説明

徐放性医薬投与のための被覆粒子

【課題】非経口投与の後の徐放性の活性医薬成分のための被覆微粒子、および該被覆微粒子を生成する方法が提供される。
【解決手段】被覆微粒子は、活性医薬成分のコア粒子、およびコア粒子上に第一の重合体被覆剤を包含する。第一の重合体被覆剤は、活性医薬成分に対して透過性があり、被覆微粒子内に飽和溶液を形成し、そして擬ゼロ徐放期間を生じる。第二の重合体被覆剤を、機械的支持を加えるため、あるいは速度制御要素として使用することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薬理学の分野に、そして特に、活性医薬成分の非経口投与のための徐放性粒子に関する。本発明は、活性医薬成分を含むこのような粒子を製剤する方法にも関する。
【背景技術】
【0002】
関連技術の説明
ある状況においては、医薬剤が、しばしば、長時間にわたり、ほぼ一定または擬ゼロ次の放出速度を達成するために、そして先の投与方法に関連した問題を減らすために、徐放性処方で投与されることが望ましい。制限なしの例として、このような問題は、生体利用効率の乏しさ、初回通過代謝、治療に対する服薬不履行または順守不良、および違法な用途の薬剤錠剤を押収する機会を減少させることが挙げられる。例えば、徐放送出に対する大型薬剤粒子を含めた医薬製剤の生成および使用としては、所定の抗生物質、インシュリン、およびステロイド(例えば、非特許文献1、非特許文献2)についての技術で記述された。
【0003】
ほとんどの徐放系は、処方の出発点として、活性医薬成分の微細に破砕または微小化された製剤を使用する。体への活性医薬成分の放出は、その後、マトリックス、膜または他の不活性成分またはデバイスを使用して制御される。徐放性処方についての技術で知られる方法およびデバイスの例としては、リポソーム、生物破壊性マトリックス(例えば、PLA/PGLAマトリックス)、薬剤透過性移植片(例えば、特許文献1)、薬剤透過性および薬剤不透過性膜を有する移植片(例えば、特許文献2)、および浸透性薬剤送出系(例えば、特許文献3)が挙げられる。
【0004】
ペニシリンGおよびVは、ペニシリン分子を、プロカインと、またはベンザシンと複合化させることによって、徐放注射として処方された。ベンザシンおよびプロカインペニシリンの結晶の懸濁液は、リューマチ熱および他の感染の治療で有用でありうる。典型的には、これらの抗生物質の治療レベルは、単回IM注射の後、14−28日間、徐放されうる(非特許文献3、非特許文献4、特許文献4、特許文献5)。これらの処方は、およそ2週間かけてゆっくりと溶解する不溶性ペニシリン塩の大型粒子に基づく。しかし、これらの徐放性処方からの送出は、一次数であるので、治療期間の終わりに達成される薬剤濃度は、治療の開始に達成されるものより明らかに少ない。
【0005】
数週間続く、薬剤リスペリドンについての徐放性注射用処方を達成するためにマトリックス技術を使用して、努力もしてきた。さらに、ペルフェナジンとハロペリドールのデカン酸エステルを含めた他の抗精神薬についての徐放性製剤もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Ansel,AllenおよびPopovich編、Pharmaceutical Dosage Forms and Drug Delivery Systems、7巻、リピンコット・ウイリアムズ・アンド・ウィルキンズ、ペンシルベニア州フィラデルフィア、1999年。
【非特許文献2】Gennaro編、Remington:The Science and Practice of Pharmacy、19版、リピンコット・ウイリアムズ・アンド・ウィルキンズ、ペンシルベニア州フィラデルフィア、1995年。
【非特許文献3】Cadornigaら、(1991年)Eur.J.Drug Metab.Pharmacokinet.3巻:379−84頁。
【非特許文献4】Kaplanら(1989年)、J.Pediatr.115(1)巻:146−50頁。
【特許文献1】Zaffaroniに対する米国特許番号第3,993,073号
【特許文献2】Smithらに対する米国特許番号第5,378,475号
【特許文献3】Higuchiに対する米国特許番号第4,439,196号
【特許文献4】米国特許番号第2,627,491号
【特許文献5】米国特許番号第2,515,898号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、活性医薬成分の非経口で投与可能な徐放性処方についての改善法の当業界での必要性が残っている。
【0008】
本発明は、部分的に、非経口投与の後に、延長または徐放期間じゅう活性医薬成分の放出を可能にする被覆微粒子の開発による。明らかに、本発明の被覆微粒子は、徐放期間じゅう、ほぼ一定または擬のゼロ次反応速度を含めた改善された反応速度を示す徐放を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
1つの態様では、本発明は、活性医薬成分、および第一の重合体形成溶液から形成される第一の重合体被覆剤を含む複数の被覆微粒子を含む非経口投与後の活性医薬成分の徐放のための医薬製剤を提供する。活性医薬成分は、投与後に、被覆微粒子中に飽和溶液を形成し、そして第一の重合体被覆剤は、微粒子内に含まれる活性医薬成分の濃度が、不飽和になるまで、微粒子の投与から徐放期間の間じゅう活性医薬成分に透過性がある。
【0010】
別の態様では、本発明は、さらに、第一の重合体被覆剤の上に第二の重合体被覆剤を含み、その第二の重合体被覆剤が、第二の重合体形成溶液から形成され、そして徐放期間中、活性医薬成分に透過性がある被覆微粒子を提供する。
【0011】
別の態様では、本発明は、さらに、第一の重合体被覆剤の上に多孔性の第二の重合体被覆剤を含み、その第二の重合体被覆剤が、第二の重合体形成溶液から形成され、第二の重合体被覆剤が、第一の重合体被覆剤の孔部分と、外部環境との間の流動体伝達を可能にする孔領域の境界を明確にさせ、それにより孔領域で第一の重合体被覆剤に渡る活性医薬成分の拡散を可能にし、そして第二の重合体被覆剤が、第一の高分子被覆剤の非孔部分と、外部環境との間の流動体伝達を防止する非孔領域の境界を明確にさせ、それにより非孔領域での第一の重合体被覆剤に渡る活性医薬成分の拡散を阻害するものである被覆微粒子を提供する。ある種の実施態様では、第二の重合体被覆剤は、上記非孔領域中の活性医薬成分に実質的に非透過性である。さらに、ある種の実施態様では、第二の重合体形成溶液は、溶解して、第二の重合体被覆剤の形成の後の孔領域を生じる孔形成剤を包含する。
【0012】
別の態様では、本発明は、本発明の被覆微粒子の医薬製剤を非経口で投与することによって、活性医薬成分の徐放投与の方法を提供する。ある種の実施態様では、医薬製剤は、医薬上許容しうる担体中の被覆微粒子の懸濁液の形態にある。ある種の実施態様では、非経口投与は、皮下、静脈内、筋肉内または眼内注射である。
【0013】
別の態様では、本発明は、非経口投与の後の活性医薬成分の徐放のための医薬製剤を生成する方法を提供する。この態様では、方法は、活性医薬成分を含むコア粒子を形成すること、および第一の重合体形成溶液から、コア粒子上に第一の重合体被覆剤を形成することを包含し、活性医薬成分が、投与の後に被覆微粒子内に飽和溶液を形成し、そしてその第一の重合体被覆剤は、微粒子内に含まれる活性医薬成分の濃度が、不飽和になるまで、微粒子の投与から徐放期間じゅう活性医薬成分に透過性があるものである。
【0014】
別の態様では、その方法は、さらに、第二の重合体形成溶液から第一の被覆剤上に第二の重合体被覆剤を形成する段階を包含し、第二の重合体被覆剤が、徐放期間じゅう活性医薬成分に透過性があるものである。
【0015】
別の態様では、その方法は、さらに、第二の重合体形成溶液から、第一の重合体被覆剤上に多孔性の第二の重合体被覆剤を形成する段階を包含し、第二の重合体被覆剤が、第一の重合体被覆剤の孔部分と、外部環境との間の流動体伝達を可能にする孔領域の境界を明確にさせ、それにより孔領域中の第一の重合体被覆剤に渡る活性医薬成分の拡散を可能にし、そして第二の重合体被覆剤が、第一の重合体被覆剤の非孔部分と、外部環境との間の流動体伝達を防止する非孔領域の境界を明確にさせ、それにより、非孔領域中の第一の重合体被覆剤に渡る活性医薬成分の拡散を阻害するものである。ある種の実施態様では、第二の重合体被覆剤は、非孔領域中の活性医薬成分に実質的に不透過である。さらに、ある種の実施態様では、第二の重合体形成溶液は、第二の重合体被覆剤の形成の後、溶解させて、孔領域を生じる孔形成剤を包含する。
【0016】
ある種の実施態様では、第一の重合体被覆剤に渡る活性医薬成分の拡散は、徐放期間じゅう擬ゼロ次反応速度を示す。
【0017】
ある種の実施態様では、第一の重合体被覆剤は、徐放期間の後に実質的に分解される。さらに、ある種の実施態様では、第一の重合体被覆剤は、徐放期間じゅう構造上完全な状態を維持する。
【0018】
ある種の実施態様では、微粒子は、20μmと800μmの間、40μmと400μmの間、または100μmと250μmの間の最大寸法を示す。
【0019】
ある種の実施態様では、活性医薬成分は、第一の重合体形成溶液中に実質的に不溶性である。ある種の実施態様では、活性医薬成分は、疎水性であり、そして第一の重合体形成溶液は、親水性である。他の実施態様では、活性医薬成分は、親水性であり、そして第一の重合体形成溶液は、疎水性である。
【0020】
ある種の実施態様では、第一の重合体被覆剤および/または第二の重合体被覆剤としては、リン酸糖、アルキルセルロース(例えばエチルセルロース)、およびヒドロキシアルキルセルロース(例えばヒドロキシプロピルセルロース)のような炭化水素を含めた天然に生じる重合体;および1つまたは複数の以下のモノマー:乳酸、グリコール酸、β−プロピオンラクトン、β−ブチロラクトン、γ−ブチロラクトン、ピバロラクトン、α−ヒドロキシ酪酸、α−ヒドロキシエチル酪酸、α−ヒドロキシイソ吉草酸、α−ヒドロキシ−β−メチル吉草酸、α−ヒドロキシカプロン酸、α−ヒドロキシイソカプロン酸、α−ヒドロキシヘプタン酸、α−ヒドロキシオクタン酸、α−ヒドロキシデカン酸、α−ヒドロキシミリスチン酸、α−ヒドロキシステアリン酸、α−ヒドロキシリグノセリン酸、β−フェノール乳酸およびポリビニルアルコールを含めた合成重合体または共重合体より構成される群から選択される材料が挙げられる。
【0021】
ある種の実施態様では、第一の重合体被覆剤は、空気懸濁技術により、コア粒子に塗布される。他の実施態様では、第一の重合体被覆剤は、浸漬被覆技術によってコア粒子に塗布される。
【0022】
ある種の実施態様では、重合体被覆剤の重量は、コア粒子の重量の0.1重量%と200重量%の間である。他の実施態様では、重合体被覆剤の重量は、コア粒子の重量の2重量%と60重量%の間である。
【0023】
ある種の実施態様では、重合体被覆剤の体積は、コア粒子の体積の0.1%と200%の間である。他の実施態様では、重合体被覆剤の体積は、コア粒子の体積の2%と60%である。
【0024】
本発明のこれらおよび他の実施態様および利点は、本発明の以下の詳細な説明、および所定の実施態様および実施例から当業者に明らかである。
【0025】
以下の図面は、本発明の実施態様を示し、そして請求項により包含されるとおり本発明の範囲を限定することを意味しない。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】徐放期間じゅうの本発明の被覆微粒子からの活性医薬成分の放出に関するデータを表す。
【発明を実施するための形態】
【0027】
ここに引用される特許、科学的および医療出版物は、本発明がなされた時点で、当業者に利用可能である知識を樹立する。ここに引用される発行米国特許、公開および係属中の特許出願、および他の文献の全ての開示は、参照してここに組込まれる。
【0028】
下に特に定義されない限り、ここに使用される全ての技術的および科学的用語は、当業者により一般に理解されるのと同じ意味を示すことが意図される。ここに使用される技術に対する文献は、当業者に明らかであろう技術または同等または最近開発された技術の代替物における変形を含めて、当業界で一般に理解されるとおりの技術に該当することが意図される。さらに、本発明である主題をより明確にそして簡便に記述するために、以下の定義は、明細書および付随の請求項で使用される所定の用語のために提供される。
【0029】
微粒子。ここで使用される場合、用語「微粒子」は、1mmより低い平均寸法を示す粒子を意味する。本発明の微粒子は、ある種の実施態様で実質的に球状であるが、微粒子は、限定なしに、楕円形、円筒形、多面体および不規則形状を含めて、本発明の原理と矛盾しないあらゆる固形幾何学的形状であり得る。
【0030】
活性医薬成分。ここで使用される場合、用語「活性医薬成分」は、製薬または薬剤として利用性を有するあらゆる化合物を意味し、そして限定なしに、天然に生じる化合物(例えばホルモン)および合成薬剤が挙げられる。
【0031】
コア粒子。ここで使用される場合、用語「コア粒子」は、本発明の活性医薬成分を包含し、そして第一の重合体被覆剤によって実質的に囲まれるか、または包まれる粒子を意味する。コア粒子は、さらに、限定なしに、結合剤、緩衝剤、抗酸化剤、賦形剤、および追加の活性医薬成分を含めた他の化合物を包含しうる。コア粒子は、単独の大型結晶、複数の結晶、不定形または非晶質材料、ガラス質またはガラス様材料、または上の混合物でありうる。
【0032】
徐放。ここで使用される場合、用語「徐放」は、期間じゅう貯蔵器または源からの化合物の継続的放出を意味する。
【0033】
非経口投与。ここで使用される場合、用語「非経口投与」は、栄養管あるいは消化管以外の経路による体内への医薬製剤の導入を意味し、そして限定なしに、皮下、静脈内、筋肉内および眼内注射、並びに外科的移植が挙げられる。
【0034】
重合体被覆剤。ここで使用される場合、用語「重合体被覆剤」は、線状または分岐あるいは架橋された巨大分子を形成する1つまたはそれ以上のモノマーを重合させることにより形成されるあらゆる被覆剤を意味する。その被覆剤は、コーティング、層、膜、シェル、カプセル等として種々に特徴づけられ得て、そして本発明のコア粒子を実質的に囲むか、または包まなければならない。
【0035】
重合体形成溶液。ここで使用される場合、用語「重合体形成溶液」は、1つまたはそれ以上のモノマーを含み、そして重合体被覆剤を形成することができる溶液を意味する。重合体形成溶液は、都合により、重合が、溶媒の除去後に起こるように重合を防止する1つまたはそれ以上の溶媒を含みうる。さらに、または代わりに、重合体形成溶液は、都合により、重合が溶媒の除去、加熱、または光にさらすこと、あるいは他の照射の後に起こるように触媒または架橋剤を含みうる。重合体形成溶液は、都合により孔形成剤も含みうる。
【0036】
透過性。ここで使用される場合、用語「透過性」は、流動体の流れによるのでなく、拡散により分子の通過を可能にすることを意味する。
【0037】
半透過性。ここで使用される場合、用語「半透過性」は、ある種の分子に対しては透過性であるが、他のものに対してはそうでないことを意味する。ここで使用される場合、半透過性重合体被覆剤は、本発明の被覆微粒子内の少なくとも水および活性医薬成分に透過性である。
【0038】
生物適合性。ここで使用される場合、用語「生物適合性」は、生きている組織、特にヒトまたは他の哺乳類組織と接触させた場合に、毒性、損傷性または免疫学上の応答を引き起こさないことによって特徴づけられることを意味する。
【0039】
生物分解性。ここで使用される場合、用語「生物分解性」は、生きている組織、特にヒトまたは他の哺乳類組織で部分的に、または完全に溶解または分解する能力のあることを意味する。生物分解性化合物は、限定なしに、加水分解、触媒および酵素的作用を含めたあらゆる機構によって分解されうる。
【0040】
実質的に分解された。重合体被覆剤に関してここで使用される場合、用語「実質的に分解された」は、重合体被覆剤を形成するために重合体形成溶液の重合から生じる化学的結合のおよそ50%が、破壊される程度まで分解されることを意味する。
【0041】
構造上完全な状態。本発明の第一の重合体被覆剤に関してここで使用される場合、用語「構造上完全な状態」は、半透過性であり、そして拡散を可能にするが、しかし流動体が流れるのを可能にするなんらの不連続性を包含しない連続的表面を保持することを意味する。
【0042】
外部環境。ここで使用される場合、用語「外部環境」は、非経口投与の後の本発明の被覆微粒子を囲む組織の局所領域または領域を意味する。
【0043】
飽和。ここで使用される場合、用語「飽和」は、所定の温度で溶解されうる最大濃度の溶質(例えば、活性医薬成分)を含有することを意味する。
【0044】
実質的に不溶性。ここで使用される場合、用語「実質的に不溶性」は、1000重量部の溶媒当たり1部未満の溶質の溶解性を示すことを意味する。
【0045】
疎水性。ここで使用される場合、用語「疎水性」は、有機溶媒より水性溶媒について低い親和性を示すことを意味する。
【0046】
親水性。ここで使用される場合、用語「親水性」は、水性溶媒より有機溶媒について低い親和性を示すことを意味する。
【0047】
擬ゼロ次反応速度。ここで使用される場合、用語「擬ゼロ次反応速度」は、徐放期間じゅう、ゼロ次(すなわち、濃度に独立の)またはゼロ次と一次の間(すなわち、濃度に比例して)である反応速度を示し、その濃度は、被覆微粒子内に含まれる活性医薬成分の総量に基づいている活性医薬成分の徐放を意味する。ある種の実施態様では、活性医薬成分の放出は、一次の反応速度よりおよそゼロ次にいっそう近い反応速度を示す。
【0048】
数字上の範囲。ここで使用される場合、変数についての数字上の範囲の列挙は、本発明が、その範囲内の値のいずれかに等しい変数で実施されうることを伝達することが意図される。したがって、固有に不連続である変数については、変数は、範囲の終点を含めて数字上の範囲内でのあらゆる整数値に等しい可能性がある。同様に、固有に連続である変数については、変数は、範囲の終点を含めて数字上の範囲内でのあらゆる実測値に等しい可能性がある。例としては、そして限定なしに、0および2の間の値を示すと見なされる変数は、その変数が、固有に不連続である場合、0、1または2の値を取り得て、そしてその変数が、固有に連続である場合、値0.0、0.1、0.01、0.001、または他のあらゆる実測>0および<2を取りうる。
【0049】
または。ここで使用される場合、特に指示されないかぎり、語句「または」は、「および/または」の「包括的」意味で使用されるものであって、「いずれか/または」の「排他的」意味で使用されない。
【0050】
被覆微粒子による徐放
本発明は、部分的に、非経口投与の後の延長期間じゅう活性医薬成分の放出を可能にする被覆微粒子の開発による。明らかに、本発明の被覆微粒子は、改善された反応速度論を示す徐放を提供し、そして延長期間じゅうのおよそ一定または擬ゼロ次反応速度を含む。
【0051】
本発明のいずれかの特定の理論につなげられることなく、被覆微粒子への体液の拡散が、比較的一定な濃度の「源」として作用する、微粒子内の活性医薬成分の飽和溶液を作り出すと考えられる。同様に、投与の部位から、全身の循環、および体じゅうへの活性医薬成分の拡散のため、投与の部位を囲む組織は、比較的一定の低濃度の「シンク」として作用する。したがって、源からシンクへの拡散の速度は、比較的一定なままであり、そして投与のおよそ線状または擬ゼロ次反応速度は、微粒子内の活性医薬成分の濃度が飽和より下まで減少して始めて、達成されうる。
【0052】
本発明の被覆微粒子は、活性医薬成分を含めたコアを包含し、そしてそれは、第一の重合体被覆剤により封入または被覆される。第一の重合体被覆剤は、被覆剤に渡る水および活性医薬成分の拡散を可能にするように半透過性でなければならないが、しかし、周囲の組織への流動体の流れにより活性医薬成分の大量移動を許してはならない。さらに、第一の重合体被覆剤は、微粒子内に含まれる活性医薬成分の濃度が不飽和になるまで、微粒子の投与からの徐放期間の間じゅう、活性医薬成分に透過性なままであるべきである。
【0053】
活性医薬成分および第一の重合体形成溶液が、両方とも疎水性または親水性である場合、コア粒子は、部分的に、または完全に重合体形成溶液に溶解し、そして活性医薬成分が、その重合体によって被覆されるのとは対照的に、重合体のマトリックス中に点在されるか、または埋設されるものである微粒子を生じうる。溶解の程度により、このような微粒子は、本発明による放出の擬ゼロ次反応速度を示さないかもしれない。したがって、ある種の実施態様では、活性医薬成分が実質的に不溶性である第一の重合体形成溶液から形成される第一の重合体被覆剤が使用されうる。
【0054】
ある種の実施態様では、第一の重合体被覆剤に渡る活性医薬成分の拡散は、徐放期間じゅう擬ゼロ次反応速度を示す。ある種の実施態様では、第一の重合体被覆剤は、徐放期間の後に実質的に分解される。ある種の実施態様では、第一の重合体被覆剤は、徐放期間の後まで構造上の完全な状態を維持する。
【0055】
本発明の被覆微粒子は、非経口投与の間に医薬製剤に処方されうる。製造、保存および流通の目的のために、被覆微粒子は、乾式製剤として処方されうる。しかし、投与の目的のために、被覆微粒子は、医薬上許容しうる担体(例えば、水、生理食塩水溶液、リンガー溶液)中に懸濁される。ある種の実施態様では、被覆微粒子は、塞がっていない外傷部位に、または手術の間にも導入されうる(例えば、外傷または手術部位の洗浄または灌注)が、投与は、注射(例えば、皮下、静脈内、筋肉内、眼内)による。
【0056】
本発明の被覆微粒子を製造する場合、活性医薬成分を包含するコア粒子は、第一の重合体被覆剤を形成する第一の重合体形成溶液で被覆される。第一の重合体被覆剤は、下に詳細に検討されるとおり、当業界で知られるあらゆる方法によって形成されうる。しかし、先行技術の問題を避けるために、第一の重合体形成溶液中の活性医薬成分の溶解、および重合体材料で点在化される活性医薬成分を用いた重合体被覆剤の結果として起こる形成を減少または最小限にすることが望ましい。したがって、ある種の実施態様では、活性医薬成分は、第一の重合体形成溶液に実質的に不溶性である。例えば、ある種の実施態様では、活性医薬成分は、疎水性であり、そして第一の重合体形成溶液は、親水性であるのに対して、他の実施態様では、活性医薬成分は、親水性であり、そして第一の重合体形成溶液は、疎水性である。
【0057】
ある種の実施態様では、被覆微粒子は、第二の重合体形成溶液から形成され、そして第一の重合体被覆剤とコア粒子を実質的に囲むか、または包むものである第二の重合体被覆剤を包含する。このような第二の重合体被覆剤は、いくつかの目的を果たしうる。第一に、第一の重合体被覆剤が、構造的に弱いか、または非経口投与の間に破るかまたは破裂させる場合、第二の重合体被覆剤を使用して、機械的支持を加えうる。この目的は、活性医薬成分に透過性があるか、または活性医薬成分に不透過性であるが第一の重合体被覆剤がそれを通して周囲の流動体環境と流動体伝達の状態にある孔を包含するものである、第二の重合体被覆剤を使用することによって達成されうる。第二に、活性医薬成分に対する第一の重合体被覆剤の透過性は、あまり高すぎ、したがって、早すぎる放出反応速度論を生じる場合、第二の重合体被覆剤を使用して、放出の速度を減少させうる。この目的は、活性医薬成分に対して透過性が低いか、または活性医薬成分に不透過性であるが第一の重合体被覆剤がそれを通して周囲の流動体環境と流動体伝達の状態にある孔を包含するものであるかのいずれかである、第二の重合体被覆剤を使用することによって達成されうる。
【0058】
さらに、多くの活性医薬成分および多くの一般に使用される重合体形成溶液は、事実上は疎水性である。結果として、溶液が直接使用される場合、このような活性医薬成分のコア粒子は、多くの一般に使用される重合体形成溶液中で溶解する傾向にあり、そして活性医薬成分が、重合体によって被覆されるのとは対照的に重合体のマトリックスに点在化または埋設される微粒子を生じる。溶解の程度により、このような微粒子は、擬ゼロ次の放出の反応速度を示さないかもしれない。したがって、活性医薬成分が実質的に不溶性である親水性の第一の重合体形成溶液から形成される第一の重合体被覆剤を使用しうる。疎水性の第二の重合体形成溶液から形成される第二の重合体被覆剤は、その後、活性医薬成分を溶解させずに使用されうる。逆に、親水性の活性医薬成分については、第一の重合体被覆剤は、疎水性の第一の重合体形成溶液から形成され得て、続いて、第二の重合体被覆剤は、親水性の第二の重合体形成溶液から形成されうる。
【0059】
したがって、ある種の実施態様では、微粒子は、第一の重合体被覆剤上に第二の重合体被覆剤を包含し、そしてそれは、第二の重合体形成溶液から形成され、そして徐放期間じゅう活性医薬成分に透過性がある。第二の重合体被覆剤は、第一の重合体被覆剤の前後に実質的に分解されうるが、しかし第一の重合体被覆剤と同様に、徐放期間を通して透過性のままであるべきである。活性医薬成分に対する第二の重合体被覆剤の透過性は、第一の重合体被覆剤のものより少ない場合、それは、放出の速度を決定する速度制御被覆剤として作用する。第二の重合体被覆剤の透過性が大きい場合、それは、主に、第一の重合体被覆剤に対する保護のさらなる機械的支持を提供するために機能する。
【0060】
他の実施態様では、微粒子は、第一の重合体被覆剤上に多孔性の第二の重合体被覆剤を包含し、そしてそれは、第二の重合体形成溶液から形成され、第一の重合体被覆剤の孔部分と外部環境との間の流動体伝達を可能にする孔領域の境界を明確にさせ、そして第一の重合体被覆剤の非孔部分と外部環境との間の流動体伝達を防止する非孔領域の境界を明確にさせるものである。孔は、孔領域での第一の重合体被覆剤に渡る活性医薬成分の拡散を可能にするのに対して、第二の重合体被覆剤の非孔領域は、非孔領域での活性医薬成分の拡散を阻害する。これらの実施態様では、第二の重合体被覆剤は、非孔領域で活性医薬成分に実質的に不透過性でありうる。孔領域のみに対する第一の重合体被覆剤に渡る活性医薬成分の拡散を制限することによって、第二の重合体被覆剤は、全体の放出の速度を減じうる。さらに、孔領域のサイズを変化させることによって、放出の速度は、所望のレベルまで変化されうる。これは、第二の重合体被覆剤に孔形成剤を包含することにより、そして所望の有孔率、そして結果的に所望の放出の速度を達成するための孔形成剤の濃度の識別のいずれかを変化させることによって達成されうる。
【0061】
微粒子寸法および組成
上に明記されるとおり、本発明の被覆微粒子は、非経口投与の目的に使うことが意図される。ある種の実施態様では、被覆微粒子は、外傷部位に、または手術の間に(例えば、外傷または手術部位の洗浄または灌注)にも導入されうるが、投与は、注射(例えば、皮下、静脈内、筋肉内、眼内)による。全ての実施態様では、被覆微粒子は、懸濁液を形成するのに十分に小さく、そしてある種の実施態様では、微粒子は、皮下注射針を通して注射するのに十分に小さい。したがって、ある種の実施態様では、被覆微粒子は、20μmと800μmの間、40μmと400μmの間、または100μmと250μmの間の最大寸法を示す。
【0062】
さらに、先行技術の徐放粒子処方と対照的に、本発明のコア粒子は、被覆微粒子の全体的体積および重量の実質的に大部分を構成し、そして逆に、重合体被覆剤は、実質的に小さな部分を構成する。活性医薬成分の単位重量当たりに投与されなければならない微粒子の全体的体積は、活性医薬成分が、それが分解するときに活性医薬成分を放出する比較的大きな体積および重量の重合体マトリックス材料で溶解または点在化される先行技術の粒子に比べて減少されるので、これは有益である。この利点は、比較的薄い重合体被覆剤が、活性医薬成分の飽和溶液を含有し、そして擬ゼロ次反応速度で拡散することによる放出を可能にするものである比較的大きなコアを含有しうるものである、本発明の被覆微粒子の作用の異なる機構から生じる。
【0063】
したがって、ある種の実施態様では、重合体被覆剤の重量は、コア粒子の重量の0.1重量%と200重量%の間、またはコア粒子の重量の2重量%と60重量%の間である。同様に、ある種の実施態様では、重合体被覆剤の体積は、コア粒子の体積の0.1%と200%の間、あるいはコア粒子の体積の2%と60%の間である。
【0064】
重合体被覆剤
当業界で知られる標準生物適合性および生物分解性重合体被覆剤は、それらが、所望の徐放期間じゅう透過性および/または構造上完全な状態に関して上で記述される要求に適合する範囲まで本発明に使用されうる。もちろん、所望の徐放期間は、治療されるべき疾患または症状、活性医薬成分の特性、および治療されるべき特定の対象の状態で変化しうる。したがって、所望の徐放期間は、主治医である医師によって決定されうる。
【0065】
被覆微粒子のあらゆる所定の製剤についての実際の徐放期間は、微粒子の種々のパラメーター、および投与の経路による。例えば、徐放期間は、活性医薬成分の溶解性、投与の意図される部位からの活性医薬成分のクリアランスの速度、コア粒子のサイズおよび/またはコア粒子に当初に存在する活性医薬成分の量、活性医薬成分の放出の速度に影響を及ぼすコア粒子内の他の化合物の存在、活性医薬成分に対する重合体被覆剤の透過性、そして重合体被覆剤の分解の速度、並びに他の因子により変化する。
【0066】
当業界で知られるとおり、重合体被覆剤の透過性および生物分解性の両方は、重合体材料の選択(例えば、活性医薬成分に比べた疎水性または親水性の程度;生理学上の条件下での結合の信頼性の程度)、架橋および厚みの程度により影響されうる。共重合体については、様々なモノマーの比も、透過性および生物分解性に影響するように変化されうる。活性医薬成分に不透過性である第二の重合体被覆剤に関して、孔形成剤は、第一の重合体被覆剤との流動体伝達のための孔を作り出すために使用され得て、そして外部環境に接近可能である第一の重合体被覆剤の面積を変化させることにより、被覆微粒子の平均または有効な全体的透過性は、変化されうる。
【0067】
頻繁に使用され、そして市販で入手可能な生物適合性および生物分解性重合体の例としては、ポリ(乳酸)(PLA)、ポリ(グリコール酸)(PGA)、ポリ(乳酸・コ・グリコール酸)(PLGA)、ポリ(ε−カプロラクトン)(PCL)、ポリ(バレロラクトン)(PVL)、ポリ(ε−デカラクトン)(PDL)、ポリ(1,4−ジオキサン−2,3−ジオン)、ポリ(1,3−ジオキサン−2−オン)、ポリ(パラ−ジオキサノン)(PDS)、ポリ(ヒドロキシ酪酸)(PHB)、ポリ(ヒドロキシ吉草酸)(PHV)、およびポリ(β−リンゴ酸)(PMLA)が挙げられる。
【0068】
さらに一般に、有用な重合体としては、限定なしに、糖リン酸、アルキルセルロース(例えばエチルセルロース)、およびヒドロキシアルキルセルロース(例えばヒドロキシプロピルセルロース)のような炭化水素を含めた天然に生じる重合体;そして1つまたは複数の以下のモノマー:乳酸、グリコール酸、β−プロピオラクトン、β−ブチロラクトン、γ−ブチロラクトン、ピバロラクトン、α−ヒドロキシ酪酸、α−ヒドロキシエチル酪酸、α−ヒドロキシイソ吉草酸、α−ヒドロキシ−β−メチル吉草酸、α−ヒドロキシカプロン酸、α−ヒドロキシイソカプロン酸、α−ヒドロキシヘプタン酸、α−ヒドロキシオクタン酸、α−ヒドロキシデカン酸、α−ヒドロキシミリスチン酸、α−ヒドロキシステアリン酸、α−ヒドロキシリグノセリン酸、β−フェノール乳酸およびポリビニルアルコールを含む合成重合体または共重合体が挙げられる。
【0069】
共重合体は、これらの特性が、使用されるコモノマーの型および相対比を変化させることによって制御されうるので、透過性および生物分解性の所望の特性を示す重合体被覆剤を選択または設計する上で、ある程度の柔軟性を供する。例えば、PLGA重合体は、PLA重合体よりさらに親和性であり、そして親水性は、共重合体中のグリコール酸の含有率を増大させることによって増大されうる。他方では、PLGA重合体は、PLGA重合体よりいっそう迅速に分解され、そして分解の速度は、共重合体中の乳酸の含有率を増大させることによって減ぜられうる。当業者に知られるとおり、これらおよび他のモノマーの型および相対比を変化させることによって、所望の特徴を有する重合体被覆剤が、生成されうる。
【0070】
透過性および/または分解速度に影響を及ぼすために、重合体被覆剤は、都合により、共有結合で、またはイオン結合で架橋されうる。例えば、モノマー間の別の結合を形成する能力のある化学基を含めたモノマーが選択されうるか、または別個の架橋剤が、モノマーに加えて重合体形成溶液に含まれうる。ある種の実施態様では、架橋基は、熱で活性化されるのに対して、他の実施態様では、それらは、可視または紫外線照射による光活性化を含めて光活性化される。架橋基としては、限定なしに、ビニル、アリル、シンナメート、アクリレート、ジアクリレート、オリゴアクリレート、メタクリレート、ジメタクリレート、およびオリゴメソアクリレート基のような不飽和基が挙げられる。
【0071】
多くの活性医薬成分は、疎水性であるので、そして第一の重合体被覆剤中の活性医薬成分の溶解を減少または避けることが望ましいので、本発明のある種の実施態様は、第一の重合体被覆剤として親水性重合体を使用する。親水性の重合体被覆剤の例としては、限定なしに、ポリ(ビニルアルコール)(PVA)、ポリ(エチレングリコール)(PEG)、ポリ(エチレンオキシド)、ポリ(ビニルピロリドン)、ポリ(エチルオキサゾリン);またはアルキルセルロース、ヒドロキシアルキルセルロース、ヒアルロン酸、デキトラン、ヘパランスルフェート、コンドロイチンスルフェート、ヘパリン、またはアルギネートのような多糖または炭化水素、またはゼラチン、コラーゲン、アルブミン、オバルミン、またはポリアミド酸のようなタンパク質が挙げられる。
【0072】
親水性である活性医薬成分については、本発明のある種の実施態様は、第一の重合体被覆剤として疎水性重合体を使用する。疎水性重合体の例としては、限定なしに、PLA、PGA、PLGA、PCL、ポリ(アルキレンオキシド)、ポリ無水物(例えば、米国特許番号第4,757,128号、米国特許番号第4,857,311号、米国特許番号第4,888,176号、および米国特許番号第4,789,724号を参照)およびそれの共重合体が挙げられる。
【0073】
上に明記されるとおり、ある種の実施態様では、活性医薬成分に不透過性であるが、しかしそれを通して第一の重合体被覆剤が外部環境に接近可能であり、そしてそれを通して活性医薬成分が放出されうる孔を含む第二の重合体被覆剤が使用される。したがって、そのような実施態様では、第二の重合体形成溶液は、第二の重合体被覆剤の形成(投与の前にインビトロで、または投与の後にインビボでのいずれかで)後に溶解する孔形成剤を包含しうる。
【0074】
重合体被覆剤を形成する方法
粒子上での重合体被覆剤を形成する方法は、当業界で周知である。例えば、標準技術としては、溶媒蒸散/抽出技術、水中乾燥技術(例えば、米国特許番号第4,994,281号を参照)、有機相分離技術(例えば、米国特許番号第4,675,19号、米国特許番号第5,639,480号を参照)、スプレー乾燥技術(例えば、米国特許番号第5,651,990号を参照)、三重エマルジョン技術(例えば、米国特許番号第4,652,441号、米国特許番号第5,639,480号を参照)、空気懸濁技術、および浸漬被覆技術が挙げられる。
【0075】
例えば、PVA重合体被覆剤は、浸漬被覆技術を用いて使用されうる。簡潔には、水中のPVAの1%溶液は、2時間、60℃で、水中に過剰PVAを溶解させることによって形成されうる(例えば、ByronおよびDalby(1987年)、J.Pharm.Sci.76(1)巻:65−67頁を参照)。代わりに、高濃度のPVA溶液(例えば、3−4%)は、およそ90−100℃に加熱しながら灌流で製造されうる。冷却後、微粒子を、PVA溶液に添加し、そして例えば回転させるか、または攪拌することによって振盪させうる。その後、例えば、微粒子に適切なメッシュサイズを示す濾紙での濾過により、微粒子をその溶液から取り出す。都合により、真空濾過は、乾燥を支援するために使用されうる。未処理PVA重合体被覆剤またはフィルムは、水および親水性薬剤に十分に透過性がある。しかし、PVAの加熱は、0−160時間の期間、100−200℃の範囲で温度が増大されながら、結晶性における増大および500倍までの透過性の減少を引起す(ByronおよびDalby(1987年)、上記)。したがって、ある種の実施態様では、PVA重合体被覆剤は、1秒と160時間の間、1分と10時間の間、または5分と2時間の間の期間、100℃と200℃の間、125℃と175℃の間、または155℃と170℃の間の温度まで加熱されうる。都合により、被覆過程は、より厚い重合体被覆剤を蓄積するために数回繰り返されうる。
【0076】
孔を含む第二の重合体被覆剤の生成のために、第二の重合体形成溶液は、都合により、孔形成剤を包含しうる。孔形成剤としては、限定なしに、糖(例えば、グルコース、ショ糖、ラクトース、サッカロース)または塩(例えば、塩化ナトリウム)、ポリアルコール(例えば、グリセロール)、有機酸(例えば、クエン酸、フマル酸)のような化合物、およびヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリエチレングリコール、およびポリビニルピロリドン、およびそれらの混合物が挙げられる。孔形成剤は、投与の前に被覆微粒子から取り除かれうるか、またはインビボで溶解しうる。
【0077】
投与の方法
本発明の被覆微粒子は、非経口で投与される。ある種の実施態様では、投与は、医薬上許容しうる担体中の被覆微粒子の懸濁液の注射によるのに対して、他の実施態様では、被覆微粒子は、塞がっていない外傷または手術部位に投与される。
【0078】
注射による投与としては、限定なしに、皮下、静脈内、筋肉内および眼内注射が挙げられる。投与のこのような経路については、被覆微粒子は、注射のために使用される針の内径より小さい最大寸法を示すべきである。大きな針は、大きな被覆微粒子を供給するために使用されうるが、このような大型の被覆微粒子は、懸濁液を形成する能力を減少させ得る。したがって、ある種の実施態様では、被覆微粒子は、非経口注射のための標準針の内径より小さな最大寸法を示す。さらに、被覆微粒子は、医薬上許容しうる担体中で懸濁液として処方を可能にする最大サイズを示すものが選択されうる。
【0079】
塞がっていない外傷または手術部位への非経口投与のために、被覆微粒子は、上に記述されるとおり懸濁液中に、または固形物(例えば、粉末)、ペースト、クリーム、または軟膏として投与されうる。このような実施態様では、被覆微粒子は、外傷または手術部位の洗浄または灌注の間じゅう投与され得て、そして被覆微粒子は、実質的に大きくてよい。
【0080】
活性医薬成分
本発明により処方されうる活性医薬成分としては、それの薬理学上の利用性に有害に影響を及ぼす化学的変化または分解を受けることなく、本発明の被覆微粒子に処方されうるあらゆる活性医薬成分またはそれの医薬上許容しうる塩が挙げられる。当業者は、被覆微粒子を製造すること、および放出形態の化学構造を、既知活性形態と比較することによって、あらゆる所定の活性医薬成分が、本発明に有用であるかを容易に確認しうる。このような活性医薬成分は、剤の型または治療されるべき症状の型に基づいた種々の群から選択されうる。
【0081】
限定なしの例として、潜在的に有用な活性医薬成分は、コルチコステロイド、抗精神病薬、抗うつ薬、抗てんかん症薬、抗パーキンソン剤、麻酔薬、麻薬、抗生物質、HIVプロテアーゼ阻害剤、逆転写酵素阻害剤、HMG CoAレダクターゼ阻害剤、カルシウムチャンネル遮断剤、β−ブロッカー、アンギオテンシンII受容体アンタゴニスト、アンギオテンシン変換酵素(ACE)阻害剤、タキサン、アルキル化剤、免疫抑制剤、ホルモンおよびホルモン受容体調節剤、並びに徐放処方が有利である他の活性医薬成分が挙げられる。
【0082】
コルチコステロイドの限定なしの例としては、デキサメタゾン、トリアムシノロン、フルオシノロン、フルオシノロンアセトニド、コルチゾン、プレドニソロン、フルオメソロン、酪酸クロベタゾン、トリアムシノロンアセトニド、吉草酸ベタメタゾン、吉草酸ジフルコルトロン、吉草酸フルチカゾン、ヒドロコルチゾン17−ブチラート、モメタゾンフロエート、メチルプレドニソロンアセトネート、プロピオン酸クロベタゾール、プロピオン酸ベタメタゾンジ、デソニドおよびフルチカゾンが挙げられる。
【0083】
抗精神病薬の限定なしの例としては、オランザピン(ザイプレキサ(登録商標))、クロザピン、ロキサピン、およびケチアピンのようなベンゾジアゼピン;リスペリドン(リスパダール(登録商標))およびモリンドンのようなベンジゾキサゾール誘導体、およびピモジドが挙げられる。
【0084】
抗うつ薬の限定なしの例としては、アミトリプタリン、ドキセピンおよびイミプラミンのような三級アミン三環;デシプラミンおよびノルトリピチレンのような二級アミン三環;ミルタザピンのような四環;トラザドールのようなトリアゾロピリジン;ブプロプリオンのようなアミノケトン;ベンラファキシンのようなフェネチルアミン;ネファザドンのようなフェニルピペラジン;およびシタロプラム、フルオキセチン、フルボキサミン、パロキセチン、およびセルタリンのような選択性セロトニン再摂取阻害剤(SSRI)が挙げられる。
【0085】
抗てんかん症薬の限定なしの例としては、ジランチンのようなヒダントイン;フェノバルビタールのようなバルビツレート;プリミドンのようなデオキシバルビツレート;カルバマゼピンのようなイミノスチルベン;エトスクシミドのようなスクシニミド;クロナゼパムのようなベンゾジアゼピン;並びにバルプロ酸、ガバペンチン、レベチラセタム、チアガビン、トピラメートおよびゾニサミドが挙げられる。
【0086】
抗パーキンソン薬の限定なしの例としては、レボドパベンゼラジンおよびレボドパ/カルビドパのようなレボドパ製剤;ブロモクリプチン、カベルゴリンおよびペルゴリドのような麦角病ドーパミンアゴニスト;プラミペキソール、ロピネロール、およびスポモルフィンのような非麦角病ドーパミンアゴニスト;エンタカポンおよびトルカポンのようなカテコール−O−メチルトランスフェラーゼ阻害剤;セレギリンのようなモノアミンオキシダーゼB阻害剤;アマンタジンのようなNMDAアンタゴニスト;およびベンズヘキソール、ベンズトロピン、ビペリデン、オルフェンドリン、およびプロサイクリジンのような抗コリン作動性剤が挙げられる。
【0087】
麻酔薬の限定なしの例としては、プロカイン(ノボケイン(登録商標))、ブピバカイン(マルカイン(登録商標))、リドカイン(キシロカイン(登録商標))、エチドカイン、ロピバカイン、クロロプロカイン、テトラカインおよびメピバカインが挙げられる。
【0088】
睡眠剤の限定なしの例としては、モルヒネ、ヒドロモルフォン、メペリジン、フェンタニル、プロポキシフェン、レボルファノール、コデイン、ヒドロコドン、オキシモルフォン、酢酸レボメタジル、オキシコドンおよびメタドンが挙げられる。
【0089】
抗生物質の限定なしの例としては、テトラサイクリン、クロロテトラサイクリン、オキシテトラサイクリン、デメクロサイクリン、メタサイクリン、ドキシサイクリン、およびミノサイクリンのようなテトラサイクリン抗生物質;ペニシリン、クロルペニシリン、オキシペニシリン、メチシリン、ナフシリン、オキサシリン、クロキサシリン、ジクロキサシリン、アンビシリン、アモキシシリン、バカムピシリン、カルベニシリン、カルベニシリンインダニル、チカルシリン、メズロシリン、およびピペラシリンのようなペニシリン抗生物質;エリスロマイシン、クラリスロマイシンおよびアジスロマイシンのようなマクロリド抗生物質;ノルフロキサシン、シプロフロキサシン、オフォキサシン、スパルフロキサシン、ロメフロキサシン、フレロキサシン、ペルフロキサシン、レボフロキサシン、トロバフロキサシン、ガチフロキサシン、モキシフロキサシン、およびクロキサシリンのようなフルオロキノロン抗生物質;セファロシン、セファゾリン、セファレキシン、セファドロキシル、コファマナドール、セフォキシチン、セファクロール、セフロキシム、セフロキシムアキセチル、ロラカルベフ、セフォニシド、セファテタン、セフォラニド、セフォタキシム、セフポドキシムプロキセチル、セフトリアキソン、セフォペラゾン、セフタジジムおよびセフェピムのようなセファロスポリン抗生物質;ゲンタマイシン、トブラマイシン、アミカシン、ネチリミシン、ネオマイシン、カナマイシン、ストレプトマイシン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、ブレオマイシン、プリカマイシンおよびミトマイシンを含めたアミノグリコシド抗生物質;並びにイソニアジド(INH)、リファムピン、リファペンチン、ピラジンアミド、エタムブトール、エチオナミド、カレオマイシン、およびシクロセリンが挙げられる。
【0090】
HIVプロテアーゼ阻害剤の限定なしの例としては、リトナビル、インジナビル、ネルフィナビル、サキナビル、アンプレナビルおよびロピナビルが挙げられる。
【0091】
ヌクレオシド逆転写酵素阻害剤の限定なしの例としては、ヌクレオシド基材の逆転写酵素阻害剤ジドブジン、ジダノシン、スタブジン、ザルシタビン、ラムビジン、およびアバカビルが挙げられ、そして非ヌクレオシド基材の逆転写酵素阻害剤としては、デラビルジン、エファビレネズおよびネビラピンが挙げられる。
【0092】
HMG Co−Aレダクターゼ阻害剤の限定なしの例としては、シムバスタチン(ゾコール(登録商標))、ロバスタチン(メバコール(登録商標))、アトルバスタチン(リピトール(登録商標))、プラバスタチンナトリウム、フルバスタチンおよびセリバスタチンが挙げられる。
【0093】
カルシウムチャンネル遮断剤の限定なしの例としては、ニフェジピンのようなジヒドロピリジン;ベラパミルのようなフェニルアルキルアミン;およびジルチアゼムのようなベンゾチアゼピン;並びにアムリノン、アムロジピン、ベンサイクラン、フェロジピン、フェンジリン、フルナリジン、イスラジピン、ニカルジピン、ニモジピン、ペルヘキシレン、ガロパミル、チアパミル、フェニトイン、バルビツレート、ダイノルフィン、オメガ−コノトキシン、およびオメガ−アガトキシンが挙げられる。
【0094】
βブロッカーの限定なしの例としては、プロプラノロル、アテノロル、アセブトロル、アルプレノロル、ベフノロル、ベタキソロル、ブニトロロル、カルテオロル、セリプロロル、ヘドロキサロル、インデノロル、ラベタロル、レボブノロル、メピンドロル、メチプラノール、メチンドール、メトプロロル、メトリゾラノロル、オキシプレノロル、ピンドロル、プラクトロル、ソタロルナドロル、チプレノロル、トマロロル、チモロル、ブプラノロル、ペンブトロルおよびトリメプラノルが挙げられる。
【0095】
アンギオテンシンII受容体アンタゴニストの限定なしの例としては、サララシンが挙げられる。
【0096】
ACE阻害剤の限定なしの例は、カプトプリル、ゾフェノプリル、エナラプリル、リシノプリル、キナプリル、ラミプリル、ペリンドプリル、シラザプリル、ベナザプリル、フォシノプリル、およびトランドロプリルである。
【0097】
タキサンの限定なしの例としては、パクリタキセルおよびドセタキセルが挙げられる。
【0098】
アルキル化剤の限定なしの例としては、窒素マスタード、アルキルスルホネート、ニトロスウレア、エチレンイミンおよびメチルメラミン、トリアゼン・クラス、シクロホスファミド、イホサミド、チオテパ、メルファラン、ブスルファン、カルムスチン、クロラムブシル、ヘキサメチルメラミンおよびストレプトゾシンが挙げられる。
【0099】
免疫系を抑制する免疫抑制剤の限定なしの例としては、コルチコステロイド;アザチオプリン、シクロスポリン、タクロリムン、シロリムスおよびマイコフェノレートモフェチルのようなプリン・アンタゴニストが挙げられる。
【0100】
ホルモンおよびホルモン受容体調節剤の限定なしの例としては、インシュリン、脳下垂体成長因子、アドレノコルチコ作動性ホルモン、テストステロン、プロゲステロン、エストロゲン、レボノルゲストレル(ノルプラント(登録商標))、タモキシフェン、ラロキシフェン、およびフルベストラントが挙げられる。
【0101】
本発明に潜在的に有用な他の活性医薬成分の限定なしの例としては、ビンクリスチンおよびビンブラスチンのようなビンカアルカロイド;シスプラチンおよびカルボプラチンのようなプラチナ配位錯体;ゲニステイン、フォルモノネチン、ダイドゼインおよびイクオールのようなイソフラボン;エトポシドおよびテニポシドのようなエピドフィロトキシン;トポテカンおよびイリテカンのようなカンプトセシン;メトトレキセートのような葉酸類似体;5−フルオロウラシル、フロキシウリジン、およびサイトシンアラビノシドのようなピリミジン類似体;および6−メルカプトプリン、6−チオグアニンおよび2−デオキシコホルマイシンのようなプリン類似体;並びに抗アルコール依存症薬物療法ジスルフィラム(アンタビュース(登録商標))が挙げられる。
【0102】
以下の実施例は、本発明の実施のいくつかの特定の形態を示すが、しかし請求された発明の範囲を限定することは意図されない。代替の材料および方法は、類似の結果を得るために利用されうる。
【実施例】
【0103】
コア粒子の形成
市販の供給者(ドクター.レディー・ラボズ(Dr.Reddy Labs)、ニュージャージー州アッパー・サドル・リバー(Upper Saddle River, NJ))から微細化形態(粒子の90%<5μm直径)で得られた変則的な抗精神病薬である活性医薬成分オランザピンから加圧融合粒子を製剤した。IRペレットを生成するために使用された水圧の下部打抜き鏨を、8mm直径を有するダイに入れ、そしておよそ30mgのオランザピンを、そのダイに載せた。上部打抜き鏨をダイに入れ、そして中程度の圧力を手動でかけて、ダイ中で活性医薬成分を包装し、そして均一に分配させた。ダイ組立部品を、加圧機に固定し、そして力を、25−30メートルトンまで増大させ、そして最小30秒、そして特に90秒間維持した。ダイが、8mmの直径を有したことを考慮して、ダイの面積は、およそ0.50cmであり、したがって、圧力は、50−60メートルトン/cmであった。あるいは、1ギガ−パスカル(GPa)は、10.197メートルトン/cmに等しいことを考慮して、圧力は、およそ5−6GPaであった。
【0104】
高圧圧縮で、加圧機から取り出されたオランザピンの「融合」または「ガラス様」ウエハーを生成した。その後、圧縮サンプルを、およそ250μmの切れ目で格子がある60メッシュのふるいを通させて、おおよそ立方体の粒子を生成した。
【0105】
PVA第一の重合体被覆剤の形成
ポリビニルアルコール(PVA)を、124,000−186,000のモル重量範囲で得た。過剰のPVAを、65℃で、水中で加熱した。冷却後、PVA溶液を、傾瀉し、そして上に記述されるとおり作製されたコア粒子と混合した。コア粒子を、数秒間、PVA溶液のビーカーで回転させ、そして直径9cmのブフナーロートで、42番濾紙(ワットマン,インク.、ニュージャージー州クリフトン(Clifton,NJ))で真空濾過させた。被覆コア粒子が保有された濾紙を、時計皿に移し、そして10分間、155℃または165℃で乾燥させた。この工程を、4−5回繰り返した。
【0106】
溶解試験
市販の供給者(ドクター.レディー・ラボズ、ニュージャージー州アッパー・サドル・リバー)からの微細化オランザピン(粒子の90%<直径5μm)の溶解を、上に記述されるとおりに作製されたオランザピンの被覆微粒子の溶解と比較した。
【0107】
粉末溶解試験を、25℃で、蒸留水で行った。25mlの水中の粉末の2−3mgサンプルは、およそ1分間で50%溶解され、そして2.5分で完全に溶解された。
【0108】
被覆微粒子溶解試験も、25℃で、蒸留水で行った。2−3mgサンプルを、25mlの水に入れた。微粒子を、溶液で完全に覆った。5日間、24時間毎に、5mlの上清溶液を、注意深く取出し、そして新鮮な培地に交換し、そして生理学的な「シンク」条件をまねるために、緩衝液の混合を避けた。図1は、時間に対する被覆微粒子からの活性医薬成分の放出に関するデータを表す。図で示されるとおり、放出の速度は、数日にわたり、実質的に一定あるいは擬ゼロ次であった。低温で乾燥したPVA−被覆微粒子からの放出速度は、大きく、そして乾燥温度が、透過性および放出速度を変化させるために使用されうることを示した。
【0109】
活性医薬成分安定性
コア粒子または重合体被覆剤の形成が、活性医薬成分を変化または分解するかどうかを決定するために、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を使用した。可変波長検出器を有するHP1050HPLCシステム・クロマトグラフィー(アジレント・テクノロジーズ、カリフォルニア州パロアルト(Palo Alto,CA))を、300Å孔サイズ、5μm粒子サイズ、4.6mm×250mmの順相(未結合)を備えたシリカHPLCカラム(グレース・バイダック,インク.、メリーランド州コロンビア(Columbia,MD)、製品番号101TP54)と共に使用した。注入体積は、20μlであり、そして流速は、25℃(周囲)で1.0ml/分であった。一定周波数の態様で、ポンプを操作し、後期時間は、3.0分であり、そして254nmでの吸光度を測定した。可動相は、50:50クロロホルム:イソオクタンであった。
【0110】
サンプルを、上に記述される溶解試験から取った。行われたHPLC分析は、本発明の被覆微粒子からのオラザピンの純度、および崩壊製品の不在を確認した。
【0111】
等価物
本発明は、それの特定の実施態様に関して特に示され、そして記述されたが、形態および詳細における種々の変更は、付随の請求項によって定義される本発明の概念および範囲から逸脱することなくここに行われうることが、当業者に理解される。当業者は、ここに特に記述される本発明の特定の実施態様に対する多くの等価物を認識するか、またはわずかな日常的な実験を使用して確認できる。このような等価物は、付随の請求項の範囲で包含されることが意図される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の被覆微粒子を包含するものであって、該被覆微粒子が、
(a)該活性医薬成分を包含するコア粒子;および
(b)第一の重合体形成溶液から形成される該コア粒子上の第一の重合体被覆剤
を包含する;
該活性医薬成分が、該投与の後に、該被覆微粒子内に飽和溶液を形成すること、および
該第一の重合体被覆剤は、該微粒子内に含まれる該活性医薬成分の濃度が不飽和になるまで、該微粒子の投与から徐放期間じゅう、該活性医薬成分に透過性がある
非経口投与の後の活性医薬成分の徐放のための医薬製剤。
【請求項2】
前記第一の重合体被覆剤に渡る前記活性医薬成分の拡散が、該徐放期間じゅう擬ゼロ次反応速度論を示す請求項1に記載の医薬製剤。
【請求項3】
前記第一の重合体被覆剤が、該徐放期間の後に実質的に分解される請求項1に記載の医薬製剤。
【請求項4】
前記第一の重合体被覆剤が、該徐放期間じゅう構造上完全な状態を維持する請求項1に記載の医薬製剤。
【請求項5】
前記微粒子が、非経口注射を介して投与される請求項1に記載の医薬製剤。
【請求項6】
前記微粒子が、20μmと800μmの間の最大寸法を示す請求項5に記載の医薬製剤。
【請求項7】
前記微粒子が、40μmと400μmの間の最大寸法を示す請求項5に記載の医薬製剤。
【請求項8】
前記微粒子が、100μmと250μmの間の最大寸法を示す請求項5に記載の医薬製剤。
【請求項9】
前記活性医薬成分は、前記第一の重合体形成溶液中に実質的に不溶性である請求項1に記載の医薬製剤。
【請求項10】
前記活性医薬成分は、疎水性であり、そして前記第一の重合体形成溶液は、親水性である請求項1に記載の医薬製剤。
【請求項11】
前記活性医薬成分は、親水性であり、そして前記第一の重合体形成溶液は、疎水性である請求項1に記載の医薬製剤。
【請求項12】
さらに、(c)前記第一の重合体被覆剤上に第二の重合体被覆剤を包含し、該第二の重合体被覆剤が、第二の重合体形成溶液から形成される;
該第二の重合体被覆剤は、前記徐放期間じゅう前記活性医薬成分に透過性がある請求項1に記載の医薬製剤。
【請求項13】
さらに、(c)前記第一の重合体被覆剤上に多孔性の第二の重合体被覆剤を包含し、該第二の重合体被覆剤が、第二の重合体形成溶液から形成される;
該第二の重合体被覆剤が、該第一の重合体被覆剤の孔部分と外部環境の間の流動体伝達を可能にする孔領域の境界を明確にさせ、それにより、該孔領域中の該第一の重合体被覆剤に渡る該活性医薬成分の拡散を可能にする;そして
該第二の重合体被覆剤は、該第一の重合体被覆剤の非孔部分と、外部環境との間の流動体伝達を防止する非孔領域の境界を明確にさせ、それにより、該非孔領域中の該第一の重合体被覆剤に渡る該活性医薬成分の拡散を阻害するものである
請求項1に記載の医薬製剤。
【請求項14】
前記第二の重合体被覆剤は、前記非孔領域中の前記活性医薬成分に実質的に不透過である請求項13に記載の医薬製剤。
【請求項15】
前記第二の重合体形成溶液は、溶解させて、該第二の重合体被覆剤の形成の後の該孔領域を生じる孔形成剤を包含する請求項13に記載の医薬製剤。
【請求項16】
前記第一の重合体被覆剤は、リン酸糖、アルキルセルロース、ヒドロキシアルキルセルロース、乳酸、グリコール酸、β−プロピオラクトン、β−ブチロラクトン、γ−ブチロラクトン、ピバロラクトン、α−ヒドロキシ酪酸、α−ヒドロキシエチル酪酸、α−ヒドロキシイソ吉草酸、α−ヒドロキシ−β−メチル吉草酸、α−ヒドロキシカプロン酸、α−ヒドロキシイソカプロン酸、α−ヒドロキシヘプタン酸、α−ヒドロキシオクタン酸、α−ヒドロキシデカン酸、α−ヒドロキシミリスチン酸、α−ヒドロキシステアリン酸、α−ヒドロキシリグノセリン酸、β−フェノール乳酸およびポリビニルアルコールより構成される群から選択される少なくとも1種のモノマーを含めた重合体または共重合体を包含する請求項1に記載の医薬製剤。
【請求項17】
前記第二の重合体被覆剤は、リン酸糖、アルキルセルロース、ヒドロキシアルキルセルロース、乳酸、グリコール酸、β−プロピオラクトン、β−ブチロラクトン、γ−ブチロラクトン、ピバロラクトン、α−ヒドロキシ酪酸、α−ヒドロキシエチル酪酸、α−ヒドロキシイソ吉草酸、α−ヒドロキシ−β−メチル吉草酸、α−ヒドロキシカプロン酸、α−ヒドロキシイソカプロン酸、α−ヒドロキシヘプタン酸、α−ヒドロキシオクタン酸、α−ヒドロキシデカン酸、α−ヒドロキシミリスチン酸、α−ヒドロキシステアリン酸、α−ヒドロキシリグノセリン酸、β−フェノール乳酸およびポリビニルアルコールより構成される群から選択される少なくとも1種のモノマーを含めた重合体または共重合体を包含する請求項12または13に記載の医薬製剤。
【請求項18】
前記第一の重合体被覆剤は、空気懸濁技術により前記コア粒子に塗布される請求項1に記載の医薬製剤。
【請求項19】
前記第一の重合体被覆剤は、浸漬被覆技術によって前記コア粒子に塗布される請求項1に記載の医薬製剤。
【請求項20】
前記第一の重合体被覆剤の重量は、前記コア粒子の重量の0.1重量%と200重量%の間である請求項1に記載の医薬製剤。
【請求項21】
前記第一の重合体被覆剤の重量は、前記コア粒子の重量の2重量%と60重量%の間のである請求項1に記載の医薬製剤。
【請求項22】
前記第一の重合体被覆剤の体積は、前記コア粒子の体積の0.1%と200%の間である請求項1に記載の医薬製剤。
【請求項23】
前記第一の重合体被覆剤の体積は、前記コア粒子の体積の2%と60%の間である請求項1に記載の医薬製剤。
【請求項24】
請求項1−23のいずれか1項の医薬製剤を非経口で投与することを包含する活性医薬成分の徐放投与の方法。
【請求項25】
前記医薬製剤が、医薬上許容しうる担体中の前記被覆微粒子の懸濁液の形態である請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記非経口投与が、皮下、静脈内、筋肉内および眼内注射より構成される群から選択される請求項24に記載の方法。
【請求項27】
(a)該活性医薬成分を含むコア粒子を形成すること;そして
(b)第一の重合体形成溶液から得られる、該コア粒子上に第一の重合体被覆剤を形成することを包含し、
該活性医薬成分が、該投与の後に該被覆微粒子内に飽和溶液を形成し、そして
該第一の被覆剤は、該微粒子内に含まれる該活性医薬成分の濃度が、不飽和になるまで、該微粒子の投与から徐放期間じゅう該活性医薬成分に透過性があるものであること
を包含する、非経口投与の後の活性医薬成分の徐放のための医薬製剤を生成する方法。
【請求項28】
前記第一の重合体被覆剤に渡る前記活性医薬成分の拡散が、該徐放期間じゅう擬ゼロ次反応速度を示す請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記第一の重合体被覆剤が、該徐放期間の後に実質的に分解される請求項27に記載の方法。
【請求項30】
前記第一の重合体被覆剤が、該徐放期間じゅう構造上完全な状態を維持する請求項27に記載の方法。
【請求項31】
前記微粒子が、20μmと800μmの間の最大寸法を示す請求項27に記載の方法。
【請求項32】
前記微粒子が、40μmと400μmの間の最大寸法を示す請求項27に記載の方法。
【請求項33】
前記微粒子が、100μmと250μmの間の最大寸法を示す請求項27に記載の方法。
【請求項34】
前記活性医薬成分は、前記第一の重合体形成溶液中に実質的に不溶性である請求項27に記載の方法。
【請求項35】
前記活性医薬成分は、疎水性であり、そして前記第一の重合体形成溶液は、親水性である請求項27に記載の方法。
【請求項36】
前記活性医薬成分は、親水性であり、そして前記第一の重合体形成溶液は、疎水性である請求項27に記載の方法。
【請求項37】
さらに、(c)第二の重合体形成溶液から得られる、前記第一の重合体被覆剤上に第二の重合体被覆剤を形成し;
該第二の重合体被覆剤は、前記徐放期間じゅう前記活性医薬成分に透過性であることを包含する請求項27に記載の方法。
【請求項38】
さらに、(c)第二の重合体形成溶液から得られる、前記第一の重合体被覆剤上に多孔性の第二の重合体被覆剤を形成し;
該第二の重合体被覆剤が、該第一の重合体被覆剤の孔部分と外部環境との間の流動体伝達を可能にする孔領域の境界を明確にさせ、それにより、該孔領域中の該第一の重合体被覆剤に渡る該活性医薬成分の拡散を可能にする;そして
該第二の重合体被覆剤は、該第一の重合体被覆剤の非孔部分と、外部環境との間の流動体伝達を防止する非孔領域の境界を明確にさせ、それにより、該非孔領域中の該第一の重合体被覆剤に渡る該活性医薬成分の拡散を阻害するものである
請求項27に記載の方法。
【請求項39】
前記第二の重合体被覆剤は、前記非孔領域中の前記活性医薬成分に実質的に不透過性である請求項38に記載の方法。
【請求項40】
前記第二の重合体形成溶液は、溶解させて、該第二の重合体被覆剤の形成の後の該孔領域を生じる孔形成剤を包含する請求項38に記載の方法。
【請求項41】
前記第一の重合体被覆剤は、リン酸糖、アルキルセルロース、ヒドロキシアルキルセルロース、乳酸、グリコール酸、β−プロピオラクトン、β−ブチロラクトン、γ−ブチロラクトン、ピバロラクトン、α−ヒドロキシ酪酸、α−ヒドロキシエチル酪酸、α−ヒドロキシイソ吉草酸、α−ヒドロキシ−β−メチル吉草酸、α−ヒドロキシカプロン酸、α−ヒドロキシイソカプロン酸、α−ヒドロキシヘプタン酸、α−ヒドロキシオクタン酸、α−ヒドロキシデカン酸、α−ヒドロキシミリスチン酸、α−ヒドロキシステアリン酸、α−ヒドロキシリグノセリン酸、β−フェノール乳酸およびポリビニルアルコールより構成される群から選択される少なくとも1種のモノマーを含む重合体または共重合体を包含する請求項27に記載の方法。
【請求項42】
前記第二の重合体被覆剤は、リン酸糖、アルキルセルロース、ヒドロキシアルキルセルロース、乳酸、グリコール酸、β−プロピオラクトン、β−ブチロラクトン、γ−ブチロラクトン、ピバロラクトン、α−ヒドロキシ酪酸、α−ヒドロキシエチル酪酸、α−ヒドロキシイソ吉草酸、α−ヒドロキシ−β−メチル吉草酸、α−ヒドロキシカプロン酸、α−ヒドロキシイソカプロン酸、α−ヒドロキシヘプタン酸、α−ヒドロキシオクタン酸、α−ヒドロキシデカン酸、α−ヒドロキシミリスチン酸、α−ヒドロキシステアリン酸、α−ヒドロキシリグノセリン酸、β−フェノール乳酸およびポリビニルアルコールより構成される群から選択される少なくとも1種のモノマーを含む重合体または共重合体を包含する請求項37または38に記載の方法。
【請求項43】
前記コア粒子は、高圧圧縮により製造される請求項27に記載の方法。
【請求項44】
前記コア粒子は、巨大結晶形成によって製造される請求項27に記載の方法。
【請求項45】
前記第一の重合体被覆剤は、空気懸濁技術によって前記コア粒子に塗布される請求項27に記載の方法。
【請求項46】
前記第一の重合体被覆剤は、浸漬被覆技術によって前記コア粒子に塗布される請求項27に記載の方法。
【請求項47】
前記第一の重合体被覆剤の重量は、前記コア粒子の重量の0.1重量%と200重量%の間である請求項27に記載の方法。
【請求項48】
前記第一の重合体被覆剤の重量は、前記コア粒子の重量の2重量%と60重量%の間のである請求項27に記載の方法。
【請求項49】
前記第一の重合体被覆剤の体積は、前記コア粒子の体積の0.1%と200%の間である請求項27に記載の方法。
【請求項50】
前記第一の重合体被覆剤の体積は、コア粒子の体積の2%と60%の間である請求項27に記載の方法。

【図1】
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【公開番号】特開2012−72197(P2012−72197A)
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−8600(P2012−8600)
【出願日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【分割の表示】特願2005−510069(P2005−510069)の分割
【原出願日】平成15年12月22日(2003.12.22)
【出願人】(505226345)エスティ.ジェイムス アソシエイト エルエルシー/フェイバー リサーチ シリーズ (3)
【Fターム(参考)】