従来の低免疫原性の抗原に特異的なモノクローナル抗体の開発、及び使用のための方法、キット、及び組成物
本発明は、従来の低免疫原性の抗原に特異的なモノクローナル抗体の開発、及び使用に関する。本発明は、対象の抗原を担体分子に化学的に結合させ、免疫系を該結合された抗原での免疫感作へ反応可能にすることによる、モノクローナル抗体を製造する方法を提供する。また、該発明は、結合された抗原の具体的な組成物を、これらの結合された抗原に特異的なモノクローナル抗体の組成物と同様に提供する。また、本発明は、該モノクローナル抗体を用いて疾患状態を検出する際に使用するキットを提供する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明の方法、及び組成物は、医学生化学の分野であり、一般的に、従来の低免疫原性の抗原に特異的なモノクローナル抗体の開発、及び使用に関する。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
免疫系には、2種の部門、獲得、及び自然免疫反応がある。免疫系のこれらの2部門は、協力し、外来の侵入物と闘う。獲得免疫反応を生じさせることができる任意の物質を抗体という。外来の分子は抗原として作用し、免疫反応を刺激し、抗体の製造をもたらす。しかし、分子によっては、免疫反応を刺激しないものもある。これまで、これは、フロイント完全アジュバントなどのアジュバントを用いることにより克服し、自然免疫系を活性化した。
【0003】
しかしながら、アジュバントの使用にもかかわらず、依然として、多くの分子は、抗原特異的抗体の製造をもたらす免疫反応を生じさせない。特に、自然源由来の多くの抗原は、十分で、かつ分子特異的な免疫反応を生じさせないことが多い。多くの場合、化学合成、及び組み換え技術を用いて、抗原を製造する。しかしなから、これらの合成的に得られた抗原は、本来の分子と同様の三次構造をもたないことが多い。抗体が、該合成された抗原に対して作成されると、該抗体は、該本来の分子を認識しない。
【0004】
本発明は、従来適切で、かつ特異的な免疫反応を生じさせることができないでいた抗原に、抗原特異的抗体の製造を可能にする、新規の方法、及び組成物を提供する。これらの抗体は、疾患の治療(例えば、癌、ウイルス感染などがあるが、それに限定しない)、免疫診断、免疫化学、免疫組織学、免疫細胞学、免疫アフィニティークロマトグラフィー、及びゲノム、及びプロテオミクス研究などの多くの異なった用途に有用であるが、それに限定しない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、従来の低免疫原性の抗原に特異的なモノクローナル抗体の開発、及び使用のための方法、キット、及び組成物を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(発明の要約)
本発明は、低免疫原性の抗原に特異的なモノクローナル抗体を製造する方法であって、該抗原を担体分子に結合させること、動物に該結合された抗原を免疫感作させること、該動物からB細胞を採取すること、該採取されたB細胞からハイブリドーマを作製すること、及び該ハイブリドーマを本来の抗原でスクリーニングすること、を含む前記方法に関する。一実施態様において、該担体分子はHSP70である。別の実施態様において、該動物は正常な免疫系を有する。また別の実施態様において、該動物は哺乳動物である。さらなる実施態様において、B細胞を、腹水、脾臓、リンパ節、又は血液から、個別か、或いは組合せて採取する。またさらなる実施態様において、該ハイブリドーマをマウス骨髄腫細胞、ヒト不死化細胞、又はラット不死化細胞などの不死化細胞を用いて作製するが、それらに限定しない。他の実施態様において、該特異性のスクリーニングを、ラジオイムノアッセイ、酵素結合免疫吸着測定法、"サンドイッチ"免疫測定法、免疫放射定量測定法、ゲル拡散沈降反応、免疫拡散法、インサイチュー免疫測定法、ウエスタンブロット、沈降反応、凝集法、補体結合反応法、免疫蛍光測定法、プロテインA法、ウイルス可視化反応、生物活性調整測定法、及び免疫電気泳動法からなる群から選択される方法で行う。
【0007】
また、本発明は、低免疫原性の抗原に特異的なモノクローナル抗体を含む組成物であって、該モノクローナル抗体を、該抗原を担体分子と化学的に結合させること、動物に、該結合された抗原を免疫感作させること、該動物からB細胞を採取すること、該採取されたB細胞からハイブリドーマを作製すること、及び該ハイブリドーマを本来の抗原への特異性でスクリーニングすることにより製造する、前記組成物に関する。具体的な実施態様において、該担体分子はHSP70である。別の実施態様において、該動物は正常な免疫系を有する。また別の実施態様において、該動物は哺乳動物である。さらなる実施態様において、B細胞を、腹水、脾臓、リンパ節、又は血液から、個別か、或いは組合せて採取する。またさらなる実施態様において、該ハイブリドーマを不死化細胞は、マウス骨髄腫細胞、ヒト不死化細胞、又はラット不死化細胞などの不死化細胞を用いて作製するが、それらに限定しない。他の実施態様において、該特異性のスクリーニングを、ラジオイムノアッセイ、酵素結合免疫吸着測定法、"サンドイッチ"免疫測定法、免疫放射定量測定法、ゲル拡散沈降反応、免疫拡散法、インサイチュー免疫測定法、ウエスタンブロット、沈降反応、凝集法、補体結合反応法、免疫蛍光測定法、プロテインA測定法、ウイルス可視化反応、生物活性調整測定法、及び免疫電気泳動法からなる群から選択される方法で行う。
【0008】
さらに、本発明は、E7癌タンパク質に特異的なモノクローナル抗体を製造する方法であって、該E7癌タンパク質を担体分子に化学的に結合させること、動物に、該結合された抗原を免疫感作させること、該動物からB細胞を採取すること、該採取されたB細胞からハイブリドーマを作製すること、及び該ハイブリドーマを本来のE7癌タンパク質への特異性でスクリーニングすることを含む、前記方法に関する。別の実施態様において、該化学結合は、E7癌タンパク質をコードするオリゴヌクレオチド配列、及びHSP70をコードするオリゴヌクレオチド配列をもつプラスミドを作製すること;及び宿主細胞を、該宿主細胞が該オリゴヌクレオチド配列を該結合されたE7癌タンパク質へ転写する、該プラスミドでトランスフェクトすることを含む。また別の実施態様において、該E7癌タンパク質をコードするオリゴヌクレオチド配列は配列番号: 1である。さらなる実施態様において、該E7癌タンパク質をコードするオリゴヌクレオチド配列は配列番号: 3である。またさらなる実施態様において、該HSP70をコードするヌクレオチド配列は配列番号: 5である。他の実施態様において、該宿主細胞は、大腸菌である。実施態様において、該担体分子はHSP70である。別の実施態様において、該動物は正常な免疫系を有する。また別の実施態様において、該動物は哺乳動物である。さらなる実施態様において、B細胞を腹水、脾臓、リンパ節、又は血液から、個別か、或いは組合せて採取する。またさらなる実施態様において、該ハイブリドーマをマウス骨髄腫細胞、ヒト不死化細胞、又はラット不死化細胞などの不死化細胞を用いて作製するが、それらに限定しない。具体的な実施態様において、該マウス骨髄種細胞はSp2/0-Ag14骨髄腫細胞である。他の実施態様において、該特異性のスクリーニングを、ラジオイムノアッセイ、酵素結合免疫吸着測定法、"サンドイッチ"免疫測定法、免疫放射定量測定法、ゲル拡散沈降反応、免疫拡散法、インサイチュー免疫測定法、ウエスタンブロット、沈降反応、凝集法、補体結合反応法、免疫蛍光測定法、プロテインA測定法、ウイルス可視化反応、生物活性調整測定法、及び免疫電気泳動法からなる群から選択される方法で行う。
【0009】
さらに、本発明は、E7癌タンパク質に特異的なモノクローナル抗体を含む組成物であって、該モノクローナル抗体を、該E7癌タンパク質を担体分子と化学的に結合させること、動物に、該結合された抗原を免疫感作させること、該動物からB細胞を採取すること、該採取されたB細胞からハイブリドーマを作製すること、及び該ハイブリドーマを本来の抗原への特異性でスクリーニングすることを含む方法で製造する、前記組成物を提供する。別の実施態様において、該化学結合が、E7癌タンパク質をコードするオリゴヌクレオチド配列、及びHSP70をコードするオリゴヌクレオチド配列をもつプラスミドを作製すること;及び宿主細胞を、該宿主細胞が該オリゴヌクレオチド配列を該結合されたE7癌タンパク質へ転写する、該プラスミドでトランスフェクトすることを含む。さらに別の実施態様において、該E7癌タンパク質をコードするオリゴヌクレオチド配列は配列番号: 1である。さらなる実施態様において、該E7癌タンパク質をコードするオリゴヌクレオチド配列は配列番号: 3である。またさらなる実施態様において、該E7 HSP70をコードするオリゴヌクレオチド配列は配列番号: 5である。他の実施態様において、該宿主細胞は、大腸菌である。実施態様において、該担体分子はHSP70である。別の実施態様において、該動物は正常な免疫系を有する。また別の実施態様において、該動物は哺乳動物である。さらなる実施態様において、B細胞を腹水、脾臓、リンパ節、又は血液から、個別か、或いは組合せて採取する。またさらなる実施態様において、該ハイブリドーマをマウス骨髄腫細胞、ヒト不死化細胞、ラット不死化細胞など不死化細胞を用いて作製するが、それらに限定しない。具体的な実施態様において、該マウス骨髄種細胞はSp2/0-Ag14骨髄腫細胞である。他の実施態様において、該特異性のスクリーニングを、ラジオイムノアッセイ、酵素結合免疫吸着測定法、"サンドイッチ"免疫測定法、免疫放射定量測定法、ゲル拡散沈降反応、免疫拡散法、インサイチュー免疫測定法、ウエスタンブロット、沈降反応、凝集法、補体結合反応法、免疫蛍光測定法、プロテインA測定法、ウイルス可視化反応、生物活性調整測定法、及び免疫電気泳動法からなる群から選択される方法で行う。
【0010】
また、本発明は、子宮頸部上皮内腫瘍の検出のために、E7癌タンパク質に特異的なモノクローナル抗体を用いる方法であって、子宮頸部上皮の試料を得ること、及び該試料をE7癌タンパク質の存在でスクリーニングすることを含む、前記方法を提供する。具体的な実施態様において、該E7癌タンパク質の存在のスクリーニング方法を、ラジオイムノアッセイ、酵素結合免疫吸着測定法、"サンドイッチ"免疫測定法、免疫放射定量測定法、ゲル拡散沈降反応、免疫拡散法、インサイチュー免疫測定法、ウエスタンブロット、沈降反応、凝集法、補体結合反応法、免疫蛍光測定法、プロテインA測定法、ウイルス可視化反応、生物活性調整測定法、及び免疫電気泳動法からなる群から選択する。別の実施態様において、E7癌タンパク質の存在は0.05 ng/ml以上である。また別の実施態様において、該モノクローナル抗体は、少なくとも2種の免疫グロブリンアイソタイプを含む。さらなる実施態様において、1種の免疫グロブリンアイソタイプはIgG2aであり、もう1種はIgG2bである。また、別の実施態様において、1種の免疫グロブリンアイソタイプは、第二の免疫グロブリンアイソタイプとは異なる抗原決定基への特異性を有する。
【0011】
さらに、本発明は、個体が、子宮頸部上皮内腫瘍を発症するリスクを判断するキットであって、少なくとも1種の、E7癌タンパク質を特異的に検出する試薬、及び該個体が、子宮頸部上皮内腫瘍を発症するリスクが高いことを判断する取扱説明書を含む、前記キットを提供する。実施態様において、該試薬はE7癌タンパク質に特異的なモノクローナル抗体である。
【0012】
同様に、本発明は、プリオンタンパク質に特異的なモノクローナル抗体を製造する方法であって、 該プリオンタンパク質を担体分子に化学的に結合させること、動物に、該結合された抗原を免疫感作させること、該動物からB細胞を採取すること、該採取されたB細胞からハイブリドーマを作製すること、及び該ハイブリドーマを本来のプリオンタンパク質への特異性でスクリーニングすることを含む、前記方法を提供する。具体的な実施態様において、該結合を、グルタルアルデヒドを用いて化学的に行う。他の実施態様において、該担体分子はHSP70である。別の実施態様において、該動物はマウスである。さらなる実施態様において、該スクリーニングを、酵素結合免疫吸着測定法を用いて行う。
【0013】
さらに、本発明は、個体が、海綿状脳症を発症するリスクを判断するキットであって、少なくとも1種の、プリオンタンパク質を特異的に検出する試薬、及び該個体が、海綿状脳症を発症するリスクが高いことを判断する取扱説明書を含む、前記キットを提供する。
【0014】
また、本発明は、ヒアルロン酸に特異的なモノクローナル抗体を製造する方法であって、該ヒアルロン酸を担体分子に化学的に結合させること、動物に、該結合された抗原を免疫感作させること、該動物からB細胞を採取すること、該採取されたB細胞からハイブリドーマを作製すること、及び該ハイブリドーマを本来のヒアルロン酸への特異性でスクリーニングすることを含む、前記方法を提供する。
【0015】
さらに、本発明は、マトリックスメタロプロテアーゼ3に特異的なモノクローナル抗体を製造する方法であって、マトリックスメタロプロテアーゼ3を担体分子に化学的に結合させること、動物に、該結合された抗原を免疫感作させること、該動物からB細胞を採取すること、該採取されたB細胞からハイブリドーマを作製すること、及び該ハイブリドーマを本来のマトリックスメタロプロテアーゼ3への特異性でスクリーニングすることを含む、前記方法を提供する。具体的な実施態様において、該結合を、グルタルアルデヒドを用いて化学的に行う。別の実施態様において、該担体分子はHSP70である。また別の実施態様において、該動物はマウスである。また別の実施態様において、該スクリーニングを、酵素結合免疫吸着測定法を用いて行う。
【発明の詳細な説明】
【0016】
(定義)
本発明の理解を容易にするために、多くの用語を下記に定義する。本明細書中で使われる"化学的に結合された"、又は"化学的に結合させること"という用語は、該抗原を該担体分子に化学的に連結させることを言う。この連結は、該抗原、及び該担体分子の両方のアミノ酸配列、又はその一部を含む、ハイブリッドタンパク質を製造し得る組み換え技術を用いて、遺伝子レベルで生じ得る。このハイブリッドタンパク質は、該抗原、及び該担体分子の両方をコードするオリゴヌクレオチド配列、又はその一部により製造される。また、この結合は、他の化学反応を用いて、該抗原と該担体分子の間に作られる共有結合を含む。該化学反応の例を挙げると、グルタルアルデヒド反応があるが、それに限定しない。また、共有結合は、抗原を担体分子に橋渡しする第三の分子を用いて作られる。これらの架橋剤は、該抗原、及び該担体分子の、例えば、第一級アミン、スルフヒドリル、カルボニル、炭水化物、又はカルボン酸などの官能基と反応できるが、それらに限定しない。また、化学結合は、該抗体と該担体分子間の非共有結合を含む。
【0017】
本明細書中で使われる"担体分子"という用語は、該対象の抗原に化学的に結合し、その本来の抗原に特異的な抗体をもたらす免疫反応を可能にする、任意の分子のことを言う。
本明細書中で使われる"本来の"、"天然の"、"本来の抗原"、又は"天然の抗原"、という用語は、天然に存在する抗原のことを言う。本発明に関して、該"本来の抗原"は、"低免疫原性"である。"低免疫原性"とは、天然の分子が、高親和性の抗体の製造をもたらす、強い免疫反応を生じさせることができないことを言う。"抗原"、"対象の抗原"という用語、又は具体的な分子 −例えば、E7癌タンパク質、プリオンタンパク質、マトリックスメタロプロテアーゼ3、ヒアルロン酸などがあるが、それらに限定しない− は、その分子全体、又はその本来の抗原に特異的な抗原の特殊性を保持する、その任意の部分を含む。
【0018】
本明細書中で使われる"正常な免疫系"という用語は、外来の抗原に免疫反応を起こすことができる、機能的な免疫系をもつ動物のことを言う。該免疫反応は、抗体を分泌するB細胞を作成する能力を含む。
本明細書中で使われる"アミノ酸配列"という用語は、天然のタンパク質分子のアミノ酸配列のことを言い、"アミノ酸配列"、及び"ポリペプチド"、"タンパク質"などの同類語は、該列挙されたタンパク質分子に関連した、完全な本来のアミノ酸配列に限定するものではない。
【0019】
本明細書中で使われる"コードする核酸"、"コードするDNA配列"、"コードするDNA "という用語は、デオキシリボ核酸の一本鎖に沿ったデオキシリボヌクレオチドの順序、または配列のことを言う。これらのデオキシリボヌクレオチドの順序は、ポリペプチド(タンパク質)鎖に沿ったアミノ酸の順序を決定する。従って、該DNA配列は、該アミノ酸配列をコードする。
【0020】
DNA分子は、"5'末端 "、及び"3'末端 "があると言う。それは、1種のモノヌクレオチドペントース環の5'リン酸が、隣接するペントース環の3'酸素に、ホスホジエステル結合で一方向に結合される様式で、モノヌクレオチドを反応させ、オリゴヌクレオチド、又はポリヌクレオチドを作るからである。従って、オリゴヌクレオチド、又はポリヌクレオチドの末端は、その5'リン酸がモノヌクレオチドペントース環の3'酸素に結合していなければ、"5'末端 "、その3'酸素が、それに続くモノヌクレオチドペントース環の5'リン酸に結合していなければ、"3'末端 "と言う。本明細書中で使われる核酸配列は、大きなオリゴヌクレオチド、又はポリヌクレオチドに対して内部にあっても、5'、及び3'末端があると言うことができる。直鎖、又は環状DNA分子のいずれにおいても、個々の因子は、その"下流"、又は3'の因子の"上流"、又は5'であると言う。この専門用語は、転写が該DNAに沿って、5'から3'の方式で進行する事実を反映する。一般に、結合された遺伝子の転写を導くプロモーター、及びエンハンサー因子は、5'、又はコード領域の上流に位置する。しかしながら、エンハンサー因子は、該プロモーター因子、及び該コード領域の3'に位置しても、その効果を発揮することができる。転写終結、及びポリアデニル化シグナルは、該コード領域の3'、または下流に位置する。
【0021】
本明細書中で使われる"コードするヌクレオチド配列を有するオリゴヌクレオチド"、及び"コードするヌクレオチド配列を有するポリヌクレオチド"という用語は、遺伝子の該コード領域を含む核酸配列、言い換えれば、遺伝子産物をコードする核酸配列を意味する。該コード領域は、cDNA、ゲノムDNA、又はRNAの形態で存在し得る。DNAの形態で存在するときは、オリゴヌクレオチド、又はポリヌクレオチドは、一本鎖(すなわち、センス鎖)、又は二本鎖であり得る。適切な転写の開始、及び/又は一次RNA 転写物の正確なプロセシングを可能にする必要がある場合は、エンハンサー/プロモーター、スプライス部位、ポリアデニル化シグナルなどの適切なコントロール因子を、該遺伝子の該コード領域の近くに位置させることができる。その代わりとして、本発明の発現ベクターで使用されるコード領域は、内在性のエンハンサー/プロモーター、スプライス部位、介在配列、ポリアデニル化シグナルなど、又は内在性、及び外来性の両方のコントロール因子の組合せを含むことができる。
【0022】
本明細書中で使われる"調節因子"という用語は、核酸配列の発現のある面をコントロールする遺伝的因子のことをいう。例えば、プロモーターは、操作上結合されたコード領域の転写開始を容易にする調節因子である。他の調節因子は、スプライスシグナル、ポリアデニル化シグナル、終結シグナルなどを含む。
【0023】
"増幅"は、鋳型特異性が関与する、特殊な核酸複製の場合である。それは、非特異的鋳型の複製(すなわち、鋳型依存性であるが、特定な鋳型に依存しない複製)と対比されるべきである。ここで、鋳型特異性は、複製忠実度(すなわち、正確なポリヌクレオチド配列の複製)、及び(リボ、又はデオキシリボ)ヌクレオチド特異性と区別される。鋳型特異性は、"標的"特異性の用語で記載されることが多い。標的配列は、それらを他の核酸配列から分類されるべく探すという意味から"標的"である。増幅技術は、主にこの分類のために考案されてきている。
【0024】
鋳型特異性は、多くの増幅技術において、酵素の選択により達成される。増幅酵素は、それらが用いられる条件下で、異種の核酸混合物の中で特定の核酸配列だけをプロセスし得る酵素である。例えば、Qレプリカーゼの場合、MDV-1 RNAが該レプリカーゼに特異的な鋳型である[D.L. Kacianらの論文、Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 69:3038 (1972)]。他の核酸を、この増幅酵素によって複製することはできない。同様に、T7 RNAポリメラーゼの場合、この増幅酵素は、それ自身のプロモーターにストリンジェントな特異性を有する [Chamberlinらの論文、Nature, 228:227 (1970)]。T4 DNAリガーゼの場合、該酵素は、結合部に該オリゴヌクレオチド、又はポリヌクレオチド基質と鋳型間に不整合がある、2種のオリゴヌクレオチド、又はポリヌクレオチドを結合しない [D.Y. Wu、及びR. B. Wallaceの論文, Genomics, 4:560 (1989)]。最後に、Taq、及びPfuポリメラーゼは、その高温で機能する能力に基づいて、境界を示される、すなわち、プライマーにより定義される配列に高い特異性を示すことが見い出される;該高温は、標的配列とのプライマーハイブリダイゼーションに有利に働くが、非標的配列とのハイブリダイゼーションには有利に働かない熱力学的条件をもたらす[H.A. Erlich 編『PCR 技術』, Stockton Press (1989)]。
【0025】
本明細書中で使われる"増幅可能な核酸"という用語は、任意の増幅方法で、増幅できる核酸に関して用いられる。通常、"増幅可能な核酸"は、通常、"試料鋳型"を含むと考えられる。
本明細書中で使われる"試料鋳型"という用語は、(下記に定義される)"標的"の存在を分析される試料由来の核酸のことを言う。それに対して、"バックグラウンド鋳型" は、試料中に存在するかどうかわからない試料鋳型以外の核酸に関して用いられる。バックグラウンド鋳型は、ほとんどの場合、故意である。それは、持ち越しの結果であり得るか、或いは、該試料から精製されてなくなるべき混入核酸の存在に起因し得る。例えば、検出されるべき細胞体以外の細胞体由来の核酸は、検査試料中にバックグラウンドとして存在し得る。
【0026】
本明細書中で使われる"プライマー"という用語は、精製された制限酵素消化物として自然に生じるか、人工的に合成されるかに関わらず、核酸鎖に相補的なプライマー伸長産物の合成を誘導する条件下に置くと(すなわち、ヌクレオチド、及びDNAポリメラーゼなどの誘導剤の存在下、かつ適切な温度、及びpHで)、合成の開始点として作用できるオリゴヌクレオチドのことを言う。増幅の最大効率のために、該プライマーは、好ましくは一本鎖であるが、その代わりとして二本鎖であり得る。二本鎖の場合は、伸長産物の作成に用いる前に、該プライマーを最初に処理し、その鎖を分離する。好ましくは、該プライマーはオリゴデオキシリボヌクレオチドである。該プライマーは、誘導剤の存在下で伸長産物の合成を準備するのに、十分長くなければならない。該プライマーの厳密な長さは、温度、プライマーの起源、及び方法の使用を含む、多くの因子に依存し得る。
【0027】
本明細書中で使われる"プローブ"という用語は、精製された制限酵素消化物として自然に生じるか、人工的に、組み換え、又はPCR増幅により合成されるかに関わらず、対象の別のオリゴヌクレオチドにハイブリダイスすることができる、オリゴヌクレオチド(すなわち、ヌクレオチドの配列)のことを言う。プローブは、一本鎖、又は二本鎖であり得る。プローブは、特定の遺伝子配列の検出、同定、及び単離に有用である。本発明で使われる任意のプローブを、任意の"レポーター分子"で標識し、任意の検出系で検出できると考えられる。該検出系の例を挙げると、酵素(例えば、ELISA、同様に酵素を基にした組織化学法)、蛍光、放射性、及び発光性の系があるが、それらに限定しない。本発明は、任意の特定の検出系、又は標識に限定することを意図しない。
【0028】
本明細書中で使われる"標的"という用語は、ポリメラーゼ連鎖反応に関して使われるときは、ポリメラーゼ連鎖反応に使われるプライマーにより境界を示される、核酸領域のことを言う。従って、該"標的"を他の核酸配列から分類されるべく探す。"断片"を、標的配列内の核酸の領域として定義する。
【0029】
本明細書中で使われる"ポリメラーゼ連鎖反応"("PCR")という用語は、引用により本明細書に取り込まれている、K.B. Mullisの方法、米国特許第4,683,195号、第4,683,202号、及び第4,965,188号のことを言う。それらには、クローニング、又は精製せずに、ゲノムDNA の混合物における標的配列の断片の濃度を高める方法が記載されている。この該標的配列を増幅するプロセスは、超過剰の2種のオリゴヌクレオチドプライマーを、該所望される標的配列を含むDNA 混合物に導入すること、次いで、DNAポリメラーゼの存在下における一連の厳密な温度サイクリングからなる。該2種のプライマーは、該二本鎖標的配列の各々の鎖に相補的である。増幅をもたらすために、該混合物を変性し、その後、該プライマーを該標的分子内の相補的配列にアニーリングした。アニーリングの後に、該プライマーをポリメラーゼで伸長させ、新しい相補鎖の対ができる。変性、プライマーのアニーリング、及びポリメラーゼ伸長は、多数回繰り返し(すなわち、変性、アニーリング、及び伸長は1"サイクル"をなす;多数の"サイクル" であり得る)、高濃度の、該所望される標的配列の増幅された断片を得ることができる。該所望される標的配列の増幅される断片の長さは、相互のプライマーの相対位置により決定され、従って、この長さはコントロール可能なパラメータである。該プロセスの繰り返す側面に基づいて、該方法は"ポリメラーゼ連鎖反応"(以下、"PCR")と言われる。標的配列の所望される増幅された断片が、(濃度に関して)該混合物の主要な配列になるので、それらは、"PCR増幅"されたといわれている。
【0030】
PCRを用いて、ゲノムDNAの特定の標的配列の単コピーを、様々な異なる方法(例えば、標識されたプローブでのハイブリダイゼーション;ビオチン化プライマーの取り込みの後、アビジン‐酵素結合検出;32P標識されたdCTP、又はdATPなどのデオキシヌクレオチド三リン酸塩の、該増幅された断片への取り込み)で、検出できるレベルまで増幅することが可能である。ゲノムDNA に加えて、任意のオリゴヌクレオチド、又はポリヌクレオチド配列を、適切なプライマー分子の組で増幅できる。具体的に、PCR プロセス自身により作製された該増幅された断片は、それに続くPCR増幅にとって十分な鋳型である。
【0031】
本明細書中で使われる、"PCR産物"、"PCR断片"、及び"増幅産物"という用語は、変性、アニーリング、及び伸長のPCR工程を2サイクル以上完了後、得られた化合物の混合物のことを言う。これらの用語は、1種以上の標的配列の1種以上の断片の増幅がある場合を含む。
本明細書中で使われる"増幅剤"という用語は、プライマー、核酸鋳型、及び増幅酵素以外の増幅に必要な試薬(デオキシリボヌクレオチド三リン酸塩、緩衝剤など)のことを言う。一般的に、増幅剤を他の反応成分とともに、反応容器(試験管、マイクロウェルなど)中に入れ、封入する。
本明細書中で使われる"制限エンドヌクレアーゼ"、及び"制限酵素"という用語は、その各々が二本鎖DNAを特定のヌクレオチド配列、又は付近で切断する、細菌酵素のことを言う。
本明細書中で使われる"組み換えDNA 分子"という用語は、分子生物学的技術で結合されているDNA断片からなる、DNA分子のことを言う。
【0032】
"ウエスタンブロット"という用語は、ニトロセルロース、又は膜などの保持体に固定化されたタンパク質(又はポリペプチド)の分析法のことを言う。
タンパク質をアクリルアミドゲル上に流し、該タンパク質を分離し、次いで、該タンパク質をゲルからニトロセルロース、又はナイロン膜などの固形支持体へ転移させる。その後、該固定化されたタンパク質を、対象の抗原に対する反応性をもつ抗体に晒す。該抗体の結合を、放射性抗体の使用を含む、様々な方法で検出できる。
【0033】
本明細書中で使われる"抗原決定基"という用語は、特定の抗体と接触する抗原の一部分(すなわち、エピトープ)のことを言う。タンパク質、又はタンパク質の断片、又は化学的部分を用いて、宿主動物に免疫感作させる場合、該抗原の多数の領域は、特定の領域、又は該タンパク質の三次構造に特異的に結合する抗体の製造を誘導できる;これらの領域、又は構造を、抗原決定基と言う。抗原決定基は、抗体への結合において、その本来の抗原(すなわち、該免疫反応を生じさせるために用いられた"免疫原")と競合し得る。
本明細書中で使われる"ベクター"という用語は、1種の細胞から別へ細胞へDNA断片を転移させる核酸分子のことを言う。"担体"という用語を、"ベクター"と同義的に用いられることもある。
【0034】
本明細書中で使われる"発現ベクター"という用語は、所望されるコード配列、及び特定の宿主細胞体における、操作上結合されたコード配列の発現に必要な適切な核酸配列を含む、組み換えDNA分子のことを言う。通常、原核生物における発現に必要な核酸配列は、プロモーター、オペレーター(任意)、及び多くの場合、他の配列とともにリボソーム結合部位を含む。真核細胞は、プロモーター、エンハンサー、及び終結、及びアデニル化シグナルを使用することが知られている。
本明細書中で使われる宿主細胞という用語は、インビトロ、又はインビボに位置するかに関わらず、任意の真核、又は原核細胞(例えば、大腸菌などの細菌細胞、酵母細胞、哺乳動物細胞、鳥類細胞、両生動物細胞、植物細胞、魚類細胞、及び昆虫類細胞)のことを言う。例えば、宿主細胞は、トランスジェニック動物内に位置することができる。
【0035】
本明細書中で使われる"トランスフェクション"という用語は、真核細胞への外来のDNAの導入のことを言う。トランスフェクションを、当技術で公知の様々な手段で行うことができ、例を挙げると、リン酸カルシウム‐DNA共沈降、DEAE‐デキストラン介在トランスフェクション、ポリブレン介在トランスフェクション、電気穿孔法、リポソーム融合、リポフェクション、プロトプラスト融合、レトロウイルス感染、及びバイオリスティックがある。
【0036】
(I. 特定の抗原は、低免疫原性を有する)
多くの低分子量の化合物があるが、それらは小型のために、単独で免疫反応を生じることができない。実施態様において、ハプテンを担体タンパク質(例えば、ウシ血清アルブミン、卵アルブミン、又はキーホールリンペットへモシアニンがあるが、それらに限定しない)と結合することができ、この結合体を免疫感作に用いる。そのような実施態様において、様々な問題が生じる。例えば、その主要な免疫反応は、該担体タンパク質に対してで、該ハプテン分子に対してではないことがあり得るので、免疫感作された動物由来の血清、及びハイブリドーマ上清を調べる際に、これを考慮すべきである。該検査で、該抗体が該ハプテンに対して、又は該結合体全体に対して特異的であるかを明らかにすべきである。
【0037】
別の問題は、該担体との結合中に生じ得る、該ハプテンの三次構造(立体構造)における変化を含むことができる。これは、該結合体内の該へプテンに特異的であるが、遊離ハプテン分子を認識できない抗体をもたらすことがある。そのような場合、別の異なる結合体を試み、該ハプテンの異なる官能基が該担体表面に露呈されることができる。
【0038】
また別の実施態様において、対象の抗原が、保存的な低免疫原性タンパク質であるか、或いは免疫反応中に、それに対するすべての特異的な抗体がすでに大変低い割合を有する、小さな抗原決定基である場合、免疫複合体での免疫感作を用いることができる。最初の場合は、該免疫複合体の抗体成分は、典型的な免疫感作の後の初期に得られる、不十分なアフィニティーを有するモノクローナル抗体であり得る。第2の場合は、強い抗原決定基に対するモノクローナル抗体を用いる。このアプローチの成功使用例は、ヒトエリスロポエチン、α、及びγインターフェロン、及び近縁種の免疫グロブリン(例えば、ラットモノクローナル抗マウスIgG抗体があるが、それらに限定しない。)である。表1参照されたい。
【0039】
他の実施態様において、そのタンパク質特性、及び十分な分子量に関わらず、極めて高度の保守性を有し、顕著な免疫反応を生じさせることができない抗原(例えば、ヘモグロビン、特定の酵素であるが、それらに限定しない。)もある。これらの特定の態様において、抗原は熱ショックタンパク質(例えば、別名HSP70として知られている熱ショックタンパク質70 kDaがあるが、それに限定しない。)と結合できる。APP結合として示された、表1を参照されたい。データから、HSP70が特定の方法でペプチド断片を露呈することにより、その提示を容易にすることが示される(図1参照)。通常、タンパク質、及びペプチドとHSP70との結合は、これらのタンパク質、及びペプチドに対する抗体の製造における急激な強化をもたらす。それにもかかわらず、他の具体的な実施態様において、HSP70‐インターフェロンγの結合で、該免疫反応の完全な抑制が見られた。
【0040】
(II. 免疫原性を高めるためにHSP を使用すること)
本明細書中に記載の方法は、担体としての熱ショックタンパク質の新規の使用法であって、対象の抗原を提示し、通常はその本来の分子に適切な免疫反応を生じさせない抗原に、抗原特異的な抗体を製造させる前記使用法を含む。細胞は、多くの機構を進化させ、予測できない、かつ危険な世界で生存するために役立っている。その1つの機構は、熱ショック応答であり、それは細胞を異常な高温(例えば、熱であるが、それに限定しない)、及び他のストレスに晒すことにより生じる。該ストレスの例を挙げると、低酸素状態、栄養欠乏、酸素ラジカル、代謝障害、ウイルス感染、食作用、及び形質転換がある。この熱ショック応答は、熱ショックタンパク質("HSP")の産生を含む。その1つのタンパク質ファミリーは、該HSP70タンパク質である。該HSP70タンパク質ファミリーは、細胞質、ミトコンドリア、同様に細胞の小胞体で機能することが見い出される。HSP70タンパク質は各々、他のタンパク質の折り畳みに役立つ場合、小グループの関連タンパク質と機能する。HSP70、及びその関連タンパク質は、タンパク質表面の疎水性アミノ酸に結合する傾向があり、そこでATP加水分解し、ATP加水分解の各サイクルで、頻繁にそのタンパク質と結合したり放したりする。この繰り返しサイクルは、該標的タンパク質の、例えば折り畳み直しに役立つ。
【0041】
これらの熱ショックタンパク質の中には、安定させたり、部分的に変性した細胞タンパク質を修復するのに役立つものもある。また、これらのHSPは、分子シャペロンとして作用する。シャペロンとして、HSPは、機能性タンパク質を分解から保護しながら、異常なタンパク質を分解場所に輸送しながら、タンパク質を異なった細胞内部位間の転移させながら、タンパク質多量体の集合を補助しながら、又は抗原提示細胞の表面上の腫瘍組織適合性複合体(MHC)分子で、抗原の提示を補助しながら、モルテングロビュール状態のタンパク質の、該タンパク質の正しく折り畳まれた最終の小型立体構造への変換を補助する。
【0042】
該免疫系は、細菌、寄生生物、及び菌類などの微生物の熱ショックタンパク質に積極的に反応する。外来のHSPの存在が、体内で迅速、かつ強力な免疫反応を引き起こすことが示されている[Murray, P.、Young, R.の論文、J. Bacteriol. 174:4193-4196 (1992)]。HSP70は、細菌、菌類、蠕虫、及び原生動物寄生虫などの、多くの病原体への免疫反応の主要な標的である [Young, R. A.、及びElliot, T.の論文、J., Cell, 59:5-8 (1989); Kaufmann, S.H.の論文、 Immunol. Today, 11:129-136, (1990); Morimoto, R.I.ら編集「生物学、及び医学における、ストレスタンパク質」Cold Spring Harbour Laboratory, Cold Spring Harbor, NY (1990)内のYoung, D.B.らの著書「ストレスタンパク質、及び感染性疾患」p. 131-165; Young, R.A.の論文、Ann. Rev. Immunol., 8:401-420(1990)]。様々な病原体のHSPでの免疫感作は、強い免疫反応を誘導し、かつこれらの病原体により引き起こされる病気に対する防御性をもたらす[Suzue, K.、及び Young, R.A.の論文、J. Immunol., 56:873-876 (1996)]。
【0043】
該体内の強い免疫反応に基づく、ワクチン担体としてのHSPの使用は、1990年代初期に始まった[Udono, H.、及びSrivastava, P.K.の論文、J. Exp. Med., 178:1391-1396, (1993); Udono, H.らの論文、Proc. Natl., Acad. Sci. USA, 91:3077-3081, (1994); Suto, R.、及びSrivastava, P.K.の論文、Science, 269:1585-1588, (1995); Blachere, N.E.らの論文、J. Exp. Med., 186:1315-1322, (1997); Tamura, Y. P.らの論文、Science, 278:117-120, (1997); Nair, S.らの論文、J. Immunol., 162:6426-6432 (1999)]。抗原のHSP70への該化学結合 [Lussow, A.R.らの論文、Eur. J. Immunol. 21:2297-2302 (1991); Barrios, C.らの論文、Eur. J. Immunol., 22:1365-1372, (1992);及び Perraut, R.らの論文、Clin. Exp. Immunol., 93:382-386 (1993); Suzue, K.、及びYoung, R.A.の論文、J. Immunol.I, 156:873-876, (1996); Suzue, K.らの論文、Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 94:13146-13151, (1997); Rico, A.I.らの論文、Infect. Immun., 66:347-352, (1998)、これらは引用により本明細書中に取り込まれるものとする]は、強力、かつ特製の抗原を作製し、融合パートナーを発現している腫瘍の拒絶を介在するのに十分な、MHC クラスI拘束性CD8+細胞傷害性T細胞の応答を生じさせることができる。本発明では、この同一の細胞機構を用いて、本来の非結合抗原に特異的な、抗原特異的な抗体を作製する。図1を参照されたい。
【0044】
先行技術には、免疫反応の刺激のためのHSP70の使用が記載されており、それによって刺激される活性を、細胞性、及び体液性の免疫誘導の程度によって評価した。しかしながら、抗体生成の誘導とモノクローナル抗体の製造の間には、有意な相違点がある。血清中の抗体の存在は、必ずしも、本来の分子を認識できる、高アフィニティーのモノクローナル抗体の製造につながらない。具体的な実施態様において、E7癌タンパク質に対するモノクローナル抗体の製造では、該精製された組み換えタンパク質でマウスに免疫感作後に、抗体の生成を観察したが、調べてみると、HPV ゲノムを含有する細胞株溶解物中の本来のE7を認識できるクローンは1つもなかった。該免疫系は、本来のタンパク質には存在しない、組み換えタンパク質の決定基のいくつかを認識したと考えられる。言い換えると、製造された該抗体は、免疫感作に用いた該抗原に反応したが、その本来のタンパク質には反応しなかった。
【0045】
本発明は、任意の特定の機構に限定しないが、該組み換えタンパク質の三次構造は、その本来のタンパク質のものとは異なったと考えられている。従って、本来のものでない抗原決定基が、該免疫系に提示されたのであろう。この問題を克服するのに、本発明は、(熱ショックタンパク質と結合された該タンパク質、又は対象の抗原を含むハイブリッドタンパク質を用いながら)本来の抗原提示機構を用い、本来の立体構造の官能基を該免疫系に提示する。具体的な実施態様において、これをHSP70を用いることにより達成する。
【0046】
これらの具体的な実施態様において、対象の抗原をHSP70、又はHSP70の一部に結合させ、該対象の抗原に免疫原性をもたらす。結合を化学的に行うことができる[Lussow, A.R.らの論文、Eur. J. Immunol. 21:2297-2302 (1991); Barrios, C.らの論文、Eur. J. Immunol., 22:1365-1372, (1992);及び、Perraut, R.らの論文、Clin. Exp. Immunol., 93:382-386 (1993); Suzue, K.、及びYoung, R.A.の論文、J. Immunol.I, 156:873-876, (1996); Suzue, K.らの論文、Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 94:13146-13151, (1997); Rico, A.I.らの論文、Infect. Immun., 66:347-352, (1998)]。抗原は、任意のタンパク質、ペプチド、核酸配列、又は化学部分であり得る。HSP70は、任意の起源由来であり得て、例を挙げると、哺乳動物、爬虫類、両生類、魚形群、鳥類、昆虫類、細菌、菌類、蠕形動物、原生動物、ウイルス、及び植物があるが、それらに限定しない。
【0047】
該対象の抗原をHSP70分子に結合した時点で、該結合体を、該結合体をプロセスでき、かつ該結合体での免疫感作に対し免疫反応を起こすことができる、異種の正常な免疫系に導入する。任意の動物に免疫感作でき、哺乳動物に限定しないが、典型的な実験例を挙げると、ラット、マウス、ハムスター、スナネズミ、モルモット、ウサギ、イヌ、サル、ニワトリ、ヤギ、ヒツジ、ブタ、ラクダ、ウシ、ウマ、及びネコがある。
【0048】
(III. 免疫感作)
免疫感作の有効性は、直接、高アフィニティーのモノクローナル抗体を製造できるかを決定する。様々な技術が、当技術分野でよく知られており、それらを用い、免疫感作の有効性を高め、その中のいくつかを本明細書中に記載する。
(A. 免疫感作の個体を選択すること)
具体的な実施態様において、3種の典型的な形式のハイブリドーマ系:マウス、ラット、及びヒトがある。該マウスハイブリドーマを最も幅広く用い、該ヒトハイブリドーマを最低頻度で用いる。本発明は、決してこれらの実施例に限定しない。正常な免疫系を有する任意の動物を、骨髄腫、又は他の不死化細胞とのハイブリダイゼーションのためのB 細胞源として用い、ハイブリドーマを作製する。該不死化細胞は、ヒト不死化、及びラット不死化細胞を含むが、それらに限定しない。
【0049】
マウスの免疫感作には、BALB/cマウス系統を最も頻繁に用い;全てのマウス骨髄腫株は、この系統に由来する。低免疫原性の抗原の場合、別の系統のマウスに免疫感作することができる。これらのマウスは、BALB/cに比べて、特定の抗原に、より強い免疫反応を引き起こすことができる。BALB/cと免疫感作に用いられた系統を交配することにより得られる、第一世代子孫を用い、ハイブリドーマ製造のための腹水を作ることができる。
ラットを用いる他の実施態様において、文献では、LOU/C系統が強く推奨されているが、WISTAR系統由来のラットで、全体として満足できる結果を得た。
【0050】
(B. マウス免疫感作スケジュール)
(1. 短期免疫感作スケジュール)
具体的な実施態様において、抗原を、2週間の間隔で2回、Balb/cマウス後肢足蹠に投与する。またさらなる実施態様において、一般的に、抗原の量は、その利用可能性、及び免疫原性に依存し、マウス当たり5〜200 μgの範囲である(が、これらの範囲に限定しない)。毒性の抗原の場合、投与量を0.1 μgまで下げることができる。(一連の免疫感作の)抗原の1回目の投与では、一般的に、抗原溶液は体積50〜200 μlの範囲で(あるが、免疫反応をもたらす限り、この特定の範囲に限定しない)、フロイント完全アジュバント("CFA")などのアジュバントと組合せる。一般的に、CFAは当技術で公知のとおり、結核死菌の懸濁液を含む鉱油とする。また、他のアジュバントを使うことができ、例を挙げると、ミネラルゲル(例えば、水酸化アルミニウム)、及び界面活性物質(例えば、リゾレシチン、プルロニックポリオール、ポリアニオン、ペプチド、油乳濁液、キーホールリンペットへモシアニン、ジニトロフェノール、及び潜在的にBCG("バシルカルメット‐ゲラン")、及びコリネバクテリウム(Corynebacterium parvum)などのヒトアジュバントがあるが、それらに限定しない。抗原溶液をCFAと激しく混ぜることにより、該抗原の細胞への進入を遅らせ、かつ長引かせる、微細分散した乳濁液が生じる。2回目の免疫感作を、1回目と同様に、マイコバクテリアを含まないフロイント不完全アジュバント(IFA)を用いて行う。
【0051】
またさらなる実施態様において、低免疫原性の抗体を用いて、一群の動物に異なった抗原投与量で、かつ様々な免疫感作スケジュールを用いて免疫感作することが有効である。具体的な実施態様において、2回目の免疫感作の後第3、又は4日目に、血液試料を採取し、該特定の抗原に対する抗体の含量を分析する。通常、最高力価をもつ動物を分析用に選択する。しかしながら、抗原として使われるタンパク毒素などの例外がある。このタイプの抗原は、高い特異的抗体力価を生じるが、また、高パーセントの、該毒素で死滅されたBリンパ球と混合している。これらの場合は、最高の力価をもたない動物を選ぶべきであり、かつ/又は融合のための細胞の生存に注意を向けるべきである。該2回目の免疫感作後第4日目に、該動物を調製し、膝窩リンパ節の細胞を骨髄腫細胞と融合させる。また、該動物の他のリンパ節を用いることができる。
【0052】
(2. 長期免疫感作スケジュール)
別の実施態様において、該短期免疫感作スケジュールが効果的でない場合、様々な形式の長期スケジュールを試みることができる。この場合、通常、該動物に腹腔内、又は皮下のいずれかに(その代わりとしては、頻度は低いが、静脈内、又は経口で)、2〜4週間の間隔で免疫感作する。第1回目の免疫感作にはCFA、次の回にはIFAを用いる。
【0053】
(第2回目を始めに)各回の免疫感作後第10〜14日目に、当技術分野で十分公知のとおり、該免疫感作された動物由来の血液で、特異的抗体の含量を調べた。該抗体力価が所望される水準に達しなかった場合は、該抗原での最終回の免疫感作(ブースティングと呼ばれている)をアジュバントなしに静脈中に行う。好ましい実施態様において、最初の投与量の1/10 を与える。ブースティングに起因して、該抗原に高アフィニティーを有する抗体を産生するクローンが選択的に刺激される。
【0054】
その後、その本来の抗原に特異的な抗体を分泌するB細胞を採取し、当業者に公知の方法で、かつ本明細書に記載のとおり、活性でスクリーニングした[Harlow、及びLaneの著書、「抗体:実験室マニュアル」、Cold Spring Harbor Laboratory Press, New York, (1988)]。これらのスクリーニング技術の中には、ラジオイムノアッセイ、ELISA(酵素結合免疫吸着測定法)、"サンドイッチ"免疫測定法、免疫放射定量測定法、ゲル拡散沈降反応、免疫拡散法、インサイチュー免疫測定法(例えば、金コロイド、酵素、又は放射標識)、ウエスタンブロット、沈降反応、凝集法(例えば、ゲル凝集法、赤血球凝集法など)、補体結合反応法、免疫蛍光測定法、プロテインA測定法、ウイルス可視化反応、生物活性調整測定法、及び免疫電気泳動法などを含むものもあるが、それらに限定しない。
【0055】
少なくとも1:1000抗体力価のクローンを同定した時点で、当業者に公知の方法で、かつ本明細書の記載のとおり、ハイブリドーマを作製する[Harlow、及びLaneの著書、「抗体:実験室手引き書」Cold Spring Harbor Laboratory Press, New York, (1988); Kohler、及びMilsteinの論文、Nature, 256:495-497 (1975); Kozborらの論文、Immunol. Tod., 4:72 (1983);「モノクローナル抗体と癌治療」Alan R. Liss, Inc. (1985)内のColeらの著書、77-96ページ; 特許協力条約/米国特許第90/02545号; Coteらの論文、Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 80:2026-2030 (1983)]。その後、これらのモノクローナル抗体を疾患(例えば、癌、ウイルス感染などであるが、それらに限定しない)の治療、免疫診断、免疫化学、免疫組織学、免疫細胞学、免疫アフィニティークロマトグラフィー、及びゲノム、及びプロテオーム研究に用いることができる。
【0056】
表1は、本発明の方法を使用して、従来の低免疫性を有するタンパク質に対して高アフィニティーのモノクローナル抗体を作製した、具体的な実施態様を提供する。これらの実施態様は、一部の例にすぎず、決して限定するものではない。左から最初の項目を対象の抗体とする。2番目の項目を、正常な免疫系を有する動物に免疫感作するのに用いた、免疫原とする。この項目の中で、APPは、該対象の抗原をHSP70に化学的に結合させる、本明細書中に記載された方法のことをいう。また、この項目の中で、KLH結合は、HSP70ではなくキーホールリンペットへモシアニンとの結合を意味する。3番目の項目は、該免疫感作から製造されたクローンの数を示し、4番目の項目は、本来の対象の抗原と結合できるクローンの数を示す。5番目の項目は、該モノクローナル抗体が該対象の抗原に特異的であるかを同定するのに用いた定量法を示す。ELISAを用い、酵素結合免疫吸着測定法を示す。WBを用い、ウエスタンブロットを示す。IFを用いて、免疫蛍光測定法を示す。IACを用いて、免疫アフィニティークロマトグラフィーを示す。最後の項目は、なぜ該抗体が結合なしで強い免疫反応を生じさせないかの簡潔な説明を提供する。
【0057】
【表1】
【0058】
(IV. ヒト乳頭腫ウイルス/子宮頸癌の検出に用いるモノクローナル抗体)
本発明の実施態様において、発明方法を用い、ヒト乳頭腫ウイルス("HPV")の E6、及び E7 癌タンパク質に特異的なモノクローナル抗体を開発した。これらの癌タンパク質に特異的なモノクローナル抗体の開発は、大変困難であったは、天然のE6、及びE7癌タンパク質が低濃度のため精製しにくく、かつ組み換えタンパク質が不正確に折り畳まれ、凝集する傾向があるためである。その上、E6、及びE7癌タンパク質は、免疫抑制能を有する。組み換えE6、及びE7癌タンパク質を免疫感作剤として用いて製造した抗体は、本来のE6、及びE7タンパク質に高アフィニティーをもたない。このため、該新規方法を使用し、該抗体を製造し、その後本明細書中に記載の多くの用途に用いることができる。
【0059】
(A. 子宮頸癌の背景)
子宮頸癌は女性の中で2番目に多くみられる癌である。疫学的、及びウイルス学的研究に基づいて、浸潤性子宮頸癌とHPVとの間の相互関係が示されている(図2)。また、同様の相関関係は、HPVと外生殖器官、及び肛門の新生組織形成、また同様に浸潤性子宮癌との間に見い出されている [D. I. Bernstein編集「性感染疾患:ワクチン、予防、及びコントロール」内のKiselev, V. Iらの著書「性感染ウイルスの感染と泌尿生殖器系の腫瘍疾患との相関関係」Academic Press, London, Herald of Dermatology, No. 6:20-23 (2000)]。
【0060】
(一般にパップスミアとして知られている)細胞学的検査は、依然として異型多核細胞を検出する主な実験室診断技術である。この技術を、かなり長年の間、子宮頸癌の初期診断に使用している。しかしながら、これらの手順では、全HPV保菌者の30%以上を検出せず、かつより深刻な疾患の発症のリスクを予測できない。
【0061】
HPVデオキシリボ核酸("DNA")の構造を研究する中で、例えば、該DNAによりコードされる9種の免疫原性のタンパク質を、ウイルス複製、不死化、及びその上皮細胞の形質転換の規則性と共に研究し、スクリーニング方法を開発した。その原理は、病理が存在するときに、正常値からはずれている生化学的、免疫学的、及び遺伝学的パラメータを検出することからなる。
【0062】
この形式のデータを解析し、初期診断を行ったり、子宮頸癌を発症させるリスクを判断したり、或いは治療の効果を予測することは、常に可能なわけではない。これは、いずれかで用いられた測定技術が必要な感度、及び/又は特異性をもたないか、測定された該パラメータが、直接細胞の変質プロセスを反映しないか、或いは該測定がそれを比例的に反映しないためである。
【0063】
酵素免疫測定法(例えば、ELISAがあるが、それに限定しない。)、及び免疫放射定量測定法を用いて、患者血清中のHPVタンパク質に特異的な抗体力価を測定することによる、子宮頸癌を診断する技術は記載されている[欧州特許(EP)第386734号、第375555号、第406542号、及び第523391号を参照されたい。]。しかしながら、このアプローチは、抗体力価と子宮頸癌との間に確かな相関関係が見い出されていないので、期待に応えていない。
【0064】
また、ポリメラーゼ連鎖反応("PCR")を用いて、研究中の試料におけるHPV DNAレベルの分類、及び定量に基づいて、子宮頸癌の発症を診断、及び予測する技術がある[V. I. Kiselevらの著書「泌尿生殖器感染の診断の際のポリメラーゼ連鎖反応:医師のためのハンドブック」Moscow, 2000; 国際特許公開(WO)第00506645号; 及び米国(U.S.)特許第5,679,509号]。
【0065】
しかしながら、これらの技術の使用は、かなりの過剰診断をもたらしている。それは、HPV感染が、全例のほぼ80%において、本来は短期的であり、自然治癒と同様にウイルスの消滅となり得るためである。図2を参照されたい。それにもかかわらず、多くの場合、HPV DNAの陽性の結果は、子宮頸癌の発症を確実に予測する。
【0066】
本発明により提示された新規解決法は、患者血清でなく生検細胞試料由来のHPV E6、又はE7癌タンパク質の定量的な免疫学的測定法に基づいた子宮頸癌の初期診断、及びその発症のリスクの判断の方法を含む[欧州特許第1253924号、A 61 K 38/18, 08/02/2001]。
【0067】
具体的な実施態様において、該E6、及びE7タンパク質は、HPVマーカーとして機能し、それらを免疫蛍光技術によって、脱パラフィン化された組織試料中に検出し、(定量のために)デジタルコンピューター技術を使用し、多元的に視覚化された試料を解析した。生検試料中の該E6、又はE7タンパク質含量が正常コントロール値を54%以上超えたとき、子宮頸癌発症の高いリスクが存在するという結論に達した。また、他の生化学マーカーを使用できると提唱され、例を挙げると、上皮成長因子受容体、及びインスリン様成長因子があるが、それらに限定しない。
【0068】
また別の実施態様において、より簡単で低価格で、高い共通性をもつ試料採取、及び解析法のため標準化されやすい、スクリーニング方法を開発した。このスクリーニング方法は、前記記載の免疫蛍光実施態様の感度に相当する感度を有する。HPV E7癌タンパク質をマーカーとして用いながら、細胞学的試料からの子宮頸がんの初期診断に、このスクリーン方法を用いることができる。いずれかの診断方法が使用できるかは、E6、又はE7癌タンパク質に特異的な高アフィニティーのモノクローナル抗体の使用に依存する。以下にこれらの抗体を製造したかを本明細書中に記載する。
【0069】
(B. E6、及びE7に対するモノクローナル抗体の開発)
ウイルスDNAの細胞DNAへの 融合で先行される、上皮細胞の変性に反応して、HPV E7タンパク質の合成における閾値の増加がある。具体的な実施態様において、E7遺伝子をヒト試料から単離し、クローニングし、その後大腸菌内で発現させた。その後、該細菌細胞から単離した組み換えE7タンパク質を用い、マウスに免疫感作した。しかしながら、多くの場合、組み換えタンパク質での該免疫感作により製造された抗体は、他の決定基を認識するので、その本来のタンパク質と反応しなかった。この問題を打開するために、該E7タンパク質をHSP70に結合させ、その後免疫感作のための抗原として用いる、先に記載の方法を用いた。
【0070】
具体的な実施態様において、2種の型の、天然起源のE7タンパク質に対する高感度のモノクローナル抗体を製造し、それは2種の型の"高リスク"HPV(HPV16、及びHPV18)に交差反応した。この交差反応は、全HPV関連新生組織形成の患者の80〜85%の検出を可能にする。異なったE7抗原決定基に反応する、これら2種の型のモノクローナル抗体の組み合わせた使用は、該特異性を高め、かつ診断スクリーニングにおけるバックグラウンドがないことを保証する。
【0071】
(C. HPVのスクリーニング方法)
具体的な実施態様において、子宮頸癌の初期、及び発症前診断方法は、患者の生検細胞試料中のヒト乳頭腫ウイルス(HPV)癌タンパク質の免疫学的定量からなる。該生検細胞試料を溶解し、モノクローナル抗体対を用いて、該細胞溶解液上清をHPV E7 タンパク質に関して分析する。具体的な実施態様において、該モノクローナル抗体対は、IgG2a、及びIgG2b サブアイソタイプに属し、それらは該E7タンパク質の様々な抗原決定基を認識する。具体的な実施態様において、該IgG2a 716-321、716-325、716-332、及び716-343抗体は、少なくとも1種のE7抗原決定基に結合する。別の実施態様において、該IgG2b 716-281、及び716-288抗体は、少なくとも1種の、他のE7抗原決定基に結合する。別の実施態様において、2種の抗体群の1種を、当業者に十分公知のとおり、酵素標識に結合する[Harlow、及びLaneの著書、「抗体:実験室手引き書」、Cold Spring Harbor Laboratory Press, New York, (1988)を参照されたい]。 その後、これらの抗体を、当業者に十分公知のとおり、酵素結合免疫吸着測定法("ELISA")で用いる。具体的な実施態様において、試料中の該E7タンパク質濃度が、ミリリットル(ml)当たり0.05 ナノグラム (ng) 以上であるとき、初期子宮頸癌、又はその発症のリスクの診断を積極的にする。他の具体的な実施態様において、定量分析実施条件を、当技術分野で十分公知のとおり、ポリスチレンプレートをコーティングする抗体の濃度、結合体の希釈、緩衝液組成、及びELISAのインキュベート時間、及び温度を変えることにより最適化した。
【0072】
好ましい実施態様において、E7癌タンパク質の1種の抗原決定基に特異的な抗体716-281を該タンパク質の第一の結合に用いて、かつ別のE7抗原決定基に特異的な抗体715-332を酵素標識に結合させた。また別の実施態様において、該用いられたモノクローナル抗体は、HPV16 E7に特異的であるが、HPV18 E7と交差反応する。HPV16、及びHPV18は、2種の最も蔓延している"高リスク" HPV型である。
【0073】
さらなる実施態様において、該ELISAスクリーニング方法を用いて、試料が該E7タンパク質に対して陽性のときは、該HPVの分類を行う。該HPV型を様々な方法で決定することができ、例を挙げると、ポリメラーゼ連鎖反応、及びインサイチューDNAハイブリダイゼーションであるが、それらに限定しない。
【0074】
(V. プリオンタンパク質に特異的なモノクローナル抗体)
本発明の別の実施態様において、該発明方法を用い、プリオンタンパク質("PrP")に対するモノクローナル抗体を開発した。一般に、海綿状脳症(BSE、狂牛病)の考えられる原因は、正常プリオンタンパク質の病原性アイソフォームへの構造遷移であると考えられている。PrPの病原性アイソフォームは蓄積するので、それに続く神経変性がある。このタンパク質に対するモノクローナル抗体は、BSEの診断ツールとして有用であり得る。このタンパク質のモノクローナル抗体を製造する際の主な問題は、PrPの高度に保存された構造である。完全長の組み換えウシPrP の天然型、及び変性型両型での、Balb/c マウスの多数回免疫感作は、十分な免疫反応も、最初の陽性クローンも生じさせなかった。PrPに対するモノクローナル抗体を製造するために、該PrP分子の構造分析を行い、3種のアミノ酸配列を選択した。これらの3種のペプチド配列は、ウシPrP のN 末端、分子の中間部、C 末端由来である。
G5: 25-36/62-69 KKRPKPGGGWNT…QPHGGGWG (20 aa) (各々、配列番号: 6 、及び 7)
G3: 109-121 QWNKPSKPKTNIK (13aa) (配列番号: 8)
G4: 226-242 ITQYQRESQAYYQRGAS (17aa) (配列番号: 9)
【0075】
具体的な実施態様において、これらの3種のペプチドを化学的にHSP70に結合させ、その後、それを使用し、本明細書中に公開した方法を用いて、Balb/cに免疫感作させた。該免疫感作スケジュールを完了後、PrPに特異的な抗体を製造するクローンのために、膝窩リンパ節(他のリンパ節、腹水、血液、又は脾臓を同様に用いることができる)を採取した。当技術分野において十分公知で、かつ本明細書に記載のとおり、ハイブリドーマを作製し、ハイブリドーマを、高アフィニティーのモノクローナル抗体の製造に関してスクリーニングした。高アフィニティーのモノクローナル抗体を、当技術分野で十分公知のとおり免疫測定法で同定し、例を挙げるとELISAがあるが、それに限定しない。その後、これらのモノクローナル抗体を、疾患の治療、免疫診断、免疫化学、免疫組織学、免疫細胞学、免疫アフィニティークロマトグラフィー、及びゲノム、及びプロテオーム研究に用いることができる。
【0076】
(VI. ヒアルロン酸に特異的なモノクローナル抗体)
本発明の別の実施態様において、本発明方法を用い、ヒアルロン酸に対するモノクローナル抗体を作製する。ヒアルロン酸は、グルクロン酸、及びN-アセチルグルコサミンの繰り返し二量体構成単位からなる、高分子量ポリマーであり、細胞外マトリックスに見い出される複雑なプロテオグリカン凝集体の中核を形成する。ヒアルロン酸は、ヒト結合組織疾患において重要な役割を果たし、該疾患の例を挙げると、膝関節の症候性変形性関節症があるが、それに限定しない。ヒアルロン酸、及びその分解産物の定量は、重要な診断パラメータと考えられており、ヒアルロン酸に特異的なモノクローナル抗体の使用で実現し得る。
該ポリマーの非タンパク質性、及び細菌から哺乳類に及ぶ、多くの異なった種におけるその同一性のために、IgG1、IgG2a、IgG2bアイソタイプの高アフィニティー抗体の作製させることは、非常に難しい。
【0077】
具体的な実施態様において、ヒアルロン酸を、PrPに関して記載のとおり、免疫感作、及びモノクローナル抗体製造のためにHSP70と結合させた。実施例9を参照されたい。モノクローナル抗体のスクリーニングを、ビオチン化ヒアルロン酸、及びストレプトアビジン-西洋ワサビペルオキシダーゼを呈色反応の二次的な試薬とするELISAを用いて行った。この形式のELISAは、当技術分野でよく知られている[Harlow、及びLaneの著書、「抗体:実験室手引き書」 Cold Spring Harbor Laboratory Press, New York, (1988)]。
【0078】
結果として、3種の遺伝的に安定なハイブリドーマ細胞株を製造し、HU.D3 IgG2a、HU.D9 - IgG1、HU.E3 IgG3は各々、ヒアルロン酸に対して高アフィニティーモノクローナル抗体(IgG1、及びIgG2a)を分泌する。その後、これらのモノクローナル抗体を、疾患の治療、免疫診断、免疫化学、免疫組織学、免疫細胞学、免疫アフィニティークロマトグラフィー、及びゲノム、及びプロテオーム研究に用いることができる。
【0079】
(VII. マトリックスメタロプロテアーゼ3に特異的なモノクローナル抗体)
本発明の別の実施態様において、本発明方法を用い、マトリックスメタロプロテアーゼ3("MMP3")に対するモノクローナル抗体を作製する。マトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)ファミリーのタンパク質は、胚発生、生殖、及び組織再形成などの正常な生理学的プロセスと同様に、関節炎、及び転移などの疾患プロセスにおける、細胞外マトリックスの分解に関与している。多くのMMP は、不活性型前駆タンパク質として分泌され、細胞外プロテアーゼにより切断されると、活性化される。MMP3は、フィブロネクチン、ラミニン、コラーゲンIII、IV、IX、及びX、及び軟骨プロテオグリカンを分解する酵素である。該酵素は、創傷修復、アステローム性動脈硬化の進行、及び腫瘍発生に関与していると考えられている。MMP3は、関節リウマチ、及びある種の癌に関与していると報告されている。その後、これらのモノクローナル抗体を、疾患の治療、免疫診断、免疫化学、免疫組織学、免疫細胞学、免疫アフィニティークロマトグラフィー、及びゲノム、及びプロテオーム研究に用いることができる。
【0080】
(VIII. モノクローナル抗体を用いた疾患のリスクを解析するキット)
また、本発明は診断キットを提供する。いくつかの実施態様において、該キットは、個体が疾患、又は状態を発症するリスクを判断するのに有用であり、該疾患、又は状態の例を挙げると、子宮頸癌、海綿状脳症、結合組織疾患、関節炎、及び転移があるが、それらに限定しない。キットの性質、及び使用は、キットで提供される該モノクローナル抗体の特異性による。該診断キットを、様々な方法で製造する。いくつかの実施態様において、該キットは、本発明の方法を用いてもたらされた、従来低免疫原性の抗原に対する、少なくとも1種のモノクローナル抗体を含む。好ましい実施態様において、該キットは、当技術分野で十分公知のとおり、ELISA、又は他の同様の免疫測定法を行う試薬を含む。いくつかの実施態様において、該キットは、個体が該疾患、又は状態を発症するリスクを判断する取扱説明書を含む。好ましい実施態様において、該取扱説明書は、該疾患、及び状態を発症するリスクを、対象の抗原の有無を検出することにより判断すると明記し、該対象の抗原の例を挙げると、E7癌タンパク質、PrP、MMP3、又はヒアルロン酸があるが、それらに限定しない。いくつかの実施態様において、該キットは、緩衝剤、核酸安定化剤、タンパク質安定化剤、及びシグナル産生システム(例えば、フレットシステムなどの蛍光産生システム)などの補助試薬を含む。該検査キットは、一般的に、単一の容器、又は必要に応じて様々な容器に成分を、該検査を行うための取扱説明書の紙と共に含む、任意の適切な方法でのパッケージであり得る。いくつかの実施態様において、好ましくは、該キットはポジティブコントロール試料も含む。
【実施例】
【0081】
(実施例1)
下記の実施例を提供するのは、本発明の特定の好ましい実施態様、及び態様を示し、かつさらに例証するためであり、発明範囲を限定するためではない。
【0082】
続く実験の公開において、下記の略語を適用する:M (モーラー); μM (マイクロモーラー); mM (ミリモーラー); mol (モル); mmol (ミリモル); μmol (マイクロモル); nmol (ナノモル); g (グラム); mg (ミリグラム); μg (マイクログラム); ng (ナノグラム); l、又はL (リットル); ml (ミリリットル); μl (マイクロリットル); cm (センチメートル); mm (ミリメートル); μm (マイクロメートル); nm (ナノメートル); ℃ (度 摂氏) Centigrade); min. (分); sec. (秒); % (パーセント); kb (キロ塩基); bp (塩基対); PCR (ポリメラーゼ連鎖反応); aa アミノ酸)。
【0083】
(実施例1)ヒト乳頭腫ウイルス(HPV)の検出、及び分類
(A. 臨床材料の収集)
臨床試料を準備し、当技術分野で十分公知のとおり運搬した。滅菌使い捨てプローブを用い、子宮頸部上皮細胞の臨床試料を擦り取った。該プローブを、500 μlの生理食塩水(0.83% NaCl)で洗浄し、該細胞を該プローブから除去し、該溶液を1.5ml蓋つきエッペンドルフチューブに回収した。その後、該試料は、使用まで、通常5日までは4℃で、1ヶ月までは10〜20℃で保存した。
【0084】
(B. DNAの精製)
DNA抽出方法は、当技術分野で十分公知のとおり、本発明に関するDNA精製方法は、この特定の実施例に限定しない。試料が凍結している場合は、当技術分野でよく知られているように解凍し、その後10,000 rpmで1分間遠心分離する。沈殿を底部に形成し、上清を捨てる。100 μlの生理溶液を該チューブに加え、該沈殿をホモジナイズする。500 μlの溶解溶液を加え、10秒間ボルテックスする。その後、該試料、及びチューブを65℃でインキュベートする。該溶解溶液は、6 Mチオシアン酸グアニジン (Sigma社、USA)、10 mM EDTA (Sigma社、USA)、1% Triton X-100 (Sigma社、USA)、10 mM Tris HCl, pH 7.3 (Sigma社、USA), 1% 2-β-メルカプトエタノール(BioChemical社、England)を含む。20 μlのホモジナイズ用ソルベント(シリカ、Sigma社、USA)を加え、50〜100 rpmで10分間撹拌する。該試料、及びチューブを10,000 rpm で1分間遠心分離し、上清を捨てる。500 μlの洗浄溶液を加え、該チューブを、沈殿が該溶液に混ざるまでボルテックスした。再び、10,000 rpm で1分間遠心分離し、再び上清を捨てる。該洗浄溶液は、4 M チオシアン酸グアニジン(Sigma社、USA)、10 mM EDTA (Sigma社、USA)を含む。1 mlの70%エタノールを該チューブに加え、よくボルテックスし、10,000 rpmで1分間遠心分離し、上清を捨てる。このエタノール洗浄を繰り返す。その後、該チューブを開け、沈殿を55℃で5〜10分間乾燥させる。100 μlのヌクレアーゼフリー水(Promega社、USA)を該チューブに加え、55℃で5分間インキュベートする。その後、試料をポリメラーゼ連鎖反応に用いることができる。試料は、4℃で1週間まで、又は20℃で6週間まで保存できる。
【0085】
(C. HPV を分類するためのポリメラーゼ連鎖反応("PCR"))
5 μl の鋳型DNA、67 mM Tris-HCl (pH 8.8)、16.6 mM (NH4)2SO4、1.5 mM MgCl2、100 mM dATP、dCTP、dTTP、及びdGTP、10 pmolの各プライマー、及び1ユニットのTaq ポリメラーゼ (5 ユニット/μl; Promega社、USA)を含有する25 μl 溶液中で、PCR 反応を行った。当技術分野で公知のとおり、ホットスタート技術を用いた。温度サイクル条件は;94℃を3分間、その後94℃30秒間、65℃30秒間、及び72℃30秒間を40サイクルであった。下記の図表は、HPV型、及びそれらのHPV 型のDNA
を増幅するのに用いられたプライマーを示す。
【0086】
【表2】
【0087】
(実施例2)HPV16、及びHPV18型のE7癌タンパク質の合成をコードする組み換えプラスミドの設計
子宮頸部形成異常と診断された患者の子宮頸部由来の生検組織試料を、E7 遺伝子源とした。該臨床試料をHPVの存在に関して調べ、本明細書中に記載の該ポリメラーゼ連鎖反応を用いて分類した。HPV16、及びHPV18型の該 E7 遺伝子を遺伝子特異的なプライマー[HPV16に対して303塩基対(bp)断片、及びHPV18に対して324SYMBOL 45 \f "Symbol" \s 10.5bp 断片] (配列番号: 14〜17) (図3参照)を用い、該PCR技術で増幅し次第、これらの遺伝子をpBluescipt SK (+) (Stratagene社)プラスミド中のEcoRI-BamHI部位でクローニングした。クローニングした遺伝子のオリゴヌクレオチド配列決定は、GenBankデータと完全に一致した(例えば、HPV16に対してGenBankアクセッション番号AF125673、及びHPV18に対してAY262282。)(図4、及び5、配列番号: 1、及び3を参照されたい。)。
次に、翻訳終結配列を3'末端付近の該遺伝子に取り込んだ。HPV16、及びHPV18の両方(配列番号: 18)に対して得られた遺伝的コンストラクト、pHE716、及びpHE718を図6に示す。
【0088】
(大腸菌細胞における、HPV16、及びHPV18型のE7タンパク質の合成)
該プラスミドpHE716は、タンパク質E7-16 [Met(His)6-GluPheIle-E716-GlySer [111アミノ酸残基("aa")、12.5 キロダルトン(kDa)、及び等電点(IEP)4.6]をコードする。また、該プラスミドpHE718は、タンパク質E7-18 [Met(His)6-GluPheSer-E718-GlySer (117 aa、13.5 kDa、及びIEP 5.4]をコードする。ドデシル硫酸ナトリウム、及びポリアクリルアミドゲル("SDS-PAGE")[Laemmli, U. K.らの論文、Nature, 227:680-685 (1970)]中で電気泳動を行うとき、このタンパク質が、書誌データに一致する、(ほぼ21 kDaの)異常な移動度をもつことに留意しなければならない [Jeon, J.-H.らの論文、Experimental and Molecular Medicine, 34:496-499,(2002)]。
【0089】
該得られた遺伝子の発現に、大腸菌BL21(DE3)株(Stratagen社、USA)を用いた。当技術分野で十分公知のとおり、トランスフェクションを行った。超音波処理の後に、HPV16 E7癌タンパク質、及びHPV18 E7癌タンパク質を、可溶性細胞タンパク質画分中に検出し;それゆえ、尿素付加をせず、自然条件下でNi-IIIA-アガロース上でクロマトグラフ分析を行った(図7)。
【0090】
より具体的に、大腸菌BL21 (DE3)株の細胞を、プラスミドpHE716、及びPHE718を用いて、形質転換した。該細胞を、アンピシリン(100 μg/ml)、及びグルコース(0.2%)を添加したルリア-バータニ ("LB")培地中で、37℃で一晩インキュベートした。その後、該細胞を、アンピシリン含有の新鮮なLBで1:25に希釈し、細胞密度がOD600=0.5の光学密度に到達するまで、2〜3時間インキュベートした。光学密度を、マルチスキャン分析器の波長600 nmで測定した。その後、イソプロピルβ-D-チオガラクトピラノシド ("IPTG") を0.2 mMの濃度まで、全容量が50 ml まで培養物に加え、さらに3時間インキュベートした。その後、培養物を5,000 rpmで10分間遠心分離し、上清を捨てた。沈殿を1 ml の20 mM Tris-HCl, pH 8、0.3 M NaCl、0.1%Triton X-100中に再懸濁し、15秒間超音波分解した。その後、該培養物を10,000 rpm で10分間遠心分離する。沈殿を20 mM Tris-HCL, pH 8、0.3 M NaCl、0.1%Triton X-100 (0.5 ml)で洗浄した。該沈殿をホモジナイズし、5 mlの 緩衝液A (10mM Tris-HCl, pH 8、6M 尿素、0.4 M NaCl、10mM β-メルカプトエタノール、5 mM イミダゾール)に再懸濁した。その後、該試料を常温で1時間、撹拌しながらインキュベートする。次いで、該試料を10,000 rpmで10分間遠心分離した。沈殿を捨てる。IDA-アガロース(1 ml)充填カラムをNiSO4溶液で洗浄し、その後該カラムを緩衝液A で平衡化した。上清を、該カラムに5 mlの 緩衝液A、その後10 mlの緩衝液B(10 mM イミダゾール含有緩衝液A)と共に負荷した。溶出を、緩衝液C (10 mM Tris-HCl, pH 8、2M 尿素、0.4 M NaCl、10mM -メルカプトエタノール、0.3M イミダゾール)で、0.5 ml画分に行った。通常、HPV16、及びHPV18由来の該E7タンパク質は、画分1〜3に通常溶出された。該タンパク質を含む画分を貯留し、該貯留された画分量の100倍容に対して、10mM Tris-HCl, pH 8、150 mM NaCl含有緩衝液で一晩透析した。
【0091】
(実施例3)HPV16(18)型のE7ペプチド、及び結核菌DnaK(HSP70)からなるハイブリッドタンパク質の発現
PCRを用い、ヒト乳頭腫ウイルス、16、及び 18型のE7遺伝子を増幅した。ヒト乳頭腫ウイルス(HPV) 16、及び18型E7遺伝子(配列番号: 19〜22)を含有する、プラスミドDNA pHE716、及びpHE718を、E7 遺伝子(配列番号: 19〜22)を含有する断片に対するPCR増幅の鋳型として用いた。図8を参照されたい。開始コドンは、6HIS 標識をコードする配列と共に、フレーム内に存在し、終止コドンは欠如している。DnaKタンパク質を、組み換えpQE30基盤ベクターにトランスフェクトされた、E7遺伝子を含有する該クローニングされたDNA断片 を用いて発現した。
【0092】
あらかじめ、組み換えベクターpQE30-dnaK-Yを構築し、基本プラスミドとして用い(図9)、6HIS-DnaK融合タンパク質を発現させた。PQE30-dnaK (配列番号: 5)の核酸配列を、図10に示す。このベクターを作製するために、E7遺伝子を含有するPCR断片を、BamHI、及びBglIIで消化し、pQE30-dnaK-YのBamHI部位にクローニングした。挿入部を正しい方向にもつ組み換え型を、当技術分野で十分公知のとおり制限酵素分析を用い、同定した。組み換えプラスミドpQE30-E716-dnaK、及びpQE30-E718-dnaK は、各々ハイブリッドタンパク質6HIS-E7(16型)-DnaK、及び6HIS-E7(18型)-DnaKをそれぞれ発現させた。
【0093】
これは、大腸菌DLT1270細胞を、別個の培養液中で、pQE30-E716-dnaK、及びpQE30-E718-dnaKを用いトランスフェクトし、一晩インキュベートすることにより達成された(DLT1270細胞を、P1-形質導入を用いて、lac1 遺伝子を大腸菌DH10B株に組み入れることにより、作製した。DH 10Bは下記の遺伝子型を有する: 10 B (ara D139 D (ara, leu) 7697 D (lac) 74 galU galK rpsL deoR f80 lacZ DM15 end Al nupG recAl mcrA D (mrr hsdRMS mcr )) Grant, S.らの論文、Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 87:46454649 (1990)を参照されたい。)。該トランスフェクトされたDLT1270培養物を、100倍に希釈されたルリア-バータニ ("LB")培養液中で培養し、光学密度で測定された密度がOD600=0.5に到達するまで、振盪しながら37℃でインキュベートした。その後、イソプロピルβ-D-チオガラクトピラノシド ("IPTG") を0.1 mMまで加え、先のとおり、さらに2時間インキュベートした。当技術分野で十分公知のとおり、IPTGは、lacZ遺伝子を誘導する。それを用いて、対象のプラスミドでトランスフェクトされた細胞を選択する。予測される分子量の該ハイブリッドタンパク質の合成を、SDS-PAGEで観察した。
【0094】
(実施例4)大腸菌由来の組み換えHSP70タンパク質の単離
(A. 緩衝溶液)
緩衝溶液は、あらかじめ調製しない。緩衝液 Aを単離手順の前に調製し、1時間以内に用いる。50 mM K2HPO4, pH 7のストック溶液は、あらかじめ調製できるが、3日以内に用いなければならない。また、10X PBSストック溶液をあらかじめ調製することができる。緩衝溶液の保存、及びクロマトグラフ手順は、常温で行われるべきである。
緩衝液Aは、25 mM N-(2-ヒドロキシエチル)ピペラジン-N'-(2-エタンスルホン酸) ("HEPES"), pH7.3、0.1% Nonidet P-40 (w/v)、20% グリセロール (v/v)、1 mM フッ化フェニルメチルスルホニル("PMSF")、及び 0.5 M NaClを含む。
緩衝液 Bは、50 mM K2HPO4, pH 7、5 mM イミダゾール、0.5 M NaClを含み、pHを調整しない。
緩衝液 Cは、50 mM K2HPO4, pH 7、150 mM イミダゾール、0.5 M NaClを含む。
緩衝液 Dは、50 mM K2HPO4, pH 7、50 mM EDTA、0.5 M NaClを含み、pHを調整しない。
PBS 緩衝液は、10 mM K2HPO4, pH 7.5、及び0.145 M NaClを含む。
【0095】
(B. キレートカラムの調製)
1 x 10 cm カラムを脱イオン水で洗浄し、下方のフィルターから気泡を抜き、下方のフィルターからほぼ1 cm のレベルに水層を残す。キレートセファロース CL-6B (Amersham Pharmacia Biotech社)の必要量を計り、5 mlの容積にする。ピペットを用いながら、該カラムを該セファロースゲルで充填する。該カラムを、5倍容の脱イオン水で、3 ml/分の速度で洗浄する。その後、該カラムを10倍容の ZnCl2 溶液(1 mg/mlの濃度 (ICN))で3 ml/分の速度で洗浄する。その後、該カラムを10倍容の脱イオン水で、3 ml/分の速度で洗浄する。該カラムをUV 検出器(280nm)に接続する。その後、該カラムを、10倍容の脱イオン水で、3 ml/分の速度で洗浄する。この時点で、該カラムは、500 mlの培養培地で培養した大腸菌細胞由来のタンパク質の単離用に調製できている。
【0096】
(D. 大腸菌の調製)
手順は、4℃でできるだけ早く行うべきである。最初に、1 グラム大腸菌(湿重量)を2倍容のPBSで5回、各サイクル5000 rpm で15秒間遠心分離し、その後細菌細胞を再懸濁することによって、洗浄する。細胞を、最終洗浄後、5 ml PBSに希釈する。その後、該細胞を、30秒間6回、超音波分解(20 kHz, 50-60 W)する。得られた溶液を、12,000 rpm で10分間遠心分離する。沈殿を捨て、上清を該カラムに負荷する。
【0097】
(E. タンパク質の分離)
該上清を負荷した後、該カラムを10倍容の緩衝液Aで洗浄する。次いで、5倍容の緩衝液Bで行う。タンパク質画分を、5 ml 緩衝液Cで溶出し、回収する。
(F. 該カラムから回収された該タンパク質の透析)
該貯留された画分を透析袋に入れ、0℃で200倍容のPBSに対して、30分間一定に撹拌しながら透析する。30分後、0℃で、該溶液を新鮮な200倍容のPBSに替え、また一定に撹拌する。その後、該画分を、5リットルのPBS中、40℃で一晩透析する。当技術分野で十分公知のとおり、ブラッドフォード、又はローリータンパク質定量法でタンパク質濃度を決定する[Harlow、及びLaneの著書、「抗体:実験室手引き書」Cold Spring Harbor Laboratory Press, New York, (1988)]。該溶液を700℃で凍結し、凍結乾燥する。
【0098】
(実施例5)組み換えHPV16、及びHPV18 E7タンパク質に対するマウスモノクローナル抗体の製造
Balb/c マウス [16〜18グラム(g)の体重の雌10匹]に、高度に精製されたHPV16 E7、及びHPV18 E7を用いて、免疫感作間に2週間の間隔をあけて、2回後肢足蹠に免疫感作させた。組み換え大腸菌溶解物の該HPV16 E7、及びHPV18 E7調製物を、一段階金属キレートクロマトグラフィーを用いて精製した。1回目の免疫感作は、20 μl のリン酸緩衝生理食塩水("PBS")に希釈された20 μg のタンパク質を、等量のフロイント完全アジュバントと混合して含有した。また、2回目の免疫感作は、20 μl のリン酸緩衝生理食塩水("PBS")に希釈された20 μg のタンパク質を含有したが、等量のフロイント不完全アジュバントと混合した。2回目の免疫感作後第4日目に、膝窩リンパ節由来のリンパ球を、ポリエチレングリコール (PEG) 4000を用い、Sp2/0-Ag14 骨髄腫細胞 (米国微生物系統保存機関("ATCC")CRL 1581、ATCC CRL 8287;欧州細胞培養保存機関85072401; DSMZヒト、及び動物細胞培養ACC 146)にハイブリダイズした。該ハイブリドーマを、ヒポキサチン-アミノプテリン-チミジン ("HAT") 培地で、37℃、5%CO2で2週間インキュベートした。生存している選択されたハイブリドーマを、間接ELISAを用いてスクリーニングした。ポジティブな培養を、限定希釈技術を用いて、2回クローニングした[Campbell, A. M.の著書「生化学、及び分子生物学における実験室技術」内の「モノクローナル抗体、及び免疫センサー技術」vol. 23 (1991)を参照されたい]。該ELISAを下記のとおり行った。組み換え HPV16、HPV18 E7タンパク質を2 μg/mlの濃度で、ポリスチレンプレートに、該プレートを37℃で1時間吸着させ、その後プレートをPBSで3回洗浄し、50 μl の組織培養上清を該プレートに加え、37℃で1時間インキュベートした。該固定化された抗原に結合したモノクローナル抗体を、ペルオキシダーゼ結合ヤギ抗マウス免疫グロブリン G (IgG) [H+L] を37℃で1時間用いることにより検出した。過酸化水素を含有したテトラメチルベンジジン("TMB")溶液を、基質とした。光学密度を450 nm で測定した。HPV16 E7タンパク質に対して、716-281、及び716-288 (IgG2b)抗体、同様に716-321、716-325、716-332、及び716-343 (IgG2a) 抗体を製造する、2種のハイブリドーマ群を得た。それらは、間接ELISAにおいて、HPV16、及びHPV18 E7と同様によく相互作用した (表2参照)。
【0099】
【表3】
【0100】
(実施例6)モノクローナル抗体を用いた、HPV16、及びHPV18 E7タンパク質の定量のための、酵素免疫測定法実施条件の最適化
HPV16 E7に対するモノクローナル抗体をマウス腹水から回収し、プロテインGセファロースアフィニティーカラム上で精製した(95%以上の純度)。該抗体を、過ヨウ素酸技術を用い、西洋ワサビペルオキシダーゼで標識した。対合されたモノクロナール抗体の組合せ全てを、ELISA で、HPV16 E7に対する抗原アフィ二ティーに関して調べた。該モノクローナル抗体対合を行うのに、該モノクローナル抗体対の1要素をポリスチレンプレートに固定化した。0.039〜5.0 ng/mlの濃度範囲に及ぶ、HPV16 E7タンパク質の7段階の2倍希釈を、トレー上の固定化された該モノクローナル抗体に導入した。形成された免疫複合体を、ペルオキシダーゼに結合された該モノクローナル抗体対の第2要素を、基質となるテトラメチルベンジジンと加えることにより検出した。調べた該モノクローナル抗体対の全てが、三重複合体(サンドイッチ)-固定化された抗体-E7-結合された抗体を形成する能力があったことは、10-12〜10-9 モル(M)の濃度範囲でさえ、溶液中のHPV16 E7タンパク質のオリゴマー状態を示唆する。全ての該モノクローナル抗体の組合せが機能したにもかかわらず、同一の抗体、又は同一の免疫グロブリンアイソタイプに属する抗体の対は、異なったアイソタイプからのモノクローナル抗体の対より、より低い感度レベル(設定されたHPV16 E7濃度に関連する光学密度値、及び検量線の傾き)を示した。感度、及びバックグラウンドがない点では、716-281モノクローナル抗体を該プレートに結合させ、かつ716-332モノクローナル抗体をペルオキシダーゼ結合体として用いたときに、最良の結果を得た。このモノクローナル抗体対を用いた該測定法を、吸着用の抗体濃度、結合体希釈の量、緩衝液組成、及び該ELISA の全ての段階の時間、及び温度を変えることにより最適化した。最適条件下でのHPV16 E7の定量検量線を図11に示す。該716-288モノクローナル抗体を、pH 9.6 の0.1 モーラー(M)炭酸緩衝液、かつ5 μg/mlの濃度から、吸着させた。ペルオキシダーゼ含有716-332 MoAb 結合体の作業希釈は、0.2% ウシ血清アルブミン(BSA)、及び0.05% Tween 20を含有するリン酸緩衝液生理的食塩水(PBS)中で1/5,000であった。該基質は、テトラメチルベンジジン(TMB)であった。該タンパク質濃度を、ng/ml でx軸沿いに示す。45 ナノメーター (nm)での光学密度をy軸沿いに示す。3回の独立実験の実験誤差をこの曲線沿いに示す。該図から明らかなとおり、該検量線は、0.039〜5.0 ng/ml の抗原濃度範囲にわたって、ほぼ直線であり、またバックグラウンドが全くないことを特徴とする。HPV16 E7の存在を、ml当たりわずか40 ピコグラム(pg)で検出することができ、トランスフェクトした細胞、及び臨床試料におけるHPV16 E7の発現レベルを決定するのに十分である(図11参照)。
【0101】
(実施例7)子宮頸部試料におけるE7癌タンパク質の測定
子宮頸部の擦り取り由来の試料を、1 mlの生理食塩水 (0.83% NaCl)につけ、3回、冷凍、及び解凍した。その後、該試料を、10,000 rpm で10分間マイクロ(エッペンドルフ)遠心分離した。上清を、PBS-AT (0.2%BSA、及び0.1%Tweenを含有するPBS)中で1:1 (v/v)に希釈した。その時点で200 μl をあらかじめ 5μg/ml濃度で抗HPV16 E7 モノクローナル抗体で結合されたプレートの穴に導入し、4穴で、2倍段階希釈を用いて力価測定した。この同一プレート内で、4 ng/mlから0.062 ng/mlまでの精製された組み換えHPV16 E7タンパク質を、標準として力価測定した。1時間のインキュベート、及び洗浄後、ペルオキシダーゼ標識結合抗HPV16 E7モノクローナル抗体を導入し、インキュベートを1時間続け、TMB反応を展開した。光学密度を、マルチスキャン分析器の波長450 nmで測定した。検量線を、標準の希釈の光学密度に基づきプロットし、それを用いて、試料中の該E7濃度を決定した。
【0102】
スクリーニング研究を行なった(n = 100)。HPVが検出されない、或いは"低リスク" HPVによる感染が検出された、健康な患者由来の試料をコントロールとした (n = 10)。
すべての健康な患者由来の試料は、E7に関してネガティブ、或いはいくつかの場合ではわずかにポジティブであった。ただし、すべての場合において、該E7含量は0.05 ng/ml未満である。
ポジティブ試料は、0.05 ng/ml の濃度閾値を越えた。得られたデータを表2に示す。
【0103】
【表4】
【0104】
該データに示すとおり、該診断用スクリーニング方法の結果は、医療診断と一致した。また、該HPV分類データは、診断データと一致し、従って、それを用いて、子宮頸癌の発症のリスクを予測できる。
【0105】
(実施例8)PrPに対するモノクローナル抗体の製造
G3、G4、及び G5の各ペプチドを、当技術分野で十分公知のとおり、合成で製造した[B.D. Hames編集シリーズ「実践アプローチシリーズ」Oxford University Press, (2000)内のW.C. Chan、及びP.D. White編集「Fmoc 固相ペプチド合成、実践アプローチ」]。該ペプチドを凍結乾燥し、本質的に塩フリーであること、かつHPLCでの95%純度 であることを調べた。100マイクログラムの各ペプチドを、0.1 ml 100 mM リン酸ナトリウム緩衝液, pH 6.8 (結合用緩衝液)で溶解し、"ペプチド溶液"を作成した。HSP70 (1mg/ml)溶液を、結合用緩衝液で作り、"HSP70 溶液"を作った。各ペプチドに関して、ペプチド溶液 (0.1 ml)を、200μgのHSP70を含有する0.2 ml HSP70溶液と混合し、HSP70よりほぼ15〜20倍モーラー過剰の該ペプチドを得た。速やかに、グルタルアルデヒド溶液(水で25%グルタルアルデヒド)を、0.05%(v/v)まで混合物に加え、一定に振盪しながら、常温で3時間インキュベートした。結合反応を、0.5 M グリシン溶液を0.1 M最終濃度まで加えることにより止め、該同一条件下でさらに30分間インキュベートした。その後、該反応混合物を、100 ml PBS (10 mM リン酸ナトリウム、150 mM 塩化ナトリウム、pH 7.2)に対して、4℃で一晩透析した。該結合反応の効率は、当技術分野で十分公知のとおり、SDS-PAGE で調べ、結果から、遊離HSP70が残存していないことが示された。製造された結合体を分注し、防腐剤を加えずに-70℃で保存した。
【0106】
雌Balb/c マウス(18〜20 g)に、50 μlの該ペプチド-hsp70結合体溶液を、間に2週間の間隔をあけて、2回後肢足蹠に免疫感作させた。第16日目に、膝窩リンパ節を採取し、当技術分野で十分公知で、かつ本明細書中で記載のとおり、通常のハイブリドーマ技術を用いながら、適切なBalb/c骨髄腫細胞株との融合のためにB細胞に関してプロセスした。
【0107】
一次スクリーニングを、下記の結果を有する、ポリスチレンプレートにコートされたG3、G4、G5ペプチドを用いて、間接ELISAで行った:
ペプチドG3 ハイブリダイゼーションから、少数の一次培養が得られるが、ポジティブなものはさらに少なく、それらは、後に活性を失った。
ペプチドG4 異なった群から4 種のクローンを確立し、3回クローニングした。
ペプチドG5 - 異なった群から6 種のクローンを確立し、3回クローニングした。
【0108】
腹水を作り、また相当するぺプチド、及び完全長組み換えPrPで調べた。表3は、単離されたクローン名、各々が特異的なペプチド、及び免疫グロブリンアイソタイプを示す。表4は、該結合タンパク質を作成するのに用いた該ペプチドをポリスチレンプレート上に吸着させる、間接ELISAの結果を示す。表5は、本来のPrP タンパク質をポリスチレンプレート上に吸着させる、間接ELISAの結果を示す。
【0109】
【表5】
【0110】
【表6】
【0111】
【表7】
【0112】
先に示された該モノクローナル抗体の全ては、それらを製造するのに用いられた免疫原に高アフィニティーを有する。しかしながら、特定の一実施態様において、モノクローナル抗体5G55は、組み換えPrPと強く反応する。この抗体を、ELISA、ウエスタンブロット、及び免疫組織学を利用する、任意の用途に使用することができる。他の残りのモノクローナル抗体は、組み換えPrPに 低から中程度の結合特異性を示す。
【0113】
(実施例9)MMP3に対するモノクローナル抗体の製造
他の抗原に関して前記のとおり、BALB/cマウスに、MMP 3 (25μg/マウス)を後肢足蹠に免疫感作させた。該マウスは、2週間後に第2回目の免疫感作を受けた。第2回目の免疫感作後第4日目に、リンパ節を採取し、該節由来のB細胞を骨髄腫Sp2/0-Ag14 細胞と融合し、96穴プレートに入れた。また、免疫血清を採取し、調べた。
【0114】
表6は、PBS中2 μg/mlでポリスチレンプレート上に4℃で一晩吸着させたMMP3を用いて、OD 450 nmで測定した間接ELISAの結果を示す。すべての他のインキュベーションは、当技術分野で十分公知のとおり、0.5% BSA、及びTween 20を含有するPBS 中で行った。該結果から、MMP3により免疫感作されたマウス由来の血清が、非免疫マウスの血清から有意な差を示さないことが示される。
【0115】
【表8】
【0116】
また、すべての初期クローンを、該MMP3上の間接ELISA 、及びビオチン標識MMP3での直接ELISA により調べた。非結合MMP3を用いて、ポジティブクローンは作製されなかった。その後、PrPに関して先に記載したのと同じ方法を用いて、グルタルアルデヒドを使用し、MMP3をHSP70に結合した。
【0117】
その後、結合型MMP3 (50μg/マウス)を用い、前記のとおり、Balb/cマウスに免疫感作させた。2回目の免疫感作後第4日目に、リンパ節を採取し、当技術分野で十分公知のとおり、プロセスした。単離されたB細胞を、骨髄腫 sp 2/0 細胞と融合し、96穴プレートに入れた。また、免疫血清を採取し、調べた。結果を表7に示す。表7は、ポリスチレンプレート上に4℃で一晩吸着させたMMP3 2 μg/ml PBSを用いて、OD 450 nmで測定された間接ELISAの結果を示す。すべての他のインキュベーションは、当技術分野で十分公知のとおり、0.5% ウシ血清アルブミン ("BSA")、及びTween 20を含有するPBS 中で行った。該結果から、結合されたMMP3-HSP70を免疫感作されたマウス由来の血清が、非免疫マウスの血清に比べて、MMP3に対して有意なアフィ二ティーを有することが示された。
【0118】
【表9】
【0119】
また、すべての初期クローンを、MMP3(2 μg/ml)を用いた間接ELISA 、及びビオチン標識MMP3(500 ng/ml)での直接ELISA により調べた。8種のポジティブクローンを間接ELISAにより検出し、6 種のポジティブクローンを直接ELISAにより検出した。すべてのポジティブクローンをクローニングし、そのうち4種は、安定した抗体製造を有し、2〜3回クローニングした。表8は、該クローン、及び免疫グロブリンアイソタイプを特定する。表9は、プレート上に吸着された1 μg/mlのMMP3を用いる、間接ELISA、及び0.5 μg/ml MMP3-ビオチンを用いる直接ELISAの結果を示す。該結果から、該クローンがMMP3に対して高アフィ二ティーを有することが示される。
【0120】
【表10】
【0121】
【表11】
【0122】
先の明細書に記載のすべての文献、及び特許は、引用により、本明細書中に取り込まれるものとする。本発明の趣旨、及び範囲から離れることのない、本発明の記載された方法、及び系の様々な調整、及び変更は、当業者に明らかである。本発明を、具体的な好ましい実施態様に関連して記載しているが、本発明は、請求されるとおり、そのような具体的な実施態様に必要以上に限定されるべきでないと、理解されるべきである。実際に、本発明を行うための、記載された態様の様々な調整は、免疫学、医学生化学、分子生物学、又は関連分野の業者にとって明らかであり、続く請求項の範囲内であるものとする。
【図面の簡単な説明】
【0123】
【図1】図1は、HSP70が抗原の提示をいかに促進するかを示す。
【図2】図2は、ヒト乳頭腫ウイルスの病理学を示す流れ図を示す。CINは子宮頸部上皮内腫瘍のことを言う。HSVは、単純ヘルペスウイルスのことを言う。HLAは、ヒト白血球抗原のことを言う。
【図3】PCRを用いたE7遺伝子増幅のためのプライマーの配列(配列番号: 14〜17)を示す。
【図4】図4は、EcoRI、及びBamHIの制限酵素認識部位をもつ、HPV16由来のクローンE7癌タンパク質のオリゴヌクレオチド(配列番号: 1)、及びアミノ酸配列(配列番号: 2)を示す。
【図5】図5は、EcoRI、及びBamHIの制限酵素認識部位をもつ、HPV18由来のクローンE7癌タンパク質のオリゴヌクレオチド(配列番号: 3)、及びアミノ酸配列(配列番号: 4)を示す。
【図6】図6は、HPV16 E7、及び代わりとしてHPV18 E7遺伝子を、 pBluescipt SK (+) (Stratagene社) プラスミド内のEcoRI-BamHI部位に挿入する位置のコンストラクト(配列番号: 18)を示す。
【図7】図7は、HPV16 E7、及びHPV18 E7遺伝子でトランスフェクトされた、大腸菌溶解物由来のE7癌タンパク質の単離されたバンドを明示している、電気泳動ゲルの写真を示す。
【図8】図8は、E7遺伝子を含むDNAの、PCR 増幅に用いられたDNA 鋳型(配列番号: 19〜22)を示す。該鋳型は、該HPV E7 遺伝子を含む、プラスミドDNA pHE716、及びpHE718に基づいている。
【図9】図9は、プラスミドPQE30-E716-dnaKの構造の概略図を示す。
【図10】図10は、プラスミドPQE30-E716-dnaKオリゴヌクレオチド配列(配列番号: 5)を示す。
【図11】図11は、至適条件下のHPV16 E7癌タンパク質の定量に用いる検量線を示す。
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明の方法、及び組成物は、医学生化学の分野であり、一般的に、従来の低免疫原性の抗原に特異的なモノクローナル抗体の開発、及び使用に関する。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
免疫系には、2種の部門、獲得、及び自然免疫反応がある。免疫系のこれらの2部門は、協力し、外来の侵入物と闘う。獲得免疫反応を生じさせることができる任意の物質を抗体という。外来の分子は抗原として作用し、免疫反応を刺激し、抗体の製造をもたらす。しかし、分子によっては、免疫反応を刺激しないものもある。これまで、これは、フロイント完全アジュバントなどのアジュバントを用いることにより克服し、自然免疫系を活性化した。
【0003】
しかしながら、アジュバントの使用にもかかわらず、依然として、多くの分子は、抗原特異的抗体の製造をもたらす免疫反応を生じさせない。特に、自然源由来の多くの抗原は、十分で、かつ分子特異的な免疫反応を生じさせないことが多い。多くの場合、化学合成、及び組み換え技術を用いて、抗原を製造する。しかしなから、これらの合成的に得られた抗原は、本来の分子と同様の三次構造をもたないことが多い。抗体が、該合成された抗原に対して作成されると、該抗体は、該本来の分子を認識しない。
【0004】
本発明は、従来適切で、かつ特異的な免疫反応を生じさせることができないでいた抗原に、抗原特異的抗体の製造を可能にする、新規の方法、及び組成物を提供する。これらの抗体は、疾患の治療(例えば、癌、ウイルス感染などがあるが、それに限定しない)、免疫診断、免疫化学、免疫組織学、免疫細胞学、免疫アフィニティークロマトグラフィー、及びゲノム、及びプロテオミクス研究などの多くの異なった用途に有用であるが、それに限定しない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、従来の低免疫原性の抗原に特異的なモノクローナル抗体の開発、及び使用のための方法、キット、及び組成物を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(発明の要約)
本発明は、低免疫原性の抗原に特異的なモノクローナル抗体を製造する方法であって、該抗原を担体分子に結合させること、動物に該結合された抗原を免疫感作させること、該動物からB細胞を採取すること、該採取されたB細胞からハイブリドーマを作製すること、及び該ハイブリドーマを本来の抗原でスクリーニングすること、を含む前記方法に関する。一実施態様において、該担体分子はHSP70である。別の実施態様において、該動物は正常な免疫系を有する。また別の実施態様において、該動物は哺乳動物である。さらなる実施態様において、B細胞を、腹水、脾臓、リンパ節、又は血液から、個別か、或いは組合せて採取する。またさらなる実施態様において、該ハイブリドーマをマウス骨髄腫細胞、ヒト不死化細胞、又はラット不死化細胞などの不死化細胞を用いて作製するが、それらに限定しない。他の実施態様において、該特異性のスクリーニングを、ラジオイムノアッセイ、酵素結合免疫吸着測定法、"サンドイッチ"免疫測定法、免疫放射定量測定法、ゲル拡散沈降反応、免疫拡散法、インサイチュー免疫測定法、ウエスタンブロット、沈降反応、凝集法、補体結合反応法、免疫蛍光測定法、プロテインA法、ウイルス可視化反応、生物活性調整測定法、及び免疫電気泳動法からなる群から選択される方法で行う。
【0007】
また、本発明は、低免疫原性の抗原に特異的なモノクローナル抗体を含む組成物であって、該モノクローナル抗体を、該抗原を担体分子と化学的に結合させること、動物に、該結合された抗原を免疫感作させること、該動物からB細胞を採取すること、該採取されたB細胞からハイブリドーマを作製すること、及び該ハイブリドーマを本来の抗原への特異性でスクリーニングすることにより製造する、前記組成物に関する。具体的な実施態様において、該担体分子はHSP70である。別の実施態様において、該動物は正常な免疫系を有する。また別の実施態様において、該動物は哺乳動物である。さらなる実施態様において、B細胞を、腹水、脾臓、リンパ節、又は血液から、個別か、或いは組合せて採取する。またさらなる実施態様において、該ハイブリドーマを不死化細胞は、マウス骨髄腫細胞、ヒト不死化細胞、又はラット不死化細胞などの不死化細胞を用いて作製するが、それらに限定しない。他の実施態様において、該特異性のスクリーニングを、ラジオイムノアッセイ、酵素結合免疫吸着測定法、"サンドイッチ"免疫測定法、免疫放射定量測定法、ゲル拡散沈降反応、免疫拡散法、インサイチュー免疫測定法、ウエスタンブロット、沈降反応、凝集法、補体結合反応法、免疫蛍光測定法、プロテインA測定法、ウイルス可視化反応、生物活性調整測定法、及び免疫電気泳動法からなる群から選択される方法で行う。
【0008】
さらに、本発明は、E7癌タンパク質に特異的なモノクローナル抗体を製造する方法であって、該E7癌タンパク質を担体分子に化学的に結合させること、動物に、該結合された抗原を免疫感作させること、該動物からB細胞を採取すること、該採取されたB細胞からハイブリドーマを作製すること、及び該ハイブリドーマを本来のE7癌タンパク質への特異性でスクリーニングすることを含む、前記方法に関する。別の実施態様において、該化学結合は、E7癌タンパク質をコードするオリゴヌクレオチド配列、及びHSP70をコードするオリゴヌクレオチド配列をもつプラスミドを作製すること;及び宿主細胞を、該宿主細胞が該オリゴヌクレオチド配列を該結合されたE7癌タンパク質へ転写する、該プラスミドでトランスフェクトすることを含む。また別の実施態様において、該E7癌タンパク質をコードするオリゴヌクレオチド配列は配列番号: 1である。さらなる実施態様において、該E7癌タンパク質をコードするオリゴヌクレオチド配列は配列番号: 3である。またさらなる実施態様において、該HSP70をコードするヌクレオチド配列は配列番号: 5である。他の実施態様において、該宿主細胞は、大腸菌である。実施態様において、該担体分子はHSP70である。別の実施態様において、該動物は正常な免疫系を有する。また別の実施態様において、該動物は哺乳動物である。さらなる実施態様において、B細胞を腹水、脾臓、リンパ節、又は血液から、個別か、或いは組合せて採取する。またさらなる実施態様において、該ハイブリドーマをマウス骨髄腫細胞、ヒト不死化細胞、又はラット不死化細胞などの不死化細胞を用いて作製するが、それらに限定しない。具体的な実施態様において、該マウス骨髄種細胞はSp2/0-Ag14骨髄腫細胞である。他の実施態様において、該特異性のスクリーニングを、ラジオイムノアッセイ、酵素結合免疫吸着測定法、"サンドイッチ"免疫測定法、免疫放射定量測定法、ゲル拡散沈降反応、免疫拡散法、インサイチュー免疫測定法、ウエスタンブロット、沈降反応、凝集法、補体結合反応法、免疫蛍光測定法、プロテインA測定法、ウイルス可視化反応、生物活性調整測定法、及び免疫電気泳動法からなる群から選択される方法で行う。
【0009】
さらに、本発明は、E7癌タンパク質に特異的なモノクローナル抗体を含む組成物であって、該モノクローナル抗体を、該E7癌タンパク質を担体分子と化学的に結合させること、動物に、該結合された抗原を免疫感作させること、該動物からB細胞を採取すること、該採取されたB細胞からハイブリドーマを作製すること、及び該ハイブリドーマを本来の抗原への特異性でスクリーニングすることを含む方法で製造する、前記組成物を提供する。別の実施態様において、該化学結合が、E7癌タンパク質をコードするオリゴヌクレオチド配列、及びHSP70をコードするオリゴヌクレオチド配列をもつプラスミドを作製すること;及び宿主細胞を、該宿主細胞が該オリゴヌクレオチド配列を該結合されたE7癌タンパク質へ転写する、該プラスミドでトランスフェクトすることを含む。さらに別の実施態様において、該E7癌タンパク質をコードするオリゴヌクレオチド配列は配列番号: 1である。さらなる実施態様において、該E7癌タンパク質をコードするオリゴヌクレオチド配列は配列番号: 3である。またさらなる実施態様において、該E7 HSP70をコードするオリゴヌクレオチド配列は配列番号: 5である。他の実施態様において、該宿主細胞は、大腸菌である。実施態様において、該担体分子はHSP70である。別の実施態様において、該動物は正常な免疫系を有する。また別の実施態様において、該動物は哺乳動物である。さらなる実施態様において、B細胞を腹水、脾臓、リンパ節、又は血液から、個別か、或いは組合せて採取する。またさらなる実施態様において、該ハイブリドーマをマウス骨髄腫細胞、ヒト不死化細胞、ラット不死化細胞など不死化細胞を用いて作製するが、それらに限定しない。具体的な実施態様において、該マウス骨髄種細胞はSp2/0-Ag14骨髄腫細胞である。他の実施態様において、該特異性のスクリーニングを、ラジオイムノアッセイ、酵素結合免疫吸着測定法、"サンドイッチ"免疫測定法、免疫放射定量測定法、ゲル拡散沈降反応、免疫拡散法、インサイチュー免疫測定法、ウエスタンブロット、沈降反応、凝集法、補体結合反応法、免疫蛍光測定法、プロテインA測定法、ウイルス可視化反応、生物活性調整測定法、及び免疫電気泳動法からなる群から選択される方法で行う。
【0010】
また、本発明は、子宮頸部上皮内腫瘍の検出のために、E7癌タンパク質に特異的なモノクローナル抗体を用いる方法であって、子宮頸部上皮の試料を得ること、及び該試料をE7癌タンパク質の存在でスクリーニングすることを含む、前記方法を提供する。具体的な実施態様において、該E7癌タンパク質の存在のスクリーニング方法を、ラジオイムノアッセイ、酵素結合免疫吸着測定法、"サンドイッチ"免疫測定法、免疫放射定量測定法、ゲル拡散沈降反応、免疫拡散法、インサイチュー免疫測定法、ウエスタンブロット、沈降反応、凝集法、補体結合反応法、免疫蛍光測定法、プロテインA測定法、ウイルス可視化反応、生物活性調整測定法、及び免疫電気泳動法からなる群から選択する。別の実施態様において、E7癌タンパク質の存在は0.05 ng/ml以上である。また別の実施態様において、該モノクローナル抗体は、少なくとも2種の免疫グロブリンアイソタイプを含む。さらなる実施態様において、1種の免疫グロブリンアイソタイプはIgG2aであり、もう1種はIgG2bである。また、別の実施態様において、1種の免疫グロブリンアイソタイプは、第二の免疫グロブリンアイソタイプとは異なる抗原決定基への特異性を有する。
【0011】
さらに、本発明は、個体が、子宮頸部上皮内腫瘍を発症するリスクを判断するキットであって、少なくとも1種の、E7癌タンパク質を特異的に検出する試薬、及び該個体が、子宮頸部上皮内腫瘍を発症するリスクが高いことを判断する取扱説明書を含む、前記キットを提供する。実施態様において、該試薬はE7癌タンパク質に特異的なモノクローナル抗体である。
【0012】
同様に、本発明は、プリオンタンパク質に特異的なモノクローナル抗体を製造する方法であって、 該プリオンタンパク質を担体分子に化学的に結合させること、動物に、該結合された抗原を免疫感作させること、該動物からB細胞を採取すること、該採取されたB細胞からハイブリドーマを作製すること、及び該ハイブリドーマを本来のプリオンタンパク質への特異性でスクリーニングすることを含む、前記方法を提供する。具体的な実施態様において、該結合を、グルタルアルデヒドを用いて化学的に行う。他の実施態様において、該担体分子はHSP70である。別の実施態様において、該動物はマウスである。さらなる実施態様において、該スクリーニングを、酵素結合免疫吸着測定法を用いて行う。
【0013】
さらに、本発明は、個体が、海綿状脳症を発症するリスクを判断するキットであって、少なくとも1種の、プリオンタンパク質を特異的に検出する試薬、及び該個体が、海綿状脳症を発症するリスクが高いことを判断する取扱説明書を含む、前記キットを提供する。
【0014】
また、本発明は、ヒアルロン酸に特異的なモノクローナル抗体を製造する方法であって、該ヒアルロン酸を担体分子に化学的に結合させること、動物に、該結合された抗原を免疫感作させること、該動物からB細胞を採取すること、該採取されたB細胞からハイブリドーマを作製すること、及び該ハイブリドーマを本来のヒアルロン酸への特異性でスクリーニングすることを含む、前記方法を提供する。
【0015】
さらに、本発明は、マトリックスメタロプロテアーゼ3に特異的なモノクローナル抗体を製造する方法であって、マトリックスメタロプロテアーゼ3を担体分子に化学的に結合させること、動物に、該結合された抗原を免疫感作させること、該動物からB細胞を採取すること、該採取されたB細胞からハイブリドーマを作製すること、及び該ハイブリドーマを本来のマトリックスメタロプロテアーゼ3への特異性でスクリーニングすることを含む、前記方法を提供する。具体的な実施態様において、該結合を、グルタルアルデヒドを用いて化学的に行う。別の実施態様において、該担体分子はHSP70である。また別の実施態様において、該動物はマウスである。また別の実施態様において、該スクリーニングを、酵素結合免疫吸着測定法を用いて行う。
【発明の詳細な説明】
【0016】
(定義)
本発明の理解を容易にするために、多くの用語を下記に定義する。本明細書中で使われる"化学的に結合された"、又は"化学的に結合させること"という用語は、該抗原を該担体分子に化学的に連結させることを言う。この連結は、該抗原、及び該担体分子の両方のアミノ酸配列、又はその一部を含む、ハイブリッドタンパク質を製造し得る組み換え技術を用いて、遺伝子レベルで生じ得る。このハイブリッドタンパク質は、該抗原、及び該担体分子の両方をコードするオリゴヌクレオチド配列、又はその一部により製造される。また、この結合は、他の化学反応を用いて、該抗原と該担体分子の間に作られる共有結合を含む。該化学反応の例を挙げると、グルタルアルデヒド反応があるが、それに限定しない。また、共有結合は、抗原を担体分子に橋渡しする第三の分子を用いて作られる。これらの架橋剤は、該抗原、及び該担体分子の、例えば、第一級アミン、スルフヒドリル、カルボニル、炭水化物、又はカルボン酸などの官能基と反応できるが、それらに限定しない。また、化学結合は、該抗体と該担体分子間の非共有結合を含む。
【0017】
本明細書中で使われる"担体分子"という用語は、該対象の抗原に化学的に結合し、その本来の抗原に特異的な抗体をもたらす免疫反応を可能にする、任意の分子のことを言う。
本明細書中で使われる"本来の"、"天然の"、"本来の抗原"、又は"天然の抗原"、という用語は、天然に存在する抗原のことを言う。本発明に関して、該"本来の抗原"は、"低免疫原性"である。"低免疫原性"とは、天然の分子が、高親和性の抗体の製造をもたらす、強い免疫反応を生じさせることができないことを言う。"抗原"、"対象の抗原"という用語、又は具体的な分子 −例えば、E7癌タンパク質、プリオンタンパク質、マトリックスメタロプロテアーゼ3、ヒアルロン酸などがあるが、それらに限定しない− は、その分子全体、又はその本来の抗原に特異的な抗原の特殊性を保持する、その任意の部分を含む。
【0018】
本明細書中で使われる"正常な免疫系"という用語は、外来の抗原に免疫反応を起こすことができる、機能的な免疫系をもつ動物のことを言う。該免疫反応は、抗体を分泌するB細胞を作成する能力を含む。
本明細書中で使われる"アミノ酸配列"という用語は、天然のタンパク質分子のアミノ酸配列のことを言い、"アミノ酸配列"、及び"ポリペプチド"、"タンパク質"などの同類語は、該列挙されたタンパク質分子に関連した、完全な本来のアミノ酸配列に限定するものではない。
【0019】
本明細書中で使われる"コードする核酸"、"コードするDNA配列"、"コードするDNA "という用語は、デオキシリボ核酸の一本鎖に沿ったデオキシリボヌクレオチドの順序、または配列のことを言う。これらのデオキシリボヌクレオチドの順序は、ポリペプチド(タンパク質)鎖に沿ったアミノ酸の順序を決定する。従って、該DNA配列は、該アミノ酸配列をコードする。
【0020】
DNA分子は、"5'末端 "、及び"3'末端 "があると言う。それは、1種のモノヌクレオチドペントース環の5'リン酸が、隣接するペントース環の3'酸素に、ホスホジエステル結合で一方向に結合される様式で、モノヌクレオチドを反応させ、オリゴヌクレオチド、又はポリヌクレオチドを作るからである。従って、オリゴヌクレオチド、又はポリヌクレオチドの末端は、その5'リン酸がモノヌクレオチドペントース環の3'酸素に結合していなければ、"5'末端 "、その3'酸素が、それに続くモノヌクレオチドペントース環の5'リン酸に結合していなければ、"3'末端 "と言う。本明細書中で使われる核酸配列は、大きなオリゴヌクレオチド、又はポリヌクレオチドに対して内部にあっても、5'、及び3'末端があると言うことができる。直鎖、又は環状DNA分子のいずれにおいても、個々の因子は、その"下流"、又は3'の因子の"上流"、又は5'であると言う。この専門用語は、転写が該DNAに沿って、5'から3'の方式で進行する事実を反映する。一般に、結合された遺伝子の転写を導くプロモーター、及びエンハンサー因子は、5'、又はコード領域の上流に位置する。しかしながら、エンハンサー因子は、該プロモーター因子、及び該コード領域の3'に位置しても、その効果を発揮することができる。転写終結、及びポリアデニル化シグナルは、該コード領域の3'、または下流に位置する。
【0021】
本明細書中で使われる"コードするヌクレオチド配列を有するオリゴヌクレオチド"、及び"コードするヌクレオチド配列を有するポリヌクレオチド"という用語は、遺伝子の該コード領域を含む核酸配列、言い換えれば、遺伝子産物をコードする核酸配列を意味する。該コード領域は、cDNA、ゲノムDNA、又はRNAの形態で存在し得る。DNAの形態で存在するときは、オリゴヌクレオチド、又はポリヌクレオチドは、一本鎖(すなわち、センス鎖)、又は二本鎖であり得る。適切な転写の開始、及び/又は一次RNA 転写物の正確なプロセシングを可能にする必要がある場合は、エンハンサー/プロモーター、スプライス部位、ポリアデニル化シグナルなどの適切なコントロール因子を、該遺伝子の該コード領域の近くに位置させることができる。その代わりとして、本発明の発現ベクターで使用されるコード領域は、内在性のエンハンサー/プロモーター、スプライス部位、介在配列、ポリアデニル化シグナルなど、又は内在性、及び外来性の両方のコントロール因子の組合せを含むことができる。
【0022】
本明細書中で使われる"調節因子"という用語は、核酸配列の発現のある面をコントロールする遺伝的因子のことをいう。例えば、プロモーターは、操作上結合されたコード領域の転写開始を容易にする調節因子である。他の調節因子は、スプライスシグナル、ポリアデニル化シグナル、終結シグナルなどを含む。
【0023】
"増幅"は、鋳型特異性が関与する、特殊な核酸複製の場合である。それは、非特異的鋳型の複製(すなわち、鋳型依存性であるが、特定な鋳型に依存しない複製)と対比されるべきである。ここで、鋳型特異性は、複製忠実度(すなわち、正確なポリヌクレオチド配列の複製)、及び(リボ、又はデオキシリボ)ヌクレオチド特異性と区別される。鋳型特異性は、"標的"特異性の用語で記載されることが多い。標的配列は、それらを他の核酸配列から分類されるべく探すという意味から"標的"である。増幅技術は、主にこの分類のために考案されてきている。
【0024】
鋳型特異性は、多くの増幅技術において、酵素の選択により達成される。増幅酵素は、それらが用いられる条件下で、異種の核酸混合物の中で特定の核酸配列だけをプロセスし得る酵素である。例えば、Qレプリカーゼの場合、MDV-1 RNAが該レプリカーゼに特異的な鋳型である[D.L. Kacianらの論文、Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 69:3038 (1972)]。他の核酸を、この増幅酵素によって複製することはできない。同様に、T7 RNAポリメラーゼの場合、この増幅酵素は、それ自身のプロモーターにストリンジェントな特異性を有する [Chamberlinらの論文、Nature, 228:227 (1970)]。T4 DNAリガーゼの場合、該酵素は、結合部に該オリゴヌクレオチド、又はポリヌクレオチド基質と鋳型間に不整合がある、2種のオリゴヌクレオチド、又はポリヌクレオチドを結合しない [D.Y. Wu、及びR. B. Wallaceの論文, Genomics, 4:560 (1989)]。最後に、Taq、及びPfuポリメラーゼは、その高温で機能する能力に基づいて、境界を示される、すなわち、プライマーにより定義される配列に高い特異性を示すことが見い出される;該高温は、標的配列とのプライマーハイブリダイゼーションに有利に働くが、非標的配列とのハイブリダイゼーションには有利に働かない熱力学的条件をもたらす[H.A. Erlich 編『PCR 技術』, Stockton Press (1989)]。
【0025】
本明細書中で使われる"増幅可能な核酸"という用語は、任意の増幅方法で、増幅できる核酸に関して用いられる。通常、"増幅可能な核酸"は、通常、"試料鋳型"を含むと考えられる。
本明細書中で使われる"試料鋳型"という用語は、(下記に定義される)"標的"の存在を分析される試料由来の核酸のことを言う。それに対して、"バックグラウンド鋳型" は、試料中に存在するかどうかわからない試料鋳型以外の核酸に関して用いられる。バックグラウンド鋳型は、ほとんどの場合、故意である。それは、持ち越しの結果であり得るか、或いは、該試料から精製されてなくなるべき混入核酸の存在に起因し得る。例えば、検出されるべき細胞体以外の細胞体由来の核酸は、検査試料中にバックグラウンドとして存在し得る。
【0026】
本明細書中で使われる"プライマー"という用語は、精製された制限酵素消化物として自然に生じるか、人工的に合成されるかに関わらず、核酸鎖に相補的なプライマー伸長産物の合成を誘導する条件下に置くと(すなわち、ヌクレオチド、及びDNAポリメラーゼなどの誘導剤の存在下、かつ適切な温度、及びpHで)、合成の開始点として作用できるオリゴヌクレオチドのことを言う。増幅の最大効率のために、該プライマーは、好ましくは一本鎖であるが、その代わりとして二本鎖であり得る。二本鎖の場合は、伸長産物の作成に用いる前に、該プライマーを最初に処理し、その鎖を分離する。好ましくは、該プライマーはオリゴデオキシリボヌクレオチドである。該プライマーは、誘導剤の存在下で伸長産物の合成を準備するのに、十分長くなければならない。該プライマーの厳密な長さは、温度、プライマーの起源、及び方法の使用を含む、多くの因子に依存し得る。
【0027】
本明細書中で使われる"プローブ"という用語は、精製された制限酵素消化物として自然に生じるか、人工的に、組み換え、又はPCR増幅により合成されるかに関わらず、対象の別のオリゴヌクレオチドにハイブリダイスすることができる、オリゴヌクレオチド(すなわち、ヌクレオチドの配列)のことを言う。プローブは、一本鎖、又は二本鎖であり得る。プローブは、特定の遺伝子配列の検出、同定、及び単離に有用である。本発明で使われる任意のプローブを、任意の"レポーター分子"で標識し、任意の検出系で検出できると考えられる。該検出系の例を挙げると、酵素(例えば、ELISA、同様に酵素を基にした組織化学法)、蛍光、放射性、及び発光性の系があるが、それらに限定しない。本発明は、任意の特定の検出系、又は標識に限定することを意図しない。
【0028】
本明細書中で使われる"標的"という用語は、ポリメラーゼ連鎖反応に関して使われるときは、ポリメラーゼ連鎖反応に使われるプライマーにより境界を示される、核酸領域のことを言う。従って、該"標的"を他の核酸配列から分類されるべく探す。"断片"を、標的配列内の核酸の領域として定義する。
【0029】
本明細書中で使われる"ポリメラーゼ連鎖反応"("PCR")という用語は、引用により本明細書に取り込まれている、K.B. Mullisの方法、米国特許第4,683,195号、第4,683,202号、及び第4,965,188号のことを言う。それらには、クローニング、又は精製せずに、ゲノムDNA の混合物における標的配列の断片の濃度を高める方法が記載されている。この該標的配列を増幅するプロセスは、超過剰の2種のオリゴヌクレオチドプライマーを、該所望される標的配列を含むDNA 混合物に導入すること、次いで、DNAポリメラーゼの存在下における一連の厳密な温度サイクリングからなる。該2種のプライマーは、該二本鎖標的配列の各々の鎖に相補的である。増幅をもたらすために、該混合物を変性し、その後、該プライマーを該標的分子内の相補的配列にアニーリングした。アニーリングの後に、該プライマーをポリメラーゼで伸長させ、新しい相補鎖の対ができる。変性、プライマーのアニーリング、及びポリメラーゼ伸長は、多数回繰り返し(すなわち、変性、アニーリング、及び伸長は1"サイクル"をなす;多数の"サイクル" であり得る)、高濃度の、該所望される標的配列の増幅された断片を得ることができる。該所望される標的配列の増幅される断片の長さは、相互のプライマーの相対位置により決定され、従って、この長さはコントロール可能なパラメータである。該プロセスの繰り返す側面に基づいて、該方法は"ポリメラーゼ連鎖反応"(以下、"PCR")と言われる。標的配列の所望される増幅された断片が、(濃度に関して)該混合物の主要な配列になるので、それらは、"PCR増幅"されたといわれている。
【0030】
PCRを用いて、ゲノムDNAの特定の標的配列の単コピーを、様々な異なる方法(例えば、標識されたプローブでのハイブリダイゼーション;ビオチン化プライマーの取り込みの後、アビジン‐酵素結合検出;32P標識されたdCTP、又はdATPなどのデオキシヌクレオチド三リン酸塩の、該増幅された断片への取り込み)で、検出できるレベルまで増幅することが可能である。ゲノムDNA に加えて、任意のオリゴヌクレオチド、又はポリヌクレオチド配列を、適切なプライマー分子の組で増幅できる。具体的に、PCR プロセス自身により作製された該増幅された断片は、それに続くPCR増幅にとって十分な鋳型である。
【0031】
本明細書中で使われる、"PCR産物"、"PCR断片"、及び"増幅産物"という用語は、変性、アニーリング、及び伸長のPCR工程を2サイクル以上完了後、得られた化合物の混合物のことを言う。これらの用語は、1種以上の標的配列の1種以上の断片の増幅がある場合を含む。
本明細書中で使われる"増幅剤"という用語は、プライマー、核酸鋳型、及び増幅酵素以外の増幅に必要な試薬(デオキシリボヌクレオチド三リン酸塩、緩衝剤など)のことを言う。一般的に、増幅剤を他の反応成分とともに、反応容器(試験管、マイクロウェルなど)中に入れ、封入する。
本明細書中で使われる"制限エンドヌクレアーゼ"、及び"制限酵素"という用語は、その各々が二本鎖DNAを特定のヌクレオチド配列、又は付近で切断する、細菌酵素のことを言う。
本明細書中で使われる"組み換えDNA 分子"という用語は、分子生物学的技術で結合されているDNA断片からなる、DNA分子のことを言う。
【0032】
"ウエスタンブロット"という用語は、ニトロセルロース、又は膜などの保持体に固定化されたタンパク質(又はポリペプチド)の分析法のことを言う。
タンパク質をアクリルアミドゲル上に流し、該タンパク質を分離し、次いで、該タンパク質をゲルからニトロセルロース、又はナイロン膜などの固形支持体へ転移させる。その後、該固定化されたタンパク質を、対象の抗原に対する反応性をもつ抗体に晒す。該抗体の結合を、放射性抗体の使用を含む、様々な方法で検出できる。
【0033】
本明細書中で使われる"抗原決定基"という用語は、特定の抗体と接触する抗原の一部分(すなわち、エピトープ)のことを言う。タンパク質、又はタンパク質の断片、又は化学的部分を用いて、宿主動物に免疫感作させる場合、該抗原の多数の領域は、特定の領域、又は該タンパク質の三次構造に特異的に結合する抗体の製造を誘導できる;これらの領域、又は構造を、抗原決定基と言う。抗原決定基は、抗体への結合において、その本来の抗原(すなわち、該免疫反応を生じさせるために用いられた"免疫原")と競合し得る。
本明細書中で使われる"ベクター"という用語は、1種の細胞から別へ細胞へDNA断片を転移させる核酸分子のことを言う。"担体"という用語を、"ベクター"と同義的に用いられることもある。
【0034】
本明細書中で使われる"発現ベクター"という用語は、所望されるコード配列、及び特定の宿主細胞体における、操作上結合されたコード配列の発現に必要な適切な核酸配列を含む、組み換えDNA分子のことを言う。通常、原核生物における発現に必要な核酸配列は、プロモーター、オペレーター(任意)、及び多くの場合、他の配列とともにリボソーム結合部位を含む。真核細胞は、プロモーター、エンハンサー、及び終結、及びアデニル化シグナルを使用することが知られている。
本明細書中で使われる宿主細胞という用語は、インビトロ、又はインビボに位置するかに関わらず、任意の真核、又は原核細胞(例えば、大腸菌などの細菌細胞、酵母細胞、哺乳動物細胞、鳥類細胞、両生動物細胞、植物細胞、魚類細胞、及び昆虫類細胞)のことを言う。例えば、宿主細胞は、トランスジェニック動物内に位置することができる。
【0035】
本明細書中で使われる"トランスフェクション"という用語は、真核細胞への外来のDNAの導入のことを言う。トランスフェクションを、当技術で公知の様々な手段で行うことができ、例を挙げると、リン酸カルシウム‐DNA共沈降、DEAE‐デキストラン介在トランスフェクション、ポリブレン介在トランスフェクション、電気穿孔法、リポソーム融合、リポフェクション、プロトプラスト融合、レトロウイルス感染、及びバイオリスティックがある。
【0036】
(I. 特定の抗原は、低免疫原性を有する)
多くの低分子量の化合物があるが、それらは小型のために、単独で免疫反応を生じることができない。実施態様において、ハプテンを担体タンパク質(例えば、ウシ血清アルブミン、卵アルブミン、又はキーホールリンペットへモシアニンがあるが、それらに限定しない)と結合することができ、この結合体を免疫感作に用いる。そのような実施態様において、様々な問題が生じる。例えば、その主要な免疫反応は、該担体タンパク質に対してで、該ハプテン分子に対してではないことがあり得るので、免疫感作された動物由来の血清、及びハイブリドーマ上清を調べる際に、これを考慮すべきである。該検査で、該抗体が該ハプテンに対して、又は該結合体全体に対して特異的であるかを明らかにすべきである。
【0037】
別の問題は、該担体との結合中に生じ得る、該ハプテンの三次構造(立体構造)における変化を含むことができる。これは、該結合体内の該へプテンに特異的であるが、遊離ハプテン分子を認識できない抗体をもたらすことがある。そのような場合、別の異なる結合体を試み、該ハプテンの異なる官能基が該担体表面に露呈されることができる。
【0038】
また別の実施態様において、対象の抗原が、保存的な低免疫原性タンパク質であるか、或いは免疫反応中に、それに対するすべての特異的な抗体がすでに大変低い割合を有する、小さな抗原決定基である場合、免疫複合体での免疫感作を用いることができる。最初の場合は、該免疫複合体の抗体成分は、典型的な免疫感作の後の初期に得られる、不十分なアフィニティーを有するモノクローナル抗体であり得る。第2の場合は、強い抗原決定基に対するモノクローナル抗体を用いる。このアプローチの成功使用例は、ヒトエリスロポエチン、α、及びγインターフェロン、及び近縁種の免疫グロブリン(例えば、ラットモノクローナル抗マウスIgG抗体があるが、それらに限定しない。)である。表1参照されたい。
【0039】
他の実施態様において、そのタンパク質特性、及び十分な分子量に関わらず、極めて高度の保守性を有し、顕著な免疫反応を生じさせることができない抗原(例えば、ヘモグロビン、特定の酵素であるが、それらに限定しない。)もある。これらの特定の態様において、抗原は熱ショックタンパク質(例えば、別名HSP70として知られている熱ショックタンパク質70 kDaがあるが、それに限定しない。)と結合できる。APP結合として示された、表1を参照されたい。データから、HSP70が特定の方法でペプチド断片を露呈することにより、その提示を容易にすることが示される(図1参照)。通常、タンパク質、及びペプチドとHSP70との結合は、これらのタンパク質、及びペプチドに対する抗体の製造における急激な強化をもたらす。それにもかかわらず、他の具体的な実施態様において、HSP70‐インターフェロンγの結合で、該免疫反応の完全な抑制が見られた。
【0040】
(II. 免疫原性を高めるためにHSP を使用すること)
本明細書中に記載の方法は、担体としての熱ショックタンパク質の新規の使用法であって、対象の抗原を提示し、通常はその本来の分子に適切な免疫反応を生じさせない抗原に、抗原特異的な抗体を製造させる前記使用法を含む。細胞は、多くの機構を進化させ、予測できない、かつ危険な世界で生存するために役立っている。その1つの機構は、熱ショック応答であり、それは細胞を異常な高温(例えば、熱であるが、それに限定しない)、及び他のストレスに晒すことにより生じる。該ストレスの例を挙げると、低酸素状態、栄養欠乏、酸素ラジカル、代謝障害、ウイルス感染、食作用、及び形質転換がある。この熱ショック応答は、熱ショックタンパク質("HSP")の産生を含む。その1つのタンパク質ファミリーは、該HSP70タンパク質である。該HSP70タンパク質ファミリーは、細胞質、ミトコンドリア、同様に細胞の小胞体で機能することが見い出される。HSP70タンパク質は各々、他のタンパク質の折り畳みに役立つ場合、小グループの関連タンパク質と機能する。HSP70、及びその関連タンパク質は、タンパク質表面の疎水性アミノ酸に結合する傾向があり、そこでATP加水分解し、ATP加水分解の各サイクルで、頻繁にそのタンパク質と結合したり放したりする。この繰り返しサイクルは、該標的タンパク質の、例えば折り畳み直しに役立つ。
【0041】
これらの熱ショックタンパク質の中には、安定させたり、部分的に変性した細胞タンパク質を修復するのに役立つものもある。また、これらのHSPは、分子シャペロンとして作用する。シャペロンとして、HSPは、機能性タンパク質を分解から保護しながら、異常なタンパク質を分解場所に輸送しながら、タンパク質を異なった細胞内部位間の転移させながら、タンパク質多量体の集合を補助しながら、又は抗原提示細胞の表面上の腫瘍組織適合性複合体(MHC)分子で、抗原の提示を補助しながら、モルテングロビュール状態のタンパク質の、該タンパク質の正しく折り畳まれた最終の小型立体構造への変換を補助する。
【0042】
該免疫系は、細菌、寄生生物、及び菌類などの微生物の熱ショックタンパク質に積極的に反応する。外来のHSPの存在が、体内で迅速、かつ強力な免疫反応を引き起こすことが示されている[Murray, P.、Young, R.の論文、J. Bacteriol. 174:4193-4196 (1992)]。HSP70は、細菌、菌類、蠕虫、及び原生動物寄生虫などの、多くの病原体への免疫反応の主要な標的である [Young, R. A.、及びElliot, T.の論文、J., Cell, 59:5-8 (1989); Kaufmann, S.H.の論文、 Immunol. Today, 11:129-136, (1990); Morimoto, R.I.ら編集「生物学、及び医学における、ストレスタンパク質」Cold Spring Harbour Laboratory, Cold Spring Harbor, NY (1990)内のYoung, D.B.らの著書「ストレスタンパク質、及び感染性疾患」p. 131-165; Young, R.A.の論文、Ann. Rev. Immunol., 8:401-420(1990)]。様々な病原体のHSPでの免疫感作は、強い免疫反応を誘導し、かつこれらの病原体により引き起こされる病気に対する防御性をもたらす[Suzue, K.、及び Young, R.A.の論文、J. Immunol., 56:873-876 (1996)]。
【0043】
該体内の強い免疫反応に基づく、ワクチン担体としてのHSPの使用は、1990年代初期に始まった[Udono, H.、及びSrivastava, P.K.の論文、J. Exp. Med., 178:1391-1396, (1993); Udono, H.らの論文、Proc. Natl., Acad. Sci. USA, 91:3077-3081, (1994); Suto, R.、及びSrivastava, P.K.の論文、Science, 269:1585-1588, (1995); Blachere, N.E.らの論文、J. Exp. Med., 186:1315-1322, (1997); Tamura, Y. P.らの論文、Science, 278:117-120, (1997); Nair, S.らの論文、J. Immunol., 162:6426-6432 (1999)]。抗原のHSP70への該化学結合 [Lussow, A.R.らの論文、Eur. J. Immunol. 21:2297-2302 (1991); Barrios, C.らの論文、Eur. J. Immunol., 22:1365-1372, (1992);及び Perraut, R.らの論文、Clin. Exp. Immunol., 93:382-386 (1993); Suzue, K.、及びYoung, R.A.の論文、J. Immunol.I, 156:873-876, (1996); Suzue, K.らの論文、Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 94:13146-13151, (1997); Rico, A.I.らの論文、Infect. Immun., 66:347-352, (1998)、これらは引用により本明細書中に取り込まれるものとする]は、強力、かつ特製の抗原を作製し、融合パートナーを発現している腫瘍の拒絶を介在するのに十分な、MHC クラスI拘束性CD8+細胞傷害性T細胞の応答を生じさせることができる。本発明では、この同一の細胞機構を用いて、本来の非結合抗原に特異的な、抗原特異的な抗体を作製する。図1を参照されたい。
【0044】
先行技術には、免疫反応の刺激のためのHSP70の使用が記載されており、それによって刺激される活性を、細胞性、及び体液性の免疫誘導の程度によって評価した。しかしながら、抗体生成の誘導とモノクローナル抗体の製造の間には、有意な相違点がある。血清中の抗体の存在は、必ずしも、本来の分子を認識できる、高アフィニティーのモノクローナル抗体の製造につながらない。具体的な実施態様において、E7癌タンパク質に対するモノクローナル抗体の製造では、該精製された組み換えタンパク質でマウスに免疫感作後に、抗体の生成を観察したが、調べてみると、HPV ゲノムを含有する細胞株溶解物中の本来のE7を認識できるクローンは1つもなかった。該免疫系は、本来のタンパク質には存在しない、組み換えタンパク質の決定基のいくつかを認識したと考えられる。言い換えると、製造された該抗体は、免疫感作に用いた該抗原に反応したが、その本来のタンパク質には反応しなかった。
【0045】
本発明は、任意の特定の機構に限定しないが、該組み換えタンパク質の三次構造は、その本来のタンパク質のものとは異なったと考えられている。従って、本来のものでない抗原決定基が、該免疫系に提示されたのであろう。この問題を克服するのに、本発明は、(熱ショックタンパク質と結合された該タンパク質、又は対象の抗原を含むハイブリッドタンパク質を用いながら)本来の抗原提示機構を用い、本来の立体構造の官能基を該免疫系に提示する。具体的な実施態様において、これをHSP70を用いることにより達成する。
【0046】
これらの具体的な実施態様において、対象の抗原をHSP70、又はHSP70の一部に結合させ、該対象の抗原に免疫原性をもたらす。結合を化学的に行うことができる[Lussow, A.R.らの論文、Eur. J. Immunol. 21:2297-2302 (1991); Barrios, C.らの論文、Eur. J. Immunol., 22:1365-1372, (1992);及び、Perraut, R.らの論文、Clin. Exp. Immunol., 93:382-386 (1993); Suzue, K.、及びYoung, R.A.の論文、J. Immunol.I, 156:873-876, (1996); Suzue, K.らの論文、Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 94:13146-13151, (1997); Rico, A.I.らの論文、Infect. Immun., 66:347-352, (1998)]。抗原は、任意のタンパク質、ペプチド、核酸配列、又は化学部分であり得る。HSP70は、任意の起源由来であり得て、例を挙げると、哺乳動物、爬虫類、両生類、魚形群、鳥類、昆虫類、細菌、菌類、蠕形動物、原生動物、ウイルス、及び植物があるが、それらに限定しない。
【0047】
該対象の抗原をHSP70分子に結合した時点で、該結合体を、該結合体をプロセスでき、かつ該結合体での免疫感作に対し免疫反応を起こすことができる、異種の正常な免疫系に導入する。任意の動物に免疫感作でき、哺乳動物に限定しないが、典型的な実験例を挙げると、ラット、マウス、ハムスター、スナネズミ、モルモット、ウサギ、イヌ、サル、ニワトリ、ヤギ、ヒツジ、ブタ、ラクダ、ウシ、ウマ、及びネコがある。
【0048】
(III. 免疫感作)
免疫感作の有効性は、直接、高アフィニティーのモノクローナル抗体を製造できるかを決定する。様々な技術が、当技術分野でよく知られており、それらを用い、免疫感作の有効性を高め、その中のいくつかを本明細書中に記載する。
(A. 免疫感作の個体を選択すること)
具体的な実施態様において、3種の典型的な形式のハイブリドーマ系:マウス、ラット、及びヒトがある。該マウスハイブリドーマを最も幅広く用い、該ヒトハイブリドーマを最低頻度で用いる。本発明は、決してこれらの実施例に限定しない。正常な免疫系を有する任意の動物を、骨髄腫、又は他の不死化細胞とのハイブリダイゼーションのためのB 細胞源として用い、ハイブリドーマを作製する。該不死化細胞は、ヒト不死化、及びラット不死化細胞を含むが、それらに限定しない。
【0049】
マウスの免疫感作には、BALB/cマウス系統を最も頻繁に用い;全てのマウス骨髄腫株は、この系統に由来する。低免疫原性の抗原の場合、別の系統のマウスに免疫感作することができる。これらのマウスは、BALB/cに比べて、特定の抗原に、より強い免疫反応を引き起こすことができる。BALB/cと免疫感作に用いられた系統を交配することにより得られる、第一世代子孫を用い、ハイブリドーマ製造のための腹水を作ることができる。
ラットを用いる他の実施態様において、文献では、LOU/C系統が強く推奨されているが、WISTAR系統由来のラットで、全体として満足できる結果を得た。
【0050】
(B. マウス免疫感作スケジュール)
(1. 短期免疫感作スケジュール)
具体的な実施態様において、抗原を、2週間の間隔で2回、Balb/cマウス後肢足蹠に投与する。またさらなる実施態様において、一般的に、抗原の量は、その利用可能性、及び免疫原性に依存し、マウス当たり5〜200 μgの範囲である(が、これらの範囲に限定しない)。毒性の抗原の場合、投与量を0.1 μgまで下げることができる。(一連の免疫感作の)抗原の1回目の投与では、一般的に、抗原溶液は体積50〜200 μlの範囲で(あるが、免疫反応をもたらす限り、この特定の範囲に限定しない)、フロイント完全アジュバント("CFA")などのアジュバントと組合せる。一般的に、CFAは当技術で公知のとおり、結核死菌の懸濁液を含む鉱油とする。また、他のアジュバントを使うことができ、例を挙げると、ミネラルゲル(例えば、水酸化アルミニウム)、及び界面活性物質(例えば、リゾレシチン、プルロニックポリオール、ポリアニオン、ペプチド、油乳濁液、キーホールリンペットへモシアニン、ジニトロフェノール、及び潜在的にBCG("バシルカルメット‐ゲラン")、及びコリネバクテリウム(Corynebacterium parvum)などのヒトアジュバントがあるが、それらに限定しない。抗原溶液をCFAと激しく混ぜることにより、該抗原の細胞への進入を遅らせ、かつ長引かせる、微細分散した乳濁液が生じる。2回目の免疫感作を、1回目と同様に、マイコバクテリアを含まないフロイント不完全アジュバント(IFA)を用いて行う。
【0051】
またさらなる実施態様において、低免疫原性の抗体を用いて、一群の動物に異なった抗原投与量で、かつ様々な免疫感作スケジュールを用いて免疫感作することが有効である。具体的な実施態様において、2回目の免疫感作の後第3、又は4日目に、血液試料を採取し、該特定の抗原に対する抗体の含量を分析する。通常、最高力価をもつ動物を分析用に選択する。しかしながら、抗原として使われるタンパク毒素などの例外がある。このタイプの抗原は、高い特異的抗体力価を生じるが、また、高パーセントの、該毒素で死滅されたBリンパ球と混合している。これらの場合は、最高の力価をもたない動物を選ぶべきであり、かつ/又は融合のための細胞の生存に注意を向けるべきである。該2回目の免疫感作後第4日目に、該動物を調製し、膝窩リンパ節の細胞を骨髄腫細胞と融合させる。また、該動物の他のリンパ節を用いることができる。
【0052】
(2. 長期免疫感作スケジュール)
別の実施態様において、該短期免疫感作スケジュールが効果的でない場合、様々な形式の長期スケジュールを試みることができる。この場合、通常、該動物に腹腔内、又は皮下のいずれかに(その代わりとしては、頻度は低いが、静脈内、又は経口で)、2〜4週間の間隔で免疫感作する。第1回目の免疫感作にはCFA、次の回にはIFAを用いる。
【0053】
(第2回目を始めに)各回の免疫感作後第10〜14日目に、当技術分野で十分公知のとおり、該免疫感作された動物由来の血液で、特異的抗体の含量を調べた。該抗体力価が所望される水準に達しなかった場合は、該抗原での最終回の免疫感作(ブースティングと呼ばれている)をアジュバントなしに静脈中に行う。好ましい実施態様において、最初の投与量の1/10 を与える。ブースティングに起因して、該抗原に高アフィニティーを有する抗体を産生するクローンが選択的に刺激される。
【0054】
その後、その本来の抗原に特異的な抗体を分泌するB細胞を採取し、当業者に公知の方法で、かつ本明細書に記載のとおり、活性でスクリーニングした[Harlow、及びLaneの著書、「抗体:実験室マニュアル」、Cold Spring Harbor Laboratory Press, New York, (1988)]。これらのスクリーニング技術の中には、ラジオイムノアッセイ、ELISA(酵素結合免疫吸着測定法)、"サンドイッチ"免疫測定法、免疫放射定量測定法、ゲル拡散沈降反応、免疫拡散法、インサイチュー免疫測定法(例えば、金コロイド、酵素、又は放射標識)、ウエスタンブロット、沈降反応、凝集法(例えば、ゲル凝集法、赤血球凝集法など)、補体結合反応法、免疫蛍光測定法、プロテインA測定法、ウイルス可視化反応、生物活性調整測定法、及び免疫電気泳動法などを含むものもあるが、それらに限定しない。
【0055】
少なくとも1:1000抗体力価のクローンを同定した時点で、当業者に公知の方法で、かつ本明細書の記載のとおり、ハイブリドーマを作製する[Harlow、及びLaneの著書、「抗体:実験室手引き書」Cold Spring Harbor Laboratory Press, New York, (1988); Kohler、及びMilsteinの論文、Nature, 256:495-497 (1975); Kozborらの論文、Immunol. Tod., 4:72 (1983);「モノクローナル抗体と癌治療」Alan R. Liss, Inc. (1985)内のColeらの著書、77-96ページ; 特許協力条約/米国特許第90/02545号; Coteらの論文、Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 80:2026-2030 (1983)]。その後、これらのモノクローナル抗体を疾患(例えば、癌、ウイルス感染などであるが、それらに限定しない)の治療、免疫診断、免疫化学、免疫組織学、免疫細胞学、免疫アフィニティークロマトグラフィー、及びゲノム、及びプロテオーム研究に用いることができる。
【0056】
表1は、本発明の方法を使用して、従来の低免疫性を有するタンパク質に対して高アフィニティーのモノクローナル抗体を作製した、具体的な実施態様を提供する。これらの実施態様は、一部の例にすぎず、決して限定するものではない。左から最初の項目を対象の抗体とする。2番目の項目を、正常な免疫系を有する動物に免疫感作するのに用いた、免疫原とする。この項目の中で、APPは、該対象の抗原をHSP70に化学的に結合させる、本明細書中に記載された方法のことをいう。また、この項目の中で、KLH結合は、HSP70ではなくキーホールリンペットへモシアニンとの結合を意味する。3番目の項目は、該免疫感作から製造されたクローンの数を示し、4番目の項目は、本来の対象の抗原と結合できるクローンの数を示す。5番目の項目は、該モノクローナル抗体が該対象の抗原に特異的であるかを同定するのに用いた定量法を示す。ELISAを用い、酵素結合免疫吸着測定法を示す。WBを用い、ウエスタンブロットを示す。IFを用いて、免疫蛍光測定法を示す。IACを用いて、免疫アフィニティークロマトグラフィーを示す。最後の項目は、なぜ該抗体が結合なしで強い免疫反応を生じさせないかの簡潔な説明を提供する。
【0057】
【表1】
【0058】
(IV. ヒト乳頭腫ウイルス/子宮頸癌の検出に用いるモノクローナル抗体)
本発明の実施態様において、発明方法を用い、ヒト乳頭腫ウイルス("HPV")の E6、及び E7 癌タンパク質に特異的なモノクローナル抗体を開発した。これらの癌タンパク質に特異的なモノクローナル抗体の開発は、大変困難であったは、天然のE6、及びE7癌タンパク質が低濃度のため精製しにくく、かつ組み換えタンパク質が不正確に折り畳まれ、凝集する傾向があるためである。その上、E6、及びE7癌タンパク質は、免疫抑制能を有する。組み換えE6、及びE7癌タンパク質を免疫感作剤として用いて製造した抗体は、本来のE6、及びE7タンパク質に高アフィニティーをもたない。このため、該新規方法を使用し、該抗体を製造し、その後本明細書中に記載の多くの用途に用いることができる。
【0059】
(A. 子宮頸癌の背景)
子宮頸癌は女性の中で2番目に多くみられる癌である。疫学的、及びウイルス学的研究に基づいて、浸潤性子宮頸癌とHPVとの間の相互関係が示されている(図2)。また、同様の相関関係は、HPVと外生殖器官、及び肛門の新生組織形成、また同様に浸潤性子宮癌との間に見い出されている [D. I. Bernstein編集「性感染疾患:ワクチン、予防、及びコントロール」内のKiselev, V. Iらの著書「性感染ウイルスの感染と泌尿生殖器系の腫瘍疾患との相関関係」Academic Press, London, Herald of Dermatology, No. 6:20-23 (2000)]。
【0060】
(一般にパップスミアとして知られている)細胞学的検査は、依然として異型多核細胞を検出する主な実験室診断技術である。この技術を、かなり長年の間、子宮頸癌の初期診断に使用している。しかしながら、これらの手順では、全HPV保菌者の30%以上を検出せず、かつより深刻な疾患の発症のリスクを予測できない。
【0061】
HPVデオキシリボ核酸("DNA")の構造を研究する中で、例えば、該DNAによりコードされる9種の免疫原性のタンパク質を、ウイルス複製、不死化、及びその上皮細胞の形質転換の規則性と共に研究し、スクリーニング方法を開発した。その原理は、病理が存在するときに、正常値からはずれている生化学的、免疫学的、及び遺伝学的パラメータを検出することからなる。
【0062】
この形式のデータを解析し、初期診断を行ったり、子宮頸癌を発症させるリスクを判断したり、或いは治療の効果を予測することは、常に可能なわけではない。これは、いずれかで用いられた測定技術が必要な感度、及び/又は特異性をもたないか、測定された該パラメータが、直接細胞の変質プロセスを反映しないか、或いは該測定がそれを比例的に反映しないためである。
【0063】
酵素免疫測定法(例えば、ELISAがあるが、それに限定しない。)、及び免疫放射定量測定法を用いて、患者血清中のHPVタンパク質に特異的な抗体力価を測定することによる、子宮頸癌を診断する技術は記載されている[欧州特許(EP)第386734号、第375555号、第406542号、及び第523391号を参照されたい。]。しかしながら、このアプローチは、抗体力価と子宮頸癌との間に確かな相関関係が見い出されていないので、期待に応えていない。
【0064】
また、ポリメラーゼ連鎖反応("PCR")を用いて、研究中の試料におけるHPV DNAレベルの分類、及び定量に基づいて、子宮頸癌の発症を診断、及び予測する技術がある[V. I. Kiselevらの著書「泌尿生殖器感染の診断の際のポリメラーゼ連鎖反応:医師のためのハンドブック」Moscow, 2000; 国際特許公開(WO)第00506645号; 及び米国(U.S.)特許第5,679,509号]。
【0065】
しかしながら、これらの技術の使用は、かなりの過剰診断をもたらしている。それは、HPV感染が、全例のほぼ80%において、本来は短期的であり、自然治癒と同様にウイルスの消滅となり得るためである。図2を参照されたい。それにもかかわらず、多くの場合、HPV DNAの陽性の結果は、子宮頸癌の発症を確実に予測する。
【0066】
本発明により提示された新規解決法は、患者血清でなく生検細胞試料由来のHPV E6、又はE7癌タンパク質の定量的な免疫学的測定法に基づいた子宮頸癌の初期診断、及びその発症のリスクの判断の方法を含む[欧州特許第1253924号、A 61 K 38/18, 08/02/2001]。
【0067】
具体的な実施態様において、該E6、及びE7タンパク質は、HPVマーカーとして機能し、それらを免疫蛍光技術によって、脱パラフィン化された組織試料中に検出し、(定量のために)デジタルコンピューター技術を使用し、多元的に視覚化された試料を解析した。生検試料中の該E6、又はE7タンパク質含量が正常コントロール値を54%以上超えたとき、子宮頸癌発症の高いリスクが存在するという結論に達した。また、他の生化学マーカーを使用できると提唱され、例を挙げると、上皮成長因子受容体、及びインスリン様成長因子があるが、それらに限定しない。
【0068】
また別の実施態様において、より簡単で低価格で、高い共通性をもつ試料採取、及び解析法のため標準化されやすい、スクリーニング方法を開発した。このスクリーニング方法は、前記記載の免疫蛍光実施態様の感度に相当する感度を有する。HPV E7癌タンパク質をマーカーとして用いながら、細胞学的試料からの子宮頸がんの初期診断に、このスクリーン方法を用いることができる。いずれかの診断方法が使用できるかは、E6、又はE7癌タンパク質に特異的な高アフィニティーのモノクローナル抗体の使用に依存する。以下にこれらの抗体を製造したかを本明細書中に記載する。
【0069】
(B. E6、及びE7に対するモノクローナル抗体の開発)
ウイルスDNAの細胞DNAへの 融合で先行される、上皮細胞の変性に反応して、HPV E7タンパク質の合成における閾値の増加がある。具体的な実施態様において、E7遺伝子をヒト試料から単離し、クローニングし、その後大腸菌内で発現させた。その後、該細菌細胞から単離した組み換えE7タンパク質を用い、マウスに免疫感作した。しかしながら、多くの場合、組み換えタンパク質での該免疫感作により製造された抗体は、他の決定基を認識するので、その本来のタンパク質と反応しなかった。この問題を打開するために、該E7タンパク質をHSP70に結合させ、その後免疫感作のための抗原として用いる、先に記載の方法を用いた。
【0070】
具体的な実施態様において、2種の型の、天然起源のE7タンパク質に対する高感度のモノクローナル抗体を製造し、それは2種の型の"高リスク"HPV(HPV16、及びHPV18)に交差反応した。この交差反応は、全HPV関連新生組織形成の患者の80〜85%の検出を可能にする。異なったE7抗原決定基に反応する、これら2種の型のモノクローナル抗体の組み合わせた使用は、該特異性を高め、かつ診断スクリーニングにおけるバックグラウンドがないことを保証する。
【0071】
(C. HPVのスクリーニング方法)
具体的な実施態様において、子宮頸癌の初期、及び発症前診断方法は、患者の生検細胞試料中のヒト乳頭腫ウイルス(HPV)癌タンパク質の免疫学的定量からなる。該生検細胞試料を溶解し、モノクローナル抗体対を用いて、該細胞溶解液上清をHPV E7 タンパク質に関して分析する。具体的な実施態様において、該モノクローナル抗体対は、IgG2a、及びIgG2b サブアイソタイプに属し、それらは該E7タンパク質の様々な抗原決定基を認識する。具体的な実施態様において、該IgG2a 716-321、716-325、716-332、及び716-343抗体は、少なくとも1種のE7抗原決定基に結合する。別の実施態様において、該IgG2b 716-281、及び716-288抗体は、少なくとも1種の、他のE7抗原決定基に結合する。別の実施態様において、2種の抗体群の1種を、当業者に十分公知のとおり、酵素標識に結合する[Harlow、及びLaneの著書、「抗体:実験室手引き書」、Cold Spring Harbor Laboratory Press, New York, (1988)を参照されたい]。 その後、これらの抗体を、当業者に十分公知のとおり、酵素結合免疫吸着測定法("ELISA")で用いる。具体的な実施態様において、試料中の該E7タンパク質濃度が、ミリリットル(ml)当たり0.05 ナノグラム (ng) 以上であるとき、初期子宮頸癌、又はその発症のリスクの診断を積極的にする。他の具体的な実施態様において、定量分析実施条件を、当技術分野で十分公知のとおり、ポリスチレンプレートをコーティングする抗体の濃度、結合体の希釈、緩衝液組成、及びELISAのインキュベート時間、及び温度を変えることにより最適化した。
【0072】
好ましい実施態様において、E7癌タンパク質の1種の抗原決定基に特異的な抗体716-281を該タンパク質の第一の結合に用いて、かつ別のE7抗原決定基に特異的な抗体715-332を酵素標識に結合させた。また別の実施態様において、該用いられたモノクローナル抗体は、HPV16 E7に特異的であるが、HPV18 E7と交差反応する。HPV16、及びHPV18は、2種の最も蔓延している"高リスク" HPV型である。
【0073】
さらなる実施態様において、該ELISAスクリーニング方法を用いて、試料が該E7タンパク質に対して陽性のときは、該HPVの分類を行う。該HPV型を様々な方法で決定することができ、例を挙げると、ポリメラーゼ連鎖反応、及びインサイチューDNAハイブリダイゼーションであるが、それらに限定しない。
【0074】
(V. プリオンタンパク質に特異的なモノクローナル抗体)
本発明の別の実施態様において、該発明方法を用い、プリオンタンパク質("PrP")に対するモノクローナル抗体を開発した。一般に、海綿状脳症(BSE、狂牛病)の考えられる原因は、正常プリオンタンパク質の病原性アイソフォームへの構造遷移であると考えられている。PrPの病原性アイソフォームは蓄積するので、それに続く神経変性がある。このタンパク質に対するモノクローナル抗体は、BSEの診断ツールとして有用であり得る。このタンパク質のモノクローナル抗体を製造する際の主な問題は、PrPの高度に保存された構造である。完全長の組み換えウシPrP の天然型、及び変性型両型での、Balb/c マウスの多数回免疫感作は、十分な免疫反応も、最初の陽性クローンも生じさせなかった。PrPに対するモノクローナル抗体を製造するために、該PrP分子の構造分析を行い、3種のアミノ酸配列を選択した。これらの3種のペプチド配列は、ウシPrP のN 末端、分子の中間部、C 末端由来である。
G5: 25-36/62-69 KKRPKPGGGWNT…QPHGGGWG (20 aa) (各々、配列番号: 6 、及び 7)
G3: 109-121 QWNKPSKPKTNIK (13aa) (配列番号: 8)
G4: 226-242 ITQYQRESQAYYQRGAS (17aa) (配列番号: 9)
【0075】
具体的な実施態様において、これらの3種のペプチドを化学的にHSP70に結合させ、その後、それを使用し、本明細書中に公開した方法を用いて、Balb/cに免疫感作させた。該免疫感作スケジュールを完了後、PrPに特異的な抗体を製造するクローンのために、膝窩リンパ節(他のリンパ節、腹水、血液、又は脾臓を同様に用いることができる)を採取した。当技術分野において十分公知で、かつ本明細書に記載のとおり、ハイブリドーマを作製し、ハイブリドーマを、高アフィニティーのモノクローナル抗体の製造に関してスクリーニングした。高アフィニティーのモノクローナル抗体を、当技術分野で十分公知のとおり免疫測定法で同定し、例を挙げるとELISAがあるが、それに限定しない。その後、これらのモノクローナル抗体を、疾患の治療、免疫診断、免疫化学、免疫組織学、免疫細胞学、免疫アフィニティークロマトグラフィー、及びゲノム、及びプロテオーム研究に用いることができる。
【0076】
(VI. ヒアルロン酸に特異的なモノクローナル抗体)
本発明の別の実施態様において、本発明方法を用い、ヒアルロン酸に対するモノクローナル抗体を作製する。ヒアルロン酸は、グルクロン酸、及びN-アセチルグルコサミンの繰り返し二量体構成単位からなる、高分子量ポリマーであり、細胞外マトリックスに見い出される複雑なプロテオグリカン凝集体の中核を形成する。ヒアルロン酸は、ヒト結合組織疾患において重要な役割を果たし、該疾患の例を挙げると、膝関節の症候性変形性関節症があるが、それに限定しない。ヒアルロン酸、及びその分解産物の定量は、重要な診断パラメータと考えられており、ヒアルロン酸に特異的なモノクローナル抗体の使用で実現し得る。
該ポリマーの非タンパク質性、及び細菌から哺乳類に及ぶ、多くの異なった種におけるその同一性のために、IgG1、IgG2a、IgG2bアイソタイプの高アフィニティー抗体の作製させることは、非常に難しい。
【0077】
具体的な実施態様において、ヒアルロン酸を、PrPに関して記載のとおり、免疫感作、及びモノクローナル抗体製造のためにHSP70と結合させた。実施例9を参照されたい。モノクローナル抗体のスクリーニングを、ビオチン化ヒアルロン酸、及びストレプトアビジン-西洋ワサビペルオキシダーゼを呈色反応の二次的な試薬とするELISAを用いて行った。この形式のELISAは、当技術分野でよく知られている[Harlow、及びLaneの著書、「抗体:実験室手引き書」 Cold Spring Harbor Laboratory Press, New York, (1988)]。
【0078】
結果として、3種の遺伝的に安定なハイブリドーマ細胞株を製造し、HU.D3 IgG2a、HU.D9 - IgG1、HU.E3 IgG3は各々、ヒアルロン酸に対して高アフィニティーモノクローナル抗体(IgG1、及びIgG2a)を分泌する。その後、これらのモノクローナル抗体を、疾患の治療、免疫診断、免疫化学、免疫組織学、免疫細胞学、免疫アフィニティークロマトグラフィー、及びゲノム、及びプロテオーム研究に用いることができる。
【0079】
(VII. マトリックスメタロプロテアーゼ3に特異的なモノクローナル抗体)
本発明の別の実施態様において、本発明方法を用い、マトリックスメタロプロテアーゼ3("MMP3")に対するモノクローナル抗体を作製する。マトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)ファミリーのタンパク質は、胚発生、生殖、及び組織再形成などの正常な生理学的プロセスと同様に、関節炎、及び転移などの疾患プロセスにおける、細胞外マトリックスの分解に関与している。多くのMMP は、不活性型前駆タンパク質として分泌され、細胞外プロテアーゼにより切断されると、活性化される。MMP3は、フィブロネクチン、ラミニン、コラーゲンIII、IV、IX、及びX、及び軟骨プロテオグリカンを分解する酵素である。該酵素は、創傷修復、アステローム性動脈硬化の進行、及び腫瘍発生に関与していると考えられている。MMP3は、関節リウマチ、及びある種の癌に関与していると報告されている。その後、これらのモノクローナル抗体を、疾患の治療、免疫診断、免疫化学、免疫組織学、免疫細胞学、免疫アフィニティークロマトグラフィー、及びゲノム、及びプロテオーム研究に用いることができる。
【0080】
(VIII. モノクローナル抗体を用いた疾患のリスクを解析するキット)
また、本発明は診断キットを提供する。いくつかの実施態様において、該キットは、個体が疾患、又は状態を発症するリスクを判断するのに有用であり、該疾患、又は状態の例を挙げると、子宮頸癌、海綿状脳症、結合組織疾患、関節炎、及び転移があるが、それらに限定しない。キットの性質、及び使用は、キットで提供される該モノクローナル抗体の特異性による。該診断キットを、様々な方法で製造する。いくつかの実施態様において、該キットは、本発明の方法を用いてもたらされた、従来低免疫原性の抗原に対する、少なくとも1種のモノクローナル抗体を含む。好ましい実施態様において、該キットは、当技術分野で十分公知のとおり、ELISA、又は他の同様の免疫測定法を行う試薬を含む。いくつかの実施態様において、該キットは、個体が該疾患、又は状態を発症するリスクを判断する取扱説明書を含む。好ましい実施態様において、該取扱説明書は、該疾患、及び状態を発症するリスクを、対象の抗原の有無を検出することにより判断すると明記し、該対象の抗原の例を挙げると、E7癌タンパク質、PrP、MMP3、又はヒアルロン酸があるが、それらに限定しない。いくつかの実施態様において、該キットは、緩衝剤、核酸安定化剤、タンパク質安定化剤、及びシグナル産生システム(例えば、フレットシステムなどの蛍光産生システム)などの補助試薬を含む。該検査キットは、一般的に、単一の容器、又は必要に応じて様々な容器に成分を、該検査を行うための取扱説明書の紙と共に含む、任意の適切な方法でのパッケージであり得る。いくつかの実施態様において、好ましくは、該キットはポジティブコントロール試料も含む。
【実施例】
【0081】
(実施例1)
下記の実施例を提供するのは、本発明の特定の好ましい実施態様、及び態様を示し、かつさらに例証するためであり、発明範囲を限定するためではない。
【0082】
続く実験の公開において、下記の略語を適用する:M (モーラー); μM (マイクロモーラー); mM (ミリモーラー); mol (モル); mmol (ミリモル); μmol (マイクロモル); nmol (ナノモル); g (グラム); mg (ミリグラム); μg (マイクログラム); ng (ナノグラム); l、又はL (リットル); ml (ミリリットル); μl (マイクロリットル); cm (センチメートル); mm (ミリメートル); μm (マイクロメートル); nm (ナノメートル); ℃ (度 摂氏) Centigrade); min. (分); sec. (秒); % (パーセント); kb (キロ塩基); bp (塩基対); PCR (ポリメラーゼ連鎖反応); aa アミノ酸)。
【0083】
(実施例1)ヒト乳頭腫ウイルス(HPV)の検出、及び分類
(A. 臨床材料の収集)
臨床試料を準備し、当技術分野で十分公知のとおり運搬した。滅菌使い捨てプローブを用い、子宮頸部上皮細胞の臨床試料を擦り取った。該プローブを、500 μlの生理食塩水(0.83% NaCl)で洗浄し、該細胞を該プローブから除去し、該溶液を1.5ml蓋つきエッペンドルフチューブに回収した。その後、該試料は、使用まで、通常5日までは4℃で、1ヶ月までは10〜20℃で保存した。
【0084】
(B. DNAの精製)
DNA抽出方法は、当技術分野で十分公知のとおり、本発明に関するDNA精製方法は、この特定の実施例に限定しない。試料が凍結している場合は、当技術分野でよく知られているように解凍し、その後10,000 rpmで1分間遠心分離する。沈殿を底部に形成し、上清を捨てる。100 μlの生理溶液を該チューブに加え、該沈殿をホモジナイズする。500 μlの溶解溶液を加え、10秒間ボルテックスする。その後、該試料、及びチューブを65℃でインキュベートする。該溶解溶液は、6 Mチオシアン酸グアニジン (Sigma社、USA)、10 mM EDTA (Sigma社、USA)、1% Triton X-100 (Sigma社、USA)、10 mM Tris HCl, pH 7.3 (Sigma社、USA), 1% 2-β-メルカプトエタノール(BioChemical社、England)を含む。20 μlのホモジナイズ用ソルベント(シリカ、Sigma社、USA)を加え、50〜100 rpmで10分間撹拌する。該試料、及びチューブを10,000 rpm で1分間遠心分離し、上清を捨てる。500 μlの洗浄溶液を加え、該チューブを、沈殿が該溶液に混ざるまでボルテックスした。再び、10,000 rpm で1分間遠心分離し、再び上清を捨てる。該洗浄溶液は、4 M チオシアン酸グアニジン(Sigma社、USA)、10 mM EDTA (Sigma社、USA)を含む。1 mlの70%エタノールを該チューブに加え、よくボルテックスし、10,000 rpmで1分間遠心分離し、上清を捨てる。このエタノール洗浄を繰り返す。その後、該チューブを開け、沈殿を55℃で5〜10分間乾燥させる。100 μlのヌクレアーゼフリー水(Promega社、USA)を該チューブに加え、55℃で5分間インキュベートする。その後、試料をポリメラーゼ連鎖反応に用いることができる。試料は、4℃で1週間まで、又は20℃で6週間まで保存できる。
【0085】
(C. HPV を分類するためのポリメラーゼ連鎖反応("PCR"))
5 μl の鋳型DNA、67 mM Tris-HCl (pH 8.8)、16.6 mM (NH4)2SO4、1.5 mM MgCl2、100 mM dATP、dCTP、dTTP、及びdGTP、10 pmolの各プライマー、及び1ユニットのTaq ポリメラーゼ (5 ユニット/μl; Promega社、USA)を含有する25 μl 溶液中で、PCR 反応を行った。当技術分野で公知のとおり、ホットスタート技術を用いた。温度サイクル条件は;94℃を3分間、その後94℃30秒間、65℃30秒間、及び72℃30秒間を40サイクルであった。下記の図表は、HPV型、及びそれらのHPV 型のDNA
を増幅するのに用いられたプライマーを示す。
【0086】
【表2】
【0087】
(実施例2)HPV16、及びHPV18型のE7癌タンパク質の合成をコードする組み換えプラスミドの設計
子宮頸部形成異常と診断された患者の子宮頸部由来の生検組織試料を、E7 遺伝子源とした。該臨床試料をHPVの存在に関して調べ、本明細書中に記載の該ポリメラーゼ連鎖反応を用いて分類した。HPV16、及びHPV18型の該 E7 遺伝子を遺伝子特異的なプライマー[HPV16に対して303塩基対(bp)断片、及びHPV18に対して324SYMBOL 45 \f "Symbol" \s 10.5bp 断片] (配列番号: 14〜17) (図3参照)を用い、該PCR技術で増幅し次第、これらの遺伝子をpBluescipt SK (+) (Stratagene社)プラスミド中のEcoRI-BamHI部位でクローニングした。クローニングした遺伝子のオリゴヌクレオチド配列決定は、GenBankデータと完全に一致した(例えば、HPV16に対してGenBankアクセッション番号AF125673、及びHPV18に対してAY262282。)(図4、及び5、配列番号: 1、及び3を参照されたい。)。
次に、翻訳終結配列を3'末端付近の該遺伝子に取り込んだ。HPV16、及びHPV18の両方(配列番号: 18)に対して得られた遺伝的コンストラクト、pHE716、及びpHE718を図6に示す。
【0088】
(大腸菌細胞における、HPV16、及びHPV18型のE7タンパク質の合成)
該プラスミドpHE716は、タンパク質E7-16 [Met(His)6-GluPheIle-E716-GlySer [111アミノ酸残基("aa")、12.5 キロダルトン(kDa)、及び等電点(IEP)4.6]をコードする。また、該プラスミドpHE718は、タンパク質E7-18 [Met(His)6-GluPheSer-E718-GlySer (117 aa、13.5 kDa、及びIEP 5.4]をコードする。ドデシル硫酸ナトリウム、及びポリアクリルアミドゲル("SDS-PAGE")[Laemmli, U. K.らの論文、Nature, 227:680-685 (1970)]中で電気泳動を行うとき、このタンパク質が、書誌データに一致する、(ほぼ21 kDaの)異常な移動度をもつことに留意しなければならない [Jeon, J.-H.らの論文、Experimental and Molecular Medicine, 34:496-499,(2002)]。
【0089】
該得られた遺伝子の発現に、大腸菌BL21(DE3)株(Stratagen社、USA)を用いた。当技術分野で十分公知のとおり、トランスフェクションを行った。超音波処理の後に、HPV16 E7癌タンパク質、及びHPV18 E7癌タンパク質を、可溶性細胞タンパク質画分中に検出し;それゆえ、尿素付加をせず、自然条件下でNi-IIIA-アガロース上でクロマトグラフ分析を行った(図7)。
【0090】
より具体的に、大腸菌BL21 (DE3)株の細胞を、プラスミドpHE716、及びPHE718を用いて、形質転換した。該細胞を、アンピシリン(100 μg/ml)、及びグルコース(0.2%)を添加したルリア-バータニ ("LB")培地中で、37℃で一晩インキュベートした。その後、該細胞を、アンピシリン含有の新鮮なLBで1:25に希釈し、細胞密度がOD600=0.5の光学密度に到達するまで、2〜3時間インキュベートした。光学密度を、マルチスキャン分析器の波長600 nmで測定した。その後、イソプロピルβ-D-チオガラクトピラノシド ("IPTG") を0.2 mMの濃度まで、全容量が50 ml まで培養物に加え、さらに3時間インキュベートした。その後、培養物を5,000 rpmで10分間遠心分離し、上清を捨てた。沈殿を1 ml の20 mM Tris-HCl, pH 8、0.3 M NaCl、0.1%Triton X-100中に再懸濁し、15秒間超音波分解した。その後、該培養物を10,000 rpm で10分間遠心分離する。沈殿を20 mM Tris-HCL, pH 8、0.3 M NaCl、0.1%Triton X-100 (0.5 ml)で洗浄した。該沈殿をホモジナイズし、5 mlの 緩衝液A (10mM Tris-HCl, pH 8、6M 尿素、0.4 M NaCl、10mM β-メルカプトエタノール、5 mM イミダゾール)に再懸濁した。その後、該試料を常温で1時間、撹拌しながらインキュベートする。次いで、該試料を10,000 rpmで10分間遠心分離した。沈殿を捨てる。IDA-アガロース(1 ml)充填カラムをNiSO4溶液で洗浄し、その後該カラムを緩衝液A で平衡化した。上清を、該カラムに5 mlの 緩衝液A、その後10 mlの緩衝液B(10 mM イミダゾール含有緩衝液A)と共に負荷した。溶出を、緩衝液C (10 mM Tris-HCl, pH 8、2M 尿素、0.4 M NaCl、10mM -メルカプトエタノール、0.3M イミダゾール)で、0.5 ml画分に行った。通常、HPV16、及びHPV18由来の該E7タンパク質は、画分1〜3に通常溶出された。該タンパク質を含む画分を貯留し、該貯留された画分量の100倍容に対して、10mM Tris-HCl, pH 8、150 mM NaCl含有緩衝液で一晩透析した。
【0091】
(実施例3)HPV16(18)型のE7ペプチド、及び結核菌DnaK(HSP70)からなるハイブリッドタンパク質の発現
PCRを用い、ヒト乳頭腫ウイルス、16、及び 18型のE7遺伝子を増幅した。ヒト乳頭腫ウイルス(HPV) 16、及び18型E7遺伝子(配列番号: 19〜22)を含有する、プラスミドDNA pHE716、及びpHE718を、E7 遺伝子(配列番号: 19〜22)を含有する断片に対するPCR増幅の鋳型として用いた。図8を参照されたい。開始コドンは、6HIS 標識をコードする配列と共に、フレーム内に存在し、終止コドンは欠如している。DnaKタンパク質を、組み換えpQE30基盤ベクターにトランスフェクトされた、E7遺伝子を含有する該クローニングされたDNA断片 を用いて発現した。
【0092】
あらかじめ、組み換えベクターpQE30-dnaK-Yを構築し、基本プラスミドとして用い(図9)、6HIS-DnaK融合タンパク質を発現させた。PQE30-dnaK (配列番号: 5)の核酸配列を、図10に示す。このベクターを作製するために、E7遺伝子を含有するPCR断片を、BamHI、及びBglIIで消化し、pQE30-dnaK-YのBamHI部位にクローニングした。挿入部を正しい方向にもつ組み換え型を、当技術分野で十分公知のとおり制限酵素分析を用い、同定した。組み換えプラスミドpQE30-E716-dnaK、及びpQE30-E718-dnaK は、各々ハイブリッドタンパク質6HIS-E7(16型)-DnaK、及び6HIS-E7(18型)-DnaKをそれぞれ発現させた。
【0093】
これは、大腸菌DLT1270細胞を、別個の培養液中で、pQE30-E716-dnaK、及びpQE30-E718-dnaKを用いトランスフェクトし、一晩インキュベートすることにより達成された(DLT1270細胞を、P1-形質導入を用いて、lac1 遺伝子を大腸菌DH10B株に組み入れることにより、作製した。DH 10Bは下記の遺伝子型を有する: 10 B (ara D139 D (ara, leu) 7697 D (lac) 74 galU galK rpsL deoR f80 lacZ DM15 end Al nupG recAl mcrA D (mrr hsdRMS mcr )) Grant, S.らの論文、Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 87:46454649 (1990)を参照されたい。)。該トランスフェクトされたDLT1270培養物を、100倍に希釈されたルリア-バータニ ("LB")培養液中で培養し、光学密度で測定された密度がOD600=0.5に到達するまで、振盪しながら37℃でインキュベートした。その後、イソプロピルβ-D-チオガラクトピラノシド ("IPTG") を0.1 mMまで加え、先のとおり、さらに2時間インキュベートした。当技術分野で十分公知のとおり、IPTGは、lacZ遺伝子を誘導する。それを用いて、対象のプラスミドでトランスフェクトされた細胞を選択する。予測される分子量の該ハイブリッドタンパク質の合成を、SDS-PAGEで観察した。
【0094】
(実施例4)大腸菌由来の組み換えHSP70タンパク質の単離
(A. 緩衝溶液)
緩衝溶液は、あらかじめ調製しない。緩衝液 Aを単離手順の前に調製し、1時間以内に用いる。50 mM K2HPO4, pH 7のストック溶液は、あらかじめ調製できるが、3日以内に用いなければならない。また、10X PBSストック溶液をあらかじめ調製することができる。緩衝溶液の保存、及びクロマトグラフ手順は、常温で行われるべきである。
緩衝液Aは、25 mM N-(2-ヒドロキシエチル)ピペラジン-N'-(2-エタンスルホン酸) ("HEPES"), pH7.3、0.1% Nonidet P-40 (w/v)、20% グリセロール (v/v)、1 mM フッ化フェニルメチルスルホニル("PMSF")、及び 0.5 M NaClを含む。
緩衝液 Bは、50 mM K2HPO4, pH 7、5 mM イミダゾール、0.5 M NaClを含み、pHを調整しない。
緩衝液 Cは、50 mM K2HPO4, pH 7、150 mM イミダゾール、0.5 M NaClを含む。
緩衝液 Dは、50 mM K2HPO4, pH 7、50 mM EDTA、0.5 M NaClを含み、pHを調整しない。
PBS 緩衝液は、10 mM K2HPO4, pH 7.5、及び0.145 M NaClを含む。
【0095】
(B. キレートカラムの調製)
1 x 10 cm カラムを脱イオン水で洗浄し、下方のフィルターから気泡を抜き、下方のフィルターからほぼ1 cm のレベルに水層を残す。キレートセファロース CL-6B (Amersham Pharmacia Biotech社)の必要量を計り、5 mlの容積にする。ピペットを用いながら、該カラムを該セファロースゲルで充填する。該カラムを、5倍容の脱イオン水で、3 ml/分の速度で洗浄する。その後、該カラムを10倍容の ZnCl2 溶液(1 mg/mlの濃度 (ICN))で3 ml/分の速度で洗浄する。その後、該カラムを10倍容の脱イオン水で、3 ml/分の速度で洗浄する。該カラムをUV 検出器(280nm)に接続する。その後、該カラムを、10倍容の脱イオン水で、3 ml/分の速度で洗浄する。この時点で、該カラムは、500 mlの培養培地で培養した大腸菌細胞由来のタンパク質の単離用に調製できている。
【0096】
(D. 大腸菌の調製)
手順は、4℃でできるだけ早く行うべきである。最初に、1 グラム大腸菌(湿重量)を2倍容のPBSで5回、各サイクル5000 rpm で15秒間遠心分離し、その後細菌細胞を再懸濁することによって、洗浄する。細胞を、最終洗浄後、5 ml PBSに希釈する。その後、該細胞を、30秒間6回、超音波分解(20 kHz, 50-60 W)する。得られた溶液を、12,000 rpm で10分間遠心分離する。沈殿を捨て、上清を該カラムに負荷する。
【0097】
(E. タンパク質の分離)
該上清を負荷した後、該カラムを10倍容の緩衝液Aで洗浄する。次いで、5倍容の緩衝液Bで行う。タンパク質画分を、5 ml 緩衝液Cで溶出し、回収する。
(F. 該カラムから回収された該タンパク質の透析)
該貯留された画分を透析袋に入れ、0℃で200倍容のPBSに対して、30分間一定に撹拌しながら透析する。30分後、0℃で、該溶液を新鮮な200倍容のPBSに替え、また一定に撹拌する。その後、該画分を、5リットルのPBS中、40℃で一晩透析する。当技術分野で十分公知のとおり、ブラッドフォード、又はローリータンパク質定量法でタンパク質濃度を決定する[Harlow、及びLaneの著書、「抗体:実験室手引き書」Cold Spring Harbor Laboratory Press, New York, (1988)]。該溶液を700℃で凍結し、凍結乾燥する。
【0098】
(実施例5)組み換えHPV16、及びHPV18 E7タンパク質に対するマウスモノクローナル抗体の製造
Balb/c マウス [16〜18グラム(g)の体重の雌10匹]に、高度に精製されたHPV16 E7、及びHPV18 E7を用いて、免疫感作間に2週間の間隔をあけて、2回後肢足蹠に免疫感作させた。組み換え大腸菌溶解物の該HPV16 E7、及びHPV18 E7調製物を、一段階金属キレートクロマトグラフィーを用いて精製した。1回目の免疫感作は、20 μl のリン酸緩衝生理食塩水("PBS")に希釈された20 μg のタンパク質を、等量のフロイント完全アジュバントと混合して含有した。また、2回目の免疫感作は、20 μl のリン酸緩衝生理食塩水("PBS")に希釈された20 μg のタンパク質を含有したが、等量のフロイント不完全アジュバントと混合した。2回目の免疫感作後第4日目に、膝窩リンパ節由来のリンパ球を、ポリエチレングリコール (PEG) 4000を用い、Sp2/0-Ag14 骨髄腫細胞 (米国微生物系統保存機関("ATCC")CRL 1581、ATCC CRL 8287;欧州細胞培養保存機関85072401; DSMZヒト、及び動物細胞培養ACC 146)にハイブリダイズした。該ハイブリドーマを、ヒポキサチン-アミノプテリン-チミジン ("HAT") 培地で、37℃、5%CO2で2週間インキュベートした。生存している選択されたハイブリドーマを、間接ELISAを用いてスクリーニングした。ポジティブな培養を、限定希釈技術を用いて、2回クローニングした[Campbell, A. M.の著書「生化学、及び分子生物学における実験室技術」内の「モノクローナル抗体、及び免疫センサー技術」vol. 23 (1991)を参照されたい]。該ELISAを下記のとおり行った。組み換え HPV16、HPV18 E7タンパク質を2 μg/mlの濃度で、ポリスチレンプレートに、該プレートを37℃で1時間吸着させ、その後プレートをPBSで3回洗浄し、50 μl の組織培養上清を該プレートに加え、37℃で1時間インキュベートした。該固定化された抗原に結合したモノクローナル抗体を、ペルオキシダーゼ結合ヤギ抗マウス免疫グロブリン G (IgG) [H+L] を37℃で1時間用いることにより検出した。過酸化水素を含有したテトラメチルベンジジン("TMB")溶液を、基質とした。光学密度を450 nm で測定した。HPV16 E7タンパク質に対して、716-281、及び716-288 (IgG2b)抗体、同様に716-321、716-325、716-332、及び716-343 (IgG2a) 抗体を製造する、2種のハイブリドーマ群を得た。それらは、間接ELISAにおいて、HPV16、及びHPV18 E7と同様によく相互作用した (表2参照)。
【0099】
【表3】
【0100】
(実施例6)モノクローナル抗体を用いた、HPV16、及びHPV18 E7タンパク質の定量のための、酵素免疫測定法実施条件の最適化
HPV16 E7に対するモノクローナル抗体をマウス腹水から回収し、プロテインGセファロースアフィニティーカラム上で精製した(95%以上の純度)。該抗体を、過ヨウ素酸技術を用い、西洋ワサビペルオキシダーゼで標識した。対合されたモノクロナール抗体の組合せ全てを、ELISA で、HPV16 E7に対する抗原アフィ二ティーに関して調べた。該モノクローナル抗体対合を行うのに、該モノクローナル抗体対の1要素をポリスチレンプレートに固定化した。0.039〜5.0 ng/mlの濃度範囲に及ぶ、HPV16 E7タンパク質の7段階の2倍希釈を、トレー上の固定化された該モノクローナル抗体に導入した。形成された免疫複合体を、ペルオキシダーゼに結合された該モノクローナル抗体対の第2要素を、基質となるテトラメチルベンジジンと加えることにより検出した。調べた該モノクローナル抗体対の全てが、三重複合体(サンドイッチ)-固定化された抗体-E7-結合された抗体を形成する能力があったことは、10-12〜10-9 モル(M)の濃度範囲でさえ、溶液中のHPV16 E7タンパク質のオリゴマー状態を示唆する。全ての該モノクローナル抗体の組合せが機能したにもかかわらず、同一の抗体、又は同一の免疫グロブリンアイソタイプに属する抗体の対は、異なったアイソタイプからのモノクローナル抗体の対より、より低い感度レベル(設定されたHPV16 E7濃度に関連する光学密度値、及び検量線の傾き)を示した。感度、及びバックグラウンドがない点では、716-281モノクローナル抗体を該プレートに結合させ、かつ716-332モノクローナル抗体をペルオキシダーゼ結合体として用いたときに、最良の結果を得た。このモノクローナル抗体対を用いた該測定法を、吸着用の抗体濃度、結合体希釈の量、緩衝液組成、及び該ELISA の全ての段階の時間、及び温度を変えることにより最適化した。最適条件下でのHPV16 E7の定量検量線を図11に示す。該716-288モノクローナル抗体を、pH 9.6 の0.1 モーラー(M)炭酸緩衝液、かつ5 μg/mlの濃度から、吸着させた。ペルオキシダーゼ含有716-332 MoAb 結合体の作業希釈は、0.2% ウシ血清アルブミン(BSA)、及び0.05% Tween 20を含有するリン酸緩衝液生理的食塩水(PBS)中で1/5,000であった。該基質は、テトラメチルベンジジン(TMB)であった。該タンパク質濃度を、ng/ml でx軸沿いに示す。45 ナノメーター (nm)での光学密度をy軸沿いに示す。3回の独立実験の実験誤差をこの曲線沿いに示す。該図から明らかなとおり、該検量線は、0.039〜5.0 ng/ml の抗原濃度範囲にわたって、ほぼ直線であり、またバックグラウンドが全くないことを特徴とする。HPV16 E7の存在を、ml当たりわずか40 ピコグラム(pg)で検出することができ、トランスフェクトした細胞、及び臨床試料におけるHPV16 E7の発現レベルを決定するのに十分である(図11参照)。
【0101】
(実施例7)子宮頸部試料におけるE7癌タンパク質の測定
子宮頸部の擦り取り由来の試料を、1 mlの生理食塩水 (0.83% NaCl)につけ、3回、冷凍、及び解凍した。その後、該試料を、10,000 rpm で10分間マイクロ(エッペンドルフ)遠心分離した。上清を、PBS-AT (0.2%BSA、及び0.1%Tweenを含有するPBS)中で1:1 (v/v)に希釈した。その時点で200 μl をあらかじめ 5μg/ml濃度で抗HPV16 E7 モノクローナル抗体で結合されたプレートの穴に導入し、4穴で、2倍段階希釈を用いて力価測定した。この同一プレート内で、4 ng/mlから0.062 ng/mlまでの精製された組み換えHPV16 E7タンパク質を、標準として力価測定した。1時間のインキュベート、及び洗浄後、ペルオキシダーゼ標識結合抗HPV16 E7モノクローナル抗体を導入し、インキュベートを1時間続け、TMB反応を展開した。光学密度を、マルチスキャン分析器の波長450 nmで測定した。検量線を、標準の希釈の光学密度に基づきプロットし、それを用いて、試料中の該E7濃度を決定した。
【0102】
スクリーニング研究を行なった(n = 100)。HPVが検出されない、或いは"低リスク" HPVによる感染が検出された、健康な患者由来の試料をコントロールとした (n = 10)。
すべての健康な患者由来の試料は、E7に関してネガティブ、或いはいくつかの場合ではわずかにポジティブであった。ただし、すべての場合において、該E7含量は0.05 ng/ml未満である。
ポジティブ試料は、0.05 ng/ml の濃度閾値を越えた。得られたデータを表2に示す。
【0103】
【表4】
【0104】
該データに示すとおり、該診断用スクリーニング方法の結果は、医療診断と一致した。また、該HPV分類データは、診断データと一致し、従って、それを用いて、子宮頸癌の発症のリスクを予測できる。
【0105】
(実施例8)PrPに対するモノクローナル抗体の製造
G3、G4、及び G5の各ペプチドを、当技術分野で十分公知のとおり、合成で製造した[B.D. Hames編集シリーズ「実践アプローチシリーズ」Oxford University Press, (2000)内のW.C. Chan、及びP.D. White編集「Fmoc 固相ペプチド合成、実践アプローチ」]。該ペプチドを凍結乾燥し、本質的に塩フリーであること、かつHPLCでの95%純度 であることを調べた。100マイクログラムの各ペプチドを、0.1 ml 100 mM リン酸ナトリウム緩衝液, pH 6.8 (結合用緩衝液)で溶解し、"ペプチド溶液"を作成した。HSP70 (1mg/ml)溶液を、結合用緩衝液で作り、"HSP70 溶液"を作った。各ペプチドに関して、ペプチド溶液 (0.1 ml)を、200μgのHSP70を含有する0.2 ml HSP70溶液と混合し、HSP70よりほぼ15〜20倍モーラー過剰の該ペプチドを得た。速やかに、グルタルアルデヒド溶液(水で25%グルタルアルデヒド)を、0.05%(v/v)まで混合物に加え、一定に振盪しながら、常温で3時間インキュベートした。結合反応を、0.5 M グリシン溶液を0.1 M最終濃度まで加えることにより止め、該同一条件下でさらに30分間インキュベートした。その後、該反応混合物を、100 ml PBS (10 mM リン酸ナトリウム、150 mM 塩化ナトリウム、pH 7.2)に対して、4℃で一晩透析した。該結合反応の効率は、当技術分野で十分公知のとおり、SDS-PAGE で調べ、結果から、遊離HSP70が残存していないことが示された。製造された結合体を分注し、防腐剤を加えずに-70℃で保存した。
【0106】
雌Balb/c マウス(18〜20 g)に、50 μlの該ペプチド-hsp70結合体溶液を、間に2週間の間隔をあけて、2回後肢足蹠に免疫感作させた。第16日目に、膝窩リンパ節を採取し、当技術分野で十分公知で、かつ本明細書中で記載のとおり、通常のハイブリドーマ技術を用いながら、適切なBalb/c骨髄腫細胞株との融合のためにB細胞に関してプロセスした。
【0107】
一次スクリーニングを、下記の結果を有する、ポリスチレンプレートにコートされたG3、G4、G5ペプチドを用いて、間接ELISAで行った:
ペプチドG3 ハイブリダイゼーションから、少数の一次培養が得られるが、ポジティブなものはさらに少なく、それらは、後に活性を失った。
ペプチドG4 異なった群から4 種のクローンを確立し、3回クローニングした。
ペプチドG5 - 異なった群から6 種のクローンを確立し、3回クローニングした。
【0108】
腹水を作り、また相当するぺプチド、及び完全長組み換えPrPで調べた。表3は、単離されたクローン名、各々が特異的なペプチド、及び免疫グロブリンアイソタイプを示す。表4は、該結合タンパク質を作成するのに用いた該ペプチドをポリスチレンプレート上に吸着させる、間接ELISAの結果を示す。表5は、本来のPrP タンパク質をポリスチレンプレート上に吸着させる、間接ELISAの結果を示す。
【0109】
【表5】
【0110】
【表6】
【0111】
【表7】
【0112】
先に示された該モノクローナル抗体の全ては、それらを製造するのに用いられた免疫原に高アフィニティーを有する。しかしながら、特定の一実施態様において、モノクローナル抗体5G55は、組み換えPrPと強く反応する。この抗体を、ELISA、ウエスタンブロット、及び免疫組織学を利用する、任意の用途に使用することができる。他の残りのモノクローナル抗体は、組み換えPrPに 低から中程度の結合特異性を示す。
【0113】
(実施例9)MMP3に対するモノクローナル抗体の製造
他の抗原に関して前記のとおり、BALB/cマウスに、MMP 3 (25μg/マウス)を後肢足蹠に免疫感作させた。該マウスは、2週間後に第2回目の免疫感作を受けた。第2回目の免疫感作後第4日目に、リンパ節を採取し、該節由来のB細胞を骨髄腫Sp2/0-Ag14 細胞と融合し、96穴プレートに入れた。また、免疫血清を採取し、調べた。
【0114】
表6は、PBS中2 μg/mlでポリスチレンプレート上に4℃で一晩吸着させたMMP3を用いて、OD 450 nmで測定した間接ELISAの結果を示す。すべての他のインキュベーションは、当技術分野で十分公知のとおり、0.5% BSA、及びTween 20を含有するPBS 中で行った。該結果から、MMP3により免疫感作されたマウス由来の血清が、非免疫マウスの血清から有意な差を示さないことが示される。
【0115】
【表8】
【0116】
また、すべての初期クローンを、該MMP3上の間接ELISA 、及びビオチン標識MMP3での直接ELISA により調べた。非結合MMP3を用いて、ポジティブクローンは作製されなかった。その後、PrPに関して先に記載したのと同じ方法を用いて、グルタルアルデヒドを使用し、MMP3をHSP70に結合した。
【0117】
その後、結合型MMP3 (50μg/マウス)を用い、前記のとおり、Balb/cマウスに免疫感作させた。2回目の免疫感作後第4日目に、リンパ節を採取し、当技術分野で十分公知のとおり、プロセスした。単離されたB細胞を、骨髄腫 sp 2/0 細胞と融合し、96穴プレートに入れた。また、免疫血清を採取し、調べた。結果を表7に示す。表7は、ポリスチレンプレート上に4℃で一晩吸着させたMMP3 2 μg/ml PBSを用いて、OD 450 nmで測定された間接ELISAの結果を示す。すべての他のインキュベーションは、当技術分野で十分公知のとおり、0.5% ウシ血清アルブミン ("BSA")、及びTween 20を含有するPBS 中で行った。該結果から、結合されたMMP3-HSP70を免疫感作されたマウス由来の血清が、非免疫マウスの血清に比べて、MMP3に対して有意なアフィ二ティーを有することが示された。
【0118】
【表9】
【0119】
また、すべての初期クローンを、MMP3(2 μg/ml)を用いた間接ELISA 、及びビオチン標識MMP3(500 ng/ml)での直接ELISA により調べた。8種のポジティブクローンを間接ELISAにより検出し、6 種のポジティブクローンを直接ELISAにより検出した。すべてのポジティブクローンをクローニングし、そのうち4種は、安定した抗体製造を有し、2〜3回クローニングした。表8は、該クローン、及び免疫グロブリンアイソタイプを特定する。表9は、プレート上に吸着された1 μg/mlのMMP3を用いる、間接ELISA、及び0.5 μg/ml MMP3-ビオチンを用いる直接ELISAの結果を示す。該結果から、該クローンがMMP3に対して高アフィ二ティーを有することが示される。
【0120】
【表10】
【0121】
【表11】
【0122】
先の明細書に記載のすべての文献、及び特許は、引用により、本明細書中に取り込まれるものとする。本発明の趣旨、及び範囲から離れることのない、本発明の記載された方法、及び系の様々な調整、及び変更は、当業者に明らかである。本発明を、具体的な好ましい実施態様に関連して記載しているが、本発明は、請求されるとおり、そのような具体的な実施態様に必要以上に限定されるべきでないと、理解されるべきである。実際に、本発明を行うための、記載された態様の様々な調整は、免疫学、医学生化学、分子生物学、又は関連分野の業者にとって明らかであり、続く請求項の範囲内であるものとする。
【図面の簡単な説明】
【0123】
【図1】図1は、HSP70が抗原の提示をいかに促進するかを示す。
【図2】図2は、ヒト乳頭腫ウイルスの病理学を示す流れ図を示す。CINは子宮頸部上皮内腫瘍のことを言う。HSVは、単純ヘルペスウイルスのことを言う。HLAは、ヒト白血球抗原のことを言う。
【図3】PCRを用いたE7遺伝子増幅のためのプライマーの配列(配列番号: 14〜17)を示す。
【図4】図4は、EcoRI、及びBamHIの制限酵素認識部位をもつ、HPV16由来のクローンE7癌タンパク質のオリゴヌクレオチド(配列番号: 1)、及びアミノ酸配列(配列番号: 2)を示す。
【図5】図5は、EcoRI、及びBamHIの制限酵素認識部位をもつ、HPV18由来のクローンE7癌タンパク質のオリゴヌクレオチド(配列番号: 3)、及びアミノ酸配列(配列番号: 4)を示す。
【図6】図6は、HPV16 E7、及び代わりとしてHPV18 E7遺伝子を、 pBluescipt SK (+) (Stratagene社) プラスミド内のEcoRI-BamHI部位に挿入する位置のコンストラクト(配列番号: 18)を示す。
【図7】図7は、HPV16 E7、及びHPV18 E7遺伝子でトランスフェクトされた、大腸菌溶解物由来のE7癌タンパク質の単離されたバンドを明示している、電気泳動ゲルの写真を示す。
【図8】図8は、E7遺伝子を含むDNAの、PCR 増幅に用いられたDNA 鋳型(配列番号: 19〜22)を示す。該鋳型は、該HPV E7 遺伝子を含む、プラスミドDNA pHE716、及びpHE718に基づいている。
【図9】図9は、プラスミドPQE30-E716-dnaKの構造の概略図を示す。
【図10】図10は、プラスミドPQE30-E716-dnaKオリゴヌクレオチド配列(配列番号: 5)を示す。
【図11】図11は、至適条件下のHPV16 E7癌タンパク質の定量に用いる検量線を示す。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
低免疫原性の抗原に特異的なモノクローナル抗体を製造する方法であって:a. 該抗原を担体分子に化学的に結合させること;b. 動物に、該結合された抗原を免疫感作させること;c. 該動物からB細胞を採取すること; d. 該採取されたB細胞からハイブリドーマを作製すること;e. 該ハイブリドーマを本来の抗原への特異性でスクリーニングすることを含む、前記方法。
【請求項2】
該担体分子がHSP70である、請求項1の方法。
【請求項3】
該動物が正常な免疫系を有する、請求項1の方法。
【請求項4】
該動物が哺乳動物である、請求項1の方法。
【請求項5】
該B細胞を腹水から採取する、請求項1の方法。
【請求項6】
該B細胞をリンパ節から採取する、請求項1の方法。
【請求項7】
該B細胞を血液から採取する、請求項1の方法。
【請求項8】
該B細胞を脾臓から採取する、請求項1の方法。
【請求項9】
該ハイブリドーマを、マウス不死化細胞を用いて作製する、請求項1の方法。
【請求項10】
該マウス不死化細胞がマウス骨髄種細胞である、請求項9の方法。
【請求項11】
該ハイブリドーマを、ヒト不死化細胞を用いて作製する、請求項1の方法。
【請求項12】
該ハイブリドーマを、ラット不死化細胞を用いて作製する、請求項1の方法。
【請求項13】
該特異性のスクリーニングを、ラジオイムノアッセイ、酵素結合免疫吸着測定法、"サンドイッチ"免疫測定法、免疫放射定量測定法、ゲル拡散沈降反応、免疫拡散法、インサイチュー免疫測定法、ウエスタンブロット、沈降反応、凝集法、補体結合反応法、免疫蛍光測定法、プロテインA測定法、ウイルス可視化反応、生物活性調整測定法、及び免疫電気泳動法からなる群から選択される方法で行う、請求項1の方法。
【請求項14】
低免疫原性の抗原に特異的なモノクローナル抗体を含む組成物であって:該モノクローナル抗体が、a. 該抗原を担体分子と化学的に結合させること;b. 動物に、該結合された抗原を免疫感作させること;c. 該動物からB細胞を採取すること; d. 該採取されたB細胞からハイブリドーマを作製すること;及びe. 該ハイブリドーマを本来の抗原への特異性でスクリーニングすることにより製造される、前記組成物。
【請求項15】
該担体分子がHSP70である、請求項14の組成物。
【請求項16】
該動物が正常な免疫機構を有する、請求項14の組成物。
【請求項17】
該動物が哺乳動物である、請求項14の組成物。
【請求項18】
該B細胞を腹水から採取する、請求項14の組成物。
【請求項19】
該B細胞をリンパ節から採取する、請求項14の組成物。
【請求項20】
該B細胞を血液から採取する、請求項14の組成物。
【請求項21】
該B細胞を脾臓から採取する、請求項14の組成物。
【請求項22】
該ハイブリドーマを、マウス骨髄種細胞を用いて作製する、請求項14の組成物。
【請求項23】
該ハイブリドーマを、ヒト不死化細胞を用いて作製する、請求項14の組成物。
【請求項24】
該ハイブリドーマが、ラット不死化細胞を用いて作製される、請求項14の組成物。
【請求項25】
該特異性のスクリーニングを、ラジオイムノアッセイ、酵素結合免疫吸着測定法、"サンドイッチ"免疫測定法、免疫放射定量測定法、ゲル拡散沈降反応、免疫拡散法、インサイチュー免疫測定法、ウエスタンブロット、沈降反応、凝集法、補体結合反応法、免疫蛍光測定法、プロテインA測定法、ウイルス可視化反応、生物活性調整測定法、及び免疫電気泳動法からなる群から選択される方法で行う、請求項14の組成物。
【請求項26】
E7癌タンパク質に特異的なモノクローナル抗体を製造する方法であって:a. 該E7癌タンパク質を担体分子に化学的に結合させること;b. 動物に、該結合された抗原を免疫感作させること;c. 該動物からB細胞を採取すること; d. 該採取されたB細胞からハイブリドーマを作製すること;及びe. 該ハイブリドーマを本来のE7癌タンパク質への特異性でスクリーニングすることを含む、前記方法。
【請求項27】
該化学結合が、a. E7癌タンパク質をコードするヌクレオチド配列、及びHSP70をコードするヌクレオチド配列をもつプラスミドを作製すること;及びb. 宿主細胞を、該宿主細胞が該ヌクレオチド配列を該結合されたE7癌タンパク質へ転写する、該プラスミドでトランスフェクトすることを含む、請求項26の方法。
【請求項28】
該E7癌タンパク質をコードするヌクレオチド配列が配列番号:1である、請求項27の方法。
【請求項29】
該E7癌タンパク質をコードするヌクレオチド配列が配列番号:3である、請求項27の方法。
【請求項30】
該E7癌タンパク質をコードするヌクレオチド配列が配列番号:5である、請求項27の方法。
【請求項31】
該宿主細胞が、大腸菌(E. coli.)である、請求項27の方法。
【請求項32】
該担体分子がHSP70である、請求項26の方法。
【請求項33】
該動物が正常な免疫系を有する、請求項26の方法。
【請求項34】
該動物が哺乳動物である、請求項26の方法。
【請求項35】
該動物がマウスである、請求項34の方法。
【請求項36】
該B細胞を腹水から採取する、請求項26の方法。
【請求項37】
該B細胞をリンパ節から採取する、請求項26の方法。
【請求項38】
該B細胞を血液から採取する、請求項26の方法。
【請求項39】
該B細胞を脾臓から採取する、請求項26の方法。
【請求項40】
該ハイブリドーマを、マウス不死化細胞を用いて作製する、請求項26の方法。
【請求項41】
該マウス不死化細胞がマウス骨髄種細胞である、請求項40の方法。
【請求項42】
請求項41の該マウス骨髄種細胞が、Sp2/0-Ag14骨髄腫細胞である、
【請求項43】
該ハイブリドーマを、ヒト不死化細胞を用いて作製する、請求項26の方法。
【請求項44】
該ハイブリドーマを、ラット不死化細胞を用いて作製する、請求項26の方法。
【請求項45】
該特異性のスクリーニングを、ラジオイムノアッセイ、酵素結合免疫吸着測定法、"サンドイッチ"免疫測定法、免疫放射定量測定法、ゲル拡散沈降反応、免疫拡散法、インサイチュー免疫測定法、ウエスタンブロット、沈降反応、凝集法、補体結合反応法、免疫蛍光測定法、プロテインA測定法、ウイルス可視化反応、生物活性調整測定法、及び免疫電気泳動法からなる群から選択される方法で行う、請求項26の方法。
【請求項46】
E7癌タンパク質に特異的なモノクローナル抗体を含む組成物であって:該モノクローナル抗体を、a. 該抗原を担体分子と化学的に結合させること;b. 動物に、該結合された抗原を免疫感作させること;c. 該動物からB細胞を採取すること;d. 該採取されたB細胞からハイブリドーマを作製すること;及びe.
該ハイブリドーマを本来の抗原への特異性でスクリーニングすることにより製造する、前記組成物。
【請求項47】
該化学結合が、a. E7癌タンパク質をコードするヌクレオチド配列、及びHSP70をコードするヌクレオチド配列をもつプラスミドを作製すること;及びb. 宿主細胞を、宿主細胞が該ヌクレオチド配列を該結合されたE7癌タンパク質へ転写する、該プラスミドでトランスフェクトすることを含む、請求項46の組成物。
【請求項48】
該E7癌タンパク質をコードするヌクレオチド配列が配列番号: 1である、請求項47の組成物。
【請求項49】
該E7癌タンパク質をコードするヌクレオチド配列が配列 番号: 3である、請求項47の組成物。
【請求項50】
該HSP70をコードするヌクレオチド配列が配列番号: 5である、請求項47の組成物。
【請求項51】
該宿主細胞が大腸菌である、請求項47の組成物。
【請求項52】
該担体分子がHSP70である、請求項46の組成物。
【請求項53】
該動物が正常な免疫系を有する、請求項46の組成物。
【請求項54】
該動物が哺乳動物である、請求項46の組成物。
【請求項55】
該動物がマウスである、請求項54の組成物。
【請求項56】
該B細胞を腹水から採取する、請求項46の組成物。
【請求項57】
該B細胞をリンパ節から採取する、請求項46の組成物。
【請求項58】
該B細胞を血液から採取する、請求項46の組成物。
【請求項59】
該B細胞を脾臓から採取する、請求項46の組成物。
【請求項60】
該ハイブリドーマを、マウス不死化細胞を用いて作製する、請求項14の組成物。
【請求項61】
該マウス不死化細胞が、マウス骨髄種細胞である、請求項60の組成物。
【請求項62】
請求項61の該マウス骨髄種細胞が、Sp2/0-Ag14骨髄腫細胞である、
【請求項63】
該ハイブリドーマを、ヒト不死化細胞を用いて作製する、請求項46の組成物。
【請求項64】
該ハイブリドーマを、ラット不死化細胞を用いて作製する、請求項46の組成物。
【請求項65】
該特異性のスクリーニングを、ラジオイムノアッセイ、酵素結合免疫吸着測定法、"サンドイッチ"免疫測定法、免疫放射定量測定法、ゲル拡散沈降反応、免疫拡散法、インサイチュー免疫測定法、ウエスタンブロット、沈降反応、凝集法、補体結合反応法、免疫蛍光測定法、プロテインA測定法、ウイルス可視化反応、生物活性調整測定法、及び免疫電気泳動法からなる群から選択される方法で行う、請求項46の組成物。
【請求項66】
子宮頸部上皮内腫瘍の検出のために、E7癌タンパク質特異的なモノクローナル抗体を用いる方法であって:a. 子宮頸部上皮の試料を得ること;及びb. 該試料をE7癌タンパク質の存在でスクリーニングすることを含む、前記方法。
【請求項67】
該E7癌タンパク質の存在のスクリーニング方法が、ラジオイムノアッセイ、酵素結合免疫吸着測定法、"サンドイッチ"免疫測定法、免疫放射定量測定法、ゲル拡散沈降反応、免疫拡散法、インサイチュー免疫測定法、ウエスタンブロット、沈降反応、凝集法、補体結合反応法、免疫蛍光測定法、プロテインA測定法、ウイルス可視化反応、生物活性調整測定法、及び免疫電気泳動法からなる群から選択される、請求項66の方法。
【請求項68】
E7癌タンパク質の存在が0.05 ng/ml以上である、請求項66の方法。
【請求項69】
該モノクローナル抗体が、少なくとも2種の免疫グロブリンアイソタイプを含む、請求項66の方法。
【請求項70】
1種の免疫グロブリンアイソタイプがIgG2aである、請求項69のモノクローナル抗体。
【請求項71】
1種の免疫グロブリンアイソタイプがIgG2bである、請求項69のモノクローナル抗体。
【請求項72】
1種の免疫グロブリンアイソタイプが、第二の免疫グロブリンアイソタイプとは、異なる抗原決定基への特異性を有する、請求項69のモノクローナル抗体。
【請求項73】
個体が、子宮頸部上皮内腫瘍を発症するリスクを判断するキットであって:a. 少なくとも1種の、E7癌タンパク質を特異的に検出する試薬;及びb. 該個体が、子宮頸部上皮内腫瘍を発症するリスクが高いことを判断する取扱説明書を含む、前記キット。
【請求項74】
請求項73の試薬が、請求項46のモノクローナル抗体である、
【請求項75】
プリオンタンパク質ペプチドに特異的なモノクローナル抗体を製造する方法であって:a. 該プリオンタンパク質ペプチドを担体分子に化学的に結合させること;b. 動物に、該結合された抗原を免疫感作させること;c. 該動物からB細胞を採取すること; d. 該採取されたB細胞からハイブリドーマを作製すること;及びe. 該ハイブリドーマを本来のプリオンタンパク質への特異性でスクリーニングすることを含む、前記方法。
【請求項76】
該結合を、グルタルアルデヒドを用いて化学的に行う、請求項75の方法。
【請求項77】
該プリオンタンパク質ペプチドが配列番号: 6である、請求項75の方法。
【請求項78】
該プリオンタンパク質ペプチドが配列番号: 7である、請求項75の方法。
【請求項79】
該プリオンタンパク質ペプチドが配列番号: 9である、請求項75の方法。
【請求項80】
該担体分子がHSP70である、請求項75の方法。
【請求項81】
該動物がマウスである、請求項75の方法。
【請求項82】
該スクリーニングを、酵素結合免疫吸着測定法を用いて行う、請求項75の方法。
【請求項83】
個体が、海綿状脳症を発症するリスクがあるかを判断するキットであって:a. 少なくとも1種の、プリオンタンパク質を特異的に検出する試薬;及びb. 該個体が、海綿状脳症を発症するリスクが高いことを判断する取扱説明書を含む、前記キット。
【請求項84】
ヒアルロン酸に特異的なモノクローナル抗体を製造する方法であって:a. 該ヒアルロン酸を担体分子に化学的に結合させること;b. 動物に、該結合された抗原を免疫感作させること;c. 該動物からB細胞を採取すること; d. 該採取されたB細胞からハイブリドーマを作製すること;及びe. 該ハイブリドーマを本来のヒアルロン酸への特異性でスクリーニングすることを含む、前記方法。
【請求項85】
マトリックスメタロプロテアーゼ3に特異的なモノクローナル抗体を製造する方法であって:a. 該マトリックスメタロプロテアーゼ3を担体分子に化学的に結合させること;b. 動物に、該結合された抗原を免疫感作させること;c. 該動物からB細胞を採取すること; d. 該採取されたB細胞からハイブリドーマを作製すること;及びe. 該ハイブリドーマを本来のマトリックスメタロプロテアーゼ3への特異性でスクリーニングすることを含む、前記方法。
【請求項86】
該結合を、グルタルアルデヒドを用いて化学的に行う、請求項85の方法。
【請求項87】
該担体分子がHSP70である、請求項85の方法。
【請求項88】
該動物がマウスである、請求項85の方法。
【請求項89】
該スクリーニングを、酵素結合免疫吸着測定法を用いて行う、請求項85の方法。
【請求項1】
低免疫原性の抗原に特異的なモノクローナル抗体を製造する方法であって:a. 該抗原を担体分子に化学的に結合させること;b. 動物に、該結合された抗原を免疫感作させること;c. 該動物からB細胞を採取すること; d. 該採取されたB細胞からハイブリドーマを作製すること;e. 該ハイブリドーマを本来の抗原への特異性でスクリーニングすることを含む、前記方法。
【請求項2】
該担体分子がHSP70である、請求項1の方法。
【請求項3】
該動物が正常な免疫系を有する、請求項1の方法。
【請求項4】
該動物が哺乳動物である、請求項1の方法。
【請求項5】
該B細胞を腹水から採取する、請求項1の方法。
【請求項6】
該B細胞をリンパ節から採取する、請求項1の方法。
【請求項7】
該B細胞を血液から採取する、請求項1の方法。
【請求項8】
該B細胞を脾臓から採取する、請求項1の方法。
【請求項9】
該ハイブリドーマを、マウス不死化細胞を用いて作製する、請求項1の方法。
【請求項10】
該マウス不死化細胞がマウス骨髄種細胞である、請求項9の方法。
【請求項11】
該ハイブリドーマを、ヒト不死化細胞を用いて作製する、請求項1の方法。
【請求項12】
該ハイブリドーマを、ラット不死化細胞を用いて作製する、請求項1の方法。
【請求項13】
該特異性のスクリーニングを、ラジオイムノアッセイ、酵素結合免疫吸着測定法、"サンドイッチ"免疫測定法、免疫放射定量測定法、ゲル拡散沈降反応、免疫拡散法、インサイチュー免疫測定法、ウエスタンブロット、沈降反応、凝集法、補体結合反応法、免疫蛍光測定法、プロテインA測定法、ウイルス可視化反応、生物活性調整測定法、及び免疫電気泳動法からなる群から選択される方法で行う、請求項1の方法。
【請求項14】
低免疫原性の抗原に特異的なモノクローナル抗体を含む組成物であって:該モノクローナル抗体が、a. 該抗原を担体分子と化学的に結合させること;b. 動物に、該結合された抗原を免疫感作させること;c. 該動物からB細胞を採取すること; d. 該採取されたB細胞からハイブリドーマを作製すること;及びe. 該ハイブリドーマを本来の抗原への特異性でスクリーニングすることにより製造される、前記組成物。
【請求項15】
該担体分子がHSP70である、請求項14の組成物。
【請求項16】
該動物が正常な免疫機構を有する、請求項14の組成物。
【請求項17】
該動物が哺乳動物である、請求項14の組成物。
【請求項18】
該B細胞を腹水から採取する、請求項14の組成物。
【請求項19】
該B細胞をリンパ節から採取する、請求項14の組成物。
【請求項20】
該B細胞を血液から採取する、請求項14の組成物。
【請求項21】
該B細胞を脾臓から採取する、請求項14の組成物。
【請求項22】
該ハイブリドーマを、マウス骨髄種細胞を用いて作製する、請求項14の組成物。
【請求項23】
該ハイブリドーマを、ヒト不死化細胞を用いて作製する、請求項14の組成物。
【請求項24】
該ハイブリドーマが、ラット不死化細胞を用いて作製される、請求項14の組成物。
【請求項25】
該特異性のスクリーニングを、ラジオイムノアッセイ、酵素結合免疫吸着測定法、"サンドイッチ"免疫測定法、免疫放射定量測定法、ゲル拡散沈降反応、免疫拡散法、インサイチュー免疫測定法、ウエスタンブロット、沈降反応、凝集法、補体結合反応法、免疫蛍光測定法、プロテインA測定法、ウイルス可視化反応、生物活性調整測定法、及び免疫電気泳動法からなる群から選択される方法で行う、請求項14の組成物。
【請求項26】
E7癌タンパク質に特異的なモノクローナル抗体を製造する方法であって:a. 該E7癌タンパク質を担体分子に化学的に結合させること;b. 動物に、該結合された抗原を免疫感作させること;c. 該動物からB細胞を採取すること; d. 該採取されたB細胞からハイブリドーマを作製すること;及びe. 該ハイブリドーマを本来のE7癌タンパク質への特異性でスクリーニングすることを含む、前記方法。
【請求項27】
該化学結合が、a. E7癌タンパク質をコードするヌクレオチド配列、及びHSP70をコードするヌクレオチド配列をもつプラスミドを作製すること;及びb. 宿主細胞を、該宿主細胞が該ヌクレオチド配列を該結合されたE7癌タンパク質へ転写する、該プラスミドでトランスフェクトすることを含む、請求項26の方法。
【請求項28】
該E7癌タンパク質をコードするヌクレオチド配列が配列番号:1である、請求項27の方法。
【請求項29】
該E7癌タンパク質をコードするヌクレオチド配列が配列番号:3である、請求項27の方法。
【請求項30】
該E7癌タンパク質をコードするヌクレオチド配列が配列番号:5である、請求項27の方法。
【請求項31】
該宿主細胞が、大腸菌(E. coli.)である、請求項27の方法。
【請求項32】
該担体分子がHSP70である、請求項26の方法。
【請求項33】
該動物が正常な免疫系を有する、請求項26の方法。
【請求項34】
該動物が哺乳動物である、請求項26の方法。
【請求項35】
該動物がマウスである、請求項34の方法。
【請求項36】
該B細胞を腹水から採取する、請求項26の方法。
【請求項37】
該B細胞をリンパ節から採取する、請求項26の方法。
【請求項38】
該B細胞を血液から採取する、請求項26の方法。
【請求項39】
該B細胞を脾臓から採取する、請求項26の方法。
【請求項40】
該ハイブリドーマを、マウス不死化細胞を用いて作製する、請求項26の方法。
【請求項41】
該マウス不死化細胞がマウス骨髄種細胞である、請求項40の方法。
【請求項42】
請求項41の該マウス骨髄種細胞が、Sp2/0-Ag14骨髄腫細胞である、
【請求項43】
該ハイブリドーマを、ヒト不死化細胞を用いて作製する、請求項26の方法。
【請求項44】
該ハイブリドーマを、ラット不死化細胞を用いて作製する、請求項26の方法。
【請求項45】
該特異性のスクリーニングを、ラジオイムノアッセイ、酵素結合免疫吸着測定法、"サンドイッチ"免疫測定法、免疫放射定量測定法、ゲル拡散沈降反応、免疫拡散法、インサイチュー免疫測定法、ウエスタンブロット、沈降反応、凝集法、補体結合反応法、免疫蛍光測定法、プロテインA測定法、ウイルス可視化反応、生物活性調整測定法、及び免疫電気泳動法からなる群から選択される方法で行う、請求項26の方法。
【請求項46】
E7癌タンパク質に特異的なモノクローナル抗体を含む組成物であって:該モノクローナル抗体を、a. 該抗原を担体分子と化学的に結合させること;b. 動物に、該結合された抗原を免疫感作させること;c. 該動物からB細胞を採取すること;d. 該採取されたB細胞からハイブリドーマを作製すること;及びe.
該ハイブリドーマを本来の抗原への特異性でスクリーニングすることにより製造する、前記組成物。
【請求項47】
該化学結合が、a. E7癌タンパク質をコードするヌクレオチド配列、及びHSP70をコードするヌクレオチド配列をもつプラスミドを作製すること;及びb. 宿主細胞を、宿主細胞が該ヌクレオチド配列を該結合されたE7癌タンパク質へ転写する、該プラスミドでトランスフェクトすることを含む、請求項46の組成物。
【請求項48】
該E7癌タンパク質をコードするヌクレオチド配列が配列番号: 1である、請求項47の組成物。
【請求項49】
該E7癌タンパク質をコードするヌクレオチド配列が配列 番号: 3である、請求項47の組成物。
【請求項50】
該HSP70をコードするヌクレオチド配列が配列番号: 5である、請求項47の組成物。
【請求項51】
該宿主細胞が大腸菌である、請求項47の組成物。
【請求項52】
該担体分子がHSP70である、請求項46の組成物。
【請求項53】
該動物が正常な免疫系を有する、請求項46の組成物。
【請求項54】
該動物が哺乳動物である、請求項46の組成物。
【請求項55】
該動物がマウスである、請求項54の組成物。
【請求項56】
該B細胞を腹水から採取する、請求項46の組成物。
【請求項57】
該B細胞をリンパ節から採取する、請求項46の組成物。
【請求項58】
該B細胞を血液から採取する、請求項46の組成物。
【請求項59】
該B細胞を脾臓から採取する、請求項46の組成物。
【請求項60】
該ハイブリドーマを、マウス不死化細胞を用いて作製する、請求項14の組成物。
【請求項61】
該マウス不死化細胞が、マウス骨髄種細胞である、請求項60の組成物。
【請求項62】
請求項61の該マウス骨髄種細胞が、Sp2/0-Ag14骨髄腫細胞である、
【請求項63】
該ハイブリドーマを、ヒト不死化細胞を用いて作製する、請求項46の組成物。
【請求項64】
該ハイブリドーマを、ラット不死化細胞を用いて作製する、請求項46の組成物。
【請求項65】
該特異性のスクリーニングを、ラジオイムノアッセイ、酵素結合免疫吸着測定法、"サンドイッチ"免疫測定法、免疫放射定量測定法、ゲル拡散沈降反応、免疫拡散法、インサイチュー免疫測定法、ウエスタンブロット、沈降反応、凝集法、補体結合反応法、免疫蛍光測定法、プロテインA測定法、ウイルス可視化反応、生物活性調整測定法、及び免疫電気泳動法からなる群から選択される方法で行う、請求項46の組成物。
【請求項66】
子宮頸部上皮内腫瘍の検出のために、E7癌タンパク質特異的なモノクローナル抗体を用いる方法であって:a. 子宮頸部上皮の試料を得ること;及びb. 該試料をE7癌タンパク質の存在でスクリーニングすることを含む、前記方法。
【請求項67】
該E7癌タンパク質の存在のスクリーニング方法が、ラジオイムノアッセイ、酵素結合免疫吸着測定法、"サンドイッチ"免疫測定法、免疫放射定量測定法、ゲル拡散沈降反応、免疫拡散法、インサイチュー免疫測定法、ウエスタンブロット、沈降反応、凝集法、補体結合反応法、免疫蛍光測定法、プロテインA測定法、ウイルス可視化反応、生物活性調整測定法、及び免疫電気泳動法からなる群から選択される、請求項66の方法。
【請求項68】
E7癌タンパク質の存在が0.05 ng/ml以上である、請求項66の方法。
【請求項69】
該モノクローナル抗体が、少なくとも2種の免疫グロブリンアイソタイプを含む、請求項66の方法。
【請求項70】
1種の免疫グロブリンアイソタイプがIgG2aである、請求項69のモノクローナル抗体。
【請求項71】
1種の免疫グロブリンアイソタイプがIgG2bである、請求項69のモノクローナル抗体。
【請求項72】
1種の免疫グロブリンアイソタイプが、第二の免疫グロブリンアイソタイプとは、異なる抗原決定基への特異性を有する、請求項69のモノクローナル抗体。
【請求項73】
個体が、子宮頸部上皮内腫瘍を発症するリスクを判断するキットであって:a. 少なくとも1種の、E7癌タンパク質を特異的に検出する試薬;及びb. 該個体が、子宮頸部上皮内腫瘍を発症するリスクが高いことを判断する取扱説明書を含む、前記キット。
【請求項74】
請求項73の試薬が、請求項46のモノクローナル抗体である、
【請求項75】
プリオンタンパク質ペプチドに特異的なモノクローナル抗体を製造する方法であって:a. 該プリオンタンパク質ペプチドを担体分子に化学的に結合させること;b. 動物に、該結合された抗原を免疫感作させること;c. 該動物からB細胞を採取すること; d. 該採取されたB細胞からハイブリドーマを作製すること;及びe. 該ハイブリドーマを本来のプリオンタンパク質への特異性でスクリーニングすることを含む、前記方法。
【請求項76】
該結合を、グルタルアルデヒドを用いて化学的に行う、請求項75の方法。
【請求項77】
該プリオンタンパク質ペプチドが配列番号: 6である、請求項75の方法。
【請求項78】
該プリオンタンパク質ペプチドが配列番号: 7である、請求項75の方法。
【請求項79】
該プリオンタンパク質ペプチドが配列番号: 9である、請求項75の方法。
【請求項80】
該担体分子がHSP70である、請求項75の方法。
【請求項81】
該動物がマウスである、請求項75の方法。
【請求項82】
該スクリーニングを、酵素結合免疫吸着測定法を用いて行う、請求項75の方法。
【請求項83】
個体が、海綿状脳症を発症するリスクがあるかを判断するキットであって:a. 少なくとも1種の、プリオンタンパク質を特異的に検出する試薬;及びb. 該個体が、海綿状脳症を発症するリスクが高いことを判断する取扱説明書を含む、前記キット。
【請求項84】
ヒアルロン酸に特異的なモノクローナル抗体を製造する方法であって:a. 該ヒアルロン酸を担体分子に化学的に結合させること;b. 動物に、該結合された抗原を免疫感作させること;c. 該動物からB細胞を採取すること; d. 該採取されたB細胞からハイブリドーマを作製すること;及びe. 該ハイブリドーマを本来のヒアルロン酸への特異性でスクリーニングすることを含む、前記方法。
【請求項85】
マトリックスメタロプロテアーゼ3に特異的なモノクローナル抗体を製造する方法であって:a. 該マトリックスメタロプロテアーゼ3を担体分子に化学的に結合させること;b. 動物に、該結合された抗原を免疫感作させること;c. 該動物からB細胞を採取すること; d. 該採取されたB細胞からハイブリドーマを作製すること;及びe. 該ハイブリドーマを本来のマトリックスメタロプロテアーゼ3への特異性でスクリーニングすることを含む、前記方法。
【請求項86】
該結合を、グルタルアルデヒドを用いて化学的に行う、請求項85の方法。
【請求項87】
該担体分子がHSP70である、請求項85の方法。
【請求項88】
該動物がマウスである、請求項85の方法。
【請求項89】
該スクリーニングを、酵素結合免疫吸着測定法を用いて行う、請求項85の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図10】
【図11】
【図2】
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【図6】
【図7】
【図8】
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【図10】
【図10】
【図11】
【公表番号】特表2007−537705(P2007−537705A)
【公表日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−527937(P2006−527937)
【出願日】平成16年9月24日(2004.9.24)
【国際出願番号】PCT/RU2004/000373
【国際公開番号】WO2005/028510
【国際公開日】平成17年3月31日(2005.3.31)
【出願人】(506098136)
【出願人】(506098147)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年9月24日(2004.9.24)
【国際出願番号】PCT/RU2004/000373
【国際公開番号】WO2005/028510
【国際公開日】平成17年3月31日(2005.3.31)
【出願人】(506098136)
【出願人】(506098147)
【Fターム(参考)】
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