説明

徐放性フェロモン製剤

【課題】フェロモンを、環境の温度変化に影響されることなく、長期間にわたり徐放させることができるフェロモン製剤を提供すること。
【解決手段】フェロモン、高沸点有機溶剤、ポリエチレングリコールおよび担体を含有する徐放性フェロモン製剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フェロモンの徐放性を制御することができる農業用害虫防除剤として有用な徐放性フェロモン製剤に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、農作物の害虫の特定の繁殖期に防除することができる害虫駆除法の一つとして、昆虫フェロモンを利用した害虫防除法がある。本明細書において、フェロモンとは、昆虫が様々な交信の手段として体外に放出する化学物質のことである。昆虫フェロモンは、非常に少ない量で効果を示し、同種類間の害虫にしか効果を示さず、炭素、水素および酸素からなる比較的単純な化合物であり、自然界で容易に水と炭酸ガスに分解するので、安全性が高いなどの特徴を有する。この昆虫フェロモンを利用した害虫防除法として、通常、トラップに昆虫フェロモン剤を仕込んで誘引された害虫を捕殺する方法や、作物の栽培場所にフェロモン剤を含有するプラスチック容器を設置して昆虫フェロモンを漂わせることにより昆虫の交信を錯乱させ、交尾を阻害する方法などが挙げられる。
【0003】
このような方法に用いられるフェロモン剤は、その成分が一定量以上、一定期間にわたり放出されることが重要である。現在、報告されているフェロモン剤は、種々の支持体を利用したもので、支持体としては、例えば、結晶性鉱物(特許文献1)、マイクロカプセル(特許文献2)、プラスチックディスペンサー(特許文献3、特許文献4、特許文献5、特許文献6)などが挙げられる。しかしながら、結晶性鉱物は、通常その製造過程で高温による焼成が必要であり、コスト高となるという欠点がある。マイクロカプセルは、コスト高であることに加え、自然環境での生分解性が遅く環境への負荷が大きく、また、プラスチックディスペンサーは、取り付けに労力を必要とし、しかも自然環境での生分解性が極めて遅いために使用後に回収する必要があるなどの欠点がある。
【0004】
【特許文献1】特開2005−97142号公報
【特許文献2】特開2006−273773号公報
【特許文献3】特開平8−32247号公報
【特許文献4】特開平10−017407号公報
【特許文献5】特開平11−225646号公報
【特許文献6】特開2001−120146号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、有害生物またはその生息地域に施用した場合、フェロモンの放出が環境の温度変化に影響されることなく、長期間にわたり徐々に放出することができる徐放性フェロモン製剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記の目的を達成すべく鋭意検討を重ねた結果、今回、フェロモンを、高沸点有機溶剤、ポリエチレングリコールおよび担体とともに製剤化すると、フェロモンの放出性が改善され、環境の温度変化に影響されることなく、長期間にわたり徐放性を示すフェロモン製剤が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
かくして、本発明は、(a)フェロモン、(b)高沸点有機溶剤、(c)ポリエチレングリコールおよび(d)担体を含有することを特徴とする徐放性フェロモン製剤を提供するものである。
【0008】
以下、本願発明の徐放性フェロモン製剤について、更に詳細に説明する。
【発明の実施の形態】
【0009】
フェロモン(a)
本発明の製剤において使用することができるフェロモン(a)としては、昆虫由来の天然フェロモンまたはそのフェロモンと同じ分子構造を有する合成フェロモンであれば特に制限はなく、例えば、アセテート系化合物、アルデヒド系化合物、アルコール系化合物、その他の化合物などの昆虫フェロモン成分が包含される。
【0010】
アセテート系化合物としては、例えば、テトラデシルアセテート、10−メチルドデシルアセテート、11−ドデセニルアセテート、メチルフェニルアセテート、フェニルエチルプロピネート、(Z)−5−デセニルアセテート、(Z)−7−デセニルアセテート、(Z)−8−ドデセニルアセテート、(E)−8−ドデセニルアセテート、(Z)−9−デセニルアセテート、(Z)−9−ヘキサデセニルアセテート、(Z)−9−テトラデセニルアセテート、(Z)−10−テトラデセニルアセテート、(Z)−11−ヘキサデセニルアセテート、(Z)−11−テトラデセニルアセテート、(E)−11−ヘキサデセニルアセテート、(Z)−11−オクタデセニルアセテート、(E)−11−テトラデセニルアセテート、(E)−12−テトラデセニルアセテート、(Z,E)−9,12−テトラデカジエニルアセテート、(Z,E)−9,11−テトラデカジエニルアセテート、(Z,Z)−3,13−オクタデカジエニルアセテート、(E,Z)−3,13−オクタデカジエニルアセテート、(E,Z)−4,10−オクタデカジエニルアセテートなどが挙げられる。
【0011】
アルデヒド系化合物としては、例えば、ヘキサデカナール、(Z)−9−ヘキサデセナール、(Z)−11―ヘキサデセナール、(E)−11−ヘキサデセナール、(Z)−13−オクタデセナール、(Z,Z,Z)−9,12,15−オクタデカトリエナールなどが挙げられる。
【0012】
アルコール系化合物としては、例えば、(Z)−8−ドデセン−1−オール、(Z)−9−テトラデセン−1−オール、(Z)−11―ヘキサデセン−1−オール、2,6−ジメチルオクタン―1−オール、(Z,E)−9,12−テトラデカジエン−1−オールなどが挙げられる。
【0013】
その他の化合物としては、例えば、(Z)−13−イコセン−10−オン、(R,Z)−(−)−5−(1−デセニル)オキサシクロペンタン−2−オン、シス−7−テトラデセン−2−オン、トランス−7−テトラデセン−2−オン、4,6−ジメチル−7−ヒドロキシノナン−3−オン、2,3−ジヒドロ−2,3,5−トリメチル−6−(1−メチル−2−ブテニル)−4H−4−オン、(3Z,6Z,9S,10R)−9,10−エポキシ−1,3,6−ヘニコサトリエン、14−メチル−1−オクタデセン、(Z)−3−ドデセニル(E)−2−ブテノアート、2,6−ジメチルオクチルホルメートなどが挙げられる。
【0014】
これらのフェロモンはそれぞれ単独でまたは2種以上組み合わせて用いることができる。
【0015】
本発明の徐放性フェロモン製剤におけるフェロモン(a)の含有量は、特に制限されないが、効果、経済性などの観点から、徐放性フェロモン製剤の重量を基準にして、一般に0.1〜50重量%、好ましくは1〜30重量%の範囲内とすることができる。
【0016】
高沸点有機溶剤(b)
本発明の製剤において使用することができる高沸点有機溶剤(b)としては、例えば、200℃以上、好ましくは210〜320℃の沸点を有する、鉱物油、植物油、動物油、シリコン油、芳香族類、脂肪酸類、グリコールエーテル類、ナフタレン類などが挙げられ、好ましくは200℃以上、特に210〜300℃の沸点を有する、植物油、例えば、コーン油、オリーブ油、大豆油、エポキシ化大豆油、ナタネ油、紅花油などが挙げられる。これらの高沸点有機溶剤はそれぞれ単独でまたは2種以上組み合わせて用いることもできる。
【0017】
本発明の徐放性フェロモン製剤における高沸点有機溶剤の含有量は、特に制限されないが、徐放性フェロモン製剤の重量を基準にして、一般に1〜20重量%、好ましくは1〜10重量%の範囲内とすることができる。
【0018】
ポリエチレングリコール(c)
本発明の製剤において使用することができるポリエチレングリコール(c)としては、一般に630以下の分子量を有するポリエチレングリコール、例えば、PEG600、PEG400、PEG300、PEG200などが挙げられ、特に100〜420の範囲内の分子量を有するポリエチレングリコール、例えば、PEG400、PEG300、PEG200などが好適である。これらのポリエチレングリコールはそれぞれ単独でまたは2種以上組み合わせて用いることができる。
【0019】
本発明の徐放性フェロモン製剤におけるポリエチレングリコール(c)の含有量は、特に制限されないが、徐放性フェロモン製剤の重量を基準にして、一般に1〜20重量%、好ましくは1〜8重量%の範囲内とすることができる。
【0020】
担体(d)
本発明の製剤において使用することができる担体(d)としては、無機質担体および有機質担体のいずれであってもよく、無機質担体としては、例えば、クレー、ベントナイト、タルク、炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、ジークライト、セリサイト、ホワイトカーボン、酸性白土、珪石、ゼオライト、珪藻土、軽石、塩化カリウム、尿素、硫酸アンモニウム、硫酸ナトリウム、パーライト、硫酸マグネシウム、アタパルジャイトなどが挙げられ、また、有機質担体としては、例えば、木粉、コルク、グルコース、マルトース、シュークロース、ラクトースなどを挙げることができる。これらの担体はそれぞれ単独でまたは2種以上組み合わせて用いることもできる。
【0021】
本発明の徐放性フェロモン製剤におけるこれらの担体の含有量は、特に制限されないが、徐放性フェロモン製剤の重量を基準にして、通常0.1〜99重量%、好ましくは50〜99重量%の範囲内とすることができる。
【0022】
その他の添加剤
本発明における徐放性フェロモン製剤には、以上に述べた成分以外に、任意成分として、例えば、本発明の製剤を造粒する際の造粒性を向上させる目的でおよび/またはフェロモン成分を製剤中で安定に保つなどの目的で、必要に応じて、界面活性剤、粘結剤、補助剤などを含有せしめることができる。
【0023】
上記界面活性剤としては、例えば、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、ナフタレンスルホン酸塩ホルマリン縮合物、ジアルキルスルホサクシネート、リグニンスルホン酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩、ポリスチレンスルホン酸塩、アルキルエーテルサルフェート塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルサルフェート塩、脂肪酸塩、イソブチレン−マレイン酸共重合体塩、スチレン−マレイン酸共重合体塩
、ポリアクリル酸塩などの陰イオン界面活性剤;シリコーン系界面活性剤;ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンスチリルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエステル、ポリオキシエチレンアルキルアミンなどの非イオン界面活性剤;アルキルアミン塩、テトラアルキルアンモニウム塩、トリアルキルベンジルアンモニウム塩、ジアルキルスルホサクシネートなどの陽イオン界面活性剤が挙げられ、必要に応じて、両性界面活性剤などを使用することもできる。
【0024】
上記粘結剤としては、例えば、還元澱粉糖化物、デキストリン、セルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルデンプン、プルラン、アルギン酸アンモニウム、アルギン酸プロピレングリコールエステル、グァーガム、ローカストビーンガム、キサンタンガム、ポリビニルアルコール、ポリエチレンオキサイド、ポリエチレングリコール、エチレン・プロピレンブロックポリマー、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリビニルピロリドン、ビニルアルコール−アルキルビニルエーテル共重合物などが挙げられる。
【0025】
上記補助剤としては、例えば、トリフェニルホスファイト、フェニルジイソデシルホスファイト、サイクリックネオペンタンテトライルビスなどの酸化防止剤;サリチル酸フェニル、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾールなどの紫外線吸収剤;クエン酸、リン酸、炭酸マグネシウムなどのpH調整剤などが挙げられる。
【0026】
上記任意成分は、それぞれ単独でまたは2種以上組み合わせて使用することができ、本発明の製剤におけるそれらの配合量は、特に制限されないが、徐放性フェロモン製剤の重量を基準にして、合計で、通常0.1〜50重量%、好ましくは0.5〜30重量%とすることができる。
【0027】
本発明の徐放性フェロモン製剤は、フェロモン(a)、高沸点有機溶剤(b)、ポリエチレングリコール(c)および担体(d)をそれ自体既知の方法で緊密に混合することにより調製することができ、例えば、農薬の製剤化において通常用いられる造粒法、混合法などにより調製することができる。
【0028】
上記造粒法としては、例えば、押し出し造粒法、転動造粒法、転動流動造粒法、流動層造粒法、圧縮造粒法、攪拌混合造粒法、被覆造粒法、打錠法などを挙げることができるが、一般には、押し出し造粒法が好ましく、造粒は、具体的には、例えば、次のようにして行うことができる。担体(d)および前述した任意成分(界面活性剤、粘結剤および補助剤の少なくとも1種)を混合し、得られる混合物を加水混練し、押し出し造粒機にて造粒する。造粒時の押し出し穴径(スクリーン径)は通常0.3〜5mm、好ましくは0.5〜2mmの範囲内である。得られる粒は、マルメライザーなどで整粒し、乾燥、篩い分け後、フェロモン(a)、高沸点有機溶剤(b)およびポリエチレングリコール(c)と混合する。
【0029】
また、上記混合法は、例えば、フェロモン(a)、高沸点有機溶剤(b)、ポリエチレングリコール(c)および担体(d)ならびに前述した任意成分(界面活性剤、粘結剤および補助剤の少なくとも1種)を混合機で同時に混合することにより行うことができる。
【0030】
かくして調製される本発明の徐放性フェロモン製剤は、本製剤が防除の対象とする有害生物またはその生息地域、例えば、農地、牧草地、山地、ゴルフ場などに施用することができる。本製剤の施用は、例えば、土壌表面に直接散布することができ、或いは網または
缶などに入れて木の枝または棒などにくくりつけ、所定の場所に設置することができる。なお、土壌表面に直接散布した場合には本製剤は風化されるので回収する必要がない。
【0031】
本発明の徐放性フェロモン製剤は、環境の温度変化に影響されることがなく、有効成分としてのフェロモンを均一に放出し、しかもその放出速度が抑制される。したがって、本発明の徐放性フェロモン製剤は、長期にわたりフェロモンを効率的に放出し、害虫の交信を錯乱させることができ、安全な害虫防除剤として極めて有用である。
【実施例】
【0032】
以下、実施例および比較例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例および比較例のみに制限されるものではない。
【0033】
実施例1
軽石(カガライトK−1、ネオライト興産社製)89.5重量%を撹拌混合機に秤り込み、撹拌しながら、フェロモン混合溶液((Z)−8−ドデセニルアセテート44.8%、(Z)−11−テトラデセニルアセテート26.1%および(Z)−13−イコセン−10−オン29.1%)2.5重量%、コーン油5.0重量%およびポリエチレングリコール(PEG400、三洋化成社製)3.0重量%の混合溶解液を加えて吸収させ、徐放性フェロモン製剤(実施例−1)を得る。
【0034】
実施例2
軽石(カガライトK−1、ネオライト興産社製)89.5重量%を撹拌混合機に秤り込み、撹拌しながら、フェロモン混合溶液((Z)−8−ドデセニルアセテート44.8%、(Z)−11−テトラデセニルアセテート26.1%および(Z)−13−イコセン−10−オン29.1%)2.5重量%、コーン油5.0重量%およびポリエチレングリコール(PEG200、三洋化成社製)3.0重量%の混合溶解液を加えて吸収させ、徐放性フェロモン製剤(実施例−2)を得る。
【0035】
実施例3
軽石(カガライトK−1、ネオライト興産社製)89.5重量%を撹拌混合機に秤り込み、撹拌しながら、フェロモン混合溶液((Z)−8−ドデセニルアセテート44.8%、(Z)−11−テトラデセニルアセテート26.1%および(Z)−13−イコセン−10−オン29.1%)2.5重量%、エポキシ化大豆油(ニューカルゲン800、竹本油脂社製)5.0重量%およびポリエチレングリコール(PEG400、三洋化成社製)3.0重量%の混合溶解液を加えて吸収させ、徐放性フェロモン製剤(実施例−3)を得る。
【0036】
実施例4
軽石(カガライトK−1、ネオライト興産社製)89.5重量%を撹拌混合機に秤り込み、撹拌しながら、フェロモン混合溶液((Z)−8−ドデセニルアセテート44.8%、(Z)−11−テトラデセニルアセテート26.1%および(Z)−13−イコセン−10−オン29.1%)2.5重量%、オリーブ油5.0重量%およびポリエチレングリコール(PEG400、三洋化成社製)3.0重量%の混合溶解液を加えて吸収させ、徐放性フェロモン製剤(実施例−4)を得る。
【0037】
実施例5
軽石(カガライトK−1、ネオライト興産社製)89.5重量%を撹拌混合機に秤り込み、撹拌しながら、フェロモン混合溶液((Z)−8−ドデセニルアセテート44.8%、(Z)−11−テトラデセニルアセテート26.1%および(Z)−13−イコセン−10−オン29.1%)2.5重量%、シリコン油5.0重量%(KF−7312、信越
化学社製)およびポリエチレングリコール(PEG400、三洋化成社製)3.0重量%の混合溶解液を加えて吸収させ、徐放性フェロモン製剤(実施例−5)を得る。
【0038】
実施例6
ホワイトカーボン(カープレックスXR、デグサ ジャパン社製)3.0重量%、アルキルベンゼンスルホン酸塩0.3重量%、ビニルアルコール−アルキルビニルエーテル共重合物2.0重量%、カルボキシメチルセルロース1.0重量%、ベントナイト30.0重量%および炭酸カルシウム63.7重量%を混合容器に秤り込み、万能混合機で5分間混合し、この混合物100重量%に対して水27.5重量%を添加した後、更に5分間混練する。この混練物を1.2mm径のスクリーンを付けたドームグラン型造粒機(ダルトン社製)で造粒し、整粒後の粒を乾燥し、得られた粒を篩い分け(1.68〜0.21mm)して粒核を得る。その粒核89.5重量%を撹拌混合機に秤り込み、撹拌しながら、フェロモン混合溶液((Z)−8−ドデセニルアセテート44.8%、(Z)−11−テトラデセニルアセテート26.1%および(Z)−13−イコセン−10−オン29.1%)2.5重量%、コーン油5.0重量%およびポリエチレングリコール(PEG400、三洋化成社製)3.0重量%の混合溶解液を加えて吸収させ、徐放性フェロモン製剤(実施例−6)を得る。
【0039】
実施例7
木粉15.0重量%、ジアルキルスルホサクシネート1.0重量%、ビニルアルコール−アルキルビニルエーテル共重合物2.0重量%、カルボキシメチルセルロース1.0重量%、ベントナイト30.0重量%および炭酸カルシウム51.0重量%を混合容器に秤り込み、万能混合機で5分間混合し、この混合物100重量%に対して水35.3重量%を添加した後、更に5分間混練する。この混練物を1.2mm径のスクリーンを付けたドームグラン型造粒機(ダルトン社製)で造粒し、整粒後の粒を乾燥し、得られた粒を篩い分け(1.68〜0.21mm)して粒核を得る。その粒核89.5重量%を撹拌混合機に秤り込み、撹拌しながら、フェロモン混合溶液((Z)−8−ドデセニルアセテート44.8%、(Z)−11−テトラデセニルアセテート26.1%および(Z)−13−イコセン−10−オン29.1%)2.5重量%、エポキシ化大豆油(ニューカルゲン800、竹本油脂社製)5.0重量%およびポリエチレングリコール(PEG400、三洋化成社製)3.0重量%の混合溶解液を加えて吸収させ、徐放性フェロモン製剤(実施例−7)を得る。
【0040】
比較例1
軽石(カガライトK−1、ネオライト興産社製)97.5重量%を撹拌混合機に秤り込み、撹拌しながら、フェロモン混合溶液((Z)−8−ドデセニルアセテート44.8%、(Z)−11−テトラデセニルアセテート26.1%および(Z)−13−イコセン−10−オン29.1%)2.5重量%を加えて吸収させ、徐放性フェロモン製剤(比較例−1)を得る。
【0041】
比較例2
ホワイトカーボン(カープレックスXR、デグサ ジャパン社製)3.0重量%、アルキルベンゼンスルホン酸塩0.3重量%、ビニルアルコール−アルキルビニルエーテル共重合物2.0重量%、カルボキシメチルセルロース1.0重量%、ベントナイト30.0重量%および炭酸カルシウム63.7重量%を混合容器に秤り込み、万能混合機で5分間混合し、この混合物100重量%に対して水27.5重量%を添加した後、更に5分間混練する。この混練物を1.2mm径のスクリーンを付けたドームグラン型造粒機(ダルトン社製)で造粒し、整粒後の粒を乾燥し、得られた粒を篩い分け(1.68〜0.21mm)して粒核を得る。その粒核97.5重量%を撹拌混合機に秤り込み、撹拌しながら、フェロモン混合溶液((Z)−8−ドデセニルアセテート44.8%、(Z)−11−テ
トラデセニルアセテート26.1%および(Z)−13−イコセン−10−オン29.1%)2.5重量%を加えて吸収させ、徐放性フェロモン製剤(比較例−2)を得る。
【0042】
比較例3
木粉15.0重量%、ジアルキルスルホサクシネート1.0重量%、ビニルアルコール−アルキルビニルエーテル共重合物2.0重量%、カルボキシメチルセルロース1.0重量%、ベントナイト30.0重量%および炭酸カルシウム51.0重量%を混合容器に秤り込み、万能混合機で5分間混合し、この混合物100重量%に対して水32.4重量%を添加した後、更に5分間混練する。この混練物を1.2mm径のスクリーンを付けたドームグラン型造粒機(ダルトン社製)で造粒し、整粒後の粒を乾燥し、得られた粒を篩い分け(1.68〜0.21mm)して粒核を得る。その粒核97.5重量%を撹拌混合機に秤り込み、撹拌しながら、フェロモン混合溶液((Z)−8−ドデセニルアセテート44.8%、(Z)−11−テトラデセニルアセテート26.1%および(Z)−13−イコセン−10−オン29.1%)2.5重量%を加えて吸収させ、徐放性フェロモン製剤(比較例−3)を得る。
【0043】
比較例4
市販フェロモン混合製剤((Z)−8−ドデセニルアセテート44.8%、(Z)−11−テトラデセニルアセテート26.1%および(Z)−13−イコセン−10−オン29.1%)(コンフューザーN、信越化学株式会社製)をそのまま使用した。
【0044】
次に、実施例1〜7で調製した徐放性フェロモン製剤ならびに比較例1〜3で調製したフェロモン製剤および比較例4のフェロモン製剤を以下の試験例に記載の方法で評価した。
【0045】
試験例1(徐放性試験1)
実施例1〜7および比較例1〜3の徐放性フェロモン製剤各10gを15cmのガラスシャーレに均一に広げ、20℃、30℃および40℃の恒温機器に設置した。設置6日後、12日後、19日後および28日後に徐放性フェロモン製剤のサンプリングを行った。各サンプルはガスクロマトグラフィーを用いて定量し、その値からフェロモン残存率(%)を算出した。その結果を下記表1〜3に示す。
【0046】
【表1】

【0047】
【表2】

【0048】
【表3】

【0049】
上記表1〜3によれば、フェロモン(a)、高沸点有機溶剤(b)、ポリエチレングリコール(c)および担体(d)を含有する実施例1〜7の徐放性フェロモン製剤は、高沸点有機溶剤(b)および(b)ポリエチレングリコール(b)を含有していない比較例1〜3の製剤に比べ、広範囲な温度で長期にわたる徐放性が認められた。
【0050】
試験例2(徐放性試験2)
容量250mlプラスチックボトルに直径5mmの穴を30箇所均一にあけ、さらに粒が落ちない程度の目の細かい網をプラスチックボトルの底に置いた。実施例2の徐放性フェロモン製剤100gをプラスチックボトル内の網の上に置き、ナシ園の地上1.5mのナシの木に設置した。比較例4の製剤はそのまま地上1.5mのナシの木に設置した。実施例2の徐放性フェロモン製剤は、設置15日後、30日後、60日後、90日後および
110日後に、比較例4の製剤は、設置30日後、60日後および90日後に回収して、以下に示すフェロモン成分A、BおよびCをガスクロマトグラフィーで分析した。試験は3反復で実施した。なお、実施例2の徐放性フェロモン製剤および比較例4の製剤は予め冷凍保存しておき、各フェロモン成分の100%含有対照として用いた。その結果を図1〜3に示す。
A:(Z)−8−ドデセニルアセテート
B:(Z)−11−テトラデセニルアセテート
C:(Z)−13−イコセン−10−オン
【0051】
図1〜3の結果によれば、実施例2の徐放性フェロモン製剤中のフェロモン成分A、BおよびCは、ナシ園に設置した後110日までそれぞれの残存量が暫時減少しており、本発明の製剤中から各フェロモン成分が一定の割合で徐々に放出していることが確認される。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】実施例2の徐放性フェロモン製剤および比較例4の製剤中のフェロモン成分Aの残存率を示すグラフである。
【図2】実施例2の徐放性フェロモン製剤および比較例4の製剤中のフェロモン成分Bの残存率を示すグラフである。
【図3】実施例2の徐放性フェロモン製剤および比較例4の製剤中のフェロモン成分Cの残存率を示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)フェロモン、(b)高沸点有機溶剤、(c)ポリエチレングリコールおよび(d)担体を含有することを特徴とする徐放性フェロモン製剤。
【請求項2】
高沸点有機溶剤(b)が200℃以上の沸点を有する、鉱物油、植物油、動物油、シリコン油、芳香族類、脂肪酸類、グリコールエーテル類およびナフタレン類より選ばれる少なくとも1種である請求項1に記載の徐放性フェロモン製剤。
【請求項3】
高沸点有機溶剤(b)が200℃以上の沸点を有する植物油より選ばれる少なくとも1種である請求項1に記載の徐放性フェロモン製剤。
【請求項4】
ポリエチレングリコール(c)が630以下の分子量を有するポリエチレングリコールより選ばれる少なくとも1種である請求項1に記載の徐放性フェロモン製剤。
【請求項5】
ポリエチレングリコール(c)が100〜420の分子量を有するポリエチレングリコールより選ばれる少なくとも1種である請求項1に記載の徐放性フェロモン製剤。
【請求項6】
有害生物またはその生息地域に施用される請求項1〜5のいずれかに記載の徐放性フェロモン製剤。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−114131(P2009−114131A)
【公開日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−289436(P2007−289436)
【出願日】平成19年11月7日(2007.11.7)
【出願人】(000234890)協友アグリ株式会社 (19)
【Fターム(参考)】