説明

徐放性藻抑制剤

【課題】観賞魚用水槽等で使用される藻抑制剤の防藻効果の消失を、剤自体の色調の変化で容易に判別でき、藻抑制成分であるヨウ素を一定期間に渡って連続的に徐放できる徐放性藻抑制剤を提供する。
【解決手段】ヨウ素とゲル状物質からなる徐放性藻抑制剤を特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水中、具体的には観賞魚用水槽等の水中において、藻類、アオコ等の発生を抑制し、藻抑制剤内部の藻抑制成分の消失によって剤自体の色調が変化する徐放性藻抑制剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
観賞魚用水槽等に発生する藻類、アオコ等は水槽の外観を損ねる。したがって、これらの発生を抑制するために、ベンゾチアゾール系、フェニル尿素系等の有機系藻抑制剤あるいは、銀、銅、亜鉛(特許文献1〜5)、ヨウ素等の無機系藻抑制剤を使用することが一般的である。
【0003】
これらの有機系藻抑制剤や無機系藻抑制剤は、担体に担持させることなく粉末状や液状等で水槽中に直接投入し短期間藻抑制剤としての防藻効果を得る方法や、何らかの担体に担持させた状態で水槽中に投入し長期間藻抑制剤として防藻効果を得る方法により使用されている。
【先行技術文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−298012号公報
【特許文献2】特開平6−157225号公報
【特許文献3】特開平11−099392号公報
【特許文献4】特開平2000−288551号公報
【特許文献5】特開平9−030915号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の藻抑制剤は藻抑制成分の消失とともに色調が変化するといった外観の変化がなく、藻抑制剤としての防藻効果が消失する時期が目視で容易に判別できないという問題があった。
【0006】
また、防藻目的でヨウ素が液状で使用されることがあるが、ヨウ素の昇華性が高いため水槽へ添加した後の藻抑制剤としての持続性が十分ではなく、防藻効果を持続するためにはその添加頻度が多くなり使用者にとって非常に手間が掛かるという問題があった。
【0007】
さらに、液状のヨウ素を添加した直後は一時的に水槽中のヨウ素濃度が高くなり、水草や他の水生生物に悪影響を及ぼすという問題があった。
本発明は上記のような問題を解決するための徐放性藻抑制剤を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の徐放性藻抑制剤は、ヨウ素とゲル状物質の混合物を、ヨウ素を徐放できる形状もしくはヨウ素を徐放できる材質の容器内に充填した状態で使用されることを特徴とする。
【0009】
(ゲル状物質)
ゲル状物質としては、デンプン、アミロース、アミロペクチン、寒天、アガロース、アガロペクチン、カードラン、グルコマンナン、カラギーナン、ゼラチン、カルボキシメチルセルロース、ジェランガム、ヒドロキシプロピルセルロース、キサンタンガム等の、ミクロ的に観察すると巨大な網目構造をもつ高分子ゲルとその混合物が使用できる。さらに、アルギン酸ナトリウム等の多糖類をマグネシウム、カルシウム等の多価のイオンで架橋して得られたゲルも使用することができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明により見出された徐放性藻抑制剤は、ヨウ素により濃い紫色に着色しており水中に設置した場合、内部のヨウ素が水中へ放出されるとともに次第に濃い紫色から薄い紫色へと外観が変化する。透明もしくは半透明の容器を使用した場合、ヨウ素の放出が終了し外観がゲル状物質の透明白色となることで藻抑制剤としての防藻効果の消失が目視で容易に判別できる。
【0011】
また、本発明により見出された徐放性藻抑制剤は、水中でゲル内部のヨウ素を一定期間少量ずつ連続的に水中へ放出することで防藻効果を長期間維持できるため、藻抑制剤を頻繁に添加する手間を省くことができる。ヨウ素を放出する期間は、ゲルを充填する容器の内容積と開放部の面積を任意に設定しヨウ素の消費速度を変えることで容易にコントロールできる。
【0012】
さらに、本発明により見出された徐放性藻抑制剤は、ゲル内部のヨウ素が少量ずつ連続的に水中へ放出されるため、一時的に水中のヨウ素濃度が高くなることはない。
【実施例】
【0013】
本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【実施例1】
【0014】
ヨウ化カリウム2.4g、ヨウ素1.6g、粉末寒天50g、水1Lをガラスビーカー内で混合し、90℃に加温したウォーターバスに浸漬して加熱溶解後、中空のアクリル製パイプ(内径10mm、外形12mm)内に流し込み、室温まで冷却したものを徐放性藻抑制剤とした。アクリルパイプの長さの差異によるヨウ素の放出期間の変化を観察すべく、その長さを50mm,60mm,70mm,80mmとした4種類の徐放性藻抑制剤を作製し、10Lの水道水中でヨウ素の徐放効果を目視で観察した。徐放性藻抑制剤はゲル状物質内部にヨウ素が存在すれば濃い紫色に見え、ヨウ素が放出されるとゲル状物質のみの白色に変化する。試験開始日より徐放性藻抑制剤が完全に白色になるまでの期間をヨウ素の放出期間とした。その結果を表1に示した。水道水10L中(蓋無し)、常温、エアーバブリング有りの条件にて実施した。
【0015】
【表1】

【0016】
以上の結果より、本発明で提供される徐放性藻抑制剤は色調による外観の変化で交換時期を判断することができ、容器の形状を設定することによってヨウ素の徐放期間を自在に調整できることが分かる。
【実施例2】
【0017】
ヨウ化カリウム2.4g、ヨウ素1.6g、粉末寒天50g、水1Lをガラスビーカー内で混合し、90℃に加温したウォーターバスに浸漬して加熱溶解後、中空のアクリル製パイプ(内径10mm、外形12mm、長さ80mm)内に流し込み、室温まで冷却したものを徐放性藻抑制剤とした。藻の抑制効果を確認するため、あらかじめ藻類を完全に除去した10Lの淡水水槽中で金魚の飼育を行い水槽ガラス面への藻の発生状況を目視で観察した。その結果を表2に示した。
【0018】
【表2】

【0019】
以上の結果より、本発明で提供される徐放性藻抑制剤は長期間高い藻抑制効果を有していることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0020】
本発明品は、殺菌剤として観賞魚用水槽等以外にも活魚用の生け簀や活魚搬送車への使用が可能であると考えられる。また、スケールアップすれば屋外の池やプール、その他藻の発生を抑制したい場所で使用することができると考えられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヨウ素とゲル状物質からなる徐放性藻抑制剤。
【請求項2】
請求項1記載の徐放性藻抑制剤によるヨウ素の徐放方法。
【請求項3】
請求項1記載の徐放性藻抑制剤のヨウ素含有濃度を設定することによりヨウ素徐放期間を調整する方法。
【請求項4】
請求項1記載の徐放性藻抑制剤を充填する容器の形状および材質を設定することによりヨウ素徐放期間を調整する方法。
【請求項5】
請求項2記載の方法からなる藻抑制方法。

【公開番号】特開2011−236190(P2011−236190A)
【公開日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−119829(P2010−119829)
【出願日】平成22年5月7日(2010.5.7)
【出願人】(510145587)特定非営利活動法人エコイクル九州 (1)
【出願人】(510145598)エコサポートサービス株式会社 (1)
【出願人】(398045865)室町ケミカル株式会社 (7)
【Fターム(参考)】