説明

徐放性組成物およびその製造方法

【課題】ポリマーを含む徐放性組成物およびその製造方法を提供する。
【解決手段】本発明の徐放性組成物は、ポリマー、生物活性剤および放出速度決定剤を含み、放出速度決定剤が徐放性組成物中に分散されており、生物活性剤の放出速度を制御する。本発明の方法は、生物活性剤、ポリマーおよび放出速度決定剤を含む油相を提供すること;界面活性剤を含む水相を提供すること;油相を水相と混合し、制御放出効果を有する徐放性組成物を形成することを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、徐放系に関する。特に、放出速度決定剤を含有する徐放性組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
医療デバイス、たとえば、外科的埋入物、縫合糸および創傷包帯を医薬用薬剤でコーティングすることが望ましいのは、よく知られている。かかるコートデバイスは、医薬用または治療用薬剤を、さまざまな疾患を処置するための医学的介入部位に局所送達するための手段を提供する。たとえば、抗生物質でコートされた外科的埋入物または縫合糸は、埋入または縫合の部位への抗生物質の直接的な局所送達を提供し得、それにより、外科的介在後の感染の発症が低減され得る。
【0003】
従って、安全であり、かつ薬物の高い生物学的利用能を提供する、すなわち、既知薬物の医薬活性を最大限に発揮させるとともにその副作用を最小限に抑える薬物送達系の開発に関心が高まっている。所与の時間枠におけるその均一な放出速度、および分解生成物の無毒性の性質により、生分解性ポリマーは、薬物担体として広く研究されている。生分解性ポリマー薬物担体は、単回投与で連続的で持続的な放出を必要とする薬物、たとえば、体内で活性が急速に失われるため毎日投与されなければならないペプチドまたはタンパク質薬物の送達に特に有用である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の薬物放出曲線は、3つの期:初期放出期、遅延期および2次放出期を含み、ここで、薬物は、初期および2次放出期でのみ放出される。従って、遅延期では、所望の治療用目的を達成するためには、経口投与を局所投与と組み合わせることが必要であるが、付加的な経口投与はコストを増大させ、不都合を引き起こす。上記の問題を解決するため、新規な徐放性組成物およびその製造方法が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、ポリマー、生物活性剤および放出速度決定剤を含み、該生物活性剤および該放出速度決定剤が該徐放性組成物中に分散されており、該放出速度決定剤により該生物活性剤の放出速度が制御される、徐放性組成物を提供する。
【0006】
さらに、本発明は、生物活性剤、ポリマーおよび放出速度決定剤を含む油相を提供すること;界面活性剤を含む水相を提供すること;油相を水相と混合し、制御放出効果を有する徐放性組成物を形成することを含む、徐放性組成物の製造方法を提供する。
【0007】
さらに、本発明は、医薬有効量の本発明の徐放性組成物を投与することを含む、動物を処置する方法を提供する。
【0008】
詳細な説明を、添付の図面を参照しながら以下の実施形態に示す。
【0009】
本発明は、添付の図面を参照しながら、次の詳細説明および実施例を読むことによって、より充分に理解することができよう。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】徐放性組成物の薬物放出曲線を示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下の説明は、本発明を実施するのに最良と思われる態様である。この記載は、本発明の一般原則の例示の目的で行なわれたものであり、限定的な意味に解釈されるべきでない。本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲を参照することにより最良に決定される。
【0012】
本発明は、ポリマー、生物活性剤および放出速度決定剤を含み、該生物活性剤および該放出速度決定剤が該徐放性組成物中に分散されており、該放出速度決定剤により該生物活性剤の放出速度が制御される、徐放性組成物を提供する。
【0013】
徐放性組成物は、たとえば、核酸、糖質、ペプチド、タンパク質、小分子医薬物質、免疫原、抗腫瘍剤またはホルモンが挙げられる生物活性剤の1種類以上を含むものであり得る。核酸の例としては、限定されないが、DNA、RNA、化学的に修飾されたDNAおよび化学的に修飾されたRNA、アプタマー、アンチセンスオリゴヌクレオチド、RNA干渉、ならびに小干渉性RNAが挙げられる。糖質の例としては、限定されないが、ヘパリン、低分子量ヘパリンなどが挙げられる。ペプチドの例としては、限定されないが、LHRHアゴニストおよび合成類縁化合物、ロイプロリド、ソマトスタチン類縁体、ホルモン、オクトレオチド、グルカゴン様ペプチド、オキシトシンなどが挙げられる。タンパク質の例としては、限定されないが、抗体、治療用タンパク質、ヒト成長ホルモン(たとえば、骨形成タンパク質、TGF−β1、線維芽細胞増殖因子、血小板由来増殖因子またはインスリン様成長因子など)、オキシトシン、オクトレオチド、ゴナドトロピン放出ホルモン、ロイプロリド、インターフェロン、インスリン、カルシトニン、インターロイキンなどが挙げられる。小分子医薬物質の例としては、限定されないが、抗感染剤(たとえば、アンホテリシンB)、細胞傷害剤、抗高血圧剤、抗真菌剤(たとえば、フルコナゾール、イトラコナゾール、ケトコナゾール)、抗精神病剤(たとえば、クロザピン、オランザピン、リスペリドン、セルチンドール、アリピプラゾール、ジプラシドンまたはケチアピン)、抗糖尿病剤、免疫促進薬(たとえば、β−1,3/1,6−グルカン)、免疫抑制薬(たとえば、シクロスポリンまたはプレドニゾン)、抗生物質(たとえば、ペニシリン、セファロスポリン、塩酸バンコマイシンまたはリンコマイシン)、抗ウイルス薬、抗痙攣薬、抗ヒスタミン薬、心血管系の薬剤、抗凝固薬、ホルモン、抗マラリア薬、鎮痛薬、麻酔薬、ステロイド類、非ステロイド系抗炎症薬、および制吐薬が挙げられる。ホルモンの例としては、限定されないが、成長因子、メラトニン、セロトニン、サイロキシン、トリヨードサイロニン、エピネフリン、ノルエピネフリン、ドーパミン、アジポネクチン、アンギオテンシノゲン、コレシストキニン、エリスロポエチン、ガストリン、グルカゴン、インヒビン、セクレチン、トロンボポエチンまたはアルドステロンが挙げられる。生物活性剤は、油相中に、0.1〜10重量%、好ましくは2重量%の濃度で存在させ得る。
【0014】
溶媒に溶解させるポリマーは、生体分子(生分解性ポリマー)、たとえば、リン脂質、レシチン、ポリ(ラクチド)、ポリ(グリコリド)、ポリラクチド−コ−グリコリド(PLGA)、ポリグルタミン酸、ポリカプロラクトン(PCL)、ポリ無水物、ポリアミノ酸、ポリジオキサノン、ポリヒドロキシブチレート、ポリホスファゼン、ポリエステルウレタン、ポリカルボキシフェノキシプロパン−コ−セバシン酸、ポリカーボネート、ポリエステルアミド、ポリアセチル、ポリシアノアクリレート、ポリエーテルエステル、ポリ(アルキレンアルキレート)またはそのコポリマーである。疎水性ポリマーは、生体被験体内で影響なく分解され得る。
【0015】
TPGS(d−α−トコフェリルポリエチレングリコールスクシネート)は、Eastman Chemical Companyから「ビタミンE−TPGS」として市販されている。ビタミンE−TPGSは、天然供給源ビタミンEの水溶性誘導体であり、両親媒性物質と類似する。本発明において、ビタミンE−TPGSの種々の化学誘導体、たとえば、種々の化学部分のエステルおよびエーテル結合体がビタミンE−TPGSの定義に含まれる。正しくは、これは、生物活性剤の放出を制御するために油相中に分散させる。本発明の重要な特徴によれば、本発明の徐放性組成物の薬物放出曲線は遅延期を有しない。従って、生物活性剤は、連続的に放出され得、これにより、付加的な経口投与の必要性がなくなる。本発明において、TPGSは、徐放性組成物の総重量の約1〜50重量%、好ましくは4〜15重量%の量で存在させる。
【0016】
一実施形態において、徐放性組成物は、微粒子、ミクロスフィアまたはマイクロカプセルの形態である。ミクロスフィアは、典型的には、組成物中でほぼ均質であり、マイクロカプセルは、周囲の殻と異なる組成のコアを含む。本開示の目的のため、ミクロスフィア、微粒子およびマイクロカプセルという用語は、互換的に用いる。別の実施形態において、本発明の徐放性組成物は、70%を超える、好ましくは70%〜99.9%の薬物カプセル封入率、5μmより大きい、好ましくは5μm〜200μm、最も好ましくは30μm〜100μmの直径を有し、遅延期なしで、生体内で生物活性剤を連続的に放出し得る。
【0017】
本発明の徐放性組成物は、全身または局所に適用され得る。たとえば、該組成物は、筋肉内、腹腔内、静脈内または皮下での注射によって投与され得る。さらに、該組成物は、実質的に任意の形態、たとえば、ローション剤、軟膏、クリーム剤、ゲル剤、点滴剤、坐剤、スプレー剤、液剤および粉末剤であり得る。慣用的な医薬用担体、水性、粉末または油状の基剤、増粘剤などが組み込まれ得る。
【0018】
さらに、本発明は、徐放性組成物の製造方法を提供する。該方法は、生物活性剤、ポリマーおよび放出速度決定剤を含有する油相を提供すること;界面活性剤を含む水相を提供すること;ならびに油相を水相と混合し、徐放性組成物を形成することを含む。
【0019】
本明細書で用いる場合、本発明の「油相」という用語は、溶媒、ポリマー、生物活性剤および放出速度決定剤の溶液であって、水相と混合すると、エマルジョン過程を経て本発明の徐放性組成物が提供される溶液をいう。油相の溶媒としては、限定されないが、塩化メチレン、酢酸エチル、ベンジルアルコール、アセトン、酢酸、プロピレンカーボネート、ジクロロメタン、クロロホルム、1,4−ジオキサン、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、トルエンまたはテトラヒドロフラン(THF)が挙げられる。
【0020】
本発明の「放出速度決定剤」という用語は、生物活性剤の放出速度を制御し得る界面活性剤の溶液をいう。
【0021】
本発明の放出速度決定剤としては、限定されないが、Span(登録商標)80、Span(登録商標)85、オレイン酸、PEG−PCLジ−ブロックコポリマー、グリセリルトリカプリレート、Pluronic(登録商標)(F68)、Tween(登録商標)80またはビタミンE−TPGSが挙げられる。
【0022】
用語「水相」は、水と界面活性剤の溶液であって、油相と接触させると、エマルジョン過程を経て本発明の徐放性組成物が提供される溶液をいう。放出速度決定剤は、油相中に、1〜50重量%の濃度で存在させ、たとえば、4〜15重量%の濃度で存在させる。
【0023】
本発明の界面活性剤としては、限定されないが、ポリビニルアルコール(PVA)、NP−5、Triton X−100、Tween(登録商標)80、PEG 200〜800、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、アルコールエトキシレート、アルキルフェノールエトキシレート、第2級アルコールエトキシレート、脂肪酸エステルまたはアルキルポリグリコシドが挙げられる。界面活性剤は、水相中に、0.1〜10重量%の濃度で存在させ、たとえば、0.1〜5重量%の濃度で存在させる。
【0024】
一実施形態において、油相を水相と接触させ、水相中に分散された油相の液滴を含むエマルジョンを形成する。続いて、エマルジョン液滴から溶媒を除去すると、硬化微粒子が形成される。溶媒は、エバポレーション、濾過または抽出液中への抽出によって除去され得る。たとえば、抽出液は水であり得る。硬化微粒子は、次いで水相から回収され、乾燥させ得る。
【0025】
エマルジョンは、有機相と水相を攪拌することにより作製される。一実施形態において、エマルジョンは、スタティックミキサーなどの混合機の使用によって作製される。あるいは、エマルジョンは、乱流混合の使用によって作製される。
【0026】
エマルジョン過程は、該成分の沸点と凝固点のあいだの任意の温度で行なわれ得る。一実施形態において、その温度は、0℃〜100℃または約5℃〜75℃または約15℃〜約60℃の範囲である。
【0027】
さらに、共溶媒を油相に添加してもよい。共溶媒は、任意選択で、油相中での生物活性剤の可溶性を向上させるために使用される。一実施形態において、共溶媒としては、限定されないが、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、n−メチルピロリジノン、PEG 200、PEG 400、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコールおよびベンジルアルコールが挙げられる。共溶媒は、油相の溶媒の0〜90重量%、または油相の溶媒の0〜50重量%で存在させ得る。生物活性剤は、油相のすべての成分を含有する溶液が形成されるように、まず、適切な容量の共溶媒に溶解させ、次いで、これを、任意選択で生分解性ポリマーを溶解させた油相の溶媒に添加する。当業者なら、生物活性剤と生分解性ポリマーの所望の溶液を得るために、添加の容量および順序を調整し得ることに注意されたい。一実施形態において、生物活性剤は、油相中に0.1〜10重量%の濃度で存在させる。別の実施形態において、生分解性ポリマーは、油相中に0.1〜20重量%の濃度で存在させる。たとえば、生分解性ポリマーは、油相中に1〜10重量%の濃度で存在させる。
【0028】
さらに、本発明は、医薬有効量の本発明の徐放性組成物を投与することを含む、動物を処置する方法を提供する。該徐放性組成物は、生物活性剤を連続的に放出し得るため、該動物には、処置効果を改善するために経口投与を局所投与と組み合わせる必要がない。
【0029】
本発明の徐放性組成物は、処置を必要とするヒトまたは動物患者における注射のための任意の水溶液または他の希釈剤に懸濁され得る。水性希釈溶液は、カルボキシメチルセルロースナトリウム、スクロース、マンニトール、デキストロース、トレハロースおよび他の生体適合性の粘度向上剤からなる群より選択される粘度向上剤をさらに含むものであってもよい。
【0030】
本発明の「動物」は、本明細書で用いる場合、哺乳類綱の任意の動物をいう。本発明の哺乳類動物としては、ヒトまたは非ヒト哺乳動物、たとえば、イヌ、ネコ、マウス、ラット、ウシ、ヒツジ、ブタ、ヤギまたは霊長類が挙げられ、実験哺乳動物、家畜および家畜哺乳動物は、明白に含まれる。一実施形態において、哺乳動物はヒトであり得、他の実施形態では、哺乳動物は、マウスまたはラットなどの齧歯類であり得る。
【実施例】
【0031】
実施例1: 0、7、26、42%のビタミン−E TPGSを含有した50/50PLGAミクロスフィア
80mgのオランザピン、200mgのPLGA(LA/GA比=50/50、M.W.=43000)および異なる量のビタミンE−TPGS(0、7、26、42重量%)を5mLのジクロロメタンに共溶解し、油相を形成した。油相を、0.1%ポリビニルアルコール(PVA)を含有する1000mLの冷却水相中に滴下し、1000rpmで乳化した。得られたo/w型エマルジョンを連続的に3時間、室温で攪拌した。ミクロスフィアを遠心分離によって回収し、F68、水で洗浄し、凍結乾燥した。次いで、ミクロスフィアを粒径および薬物カプセル封入効率について、マルチサイザーおよび高速液体クロマトグラフィー(HPLC)によって評価した。その結果、粒径は、68.4±28.3、71.6±27.3、91.0±35.8、101.9±42.8μmであり、カプセル封入効率は、0、7、26、42%(w/w)のビタミンE−TPGSを含有するミクロスフィアで、それぞれ77.7、83.5、85.9、85.2%であることが示された。
【0032】
実施例2: 0、4、15、26%のビタミンE−TPGSを含有した85/15PLGAミクロスフィア
320mgのオランザピン、800mgのPLGA(LA/GA比=85/15、M.W.=53000)および異なる量のビタミンE−TPGS(0、4、15、26重量%)を15mLのジクロロメタンに共溶解し、油相を形成した。油相を、0.1%ポリビニルアルコール(PVA)を含有する2000mLの冷却水相中に滴下し、1000rpmで乳化した。攪拌、回収および解析の方法は、先に実施例1で規定したとおりである。その結果、粒径は、40.0±21.3、58.8±28.4、47.4±21.4、62.9±25.9μmであり、カプセル封入効率は、0、4、15、26%(w/w)のビタミンE−TPGSを含有するミクロスフィアで、それぞれ、77.2、74.7、87.6、83.7%であることが示された。
【0033】
実施例3: 異なる水相を含有した50/50PLGAミクロスフィア
80mgのオランザピン、200mgのPLGA(LA/GA比=50/50、M.W.=43000)および42%(w/w)のビタミンE−TPGSを5mLのジクロロメタンに共溶解し、油相を形成した。油相を1000mLの冷却水相中に滴下し、次いで、1000rpmで乳化した。このとき、冷却水相は、0.05%PVAまたは0.5%ゼラチン含有0.05%PVAを含むものとした。得られたo/w型エマルジョンを連続的に3時間、室温で攪拌した。ミクロスフィアを遠心分離によって回収し、F68、水で洗浄し、凍結乾燥した。粒径および薬物カプセル封入効率の解析方法は、先に上記で規定したとおりである。その結果、粒径は、108.7±37.3、85.5±31.4μmであり、カプセル封入効率は、ゼラチンなしの0.05%PVA含有および0.5%ゼラチン含有0.05%PVA含有ミクロスフィアで、それぞれ、74.1、73.1%であることが示された。
【0034】
実施例4: 異なる油相を含有した85/15PLGAミクロスフィア
320mgのオランザピン、800mgのPLGA(LA/GA比=85/15、M.W.=43000)および15w/w%のビタミンE−TPGSを15mLのジクロロメタンに共溶解し、油相を形成した。この実施例では、ジクロロメタンに、それぞれ、純粋なジクロロメタン(製剤番号1)、エタノール含有ジクロロメタン(DCM:エタノール=2:1、製剤番号2)、およびアセトン含有ジクロロメタン(DCM:アセトン=2:1、製剤番号3)を含めた。油相を、0.1%PVAを含有する2000mLの冷却水相中に滴下し、1000rpmで乳化した。攪拌、回収および解析の方法は、先に実施例1で規定のとおりである。その結果、粒径は、76.2±31.4、70.6±31.8、70.6±31.8μmであり、カプセル封入効率は、製剤番号1、2、3のミクロスフィアで86.8、89.7、88.5%であることが示された。
【0035】
実施例5: 異なるLA/GA比を含んだ85/15PLGAミクロスフィア
320mgのオランザピン、800mgのPLGAおよび15%(w/w)のビタミンE−TPGSを15mLのジクロロメタンに共溶解し、油相を形成した。このとき、PLGAは、それぞれ、85/15:50/50=3:1(製剤番号1)、85/15:50/50=1:3(製剤番号2)および75/20:50/50=4:1(製剤番号3)を含む、異なるLA/GA比を有した。油相を、0.1%PVAを含有する2000mLの冷却水相中に滴下し、1000rpmで乳化した。攪拌、回収および解析の方法は、先に実施例1で規定のとおりである。その結果、粒径は、62.2±32.0、59.1±24.9、41.1±19.1μmであり、カプセル封入効率は、製剤番号1、2、3のミクロスフィアで84.9、84.2、83.2%であることが示された。
【0036】
実施例6: 75/25PLGAミクロスフィア
320mgのオランザピン、800mgのPLGA(LA/GA比=75/25)および4%(w/w)のビタミンE−TPGSを15mLのジクロロメタンに共溶解し、油相を形成した。この実施例では、PLGAの分子量は、それぞれ、30000Da.および21000Da.であった。油相を、0.1%PVAを含有する2000mLの冷却水相中に滴下し、1000rpmで乳化した。攪拌、回収および解析の方法は、先に実施例1で規定のとおりである。その結果、粒径は、43.5±18.8、37.4±20.2μmであり、カプセル封入効率は、30000、21000Da.のPLGAで構成されたミクロスフィアで、それぞれ、80.8、77.6%であることが示された。
【0037】
実施例7: 85/15PLGAミクロスフィア
320mgのオランザピン、800mgのPLGA(LA/GA比=85/15)および4%(w/w)のビタミンE−TPGSを15mLのジクロロメタンに共溶解し、油相を形成した。この実施例では、PLGAの分子量は、それぞれ53000および27000Da.を含んだ。攪拌、回収および解析の方法は、先に実施例1で規定のとおりである。その結果、粒径は、58.8±28.4、43.9±20.6μmであり、カプセル封入効率は、53000、27000Da.のPLGAで構成されたミクロスフィアで、それぞれ、74.7、77.0%であることが示された。
【0038】
実施例8: 異なる放出速度決定剤の製剤
320mgのオランザピン、800mgのPLGA(LA/GA比=85/15、M.W.=53000)および異なる放出速度決定剤(Span(登録商標)80、Span(登録商標)85、オレイン酸、PEG−PCLジ−ブロックコポリマー、グリセリルトリカプリレート、Pluronic(登録商標)、Tween(登録商標)80)を15mLのジクロロメタンに共溶解し、油相を形成した。油相を、0.1%ポリビニルアルコール(PVA)を含有する2000mLの冷却水相中に滴下し、1000rpmで乳化した。攪拌、回収および解析の方法は、先に実施例1で規定のとおりである。その結果、粒径は、46.7±18.6、40.3±15.5、46.3±22.6、55.7±27.3、49.5±22.0、68.1±30.9、30.1±14.9μmであり、カプセル封入効率は、異なる放出速度決定剤で構成されたミクロスフィアで、それぞれ、86.9、78.2、79.4、87.2、69.5、85.2、75.5%であることが示された。
【0039】
実施例9: インビボでの薬物放出
脚の筋肉の大きさが、用量投与および注射部位の評価を容易にするため、Sprague−Dawleyラットをデポー製剤の評価に選択した。
【0040】
雄Sprague−Dawleyラットの重量は、250〜300gであった。ラットの大腿二頭筋に、20−または21−ゲージ針で単回注射を行なった。投与用量は、製剤の濃度により異なったが、1回の注射あたり1mLは超えなかった。ラットには、体重1kgにつき40mgのオランザピンを与えた。
【0041】
各時点で、0.1mLの血液試料を、外側尾静脈からヘパリン加収集チューブ内に採取した。血液試料は、用量投与前および50日期間にわたる用量投与後、種々の時点で1回採取した。典型的な時間点は、用量投与後、5分、10分、30分、1時間、2時間、4時間、6時間、1日、2日、4日、7日、10日、14日、17日、21日、24日、28日、31日、35日、38日、42日、45日、50日である。血漿を収集し、オランザピンの血漿濃度をHPLC/MS−MSによって測定した。
【0042】
実施例2で調製した15%(w/w)のビタミンE−TPGSを含有するミクロスフィアを筋肉内注射によってラットに投与した。コントロール群では、ミクロスフィアのTPGSを除く(PLGAのみ)か、またはTween(登録商標)80に換えた(PLGA/Tween(登録商標)80)。図1を参照すると、TPGSを含有するミクロスフィアは、ラットにおいてオランザピンを連続的に放出し、ミクロスフィアの薬物放出曲線は遅延期を有しなかった。
【0043】
本発明を、一例として、好ましい実施形態に関して記載したが、本発明は、開示された実施形態に限定されないことを理解されたい。反対に、種々の変形例および類似の構成(当業者には自明であるように)を包含することが意図される。従って、添付の特許請求の範囲は、かかるすべての変形例および類似の構成が包含されるように最も広い解釈を許容するものであるべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリマー、生物活性剤および放出速度決定剤を含み、該生物活性剤および該放出速度決定剤が該徐放性組成物中に分散されており、該放出速度決定剤により該生物活性剤の放出速度が制御され、
放出速度決定剤がd−α−トコフェリルポリエチレングリコールスクシネート(ビタミンE−TPGS)であり、
放出速度決定剤が、1〜50重量%の最終濃度を有し、
前記ポリマー、生物活性剤および放出速度決定剤を含有する油相と、乳化剤を含む水相とを混合する乳化工程により作製される遅延期のない徐放性組成物。
【請求項2】
生物活性剤が、タンパク質、核酸、糖質、ペプチド、免疫原またはホルモンを含む請求項1記載の徐放性組成物。
【請求項3】
生物活性剤が、小分子医薬物質、抗腫瘍剤、抗ヒスタミン薬、抗精神病薬、抗潰瘍剤、抗癌剤、心血管系の薬剤、気管支拡張薬、血管拡張薬、中枢神経系の薬剤または麻薬拮抗薬を含む請求項1記載の徐放性組成物。
【請求項4】
ポリマーが、生分解性ポリマーである請求項1記載の徐放性組成物。
【請求項5】
ポリマーが、リン脂質、レシチン、ポリグリコレート、ポリ(ラクチド)、ポリ(グリコリド)、ポリラクチド−コ−グリコリド(PLGA)、ポリグルタミン酸、ポリカプロラクトン(PCL)、ポリアミノ酸、ポリジオキサノン、ポリヒドロキシブチレート、ポリホスファゼン、ポリエステルウレタン、ポリカルボキシフェノキシプロパン−コ−セバシン酸、ポリオルトエステル、ポリカーボネート、ポリエステルアミド、ポリ無水物、ポリアセチル、ポリシアノアクリレート、ポリエーテルエステル、ポリ(アルキレンアルキレート)またはそのコポリマーを含む請求項1記載の徐放性組成物。
【請求項6】
徐放性組成物が、連続的に生物活性剤を放出する請求項1記載の徐放性組成物。
【請求項7】
徐放性組成物が、70%を超えるカプセル封入率の生物活性剤を有する請求項1記載の徐放性組成物。
【請求項8】
徐放性組成物が、ミクロスフィア、微粒子またはマイクロカプセルである請求項1記載の徐放性組成物。
【請求項9】
徐放性組成物が、5μmを超える直径を有する請求項1記載の徐放性組成物。
【請求項10】
徐放性組成物が、筋肉内または皮下注射に使用される請求項1記載の徐放性組成物。
【請求項11】
医薬有効量の徐放性組成物を投与することを含む、動物を処置する方法における使用のための請求項1記載の徐放性組成物。
【請求項12】
動物が哺乳動物である請求項11記載の徐放性組成物。
【請求項13】
動物がヒトである請求項11記載の徐放性組成物。

【図1】
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【公開番号】特開2011−32277(P2011−32277A)
【公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−210998(P2010−210998)
【出願日】平成22年9月21日(2010.9.21)
【分割の表示】特願2007−338100(P2007−338100)の分割
【原出願日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【出願人】(390023582)財団法人工業技術研究院 (524)
【氏名又は名称原語表記】INDUSTRIAL TECHNOLOGY RESEARCH INSTITUTE
【住所又は居所原語表記】195 Chung Hsing Rd.,Sec.4,Chutung,Hsin−Chu,Taiwan R.O.C
【Fターム(参考)】