説明

復元可能な乾燥植物性素材の製造方法

【課題】素材の大きさにかかわらず、外観、食感、風味、硬さ等を維持した状態で確実に復元できる乾燥植物性素材の提供。
【解決手段】生または加熱した植物性素材を用い、これに酵素を接触させて酵素分解した後、凍結乾燥することにより、素材の大きさにかかわらず、外観、食感、風味、硬さ等を維持した状態で確実に復元できる乾燥植物性素材。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、復元可能な乾燥植物性素材の製造方法に関する。さらに詳しくは、酵素を接触させて酵素分解した植物性素材を乾燥することによる、復元可能な乾燥植物性素材の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、復元可能な状態で食品素材を保存することを目的として、食品素材を凍結乾燥等により乾燥する技術が利用されている。
例えば、特許文献1では、即席スープや即席ラーメン等に使用することを目的として、小片にカットしたキャベツ、ハクサイ等の含水量を熱風乾燥等によって調整し、含水量の異なるものを組み合わせて凍結乾燥することで、復元膨張性が大きい乾燥食品を得ている。
また、特許文献2でも、エビをグルコース、グルコースオキシダーゼおよび過酸化水素分解酵素を含む水溶液に浸漬し、ついで重曹等を含む水溶液に浸漬した上でボイルし、凍結乾燥することで、熱湯により復元した際に、ボイルエビらしい食感を示す凍結乾燥エビを得ている。
さらに、特許文献3では、フードプロセッサで粉砕したタマネギを糖質分解酵素等で酵素処理することで旨みを増強させる方法が示されており、この方法によって得られたタマネギを凍結乾燥したものが調味料、香辛料、インスタント麺等に使用できることが開示されている。このように、凍結乾燥等の乾燥技術を活用して得られた食材は、主に即席で調理できる食品の製造において幅広く利用されている。
【0003】
また、この乾燥技術によって、咀嚼・嚥下困難者用に軟化した食品素材を復元可能な状態で保存することも試みられている。
例えば、特許文献4では、凍結または凍結後解凍した食品素材と分解酵素とを包装素材中にいれて真空包装する等により食品素材を柔軟にすること、この柔軟にした食品素材を調理し、急速凍結することや乾燥すること等が開示されている。そして、厚さ3mmに斜めに切断したゴボウを用いて柔軟にしたものを凍結乾燥し保存した後湯戻ししたものが、咀嚼に良好な硬さを有していることを確認している。
また、本願発明者らにおいても、トリムネ肉、豚モモ肉等の動物性食材を酵素処理し、軟質化したものが、凍結乾燥した後、水、湯等で復元しても、食感および風味を維持していることを確認している(特願2010−029444)。
【0004】
しかし、植物性素材において、小片にカットしたり、フードプロセッサで粉砕したり、厚さ3mm程度の大きさとしたもの等においては、乾燥した後復元できることが確認されているものの、煮物等に使用されるような、食べ応えのある大きさの植物性素材については、外観、食感、風味等を維持した状態で確実に復元できるものが得られておらず、素材の大きさにかかわらず、十分に復元可能な乾燥植物性素材の提供が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4126695号
【特許文献2】特許第4344294号
【特許文献3】特開2003−102417号公報
【特許文献4】特開2008−11794号広報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、素材の大きさにかかわらず、乾燥前の外観、食感、風味、硬さ等を維持した状態で確実に復元できる乾燥植物性素材の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは上記課題を解決すべく鋭意研究を行った結果、生または加熱した植物性素材を用い、これに酵素を接触させて酵素分解した後、乾燥することにより、素材の大きさにかかわらず、特に大きな素材であっても、乾燥前の外観、食感、風味、硬さ等を維持した状態で確実に復元できる乾燥植物性素材が製造できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
即ち、本発明は次の(1)〜(7)の復元可能な乾燥植物性素材の製造方法、および該製造方法によって得られる復元可能な乾燥植物性素材等に関する。
(1)次の1)および2)の工程を含む復元可能な乾燥植物性素材の製造方法。
1)セルラーゼ活性、ヘミセルラーゼ活性、ペクチナーゼ活性、アミラーゼ活性またはプロテアーゼ活性の少なくとも一つ以上の活性を有する酵素を含む酵素処理液を用いて、生または加熱した植物性素材に酵素を接触させた後、酵素分解する工程、
2)上記1)の植物性素材に含まれる酵素を失活させた後、該植物性素材を乾燥する工程。
(2)次の1)〜3)のいずれかによって、生または加熱した植物性素材に酵素を接触させる上記(1)に記載の乾燥植物性素材の製造方法。
1)植物性素材を酵素処理液に浸漬する
2)植物性素材に酵素処理液を塗布する
3)植物性素材に酵素処理液をまぶす
(3)5g以上の植物性素材を用いる上記(1)または(2)に記載の乾燥植物性素材の製造方法。
(4)凍結乾燥、熱風乾燥、フライ乾燥、マイクロウェーブ乾燥のいずれか一つ以上によって植物性素材を乾燥する上記(1)〜(3)のいずれかに記載の乾燥植物性素材の製造方法。
(5)上記(1)〜(4)のいずれかに記載の方法によって製造される復元可能な乾燥植物性素材。
(6)水、造影剤溶液または調味液によって復元可能な上記(5)に記載の乾燥植物性素材。
(7)上記(5)または(6)に記載の乾燥植物性素材を水、造影剤溶液または調味液によって復元した植物性素材。
【発明の効果】
【0009】
本発明により、素材の大きさにかかわらず、乾燥前の外観、食感、風味、硬さ等を維持した状態で確実に復元できる乾燥植物性素材を提供することが可能となった。本発明の復元可能な乾燥植物性素材は、復元された状態でも見栄えが良く、高栄養で、風味が高いため、様々な食品の製造に利用することができる。また、乾燥した状態で、保存し、幅広く流通させることもできる。
さらに本発明の乾燥植物性素材が乾燥前に酵素処理によって軟質化されたものであり、復元された後でも軟質化された状態を維持しているものであれば、復元したものをそのまま高齢者用軟化食品、術後患者用食品、嚥下食等または離乳食等の製造に用いる食品素材として有効に利用できる。このような本発明の乾燥植物性素材は、造影剤や調味料によっても硬さを維持した状態で復元できるため、そのまま食品等として摂取することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】植物性素材(ニンジン)の乾燥前、乾燥後および復元後の写真を示した図である(実施例1〜3)。
【図2】植物性素材(ニンジン)の乾燥前、乾燥後および復元後の写真を示した図である(実施例4〜6)。
【図3】植物性素材(ニンジン)の乾燥前、乾燥後および復元後の写真を示した図である(実施例7〜9)。
【図4】植物性素材(ニンジン)の乾燥前、乾燥後および復元後の写真を示した図である(比較例1〜3)。
【図5】植物性素材(ニンジン)の乾燥前、乾燥後および復元後の写真を示した図である(比較例4〜6)。
【図6】植物性素材(レンコン)の乾燥前、乾燥後および復元後の写真を示した図である(実施例10〜13、比較例7)。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の「復元可能な乾燥植物性素材」とは、食品として食することのできる植物性素材を乾燥したものであって、この乾燥したものを水、湯等の水分に接触させることにより湿潤状態にした場合に、乾燥前の植物性素材と同様の色合い、大きさ、形状等の外観、食感、風味、硬さ等を維持した状態で復元できる植物性素材のことをいう。
すなわち本発明では、乾燥植物性素材を水、湯等の水分に接触させることにより湿潤状態にした場合に、復元後の植物性素材が乾燥前の植物性素材とほぼ同等と認識できるものになり得ることを「復元可能」という。
なお、本発明の「復元可能な乾燥植物性素材」には、水、湯等の水分に造影剤を加えた造影剤溶液や、調味料を加えた調味液を用いて乾燥植物性素材を湿潤状態にした場合に、水分に含まれる造影剤や調味液によって、外観、食感、風味等が変化するものの、乾燥前の植物性素材と同様の硬さを維持した状態で復元できる植物性素材のことも指す。この場合、復元後の植物性素材が乾燥前の植物性素材とほぼ同等の硬さを維持しているものになり得ることを「復元可能」という。
【0012】
本発明で使用できる「植物性素材」としては、食品として食することのできる植物性素材であればいずれのものであっても良く、例えば、葉茎菜類のブロッコリー、ほうれん草、キャベツ、小松菜、菜の花、白菜、レタス、タマネギ、カリフラワー、インゲン、ヤングコーンまたは筍など、果菜類のピーマン、キュウリ、かぼちゃ、ナス、トマト、ズッキーニまたはパプリカなど、根菜類のニンジン、ダイコン、蓮根、ゴボウなど、豆類のエンドウ、大豆、枝豆、ソラマメなど、イモ類のサツマイモ、ジャガイモ、サトイモなど、果実類のリンゴ、桃、イチゴ、メロン、ブドウ、マンゴー、バナナ、みかんなど、キノコ類(菌類)のシイタケ、マイタケ、エリンギ、シメジ、マッシュルームまたは米、小麦、大麦、ライ麦、はと麦、きび、あわ、ひえ、トウモロコシ、ソバ、アマランサス等の穀類が挙げられる。
【0013】
これらの「植物性素材」は、凍結したものや、凍結した後解凍したもの以外の「植物性素材」であれば良く、生(生鮮)または加熱した植物性素材を用いることが特に好ましい。
ここで「生または加熱した植物性素材」には、「生または加熱した植物性素材」を乾燥したもの、乾燥した後水等で湿潤状態にしたもの、「生または加熱した植物性素材」を缶詰等にした植物性素材等も含まれる。
【0014】
本発明の「復元可能な乾燥植物性素材」は、本発明の「復元可能な乾燥植物性素材」が製造できる製造方法であれば、従来知られているいずれの製造方法によって製造したものも含まれるが、例えば、次の1)および2)の工程を含む製造方法によって製造されたものであることが好ましい。
1)セルラーゼ活性、ヘミセルラーゼ活性、ペクチナーゼ活性、アミラーゼ活性またはプロテアーゼ活性の少なくとも一つ以上の活性を有する酵素を含む酵素処理液を用いて、生または加熱した植物性素材に酵素を接触させた後、酵素分解する工程、
2)上記1)の植物性素材に含まれる酵素を失活させた後、該植物性素材を乾燥する工程。
【0015】
ここで使用する「生または加熱した植物性素材」は、「植物性素材」をそのまま、またはこの素材を用いて調理したい食品に応じてカットしたものを用いることができ、大きさは特に問わない。調理したい食品が、煮物、シチュー、カレー等であり、食べ応えのある大きさで植物性素材を利用したい場合には、5g以上、10g以上または15g以上等の大きさでカットしたものを用いることができる。本発明の「乾燥植物性素材」は大きさにかかわらず、外観、食感、風味、硬さ等を維持した状態で確実に復元することができる。
【0016】
「セルラーゼ活性、ヘミセルラーゼ活性、ペクチナーゼ活性、アミラーゼ活性またはプロテアーゼ活性の少なくとも一つ以上の活性を有する酵素」には、これらの活性を有する酵素であれば従来知られているいずれの酵素も用いることができ、独自に調製したものであっても、市販のものであっても良い。例えば、市販のものとしては、セルラーゼ活性およびヘミセルラーゼ活性を有するヘミセルラーゼアマノ90(天野エンザイム社製)や、ペクチナーゼ活性を有するマセロチーム2A(ヤクルト薬品工業社製)等が挙げられ、アミラーゼ活性を有するビオザイムA(天野エンザイム社製)や、プロテアーゼ活性を有するプロテアーゼP「アマノ」3G(天野エンザイム社製)等も挙げられる。
【0017】
また、「生または加熱した植物性素材に酵素を接触させ」るとは、植物性素材と酵素が接触できる状況に置くことをいい、例えば、1)植物性素材を酵素処理液に浸漬する、2)植物性素材に酵素処理液を塗布する、または3)植物性素材に酵素処理液をまぶす、等の方法が挙げられる。植物性素材に注射針等を刺し、酵素を注入(インジェクション)しても良い。植物性素材と酵素とを接触させることにより、植物性素材の表面全体、または内部に酵素が行き渡ることになる。
【0018】
「酵素処理液」は、セルラーゼ活性、ヘミセルラーゼ活性、ペクチナーゼ活性、アミラーゼ活性またはプロテアーゼ活性の少なくとも一つ以上の活性を有する酵素を水、クエン酸緩衝液、酢酸緩衝液、リン酸緩衝液等に溶解して調製することができる。酵素処理液に含まれる分解酵素は、本発明の「軟質化された植物性素材」が製造できる濃度であればよいが、0.3wt%以上含まれていることが好ましく、より好ましくは1wt%以上、さらには5wt%以上含まれていることが好ましい。
また、分解酵素以外にトレハロース、ショ糖、マルトース、ラクトース等の二糖類を含んでいても良い。酵素処理液に含まれる二糖類は、本発明の「復元可能な乾燥植物性素材」の製造において有用な濃度であればよいが、5〜30wt%、より好ましくは20〜25wt%含まれていることが好ましい。
このような酵素処理液は、2)植物性素材に酵素処理液を塗布する、または3)植物性素材に酵素処理液をまぶす、等の方法によって植物性素材に接触させる場合には、少量用いれば良く、例えば、植物性素材の重量に対して、50wt%以下の酵素処理液を、より好ましくは5〜25wt%の酵素処理液を用いることが好ましい。
【0019】
なお、「生または加熱した植物性素材に酵素を接触させ」た後、植物性素材の酵素分解を効率的に進めるために、酵素処理液に含まれる酵素を植物性素材内部に浸透させることを目的として減圧処理を行ってもよい。
ここで、「減圧処理」とは、20kPa以下、より好ましくは10kPa以下の減圧下に、酵素を接触させた生または加熱した植物性素材を置くことをいう。「減圧処理」は、従来知られているいずれの方法や機器を用いて行ってもよい。このような「減圧処理」のための機器として、例えば、ダイアフラム型ドライ真空ポンプ DAU−100H(アルバック機工社製)等が挙げられる。
【0020】
「減圧処理」は、1)植物性素材を酵素処理液に浸漬する、等の方法により、「生または加熱した植物性素材に酵素を接触させ」る場合には、植物性素材を酵素処理液に浸漬した状態で1回以上減圧下におけばよい。
また、2)植物性素材に酵素処理液を塗布する、または3)植物性素材に酵素処理液をまぶす、等の方法により、「生または加熱した植物性素材に酵素を接触させ」る場合には、「減圧処理」の合計減圧時間が12分未満となるように、例えば1分間の減圧処理を2〜4回、30秒間の減圧処理を2〜9回といったように、2回以上の複数回繰り返し施すことが好ましい。この合計減圧時間は12分未満であれば良く、例えば8分以下、また好ましくは4分以下であっても良い。
【0021】
このようにして表面全体、または内部に酵素が行き渡った植物性素材を、一定温度に一定時間おいて酵素反応させることで、「酵素分解」を行うことができる。
「酵素分解」における酵素反応の条件は、本発明の「復元可能な乾燥植物性素材の製造方法」において、使用する植物性素材の種類に応じて適した条件であれば良い。例えば、植物性素材がニンジンやレンコン等の場合は4℃の冷蔵庫内で12〜30時間程度反応させた後、45〜60℃に20〜40分間置く等の条件で酵素反応させれば良い。
【0022】
このようにして「酵素分解」した植物性素材において、植物性素材に含まれる酵素を失活させた後、該植物性素材を乾燥することで、本発明の「乾燥植物性素材」を製造することができる。
ここで、酵素の失活には、従来知られているいずれの方法を用いても良い。例えば、スチームコンベクション等の温度および湿度を調整できる機器を用いて、植物性素材を70〜120℃、湿度10〜100%で5〜120分加熱して行う方法等であっても良い。湿度を調整して加熱すると、植物性素材の表面が乾燥せず、余分な水分のみを除去することができるため特に好ましい。
【0023】
これらの工程によって「酵素分解」された植物性素材は、もとの「生または加熱した植物性素材」よりも軟質化されており、「特別用途食品の表示許可等について(食安発第0212001号、厚生労働省医薬食品局食品安全部長通知、平成21年2月12日)」に記載の「えん下困難者用食品の試験方法」に準拠して測定した場合に、圧縮応力が2.0×10N/m未満、特に好ましく1.5×10N/m未満、さらに好ましくは1.0×10N/m未満となるように軟質化されているものとなっているものも多いことから、そのまま咀嚼・嚥下困難者用の食品素材として使用することもできる。
【0024】
本発明の「復元可能な乾燥植物性素材」の製造において、このような植物性素材を「乾燥する」方法としては、従来知られているいずれの方法も用いることができ、例えば、凍結乾燥、熱風乾燥、フライ乾燥、マイクロウェーブ乾燥、油ちょう乾燥、冷風乾燥、または真空乾燥等が挙げられる。
このうち凍結乾燥は、乾燥した植物性素材を水、湯等の水分に接触させることにより湿潤状態にした場合に、復元後の植物性素材が乾燥前と同様の色合い、形状等の外観、食感、風味、硬さ等を維持しているものとして、高い精度で復元できることから、特に好ましい方法である。
【0025】
このような製造方法によって製造される本発明の「復元可能な乾燥植物性素材」は、保存性が高く、常温でのハンドリングや流通が容易である。
このようにして製造した「乾燥植物性素材」の「復元」は、乾燥植物性素材に水、湯等の水分に接触させ、湿潤状態にすることで行うことができる。
「復元」のために用いる水分としては、温度が15〜20℃程度の水または温度が95〜100℃程度の湯が挙げられる。
また、水または湯等の他に、本発明の「復元」のために用いる水分として、造影剤溶液や調味液等も挙げることができる。
「造影剤溶液」によって「復元」した植物性素材を患者等に摂取させることにより、口腔、咽頭、食道、消化管の機能評価のための造影検査(X線検査、VF(嚥下造影検査)、CT、3DCT、MRI、PET等)をそのまま行うことも可能となる。
また、「調味液」によって「復元」した植物性素材は、素材によって、調理をしなくてもそのまま食品として摂取することができる。
【0026】
本発明の「造影剤溶液」に使用する造影剤は、従来知られているいずれの造影剤であっても良いが、例えば、イオジキサノール、イオヘキソール、イオパミドール、イオメプロール、イオプロミド、イオベルソール、イオキシラン、イオトロラン、アミドトリゾ酸、イオトロクス酸、イオタラム酸メグルミン、イオタラム酸、イオキサグル酸、メグルミン、ヨード化ケシ油脂肪酸エチルエステルまたはイオパノ酸等を主成分として含むヨード造影剤、ガドペンテト酸メグルミン、ガドテリドール等を主成分として含むガドリウム化合物造影剤、および硫酸バリウム、クエン酸鉄アンモニウム等を主成分として含む酸化鉄造影剤等が挙げられる。また、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いても良い。このうち、例えば、ヨード造影剤として、ビジパーク(第一三共社製)、イオパミロン(バイエル薬品社製)等が挙げられる。
【0027】
本発明の「復元」のために用いる「造影剤溶液」は、これらの造影剤を、水等の溶媒に、濃度を50%wt以下、好ましくは30%wt以下、より好ましくは25%wt以下となるように溶解することで調製することができる。「復元」においては、この温度を常温〜100℃程度まで加熱して用いることが特に好ましい。
【0028】
また、本発明の「復元」のために用いる「調味液」は、水または湯に、味付け用の調味料や食品添加物等を加えて調製された味付け用の液のことをいい、この「調味液」により「復元」に伴い味付けされた植物性素材は、そのまま食品として摂取することができる。
「調味料」に使用する食品添加物は、従来知られているいずれのものであっても良く、例えば、pH調製剤、増粘剤等が挙げられる。本発明の「調味液」は、用途や好みに応じて、調味料や食品添加物をどのように配合したものであってもよい。
本発明の「復元」のために用いる「調味液」は、調味料や食品添加物等を、水や湯等に、濃度が50%wt以下、好ましくは30%wt以下、より好ましくは25%wt以下となるように溶解することで調製することができる。「復元」においては、温度を20〜100℃程度としたものを用いることができるが、調味液の風味を生かすよう40℃程度に加熱したものを用いることが特に好ましい。
【0029】
調味料は、いずれのものを用いても良く、例えば、砂糖、食塩、酢、ポン酢、味つきポン酢(ポン酢醤油)、醤油、魚醤、味噌、酒、みりん、ウスターソース、ケチャップ、オイスターソース、ケチャップマニス、サルサ、サンバルソース、チリソース、マスタード、油脂、ラー油、腐乳、香辛料、ハーブ、カレー粉、醤(ひしお)、タレ、めんつゆ、割下、甘味料、うま味調味料、食品エキス、かつおだし、こんぶだし、あごだし等のだし、または鶏ガラスープ等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0030】
また、pH調製剤も、いずれのものを用いても良く、例えば、塩酸、酒石酸、アジピン酸、クエン酸、グルコン酸、コハク酸、酢酸、酒石酸、炭酸、乳酸、ピロリン酸、フマル酸、リンゴ酸またはリン酸とそれら酸のナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩等の金属塩等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0031】
さらに、増粘剤(増粘安定剤)としては、食品多糖類を用いることができる。食品多糖類として、例えば、澱粉、カードラン、ペクチン、グアーガム、キサンタンガム、タマリンドシードガム、セルロース、グルコマンナン、カラギーナン、プロピレングリコール、カルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC)、アラビアガム、トラガントガム、サイリウムシードガム、タラガム、アルギン酸、ファーセルラン、ペクチン、ジェランガム、プルラン、キトサンまたはローカストビーンガム等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いてもよい。
また、本発明の「調味液」には、必要に応じて、フェルラ酸のような抗酸化剤、アルギニン、グルタミン、グリシンのようなアミノ酸やビタミン類およびミネラル類を含んだものであっても良い。
このような成分を含む本発明の「調味液」は、水、湯またはエタノール等のアルコール類を溶媒として用いたものであればよく、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて溶媒とするものであってもよい。
【0032】
乾燥植物性素材の復元方法は、本発明の乾燥植物性素材に水、湯等の水分に接触させ、湿潤状態にすることで、乾燥前の植物性素材と同等のものとできる方法であればどのような方法であってもよい。
例えば、本発明の乾燥植物性素材に水、湯、造影剤溶液または調味液等の水分を滴下、塗布、または噴霧したり、乾燥素材をこれらに浸漬したりしてもよい。また、必要に応じ、復元後の植物性素材が、そのまま喫食できる適当な温度となるように、スチームコンベクション等で加湿しながら加温して復元することもできる。
【0033】
具体的な復元方法として、例えば、次の1.〜4.のような方法を挙げることができる。
1.乾燥植物性素材に対し、3倍重量以上、好ましくは4倍重量の熱湯を添加した後、3分以上、好ましくは5分以上、さらに好ましくは10〜15分程度静置して乾燥した植物性素材を復元させる。
2.乾燥植物性素材に3倍重量以上、好ましくは4倍重量の水を添加後、15分、好ましくは15分より長く静置して乾燥した植物性素材を復元させる。
3.乾燥植物性素材に対し、3倍重量以上、好ましくは4倍重量の造影剤溶液を添加した後、3分以上、好ましくは5分、さらに好ましくは10〜15分程度静置して乾燥した植物性素材を復元させる。
4.乾燥植物性素材に対し、3倍重量以上、好ましくは4倍重量の調味液を添加した後、3分以上、好ましくは5分、さらに好ましくは10〜15分程度静置して乾燥した植物性素材を復元させる。
【0034】
本発明によって得られる「乾燥植物性素材」は、復元された状態において、乾燥前の植物性素材と同様の色合い、形状等の外観を有するものとなる。すなわち、乾燥前の植物性素材が、植物性素材本来の色または形状を保持している場合には、復元後の植物性素材も植物性素材本来の色または形状を保持していることになる。
ここで、「植物性素材本来の色、形状」を保持しているとは、植物性素材自身または酵素処理のためにあく抜き等した植物性素材と同様の色や形状を、酵素分解等の処理をした後、乾燥する前の植物性素材が保持しており、さらにこれを乾燥した後、復元した植物性素材も同様の色や形状を有していることをいう。
【0035】
また、本発明によって得られる「乾燥植物性素材」は復元された状態において、乾燥前の植物性素材と同様の食感を有するものとなる。すなわち、乾燥前の植物性素材が、植物性素材本来の食感を保持している場合には、復元後の植物性素材も植物性素材本来の食感を保持していることになる。
ここで、「植物性素材本来の食感」を保持しているとは、生またはあく抜き等した植物性素材、これらを加熱等した植物性素材を摂取した場合と同様の食感を、酵素分解等の処理をした後、乾燥する前の植物性素材が保持しており、さらにこれを乾燥した後、復元した植物性素材も同様の食感を有していることをいう。
【0036】
さらに、本発明によって得られる「乾燥植物性素材」は復元された状態において、乾燥前の植物性素材と同様の風味を有するものとなる。すなわち、乾燥前の植物性素材が、香り等において植物性素材本来の風味を保持している場合には、復元後の植物性素材も植物性素材本来の風味を保持していることになる。
ここで、「植物性素材本来の風味」を保持しているとは、生またはあく抜き等した植物性素材、これらを加熱等した植物性素材を摂取した場合と同様の風味を、酵素分解等の処理をした後、乾燥する前の植物性素材が保持しており、さらにこれを乾燥した後、復元した植物性素材も同様の風味を有していることをいう。
【0037】
本発明によって得られる「乾燥植物性素材」は、「生または加熱した植物性素材」を酵素分解したものを乾燥している、乾燥前の状態で、生の植物性素材や、加熱しただけの植物性素材よりも軟質化されている場合がある。
従って、このような本発明の「乾燥植物性素材」は、乾燥前の植物性素材が、「特別用途食品の表示許可等について(食安発第0212001号、厚生労働省医薬食品局食品安全部長通知、平成21年2月12日)」に記載の「えん下困難者用食品の試験方法」に準拠して測定した場合に圧縮応力が2.0×10N/m未満、特に好ましく1.5×10N/m未満、さらに好ましくは1.0×10N/m未満となるように軟質化されているものである場合には、復元された段階で、同様の硬さを有することになる。
このような本発明によって得られる「乾燥植物性素材」であれば、復元したものをそのまま咀嚼・嚥下困難者用の食品素材等として使用することが可能である。
【0038】
さらに、本発明の乾燥植物性素材は復元された状態において、乾燥前の植物性素材と同様の栄養素を有するものとなる。乾燥前の植物性素材が、例えば、調理のためにあく抜き等した後、98℃で20秒ボイルすることによりブランチング処理等した植物性素材と、いずれの栄養素においても同等量の栄養素を有している場合には、復元後の植物性素材もこれと同等量の栄養素を保持していることになる。
すなわち、乾燥前の植物性素材が、いずれの栄養素においても、「五訂増補日本食品標準成分表(科学技術・学術審議会・資源調査分科会報告書、文部科学省、平成17年1月24日)」に記載の植物性素材が有する栄養素と同等である場合には、復元後の植物性素材も、これと同等量の栄養素を保持していることになる。
【0039】
以下、実施例をあげて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【実施例】
【0040】
<素材・材料>
1.植物性素材
1)ニンジン
皮むき・へた取りした後、一片が5g、10gまたは15gとなるような大きさで乱切りし、水中に浸漬することによりあく抜きしたニンジンを用いた。
2)レンコン
皮むき後、厚さ約10mm、10gに半月切りし、水中に浸漬することによりあく抜きしたレンコンを用いた。
2.酵素処理液
1)酵素処理液A(トレハロース含有)
1wt%または5wt%のヘミセルラーゼ(ヘミセルラーゼアマノ90(天野エンザイム社製))と、二糖類として25wt%のトレハロース(林原商事社製)を0.020Mクエン酸緩衝液(pH5.0)に溶解することで調製した。
2)酵素処理液B
1wt%または5wt%のヘミセルラーゼ(ヘミセルラーゼアマノ90(天野エンザイム社製))を0.020Mクエン酸緩衝液(pH5.0)に溶解することで調製した。
【0041】
<植物性素材の軟質化>
1.ニンジン
次の1)〜4)の工程により、軟質化されたニンジンを製造した。軟質化に用いたニンジンの大きさ、酵素処理液に含まれる酵素濃度および酵素反応時間はそれぞれ表1に示した。
1)上記1.1)のいずれかのニンジンを飽和蒸気調理器にて庫内温度120℃・10分間で加熱処理した。
2)酵素処理液(実施例1、2A,3〜13は酵素処理液Aを、実施例2Bは酵素処理液Bを使用した)を、上記1)のニンジンの重量に対して20wt%となるように加え、減圧下(−0.095MPa)で2分間×6回で含浸させた。
3)上記2)のニンジンを4℃の冷蔵庫内に3時間または16時間収納した後、45℃の恒温室内に30分間収納することで、酵素反応を行った。
4)上記3)のニンジンをスチームコンベクションにて庫内温度70℃・40分間加熱することで酵素失活処理を行い、軟質化されたニンジンを製造した。
【0042】
2.レンコン
次の1)〜4)の工程により、軟質化されたレンコンを製造した。軟質化に用いた酵素処理液に含まれる酵素量および酵素反応時間はそれぞれ表2に示した。
1)上記1.2)のレンコンを飽和蒸気調理器にて庫内温度120℃・30分間で加熱処理した。
2)酵素処理液を、上記1)のレンコンの重量に対して20wt%となるように加え、減圧下(−0.095MPa)で2分間×6回で含浸させた。
3)上記2)のレンコンを4℃の冷蔵庫内に3時間または16時間収納した後、45℃の恒温室内に30分間収納することで、酵素反応を行った。
4)上記3)のレンコンをスチームコンベクションにて庫内温度70℃・40分間加熱することで酵素失活処理を行い、軟質化されたレンコンを製造した。
【0043】
<乾燥植物性素材の製造方法>
上記において軟質化された植物性素材をそれぞれブラストフリーザー QXF−006SF5(福島工業社製)を用いて急速凍結し、凍結乾燥機 FDU−1100型(東京理化器械社製)を用いて棚温20℃にて凍結乾燥することで、乾燥植物性素材を製造した。
【0044】
<乾燥植物性素材の復元>
次の復元条件1.〜4.のいずれかにより、上記において製造した乾燥植物性素材を復元した。実際に使用した復元条件は表1または2に示した。
復元条件
1.乾燥植物性素材に対し、4倍重量の熱湯を添加した後、5分静置して素材を復元させた。
2.乾燥植物性素材に対し、4倍重量の水を添加した後、15分静置して素材を復元させた。
3.乾燥植物性素材に対し、4倍重量の造影剤溶液を添加した後、5分静置して素材を復元させた。
造影剤溶液は、造影剤としてビジパークを用い、水に25wt%になるように溶解して調製し、約100℃に熱したものを用いた。
4.乾燥植物性素材に対し、4倍重量の調味液として添加した後、5分静置して素材を復元させた。
調味液は市販の味つきポン酢を水に25wt%になるように溶解して調製し、約40℃に加熱したものを用いた。
【0045】
[比較例]
植物性素材として上記1、1)のニンジン、または2)のレンコンを用い、次の比較例1〜7によって調製したものを比較とした。
比較例1.植物性素材、1)のニンジン(5g)を95℃、2分間ボイルすることによりブランチング処理した。これを、水切りした後、上記<乾燥植物性素材の製造方法>に従い、急速凍結、凍結乾燥して、乾燥素材を得た。これを復元条件1にて復元した。
比較例2.植物性素材、1)のニンジン(10g)を用い、比較例1)と同様に処理して乾燥素材を得た。これを復元条件1にて復元した。
比較例3.植物性素材、1)のニンジン(15g)を用い、比較例1)と同様に処理して乾燥素材を得た。これを復元条件1にて復元した。
比較例4.比較例2)と同様に調製した乾燥素材を復元条件2にて復元した。
比較例5.比較例2)と同様に調製した乾燥素材を復元条件3にて復元した。
比較例6.比較例2)と同様に調製した乾燥素材を復元条件4にて復元した。
比較例7.植物性素材、2)のレンコン(10g)を、比較例2のニンジンと同様に処理して乾燥素材を得た。これを復元条件1にて復元した。
【0046】
植物性素材として上記1、1)のニンジンを用いた実施例1〜9における軟質化条件および復元条件と、比較例1〜6における復元条件を表1に示し、上記1、2)のレンコンを用いた実施例10〜13における軟質化条件および復元条件と、比較例7における復元条件を表2に示した。
【0047】
【表1】

【0048】
【表2】

【0049】
<評価>
実施例1〜13、比較例1〜7において得られたニンジンおよびレンコンについて、次の評価項目について調べ、評価結果を表3〜8に示した。
【0050】
1.官能評価(n=10)
外観(色合い・形状)、食感、風味の3項目を5段階で評価した。
評価は「乾燥前の植物性素材に対して、乾燥、復元後の植物性素材が乾燥前の植物性素材のそのまま外観(色合い・形状)および食感(かたさ)どの程度維持しているか」を評価し、その段階を下に示した。
<5段階評価>
◎◎:乾燥前の植物性素材と同等で、そのまま食品として、または食品の製造材料として使用するのに適する状態、
◎:乾燥前の植物性素材とほぼ同等で、そのまま食品として、または食品の製造材料として使用するのに適する状態。
○:乾燥前の植物性素材と違いがあるが、そのまま食品として、または食品の製造材料として使用するのに適する状態。
△:乾燥前の植物性素材と違いがあり、そのまま食品として、または食品の製造材料として使用するのに不適な状態。
×:乾燥前の植物性素材と全く異なり、そのまま食品として、または食品の製造材料として使用するのに不適な状態。
各パネラーの評価を点数(◎◎=5点、◎=4点、○=3点、△=2点、×=1点)二換算し、その平均値が5.0〜4.5点のものは◎◎、4.5〜3.5点のものは◎、3.5〜2.5のものは○、2.5〜1.5のものは△、1.5〜1.0点のものは×、として評価した。
【0051】
2.復元性(硬さ)の評価
乾燥前の植物性素材と復元後の植物性素材の硬さをクリープメータ RE2−33005B((株)山電製)を使用し、測定速度10mm/s、φ20mmプランジャー、温度20±2℃で測定した。硬さの測定は「特別用途食品の表示許可等について(食安発第0212001号、厚生労働省医薬食品局食品安全部長通知、平成21年2月12日)」に記載の「えん下困難者用食品の試験方法」に準拠した。
各実施例、比較例において用いた乾燥前の植物性素材と復元後の植物性素材(n=3)をそれぞれ測定し、その平均値から、式1により差を求めることにより硬さの変化を評価した。
硬さの差が、1.0×10未満のものは復元性が高く(高)、1.0×10以上1.0×10未満のものは復元性が中程度(中)で、1.0×10以上のものは復元性が低いもの(低)として評価した。
【0052】
[式1]

【0053】
植物性素材としてニンジンを用いた実施例1〜9、比較例1〜6における官能評価、復元性の評価等の結果を表3〜7に示し、レンコンを用いた実施例10〜13、比較例7における官能評価、復元性の評価等の結果を表8に示した。
【0054】
【表3】

【0055】
表3(実施例1〜3)に示されるように、植物性素材の大きさが5g、10gまたは15gのいずれであっても、乾燥したニンジンを復元したものは、乾燥前の軟質化されたニンジンと同様の外観、食感、風味および硬さを維持しており、復元性が高かった。
また、トレハロースを含まない酵素処理液Bにて軟質化されたニンジンを用いた場合でも同様に復元性が高かった。これらの植物性素材の乾燥前、乾燥後および復元後の写真を図1に示した。
【0056】
【表4】

【0057】
表4(実施例4〜6)に示されるように、植物性素材の軟質化における酵素分解の反応条件によって大きな差はなく、乾燥したニンジンを復元したもののいずれも、乾燥前の軟質化されたニンジンと同様の外観、食感、風味および硬さを維持しており、復元性が高かった。これらの植物性素材の乾燥前、乾燥後および復元後の写真を図2に示した。
【0058】
【表5】

【0059】
表5(実施例7)および表3(実施例2A)に示されるように、湯または水で乾燥したニンジンを復元したものはいずれも、乾燥前の軟質化されたニンジンと同様の外観、食感、風味および硬さを維持しており、復元性が高かった。
また、表5(実施例8、9)に示されるように、造影剤溶液または調味液で乾燥したニンジンを復元したものは、それぞれ含まれる造影剤や調味料によって外観、風味、食感等が変化するものの、硬さは乾燥前の軟質化されたニンジンと同等であった。なお、調味液を用いて復元したもの(実施例9)は、そのまま食品として食することが可能である。これらの植物性素材の乾燥前、乾燥後および復元後の写真を図3に示した。
【0060】
【表6】

【0061】
【表7】

【0062】
表6,7(比較例1〜6)に示されるように、比較として製造した乾燥したニンジンを復元したものはいずれも、乾燥前の軟質化されたニンジンと同様の外観、食感、風味および硬さを維持しておらず、復元性も低かった。これらの植物性素材の乾燥前、乾燥後および復元後の写真を図4および5に示した。
【0063】
【表8】

【0064】
表8(実施例10〜13)に示されるように、植物性素材の軟質化における酵素分解の反応条件によって大きな差はなく、乾燥したレンコンを復元したものはいずれも、乾燥前の軟質化されたレンコンと同様の外観、食感、風味および硬さを維持しており、復元性が高かった。
一方、比較として製造した乾燥したレンコンを復元したもの(比較例7)は外観、風味は乾燥前の軟質化されたレンコンに近いものであったが、食感が維持されておらず、硬さも十分でなく、復元性が十分に高いものではなかった。これらの植物性素材の乾燥前、乾燥後および復元後の写真を図7に示した。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明により、素材の大きさにかかわらず外観、食感、風味、硬さ等を維持した状態で確実に復元できる乾燥植物性素材を提供することが可能となった。本発明の復元可能な乾燥植物性素材は、復元された状態でも見栄えが良く、高栄養で、風味が高いため、様々な食品の製造に利用することができる。さらに、本発明の乾燥植物性素材は、造影剤や調味料によっても硬さを維持した状態で復元できるため、そのまま食品等として摂取することができる。また、乾燥した状態では、長期間の保存が可能であり、幅広く流通させることもできる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の1)および2)の工程を含む復元可能な乾燥植物性素材の製造方法。
1)セルラーゼ活性、ヘミセルラーゼ活性、ペクチナーゼ活性、アミラーゼ活性またはプロテアーゼ活性の少なくとも一つ以上の活性を有する酵素を含む酵素処理液を用いて、生または加熱した植物性素材に酵素を接触させた後、酵素分解する工程。
2)上記1)の植物性素材に含まれる酵素を失活させた後、該植物性素材を乾燥する工程。
【請求項2】
次の1)〜3)のいずれかによって、生または加熱した植物性素材に酵素を接触させる請求項1に記載の乾燥植物性素材の製造方法。
1)植物性素材を酵素処理液に浸漬する
2)植物性素材に酵素処理液を塗布する
3)植物性素材に酵素処理液をまぶす
【請求項3】
5g以上の植物性素材を用いる請求項1または2に記載の乾燥植物性素材の製造方法。
【請求項4】
凍結乾燥、熱風乾燥、フライ乾燥、マイクロウェーブ乾燥のいずれか一つ以上によって植物性素材を乾燥する請求項1〜3のいずれかに記載の乾燥植物性素材の製造方法。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の方法によって製造される復元可能な乾燥植物性素材。
【請求項6】
水、造影剤溶液または調味液によって復元可能な請求項5に記載の乾燥植物性素材。
【請求項7】
請求項5または6に記載の乾燥植物性素材を水、造影剤溶液または調味液によって復元した植物性素材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−200196(P2012−200196A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−67132(P2011−67132)
【出願日】平成23年3月25日(2011.3.25)
【出願人】(502138359)イーエヌ大塚製薬株式会社 (56)
【Fターム(参考)】