徐放性粒子およびその製造方法
【課題】簡便、かつ、低コストで、徐放性に優れる徐放性粒子およびその製造方法を提供すること。
【解決手段】融点が100℃以下であり、Hansenで定義される溶解度パラメータδの双極子間力項δp,compoundが2〜8[(J/cm3)1/2]、溶解度パラメータδの水素結合力項δh,compoundが5.5〜9.5[(J/cm3)1/2]である疎水性の抗生物活性化合物を、溶剤の不存在下、疎水性の重合性ビニルモノマーで溶解することにより、疎水性溶液を調製し、その疎水性溶液を水分散させ、重合性ビニルモノマーを、油溶性開始剤の存在下、ラジカル重合して、溶解度パラメータδの双極子間力項δp,polymerが5〜7[(J/cm3)1/2]であり、溶解度パラメータδの水素結合力項δh,polymerが8〜10[(J/cm3)1/2]である重合体を生成することにより、徐放性粒子を得る。
【解決手段】融点が100℃以下であり、Hansenで定義される溶解度パラメータδの双極子間力項δp,compoundが2〜8[(J/cm3)1/2]、溶解度パラメータδの水素結合力項δh,compoundが5.5〜9.5[(J/cm3)1/2]である疎水性の抗生物活性化合物を、溶剤の不存在下、疎水性の重合性ビニルモノマーで溶解することにより、疎水性溶液を調製し、その疎水性溶液を水分散させ、重合性ビニルモノマーを、油溶性開始剤の存在下、ラジカル重合して、溶解度パラメータδの双極子間力項δp,polymerが5〜7[(J/cm3)1/2]であり、溶解度パラメータδの水素結合力項δh,polymerが8〜10[(J/cm3)1/2]である重合体を生成することにより、徐放性粒子を得る。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、徐放性粒子およびその製造方法、詳しくは、抗生物活性化合物を徐放する徐放性粒子およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
殺菌剤、防腐剤、防かび剤などの抗生物活性化合物をマイクロカプセル化することにより、抗生物活性化合物を徐放して、効力持続性を担保することが知られている。
【0003】
例えば、微生物増殖抑制剤およびポリイソシアネート成分を含む油相と、活性水素基含有成分を含む水相とを配合して分散し、界面重合することにより、微生物増殖抑制剤含有マイクロカプセルを製造する方法が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−247409号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に記載の界面重合法では、ポリイソシアネート成分および活性水素基含有成分、すなわち、2種類の膜形成成分を、油相および水相にそれぞれ配合して、2つの相を調製する必要があり、その分、工程数が多くなるため、製造工程が煩雑となり、原料コストも増大して、製造コストが増大する場合がある。
【0006】
本発明の目的は、簡便、かつ、低コストで、徐放性に優れる徐放性粒子およびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記目的の徐放性粒子およびその製造方法について鋭意検討したところ、融点が100℃以下であり、溶解度パラメータδの双極子間力項δp,compoundおよび水素結合力項δh,compoundが特定範囲である疎水性の抗生物活性化合物を、溶剤の不存在下、疎水性の重合性ビニルモノマーで溶解することにより、疎水性溶液を調製し、その疎水性溶液を水分散させ、重合性ビニルモノマーを、ラジカル重合して、溶解度パラメータδの双極子間力項δp,polymerおよび水素結合力項δh,polymerが特定範囲である重合体を生成することにより、簡便、かつ、低コストで、徐放性に優れる徐放性粒子を得ることができるという知見を見出し、さらに研究を進めた結果、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、
(1)融点が100℃以下であり、Hansenで定義され、van Klevelen and Hoftyzer法で算出される溶解度パラメータδの双極子間力項δp,compoundが2〜8[(J/cm3)1/2]、前記溶解度パラメータδの水素結合力項δh,compoundが5.5〜9.5[(J/cm3)1/2]である疎水性の抗生物活性化合物を、溶剤の不存在下、疎水性の重合性ビニルモノマーで溶解することにより、疎水性溶液を調製し、その疎水性溶液を水分散させ、前記重合性ビニルモノマーを、油溶性開始剤の存在下、ラジカル重合して、前記溶解度パラメータδの双極子間力項δp,polymerが5〜7[(J/cm3)1/2]であり、前記溶解度パラメータδの水素結合力項δh,polymerが8〜10[(J/cm3)1/2]である重合体を生成することにより得られることを特徴とする、徐放性粒子、
(2)前記重合体の双極子間力項δp,polymerから前記抗生物活性化合物の双極子間力項δp,compoundを差し引いた値Δδpが−1.1〜2.7[(J/cm3)1/2]であり、前記重合体の水素結合力項δh,polymerから前記抗生物活性化合物の水素結合力項δh,compoundを差し引いた値Δδhが、0〜4.2[(J/cm3)1/2]であることを特徴とする、前記(1)に記載の徐放性粒子、
(3)前記抗生物活性化合物の前記重合性ビニルモノマーに対する配合割合が、重量基準で、0.11〜1.5であることを特徴とする、前記(1)または(2)に記載の徐放性粒子、
(4)融点が100℃以下であり、Hansenで定義され、van Klevelen and Hoftyzer法で算出される溶解度パラメータδの双極子間力項δp,compoundが2〜8[(J/cm3)1/2]、前記溶解度パラメータδの水素結合力項δh,compoundが5.5〜9.5[(J/cm3)1/2]である疎水性の抗生物活性化合物を、溶剤の不存在下、疎水性の重合性ビニルモノマーで溶解することにより、疎水性溶液を調製する工程、前記疎水性溶液を水分散させる工程、および、水分散された前記疎水性溶液の前記重合性ビニルモノマーを、油溶性開始剤の存在下、ラジカル重合して、前記溶解度パラメータδの双極子間力項δp,polymerが5〜7[(J/cm3)1/2]であり、前記溶解度パラメータδの水素結合力項δh,polymerが8〜10[(J/cm3)1/2]である重合体を生成する工程を備えることを特徴とする、徐放性粒子の製造方法、
(5)前記重合体の双極子間力項δp,polymerから前記抗生物活性化合物の双極子間力項δp,compoundを差し引いた値Δδpが−1.1〜2.7[(J/cm3)1/2]であり、前記重合体の水素結合力項δh,polymerから前記抗生物活性化合物の水素結合力項δh,compoundを差し引いた値Δδhが、0〜4.2[(J/cm3)1/2]であることを特徴とする、前記(4)に記載の徐放性粒子の製造方法
である。
【発明の効果】
【0009】
本発明のポリマー微粒子の製造方法によれば、溶解度パラメータδの双極子間力項δp,compoundおよび水素結合力項δh,compoundが特定範囲にある抗生物活性化合物を溶解している疎水性の重合性モノマーを重合して、溶解度パラメータδの双極子間力項δp,polymerおよび水素結合力項δh,polymerが特定範囲にある重合体を生成するので、原料の調製が簡便となり、製造工程が簡単となり、さらに、原料コストが低減されることから、製造コストを低減させることができる。
【0010】
そのため、簡単、かつ、低コストで、優れた徐放性を有し、優れた効力持続効果を発現することのできる徐放性粒子を得ることができる。
【0011】
さらに、溶剤を使用することなく、疎水性溶液を調製するので、環境負荷を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は、実施例1の徐放性粒子のSEM写真の画像処理図を示す。
【図2】図2は、実施例5の徐放性粒子のSEM写真の画像処理図を示す。
【図3】図3は、実施例8の徐放性粒子のSEM写真の画像処理図を示す。
【図4】図4は、実施例14の徐放性粒子のSEM写真の画像処理図を示す。
【図5】図5は、実施例15の徐放性粒子のSEM写真の画像処理図を示す。
【図6】図6は、実施例16の徐放性粒子のSEM写真の画像処理図を示す。
【図7】図7は、比較例2の粒子のSEM写真の画像処理図を示す。
【図8】図8は、比較例4の粒子のSEM写真の画像処理図を示す。
【図9】図9は、比較例5の粒子のSEM写真の画像処理図を示す。
【図10】図10は、比較例6の粒子のSEM写真の画像処理図を示す。
【図11】図11は、実施例1の徐放性粒子のTEM写真の画像処理図を示す。
【図12】図12は、実施例9の徐放性粒子のTEM写真の画像処理図を示す。
【図13】図13は、実施例10の徐放性粒子のTEM写真の画像処理図を示す。
【図14】図14は、実施例11の徐放性粒子のTEM写真の画像処理図を示す。
【図15】図15は、実施例12の徐放性粒子のTEM写真の画像処理図を示す。
【図16】図16は、実施例13の徐放性粒子のTEM写真の画像処理図を示す。
【図17】図17は、実施例1〜3の徐放性試験のグラフを示す。
【図18】図18は、実施例14〜16の徐放性試験のグラフを示す。
【図19】図19は、実施例11の徐放性試験のグラフを示す。
【図20】図20は、実施例12の徐放性試験のグラフを示す。
【図21】図21は、実施例13の徐放性試験のグラフを示す。
【図22】図22は、実施例4〜7および9の徐放性試験のグラフを示す。
【図23】図23は、実施例8および10の徐放性試験のグラフを示す。
【図24】図24は、比較例1および2の徐放性試験のグラフを示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の徐放性粒子は、疎水性の抗生物活性化合物を、疎水性の重合性ビニルモノマーで溶解することにより、疎水性溶液を調製し、その疎水性溶液を水分散させ、重合性ビニルモノマーを、ラジカル重合して、重合体を生成することにより得られる。
【0014】
抗生物活性化合物は、例えば、重合性ビニルモノマーの重合体と相互作用できる官能部分を少なくとも2つ有している。
【0015】
このような官能部分としては、例えば、カルボニル基、ニトロ基、アミノ基、シアノ基、燐酸エステル基、カルボキシル基などの極性官能基、例えば、カルボキシレート結合、フォスフェート結合、尿素結合、炭素−ハロゲン結合などの極性基を含む極性結合、例えば、ベンゼン環、さらには、トリアジン環、イミダゾール環、イソチアゾリン環などの共役ヘテロ環などの共役環状部分などが挙げられる。
【0016】
抗生物活性化合物の分子量は、例えば、200〜600、好ましくは、200〜500である。
【0017】
抗生物活性化合物の分子量が上記範囲を超える場合には、抗生物活性化合物の重合体に対する相溶性が低下する場合がある。一方、抗生物活性化合物の分子量が上記範囲に満たない場合には、懸濁重合(後述)中に、抗生物活性化合物が水相に残存してしまい、懸濁重合後に、かかる抗生物活性化合物が析出して、懸濁液が固化する場合がある。
【0018】
また、抗生物活性化合物の融点は、100℃以下であり、好ましくは、90℃以下、さらに好ましくは、80℃以下である。抗生物活性化合物の融点が上記範囲を超える場合には、抗生物活性化合物が徐放性粒子に内包されにくく、徐放性粒子外に析出する場合があり、また、たとえ、抗生物活性化合物が徐放性粒子に内包された場合でも、抗生物活性化合物が徐放性粒子外に徐放されない場合がある。
【0019】
具体的には、抗生物活性化合物は、殺菌、抗菌、防腐、防藻、防かび、殺虫などの抗生物活性を有する、殺菌剤、抗菌剤、防腐剤、防藻剤、防かび剤、除草剤、殺虫剤、誘引剤、忌避剤および殺鼠剤などから選択される。これら抗生物活性を有する化合物としては、例えば、ヨウ素系化合物、トリアゾール系化合物、カルバモイルイミダゾール系化合物、ジチオール系化合物、イソチアゾリン系化合物、ニトロアルコール系化合物、パラオキシ安息香酸エステルなどの殺菌防腐防藻防かび剤、例えば、ピレスロイド系化合物、ネオニコチノイド系化合物、有機塩素系化合物、有機リン系化合物、カーバメート系化合物、オキサジアジン系化合物などの防蟻剤(殺蟻剤)などが挙げられる。
【0020】
ヨウ素系化合物としては、例えば、3−ヨード−2−プロピニルブチルカルバメート(IPBC)、1−[[(3−ヨード−2−プロピニル)オキシ]メトキシ]−4−メトキシベンゼン、3−ブロモ−2,3−ジヨード−2−プロペニルエチルカーボネートなどが挙げられる。
【0021】
トリアゾール系化合物としては、例えば、1−[2−(2,4−ジクロロフェニル)−4−n−プロピル−1,3−ジオキソラン−2−イルメチル]−1H−1,2,4−トリアゾール(プロピコナゾール)、ビス(4−フルオロフェニル)メチル(1H−1,2,4−トリアゾール−1−イルメチルシラン(別称:フルシラゾール、1−[[ビス(4−フルオロフェニル)メチルシリル]メチル]−1H−1,2,4−トリアゾール)などが挙げられる。
【0022】
カルバモイルイミダゾール系化合物としては、例えば、N−プロピル−N−[2−(2,4,6−トリクロロ−フェノキシ)エチル]イミダゾール−1−カルボキサミド(プロクロラズ)などが挙げられる。
【0023】
ジチオール系化合物としては、例えば、4,5−ジクロロ−1,2−ジチオール−3−オンなどが挙げられる。
【0024】
イソチアゾリン系化合物としては、例えば、2−n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オン(OIT)、5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン(Cl−MIT)などが挙げられる。
【0025】
ニトロアルコール系化合物としては、例えば、2,2−ジブロモ−2−ニトロ−1−エタノール(DBNE)などが挙げられる。
【0026】
パラオキシ安息香酸エステルとしては、例えば、パラオキシ安息香酸ブチル、パラオキシ安息香酸プロピルなどが挙げられる。
【0027】
ピレスロイド系化合物としては、例えば、シロバナムシヨケギクより得られるピレトリン、シネリン、ジャスモリンなどが挙げられ、これらから誘導されるアレスリン、ビフェントリン、アクリナトリン、アルファシペルメトリン、トラロメトリン、シフルトリン((RS)−α−シアノ−4−フルオロ−3−フェノキシベンジル=(1RS,3RS)−(1RS,3RS)−3−(2,2−ジクロロビニル)−2,2−メチルシクロプロパンカルボキシラート。詳しくは、異性体I((1R−3R−αR)+(1S−3S−αS))[融点:57℃]、異性体II((1R−3R−S)+(1S−3S−αR))[融点:74℃]、異性体III((1R−3S−αR)+(1S−3R−αS)))[融点:66℃]の混合物)、シフェノトリン、プラレトリン、エトフェンプロックス、シラフルオフェン、フェンバレレートなども挙げられる。
【0028】
ネオニコチノイド系化合物としては、例えば、(E)−N1−[(6−クロロ−3−ピリジル)メチル]−N2−シアノ−N1−メチルアセトアミジン(アセタミプリド)などが挙げられる。
【0029】
有機塩素系化合物としては、例えば、ケルセンなどが挙げられる。
【0030】
有機リン系化合物としては、例えば、ホキシム、ピリダフェンチオン、フェニトロチオン、テトラクロルビンホス、ジクロフェンチオン、プロペタンホスなどが挙げられる。
【0031】
カーバメート系化合物としては、例えば、フェノブカルブ、プロポクスルなどが挙げられる。
【0032】
オキサジアジン系化合物としては、例えば、インドキサカルブなどが挙げられる。
【0033】
除草剤としては、例えば、ピラクロニル、ペンディメタリン、インダノファンなどが挙げられる。
【0034】
殺虫剤としては、例えば、ピリプロキシフェンなどが挙げられる。
【0035】
忌避剤としては、例えば、ディートなどが挙げられる。
【0036】
抗生物活性化合物は、実質的に疎水性であって、例えば、水に対する室温(20〜30℃、より具体的には、25℃)における溶解度が極めて小さく、具体的には、例えば、室温の溶解度が、重量基準で、1重量部/水100重量部(10000ppm)以下、好ましくは、0.5重量部/水100重量部(5000ppm)以下、さらに好ましくは、0.1重量部/水100重量部(1000ppm)以下であり、容量基準で、例えば、1g/水100mL以下、好ましくは、0.5g/水100mL以下、さらに好ましくは、0.1g/水100mL以下である。
【0037】
抗生物活性化合物の水に対する溶解度が、上記した範囲を超える場合には、重合性ビニルモノマーを重合(懸濁重合)する際に、抗生物活性化合物が徐放性粒子外(つまり、水相)へ漏出し易く、重合後に、水相に溶解していた抗生物活性化合物が析出するので、抗生物活性化合物を十分内包した徐放性粒子の合成が困難となる。
【0038】
これら抗生物活性化合物は、単独使用または2種以上併用することができる。
【0039】
なお、上記した抗生物活性化合物は、例えば、製造工程中に、融点が上記範囲外である不純物を適宜の割合で含有していてもよい。具体的には、シフルトリンの異性体I(融点:57℃)と異性体II(融点:74℃)と異性体III(融点:66℃)との混合物は、例えば、不純物である異性体IV(融点102℃)を含有している。
【0040】
重合性ビニルモノマーは、例えば、ビニル基を少なくとも1つ分子内に有するモノマーである。
【0041】
具体的には、重合性ビニルモノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸エステル系モノマー、(メタ)アクリル酸系モノマー、芳香族系ビニルモノマー、ビニルエステル系モノマー、マレイン酸エステル系モノマー、ハロゲン化ビニル、ハロゲン化ビニリデン、窒素含有ビニルモノマーなどが挙げられる。
【0042】
(メタ)アクリル酸エステル系モノマーとしては、例えば、メタクリル酸エステルおよび/アクリル酸エステルであって、具体的には、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸iso−プロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸iso−ブチル、(メタ)アクリル酸tert−ブチル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸2−メトキシエチルなどが挙げられる。
【0043】
(メタ)アクリル酸系モノマーとしては、例えば、メタクリル酸、アクリル酸などが挙げられる。
【0044】
芳香族系ビニルモノマーとしては、例えば、スチレン、p−メチルスチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエンなどが挙げられる。
【0045】
ビニルエステル系モノマーとしては、例えば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルなどが挙げられる。
【0046】
マレイン酸エステル系モノマーとしては、例えば、マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジエチル、マレイン酸ジブチルなどが挙げられる。
【0047】
ハロゲン化ビニルとしては、例えば、塩化ビニル、フッ化ビニルなどが挙げられる。
【0048】
ハロゲン化ビニリデンとしては、例えば、塩化ビニリデン、フッ化ビニリデンなどが挙げられる。
【0049】
窒素含有ビニルモノマーとしては、例えば、(メタ)アクリロニトリル、N−フェニルマレイミド、ビニルピリジンなどが挙げられる。
【0050】
重合性ビニルモノマーは、実質的に疎水性であって、例えば、水に対する室温における溶解度が極めて小さく、具体的には、室温における溶解度が、例えば、10重量部/水100重量部以下、好ましくは、8重量部/水100重量部以下である。
【0051】
上記した各モノマーの中で、例えば、上記した抗生物活性化合物に対する相溶性が強く、抗生物活性化合物を溶解することのできる抗生物活性化合物相溶性モノマー(以下、単に相溶性モノマーという場合がある。)が選択される。
【0052】
これら相溶性モノマーは、単独使用または2種以上併用することができる。
【0053】
相溶性モノマーとしては、好ましくは、同一種類の(メタ)アクリル酸エステル系モノマーの単独使用、異なる種類の(メタ)アクリル酸エステル系モノマーの併用、または、(メタ)アクリル酸エステル系モノマーと(メタ)アクリル酸系モノマーとの併用が挙げられる。
【0054】
さらに好ましくは、メタクリル酸メチル(MMA)の単独使用、メタクリル酸メチルと、(メタ)アクリル酸C2〜4アルキルとの併用、メタクリル酸メチルとメタクリル酸との併用が挙げられる。
【0055】
メタクリル酸メチルと併用される(メタ)アクリル酸C2〜4アルキルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸iso−プロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸iso−ブチル、(メタ)アクリル酸tert−ブチルなどが挙げられる。
【0056】
異なる種類の(メタ)アクリル酸エステル系モノマーが併用される場合には、メタクリル酸メチルの配合割合が、相溶性モノマー(後述する架橋性モノマーを含む)100重量部に対して、例えば、20重量部以上、好ましくは、40重量部以上であり、例えば、99重量部以下である。
【0057】
また、(メタ)アクリル酸エステル系モノマーおよび(メタ)アクリル酸系モノマーが併用される場合には、(メタ)アクリル酸系モノマーの配合割合は、架橋性モノマーを含む相溶性モノマー100重量部に対して、例えば、30重量部未満、20重量部以下であり、例えば、1重量部以上、好ましくは、3重量部以上である。
【0058】
抗生物活性化合物および相溶性モノマーは、後述する重合温度(加熱温度)において、重合性ビニルモノマーの重合体と抗生物活性化合物とが相溶するような組み合わせが選択される。
【0059】
また、重合性ビニルモノマーは、架橋性モノマーを相溶性モノマーとして含むこともできる。
【0060】
架橋性モノマーは、徐放性粒子の徐放性を調節するために、必要により配合され、例えば、エチレングリコールジ(メタ)クリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレートなどのモノまたはポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、例えば、1,3−プロパンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,5−ペンタンジオールジ(メタ)アクリレートなどのアルカンジオールジ(メタ)アクリレート、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレートなどのアルカンポリオールポリ(メタ)アクリレート、例えば、アリル(メタ)メタクリレート、トリアリル(イソ)シアヌレートなどのアリル系モノマー、例えば、ジビニルベンゼンなどのジビニル系モノマーなどが挙げられる。
【0061】
架橋性モノマーは、架橋性モノマーを除く相溶性モノマーとの相溶性を確保すべく、架橋性モノマーを除く相溶性モノマーの分子構造と類似する分子構造を有するモノマーが選択され、具体的には、架橋性モノマーを除く相溶性モノマーがメタクリル酸メチルを含む場合には、好ましくは、架橋性モノマーとしてエチレングリコールジメタクリレート(EGDMA)またはトリメチロールプロパンメタクリレート(TMPTMA)が選択される。
【0062】
架橋性モノマーの配合割合は、重合性ビニルモノマー(相溶性モノマー)100重量部に対して、例えば、1〜100重量部、好ましくは、10〜80重量部である。
【0063】
そして、本発明では、抗生物活性化合物および重合性ビニルモノマーとして、Hansenで定義され、van Klevelen and Hoftyzer法で算出される溶解度パラメータδの双極子間力項δp,compoundが2〜8[(J/cm3)1/2]であり、溶解度パラメータδの水素結合力項δh,compoundが5.5〜9.5[(J/cm3)1/2]である抗生物活性化合物と、溶解度パラメータδの双極子間力項δp,polymerが5〜7[(J/cm3)1/2]であり、溶解度パラメータδの水素結合力項δh,polymerが8〜10[(J/cm3)1/2]である重合体を生成する重合性ビニルモノマーとの組合せが選択される。
【0064】
なお、各項δ(δpおよびδh)の添字compoundおよびpolymerは、抗生物活性化合物および重合体をそれぞれ示す。
【0065】
Hansenで定義され、van Klevelen and Hoftyzer法で算出される溶解度パラメータδの双極子間力項δpおよび水素結合力項δhは、原子団(化学結合または置換基などを含む)の種類および数に依存し、具体的には、下記式(1)および(2)でそれぞれ示される。
【0066】
【数1】
【0067】
(式中、Fpは、分子間力の双極子間力要素(ポーラー・コンポーネント・オブ・ザ・モーラー・アトラクション・ファンクション(polar component of the molar attraction function)、Vはモル体積である。)
【0068】
【数2】
【0069】
(式中、Ehは、分子間力の水素結合力の要素(コントリビューション・オブ・ザ・ハイドロジェン・ボンディング・フォーセズ・ツー・ザ・コーヘシヴ・エナジー(contribution of the hydrogen bonding forces to the cohesive energy)、Vはモル体積である。)
上記したFp、EhおよびVの数値は、「Properties of Polymers」(3rd Edition、第7章、第189〜225頁、van Klevelen著、ELSEVIER、2003年発行)に、原子団毎に記載されている。
【0070】
なお、置換基−I、>Si<、=N−および≡C−のFpおよびEhは、上記した文献に記載されていないが、関西大学山本秀樹教授によって、次の方法で算出されている。
【0071】
まず、置換基−IのFpの算出方法について例示する。
【0072】
「Hansen Solubility Parameters, A User’s Handbook」(Charles Hansen著、第347〜483ページのAppendix、CRC Press、2007年発行)に記載されている置換基−Iを含む化合物を無作為に10個選択し、上記した文献に記載される化合物δpの数値を、上記式(1)の左辺として代入する。また、上記により選択された10個の化合物のすべての原子団のVの数値、および、置換基−Iを除く原子団のFpを上記式(2)の右辺に代入する一方、右辺における置換基−IのFpを未知数とする。
【0073】
そして、化合物のδp、すべての原子団のVおよび置換基を除く原子団のFpが既知数であり、置換基−IのFpが未知数である方程式を解き、10個の化合物に対応する解(Fp)の平均を、置換基−IのFpとして算出する。
【0074】
また、置換基>Si<、=N−および≡C−のFpについても、上記と同様に計算処理することにより、算出される。
【0075】
また、置換基−I、>Si<、=N−および≡C−のEhについても、上記と同様に計算処理することにより、それぞれ算出される。
【0076】
上記した計算処理は、プログラムとしてコンピュータに記録され、最適化されている。
【0077】
上記により算出された置換基−I、>Si<、=N−および≡C−のFpおよびEhを以下に記載する。
−I Fp:0(J1/2・cm3/2・mol−1)
Eh:0(J・mol−1)
>Si< Fp:0(J1/2・cm3/2・mol−1)
Eh:0(J・mol−1)
=N− Fp:800(J1/2・cm3/2・mol−1)
Eh:3000(J・mol−1)
≡C− Fp:0(J1/2・cm3/2・mol−1)
Eh:0(J・mol−1)
次に、重合体の一例として、メタクリル酸メチルの重合体であるポリメタクリル酸メチル(PMMA)を例示し、かかるポリメタクリル酸メチルの溶解度パラメータδの双極子間力項δp,PMMAおよび水素結合力項δh,PMMAを算出する。
1.ホモポリマーの双極子間力項δpおよび水素結合力項δh
(1)ポリメタクリル酸メチルの構造式
ポリメタクリル酸メチルは、下記式(3)で表される。
【0078】
【化1】
【0079】
(式中、nは、重合度を示す。)
(2)双極子間力項δp,PMMMA
上記式(3)のモノマー単位(−CH2−C(CH3)COOCH3−)において、各原子団に対応するFpおよびVを以下に記載する。
−CH3 Fp:0(J1/2・cm3/2・mol−1)
V:33.5(cm3・mol)
−CH2− Fp:0(J1/2・cm3/2・mol−1)
V:16.1(cm3・mol)
>C< Fp:0(J1/2・cm3/2・mol−1)
V:−19.2(cm3・mol)
−COO− Fp:490(J1/2・cm3/2・mol−1)
V:18(cm3・mol)
従って、モノマー単位の双極子間力項δp,monomer unitは、下記式(4)に示すように、5.98[(J/cm3)1/2]と算出される。
【0080】
【数3】
【0081】
そして、上記したモノマー単位の双極子間力項δp,monomer unitが、モノマー単位の繰り返し構造であるポリメタクリル酸メチルの双極子間力項δp,PMMAとされる。
(3)水素結合力項δh,PMMA
上記式(3)のモノマー単位(−CH2−C(CH3)COOCH3−)において、各原子団に対応するEhを以下に記載する。
−CH3 Eh:0(J・mol−1)
−CH2− Eh:0(J・mol−1)
>C< Eh:0(J・mol−1)
−COO− Eh:7000(J・mol−1)
従って、モノマー単位の水素結合力項δh,monomer unitは、下記式(5)に示すように、9.25[(J/cm3)1/2]と算出される。
【0082】
【数4】
【0083】
そして、上記したモノマー単位の水素結合力項δh,polymerが、モノマー単位の繰り返し構造であるポリメタクリル酸メチルの水素結合力項δh,PMMAとされる。
2.共重合体の双極子間力項δpおよび水素結合力項δh
次に、共重合体の双極子間力項δpおよび水素結合力項δhを算出する。
【0084】
各モノマー単位の双極子間力項δp,monomer unitに、モノマーの重量比を乗じて、それらを足し合わせることにより、共重合体の溶解度パラメータδの双極子間力項δp,copolymerを算出する。また、各モノマー単位の水素結合力項δh,monomer unitに、モノマーの重量比を乗じて、それらを足し合わせることにより、共重合体の溶解度パラメータδの水素結合力項δh,copolymerを算出する。
【0085】
共重合体の一例として、メタクリル酸メチルおよびエチレングリコールジメタクリレートを、重量比で90:10で含むモノマーの共重合体であるポリメタクリル酸メチル−エチレングリコールジメタクリレート共重合体(PMMA−EGDMA)を挙げて、その溶解度パラメータδの双極子間力項δp,PMMA−EGDMAおよび水素結合力項δh,PMMA−EGDMAを算出する。
(1)双極子間力項δp,PMMA−EGDMA
メタクリル酸メチルのモノマー単位の双極子間力項δp,MMA unitは、上記で算出したように、5.98[(J/cm3)1/2]である。
【0086】
また、エチレングリコールジメタクリレートのモノマー単位の双極子間力項δp,EDGMAは、上記と同様に算出することにより、5.37[(J/cm3)1/2]である。
【0087】
そして、この共重合体の双極子間力項δp,PMMA−EGDMAは、下記式(6)のように算出される。
δp,PMMA−EGDMA=(90/100)δp、MMA unit+(10/100)δp、EGDMA unit
=(90/100)×5.98+(10/100)×5.37
=5.92[(J/cm3)1/2] (6)
(2)水素結合力項δh,PMMA−EGDMA
メタクリル酸メチルのモノマー単位の水素結合力項δh,MMA unitは、9.25[(J/cm3)1/2]である。
【0088】
また、エチレングリコールジメタクリレートのモノマー単位の水素結合力項δh,EGDMAは、10.42[(J/cm3)1/2]である。
【0089】
そして、この共重合体の水素結合力項δh,PMMA−EGDMAは、下記式(7)のように算出される。
δh,PMMA−EGDMA=(90/100)δh,MMA unit+(10/100)δh,EGDMA unit
=(90/100)×9.25+(10/100)×10.42
=9.36[(J/cm3)1/2] (7)
そして、重合体の溶解度パラメータδの双極子間力項δp,polymerは、好ましくは、5〜6.5[(J/cm3)1/2]であり、重合体の溶解度パラメータδの水素結合力項δh,polymerは、好ましくは、9〜10[(J/cm3)1/2]である。
【0090】
重合体の双極子間力項δp,polymerおよび/または水素結合力項δh,polymerが上記範囲に満たないと、重合体の疎水性が過度に高くなり、抗生物活性化合物との十分な相溶性を得ることができない場合があり、たとえ相溶性を得ることができた場合でも、抗生物活性化合物が重合(懸濁重合)中に徐放性粒子外へ漏出して、抗生物活性化合物を十分内包した徐放性粒子の合成が困難となる。
【0091】
一方、重合体の双極子間力項δp,polymerおよび/または水素結合力項δh,polymerが上記範囲を超えると、重合体の親水性が過度に高くなり、抗生物活性化合物との十分な相溶性が得ることができない場合があり、たとえ相溶性を得ることができたとしても、懸濁重合における水相との界面自由エネルギーが低くなり、抗生物活性化合物が懸濁重合中に徐放性粒子外へ漏出して、抗生物活性化合物を十分内包した徐放性粒子の合成が困難となる。
3.抗生物活性化合物の溶解度δの双極子間力項δp,compoundおよび水素結合力項δh,compound
抗生物活性化合物の溶解度δの双極子間力項δp,compoundおよび水素結合力項δh,compoundについても、上記したモノマー単位のそれと同様にして算出される。
【0092】
その結果、算出されたIPBC、OIT、シフルトリン、プロピコナゾール、プロクロラズおよびフルシラゾールの各抗生物活性化合物の双極子間力項δp,compoundおよび水素結合力項δh,compoundを、表1に示す。
【0093】
【表1】
【0094】
抗生物活性化合物の溶解度パラメータδの双極子間力項δp,compoundは、好ましくは、3〜7[(J/cm3)1/2]であり、水素結合力項δh,compoundは、好ましくは、5.8〜9.5[(J/cm3)1/2]である。
【0095】
抗生物活性化合物の双極子間力項δp,compoundおよび/または水素結合力項δh,compoundが上記範囲に満たないと、抗生物活性化合物の疎水性が過度に高くなり、重合体との十分な相溶性を得ることができない場合がある。
【0096】
一方、抗生物活性化合物の双極子間力項δp,compoundおよび/または水素結合力項δh,compoundが上記範囲を超えると、抗生物活性化合物の親水性が過度に高くなり、抗生物活性化合物が徐放性粒子外へ漏出し易く、抗生物活性化合物を十分に内包した徐放性粒子の合成が困難となる場合がある。
4.溶解度パラメータの双極子間力項δpの差(Δδp)および水素結合力項δhの差(Δδh)
本発明では、溶解度パラメータδにおいて、双極子間力項δp,polymerから抗生物活性化合物の双極子間力項δp,compoundを差し引いた値Δδp(=δp,polymer−δp,compound)は、例えば、−1.1〜2.7[(J/cm3)1/2]である。
【0097】
また、重合体の水素結合力項δh,polymerから抗生物活性化合物の水素結合力項δh,compoundを差し引いた値Δδh(=δh,polymer−δh,compound)は、例えば、0〜4.2[(J/cm3)1/2]である。
【0098】
ΔδpおよびΔδhが上記した範囲内にあれば、抗生物活性化合物および重合体の優れた相溶性を確保して、優れた徐放性を確保することができる。
【0099】
抗生物活性化合物の双極子間力項δp,compoundおよび水素結合力項δh,compoundが上記した範囲内であり、かつ、重合体の双極子間力項δp,polymerおよび水素結合力項δh,polymerが上記した範囲内であれば、抗生物活性化合物は、ラジカル重合中、懸濁粒子から漏出せずに重合体と相溶していると定義される。
【0100】
そして、本発明の徐放性粒子の製造方法では、まず、上記した疎水性の抗生物活性化合物を、溶剤の不存在下、疎水性の重合性ビニルモノマーで溶解することにより、疎水性溶液を調製する。
【0101】
疎水性溶液は、抗生物活性化合物および重合性ビニルモノマーを配合し、溶剤(ヘキサン、トルエン、酢酸エチルなどの疎水性の有機溶剤)を配合することなく、均一に攪拌することにより得ることができる。
【0102】
抗生物活性化合物の重合性ビニルモノマーに対する配合割合は、重量基準(つまり、抗生物活性化合物の重量部/重合性ビニルモノマーの重量部)で、例えば、10/90〜60/40(つまり、0.11〜1.5)である。
【0103】
とりわけ、抗生物活性化合物が常温(20〜30℃、より具体的には、25℃)で液体の場合には、重合性ビニルモノマーに対する抗生物活性化合物の配合割合は、抗生物活性化合物が重合性ビニルモノマーの重合体に対する可塑剤として作用することから、重量基準で、例えば、1/99〜60/40、好ましくは、5/95〜50/50である。
【0104】
抗生物活性化合物が常温で固体の場合には、抗生物活性化合物の拡散速度が常温で液体の場合に比べて、徐放速度が遅くなることから、重量基準で、例えば、10/90〜70/30、好ましくは、10/90〜60/40である。
【0105】
疎水性溶液の調製は、例えば、常温で実施してもよく、あるいは、必要に応じて、加熱して実施することもできる。
【0106】
加熱温度は、例えば、30〜100℃、好ましくは、40〜80℃である。
【0107】
次いで、疎水性溶液を水分散(懸濁)させる。
【0108】
すなわち、疎水性溶液および水を配合し、均一に攪拌することにより、疎水性溶液を水分散(懸濁)させる。これにより、疎水性溶液の水分散(懸濁)液を得る。
【0109】
水分散の条件は、特に制限されず、例えば、常温で実施してもよく、あるいは、加熱して実施することもできる。好ましくは、疎水性溶液の調製において加熱して実施している場合には、水分散時にも、加熱する。加熱温度は、例えば、上記した水分散時の加熱温度以上であり、具体的には、30〜100℃、好ましくは、40〜80℃である。
【0110】
水の配合割合は、疎水性溶液100重量部に対して、例えば、100〜1000重量部、好ましくは、150〜500重量部である。
【0111】
疎水性溶液の水分散では、好ましくは、分散剤および界面活性剤を配合する。
【0112】
分散剤としては、例えば、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルピロリドン、ゼラチン、アラビアゴム、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カチオン化澱粉、ポリアクリル酸およびそのナトリウム塩、スチレンマレイン酸コポリマーおよびそのナトリウム塩などの水溶性ポリマー、例えば、第三燐酸カルシウム、コロイダルシリカ、モンモリナイト、炭酸マグネシウム、水酸化アルミニウム、亜鉛華などの無機系分散剤などが挙げられる。
【0113】
分散剤のうち、好ましくは、ポリビニルアルコール(PVA)、第三燐酸カルシウムが挙げられる。
【0114】
分散剤の配合割合は、疎水性溶液100重量部に対して、例えば、0.01〜10重量部、好ましくは、0.1〜5重量部である。
【0115】
界面活性剤は、ラジカル重合中の粒子の凝集を有効に防止するために、好ましくは、上記した分散剤と併用され、具体的には、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、ジ−2−エチルヘキシルスルホコハク酸ナトリウム、ドデシルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム、ノニルジフェニルエーテルスルホン酸ナトリウム、ナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物ナトリウム塩などのアニオン系界面活性剤、例えば、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンモノステアレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレート、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックコポリマーなどのノニオン系界面活性剤などが挙げられる。好ましくは、アニオン系界面活性剤が挙げられる。
【0116】
界面活性剤の配合割合は、疎水性溶液100重量部に対して、例えば、0.0001〜1.0重量部、好ましくは、0.001〜0.1重量部である。
【0117】
これら分散剤および界面活性剤は、例えば、疎水性溶液および水の配合前または配合後のいずれにおいても、配合することができ、好ましくは、疎水性溶液と配合する前の水に配合する。これにより、分散剤および界面活性剤の水溶液を調製する。
【0118】
上記した疎水性溶液の水分散(懸濁)では、例えば、ホモミキサー(ホモミクサー)、超音波ホモジナイザー、加圧式ホモジナイザー、マイルダー、多孔膜圧入分散機などの分散機が用いられ、好ましくは、ホモミキサーが用いられる。
【0119】
次いで、水分散された疎水性溶液の重合性ビニルモノマーを、油溶性開始剤の存在下、ラジカル重合して、重合体を生成する。
【0120】
油溶性開始剤としては、例えば、ジラウロイルパーオキシド、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ヘキシルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ベンゾイルパーオキシドなどの有機過酸化物、例えば、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)などのアゾ系化合物などが挙げられる。
【0121】
油溶性開始剤は、例えば、水と配合する前の疎水性溶液に配合することができ、または、それらの配合後における水分散液に配合することもできる。好ましくは、水と配合する前の疎水性溶液、より具体的には、水と配合する直前の疎水性溶液に配合する。
【0122】
油溶性開始剤の配合割合は、重合性ビニルモノマー100重量部に対して、例えば、0.01〜2重量部、好ましくは、0.1〜1重量部である。
【0123】
また、このラジカル重合は、懸濁液の懸濁状態を維持するように、懸濁液を攪拌しながら実施することから、懸濁重合とされる。また、原料となるモノマーが疎水性相(油相)のみにあることから、インサイチュ(in situ)重合とされる。
【0124】
また、ラジカル重合は、例えば、水分散液を、例えば、加熱することにより、反応を開始させる。
【0125】
加熱条件は、油溶性開始剤の種類によって適宜選択され、加熱温度が、例えば、30〜100℃、好ましくは、50〜100℃であり、加熱時間が、例えば、3〜24時間、好ましくは、5〜12時間である。さらに、所定温度に加熱後、その温度を所定時間維持し、その後、加熱および温度維持を繰り返すことにより、段階的に加熱することもできる。
【0126】
また、ラジカル重合時における圧力は、特に限定されず、常圧である。
【0127】
なお、上記した説明では、ラジカル重合を常圧で実施しているが、例えば、高圧下で実施することもできる。これにより、反応系を、100℃を超過する温度に設定でき、室温で固体の抗生物活性化合物を容易に液状にすることもできる。
【0128】
そして、ラジカル重合中、重合性ビニルモノマーの重合体は、好ましくは、抗生物活性化合物に対して相溶している。つまり、重合体が抗生物活性化合物に溶解されて、重合体の抗生物活性化合物溶液とされており、その抗生物活性化合物溶液が、水分散されている。
【0129】
また、重合性ビニルモノマーは、上記したラジカル重合中の重合温度(加熱温度)において、好ましくは、上記したように重合性ビニルモノマーの重合体と抗生物活性化合物とが相溶するような組み合わせが選択されていることから、ラジカル重合(懸濁重合)中に相分離が生じることを防止して、重合体(反応途中の重合体)が抗生物活性化合物を溶解し、あるいは、重合体(反応途中の重合体)が抗生物活性化合物に対して膨潤した状態で反応が進行し、均一相が形成された徐放粒子を得ることができる。なお、抗生物活性化合物は常温で液体であれば、常温でもそのまま均一相の状態が維持される。
【0130】
その後、重合後の水分散液を、例えば、放冷などによって冷却する。
【0131】
冷却温度は、例えば、室温(20〜30℃、より具体的には、25℃)である。
【0132】
冷却後、抗生物活性化合物は、室温で液体であれば、重合性ビニルモノマーの重合体に対して、相溶している。
【0133】
あるいは、冷却後、抗生物活性化合物は、室温で固体であれば、重合性ビニルモノマーの重合体の粒子中において、相溶状態が凍結されて、非常に微細な固体微粒子として分散している。
【0134】
徐放性粒子が粉剤(後述)または粒剤(後述)として製剤化される場合には、徐放性粒子が互いに融着することを防止すべく、好ましくは、室温において、硬質のガラス状態とされるように、重合性ビニルモノマーが選択される。
【0135】
徐放性粒子の粒子径は、特に制限されず、平均粒子径(メジアン径)で、例えば、500nm〜1mm、好ましくは、1μm〜100μmである。
【0136】
とりわけ、常温で液体の抗生物活性化合物から得られる徐放性粒子の平均粒子径は、例えば、5〜100μmであり、常温で固体の抗生物活性化合物から得られる徐放性粒子の平均粒子径は、例えば、0.5〜30μmである。
【0137】
これにより、抗生物活性化合物が均一に存在する徐放性粒子が水分散(懸濁)された水分散(懸濁)液を得ることができる。
【0138】
そして、徐放性粒子を含む水分散(懸濁)液に、必要により、その他の分散剤、増粘剤、凍結防止剤、防腐剤、微生物増殖抑制剤、比重調節剤などの公知の添加剤を適宜配合する。
【0139】
このようにして得られた徐放性粒子は、そのままの状態(水分散液あるいは懸濁液)、つまり、水分散剤あるいは懸濁剤として用いてもよく、また、濾過および/または遠心分離などによって固液分離した後に、例えば、粉剤または粒剤などの公知の剤型に製剤化して用いてもよい。また、必要により、水洗浄および/または酸洗浄することもできる。さらに、水分散(懸濁)液をそのまま噴霧乾燥または風乾して、粉剤または粒剤などの剤型に製剤化することもできる。
【0140】
なお、粉剤は、とりわけ、分散剤として第三燐酸カルシウムが用いられた場合には、流動性に優れている。また、かかる粉剤を、再度、水分散または懸濁させることにより、水分散剤または懸濁剤を再調製することができる。そのため、かかる粉剤は、再水分散性または再懸濁性に優れる。
【0141】
その結果、輸送時には、徐放性粒子を粉剤として調製しておき、使用時には、水分散剤または懸濁剤として調製(再製剤化、再生)することにより、輸送コストの低減、さらには、用途を拡大させることができる。
【0142】
また、本発明では、抗生物活性化合物の融点が100℃以下と低いにもかかわらず、抗生物活性化合物を含有する徐放性粒子、とりわけ、徐放性粒子の粉剤は、取扱性に優れている。
【0143】
そして、上記した本発明の徐放性粒子の製造方法によれば、溶解度パラメータδの双極子間力項δp,compoundおよび水素結合力項δh,compoundが特定範囲にある抗生物活性化合物を溶解している疎水性の重合性モノマーを重合して、溶解度パラメータδの双極子間力項δp,polymerおよび水素結合力項δh,polymerが特定範囲にある重合体を生成するので、原料の調製が簡便となり、製造工程が簡単となり、さらに、原料コストが低減されることから、製造コストを低減させることができる。
【0144】
そのため、簡単、かつ、低コストで、優れた徐放性を有し、優れた効力持続効果を発現することのできる徐放性粒子を得ることができる。
【0145】
従って、この徐放性粒子は、各種の工業製品に適用することができ、例えば、屋内外の塗料、ゴム、繊維、樹脂、プラスチック、接着剤、目地剤、シーリング剤、建材、コーキング剤、土壌処理剤、木材、製紙工程における白水、顔料、印刷版用処理液、冷却用水、インキ、切削油、化粧用品、不織布、紡糸油、皮革などに配合することができる。なお、これらの工業製品に対する徐放性粒子中の抗生物活性化合物の配合量は、例えば、10〜100000mg/kg(製品重量)である。
【0146】
さらに、上記の方法によれば、溶剤を使用することなく、疎水性溶液を調製するので、環境負荷を低減することができる。
【0147】
そのため、この徐放性粒子は、屋内外の水性塗料に好適に配合することができ、その水性塗料としては、例えば、アクリル系、アクリル−スチレン系、スチレン系、酢酸ビニル系、酢酸ビニル−アクリル系、ポリエステル系、シリコーン系、ウレタン系、アルキッド系、フッ素系の樹脂のエマルションまたは水性樹脂およびこれらの混合物などをビヒクルとする塗料が挙げられ、なかでも、ゼロVOC塗料に配合すれば、環境に優しく、かつ、徐放性粒子の安定性を良好に維持して、効力持続性の向上を、より一層図ることができる。
【実施例】
【0148】
各実施例および各比較例で用いる略号の詳細を次に記載する。
IPBC:商品名「ファンギトロール400」、3−ヨード−2−プロピニルブチルカルバメート、分子量281、融点:60℃、水への溶解度:150ppm、溶解度パラメータδの双極子間力項δp,compound:3.23[(J/cm3)1/2]、溶解度パラメータδの水素結合力項δh,compound:7.83[(J/cm3)1/2]、インターナショナル・スペシャリティ・プロダクツ社製
OIT:商品名「ケーソン893T」(「ケーソン」は登録商標)、2−n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オン、分子量213、融点:20℃未満、水への溶解度:300ppm、溶解度パラメータδの双極子間力項δp,compound:5.47[(J/cm3)1/2]、溶解度パラメータδの水素結合力項δh,compound:5.87[(J/cm3)1/2]、ローム・アンド・ハース社製
シフルトリン:商品名「プリベントールHS12」(「プリベントール」は登録商標)、(RS)−α−シアノ−4−フルオロ−3−フェノキシベンジル=(1RS,3RS)−(1RS,3RS)−3−(2,2−ジクロロビニル)−2,2−メチルシクロプロパンカルボキシラート、分子量434、水への溶解度:1〜2ppb、異性体I(融点57℃)と異性体II(融点74℃)と異性体III(融点66℃)と異性体IV(融点102℃)との混合物、溶解度パラメータδの双極子間力項δp,compound:3.46[(J/cm3)1/2]、溶解度パラメータδの水素結合力項δh,compound:6.09[(J/cm3)1/2]、ランクセス社製
プロピコナゾール:1−[2−(2,4−ジクロロフェニル)−4−n−プロピル−1,3−ジオキソラン−2−イルメチル]−1H−1,2,4−トリアゾール、分子量342、融点:20℃未満、水への溶解度:110ppm、溶解度パラメータδの双極子間力項δp,compound:6.55[(J/cm3)1/2]、溶解度パラメータδの水素結合力項δh,compound:9.44[(J/cm3)1/2]、八幸通商社製
プロクロラズ:N−プロピル−N−[2−(2,4,6−トリクロロ−フェノキシ)エチル]イミダゾール−1−カルボキサミド、分子量375、融点45〜52℃、水への溶解度:55ppm、溶解度パラメータδの双極子間力項δp,compound:6.87[(J/cm3)1/2]、溶解度パラメータδの水素結合力項δh,compound:8.85[(J/cm3)1/2]、丸善薬品社製
フルシラゾール:ビス(4−フルオロフェニル)メチル(1H−1,2,4−トリアゾール−1−イルメチルシラン、分子量315、融点:54℃、水への溶解度:45ppm、溶解度パラメータδの双極子間力項δp,compound:5.95[(J/cm3)1/2]、溶解度パラメータδの水素結合力項δh,compound:6.85[(J/cm3)1/2]、エアブラウン社製
MBACT:商品名「イルガロール1071」(「イルガロール」は登録商標)、2−メチルチオ−4−t−ブチルアミノ−6−シクロプロピルアミノ−s−トリアジン、分子量253、融点:133℃、水への溶解度:7ppm、溶解度パラメータδの双極子間力項δp,compound:7.18[(J/cm3)1/2]、溶解度パラメータδの水素結合力項δh,compound:8.77[(J/cm3)1/2]、チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製
カプリン酸:分子量172、融点:29〜32℃、水への溶解度:1.5重量%、溶解度パラメータδの双極子間力項δp,monomer unit:2.20[(J/cm3)1/2]、溶解度パラメータδの水素結合力項δh,monomer unit:7.24[(J/cm3)1/2]
メタクリル酸メチル:商品名「アクリルエステルM」、水への溶解度:1.6重量%、モノマー単位としての溶解度パラメータδの双極子間力項δp,monomer unit:5.98[(J/cm3)1/2]、モノマー単位としての溶解度パラメータδの水素結合力項δh,monomer unit:9.25[(J/cm3)1/2]、三菱レイヨン社製
メタクリル酸n−ブチル:水への溶解度:0.08重量%、モノマー単位としての溶解度パラメータδの双極子間力項δp,monomer unit:3.76(J/cm3)1/2]、モノマー単位としての溶解度パラメータδの水素結合力項δh,monomer unit:7.33[(J/cm3)1/2]、三菱レイヨン社製
アクリル酸メチル:水への溶解度:5.7重量%、モノマー単位としての溶解度パラメータδの双極子間力項δp,monomer unit:7.36[(J/cm3)1/2]、モノマー単位としての溶解度パラメータδの水素結合力項δh,monomer unit:10.25[(J/cm3)1/2]、日本触媒社製
アクリル酸エチル:水への溶解度:1.5重量%、モノマー単位としての溶解度パラメータδの双極子間力項δp,monomer unit:5.93[(J/cm3)1/2]、モノマー単位としての溶解度パラメータδの水素結合力項δh,monomer unit:9.20[(J/cm3)1/2]、日本触媒社製
アクリル酸n−ブチル:水への溶解度:0.2重量%、モノマー単位としての溶解度パラメータδの双極子間力項δp,monomer unit:4.26[(J/cm3)1/2]、モノマー単位としての溶解度パラメータδの水素結合力項δh,monomer unit:7.81[(J/cm3)1/2]、日本触媒社製
メタクリル酸:水への溶解度:8.9重量%、モノマー単位としての溶解度パラメータδの双極子間力項δp,monomer unit:7.13[(J/cm3)1/2]、モノマー単位としての溶解度パラメータδの水素結合力項δh,monomer unit:13.03[(J/cm3)1/2]、三菱レイヨン製
スチレン:水に不溶、モノマー単位としての溶解度パラメータδの双極子間力項δp,monomer unit:1.27[(J/cm3)1/2]、モノマー単位としての溶解度パラメータδの水素結合力項δh,monomer unit:0.00[(J/cm3)1/2]
エチレングリコールジメタクリレート:商品名「ライトエステルEG」、水に不溶、モノマー単位としての溶解度パラメータδの双極子間力項δp,monomer unit:5.37[(J/cm3)1/2]、モノマー単位としての溶解度パラメータδの水素結合力項δh,monomer:10.42[(J/cm3)1/2]、共栄社化学社製
トリメチロールプロパントリメタクリレート:商品名「ライトエステルTMP」、水に不溶、溶解度パラメータδの双極子間力項δp,monomer unit:3.79[(J/cm3)1/2]、溶解度パラメータδの水素結合力項δh,monomer unit:9.68[(J/cm3)1/2]、共栄社化学社製
ジラウロイルパーオキシド:商品名「パーロイルL」(「パーロイル」は登録商標)、日油社製
PVA−217:商品名「クラレポバール217」、部分鹸化ポリビニルアルコール、クラレ社製
TCP−10U:商品名、第三燐酸カルシウム(3[Ca3(PO4)2]・Ca(OH)2)の10重量%水懸濁液、松尾薬品産業社製
DBN:商品名「ネオペレックスNo.6パウダー」(「ネオペレックス」は登録商標)、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、花王社製
ペレックスSS−L:商品名(「ペレックス」は登録商標)、ドデシルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム、花王社製
実施例1
(IPBC含有徐放性粒子を含む懸濁剤の製剤化)
200mLのビーカー(1)に、IPBC40g、メタクリル酸メチル54g、エチレングリコールジメタクリレート6gおよびジラウロイルパーオキシド300mgを仕込み、室温で攪拌することにより、均一な疎水性溶液を調製した。
【0149】
別途、500mLのビーカー(2)に、イオン交換水280g、PVA−217の10%水溶液20gおよびDBNの5%水溶液200mgを仕込み、室温で攪拌することにより、均一な水溶液を得た。
【0150】
次いで、500mLのビーカー(2)に、疎水性溶液を加え、T.K.ホモミクサーMARK2.5型(プライミクス社製)により回転数5000rpmで10分間攪拌することにより、疎水性溶液を水分散させて、懸濁液を調製した。
【0151】
その後、懸濁液を、攪拌器、還流冷却器、温度計および窒素導入管を装備した500mL4頚コルベンに移し、窒素気流下、攪拌しながら昇温して、懸濁重合を行った。
【0152】
懸濁重合は、55℃到達時点を重合開始とし、その後、60±2℃で1時間、70±2℃で3時間、80±2℃で2時間、連続して行った。
【0153】
その後、反応後の懸濁液を30℃以下に冷却することにより、IPBCを含有するメジアン径7.4μmの徐放性粒子の懸濁液(懸濁剤)を得た。
【0154】
なお、徐放性粒子のメジアン径は、レーザー回析散乱式粒子径分布測定装置LA−920(堀場製作所社製)により測定した。メジアン径の測定は、以下の各実施例および各比較例についても同様である。
【0155】
実施例2
(IPBC含有徐放性粒子を含む懸濁剤の製剤化)
200mLのビーカー(1)に、IPBC40g、メタクリル酸メチル42g、エチレングリコールジメタクリレート18gおよびジラウロイルパーオキシド300mgを仕込み、室温で攪拌することにより、均一な疎水性溶液を調製した。
【0156】
別途、500mLのビーカー(2)に、イオン交換水280g、TCP−10U 20gおよびペレックスSS−Lの5%水溶液200mgを仕込み、室温で攪拌することにより、均一な水溶液を得た。
【0157】
次いで、500mLのビーカー(2)に、疎水性溶液を加え、T.K.ホモミクサーMARK2.5型(プライミクス社製)により回転数5000rpmで10分間攪拌することにより、疎水性溶液を水分散させて、懸濁液を調製した。
【0158】
その後、懸濁液を、攪拌器、還流冷却器、温度計および窒素導入管を装備した500mL4頚コルベンに移し、窒素気流下、攪拌しながら昇温して、懸濁重合を行った。
【0159】
懸濁重合は、55℃到達時点を重合開始とし、その後、60±2℃で1時間、70±2℃で3時間、80±2℃で2時間、連続して行った。
【0160】
その後、反応後の懸濁液を30℃以下に冷却することにより、IPBCを含有するメジアン径8.2μmの徐放性粒子の懸濁液(懸濁剤)を得た。
【0161】
実施例3
(IPBC含有徐放性粒子を含む懸濁剤の製剤化)
メタクリル酸メチルおよびエチレングリコールジメタクリレートの仕込み量を、ともに30gに変更した以外は、実施例1と同様にして、疎水性溶液を水分散させ、続いて、懸濁重合を行なうことにより、IPBCを含有するメジアン径9.6μmの徐放性粒子の懸濁液(懸濁剤)を得た。
【0162】
実施例4
(OIT含有徐放性粒子を含む懸濁剤の製剤化)
200mLのビーカー(1)に、OIT40g、メタクリル酸メチル54g、エチレングリコールジメタクリレート6gおよびジラウロイルパーオキシド300mgを仕込み、室温で攪拌することにより、均一な疎水性溶液を調製した。
【0163】
別途、500mLのビーカー(2)に、イオン交換水280g、PVA−217の10%水溶液20gおよびDBNの5%水溶液200mgを室温で攪拌することにより、均一な水溶液を得た。
【0164】
次いで、500mLのビーカー(2)に、疎水性溶液を加え、T.K.ホモミクサーMARK2.5型(プライミクス社製)により回転数2000rpmで10分間攪拌することにより、疎水性溶液を水分散させて、懸濁液を調製した。
【0165】
その後、懸濁液を、攪拌器、還流冷却器、温度計および窒素導入管を装備した500mL4頚コルベンに移し、窒素気流下、攪拌しながら昇温して、懸濁重合を行った。
【0166】
懸濁重合は、55℃到達時点を重合開始とし、その後、60±2℃で2時間、70±2℃で2時間、80±2℃で2時間、連続して行った。
【0167】
その後、反応後の懸濁液を30℃以下に冷却することにより、OITを含有するメジアン径14μmの徐放性粒子の懸濁液(懸濁剤)を得た。
【0168】
実施例5
(OIT含有徐放性粒子を含む懸濁剤の製剤化)
メタクリル酸メチルおよびエチレングリコールジメタクリレートの仕込み量を、ともに30gに変更した以外は、実施例4と同様にして、疎水性溶液を水分散させ、続いて、懸濁重合を行なうことにより、OITを含有するメジアン径14μmの徐放性粒子の懸濁液(懸濁剤)を得た。
【0169】
実施例6
(OIT含有徐放性粒子を含む懸濁剤の製剤化)
OIT、メタクリル酸メチルおよびエチレングリコールジメタクリレートの仕込み量を、それぞれ、50g、45gおよび5gに変更した以外は、実施例4と同様にして、疎水性溶液を水分散させ、続いて、懸濁重合を行なうことにより、OITを含有するメジアン径9.8μmの徐放性粒子の懸濁液(懸濁剤)を得た。
【0170】
実施例7
(OIT含有徐放性粒子を含む懸濁剤の製剤化)
水分散時におけるT.K.ホモミクサーMARK2.5型(プライミクス社製)の攪拌条件を、回転数1000rpmに変更した以外は、実施例4と同様にして、疎水性溶液を水分散させ、続いて、懸濁重合を行なうことにより、IPBCを含有するメジアン径29μmの徐放性粒子の懸濁液(懸濁剤)を得た。
【0171】
実施例8
(シフルトリン含有微粒子を含む懸濁剤の製剤化)
200mLのビーカー(1)に、シフルトリン40g、メタクリル酸メチル54g、トリメチロールプロパントリメタクリレート6g、ジラウロイルパーオキシド300mgを仕込み、室温で攪拌することにより、均一な疎水性溶液を調製した。
【0172】
別途、500mLのビーカー(2)に、イオン交換水280g、PVA−217の10%水溶液20g、DBNの5%水溶液200mgを仕込み、室温で攪拌することにより、均一な水溶液を得た。
【0173】
次いで、500mLのビーカー(2)に、疎水性溶液を加え、T.K.ホモミクサーMARK2.5型(プライミクス社製)により回転数3000rpmで10分間攪拌することにより、疎水性溶液を水分散させて、懸濁液を調製した。
【0174】
その後、懸濁液を、攪拌器、還流冷却器、温度計および窒素導入管を装備した500mL4頚コルベンに移し、窒素気流下、攪拌しながら昇温して、懸濁重合を行った。
【0175】
懸濁重合は、55℃到達時点を重合開始とし、その後、60±2℃で2時間、70±2℃で2時間、80±2℃で2時間、連続して行った。
【0176】
その後、反応後の懸濁液を30℃以下に冷却することにより、シフルトリンを含有するメジアン径15μmの徐放性粒子の懸濁液(懸濁剤)を得た。
【0177】
実施例9
(OIT含有徐放性粒子を含む懸濁剤の製剤化)
200mLのビーカー(1)に、OIT40g、メタクリル酸メチル36g、メタクリル酸6g、エチレングリコールジメタクリレート18gおよびジラウロイルパーオキシド300mgを仕込み、室温で攪拌することにより、均一な疎水性溶液を調製した。
【0178】
別途、500mLのビーカー(2)に、イオン交換水280g、TCP−10U 20gおよびペレックスSS−Lの5%水溶液200mgを仕込み、室温で攪拌することにより、均一な水溶液を得た。
【0179】
次いで、500mLのビーカー(2)に、疎水性溶液を加え、T.K.ホモミクサーMARK2.5型(プライミクス社製)により2000rpmで10分間攪拌することにより、疎水性溶液を水分散させて、懸濁液を調製した。
【0180】
その後、懸濁液を、攪拌器、還流冷却器、温度計および窒素導入管を装備した500mL4頚コルベンに移し、窒素気流下、攪拌しながら昇温して、懸濁重合を行った。
【0181】
懸濁重合は、55℃到達時点を重合開始とし、その後、60±2℃で2時間、70±2℃で2時間、80±2℃で2時間、連続して行った。
【0182】
その後、反応後の懸濁液を30℃以下に冷却することにより、OITを含有するメジアン径36μmの徐放性粒子の懸濁液(懸濁剤)を得た。
【0183】
実施例10
(シフルトリン含有徐放性粒子を含む懸濁剤の製剤化)
200mLのビーカー(1)に、シフルトリン40g、メタクリル酸メチル42g、エチレングリコールジメタクリレート18gおよびジラウロイルパーオキシド300mgを仕込み、室温で攪拌することにより、均一な疎水性溶液を調製した。
【0184】
別途、500mLのビーカー(2)に、イオン交換水280g、TCP−10U 20gおよびペレックスSS−Lの5%水溶液200mgを仕込み、室温で攪拌することにより、均一な水溶液を得た。
【0185】
次いで、500mLのビーカー(2)に、疎水性溶液を加え、T.K.ホモミクサーMARK2.5型(プライミクス社製)により3000rpmで10分間攪拌することにより、疎水性溶液を水分散させて、懸濁液を調製した。
【0186】
その後、懸濁液を、攪拌機および還流冷却機を装備した500mL4頚コルベンに移し、窒素気流下、攪拌しながら昇温して、懸濁重合を行った。
【0187】
懸濁重合は、55℃到達時点を重合開始とし、その後、60±2℃で2時間、70±2℃で2時間、80±2℃で2時間、連続して行った。
【0188】
その後、反応後の懸濁液を30℃以下に冷却することにより、シフルトリン(異性体I、異性体IIおよび異性体IIIの混合物)を含有するメジアン径22μmの徐放性粒子の懸濁液(懸濁剤)を得た。
【0189】
実施例11
(プロピコナゾール含有徐放性粒子を含む懸濁剤の製剤化)
シフルトリン40gに代えて、プロピコナゾール40gを仕込んだ以外は、実施例10と同様にして、疎水性溶液を水分散させ、続いて、懸濁重合を行なうことにより、プロピコナゾールを含有するメジアン径19μmの徐放性粒子の懸濁液(懸濁剤)を得た。
【0190】
実施例12
(プロクロラズ含有徐放性粒子を含む懸濁剤の製剤化)
シフルトリン40gに代えて、プロクロラズ40gを仕込んだ以外は、実施例10と同様にして、疎水性溶液を水分散させ、続いて、懸濁重合を行なうことにより、プロクロラズを含有するメジアン径30μmの徐放性粒子の懸濁液(懸濁剤)を得た。
【0191】
実施例13
(フルシラゾール含有徐放性粒子を含む懸濁剤の製剤化)
シフルトリン40gに代えて、フルシラゾール40gを仕込んだ以外は、実施例10と同様にして、疎水性溶液を水分散させ、続いて、懸濁重合を行なうことにより、フルシラゾールを含有するメジアン径32μmの徐放性粒子の懸濁液(懸濁剤)を得た。
【0192】
実施例14
(IPBC含有徐放性粒子を含む懸濁剤の製剤化)
200mLのビーカー(1)に、IPBC40g、メタクリル酸メチル24g、メタクリル酸n−ブチル18g、エチレングリコールジメタクリレート18gおよびジラウロイルパーオキシド300mgを仕込み、室温で攪拌することにより、均一な疎水性溶液を調製した。
【0193】
別途、500mLのビーカー(2)に、イオン交換水280g、PVA−217の10%水溶液20gおよびDBNの5%水溶液200mgを仕込み、室温で攪拌することにより、均一な水溶液を得た。
【0194】
次いで、500mLのビーカー(2)に、疎水性溶液を加え、T.K.ホモミクサーMARK2.5型(プライミクス社製)により3000rpmで10分間攪拌することにより、疎水性溶液を水分散させて、懸濁液を調製した。
【0195】
その後、懸濁液を、攪拌器、還流冷却器、温度計および窒素導入管を装備した500mL4頚コルベンに移し、窒素気流下、攪拌しながら昇温して、懸濁重合を行った。
【0196】
懸濁重合は、55℃到達時点を重合開始とし、その後、60±2℃で1時間、70±2℃で3時間、80±2℃で2時間、連続して行った。
【0197】
その後、反応後の懸濁液を30℃以下に冷却することにより、IPBCを含有するメジアン径24μmの徐放性粒子の懸濁液(懸濁剤)を得た。
【0198】
実施例15
(IPBC含有徐放性粒子を含む懸濁剤の製剤化)
メタクリル酸n−ブチル18gに代えて、アクリル酸エチル18gを仕込んだ以外は、実施例14と同様にして、疎水性溶液を水分散させ、続いて、懸濁重合を行なうことにより、IPBCを含有するメジアン径22μmの徐放性粒子の懸濁液(懸濁剤)を得た。
【0199】
実施例16
(IPBC含有徐放性粒子を含む懸濁剤の製剤化)
メタクリル酸n−ブチル18gに代えて、アクリル酸n−ブチル18gを仕込んだ以外は、実施例14と同様にして、疎水性溶液を水分散させ、続いて、懸濁重合を行なうことにより、IPBCを含有するメジアン径22μmの徐放性粒子の懸濁液(懸濁剤)を得た。
【0200】
比較例1
(MBACT含有徐放性粒子を含む懸濁剤の製剤化)
200mLのビーカー(1)に、MBACT10g、メタクリル酸メチル81g、エチレングリコールジメタクリレート9g、ジラウロイルパーオキシド300mgを仕込み、室温で攪拌することにより、均一な疎水性溶液を調製した。
【0201】
別途、500mLのビーカー(2)に、イオン交換水280g、PVA−217の10%水溶液20gおよびDBNの5%水溶液200mgを仕込み、室温で攪拌することにより、均一な水溶液を得た。
【0202】
次いで、500mLのビーカー(2)に、疎水性溶液を加え、T.K.ホモミクサーMARK2.5型(プライミクス社製)により回転数3000rpmで10分間攪拌することにより、疎水性溶液を水分散させて、懸濁液を調製した。
【0203】
その後、懸濁液を、攪拌器、還流冷却器、温度計および窒素導入管を装備した500mL4頚コルベンに移し、窒素気流下、攪拌しながら昇温して、懸濁重合を行った。
【0204】
懸濁重合は、55℃到達時点を重合開始とし、その後、60±2℃で2時間、70±2℃で3時間、80±2℃で2時間、連続して行った。
【0205】
その後、反応後の懸濁液を30℃以下に冷却することにより、MBACTを含有するメジアン径20μmの徐放性粒子の懸濁液(懸濁剤)を得た。
【0206】
比較例2
(MBACT共存粒子を含む懸濁剤の製剤化)
200mLのビーカー(1)に、MBACT40g、メタクリル酸メチル54g、エチレングリコールジメタクリレート6gを仕込み、攪拌下、昇温して、70℃の均一な疎水性溶液を調製した。
【0207】
別途、500mLのビーカー(2)に、イオン交換水280g、PVA−217の10%水溶液20gおよびDBNの5%水溶液200mgを仕込み、攪拌下、昇温して、70℃の均一水溶液を得た。
【0208】
次いで、200mLのビーカー(1)に、ジラウロイルパーオキシド300mgを添加した後、速やかに、このモノマー溶液をビーカー(2)に加え、液温70℃を維持しながら、T.K.ホモミクサーMARK2.5型(プライミクス社製)により回転数3000rpmで10分間攪拌することにより、疎水性溶液を水分散させて、懸濁液を調製した。
【0209】
その後、懸濁液を、攪拌器、還流冷却器、温度計および窒素導入管を装備した500mL4頚コルベンに移し、窒素気流下、攪拌しながら昇温して、懸濁重合を行った。
【0210】
懸濁重合は、70±2℃で5時間、80±2℃で2時間、連続して行った。
【0211】
その後、反応後の懸濁液を30℃以下に冷却することにより、MBACTが共存するメジアン径26μmの粒子の懸濁液(懸濁剤)を得た。
【0212】
比較例3
(カプリン酸含有徐放性粒子を含む懸濁剤の製剤化)
200mLのビーカー(1)に、カプリン酸40g、メタクリル酸メチル42g、エチレングリコールジメタクリレート18gおよびジラウロイルパーオキシド300mgを仕込み、室温で攪拌することにより、均一な疎水性溶液を調製した。
【0213】
別途、500mLのビーカー(2)に、イオン交換水280g、TCP−10U 20gおよびペレックスSS−Lの5%水溶液200mgを仕込み、室温で攪拌することにより、均一な水溶液を得た。
【0214】
次いで、500mLのビーカー(2)に、疎水性溶液を加え、T.K.ホモミクサーMARK2.5型(プライミクス社製)により2000rpmで10分間攪拌することにより、疎水性溶液を水分散させて、懸濁液を調製した。
【0215】
その後、懸濁液を、攪拌器、還流冷却器、温度計および窒素導入管を装備した500mL4頚コルベンに移し、窒素気流下、攪拌しながら昇温して、懸濁重合を行った。
【0216】
懸濁重合は、55℃到達時点を重合開始とし、その後、60±2℃で1時間、70±2℃で2時間、80±2℃で2時間、連続して行った。
【0217】
その後、反応後の懸濁液を30℃以下に冷却したところ、水相に溶解していたカプリン酸が析出して、懸濁液が固化し、懸濁剤を調製できなかった。
【0218】
比較例4
(IPBC共存粒子を含む懸濁剤の製剤化)
200mLのビーカー(1)に、IPBC40g、メタクリル酸n−ブチル42g、エチレングリコールジメタクリレート18gおよびジラウロイルパーオキシド300mgを仕込み、室温で攪拌することにより、均一な疎水性溶液を調製した。
【0219】
別途、500mLのビーカー(2)に、イオン交換水280g、PVA−217の10%水溶液20gおよびDBNの5%水溶液200mgを仕込み、室温で攪拌することにより、均一な水溶液を得た。
【0220】
次いで、500mLのビーカー(2)に、疎水性溶液を加え、T.K.ホモミクサーMARK2.5型(プライミクス社製)により回転数3000rpmで10分間攪拌することにより、疎水性溶液を水分散させて、懸濁液を調製した。
【0221】
その後、懸濁液を、攪拌器、還流冷却器、温度計および窒素導入管を装備した500mL4頚コルベンに移し、窒素気流下、攪拌しながら昇温して、懸濁重合を行った。
【0222】
懸濁重合は、55℃到達時点を重合開始とし、その後、60±2℃で1時間、70±2℃で3時間、80±2℃で2時間、連続して行った。
【0223】
その後、反応後の懸濁液を30℃以下に冷却することにより、IPBCが共存するメジアン径28μmの粒子の懸濁液(懸濁剤)を得た。
【0224】
比較例5
(IPBC共存粒子を含む懸濁剤の製剤化)
メタクリル酸メチル42gに代えて、スチレン42gを仕込み、さらに、疎水性溶液の水分散におけるホモミクサーの回転数を3000rpmに変更した以外は、実施例2と同様にして、懸濁重合を行なうことにより、IPBCが共存するメジアン径30μmの粒子の懸濁液(懸濁剤)を得た。
【0225】
比較例6
(IPBC共存粒子を含む懸濁剤の製剤化)
メタクリル酸n−ブチル42gに代えて、アクリル酸メチル42gを仕込んだ以外は、比較例4と同様にして、疎水性溶液を水分散させ、続いて、懸濁重合を行なうことにより、IPBCが共存するメジアン径11μmの粒子の懸濁液(懸濁剤)を得た。
【0226】
各実施例および各比較例における各成分の処方を表2〜表4に示す。なお、表中、配合処方の数値は、g数(固形分。但し、イオン交換水を除く。)を示す。
【0227】
【表2】
【0228】
【表3】
【0229】
【表4】
【0230】
実施例17
(粉剤の製剤化および懸濁剤の再製剤化)
実施例2の懸濁液をステンレス製バットに移し、室温で風乾することにより、流動性に優れた粉剤を製剤化した。
【0231】
続いて、製剤化した粉剤50gに、固形分濃度が25%となるように、脱イオン水を加えて、T.K.ディスパー(プライミクス社製)で攪拌して、粉剤を再度、水分散(懸濁)させることにより、懸濁剤を再製剤化(再生)した。
【0232】
再製剤化した実施例17の懸濁剤の徐放性粒子は、実施例2の懸濁剤の徐放性粒子と同一のメジアン径および粒子径分布であった。
【0233】
実施例18〜22
(粉剤の製剤化および懸濁剤の再製剤化)
実施例9〜13についても、実施例17と同様に処理して、粉剤を製剤化し、続いて、懸濁剤を再製剤化し、それらを、それぞれ、実施例18〜22の粉剤および懸濁剤とした。
【0234】
再製剤化した実施例18〜22の懸濁剤は、それぞれ、実施例9〜13の懸濁剤の徐放性粒子と同一のメジアン径および粒子径分布であった。
【0235】
実施例17〜22の粉剤および懸濁剤(再懸濁後)と、実施例2、9〜13の懸濁剤との対応を表5に示す。
【0236】
【表5】
【0237】
(溶解度パラメータδの算出)
1. 重合体の溶解度パラメータδの双極子間力項δp,polymerおよび水素結合力項δh,polymerを、上記に準拠して、算出した。
【0238】
それらの結果を、抗生物活性化合物の溶解度パラメータδの双極子間力項δp,compoundおよび水素結合力項δh,compound(表1参照)とともに、表2〜表4に示す。
2. Δδp(=δp,polymer−δp,compound)およびΔδh(=δh,polymer−δh,compound)をそれぞれ算出した。
【0239】
それらの結果を、表2〜表4に示す。
【0240】
(評価)
1.SEM(走査型電子顕微鏡、Scanning Electron Microscope)観察
実施例1〜16および比較例2、4〜6の懸濁液(懸濁剤)を、試料台に滴下し、その後、水を留去した後、得られた徐放性粒子(比較例2および4〜6では、粒子)を、走査型電子顕微鏡日立TM−100(日立ハイテクノロジーズ社製)で、SEM観察した。
【0241】
実施例1、5、8、14〜16および比較例2、4〜6のSEM写真の画像処理図を、図1〜10にそれぞれ示す。
【0242】
図1〜6で例示されるように、実施例1〜16では、いずれも、抗生物活性性化合物が徐放性粒子外に析出することが認められなかった。
【0243】
一方、図7から分かるように、比較例2では、抗生物活性化合物が、徐放性粒子外に針状結晶となって析出することが認められ、さらに、粒子は、略椀型形状に形成されており、つまり、抗生物活性化合物が相分離して粒子外へ排出されたことに起因する穴が形成されていることが認められた。
【0244】
また、図8から分かるように、比較例4では、抗生物活性化合物が、粒子の外周に巻き付くように、針状結晶となって析出することが認められた。
【0245】
また、図9から分かるように、比較例5では、抗生物活性化合物の一部が針状結晶となって析出するとともに、残部が粒子の表面を被覆することが認められた。
【0246】
さらに、図10から分かるように、比較例6では、抗生物活性化合物が、徐放性粒子外に針状結晶となって析出することが認められた。
【0247】
なお、実施例6では、OITの可塑剤としての効果により、水を留去すると透明な膜となったため、SEM観察はできなかった。従って、この事実により、実施例6が相溶系であることが分かる。
2.TEM(透過型電子顕微鏡、Transmission Electron Microscope)観察
実施例1〜16の懸濁液(懸濁剤)をそれぞれ凍結乾燥し、次いで、アミンを含むビスフェノール型液状エポキシ樹脂に分散して、その後、硬化させた。次いで、硬化物をウルトラミクロトームで切断して断面を出し、かかる断面を四酸化オスミウムによって染色し、必要に応じて、さらに四酸化ルテニウムで染色し、これをウルトラミクロトームで超薄切片に切り出すことにより、サンプルを調製した。調製したサンプルを、透過型電子顕微鏡(型番「H−7100」、日立製作所社製)で、TEM観察した。
【0248】
実施例1および9〜13のTEM写真の画像処理図を、図11〜16にそれぞれ示す。
【0249】
図11〜16で例示されるように、実施例1および9〜13では、いずれも、抗生物活性性化合物が徐放性粒子内に含有されていることが認められた。
【0250】
特に、図11、図12および図14から分かるように、実施例1、9および11では、徐放性粒子の断面が一様であるため、抗生物活性化合物が徐放性粒子に均一に相溶して含有されていることが認められた。
【0251】
また、図13から分かるように、実施例10では、本発明の抗生物活性化合物、つまり、シフルトリンの異性体I(融点:57℃)、異性体II(融点:74℃)および異性体III(融点:66℃)の混合物が重合体に均一に相溶して含有される一方、不純物として約20重量%含まれる異性体IV(融点:102℃)が重合体の内部に析出することによって、徐放性粒子がミクロ相分離状に形成されることが認められた。
【0252】
さらに、図15および16から分かるように、実施例12および13では、重合体における抗生物活性化合物の濃度勾配、つまり、徐放性粒子の表面において抗生物活性化合物の濃度の高い部分が、陰影が濃く、徐放性粒子の中心において抗生物活性化合物の濃度の低い部分が、陰影が薄くなる濃淡が確認され、重合体中に抗生物活性化合物が相溶しつつ、抗生物活性化合物の濃度が、徐放性粒子の中心から表面に向かうに従って高くなることが認められた。
3.徐放性試験
(1)IPBC含有徐放性粒子の徐放性試験(実施例1〜3および14〜16)
以下の操作に従って、実施例1〜3および14〜16のIPBC含有徐放性粒子について、徐放性試験を実施した。
【0253】
すなわち、まず、実施例1〜3および14〜16の徐放性粒子の懸濁液(IPBC濃度10重量%)と、IPBCが懸濁された、ブランクとしてのIPBC懸濁液(IPBC濃度10重量%)とを、それぞれ用意した。
【0254】
次いで、円形濾紙(東洋濾紙No.5C、JIS P 3801の5種Cに相当)を2枚重ねて襞(ひだ)折りした。
【0255】
次いで、その濾紙に、用意した懸濁液0.5mLをゆっくりそれぞれ添加し、その後、風乾した。
【0256】
この濾紙に、定量チューブポンプを用いて、流速20mL/hrで1000mL通水し、得られた濾液のIPBC量および濾紙に残存するIPBC量から、HPLCを用いて、IPBCの徐放率を算出した。なお、各通水量における徐放率は、積算値(つまり、総徐放率)として算出した。
【0257】
実施例1〜3の結果を図17に示し、実施例14〜16の結果を図18に示す。
(2)プロピコナゾール含有徐放性粒子の徐放性試験(実施例11)
上記した「(1)IPBC含有徐放性粒子の徐放性試験」の操作に準拠して、実施例11のプロピコナゾール含有徐放性粒子の徐放性試験を実施した。
【0258】
その結果を図19に示す。
(3)プロクロラズ含有徐放性粒子の徐放性試験(実施例12)
上記した「(1)IPBC含有徐放性粒子の徐放性試験」の操作に準拠して、実施例12のプロクロラズ含有徐放性粒子の徐放性試験を実施した。
【0259】
その結果を図20に示す。
(4)フルシラゾール含有徐放性粒子の徐放性試験(実施例13)
上記した「(1)IPBC含有徐放性粒子の徐放性試験」の操作に準拠して、実施例13のフルシラゾール含有徐放性粒子の徐放性試験を実施した。
【0260】
その結果を図21に示す。
(5)OIT含有徐放性粒子の徐放性試験(実施例4〜7および9)
以下の操作に従って、実施例4〜7および9のOIT含有徐放性粒子について、徐放性試験を実施した。
【0261】
まず、市販の白色アクリルシリコーンエマルション塗料に、実施例4〜7および9で得られた徐放性粒子の懸濁液(懸濁剤)およびブランクとしてのOITを、OIT濃度が、ともに0.2重量%となるように添加し、その後、徐放性粒子の懸濁液が添加された塗料を、イオン交換水で1.5倍に希釈した。
【0262】
次いで、濾紙(東洋濾紙No.2、JIS P 3801の2種に相当)を3.5cmm×3.5cmに切り出して精秤し、上記した塗料に浸漬した。
【0263】
その後、濾紙をガラス瓶に入れ、イオン交換水15mLを加えて、18時間振とうした。続いて、イオン交換水を採取し、新たにイオン交換水15mLを加えて、18時間振とうした。その後、上記したイオン交換水の交換操作を2回繰り返した。
【0264】
上記により採取した各回のイオン交換水中のOIT量から、HPLCを用いて、OITの徐放率を算出した。なお、各回数における徐放率は、積算値(つまり、総徐放率)として算出した。
【0265】
それらの結果を、図22に示す。
(6)シフルトリン含有徐放性粒子の徐放性試験(実施例8および10)
以下の操作に従って、実施例8および10のシフルトリン含有徐放性粒子について、徐放性試験を実施した。
【0266】
すなわち、実施例8および10の徐放性粒子の懸濁液(懸濁剤)(シフルトリン濃度10%)と、シフルトリンが溶解され、ブランクとしてのアセトニトリル10%溶液とをそれぞれ用意した。
【0267】
次いで、円形濾紙(東洋濾紙No.5C、JIS P 3801で5種Cに相当)を2枚重ねて襞折りした。
【0268】
次いで、その濾紙に、用意した実施例8および10の懸濁液0.5mLおよびシフルトリンのアセトニトリル溶液0.5mLをゆっくり添加し、その後、風乾した。
【0269】
その後、濾紙をガラス瓶に入れ、イオン交換水/メタノール(=50/50(容量比))混合液180mLを加えて、室温で20時間、静置浸漬した。続いて、イオン交換水/メタノール混合液を採取し、新しいイオン交換水/メタノール混合液180mLを加えて、20時間、静置および浸漬した。その後、上記したイオン交換水/メタノール混合液の交換操作を2回繰り返した。
【0270】
上記により採取した各回のイオン交換水/メタノール混合液から、TOF−MSを用いて、シフルトリンの徐放量を算出した。なお、各回数における徐放量は、積算値(つまり、総徐放量)として算出した。
【0271】
それらの結果を、図23に示す。
(7)MBACT含有徐放性粒子(比較例1)およびMBACT共存徐放性粒子(比較例2)の徐放性試験
OIT含有徐放性粒子に代えて、MBACT含有徐放性粒子(比較例1)およびMBACT共存徐放性粒子(比較例2)を用いた以外は、上記した(5)OIT含有徐放性粒子の徐放性試験と同様の方法により、MBACTの徐放性試験を実施した。
【0272】
それらの結果を、図24に示す。
【産業上の利用可能性】
【0273】
本発明の徐放性粒子は、各種の工業製品に適用することができ、例えば、屋内外の塗料、ゴム、繊維、樹脂、プラスチック、接着剤、目地剤、シーリング剤、建材、コーキング剤、土壌処理剤、木材、製紙工程における白水、顔料、印刷版用処理液、冷却用水、インキ、切削油、化粧用品、不織布、紡糸油、皮革などに配合することができる。
【技術分野】
【0001】
本発明は、徐放性粒子およびその製造方法、詳しくは、抗生物活性化合物を徐放する徐放性粒子およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
殺菌剤、防腐剤、防かび剤などの抗生物活性化合物をマイクロカプセル化することにより、抗生物活性化合物を徐放して、効力持続性を担保することが知られている。
【0003】
例えば、微生物増殖抑制剤およびポリイソシアネート成分を含む油相と、活性水素基含有成分を含む水相とを配合して分散し、界面重合することにより、微生物増殖抑制剤含有マイクロカプセルを製造する方法が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−247409号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に記載の界面重合法では、ポリイソシアネート成分および活性水素基含有成分、すなわち、2種類の膜形成成分を、油相および水相にそれぞれ配合して、2つの相を調製する必要があり、その分、工程数が多くなるため、製造工程が煩雑となり、原料コストも増大して、製造コストが増大する場合がある。
【0006】
本発明の目的は、簡便、かつ、低コストで、徐放性に優れる徐放性粒子およびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記目的の徐放性粒子およびその製造方法について鋭意検討したところ、融点が100℃以下であり、溶解度パラメータδの双極子間力項δp,compoundおよび水素結合力項δh,compoundが特定範囲である疎水性の抗生物活性化合物を、溶剤の不存在下、疎水性の重合性ビニルモノマーで溶解することにより、疎水性溶液を調製し、その疎水性溶液を水分散させ、重合性ビニルモノマーを、ラジカル重合して、溶解度パラメータδの双極子間力項δp,polymerおよび水素結合力項δh,polymerが特定範囲である重合体を生成することにより、簡便、かつ、低コストで、徐放性に優れる徐放性粒子を得ることができるという知見を見出し、さらに研究を進めた結果、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、
(1)融点が100℃以下であり、Hansenで定義され、van Klevelen and Hoftyzer法で算出される溶解度パラメータδの双極子間力項δp,compoundが2〜8[(J/cm3)1/2]、前記溶解度パラメータδの水素結合力項δh,compoundが5.5〜9.5[(J/cm3)1/2]である疎水性の抗生物活性化合物を、溶剤の不存在下、疎水性の重合性ビニルモノマーで溶解することにより、疎水性溶液を調製し、その疎水性溶液を水分散させ、前記重合性ビニルモノマーを、油溶性開始剤の存在下、ラジカル重合して、前記溶解度パラメータδの双極子間力項δp,polymerが5〜7[(J/cm3)1/2]であり、前記溶解度パラメータδの水素結合力項δh,polymerが8〜10[(J/cm3)1/2]である重合体を生成することにより得られることを特徴とする、徐放性粒子、
(2)前記重合体の双極子間力項δp,polymerから前記抗生物活性化合物の双極子間力項δp,compoundを差し引いた値Δδpが−1.1〜2.7[(J/cm3)1/2]であり、前記重合体の水素結合力項δh,polymerから前記抗生物活性化合物の水素結合力項δh,compoundを差し引いた値Δδhが、0〜4.2[(J/cm3)1/2]であることを特徴とする、前記(1)に記載の徐放性粒子、
(3)前記抗生物活性化合物の前記重合性ビニルモノマーに対する配合割合が、重量基準で、0.11〜1.5であることを特徴とする、前記(1)または(2)に記載の徐放性粒子、
(4)融点が100℃以下であり、Hansenで定義され、van Klevelen and Hoftyzer法で算出される溶解度パラメータδの双極子間力項δp,compoundが2〜8[(J/cm3)1/2]、前記溶解度パラメータδの水素結合力項δh,compoundが5.5〜9.5[(J/cm3)1/2]である疎水性の抗生物活性化合物を、溶剤の不存在下、疎水性の重合性ビニルモノマーで溶解することにより、疎水性溶液を調製する工程、前記疎水性溶液を水分散させる工程、および、水分散された前記疎水性溶液の前記重合性ビニルモノマーを、油溶性開始剤の存在下、ラジカル重合して、前記溶解度パラメータδの双極子間力項δp,polymerが5〜7[(J/cm3)1/2]であり、前記溶解度パラメータδの水素結合力項δh,polymerが8〜10[(J/cm3)1/2]である重合体を生成する工程を備えることを特徴とする、徐放性粒子の製造方法、
(5)前記重合体の双極子間力項δp,polymerから前記抗生物活性化合物の双極子間力項δp,compoundを差し引いた値Δδpが−1.1〜2.7[(J/cm3)1/2]であり、前記重合体の水素結合力項δh,polymerから前記抗生物活性化合物の水素結合力項δh,compoundを差し引いた値Δδhが、0〜4.2[(J/cm3)1/2]であることを特徴とする、前記(4)に記載の徐放性粒子の製造方法
である。
【発明の効果】
【0009】
本発明のポリマー微粒子の製造方法によれば、溶解度パラメータδの双極子間力項δp,compoundおよび水素結合力項δh,compoundが特定範囲にある抗生物活性化合物を溶解している疎水性の重合性モノマーを重合して、溶解度パラメータδの双極子間力項δp,polymerおよび水素結合力項δh,polymerが特定範囲にある重合体を生成するので、原料の調製が簡便となり、製造工程が簡単となり、さらに、原料コストが低減されることから、製造コストを低減させることができる。
【0010】
そのため、簡単、かつ、低コストで、優れた徐放性を有し、優れた効力持続効果を発現することのできる徐放性粒子を得ることができる。
【0011】
さらに、溶剤を使用することなく、疎水性溶液を調製するので、環境負荷を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は、実施例1の徐放性粒子のSEM写真の画像処理図を示す。
【図2】図2は、実施例5の徐放性粒子のSEM写真の画像処理図を示す。
【図3】図3は、実施例8の徐放性粒子のSEM写真の画像処理図を示す。
【図4】図4は、実施例14の徐放性粒子のSEM写真の画像処理図を示す。
【図5】図5は、実施例15の徐放性粒子のSEM写真の画像処理図を示す。
【図6】図6は、実施例16の徐放性粒子のSEM写真の画像処理図を示す。
【図7】図7は、比較例2の粒子のSEM写真の画像処理図を示す。
【図8】図8は、比較例4の粒子のSEM写真の画像処理図を示す。
【図9】図9は、比較例5の粒子のSEM写真の画像処理図を示す。
【図10】図10は、比較例6の粒子のSEM写真の画像処理図を示す。
【図11】図11は、実施例1の徐放性粒子のTEM写真の画像処理図を示す。
【図12】図12は、実施例9の徐放性粒子のTEM写真の画像処理図を示す。
【図13】図13は、実施例10の徐放性粒子のTEM写真の画像処理図を示す。
【図14】図14は、実施例11の徐放性粒子のTEM写真の画像処理図を示す。
【図15】図15は、実施例12の徐放性粒子のTEM写真の画像処理図を示す。
【図16】図16は、実施例13の徐放性粒子のTEM写真の画像処理図を示す。
【図17】図17は、実施例1〜3の徐放性試験のグラフを示す。
【図18】図18は、実施例14〜16の徐放性試験のグラフを示す。
【図19】図19は、実施例11の徐放性試験のグラフを示す。
【図20】図20は、実施例12の徐放性試験のグラフを示す。
【図21】図21は、実施例13の徐放性試験のグラフを示す。
【図22】図22は、実施例4〜7および9の徐放性試験のグラフを示す。
【図23】図23は、実施例8および10の徐放性試験のグラフを示す。
【図24】図24は、比較例1および2の徐放性試験のグラフを示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の徐放性粒子は、疎水性の抗生物活性化合物を、疎水性の重合性ビニルモノマーで溶解することにより、疎水性溶液を調製し、その疎水性溶液を水分散させ、重合性ビニルモノマーを、ラジカル重合して、重合体を生成することにより得られる。
【0014】
抗生物活性化合物は、例えば、重合性ビニルモノマーの重合体と相互作用できる官能部分を少なくとも2つ有している。
【0015】
このような官能部分としては、例えば、カルボニル基、ニトロ基、アミノ基、シアノ基、燐酸エステル基、カルボキシル基などの極性官能基、例えば、カルボキシレート結合、フォスフェート結合、尿素結合、炭素−ハロゲン結合などの極性基を含む極性結合、例えば、ベンゼン環、さらには、トリアジン環、イミダゾール環、イソチアゾリン環などの共役ヘテロ環などの共役環状部分などが挙げられる。
【0016】
抗生物活性化合物の分子量は、例えば、200〜600、好ましくは、200〜500である。
【0017】
抗生物活性化合物の分子量が上記範囲を超える場合には、抗生物活性化合物の重合体に対する相溶性が低下する場合がある。一方、抗生物活性化合物の分子量が上記範囲に満たない場合には、懸濁重合(後述)中に、抗生物活性化合物が水相に残存してしまい、懸濁重合後に、かかる抗生物活性化合物が析出して、懸濁液が固化する場合がある。
【0018】
また、抗生物活性化合物の融点は、100℃以下であり、好ましくは、90℃以下、さらに好ましくは、80℃以下である。抗生物活性化合物の融点が上記範囲を超える場合には、抗生物活性化合物が徐放性粒子に内包されにくく、徐放性粒子外に析出する場合があり、また、たとえ、抗生物活性化合物が徐放性粒子に内包された場合でも、抗生物活性化合物が徐放性粒子外に徐放されない場合がある。
【0019】
具体的には、抗生物活性化合物は、殺菌、抗菌、防腐、防藻、防かび、殺虫などの抗生物活性を有する、殺菌剤、抗菌剤、防腐剤、防藻剤、防かび剤、除草剤、殺虫剤、誘引剤、忌避剤および殺鼠剤などから選択される。これら抗生物活性を有する化合物としては、例えば、ヨウ素系化合物、トリアゾール系化合物、カルバモイルイミダゾール系化合物、ジチオール系化合物、イソチアゾリン系化合物、ニトロアルコール系化合物、パラオキシ安息香酸エステルなどの殺菌防腐防藻防かび剤、例えば、ピレスロイド系化合物、ネオニコチノイド系化合物、有機塩素系化合物、有機リン系化合物、カーバメート系化合物、オキサジアジン系化合物などの防蟻剤(殺蟻剤)などが挙げられる。
【0020】
ヨウ素系化合物としては、例えば、3−ヨード−2−プロピニルブチルカルバメート(IPBC)、1−[[(3−ヨード−2−プロピニル)オキシ]メトキシ]−4−メトキシベンゼン、3−ブロモ−2,3−ジヨード−2−プロペニルエチルカーボネートなどが挙げられる。
【0021】
トリアゾール系化合物としては、例えば、1−[2−(2,4−ジクロロフェニル)−4−n−プロピル−1,3−ジオキソラン−2−イルメチル]−1H−1,2,4−トリアゾール(プロピコナゾール)、ビス(4−フルオロフェニル)メチル(1H−1,2,4−トリアゾール−1−イルメチルシラン(別称:フルシラゾール、1−[[ビス(4−フルオロフェニル)メチルシリル]メチル]−1H−1,2,4−トリアゾール)などが挙げられる。
【0022】
カルバモイルイミダゾール系化合物としては、例えば、N−プロピル−N−[2−(2,4,6−トリクロロ−フェノキシ)エチル]イミダゾール−1−カルボキサミド(プロクロラズ)などが挙げられる。
【0023】
ジチオール系化合物としては、例えば、4,5−ジクロロ−1,2−ジチオール−3−オンなどが挙げられる。
【0024】
イソチアゾリン系化合物としては、例えば、2−n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オン(OIT)、5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン(Cl−MIT)などが挙げられる。
【0025】
ニトロアルコール系化合物としては、例えば、2,2−ジブロモ−2−ニトロ−1−エタノール(DBNE)などが挙げられる。
【0026】
パラオキシ安息香酸エステルとしては、例えば、パラオキシ安息香酸ブチル、パラオキシ安息香酸プロピルなどが挙げられる。
【0027】
ピレスロイド系化合物としては、例えば、シロバナムシヨケギクより得られるピレトリン、シネリン、ジャスモリンなどが挙げられ、これらから誘導されるアレスリン、ビフェントリン、アクリナトリン、アルファシペルメトリン、トラロメトリン、シフルトリン((RS)−α−シアノ−4−フルオロ−3−フェノキシベンジル=(1RS,3RS)−(1RS,3RS)−3−(2,2−ジクロロビニル)−2,2−メチルシクロプロパンカルボキシラート。詳しくは、異性体I((1R−3R−αR)+(1S−3S−αS))[融点:57℃]、異性体II((1R−3R−S)+(1S−3S−αR))[融点:74℃]、異性体III((1R−3S−αR)+(1S−3R−αS)))[融点:66℃]の混合物)、シフェノトリン、プラレトリン、エトフェンプロックス、シラフルオフェン、フェンバレレートなども挙げられる。
【0028】
ネオニコチノイド系化合物としては、例えば、(E)−N1−[(6−クロロ−3−ピリジル)メチル]−N2−シアノ−N1−メチルアセトアミジン(アセタミプリド)などが挙げられる。
【0029】
有機塩素系化合物としては、例えば、ケルセンなどが挙げられる。
【0030】
有機リン系化合物としては、例えば、ホキシム、ピリダフェンチオン、フェニトロチオン、テトラクロルビンホス、ジクロフェンチオン、プロペタンホスなどが挙げられる。
【0031】
カーバメート系化合物としては、例えば、フェノブカルブ、プロポクスルなどが挙げられる。
【0032】
オキサジアジン系化合物としては、例えば、インドキサカルブなどが挙げられる。
【0033】
除草剤としては、例えば、ピラクロニル、ペンディメタリン、インダノファンなどが挙げられる。
【0034】
殺虫剤としては、例えば、ピリプロキシフェンなどが挙げられる。
【0035】
忌避剤としては、例えば、ディートなどが挙げられる。
【0036】
抗生物活性化合物は、実質的に疎水性であって、例えば、水に対する室温(20〜30℃、より具体的には、25℃)における溶解度が極めて小さく、具体的には、例えば、室温の溶解度が、重量基準で、1重量部/水100重量部(10000ppm)以下、好ましくは、0.5重量部/水100重量部(5000ppm)以下、さらに好ましくは、0.1重量部/水100重量部(1000ppm)以下であり、容量基準で、例えば、1g/水100mL以下、好ましくは、0.5g/水100mL以下、さらに好ましくは、0.1g/水100mL以下である。
【0037】
抗生物活性化合物の水に対する溶解度が、上記した範囲を超える場合には、重合性ビニルモノマーを重合(懸濁重合)する際に、抗生物活性化合物が徐放性粒子外(つまり、水相)へ漏出し易く、重合後に、水相に溶解していた抗生物活性化合物が析出するので、抗生物活性化合物を十分内包した徐放性粒子の合成が困難となる。
【0038】
これら抗生物活性化合物は、単独使用または2種以上併用することができる。
【0039】
なお、上記した抗生物活性化合物は、例えば、製造工程中に、融点が上記範囲外である不純物を適宜の割合で含有していてもよい。具体的には、シフルトリンの異性体I(融点:57℃)と異性体II(融点:74℃)と異性体III(融点:66℃)との混合物は、例えば、不純物である異性体IV(融点102℃)を含有している。
【0040】
重合性ビニルモノマーは、例えば、ビニル基を少なくとも1つ分子内に有するモノマーである。
【0041】
具体的には、重合性ビニルモノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸エステル系モノマー、(メタ)アクリル酸系モノマー、芳香族系ビニルモノマー、ビニルエステル系モノマー、マレイン酸エステル系モノマー、ハロゲン化ビニル、ハロゲン化ビニリデン、窒素含有ビニルモノマーなどが挙げられる。
【0042】
(メタ)アクリル酸エステル系モノマーとしては、例えば、メタクリル酸エステルおよび/アクリル酸エステルであって、具体的には、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸iso−プロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸iso−ブチル、(メタ)アクリル酸tert−ブチル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸2−メトキシエチルなどが挙げられる。
【0043】
(メタ)アクリル酸系モノマーとしては、例えば、メタクリル酸、アクリル酸などが挙げられる。
【0044】
芳香族系ビニルモノマーとしては、例えば、スチレン、p−メチルスチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエンなどが挙げられる。
【0045】
ビニルエステル系モノマーとしては、例えば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルなどが挙げられる。
【0046】
マレイン酸エステル系モノマーとしては、例えば、マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジエチル、マレイン酸ジブチルなどが挙げられる。
【0047】
ハロゲン化ビニルとしては、例えば、塩化ビニル、フッ化ビニルなどが挙げられる。
【0048】
ハロゲン化ビニリデンとしては、例えば、塩化ビニリデン、フッ化ビニリデンなどが挙げられる。
【0049】
窒素含有ビニルモノマーとしては、例えば、(メタ)アクリロニトリル、N−フェニルマレイミド、ビニルピリジンなどが挙げられる。
【0050】
重合性ビニルモノマーは、実質的に疎水性であって、例えば、水に対する室温における溶解度が極めて小さく、具体的には、室温における溶解度が、例えば、10重量部/水100重量部以下、好ましくは、8重量部/水100重量部以下である。
【0051】
上記した各モノマーの中で、例えば、上記した抗生物活性化合物に対する相溶性が強く、抗生物活性化合物を溶解することのできる抗生物活性化合物相溶性モノマー(以下、単に相溶性モノマーという場合がある。)が選択される。
【0052】
これら相溶性モノマーは、単独使用または2種以上併用することができる。
【0053】
相溶性モノマーとしては、好ましくは、同一種類の(メタ)アクリル酸エステル系モノマーの単独使用、異なる種類の(メタ)アクリル酸エステル系モノマーの併用、または、(メタ)アクリル酸エステル系モノマーと(メタ)アクリル酸系モノマーとの併用が挙げられる。
【0054】
さらに好ましくは、メタクリル酸メチル(MMA)の単独使用、メタクリル酸メチルと、(メタ)アクリル酸C2〜4アルキルとの併用、メタクリル酸メチルとメタクリル酸との併用が挙げられる。
【0055】
メタクリル酸メチルと併用される(メタ)アクリル酸C2〜4アルキルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸iso−プロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸iso−ブチル、(メタ)アクリル酸tert−ブチルなどが挙げられる。
【0056】
異なる種類の(メタ)アクリル酸エステル系モノマーが併用される場合には、メタクリル酸メチルの配合割合が、相溶性モノマー(後述する架橋性モノマーを含む)100重量部に対して、例えば、20重量部以上、好ましくは、40重量部以上であり、例えば、99重量部以下である。
【0057】
また、(メタ)アクリル酸エステル系モノマーおよび(メタ)アクリル酸系モノマーが併用される場合には、(メタ)アクリル酸系モノマーの配合割合は、架橋性モノマーを含む相溶性モノマー100重量部に対して、例えば、30重量部未満、20重量部以下であり、例えば、1重量部以上、好ましくは、3重量部以上である。
【0058】
抗生物活性化合物および相溶性モノマーは、後述する重合温度(加熱温度)において、重合性ビニルモノマーの重合体と抗生物活性化合物とが相溶するような組み合わせが選択される。
【0059】
また、重合性ビニルモノマーは、架橋性モノマーを相溶性モノマーとして含むこともできる。
【0060】
架橋性モノマーは、徐放性粒子の徐放性を調節するために、必要により配合され、例えば、エチレングリコールジ(メタ)クリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレートなどのモノまたはポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、例えば、1,3−プロパンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,5−ペンタンジオールジ(メタ)アクリレートなどのアルカンジオールジ(メタ)アクリレート、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレートなどのアルカンポリオールポリ(メタ)アクリレート、例えば、アリル(メタ)メタクリレート、トリアリル(イソ)シアヌレートなどのアリル系モノマー、例えば、ジビニルベンゼンなどのジビニル系モノマーなどが挙げられる。
【0061】
架橋性モノマーは、架橋性モノマーを除く相溶性モノマーとの相溶性を確保すべく、架橋性モノマーを除く相溶性モノマーの分子構造と類似する分子構造を有するモノマーが選択され、具体的には、架橋性モノマーを除く相溶性モノマーがメタクリル酸メチルを含む場合には、好ましくは、架橋性モノマーとしてエチレングリコールジメタクリレート(EGDMA)またはトリメチロールプロパンメタクリレート(TMPTMA)が選択される。
【0062】
架橋性モノマーの配合割合は、重合性ビニルモノマー(相溶性モノマー)100重量部に対して、例えば、1〜100重量部、好ましくは、10〜80重量部である。
【0063】
そして、本発明では、抗生物活性化合物および重合性ビニルモノマーとして、Hansenで定義され、van Klevelen and Hoftyzer法で算出される溶解度パラメータδの双極子間力項δp,compoundが2〜8[(J/cm3)1/2]であり、溶解度パラメータδの水素結合力項δh,compoundが5.5〜9.5[(J/cm3)1/2]である抗生物活性化合物と、溶解度パラメータδの双極子間力項δp,polymerが5〜7[(J/cm3)1/2]であり、溶解度パラメータδの水素結合力項δh,polymerが8〜10[(J/cm3)1/2]である重合体を生成する重合性ビニルモノマーとの組合せが選択される。
【0064】
なお、各項δ(δpおよびδh)の添字compoundおよびpolymerは、抗生物活性化合物および重合体をそれぞれ示す。
【0065】
Hansenで定義され、van Klevelen and Hoftyzer法で算出される溶解度パラメータδの双極子間力項δpおよび水素結合力項δhは、原子団(化学結合または置換基などを含む)の種類および数に依存し、具体的には、下記式(1)および(2)でそれぞれ示される。
【0066】
【数1】
【0067】
(式中、Fpは、分子間力の双極子間力要素(ポーラー・コンポーネント・オブ・ザ・モーラー・アトラクション・ファンクション(polar component of the molar attraction function)、Vはモル体積である。)
【0068】
【数2】
【0069】
(式中、Ehは、分子間力の水素結合力の要素(コントリビューション・オブ・ザ・ハイドロジェン・ボンディング・フォーセズ・ツー・ザ・コーヘシヴ・エナジー(contribution of the hydrogen bonding forces to the cohesive energy)、Vはモル体積である。)
上記したFp、EhおよびVの数値は、「Properties of Polymers」(3rd Edition、第7章、第189〜225頁、van Klevelen著、ELSEVIER、2003年発行)に、原子団毎に記載されている。
【0070】
なお、置換基−I、>Si<、=N−および≡C−のFpおよびEhは、上記した文献に記載されていないが、関西大学山本秀樹教授によって、次の方法で算出されている。
【0071】
まず、置換基−IのFpの算出方法について例示する。
【0072】
「Hansen Solubility Parameters, A User’s Handbook」(Charles Hansen著、第347〜483ページのAppendix、CRC Press、2007年発行)に記載されている置換基−Iを含む化合物を無作為に10個選択し、上記した文献に記載される化合物δpの数値を、上記式(1)の左辺として代入する。また、上記により選択された10個の化合物のすべての原子団のVの数値、および、置換基−Iを除く原子団のFpを上記式(2)の右辺に代入する一方、右辺における置換基−IのFpを未知数とする。
【0073】
そして、化合物のδp、すべての原子団のVおよび置換基を除く原子団のFpが既知数であり、置換基−IのFpが未知数である方程式を解き、10個の化合物に対応する解(Fp)の平均を、置換基−IのFpとして算出する。
【0074】
また、置換基>Si<、=N−および≡C−のFpについても、上記と同様に計算処理することにより、算出される。
【0075】
また、置換基−I、>Si<、=N−および≡C−のEhについても、上記と同様に計算処理することにより、それぞれ算出される。
【0076】
上記した計算処理は、プログラムとしてコンピュータに記録され、最適化されている。
【0077】
上記により算出された置換基−I、>Si<、=N−および≡C−のFpおよびEhを以下に記載する。
−I Fp:0(J1/2・cm3/2・mol−1)
Eh:0(J・mol−1)
>Si< Fp:0(J1/2・cm3/2・mol−1)
Eh:0(J・mol−1)
=N− Fp:800(J1/2・cm3/2・mol−1)
Eh:3000(J・mol−1)
≡C− Fp:0(J1/2・cm3/2・mol−1)
Eh:0(J・mol−1)
次に、重合体の一例として、メタクリル酸メチルの重合体であるポリメタクリル酸メチル(PMMA)を例示し、かかるポリメタクリル酸メチルの溶解度パラメータδの双極子間力項δp,PMMAおよび水素結合力項δh,PMMAを算出する。
1.ホモポリマーの双極子間力項δpおよび水素結合力項δh
(1)ポリメタクリル酸メチルの構造式
ポリメタクリル酸メチルは、下記式(3)で表される。
【0078】
【化1】
【0079】
(式中、nは、重合度を示す。)
(2)双極子間力項δp,PMMMA
上記式(3)のモノマー単位(−CH2−C(CH3)COOCH3−)において、各原子団に対応するFpおよびVを以下に記載する。
−CH3 Fp:0(J1/2・cm3/2・mol−1)
V:33.5(cm3・mol)
−CH2− Fp:0(J1/2・cm3/2・mol−1)
V:16.1(cm3・mol)
>C< Fp:0(J1/2・cm3/2・mol−1)
V:−19.2(cm3・mol)
−COO− Fp:490(J1/2・cm3/2・mol−1)
V:18(cm3・mol)
従って、モノマー単位の双極子間力項δp,monomer unitは、下記式(4)に示すように、5.98[(J/cm3)1/2]と算出される。
【0080】
【数3】
【0081】
そして、上記したモノマー単位の双極子間力項δp,monomer unitが、モノマー単位の繰り返し構造であるポリメタクリル酸メチルの双極子間力項δp,PMMAとされる。
(3)水素結合力項δh,PMMA
上記式(3)のモノマー単位(−CH2−C(CH3)COOCH3−)において、各原子団に対応するEhを以下に記載する。
−CH3 Eh:0(J・mol−1)
−CH2− Eh:0(J・mol−1)
>C< Eh:0(J・mol−1)
−COO− Eh:7000(J・mol−1)
従って、モノマー単位の水素結合力項δh,monomer unitは、下記式(5)に示すように、9.25[(J/cm3)1/2]と算出される。
【0082】
【数4】
【0083】
そして、上記したモノマー単位の水素結合力項δh,polymerが、モノマー単位の繰り返し構造であるポリメタクリル酸メチルの水素結合力項δh,PMMAとされる。
2.共重合体の双極子間力項δpおよび水素結合力項δh
次に、共重合体の双極子間力項δpおよび水素結合力項δhを算出する。
【0084】
各モノマー単位の双極子間力項δp,monomer unitに、モノマーの重量比を乗じて、それらを足し合わせることにより、共重合体の溶解度パラメータδの双極子間力項δp,copolymerを算出する。また、各モノマー単位の水素結合力項δh,monomer unitに、モノマーの重量比を乗じて、それらを足し合わせることにより、共重合体の溶解度パラメータδの水素結合力項δh,copolymerを算出する。
【0085】
共重合体の一例として、メタクリル酸メチルおよびエチレングリコールジメタクリレートを、重量比で90:10で含むモノマーの共重合体であるポリメタクリル酸メチル−エチレングリコールジメタクリレート共重合体(PMMA−EGDMA)を挙げて、その溶解度パラメータδの双極子間力項δp,PMMA−EGDMAおよび水素結合力項δh,PMMA−EGDMAを算出する。
(1)双極子間力項δp,PMMA−EGDMA
メタクリル酸メチルのモノマー単位の双極子間力項δp,MMA unitは、上記で算出したように、5.98[(J/cm3)1/2]である。
【0086】
また、エチレングリコールジメタクリレートのモノマー単位の双極子間力項δp,EDGMAは、上記と同様に算出することにより、5.37[(J/cm3)1/2]である。
【0087】
そして、この共重合体の双極子間力項δp,PMMA−EGDMAは、下記式(6)のように算出される。
δp,PMMA−EGDMA=(90/100)δp、MMA unit+(10/100)δp、EGDMA unit
=(90/100)×5.98+(10/100)×5.37
=5.92[(J/cm3)1/2] (6)
(2)水素結合力項δh,PMMA−EGDMA
メタクリル酸メチルのモノマー単位の水素結合力項δh,MMA unitは、9.25[(J/cm3)1/2]である。
【0088】
また、エチレングリコールジメタクリレートのモノマー単位の水素結合力項δh,EGDMAは、10.42[(J/cm3)1/2]である。
【0089】
そして、この共重合体の水素結合力項δh,PMMA−EGDMAは、下記式(7)のように算出される。
δh,PMMA−EGDMA=(90/100)δh,MMA unit+(10/100)δh,EGDMA unit
=(90/100)×9.25+(10/100)×10.42
=9.36[(J/cm3)1/2] (7)
そして、重合体の溶解度パラメータδの双極子間力項δp,polymerは、好ましくは、5〜6.5[(J/cm3)1/2]であり、重合体の溶解度パラメータδの水素結合力項δh,polymerは、好ましくは、9〜10[(J/cm3)1/2]である。
【0090】
重合体の双極子間力項δp,polymerおよび/または水素結合力項δh,polymerが上記範囲に満たないと、重合体の疎水性が過度に高くなり、抗生物活性化合物との十分な相溶性を得ることができない場合があり、たとえ相溶性を得ることができた場合でも、抗生物活性化合物が重合(懸濁重合)中に徐放性粒子外へ漏出して、抗生物活性化合物を十分内包した徐放性粒子の合成が困難となる。
【0091】
一方、重合体の双極子間力項δp,polymerおよび/または水素結合力項δh,polymerが上記範囲を超えると、重合体の親水性が過度に高くなり、抗生物活性化合物との十分な相溶性が得ることができない場合があり、たとえ相溶性を得ることができたとしても、懸濁重合における水相との界面自由エネルギーが低くなり、抗生物活性化合物が懸濁重合中に徐放性粒子外へ漏出して、抗生物活性化合物を十分内包した徐放性粒子の合成が困難となる。
3.抗生物活性化合物の溶解度δの双極子間力項δp,compoundおよび水素結合力項δh,compound
抗生物活性化合物の溶解度δの双極子間力項δp,compoundおよび水素結合力項δh,compoundについても、上記したモノマー単位のそれと同様にして算出される。
【0092】
その結果、算出されたIPBC、OIT、シフルトリン、プロピコナゾール、プロクロラズおよびフルシラゾールの各抗生物活性化合物の双極子間力項δp,compoundおよび水素結合力項δh,compoundを、表1に示す。
【0093】
【表1】
【0094】
抗生物活性化合物の溶解度パラメータδの双極子間力項δp,compoundは、好ましくは、3〜7[(J/cm3)1/2]であり、水素結合力項δh,compoundは、好ましくは、5.8〜9.5[(J/cm3)1/2]である。
【0095】
抗生物活性化合物の双極子間力項δp,compoundおよび/または水素結合力項δh,compoundが上記範囲に満たないと、抗生物活性化合物の疎水性が過度に高くなり、重合体との十分な相溶性を得ることができない場合がある。
【0096】
一方、抗生物活性化合物の双極子間力項δp,compoundおよび/または水素結合力項δh,compoundが上記範囲を超えると、抗生物活性化合物の親水性が過度に高くなり、抗生物活性化合物が徐放性粒子外へ漏出し易く、抗生物活性化合物を十分に内包した徐放性粒子の合成が困難となる場合がある。
4.溶解度パラメータの双極子間力項δpの差(Δδp)および水素結合力項δhの差(Δδh)
本発明では、溶解度パラメータδにおいて、双極子間力項δp,polymerから抗生物活性化合物の双極子間力項δp,compoundを差し引いた値Δδp(=δp,polymer−δp,compound)は、例えば、−1.1〜2.7[(J/cm3)1/2]である。
【0097】
また、重合体の水素結合力項δh,polymerから抗生物活性化合物の水素結合力項δh,compoundを差し引いた値Δδh(=δh,polymer−δh,compound)は、例えば、0〜4.2[(J/cm3)1/2]である。
【0098】
ΔδpおよびΔδhが上記した範囲内にあれば、抗生物活性化合物および重合体の優れた相溶性を確保して、優れた徐放性を確保することができる。
【0099】
抗生物活性化合物の双極子間力項δp,compoundおよび水素結合力項δh,compoundが上記した範囲内であり、かつ、重合体の双極子間力項δp,polymerおよび水素結合力項δh,polymerが上記した範囲内であれば、抗生物活性化合物は、ラジカル重合中、懸濁粒子から漏出せずに重合体と相溶していると定義される。
【0100】
そして、本発明の徐放性粒子の製造方法では、まず、上記した疎水性の抗生物活性化合物を、溶剤の不存在下、疎水性の重合性ビニルモノマーで溶解することにより、疎水性溶液を調製する。
【0101】
疎水性溶液は、抗生物活性化合物および重合性ビニルモノマーを配合し、溶剤(ヘキサン、トルエン、酢酸エチルなどの疎水性の有機溶剤)を配合することなく、均一に攪拌することにより得ることができる。
【0102】
抗生物活性化合物の重合性ビニルモノマーに対する配合割合は、重量基準(つまり、抗生物活性化合物の重量部/重合性ビニルモノマーの重量部)で、例えば、10/90〜60/40(つまり、0.11〜1.5)である。
【0103】
とりわけ、抗生物活性化合物が常温(20〜30℃、より具体的には、25℃)で液体の場合には、重合性ビニルモノマーに対する抗生物活性化合物の配合割合は、抗生物活性化合物が重合性ビニルモノマーの重合体に対する可塑剤として作用することから、重量基準で、例えば、1/99〜60/40、好ましくは、5/95〜50/50である。
【0104】
抗生物活性化合物が常温で固体の場合には、抗生物活性化合物の拡散速度が常温で液体の場合に比べて、徐放速度が遅くなることから、重量基準で、例えば、10/90〜70/30、好ましくは、10/90〜60/40である。
【0105】
疎水性溶液の調製は、例えば、常温で実施してもよく、あるいは、必要に応じて、加熱して実施することもできる。
【0106】
加熱温度は、例えば、30〜100℃、好ましくは、40〜80℃である。
【0107】
次いで、疎水性溶液を水分散(懸濁)させる。
【0108】
すなわち、疎水性溶液および水を配合し、均一に攪拌することにより、疎水性溶液を水分散(懸濁)させる。これにより、疎水性溶液の水分散(懸濁)液を得る。
【0109】
水分散の条件は、特に制限されず、例えば、常温で実施してもよく、あるいは、加熱して実施することもできる。好ましくは、疎水性溶液の調製において加熱して実施している場合には、水分散時にも、加熱する。加熱温度は、例えば、上記した水分散時の加熱温度以上であり、具体的には、30〜100℃、好ましくは、40〜80℃である。
【0110】
水の配合割合は、疎水性溶液100重量部に対して、例えば、100〜1000重量部、好ましくは、150〜500重量部である。
【0111】
疎水性溶液の水分散では、好ましくは、分散剤および界面活性剤を配合する。
【0112】
分散剤としては、例えば、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルピロリドン、ゼラチン、アラビアゴム、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カチオン化澱粉、ポリアクリル酸およびそのナトリウム塩、スチレンマレイン酸コポリマーおよびそのナトリウム塩などの水溶性ポリマー、例えば、第三燐酸カルシウム、コロイダルシリカ、モンモリナイト、炭酸マグネシウム、水酸化アルミニウム、亜鉛華などの無機系分散剤などが挙げられる。
【0113】
分散剤のうち、好ましくは、ポリビニルアルコール(PVA)、第三燐酸カルシウムが挙げられる。
【0114】
分散剤の配合割合は、疎水性溶液100重量部に対して、例えば、0.01〜10重量部、好ましくは、0.1〜5重量部である。
【0115】
界面活性剤は、ラジカル重合中の粒子の凝集を有効に防止するために、好ましくは、上記した分散剤と併用され、具体的には、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、ジ−2−エチルヘキシルスルホコハク酸ナトリウム、ドデシルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム、ノニルジフェニルエーテルスルホン酸ナトリウム、ナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物ナトリウム塩などのアニオン系界面活性剤、例えば、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンモノステアレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレート、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックコポリマーなどのノニオン系界面活性剤などが挙げられる。好ましくは、アニオン系界面活性剤が挙げられる。
【0116】
界面活性剤の配合割合は、疎水性溶液100重量部に対して、例えば、0.0001〜1.0重量部、好ましくは、0.001〜0.1重量部である。
【0117】
これら分散剤および界面活性剤は、例えば、疎水性溶液および水の配合前または配合後のいずれにおいても、配合することができ、好ましくは、疎水性溶液と配合する前の水に配合する。これにより、分散剤および界面活性剤の水溶液を調製する。
【0118】
上記した疎水性溶液の水分散(懸濁)では、例えば、ホモミキサー(ホモミクサー)、超音波ホモジナイザー、加圧式ホモジナイザー、マイルダー、多孔膜圧入分散機などの分散機が用いられ、好ましくは、ホモミキサーが用いられる。
【0119】
次いで、水分散された疎水性溶液の重合性ビニルモノマーを、油溶性開始剤の存在下、ラジカル重合して、重合体を生成する。
【0120】
油溶性開始剤としては、例えば、ジラウロイルパーオキシド、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ヘキシルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ベンゾイルパーオキシドなどの有機過酸化物、例えば、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)などのアゾ系化合物などが挙げられる。
【0121】
油溶性開始剤は、例えば、水と配合する前の疎水性溶液に配合することができ、または、それらの配合後における水分散液に配合することもできる。好ましくは、水と配合する前の疎水性溶液、より具体的には、水と配合する直前の疎水性溶液に配合する。
【0122】
油溶性開始剤の配合割合は、重合性ビニルモノマー100重量部に対して、例えば、0.01〜2重量部、好ましくは、0.1〜1重量部である。
【0123】
また、このラジカル重合は、懸濁液の懸濁状態を維持するように、懸濁液を攪拌しながら実施することから、懸濁重合とされる。また、原料となるモノマーが疎水性相(油相)のみにあることから、インサイチュ(in situ)重合とされる。
【0124】
また、ラジカル重合は、例えば、水分散液を、例えば、加熱することにより、反応を開始させる。
【0125】
加熱条件は、油溶性開始剤の種類によって適宜選択され、加熱温度が、例えば、30〜100℃、好ましくは、50〜100℃であり、加熱時間が、例えば、3〜24時間、好ましくは、5〜12時間である。さらに、所定温度に加熱後、その温度を所定時間維持し、その後、加熱および温度維持を繰り返すことにより、段階的に加熱することもできる。
【0126】
また、ラジカル重合時における圧力は、特に限定されず、常圧である。
【0127】
なお、上記した説明では、ラジカル重合を常圧で実施しているが、例えば、高圧下で実施することもできる。これにより、反応系を、100℃を超過する温度に設定でき、室温で固体の抗生物活性化合物を容易に液状にすることもできる。
【0128】
そして、ラジカル重合中、重合性ビニルモノマーの重合体は、好ましくは、抗生物活性化合物に対して相溶している。つまり、重合体が抗生物活性化合物に溶解されて、重合体の抗生物活性化合物溶液とされており、その抗生物活性化合物溶液が、水分散されている。
【0129】
また、重合性ビニルモノマーは、上記したラジカル重合中の重合温度(加熱温度)において、好ましくは、上記したように重合性ビニルモノマーの重合体と抗生物活性化合物とが相溶するような組み合わせが選択されていることから、ラジカル重合(懸濁重合)中に相分離が生じることを防止して、重合体(反応途中の重合体)が抗生物活性化合物を溶解し、あるいは、重合体(反応途中の重合体)が抗生物活性化合物に対して膨潤した状態で反応が進行し、均一相が形成された徐放粒子を得ることができる。なお、抗生物活性化合物は常温で液体であれば、常温でもそのまま均一相の状態が維持される。
【0130】
その後、重合後の水分散液を、例えば、放冷などによって冷却する。
【0131】
冷却温度は、例えば、室温(20〜30℃、より具体的には、25℃)である。
【0132】
冷却後、抗生物活性化合物は、室温で液体であれば、重合性ビニルモノマーの重合体に対して、相溶している。
【0133】
あるいは、冷却後、抗生物活性化合物は、室温で固体であれば、重合性ビニルモノマーの重合体の粒子中において、相溶状態が凍結されて、非常に微細な固体微粒子として分散している。
【0134】
徐放性粒子が粉剤(後述)または粒剤(後述)として製剤化される場合には、徐放性粒子が互いに融着することを防止すべく、好ましくは、室温において、硬質のガラス状態とされるように、重合性ビニルモノマーが選択される。
【0135】
徐放性粒子の粒子径は、特に制限されず、平均粒子径(メジアン径)で、例えば、500nm〜1mm、好ましくは、1μm〜100μmである。
【0136】
とりわけ、常温で液体の抗生物活性化合物から得られる徐放性粒子の平均粒子径は、例えば、5〜100μmであり、常温で固体の抗生物活性化合物から得られる徐放性粒子の平均粒子径は、例えば、0.5〜30μmである。
【0137】
これにより、抗生物活性化合物が均一に存在する徐放性粒子が水分散(懸濁)された水分散(懸濁)液を得ることができる。
【0138】
そして、徐放性粒子を含む水分散(懸濁)液に、必要により、その他の分散剤、増粘剤、凍結防止剤、防腐剤、微生物増殖抑制剤、比重調節剤などの公知の添加剤を適宜配合する。
【0139】
このようにして得られた徐放性粒子は、そのままの状態(水分散液あるいは懸濁液)、つまり、水分散剤あるいは懸濁剤として用いてもよく、また、濾過および/または遠心分離などによって固液分離した後に、例えば、粉剤または粒剤などの公知の剤型に製剤化して用いてもよい。また、必要により、水洗浄および/または酸洗浄することもできる。さらに、水分散(懸濁)液をそのまま噴霧乾燥または風乾して、粉剤または粒剤などの剤型に製剤化することもできる。
【0140】
なお、粉剤は、とりわけ、分散剤として第三燐酸カルシウムが用いられた場合には、流動性に優れている。また、かかる粉剤を、再度、水分散または懸濁させることにより、水分散剤または懸濁剤を再調製することができる。そのため、かかる粉剤は、再水分散性または再懸濁性に優れる。
【0141】
その結果、輸送時には、徐放性粒子を粉剤として調製しておき、使用時には、水分散剤または懸濁剤として調製(再製剤化、再生)することにより、輸送コストの低減、さらには、用途を拡大させることができる。
【0142】
また、本発明では、抗生物活性化合物の融点が100℃以下と低いにもかかわらず、抗生物活性化合物を含有する徐放性粒子、とりわけ、徐放性粒子の粉剤は、取扱性に優れている。
【0143】
そして、上記した本発明の徐放性粒子の製造方法によれば、溶解度パラメータδの双極子間力項δp,compoundおよび水素結合力項δh,compoundが特定範囲にある抗生物活性化合物を溶解している疎水性の重合性モノマーを重合して、溶解度パラメータδの双極子間力項δp,polymerおよび水素結合力項δh,polymerが特定範囲にある重合体を生成するので、原料の調製が簡便となり、製造工程が簡単となり、さらに、原料コストが低減されることから、製造コストを低減させることができる。
【0144】
そのため、簡単、かつ、低コストで、優れた徐放性を有し、優れた効力持続効果を発現することのできる徐放性粒子を得ることができる。
【0145】
従って、この徐放性粒子は、各種の工業製品に適用することができ、例えば、屋内外の塗料、ゴム、繊維、樹脂、プラスチック、接着剤、目地剤、シーリング剤、建材、コーキング剤、土壌処理剤、木材、製紙工程における白水、顔料、印刷版用処理液、冷却用水、インキ、切削油、化粧用品、不織布、紡糸油、皮革などに配合することができる。なお、これらの工業製品に対する徐放性粒子中の抗生物活性化合物の配合量は、例えば、10〜100000mg/kg(製品重量)である。
【0146】
さらに、上記の方法によれば、溶剤を使用することなく、疎水性溶液を調製するので、環境負荷を低減することができる。
【0147】
そのため、この徐放性粒子は、屋内外の水性塗料に好適に配合することができ、その水性塗料としては、例えば、アクリル系、アクリル−スチレン系、スチレン系、酢酸ビニル系、酢酸ビニル−アクリル系、ポリエステル系、シリコーン系、ウレタン系、アルキッド系、フッ素系の樹脂のエマルションまたは水性樹脂およびこれらの混合物などをビヒクルとする塗料が挙げられ、なかでも、ゼロVOC塗料に配合すれば、環境に優しく、かつ、徐放性粒子の安定性を良好に維持して、効力持続性の向上を、より一層図ることができる。
【実施例】
【0148】
各実施例および各比較例で用いる略号の詳細を次に記載する。
IPBC:商品名「ファンギトロール400」、3−ヨード−2−プロピニルブチルカルバメート、分子量281、融点:60℃、水への溶解度:150ppm、溶解度パラメータδの双極子間力項δp,compound:3.23[(J/cm3)1/2]、溶解度パラメータδの水素結合力項δh,compound:7.83[(J/cm3)1/2]、インターナショナル・スペシャリティ・プロダクツ社製
OIT:商品名「ケーソン893T」(「ケーソン」は登録商標)、2−n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オン、分子量213、融点:20℃未満、水への溶解度:300ppm、溶解度パラメータδの双極子間力項δp,compound:5.47[(J/cm3)1/2]、溶解度パラメータδの水素結合力項δh,compound:5.87[(J/cm3)1/2]、ローム・アンド・ハース社製
シフルトリン:商品名「プリベントールHS12」(「プリベントール」は登録商標)、(RS)−α−シアノ−4−フルオロ−3−フェノキシベンジル=(1RS,3RS)−(1RS,3RS)−3−(2,2−ジクロロビニル)−2,2−メチルシクロプロパンカルボキシラート、分子量434、水への溶解度:1〜2ppb、異性体I(融点57℃)と異性体II(融点74℃)と異性体III(融点66℃)と異性体IV(融点102℃)との混合物、溶解度パラメータδの双極子間力項δp,compound:3.46[(J/cm3)1/2]、溶解度パラメータδの水素結合力項δh,compound:6.09[(J/cm3)1/2]、ランクセス社製
プロピコナゾール:1−[2−(2,4−ジクロロフェニル)−4−n−プロピル−1,3−ジオキソラン−2−イルメチル]−1H−1,2,4−トリアゾール、分子量342、融点:20℃未満、水への溶解度:110ppm、溶解度パラメータδの双極子間力項δp,compound:6.55[(J/cm3)1/2]、溶解度パラメータδの水素結合力項δh,compound:9.44[(J/cm3)1/2]、八幸通商社製
プロクロラズ:N−プロピル−N−[2−(2,4,6−トリクロロ−フェノキシ)エチル]イミダゾール−1−カルボキサミド、分子量375、融点45〜52℃、水への溶解度:55ppm、溶解度パラメータδの双極子間力項δp,compound:6.87[(J/cm3)1/2]、溶解度パラメータδの水素結合力項δh,compound:8.85[(J/cm3)1/2]、丸善薬品社製
フルシラゾール:ビス(4−フルオロフェニル)メチル(1H−1,2,4−トリアゾール−1−イルメチルシラン、分子量315、融点:54℃、水への溶解度:45ppm、溶解度パラメータδの双極子間力項δp,compound:5.95[(J/cm3)1/2]、溶解度パラメータδの水素結合力項δh,compound:6.85[(J/cm3)1/2]、エアブラウン社製
MBACT:商品名「イルガロール1071」(「イルガロール」は登録商標)、2−メチルチオ−4−t−ブチルアミノ−6−シクロプロピルアミノ−s−トリアジン、分子量253、融点:133℃、水への溶解度:7ppm、溶解度パラメータδの双極子間力項δp,compound:7.18[(J/cm3)1/2]、溶解度パラメータδの水素結合力項δh,compound:8.77[(J/cm3)1/2]、チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製
カプリン酸:分子量172、融点:29〜32℃、水への溶解度:1.5重量%、溶解度パラメータδの双極子間力項δp,monomer unit:2.20[(J/cm3)1/2]、溶解度パラメータδの水素結合力項δh,monomer unit:7.24[(J/cm3)1/2]
メタクリル酸メチル:商品名「アクリルエステルM」、水への溶解度:1.6重量%、モノマー単位としての溶解度パラメータδの双極子間力項δp,monomer unit:5.98[(J/cm3)1/2]、モノマー単位としての溶解度パラメータδの水素結合力項δh,monomer unit:9.25[(J/cm3)1/2]、三菱レイヨン社製
メタクリル酸n−ブチル:水への溶解度:0.08重量%、モノマー単位としての溶解度パラメータδの双極子間力項δp,monomer unit:3.76(J/cm3)1/2]、モノマー単位としての溶解度パラメータδの水素結合力項δh,monomer unit:7.33[(J/cm3)1/2]、三菱レイヨン社製
アクリル酸メチル:水への溶解度:5.7重量%、モノマー単位としての溶解度パラメータδの双極子間力項δp,monomer unit:7.36[(J/cm3)1/2]、モノマー単位としての溶解度パラメータδの水素結合力項δh,monomer unit:10.25[(J/cm3)1/2]、日本触媒社製
アクリル酸エチル:水への溶解度:1.5重量%、モノマー単位としての溶解度パラメータδの双極子間力項δp,monomer unit:5.93[(J/cm3)1/2]、モノマー単位としての溶解度パラメータδの水素結合力項δh,monomer unit:9.20[(J/cm3)1/2]、日本触媒社製
アクリル酸n−ブチル:水への溶解度:0.2重量%、モノマー単位としての溶解度パラメータδの双極子間力項δp,monomer unit:4.26[(J/cm3)1/2]、モノマー単位としての溶解度パラメータδの水素結合力項δh,monomer unit:7.81[(J/cm3)1/2]、日本触媒社製
メタクリル酸:水への溶解度:8.9重量%、モノマー単位としての溶解度パラメータδの双極子間力項δp,monomer unit:7.13[(J/cm3)1/2]、モノマー単位としての溶解度パラメータδの水素結合力項δh,monomer unit:13.03[(J/cm3)1/2]、三菱レイヨン製
スチレン:水に不溶、モノマー単位としての溶解度パラメータδの双極子間力項δp,monomer unit:1.27[(J/cm3)1/2]、モノマー単位としての溶解度パラメータδの水素結合力項δh,monomer unit:0.00[(J/cm3)1/2]
エチレングリコールジメタクリレート:商品名「ライトエステルEG」、水に不溶、モノマー単位としての溶解度パラメータδの双極子間力項δp,monomer unit:5.37[(J/cm3)1/2]、モノマー単位としての溶解度パラメータδの水素結合力項δh,monomer:10.42[(J/cm3)1/2]、共栄社化学社製
トリメチロールプロパントリメタクリレート:商品名「ライトエステルTMP」、水に不溶、溶解度パラメータδの双極子間力項δp,monomer unit:3.79[(J/cm3)1/2]、溶解度パラメータδの水素結合力項δh,monomer unit:9.68[(J/cm3)1/2]、共栄社化学社製
ジラウロイルパーオキシド:商品名「パーロイルL」(「パーロイル」は登録商標)、日油社製
PVA−217:商品名「クラレポバール217」、部分鹸化ポリビニルアルコール、クラレ社製
TCP−10U:商品名、第三燐酸カルシウム(3[Ca3(PO4)2]・Ca(OH)2)の10重量%水懸濁液、松尾薬品産業社製
DBN:商品名「ネオペレックスNo.6パウダー」(「ネオペレックス」は登録商標)、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、花王社製
ペレックスSS−L:商品名(「ペレックス」は登録商標)、ドデシルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム、花王社製
実施例1
(IPBC含有徐放性粒子を含む懸濁剤の製剤化)
200mLのビーカー(1)に、IPBC40g、メタクリル酸メチル54g、エチレングリコールジメタクリレート6gおよびジラウロイルパーオキシド300mgを仕込み、室温で攪拌することにより、均一な疎水性溶液を調製した。
【0149】
別途、500mLのビーカー(2)に、イオン交換水280g、PVA−217の10%水溶液20gおよびDBNの5%水溶液200mgを仕込み、室温で攪拌することにより、均一な水溶液を得た。
【0150】
次いで、500mLのビーカー(2)に、疎水性溶液を加え、T.K.ホモミクサーMARK2.5型(プライミクス社製)により回転数5000rpmで10分間攪拌することにより、疎水性溶液を水分散させて、懸濁液を調製した。
【0151】
その後、懸濁液を、攪拌器、還流冷却器、温度計および窒素導入管を装備した500mL4頚コルベンに移し、窒素気流下、攪拌しながら昇温して、懸濁重合を行った。
【0152】
懸濁重合は、55℃到達時点を重合開始とし、その後、60±2℃で1時間、70±2℃で3時間、80±2℃で2時間、連続して行った。
【0153】
その後、反応後の懸濁液を30℃以下に冷却することにより、IPBCを含有するメジアン径7.4μmの徐放性粒子の懸濁液(懸濁剤)を得た。
【0154】
なお、徐放性粒子のメジアン径は、レーザー回析散乱式粒子径分布測定装置LA−920(堀場製作所社製)により測定した。メジアン径の測定は、以下の各実施例および各比較例についても同様である。
【0155】
実施例2
(IPBC含有徐放性粒子を含む懸濁剤の製剤化)
200mLのビーカー(1)に、IPBC40g、メタクリル酸メチル42g、エチレングリコールジメタクリレート18gおよびジラウロイルパーオキシド300mgを仕込み、室温で攪拌することにより、均一な疎水性溶液を調製した。
【0156】
別途、500mLのビーカー(2)に、イオン交換水280g、TCP−10U 20gおよびペレックスSS−Lの5%水溶液200mgを仕込み、室温で攪拌することにより、均一な水溶液を得た。
【0157】
次いで、500mLのビーカー(2)に、疎水性溶液を加え、T.K.ホモミクサーMARK2.5型(プライミクス社製)により回転数5000rpmで10分間攪拌することにより、疎水性溶液を水分散させて、懸濁液を調製した。
【0158】
その後、懸濁液を、攪拌器、還流冷却器、温度計および窒素導入管を装備した500mL4頚コルベンに移し、窒素気流下、攪拌しながら昇温して、懸濁重合を行った。
【0159】
懸濁重合は、55℃到達時点を重合開始とし、その後、60±2℃で1時間、70±2℃で3時間、80±2℃で2時間、連続して行った。
【0160】
その後、反応後の懸濁液を30℃以下に冷却することにより、IPBCを含有するメジアン径8.2μmの徐放性粒子の懸濁液(懸濁剤)を得た。
【0161】
実施例3
(IPBC含有徐放性粒子を含む懸濁剤の製剤化)
メタクリル酸メチルおよびエチレングリコールジメタクリレートの仕込み量を、ともに30gに変更した以外は、実施例1と同様にして、疎水性溶液を水分散させ、続いて、懸濁重合を行なうことにより、IPBCを含有するメジアン径9.6μmの徐放性粒子の懸濁液(懸濁剤)を得た。
【0162】
実施例4
(OIT含有徐放性粒子を含む懸濁剤の製剤化)
200mLのビーカー(1)に、OIT40g、メタクリル酸メチル54g、エチレングリコールジメタクリレート6gおよびジラウロイルパーオキシド300mgを仕込み、室温で攪拌することにより、均一な疎水性溶液を調製した。
【0163】
別途、500mLのビーカー(2)に、イオン交換水280g、PVA−217の10%水溶液20gおよびDBNの5%水溶液200mgを室温で攪拌することにより、均一な水溶液を得た。
【0164】
次いで、500mLのビーカー(2)に、疎水性溶液を加え、T.K.ホモミクサーMARK2.5型(プライミクス社製)により回転数2000rpmで10分間攪拌することにより、疎水性溶液を水分散させて、懸濁液を調製した。
【0165】
その後、懸濁液を、攪拌器、還流冷却器、温度計および窒素導入管を装備した500mL4頚コルベンに移し、窒素気流下、攪拌しながら昇温して、懸濁重合を行った。
【0166】
懸濁重合は、55℃到達時点を重合開始とし、その後、60±2℃で2時間、70±2℃で2時間、80±2℃で2時間、連続して行った。
【0167】
その後、反応後の懸濁液を30℃以下に冷却することにより、OITを含有するメジアン径14μmの徐放性粒子の懸濁液(懸濁剤)を得た。
【0168】
実施例5
(OIT含有徐放性粒子を含む懸濁剤の製剤化)
メタクリル酸メチルおよびエチレングリコールジメタクリレートの仕込み量を、ともに30gに変更した以外は、実施例4と同様にして、疎水性溶液を水分散させ、続いて、懸濁重合を行なうことにより、OITを含有するメジアン径14μmの徐放性粒子の懸濁液(懸濁剤)を得た。
【0169】
実施例6
(OIT含有徐放性粒子を含む懸濁剤の製剤化)
OIT、メタクリル酸メチルおよびエチレングリコールジメタクリレートの仕込み量を、それぞれ、50g、45gおよび5gに変更した以外は、実施例4と同様にして、疎水性溶液を水分散させ、続いて、懸濁重合を行なうことにより、OITを含有するメジアン径9.8μmの徐放性粒子の懸濁液(懸濁剤)を得た。
【0170】
実施例7
(OIT含有徐放性粒子を含む懸濁剤の製剤化)
水分散時におけるT.K.ホモミクサーMARK2.5型(プライミクス社製)の攪拌条件を、回転数1000rpmに変更した以外は、実施例4と同様にして、疎水性溶液を水分散させ、続いて、懸濁重合を行なうことにより、IPBCを含有するメジアン径29μmの徐放性粒子の懸濁液(懸濁剤)を得た。
【0171】
実施例8
(シフルトリン含有微粒子を含む懸濁剤の製剤化)
200mLのビーカー(1)に、シフルトリン40g、メタクリル酸メチル54g、トリメチロールプロパントリメタクリレート6g、ジラウロイルパーオキシド300mgを仕込み、室温で攪拌することにより、均一な疎水性溶液を調製した。
【0172】
別途、500mLのビーカー(2)に、イオン交換水280g、PVA−217の10%水溶液20g、DBNの5%水溶液200mgを仕込み、室温で攪拌することにより、均一な水溶液を得た。
【0173】
次いで、500mLのビーカー(2)に、疎水性溶液を加え、T.K.ホモミクサーMARK2.5型(プライミクス社製)により回転数3000rpmで10分間攪拌することにより、疎水性溶液を水分散させて、懸濁液を調製した。
【0174】
その後、懸濁液を、攪拌器、還流冷却器、温度計および窒素導入管を装備した500mL4頚コルベンに移し、窒素気流下、攪拌しながら昇温して、懸濁重合を行った。
【0175】
懸濁重合は、55℃到達時点を重合開始とし、その後、60±2℃で2時間、70±2℃で2時間、80±2℃で2時間、連続して行った。
【0176】
その後、反応後の懸濁液を30℃以下に冷却することにより、シフルトリンを含有するメジアン径15μmの徐放性粒子の懸濁液(懸濁剤)を得た。
【0177】
実施例9
(OIT含有徐放性粒子を含む懸濁剤の製剤化)
200mLのビーカー(1)に、OIT40g、メタクリル酸メチル36g、メタクリル酸6g、エチレングリコールジメタクリレート18gおよびジラウロイルパーオキシド300mgを仕込み、室温で攪拌することにより、均一な疎水性溶液を調製した。
【0178】
別途、500mLのビーカー(2)に、イオン交換水280g、TCP−10U 20gおよびペレックスSS−Lの5%水溶液200mgを仕込み、室温で攪拌することにより、均一な水溶液を得た。
【0179】
次いで、500mLのビーカー(2)に、疎水性溶液を加え、T.K.ホモミクサーMARK2.5型(プライミクス社製)により2000rpmで10分間攪拌することにより、疎水性溶液を水分散させて、懸濁液を調製した。
【0180】
その後、懸濁液を、攪拌器、還流冷却器、温度計および窒素導入管を装備した500mL4頚コルベンに移し、窒素気流下、攪拌しながら昇温して、懸濁重合を行った。
【0181】
懸濁重合は、55℃到達時点を重合開始とし、その後、60±2℃で2時間、70±2℃で2時間、80±2℃で2時間、連続して行った。
【0182】
その後、反応後の懸濁液を30℃以下に冷却することにより、OITを含有するメジアン径36μmの徐放性粒子の懸濁液(懸濁剤)を得た。
【0183】
実施例10
(シフルトリン含有徐放性粒子を含む懸濁剤の製剤化)
200mLのビーカー(1)に、シフルトリン40g、メタクリル酸メチル42g、エチレングリコールジメタクリレート18gおよびジラウロイルパーオキシド300mgを仕込み、室温で攪拌することにより、均一な疎水性溶液を調製した。
【0184】
別途、500mLのビーカー(2)に、イオン交換水280g、TCP−10U 20gおよびペレックスSS−Lの5%水溶液200mgを仕込み、室温で攪拌することにより、均一な水溶液を得た。
【0185】
次いで、500mLのビーカー(2)に、疎水性溶液を加え、T.K.ホモミクサーMARK2.5型(プライミクス社製)により3000rpmで10分間攪拌することにより、疎水性溶液を水分散させて、懸濁液を調製した。
【0186】
その後、懸濁液を、攪拌機および還流冷却機を装備した500mL4頚コルベンに移し、窒素気流下、攪拌しながら昇温して、懸濁重合を行った。
【0187】
懸濁重合は、55℃到達時点を重合開始とし、その後、60±2℃で2時間、70±2℃で2時間、80±2℃で2時間、連続して行った。
【0188】
その後、反応後の懸濁液を30℃以下に冷却することにより、シフルトリン(異性体I、異性体IIおよび異性体IIIの混合物)を含有するメジアン径22μmの徐放性粒子の懸濁液(懸濁剤)を得た。
【0189】
実施例11
(プロピコナゾール含有徐放性粒子を含む懸濁剤の製剤化)
シフルトリン40gに代えて、プロピコナゾール40gを仕込んだ以外は、実施例10と同様にして、疎水性溶液を水分散させ、続いて、懸濁重合を行なうことにより、プロピコナゾールを含有するメジアン径19μmの徐放性粒子の懸濁液(懸濁剤)を得た。
【0190】
実施例12
(プロクロラズ含有徐放性粒子を含む懸濁剤の製剤化)
シフルトリン40gに代えて、プロクロラズ40gを仕込んだ以外は、実施例10と同様にして、疎水性溶液を水分散させ、続いて、懸濁重合を行なうことにより、プロクロラズを含有するメジアン径30μmの徐放性粒子の懸濁液(懸濁剤)を得た。
【0191】
実施例13
(フルシラゾール含有徐放性粒子を含む懸濁剤の製剤化)
シフルトリン40gに代えて、フルシラゾール40gを仕込んだ以外は、実施例10と同様にして、疎水性溶液を水分散させ、続いて、懸濁重合を行なうことにより、フルシラゾールを含有するメジアン径32μmの徐放性粒子の懸濁液(懸濁剤)を得た。
【0192】
実施例14
(IPBC含有徐放性粒子を含む懸濁剤の製剤化)
200mLのビーカー(1)に、IPBC40g、メタクリル酸メチル24g、メタクリル酸n−ブチル18g、エチレングリコールジメタクリレート18gおよびジラウロイルパーオキシド300mgを仕込み、室温で攪拌することにより、均一な疎水性溶液を調製した。
【0193】
別途、500mLのビーカー(2)に、イオン交換水280g、PVA−217の10%水溶液20gおよびDBNの5%水溶液200mgを仕込み、室温で攪拌することにより、均一な水溶液を得た。
【0194】
次いで、500mLのビーカー(2)に、疎水性溶液を加え、T.K.ホモミクサーMARK2.5型(プライミクス社製)により3000rpmで10分間攪拌することにより、疎水性溶液を水分散させて、懸濁液を調製した。
【0195】
その後、懸濁液を、攪拌器、還流冷却器、温度計および窒素導入管を装備した500mL4頚コルベンに移し、窒素気流下、攪拌しながら昇温して、懸濁重合を行った。
【0196】
懸濁重合は、55℃到達時点を重合開始とし、その後、60±2℃で1時間、70±2℃で3時間、80±2℃で2時間、連続して行った。
【0197】
その後、反応後の懸濁液を30℃以下に冷却することにより、IPBCを含有するメジアン径24μmの徐放性粒子の懸濁液(懸濁剤)を得た。
【0198】
実施例15
(IPBC含有徐放性粒子を含む懸濁剤の製剤化)
メタクリル酸n−ブチル18gに代えて、アクリル酸エチル18gを仕込んだ以外は、実施例14と同様にして、疎水性溶液を水分散させ、続いて、懸濁重合を行なうことにより、IPBCを含有するメジアン径22μmの徐放性粒子の懸濁液(懸濁剤)を得た。
【0199】
実施例16
(IPBC含有徐放性粒子を含む懸濁剤の製剤化)
メタクリル酸n−ブチル18gに代えて、アクリル酸n−ブチル18gを仕込んだ以外は、実施例14と同様にして、疎水性溶液を水分散させ、続いて、懸濁重合を行なうことにより、IPBCを含有するメジアン径22μmの徐放性粒子の懸濁液(懸濁剤)を得た。
【0200】
比較例1
(MBACT含有徐放性粒子を含む懸濁剤の製剤化)
200mLのビーカー(1)に、MBACT10g、メタクリル酸メチル81g、エチレングリコールジメタクリレート9g、ジラウロイルパーオキシド300mgを仕込み、室温で攪拌することにより、均一な疎水性溶液を調製した。
【0201】
別途、500mLのビーカー(2)に、イオン交換水280g、PVA−217の10%水溶液20gおよびDBNの5%水溶液200mgを仕込み、室温で攪拌することにより、均一な水溶液を得た。
【0202】
次いで、500mLのビーカー(2)に、疎水性溶液を加え、T.K.ホモミクサーMARK2.5型(プライミクス社製)により回転数3000rpmで10分間攪拌することにより、疎水性溶液を水分散させて、懸濁液を調製した。
【0203】
その後、懸濁液を、攪拌器、還流冷却器、温度計および窒素導入管を装備した500mL4頚コルベンに移し、窒素気流下、攪拌しながら昇温して、懸濁重合を行った。
【0204】
懸濁重合は、55℃到達時点を重合開始とし、その後、60±2℃で2時間、70±2℃で3時間、80±2℃で2時間、連続して行った。
【0205】
その後、反応後の懸濁液を30℃以下に冷却することにより、MBACTを含有するメジアン径20μmの徐放性粒子の懸濁液(懸濁剤)を得た。
【0206】
比較例2
(MBACT共存粒子を含む懸濁剤の製剤化)
200mLのビーカー(1)に、MBACT40g、メタクリル酸メチル54g、エチレングリコールジメタクリレート6gを仕込み、攪拌下、昇温して、70℃の均一な疎水性溶液を調製した。
【0207】
別途、500mLのビーカー(2)に、イオン交換水280g、PVA−217の10%水溶液20gおよびDBNの5%水溶液200mgを仕込み、攪拌下、昇温して、70℃の均一水溶液を得た。
【0208】
次いで、200mLのビーカー(1)に、ジラウロイルパーオキシド300mgを添加した後、速やかに、このモノマー溶液をビーカー(2)に加え、液温70℃を維持しながら、T.K.ホモミクサーMARK2.5型(プライミクス社製)により回転数3000rpmで10分間攪拌することにより、疎水性溶液を水分散させて、懸濁液を調製した。
【0209】
その後、懸濁液を、攪拌器、還流冷却器、温度計および窒素導入管を装備した500mL4頚コルベンに移し、窒素気流下、攪拌しながら昇温して、懸濁重合を行った。
【0210】
懸濁重合は、70±2℃で5時間、80±2℃で2時間、連続して行った。
【0211】
その後、反応後の懸濁液を30℃以下に冷却することにより、MBACTが共存するメジアン径26μmの粒子の懸濁液(懸濁剤)を得た。
【0212】
比較例3
(カプリン酸含有徐放性粒子を含む懸濁剤の製剤化)
200mLのビーカー(1)に、カプリン酸40g、メタクリル酸メチル42g、エチレングリコールジメタクリレート18gおよびジラウロイルパーオキシド300mgを仕込み、室温で攪拌することにより、均一な疎水性溶液を調製した。
【0213】
別途、500mLのビーカー(2)に、イオン交換水280g、TCP−10U 20gおよびペレックスSS−Lの5%水溶液200mgを仕込み、室温で攪拌することにより、均一な水溶液を得た。
【0214】
次いで、500mLのビーカー(2)に、疎水性溶液を加え、T.K.ホモミクサーMARK2.5型(プライミクス社製)により2000rpmで10分間攪拌することにより、疎水性溶液を水分散させて、懸濁液を調製した。
【0215】
その後、懸濁液を、攪拌器、還流冷却器、温度計および窒素導入管を装備した500mL4頚コルベンに移し、窒素気流下、攪拌しながら昇温して、懸濁重合を行った。
【0216】
懸濁重合は、55℃到達時点を重合開始とし、その後、60±2℃で1時間、70±2℃で2時間、80±2℃で2時間、連続して行った。
【0217】
その後、反応後の懸濁液を30℃以下に冷却したところ、水相に溶解していたカプリン酸が析出して、懸濁液が固化し、懸濁剤を調製できなかった。
【0218】
比較例4
(IPBC共存粒子を含む懸濁剤の製剤化)
200mLのビーカー(1)に、IPBC40g、メタクリル酸n−ブチル42g、エチレングリコールジメタクリレート18gおよびジラウロイルパーオキシド300mgを仕込み、室温で攪拌することにより、均一な疎水性溶液を調製した。
【0219】
別途、500mLのビーカー(2)に、イオン交換水280g、PVA−217の10%水溶液20gおよびDBNの5%水溶液200mgを仕込み、室温で攪拌することにより、均一な水溶液を得た。
【0220】
次いで、500mLのビーカー(2)に、疎水性溶液を加え、T.K.ホモミクサーMARK2.5型(プライミクス社製)により回転数3000rpmで10分間攪拌することにより、疎水性溶液を水分散させて、懸濁液を調製した。
【0221】
その後、懸濁液を、攪拌器、還流冷却器、温度計および窒素導入管を装備した500mL4頚コルベンに移し、窒素気流下、攪拌しながら昇温して、懸濁重合を行った。
【0222】
懸濁重合は、55℃到達時点を重合開始とし、その後、60±2℃で1時間、70±2℃で3時間、80±2℃で2時間、連続して行った。
【0223】
その後、反応後の懸濁液を30℃以下に冷却することにより、IPBCが共存するメジアン径28μmの粒子の懸濁液(懸濁剤)を得た。
【0224】
比較例5
(IPBC共存粒子を含む懸濁剤の製剤化)
メタクリル酸メチル42gに代えて、スチレン42gを仕込み、さらに、疎水性溶液の水分散におけるホモミクサーの回転数を3000rpmに変更した以外は、実施例2と同様にして、懸濁重合を行なうことにより、IPBCが共存するメジアン径30μmの粒子の懸濁液(懸濁剤)を得た。
【0225】
比較例6
(IPBC共存粒子を含む懸濁剤の製剤化)
メタクリル酸n−ブチル42gに代えて、アクリル酸メチル42gを仕込んだ以外は、比較例4と同様にして、疎水性溶液を水分散させ、続いて、懸濁重合を行なうことにより、IPBCが共存するメジアン径11μmの粒子の懸濁液(懸濁剤)を得た。
【0226】
各実施例および各比較例における各成分の処方を表2〜表4に示す。なお、表中、配合処方の数値は、g数(固形分。但し、イオン交換水を除く。)を示す。
【0227】
【表2】
【0228】
【表3】
【0229】
【表4】
【0230】
実施例17
(粉剤の製剤化および懸濁剤の再製剤化)
実施例2の懸濁液をステンレス製バットに移し、室温で風乾することにより、流動性に優れた粉剤を製剤化した。
【0231】
続いて、製剤化した粉剤50gに、固形分濃度が25%となるように、脱イオン水を加えて、T.K.ディスパー(プライミクス社製)で攪拌して、粉剤を再度、水分散(懸濁)させることにより、懸濁剤を再製剤化(再生)した。
【0232】
再製剤化した実施例17の懸濁剤の徐放性粒子は、実施例2の懸濁剤の徐放性粒子と同一のメジアン径および粒子径分布であった。
【0233】
実施例18〜22
(粉剤の製剤化および懸濁剤の再製剤化)
実施例9〜13についても、実施例17と同様に処理して、粉剤を製剤化し、続いて、懸濁剤を再製剤化し、それらを、それぞれ、実施例18〜22の粉剤および懸濁剤とした。
【0234】
再製剤化した実施例18〜22の懸濁剤は、それぞれ、実施例9〜13の懸濁剤の徐放性粒子と同一のメジアン径および粒子径分布であった。
【0235】
実施例17〜22の粉剤および懸濁剤(再懸濁後)と、実施例2、9〜13の懸濁剤との対応を表5に示す。
【0236】
【表5】
【0237】
(溶解度パラメータδの算出)
1. 重合体の溶解度パラメータδの双極子間力項δp,polymerおよび水素結合力項δh,polymerを、上記に準拠して、算出した。
【0238】
それらの結果を、抗生物活性化合物の溶解度パラメータδの双極子間力項δp,compoundおよび水素結合力項δh,compound(表1参照)とともに、表2〜表4に示す。
2. Δδp(=δp,polymer−δp,compound)およびΔδh(=δh,polymer−δh,compound)をそれぞれ算出した。
【0239】
それらの結果を、表2〜表4に示す。
【0240】
(評価)
1.SEM(走査型電子顕微鏡、Scanning Electron Microscope)観察
実施例1〜16および比較例2、4〜6の懸濁液(懸濁剤)を、試料台に滴下し、その後、水を留去した後、得られた徐放性粒子(比較例2および4〜6では、粒子)を、走査型電子顕微鏡日立TM−100(日立ハイテクノロジーズ社製)で、SEM観察した。
【0241】
実施例1、5、8、14〜16および比較例2、4〜6のSEM写真の画像処理図を、図1〜10にそれぞれ示す。
【0242】
図1〜6で例示されるように、実施例1〜16では、いずれも、抗生物活性性化合物が徐放性粒子外に析出することが認められなかった。
【0243】
一方、図7から分かるように、比較例2では、抗生物活性化合物が、徐放性粒子外に針状結晶となって析出することが認められ、さらに、粒子は、略椀型形状に形成されており、つまり、抗生物活性化合物が相分離して粒子外へ排出されたことに起因する穴が形成されていることが認められた。
【0244】
また、図8から分かるように、比較例4では、抗生物活性化合物が、粒子の外周に巻き付くように、針状結晶となって析出することが認められた。
【0245】
また、図9から分かるように、比較例5では、抗生物活性化合物の一部が針状結晶となって析出するとともに、残部が粒子の表面を被覆することが認められた。
【0246】
さらに、図10から分かるように、比較例6では、抗生物活性化合物が、徐放性粒子外に針状結晶となって析出することが認められた。
【0247】
なお、実施例6では、OITの可塑剤としての効果により、水を留去すると透明な膜となったため、SEM観察はできなかった。従って、この事実により、実施例6が相溶系であることが分かる。
2.TEM(透過型電子顕微鏡、Transmission Electron Microscope)観察
実施例1〜16の懸濁液(懸濁剤)をそれぞれ凍結乾燥し、次いで、アミンを含むビスフェノール型液状エポキシ樹脂に分散して、その後、硬化させた。次いで、硬化物をウルトラミクロトームで切断して断面を出し、かかる断面を四酸化オスミウムによって染色し、必要に応じて、さらに四酸化ルテニウムで染色し、これをウルトラミクロトームで超薄切片に切り出すことにより、サンプルを調製した。調製したサンプルを、透過型電子顕微鏡(型番「H−7100」、日立製作所社製)で、TEM観察した。
【0248】
実施例1および9〜13のTEM写真の画像処理図を、図11〜16にそれぞれ示す。
【0249】
図11〜16で例示されるように、実施例1および9〜13では、いずれも、抗生物活性性化合物が徐放性粒子内に含有されていることが認められた。
【0250】
特に、図11、図12および図14から分かるように、実施例1、9および11では、徐放性粒子の断面が一様であるため、抗生物活性化合物が徐放性粒子に均一に相溶して含有されていることが認められた。
【0251】
また、図13から分かるように、実施例10では、本発明の抗生物活性化合物、つまり、シフルトリンの異性体I(融点:57℃)、異性体II(融点:74℃)および異性体III(融点:66℃)の混合物が重合体に均一に相溶して含有される一方、不純物として約20重量%含まれる異性体IV(融点:102℃)が重合体の内部に析出することによって、徐放性粒子がミクロ相分離状に形成されることが認められた。
【0252】
さらに、図15および16から分かるように、実施例12および13では、重合体における抗生物活性化合物の濃度勾配、つまり、徐放性粒子の表面において抗生物活性化合物の濃度の高い部分が、陰影が濃く、徐放性粒子の中心において抗生物活性化合物の濃度の低い部分が、陰影が薄くなる濃淡が確認され、重合体中に抗生物活性化合物が相溶しつつ、抗生物活性化合物の濃度が、徐放性粒子の中心から表面に向かうに従って高くなることが認められた。
3.徐放性試験
(1)IPBC含有徐放性粒子の徐放性試験(実施例1〜3および14〜16)
以下の操作に従って、実施例1〜3および14〜16のIPBC含有徐放性粒子について、徐放性試験を実施した。
【0253】
すなわち、まず、実施例1〜3および14〜16の徐放性粒子の懸濁液(IPBC濃度10重量%)と、IPBCが懸濁された、ブランクとしてのIPBC懸濁液(IPBC濃度10重量%)とを、それぞれ用意した。
【0254】
次いで、円形濾紙(東洋濾紙No.5C、JIS P 3801の5種Cに相当)を2枚重ねて襞(ひだ)折りした。
【0255】
次いで、その濾紙に、用意した懸濁液0.5mLをゆっくりそれぞれ添加し、その後、風乾した。
【0256】
この濾紙に、定量チューブポンプを用いて、流速20mL/hrで1000mL通水し、得られた濾液のIPBC量および濾紙に残存するIPBC量から、HPLCを用いて、IPBCの徐放率を算出した。なお、各通水量における徐放率は、積算値(つまり、総徐放率)として算出した。
【0257】
実施例1〜3の結果を図17に示し、実施例14〜16の結果を図18に示す。
(2)プロピコナゾール含有徐放性粒子の徐放性試験(実施例11)
上記した「(1)IPBC含有徐放性粒子の徐放性試験」の操作に準拠して、実施例11のプロピコナゾール含有徐放性粒子の徐放性試験を実施した。
【0258】
その結果を図19に示す。
(3)プロクロラズ含有徐放性粒子の徐放性試験(実施例12)
上記した「(1)IPBC含有徐放性粒子の徐放性試験」の操作に準拠して、実施例12のプロクロラズ含有徐放性粒子の徐放性試験を実施した。
【0259】
その結果を図20に示す。
(4)フルシラゾール含有徐放性粒子の徐放性試験(実施例13)
上記した「(1)IPBC含有徐放性粒子の徐放性試験」の操作に準拠して、実施例13のフルシラゾール含有徐放性粒子の徐放性試験を実施した。
【0260】
その結果を図21に示す。
(5)OIT含有徐放性粒子の徐放性試験(実施例4〜7および9)
以下の操作に従って、実施例4〜7および9のOIT含有徐放性粒子について、徐放性試験を実施した。
【0261】
まず、市販の白色アクリルシリコーンエマルション塗料に、実施例4〜7および9で得られた徐放性粒子の懸濁液(懸濁剤)およびブランクとしてのOITを、OIT濃度が、ともに0.2重量%となるように添加し、その後、徐放性粒子の懸濁液が添加された塗料を、イオン交換水で1.5倍に希釈した。
【0262】
次いで、濾紙(東洋濾紙No.2、JIS P 3801の2種に相当)を3.5cmm×3.5cmに切り出して精秤し、上記した塗料に浸漬した。
【0263】
その後、濾紙をガラス瓶に入れ、イオン交換水15mLを加えて、18時間振とうした。続いて、イオン交換水を採取し、新たにイオン交換水15mLを加えて、18時間振とうした。その後、上記したイオン交換水の交換操作を2回繰り返した。
【0264】
上記により採取した各回のイオン交換水中のOIT量から、HPLCを用いて、OITの徐放率を算出した。なお、各回数における徐放率は、積算値(つまり、総徐放率)として算出した。
【0265】
それらの結果を、図22に示す。
(6)シフルトリン含有徐放性粒子の徐放性試験(実施例8および10)
以下の操作に従って、実施例8および10のシフルトリン含有徐放性粒子について、徐放性試験を実施した。
【0266】
すなわち、実施例8および10の徐放性粒子の懸濁液(懸濁剤)(シフルトリン濃度10%)と、シフルトリンが溶解され、ブランクとしてのアセトニトリル10%溶液とをそれぞれ用意した。
【0267】
次いで、円形濾紙(東洋濾紙No.5C、JIS P 3801で5種Cに相当)を2枚重ねて襞折りした。
【0268】
次いで、その濾紙に、用意した実施例8および10の懸濁液0.5mLおよびシフルトリンのアセトニトリル溶液0.5mLをゆっくり添加し、その後、風乾した。
【0269】
その後、濾紙をガラス瓶に入れ、イオン交換水/メタノール(=50/50(容量比))混合液180mLを加えて、室温で20時間、静置浸漬した。続いて、イオン交換水/メタノール混合液を採取し、新しいイオン交換水/メタノール混合液180mLを加えて、20時間、静置および浸漬した。その後、上記したイオン交換水/メタノール混合液の交換操作を2回繰り返した。
【0270】
上記により採取した各回のイオン交換水/メタノール混合液から、TOF−MSを用いて、シフルトリンの徐放量を算出した。なお、各回数における徐放量は、積算値(つまり、総徐放量)として算出した。
【0271】
それらの結果を、図23に示す。
(7)MBACT含有徐放性粒子(比較例1)およびMBACT共存徐放性粒子(比較例2)の徐放性試験
OIT含有徐放性粒子に代えて、MBACT含有徐放性粒子(比較例1)およびMBACT共存徐放性粒子(比較例2)を用いた以外は、上記した(5)OIT含有徐放性粒子の徐放性試験と同様の方法により、MBACTの徐放性試験を実施した。
【0272】
それらの結果を、図24に示す。
【産業上の利用可能性】
【0273】
本発明の徐放性粒子は、各種の工業製品に適用することができ、例えば、屋内外の塗料、ゴム、繊維、樹脂、プラスチック、接着剤、目地剤、シーリング剤、建材、コーキング剤、土壌処理剤、木材、製紙工程における白水、顔料、印刷版用処理液、冷却用水、インキ、切削油、化粧用品、不織布、紡糸油、皮革などに配合することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
融点が100℃以下であり、Hansenで定義され、van Klevelen and Hoftyzer法で算出される溶解度パラメータδの双極子間力項δp,compoundが2〜8[(J/cm3)1/2]、前記溶解度パラメータδの水素結合力項δh,compoundが5.5〜9.5[(J/cm3)1/2]である疎水性の抗生物活性化合物を、溶剤の不存在下、疎水性の重合性ビニルモノマーで溶解することにより、疎水性溶液を調製し、その疎水性溶液を水分散させ、前記重合性ビニルモノマーを、油溶性開始剤の存在下、ラジカル重合して、前記溶解度パラメータδの双極子間力項δp,polymerが5〜7[(J/cm3)1/2]であり、前記溶解度パラメータδの水素結合力項δh,polymerが8〜10[(J/cm3)1/2]である重合体を生成することにより得られることを特徴とする、徐放性粒子。
【請求項2】
前記重合体の双極子間力項δp,polymerから前記抗生物活性化合物の双極子間力項δp,compoundを差し引いた値Δδpが−1.1〜2.7[(J/cm3)1/2]であり、
前記重合体の水素結合力項δh,polymerから前記抗生物活性化合物の水素結合力項δh,compoundを差し引いた値Δδhが、0〜4.2[(J/cm3)1/2]であることを特徴とする、請求項1に記載の徐放性粒子。
【請求項3】
前記抗生物活性化合物の前記重合性ビニルモノマーに対する配合割合が、重量基準で、0.11〜1.5であることを特徴とする、請求項1または2に記載の徐放性粒子。
【請求項4】
融点が100℃以下であり、Hansenで定義され、van Klevelen and Hoftyzer法で算出される溶解度パラメータδの双極子間力項δp,compoundが2〜8[(J/cm3)1/2]、前記溶解度パラメータδの水素結合力項δh,compoundが5.5〜9.5[(J/cm3)1/2]である疎水性の抗生物活性化合物を、溶剤の不存在下、疎水性の重合性ビニルモノマーで溶解することにより、疎水性溶液を調製する工程、
前記疎水性溶液を水分散させる工程、および、
水分散された前記疎水性溶液の前記重合性ビニルモノマーを、油溶性開始剤の存在下、ラジカル重合して、前記溶解度パラメータδの双極子間力項δp,polymerが5〜7[(J/cm3)1/2]であり、前記溶解度パラメータδの水素結合力項δh,polymerが8〜10[(J/cm3)1/2]である重合体を生成する工程
を備えることを特徴とする、徐放性粒子の製造方法。
【請求項5】
前記重合体の双極子間力項δp,polymerから前記抗生物活性化合物の双極子間力項δp,compoundを差し引いた値Δδpが−1.1〜2.7[(J/cm3)1/2]であり、
前記重合体の水素結合力項δh,polymerから前記抗生物活性化合物の水素結合力項δh,compoundを差し引いた値Δδhが、0〜4.2[(J/cm3)1/2]であることを特徴とする、請求項4に記載の徐放性粒子の製造方法。
【請求項1】
融点が100℃以下であり、Hansenで定義され、van Klevelen and Hoftyzer法で算出される溶解度パラメータδの双極子間力項δp,compoundが2〜8[(J/cm3)1/2]、前記溶解度パラメータδの水素結合力項δh,compoundが5.5〜9.5[(J/cm3)1/2]である疎水性の抗生物活性化合物を、溶剤の不存在下、疎水性の重合性ビニルモノマーで溶解することにより、疎水性溶液を調製し、その疎水性溶液を水分散させ、前記重合性ビニルモノマーを、油溶性開始剤の存在下、ラジカル重合して、前記溶解度パラメータδの双極子間力項δp,polymerが5〜7[(J/cm3)1/2]であり、前記溶解度パラメータδの水素結合力項δh,polymerが8〜10[(J/cm3)1/2]である重合体を生成することにより得られることを特徴とする、徐放性粒子。
【請求項2】
前記重合体の双極子間力項δp,polymerから前記抗生物活性化合物の双極子間力項δp,compoundを差し引いた値Δδpが−1.1〜2.7[(J/cm3)1/2]であり、
前記重合体の水素結合力項δh,polymerから前記抗生物活性化合物の水素結合力項δh,compoundを差し引いた値Δδhが、0〜4.2[(J/cm3)1/2]であることを特徴とする、請求項1に記載の徐放性粒子。
【請求項3】
前記抗生物活性化合物の前記重合性ビニルモノマーに対する配合割合が、重量基準で、0.11〜1.5であることを特徴とする、請求項1または2に記載の徐放性粒子。
【請求項4】
融点が100℃以下であり、Hansenで定義され、van Klevelen and Hoftyzer法で算出される溶解度パラメータδの双極子間力項δp,compoundが2〜8[(J/cm3)1/2]、前記溶解度パラメータδの水素結合力項δh,compoundが5.5〜9.5[(J/cm3)1/2]である疎水性の抗生物活性化合物を、溶剤の不存在下、疎水性の重合性ビニルモノマーで溶解することにより、疎水性溶液を調製する工程、
前記疎水性溶液を水分散させる工程、および、
水分散された前記疎水性溶液の前記重合性ビニルモノマーを、油溶性開始剤の存在下、ラジカル重合して、前記溶解度パラメータδの双極子間力項δp,polymerが5〜7[(J/cm3)1/2]であり、前記溶解度パラメータδの水素結合力項δh,polymerが8〜10[(J/cm3)1/2]である重合体を生成する工程
を備えることを特徴とする、徐放性粒子の製造方法。
【請求項5】
前記重合体の双極子間力項δp,polymerから前記抗生物活性化合物の双極子間力項δp,compoundを差し引いた値Δδpが−1.1〜2.7[(J/cm3)1/2]であり、
前記重合体の水素結合力項δh,polymerから前記抗生物活性化合物の水素結合力項δh,compoundを差し引いた値Δδhが、0〜4.2[(J/cm3)1/2]であることを特徴とする、請求項4に記載の徐放性粒子の製造方法。
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図18】
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【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2011−79816(P2011−79816A)
【公開日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−201604(P2010−201604)
【出願日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【出願人】(503140056)日本エンバイロケミカルズ株式会社 (95)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【出願人】(503140056)日本エンバイロケミカルズ株式会社 (95)
【Fターム(参考)】
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