得点可能性定量化装置、得点可能性順序付け装置及び得点可能性定量化プログラム
【課題】複数名の選手が二つのチームに分かれ、ボールを相手ゴール内に入れることで得点を競い合うチームスポーツにおいて、指定した地点からのシュートが得点に結びつく可能性を定量化することを課題とする。
【解決手段】得点可能性定量化装置1は、防御側選手配置情報記憶手段10と、シュートコース演算手段11と、第1のカウンタ12と、防御側選手選択手段13と、妨害容易度演算手段14と、評価手段15と、を備え、妨害容易度演算手段14は、半直線Sと防御側選手の2次元空間上の位置aiとの相対位置に基づき、半直線Sへの到達の容易さを防御側選手ごとに妨害容易度ηiとして定量化し、評価手段15は、妨害容易度ηiを総和し、総和した値を、注目位置bから攻撃側選手が防御側ゴールに向かってシュートをしたときの攻撃側チームの得点の可能性の評価値Eとすることを特徴とする。
【解決手段】得点可能性定量化装置1は、防御側選手配置情報記憶手段10と、シュートコース演算手段11と、第1のカウンタ12と、防御側選手選択手段13と、妨害容易度演算手段14と、評価手段15と、を備え、妨害容易度演算手段14は、半直線Sと防御側選手の2次元空間上の位置aiとの相対位置に基づき、半直線Sへの到達の容易さを防御側選手ごとに妨害容易度ηiとして定量化し、評価手段15は、妨害容易度ηiを総和し、総和した値を、注目位置bから攻撃側選手が防御側ゴールに向かってシュートをしたときの攻撃側チームの得点の可能性の評価値Eとすることを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数名の選手が二つのチームに分かれ、ボールを相手ゴール内に入れることで得点を競い合うチームスポーツの戦術の解析を行うときに用いられる技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のスポーツ戦術解析手法としては、次のようなものが知られている。
例えば、特許文献1には、選手配置情報及びボール位置情報から各選手の行動を予測し、各チームの優勢度を算出する手法が開示されている。この手法は、フィールド上にメッシュ状のエリアを設定し、このエリア毎にチーム優勢度を求め、チーム優勢度に基づいてパス先候補キャラクタを決定するものである。
【0003】
また例えば、特許文献2には、選手配置情報や選手の視野、姿勢に基づいて、パスを出す方向を決定する手法が開示されている。この手法は、ボール保持者の行動を評価し、これに基づいて、チームの優勢度を判定するものである。
【0004】
【特許文献1】特許第3533393号公報(段落0054〜段落0058、図7)
【特許文献2】特開2006−204420号公報(段落0006、図3)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このようにして得られた結果は、オペレータが対象スポーツ競技の戦術やルールに精通していなくても、その後のゲームの流れを予想し、あるいは、各チームの戦術を考えることが可能なように、簡単に理解できるものであることが望ましい。しかしながら、特許文献1及び特許文献2に記載の技術では、各チームの支配エリアを可視化し、支配エリア毎のチーム優勢度を求めたり、チーム優勢度に基づいて行動を決定したりするものであるため、オペレータが対象スポーツ競技の戦術やルールに精通していない場合、出力された結果を理解することが困難であった。
【0006】
また、特許文献1及び特許文献2に記載の技術では、各チームの支配エリアを可視化し、エリアごとの各チームの優勢度を判定するものであるため、得点の可能性そのものを定量化することができなかった。このため、例えば、劣勢のチームであっても、ある位置からシュートすれば、得点の可能性が高い位置が存在する場合があっても、そのような事情を考慮した戦術の解析を行うことができなかった。
【0007】
本発明は、以上のような問題点に鑑みてなされたものであり、複数名の選手が二つのチームに分かれ、ボールを相手ゴール内に入れることで得点を競い合うチームスポーツにおいて、指定する地点からのシュートが得点に結びつく可能性を定量化することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決した請求項1に係る発明は、複数名の選手が二つのチームに分かれ、ボールを相手ゴール内に入れることで得点を競い合うチームスポーツにおいて、指定する位置からの前記得点の可能性を定量化する得点可能性定量化装置であって、シュートコース演算手段と、妨害容易度演算手段と、評価手段と、を備えることを特徴とする。
【0009】
かかる構成によれば、得点可能性定量化装置は、シュートコース演算手段によって、外部から入力された操作信号により競技エリア上に設定された注目位置からのシュートコースとして、防御側ゴールに代表点を設定し、前記注目位置から前記代表点に向かってのびる半直線を演算する。
また、得点可能性定量化装置は、妨害容易度演算手段によって、前記半直線と、前記競技エリア上に配置された防御側チームのそれぞれの防御側選手の2次元空間上の位置との相対位置に基づき、前記半直線への前記防御側選手の到達の容易さを妨害容易度として前記防御側選手ごとに定量化する。
また、得点可能性定量化装置は、評価手段によって、前記妨害容易度演算手段によって定量化した前記防御側選手ごとの前記妨害容易度を総和し、前記注目位置から攻撃側チームの攻撃側選手が防御側ゴールに向かってシュートをしたと仮定した場合の、当該シュートによる前記攻撃側チームの得点の可能性の評価値とする。
【0010】
また、請求項2に係る発明は、請求項1に係る得点可能性定量化装置において、前記防御側選手のうち、前記半直線上のいずれかの点と垂線で結ばれる前記2次元空間上の位置にいる前記防御側選手のそれぞれについて、当該垂線の長さと、前記注目位置から前記半直線上の前記垂線との交点までの長さの比率を、前記妨害容易度として演算することを特徴とする。
これによれば、ある防御側選手の位置からシュートコースとして求めた半直線に下ろした垂線の長さにより、ある防御側選手がシュートコースに到達するための最短移動距離を求め、また、注目位置から垂線の足と半直線の交点までの長さにより、ある防御側選手がシュートコースに到達する地点までのボールの移動距離を求める。このような物理量を用いることにより、ある防御側選手が、シュートコースへの到達の容易さ、すなわち、シュートを妨害可能な程度(妨害容易度)を定量化することができる。そして、防御側選手ごとに妨害容易度を算出し、算出した妨害容易度を総和することで、攻撃側選手が注目位置から防御側ゴールに向かってシュートしたときの、攻撃側チームの得点に結びつく可能性を定量化した評価値を得ることができる。
【0011】
また、請求項3に係る発明は、請求項1に係る得点可能性定量化装置において、前記妨害容易度演算手段は、前記半直線において、前記注目位置から前記防御側選手が前記ボールに到達するまでの到達点を、前記ボールの速度のモデルと選手の速度のモデルとに基づいて決定し、前記半直線上の到達点と前記防御側選手の前記2次元空間上の位置とを結んだ線分の長さと、前記注目位置から当該半直線上の到達点までの長さの比率を、当該防御側選手の前記半直線への到達の容易さを示す妨害容易度として演算することを特徴とする。
【0012】
また、請求項4に係る発明は、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の得点可能性定量化装置において、前記チームスポーツをサッカーとし、オフサイドライン推定手段と、オフサイド判定手段と、切替手段とをさらに備える構成とした。
かかる構成によれば、得点可能性定量化装置は、オフサイドライン推定手段によって、前記全ての防御側選手の中で、前記防御側ゴールのゴールライン側から数えて2番目に位置する前記防御側選手の前記2次元空間上の位置に基づいてオフサイドライン位置を推定する。
また、得点可能性定量化装置は、オフサイド判定手段によって、前記オフサイドライン位置と前記注目位置とを比較し、前記注目位置が前記オフサイドライン位置よりも前記防御側ゴールに近い場合、当該注目位置がオフサイドポジションにあると判定する。
また、得点可能性定量化装置は、切替手段によって、前記オフサイド判定手段によって、前記オフサイド判定手段によって、前記注目位置が前記オフサイドポジションにあると判定された場合、前記評価値の範囲外の予め定めた値を出力し、前記注目位置が前記オフサイドポジションにないと判定された場合、前記評価手段から取得した前記評価値を出力する。
【0013】
また、請求項5に係る発明は、攻撃側チームの複数の攻撃側選手について、当該複数の攻撃側選手のそれぞれの2次元空間上の位置から防御側ゴールに向かってシュートしたときの得点の可能性をそれぞれ評価し、この得点の可能性の高い順に前記複数の攻撃側選手を順序付ける得点可能性順序付け装置であって、請求項1に記載の得点可能性定量化装置と、順序付け手段と、を備えることを特徴とする。
かかる構成によれば、得点可能性順序付け装置は、請求項1に記載の得点可能性定量化装置によって、前記複数の攻撃側選手の2次元空間上の位置を順次注目位置として、前記注目位置から前記攻撃側選手が前記防御側ゴールに向かってシュートをしたときの、前記攻撃側チームの得点の可能性の評価値を、前記注目位置ごとに順次求める。
また、得点可能性順序付け装置は、順序付け手段によって、前記請求項1に記載の得点可能性定量化装置から複数の前記評価値を取得し、当該複数の評価値の値が高い方から順に並べ替えて順序付ける。
【0014】
請求項6に係る発明は、複数名の選手が二つのチームに分かれ、ボールを相手ゴール内に入れることで得点を競い合うチームスポーツにおいて、外部から入力された操作信号により競技エリア上に特定された注目位置からの前記得点の可能性を定量化するために、コンピュータを、シュートコース演算手段、妨害容易度演算手段、評価手段として機能させる得点可能性定量化プログラムとして構成した。
【0015】
かかる構成によれば、得点可能性定量化プログラムは、シュートコース演算手段によって、外部から入力された操作信号により競技エリア上に特定された注目位置からのシュートコースとして、前記防御側ゴールに代表点を設定し、前記注目位置から前記代表点に向かってのびる半直線を演算する。
また、得点可能性定量化プログラムは、前記半直線と、前記競技エリア上に配置された防御側チームのそれぞれの防御側選手の2次元空間上の位置との相対位置に基づき、前記半直線への前記防御側選手の到達の容易さを妨害容易度として前記複数の防御側選手のそれぞれについて定量化する。
そして、得点可能性定量化プログラムは、前記妨害容易度演算手段によって定量化した前記防御側選手ごとの前記妨害容易度を総和し、前記注目位置から攻撃側チームの攻撃側選手が防御側ゴールに向かってシュートをしたと仮定した場合の、当該シュートによる攻撃側チームの得点の可能性の評価値とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る得点可能性定量化装置及び得点可能性定量化プログラムによれば、以下のような優れた効果を奏する。
請求項1及び請求項6に記載の発明によれば、注目位置からのシュートが攻撃側チームの得点に結びつく可能性を数値化した評価値を算出することができるので、オペレータが、対象スポーツ競技の戦術やルールに精通していない場合であっても、容易に理解可能となる。また、競技エリア上のあらゆる位置からのシュートによる得点の可能性をそれぞれ直接定量化することが可能なため、オペレータが、評価値を用いて、より詳細な戦術の解析を行うことが可能となる。
また、請求項2に記載の発明によれば、攻撃側選手が注目位置から防御側ゴールに向かってシュートしたときの防御側選手の干渉を評価することで、攻撃側チームの得点の可能性を定量化することができる。
また、ある位置からの得点の可能性の評価値を算出するため、オペレータが、対象スポーツ競技の戦術やルールに精通していない場合であっても、出力された結果(評価値)を容易に理解可能となる。
また、請求項3に記載の発明によれば、得点可能性定量化装置は、防御側選手の移動速度及びボールの移動速度として実際の選手の速度、ボールの速度でモデル化した値を用いて妨害容易度を算出することができるので、精度のより高い評価値を算出することができる。
また、請求項4に記載の発明によれば、サッカーのルールの一つである、ボールを相手ゴールに入れた場合であっても得点を認めないというオフサイドルールを評価値に反映することができるので、より適切な評価値を算出することができる。また、注目位置がオフサイドポジションにあると判断された場合には評価値の範囲外の値を出力するため、オペレータがサッカーの戦術やルールに精通していない場合にも、出力された結果(評価値)から、注目位置がオフサイドポジションにあることを容易に理解可能となる。また、注目位置がオフサイドポジションにあると判断された場合には、評価値の範囲外の値を出力するため、計算コストを減らすことができる。
また、請求項5に記載の発明によれば、攻撃側チームの攻撃側選手群を、得点の可能性を示す評価値の高い順に並び替えて順序付けることができる。これにより、どの注目選手の位置からシュートを打てば得点につながりやすいかということがわかるので、戦術の解析を詳細に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
[第1実施形態に係る得点可能性定量化装置の説明]
以下、本発明の実施形態について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。図1は、第1実施形態に係る得点可能性定量化装置に入力される防御側選手の配置情報を説明するための模式図である。ここでは、サッカー競技をカメラで撮影した入力映像を用いて説明する。
図1に示すように、本実施形態では、サッカー競技場F(競技エリア)上のセンターサークルCCのセンターマークの中心に原点Oをとり、タッチラインTL方向をx軸とし、防御側の陣地から攻撃側の陣地に向かう方向を、x軸の正方向とする。また、ハーフウェイラインHL方向をy軸とし、x軸から90度正方向に回転した方向をy軸の正方向とする。
第1実施形態に係る得点可能性定量化装置は、公知の選手位置検出装置(図示せず)と接続され、選手位置検出装置(図示せず)によって、サッカー競技をカメラで撮影した入力映像から検出された、攻撃側・防御側チームのそれぞれの選手(図1では、△印と×印とで示す)の2次元空間上の位置の入力を受け付けている。
第1実施形態に係る得点可能性定量化装置は、例えば表示手段(図示せず)と接続され、オペレータが、表示手段(図示せず)に表示されたサッカー競技場Fの映像を見て、入力手段(図示せず)を介してサッカー競技場F上のある位置を注目位置として選択すると、当該注目位置から相手ゴールに向かってシュートしたときの得点の可能性を数値化した評価値を算出することができるようになっている。
【0018】
[第1実施形態に係る得点可能性定量化装置の構成]
次に、本発明の第1実施形態に係る得点可能性定量化装置の構成を説明する。
図2は、本発明の第1実施形態に係る得点可能性定量化装置の構成を示すブロック構成図である。
図2に示すように、本発明の第1実施形態に係る得点可能性定量化装置1は、防御側選手配置情報記憶手段10と、シュートコース演算手段11と、第1のカウンタ12と、防御側選手選択手段13と、妨害容易度演算手段14と、評価手段15と、を備えている。なお、以下の説明では、二つのチームのうちの一方を攻撃側チーム、他方を防御側チームといい、攻撃側チームの選手を攻撃側選手、防御側チームの選手を防御側選手として区別する。また、チームスポーツをサッカーとするが、複数名の選手が二つのチームに分かれてボールを相手ゴール内に入れることで得点を競い合うスポーツであれば、特に限定されるものではない。また、ここでいうボールとは、ゴール内に入れられる可能性を有するものであれば何でも良く、例えば、ホッケー等に使用されるパック等であっても良い。また、ここでいうシュートとは、ボールをゴールに向かわせることを示し、例えば「ショット」等、用いるスポーツの種類で異なる表現を代表したものである。
【0019】
防御側選手配置情報記憶手段10は、サッカー競技場F上にいる防御側選手の2次元空間上の位置{ai}i=1,2,…,N(Nは1以上の整数で人数を表す)を記憶するものである。防御側選手の2次元空間上の位置{ai}i=1,2,…,Nは、前記したように、公知の選手位置検出装置(図示せず)によって検出され、防御側選手配置情報記憶手段10に出力される。防御側選手配置情報記憶手段10に記憶された防御側選手の2次元空間上の位置{ai}i=1,2,…,Nは、後記する防御側選手選択手段13によって適宜読み出される。
シュートコース演算手段11は、注目位置bからのシュートコースを演算するものである。より詳細には、シュートコース演算手段11は、注目位置bから防御側ゴールに仮想的に設定された代表点gに向かってのびる半直線Sを演算することにより、シュートコースを求める。
【0020】
ここで、注目位置bは、サッカー競技場F上に仮想的に設定された位置ベクトルである。注目位置bは、例えば、サッカー競技を撮影した入力映像から、オペレータが入力手段(図示せず)を介して、サッカーコート上のある位置を任意に選択すること等によって設定することができる。なお、注目位置bは、特開2004−110448号公報に記載の映像オブジェクト識別・追跡装置を用いて入力映像から防御側選手の位置を検出してその位置としても良いし、オペレータが手動で入力しても良い。
また、代表点gは、注目位置bからのシュートの仮想的な軌道、具体的には、注目位置bからのシュートが、防御側ゴール内に入るまでの仮想的な軌道(半直線S)を演算するために、防御側ゴールに仮想的に設定される位置ベクトルである。
注目位置b及び代表点gは、そのいずれか一方または双方が地面上にあるものとすることができる。本実施形態では、平面の地面を仮定し、注目位置b及び代表点gは、いずれも地面上にあるものとする。
【0021】
ここで、図3を用いてシュートコース演算手段11によって演算される半直線Sについて詳細に説明する。
図3は、本発明の第1実施形態に係る得点可能性定量化装置のシュートコース演算手段によって、防御側ゴールに仮想的に代表点を設定する様子を表す概念図である。サッカー競技では、ゴールラインGLを完全に超えてゴールの枠内にボールを入れることで得点が認められるため、第1実施形態では、ゴールラインGL上に代表点gを設定するものとする。
この代表点gは、注目位置bの位置によらずに設定しても良い。シュートコース演算手段11は、注目位置bの位置によらずに代表点gを設定する場合には、例えば、図3(a)に示すように、ゴールラインGLの中点の座標を代表点g(gx,gy)とする。
【0022】
一方、代表点gを、注目位置bの位置に応じて設定しても良い。シュートコース演算手段11は、注目位置bの位置に応じて代表点gを設定する場合には、次のようにする。
図3(b)に示すように、ゴールラインGLの中点をy=0とおき、線分の両端点のy座標をそれぞれ+R/2、−R/2とおき、注目位置bの座標をb(bx,by)とおく。例えば、注目位置bのy座標byが−R/2以上+R/2以下の場合、図3(b)に示すように、代表点gのy座標gyを、注目位置bのy座標byとする。また、例えば、注目位置bのy座標byが+R/2よりも大きい場合、図3(c)に示すように、代表点gのy座標gyを+R/2とする。また例えば、注目位置bのy座標byが−R/2よりも小さい場合、図3(d)に示すように、代表点gのy座標gyを−R/2とする。
シュートコース演算手段11は、このようにして代表点gを設定し、注目位置bから代表点gを通過する半直線S(シュートコース)を演算する。シュートコース演算手段11は、演算した半直線Sを、妨害容易度演算手段14に出力する。
【0023】
再び図2を参照し、得点可能性定量化装置1の構成について説明する。第1のカウンタ12は、カウンタ値iを設定するものである。カウンタ値iは、防御側選手配置情報記憶手段10に2次元空間上の位置{ai}i=1,2,…,Nが記憶された防御側選手をそれぞれ識別するために用いられる。また、第1のカウンタ12は、公知の選手位置検出装置(図示せず)から防御側選手の人数Mの値(例えば、M=11)の入力を受け付ける。第1のカウンタ12は、設定したカウンタ値iを防御側選手選択手段13及び評価手段15に順次出力する。
【0024】
防御側選手選択手段13は、防御側選手配置情報記憶手段10に記憶された2次元空間上の位置{ai}i=1,2,…,Nの中から、i番目の2次元空間上の位置aiを選択的に取得し、取得した2次元空間上の位置aiを、妨害容易度演算手段14に順次出力するものである。防御側選手選択手段13は、第一の実施形態では、第1のカウンタ12からカウンタ値iが入力されると、防御側選手配置情報記憶手段10からi番目の2次元空間上の位置aiを一つ取得し、当該取得した2次元空間上の位置aiを妨害容易度演算手段14に出力する。
【0025】
妨害容易度演算手段14は、シュートコース演算手段11から入力された半直線Sと、防御側選手選択手段13から入力された防御側選手の2次元空間上の位置aiとに基づいて、妨害容易度ηiを演算する手段である。ここで、妨害容易度ηiとは、防御側選手の2次元空間上の位置aiからの半直線Sで表されるシュートコースSへの到達の容易さを、防御側選手ごとに定量化したものである。
図4は、本発明の第1実施形態に係る得点可能性定量化装置の妨害容易度演算手段によって、妨害容易度を演算する様子を表す概念図である。以下の説明では、代表点gを、ゴールラインGLの中点とする。
【0026】
ある防御側選手の2次元空間上の位置ai(a1,a2,・・・,aN)から半直線Sに向かって下ろした垂線の長さをαi(α1,α2,・・・,αN)とおき、ある防御側選手の2次元空間上の位置aiから半直線Sに向かって下ろした垂線と半直線Sの交点をHi(H1,H2,・・・,HN)とおいたときの、注目位置bと交点Hiとを結ぶ線分の長さをβi(β1,β2,・・・,βN)とおくと、垂線の長さαiと注目位置bから交点Hiまでの線分の長さβiによって、妨害容易度ηi(η1,η2,・・・,ηN)を決めることができる。この場合、妨害容易度ηiを、例えば関数fを用いて、式(1)により表すことができる。
【0027】
【数1】
なお、垂線と半直線Sの交点Hiが存在しない場合、つまり、ある防御側選手が、半直線Sに垂線を下ろせる位置にいない場合には、当該防御側選手は、注目位置bからのシュートを妨害することができないものとし、妨害容易度ηiを“0”とする。
図4に示すように、シュートコース演算手段11で演算された半直線Sに垂線を下ろすことができる位置にいる防御側選手が2人である場合には、残りの9人の防御側選手については、妨害容易度ηiを“0”とする。
また例えば、妨害容易度ηiを、垂線の長さαiに反比例し、注目位置bからの線分の長さβiに比例するものとすることができる。その場合、妨害容易度ηiを、式(2)により表すことができる。
【0028】
【数2】
式(2)におけるκは、正の実数係数である。ここで、ある防御側選手が、2次元空間上の位置aiから垂線と半直線Sの交点Hiにたどり着くまでの時間と、ボールが、注目位置bから垂線と半直線Sの交点Hiにたどり着くまでの時間とが等しい場合、妨害容易度ηiを“1”とすることができる。この場合、係数κを、式(3)で表すことができる。
【0029】
【数3】
数式(3)におけるvaは、サッカー選手の全力疾走時の平均的な速さを予め設定した値であり、vbは、シュート時のボールの平均的な速さを予め設定した値である。例えば、va=20[km/h]とし、vb=40[km/h]とした場合には、κ=0.5となる。
また例えば、妨害容易度ηiを、関数fを用いて、数式(4)のように定義しても良い。このように定義すると、妨害容易度ηiを0から1の範囲内で表すことができるので、後記する評価手段15で算出される評価値Eをより理解しやすいものとすることができる。
【0030】
【数4】
【0031】
また例えば、妨害容易度演算手段14は、防御側選手の速度の確率的なモデル及びボールの速度の確率的なモデルに基づいて注目位置bからのシュートの妨害可能性の確率値を算出し、この確率値に基づいて、妨害容易度ηiを算出しても良い。以下、詳細に説明する。ここで、図5(a)及び(b)は、本発明の第1実施形態に係る得点可能性定量化装置の妨害容易度演算手段によって、防御側選手がボールに到達できる最小の速さを演算する様子を説明するための説明図であり、図6(a)は、サッカー選手の全力疾走時の速度がvaである確率密度関数の一例を示す図、(b)は、シュート時のボールの速度がvbである確率密度関数の一例を示す図である。図6(a)に示すように、全力疾走時の防御側選手の速度(ただし、速度の水平面内成分とする)がvaである確率密度関数をPa(‖va‖)とおく。また、考えうる選手の最大の速度をvamaxとおく。一方、図6(b)に示すように、シュート時のボールの速度(ただし、速度の水平面内成分とする)がvbである確率密度関数を、Pb(‖vb‖)とおく。
【0032】
ここで、図5に示すように、第1の防御側選手の位置をa(a1)、ボールの位置をb、ボールの速度をvbとおく。また、位置bから位置gに向かってのばしたベクトル(g−b)と、位置bから位置aに向かってのばしたベクトル(a−b)とでなる角度をθとおく。ボールが位置bから速度vbで、位置gと位置bとを結ぶ線分上を防御側ゴールへ向かって移動する場合に、第1の防御側選手が、位置aから最小の速さva min(vb;a,b,g)で移動してボールに追いつくことができるのは、到達点tの位置である(到達に要する時間をτとおいた)。つまり、図5(a)に示すように、円Z内に第1の防御側選手が位置している場合、第1の防御側選手は、位置aから、位置gと位置bとを結ぶ線分に向かって、位置bから位置aに向かってのばしたベクトル(a−b)に対し直角方向に移動すると、最小の速さva min(vb;a,b,g)でボールに追いつくことができる。一方、図5(b)に示すように、円Z外に第1の防御側選手が位置している場合、第1の防御側選手は、位置aから、位置aと位置gとを結ぶ線分上を位置gに向かって移動すると、最小の速さva min(vb;a,b,g)でボールに追いつくことができる。この場合の、第1の防御側選手がボールに追いつくことができる最小の速さva min(vb;a,b,g)は、前記したような位置gと位置bとを結ぶ線分を直径とする円Zと、位置aとの位置関係に応じて、式(5)で表すことができる。
【0033】
【数5】
【0034】
次に、式(6)に示すように、ボールの速度がvbの場合に、図5に示す第1の防御側選手がボールに到達できる確率、すなわち、第1の防御側選手が、式(5)により求めたvamin(vb;a,b,g)以上の速さで走れる選手である確率を求め、当該確率を、さまざまなボールの速度vbに関して、Pb(‖vb‖)の重み付けで積分することにより、妨害容易度ηiを求めることができる。
【0035】
【数6】
ここで、Vは、式(7)で示すように、ボールの位置bから代表点gへ向かう方向を有する0以上vbmax未満の速度ベクトルの集合である。
【0036】
【数7】
なお、vb maxは、考え得るボールの最大の速さであり、例えば、vb max=100[km/h]である。
妨害容易度演算手段14は、前記したいずれかの手法により妨害容易度ηiを演算し、演算した妨害容易度ηiを評価手段15に出力する。
【0037】
評価手段15は、妨害容易度演算手段14で演算された防御側選手ごとの妨害容易度ηiを総和し、総和した結果を、注目位置bから攻撃側選手が防御側ゴールに向かってシュートをしたと仮定したときの攻撃側チームの得点の可能性の評価値Eとする手段である。
評価手段15は、妨害容易度演算手段14によって、妨害容易度ηiを1以上の防御側選手について総和することによって評価値Eを算出する。評価手段15は、例えば、式(8)に示すように、全ての防御側選手i∈{1,2,…,N}の妨害容易度ηiを総和する。
【0038】
【数8】
評価値Eは、その値が大きいほど、注目位置bからのシュートによる攻撃側チームの得点が困難であるということを示す。
評価手段15は、妨害容易度ηiが入力されるごとに、公知の選手位置検出装置(図示せず)から入力された防御側選手の人数N(例えば、N=11)と、第1のカウンタ12から入力されたカウンタ値iとを比較し、カウンタ値iが人数Nと等しいか否かを判定する。評価手段15は、カウンタ値iと人数Nとが等しくないと判定した場合、第1のカウンタ12にカウンタ値iを1加算するように通知する。一方、評価手段15は、カウンタ値iが人数Nと等しいと判定した場合、処理を終了する。なお、評価手段15は、評価値Eを外部に出力して処理を終了しても良い。
【0039】
以上、得点可能性定量化装置1の構成について説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、得点可能性定量化装置1は、一般的なコンピュータにプログラムを実行させ、コンピュータ内の演算装置や記憶装置を動作させることにより実現することができる。このプログラム(得点可能性定量化プログラム)は、通信回線を介して配布することも可能であるし、CD−ROM等の記録媒体に書き込んで配布することも可能である。
【0040】
[第1実施形態に係る得点可能性定量化装置の動作]
次に図7を参照して、得点可能性定量化装置1の動作を説明する。図7は、本発明の第1実施形態に係る得点可能性定量化装置の動作を示すフローチャートである。なお、以下の説明では、防御側選手配置情報記憶手段10に、公知の位置検出装置(図示せず)によって検出されたサッカー競技場F上の全ての防御側選手の2次元空間上の位置{ai}i=1,2,…,Nが記憶されているものとする。また、得点可能性定量化装置1は、外部から公知の選手位置検出装置(図示せず)によって検出された防御側選手の人数Nの入力を予め受け付け、防御側選手の人数Nの値が、第1のカウンタ12及び評価手段15に入力されているものとする。さらに、得点可能性定量化装置1は、外部から注目位置bの入力を順次受け付けるものとし、この注目位置bが、シュートコース演算手段11に順次入力されるものとする。
図7に示すように、得点可能性定量化装置1は、外部から入力された注目位置bの入力を受け付けると、シュートコース演算手段によって、注目位置bから防御側ゴールに仮想的に設定した代表点gに向かってのびる半直線Sを演算し、演算した半直線Sを妨害容易度演算手段14に出力する(ステップS1)。
【0041】
次に、得点可能性定量化装置1は、第1のカウンタ12によって、カウンタ値iの初期値(i=1)を設定する(ステップS2)。設定されたカウンタ値iの初期値は、第1のカウンタ12及び評価手段15に出力される。
次に、得点可能性定量化装置1は、防御側選手選択手段13によって、防御側選手配置情報記憶手段10に記憶された全ての防御側選手の2次元空間上の位置{ai}i=1,2,…,Nの中から、i番目の防御側選手の2次元空間上の位置aiを選択的に取得し、妨害容易度演算手段14に出力する(ステップS3)。
【0042】
次に、得点可能性定量化装置1は、妨害容易度演算手段14によって、防御側選手選択手段13から入力されたi番目の防御側選手の2次元空間上の位置aiと、シュートコース演算手段11から入力された半直線Sとを用いて、攻撃側選手が注目位置bから防御側ゴールに向かってシュートしたと仮定したときの、i番目の防御側選手の妨害容易度ηiを演算し、演算した妨害容易度ηiを評価手段15に出力する(ステップS4)。
そして、得点可能性定量化装置1は、評価手段15によって、妨害容易度演算手段14から入力された妨害容易度ηiを順次加算する(ステップS5)。
また、得点可能性定量化装置1は、評価手段15によって、第1のカウンタ12から入力されたカウンタ値iと、第1のカウンタ12から入力された防御側選手の人数Nの値とが等しいかどうかを比較する(ステップS6)。
そして、得点可能性定量化装置1は、評価手段15によって、カウンタ値iと人数Nとが等しくないと判定した場合(ステップS6でNo)、第1のカウンタ12に、カウンタ値iを1加算する操作信号を出力する(ステップS7)。
そして、得点可能性定量化装置1は、ステップS3に戻り、ステップS3からステップS7までを防御側選手の人数分行う。
一方、ステップS6で、得点可能性定量化装置1は、評価手段15によって、カウンタ値iと人数Nとが等しいと判定した場合(ステップS6でYes)、加算した妨害容易度ηiを評価値Eとして外部に出力する(ステップS8)。
以上の動作によって、得点可能性定量化装置1は、攻撃側選手が注目位置bからシュートをしたと仮定したときの、攻撃側チームの得点の可能性を定量化した評価値Eを算出することができる。
【0043】
なお、第1のカウンタ12を設けない場合には、例えば、妨害容易度演算手段14の内部でカウントし、防御側選手の人数分の妨害容易度ηiを演算し終えたタイミングで、妨害容易度演算手段14が評価手段15に処理終了を通知し、評価手段15が妨害容易度演算手段14から処理終了の通知を受け取ると、評価値Eを出力することとしてもよい。
【0044】
第1実施形態に係る得点可能性定量化装置1によれば、注目位置bから攻撃側選手が防御側ゴールに向かってシュートをしたと仮定したときの、当該シュートが攻撃側チームの得点に結びつく可能性を数値化した評価値Eを算出することができるので、オペレータが、サッカーのルールや戦術に精通していない場合でも、出力された結果の内容を容易に理解可能となる。また、サッカー競技場F上のあらゆる位置からのシュートによる得点の可能性をそれぞれ定量化することができるので、オペレータが、算出された評価値Eを用いて、より詳細な戦術の解析を行うことが可能となる。
【0045】
[第2実施形態に係る得点可能性定量化装置の説明]
次に、本発明の第2実施形態に係る得点可能性定量化装置2について、適宜図面を参照して説明する。参照する図8は、本発明の第2実施形態に係る得点可能性定量化装置の概要を説明するための説明図である。図9は、本発明の第2実施形態に係る得点可能性定量化装置の構成を示すブロック構成図である。はじめに、第2実施形態に係る得点可能性定量化装置の概略を説明する。
第2実施形態に係る得点可能性定量化装置は、サッカーをチームスポーツとしたときに、注目位置bがオフサイドポジションにあるか否かに応じて、評価値Eを変化させることを目的とする。ここで、サッカーでは、ある選手が(1)相手チームの陣地内で、(2)ボールよりも相手チームのゴールラインに近く、(3)相手チームのゴールライン側から数えて2番目にいる相手選手よりもゴールラインに近い位置にいるという3つの条件を満たした場合に、当該選手がオフサイドポジションにいると判断される。
例えば、攻撃側チームのある攻撃側選手が他の攻撃側選手にボールのパスを出した瞬間に、当該他の攻撃側選手がオフサイドポジションにいる場合には、攻撃側チームに対しオフサイドと呼ばれる反則が適用され、防御側チームに間接フリーキックが与えられる。オフサイドルールが適用された場合、仮にボールが防御側ゴール内に入った場合であっても、攻撃側チームの得点は認められない。
【0046】
第2実施形態に係る得点可能性定量化装置は、(1)ハーフウェイラインHLと、(2)ボールと、(3)相手チームのゴールラインGL側から数えて2番目にいる選手の各位置のうち、もっともゴールラインGLに近い位置をオフサイドライン位置Lと推定する。例えば図8に示す位置に防御側選手(図8では×印で示す)が配置され、また、ボール(図8では丸印で示す)がある場合には、ゴールラインGL側から数えて2番目にいる防御側選手の位置がもっともゴールラインGLに近いため、当該防御側選手のx座標をオフサイドライン位置Lと推定する。
そして、例えば、注目位置bを第1の攻撃側選手の位置a1とした場合、注目位置bがオフサイドライン位置LよりもゴールラインGLに近いため、第2実施形態に係る得点可能性定量化装置は、注目位置bがオフサイドポジションにあると判定し、評価値として予め定めた値(以下、「固定値」ともいう。)を出力するようになっている。一方、注目位置bを第2の攻撃側選手の位置a2とした場合、注目位置bがオフサイドライン位置LよりもゴールラインGLから遠いため、第2実施形態に係る得点可能性定量化装置は、注目位置bがオフサイドポジションにないと判定し、評価値として算出した値を出力するようになっている。
【0047】
[第2実施形態に係る得点可能性定量化装置の構成]
次に、第2実施形態に係る得点可能性定量化装置の構成を説明する。
図9に示すように、得点可能性定量化装置2は、防御側選手配置情報記憶手段10と、シュートコース演算手段11と、第1のカウンタ12と、防御側選手選択手段13と、妨害容易度演算手段14と、評価手段15と、オフサイドライン推定手段20と、オフサイド判定手段21と、固定値記憶手段22と、切替手段23とを備えて構成される。第2実施形態に係る得点可能性定量化装置2が、第1実施形態に係る得点可能性定量化装置1と異なる点は、第1実施形態に係る得点可能性定量化装置1の構成に加え、オフサイドライン推定手段20と、オフサイド判定手段21と、固定値記憶手段22と、切替手段23とをさらに備えたことにある。
以下の説明では、第1実施形態に係る得点可能性定量化装置1と重複する構成には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。また、第1実施形態と同様に、適宜図1を参照する。
【0048】
オフサイドライン推定手段20は、オフサイドを判定する基準となるオフサイドライン位置Lを推定する手段である。
オフサイドラインとは、ハーフウェイラインHLと平行に引かれる仮想的な直線であり、(1)ハーフウェイラインHLの位置、(2)ボールの位置、(3)防御側チームのゴールラインGL側から数えて2番目にいる防御側選手の位置、のうち、もっとも防御側チームのゴールラインGLに近い点又は線の上に仮想的に引かれるものである。
オフサイドライン推定手段20は、例えば、防御側選手配置情報記憶手段10に記憶された防御側チームの防御側選手の2次元空間上の位置{ai}i=1,2,…,Nの中から、防御側チームのゴールラインGL側から数えて2番目にいる防御側選手の2次元空間上の位置a2を取得し、当該防御側選手の2次元空間上の位置a2のx座標と、ハーフウェイラインHL上の原点Oのx座標(x=0)とを比較し、いずれか小さい方の値をオフサイドライン位置Lと推定し、このオフサイドライン位置Lをオフサイド判定手段22に出力する。
【0049】
より好ましくは、オフサイドライン推定手段20は、防御側チームの防御側選手の2次元空間上の位置{ai}i=1,2,…,Nの中から、防御側チームのゴールラインGL側から数えて2番目にいる防御側選手の2次元空間上の位置a2に加えて、ボールの位置のx座標をさらに取得し、当該防御側選手の2次元空間上の位置a2のx座標と、ボールの位置のx座標と、ハーフウェイラインHL上の原点Oのx座標(x=0)とを比較し、もっとも小さい値をオフサイドライン位置と推定し、このオフサイドライン位置Lをオフサイド判定手段22に出力する。
また、例えば、特開2005−209148号に開示されたオフサイドライン検出装置をオフサイドライン推定手段20として用いても良い。
【0050】
オフサイド判定手段21は、オフサイドライン推定手段20からオフサイドライン位置Lの入力を受け付けると共に、外部から入力された操作信号による注目位置bの入力を受け付け、注目位置bと、オフサイドライン位置Lとを比較し、比較結果に基づいて注目位置bがオフサイドライン位置Lにあるか否かを判定する手段である。
そして、オフサイド判定手段21は、式(9)により、注目位置bのx座標を求め、注目位置bのx座標とオフサイドライン位置Lのx座標とを比較する。そして、注目位置bのx座標がオフサイドライン位置Lのx座標よりも小さい場合には、注目位置bがオフサイドポジションにあると判定し、当該判定結果JとしてJ=1を防御側選手選択手段13及び切替手段23に出力する。一方、注目位置bのx座標がオフサイドライン位置Lのx座標よりも大きい場合には、注目位置bがオフサイドラインポジションにないと判定し、当該判定結果JとしてJ=0を防御側選手選択手段13及び切替手段23に出力する。
【0051】
【数9】
なお、式(9)における[1,0]bは、注目位置bのx座標を求める行列演算である。
【0052】
固定値記憶手段22は、固定値Eoffsを記憶するものである。ここで、注目位置bがオフサイドポジションにある場合には、注目位置bからの得点の可能性はないといえるため、固定値Eoffsとして、例えば、オフサイド判定結果Jが“0”の場合のあらゆる評価値Eよりも大きな値(すなわち、攻撃側チームに有利な値)又は比較不可能な値を用いることができる。例えば、Eoffs=1000、Eoffs=∞やEoffs=NaN(Not a Number、つまり非数)等とすることができる。
切替手段23は、オフサイド判定手段21から判定結果Jの入力を受け付け、当該判定結果Jに基づいて、予め定めた固定値Eoffsと、算出した評価値Eとを切り替えて出力する手段である。
切替手段23は、オフサイド判定手段21から、オフサイド判定結果Jとして“1”の入力を受け付けた場合、評価値として、予め定めた固定値Eoffsを出力することとし、固定値記憶手段22から固定値Eoffsを取得し、外部に出力する。
【0053】
一方、切替手段23は、オフサイド判定手段21から、オフサイド判定結果Jとして“0”の入力を受け付けた場合、防御側選手選択手段13に処理を開始するように操作信号を出力する。そして、得点可能性定量化装置2は、第1実施形態に係る得点可能性定量化装置1と同様に、第1のカウンタ12と、防御側選手選択手段13と、妨害容易度演算手段14と、評価手段15と、を用いて、防御側選手i∈{1,2,…,N}について妨害容易度ηiを演算し、演算した妨害容易度ηiを総和して、当該総和した結果である評価値Eを切替手段23に出力する。切替手段23は、評価手段15から入力された評価値Eを、外部に出力する。
このように、切替手段23は、注目位置bがオフサイドポジションにない場合には、図9の一点鎖線内の各手段を動作させて評価値Eを算出し、評価値として、算出した評価値Eを外部に出力し、注目位置bがオフサイドポジションにある場合には、図9の一点鎖線内の各手段を動作させずに、評価値として、予め定めた固定値Eoffsを外部に出力する。これにより、計算コストを低減することができる。
なお、シュートコース演算手段11は、判定結果Jの値に関わらず、外部から注目位置bが入力されるごとに、半直線Sを演算し、演算した半直線Sを妨害容易度演算手段14に順次出力する。
【0054】
以上、得点可能性定量化装置2の構成について説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、得点可能性定量化装置2は、一般的なコンピュータにプログラムを実行させ、コンピュータ内の演算装置や記憶装置を動作させることにより実現することができる。このプログラム(得点可能性定量化プログラム)は、通信回線を介して配布することも可能であるし、CD−ROM等の記録媒体に書き込んで配布することも可能である。
【0055】
[第2実施形態に係る得点可能性定量化装置の動作]
次に、図10を参照して第2実施形態に係る得点可能性定量化装置2の動作を説明する。図10は、本発明の第2実施形態に係る得点可能性定量化装置の動作を示すフローチャートである。なお、第2実施形態に係る得点可能性定量化装置2では、外部から注目位置bが入力されると、シュートコース演算手段11によって、半直線Sを演算し、演算した半直線Sを妨害容易度演算手段14に順次出力するものとする。また、以下の説明では、防御側選手配置情報記憶手段10に、公知の位置検出装置(図示せず)によって検出されたサッカー競技場F上の全ての防御側選手の2次元空間上の位置{ai}i=1,2,…,N(Nは1以上の整数で人数を表す)が記憶されているものとする。
図10に示すように、得点可能性定量化装置2は、オフサイドライン推定手段20によって、オフサイドライン位置Lを推定し、このオフサイドライン位置Lをオフサイド判定手段22に出力する(ステップS11)。次に、得点可能性定量化装置2は、オフサイド判定手段22によって、オフサイドライン推定手段20から入力されたオフサイドライン位置Lと、外部から入力された注目位置bとを比較する(ステップS12)。
【0056】
そして、得点可能性定量化装置2は、オフサイド判定手段22によって、オフサイドライン位置Lと、注目位置bとを比較した結果、注目位置bがオフサイドポジションにあると判定した場合(ステップS13でYes)、判定結果Jとして、J=1を防御側選手選択手段13及び切替手段23に出力する(ステップS14)。次に、得点可能性定量化装置2は、切替手段23によって、固定値記憶手段22から固定値Eoffsを取得する(ステップS15)。そして、得点可能性定量化装置2は、切替手段23によって、固定値Eoffsを得点の可能性の評価値として外部に出力する(ステップS16)。
【0057】
一方、ステップS13で、得点可能性定量化装置2は、オフサイド判定手段22によって、注目位置bがオフサイドポジションにないと判定した場合(ステップS13でNo)、判定結果Jとして、J=0を防御側選手選択手段13及び切替手段23に出力する(ステップS17)。次に、得点可能性定量化装置2は、第1実施形態に係る得点可能性定量化装置1と同様に、第1のカウンタ12と、防御側選手選択手段13と、妨害容易度演算手段14と、評価手段15とを動作させる。得点可能性定量化装置2は、評価手段15によって、算出した評価値Eを、切替手段23に出力する。なお、図10に示すステップS18からステップS23の動作は、図7で説明した第1実施形態に係る得点可能性定量化装置1のステップS2からステップS7の動作と同様であるので、ここでは説明を省略する。
そして、得点可能性定量化装置2は、切替手段23によって、評価手段15で算出された評価値Eを得点の可能性の評価値として出力する(ステップS24)。
以上の動作によって、得点可能性定量化装置2は、注目位置bからの得点の可能性を定量化した評価値を算出することができる。
【0058】
第2実施形態に係る得点可能性定量化装置2によれば、第1実施形態に係る得点可能性定量化装置1の作用に加え、チームスポーツをサッカーとした場合に、オフサイドルールによって、ボールが防御側ゴール内に入った場合であっても得点が認められない場合がある場合を考慮して評価値を切り替えて出力することができるので、オペレータが、評価値を用いて、より正確にその後のゲームの流れを予測したり、各チームの戦術の解析をしたりすることが可能となる。また、注目位置bがオフサイドポジションに有る場合には、評価値Eの範囲外の値である固定値Eoffsを出力するため、オペレータが、サッカーのルールや戦術に精通していない場合にも、注目位置bからのシュートが得点に結びつかないことを容易に理解可能となる。また、注目位置bがオフサイドポジションに有ると判定した場合には、評価値Eを算出せずに、予め定めた固定値Eoffsを出力することとしたため、計算コストを低減することができる。
【0059】
[得点可能性順序付け装置の説明]
次に、本発明の得点可能性順序付け装置について、適宜図面を参照して説明する。参照する図11は、本発明の実施形態に係る得点可能性順序付け装置の構成を示すブロック構成図である。
得点可能性順序付け装置は、注目チームの全選手を、得点の可能性に応じて順序付けることを目的とする。注目チームは、外部から入力された操作信号により防御側チーム又は攻撃側チームのいずれかに特定される。以下の説明では、注目チームを攻撃側チームとして説明する。また、チームスポーツをサッカーとして説明する。
なお、得点可能性順序付け装置は、第1実施形態に係る得点可能性定量化装置1を含むものであるため、第1実施形態に係る得点可能性定量化装置1の構成については、適宜図2を参照するものとし、重複する説明を省略する。
【0060】
[得点可能性順序付け装置の構成]
図11に示すように、得点可能性順序付け装置3は、攻撃側選手配置情報記憶手段30と、第2のカウンタ31と、攻撃側選手選択手段32と、得点可能性定量化装置1と、順序付け手段33と、を備えて構成される。なお、得点可能性定量化装置1は、第1実施形態で説明したものと同じであるため、ここでは説明を省略する。
攻撃側選手配置情報記憶手段30は、サッカー競技場F上にいる攻撃側選手の2次元空間上の位置{cj}j=1,2,…,M(Mは1以上の整数で人数を表す)を記憶するものである。攻撃側選手の2次元空間上の位置{cj}j=1,2,…,Mは、前記したように、公知の選手位置検出装置(図示せず)によって検出され、攻撃側選手配置情報記憶手段30に出力されるようになっている。本実施形態では、チームスポーツをサッカーとするため、例えば、M=11とする。
【0061】
第2のカウンタ31は、攻撃側選手配置情報記憶手段30に2次元空間上の位置{cj}j=1,2,…,Mが記憶された攻撃側選手をそれぞれ識別するための計数手段である。第2のカウンタ31は、公知の選手位置検出装置(図示せず)によって検出された攻撃側選手の人数Mの入力を受け付け、カウンタ値jとして、“1”〜“M”を攻撃側選手選択手段33及び順序付け手段33に順次出力する。
攻撃側選手選択手段32は、第2のカウンタ31からカウンタ値jを順次取得し、攻撃側選手配置情報記憶手段31に記憶された攻撃側選手の2次元空間上の位置{cj}j=1,2,…,Mの中から、j番目の攻撃側選手の2次元空間上の位置cjを選択的に取得し、これを注目位置bjとして、得点可能性定量化装置1のシュートコース演算手段11に順次出力する。
【0062】
得点可能性定量化装置1は、シュートコース演算手段11によって、攻撃側選手選択手段32から入力された注目位置bjから防御側ゴールへ向かう半直線Sを順次演算する。
また、得点可能性定量化装置1は、評価手段15によって、ある攻撃側選手が、注目位置bjから防御側ゴールへシュートしたときの、攻撃側チームの得点可能性を示す評価値Ejを算出し、算出した評価値Ejを順序付け手段33に順次出力する。
【0063】
順序付け手段33は、それぞれの攻撃側選手について算出された評価値Eの大きさに応じて、複数の攻撃側選手を得点可能性の高い順に順序付ける手段である。また、順序付け手段33は、公知の選手位置検出装置(図示せず)によって検出された攻撃側選手の人数Mの入力を受け付ける。
さらに、順序付け手段33は、評価手段15から攻撃側選手の人数分の評価値Ejの入力を順次受け付け、評価値群{Ej}j=1,2,…,Mを整順するか、最大値もしくは最小値演算を適用し、数式(10)で表される、評価値Ejが特定順位にある攻撃側チームの攻撃側選手のインデックスを出力する。
【0064】
【数10】
なお、数式(10)は、o番目に得点の可能性が高い選手を表すため、これを用いて、戦術上重要な選手を特定することも可能である。
また例えば、順序付け手段33は、数式(10)で求めた「o番目に小さい評価値をとった注目チーム(攻撃側チーム)所属の選手のインデックス」を、1以上M以下のoに関して求め、それらをまとめて、数式(11)で示す集合として出力しても良い。
【0065】
【数11】
以上、得点可能性順序付け装置3の構成について説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、得点可能性定量化装置1は、一般的なコンピュータにプログラムを実行させ、コンピュータ内の演算装置や記憶装置を動作させることにより実現することができる。このプログラム(得点可能性定量化プログラム)は、通信回線を介して配布することも可能であるし、CD−ROM等の記録媒体に書き込んで配布することも可能である。
【0066】
[得点可能性順序付け装置の動作]
次に、図12を参照して得点可能性順序付け装置3の動作を説明する。図12は、本発明の実施形態に係る得点可能性順序付け装置の動作を示すフローチャートである。
なお、以下の説明では、防御側選手配置情報記憶手段10には、公知の位置検出装置(図示せず)によって検出されたサッカー競技場F上の全ての防御側選手の2次元空間上の位置{ai}i=1,2,…,N(Nは1以上の整数で人数を表す)が記憶されているものとし、攻撃側選手配置情報記憶手段30には、公知の位置検出装置(図示せず)によって検出されたサッカー競技場F上の全ての攻撃側選手の2次元空間上の位置{cj}j=1,2,…,Mが記憶されているものとする。さらに、得点可能性順序付け装置3は、外部から公知の選手位置検出装置(図示せず)によって検出された攻撃側選手の人数Mの入力を予め受け付け、攻撃側選手の人数Mの値が、第2のカウンタ31及び順序付け手段33に入力されているものとする。また、得点可能性定量化装置1には、第1実施形態と同様に、外部から各種情報が入力されるものとする。
【0067】
図12に示すように、得点可能性順序付け装置3は、第2のカウンタ31によって、カウンタ値jの初期値(j=1)を設定する(ステップS31)。第2のカウンタ31によって設定されたカウンタ値jの初期値は、攻撃側選手選択手段32及び順序付け手段33に出力される。次に、得点可能性順序付け装置3は、攻撃側選手選択手段32によって、攻撃側選手配置情報記憶手段30から、攻撃側選手の2次元空間上の位置{cj}j=1,2,…,Mの中のj番目の攻撃側選手の2次元空間上の位置cjを取得する(ステップS32)。そして、得点可能性順序付け装置3は、攻撃側選手選択手段32によって、j番目の攻撃側選手の2次元空間上の位置cjを得点可能性定量化装置1のシュートコース演算手段11に出力する(ステップS33)。
【0068】
次に、得点可能性順序付け装置3は、得点可能性定量化装置1のシュートコース演算手段11によって、攻撃側選手選択手段32から入力されたj番目の攻撃側選手の2次元空間上の位置cjを注目位置bjとして半直線Sjを演算し、妨害容易度演算手段14に出力する(ステップS34)。
なお、図12に示すステップS35からステップS41の動作は、図7で説明した第1実施形態に係る得点可能性定量化装置1のステップS2からステップS8の動作と同様であるので、ここでは説明を省略する。
【0069】
次に、得点可能性順序付け装置3は、順序付け手段33によって、得点可能性定量化装置1から入力を受け付けた評価値Ejを加算する(ステップS42)。
次に、得点可能性順序付け装置3は、順序付け手段33によって、第2のカウンタ31から入力されたカウンタ値jと、第2のカウンタ31から入力された攻撃側選手の人数Mの値とが等しいかどうかを比較する(ステップS43)。得点可能性順序付け装置3は、順序付け手段33によって、カウンタ値jと人数Mとが等しくないと判定した場合(ステップS43でNo)、第2のカウンタ31に、カウンタ値jを1加算する操作信号を出力する(ステップS44)。
そして、得点可能性順序付け装置3は、ステップS32に戻り、ステップS32からステップS44を攻撃側選手の人数分繰り返し行う。
一方、ステップS43で、得点可能性順序付け装置3は、順序付け手段33によって、カウンタ値jと人数Mとが等しいと判定した場合(ステップS43でYes)、攻撃側選手を得点の可能性の高い順に並べ替えたインデックスを外部に出力する(ステップS45)。例えば、「o番目に小さい評価値をとった注目チーム(攻撃側チーム)所属の選手のインデックス」を、1以上M以下のoに関して求め、数式(11)で表されるような、それらを集合した値を出力する。なお、 インデックスとして、“1”から“J”の番号を得点の可能性の高い順に並べ替えたものを出力しても良いし、順序付け手段33で予め番号と対応付けて攻撃側選手名を記憶しておき、攻撃側選手名を得点の可能性の高い順に並べ替えたものを出力しても良い。
【0070】
以上説明した得点可能性順序付け装置3によれば、攻撃側チームの攻撃側選手群を、得点の可能性に応じて順序付けることができるので、より詳細な解析を行うことが可能となる。
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明の得点可能性定量化装置及び得点可能性順序付け装置はこれに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。
【0071】
以上説明した得点可能性定量化装置1、得点可能性定量化装置2、得点可能性順序付け装置3によれば、指定した位置(注目位置)からの得点の可能性を評価値として得ることができるので、この評価値を用いて各チームの戦術の解析を行うことが可能となる。例えば、サッカー競技において、攻撃側チームがある位置からシュートをした場合、このプレイに着目して、その位置からシュートをするという戦術が正しかったのか否か等の戦術の解析を行うことができる。具体的には、その位置を注目位置としたときに、得点の可能性が10%という評価値が得られ、その位置の周囲のいくつかの位置を注目位置としたときに、得点の可能性が80%という評価値が得られた位置がある場合、その位置からシュートをするのではなく、得点の可能性が高い位置にパスを出したほうが良かった、というような戦術の解析を行うことができる。このように、評価値を用いて、さまざまな戦術の解析を行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】第1実施形態に係る得点可能性定量化装置に入力される防御側選手の配置情報を説明するための模式図である。
【図2】本発明の第1実施形態に係る得点可能性定量化装置の構成を示すブロック構成図である。
【図3】本発明の第1実施形態に係る得点可能性定量化装置のシュートコース演算手段によって、防御側ゴールに仮想的に代表点を設定する様子を表す概念図である。
【図4】本発明の第1実施形態に係る得点可能性定量化装置の妨害容易度演算手段によって、妨害容易度を演算する様子を表す概念図である。
【図5】本発明の第1実施形態に係る得点可能性定量化装置の妨害容易度演算手段によって、防御側選手がボールに到達できる最小の速さを演算する様子を説明するための説明図である。
【図6】(a)は、防御側選手の全力疾走時の速度がvaである確率密度関数の一例を示す図、(b)は、シュート時のボールの速度ベクトルがvbである確率密度関数の一例を示す図である。
【図7】本発明の第1実施形態に係る得点可能性定量化装置の動作を示すフローチャートである。
【図8】本発明の第2実施形態に係る得点可能性定量化装置の概要を説明するための説明図である。
【図9】本発明の第2実施形態に係る得点可能性定量化装置の構成を示すブロック構成図である。
【図10】本発明の第2実施形態に係る得点可能性定量化装置の動作を示すフローチャートである。
【図11】本発明の実施形態に係る得点可能性順序付け装置の構成を示すブロック構成図である。
【図12】本発明の実施形態に係る得点可能性順序付け装置の動作を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0073】
1 得点可能性定量化装置
10 防御側選手配置情報記憶手段
11 シュートコース演算手段
12 第1のカウンタ
13 防御側選手選択手段
14 妨害容易度演算手段
15 評価手段
2 得点可能性定量化装置
20 オフサイドライン推定手段
21 オフサイド判定手段
22 固定値記憶手段
23 切替手段
3 得点可能性順序付け装置
30 攻撃側選手配置情報記憶手段
31 第2のカウンタ
32 攻撃側選手選択手段
33 順序付け手段
HL ハーフウェイライン
L オフサイドライン位置
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数名の選手が二つのチームに分かれ、ボールを相手ゴール内に入れることで得点を競い合うチームスポーツの戦術の解析を行うときに用いられる技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のスポーツ戦術解析手法としては、次のようなものが知られている。
例えば、特許文献1には、選手配置情報及びボール位置情報から各選手の行動を予測し、各チームの優勢度を算出する手法が開示されている。この手法は、フィールド上にメッシュ状のエリアを設定し、このエリア毎にチーム優勢度を求め、チーム優勢度に基づいてパス先候補キャラクタを決定するものである。
【0003】
また例えば、特許文献2には、選手配置情報や選手の視野、姿勢に基づいて、パスを出す方向を決定する手法が開示されている。この手法は、ボール保持者の行動を評価し、これに基づいて、チームの優勢度を判定するものである。
【0004】
【特許文献1】特許第3533393号公報(段落0054〜段落0058、図7)
【特許文献2】特開2006−204420号公報(段落0006、図3)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このようにして得られた結果は、オペレータが対象スポーツ競技の戦術やルールに精通していなくても、その後のゲームの流れを予想し、あるいは、各チームの戦術を考えることが可能なように、簡単に理解できるものであることが望ましい。しかしながら、特許文献1及び特許文献2に記載の技術では、各チームの支配エリアを可視化し、支配エリア毎のチーム優勢度を求めたり、チーム優勢度に基づいて行動を決定したりするものであるため、オペレータが対象スポーツ競技の戦術やルールに精通していない場合、出力された結果を理解することが困難であった。
【0006】
また、特許文献1及び特許文献2に記載の技術では、各チームの支配エリアを可視化し、エリアごとの各チームの優勢度を判定するものであるため、得点の可能性そのものを定量化することができなかった。このため、例えば、劣勢のチームであっても、ある位置からシュートすれば、得点の可能性が高い位置が存在する場合があっても、そのような事情を考慮した戦術の解析を行うことができなかった。
【0007】
本発明は、以上のような問題点に鑑みてなされたものであり、複数名の選手が二つのチームに分かれ、ボールを相手ゴール内に入れることで得点を競い合うチームスポーツにおいて、指定する地点からのシュートが得点に結びつく可能性を定量化することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決した請求項1に係る発明は、複数名の選手が二つのチームに分かれ、ボールを相手ゴール内に入れることで得点を競い合うチームスポーツにおいて、指定する位置からの前記得点の可能性を定量化する得点可能性定量化装置であって、シュートコース演算手段と、妨害容易度演算手段と、評価手段と、を備えることを特徴とする。
【0009】
かかる構成によれば、得点可能性定量化装置は、シュートコース演算手段によって、外部から入力された操作信号により競技エリア上に設定された注目位置からのシュートコースとして、防御側ゴールに代表点を設定し、前記注目位置から前記代表点に向かってのびる半直線を演算する。
また、得点可能性定量化装置は、妨害容易度演算手段によって、前記半直線と、前記競技エリア上に配置された防御側チームのそれぞれの防御側選手の2次元空間上の位置との相対位置に基づき、前記半直線への前記防御側選手の到達の容易さを妨害容易度として前記防御側選手ごとに定量化する。
また、得点可能性定量化装置は、評価手段によって、前記妨害容易度演算手段によって定量化した前記防御側選手ごとの前記妨害容易度を総和し、前記注目位置から攻撃側チームの攻撃側選手が防御側ゴールに向かってシュートをしたと仮定した場合の、当該シュートによる前記攻撃側チームの得点の可能性の評価値とする。
【0010】
また、請求項2に係る発明は、請求項1に係る得点可能性定量化装置において、前記防御側選手のうち、前記半直線上のいずれかの点と垂線で結ばれる前記2次元空間上の位置にいる前記防御側選手のそれぞれについて、当該垂線の長さと、前記注目位置から前記半直線上の前記垂線との交点までの長さの比率を、前記妨害容易度として演算することを特徴とする。
これによれば、ある防御側選手の位置からシュートコースとして求めた半直線に下ろした垂線の長さにより、ある防御側選手がシュートコースに到達するための最短移動距離を求め、また、注目位置から垂線の足と半直線の交点までの長さにより、ある防御側選手がシュートコースに到達する地点までのボールの移動距離を求める。このような物理量を用いることにより、ある防御側選手が、シュートコースへの到達の容易さ、すなわち、シュートを妨害可能な程度(妨害容易度)を定量化することができる。そして、防御側選手ごとに妨害容易度を算出し、算出した妨害容易度を総和することで、攻撃側選手が注目位置から防御側ゴールに向かってシュートしたときの、攻撃側チームの得点に結びつく可能性を定量化した評価値を得ることができる。
【0011】
また、請求項3に係る発明は、請求項1に係る得点可能性定量化装置において、前記妨害容易度演算手段は、前記半直線において、前記注目位置から前記防御側選手が前記ボールに到達するまでの到達点を、前記ボールの速度のモデルと選手の速度のモデルとに基づいて決定し、前記半直線上の到達点と前記防御側選手の前記2次元空間上の位置とを結んだ線分の長さと、前記注目位置から当該半直線上の到達点までの長さの比率を、当該防御側選手の前記半直線への到達の容易さを示す妨害容易度として演算することを特徴とする。
【0012】
また、請求項4に係る発明は、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の得点可能性定量化装置において、前記チームスポーツをサッカーとし、オフサイドライン推定手段と、オフサイド判定手段と、切替手段とをさらに備える構成とした。
かかる構成によれば、得点可能性定量化装置は、オフサイドライン推定手段によって、前記全ての防御側選手の中で、前記防御側ゴールのゴールライン側から数えて2番目に位置する前記防御側選手の前記2次元空間上の位置に基づいてオフサイドライン位置を推定する。
また、得点可能性定量化装置は、オフサイド判定手段によって、前記オフサイドライン位置と前記注目位置とを比較し、前記注目位置が前記オフサイドライン位置よりも前記防御側ゴールに近い場合、当該注目位置がオフサイドポジションにあると判定する。
また、得点可能性定量化装置は、切替手段によって、前記オフサイド判定手段によって、前記オフサイド判定手段によって、前記注目位置が前記オフサイドポジションにあると判定された場合、前記評価値の範囲外の予め定めた値を出力し、前記注目位置が前記オフサイドポジションにないと判定された場合、前記評価手段から取得した前記評価値を出力する。
【0013】
また、請求項5に係る発明は、攻撃側チームの複数の攻撃側選手について、当該複数の攻撃側選手のそれぞれの2次元空間上の位置から防御側ゴールに向かってシュートしたときの得点の可能性をそれぞれ評価し、この得点の可能性の高い順に前記複数の攻撃側選手を順序付ける得点可能性順序付け装置であって、請求項1に記載の得点可能性定量化装置と、順序付け手段と、を備えることを特徴とする。
かかる構成によれば、得点可能性順序付け装置は、請求項1に記載の得点可能性定量化装置によって、前記複数の攻撃側選手の2次元空間上の位置を順次注目位置として、前記注目位置から前記攻撃側選手が前記防御側ゴールに向かってシュートをしたときの、前記攻撃側チームの得点の可能性の評価値を、前記注目位置ごとに順次求める。
また、得点可能性順序付け装置は、順序付け手段によって、前記請求項1に記載の得点可能性定量化装置から複数の前記評価値を取得し、当該複数の評価値の値が高い方から順に並べ替えて順序付ける。
【0014】
請求項6に係る発明は、複数名の選手が二つのチームに分かれ、ボールを相手ゴール内に入れることで得点を競い合うチームスポーツにおいて、外部から入力された操作信号により競技エリア上に特定された注目位置からの前記得点の可能性を定量化するために、コンピュータを、シュートコース演算手段、妨害容易度演算手段、評価手段として機能させる得点可能性定量化プログラムとして構成した。
【0015】
かかる構成によれば、得点可能性定量化プログラムは、シュートコース演算手段によって、外部から入力された操作信号により競技エリア上に特定された注目位置からのシュートコースとして、前記防御側ゴールに代表点を設定し、前記注目位置から前記代表点に向かってのびる半直線を演算する。
また、得点可能性定量化プログラムは、前記半直線と、前記競技エリア上に配置された防御側チームのそれぞれの防御側選手の2次元空間上の位置との相対位置に基づき、前記半直線への前記防御側選手の到達の容易さを妨害容易度として前記複数の防御側選手のそれぞれについて定量化する。
そして、得点可能性定量化プログラムは、前記妨害容易度演算手段によって定量化した前記防御側選手ごとの前記妨害容易度を総和し、前記注目位置から攻撃側チームの攻撃側選手が防御側ゴールに向かってシュートをしたと仮定した場合の、当該シュートによる攻撃側チームの得点の可能性の評価値とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る得点可能性定量化装置及び得点可能性定量化プログラムによれば、以下のような優れた効果を奏する。
請求項1及び請求項6に記載の発明によれば、注目位置からのシュートが攻撃側チームの得点に結びつく可能性を数値化した評価値を算出することができるので、オペレータが、対象スポーツ競技の戦術やルールに精通していない場合であっても、容易に理解可能となる。また、競技エリア上のあらゆる位置からのシュートによる得点の可能性をそれぞれ直接定量化することが可能なため、オペレータが、評価値を用いて、より詳細な戦術の解析を行うことが可能となる。
また、請求項2に記載の発明によれば、攻撃側選手が注目位置から防御側ゴールに向かってシュートしたときの防御側選手の干渉を評価することで、攻撃側チームの得点の可能性を定量化することができる。
また、ある位置からの得点の可能性の評価値を算出するため、オペレータが、対象スポーツ競技の戦術やルールに精通していない場合であっても、出力された結果(評価値)を容易に理解可能となる。
また、請求項3に記載の発明によれば、得点可能性定量化装置は、防御側選手の移動速度及びボールの移動速度として実際の選手の速度、ボールの速度でモデル化した値を用いて妨害容易度を算出することができるので、精度のより高い評価値を算出することができる。
また、請求項4に記載の発明によれば、サッカーのルールの一つである、ボールを相手ゴールに入れた場合であっても得点を認めないというオフサイドルールを評価値に反映することができるので、より適切な評価値を算出することができる。また、注目位置がオフサイドポジションにあると判断された場合には評価値の範囲外の値を出力するため、オペレータがサッカーの戦術やルールに精通していない場合にも、出力された結果(評価値)から、注目位置がオフサイドポジションにあることを容易に理解可能となる。また、注目位置がオフサイドポジションにあると判断された場合には、評価値の範囲外の値を出力するため、計算コストを減らすことができる。
また、請求項5に記載の発明によれば、攻撃側チームの攻撃側選手群を、得点の可能性を示す評価値の高い順に並び替えて順序付けることができる。これにより、どの注目選手の位置からシュートを打てば得点につながりやすいかということがわかるので、戦術の解析を詳細に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
[第1実施形態に係る得点可能性定量化装置の説明]
以下、本発明の実施形態について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。図1は、第1実施形態に係る得点可能性定量化装置に入力される防御側選手の配置情報を説明するための模式図である。ここでは、サッカー競技をカメラで撮影した入力映像を用いて説明する。
図1に示すように、本実施形態では、サッカー競技場F(競技エリア)上のセンターサークルCCのセンターマークの中心に原点Oをとり、タッチラインTL方向をx軸とし、防御側の陣地から攻撃側の陣地に向かう方向を、x軸の正方向とする。また、ハーフウェイラインHL方向をy軸とし、x軸から90度正方向に回転した方向をy軸の正方向とする。
第1実施形態に係る得点可能性定量化装置は、公知の選手位置検出装置(図示せず)と接続され、選手位置検出装置(図示せず)によって、サッカー競技をカメラで撮影した入力映像から検出された、攻撃側・防御側チームのそれぞれの選手(図1では、△印と×印とで示す)の2次元空間上の位置の入力を受け付けている。
第1実施形態に係る得点可能性定量化装置は、例えば表示手段(図示せず)と接続され、オペレータが、表示手段(図示せず)に表示されたサッカー競技場Fの映像を見て、入力手段(図示せず)を介してサッカー競技場F上のある位置を注目位置として選択すると、当該注目位置から相手ゴールに向かってシュートしたときの得点の可能性を数値化した評価値を算出することができるようになっている。
【0018】
[第1実施形態に係る得点可能性定量化装置の構成]
次に、本発明の第1実施形態に係る得点可能性定量化装置の構成を説明する。
図2は、本発明の第1実施形態に係る得点可能性定量化装置の構成を示すブロック構成図である。
図2に示すように、本発明の第1実施形態に係る得点可能性定量化装置1は、防御側選手配置情報記憶手段10と、シュートコース演算手段11と、第1のカウンタ12と、防御側選手選択手段13と、妨害容易度演算手段14と、評価手段15と、を備えている。なお、以下の説明では、二つのチームのうちの一方を攻撃側チーム、他方を防御側チームといい、攻撃側チームの選手を攻撃側選手、防御側チームの選手を防御側選手として区別する。また、チームスポーツをサッカーとするが、複数名の選手が二つのチームに分かれてボールを相手ゴール内に入れることで得点を競い合うスポーツであれば、特に限定されるものではない。また、ここでいうボールとは、ゴール内に入れられる可能性を有するものであれば何でも良く、例えば、ホッケー等に使用されるパック等であっても良い。また、ここでいうシュートとは、ボールをゴールに向かわせることを示し、例えば「ショット」等、用いるスポーツの種類で異なる表現を代表したものである。
【0019】
防御側選手配置情報記憶手段10は、サッカー競技場F上にいる防御側選手の2次元空間上の位置{ai}i=1,2,…,N(Nは1以上の整数で人数を表す)を記憶するものである。防御側選手の2次元空間上の位置{ai}i=1,2,…,Nは、前記したように、公知の選手位置検出装置(図示せず)によって検出され、防御側選手配置情報記憶手段10に出力される。防御側選手配置情報記憶手段10に記憶された防御側選手の2次元空間上の位置{ai}i=1,2,…,Nは、後記する防御側選手選択手段13によって適宜読み出される。
シュートコース演算手段11は、注目位置bからのシュートコースを演算するものである。より詳細には、シュートコース演算手段11は、注目位置bから防御側ゴールに仮想的に設定された代表点gに向かってのびる半直線Sを演算することにより、シュートコースを求める。
【0020】
ここで、注目位置bは、サッカー競技場F上に仮想的に設定された位置ベクトルである。注目位置bは、例えば、サッカー競技を撮影した入力映像から、オペレータが入力手段(図示せず)を介して、サッカーコート上のある位置を任意に選択すること等によって設定することができる。なお、注目位置bは、特開2004−110448号公報に記載の映像オブジェクト識別・追跡装置を用いて入力映像から防御側選手の位置を検出してその位置としても良いし、オペレータが手動で入力しても良い。
また、代表点gは、注目位置bからのシュートの仮想的な軌道、具体的には、注目位置bからのシュートが、防御側ゴール内に入るまでの仮想的な軌道(半直線S)を演算するために、防御側ゴールに仮想的に設定される位置ベクトルである。
注目位置b及び代表点gは、そのいずれか一方または双方が地面上にあるものとすることができる。本実施形態では、平面の地面を仮定し、注目位置b及び代表点gは、いずれも地面上にあるものとする。
【0021】
ここで、図3を用いてシュートコース演算手段11によって演算される半直線Sについて詳細に説明する。
図3は、本発明の第1実施形態に係る得点可能性定量化装置のシュートコース演算手段によって、防御側ゴールに仮想的に代表点を設定する様子を表す概念図である。サッカー競技では、ゴールラインGLを完全に超えてゴールの枠内にボールを入れることで得点が認められるため、第1実施形態では、ゴールラインGL上に代表点gを設定するものとする。
この代表点gは、注目位置bの位置によらずに設定しても良い。シュートコース演算手段11は、注目位置bの位置によらずに代表点gを設定する場合には、例えば、図3(a)に示すように、ゴールラインGLの中点の座標を代表点g(gx,gy)とする。
【0022】
一方、代表点gを、注目位置bの位置に応じて設定しても良い。シュートコース演算手段11は、注目位置bの位置に応じて代表点gを設定する場合には、次のようにする。
図3(b)に示すように、ゴールラインGLの中点をy=0とおき、線分の両端点のy座標をそれぞれ+R/2、−R/2とおき、注目位置bの座標をb(bx,by)とおく。例えば、注目位置bのy座標byが−R/2以上+R/2以下の場合、図3(b)に示すように、代表点gのy座標gyを、注目位置bのy座標byとする。また、例えば、注目位置bのy座標byが+R/2よりも大きい場合、図3(c)に示すように、代表点gのy座標gyを+R/2とする。また例えば、注目位置bのy座標byが−R/2よりも小さい場合、図3(d)に示すように、代表点gのy座標gyを−R/2とする。
シュートコース演算手段11は、このようにして代表点gを設定し、注目位置bから代表点gを通過する半直線S(シュートコース)を演算する。シュートコース演算手段11は、演算した半直線Sを、妨害容易度演算手段14に出力する。
【0023】
再び図2を参照し、得点可能性定量化装置1の構成について説明する。第1のカウンタ12は、カウンタ値iを設定するものである。カウンタ値iは、防御側選手配置情報記憶手段10に2次元空間上の位置{ai}i=1,2,…,Nが記憶された防御側選手をそれぞれ識別するために用いられる。また、第1のカウンタ12は、公知の選手位置検出装置(図示せず)から防御側選手の人数Mの値(例えば、M=11)の入力を受け付ける。第1のカウンタ12は、設定したカウンタ値iを防御側選手選択手段13及び評価手段15に順次出力する。
【0024】
防御側選手選択手段13は、防御側選手配置情報記憶手段10に記憶された2次元空間上の位置{ai}i=1,2,…,Nの中から、i番目の2次元空間上の位置aiを選択的に取得し、取得した2次元空間上の位置aiを、妨害容易度演算手段14に順次出力するものである。防御側選手選択手段13は、第一の実施形態では、第1のカウンタ12からカウンタ値iが入力されると、防御側選手配置情報記憶手段10からi番目の2次元空間上の位置aiを一つ取得し、当該取得した2次元空間上の位置aiを妨害容易度演算手段14に出力する。
【0025】
妨害容易度演算手段14は、シュートコース演算手段11から入力された半直線Sと、防御側選手選択手段13から入力された防御側選手の2次元空間上の位置aiとに基づいて、妨害容易度ηiを演算する手段である。ここで、妨害容易度ηiとは、防御側選手の2次元空間上の位置aiからの半直線Sで表されるシュートコースSへの到達の容易さを、防御側選手ごとに定量化したものである。
図4は、本発明の第1実施形態に係る得点可能性定量化装置の妨害容易度演算手段によって、妨害容易度を演算する様子を表す概念図である。以下の説明では、代表点gを、ゴールラインGLの中点とする。
【0026】
ある防御側選手の2次元空間上の位置ai(a1,a2,・・・,aN)から半直線Sに向かって下ろした垂線の長さをαi(α1,α2,・・・,αN)とおき、ある防御側選手の2次元空間上の位置aiから半直線Sに向かって下ろした垂線と半直線Sの交点をHi(H1,H2,・・・,HN)とおいたときの、注目位置bと交点Hiとを結ぶ線分の長さをβi(β1,β2,・・・,βN)とおくと、垂線の長さαiと注目位置bから交点Hiまでの線分の長さβiによって、妨害容易度ηi(η1,η2,・・・,ηN)を決めることができる。この場合、妨害容易度ηiを、例えば関数fを用いて、式(1)により表すことができる。
【0027】
【数1】
なお、垂線と半直線Sの交点Hiが存在しない場合、つまり、ある防御側選手が、半直線Sに垂線を下ろせる位置にいない場合には、当該防御側選手は、注目位置bからのシュートを妨害することができないものとし、妨害容易度ηiを“0”とする。
図4に示すように、シュートコース演算手段11で演算された半直線Sに垂線を下ろすことができる位置にいる防御側選手が2人である場合には、残りの9人の防御側選手については、妨害容易度ηiを“0”とする。
また例えば、妨害容易度ηiを、垂線の長さαiに反比例し、注目位置bからの線分の長さβiに比例するものとすることができる。その場合、妨害容易度ηiを、式(2)により表すことができる。
【0028】
【数2】
式(2)におけるκは、正の実数係数である。ここで、ある防御側選手が、2次元空間上の位置aiから垂線と半直線Sの交点Hiにたどり着くまでの時間と、ボールが、注目位置bから垂線と半直線Sの交点Hiにたどり着くまでの時間とが等しい場合、妨害容易度ηiを“1”とすることができる。この場合、係数κを、式(3)で表すことができる。
【0029】
【数3】
数式(3)におけるvaは、サッカー選手の全力疾走時の平均的な速さを予め設定した値であり、vbは、シュート時のボールの平均的な速さを予め設定した値である。例えば、va=20[km/h]とし、vb=40[km/h]とした場合には、κ=0.5となる。
また例えば、妨害容易度ηiを、関数fを用いて、数式(4)のように定義しても良い。このように定義すると、妨害容易度ηiを0から1の範囲内で表すことができるので、後記する評価手段15で算出される評価値Eをより理解しやすいものとすることができる。
【0030】
【数4】
【0031】
また例えば、妨害容易度演算手段14は、防御側選手の速度の確率的なモデル及びボールの速度の確率的なモデルに基づいて注目位置bからのシュートの妨害可能性の確率値を算出し、この確率値に基づいて、妨害容易度ηiを算出しても良い。以下、詳細に説明する。ここで、図5(a)及び(b)は、本発明の第1実施形態に係る得点可能性定量化装置の妨害容易度演算手段によって、防御側選手がボールに到達できる最小の速さを演算する様子を説明するための説明図であり、図6(a)は、サッカー選手の全力疾走時の速度がvaである確率密度関数の一例を示す図、(b)は、シュート時のボールの速度がvbである確率密度関数の一例を示す図である。図6(a)に示すように、全力疾走時の防御側選手の速度(ただし、速度の水平面内成分とする)がvaである確率密度関数をPa(‖va‖)とおく。また、考えうる選手の最大の速度をvamaxとおく。一方、図6(b)に示すように、シュート時のボールの速度(ただし、速度の水平面内成分とする)がvbである確率密度関数を、Pb(‖vb‖)とおく。
【0032】
ここで、図5に示すように、第1の防御側選手の位置をa(a1)、ボールの位置をb、ボールの速度をvbとおく。また、位置bから位置gに向かってのばしたベクトル(g−b)と、位置bから位置aに向かってのばしたベクトル(a−b)とでなる角度をθとおく。ボールが位置bから速度vbで、位置gと位置bとを結ぶ線分上を防御側ゴールへ向かって移動する場合に、第1の防御側選手が、位置aから最小の速さva min(vb;a,b,g)で移動してボールに追いつくことができるのは、到達点tの位置である(到達に要する時間をτとおいた)。つまり、図5(a)に示すように、円Z内に第1の防御側選手が位置している場合、第1の防御側選手は、位置aから、位置gと位置bとを結ぶ線分に向かって、位置bから位置aに向かってのばしたベクトル(a−b)に対し直角方向に移動すると、最小の速さva min(vb;a,b,g)でボールに追いつくことができる。一方、図5(b)に示すように、円Z外に第1の防御側選手が位置している場合、第1の防御側選手は、位置aから、位置aと位置gとを結ぶ線分上を位置gに向かって移動すると、最小の速さva min(vb;a,b,g)でボールに追いつくことができる。この場合の、第1の防御側選手がボールに追いつくことができる最小の速さva min(vb;a,b,g)は、前記したような位置gと位置bとを結ぶ線分を直径とする円Zと、位置aとの位置関係に応じて、式(5)で表すことができる。
【0033】
【数5】
【0034】
次に、式(6)に示すように、ボールの速度がvbの場合に、図5に示す第1の防御側選手がボールに到達できる確率、すなわち、第1の防御側選手が、式(5)により求めたvamin(vb;a,b,g)以上の速さで走れる選手である確率を求め、当該確率を、さまざまなボールの速度vbに関して、Pb(‖vb‖)の重み付けで積分することにより、妨害容易度ηiを求めることができる。
【0035】
【数6】
ここで、Vは、式(7)で示すように、ボールの位置bから代表点gへ向かう方向を有する0以上vbmax未満の速度ベクトルの集合である。
【0036】
【数7】
なお、vb maxは、考え得るボールの最大の速さであり、例えば、vb max=100[km/h]である。
妨害容易度演算手段14は、前記したいずれかの手法により妨害容易度ηiを演算し、演算した妨害容易度ηiを評価手段15に出力する。
【0037】
評価手段15は、妨害容易度演算手段14で演算された防御側選手ごとの妨害容易度ηiを総和し、総和した結果を、注目位置bから攻撃側選手が防御側ゴールに向かってシュートをしたと仮定したときの攻撃側チームの得点の可能性の評価値Eとする手段である。
評価手段15は、妨害容易度演算手段14によって、妨害容易度ηiを1以上の防御側選手について総和することによって評価値Eを算出する。評価手段15は、例えば、式(8)に示すように、全ての防御側選手i∈{1,2,…,N}の妨害容易度ηiを総和する。
【0038】
【数8】
評価値Eは、その値が大きいほど、注目位置bからのシュートによる攻撃側チームの得点が困難であるということを示す。
評価手段15は、妨害容易度ηiが入力されるごとに、公知の選手位置検出装置(図示せず)から入力された防御側選手の人数N(例えば、N=11)と、第1のカウンタ12から入力されたカウンタ値iとを比較し、カウンタ値iが人数Nと等しいか否かを判定する。評価手段15は、カウンタ値iと人数Nとが等しくないと判定した場合、第1のカウンタ12にカウンタ値iを1加算するように通知する。一方、評価手段15は、カウンタ値iが人数Nと等しいと判定した場合、処理を終了する。なお、評価手段15は、評価値Eを外部に出力して処理を終了しても良い。
【0039】
以上、得点可能性定量化装置1の構成について説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、得点可能性定量化装置1は、一般的なコンピュータにプログラムを実行させ、コンピュータ内の演算装置や記憶装置を動作させることにより実現することができる。このプログラム(得点可能性定量化プログラム)は、通信回線を介して配布することも可能であるし、CD−ROM等の記録媒体に書き込んで配布することも可能である。
【0040】
[第1実施形態に係る得点可能性定量化装置の動作]
次に図7を参照して、得点可能性定量化装置1の動作を説明する。図7は、本発明の第1実施形態に係る得点可能性定量化装置の動作を示すフローチャートである。なお、以下の説明では、防御側選手配置情報記憶手段10に、公知の位置検出装置(図示せず)によって検出されたサッカー競技場F上の全ての防御側選手の2次元空間上の位置{ai}i=1,2,…,Nが記憶されているものとする。また、得点可能性定量化装置1は、外部から公知の選手位置検出装置(図示せず)によって検出された防御側選手の人数Nの入力を予め受け付け、防御側選手の人数Nの値が、第1のカウンタ12及び評価手段15に入力されているものとする。さらに、得点可能性定量化装置1は、外部から注目位置bの入力を順次受け付けるものとし、この注目位置bが、シュートコース演算手段11に順次入力されるものとする。
図7に示すように、得点可能性定量化装置1は、外部から入力された注目位置bの入力を受け付けると、シュートコース演算手段によって、注目位置bから防御側ゴールに仮想的に設定した代表点gに向かってのびる半直線Sを演算し、演算した半直線Sを妨害容易度演算手段14に出力する(ステップS1)。
【0041】
次に、得点可能性定量化装置1は、第1のカウンタ12によって、カウンタ値iの初期値(i=1)を設定する(ステップS2)。設定されたカウンタ値iの初期値は、第1のカウンタ12及び評価手段15に出力される。
次に、得点可能性定量化装置1は、防御側選手選択手段13によって、防御側選手配置情報記憶手段10に記憶された全ての防御側選手の2次元空間上の位置{ai}i=1,2,…,Nの中から、i番目の防御側選手の2次元空間上の位置aiを選択的に取得し、妨害容易度演算手段14に出力する(ステップS3)。
【0042】
次に、得点可能性定量化装置1は、妨害容易度演算手段14によって、防御側選手選択手段13から入力されたi番目の防御側選手の2次元空間上の位置aiと、シュートコース演算手段11から入力された半直線Sとを用いて、攻撃側選手が注目位置bから防御側ゴールに向かってシュートしたと仮定したときの、i番目の防御側選手の妨害容易度ηiを演算し、演算した妨害容易度ηiを評価手段15に出力する(ステップS4)。
そして、得点可能性定量化装置1は、評価手段15によって、妨害容易度演算手段14から入力された妨害容易度ηiを順次加算する(ステップS5)。
また、得点可能性定量化装置1は、評価手段15によって、第1のカウンタ12から入力されたカウンタ値iと、第1のカウンタ12から入力された防御側選手の人数Nの値とが等しいかどうかを比較する(ステップS6)。
そして、得点可能性定量化装置1は、評価手段15によって、カウンタ値iと人数Nとが等しくないと判定した場合(ステップS6でNo)、第1のカウンタ12に、カウンタ値iを1加算する操作信号を出力する(ステップS7)。
そして、得点可能性定量化装置1は、ステップS3に戻り、ステップS3からステップS7までを防御側選手の人数分行う。
一方、ステップS6で、得点可能性定量化装置1は、評価手段15によって、カウンタ値iと人数Nとが等しいと判定した場合(ステップS6でYes)、加算した妨害容易度ηiを評価値Eとして外部に出力する(ステップS8)。
以上の動作によって、得点可能性定量化装置1は、攻撃側選手が注目位置bからシュートをしたと仮定したときの、攻撃側チームの得点の可能性を定量化した評価値Eを算出することができる。
【0043】
なお、第1のカウンタ12を設けない場合には、例えば、妨害容易度演算手段14の内部でカウントし、防御側選手の人数分の妨害容易度ηiを演算し終えたタイミングで、妨害容易度演算手段14が評価手段15に処理終了を通知し、評価手段15が妨害容易度演算手段14から処理終了の通知を受け取ると、評価値Eを出力することとしてもよい。
【0044】
第1実施形態に係る得点可能性定量化装置1によれば、注目位置bから攻撃側選手が防御側ゴールに向かってシュートをしたと仮定したときの、当該シュートが攻撃側チームの得点に結びつく可能性を数値化した評価値Eを算出することができるので、オペレータが、サッカーのルールや戦術に精通していない場合でも、出力された結果の内容を容易に理解可能となる。また、サッカー競技場F上のあらゆる位置からのシュートによる得点の可能性をそれぞれ定量化することができるので、オペレータが、算出された評価値Eを用いて、より詳細な戦術の解析を行うことが可能となる。
【0045】
[第2実施形態に係る得点可能性定量化装置の説明]
次に、本発明の第2実施形態に係る得点可能性定量化装置2について、適宜図面を参照して説明する。参照する図8は、本発明の第2実施形態に係る得点可能性定量化装置の概要を説明するための説明図である。図9は、本発明の第2実施形態に係る得点可能性定量化装置の構成を示すブロック構成図である。はじめに、第2実施形態に係る得点可能性定量化装置の概略を説明する。
第2実施形態に係る得点可能性定量化装置は、サッカーをチームスポーツとしたときに、注目位置bがオフサイドポジションにあるか否かに応じて、評価値Eを変化させることを目的とする。ここで、サッカーでは、ある選手が(1)相手チームの陣地内で、(2)ボールよりも相手チームのゴールラインに近く、(3)相手チームのゴールライン側から数えて2番目にいる相手選手よりもゴールラインに近い位置にいるという3つの条件を満たした場合に、当該選手がオフサイドポジションにいると判断される。
例えば、攻撃側チームのある攻撃側選手が他の攻撃側選手にボールのパスを出した瞬間に、当該他の攻撃側選手がオフサイドポジションにいる場合には、攻撃側チームに対しオフサイドと呼ばれる反則が適用され、防御側チームに間接フリーキックが与えられる。オフサイドルールが適用された場合、仮にボールが防御側ゴール内に入った場合であっても、攻撃側チームの得点は認められない。
【0046】
第2実施形態に係る得点可能性定量化装置は、(1)ハーフウェイラインHLと、(2)ボールと、(3)相手チームのゴールラインGL側から数えて2番目にいる選手の各位置のうち、もっともゴールラインGLに近い位置をオフサイドライン位置Lと推定する。例えば図8に示す位置に防御側選手(図8では×印で示す)が配置され、また、ボール(図8では丸印で示す)がある場合には、ゴールラインGL側から数えて2番目にいる防御側選手の位置がもっともゴールラインGLに近いため、当該防御側選手のx座標をオフサイドライン位置Lと推定する。
そして、例えば、注目位置bを第1の攻撃側選手の位置a1とした場合、注目位置bがオフサイドライン位置LよりもゴールラインGLに近いため、第2実施形態に係る得点可能性定量化装置は、注目位置bがオフサイドポジションにあると判定し、評価値として予め定めた値(以下、「固定値」ともいう。)を出力するようになっている。一方、注目位置bを第2の攻撃側選手の位置a2とした場合、注目位置bがオフサイドライン位置LよりもゴールラインGLから遠いため、第2実施形態に係る得点可能性定量化装置は、注目位置bがオフサイドポジションにないと判定し、評価値として算出した値を出力するようになっている。
【0047】
[第2実施形態に係る得点可能性定量化装置の構成]
次に、第2実施形態に係る得点可能性定量化装置の構成を説明する。
図9に示すように、得点可能性定量化装置2は、防御側選手配置情報記憶手段10と、シュートコース演算手段11と、第1のカウンタ12と、防御側選手選択手段13と、妨害容易度演算手段14と、評価手段15と、オフサイドライン推定手段20と、オフサイド判定手段21と、固定値記憶手段22と、切替手段23とを備えて構成される。第2実施形態に係る得点可能性定量化装置2が、第1実施形態に係る得点可能性定量化装置1と異なる点は、第1実施形態に係る得点可能性定量化装置1の構成に加え、オフサイドライン推定手段20と、オフサイド判定手段21と、固定値記憶手段22と、切替手段23とをさらに備えたことにある。
以下の説明では、第1実施形態に係る得点可能性定量化装置1と重複する構成には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。また、第1実施形態と同様に、適宜図1を参照する。
【0048】
オフサイドライン推定手段20は、オフサイドを判定する基準となるオフサイドライン位置Lを推定する手段である。
オフサイドラインとは、ハーフウェイラインHLと平行に引かれる仮想的な直線であり、(1)ハーフウェイラインHLの位置、(2)ボールの位置、(3)防御側チームのゴールラインGL側から数えて2番目にいる防御側選手の位置、のうち、もっとも防御側チームのゴールラインGLに近い点又は線の上に仮想的に引かれるものである。
オフサイドライン推定手段20は、例えば、防御側選手配置情報記憶手段10に記憶された防御側チームの防御側選手の2次元空間上の位置{ai}i=1,2,…,Nの中から、防御側チームのゴールラインGL側から数えて2番目にいる防御側選手の2次元空間上の位置a2を取得し、当該防御側選手の2次元空間上の位置a2のx座標と、ハーフウェイラインHL上の原点Oのx座標(x=0)とを比較し、いずれか小さい方の値をオフサイドライン位置Lと推定し、このオフサイドライン位置Lをオフサイド判定手段22に出力する。
【0049】
より好ましくは、オフサイドライン推定手段20は、防御側チームの防御側選手の2次元空間上の位置{ai}i=1,2,…,Nの中から、防御側チームのゴールラインGL側から数えて2番目にいる防御側選手の2次元空間上の位置a2に加えて、ボールの位置のx座標をさらに取得し、当該防御側選手の2次元空間上の位置a2のx座標と、ボールの位置のx座標と、ハーフウェイラインHL上の原点Oのx座標(x=0)とを比較し、もっとも小さい値をオフサイドライン位置と推定し、このオフサイドライン位置Lをオフサイド判定手段22に出力する。
また、例えば、特開2005−209148号に開示されたオフサイドライン検出装置をオフサイドライン推定手段20として用いても良い。
【0050】
オフサイド判定手段21は、オフサイドライン推定手段20からオフサイドライン位置Lの入力を受け付けると共に、外部から入力された操作信号による注目位置bの入力を受け付け、注目位置bと、オフサイドライン位置Lとを比較し、比較結果に基づいて注目位置bがオフサイドライン位置Lにあるか否かを判定する手段である。
そして、オフサイド判定手段21は、式(9)により、注目位置bのx座標を求め、注目位置bのx座標とオフサイドライン位置Lのx座標とを比較する。そして、注目位置bのx座標がオフサイドライン位置Lのx座標よりも小さい場合には、注目位置bがオフサイドポジションにあると判定し、当該判定結果JとしてJ=1を防御側選手選択手段13及び切替手段23に出力する。一方、注目位置bのx座標がオフサイドライン位置Lのx座標よりも大きい場合には、注目位置bがオフサイドラインポジションにないと判定し、当該判定結果JとしてJ=0を防御側選手選択手段13及び切替手段23に出力する。
【0051】
【数9】
なお、式(9)における[1,0]bは、注目位置bのx座標を求める行列演算である。
【0052】
固定値記憶手段22は、固定値Eoffsを記憶するものである。ここで、注目位置bがオフサイドポジションにある場合には、注目位置bからの得点の可能性はないといえるため、固定値Eoffsとして、例えば、オフサイド判定結果Jが“0”の場合のあらゆる評価値Eよりも大きな値(すなわち、攻撃側チームに有利な値)又は比較不可能な値を用いることができる。例えば、Eoffs=1000、Eoffs=∞やEoffs=NaN(Not a Number、つまり非数)等とすることができる。
切替手段23は、オフサイド判定手段21から判定結果Jの入力を受け付け、当該判定結果Jに基づいて、予め定めた固定値Eoffsと、算出した評価値Eとを切り替えて出力する手段である。
切替手段23は、オフサイド判定手段21から、オフサイド判定結果Jとして“1”の入力を受け付けた場合、評価値として、予め定めた固定値Eoffsを出力することとし、固定値記憶手段22から固定値Eoffsを取得し、外部に出力する。
【0053】
一方、切替手段23は、オフサイド判定手段21から、オフサイド判定結果Jとして“0”の入力を受け付けた場合、防御側選手選択手段13に処理を開始するように操作信号を出力する。そして、得点可能性定量化装置2は、第1実施形態に係る得点可能性定量化装置1と同様に、第1のカウンタ12と、防御側選手選択手段13と、妨害容易度演算手段14と、評価手段15と、を用いて、防御側選手i∈{1,2,…,N}について妨害容易度ηiを演算し、演算した妨害容易度ηiを総和して、当該総和した結果である評価値Eを切替手段23に出力する。切替手段23は、評価手段15から入力された評価値Eを、外部に出力する。
このように、切替手段23は、注目位置bがオフサイドポジションにない場合には、図9の一点鎖線内の各手段を動作させて評価値Eを算出し、評価値として、算出した評価値Eを外部に出力し、注目位置bがオフサイドポジションにある場合には、図9の一点鎖線内の各手段を動作させずに、評価値として、予め定めた固定値Eoffsを外部に出力する。これにより、計算コストを低減することができる。
なお、シュートコース演算手段11は、判定結果Jの値に関わらず、外部から注目位置bが入力されるごとに、半直線Sを演算し、演算した半直線Sを妨害容易度演算手段14に順次出力する。
【0054】
以上、得点可能性定量化装置2の構成について説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、得点可能性定量化装置2は、一般的なコンピュータにプログラムを実行させ、コンピュータ内の演算装置や記憶装置を動作させることにより実現することができる。このプログラム(得点可能性定量化プログラム)は、通信回線を介して配布することも可能であるし、CD−ROM等の記録媒体に書き込んで配布することも可能である。
【0055】
[第2実施形態に係る得点可能性定量化装置の動作]
次に、図10を参照して第2実施形態に係る得点可能性定量化装置2の動作を説明する。図10は、本発明の第2実施形態に係る得点可能性定量化装置の動作を示すフローチャートである。なお、第2実施形態に係る得点可能性定量化装置2では、外部から注目位置bが入力されると、シュートコース演算手段11によって、半直線Sを演算し、演算した半直線Sを妨害容易度演算手段14に順次出力するものとする。また、以下の説明では、防御側選手配置情報記憶手段10に、公知の位置検出装置(図示せず)によって検出されたサッカー競技場F上の全ての防御側選手の2次元空間上の位置{ai}i=1,2,…,N(Nは1以上の整数で人数を表す)が記憶されているものとする。
図10に示すように、得点可能性定量化装置2は、オフサイドライン推定手段20によって、オフサイドライン位置Lを推定し、このオフサイドライン位置Lをオフサイド判定手段22に出力する(ステップS11)。次に、得点可能性定量化装置2は、オフサイド判定手段22によって、オフサイドライン推定手段20から入力されたオフサイドライン位置Lと、外部から入力された注目位置bとを比較する(ステップS12)。
【0056】
そして、得点可能性定量化装置2は、オフサイド判定手段22によって、オフサイドライン位置Lと、注目位置bとを比較した結果、注目位置bがオフサイドポジションにあると判定した場合(ステップS13でYes)、判定結果Jとして、J=1を防御側選手選択手段13及び切替手段23に出力する(ステップS14)。次に、得点可能性定量化装置2は、切替手段23によって、固定値記憶手段22から固定値Eoffsを取得する(ステップS15)。そして、得点可能性定量化装置2は、切替手段23によって、固定値Eoffsを得点の可能性の評価値として外部に出力する(ステップS16)。
【0057】
一方、ステップS13で、得点可能性定量化装置2は、オフサイド判定手段22によって、注目位置bがオフサイドポジションにないと判定した場合(ステップS13でNo)、判定結果Jとして、J=0を防御側選手選択手段13及び切替手段23に出力する(ステップS17)。次に、得点可能性定量化装置2は、第1実施形態に係る得点可能性定量化装置1と同様に、第1のカウンタ12と、防御側選手選択手段13と、妨害容易度演算手段14と、評価手段15とを動作させる。得点可能性定量化装置2は、評価手段15によって、算出した評価値Eを、切替手段23に出力する。なお、図10に示すステップS18からステップS23の動作は、図7で説明した第1実施形態に係る得点可能性定量化装置1のステップS2からステップS7の動作と同様であるので、ここでは説明を省略する。
そして、得点可能性定量化装置2は、切替手段23によって、評価手段15で算出された評価値Eを得点の可能性の評価値として出力する(ステップS24)。
以上の動作によって、得点可能性定量化装置2は、注目位置bからの得点の可能性を定量化した評価値を算出することができる。
【0058】
第2実施形態に係る得点可能性定量化装置2によれば、第1実施形態に係る得点可能性定量化装置1の作用に加え、チームスポーツをサッカーとした場合に、オフサイドルールによって、ボールが防御側ゴール内に入った場合であっても得点が認められない場合がある場合を考慮して評価値を切り替えて出力することができるので、オペレータが、評価値を用いて、より正確にその後のゲームの流れを予測したり、各チームの戦術の解析をしたりすることが可能となる。また、注目位置bがオフサイドポジションに有る場合には、評価値Eの範囲外の値である固定値Eoffsを出力するため、オペレータが、サッカーのルールや戦術に精通していない場合にも、注目位置bからのシュートが得点に結びつかないことを容易に理解可能となる。また、注目位置bがオフサイドポジションに有ると判定した場合には、評価値Eを算出せずに、予め定めた固定値Eoffsを出力することとしたため、計算コストを低減することができる。
【0059】
[得点可能性順序付け装置の説明]
次に、本発明の得点可能性順序付け装置について、適宜図面を参照して説明する。参照する図11は、本発明の実施形態に係る得点可能性順序付け装置の構成を示すブロック構成図である。
得点可能性順序付け装置は、注目チームの全選手を、得点の可能性に応じて順序付けることを目的とする。注目チームは、外部から入力された操作信号により防御側チーム又は攻撃側チームのいずれかに特定される。以下の説明では、注目チームを攻撃側チームとして説明する。また、チームスポーツをサッカーとして説明する。
なお、得点可能性順序付け装置は、第1実施形態に係る得点可能性定量化装置1を含むものであるため、第1実施形態に係る得点可能性定量化装置1の構成については、適宜図2を参照するものとし、重複する説明を省略する。
【0060】
[得点可能性順序付け装置の構成]
図11に示すように、得点可能性順序付け装置3は、攻撃側選手配置情報記憶手段30と、第2のカウンタ31と、攻撃側選手選択手段32と、得点可能性定量化装置1と、順序付け手段33と、を備えて構成される。なお、得点可能性定量化装置1は、第1実施形態で説明したものと同じであるため、ここでは説明を省略する。
攻撃側選手配置情報記憶手段30は、サッカー競技場F上にいる攻撃側選手の2次元空間上の位置{cj}j=1,2,…,M(Mは1以上の整数で人数を表す)を記憶するものである。攻撃側選手の2次元空間上の位置{cj}j=1,2,…,Mは、前記したように、公知の選手位置検出装置(図示せず)によって検出され、攻撃側選手配置情報記憶手段30に出力されるようになっている。本実施形態では、チームスポーツをサッカーとするため、例えば、M=11とする。
【0061】
第2のカウンタ31は、攻撃側選手配置情報記憶手段30に2次元空間上の位置{cj}j=1,2,…,Mが記憶された攻撃側選手をそれぞれ識別するための計数手段である。第2のカウンタ31は、公知の選手位置検出装置(図示せず)によって検出された攻撃側選手の人数Mの入力を受け付け、カウンタ値jとして、“1”〜“M”を攻撃側選手選択手段33及び順序付け手段33に順次出力する。
攻撃側選手選択手段32は、第2のカウンタ31からカウンタ値jを順次取得し、攻撃側選手配置情報記憶手段31に記憶された攻撃側選手の2次元空間上の位置{cj}j=1,2,…,Mの中から、j番目の攻撃側選手の2次元空間上の位置cjを選択的に取得し、これを注目位置bjとして、得点可能性定量化装置1のシュートコース演算手段11に順次出力する。
【0062】
得点可能性定量化装置1は、シュートコース演算手段11によって、攻撃側選手選択手段32から入力された注目位置bjから防御側ゴールへ向かう半直線Sを順次演算する。
また、得点可能性定量化装置1は、評価手段15によって、ある攻撃側選手が、注目位置bjから防御側ゴールへシュートしたときの、攻撃側チームの得点可能性を示す評価値Ejを算出し、算出した評価値Ejを順序付け手段33に順次出力する。
【0063】
順序付け手段33は、それぞれの攻撃側選手について算出された評価値Eの大きさに応じて、複数の攻撃側選手を得点可能性の高い順に順序付ける手段である。また、順序付け手段33は、公知の選手位置検出装置(図示せず)によって検出された攻撃側選手の人数Mの入力を受け付ける。
さらに、順序付け手段33は、評価手段15から攻撃側選手の人数分の評価値Ejの入力を順次受け付け、評価値群{Ej}j=1,2,…,Mを整順するか、最大値もしくは最小値演算を適用し、数式(10)で表される、評価値Ejが特定順位にある攻撃側チームの攻撃側選手のインデックスを出力する。
【0064】
【数10】
なお、数式(10)は、o番目に得点の可能性が高い選手を表すため、これを用いて、戦術上重要な選手を特定することも可能である。
また例えば、順序付け手段33は、数式(10)で求めた「o番目に小さい評価値をとった注目チーム(攻撃側チーム)所属の選手のインデックス」を、1以上M以下のoに関して求め、それらをまとめて、数式(11)で示す集合として出力しても良い。
【0065】
【数11】
以上、得点可能性順序付け装置3の構成について説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、得点可能性定量化装置1は、一般的なコンピュータにプログラムを実行させ、コンピュータ内の演算装置や記憶装置を動作させることにより実現することができる。このプログラム(得点可能性定量化プログラム)は、通信回線を介して配布することも可能であるし、CD−ROM等の記録媒体に書き込んで配布することも可能である。
【0066】
[得点可能性順序付け装置の動作]
次に、図12を参照して得点可能性順序付け装置3の動作を説明する。図12は、本発明の実施形態に係る得点可能性順序付け装置の動作を示すフローチャートである。
なお、以下の説明では、防御側選手配置情報記憶手段10には、公知の位置検出装置(図示せず)によって検出されたサッカー競技場F上の全ての防御側選手の2次元空間上の位置{ai}i=1,2,…,N(Nは1以上の整数で人数を表す)が記憶されているものとし、攻撃側選手配置情報記憶手段30には、公知の位置検出装置(図示せず)によって検出されたサッカー競技場F上の全ての攻撃側選手の2次元空間上の位置{cj}j=1,2,…,Mが記憶されているものとする。さらに、得点可能性順序付け装置3は、外部から公知の選手位置検出装置(図示せず)によって検出された攻撃側選手の人数Mの入力を予め受け付け、攻撃側選手の人数Mの値が、第2のカウンタ31及び順序付け手段33に入力されているものとする。また、得点可能性定量化装置1には、第1実施形態と同様に、外部から各種情報が入力されるものとする。
【0067】
図12に示すように、得点可能性順序付け装置3は、第2のカウンタ31によって、カウンタ値jの初期値(j=1)を設定する(ステップS31)。第2のカウンタ31によって設定されたカウンタ値jの初期値は、攻撃側選手選択手段32及び順序付け手段33に出力される。次に、得点可能性順序付け装置3は、攻撃側選手選択手段32によって、攻撃側選手配置情報記憶手段30から、攻撃側選手の2次元空間上の位置{cj}j=1,2,…,Mの中のj番目の攻撃側選手の2次元空間上の位置cjを取得する(ステップS32)。そして、得点可能性順序付け装置3は、攻撃側選手選択手段32によって、j番目の攻撃側選手の2次元空間上の位置cjを得点可能性定量化装置1のシュートコース演算手段11に出力する(ステップS33)。
【0068】
次に、得点可能性順序付け装置3は、得点可能性定量化装置1のシュートコース演算手段11によって、攻撃側選手選択手段32から入力されたj番目の攻撃側選手の2次元空間上の位置cjを注目位置bjとして半直線Sjを演算し、妨害容易度演算手段14に出力する(ステップS34)。
なお、図12に示すステップS35からステップS41の動作は、図7で説明した第1実施形態に係る得点可能性定量化装置1のステップS2からステップS8の動作と同様であるので、ここでは説明を省略する。
【0069】
次に、得点可能性順序付け装置3は、順序付け手段33によって、得点可能性定量化装置1から入力を受け付けた評価値Ejを加算する(ステップS42)。
次に、得点可能性順序付け装置3は、順序付け手段33によって、第2のカウンタ31から入力されたカウンタ値jと、第2のカウンタ31から入力された攻撃側選手の人数Mの値とが等しいかどうかを比較する(ステップS43)。得点可能性順序付け装置3は、順序付け手段33によって、カウンタ値jと人数Mとが等しくないと判定した場合(ステップS43でNo)、第2のカウンタ31に、カウンタ値jを1加算する操作信号を出力する(ステップS44)。
そして、得点可能性順序付け装置3は、ステップS32に戻り、ステップS32からステップS44を攻撃側選手の人数分繰り返し行う。
一方、ステップS43で、得点可能性順序付け装置3は、順序付け手段33によって、カウンタ値jと人数Mとが等しいと判定した場合(ステップS43でYes)、攻撃側選手を得点の可能性の高い順に並べ替えたインデックスを外部に出力する(ステップS45)。例えば、「o番目に小さい評価値をとった注目チーム(攻撃側チーム)所属の選手のインデックス」を、1以上M以下のoに関して求め、数式(11)で表されるような、それらを集合した値を出力する。なお、 インデックスとして、“1”から“J”の番号を得点の可能性の高い順に並べ替えたものを出力しても良いし、順序付け手段33で予め番号と対応付けて攻撃側選手名を記憶しておき、攻撃側選手名を得点の可能性の高い順に並べ替えたものを出力しても良い。
【0070】
以上説明した得点可能性順序付け装置3によれば、攻撃側チームの攻撃側選手群を、得点の可能性に応じて順序付けることができるので、より詳細な解析を行うことが可能となる。
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明の得点可能性定量化装置及び得点可能性順序付け装置はこれに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。
【0071】
以上説明した得点可能性定量化装置1、得点可能性定量化装置2、得点可能性順序付け装置3によれば、指定した位置(注目位置)からの得点の可能性を評価値として得ることができるので、この評価値を用いて各チームの戦術の解析を行うことが可能となる。例えば、サッカー競技において、攻撃側チームがある位置からシュートをした場合、このプレイに着目して、その位置からシュートをするという戦術が正しかったのか否か等の戦術の解析を行うことができる。具体的には、その位置を注目位置としたときに、得点の可能性が10%という評価値が得られ、その位置の周囲のいくつかの位置を注目位置としたときに、得点の可能性が80%という評価値が得られた位置がある場合、その位置からシュートをするのではなく、得点の可能性が高い位置にパスを出したほうが良かった、というような戦術の解析を行うことができる。このように、評価値を用いて、さまざまな戦術の解析を行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】第1実施形態に係る得点可能性定量化装置に入力される防御側選手の配置情報を説明するための模式図である。
【図2】本発明の第1実施形態に係る得点可能性定量化装置の構成を示すブロック構成図である。
【図3】本発明の第1実施形態に係る得点可能性定量化装置のシュートコース演算手段によって、防御側ゴールに仮想的に代表点を設定する様子を表す概念図である。
【図4】本発明の第1実施形態に係る得点可能性定量化装置の妨害容易度演算手段によって、妨害容易度を演算する様子を表す概念図である。
【図5】本発明の第1実施形態に係る得点可能性定量化装置の妨害容易度演算手段によって、防御側選手がボールに到達できる最小の速さを演算する様子を説明するための説明図である。
【図6】(a)は、防御側選手の全力疾走時の速度がvaである確率密度関数の一例を示す図、(b)は、シュート時のボールの速度ベクトルがvbである確率密度関数の一例を示す図である。
【図7】本発明の第1実施形態に係る得点可能性定量化装置の動作を示すフローチャートである。
【図8】本発明の第2実施形態に係る得点可能性定量化装置の概要を説明するための説明図である。
【図9】本発明の第2実施形態に係る得点可能性定量化装置の構成を示すブロック構成図である。
【図10】本発明の第2実施形態に係る得点可能性定量化装置の動作を示すフローチャートである。
【図11】本発明の実施形態に係る得点可能性順序付け装置の構成を示すブロック構成図である。
【図12】本発明の実施形態に係る得点可能性順序付け装置の動作を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0073】
1 得点可能性定量化装置
10 防御側選手配置情報記憶手段
11 シュートコース演算手段
12 第1のカウンタ
13 防御側選手選択手段
14 妨害容易度演算手段
15 評価手段
2 得点可能性定量化装置
20 オフサイドライン推定手段
21 オフサイド判定手段
22 固定値記憶手段
23 切替手段
3 得点可能性順序付け装置
30 攻撃側選手配置情報記憶手段
31 第2のカウンタ
32 攻撃側選手選択手段
33 順序付け手段
HL ハーフウェイライン
L オフサイドライン位置
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数名の選手が二つのチームに分かれ、ボールを相手ゴール内に入れることで得点を競い合うチームスポーツにおいて、外部から入力された操作信号により競技エリア上に特定された注目位置からの前記得点の可能性を定量化する得点可能性定量化装置であって、
前記注目位置からのシュートコースとして、防御側ゴールに代表点を設定し、前記注目位置から前記代表点に向かってのびる半直線を演算するシュートコース演算手段と、
前記半直線と、前記競技エリア上に配置された防御側チームの複数の防御側選手のそれぞれの2次元空間上の位置との相対位置に基づき、前記複数の防御側選手の前記2次元空間上の位置からの前記半直線への到達の容易さを妨害容易度として前記複数の防御側選手のそれぞれについて定量化する妨害容易度演算手段と、
前記妨害容易度演算手段によって前記複数の防御側選手のそれぞれについて演算した複数の前記妨害容易度を総和し、前記注目位置から攻撃側チームの攻撃側選手が防御側ゴールに向かってシュートをしたと仮定した場合の、当該シュートによる前記攻撃側チームの得点の可能性の評価値とする評価手段と、を備えることを特徴とする得点可能性定量化装置。
【請求項2】
前記妨害容易度演算手段は、
前記複数の防御側選手のうち、前記半直線上のいずれかの点と垂線で結ばれる前記2次元空間上の位置にいる前記防御側選手について、前記垂線の長さと、前記注目位置から前記半直線上の前記垂線との交点までの長さの比率を、前記妨害容易度とすることを特徴とする請求項1に記載の得点可能性定量化装置。
【請求項3】
前記妨害容易度演算手段は、
前記半直線において、前記注目位置から前記防御側選手が前記ボールに到達するまでの到達点を、前記ボールの速度のモデルと選手の速度のモデルとに基づいて決定し、
前記半直線上の到達点と前記防御側選手の前記2次元空間上の位置とを結んだ線分の長さと、前記注目位置から当該半直線上の到達点までの長さの比率を、前記妨害容易度として演算することを特徴とする請求項1に記載の得点可能性定量化装置。
【請求項4】
前記チームスポーツをサッカーとし、
前記全ての防御側選手の中で、前記防御側ゴールのゴールライン側から数えて2番目に位置する前記防御側選手の前記2次元空間上の位置に基づいてオフサイドライン位置を推定するオフサイドライン推定手段と、
前記オフサイドライン位置と前記注目位置とを比較し、前記注目位置が前記オフサイドライン位置よりも前記防御側ゴールに近い場合、当該注目位置がオフサイドポジションにあると判定するオフサイド判定手段と、
前記オフサイド判定手段によって、前記注目位置が前記オフサイドポジションにあると判定された場合、前記評価値の範囲外の予め定めた値を出力し、前記注目位置が前記オフサイドポジションにないと判定された場合、前記評価手段から取得した前記評価値を出力する切替手段と、を備えることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の得点可能性定量化装置。
【請求項5】
攻撃側チームの複数の攻撃側選手について、当該複数の攻撃側選手のそれぞれの2次元空間上の位置から防御側ゴールに向かってシュートしたときの得点の可能性をそれぞれ評価し、この得点の可能性の高い順に前記複数の攻撃側選手を順序付ける得点可能性順序付け装置であって、
前記複数の攻撃側選手の2次元空間上の位置を順次注目位置として、前記注目位置から前記攻撃側選手が前記防御側ゴールに向かってシュートをしたときの、前記攻撃側チームの得点の可能性の評価値を、前記注目位置ごとに順次求める請求項1に記載の得点可能性定量化装置と、
前記請求項1に記載の得点可能性定量化装置から複数の前記評価値を取得し、当該複数の評価値の値が高い方から順に並べ替えて順序付ける順序付け手段と、を備えることを特徴とする得点可能性順序付け装置。
【請求項6】
複数名の選手が二つのチームに分かれ、ボールを相手ゴール内に入れることで得点を競い合うチームスポーツにおいて、外部から入力された操作信号により競技エリア上に特定された注目位置からの前記得点の可能性を定量化するために、コンピュータを、
前記注目位置からのシュートコースとして、前記防御側ゴールに代表点を設定し、前記注目位置から前記代表点に向かってのびる半直線を演算するシュートコース演算手段、
前記半直線と、前記競技エリア上に配置された防御側チームのそれぞれの防御側選手の2次元空間上の位置との相対位置に基づき、前記半直線への前記防御側選手の到達の容易さを妨害容易度として前記複数の防御側選手のそれぞれについて定量化する妨害容易度演算手段、
前記妨害容易度演算手段によって定量化した前記防御側選手ごとの前記妨害容易度を総和し、前記注目位置から攻撃側チームの攻撃側選手が防御側ゴールに向かってシュートをしたと仮定した場合の、当該シュートによる攻撃側チームの得点の可能性の評価値とする評価手段として機能させることを特徴とする得点可能性定量化プログラム。
【請求項1】
複数名の選手が二つのチームに分かれ、ボールを相手ゴール内に入れることで得点を競い合うチームスポーツにおいて、外部から入力された操作信号により競技エリア上に特定された注目位置からの前記得点の可能性を定量化する得点可能性定量化装置であって、
前記注目位置からのシュートコースとして、防御側ゴールに代表点を設定し、前記注目位置から前記代表点に向かってのびる半直線を演算するシュートコース演算手段と、
前記半直線と、前記競技エリア上に配置された防御側チームの複数の防御側選手のそれぞれの2次元空間上の位置との相対位置に基づき、前記複数の防御側選手の前記2次元空間上の位置からの前記半直線への到達の容易さを妨害容易度として前記複数の防御側選手のそれぞれについて定量化する妨害容易度演算手段と、
前記妨害容易度演算手段によって前記複数の防御側選手のそれぞれについて演算した複数の前記妨害容易度を総和し、前記注目位置から攻撃側チームの攻撃側選手が防御側ゴールに向かってシュートをしたと仮定した場合の、当該シュートによる前記攻撃側チームの得点の可能性の評価値とする評価手段と、を備えることを特徴とする得点可能性定量化装置。
【請求項2】
前記妨害容易度演算手段は、
前記複数の防御側選手のうち、前記半直線上のいずれかの点と垂線で結ばれる前記2次元空間上の位置にいる前記防御側選手について、前記垂線の長さと、前記注目位置から前記半直線上の前記垂線との交点までの長さの比率を、前記妨害容易度とすることを特徴とする請求項1に記載の得点可能性定量化装置。
【請求項3】
前記妨害容易度演算手段は、
前記半直線において、前記注目位置から前記防御側選手が前記ボールに到達するまでの到達点を、前記ボールの速度のモデルと選手の速度のモデルとに基づいて決定し、
前記半直線上の到達点と前記防御側選手の前記2次元空間上の位置とを結んだ線分の長さと、前記注目位置から当該半直線上の到達点までの長さの比率を、前記妨害容易度として演算することを特徴とする請求項1に記載の得点可能性定量化装置。
【請求項4】
前記チームスポーツをサッカーとし、
前記全ての防御側選手の中で、前記防御側ゴールのゴールライン側から数えて2番目に位置する前記防御側選手の前記2次元空間上の位置に基づいてオフサイドライン位置を推定するオフサイドライン推定手段と、
前記オフサイドライン位置と前記注目位置とを比較し、前記注目位置が前記オフサイドライン位置よりも前記防御側ゴールに近い場合、当該注目位置がオフサイドポジションにあると判定するオフサイド判定手段と、
前記オフサイド判定手段によって、前記注目位置が前記オフサイドポジションにあると判定された場合、前記評価値の範囲外の予め定めた値を出力し、前記注目位置が前記オフサイドポジションにないと判定された場合、前記評価手段から取得した前記評価値を出力する切替手段と、を備えることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の得点可能性定量化装置。
【請求項5】
攻撃側チームの複数の攻撃側選手について、当該複数の攻撃側選手のそれぞれの2次元空間上の位置から防御側ゴールに向かってシュートしたときの得点の可能性をそれぞれ評価し、この得点の可能性の高い順に前記複数の攻撃側選手を順序付ける得点可能性順序付け装置であって、
前記複数の攻撃側選手の2次元空間上の位置を順次注目位置として、前記注目位置から前記攻撃側選手が前記防御側ゴールに向かってシュートをしたときの、前記攻撃側チームの得点の可能性の評価値を、前記注目位置ごとに順次求める請求項1に記載の得点可能性定量化装置と、
前記請求項1に記載の得点可能性定量化装置から複数の前記評価値を取得し、当該複数の評価値の値が高い方から順に並べ替えて順序付ける順序付け手段と、を備えることを特徴とする得点可能性順序付け装置。
【請求項6】
複数名の選手が二つのチームに分かれ、ボールを相手ゴール内に入れることで得点を競い合うチームスポーツにおいて、外部から入力された操作信号により競技エリア上に特定された注目位置からの前記得点の可能性を定量化するために、コンピュータを、
前記注目位置からのシュートコースとして、前記防御側ゴールに代表点を設定し、前記注目位置から前記代表点に向かってのびる半直線を演算するシュートコース演算手段、
前記半直線と、前記競技エリア上に配置された防御側チームのそれぞれの防御側選手の2次元空間上の位置との相対位置に基づき、前記半直線への前記防御側選手の到達の容易さを妨害容易度として前記複数の防御側選手のそれぞれについて定量化する妨害容易度演算手段、
前記妨害容易度演算手段によって定量化した前記防御側選手ごとの前記妨害容易度を総和し、前記注目位置から攻撃側チームの攻撃側選手が防御側ゴールに向かってシュートをしたと仮定した場合の、当該シュートによる攻撃側チームの得点の可能性の評価値とする評価手段として機能させることを特徴とする得点可能性定量化プログラム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
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【図4】
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【図6】
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【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2010−124895(P2010−124895A)
【公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−299935(P2008−299935)
【出願日】平成20年11月25日(2008.11.25)
【出願人】(000004352)日本放送協会 (2,206)
【公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年11月25日(2008.11.25)
【出願人】(000004352)日本放送協会 (2,206)
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