説明

徐放性製剤

【課題】タクロリムス、ラパマイシン、アスコマイシン等のトリシクロ化合物(マクロライド系化合物)の溶出が徐放化されていることを特徴とするトリシクロ化合物の徐放性製剤の提供。
【解決手段】トリシクロ化合物が固体基剤中に非晶質状態で存在する固体分散体あるいはトリシクロ化合物の微細粉末を成分として含有する徐放性製剤。固体基剤としてはメタクリル酸コポリマー、ショ糖脂肪酸エステル、ヒドロキシプロピルメチルセルロースから選ばれる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、極めて優れた徐放性を有する、マクロライド系化合物の製剤に関するものであり、医療の分野で利用される。
【背景技術】
【0002】
有用な免疫抑制作用を有するマクロライド系化合物の一つであるタクロリムスの経口製剤を提供するに際しては、ヒドロキシプロピルメチルセルロースのような重合体と崩壊剤とを用いて速溶性の固体分散体を調製することが既に行われている(例えば、EP0240773)。該経口製剤は崩壊剤を含有することから速溶性であり、その吸収性の高さにより医療の場において高い評価を得ているが、十分な持続性を有し経口吸収性に優れたタクロリムスの経口投与用製剤の登場も望まれている。しかしながら、一般に薬理活性物質を徐放化製剤として経口投与すると、その薬理活性物質の吸収性が低下し、および/または、その吸収性に無視し難い変動幅が見られるというのが当業者にとっての常識であった。本発明の発明者らは、鋭意研究の結果、タクロリムスを初めとするマクロライド系化合物の経口吸収性に優れ、および/または吸収性変動幅(ばらつき)が抑制されている徐放性製剤を発明するに至った。
【特許文献1】ヨーロッパ特許公開第0240773号公報
【0003】
発明の開示
この発明は、マクロライド系化合物の溶出が徐放化されていることを特徴とする徐放性製剤に関する。
【0004】
本発明の一つの目的は、「pH4.5に調製した0.005%のヒドロキシプロピルセルロース水溶液を試験液として使用する第13改正日本薬局方の溶出試験第2法(パドル法、50rpm)において、マクロライド系化合物の最大溶出量の63.2%が製剤から溶出される時間(T63.2%)が0.7〜15時間であることを特徴とするマクロライド系化合物の徐放性製剤」を提供することである。
【0005】
本発明のもう一つの目的は、マクロライド系化合物が固体基剤中に非晶質状態で存在する組成物であって、前記記載の徐放性製剤に使用される固体分散体を提供することである。
【0006】
本発明の更なる目的は、粒子径分布幅が0.1〜50μm、および/または平均粒子径が0.2〜20μmであるマクロライド系化合物の微細粉末であって、前記記載の徐放性製剤に使用されるマクロライド系化合物の微細粉末を提供することである。
【0007】
本発明の溶出試験により得られるT63.2%は、試験により得られた結果をプロットし溶出曲線を描いたグラフ上から求めことができるが、一般に、製剤の溶出特性の評価では、溶出試験によって得られた実測値を、モデル式に当てはめて解析することが行われており、その方法に当てはめ計算によって求めることもできる。当てはめに用いるモデル式としては、例えば山岡 清、谷川原 祐介共著「マイコンによる薬物速度論入門」(南江堂)P.138に記載のように、1次速度式, 0次速度式, Cube-rootモデルなどが挙げられるが、あらゆる溶出パタ−ンを最もよく表現できるモデル式として、上記著書および米国薬学会, L.J.Leeson, J.T.CARSTENSEN編「医薬品の溶出」(地人書館)P.192 - 195に記載のWeibull関数が知られている。
【0008】
Weibull関数とは、ある時間(T)における溶出率(%)が、
溶出率(%) = Dmax ×{1−exp[−((T−Ti)n)/m]}
なる式で表せる関数である。式中のDmaxは時間無限大での最大溶出率, mは溶出速度を示す尺度パラメーター, nは溶出曲線の形状を示す形状パラメーター, Tiは溶出が開始されるまでのラグタイムを示す位置パラメーターであり、これらパラメーターの組み合わせにより、製剤の溶出特性を表現することができる。
溶出試験結果をWeibull関数へ当てはめ、各パラメーターを算出するには、例えば上記山岡 清、谷川原 祐介共著「マイコンによる薬物速度論入門」(南江堂)P.40に記載の非線形最小二乗法が用いられる。具体的には、各時点での上式による計算値と実測値の差の二乗の合計が最小となる時のパラメーターが決定され、このパラメーターを用いて上式により計算される溶出曲線は、実測値を最もよく再現する曲線となる。
Weibull関数での各パラメーターの持つ意味を以下に説明する。
Dmax(最大溶出率)は、先にも述べた通り、時間無限大での最大溶出率であり、一般にDmaxの値は100(%)に近いことが好ましい。
m(尺度パラメーター)は製剤の溶出速度を示すパラメーターであり、mの値が小さいほど溶出速度が速く、大きいほど溶出速度が遅いことを示す。
n(形状パラメーター)は溶出曲線の形状を示すパラメーターであり、nの値が1のときWeibull関数は、溶出率(%) = Dmax ×{1−exp[−(T−Ti)/m]}となり、この式は1次速度式と等価であるため、溶出曲線は1次速度式にもとづいた溶出曲線となる。nの値が1より小さいときは溶出曲線は頭打ち型となり、nの値が1より大きいときは溶出曲線はシグモイド型となる。
Ti(位置パラメーター)は、溶出が開始されるまでのラグタイムを示すパラメーターである。
【0009】
本願におけるマクロライド系化合物の徐放性製剤は、前記Weibull関数で特定することもできる。つまり、Dmax(最大溶出率)が80%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上であり、m(尺度パラメーター)が0.7〜20、好ましくは1〜12、より好ましくは1.5〜8であり、n(形状パラメーター)が0.2〜5、好ましくは0.3〜3、より好ましくは0.5〜1.5であり、Ti(位置パラメーター)が0〜12、好ましくは0〜8、より好ましくは0〜4であれば、目的とする徐放性製剤を達成することが可能である。
【0010】
また、該Weibull関数から得られるパラメーターのm、nを用い、m1/nの式に当てはめた計算値が、含有成分の最大溶出量の63.2%が製剤から溶出する時間(T63.2%)を表している。つまり、T63.2% (hr)=m1/nの式となる。本発明の徐放化製剤の溶出特性は、pH4.5に調整した0.005%のヒドロキシプロピルセルロース水溶液を試験液として使用する第13改正日本薬局方の溶出試験第2法(パドル法、50rpm)を用いて評価することができる。そして、本発明において目的とするマクロライド系化合物の徐放性製剤においては、マクロライド系化合物の最大溶出量の63.2%が製剤から溶出される時間(T63.2%)が0.7〜15時間であるものである。従来マクロライド系化合物の速溶性製剤は得られているが、T63.2%が0.7〜15時間である徐放性製剤は得られておらず、本発明により初めて完成されたものである。 T63.2%が0.7時間よりも短い場合、経口投与後のマクロライド系化合物の薬効発現においては十分な持続性が得られず、T63.2%が15時間以上であるものは活性成分の溶出速度が遅すぎて、十分な薬効を発現する血中濃度が達成されることなく生体外に排泄され、本願の目的とする製剤には好ましくない。T63.2%が1.0〜12時間である場合には、より好ましい徐放性が得られ、さらに好ましくは1.3〜8.2時間であり、最も好ましくはT63.2%が2〜5時間の徐放性製剤である。
【0011】
本発明において使用されるマクロライド系化合物とは大環状ラクトンであり、環の員数が12またはそれ以上の化合物の総称である。これには、ラパマイシン、タクロリムス(FK506)、アスコマイシンなどのStreptomyces属の微生物が産生するマクロライド系化合物やその類似体、及びそれらの誘導体が豊富に存在する。
マクロライド系化合物の好ましい一つの例としては、下記一般式(I)で表わされるトリシクロ化合物およびその医薬として許容される塩が挙げられる。
【0012】
【化1】

(式中、R1 およびR2 、R3およびR4 、R5 およびR6 の隣接するそれぞれの対は、各々独立して、
a) 2つの隣接する水素原子を表すか、もしくはR2 はアルキル基であってもよく、または
b) 結合しているそれぞれの炭素原子どうしの間でもうひとつの結合を形成してもよく;
7 は水素原子、ヒドロキシ基、保護されたヒドロキシ基、もしくはアルキルオキシ基を表わすか、またはR1 と共になってオキソ基を表わしてもよく;
8 およびR9 は独立して、水素原子、ヒドロキシ基を;
10は水素原子、アルキル基、1以上のヒドロキシ基によって置換されたアルキル基、アルケニル基、1以上のヒドロキシ基によって置換されたアルケニル基、またはオキソ基によって置換されたアルキル基を;
Xはオキソ基、(水素原子、ヒドロキシ基)、(水素原子、水素原子)、または式−CH2O−で表わされる基を;
Yはオキソ基、(水素原子、ヒドロキシ基)、(水素原子、水素原子)、または式N−NR1112もしくはN−OR13で表わされる基を;
11およびR12は独立して水素原子、アルキル基、アリール基またはトシル基を;
13、R14、R15、R16、R17、R18、R19、R22およびR23は独立して水素原子またはアルキル基を;
24は、所望により置換されていてもよい、1以上の複素原子を含み得る環;
nは1または2を表わす。
【0013】
上記の意味に加え、さらにY、R10およびR23はそれらが結合している炭素原子と一緒になって飽和もしくは不飽和の5員もしくは6員環からなる窒素原子、硫黄原子および/もしくは酸素原子を含有する複素環基を表わしていてもよいが、その複素環基は、アルキル基、ヒドロキシ基、アルキルオキシ基、ベンジル基、式−CH2Se(C65)で表わされる基、および1以上のヒドロキシ基によって置換されたアルキル基から選ばれる1以上の基によって置換されていてもよい)。
【0014】
好ましいR24としては、適当な置換基を有していてもよいシクロ(C5-7)アルキル基を挙げることが出来るが、例えば次のような基を例示することが出来る。
(a)3,4−ジオキソ−シクロヘキシル基;
(b)3−R20−4−R21−シクロヘキシル基、
その中で、R20はヒドロキシ、アルキルオキシ、オキソ、または
−OCH2OCH2CH2OCH3、および
21はヒドロキシ、−OCN,アルキルオキシ、適当な置換基を有していてもよいヘテロアリールオキシ、−OCH2OCH2CH2OCH3、保護されたヒドロキシ、クロロ、ブロモ、ヨード、アミノオキザリルオキシ、アジド基、p−トリルオキシチオカルボニルオキシ、またはR2526CHCOO−(式中、R25は所望により保護されていてもよいヒドロキシ基、または保護されたアミノ基、およびR26は水素原子またはメチル、またはR20とR21は一緒になって、エポキシド環の酸素原子を形成する);または
(c) シクロペンチル基であって、そのシクロペンチル基は、メトキシメチル、所望により保護されたヒドロキシメチル、アシルオキシメチル(その中において、アシル部分は、所望により4級化されていてもよいジメチルアミノ基またはエステル化されていてもよいカルボキシ基)、1個またはそれ以上の保護されていてもよいアミノおよび/またはヒドロキシ基、またはアミノオキザリルオキシメチルで置換されている。好ましい例は、2−ホルミル−シクロペンチル基である。
【0015】
一般式(I)において使用されている各定義およびその具体例、並びにその好ましい実施態様を以下に詳細に説明する。
【0016】
「低級」とは特に指示がなければ、炭素原子1〜6個を有する基を意味するものとする。
【0017】
「アルキル基」および「アルキルオキシ基」のアルキル部分の好ましい例としては、直鎖もしくは分枝鎖脂肪族炭化水素残基が挙げられ、例えばメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、ペンチル、ネオペンチル、ヘキシル等の低級アルキル基が挙げられる。
【0018】
「アルケニル基」の好ましい例としては、1個の二重結合を含有する直鎖もしくは分枝鎖脂肪族炭化水素残基が挙げられ、例えばビニル、プロペニル(アリル等)、ブテニル、メチルプロペニル、ペンテニル、ヘキセニル等の低級アルケニル基が挙げられる。
【0019】
「アリール基」の好ましい例としては、フェニル、トリル、キシリル、クメニル、メシチル、ナフチル等が挙げられる。
【0020】
「保護されたヒドロキシ基」および「保護されたアミノ」における好ましい保護基としては、例えばメチルチオメチル、エチルチオメチル、プロピルチオメチル、イソプロピルチオメチル、ブチルチオメチル、イソブチルチオメチル、ヘキシルチオメチル等の低級アルキルチオメチル基のような1−(低級アルキルチオ)(低級)アルキル基、さらに好ましいものとしてC1 〜C4 アルキルチオメチル基、最も好ましいものとしてメチルチオメチル基;
例えばトリメチルシリル、トリエチルシリル、トリブチルシリル、第三級ブチル−ジメチルシリル、トリ第三級ブチルシリル等のトリ(低級)アルキルシリル、例えばメチル−ジフェニルシリル、エチル−ジフェニルシリル、プロピル−ジフェニルシリル、第三級ブチル−ジフェニルシリル等の低級アルキル−ジアリールシリル等のようなトリ置換シリル基、さらに好ましいものとしてトリ(C1 〜C4 )アルキルシリル基およびC1 〜C4 アルキルジフェニルシリル基、最も好ましいものとして第三級ブチル−ジメチルシリル基および第三級ブチル−ジフェニルシリル基;
カルボン酸、スルホン酸およびカルバミン酸から誘導される脂肪族アシル基、芳香族アシル基および芳香族基で置換された脂肪族アシル基のようなアシル基;等が挙げられる。
【0021】
脂肪族アシル基としては、例えばホルミル、アセチル、プロピオニル、ブチリル、イソブチリル、バレリル、イソバレリル、ピバロイル、ヘキサノイル、カルボキシアセチル、カルボキシプロピオニル、カルボキシブチリル、カルボキシヘキサノイル等の、カルボキシのような適当な置換基を1個以上有していてもよい低級アルカノイル基;
例えばシクロプロピルオキシアセチル、シクロブチルオキシプロピオニル、シクロヘプチルオキシブチリル、メンチルオキシアセチル、メンチルオキシプロピオニル、メンチルオキシブチリル、メンチルオキシペンタノイル、メンチルオキシヘキサノイル等の、低級アルキルのような適当な置換基を1個以上有していてもよいシクロ(低級)アルキルオキシ(低級)アルカノイル基;
カンファースルホニル基;
例えばカルボキシメチルカルバモイル、カルボキシエチルカルバモイル、カルボキシプロピルカルバモイル、カルボキシブチルカルバモイル、カルボキシペンチルカルバモイル、カルボキシヘキシルカルバモイル等のカルボキシ(低級)アルキルカルバモイル基、または例えばトリメチルシリルメトキシカルボニルエチルカルバモイル、トリメチルシリルエトキシカルボニルプロピルカルバモイル、トリエチルシリルエトキシカルボニルプロピルカルバモイル、第三級ブチルジメチルシリルエトキシカルボニルプロピルカルバモイル、トリメチルシリルプロポキシカルボニルブチルカルバモイル基等のトリ(低級)アルキルシリル(低級)アルキルオキシカルボニル(低級)アルキルカルバモイル基等の、カルボキシもしくは保護されたカルボキシのような適当な置換基を1個以上有する低級アルキルカルバモイル基等が挙げられる。
【0022】
芳香族アシル基としては、例えばベンゾイル、トルオイル、キシロイル、ナフトイル、ニトロベンゾイル、ジニトロベンゾイル、ニトロナフトイル等の、ニトロのような適当な置換基を1個以上有してもよいアロイル基;
例えばベンゼンスルホニル、トルエンスルホニル、キシレンスルホニル、ナフタレンスルホニル、フルオロベンゼンスルホニル、クロロベンゼンスルホニル、ブロモベンゼンスルホニル、ヨードベンゼンスルホニル等の、ハロゲンのような適当な置換基を1個以上有していてもよいアレーンスルホニル基等が挙げられる。
【0023】
芳香族基で置換された脂肪族アシル基としては、例えばフェニルアセチル、フェニルプロピオニル、フェニルブチリル、2−トリフルオロメチル−2−メトキシ−2−フェニルアセチル、2−エチル−2−トリフルオロメチル−2−フェニルアセチル、2−トリフルオロメチル−2−プロポキシ−2−フェニルアセチル等の、低級アルキルオキシまたはトリハロ(低級)アルキルのような適当な置換基を1個以上有していてもよいアル(低級)アルカノイル基等が挙げられる。
【0024】
上記アシル基中、さらに好ましいアシル基としては、カルボキシを有してもよいC1 〜C4 アルカノイル基、シクロアルキル部分に(C1 〜C4 )アルキルを2個有するシクロ(C5 〜C6 )アルキルオキシ(C1 〜C4 )アルカノイル基、カンファースルホニル基、カルボキシ(C1 〜C4 )アルキルカルバモイル基、トリ(C1 〜C4 )アルキルシリル(C1 〜C4 )アルキルオキシカルボニル(C1 〜C4 )アルキルカルバモイル基、ニトロ基を1個または2個有していてもよいベンゾイル基、ハロゲンを有するベンゼンスルホニル基、C1 〜C4 アルキルオキシとトリハロ(C1 〜C4 )アルキルを有するフェニル(C1 〜C4 )アルカノイル基が挙げられ、それらのうち、最も好ましいものとしては、アセチル、カルボキシプロピオニル、メンチルオキシアセチル、カンファースルホニル、ベンゾイル、ニトロベンゾイル、ジニトロベンゾイル、ヨードベンゼンスルホニルおよび2−トリフルオロメチル−2−メトキシ−2−フェニルアセチルが挙げられる。
【0025】
「飽和もしくは不飽和の5員もしくは6員環からなる窒素原子、硫黄原子および/もしくは酸素原子を含有する複素環基」の好ましい例としては、ピロリル基、テトラヒドロフリル基等が挙げられる。
【0026】
「適当な置換基を有していてもよいヘテロアリールオキシ」の中の「適当な置換基を有していてもよいヘテロアリール」部分とは、EP-A-532,088中の式Iで表される化合物の基R1として例示のものが挙げられるが、例えば、1−ヒドロキシエチルインドール−5−イルが好ましい。その開示を引用して明細書記載の一部とする。
【0027】
本発明において使用されるトリシクロ化合物(I)または医薬として許容されるその塩は、優れた免疫抑制作用、抗菌活性、およびその他の薬理活性を有し、その為、臓器あるいは組織の移植に対する拒絶反応、移植片対宿主反応、自己免疫疾患、および感染症等の治療および予防に有用であることが、例えば、EP-A-184162、EP-A-323042、EP-A-423714、EP-A-427680、EP-A-465426、EP-A-480623、EP-A-532088、EP-A-532089、EP-A-569337、EP-A-626385、WO89/05303、WO93/05058、WO96/31514、WO91/13889、WO91/19495、WO93/5059等に記載されており、また、それらの化合物の製造法も開示されている。それらの開示を引用して明細書記載の一部とする。
【0028】
特に、FR900506(=FK506、タクロリムス)、FR900520(アスコマイシン)、FR900523およびFR900525と呼称される化合物は、ストレプトミセス(Streptomyces)属、例えばストレプトミセス・ツクバエンシス(Streptomyces tsukubaensis)No.9993(寄託機関:日本国茨城県つくば市東1丁目1−3、通商産業省工業技術院生命工学工業技術研究所(旧名称:通商産業省工業技術院微生物工業技術研究所)、寄託日:1984年10月5日、受託番号:微工研条寄第927号)もしくは、ストレプトミセス・ハイグロスコピカス・サブスペシース・ヤクシマエンシス(Streptomyces hygroscopicus subsp.yakushimaensis)No.7238(寄託機関:日本国茨城県つくば市町東1丁目1−3、通商産業省工業技術院生命工学工業技術研究所、寄託日:1985年1月12日、受託番号:微工研条寄第928号)(EP-A-0184162)により産生される物質であり、特に下記構造式で示されるFK506(一般名:タクロリムス)は、代表的な化合物である。
【0029】
【化2】

【0030】
化学名:17−アリル−1,14−ジヒドロキシ−12−[2−(4−ヒドロキシ−3−メトキシシクロヘキシル)−1−メチルビニル]−23,25−ジメトキシ−13,19,21,27−テトラメチル−11,28−ジオキサ−4−アザトリシクロ[22.3.1.04,9]オクタコス−18−エン−2,3,10,16−テトラオン
【0031】
トリシクロ化合物(I)のうち、より好ましいものは、R3 およびR4 、R5およびR6 の隣接するそれぞれの対が、それらが結合しているそれぞれの炭素原子どうしの間に形成されたもう一つの結合を形成しており、
8 とR23は独立して水素原子、
9 はヒドロキシ基、
10はメチル、エチル、プロピルまたはアリル基、
Xは(水素原子、水素原子)またはオキソ基、
Yはオキソ基、
14、R15、R16、R17、R18、R19とR22はそれぞれメチル基、
24は、3−R20−4−R21−シクロヘキシル基、
その中で、R20はヒドロキシ、アルキルオキシ、オキソ、または
−OCH2OCH2CH2OCH3、および
21はヒドロキシ、−OCN,アルキルオキシ、適当な置換基を有していてもよいヘテロアリールオキシ、−OCH2OCH2CH2OCH3、保護されたヒドロキシ、クロロ、ブロモ、ヨード、アミノオキザリルオキシ、アジド基、p−トリルオキシチオカルボニルオキシ、
またはR2526CHCOO−(式中、R25は所望により保護されていてもよいヒドロキシ基、または保護されたアミノ基、およびR26は水素原子またはメチル)、または
20とR21は一緒になって、エポキシド環の酸素原子を形成し、そして
nは1または2で示される化合物である。
【0032】
特に好ましいトリシクロ化合物(I)としては、タクロリムスの他に、EP-A−427、680の実施例66aに記載の33−エピークロロ−33−デスオキシアスコマイシンなどのハロゲン化誘導体等のアスコマイシン誘導体が挙げられる。
【0033】
他の好ましいマクロライド系化合物としては、メルク インデックス(MERCK INDEX)(12版)No.8288に記載のラパマイシンやその誘導体を挙げることが出来る。 好ましい例としては、WO95/16691の1頁の式Aの40位のヒドロキシが−OR1(ここで、R1はヒドロキシアルキル、ヒドロアルキルオキシアルキル、アシルアミノアルキルおよびアミノアルキル)で置換されているO−置換誘導体、例えば、40−O−(2−ヒドロキシ)エチル−ラパマイシン、40−O−(3−ヒドロキシ)プロピル−ラパマイシン、40−O−[2−(2−ヒドロキシ)エトキシ]エチル−ラパマイシンおよび40−O−(2−アセトアミノエチル)−ラパマイシンで挙げられる。これらのO−置換誘導体は、好適な反応条件下でのラパマイシン(またはジヒドロまたはデオキソラパマイシン)と脱離基(例えば、RX(ここで、Rは、アルキル、アリルまたはベンジル部分のようなO−置換基として望ましい有機ラジカルおよびXはCCl3C(NH)OまたはCF3SO3のような脱離基))に結合した有機ラジカルとの反応により、製造し得る。条件は、XがCCl3C(NH)Oである場合、酸性または中性条件、例えば、トリフルオロメタンスルホン酸、カンファースルホン酸、p−トルエンスルホン酸またはそれらの対応するピリジニウムまたは置換ピリジニウム塩の存在下、またはXがCF3SO3である場合、ピリジン、置換ピリジン、ジイソプロピルエチルアミンまたはペンタメチルピペリジンのような塩基の存在下であり得る。最も好ましいラパマイシン誘導体は、WO94/09010に記載のような40−O−(2−ヒドロキシ)エチル ラパマイシンであり、前記文献の開示を引用して明細書記載の一部とする。
【0034】
トリシクロ化合物(I)並びにラパマイシンおよびその誘導体は、類似の基本骨格、すなわちトリシクロマクロライド骨格と少なくとも一つの類似の生物学的特性(例えば、免疫抑制作用)を有する。
【0035】
トリシクロ化合物(I)並びにラパマイシンおよびその誘導体の医薬として許容される塩としては、無毒の、医薬として許容される慣用の塩であり、例えばナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩、例えばカルシウム塩、マグネシウム塩等のアルカリ土類金属塩、アンモニウム塩、例えばトリエチルアミン塩、N−ベンジル−N−メチルアミン塩等のアミン塩のような無機または有機塩基との塩が挙げられる。
【0036】
本発明のマクロライド系化合物においては、コンホーマーあるいは不斉炭素原子および二重結合に起因する光学異性体および幾何異性体のような1対以上の立体異性体が存在することがあり、そのようなコンホーマーあるいは異性体もこの発明のマクロライド系化合物の範囲に包含される。また、マクロライド系化合物は溶媒和物を形成することも出来るが、その場合も本願発明の範囲に含まれる。好ましい溶媒和物としては、水和物およびエタノレートが挙げられる。
【0037】
本発明における徐放性製剤の好ましい具体例の一つは、本発明のもう1つの目的物でもある「マクロライド系化合物が固体基剤中に非晶質状態で存在している固体分散体」を成分として含有し、先に記載のT63.2%が0.7〜15時間を示す製剤である。その固体分散体中において、マクロライド系化合物が固体基剤中に非晶質状態で存在していることは、X線結晶回折により回折ピークの有無や熱分析等により判断することができる。
上記固体分散体に用いられる固体基剤としては、医薬として許容され、マクロライド系化合物を非晶質状態で保持し、かつ常温において固体状態の基剤であればよい。好ましくは、医薬として許容される水溶性基剤であり、より好ましくは例えば下記のような水溶性重合体である。
【0038】
ポリビニルピロリドン(PVP)、セルロースポリマー(ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース フタレート、メチルセルロース(MC)、カルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC-Na)、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、等)、ペクチン、シクロデキストリン類、ガラクトマンナン、平均分子量4000以上のポリエチレングリコール(PEG)、ゼラチン、等
尚、使用に際しては、それらの単一もしくは2種以上の混合物として使用することが出来る。より好ましい水溶性基剤としては、セルロースポリマーやPVP等であり、最も好ましくは、HPMC、PVP、あるいはそれらの組み合わせである。 特に、低粘度のHPMCを使用すると更に望ましい徐放効果を得ることが出来、例えば、その2%水溶液を20℃でBrockfield型粘度計を用いて測定した値が、1〜4000cps、好ましくは1〜50cps、より好ましくは1〜15cpsのHPMCが望ましい。特に、3cpsのHPMC 2910(TC−5E,EW,信越化学)が好ましい。
マクロライド系化合物と水溶性基剤の好ましい重量比は、1:0.05〜1:2であり、より好ましくは 1: 0.1〜1:1、最も好ましくは、1: 0.2〜1:0.4である。
【0039】
また、固体基剤の他の好ましい具体例としては、医薬として許容され、マクロライド系化合物を非晶質状態で保持し、かつ常温において固体状態の水不溶性基剤が挙げられる。より、好ましくは、例えばワックスや水不溶性高分子を挙げることができる。
【0040】
ワックスの好ましい具体例としては、モノステアリン酸グリセリンやショ糖脂肪酸エステル類(例えば、ショ糖と8−20個の炭素原子を有する中級〜高級脂肪酸(例えば、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキン酸、ベヘン酸、オレイン酸、リノール酸、等)との、モノ、ジ、もしくはトリエステルなど)が挙げられる。ワックスの他の例として、ポリグリセリン脂肪酸エステルも挙げられる。ポリグリセリン脂肪酸エステルは、ポリグリセリンと脂肪酸とのエステルである限り、モノエステル、ジエステルまたはポリエステルのいずれであってもよい。ポリグリセリン脂肪酸エステルの具体例としては、例えば、ベヘン酸ヘキサ(テトラ)グリセリド、カプリル酸モノ(デカ)グリセリド、カプリル酸ジ(トリ)グリセリド、カプリン酸ジ(トリ)グリセリド、ラウリン酸モノ(テトラ)グリセリド、ラウリン酸モノ(ヘキサ)グリセリド、ラウリン酸モノ(デカ)グリセリド、オレイン酸モノ(テトラ)グリセリド、オレイン酸モノ(ヘキサ)グリセリド、オレイン酸モノ(デカ)グリセリド、オレイン酸ジ(トリ)グリセリド、オレイン酸ジ(テトラ)グリセリド、オレイン酸セスキ(デカ)グリセリド、オレイン酸ペンタ(テトラ)グリセリド、オレイン酸ペンタ(ヘキサ)グリセリド、オレイン酸デカ(デカ)グリセリド、リノール酸モノ(ヘプタ)グリセリド、リノール酸ジ(トリ)グリセリド、リノール酸ジ(テトラ)グリセリド、リノール酸ジ(ヘキサ)グリセリド、ステアリン酸モノ(ジ)グリセリド、ステアリン酸モノ(テトラ)グリセリド、ステアリン酸モノ(ヘキサ)グリセリド、ステアリン酸モノ(デカ)グリセリド、ステアリン酸トリ(テトラ)グリセリド、ステアリン酸トリ(ヘキサ)グリセリド、ステアリン酸セスキ(ヘキサ)グリセリド、ステアリン酸ペンタ(テトラ)グリセリド、ステアリン酸ペンタ(ヘキサ)グリセリド、ステアリン酸デカ(デカ)グリセリド、パルミチン酸モノ(テトラ)グリセリド、パルミチン酸モノ(ヘキサ)グリセリド、パルミチン酸モノ(デカ)グリセリド、パルミチン酸トリ(テトラ)グリセリド、パルミチン酸トリ(ヘキサ)グリセリド、パルミチン酸セスキ(ヘキサ)グリセリド、パルミチン酸ペンタ(テトラ)グリセリド、パルミチン酸ペンタ(ヘキサ)グリセリド、パルミチン酸デカ(デカ)グリセリドなどが挙げられる。好ましいポリグリセリン脂肪酸エステルは、例えば、ベヘン酸ヘキサ(テトラ)グリセリド(例えば、理研ビタミン(株)製、商品名ポエムJ−46Bなど)、ステアリン酸ペンタ(テトラ)グリセリド(例えば、阪本薬品工業(株)製、商品名PS−310など)、ステアリン酸モノ(テトラ)グリセリド(例えば、阪本薬品工業(株)製、商品名MS−310など)、ステアリン酸ペンタ(ヘキサ)グリセリド(例えば、阪本薬品工業(株)製、商品名PS−500など)、ステアリン酸セスキ(ヘキサ)グリセリド(例えば、阪本薬品工業(株)製、商品名SS−500など)、ステアリン酸モノ(デカ)グリセリドまたはそれらの混合物である。より好ましいワックスとしては、モノステアリン酸グリセリンや低HLBショ糖脂肪酸エステル(例えば、第一工業製薬(株)のF−50,F−20、F−10等)を挙げることができる。
【0041】
マクロライド系化合物とワックスとの好ましい重量比は、例えば、ワックスがモノステアリン酸グリセリンである場合、1:10〜1:100、好ましくは1:40〜1:60; 例えばワックスがショ糖脂肪酸エステルである場合、1:0.2〜1:20、好ましくは1:0.5〜1:5; 例えばワックスがポリグリセリン脂肪酸エステルである場合、1:0.1〜1:100、好ましくは1:0.5〜1:50である。
【0042】
好ましい水不溶性高分子としては、例えば、エチルセルロース、メタクリル酸コポリマー(例えば、オイドラギットE、R、S、RS、LD、などのオイドラギット類)などが挙げられる。なお、エチルセルロースの場合、医薬として許容されるものであればよいが、トルエン/エタノール=80/20を溶媒とした5%溶液のエチルセルロースの粘度を米国薬局方(USP23、NF18)記載の粘度試験法で測定したとき、3〜110cpsであるものが好ましく、より好ましくは6〜49cps、最も好ましくは9〜11cpsの粘度のものである。例えば、粘度タイプ10のエトセル(商品名:Dow Chemical社製(US))が最適である。
【0043】
マクロライド系化合物と水不溶性高分子との重量比は、1:0.01〜1:10であり、より好ましくは 1: 0.1〜1:5である。そして、水不溶性高分子がエチルセルロースである場合には1: 0.1〜1:1が最も好ましく、水不溶性高分子がメタクリル酸コポリマーである場合には1: 0.5〜1:5が最も好ましい。
【0044】
なお、本発明における固体分散体を製造する際には、上記の水溶性基剤や水不溶性基剤のような固体基剤を単独で、あるいは混合して用いてもよい。尚、固体基剤として水不溶性基剤を使用する場合、水溶性基剤(例えば、HPMCなどの水溶性重合体など)を適量混合することによって、より好ましい溶出プロファイルを得ることができる。また、固体基剤以外の成分として、所望により、常用の賦形剤(乳糖、等)、結合剤、着色剤、甘味剤、芳香剤、希釈剤、酸化防止剤(ビタミンE等)や滑沢剤(たとえば、合成ケイ酸アルミニウム、ステアリン酸マグネシウム、リン酸水素カルシウム、ステアリン酸カルシウム、タルク等)等を添加して製造してもよい。
【0045】
また、固体基剤の種類によっては、固体分散体からのマクロライド系化合物の溶出速度が遅くなりすぎる場合や初期溶出速度を早める必要がある場合があるが、その場合には適当な崩壊剤(例えば、クロスカルメロースナトリウム(CC-Na)、カルボキシメチルセルロースカルシウム(CM-Ca)、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース(L-HPC)、でんぷんグリコール酸ナトリウム、クロスポビドン等)あるいは界面活性剤(例えば、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ステアリン酸ポリオキシル40、ポリソルベート80、ラウリル硫酸ナトリウム、HLB10以上のショ糖脂肪酸エステル、等)を添加することにより、マクロライド系化合物の溶出速度を調節した固体分散体とすることもできる。しかしながら、固体基剤が水溶性基剤である場合には、通常、実質的に崩壊剤や界面活性剤を含有しない固体分散体とする方が徐放性製剤を調製する上では好ましい。
【0046】
マクロライド系化合物が固体基剤中に非晶質状態で存在する固体分散体の粒子径は500μm以下とすることが好ましい。より好ましくは350μm以下であり、最も好ましくは250μmの篩を通過する粒子径のものである。
【0047】
なお、本発明の徐放性製剤における成分である、マクロライド系化合物の固体分散体は、EP0240773やWO91/19495号等に記載の方法により製造することができ、具体的には、以下のとおりである。
【0048】
マクロライド系化合物を有機溶媒(例えばエタノール、ジクロロメタン、あるいはそれらの水混液、等)に溶解した後、固体基剤を適量添加し、十分に溶解、懸濁あるいは膨潤させて得られる混合物をよく練合する。この練合物から有機溶媒を除去した後、残渣を乾燥・粉砕・整粒することにより、マクロライド系化合物が固体基剤中に非晶質状態で存在する固体分散体を製造することができる。尚、前記練合の際、必要に応じ、リン酸水素カルシウム等の滑沢剤、乳糖等の賦形剤等を更に加えてもよい。
【0049】
また、本発明のマクロライド系化合物の徐放性製剤は、マクロライド系化合物の微細粉末を使用することによっても、製造することが可能である。マクロライド系化合物微細粉末の粒子径のコントロールは、一般に製剤製造工程で用いられる粉砕機、例えばピンミル、ハンマーミル、ジェットミル、乾式および湿式ボールミルによって可能であり、使用する機器はこれらに限定されるものではない。これに用いられるマクロライド系化合物の微細粉末粒子径分布幅は0.1〜50μmであり、好ましくは0.2〜20μmであり、より好ましくは0.5〜10μmである。および/または、そのマクロライド系化合物の微細粉末の平均粒子径は、0.2〜20μmであり、好ましくは0.5〜10μmであり、より好ましくは1〜5μmである。
【0050】
上記方法で製造されたマクロライド系化合物の固体分散体や微細粉末は、それ自体徐放性製剤として使用することもできるが、製剤としての取扱い易さ、水への分散性、および経口投与後の分散性を考慮すると、更に圧縮成型による製剤化等の常法により、粉剤、細粒剤、顆粒、錠剤、カプセル剤等の形態とした徐放性製剤として使用することが出来、その方がより好ましい。その際には、所望により、その固体分散体や微細粉末に加えて、例えばシュクロース、乳糖、デンプン、結晶セルロース、合成ケイ酸アルミニウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、リン酸水素カルシウム、タルク等の希釈剤や滑沢剤、および/または常用の着色剤、甘味剤、芳香剤、崩壊剤等を混合した徐放性製剤を製造することもできる。
【0051】
なお、本発明のマクロライド系化合物の徐放性製剤またはその成分であるマクロライド系化合物の固体分散体もしくは微細粉末を、予め水、ジュースなどに分散し、液剤として服用することもできる。
【0052】
マクロライド系化合物の製剤中における含有量は、その製剤の種類、治療する患者個々の年齢および疾病の種類、その程度、あるいはその他の要因により変化するが、通常、1日約0.001〜1000mg、好ましくは0.01〜500mg、さらに好ましくは0.1〜100mgとなるように調製することが可能であり、一般に1回平均約0.01mg、0.1mg、0.5mg、1mg、5mg、10mg、50mg、100mg、250mg、500mgとなるように調製することが好ましい。
【0053】
本発明のマクロライド系化合物の徐放性製剤は、経口投与後にマクロライド系化合物が徐放化され、その有用な薬理作用が持続的に発現するという特性を有する。本発明により、有用な薬理作用を有するマクロライド系化合物を投与するに際して一日の投薬頻度を減らすことが可能となった。具体的には、一日一回投与可能なマクロライド系化合物の製剤を提供することが可能となった。また、一時的な高濃度による副作用等の望ましくない作用発現を低減させることができ、十分な時間、薬理効果を持続化させうる製剤を提供することが可能となった。
【0054】
尚、本発明の徐放性製剤は、活性成分であるマクロライド系化合物、特にトリシクロ化合物(I)の薬理作用から、下記疾患や下記状態の治療および予防に有用である。
【0055】
心臓、腎臓、肝臓、骨髄、皮膚、角膜、肺、膵臓、小腸、手足、筋肉、神経、椎間板、気管、筋芽細胞、軟骨等の臓器または組織の移植の際の拒絶反応;
骨髄移植による移植片対宿主反応;
慢性関節リウマチ、全身性紅斑性狼瘡、橋本甲状腺炎、多発性硬化症、重症筋無力症、I糖尿病等の自己免疫疾患;
病原性微生物(例えば、アスペリギルス・フミガーシス、フサリウム・オキシスポルマ、トリコフィトン・アステロイデス等)による感染症;
炎症性および増殖亢進性皮膚病および免疫学的仲介皮膚疾患(例えば、乾癬、アトピー性皮膚炎、接触性皮膚炎、湿疹状皮膚炎、脂漏性皮膚炎、扁平苔癬、天疱瘡、水疱瘡類天疱瘡、表皮水疱症、じんま疹、血管性水腫、脈管炎、紅斑、皮膚好酸球増加症、紅斑性狼瘡、座瘡および円形脱毛症);
自己免疫疾患の眼疾患(例えば、角結膜炎、春季結膜炎、ベーチェット病関連のブドウ膜炎、角膜炎、ヘルペス性角膜炎、円錐形角膜炎、角膜上皮異栄養症、角膜白斑、眼天疱瘡、モーア潰瘍、強膜炎、グレーブス眼障害、フォークトー小柳−原田症候群、乾性角結膜炎(ドライアイ)、フリクテン、虹彩毛様体炎、類肉腫症、内分泌眼障害等);
可逆的閉塞性気道疾患[ぜん息(例えば、気管支ぜん息、アレルギー性ぜん息、内因性ぜん息、外因性ぜん息および塵埃性ぜん息)、特に慢性または難治性ぜん息(例えば、遅発型ぜん息および気道反応性亢進)、および気管支炎等];
粘膜および血管の炎症(例えば胃潰瘍、虚血症および血栓症による血管損傷、虚血性腸疾患、腸炎、壊死性全腸炎、火傷による腸損傷、ロイコトリエンB4 −仲介疾患);
腸の炎症/アレルギー(例えば、小児脂肪便症、直腸炎、好酸性胃腸炎、肥満細胞症、クローン病および潰瘍性大腸炎);
胃腸管から遠隔の部位に症候性症状発現をする食物関連アレルギー疾患(例えば偏頭痛、鼻炎および湿疹);
腎症(例えば、間質性腎炎、グッドパスチャー症候群、溶血性尿毒症症候群および糖尿病性腎症、糸球体腎炎(ループス腎炎等);
神経性疾患(例えば多発性筋炎、ギラン−バレー症候群、メニエール病、多発神経炎、多発性神経炎、単発性神経炎、脳梗塞、アルツハイマー症、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症(ALS)および神経根障害);
脳虚血疾患、頭部障害 (例えば、脳出血(例えば、クモ膜下出血、脳内出血)、脳血栓、脳塞栓症、心停止、脳卒中、一過性脳虚血発作、高血圧性脳症、脳梗塞);
内分泌疾患(例えば、甲状腺機能亢進症およびバセドウ病);
血液疾患(例えば、純赤芽球病、再生不良性貧血、形成不良性貧血、特発性血小板減少性紫斑病、自己免疫性溶血性貧血、無顆粒球症、悪性貧血、巨赤芽球性貧血および赤血球形成不全症);
骨疾患(例えば、骨粗鬆症);
呼吸器系統疾患(例えば、サルコーイドシス(類肉腫症)、肺繊維症および特発性間質性肺炎);
皮膚疾患(例えば、皮膚筋炎、尋常性白斑症、尋常性魚鱗癬、光線過敏症および皮膚T細胞リンパ腫);
循環器系統疾患(例えば、動脈硬化症、アテローム硬化症、大動脈炎症候群、結節性多発性動脈炎および心筋症);
膠原病(例えば、強皮症、ウェゲナー肉芽腫およびシェーグレン症候群);
脂肪過多症;好酸球性筋膜炎;歯周病[例えば、歯肉、歯周、歯槽骨、(歯の)セメント質の損傷];
男性型脱毛症または老人性脱毛症;
筋ジストロフィー;膿皮症およびセザリー症候群;染色体異常症(例えば、ダウン症候群);アジソン病;
活性酸素仲介疾患[例えば、臓器損傷(保存、移植または虚血性疾患(血栓症、心筋梗塞等)の際に生ずる(心臓、肝臓、腎臓、消化管等の)臓器の虚血性血流損傷):
腸疾患(例えばエンドトキシンショック、偽膜性大腸炎、薬剤または放射線による大腸炎):
腎性疾患(例えば虚血性急性腎不全、慢性腎不全):
肺疾患(例えば肺中酸素または薬剤(例えばパラコート、ブレオマイシン)による中毒、肺癌、肺気腫):
眼病(例えば白内障、鉄沈着症(眼球鉄錆症)、網膜炎、色素沈着症、老人性斑点変質、ガラス体瘢痕、アルカリ火傷角膜):
皮膚炎(例えば、多形性紅斑、綿状免疫グロブリンA皮膚炎、セメント皮膚炎):
およびその他の疾患(例えば歯肉炎、歯周炎、敗血症、膵炎、または環境汚染(例、大気汚染)、老化、発癌物質、癌転移、高山病による疾患)];
ヒスタミンまたはロイコトリエンC4 遊離による疾患;
冠動脈の再狭窄、術後の腸管癒着;
自己免疫疾患及び炎症状態(例えば、原発性粘膜水腫、自己免疫性萎縮性胃炎、早発性閉経、男性不妊症、若年型糖尿病、尋常性天疱瘡、類天疱瘡、交感性眼炎、水晶性ぶどう膜炎、特発性白血球減少症、活動性慢性肝炎、特発性肝硬変、円板状紅斑性狼瘡、 自己免疫性精巣炎、関節炎(例えば、変形関節炎)、あるいは多発性軟骨炎);
ヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染症、後天性免疫不全症候群(AIDS);
アレルギー性結膜炎;
外傷、熱傷、手術等による肥厚性瘢痕やケロイド等。
【0056】
さらに、マクロライド系化合物は、肝臓再生作用および/または肝細胞の肥大および過形成の刺激作用を有する。従って、本発明の徐放性製剤は、肝疾患[例、免疫原性疾患(自己免疫性肝臓病、原発性胆汁性肝硬変または硬化性胆管炎のような慢性自己免疫性肝臓病)、部分的肝臓切除、急性肝臓壊死(例えば、毒物、ウィルス性肝炎、ショックまたは無酸素症による壊死)、B型肝炎、非A非B型肝炎、肝硬変および肝機能不全(例、劇症肝炎、遅発性肝炎および急性から慢性へ移行した肝機能不全)]の治療および予防に有用である。
【0057】
さらにまた本発明の徐放性製剤は、化学療法作用の増強作用、サイトメガロウィルス感染の予防および治療作用、抗炎症作用、ペプチジループロリルイソメラーゼまたはロタマーゼの阻害活性、抗マラリア活性、抗腫瘍活性、等のような薬理作用により種々の疾患の予防および治療に有用である。
【0058】
本発明は、更に、マクロライド系化合物を含有する固形製剤からのマクロライド系化合物の溶出試験法を行うに際し、溶出試験液にセルロースポリマーを適量添加して行う方法を提供する。 通常、薬物を含有する固形製剤からの該薬物の溶出試験を行うに際しては、一般に第13改正日本薬局方の溶出試験第2法(パドル法、50rpm)、 あるいは、米国薬局方 23、NF18(The United Stated Pharmacopeia 23、The National Formulary 18)もしくはヨーロッパ薬局方(European Pharmacopoeia, 3rd edition)記載の溶出試験法等が汎用されている。しかしながら、微量のマクロライド系化合物を含有する製剤からのマクロライド系化合物の溶出試験を行う場合、マクロライド系化合物の本来の含有量に対する溶出率が数時間経過後も100%に達成しないという現象がみられる。これは、マクロライド系化合物の含有量が低い場合、溶出試験器やフィルター等の器具へのマクロライド系化合物の吸着の影響が大きくなるためと考えられる。そこで、本発明者らは、種々の界面活性剤等の添加を検討した結果、溶出試験液にセルロースポリマー(例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース フタレート、メチルセルロース(MC)、カルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC-Na)、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、等)を適量添加し、および、それだけでは溶出液のpHが高くなりマクロライド系化合物の安定性が悪くなる場合があるため、必要に応じ溶出試験液にりん酸等を加えてpH7以下に調節することにより、マクロライド系化合物の器具への吸着の影響を抑え、ほぼ100%の回収率を達成することができることを見出した。好ましいセルロースポリマーは、「ヒドロキシプロピルセルロースもしくはそれと同等品」であり、その好ましい粘度は、その5.0gを水95mlに加えて溶かし、必要に応じ遠心分離して泡を除き、25±0.1℃で回転粘度計を用いて試験を行うとき、75〜150cspである。例えば、アルドリッチ社製の分子量約10万のヒドロキシプロピルセルロースがこれに該当する。
【0059】
なお、該試験溶出液に添加するセルロースポリマーの適量とは、溶出試験液全量に対し、0.001〜0.1%であり、より好ましくは、0.002〜0.01%である。最も好ましくは0.005%である。
【0060】
固形製剤からの主成分の溶出を試験する方法としては、第13改正日本薬局方の溶出試験第2法(パドル法)、あるいは米国薬局方またはEP薬局方等に記載の溶出試験法がよく知られており、それらは一定の容器やパドル等からなる装置を用い、試験液の量、試験液の温度、回転数等を規定して行なわれる溶出試験法である。必要に応じ、りん酸等により試験液のpHを調整して行われることもある。本発明においては、pH7以下とするのが好ましい。なお、本発明において、「第13改正日本薬局方の溶出試験第2法(パドル法、50rpm)」とは、特に1分間に50回転(50rpm)で攪拌しながら行なう溶出試験第2法(パドル法)である。第13改正日本薬局方の記載を引用して、本願明細書記載の一部とする。
【0061】
以下の実施例により本発明を説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、以下の実施例において「FK506」として、FK506の1水和物を使用したが、便宜上FK506に換算して記載する。
【0062】
実施例1
FK506 1.0 mg
HPMC 2910 1.0 mg
計 2.0 mg
【0063】
FK506をエタノールに溶解し、この溶解した液にHPMC2910を加え十分に膨潤させた後、練合した。得られた練合物をステンレストレーに移し、真空乾燥後、コーヒーミルで粉砕した。その後、以下の方法で整粒化し、固体分散体である下記組成物1−1)〜1−6)を得た。
(1)粉砕末を250μmの篩にかけ、篩の上に残ったものを組成物1−1)(>250μm)とする。
(2)(1) で篩を通過したものを180μmの篩にかけ、篩の上に残ったものを組成物1−2)(180-250μm)とする。
(3)(2)で篩を通過したものを150μmの篩にかけ、篩の上に残ったものを組成物1−3)(150-180μm)とする。
(4)(3)で篩を通過したものを106μmの篩にかけ、篩の上に残ったものを組成物1−4)(106-150μm)とする。
(5)(4)で篩を通過したものを75μmの篩にかけ、篩の上に残ったものを組成物1−5)(75-106μm)とする。
(6)(5)で篩を通過したものを組成物1−6)(<75μm)とする。
【0064】
実施例2
実施例1で得られた固体分散体1−2)を乳糖(58.0 mg)とよく混合し、カプセル充填を行い、カプセル剤とした。
【0065】
実施例3
実施例1と同様にして下記組成から成り、粒子径が180-250μmのそれぞれの固体分散体を調製した。
【0066】
固体分散体 マクロライド系化合物 水溶性基剤
3−1) FK506 HPMC 2910
(1.0mg) (0.3mg)

3−2) FK506 HPMC 2910
(1.0mg) (0.1mg)

更に、固体分散体3−1)と乳糖(58.7 mg)とをよく混合しカプセル充填を行い、カプセル剤3−1)を調製し、また、固体分散体3−2)と乳糖(58.9 mg)とをよく混合しカプセル充填を行い、カプセル剤3−2)を調製した。
【0067】
実施例4
実施例1の固体分散体1−2)と同様にして、下記の固体分散体を調製した。

【0068】
固体分散体 マクロライド系化合物 水溶性基剤
4−1) FK506 MC
(全量2.0mg) (1.0mg) (1.0mg)

4−2) FK506 PVP
(全量2.0mg) (1.0mg) (1.0mg)

4−3) FK506 HPMC 2910
(全量2.0mg) (1.0mg) (1.0mg)

4−4) FK506 HPC
(全量2.0mg) (1.0mg) (1.0mg)

4−5) FK506 PEG
(全量2.0mg) (1.0mg) (1.0mg)

4−6) FK506 HPMC 2910 (0.8mg)
(全量2.0mg) (1.0mg) PVP (0.2mg)

更に、実施例2と同様にして、上記各固体分散体に、乳糖(適量)とステアリン酸マグネシウム(0.6mg)をそれぞれ添加し、全量60.0mgのカプセル剤をそれぞれ調製した。
【0069】
実施例5
FK506(1.0mg)とHPMC 2910(1.0mg)を用いて実施例1の固体分散体1−2)と同様に固体分散体を調製した後、実施例2と同様にして、下記添加剤をそれぞれ添加し、全量60.0mgのカプセル剤5−1)〜4)をそれぞれ調製した。

カプセル剤No. 添加剤
5−1) 結晶セルロース (適量)
ステアリン酸マグネシウム (0.6mg)

5−2) リン酸水素カルシウム (適量)
ステアリン酸マグネシウム (0.6mg)

5−3) 乳糖 (適量)
L-HPC (3.0mg)
ステアリン酸マグネシウム (0.6mg)

5−4) トウモロコシデンプン (適量)
ステアリン酸カルシウム (0.6mg)
【0070】
実施例6
FK506 1.0g
HPMC 2910 0.3g
計 1.3g
【0071】
FK506をエタノ−ルに溶解し、この溶液にHPMC 2910を加え充分に膨潤させた後、練合した。得られた練合物をステンレストレーに移し、真空乾燥後、コーヒーミルで粉砕した。その後、以下の方法で整粒化し、固体分散体である組成物6−1)〜6−6)を得た。
(1) 粉砕末を250μmの篩にかけ、篩の上に残ったものを組成物6−1)(>250μm)とする。
(2) (1)で篩を通過したものを180μmの篩にかけ、篩の上に残ったものを組成物6−2)(180−250μm)とする。
(3) (2)で篩を通過したものを150μmの篩にかけ、篩の上に残ったものを組成物6−3)(150−180μm)とする。
(4) (3)で篩を通過したものを106μmの篩にかけ、篩の上に残ったものを組成物6−4)(106−150μm)とする。
(5) (4)で篩を通過したものを75μmの篩にかけ、篩の上に残ったものを組成物6−5)(75−106μm)とする。
(6) (5)で篩を通過したものを組成物6−6)とする。
【0072】
実施例7
実施例6で得られた固体分散体6−4)1.3mgを、乳糖58.1mgおよびステアリン酸マグネシウム0.6mgとよく混合し、カプセル充填を行い、カプセル剤7とした。
【0073】
実施例8
実施例1と同様にして下記固体分散体を得た後、更に整粒化して、粒子径が180-250μmの固体分散体をそれぞれ調製する。
固体分散体 マクロライド系化合物 水溶性基剤
8−1) アスコマイシン HPMC 2910
(1.0mg) (0.3mg)

8−2) 33−エピ−クロロ−33− HPMC 2910
デスオキシアスコマイシン (0.3mg)
(1.0mg)

8−3) 40−O−(2−ヒドロキシ) HPMC 2910
−エチル−ラパマイシン (0.3mg)
(1.0mg)

実施例7と同様にして、乳糖(58.1mg)とステアリン酸マグネシウム(0.6mg)を用い、それぞれのカプセル剤を調製する。
【0074】
実施例9
固体分散体9
(表1)
FK506 10 g
HPMC 2910 3 g
リン酸水素カルシウム 3 g

計 16 g
【0075】
製剤9
(表2)
固体分散体9 16 g
乳糖 適量
ステアリン酸マグネシウム 7 g

計 700 g
【0076】
FK506をエタノールに溶解し、これにHPMC 2910を加えよく混合し、さらにリン酸水素カルシウムを加えよく混合する。これを一晩真空乾燥後、スピードミルおよびロールグラニュレーターを用いて整粒し、212μmの篩で分級し、篩を通過したものを固体分散体9とする。固体分散体9と乳糖およびステアリン酸マグネシウムを混合し製剤9を得る。製剤9 350mgを1号ゼラチンカプセルに、また70mgを5号ゼラチンカプセルに充填し製剤Aおよび製剤Bとした。
【0077】
実施例10
固体分散体10
(表3)
FK506 10 g
HPMC 2910 3 g
乳糖 3 g

計 16 g
【0078】
製剤10
(表4)
固体分散体10 16 g
乳糖 適量
ステアリン酸マグネシウム 7 g

計 700 g
【0079】
実施例9と同様にして、固体分散体10および製剤10をそれぞれ調製した。
【0080】
実施例11
固体分散体11
(表5)
FK506 10 g
HPMC 2910 3 g
リン酸水素カルシウム 3 g

計 16 g
【0081】
製剤11
(表6)
固体分散体11 16 g
乳糖 適量
ステアリン酸マグネシウム 7 g

計 700 g
【0082】
FK506をエタノールに溶解し、これにHPMC 2910を加えよく混合し、さらにリン酸水素カルシウムを加えよく混合する。これを一晩真空乾燥後、スピードミルおよびロールグラニュレーターを用いて整粒し、250μmおよび180μmの篩で分級し、180 - 250μmのフラクションを固体分散体11とする。固体分散体11と乳糖およびステアリン酸マグネシウムを混合し製剤11を得る。製剤11 350mgを1号ゼラチンカプセルに、また70mgを5号ゼラチンカプセルに充填し製剤Cおよび製剤Dとした。
【0083】
実施例12
固体分散体12
(表7)
FK506 2 g
モノステアリン酸グリセリン 98 g
HPMC 2910 20 g

計 120 g
【0084】
製剤12
(表8)
固体分散体12 120 g
ステアリン酸マグネシ 1.2 g
ウム

計 121.2 g
【0085】
モノステアリン酸グリセリンを80℃に加温融解し、これにFK506を加えて攪拌して溶解する。さらにこれにHPMC 2910を加えてよく混合後、トレーに移し自然冷却する。冷却して得られた固形物をコーヒーミルで粉砕後、500μmの篩で篩過し、篩を通過したものを固体分散体12とする。固体分散体12をステアリン酸マグネシウムと混合した製剤12を、5号ゼラチンカプセルに60.6mg充填し製剤Eとした。
【0086】
実施例13
固体分散体13
(表9)
FK506 2 g
アミノアルキルメタアクリレートコポリマー(オイドラギットRL) 6 g
リン酸水素カルシウム 2 g

計 10 g
【0087】
製剤13
(表10)
固体分散体13 10 g
乳糖 130 g

計 140 g
【0088】
エタノールにFK506およびアミノアルキルメタアクリレートコポリマーを溶解し、リン酸水素カルシウムを加えよく混合する。これを一晩真空乾燥後、乳鉢で粉砕し150μmおよび106μmの篩を用いて分級して106 - 150μmのフラクションを固体分散体13とする。固体分散体13を乳糖と混合したものを製剤13とし、5号ゼラチンカプセルにこれを70mg充填して製剤Fとした。
【0089】
実施例14
固体分散体14
(表11)
FK506 2 g
アミノアルキルメタアクリレートコポリマー(オイドラギットRL) 4.6 g
アミノアルキルメタアクリレートコポリマー(オイドラギットRS) 1.4 g
リン酸水素カルシウム 2 g

計 10 g
【0090】
製剤14
(表12)
固体分散体14 10 g
乳糖 130 g

計 140 g
【0091】
実施例13と同様にして、106 - 150μmの固体分散体14と製剤14を調製し、製剤14を5号ゼラチンカプセルに70mg充填して製剤Gとした。
【0092】
実施例15
固体分散体15
(表13)
FK506 2 g
アミノアルキルメタアクリレートコポリマー(オイドラギットRL) 3 g
アミノアルキルメタアクリレートコポリマー(オイドラギットRS) 3 g
リン酸水素カルシウム 2 g

計 10 g
【0093】
製剤15
(表14)
固体分散体15 10 g
乳糖 130 g

計 140 g
【0094】

実施例13と同様にして、106 - 150μmの固体分散体15を調製した後、更に製剤15を調製し、5号ゼラチンカプセルにこれを70mg充填して製剤Hとした。
【0095】
実施例16
固体分散体16
(表15)
FK506 2 g
エチルセルロース 0.4 g
乳糖 6 g

計 8.4 g
【0096】
製剤16
(表16)
固体分散体16 8.4 g
乳糖 131.6 g

計 140 g
【0097】
エタノールにFK506およびエチルセルロースを溶解し、乳糖を加えよく混合する。これを一晩真空乾燥後、乳鉢で粉砕し150μmおよび106μmの篩を用いて分級して106 - 150μmのフラクションを固体分散体16とする。固体分散体16を乳糖と混合したものを製剤16とし、5号ゼラチンカプセルにこれを70mg充填して製剤Iとした。
【0098】
実施例17
固体分散体17
(表17)
FK506 2 g
エチルセルロース 1 g
乳糖 6 g

計 9 g
【0099】
製剤17
(表18)
固体分散体17 9 g
乳糖 131 g

計 140 g
【0100】
実施例16と同様にして、106 - 150μmの固体分散体17を調製した後、更に製剤17を調製し、5号ゼラチンカプセルにこれを70mg充填して製剤Jとした。
【0101】
実施例18
固体分散体18
(表19)
FK506 2 g
エチルセルロース 0.4 g
HPMC 2910 0.6 g
乳糖 6 g

計 9 g
【0102】
製剤18
(表20)
固体分散体18 9 g
乳糖 131 g

計 140 g
【0103】

実施例16と同様にして、106 - 150μmの固体分散体18を調製した後、更に製剤18を調製し、5号ゼラチンカプセルにこれを70mg充填して製剤Kとした。
【0104】
実施例19
固体分散体19
(表21)
FK506 2 g
エチルセルロース 0.6 g
HPMC 2910 0.6 g
乳糖 6 g

計 9.2 g
【0105】
製剤19
(表22)
固体分散体19 9.2 g
乳糖 130.8 g

計 140 g
【0106】
実施例16と同様にして、106 - 150μmの固体分散体19を調製した後、更に製剤19を調製し、5号ゼラチンカプセルにこれを70mg充填して製剤Lとした。
【0107】
実施例20
固体分散体20
(表23)
FK506 10 g
エチルセルロース 3 g
HPMC 2910 3 g
乳糖 50 g

計 66 g
【0108】

製剤20
(表24)
固体分散体20 66 g
乳糖 適量
ステアリン酸マグネシウム 7 g

計 700 g
【0109】
FK506をエタノールに溶解し、これにエチルセルロースを加え溶解する。この溶液にHPMC 2910および乳糖を加えよく混合し、一晩真空乾燥後、パワーミルおよびロールグラニュレーターを用いて整粒し、250μmの篩で分級し、篩を通過したものを固体分散体20とする。固体分散体20と乳糖およびステアリン酸マグネシウムを混合し製剤20を得る。製剤20の 350mgを1号ゼラチンカプセルに、また70mgを5号ゼラチンカプセルに充填し製剤MおよびNとした。
【0110】
実施例21
固体分散体21
(表25)
FK506 10 g
エチルセルロース 3 g
HPMC 2910 3 g
乳糖 20 g

計 36 g
【0111】
製剤21
(表26)
固体分散体21 36 g
乳糖 適量
ステアリン酸マグネシウム 7 g

計 700 g
【0112】
実施例20と同様にして整粒後、212μmの篩で分級し、篩を通過したものを固体分散体21とする。固体分散体21と乳糖およびステアリン酸マグネシウムを混合し製剤21を得る。製剤21の350mgを1号ゼラチンカプセルに、また70mgを5号ゼラチンカプセルに充填し製剤OおよびPとした。
【0113】
実施例22
固体分散体22
(表27)
FK506 1 g
ショ糖脂肪酸エステル(HLB=6) 1 g
(DK エステル F-50)

計 2 g
【0114】
製剤22
(表28)
固体分散体22 2 g
乳糖 68 g

計 70 g
【0115】
FK506をエタノール/アセトン=1/1混液に溶解し、この溶液を75℃に加温してショ糖脂肪酸エステルを加え溶解後、室温まで冷却し、一晩真空乾燥する。得られた固形物を乳鉢で粉砕後、150μmおよび106μmの篩を用いて分級し、106 - 150μmのフラクションを固体分散体22とする。固体分散体22と乳糖を混合し製剤22を得る。製剤22(70mg)を5号ゼラチンカプセルに充填し製剤Qとした。
【0116】
実施例23
固体分散体23
(表29)
FK506 1 g
ショ糖脂肪酸エステル(HLB=6) 0.75 g
(DK エステル F-50)
ショ糖脂肪酸エステル(HLB=2) 0.25 g
(DK エステル F-20W)

計 2 g
【0117】
製剤23
(表30)
固体分散体23 2 g
乳糖 68 g

計 70 g
【0118】
実施例22と同様にして、106 - 150μmの固体分散体23と製剤23を得た。製剤23 (70mg)を5号ゼラチンカプセルに充填し製剤Rとした。
【0119】
実施例24
固体分散体24
【0120】
(表31)
FK506 1 g
ショ糖脂肪酸エステル(HLB=1) 1 g
(DK エステル F-10)
乳糖 1 g

計 3 g
【0121】
製剤24
(表32)
固体分散体24 3 g
乳糖 67 g

計 70 g
【0122】
実施例22と同様にして、106 - 150μmの固体分散体24と製剤24を得た。製剤24の 70mgを5号ゼラチンカプセルに充填し製剤Sとした。
【0123】
実施例25
固体分散体25
(表33)
FK506 1 g
ショ糖脂肪酸エステル(HLB=1) 1 g
(DK エステル F-10)
乳糖 3 g

計 5 g
【0124】
製剤25
(表34)
固体分散体25 5 g
乳糖 65 g

計 70 g
【0125】
実施例22と同様にして、106 - 150μmの固体分散体25と製剤25を得た。製剤25の 70mgを5号ゼラチンカプセルに充填し製剤Tとした。
【0126】
実施例26
固体分散体26
(表35)
FK506 1 g
ショ糖脂肪酸エステル(HLB=1) 1 g
(DK エステル F-10)
乳糖 5 g

計 7 g
【0127】
製剤26
(表36)
固体分散体26 7 g
乳糖 63 g

計 70 g
【0128】
実施例22と同様にして、106 - 150μmの固体分散体26と製剤26を得た。製剤26の 70mgを5号ゼラチンカプセルに充填し製剤Uとした。
【0129】
実施例27
固体分散体27
(表37)
FK506 1 g
テトラグリセリントリ脂肪酸エステル 30 g
乳糖 15 g

計 46 g
【0130】
製剤27
【0131】
(表38)
固体分散体27 46 g
乳糖 24 g

計 70 g
【0132】
テトラグリセリントリ脂肪酸エステルを80℃に加温融解し、これにFK506を加えて攪拌し溶解する。さらに、これに乳糖を加えてよく混合後、トレーに移し自然冷却する。得られた固形物をコーヒーミルで粉砕後、150μmおよび106μmの篩を用いて分級し、106 - 150μmのフラクションを固体分散体27とする。固体分散体27と乳糖を混合し製剤27を得る。製剤27の 70mgを5号ゼラチンカプセルに充填し製剤Vとした。
【0133】
実施例28
固体分散体28
(表39)
FK506 1 g
テトラグリセリントリ脂肪酸エステル 30 g
ポリソルベート80 0.3 g

計 31.3 g
【0134】
製剤28
【0135】
(表40)
固体分散体28 31.3 g
乳糖 38.7 g

計 70 g
【0136】
実施例27と同様にして、106 - 150μmの固体分散体28と製剤28を得た。製剤28の 70mgを5号ゼラチンカプセルに充填し製剤Wとした。
【0137】
実施例29
固体分散体29
(表41)
FK506 1 g
テトラグリセリントリ脂肪酸エステル 1 g
乳糖 3 g

計 5 g
【0138】

製剤29
【0139】
(表42)
固体分散体29 5 g
乳糖 65 g

計 70 g
【0140】
テトラグリセリントリ脂肪酸エステルにエタノールを加え40℃に加温溶解し、これにFK506を加えて攪拌し溶解する。さらに、これに乳糖を加えてよく混合後、トレーに移し自然冷却する。得られた固形物をコーヒーミルで粉砕後一晩真空乾燥し、150μmおよび106μmの篩を用いて分級し、106 - 150μmのフラクションを固体分散体29とする。固体分散体29と乳糖を混合し製剤29を得る。製剤29の 70mgを5号ゼラチンカプセルに充填し製剤Xとした。
【0141】
実施例30
製剤30
(表43)
FK506微細粉末 0.5 g
乳糖 29.2 g
ステアリン酸マグネシウム 0.3 g

計 30 g
【0142】
FK506結晶をジェットミル粉砕し、これを乳糖およびステアリン酸マグネシウムとよく混合して製剤30とした。製剤30 60mgを5号ゼラチンカプセルに充填し製剤Zとした。製剤Zの調製に用いたFK506ジェットミル粉砕末の粒度分布幅は1 - 10μmであり、平均粒子径は約3μmであった。
【0143】
実施例31
溶出試験
試験試料:
・前記実施例で調製したFK506の製剤A、製剤C
・対照製剤(速溶性製剤)
国際出願WO 91/19495の実施例1及び2と同様にして調製(下記(a)〜(d)からなる固体分散体に(e)、(f)を混合してカプセル化)された下記処方からなる製剤(1mgカプセル)。
(a)タクロリムス(FK506) 1 mg
(b)ヒドロキシプロピルメチルセルロース 1 mg
(c)乳糖 2 mg
(d)クロスカルメロースナトリウム 1 mg
(e)乳糖 59.35mg
(f)ステアリン酸マグネシウム 0.65mg
【0144】
試験方法:
0.005%のヒドロキシプロピルセルロース水溶液をリン酸でpH4.5に調整した液(900ml)を試験液として使用する第13改正日本薬局方の溶出試験第2法(パドル法, 50rpm)に従って試験を行った。溶出データを次に示す。
【0145】
(表44)



時間 (hr) 製剤A 時間 製剤C
(%) (hr) (%)

0 0.0 0 0.0

0.5 17.4 1 12.1

1 35.6 2 30.9

2 57.6 4 55.9

3 71.9 6 71.3

4 80.9 8 81.6

6 89.7 10 87.0

9 95.2 12 90.4



時間(hr) 対照製剤(%)

0 0.0

0.17 30.1

0.5 68.4

1 92.8

2 100.1

【0146】
実施例32
実施例31と同様にして溶出試験を行い、Weibull関数における各種パラメーターおよびT63.2%の値を求めた。
【0147】
(表45)
溶出試験結果

製剤 Dmax (%) m n Ti T63.2% (hr)

カプセル7 101.7 2.69 1.18 0.0 2.3

製剤A 95.9 2.24 1.03 0.0 2.2

製剤C 92.5 6.14 1.24 0.0 4.3

製剤E 101.6 1.93 0.60 0.0 3.0

製剤F 95.6 2.51 1.00 0.0 2.5

製剤G 99.0 3.69 0.91 0.0 4.2

製剤H 88.8 6.34 0.88 0.0 8.2

製剤I 95.6 2.51 1.00 0.0 2.5

製剤J 99.0 3.69 0.91 0.0 4.2

製剤K 101.2 1.69 0.80 0.0 1.9

製剤L 91.4 2.48 0.75 0.0 3.3

製剤M 90.4 1.61 0.62 0.0 2.1

製剤O 83.9 2.5 0.67 0.0 3.9

製剤Q 104.7 1.89 0.93 0.0 2.0

製剤R 92.1 2.09 0.82 0.0 2.5

製剤S 86.0 3.73 0.89 0.0 4.4

製剤T 87.9 2.00 0.93 0.0 2.1

製剤U 93.4 1.03 0.86 0.0 1.0

製剤V 83.6 1.14 0.54 0.0 1.3

製剤W 87.1 1.30 0.69 0.0 1.5

製剤Z 85.7 1.98 0.75 0.0 2.5

対照製剤 100.9 0.41 1.10 0.0 0.4

【0148】
実施例33
経口吸収性試験
試験試料:
・前記実施例で調製したFK506の製剤B,製剤D
・対照製剤(実施例31と同様)
試験方法:
試験試料を、6例のカニクイザルに経口投与(FK506の投与量としては、1mg/サルとなる)し、投与後の血中FK506濃度を測定した。カニクイザルは、体重が6kg前後のものを用い、投与の17時間前に食物を撤去し、投与後12時間が経過するまでは絶食を施した。水の摂取は、試験開始前および薬剤投与後を通じて自由とした。薬剤の投与の際、同時に水20mLを与えた。薬剤投与後、所定時間毎、滅菌シリンジを用いて前腕部の静脈から1mLの血液を採取し、ヘパリンを含むプラスチック管に移し、薬物濃度測定を行うまでの間、約−80℃で貯蔵した。全血中薬物濃度の測定は、特開平1−92659号で公知のFK506特異的エンザイムイムノアッセイ(EIA法)により行った。その開示を引用して明細書記載の一部とする。
【0149】
(表46)

6例における測定データの平均値

時間 (hr) 製剤B 製剤D 対照製剤

0 0.00 0.00 0.00

0.5 0.44 0.28 0.91

1 2.59 1.03 3.02

2 4.26 2.27 7.13

4 3.89 3.14 3.27

6 3.48 4.42 3.85

8 3.47 4.12 2.63

10 3.70 4.06 2.48

12 3.73 4.10 2.51

14 3.85 4.13 2.27

16 3.60 4.75 2.20

18 2.96 3.95 1.76

24 2.21 2.57 1.32



【0150】
なお、最高血中濃度(Cmax)は、全血中薬物濃度の最大値とし、最高血中濃度到達時間(Tmax)は、全血中薬物濃度が最大値に到達するまでの時間とした。MRTは平均滞留時間を意味し、血中薬物濃度対時間曲線下面積(AUC)は台形法を用いて計算した。また、経口吸収性の変動幅(バラツキ)の指標として、C.V.値(標準偏差 / 平均値(%))を算出した。
【0151】
(表47)

製剤 Cmax (ng/mL) Tmax (hr) MRT (hr) AUC0-72hr (ng・hr/mL)
[C.V.] [C.V.] [C.V.] [C.V.]

製剤B 5.51±1.02 8.2±2.9 21.1±0.5 126.3±22.2
[45.4] [87.8] [5.5] [43.1]

製剤D 5.48±0.94 10.0±2.7 22.6±1.0 144.3±21.0
[41.8] [66.9] [11.2] [35.7]

対照製剤 8.41±1.46 3.3±0.8 17.6±0.9 91.1±20.4
[42.6] [62.2] [12.7] [54.9]

【0152】
実施例34
実施例33と同様にして、経口吸収性試験を行った。
【0153】
(表48)
経口吸収性試験

製剤 Cmax (ng/mL) Tmax (hr) MRT (hr) AUC0-72hr (ng・hr/mL)
[C.V.] [C.V.] [C.V.] [C.V.]

製剤E 9.36±1.08 6.3±1.7 20.0±0.4 186.6±18.5
[28.4] [67.5] [5.1] [24.3]

製剤L 6.16±0.57 4.3±1.1 19.3±0.5 135.5±17.7
[22.6] [61.4] [6.9] [31.9]

製剤Q 4.70±0.39 5.0±1.7 21.4±1.6 122.6±10.2
[20.2] [83.0] [7.0] [20.3]

製剤Z 5.72±0.92 8.0±1.2 20.9±1.2 133.2±16.1
[39.3] [35.4] [13.7] [29.6]

対照製剤 12.27±2.60 1.4±0.3 14.3±1.0 80.8±15.1
[51.8] [46.5] [17.7] [45.8]

【0154】
上記の結果から、上記各製剤は、経口投与後のマクロライド系化合物のCmaxがマクロライド系化合物の速溶性製剤に比べ低く、およびTmaxやMRTが十分に延長されていることが判る。また、速溶性製剤に比べ、上記各製剤のAUCが同等以上であること、あるいは、速溶性製剤に比べて、Cmaxおよび/またはAUCの個体間における変動幅が小さいことを示している。
【0155】
本願発明において、「マクロライド系化合物の最高血中濃度または血中薬物濃度対時間曲線下面積の個体間における変動幅が速溶性製剤に比べて小さい」ことは、マクロライド系化合物の血中への吸収性変動幅の指標、つまり最高血中濃度および血中薬物濃度対時間曲線下面積の標準偏差/平均値(C.V.値(%))、を用いて判断することが出来る。そして、「変動幅が小さい」とは、そのC.V.値が小さいことを、より具体的には先に記載の速溶性製剤のC.V.値に比較して小さいことを意味する。
尚、本願中にて引用する特許、特許出願および文献の開示を引用して明細書記載の一部とする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
pH4.5に調製した0.005%のヒドロキシプロピルセルロース水溶液を試験液として使用する第13改正日本薬局方の溶出試験第2法(パドル法、50rpm)において、マクロライド系化合物の最大溶出量の63.2%が製剤から溶出する時間(T63.2%)が0.7〜15時間であることを特徴とするマクロライド系化合物の徐放性製剤であって、当該マクロライド系化合物が下記一般式(I)
【化1】


(式中、R1 およびR2 、R3およびR4 、R5 およびR6 の隣接するそれぞれの対は、各々独立して、
a) 2つの隣接する水素原子を表すか、もしくはR2 はアルキル基であってもよく、または
b) 結合しているそれぞれの炭素原子どうしの間でもうひとつの結合を形成してもよく;
7 は水素原子、ヒドロキシ基、保護されたヒドロキシ基、もしくはアルキルオキシ基を表わすか、またはR1 と共になってオキソ基を表わしてもよく;
8 およびR9 は独立して、水素原子、ヒドロキシ基を;
10は水素原子、アルキル基、1以上のヒドロキシ基によって置換されたアルキル基、アルケニル基、1以上のヒドロキシ基によって置換されたアルケニル基、またはオキソ基によって置換されたアルキル基を;
Xはオキソ基、(水素原子、ヒドロキシ基)、(水素原子、水素原子)、または式−CH2O−で表わされる基を;
Yはオキソ基、(水素原子、ヒドロキシ基)、(水素原子、水素原子)、または式N−NR1112もしくはN−OR13で表わされる基を;
11およびR12は独立して水素原子、アルキル基、アリール基またはトシル基を;
13、R14、R15、R16、R17、R18、R19、R22およびR23は独立して水素原子またはアルキル基を;
24は、所望により置換されていてもよい、1以上の複素原子を含み得る環;
nは1または2を表わす。
上記の意味に加え、さらにY、R10およびR23はそれらが結合している炭素原子と一緒になって飽和もしくは不飽和の5員もしくは6員環からなる窒素原子、硫黄原子および/もしくは酸素原子を含有する複素環基を表わしていてもよいが、その複素環基は、アルキル基、ヒドロキシ基、アルキルオキシ基、ベンジル基、式−CH2Se(C65)で表わされる基、および1以上のヒドロキシ基によって置換されたアルキル基から選ばれる1以上の基によって置換されていてもよい)
で表わされる徐放性製剤。
【請求項2】
トリシクロ化合物(I)またはその医薬として許容される塩が、(1)メタクリル酸コポリマーからなる固体基剤中に非晶質状態で存在し、該トリシクロ化合物(I)と該メタクリル酸コポリマーとの重量比が1:0.01〜10であるか、(2)ショ糖脂肪酸エステルからなる固体基剤中に非晶質状態で存在し、該トリシクロ化合物(I)と該ショ糖脂肪酸エステルとの重量比が1:0.2〜20であるか、(3)ヒドロキシプロピルメチルセルロースからなる固体基剤中に非晶質状態で存在し、該トリシクロ化合物(I)とヒドロキシプロピルメチルセルロースとの重量比が1:0.2〜0.4であるか、または、(4)粒子径分布幅が0.1〜50μmおよび/または平均粒子径が0.2〜20μmである、該トリシクロ化合物(I)またはその医薬として許容される塩の微細粉末を成分として含有する、
請求項1記載の徐放性製剤。
【請求項3】
トリシクロ化合物(I)またはその医薬として許容される塩が、メタクリル酸コポリマーからなる固体基剤中に非晶質状態で存在し、該トリシクロ化合物(I)と該メタクリル酸コポリマーとの重量比が1:0.01〜10である請求項2記載の徐放性製剤。
【請求項4】
トリシクロ化合物(I)またはその医薬として許容される塩が、ショ糖脂肪酸エステルからなる固体基剤中に非晶質状態で存在し、該トリシクロ化合物(I)と該ショ糖脂肪酸エステルとの重量比が1:0.2〜20である請求項2記載の徐放性製剤。
【請求項5】
トリシクロ化合物(I)またはその医薬として許容される塩が、ヒドロキシプロピルメチルセルロースからなる固体基剤中に非晶質状態で存在し、該トリシクロ化合物(I)とヒドロキシプロピルメチルセルロースとの重量比が1:0.2〜0.4である請求項2記載の徐放性製剤。
【請求項6】
固体基剤に賦形剤が混合されている請求項2乃至5記載の徐放性製剤。
【請求項7】
賦形剤が乳糖またはリン酸水素カルシウムである請求項6記載の徐放性製剤。
【請求項8】
粒子径が250μm 以下である請求項2乃至7記載の徐放性製剤。
【請求項9】
粒子径が250μm 以下である請求項2乃至7記載の徐放性製剤。
【請求項10】
崩壊剤を含まない請求項2乃至9記載の徐放性製剤。
【請求項11】
トリシクロ化合物(I)がタクロリムスまたはその水和物である請求項2乃至10記載の徐放性製剤。
【請求項12】
乳糖および/またはステアリン酸マグネシウムを含有する請求項2乃至11記載の徐放性製剤。
【請求項13】
粉剤、細粒剤、顆粒、錠剤、カプセル剤の形態である請求項12記載の徐放性製剤。
【請求項14】
粒子径分布幅が0.1〜50μmおよび/または平均粒子径が0.2〜20μmである、トリシクロ化合物(I)またはその医薬として許容される塩の微細粉末からなる請求項1記載の徐放性製剤。
【請求項15】
粒子径分布幅が1〜10μmおよび平均粒子径が3μmである、トリシクロ化合物(I)またはその医薬として許容される塩の微細粉末からなる請求項14記載の徐放性製剤。
【請求項16】
トリシクロ化合物(I)がタクロリムスまたはその水和物である請求項14または15記載の徐放性製剤。
【請求項17】
乳糖および/またはステアリン酸マグネシウムを含有する請求項14乃至16記載の徐放性製剤。

【公開番号】特開2009−7369(P2009−7369A)
【公開日】平成21年1月15日(2009.1.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−186587(P2008−186587)
【出願日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【分割の表示】特願2004−237947(P2004−237947)の分割
【原出願日】平成11年3月25日(1999.3.25)
【出願人】(000006677)アステラス製薬株式会社 (274)
【Fターム(参考)】