各々における各成分の量は、下記に与えられている(mg)。
【0077】
【表4】
【0078】
タブレットは、約35ないし約37kPの硬度を有していた。Distek Dissolutionシステムにおいて試験されたMethocel(登録商標)諸銘柄の各々は、図4に示されているように、ナノ粒子処方物に関してある程度の制御放出を発揮することが分かった。Methocel(登録商標)銘柄K4M、K15MおよびK100Mは極端量の制御放出(12時間で40〜50%)を与え、Methocel(登録商標)銘柄E4Mはわずか約3時間で溶解し、そしてMethocel(登録商標)銘柄K100LVおよびE10Mは約12ないし約14時間にわたっての放出を与えた。
例6
この例の目的は、ナノ粒子状薬剤の制御放出に対する水素化植物油(Lubritab(登録商標))の添加の効果を決定することであった。
【0079】
タブレットを、30%のKlucel(登録商標)を速度制御性ポリマーとして用いて例1においてのように製造した。3%のLubritab(登録商標)(Mendel,Penwest Company)が、これらのタブレットにおいて用いられた。タブレットは、20〜22kPの硬度を有していた。タブレット処方物の各々における各成分の量は、下記に与えられている(mg)。
【0080】
【表5】
【0081】
図5に示されているように、ナノ粒子処方物へのLubritab(登録商標)の添加は、投与薬剤の制御放出の増強を可能にし得る。0%のLubritab(登録商標)を含有する組成物は約60分にて完全に放出されたのに対して、20%のLubritab(登録商標)を含有する組成物は約175分にわたって放出された。
例7
この例の目的は、速度制御性ポリマーと混合された噴霧乾燥されたナノ粒子処方物の組成物と、速度制御性ポリマーとブレンドされた未微粉砕ナプロキセンおよび表面安定剤の粉末組成物の、制御放出性質を比較することであった。
【0082】
タブレットを、例1においてのように製造した。投与薬剤(ナプロキセン)および表面安定剤PVPの濃度は、両方の組成物について同じであった。すなわち、93%のナプロキセンおよび7%のPVP。用いられた速度制御性ポリマーは、20%の濃度におけるMethocel(登録商標)K100LVであった。タブレット処方物の各々における各成分の量は、下記に与えられている(mg)。
【0083】
【表6】
【0084】
タブレットは、30kPの硬度を有していた。図6に示されているように、速度制御性ポリマーとブレンドされた未加工薬物および表面安定剤の組成物は、速度制御性ポリマーと混合された噴霧乾燥されたナノ粒子処方物の組成物に比べて、より長期の放出を有していた。それらの結果は、速度制御性ポリマーとブレンドされた未加工薬物および安定剤の組成物の完全放出が約10時間後に起こったのに対して、速度制御性ポリマーと混合された噴霧乾燥されたナノ粒子処方物の完全放出は約13ないし約14時間後に起こることが予期された(後者の組成物の完全放出は、結果が分析された時、12時間後に起こっていなかった)、ということを指摘している。
例8
この例の目的は、ナノ粒子処方物の制御放出特性に対する速度制御性ポリマー濃度の効果を決定することであった。
【0085】
第1試験は5%のMethocel(登録商標)K100LVを含むナノ粒子処方物の制御放出特性を決定し、そして第2試験は10%のMethocel(登録商標)K100LVを含むナノ粒子処方物の制御放出特性を決定した。20%のMethocel(登録商標)K100LVを含むナノ粒子処方物の制御放出特性は、例9(図6)において得られそしてここに繰り返される。
【0086】
タブレットを例1においてのように製造し、しかしてタブレット処方物の各々における各成分の量は、下記に与えられている(mg)。
【0087】
【表7】
【0088】
図7に示された結果は、同一硬度および変動速度制御性ポリマー濃度を有するタブレットについて、最大速度制御性ポリマー濃度を有するタブレットが最も長期の薬物放出特性を有することを示している。5%ポリマー濃度を有するタブレットは約50分後に完全に放出し、10%ポリマー濃度を有するタブレットは約350分後に完全に放出し、そして20%ポリマー濃度を有するタブレットは約650分後に完全に放出した。かくして、ナノ粒子処方物における増大的ポリマー濃度は、投与薬剤の長期放出と直接的に相関づけられる。
例9
この例の目的は、ナノ粒子処方物の制御放出に対する湿式粒状化の効果を決定することであった。
【0089】
タブレットを、少量の水を各混合物中に添加して顆粒を形成させること以外は例1においてように形成させた。該顆粒は次いで粗目の篩を通じて篩われ、そして乾燥された。この物質は次いで細目の篩を通じて再び篩われ、そしてステアリン酸マグネシウムおよびラクトースとブレンドされ、その後タブレット化されてタブレットが生じせしめられた。タブレット処方物の各々における各成分の量は、下記に与えられている(mg)。
【0090】
【表8】
【0091】
図8に示された結果は、両方の速度制御性ポリマーすなわちKlucel(登録商標)HPCおよびMethocel(登録商標)HPMCについて、湿式粒状化から形成されたタブレットは通常の乾燥混合物よりもはるかに一層制御的な放出を示したことを指摘している。長期制御放出は、湿式粒状化技法により形成された顆粒の強い結合に因りそうである。この結合は、直接圧縮による物質の結合よりも強い。かくして、湿式粒状化は、制御放出を改善する。
例10
この例の目的は、グリピジドの制御放出性処方物を製造することであった。1−シクロヘキシル−3[[p−[2l(5−メチルピラジンカルボキシアミド)エチル]−フェニル]−スルホニル]−尿素としても知られているグリピジドは、経口スルホニル尿素である。
【0092】
10:3の比率におけるグリピジドおよびHPC−SLをDyno微粉砕機にて微粉砕して、ナノ粒子状グリピジド分散体を生成させた。この組成物は6時間微粉砕され、そしてグリピジドの平均有効粒度は約177nmであり、しかして粒子の約50%は約157nm未満のサイズを有しそして粒子の約90%は約276nm未満のサイズを有していた。
【0093】
このナノ粒子状グリピジド懸濁液を次の条件下でYamato GB−22(登録商標)噴霧乾燥機を用いて噴霧乾燥して、噴霧乾燥されたグリピジド中間体(SDI)を生成させた。すなわち、
入口温度: 115℃
出口温度: 50℃
乾燥用空気: 0.36m3/min
噴霧用空気: 2.5Kgf/cm2
タブレット用の粉末配合物は、750.0mgの総量について13mgのSDI、241.6mgのMethocel(登録商標)(K100LV)、483.3mgのラクトース(Foremost #316)および12.1mgのステアリン酸マグネシウムを含んでいた。各750.0mgタブレットは、10mgの薬物(グリピジド)を含有していた。
【0094】
賦形剤を篩い、ブレンドし、そしてCarverプレス機を用いて5,000lbにて10秒間圧縮した。これらのタブレットを、上記に記載されたような溶解システムを用いて分析した(274nmにて)。
図9に示された結果は、16時間にちょっと足りない(すなわち、約950分)の期間にわたっての薬物の定常的放出を指摘している。
【0095】
例11〜15において、別段記載されていなければ百分率はすべて重量による。用語「精製水」は、水濾過装置に通された水を指す。
例11
この例の目的は、ナノ粒子状ニフェジピンを含有する未被覆制御放出性タブレット処方物を製造することであった。
【0096】
水中のニフェジピンのコロイド分散体を製造した。この分散体は、10%(w/w)の薬物および2%のヒドロキシプロピルセルロースを含有していた。150mlのセル通過流量を用いる湿式法により記録されるMalvern Mastersizer S2.14(Malvern Instruments Ltd.,英国ウースターシャー州モールバーン)を用いて遂行された粒度分析により、次の粒度特性が明らかにされた。すなわち、Dv,90620nm、Dv,50313nm、Dv,10170nmであり、しかしてコロイド粒子の97.47%は直径1.03μm未満であった。(ここで、Dv,90620nmは粒子の90%が620nm未満のサイズを有していたことを指摘する、等)
ニフェジピン分散体は、噴霧乾燥のために一連の4つの均質化工程により製造された。分散体を、中剪断にて5分間均質化した。ナトリウムラウリルサルフェート(0.05%)を、更に5分間の中剪断における均質化に先だって添加した。この分散体を次いで精製水で50:50にて希釈し、そして更に10分間中剪断にて均質化した。最後に、マンニット(10%)を添加し、そしてこの混合物を15分間高剪断にて均質化した。噴霧乾燥されるべき混合物の最終含有物は、第1表に与えられている。
【0097】
【表9】
【0098】
かくして得られた混合物を、Buechi Mini B−191 Spray Drier装置(Buechi,スイス国)を用いて噴霧乾燥した。噴霧乾燥条件は、第2表に要約されている。かくして製造された噴霧乾燥されたニフェジピン粒子を次いでブレンドした。ブレンド処方物は、第3表に与えられている。
【0099】
【表10】
【0100】
前の工程後に得られた配合物を、11mm円形標準凹形工具を備えたFette E1タブレットプレス機(Wilheim Fette GmbH,独国シュワルツェムベック)を用いて、手動にてタブレット化した。生成されたタブレットは、122.7Nの平均タブレット硬度および29.7mg/タブレットの平均タブレット力価を有していた。試験管内溶解を、USP装置II(100rpm)を用いて、0.5%ナトリウムラウリルサルフェートを含有するpH6.8のリン酸塩−クエン酸塩緩衝剤中で行った。溶解データは、第4表に与えられている。
【0101】
【表11】
【0102】
【表12】
【0103】
例12
この例の目的は、ナノ粒子状ニフェジピンを含有する被覆された制御放出性タブレット処方物を製造することであった。
例11に従って製造されたタブレットを、第5表に詳述されたEudragit(登録商標)L被覆溶液で被覆した。被覆はManesty Accelacota 10"装置(Manesty Machine Ltd.,英国リバプール)を用いて遂行され、そして5.5%固形分重量増加の被覆レベルが達成された。被覆条件は、第6表に与えられている。
【0104】
【表13】
【0105】
【表14】
【0106】
試験管内溶解を、例1において用いられたのと同じ方法論に従って行った。すなわち、USP装置II(100rpm)を用いて、0.5%ナトリウムラウリルサルフェートを含有するpH6.8のリン酸塩−クエン酸塩緩衝剤。溶解データは、第7表に与えられている。
【0107】
【表15】
【0108】
図10は、(1)例12に記載されているような本発明による制御放出性被膜で被覆されたニフェジピン含有制御放出性マトリックスタブレットおよび(2)対照組成物についての、9人の絶食されたヒト志願者における平均生体内血漿プロフィールを示す。この調査は、完全に無作為化されかつ完全に交差された一回分投与量投与設計を有していた。該図から、例12に従って製造された制御放出性組成物は高レベルの利用能を示しおよび24時間の期間にわたっての良好な制御放出特性を示す、ということが分かり得る。
例13
この実施例の目的は、ナノ粒子のグリピジドを含有するコーティングしていない対照用の徐放性の錠剤調合物を調製することであった。
【0109】
グリピジドのコロイド状水分散物を調製した。分散物は薬物10%(w/w)およびヒドロキシプロピルセルロース3%を含有した。Malvern Mastersizer S2.14を用いて行なった粒径分析は細胞を通過する流れ150mlを用いてウェット法により記録され、粒径特性Dv,90650nm、Dv,50386nm、Dv,10290nmが明らかにされた。
【0110】
噴霧乾燥用のグリピジドの分散物は、水性のグリピジド分散物にマンニトール15%を撹拌しながら添加することにより調製した。噴霧乾燥される混合物の最終含量を表8に示す。
【0111】
【表16】
【0112】
こうして得られた混合物をBuchi Mini B−191噴霧乾燥システムを用いて噴霧乾燥した。噴霧乾燥条件を表9にまとめた。
【0113】
【表17】
【0114】
次に、こうして調製した噴霧乾燥したグリピジド粒子がブレンドされた。ブレンドの処方を表10に示した。
【0115】
【表18】
【0116】
前のステップの後に得られたブレンドを、9.5mmの円形の標準的な凹面金型を装着した一段式錠剤プレスを用いて錠剤にした。製造された錠剤は、平均錠剤硬さが149N、平均錠剤力価が9.1mg/錠であった。インビトロの溶解は、USP装置I(100rpm)を用いてKH2PO4緩衝液、pH7.5中で行なった。溶解データを表11に示す。
【0117】
【表19】
【0118】
例14
この実施例の目的は、遅効放出性のナノ粒子ニフェジピンカプセルを調製することであった。
ニフェジピンのコロイド状水分散物を調製した。分散物はニフェジピン10%(w/w)、ヒドロキシプロピルセルロース2%、および水に溶かしたラウリル硫酸ナトリウム0.1%を含有した。Malvern Mastersizer S2.14を用いて行なった粒径分析は細胞を通過する流れ150mlを用いてウェット法により記録され、粒径特性Dv,90=490nm、Dv,50=290nm、Dv,10=170nmが明らかにされた。
【0119】
噴霧乾燥用のニフェジピンの分散物は、精製した水を添加し、5分間ホモジナイズすることにより調製された。マンニトールを添加し、得られた混合物を15分間ホモジナイズした。噴霧乾燥される混合物の最終含量を表12に示す。
【0120】
【表20】
【0121】
こうして得られた混合物を、Buchi Mini B−191噴霧乾燥システムを用いて噴霧乾燥した。噴霧乾燥条件は表13にまとめた。
【0122】
【表21】
【0123】
次に、こうして調製した噴霧乾燥したニフェジピン粒子がブレンドされた。ブレンドの処方を表14に示した。
【0124】
【表22】
【0125】
得られたブレンドを、3.8mmのシャドウ凹面マルチチップ金型を装着したFette P2100ロータリー式錠剤プレス(Wilhelm Fette GmbH,Schwarzenbek,Germany)を用いて錠剤にした。錠剤は、平均設定硬さが56N、平均設定重量が34.46mgである。
こうして得られた錠剤を、Hi−Coater(Vector Corp.,Marion,IA,USA)中で表15に詳述したEudragit Sコーティング液によりコーティングした。固形物重量増10.03%のコーティングレベルを得た。
【0126】
【表23】
【0127】
こうして得られたコーティングされた小型の錠剤を硬いゼラチンカプセルに手で詰めてニフェジピン10mgのカプセル(1カプセル当たり小型錠剤9個)を形成した。インビトロの溶解は、USP装置II(100rpm)を用いてラウリル硫酸ナトリウム0.5%を含有するクエン酸−リン酸緩衝液、pH6.8中で行なった。得られたカプセルの溶解データを表16に示す。
【0128】
【表24】
【0129】
例15
この実施例の目的は、遅効放出性のナノ粒子ニフェジピンカプセルの対照を調製することであった。
ニフェジピン原料(Dv,90=673μm)、Explotab、およびAvicel pH102をGral25(NV−Machines Colett SA,Wommelgam,Belgium)中で1000rpmで10分間混合した。造粒が達成されるまで混合しながら精製水を少しずつ添加した。粒状物は50℃で18時間オーブン乾燥した。乾燥した粒状物を、Fitzmill M5A(The Fitzpatrick Co.Europe,Sint−Niklaas,Belgium)を用いて50メッシュのスクリーンを通して粉砕した。粒状物の最終含量を表17にまとめた。
【0130】
【表25】
【0131】
次に、こうして得られた粒状物(Dv,90=186μm)をブレンドした。ブレンドの処方を表18に示す。
【0132】
【表26】
【0133】
出発ニフェジピン原料および粉砕ニフェジピン粒状物の粒径分析を、1000mmレンズ(ニフェジピン原料)および300mmレンズ(粉砕ニフェジピン粒状物)を備えたMalvern Mastersizer Sを用いて行なって乾燥粉末法により記録し、表19に示した粒径特性が明らかにされた。
【0134】
【表27】
【0135】
得られたブレンドを、3.8mmのシャドウ凹面マルチチップ金型を装着したFette P2100ロータリー式錠剤プレスを用いて錠剤にした。錠剤は、平均設定硬さが47N、平均設定重量が35mgであった。
こうして得られた錠剤を、Hi−Coater中で表20に詳述したEudragit Sコーティング液によりコーティングした。固形物重量増10.34%のコーティングレベルを得た。
【0136】
【表28】
【0137】
こうして得られたコーティングされた小型の錠剤を硬いゼラチンカプセルに手で詰めてニフェジピン10mgのカプセル(1カプセル当たり小型錠剤9個)を形成した。インビトロの溶解は、USP装置II(100rpm)を用いてラウリル硫酸ナトリウム0.5%を含有するクエン酸−リン酸緩衝液、pH6.8中で行なった。得られたカプセルの溶解データを表21に示す。
【0138】
【表29】
【0139】
例16
図11は、(1)実施例14に記載した本発明に従って製造された徐放性組成物(ニフェジピンの10mgカプセル(Dv,90約500nm))、および(2)実施例15の記載に従って製造された対照組成物(ニフェジピンの10mgカプセル(Dv,90=186nm))に対する10人の絶食したヒト志願者中のニフェジピンの平均のインビボ血漿プロファイルを示す。調査は、ただ1回の服用による完全にランダム化し、完全に交差させた経口投与が計画された。図から、本発明に従って製造された徐放性組成物は、初期の誘導時間に続く急速かつ高レベルの活性利用度を示すことが分かる。
【0140】
本発明に従って製造された徐放性組成物は、相対生体利用度1.45(すなわち、対照と比較して生体利用度が45%向上した)を示したことに留意されたい。
例17
この実験の目的は、直接圧縮したナノ粒子ナプロキセン錠剤の制御された放出に及ぼすポリマーCarbopol(登録商標)およびEudragit(登録商標)の効果を判定することであった。Carbopol(登録商標)は、BF Goodrich,Cleveland,OHから入手できる架橋したポリアクリル酸エステル材料であり、Eudragit(登録商標)はRohm Pharma,Darmstadt,Germanyから入手できるメタクリル−アクリルコポリマーである。
【0141】
4種類の特定のポリマータイプおよびグレード、すなわちCarbopol(登録商標)グレード971P NF、Carbopol(登録商標)グレード974P NF、Eudragit(登録商標)グレードRS PO、およびEudragit(登録商標)グレードRL POについて試験した。使用する前に各ポリマーは#40メッシュを通してふるい分けした。
【0142】
錠剤はまず、噴霧乾燥した薬物の中間体(SDI)、Carbopol(登録商標)またはEudragit(登録商標)ポリマー、および下記に列挙した賦形剤を#40メッシュを通してふるい分けることのより調製された。
(1)ナプロキセン93%およびポリビニルピロリドン7%を含むSDI、
(2)賦形剤としてラクトース(NFラクトースの一水和物、Fast−Flo,Foremost Farms U.S.A.)、および
(3)賦形剤としてステアリン酸マグネシウム(Spectrum)。
【0143】
溶解用の錠剤を調製するために材料ブレンドを調合した。初めにSDIおよび各賦形剤をふるい分けした後、各々適正な量をV−ブレンダ(Blend Master Lab Blender,Patterson Kelley Co.)に加えた。ブレンドした後、調合物を自動化されたCarver Press(Carver,Inc.,Wabash Indiana)を使用して750mgの錠剤にプレスした。
【0144】
Distek Dissolution System中で、それぞれ個々の処方に対して特定のパラメーターで3個の錠剤を同時に試験した。Distek Dissolution Systemは、37℃に加熱した水槽ならびに37℃に加熱したリン酸緩衝液を入れる容器で構成される。緩衝液900mlを3ないし6個の別の容器に挿入し、同時に3ないし6個錠剤を試験した。撹拌棒を50rpmで回転する各容器中に配置した。錠剤が溶解するにしたがって、小型ポンプが緩衝液および薬物を容器から抜き取り、放出された薬物の量を決定するため分析された。
【0145】
図12〜14は、さまざまなレベルの硬さおよび濃度における各ポリマーの放出プロファイルを示す。図12は、Carbopol(登録商標)971P NFポリマー30%を含有する錠剤の制御された放出のプロファイルを示す。この試験における錠剤は40.6kPと31.1kPの両方で圧縮した。図12に示すように、この条件下では12時間の間わずかな薬物しか放出が可能でなかった。薬物ナプロキセンの約14〜15%が放出された。この速度で全錠剤が完全に溶解するには85から90時間を必要とすることになる。硬さの差(40.6および31.1kP)は、30%の高いポリマー濃度では差をほとんど示さないか、または顕著でなかった。
【0146】
図12はまた、Carbopol(登録商標)971P NF10%を含有する錠剤の結果を示す。この錠剤の硬さは30.0kPであった。22%の薬物全量が12時間にわたって放出された。これはCarbopol(登録商標)30%を含む錠剤と比べてCarbopol(登録商標)10%を含む錠剤の薬物放出速度の増加が穏やかなことを示す。Carbopol(登録商標)の濃度にかかわらずCarbopol(登録商標)ポリマーを含む錠剤は、錠剤の硬さの増加とともにより高レベルの制御された放出を示す。
【0147】
図13は、比較的低い硬さを有する濃度5%におけるCarbopol(登録商標)971P NFおよびCarbopol(登録商標)974P NFの比較(それぞれ12.4および11.9kP)を示す。Carbopol(登録商標)974P NFは、Carbopol(登録商標)971P NFの約3倍の薬物の放出をもたらした。これらの特殊な条件下でCarbopol(登録商標)971P NFは、12時間のうちにほとんどゼロのオーダーまで100%放出を可能にした。
【0148】
図14は、制御された放出に及ぼすポリマーEudragit(登録商標)のグレードRS POおよびRL POの効果を示す。このポリマーは実際に、より速やかな放出傾向を示した。低い硬さ(10.9kP)で濃度5%でEudragit(登録商標)RS POポリマーは、錠剤をわずか1時間のうちに溶解させた。これらグレードを濃度30%、硬さ22から27kPの間で試験した。これら条件下でEudragit(登録商標)RL POは、Eudragit(登録商標)RS POより速く作用し、3時間の時間枠の間に全ナプロキセンを放出した。一方、これら条件下でEudragit(登録商標)RS POは、6から7時間のうちに100%の放出を可能にした。
【0149】
Carbopol(登録商標)971P NFおよびCarbopol(登録商標)974P NFは最高レベルの制御された放出を可能にした。高い濃度および高い硬さでこのポリマーは、数日間(約90時間)にわたって全ナプロキセンを放出した。しかしながら、低い濃度および低い硬さでグレード971P NFは、13〜14時間にわたってほぼゼロの放出プロファイルを可能にした。Eudragit(登録商標)RS POおよびEudragit(登録商標)RL POは、Carbopol(登録商標)グレードと比較して異なるプロファイルをもたらした。Eudragit(登録商標)ポリマーは、低い硬さおよび濃度では薬物のより速やかな放出(1〜2時間)、高い硬さおよび濃度ではやや遅い放出(6〜7時間)を可能にした。最適の制御された放出プロファイルは、低い硬さおよび濃度のCarbopol(登録商標)ポリマーおよび高い硬さおよび濃度のEudragit(登録商標)ポリマーで見出された。
【0150】
本発明の方法および組成物においては本発明の精神と範囲を逸脱することなくさまざまな修正および変更を行なうことができることは当業技術者には明らかなはずである。したがって、もしそれらが添付の特許請求の範囲および同義語の範囲内にあるならば、本発明は本発明の修正および変更を対象として含むことを意味する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)有効平均粒径が約1000nm未満の投与することができる溶解しにくい作用薬、
(b)上記作用薬の表面と会合している少なくとも1種類の表面安定剤、および
(c)医薬として許容される少なくとも1種類の速度制御ポリマー、
を含む徐放性のナノ粒子組成物であって、前記組成物が約2から約24時間またはそれ以上の範囲の期間、上記作用薬の制御された放出を提供する、前記組成物。
【請求項2】
前記作用薬の有効平均粒径が約800nm未満、約600nm未満、約400nm未満、約300nm未満、約250nm未満、約100nm未満、および約50nm未満からなる群から選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記ポリマーの濃度が約5から約95%(w/w)である、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記ポリマーの濃度が約10から約65%(w/w)である、請求項3記載の組成物。
【請求項5】
約0.1から約10%(w/w)の量のバインダー剤をさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
約0.1から約10%(w/w)の量の潤滑剤をさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
前記潤滑剤がステアリン酸マグネシウム、水素添加植物性油、およびステアリン酸からなる群から選択される、請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
固形の服用調合物を湿式造粒法により製造する、請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
湿式造粒法により形成される請求項1に記載の組成物であって、前記徐放性調合物の固形服用物を形成する前に前記作用薬、表面安定剤、およびポリマーに水を加えて顆粒を形成する、組成物。
【請求項10】
前記速度制御ポリマーがアラビアゴム、寒天、グアーガム、穀物ゴム、デキストラン、カゼイン、ペクチン、カラゲーニン、ワックス、セラック、水素添加植物性油、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、カルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC)、ポリ(エチレン)オキシド、アルキルセルロース、エチルセルロース、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、親水性のセルロース誘導体、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン、酢酸セルロース、酢酸酪酸セルロース、酢酸フタル酸セルロース、酢酸トリメリト酸セルロース、ポリ酢酸フタル酸ビニル、フタル酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース、酢酸コハク酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリアセタールジエチルアミノ酢酸ビニル、ポリ(メタクリル酸アルキル)、ポリ(酢酸ビニル)、アクリル酸またはメタクリル酸とこれらそれぞれのエステルから誘導されたポリマー、およびアクリル酸またはメタクリル酸とこれらそれぞれのエステルから誘導されたコポリマーからなる群から選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項11】
前記速度制御ポリマーがHPMCである、請求項10に記載の組成物。
【請求項12】
前記速度制御ポリマーがアクリル酸またはメタクリル酸とこれらそれぞれのエステルから誘導されたポリマー、あるいはアクリル酸またはメタクリル酸とこれらそれぞれのエステルから誘導されたコポリマーである、請求項10に記載の組成物。
【請求項13】
前記の水に溶けにくい作用薬が約1μgから約800mgの量で存在している、請求項1に記載の組成物。
【請求項14】
請求項1に記載の徐放性のナノ粒子組成物を含む剤形であって、前記剤形が錠剤の形態または多粒子の形態である、剤形。
【請求項15】
速度制御ポリマーでコーティングする前に前記作用薬および少なくとも1種類の補助賦形剤を錠剤の形態に圧縮する、請求項14に記載の剤形。
【請求項16】
前記作用薬、速度制御ポリマー、および少なくとも1種類の補助賦形剤を圧縮して徐放性母剤の錠剤を形成する、請求項14に記載の剤形。
【請求項17】
徐放性母剤を速度制御ポリマーでコーティングする、請求項16に記載の剤形。
【請求項18】
速度制御ポリマーでコーティングする前に、前記作用薬および少なくとも1種類の補助賦形剤を多層錠の形態に圧縮する、請求項14に記載の剤形。
【請求項19】
前記作用薬を速度制御ポリマー材中に分散し、多層錠の形態に圧縮する、請求項14に記載の剤形。
【請求項20】
多層錠を速度制御ポリマーでコーティングする、請求項19に記載の剤形。
【請求項21】
前記作用薬、少なくとも1種類の補助賦形剤、および速度制御ポリマー材を多粒子の形態に組み合わせる、請求項14に記載の剤形。
【請求項22】
前記多粒子の形態が、ばらばらの粒子、ペレット、小型の錠剤、またはその組み合わせである、請求項21に記載の剤形。
【請求項23】
前記多粒子を硬質または軟質ゼラチンのカプセル中に封入する、請求項21に記載の剤形。
【請求項24】
前記多粒子を小さな袋に組み込む、請求項21に記載の剤形。
【請求項25】
前記ばらばらの粒子またはペレットを錠剤の形態に圧縮する、請求項22に記載の剤形。
【請求項26】
錠剤の形態を速度制御ポリマー材でコーティングする、請求項25に記載の剤形。
【請求項27】
前記ばらばらの粒子またはペレットを多層錠の形態に圧縮する、請求項22に記載の剤形。
【請求項28】
前記多層錠の形態を速度制御ポリマー材でコーティングする、請求項27に記載の剤形。
【請求項29】
さらに錠剤が、混和物および半透膜を形成するように徐放性組成物に加えられた浸透剤(osmagent)を含み、前記半透膜が混和物を取り囲み、水性媒体に対しては透過性であるが溶解性に劣る薬物の化合物または薬剤として許容されるその塩に対しては不透過性であり、かつ前記半透膜がその中でオリフィスを画定する、請求項14に記載の剤形。
【請求項30】
(a)投与することができる作用薬のナノ粒子組成物、および前記作用薬の表面と結合した少なくとも1種類の表面安定剤を組み合わせるステップであって、前記組成物が約1000nm未満の有効平均粒径および少なくとも1種類の適切な速度制御ポリマーを有する、ステップと、
(b)ステップ(a)の混合物から固形の服用物を形成するステップであって、前記固形の服用調合物が投与後に約2から約24時間またはそれ以上の範囲の期間、薬品の制御された放出を有する、ステップ、
を含む固形の服用用の徐放性のナノ粒子調合物の調製方法。
【請求項31】
前記作用薬粒子の有効平均粒径が約800nm未満、約600nm未満、約400nm未満、約300nm未満、約250nm未満、約100nm未満、および約50nm未満からなる群から選択される、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記ポリマーの濃度が約5から約95%(w/w)である、請求項30に記載の方法。
【請求項33】
前記ポリマーの濃度が約10から約65%(w/w)である、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
ステップ(b)の前に、ナノ粒子作用薬、表面安定剤、および速度制御ポリマーに水を加えて顆粒を形成することを含む、請求項31に記載の方法。
【請求項35】
(a)前記調合物が投与されるナノ粒子作用薬の粒子およびナノ粒子作用薬の表面と結合した少なくとも1種類の表面安定剤を含む調合物であって、前記作用薬粒子が約1000nm未満の有効平均粒径および少なくとも1種類の適切な速度制御ポリマーを有し、かつ
(b)前記調合物が投与後に約2から約24時間またはそれ以上の範囲の期間、作用薬の制御された放出を有する、
有効量の固形の服用用の徐放性のナノ粒子調合物を哺乳類に投与することを含む哺乳類の治療方法。
【請求項1】
(a)有効平均粒径が約1000nm未満の投与することができる溶解しにくい作用薬、
(b)上記作用薬の表面と会合している少なくとも1種類の表面安定剤、および
(c)医薬として許容される少なくとも1種類の速度制御ポリマー、
を含む徐放性のナノ粒子組成物であって、前記組成物が約2から約24時間またはそれ以上の範囲の期間、上記作用薬の制御された放出を提供する、前記組成物。
【請求項2】
前記作用薬の有効平均粒径が約800nm未満、約600nm未満、約400nm未満、約300nm未満、約250nm未満、約100nm未満、および約50nm未満からなる群から選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記ポリマーの濃度が約5から約95%(w/w)である、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記ポリマーの濃度が約10から約65%(w/w)である、請求項3記載の組成物。
【請求項5】
約0.1から約10%(w/w)の量のバインダー剤をさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
約0.1から約10%(w/w)の量の潤滑剤をさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
前記潤滑剤がステアリン酸マグネシウム、水素添加植物性油、およびステアリン酸からなる群から選択される、請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
固形の服用調合物を湿式造粒法により製造する、請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
湿式造粒法により形成される請求項1に記載の組成物であって、前記徐放性調合物の固形服用物を形成する前に前記作用薬、表面安定剤、およびポリマーに水を加えて顆粒を形成する、組成物。
【請求項10】
前記速度制御ポリマーがアラビアゴム、寒天、グアーガム、穀物ゴム、デキストラン、カゼイン、ペクチン、カラゲーニン、ワックス、セラック、水素添加植物性油、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、カルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC)、ポリ(エチレン)オキシド、アルキルセルロース、エチルセルロース、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、親水性のセルロース誘導体、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン、酢酸セルロース、酢酸酪酸セルロース、酢酸フタル酸セルロース、酢酸トリメリト酸セルロース、ポリ酢酸フタル酸ビニル、フタル酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース、酢酸コハク酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリアセタールジエチルアミノ酢酸ビニル、ポリ(メタクリル酸アルキル)、ポリ(酢酸ビニル)、アクリル酸またはメタクリル酸とこれらそれぞれのエステルから誘導されたポリマー、およびアクリル酸またはメタクリル酸とこれらそれぞれのエステルから誘導されたコポリマーからなる群から選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項11】
前記速度制御ポリマーがHPMCである、請求項10に記載の組成物。
【請求項12】
前記速度制御ポリマーがアクリル酸またはメタクリル酸とこれらそれぞれのエステルから誘導されたポリマー、あるいはアクリル酸またはメタクリル酸とこれらそれぞれのエステルから誘導されたコポリマーである、請求項10に記載の組成物。
【請求項13】
前記の水に溶けにくい作用薬が約1μgから約800mgの量で存在している、請求項1に記載の組成物。
【請求項14】
請求項1に記載の徐放性のナノ粒子組成物を含む剤形であって、前記剤形が錠剤の形態または多粒子の形態である、剤形。
【請求項15】
速度制御ポリマーでコーティングする前に前記作用薬および少なくとも1種類の補助賦形剤を錠剤の形態に圧縮する、請求項14に記載の剤形。
【請求項16】
前記作用薬、速度制御ポリマー、および少なくとも1種類の補助賦形剤を圧縮して徐放性母剤の錠剤を形成する、請求項14に記載の剤形。
【請求項17】
徐放性母剤を速度制御ポリマーでコーティングする、請求項16に記載の剤形。
【請求項18】
速度制御ポリマーでコーティングする前に、前記作用薬および少なくとも1種類の補助賦形剤を多層錠の形態に圧縮する、請求項14に記載の剤形。
【請求項19】
前記作用薬を速度制御ポリマー材中に分散し、多層錠の形態に圧縮する、請求項14に記載の剤形。
【請求項20】
多層錠を速度制御ポリマーでコーティングする、請求項19に記載の剤形。
【請求項21】
前記作用薬、少なくとも1種類の補助賦形剤、および速度制御ポリマー材を多粒子の形態に組み合わせる、請求項14に記載の剤形。
【請求項22】
前記多粒子の形態が、ばらばらの粒子、ペレット、小型の錠剤、またはその組み合わせである、請求項21に記載の剤形。
【請求項23】
前記多粒子を硬質または軟質ゼラチンのカプセル中に封入する、請求項21に記載の剤形。
【請求項24】
前記多粒子を小さな袋に組み込む、請求項21に記載の剤形。
【請求項25】
前記ばらばらの粒子またはペレットを錠剤の形態に圧縮する、請求項22に記載の剤形。
【請求項26】
錠剤の形態を速度制御ポリマー材でコーティングする、請求項25に記載の剤形。
【請求項27】
前記ばらばらの粒子またはペレットを多層錠の形態に圧縮する、請求項22に記載の剤形。
【請求項28】
前記多層錠の形態を速度制御ポリマー材でコーティングする、請求項27に記載の剤形。
【請求項29】
さらに錠剤が、混和物および半透膜を形成するように徐放性組成物に加えられた浸透剤(osmagent)を含み、前記半透膜が混和物を取り囲み、水性媒体に対しては透過性であるが溶解性に劣る薬物の化合物または薬剤として許容されるその塩に対しては不透過性であり、かつ前記半透膜がその中でオリフィスを画定する、請求項14に記載の剤形。
【請求項30】
(a)投与することができる作用薬のナノ粒子組成物、および前記作用薬の表面と結合した少なくとも1種類の表面安定剤を組み合わせるステップであって、前記組成物が約1000nm未満の有効平均粒径および少なくとも1種類の適切な速度制御ポリマーを有する、ステップと、
(b)ステップ(a)の混合物から固形の服用物を形成するステップであって、前記固形の服用調合物が投与後に約2から約24時間またはそれ以上の範囲の期間、薬品の制御された放出を有する、ステップ、
を含む固形の服用用の徐放性のナノ粒子調合物の調製方法。
【請求項31】
前記作用薬粒子の有効平均粒径が約800nm未満、約600nm未満、約400nm未満、約300nm未満、約250nm未満、約100nm未満、および約50nm未満からなる群から選択される、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記ポリマーの濃度が約5から約95%(w/w)である、請求項30に記載の方法。
【請求項33】
前記ポリマーの濃度が約10から約65%(w/w)である、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
ステップ(b)の前に、ナノ粒子作用薬、表面安定剤、および速度制御ポリマーに水を加えて顆粒を形成することを含む、請求項31に記載の方法。
【請求項35】
(a)前記調合物が投与されるナノ粒子作用薬の粒子およびナノ粒子作用薬の表面と結合した少なくとも1種類の表面安定剤を含む調合物であって、前記作用薬粒子が約1000nm未満の有効平均粒径および少なくとも1種類の適切な速度制御ポリマーを有し、かつ
(b)前記調合物が投与後に約2から約24時間またはそれ以上の範囲の期間、作用薬の制御された放出を有する、
有効量の固形の服用用の徐放性のナノ粒子調合物を哺乳類に投与することを含む哺乳類の治療方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
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【図8】
【図9】
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【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2013−100359(P2013−100359A)
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2013−32704(P2013−32704)
【出願日】平成25年2月22日(2013.2.22)
【分割の表示】特願2008−227248(P2008−227248)の分割
【原出願日】平成11年10月1日(1999.10.1)
【出願人】(500370883)エラン ファーマ インターナショナル,リミティド (45)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願日】平成25年2月22日(2013.2.22)
【分割の表示】特願2008−227248(P2008−227248)の分割
【原出願日】平成11年10月1日(1999.10.1)
【出願人】(500370883)エラン ファーマ インターナショナル,リミティド (45)
【Fターム(参考)】
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