説明

徐放性被覆をつくるためのコーティング方法

【課題】有機溶媒を使用しない、保存安定性に優れた、徐放性処方の水溶液ポリマーコーティング組成物及びこれを使用した基材へのコーティング方法を提供する。
【解決手段】(i)基材を水溶性ポリマーコーティング組成物の水溶液で高い相対湿度条件下でコーティングした後、(ii)熱処理工程を伴う諸工程からなり、ここで該熱処理工程が低湿分条件下で行われ、そして該水溶液ポリマーコーティング組成物がラテックス又は擬似ラテックスフィルム形成剤及び、所望により、可塑剤を含むことを特徴とする水溶液ポリマーコーティング組成物で基材をコーティングする方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は徐放性被覆をつくるためのコーティング方法及びその方法によって作られた製品に関する。
【背景技術】
【0002】
徐放投与形は、即放性投与形の投与と比較して投与形の投与の後で薬理学的作用を引き延ばすために設計される。そのような持続的応答は、即放性及び短時間作用製品で得ることのできない内在的な治療効果を提供する。
【0003】
文献公知の徐放性投与形としては、被覆したビーズ、ペレット又は楕円形、被覆したカプセル、被覆したタブレット及びイオン交換樹脂で、そこでは活性薬剤の持続的放出は、薬剤の放出を遅くするために被服層又はマトリックス形成を通した浸透によって実現される。
【0004】
全ての徐放性投与形の本質的な性質は投与形の安定性である。薬学的投与形の安定性は、特定の条件設定下で特定の容器中での保存過程で、その物理的、化学的、細菌学的、治療学的、薬学的、毒物学的性質の一定性を意味する。安定性の研究は、Good Manufacturing Practices(GMPs)によって、U.S.P.、同様にNew Drug Applications(NDAs)及びInvestigational New Drug Applications(INDAs)として要求される。
【0005】
疎水性のポリマーは、徐放性投与形を発展させるためにタブレット、カプセル、座薬、回転楕円体、ビーズ又は微小球を被覆するためのフィルム形成剤として使用されてきた。これらの疎水性被覆は有機溶液、擬似ラテックス又は懸濁物の形態で調合されることは先行技術で公知である。これらのポリマーの多くは水に不溶性なので、有機溶媒中のポリマー溶液は個々の薬剤形態(ビーズ又はタブレットのような)にスプレーされそして溶媒はコーティングプロセスの過程で蒸発させられる。しかしながら、蒸発した溶媒は環境汚染関連の問題を引き起こす。さらに、有機溶媒でのコーティング処方は、燃焼性、発がん性、及び安全性に関する内在的な問題点をもっている。
【0006】
これらの理由のために、徐放性処方を提供するためにラテックス又は不溶性ポリマーの擬似ラテックスに基づく水溶液ポリマーコーティング組成物を使用することが望ましい。しかしながら、これらの水溶液ポリマーコーティング組成物を使用して作られた被覆基材の安定性は挑戦的なまま残っている。特に、薬剤の放出プロフィールは被覆された基材の保存に依存することが知られている。そのような不安定性は、有機溶媒中にポリマー組成物を溶解させることによって調合されるときには起こらないことである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、有機溶媒を使用しない、保存安定性に優れた、徐放性被覆を得るための水溶液ポリマーコーティング組成物による基材へのコーティング方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
一観点においては、本発明は、(1)基材を水溶性ポリマーコーティング組成物の水溶液で高い相対湿度条件下でコーティングした後、(2)低湿分条件下で熱処理工程を行うことによって、少なくとも一つのラテックス又は擬似ラテックスを含む水溶液ポリマーコーティング組成物で基材をコーティングする方法に関する。一態様においては、高湿度コーティングプロセスは40%以上の相対湿度で行われる。別の態様においては、熱処理工程は16g水/kg空気以下の低湿分で行われる。
【0009】
別の態様においては、この方法によってつくられた被覆した基材は、同じコーティング組成物から作られた被覆した基材及び低湿分コーティング及び低湿分硬化条件下で作られた基材に対して優れた障壁性能をもっている。
【0010】
別の態様においては、この方法によってつくられた被覆した基材は、コーティング組成物の被覆した基材及び低湿分コーティング及び低湿分硬化条件下で作られた基材に対して標準保存条件下で3年以上もの期間を超える徐放性能の優れた安定性をもっている。
【0011】
別の態様においては、この方法によってつくられた被覆した基材は、同じコーティング組成物の被覆した基材及び低湿分コーティング及び低湿分硬化条件下で作られた基材に比較して低い拡散性をもっている。
【0012】
別の態様においては、この方法によってつくられた被覆した基材は、同じコーティング組成物の被覆した基材及び低湿分コーティング及び低湿分硬化条件下で作られた基材に比較して所望の放出プロフィールを達成するのにより少ないフィルム厚みしか必要としない。
【発明の効果】
【0013】
本発明の方法は、被覆した基材の優れた障壁性能、徐放性能の優れた安定性、低い拡散性をもち、同じコーティング組成物の被覆した基材及び低湿分コーティング及び低湿分硬化条件下で作られた基材に比較して所望の放出プロフィールを達成するのにより少ないフィルム厚みしか必要としない利点がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
ペレット、タブレット、カプセル、粉末、顆粒、ビーズ、及びフィルムのようなコーティング基材で使用するために多くのポリマーが検討されてきた。多くの被覆基材は、最終の被覆製品中の被覆基材の重量基準で通常約1から150%で表されるフィルムを生ずる一つ以上のフィルム形成ポリマーから作られているコーティング組成物の沈着によって調製される。フィルムを形成するのに使用されるポリマーの特性は、ポリマーの構造、サイズ、及び機械的、化学的及び障壁特性によって支配される。通常のフィルム形成剤、例えば、薬品用途で使用されるものとしては、アルギネート、カラギーナン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、可溶性アクリレート及びメタクリレートコポリマー、及びその他のような可溶性ポリマー、同様に、エチルセルロース、不溶性アクリレート及びメタクリレートコポリマー、水不溶性セルロース類、酢酸セルロース、酢酸セルロースフタレート、及びその他のような格子形態及び擬似格子形態の不溶性ポリマーの分散物を包含する。
【0015】
本発明は、ラテックス又は擬似ラテックスを含む水溶液ポリマーコーティング組成物で基材をコーティングし、引き続き低湿分条件下でフィルムを定着させる熱処理工程を行う方法に関する。本発明で使用される基材、例えば、ペレット、タブレット、カプセル、粉末、顆粒、ビーズ、及びフィルムは典型的には活性剤、例えば、薬学的活性剤を含む。本発明の方法で製造される被覆した基材は、低湿分のコーティング及び硬化条件下で調製された被覆した基材と比較して優れた障壁特性の低拡散性をもった安定な耐湿性フィルムをもち、そして3年までの通常の保存条件下で安定な放出プロフィールをもっている。本発明によってつくられる耐湿性フィルムは被覆した基材からの活性剤の放出を長期間に亘ってコントロールされた量で可能にする徐放性層として作用する。ここで使用されるときは、“ラテックス又は擬似ラテックスフィルム形成剤”とは、水性分散液中で細かく分散するときに凝集性フィルムを形成するために凝集できるポリマー群を意味する。本発明のラテックス又は擬似ラテックスフィルム形成剤としては、エチルセルロース、アクリレート及びメタクリレートコポリマー、水不溶性セルロース、酢酸セルロース、酢酸セルロースフタレート、等々のような不溶性ポリマーの分散物を包含する。
【0016】
本発明においては、被覆した基材は、一般的に約5ミクロンから約100ミクロンの厚みをもつフィルムを生じる一つ以上のラテックス又は擬似ラテックスフィルム形成ポリマーである水溶液ポリマーコーティング組成物の沈着によってつくられる。一般に、形成フィルムの厚みは約5ミクロン以上であるべきである。5ミクロン以下の厚みのフィルムはフィルム強度と完全さが不十分でそしてこれは時間と共にフィルム特性の変化を生じさせる。特別な上限は無いのであるが、フィルがあまりに厚いと、コーティングプロセスは時間がかかり、それは実用的ではない。そのような限定の意味では、被覆厚みの上限はおおよそ100ミクロンである。フィルムが厚くなると、放出速度は過度に遅くなる。そのような場合には、適当な水溶性物質が水溶液コーティング組成物中に細孔形成剤として内包されそして放出速度の安定性とフィルムの厚みが確保される。被覆量は未コートの基材の粒子サイズと形状及びその表面の滑らかさに大きく依存する。しかしながら、それは、未コートの基材の100重量部当たりで、1から150重量部のオーダー、そして好ましくは、1から50重量部のオーダーであるべきである。
【0017】
徐放性コーティングにおいて使用するための好ましいフィルム形成剤はエチルセルロースである。エチルセルロース、塩化エチルとアルカリセルロースとの反応で生成するセルロースエーテルは水及び胃腸液に完全に不溶性である。エチルセルロースは比較的高いガラス転移温度をもっているので、通常のコーティング条件下では柔軟なフィルムを形成せず、そしてこのようにコーティング組成物中のエチルセルロースを可塑化する必要がある。
【0018】
エチルセルロースの市販の水溶液分散物はアクアコート(商標)ECD(FMCコーポレーション、フィラデルフィア、Pa.,U.S.A.)である。アクアコート(商標)ECDはエチルセルロースを水と混ざらない有機溶媒中で溶解させそれから界面活性剤及び安定剤の存在下に水中で乳化させることによって製造される。サブミクロンの液滴を生じさせるための均質化の後で、有機溶媒を真空下で蒸発させて擬似ラテックスを生成させる。可塑剤は、相を製造する過程では擬似ラテックス中に内包されない。このように、コーティングとして使用する前に、アクアコート(商標)ECDを適当な可塑剤と究極的に混合する必要がある。可塑剤は、プロペラ型の混合翼を使用して攪拌することによってアクアコート(商標)ECD中に容易に取り込まれる。
【0019】
ラテックス又は擬似ラテックスが使用前又は使用過程で、例えば、基材表面への粒子の最密充填に依るフィルム形成メカニズムを妨害するキャピラリー力に抗して、ゆるく充填された粒子又は粘着粒子として基材上にスプレー又は流動化させることによって、分散物中で凝集、フロック化又は凝固化させないことは重要である。
【0020】
本発明で使用される水溶液ポリマーコーティング組成物が有効量の適切な可塑剤を含むことは、ラテックス又は擬似ラテックスと一緒に可塑剤を使用することがフィルムの物理的性質をさらに改善するので、好ましいことである。可塑化は、いわゆる“内部可塑化”或いは“外部可塑化”のいずれかによって達成される。内部可塑化は通常、その製造過程での、例えば、官能基を変更する及び/又は置換する、側鎖の数を制御する、又はポリマー長さを制御することによるポリマーの分子変性に直接的に関係している。そのような技術は通常コーティング溶液の製造者によっては実施されず、むしろポリマーラテックスの設計段階で実施される。
【0021】
外部可塑化は乾燥フィルムのフィルム特性に必要な変化が達成されるようにフィルム溶液に物質の付加を生じさせる。
可塑剤の安定性はポリマーへのその親和性又は溶解力及びポリマー−ポリマー付着間の干渉効率に依存する。そのような活性は分子の堅さを緩和することによって所望の柔軟性を与える。一般的に、コーティング組成物中に含まれる可塑剤の量はフィルム形成剤の濃度に基づいており、例えば、多くの場合、フィルム形成剤重量基準で約1から約50%である。適切なタイプの選択及び/又は可塑剤のレベルは、べたつき又は時間によるフィルム特性変化、例えば表面の色艶のような負のフィルム特性を防止する。可塑剤の好ましい濃度は、工程条件及び要求されるフィルム特性を考慮して、水溶液コーティング組成物中のラテックス又は擬似ラテックスと一緒に決定するか最適化することができる。
【0022】
ポリマーのための好適な可塑剤の決定における重要なパラメーターはポリマーのガラス転移温度(Tg)に関係する。ガラス転移温度は、ポリマーの物理的性質に重要な変化がある温度又は温度範囲である。この変化は状態の変化を反映せず、むしろポリマーのマクロ分子的な移動度を反映する。Tg以下では、ポリマー鎖の移動性は厳しく制限される。このように、与えられたポリマーの場合、もしそのTgが室温以上であれば、そのポリマーは室温でガラス状として振る舞い、硬く、柔軟性がなくそしてむしろ脆く、コートした投与形が外部応力の或る量に晒されるのでフィルムコーティングに幾分制限的な性質として振舞う。
【0023】
ポリマーマトリックス中への可塑剤の取り込みはTgを低下させ、好適なフィルム形成温度で形成されたフィルムが、より柔らかく、より可塑的になりそして室温のような使用条件下でより靭性があり、そして降伏点で増加した強度をもち、そしてこのように機械的応力により耐性をもつことができる。好適な可塑剤のその他の観点としては、格子又は擬似格子、及び水中の可塑剤の不溶性のための良好な“スウェル剤”として作用する可塑剤の能力を包含する。
【0024】
好適な可塑剤の例としては、他の水不溶性の可塑剤(アセチル化したモノグリセリド、フタレートエステル、カスターオイル、等々のような)を使用することも可能ではあるが、ジブチルセバケート、ジエチルフタレート、トリエチルシトレート(クエン酸トリエチル)、トリブチルシトレート、及びトリアセチンのような水不溶性の可塑剤を包含する。トリエチルシトレートがエチルセルロースの水溶液分散物のための特に好ましい可塑剤である。
【0025】
可塑剤とアクアコート(商標)ECDを混合する過程で、擬似ラテックス粒子の可塑化が起こる。擬似ラテックス粒子と可塑剤液滴の両方とも水中に懸濁する。可塑化プロセスは水溶液相への可塑剤の溶解、及び可塑剤の擬似ラテックス粒子への分配と拡散を生じさせる。
【0026】
本発明の方法によってつくられた被覆基材は、例えば、飲み込まれて胃液に、そしてそれから腸液に晒されるときに、治療用活性剤を徐々に放出する。そのようなコートした基材の徐放性プロフィールは、例えば、適用されるフィルムの厚みを変えることにより、可塑剤がラテックス又は擬似ラテックスに添加される方法を変えることにより、ラテックス又は擬似ラテックスの量に対して可塑剤の量を変えることにより、追加の成分、例えば、細孔形成剤又は補助剤を取り込むことにより、フィルム形成温度に対応した熱処理の時間及び温度を変えること、等々により、文献公知の方法によって変更することができる。
【0027】
コーティングが表面に適用された後で、擬似ラテックス粒子は、水の蒸発により界面張力で駆動されて被覆表面上で最密充填に近づくであろう。粒子界面に毛細管水が存在することにより収縮力が働く。非特許文献1に従えば、その力は通常水−粒子界面方向に発生し、そしてそれが粒子変形の駆動力となる。もし、粒子があまりにも硬くて変形できないならば、水が蒸発して、粒子の湿り気が失われ、そして粒子変形の駆動力は消失する。コーティング温度が低すぎるか、又はポリマー粒子の可塑化が不十分なときは、粒子は硬いまま残る。それ故に、コーティング処方に十分な量の可塑剤を添加すること及びコーティング温度がコーティング物のガラス転移温度以上であることを確認することが重要である。
【0028】
本発明で重要なことは徐放性フィルムの形成である。水溶液ポリマーコーティング組成物の連続したフィルムは、個々のラテックス又は擬似ラテックス粒子が連続したフィルムを形成するために合体する段階的な合体として知られているプロセスによって形成される。そのメカニズムは、溶媒ベースの(可溶性)ポリマー被覆の単純な沈着から明白である。水の蒸発は不溶性のナノサイズのラテックス又は擬似ラテックス粒子を基材表面上の最密充填配列に濃縮する。隙間の水の毛細管力は最小フィルム形成温度以上の温度で、濃密で,連続した、そして可塑性のフィルムを与えるために合体、又は一緒に溶融する可塑化した粒子を変形させる。粒子合体の駆動力としての毛細管力はフィルム形成のために必要である。しかしながら、もし湿度が低ければ、被覆物中の水は急速に蒸発し毛細管力の作用を短かくする。ポリマー粒子の変形は時間に従属するので、毛細管力の時間をかけた作用は粒子合体及びフィルム形成に有益である。
【0029】
より高いコーティング温度、即ち高められた温度での熱処理(“硬化”)工程は溶融粒子のより速い焼結速度を促進することによって工程を加速する傾向がある。しかしながら、もし合体工程が完全でなければ、それは放出速度に変化を与えてしまう。合体とフィルム形成過程で過剰な乾燥を避けることは重要である。先行技術は過剰乾燥を避けるために高湿度環境での熱処理を使用している。本発明は、高い毛細管力がコーティング工程の過程で高湿度、例えば、コーティング工程で40%以上を使用し、引き続き低湿分の熱処理工程、例えば、乾燥工程で55%以下の相対湿度を使用することによって維持できることを認識している。コーティング工程のための好適な高湿度条件としては、ペレットが凝集しない限りで、例えば、40%以上の相対湿度、50%以上の相対湿度、60%以上の相対湿度、70%以上の相対湿度、80%以上の相対湿度、又は90%以上の相対湿度である。熱処理工程のための好適な低湿分条件としては、過剰乾燥が避けられる限りで、例えば、16g水/kg空気以下、10g水/kg空気以下、8g水/kg空気以下、5g水/kg空気以下、3g水/kg空気以下である。空気流量、温度、及び除去すべき湿分の相対量は、熱処理工程のための適切な低湿分条件選択のガイドとなる。例えば、流動層の使用は、過剰乾燥を避けるために入り口空気流れがより高湿度であることが必要である。合体後は、フィルム特性は一定で保たれるといわれている。
【0030】
可塑化及びコーティングプロセスに加えて、コートしたペレット/タブレットの硬化もまた薬剤放出プロフィールに影響を及ぼす。徐放処方を得るためには、水溶液ポリマーコーティング組成物の水溶液分散物の十分な量と共に、コーティングによる重量増加は治療用活性剤の物理的性質、所望の放出速度、可塑剤又はその他の所望による可溶性ポリマー、着色剤等々を含む添加剤の量及びタイプ、及びそれらの取り込み方法に依存して少なくなるか又は多くなるのではあるが、約1から20%、好ましくは約1から5%の重量増加レベルを得るように、治療用活性剤を含む基材をコートすることが通常必要である。本発明のコーティング処方は、熱処理後に、滑らかで且つエレガントで、顔料やその他のコーティング添加剤を保持することができ、毒性がなく、不活性で、そしてベタツキがない、強い、連続したフィルムをつくることができる必要がある。
【0031】
本発明に従った好適な徐放性プロフィールの例は、USPパドル法によって900ml水溶液緩衝液(1.6と7.2の間のpH)中37℃で、100rpmで測定したとき、インビトロの投与形の溶解速度を以下のように与える:1時間後で12.5と42.5%(重量)の間の治療用活性剤を放出し;2時間後では、25と55wt%の間の活性剤を放出し;4時間後では、45と75wt%の間の活性剤を放出し;6時間後では、55と85wt%の間の活性剤を放出し;そして8時間後では、65と95wt%の間の活性剤を放出した。この例は、もちろん、如何なる場合においても限定される意図でなされたものではない。
【0032】
本発明のコーティング方法によってつくられた被覆基材としては、治療用活性剤の所望の徐放性を得るために、ペレット、タブレット、ソフトカプセル、ハードカプセル、粉末、顆粒、ビーズ、フィルム、フィルムをかぶせた投与形、微小球、種子、イオン交換樹脂ビーズ、及びその他の多粒子系のような広範囲の基材を包含する。本発明に従って調製された顆粒、回転楕円体、又はペレット、等々はカプセル又はフィルムをかぶせた投与形又はその他の如何なる投与形内に存在してもよい。それらは他の薬剤処方と混合することもできるし、又は他の媒体及び薬剤又は薬剤を含む粒子又はその後にタブレット又はピルに成形することもできるフィルムコーティングに晒された粒子と混合することもできる。それらはまた食品又は缶詰食品と混合することもできるしそして薬剤として管理することもできる。医薬品としての使用に加えて、それらは農業化学、肥料又は工業的用途のために使用することもできる。
【0033】
広範な種類の治療用活性剤が本発明と組み合わせて使用することができる。本発明の組成物で使用される治療用活性剤(例えば、薬剤)としては水溶性及び水不溶性薬剤の両方を包含する。そのような治療用活性剤の例としては、抗ヒスタミン(例えば、ジメンヒドリネート、ジフェンヒドラミン、クロルフェニラミン及びデクスクロルフェニラミンマレエート)、鎮痛剤(例えば、アスピリン、コデイン、モルフィネ、ジヒドロモルフォン、オキシコドン、等々)、抗−炎症剤(例えば、ナプロキシン、ジクロフェナック、インドメタシン、イブプロフェン、アセトアミノフェン、アスピリン、シュリンダック)、胃腸及び抗−嘔吐剤(例えば、メトクロプラミド)、抗−てんかん剤(例えば、フェニトイン、メプロバメート及びニトレゼパム)、血管拡張剤(例えば、ニフェジピン、パパベリン、ジチアゼム及びニカルジリン)、抗−咳剤及び去痰剤(例えば、コデインフォスフェート)、抗−喘息剤(例えば、テオフィリン)、抗−痙攣剤(アトロピン、スコポラミン)ホルモン剤(例えば、インシュリン、レパリン)、利尿剤(例えば、エルタクリミン酸、ベンドロフルアジド)、抗−低血圧剤(例えば、プロプラノロール、クロニジン)、気管支拡張剤(例えば、アルブテロール)、抗−炎症性ステロイド(例えば、ヒドロコルチソン、トリアムシノロン、プレドニソン)、抗菌剤(例えば、テトラサイクリン)、抗痔症剤、催眠剤、熱さまし、下痢止め剤、ムコリチックス、鎮静剤、充血抑止剤、緩下剤(通じ薬)、制酸剤、ビタミン、興奮剤(フェニルプロパノールアミンのような食欲抑制剤を含む)を包含する。上記のリストは他を除外することを意味していない。
【0034】
或る好ましい態様においては、治療用活性剤は、ヒドロモルフォン、オキシコドン、ジヒドロコデイン、コデイン、ジヒドロモルフィン、モルフィン、ブプレノルフィン、前者の塩、及び前者の混合物、及びその類似物を含む。好ましい一態様においては、治療用活性剤は、アスピリン、イブプロフェン、又はアセトアミノフェン及び他の治療用相当品、治療用活性剤とそれらの混合物を含む。
【0035】
本発明の徐放性コーティングをタブレットに適用するとき、タブレットコア(例えば、基材)は活性剤と一緒に、限定はしないが、サクローズ、デキストローズ、ラクトース、微結晶性セルロース、キシリトール、フラクトース、ソルビトール、それらの混合物及びその類似物を含む薬剤として許容できる不活性の薬剤フィラー(希釈)物質を含む。また、タブレットコア成分の圧縮の前に、一般的に許容できるカルシウム又はマグネシウム石鹸を含む薬剤潤滑剤の効果的な量を上述の賦形剤成分に添加してもよい。最も好ましいものはステアリン酸マグネシウムで、固体投与形の重量基準で約0.5−3wt%である。
【0036】
本発明の水溶液ポリマーコーティング組成物は好ましくはフィルム形成剤に加えて、可塑剤、及び溶媒系(即ち、水)、優美さと製品の特徴を与えるための着色剤を含む。水溶液ポリマーコーティング組成物の代わりに又はそれに加えて、色を治療用活性剤溶液に添加してもよい。例えば、アルコール又はプロピレングリコールベースのカラー分散物、すりつぶしたアルミニウムレーキ及び二酸化チタンのような不透明剤の使用によって、水溶性ポリマーにせん断をかけて色を添加しそしてそれから可塑化したアクアコート(商標)ECDに添加するときは低せん断を使用することによって、アクアコート(商標)ECDに色を添加してもよい。代わりに、本発明の処方に色を与える如何なる適切な方法を使用してもよい。
【0037】
ラテックス又は擬似ラテックスフィルム形成剤を含む水溶液ポリマーコーティング組成物は、文献公知の好適なスプレー装置を使用してスプレーすることによって基材上に塗布してもよい。コーティングプロセスは高湿度、好ましくは基材表面で少なくとも40%の相対湿度条件下で行われる。コーティングプロセスの過程の相対湿度は50%以上の相対湿度、60%以上の相対湿度、70%以上の相対湿度、80%以上の相対湿度、90%以上の相対湿度であることができる。コーティングプロセスにおける高い相対湿度条件は如何なる適切な手段、例えば、水溶液をコーティング室にスプレーすることによって又は水溶液ポリマーコーティング組成物を水溶液で希釈することによって及び/又はプロセス空気への水の添加、例えば、水をスプレーするか又は蒸発速度を遅くするための湿潤化によって達成することができる。相対湿度は湿分が基材表面に凝縮するほど高くするべきではない。理論によって拘束されるわけではないが、高湿度は、コーティング工程の過程で適用されるラテックス又は擬似ラテックスの最密充填のための十分な時間を与えることによって、基材上に均一で濃密な未加工の(未硬化の)フィルム構造の形成を容易にすると考えられる。
【0038】
好ましくは、該治療用活性剤の予め決められた徐放性を得るための水溶液ポリマーコーティング組成物の十分な量が、水溶液、例えば胃酸に晒されるときに、治療用活性剤の物理的性質、可塑剤の取り込み方法、等々を考慮して適用される。
【0039】
例えば、可塑化したアクアコート(商標)ECDコーティング組成物でコーティングした後で、ラスタークリア(商標)即放性コーティングのようなフィルム形成剤の追加のオーバーコートが所望によりビーズに適用される。このオーバーコートは、もしあれば、ビーズの凝集を実質的に減少させるか、又は感覚器官の又はセンサー的な機能を改善するために与えられる。
【0040】
コーティング工程の終了後、被覆された基材は、治療用活性剤の安定した放出速度を得るために熱処理工程(“硬化”)を受ける。熱処理工程の温度は最小フィルム形成温度以上でなければならないが、しかし、上限は、基材及びその成分、例えば、治療用活性剤の熱安定性によって制限される。熱処理条件は、コートされた基材が高められた温度及び/又は湿度の保存条件にさらに晒されることによって実質上影響を受けない溶解プロフィールを達成するのに十分な条件である。本発明の好ましい態様においては、安定化した製品は、工程装置内で実験的に決定された特定の処方のための最適温度と時間の値で、必要な期間の間、コーティングした基材を高められた温度でオーブン硬化に晒すことによって得られる。熱処理工程は在来の装置、例えば、オーブン乾燥機、流動層、又はコーティングパン内で実施される。
【0041】
本発明の重要な観点は、合体を容易にするためのコーティング内の湿分によって引き起こされる毛細管力を可能にすることによってフィルムの制御された形成を容易にすることである。例えば、熱処理は最小フィルム形成温度以上の2−60℃でオーブン中で1から48時間行われる。例えば、60℃の標準硬化は、ここで用意された実施例によって強調されるように、トリエチルシトレートで可塑化されたアクアコート(商標)ECDエチルセルロース擬似ラテックス処方(約40℃の最小フィルム形成温度)の溶解プロフィールを安定化させる。熟練した当業者であれば、熱処理工程で使用される時間、温度及び湿度は、使用される特定の水溶液ポリマーコーティング組成物に依存しそしてそのために最適化される必要があることを認識するであろう。熱処理工程で、もし所望なら、例えば、低温でスタートしそして熱処理工程の過程で温度を上げるような温度調節を使用することは本発明の範囲内である。
【0042】
(実施例)
以下の実施例は本発明の種々の態様を例証する。それらは如何なる場合においても本発明の特許請求の範囲を限定すると見做してはならない。特に断りのない限り、全ての部は重量部で全ての温度は摂氏である。
【実施例1】
【0043】
この実施例は固体15%の分散液を使用しそして、高湿度条件下でコートされた被覆により4.0%の重量増加を与える。いくつかの被覆ペレットを異なった条件下で熱処理しそして乾燥条件下の本発明の熱処理データを高湿度の熱処理データと比較した。
【0044】
15%固体の水溶液コーティング溶液を表1の処方に従って調製した。可塑化したエチルセルロース擬似格子の水溶液コーティング分散液を表1の処方を使用して調製した:(1)トリエチルシトレートをアクアコート(商標)ECD−30(FMCコーポレーション、フィラデルフィアPA)に添加して3インチのインペラー翼をもったプロペラミキサーを使用してほぼ100から150RPMの遅い速度で1時間混合し、そして(2)脱イオン水を添加しさらに10分間混合した。
【0045】
【表1】

【0046】
コーティング分散液を表2のコーティング条件に従って800gのバッチサイズのテオフィリンペレット(平均ペレットサイズ1000ミクロン、70%のテオフィリン)に適用した。ウルスターカラムをもつニロ流動層乾燥機MP−1中で高湿度条件下で4%の重量増加でコーティングを実施した。コーティング分散液はスプレー適用の過程で、マグネチックスターラーで攪拌した。スプレー速度は、最初メーターバランスで0に設定した後、コーティング容器から取り出されたコーティング物の時間減少によって測定した。
【0047】
【表2】

【0048】
被覆したペレットを分割しそして閉じたオーブン中で空気循環無しで四つの異なった条件下で熱処理した:
1)60℃乾燥
2)80℃乾燥
3)60℃、80%相対湿度(RH)
4)80℃、80%相対湿度(RH)
【0049】
乾燥湿分サンプルを閉じた容器中の湿度調節を生かさずに開放した容器中で乾燥した。80%湿度サンプルを、飽和塩溶液(KCl)を使用して湿度をコントロールした閉じた容器中でオーブン乾燥した。乾燥条件下で硬化させたペレットのデータを表3及び表4に示し本発明を例証する。テオフィリンの放出速度を271nmの紫外線光線で決定した(USP法2、pH4.5のリン酸塩緩衝液、37℃、75rpm)。比較のための高湿度(80%相対湿度)熱処理下で硬化させたペレットのデータを表5及び表6に示す。
【0050】
【表3】

【0051】
【表4】

【0052】
【表5】

【0053】
【表6】

【0054】
さらに24時間(2日)の硬化又は高温80℃の乾燥硬化での硬化の欠如によって示されるように、合体は60℃で24時間後に完結する。
60℃/80%RHで硬化したペレットと未硬化のもののプロフィールに大きな差はない。湿式硬化は合体を完結させるのに失敗した(乾燥硬化によって示されるように)のみでなく80℃では望ましくない生産性を示した。
80℃/80%RHで硬化は実際に、未硬化に比べて放出速度を増加させ、コーティング障壁の堅さに対するダメージは時間に依存している。
【実施例2】
【0055】
表1の15%固体水溶液コーティング分散液を実施例1のようにペレットに適用したが、しかし表7に示されるように高湿度条件下で2.0%までの重量増加であった。
【0056】
【表7】

【0057】
被覆ペレットを分割しそして、閉じたオーブン中で空気循環無しで二つの異なった条件下で熱処理した:
1)60℃乾燥
2)60℃、80%相対湿度(RH)
【0058】
乾燥湿度サンプルを閉じた容器中の湿度調節を生かさずに開放した容器中で乾燥した。80%湿度サンプルを飽和塩溶液(KCl)を使用して湿度をコントロールした閉じた容器中でオーブン乾燥した。乾燥条件下で硬化させたペレットのデータを表8に示し本発明を例証する。テオフィリンの放出速度を271nmの紫外線光線で決定した(USP法2、pH4.5のリン酸塩緩衝液、37℃、75rpm)。比較のための高湿度(80%相対湿度)熱処理下で硬化させたペレットのデータを表9に示す。
【0059】
【表8】

【0060】
【表9】

【0061】
コーティング過程で高湿度が維持されるときは、硬化環境の湿度は、少なくとも60℃までの温度の場合、重要ではない。
【実施例3】
【0062】
この実施例は固体10%の分散液を使用しそして、高湿度条件下でコートされた被覆により1.5%の重量増加を与える。
可塑化したエチルセルロース擬似格子の水溶液コーティング分散液を表10の処方を使用して調製した:(1)トリエチルシトレートをアクアコート(商標)ECD−30(FMCコーポレーション、フィラデルフィアPA)に添加して3インチのインペラー翼をもったプロペラミキサーを使用してほぼ100から150RPMの遅い速度で1時間混合し、そして(2)脱イオン水を添加しさらに10分間混合した。
【0063】
【表10】

【0064】
コーティング分散液を表11のコーティング条件に従って800gのバッチサイズのテオフィリンペレット(平均ペレットサイズ1000ミクロン、70%のテオフィリン)に適用した。ウルスターカラムをもつニロ流動層乾燥機MP−1中でコーティングを実施した。コーティング分散液はスプレー適用の過程で、マグネチックスターラーで攪拌した。スプレー速度を、最初メーターバランスで0に設定した後、コーティング容器から取り出されたコーティング物の時間減少分によって測定した。
【0065】
【表11】

【0066】
被覆したペレットの熱処理(硬化)は乾燥条件、即ち、湿度調節は行わずに、60℃のオーブン中のトレー内で、空気循環なしのオーブン乾燥によって行われた。乾燥条件下で硬化させたペレットのデータを表12に示し本発明を例証する。テオフィリンの放出速度を271nmの紫外線光線で決定した(USP法2、pH4.5のリン酸塩緩衝液、37℃、75rpm)。
【0067】
【表12】

【0068】
被覆したペレット上の1.5%の重量増加は、12時間で、90%テオフィリンの非−線形放出に導いた。湿度調節無しの60℃で1時間の硬化は、コーティングを高湿度条件、即ち湿潤化した入り口空気によって行ったときそしてアクアコート(商標)ECDを希釈することによって水溶液コーティング分散液の固体含量を下げたとき、放出プロフィールを安定化させるのに十分であった。
【実施例4】
【0069】
この実施例は固体35%の分散液を使用しそして、高湿度条件下でコートされた被覆により2.0%の重量増加を与える。いくつかの被覆ペレットを異なった条件下で熱処理しそして乾燥条件下の本発明の熱処理データを高湿度下の比較例熱処理データと比較した。
【0070】
35%固体の水溶液コーティング溶液を表13の処方を使用して調製した。可塑化したエチルセルロース擬似格子の水溶液コーティング分散液を表13の処方を使用して、トリエチルシトレートをアクアコート(商標)ECD−30(FMCコーポレーション、フィラデルフィアPA)に添加しそして3インチのインペラー翼をもったプロペラミキサーを使用してほぼ100から150RPMの遅い速度で1時間混合することによって、調製した。
【0071】
【表13】

【0072】
コーティング分散液を表14のコーティング条件に従って800gのバッチサイズのテオフィリンペレット(平均ペレットサイズ1000ミクロン、70%のテオフィリン)に適用した。ウルスターカラムをもつニロ流動層乾燥機MP−1中で高湿度条件下で2%の重量増加でコーティングを実施した。コーティング分散液はスプレー適用の過程で、マグネチックスターラーで攪拌した。スプレー速度を、最初メーターバランスで0に設定した後、コーティング容器から取り出されたコーティング物の時間減少分によって測定した。
【0073】
【表14】

【0074】
被覆ペレットを分割しそして、閉じたオーブン中で空気循環無しで二つの異なった条件下で熱処理した:
1)60℃乾燥
2)60℃、80%相対湿度(RH)
【0075】
乾燥湿度サンプルを閉じた容器中の湿度調節を生かさずに開放した容器中で乾燥した。80%湿度サンプルを飽和塩溶液(KCl)を使用して湿度をコントロールした閉じた容器中でオーブン乾燥した。テオフィリンの放出速度を271nmの紫外線光線で決定した(USP法2、pH4.5のリン酸塩緩衝液、37℃、75rpm)。乾燥条件下で硬化させたペレットのデータを表15に示し本発明を例証する。比較のための高湿度(80%相対湿度)熱処理下で硬化させたペレットのデータを表16に示す。
【0076】
【表15】

【0077】
【表16】

高湿度硬化は高湿度コーティング後の乾燥硬化に比べて効果がない。
【実施例5】
【0078】
表1の15%固体水溶液コーティング分散液を実施例1のようにペレットに適用したが、表17に示されるように高湿度条件下で1.5%の重量増加であった。
【0079】
【表17】

【0080】
被覆ペレットを分割しそして、閉じたオーブン中で空気循環無しで二つの異なった条件下で熱処理した:
1)60℃乾燥
2)60℃、80%相対湿度(RH)
【0081】
乾燥湿度サンプルを閉じた容器中の湿度調節を生かさずに開放した容器中で乾燥した。80%湿度サンプルを飽和塩溶液(KCl)を使用して湿度をコントロールした閉容器中でオーブン乾燥した。段階的に硬化したサンプル(80%RH/1日+乾燥/1日)を第一段階で閉容器中で飽和塩溶液(KCl)と一緒にオーブン乾燥し、引き続き第二段階で湿度コントロールを生かさないで開容器中で乾燥した。乾燥条件下又は段階的高湿度硬化とそれに続く乾燥硬化によって硬化させたペレットのデータを表18に示し本発明を例証する。テオフィリンの放出速度を271nmの紫外線光線で決定した(USP法2、pH4.5のリン酸塩緩衝液、37℃、75rpm)。高湿度(80%相対湿度)熱処理下で硬化させたペレットのデータを表18に示す。
【0082】
【表18】

【実施例6】
【0083】
表18の15%固体水溶液コーティング分散液を実施例1のペレットに適用したが、表19に示されるように高湿度条件下で1.5%の重量増加であった。
【0084】
【表19】

【0085】
被覆ペレットを分割しそして、閉じたオーブン中で空気循環無しで60℃で1時間熱処理した。
乾燥湿度サンプルを閉じた容器中の湿度調節を生かさずに開放した容器中で乾燥した。乾燥条件下で硬化させたペレットのデータを表20に示し本発明を例証する。硬化したペレットを閉じた容器中で40℃/75%RH条件下で安定性テストのために保存した。
テオフィリンの放出速度を271nmの紫外線光線で決定した(USP法2、pH4.5のリン酸塩緩衝液、37℃、75rpm)。データを表20に示す。
【0086】
【表20】

【実施例7】
【0087】
24%のトリエチルシトレート(TEC)で可塑化されたアクアコート(商標)ECD(FMCコーポレーション)の15%水溶液分散物を使用して、コーティング負荷1.5w%から4w%を、ウルスター内装物をもつニロ流動層乾燥機MP−1を使用して、1mm径のテオフィリンペレットの800gに適用した。入り口空気にスチームを吹き込むことによって高湿度を維持した。被覆したペレットをトレー中でオーブン乾燥によって乾燥硬化させた。同じ温度での湿潤硬化の場合は、ペレットをシールした容器中で飽和塩化カリウムスラリー上に置いた。
【0088】
テオフィリンの放出速度を271nmの紫外線光線で決定した(USP法2、pH4.5のリン酸塩緩衝液、37℃、75rpm)。高湿度下の4%コーティング負荷でコートしそして種々の条件下で硬化させたペレットの放出プロフィールを図1に示す。
【0089】
さらに24時間(2日)の硬化又は高温80℃での乾燥硬化の硬化欠如によって示されるように、合体は60℃で24時間後に完結する。延長した硬化時間は完全に合体したフィルムを確保するために使用され、そして図3に示されるように、実用的にはもっと短い硬化時間が使用される。
【0090】
60℃/80%RHで硬化したペレットと未硬化のもののプロフィールに大きな差はまかった。湿潤硬化は合体を完結へと駆動するのに失敗する(乾燥硬化から見られるように)ばかりではなく、80℃では生産性も低かった。
【0091】
80℃/80%RHでの硬化は実際に未硬化に対して放出速度を増加させ、コーティング障壁の完全さに対するダメージも時間に依存していた。
高湿度がコーティング過程で維持されると、図2に示されるように、少なくとも60℃に達するまでは、硬化環境の湿度は重要ではない。図3から見られるように、1時間の硬化時間は放出プロフィールを安定化させるのに適切である。
【0092】
この実施例から、高湿度コーティング条件は有益でそして湿度コントロールを生かすのと同様に低分散固体によって作り出されると結論付けられる。
乾燥硬化は、高湿度硬化がより効果的であるというクレームに反して被覆したペレットの安定化に有効である。完全な合体を確保することはより安定な放出プロフィールを与えそしてより低いコーティング負荷の使用を可能にする。
【0093】
本発明の多くの特徴及び利点が、本発明の構造及び機能の詳細と一緒に、これまでの記載で示されてきたが、その開示は例証のためのみのものであり、そして詳細における、特に本発明内の形状、サイズ及び要素の配置において、添付した特許請求の範囲で表現している用語の広く一般的な意味によって示されるように変更が可能なことは理解されるべきである。
【0094】
【非特許文献1】G.L.Brown,“Formation of films from polymer dispersions”,Journal of Polymer Science,(1956)Vol.22,pp.423−434
【産業上の利用可能性】
【0095】
本発明は、抗ヒスタミン剤、鎮痛剤、抗−炎症剤、抗―喘息剤(例えばテオフィリン)等々のような水溶性及び水不溶性薬剤の両方を包含する治療用活性剤(例えば、薬剤)と組み合わせて使用され、徐放性薬剤の投与方法として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0096】
【図1】図1は、被覆したペレットからのテオフィリン放出性に及ぼす硬化条件の影響を示す(高湿度コーティング、4%被覆重量増加)。
【図2】図2は、被覆したペレットからの放出性に及ぼす硬化過程の湿度の影響が少ないことを示す(高湿度コーティング、2%被覆重量増加)。
【図3】図3は、被覆したペレットからのテオフィリン放出性に及ぼす硬化時間の影響を示す(高湿度コーティング、1.5%被覆重量増加)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水溶液ポリマーコーティング組成物で基材をコーティングする方法であって、(i)該基材を該水溶性ポリマーコーティング組成物の水溶液で高い相対湿度条件下でコーティングした後、(ii)熱処理工程を伴う諸工程からなり、ここで該熱処理工程が低湿分条件下で行われ、そして該水溶液ポリマーコーティング組成物がラテックス又は擬似ラテックスフィルム形成剤及び、所望により、可塑剤を含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
該高湿度が40%以上の相対湿度である請求項1記載の方法。
【請求項3】
該高湿度が50%以上の相対湿度である請求項1記載の方法。
【請求項4】
該高湿度が60%以上の相対湿度である請求項1記載の方法。
【請求項5】
該高湿度が70%以上の相対湿度である請求項1記載の方法。
【請求項6】
該高湿度が80%以上の相対湿度である請求項1記載の方法。
【請求項7】
該高湿度が90%以上の相対湿度である請求項1記載の方法。
【請求項8】
該低湿分が16g水/kg空気以下である請求項1記載の方法。
【請求項9】
該低湿分が10g水/kg空気以下である請求項1記載の方法。
【請求項10】
該低湿分が8g水/kg空気以下である請求項1記載の方法。
【請求項11】
該低湿分が5g水/kg空気以下である請求項1記載の方法。
【請求項12】
該低湿分が3g水/kg空気以下である請求項1記載の方法。
【請求項13】
該熱処理工程が該水溶液ポリマーコーティング組成物の最小フィルム形成温度以上の温度で行われる請求項1記載の方法。
【請求項14】
該熱処理工程が40℃以上の温度で行われる請求項1記載の方法。
【請求項15】
該熱処理工程が60℃以上の温度で行われる請求項1記載の方法。
【請求項16】
該熱処理工程が80℃以上の温度で行われる請求項1記載の方法。
【請求項17】
該熱処理工程が90℃以上の温度で行われる請求項1記載の方法。
【請求項18】
該水溶液ポリマーコーティング組成物が、エチルセルロース、メタクリレートコポリマー、アクリレートコポリマー、水不溶性セルロース、酢酸セルロースフタレート、ユードラギット(Eudragit(商標))ポリマー、シュアリース(Surelease(商標))ポリマーラテックス、酢酸セルローストリメレート、ポリビニルアセテートフタレート、シュアテリック(Sureteric(商標))ポリマーラテックス、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート、ポリラクチド又はシリコーンエラストマーラテックスの少なくとも一つを含む請求項1記載の方法。
【請求項19】
工程(i)の湿度が工程空気の加湿によって維持される請求項1記載の方法。
【請求項20】
工程(i)の高湿度が、基材を含むコーティング室中に水溶液をスプレーすることによって維持される請求項1記載の方法。
【請求項21】
工程(i)の高湿度が、水溶液ポリマーコーティング組成物を水溶液で希釈することによって維持される請求項1記載の方法。
【請求項22】
該水溶液ポリマーコーティング組成物が、低湿分コーティング及び低湿分硬化条件下で基材上の該水溶液ポリマーコーティング組成物に使用されるよりも少ない量で存在する請求項1記載の方法。
【請求項23】
該水溶液ポリマーコーティング組成物が該基材の8wt%以下の量で存在する請求項1記載の方法。
【請求項24】
該水溶液ポリマーコーティング組成物が該基材の6wt%以下の量で存在する請求項1記載の方法。
【請求項25】
該水溶液ポリマーコーティング組成物が該基材の4wt%以下の量で存在する請求項1記載の方法。
【請求項26】
該水溶液ポリマーコーティング組成物が該基材の2wt%以下の量で存在する請求項1記載の方法。
【請求項27】
該水溶液ポリマーコーティング組成物が該基材の1.5wt%以下の量で存在する請求項1記載の方法。
【請求項28】
該水溶液ポリマーコーティング組成物が該基材の1wt%以下の量で存在する請求項1記載の方法。
【請求項29】
該水溶液ポリマーコーティング組成物が該基材の0.5wt%以下の量で存在する請求項1記載の方法。
【請求項30】
該基材が、ペレット、タブレット、ソフトカプセル、ハードカプセル、粉末、顆粒、ビーズ、フィルム及びフィルム被覆投与形からなる群から選択される請求項1記載の方法。
【請求項31】
請求項1から30のいずれか一項に記載の方法によってつくられた被覆基材。
【請求項32】
該被覆した基材が、同じコーティング組成物の被覆した基材及び低湿分コーティング及び低湿分硬化条件下で作られた基材に対して優れた障壁性能をもっている請求項31記載の製品。
【請求項33】
該被覆した基材が、コーティング組成物の被覆した基材及び低湿分コーティング及び低湿分硬化条件下で作られた基材に対して標準保存条件下で3年以上もの期間を超える徐放性能の優れた安定性をもっている請求項31記載の製品。
【請求項34】
該被覆した基材が、同じコーティング組成物の被覆した基材及び低湿分コーティング及び低湿分硬化条件下で作られた基材に比較して低い拡散性をもっている請求項31記載の製品。
【請求項35】
高湿度条件が、低い固体含量をもつ水溶液コーティング組成物によって作り出されている請求項1記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2009−526096(P2009−526096A)
【公表日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−553480(P2008−553480)
【出願日】平成19年1月31日(2007.1.31)
【国際出願番号】PCT/US2007/061385
【国際公開番号】WO2007/092718
【国際公開日】平成19年8月16日(2007.8.16)
【出願人】(391022452)エフ エム シー コーポレーション (74)
【氏名又は名称原語表記】FMC CORPORATION
【Fターム(参考)】