説明

復調用遅延回路および光受信器

【課題】広波長帯域にわたり消光比が高い復調用遅延回路および光受信器を提供する。
【解決手段】入力側カプラ6,10と出力側カプラ7,11とを接続する第一のアーム導波路8,9と第一のアーム導波路よりも光路長が短い第二のアーム導波路12,13とを有し、入力光信号を遅延させて干渉させる光干渉計を備え、光伝搬方向が入力側カプラと出力側カプラとで略180度異なる。入力側および出力側カプラはそれぞれ第一および第二の導波路を有し、第一の導波路は第二の導波路よりも光路長が長く、第一の導波路と第二の導波路とは長手方向2箇所において第一の方向性結合器と第二の方向性結合器とが形成されており、略50%の結合率の波長無依存カプラとして構成され、入力側カプラの長手方向に対して入力側カプラの第一の導波路が配置されている側と、出力側カプラの長手方向に対して出力側カプラの第一の導波路が配置されている側とが同一である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一つのPLCチップ上に、位相変調された光信号を復調させる平面光波回路が形成された復調用遅延回路およびこれを用いた光受信器に関する。
【背景技術】
【0002】
伝送速度が40Gbpsの差動四値位相変調(Differential Quadrature Phase Shift Keying:DQPSK)、または差動位相変調(DPSK)通信方式において、D(Q)PSK光信号を復調する復調素子として、石英系平面光波回路(Planar Lightwave Circuit:PLC)を用いたマッハツェンダー型干渉計(Mach-Zehnder Interferometer:MZI)などの導波路型光干渉計で遅延回路を構成したPLC型復調用遅延回路が使用されている(特許文献1)。このPLC型復調用遅延回路は、所定の光路長差を有する2本の遅延線導波路の両端を、結合率が50%の光カプラ(以下、カプラという)でそれぞれ結合して構成されている。カプラとしては、2本の導波路を近接させて構成した2×2(2入力×2出力)の方向性結合器(Directional Coupler:DC)を用いるのが最も簡易な方法である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4615578号公報
【特許文献2】特許第2653883号公報
【特許文献3】国際公開WO2008/084707号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このようなPLC型復調用遅延回路においては、十分な受光感度を得るため、例えば20dB以上といった高い消光比が必要とされている。
【0005】
ところが、カプラとして通常の方向性結合器を用いた場合は、光通信で用いられるCバンド(約1525nm〜1565nm)からLバンド(約1565〜1620nm)の全域(CLバンド)にわたって20dB以上の消光比を確保することが困難であるという問題がある。なお、消光比が20dB以上であるとは、消光比の絶対値が20dB以上であることを意味する。
【0006】
すなわち、MZIの消光比は、カプラの結合率が50%からずれることにより急激に低下することが知られている。
一般にMZIのスルーポートおよびクロスポートの結合率(透過率)ηth、ηcrは、カプラの結合率をκ、2本の遅延線導波路間で生じる位相差をΔφとすると、次の式(1)、式(2)で表される。
【数1】

【数2】

【0007】
式(2)より、クロスポートが消光する条件であるΔφ=(2M+1)π(Mは整数)のときのクロスポートの結合率ηcrは、カプラの結合率に関わりなくゼロとなるため、高い消光比を得ることができる。
【0008】
一方、式(1)より、カプラの結合率が50%からずれると、スルーポートが消光する条件であるΔφ=2Mπのときのスルーポートの結合率ηthはゼロにならない。例えばカプラの結合率κが50%から5%だけ高くなった場合の結合率をηth´とすると、次の式(3)となる。
【数3】

さらにηth´を透過率Tthに変換すると、次の式(4)になる。
【数4】

したがって、消光比を20dB以上とするには、結合率κの変動量は±5%しか許容できないことが分かる。
【0009】
通常の方向性結合器の場合、CLバンドにわたって結合率κはたとえば±10%程度変動し、かつ光結合部の導波路間の間隔の作製誤差によっても結合率κは変動するため、20dB以上の消光比を確保することが困難である。
【0010】
また、このようなPLC型復調用遅延回路は、例えばMZIの2つの出力導波路のそれぞれにバランスドレシーバ等を接続して、受信フロントエンド部品として受信機内に組み込まれて用いられる。したがって、受信機の小型化のために、PLC型復調用遅延回路や受信フロントエンド部品の小型化が求められている。
【0011】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、広い波長帯域にわたって消光比が高い復調用遅延回路およびこれを用いた光受信器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る復調用遅延回路は、位相変調された光信号を復調させる平面光波回路が形成された復調用遅延回路であって、2入力2出力の入力側カプラと、2入力2出力の出力側カプラと、前記入力側カプラと前記出力側カプラとを接続する第一のアーム導波路と、前記第一のアーム導波路よりも光路長が短い第二のアーム導波路とを有し、入力された前記光信号の各ビットをそれらと隣接するビットと干渉するように略1ビット分遅延させて干渉させる光干渉計を備え、前記光干渉計は、前記入力側カプラにおける光の伝搬方向と前記出力側カプラにおける光の伝搬方向が略180度異なるように屈曲して形成されており、前記入力側カプラおよび前記出力側カプラは、それぞれ、第一の導波路と第二の導波路とを有し、前記第一の導波路は前記第二の導波路よりも光路長が長く、前記第一の導波路と前記第二の導波路とは、長手方向の2箇所において、当該導波路間の距離が近接して平行に配置されることによって第一の方向性結合器と第二の方向性結合器とが形成されており、使用する波長帯域において略50%の結合率を有する波長無依存カプラとして構成されており、前記入力側カプラの長手方向に対して当該入力側カプラの第一の導波路が配置されている側と、前記出力側カプラの長手方向に対して当該出力側カプラの第一の導波路が配置されている側とが同一である。
【0013】
また、本発明に係る復調用遅延回路は、上記発明において、第一および第二の前記光干渉計と、前記入力された光信号を2分岐して前記第一および第二の光干渉計に入力させる光分岐器とを備え、前記光信号はDQPSK変調された光信号であり、前記第一および第二の光干渉計は90度位相がずれた干渉特性を有する。
【0014】
また、本発明に係る復調用遅延回路は、上記発明において、前記各光干渉計において、前記入力側カプラと前記出力側カプラとは略同一形状である。
【0015】
また、本発明に係る復調用遅延回路は、上記発明において、前記各光干渉計において、前記入力側カプラと前記出力側カプラとは、前記平面光波回路が形成された面内で平行移動すると重なるように配置されている。
【0016】
また、本発明に係る復調用遅延回路は、上記発明において、前記各光干渉計において、前記入力側カプラと前記出力側カプラとは、前記平面光波回路が形成された面内で当該入力側カプラと当該出力側カプラとの中間に長手方向に沿って引いた線に対して線対称移動してさらに180度回転すると重なるように配置されている。
【0017】
また、本発明に係る復調用遅延回路は、上記発明において、前記第一の導波路および前記第二の導波路の少なくとも一方は、前記第一の方向性結合器および前記第二の方向性結合器の少なくとも一方の光結合が発生する部分において、当該導波路における他の部分よりも幅が細い。
【0018】
また、本発明に係る復調用遅延回路は、上記発明において、前記第一の導波路および前記第二の導波路は、前記第一の方向性結合器および前記第二の方向性結合器の光結合が発生する部分において、当該導波路における他の部分よりも幅が細い。
【0019】
また、本発明に係る復調用遅延回路は、上記発明において、前記第一および第二の光干渉計において、前記各光干渉計の入力側カプラの長手方向に対して当該入力側カプラの第一の導波路が配置されている側と、前記各光干渉計の出力側カプラの長手方向に対して当該各出力側カプラの第一の導波路が配置されている側とが、すべて同一である。
【0020】
また、本発明に係る復調用遅延回路は、上記発明において、前記各光干渉計に入力される光信号の一部を分岐するタップカプラを備える。
【0021】
また、本発明に係る復調用遅延回路は、上記発明において、前記タップカプラは、第三の導波路と第四の導波路とを有し、前記第三の導波路は前記第四の導波路よりも光路長が長く、前記第三の導波路と前記第四の導波路とは、長手方向の2箇所において、当該導波路間の距離が近接して平行に配置されることによって第三の方向性結合器と第四の方向性結合器とが形成されており、使用する波長帯域において20%以下の結合率を有する波長無依存カプラとして構成されている。
【0022】
また、本発明に係る復調用遅延回路は、上記発明において、前記第三の導波路および前記第四の導波路の少なくとも一方は、前記第三の方向性結合器および前記第四の方向性結合器の少なくとも一方の光結合が発生する部分において、当該導波路における他の部分よりも幅が細い。
【0023】
また、本発明に係る復調用遅延回路は、上記発明において、前記第三の導波路および前記第四の導波路は、前記第三の方向性結合器および前記第四の方向性結合器の光結合が発生する部分において、当該導波路における他の部分よりも幅が細い。
【0024】
また、本発明に係る復調用遅延回路は、上記発明において、前記第一および第二の光干渉計の前記各アーム導波路の中央部に、前記全てのアーム導波路と交差するように挿入された波長板を備え、前記全てのアーム導波路は前記波長板が挿入された部分で互いに近接している。
【0025】
また、本発明に係る復調用遅延回路は、上記発明において、前記平面光波回路内において、前記第一および第二の光干渉計の各アーム導波路が同じ領域で重なるように配置され、前記第一の光干渉計の第二のアーム導波路と前記第二の光干渉計の第一のアーム導波路とが前記波長板の両側2箇所で交差し、前記波長板が挿入された部分において、前記第一の光干渉計の第一および第二のアーム導波路間に前記第二の光干渉計の第一のアーム導波路が配置されている。
【0026】
また、本発明に係る復調用遅延回路は、上記発明において、前記平面光波回路内において、前記第一の光干渉計は前記第二の光干渉計の内側の領域に配置され、前記波長板が挿入された部分において、前記第一の光干渉計の第一のアーム導波路、前記第二の光干渉計の第一のアーム導波路、前記第一の光干渉計の第二のアーム導波路および前記第二の光干渉計の第二のアーム導波路の順に並んで配置されている。
【0027】
また、本発明に係る復調用遅延回路は、上記発明において、前記光分岐器の出力側と前記第一および第二の光干渉計の入力側カプラとにそれぞれ接続された2つの導波路を備え、前記2つの導波路はそれぞれ曲げ導波路を含むUターン形状である。
【0028】
また、本発明に係る復調用遅延回路は、上記発明において、前記波長板は、前記第一および第二の光干渉計の各アーム導波路の屈折率主軸に対してその主軸が45度傾いた第一の1/2波長板である。
【0029】
また、本発明に係る復調用遅延回路は、上記発明において、前記第一および第二の光干渉計の第一の1/2波長板よりも出力側に挿入された、前記各アーム導波路の屈折率主軸に対してその主軸が平行もしくは水平な第二の1/2波長板を備える。
【0030】
また、本発明に係る光受信器回路は、上記発明の復調用遅延回路と、前記復調用遅延回路から出力された光信号を受光して電気信号に変換する受光素子と、を備える。
【発明の効果】
【0031】
本発明によれば、広い波長帯域にわたって消光比が高い復調用遅延回路および光受信器を実現できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】図1は、実施の形態1に係る復調用遅延回路の概略構成を示す平面図である。
【図2】図2は、DQPSK方式を用いた光伝送システムの概略構成を示すブロック図である。
【図3】図3は、WINCである入力側カプラの構成を示す模式図である。
【図4】図4は、WINCである入力側カプラの結合率κの波長依存性の計算値を示す図である。
【図5】図5は、通常の50%方向性結合器の結合率κの波長依存性の計算値を示す図である。
【図6A】図6Aは、第一のMZIについて、入力側カプラと出力側カプラとの配置関係の例を示す図である。
【図6B】図6Bは、第一のMZIについて、入力側カプラと出力側カプラとの配置関係の例を示す図である。
【図6C】図6Cは、第一のMZIについて、入力側カプラと出力側カプラとの配置関係の例を示す図である。
【図6D】図6Dは、第一のMZIについて、入力側カプラと出力側カプラとの配置関係の例を示す図である。
【図7】図7は、配置A〜Dを想定した場合の第一のMZIの透過スペクトルの計算値をそれぞれ示す図である。
【図8】図8は、作製した出力側カプラの配置を示す図である。
【図9】図9は、作製した各配置の出力側カプラの結合率κの波長依存性の測定値を示す図である。
【図10】図10は、図1のX−X線断面図である。
【図11】図11は、図1のY−Y線断面図である。
【図12】図12は、遅延復調デバイスの透過特性を示す図である。
【図13】図13は、実施例の遅延復調デバイスの出力ポート1、2の1525nm付近、1570nm付近、1610nm付近での透過スペクトルを示す図である。
【図14】図14は、比較例の遅延復調デバイスの出力ポート1、2の1525nm付近、1570nm付近、1610nm付近での透過スペクトルを示す図である。
【図15】図15は、1520nm〜1620nmの波長帯における、実施例の遅延復調デバイスの各MZIのPDFの測定結果を示す図である。
【図16A】図16Aは、図6Aに示す配置AのMZIの出力ポート1、2の1520nm付近、1570nm付近、1610nm付近での透過スペクトルを示す図である。
【図16B】図16Bは、図6Bに示す配置BのMZIの出力ポート1、2の1520nm付近、1570nm付近、1610nm付近での透過スペクトルを示す図である。
【図16C】図16Cは、図6Cに示す配置CのMZIの出力ポート1、2の1520nm付近、1570nm付近、1610nm付近での透過スペクトルを示す図である。
【図16D】図16Dは、図6Dに示す配置DのMZIの出力ポート1、2の1520nm付近、1570nm付近、1610nm付近での透過スペクトルを示す図である。
【図17】図17は、交差角と交差損失との関係を示す図である。
【図18】図18は、導波路間隔とPDFとの関係を示す図である。
【図19】図19は、実施の形態2に係る復調用遅延回路の概略構成を示す平面図である。
【図20】図20は、実施の形態3に係る復調用遅延回路の概略構成を示す平面図である。
【図21】図21は、従来の遅延復調デバイスの概略構成を示す平面図である。
【図22】図22は、図22は、図21に示す従来の遅延復調デバイスにおいて、第一および第二のMZIのPDFに差が生じたときのPDFの波長依存性を示す図である。
【図23】図23は、ΔLを変化させたときのWINCの結合率の変化を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下に、図面を参照して本発明に係る復調用遅延回路の実施の形態を詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。また、各図面において、同一または対応する要素には適宜同一の符号を付している。さらに、図面は模式的なものであり、各層の厚みと幅との関係、各層の比率などは、現実のものとは異なる場合があることに留意する必要がある。図面の相互間においても、互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれている場合がある。
【0034】
(実施の形態1)
図1は、実施の形態1に係る復調用遅延回路の概略構成を示す平面図である。図1に示す復調用遅延回路101は、一つのPLCチップ1B上に、DQPSK変調された光信号(DQPSK信号)を復調させるための、石英系ガラスなどからなる平面光波回路1Aが形成された平面光波回路型(PLC型)の遅延復調デバイスである。このPLC型復調用遅延回路(以下、遅延復調デバイスという。)101は、例えば、伝送速度が40GbpsのDQPSK方式を用いた光伝送システムに使用される40GbpsDQPSK用遅延復調デバイスである。
【0035】
なお、本明細書において、DQPSK変調方式の光伝送システムに用いる「遅延復調デバイス101」は、DQPSK信号を2分岐し、分岐したDQPSK信号を、それぞれ2つのMZIで1ビット遅延させ、干渉させることで、強度変調信号の光(光強度信号)に変換し、変換された4つの光強度信号(IチャルとQチャネル)を2組のバランスドレシーバの4つの受光素子へ出力するデバイスを意味する。つまり、本明細書で言う「遅延復調デバイス101」とは、バランスドレシーバを含まない、DQPSK変調方式の光伝送システムに用いる一つのPLCチップからなるものであり、DQPSK信号を復調させる光復調器である。
【0036】
図2は、DQPSK方式を用いた光伝送システムの概略構成を示すブロック図である。図2に示す光伝送システムでは、光送信器40から光ファイバ伝送路54に、2ビットのデータから構成される各シンボルの値(0,1,2,3)の4つの情報を、隣接する2つのシンボルの値の変化に応じて搬送波の位相(θ,θ+π/2,θ+π,θ+3π/2)の位相情報に変調されたDQPSK信号が伝送される。つまりこのDQPSK信号には、1シンボル(タイムスロット)中の光の位相が、4つの値(1/4π,3π/4,5π/4,7π/4)のいずれかとなるように、2ビット分の意味を持たせている。したがって、光受信器50では、隣接する2つのシンボル間の位相差(位相差0、π/2、π、3π/2のいずれか)を検出することにより、送信データを復調することができる。
【0037】
光ファイバ伝送路54から光受信器50に送られてきたDQPSK信号は、図1に示す遅延復調デバイス101によって4つの光強度信号に変換され、さらには、その光強度信号がバランスドレシーバ51,52の4つの受光素子へ出力され、電気信号に変換される。受信電気回路53では、復号化処理などがなされる。
【0038】
図1に戻って、遅延復調デバイス101の構成を説明する。遅延復調デバイス101は、DQPSK信号が入力される光入力導波路2と、入力されるDQPSK信号の光パワーをモニタPDにてモニタするため、光入力導波路2を伝搬する光信号の5%をモニタ出力導波路81へと分岐するタップカプラ80と、タップカプラ80にて分岐されなかった残りの光信号を略等分岐する光分岐器としてのY分岐導波路3と、Y分岐導波路3により分岐されたDQPSK信号をそれぞれ1ビット遅延させる第一のマッハツェンダー干渉計(MZI)4および第二のマッハツェンダー干渉計(MZI)5と、を備えている。なお、モニタ出力導波路81にはモニタPDが接続されている。なお、本実施の形態1ではタップカプラ80の分岐比は5%であるが、20%以下が好ましく、5%〜10%がさらに好ましい。
【0039】
遅延復調デバイス101は、第一の1/2波長板47、第二の1/2波長板70をさらに備え、導波路の交差点62、64を有するが、これらについては後に説明する。
【0040】
第一のMZI4は、Y分岐導波路3の一方の出力側に接続された導波路14に接続された入力側カプラ6と、2つの光出力導波路21、22に2つの出力端がそれぞれ接続された出力側カプラ7と、両カプラ6、7間に接続された長さの異なる遅延導波路である2つのアーム導波路(第一のアーム導波路8および第二のアーム導波路9)とを有する。同様に、第二のMZI5は、Y分岐導波路3の他方の出力側に接続された導波路15に接続された入力側カプラ10と、2つの光出力導波路23、24に2つの出力端がそれぞれ接続された出力側カプラ11と、両カプラ10、11間に接続された遅延導波路である長さの異なる2つのアーム導波路(第一のアーム導波路12および第二のアーム導波路13)とを有する。
【0041】
入力側カプラ6、10および出力側カプラ7、11は、それぞれ2入力×2出力型の50%カプラである。そして、第一のMZI4の入力側カプラ6の2つの入力端の一方が導波路14に接続されている。第二のMZI5の入力側カプラ10の2つの入力端の一方が、導波路15に接続されている。
【0042】
また、第一のMZI4は、入力側カプラ6における光の伝搬方向と出力側カプラ7における光の伝搬方向が略180度異なるように第一および第二のアーム導波路8、9が屈曲して形成されている。同様に、第二のMZI5は、入力側カプラ10における光の伝搬方向と出力側カプラ11における光の伝搬方向が略180度異なるように第一および第二のアーム導波路12、13が屈曲して形成されている。具体的には、図1において入力側カプラ6、10における光の伝搬方向は紙面略上方向であり、出力側カプラ7、11における光の伝搬方向は紙面略下方向である。
【0043】
なお、本実施の形態1では、導波路14は入力側カプラ6の紙面左側の入力端に接続され、導波路15も入力側カプラ10の紙面左側の入力端に接続されている。しかし、導波路14が入力側カプラ6の紙面右側の入力端に接続され、導波路15も入力側カプラ10の紙面右側の入力端に接続されていても良い。このように、導波路14と導波路15とが、入力側カプラ6、10の2つの入力端の同じ側にそれぞれ接続されていることが好ましい。その理由は、第一のMZI4の2つの出力側(出力ポートPout1、Pout2)と第二のMZI5の2つの出力側(出力ポートPout3、Pout4)とに、同じ受光素子ぺアからなる同じバランスドレシーバ51、52が使用可能になるからである。
【0044】
また、上述したように、第一のMZI4の出力側カプラ7の2つの出力端(スルーポートとクロスポート)は、光出力導波路21、22にそれぞれ接続されている。同様に、第二のMZI5の出力側カプラ11の2つの出力端(スルーポートとクロスポート)は、光出力導波路23、24にそれぞれ接続されている。
【0045】
また、第一のMZI4において、長さが長い方の第一のアーム導波路8を伝搬するDQPSK信号の位相を、長さが短い方の第二のアーム導波路9を伝搬するDQPSK信号の位相に対して、シンボルレートの1ビット(1ビットのタイムスロット:1タイムスロット)に相当する遅延量だけ遅延させる光路長差を持たせてある。例えば、シンボルレートが40Gbpsの場合、Iチャネル、Qチャネルそれぞれのシンボルレートは半分の20Gbpsでよいので、遅延量は50ps(ピコ秒)である。同様に、第二のMZI5において、長さが長い方の第一のアーム導波路12を伝搬するDQPSK信号の位相を、長さが短い側の第二のアーム導波路13を伝搬するDQPSK信号の位相に対して、シンボルレートの1ビットに相当する遅延量(例えば、シンボルレートが40Gbpsの場合、50psの遅延量)だけ遅延させる光路長差を持たせてある。なお、遅延量は、正確に1ビットに相当する量に限られない。たとえば、システム構成によっては、略1ビットであるが1ビットから少しずらした遅延量として、各ビットが隣接するビットと干渉するように設定する場合もある。
【0046】
また、2つのMZI4、5には、90度だけ位相がずれた干渉特性を持たせている。そのため、第一のMZI4の第一および第二のアーム導波路8、9の光路長差は、上記1ビットに相当する遅延量に、光信号の位相で1/4πに相当する長さだけ長く設定されている。一方、第二のMZI5の第一および第二のアーム導波路12、13の光路長差は、上記1ビットに相当する遅延量に、光信号の位相で1/4πに相当する長さだけ短く設定されている。
これにより、第一のMZI4で干渉する隣接するタイムスロットの光の位相と、第二のMZI5で干渉する隣接するタイムスロットの光の位相とが90度だけずれる。
【0047】
ここで、本実施の形態1に係る遅延復調デバイス101の一つ目の特徴は、次の構成にある。
すなわち、入力側カプラ6、10および出力側カプラ7、11は、それぞれ2入力×2出力型の50%波長無依存カプラ(Wavelength INsensitive Coupler:WINC、たとえば特許文献2参照)で構成されており、かつ、第一のMZI4の入力側カプラ6と出力側カプラ7との配置が所定の関係にあり、第二のMZI5の入力側カプラ10と出力側カプラ11との配置が所定の関係にある。
【0048】
以下、入力側カプラ6を例としてWINCの構成について説明するが、入力側カプラ10および出力側カプラ7、11も入力側カプラ6と同様の構成とすることができる。
【0049】
図3は、入力側カプラ6の構成を示す模式図である。図3に示すように、入力側カプラ6は、第一の導波路6D1と第二の導波路6D2とで構成されている。第一の導波路6D1は光入出力部6a、6cを有している。第二の導波路6D2は光入出力部6b、6dを有している。
【0050】
第一の導波路6D1と第二の導波路6D2とは、長手方向の2箇所において、2本の導波路間でエバネッセント結合が起こる距離まで近接して平行に配置されている。これによって第一の方向性結合器6DC1、第二の方向性結合器6DC2が形成され、MZIが構成されている。第一の方向性結合器6DC1は結合率が約50%に設定されている。第二の方向性結合器6DC2は結合率が約100%に設定されている。
【0051】
また、第一の方向性結合器6DC1と第二の方向性結合器6DC2との間の領域(アーム部またはΔL部)において、第一の導波路6D1は第二の導波路6D2よりも導波路長ΔLだけ長くなっている。
【0052】
入力側カプラ6では、第一の方向性結合器6DC1が有する結合率の波長依存性を、第二の方向性結合器6DC2が有する結合率の波長依存性と、第一の導波路6D1と第二の導波路6D2との導波路長差ΔLの設定による光位相制御とで打ち消している。このように、入力側カプラ6は、WINCの構成によって、通常の方向性結合器と比較して結合率の波長依存性が低減されている。
【0053】
さらに、第一の導波路6D1および第二の導波路6D2は、第一の方向性結合器6DC1および第二の方向性結合器6DC2の光結合が発生する部分において導波路幅が他の部分(たとえばΔL部)よりも細くなっている。第一の導波路6D1および第二の導波路6D2は、第一の方向性結合器6DC1および第二の方向性結合器6DC2に隣接する曲がり導波路部分においては、導波路幅が光入出力部6a、6b、6c、6dに向かって徐々に広くなり、光入出力部6a、6b、6c、6dと滑らかに接続している。
【0054】
このように、第一の方向性結合器6DC1および第二の方向性結合器6DC2の光結合が発生する部分において導波路幅を細くすることで、導波路間の結合が強くなるので、所望の結合率を得るための結合部長さを短くすることができる。これによって入力側カプラ6は長さが短くなり、小型化が可能になる。
【0055】
入力側カプラ6の回路パラメータは、たとえば以下の表1に示す通りである。なお、DC結合部とは方向性結合器の光結合が発生する部分のことである。また、導波路の高さは6μmである。また、導波路におけるクラッドに対する導波路(コア)の比屈折率差Δは1.2%である。
【0056】
【表1】

【0057】
ここで、回路パラメータを表1のように設定した入力側カプラ6と、導波路のサイズが6μm×6μmであり、比屈折率差Δが1.2%の通常の50%方向性結合器との、結合率κの波長依存性について説明する。
【0058】
図4は、入力側カプラ6の結合率κの波長依存性の計算値を示す図である。図4において、範囲Rは結合率が50%±5%の範囲である。線L11は、入力側カプラ6の回路パラメータが設計どおりの値である場合の特性を示している。線L12は、DC結合部における導波路間の距離が、設計値から狭まる方向に0.05μmだけずれた場合の特性を示している。線L13は、DC結合部における導波路間の距離が、設計値から広がる方向に0.05μmだけずれた場合の特性を示している。
【0059】
図5は、通常の50%方向性結合器の結合率κの波長依存性の計算値を示す図である。図5において、範囲Rは結合率が50%±5%の範囲である。線L21は、50%方向性結合器の回路パラメータが設計どおりの値である場合の特性を示している。線L22は、DC結合部における導波路間の距離が、設計値から狭まる方向に0.05μmだけずれた場合の特性を示している。線L23は、DC結合部における導波路間の距離が、設計値から広がる方向に0.05μmだけずれた場合の特性を示している。
【0060】
図4、5に示すように、通常の50%方向性結合器については、結合率は、Cバンド内で±約4%、Lバンドまで含めると±約10%もの波長特性を有する上、DC結合部の導波路間距離の±0.05μmという小さな作製誤差に対しても±約4%程度の変動が生じている。これに対して、WINCである入力側カプラ6については、CLバンド(約1520nm〜約1620nm)の全域において、作製誤差があったとしても略50%の結合率となっており、通常の50%方向性結合器と比較して大幅に波長特性が平坦化されている。すなわち、結合率の波長依存性がきわめて低減されている。
【0061】
上記の結果からは、入力側カプラ6、10および出力側カプラ7、11をWINCとすることによって、遅延復調デバイス101は広い波長帯域にわたって消光比が高くなると考えられる。
【0062】
ところが、本発明者らが実際に図1の構成の遅延復調デバイスを製造し、その特性を精査したところ、MZIを構成する入力側カプラと出力側カプラとの配置関係によって、遅延復調デバイスの消光比の波長依存性に相違があることを発見した。以下、具体的に説明する。
【0063】
図6A〜図6Dは、第一のMZI4について、入力側カプラ6と出力側カプラ7との配置関係の例を示す図である。なお、図6A〜図6Dでは、第一のアーム導波路8および第二のアーム導波路9の形状は説明のために簡略に示している。また、図6A〜図6Dでは、説明のため第一のMZI4を示しているが、第二のMZI5の入力側カプラ10と出力側カプラ11との配置関係も同様に説明できる。
【0064】
図6Aの配置(以下、配置A)は、図1に示す第一のMZI4と同様に、入力側カプラ6について、光信号の入力側に第一の方向性結合器6DC1が配置され、第一および第二のアーム導波路8、9側に第二の方向性結合器6DC2が配置されている。また、導波路長が長い第一の導波路6D1が、入力側カプラ6の長手方向に対して、紙面左側に配置されている。また、出力側カプラ7について、光信号の出力側に光入出力部7a、7bと、結合率が50%の第一の方向性結合器7DC1とが配置されている。また、第一および第二のアーム導波路8、9側に、光入出力部7c、7dと、結合率が100%の第二の方向性結合器7DC2とが配置されている。また、第二の導波路7D2よりも導波路長が長い第一の導波路7D1が、出力側カプラ7の長手方向に対して、紙面左側に配置されている。すなわち、この配置Aでは、入力側カプラ6の長手方向に対して第一の導波路6D1が配置されている側と、出力側カプラ7の長手方向に対して第一の導波路7D1が配置されている側とが同一である。入力側カプラ6と出力側カプラ7とは紙面内(平面光波回路1Aが形成された面内)で平行移動すると重なるように配置されている。
【0065】
図6Bの配置(以下、配置B)は、入力側カプラ6については配置Aと同じであり、導波路長が長い第一の導波路6D1が、入力側カプラ6の長手方向に対して、紙面左側に配置されている。一方、出力側カプラ7について、光信号の出力側に第一の方向性結合器7DC1が配置され、第一および第二のアーム導波路8、9側に第二の方向性結合器7DC2が配置されている。また、第二の導波路7D2よりも導波路長が長い第一の導波路7D1が、出力側カプラ7の長手方向に対して、紙面右側に配置されている。すなわち、この配置Bでは、入力側カプラ6の長手方向に対して第一の導波路6D1が配置されている側と、出力側カプラ7の長手方向に対して第一の導波路7D1が配置されている側とが反対である。入力側カプラ6と出力側カプラ7とは、紙面内で入力側カプラ6と出力側カプラ7との中間に長手方向に沿って引いた線に対して線対称移動すると重なるように配置されている。
【0066】
図6Cの配置(以下、配置C)は、入力側カプラ6については配置Aと同じであり、導波路長が長い第一の導波路6D1が、入力側カプラ6の長手方向に対して、紙面左側に配置されている。一方、出力側カプラ7について、光信号の出力側に第二の方向性結合器7DC2が配置され、第一および第二のアーム導波路8、9側に第一の方向性結合器7DC1が配置されている。また、第二の導波路7D2よりも導波路長が長い第一の導波路7D1が、出力側カプラ7の長手方向に対して、紙面左側に配置されている。すなわち、この配置Cでは、入力側カプラ6の長手方向に対して第一の導波路6D1が配置されている側と、出力側カプラ7の長手方向に対して第一の導波路7D1が配置されている側とが同一である。入力側カプラ6と出力側カプラ7とは、紙面内で入力側カプラ6と出力側カプラ7との中間に長手方向に沿って引いた線に対して線対称移動してさらに180度回転すると重なるように配置されている。
【0067】
図6Dの配置(以下、配置D)は、入力側カプラ6については配置Aと同じであり、導波路長が長い第一の導波路6D1が、入力側カプラ6の長手方向に対して、紙面左側に配置されている。一方、出力側カプラ7について、出力側に第二の方向性結合器7DC2が配置され、第一および第二のアーム導波路8、9側に第一の方向性結合器7DC1が配置されている。また、第二の導波路7D2よりも導波路長が長い第一の導波路7D1が、出力側カプラ7の長手方向に対して、紙面右側に配置されている。すなわち、この配置Dでは、入力側カプラ6の長手方向に対して第一の導波路6D1が配置されている側と、出力側カプラ7の長手方向に対して第一の導波路7D1が配置されている側とが反対である。入力側カプラ6と出力側カプラ7とは紙面内で180度回転して平行移動すると重なるように配置されている。
【0068】
図7は、配置A〜Dを想定した場合の第一のMZI4の透過スペクトルの計算値をそれぞれ示す図である。図7に示すように、配置を変更すると、透過ピークや自由スペクトラルレンジ(FSR)はわずかに変化する。しかしその変化は、これらを遅延復調デバイスに使用する場合には、各配置とも実質的に同じ特性を有するといえる程度の変化である。
【0069】
しかしながら、実際の製造においては、50%WINCである入力側および出力側カプラの特性には製造バラツキが生じる。特に1μm以下程度という微小な導波路長差ΔL(あるいはそれに対応する2π以下程度の微小な位相差)を正確に形成することは難しいので、PLCチップの製造に用いるウェハ面内での入力側および出力側カプラの位置や配置の向きによって、その特性が変動する。
【0070】
そこで、本発明者らは、図6A〜図6Dに示す出力側カプラ7のように配置を変えたカプラを並べて作製した。図8は、作製した出力側カプラ7の配置を示す図である。なお、出力側カプラ7の回路パラメータはいずれも表1の値とした。なお、作製の際には、図8の紙面上側がシリコンウェハのオリエンテーションフラット(OF)方向となるように、各出力側カプラ7を配置した。そして、作製した各出力側カプラ7に図8の「IN」の方向から光を入力し、「OUT1」、「OUT2」からの光の出力を測定して、結合率κを求めた。
【0071】
図9は、作製した各配置の出力側カプラの結合率κの波長依存性の測定値を示す図である。なお、線LA、LB、LC、LDは、それぞれ配置A、B、C、Dの出力側カプラ7の特性を示している。図9に示すように、配置Aと配置Cでは、1520nm〜1620nmの波長帯域にわたって結合率κが、範囲Rが示す50%±2%以内という平坦な波長特性が得られている。しかし、配置Bと配置Dでは波長特性に傾きが生じ、1520nm〜1620nmの波長帯域で結合率κが50%±5%を超え、MZIに適応した場合に消光比が20dB未満に劣化すると考えられる帯域が生じた。
【0072】
配置Aおよび配置Cの波長特性については、図4に示したように方向性結合器の結合率が±5%以内程度変動したものと考えられる。しかしながら、配置Bおよび配置Dの波長特性については、方向性結合器の結合率変動では説明がつかず、導波路の作製工程において、導波路のパターニングやクラッドへの埋め込みといった工程で生じる導波路間の位相差の製造誤差が原因と考えられ、更にはその製造誤差に方向性があることを意味していると考えられる。
【0073】
このとき、配置Bと配置Dの向きで良好な特性が得られるように導波路長差ΔLの設計値を補正することも可能と思われるが、この場合は配置Aと配置Cの向きでは特性が劣化することになる。また、入力側カプラと出力側カプラの50%WINCにそれぞれ異なる回路パラメータを適用することも考えられるが、向きが異なると製造バラツキの傾向が異なるので、実際に製造したものは特性が劣化するおそれがある。
【0074】
本発明者らが以上のような鋭意検討を行った結果によれば、第一のMZI4において、図1または図6Aのように、入力側カプラ6の長手方向に対して第一の導波路6D1が配置されている側と、出力側カプラ7の長手方向に対して第一の導波路7D1が配置されている側とを同一にすることによって、入力側カプラ6および出力側カプラ7の結合率が略同一で且つ広い波長帯域にわたって略50%とすることができる。なお、第二のMZI5においても同様に、入力側カプラ10の長手方向に対して第一の導波路が配置されている側と、出力側光カプラ11の長手方向に対して第一の導波路が配置されている側とを同一にすることによって、入力側カプラ10および出力側カプラ11の結合率が略同一で且つ広い波長帯域にわたって略50%とすることができる。
【0075】
つぎに、本実施の形態1に係る遅延復調デバイス101の二つ目の特徴は、次の構成にある。
すなわち、タップカプラ80は、2入力×2出力型5%波長無依存カプラ(5%WINC)で構成されている。
【0076】
タップカプラ80は、第三の導波路と第四の導波路とで構成されている。第三の導波路と第四の導波路とは、長手方向の2箇所において、2本の導波路間でエバネッセント結合が起こる距離まで近接して平行に配置されている。これによって結合率が約5%の第三の方向性結合器と結合率が約10%の第四の方向性結合器が形成され、MZIが構成されている。また、第三および第四の方向性結合器の間の領域(アーム部またはΔL部)において、第三の導波路は第四の導波路よりも導波路長(光路長)が約0.65μmだけ長くなっている。
【0077】
タップカプラ80は、上記のWINCの構成によって、通常の方向性結合器と比較して結合率の波長依存性が低減されている。そのため、DQPSK信号の入力光パワーのモニタ精度が向上する。
【0078】
さらに、第三の導波路および第四の導波路は、第三および第四の方向性結合器の光結合が発生する部分において導波路幅が細くなっている。第三の導波路および第四の導波路は、第三および第四の方向性結合器に隣接する曲がり導波路部分においては、導波路幅が光入出力部に向かって徐々に広くなり、光入出力部と滑らかに接続している。
【0079】
このように、第三および第四の方向性結合器の光結合が発生する部分において導波路幅を細くすることで、導波路間の結合が強くなるので、所望の結合率を得るための結合部長さを短くすることができる。これによってタップカプラ80は長さが短くなり、小型化が可能になる。
【0080】
タップカプラ80の回路パラメータは、たとえば以下の表2に示す通りである。なお、導波路の高さは6μmである。また、導波路におけるクラッドに対する導波路(コア)の比屈折率差Δはたとえば1.2%である。
【0081】
【表2】

【0082】
本実施の形態1に係る遅延復調デバイス101の三つ目の特徴は、次の構成にある。
すなわち、遅延復調デバイス101は、第一のMZI4の第一および第二のアーム導波路8、9、および第二のMZI5の第一および第二のアーム導波路12、13の中央部に、四本のアーム導波路8、9、12、13の全てと交差するように設置された第一の1/2波長板47を有し、四本のアーム導波路8、9、12、13は第一の1/2波長板47が設けられた部分で近接している。
【0083】
また、遅延復調デバイス101は、第一のMZI4の第一および第二のアーム導波路8、9、および第二のMZI5の第一および第二のアーム導波路12、13に、四本のアーム導波路8、9、12、13全てと交差するように設置された第二の1/2波長板70を有し、四本のアーム導波路8、9、12、13は第二の1/2波長板70が設けられた部分で近接している。
このように四本のアーム導波路8、9、12、13は第一および第二の1/2波長板47、70が設けられた部分で近接しているので、遅延復調デバイス101が小型になる。
【0084】
遅延復調デバイス101の四つ目の特徴は、次の構成にある。
すなわち、平面光波回路1A内において、MZI4、5の各アーム導波路が同じ領域で重なるように配置されている。具体的には、第一のMZI4の第二のアーム導波路9と、第二のMZI5の第一のアーム導波路12とが、平面光波回路1A内において、最外郭である第一のMZI4によって囲まれている領域内で重なるように形成されている。
【0085】
また、第一および第二の1/2波長板47、70が設けられた部分での導波路配置を、外側から、第一のMZI4の第一のアーム導波路8、第二のMZI5の第一のアーム導波路12、第一のMZI4の第二のアーム導波路9、第二のMZI5の第二のアーム導波路13の順としている。すなわち、第一のMZI4の第一および第二のアーム導波路8、9間に、第二のMZI5の第一のアーム導波路12が配置されるようにしている。さらに、第一のMZI4の第二のアーム導波路9と第二のMZI5の第一のアーム導波路12とが、第一および第二の1/2波長板47、70の両側にある2つの交差点62、64で交差している。交差角はたとえば63度である。
このような構成により、最小限の交差点の数で第一および第二の1/2波長板47、70が設けられた部分での導波路間の距離を近づけることが可能になる。
【0086】
なお、上述したように、各交差点62、64では、第一のMZI4の第二のアーム導波路9と第二のMZI5の第一のアーム導波路12とが交差しているが、各アーム導波路をそれぞれ伝搬する光(DQPSK信号)は、各交差点62、64を通った後も、そのまま同じアーム導波路を伝搬していく。例えば、第一のアーム導波路9を伝搬するDQPSK信号は、交差点62を通った後もそのまま同じ第一のアーム導波路9を伝搬していく。
【0087】
遅延復調デバイス101の五つ目の特徴は、次の構成にある。
すなわち、第一のMZI4の短い方のアーム導波路である第二のアーム導波路9の光路長l1と、第二のMZI5の短い方のアーム導波路である第二のアーム導波路13の光路長l2とが互いに異なり、かつ、Y分岐導波路3から第一のMZI4の第二のアーム導波路9を経て第一のMZI4の出力側(光出力導波路21、22の出力ポートPout1、Pout2)に至るまでの各光路長l21、l22と、Y分岐導波路3から第二のMZI5の第二のアーム導波路13を経て第二のMZI5の出力側(光出力導波路21、22の出力ポートPout3、Pout4)に至るまでの光路長l23、l24とを全て略等しくしている。
【0088】
具体的には、光信号が、Y分岐導波路3から4つの出力端(出力ポートPout1〜Pout4)に至るまでの4つの経路の各光路長は次の通りである。
Y分岐導波路3から導波路14、第一のMZI4の入力側カプラ6、第二のアーム導波路9、出力側カプラ7、および光出力導波路21を経て出力ポートPout1に至るまでの光路長はl21である。
Y分岐導波路3から導波路14、第一のMZI4の入力側カプラ6、第二のアーム導波路9、出力側カプラ7、および光出力導波路22を経て出力ポートPout2に至るまでの光路長はl22である。
Y分岐導波路3から導波路15、第二のMZI5の入力側カプラ10、第二のアーム導波路13、出力側カプラ11、および光出力導波路23を経て出力ポートPout3に至るまでの光路長はl23である。
そして、Y分岐導波路3から導波路15、第二のMZI5の入力側カプラ10、第二のアーム導波路13、出力側カプラ11、および光出力導波路24を経て出力ポートPout4に至るまでの光路長がl24である。
上記五つ目の特徴は、換言すると、第一のMZI4の短い方の第二のアーム導波路9の光路長l1と、第二のMZI5の短い方の第二のアーム導波路13の光路長l2とが互いに異なり、かつ、上記4つの光路長l21〜l24をすべて等しくしている点にある。
【0089】
本実施の形態1においては、上記五つ目の特徴を実現するため、第二のアーム導波路9の光路長l1を第一のアーム導波路13の光路長l2よりも長くし、光出力導波路21〜24の光路長を全て等しくし、かつ、導波路15を導波路14よりも(l1−l2)だけ長く形成している。
【0090】
この際、導波路15および導波路14をそれぞれ曲げ導波路を含むUターン形状の導波路とし、導波路15が導波路14の外側を回るように配置することで、導波路14、15を狭い領域で容易に長さ調整ができるようにしている。
【0091】
ここで、Uターン形状の導波路14、15について具体的に説明する。
光入力導波路2の入力端は、平面視で長方形のPLCチップ1Bの長辺の一つ(紙面上側の長辺)をなす端面1bに設けられている。この光入力導波路2は、入力ポートから、PLCチップ1Bの左側の短辺をなす端面の近傍に沿って途中まで真っ直ぐに延び、Y分岐導波路3の入力端に接続されている。Y分岐導波路3の一方の出力端に接続された導波路14は、曲がり角度が略180度の曲げ導波路からなるUターン形状の導波路であり、Y分岐導波路3と入力側カプラ6とを接続している。
【0092】
一方、Y分岐導波路3の他方の出力端に接続された導波路15は、導波路14よりも外側、つまり、端面1bに対向する端面1aに近い側を回るように配置されたUターン形状の導波路である。このUターン形状の導波路15は、曲がり角度が略90度の曲げ導波路と、直線導波路と、曲がり角度が略90度の曲げ導波路とからなり、Y分岐導波路3と入力側カプラ10とを接続している。
このように導波路15および導波路14をUターン形状の導波路としたことで、狭い領域で容易に長さ調整が可能になる。
【0093】
なお、図1に示す本実施の形態1では、導波路15が導波路14の外側を回るように配置されているが、本発明はこのような構成に限定されない。例えば、導波路14、15に付与すべき長さの差の値によっては、Y分岐導波路3で分岐されてから途中までは導波路14が導波路15の外側を回り、導波路14と導波路15とが途中で交差して、導波路14、15が入力側カプラ6、10のそれぞれに接続する構成でも良い。
【0094】
なお、遅延復調デバイス101は、次のようにして作製することができる。
図10は、図1のX−X線断面図である。まず、火炎堆積(Flame Hydrolysis Deposition:FHD)法により、シリコン等からなるウェハ上に、下部クラッド層およびコア層となるシリカ材料(SiO系のガラス粒子)を順次堆積し、堆積層を加熱して溶融透明化する。つぎに、フォトリソグラフィと反応性イオンエッチングとを用いてコア層を所望の導波路パターンに形成する。つぎに、再びFHD法により、導波路パターンの上部および側部を覆うように上側部クラッド層を形成する。その後、後述するヒータ等を形成し、素子分離を行うことによって、図10に示すように、ウェハの一部であるPLC基板30上に、下部クラッド層および上側部クラッド層からなるクラッド層31と、このクラッド層31内に形成されたコア部としてのアーム導波路8、12と、ヒータA、Eとを備える遅延復調デバイス101を製造できる。なお、PLC基板30は、図1に示すように、長方形の平面形状を有しているが、正方形や他の形状であっても良い。
【0095】
遅延復調デバイス101の別の特徴は、次の構成にある。
すなわち、この遅延復調デバイス101では、第一のMZI4の第一および第二のアーム導波路8、9の中央部と、第二のMZI5の第一および第二のアーム導波路12、13の中央部とに、偏波乖離量(Polarization Dependent Frequency shift:PDF)を低減させるために、各アーム導波路の屈折率主軸に対してその主軸が45度傾いた第一の1/2波長板47が挿入されている。また、第一のMZI4と第二のMZI5は、PLC基板30上で、第一の1/2波長板47の挿入部に関して略左右対称に形成されている。
【0096】
さらに、この遅延復調デバイス101では、第一のMZI4の第一および第二のアーム導波路8、9の中央部および第二のMZI5の第一および第二のアーム導波路12、13の中央部から出力側に200μm移動した位置に、各アーム導波路の屈折率主軸に対してその主軸が平行もしくは水平である第二の1/2波長板70が挿入されている。
【0097】
この第一および第二の1/2波長板47、70を用いることで、特許文献3に記載されているように、MZIを構成するカプラで偏波変換が発生した場合でも、偏波変換光の干渉条件が偏波変換されない通常光の干渉条件と同一となるため、PDFの劣化を抑制することができる。なお、PDFとは、光干渉計によって生じた透過特性の周波数のピークが、光導波路を伝搬する光の2つの偏波状態(TM波とTE波)の間で差が生じる現象のことである。
【0098】
図11は、図1のY−Y線断面図である。図11に示すように、クラッド層31には溝49、71が形成されている。そして、第一および第二の1/2波長板47、70は、それぞれ溝49、71に挿入される。溝49、71は、第一および第二のMZI4、5のアーム導波路に垂直な面に対して、アーム導波路の長手方向側に約8度傾斜した溝になっている。その結果、第一および第二の1/2波長板47、70が溝49、71に挿入されると、第一および第二の1/2波長板47、70もアーム導波路に垂直な面に対して約8度傾斜するので、第一および第二の1/2波長板47、70の表面反射による光損失が抑制される。
また、この遅延復調デバイス101では、図1に示すように、第一のMZI4の第一および第二のアーム導波路8、9の中央部は、互いに平行に延びかつ近接しており、かつ第二のMZI5の第一および第二のアーム導波路12、13の中央部は、互いに平行に延びかつ近接している。
【0099】
なお、第一および第二のアーム導波路8、9の中央部および第一および第二のアーム導波路12、13の中央部にあっては、1/2波長板47、70が挿入される部分の導波路幅がやや太くなっており、これによって回折損失を抑制している。
また、第二の1/2波長板70の配置位置は、図1に示すような第一の1/2波長板47の近くの位置に限らないが、第一の1/2波長板47が配置される各アーム導波路8、9、12、13の導波路幅を太くした部分において、第二の1/2波長板70を第一の1/2波長板47の近くに配置するのが好ましい。
【0100】
遅延復調デバイス101の別の特徴は、次の構成にある。
図1に示すように、2つの光出力導波路21、22の出力端(出力ポートPout1、Pout2)および2つの光出力導波路23、24の出力端(出力ポーPout3、Pout4)は、PLCチップ1Bの同じ端面1aに開口している。つまり、4つの光出力導波路21〜24の出力端である出力ポートPout1〜Pout4は、PLCチップ1Bの4辺の一つである同じ端面1aにおいて、互いに近接した位置に開口している。
一方、光入力導波路2の入力端は、PLCチップ1Bの端面1aに対向する端面1bに設けられている。
【0101】
また、この遅延復調デバイス101では、第一のMZI4の第一および第二のアーム導波路8、9上、および第二のMZI5の第一および第二のアーム導波路12、13上に、ヒータがそれぞれ形成されている。
すなわち、第一のアーム導波路8上には、その中央部の両側にヒータA、Cが形成され、第二のアーム導波路9上には、その中央部の両側にヒータB、Dが形成されている。一方、第一のアーム導波路12上には、その中央部の両側にヒータE、Gが形成され、第二のアーム導波路13上には、その中央部の両側にヒータF、Hが形成されている。各ヒータA〜Hは、対応するアーム導波路の上方にあって、図10に示すように、クラッド層31上にスパッタにより形成されたTa系の薄膜ヒータである。
【0102】
図12は、遅延復調デバイス101の透過特性を示す図である。この遅延復調デバイス101では、各光出力導波路21、22の出力端が、互いに位相がπだけずれた出力特性(図12の線L31、L32)で出力1、2の光信号(強度変調された光信号)をそれぞれ出力する出力ポートPout1、Pout2になっている。一方、各光出力導波路23、24の出力端が、互いに位相がπだけずれた出力特性(図12の線L33、L34)で出力3、4の光信号をそれぞれ出力する出力ポートPout3、Pout4になっている。
【0103】
上記構成を有する遅延復調デバイス101では、第一のMZI4にあっては、光ファイバ伝送路54から光受信器50に送られるDQPSK信号がY分岐導波路3で分岐され、その分岐されたDQPSK信号が、第一のMZI4の長さの異なる第一および第二のアーム導波路8、9を伝搬する。第一のMZI4は、第一のアーム導波路8を伝搬するDQPSK信号の位相を第二のアーム導波路9を伝搬する光信号の位相に対してシンボルレートの1ビットに相当する遅延量+1/4πだけ遅延させるようになっている。同様に、第二のMZI5は、第一のアーム導波路12を伝搬するDQPSK信号の位相を第二のアーム導波路13を伝搬する光信号の位相に対してシンボルレートの1ビットに相当する遅延量−1/4πだけ遅延させるようになっている。
遅延復調デバイス101では、第一のMZI4上のヒータAまたはヒータD、第二のMZI5上のヒータEまたはヒータHを駆動させて、PDFの調整や、第一および第二のMZI4、5の位相差がπ/2になるような位相調整(位相トリミング)を行う。このように、第一および第二のMZI4、5の90度の位相差は、ヒータ等の位相調整手段を用いた位相調整によって実現されてもよい。
【0104】
(実施例)
つぎに、シリコン基板上に、図1に示す構成の40GbpsDQPSK用遅延復調デバイスを作製した。なお、平面光波回路の作製は、FHD法、フォトリソグラフィ、および反応性イオンエッチングにより行った。また、図1の紙面上方向をシリコン基板のオリエンテーションフラット(OF)方向に向けて作製した。したがって、本実施例の遅延復調デバイスの各カプラは、シリコン基板上で図8の配置Aと同じ向きに配置されていることとなる。
【0105】
また、第一のMZIの第一および第二のアーム導波路、ならびに第二のMZIの第一および第二のアーム導波路の計4本のアーム導波路は、1/2波長板を挿入する部分において互いに40μmの等間隔に近接させて配置した。さらに、クラッド層にダイシングによって溝を形成し、形成した溝に第一および第二の1/2波長板を挿入した。
【0106】
また、1/2波長板を本実施例の遅延復調デバイスに挿入する際は、1/2波長板を元の長さの半分の2mmにカットした上で、各1/2波長板の中央の領域が4本のアーム導波路の長さ方向の略中央に挿入されるようにした。
【0107】
作製した遅延復調デバイスでは、クラッド層の屈折率と導波路のコアの屈折率との差(比屈折率差Δ)を1.2%としており、回路サイズ(PLCチップのサイズ)が13mm×16.5mmと小型化が実現された。また、FSRは23GHzとした。また、第一および第二のMZIのいずれかのヒータを駆動させてPDFを調整した。この調整後、第一および第二のMZIのいずれかのヒータを駆動させて、第一および第二のMZIの位相差がπ/2になるように、位相調整(位相トリミング)を行った。つまり、この位相調整により、第一および第二のMZIに、90度位相がずれた干渉特性を持たせた。
また、第一および第二のMZIの両方で良好なPDF特性が得られるように、1/2波長板を選定して使用した。
【0108】
その後、光信号が入力される光入力導波路の端部のあるPLCチップの端面に1つの光ファイバを有するファイバブロックを接続し、出力1〜出力4の光信号がそれぞれ出力される光出力導波路の各端部(出力ポート)のあるPLCチップの端面に4つの光ファイバが整列したファイバアレイを接続して、パッケージングを行った。また、遅延復調デバイスの温度調整機構には、ペルチェ素子とサーミスタを用いた。このようにして遅延復調デバイスを含む遅延復調モジュールを作製した。
【0109】
作製した遅延復調モジュールについて、波長多重光通信に通常用いられる1520nm〜1620nmの波長帯域にて、透過スペクトル、PDFを評価した。図13は、本実施例の遅延復調デバイスの出力ポート1、2(図1の出力ポートPout1、Pout2に相当)の1525nm付近(図13(a))、1570nm付近(図13(b))、1610nm付近(図13(c))での透過スペクトルを示す図である。
【0110】
また、比較例として、実施例の遅延復調デバイスの光カプラを通常の方向性結合器に置き換えた構成の遅延復調デバイスを作製し、これを含む遅延復調モジュールを作製した。図14は、比較例の遅延復調デバイスの出力ポート1、2(図1の出力ポートPout1、Pout2に相当)の1525nm付近(図14(a))、1570nm付近(図14(b))、1610nm付近(図14(c))での透過スペクトルを示す図である。
【0111】
図13、14に示すように、通常の方向性結合器を用いた比較例では、方向性結合器の結合率を約50%とした1570nm付近から波長が離れるに従って出力1(第一のMZIのスルーポート)の消光比(透過率の最大値−最小値の差)が大きく劣化した。その理由は、一般にMZIの消光比はカプラの結合率が50%に設定した波長で最大となり、設定波長から離れるにしたがって結合率が50%からずれるため、それとともに消光比も劣化するためである。これに対し、本実施例のようにWINCであるカプラを用いた場合は、いずれの波長においても20dB以上の高い消光比が得られた。
【0112】
図15は、1520nm〜1620nmの波長帯域における、実施例の遅延復調デバイスの各MZIのPDFの測定結果を示す図である。なお、MZI1は第一のMZIを示し、MZI2は第二のMZIを示している。図15に示すように、いずれのMZIのPDFも、全帯域で0.2GHz以下であり、良好な特性が得られた。
以上の結果から、遅延復調デバイスのMZIの入力側カプラおよび出力側カプラとしてWINCを用いることにより、20dB以上の高い消光比で使用できる波長帯域を拡大できることが確認できた。
【0113】
<光カプラの配置が結合効率に与える影響の評価>
次に、WINCである光カプラの配置によるMZIの特性の違いを確認するために、図6A〜図6Dに示す配置A〜配置DのMZIを作製し、その透過スペクトルを測定した。
【0114】
図16Aは、図6Aに示す配置AのMZIの出力ポート1、2(スルーポート、クロスポート)の1520nm付近(図16A(a))、1570nm付近(図16A(b))、1610nm付近(図16A(c))での透過スペクトルを示す図である。図16Bは、図6Bに示す配置BのMZIの出力ポート1、2(スルーポート、クロスポート)の1520nm付近(図16B(a))、1570nm付近(図16B(b))、1610nm付近(図16B(c))での透過スペクトルを示す図である。図16Cは、図6Cに示す配置CのMZIの出力ポート1、2(スルーポート、クロスポート)の1520nm付近(図16C(a))、1570nm付近(図16C(b))、1610nm付近(図16C(c))での透過スペクトルを示す図である。図16Dは、図6Dに示す配置DのMZIの出力ポート1、2(スルーポート、クロスポート)の1520nm付近(図16D(a))、1570nm付近(図16D(b))、1610nm付近(図16D(c))での透過スペクトルを示す図である。
【0115】
図16A、16Cに示すように、配置Aと配置Cでは、いずれの波長においても20dB以上の高い消光比が得られた。一方、図16B、16Dに示すように、配置Bと配置Dでは、消光比が20dB未満に劣化する波長があった。
この結果から、配置A、Cのように、入力側カプラの長手方向に対して、導波路長が長い第一の導波路が配置されている側と、出力側カプラの長手方向に対して、導波路長が長い第一の導波路が配置されている側とを同一とすることにより、使用波長帯域を拡大できることが確認できた。
【0116】
<導波路の交差による損失の見積もり>
上述したように、実施の形態1および実施例では、2つのアーム導波路が交差し、2つのアーム導波路をそれぞれ伝搬する光(DQPSK信号)はその交差点を通った後もそのまま同じアーム導波路を伝搬していくが、その際に損失が発生する。そこで、導波路の交差による損失を見積もるため、実施例の遅延復調デバイスと同じ導波路(導波路のサイズが6μm×6μm、Δ=1.2%)を用い、種々の交差角を有するテスト用の交差導波路を作製してその挿入損失を測定し、交差角と交差点1点あたりの交差損失との関係を求めた。図17は、交差角と交差損失との関係を示す図である。図17から分かるように、交差点での交差角が略35度以上なら、交差損失が0.1dB以下なので、そのまま同じ導波路を略損失なく伝搬しているとみなせる。
【0117】
つぎに、図17の結果と、実施例の各アーム導波路の交差点(図1の交差点62、64に相当)における交差角を63度として、各アーム導波路の交差による損失を求めた結果を表3に示す。なお、交差点は、図1の符号を用いて表している。表3に示すように、各交差点での交差損失はわずかに0.04dBであるので、交差するアーム導波路(符号9、12)で交差によって生じる損失も0.08dBときわめて小さい値である。
【0118】
【表3】

【0119】
比較のため、特許文献1に開示された従来の遅延復調デバイスにおける、交差による損失を求めた結果を表4に示す。図21は従来の遅延復調デバイスの概略構成を示す平面図である。なお、この遅延復調デバイス1000では、実施の形態1の遅延復調デバイス101の要素に対応する要素には同一の符号を付している。また、この遅延復調デバイス1000は、遅延復調デバイス101と比較して、さらに交差点61、63、65、66、67、68を有している。表3、4から、本実施の形態1に係る遅延復調デバイス101では、遅延復調デバイス1000よりも、導波路の交差点を大幅に減少させることができ、結果として各アーム導波路での交差損失が低減できている。
【0120】
【表4】

【0121】
<アーム導波路の間隔とPDFとの関係の評価>
つぎに、1/2波長板が挿入される部分(1/2波長板挿入部)におけるアーム導波路の間隔とPDFとの関係を評価するために、第一のMZIの第一および第二のアーム導波路、および第二のMZIの第一および第二のアーム導波路の計4本のアーム導波路の1/2波長板挿入部における間隔を30μm、40μm、60μm、80μm、100μm、200μm、300μm、500μmとして、図1に示す構成の遅延復調デバイスを作製し、作製した遅延復調デバイスのPDFを評価した。なお、いずれの遅延復調デバイスについても、2つの1/2波長板の中央の領域が4本のアーム導波路の長さ方向の略中央に挿入されるようにした。
【0122】
図18は、導波路間隔とPDFとの関係を示す図である。図18に示すように、導波路間隔が広がるほどPDFが劣化し、特に300μm以上では0.3GHz以上となってしまうことが分かる。また、図18から、遅延復調デバイス101では、アーム導波路8、9、12、13の中央部の導波路間隔、特に1/2波長板47、70が挿入される1/2波長板挿入部での導波路間隔を、30μm〜100μmの等間隔にするのが好ましい。各導波路間隔をこのような近接した間隔に設定することで、1/2波長板の偏波変換効率の位置依存性の影響が抑制され、PDFを0.2GHz以下に低減することができる。
【0123】
ちなみに、図22は、図21に示す従来の遅延復調デバイス1000において、1/2波長板47の偏波変換効率の位置依存性により、第一および第二のMZI4、5のPDFに差が生じたときのPDFの波長依存性を示す図である。MZI1は第一のMZI4を示し、MZI2は第二のMZI5を示している。
【0124】
以上の構成を有する実施の形態1によれば、以下のような作用効果を奏する。
第一のMZI4の第一および第二のアーム導波路8、9、ならびに第二のMZI5の第一および第二のアーム導波路12、13の中央部に、四本のアーム導波路8、9、12、13の全てと交差するように設置された第一の1/2波長板47を有し、四本のアーム導波路8、9、12、13は第一の1/2波長板47が挿入された部分で近接している。
この構成により、四本全てのアーム導波路8、9、12、13が第一の1/2波長板47の狭い領域のみを通過することになるため、第一の1/2波長板47の偏波変換効率の位置依存性の影響を受けにくくなり、第一および第二のMZI4、5の両方で良好な特性を実現しやすくなる。また、低コスト化を図れる。
【0125】
すなわち、(1)四本全てのアーム導波路が1/2波長板の狭い領域のみを通過することになるため、波長板の偏波変換効率の位置依存性の影響を抑制でき、偏波依存性を低減することができる。つまり、第一および第二のMZI4、5の2つのアーム導波路と交差する位置での第一の1/2波長板47の偏波変換効率の位置依存性の影響と、第一のMZI4の2つのアーム導波路の位置と、第二のMZI5の2つのアーム導波路の位置との間での波長板の偏波変換効率の位置依存性の影響との両方を抑制することができる。これにより、偏波依存性を低減することができる。(2)また、第一および第二のMZI4、5の両方に対して、第一の1/2波長板47の良好な部分を使用できるので、第一および第二のMZI4、5の両方で同時に良好な特性を得ることができる。(3)サイズの小さい第一の1/2波長板47が使用可能になり、低コスト化を図れる。
同様に、第一のMZI4の第一および第二のアーム導波路8、9、および第二のMZI5の第一および第二のアーム導波路12、13に、四本のアーム導波路全てと交差するように設置された第二の1/2波長板70を有し、四本のアーム導波路は第二の1/2波長板70が挿入された部分で近接している。この構成により、四本全てのアーム導波路8、9、12、13が第二の1/2波長板70の偏波変換効率の位置依存性の影響を受けにくくなり、第一および第二のMZI4、5の両方で良好な特性を実現しやすくなる。また、低コスト化を図れる。
【0126】
平面光波回路1A内において、第一および第二のMZI4、5の各アーム導波路が同じ領域で重なるように配置し、第一のMZI4の第二のアーム導波路9と第二のMZI5の第一のアーム導波路12とが第一および第二の波長板47、70の両側、つまり交差点62、64で交差している。そして、1/2波長板挿入部分での導波路配置を、第一のMZI4の第一のアーム導波路8、第二のMZI5の第一のアーム導波路12、第一のMZI4の第二のアーム導波路9、第二のMZI5の第二のアーム導波路13の順というように、一方のMZIのアーム導波路間に他方のMZIのアーム導波路を配置しているので、最小限の交差点の数で1/2波長板挿入部の導波路間隔を近づけることができ、低損失で低PDFの特性が得られる。
【0127】
第一のMZI4の短い方の第二のアーム導波路9の光路長l1と、第二のMZI5の短い方の第二のアーム導波路13の光路長l2が互いに異なり、かつ、Y分岐導波路3から第一のMZI4の第二のアーム導波路9を経て第一のMZI4の出力側(光出力導波路21、22の出力ポートPout1、Pout2)に至るまでの各光路長l21、l22と、Y分岐導波路3から第二のMZI5の短い方の第二のアーム導波路13を経て第二のMZI5の出力側(光出力導波路23、24の出力ポートPout3、Pout4)に至るまでの光路長l23、l24とを全て略等しくしている。このため、設計の自由度が高くなり、第二のアーム導波路9と第二のアーム導波路13を等しい光路長で形成する場合と比較して少ない交差でコンパクトな配置が可能になる。
【0128】
PLCチップ1Bの小型化を実現しているので、平面光波回路1A面内の温度分布の均一性が良くなり、環境温度変動による波長特性の中心波長のシフトを極めて小さくすることができる。
また、PLCチップ1Bの小型化を実現しているので、複屈折の原因となるPLCチップ1B面内の応力分布が低減され、環境温度変動による波長特性の中心波長のシフトを極めて小さくすることができる。これにより、環境温度変動に対する波長特性の波長シフトがほとんど無く、初期のPDFを小さくした遅延復調デバイスが得られる。
さらに、PLCチップ1Bが小型化されることで、遅延復調デバイス101を用いた遅延復調モジュールの小型化や低消費電力化も実現できる。
【0129】
第一のMZI4と第二のMZI5は、PLC基板30上に、左右対称に形成されているので、PLCチップ1Bの更なる小型化とPDFの更なる低減とを図れる。
第一および第二のMZI4、5の各々の2つのアーム導波路上に、ヒータA〜Hが形成されているので、第一および第二のMZI4、5のいずれかのヒータを駆動させてPDFを調整することができる。また、この調整後、第一および第二のMZI4、5のいずれかのヒータを駆動させて、2つのMZIの位相差がπ/2になるように、位相調整(位相トリミング)を行うことができる。
【0130】
(実施の形態2)
図19は、実施の形態2に係るPLC型復調用遅延回路(遅延復調デバイス)の概略構成を示す平面図である。図19に示すように、実施の形態2に係る遅延復調デバイス102は、実施の形態1に係る遅延復調デバイス101とは、出力側カプラ7、11の配置が異なり、その他の点は遅延復調デバイス101と同様である。
【0131】
すなわち、遅延復調デバイス102では、出力側カプラ7の配置について、図6Cの配置Cのように、第一および第二のアーム導波路8、9側に方向性結合器7DC1が配置されている。また、光路長が長い第一の導波路7D1が、出力側カプラ7の長手方向に対して、紙面左側に配置されている。すなわち、入力側カプラ6の長手方向に対して第一の導波路6D1が配置されている側と、出力側カプラ7の長手方向に対して第一の導波路7D1が配置されている側とが同一である。入力側カプラ6と出力側カプラ7とは、紙面内で入力側カプラ6と出力側カプラ7との中間に長手方向に沿って引いた線に対して線対称移動してさらに180度回転すると重なるように配置されている。また、出力側カプラ11の配置についても、第一および第二のアーム導波路12、13側に方向性結合器11DC1が配置されている。また、光路長が長い第一の導波路11D1が、出力側カプラ11の長手方向に対して、紙面左側に配置されている。すなわち、入力側カプラ10の長手方向に対して第一の導波路10D1が配置されている側と、出力側カプラ11の長手方向に対して第一の導波路11D1が配置されている側とが同一である。入力側カプラ10と出力側カプラ11とは、紙面内で入力側カプラ10と出力側カプラ11との中間に長手方向に沿って引いた線に対して線対称移動してさらに180度回転すると重なるように配置されている。
【0132】
本実施の形態2に係る遅延復調デバイス102においても、入力側カプラ6、10、出力側カプラ7、11のいずれも、図8の配置A、Cのように、1520nm〜1620nmにわたって結合率κが50%±2%以内という平坦な波長特性が得られる。その結果、遅延復調デバイス102は1520nm〜1620nmの広い波長帯域にわたって消光比が20dB以上に高い良好な特性を実現できる。
【0133】
(実施の形態3)
図20は、実施の形態3に係るPLC型復調用遅延回路(遅延復調デバイス)の概略構成を示す平面図である。図20に示すように、実施の形態3に係る遅延復調デバイス103は、実施の形態2に係る遅延復調デバイス102において、タップカプラ80、入力側カプラ6、10、出力側カプラ7、11を、それぞれタップカプラ80A、入力側カプラ6A、10A、出力側カプラ7A、11Aに置き換えたものであり、その他の点は遅延復調デバイス102と同様である。
【0134】
入力側カプラ6A、10A、出力側カプラ7A、11Aが、たとえば表5に示す回路パラメータを有する50%WINCであって、DC結合部において導波路幅が細くなっていない点が入力側カプラ6、10、出力側カプラ7、11とは異なる。また、タップカプラ80Aは、たとえば表6に示す回路パラメータを有する5%WINCであって、DC結合部において導波路幅が細くなっていない点がタップカプラ80とは異なる。
【0135】
【表5】

【0136】
【表6】

【0137】
タップカプラ80A、入力側カプラ6A、10A、出力側カプラ7A、11Aを構成するDC結合部は導波路幅が細くなっていないために長さが長い。その結果、図20に示す遅延復調デバイス103は、図1に示す遅延復調デバイス101と比べると、紙面縦方向のサイズがたとえば約2.5mm大きくなる。しかしながら、タップカプラ80A、入力側カプラ6A、10A、出力側カプラ7A、11Aは、DC結合部の導波路幅を細くしていないため、細くした部分での光の放射損失の発生が無い。その結果、遅延復調デバイス103は、遅延復調デバイス101と比べて挿入損失がたとえば0.2dB小さくできる。
なお、遅延復調デバイス103のその他の特性については、遅延復調デバイス101と同様である。
【0138】
上記各実施の形態では、入力側カプラの長手方向に対して第一の導波路が配置されている側と、出力側カプラの長手方向に対して第一の導波路が配置されている側とを同一の紙面左側としているが、同一の側であれば、紙面右側としてもよい。この場合、紙面右側に同一としたときに広い波長範囲にわたって結合率が50%±5%の特性が得られるように、入力側カプラおよび出力側カプラの回路パラメータ(特にΔL)を調整し、結合率を補正すればよい。
結合率補正方法の一例として、表5に示すパラメータを元に、ΔLを変化させたときのWINCの結合率の変化を図23に示す。図23において、範囲Rは結合率が50%±5%の範囲である。線L41は、ΔLが表5のとおり0.36μmの場合の特性を示している。線L42は、ΔLが(0.36−0.03)μmの場合の特性を示している。線L43は、ΔLが(0.36+0.03)μmの場合の特性を示している。
図23より、ΔLを変化させると結合率の波長に対する傾きが変化する。したがって、例えば結合率の実測値が、長波長側が下がるように傾いていたら、ΔLを増大させるといったように、測定した結合率の傾きに応じてΔLを調整することで、結合率の傾きの補正が可能である。
【0139】
また、たとえば、上記各実施の形態では、第1および第2のMZIにおいて、各入力側カプラの長手方向に対して第一の導波路が配置されている側と、各出力側カプラの長手方向に対して第一の導波路が配置されている側とを、すべて紙面左側としている。すなわち、4つの入力側カプラおよび出力側カプラについて、第一の導波路が配置されている側がすべて同じである。しかしながら、本発明はこれに限らず、たとえば、第1のMZIにおいて、入力側カプラの長手方向に対して第一の導波路が配置されている側と、出力側カプラの長手方向に対して第一の導波路が配置されている側とを紙面左側とし、かつ、第2のMZIにおいては、入力側カプラの長手方向に対して第一の導波路が配置されている側と、出力側カプラの長手方向に対して第一の導波路が配置されている側とを紙面右側としてもよい。すなわち、本発明では、同一の光干渉計内の入力側カプラおよび出力側カプラについては、第一の導波路が配置されている側を同じとするが、異なる光干渉計間では、カプラの第一の導波路が配置されている側が互いに異なっていてもよい。
【0140】
また、上記各実施の形態におけるWINCの回路パラメータは一例であって、所望の結合効率が得られるように適宜変更可能である。
【0141】
また、上記各実施の形態において、タップカプラ80、80Aは、入力信号光の強度モニタが不要であれば、省略可能である。
【0142】
また、上記各実施の形態1、2では、入力側カプラ、出力側カプラおよびタップカプラのいずれも、第一および第二の方向性結合器(または第三および第四の方向性結合器)の両方の光結合が発生する部分において導波路幅が細くなっているが、第一の方向性結合器および第二の方向性結合器の一方(または第三の方向性結合器および第四の方向性結合器の一方)の光結合が発生する部分において、導波路幅が細くなっていても良い。
【0143】
また、上記各実施の形態では、光分岐器としてY分岐導波路3を使用したが、入力光を略等分できるカプラであればこれに限ることなく、例えば方向性結合器、マルチモード干渉計カプラなど種々のカプラを使用することができる。ただし、広帯域にわたって分岐比の変化が少ないものが好適である。また、上記各実施の形態は、DQPSK用の遅延復調デバイスであるが、DPSK用の遅延復調デバイスを構成する場合は、光分岐器と第二のMZIおよびそれに関連する構成とを省略してもよい。
【0144】
また、上記各実施形態では、最適な形態として第一の1/2波長板47、および第二の1/2波長板70の2枚の波長板を挿入している。しかしながら、本発明はこれに限ることなく、導波路の複屈折やカプラでの偏波変換の発生量、1/2波長板の偏波変換効率等によっては、第一の1/2波長板47のみを挿入する構成でもよい。また、1/2波長板の代わりに、2枚の1/4波長板を挿入してもよい。
【0145】
また、上記実施の形態により本発明が限定されるものではない。上述した各構成要素を適宜組み合わせて構成したものも本発明に含まれる。たとえば、実施の形態1に係る遅延復調デバイス101の各カプラを実施の形態3の導波路幅が均一なカプラに置き換えても良い。その他、上記実施の形態に基づいて当業者等によりなされる他の実施の形態、実施例および運用技術等は全て本発明に含まれる。
【符号の説明】
【0146】
1A 平面光波回路
1B PLCチップ
1a、1b 端面
2 光入力導波路
3 Y分岐導波路
4 第一のMZI
5 第二のMZI
6、6A、10、10A 入力側カプラ
6a、6b、6c、6d、7a、7b、7c、7d 光入出力部
6D1、7D1、10D1、11D1 第一の導波路
6D2 第二の導波路
6DC1、6DC2、7DC1、7DC2、11DC1 方向性結合器
7、7A、11、11A 出力側カプラ
8、12 第一のアーム導波路
9、13 第二のアーム導波路
11DC1 方向性結合器
14、15 導波路
21、22、23、24 光出力導波路
30 PLC基板
31 クラッド層
40 光送信器
47 第一の1/2波長板
49、71 溝
50 光受信器
51、52 バランスドレシーバ
53 受信電気回路
54 光ファイバ伝送路
62、64 交差点
70 第二の1/2波長板
80、80A タップカプラ
81 モニタ出力導波路
101、102、103、1000 復調用遅延回路
A、B、C、D、E、F、G、H ヒータ
L11、L12、L13、L21、L22、L23、L31、L32、L33、L34、L41、L42、L43、LA、LB、LC、LD 線
Pout1、Pout2、Pout3、Pout4 出力ポート
R 範囲

【特許請求の範囲】
【請求項1】
位相変調された光信号を復調させる平面光波回路が形成された復調用遅延回路であって、
2入力2出力の入力側カプラと、2入力2出力の出力側カプラと、前記入力側カプラと前記出力側カプラとを接続する第一のアーム導波路と、前記第一のアーム導波路よりも光路長が短い第二のアーム導波路とを有し、入力された前記光信号の各ビットをそれらと隣接するビットと干渉するように略1ビット分遅延させて干渉させる光干渉計を備え、
前記光干渉計は、前記入力側カプラにおける光の伝搬方向と前記出力側カプラにおける光の伝搬方向が略180度異なるように屈曲して形成されており、
前記入力側カプラおよび前記出力側カプラは、それぞれ、第一の導波路と第二の導波路とを有し、前記第一の導波路は前記第二の導波路よりも光路長が長く、前記第一の導波路と前記第二の導波路とは、長手方向の2箇所において、当該導波路間の距離が近接して平行に配置されることによって第一の方向性結合器と第二の方向性結合器とが形成されており、使用する波長帯域において略50%の結合率を有する波長無依存カプラとして構成されており、
前記入力側カプラの長手方向に対して当該入力側カプラの第一の導波路が配置されている側と、前記出力側カプラの長手方向に対して当該出力側カプラの第一の導波路が配置されている側とが同一であることを特徴とする復調用遅延回路。
【請求項2】
第一および第二の前記光干渉計と、前記入力された光信号を2分岐して前記第一および第二の光干渉計に入力させる光分岐器とを備え、
前記光信号はDQPSK変調された光信号であり、前記第一および第二の光干渉計は90度位相がずれた干渉特性を有することを特徴とする請求項1に記載の復調用遅延回路。
【請求項3】
前記各光干渉計において、前記入力側カプラと前記出力側カプラとは略同一形状であることを特徴とする請求項1または2に記載の復調用遅延回路。
【請求項4】
前記各光干渉計において、前記入力側カプラと前記出力側カプラとは、前記平面光波回路が形成された面内で平行移動すると重なるように配置されていることを特徴とする請求項3に記載の復調用遅延回路。
【請求項5】
前記各光干渉計において、前記入力側カプラと前記出力側カプラとは、前記平面光波回路が形成された面内で当該入力側カプラと当該出力側カプラとの中間に長手方向に沿って引いた線に対して線対称移動してさらに180度回転すると重なるように配置されていることを特徴とする請求項3に記載の復調用遅延回路。
【請求項6】
前記第一の導波路および前記第二の導波路の少なくとも一方は、前記第一の方向性結合器および前記第二の方向性結合器の少なくとも一方の光結合が発生する部分において、当該導波路における他の部分よりも幅が細いことを特徴とする請求項1〜5のいずれか一つに記載の復調用遅延回路。
【請求項7】
前記第一の導波路および前記第二の導波路は、前記第一の方向性結合器および前記第二の方向性結合器の光結合が発生する部分において、当該導波路における他の部分よりも幅が細いことを特徴とする請求項6に記載の復調用遅延回路。
【請求項8】
前記第一および第二の光干渉計において、前記各光干渉計の入力側カプラの長手方向に対して当該入力側カプラの第一の導波路が配置されている側と、前記各光干渉計の出力側カプラの長手方向に対して当該各出力側カプラの第一の導波路が配置されている側とが、すべて同一であることを特徴とする請求項3〜7のうち請求項2を引用するいずれか一つに記載の復調用遅延回路。
【請求項9】
前記各光干渉計に入力される光信号の一部を分岐するタップカプラを備えることを特徴とする請求項1〜8のいずれか一つに記載の復調用遅延回路。
【請求項10】
前記タップカプラは、第三の導波路と第四の導波路とを有し、前記第三の導波路は前記第四の導波路よりも光路長が長く、前記第三の導波路と前記第四の導波路とは、長手方向の2箇所において、当該導波路間の距離が近接して平行に配置されることによって第三の方向性結合器と第四の方向性結合器とが形成されており、使用する波長帯域において20%以下の結合率を有する波長無依存カプラとして構成されていることを特徴とする請求項9に記載の復調用遅延回路。
【請求項11】
前記第三の導波路および前記第四の導波路の少なくとも一方は、前記第三の方向性結合器および前記第四の方向性結合器の少なくとも一方の光結合が発生する部分において、当該導波路における他の部分よりも幅が細いことを特徴とする請求項10に記載の復調用遅延回路。
【請求項12】
前記第三の導波路および前記第四の導波路は、前記第三の方向性結合器および前記第四の方向性結合器の光結合が発生する部分において、当該導波路における他の部分よりも幅が細いことを特徴とする請求項11に記載の復調用遅延回路。
【請求項13】
前記第一および第二の光干渉計の前記各アーム導波路の中央部に、前記全てのアーム導波路と交差するように挿入された波長板を備え、
前記全てのアーム導波路は前記波長板が挿入された部分で互いに近接していることを特徴とする請求項3〜12のうち請求項2を引用するいずれか一つに記載の復調用遅延回路。
【請求項14】
前記平面光波回路内において、前記第一および第二の光干渉計の各アーム導波路が同じ領域で重なるように配置され、前記第一の光干渉計の第二のアーム導波路と前記第二の光干渉計の第一のアーム導波路とが前記波長板の両側2箇所で交差し、
前記波長板が挿入された部分において、前記第一の光干渉計の第一および第二のアーム導波路間に前記第二の光干渉計の第一のアーム導波路が配置されていることを特徴とする請求項13に記載の復調用遅延回路。
【請求項15】
前記平面光波回路内において、前記第一の光干渉計は前記第二の光干渉計の内側の領域に配置され、
前記波長板が挿入された部分において、前記第一の光干渉計の第一のアーム導波路、前記第二の光干渉計の第一のアーム導波路、前記第一の光干渉計の第二のアーム導波路および前記第二の光干渉計の第二のアーム導波路の順に並んで配置されていることを特徴とする請求項13に記載の復調用遅延回路。
【請求項16】
前記光分岐器の出力側と前記第一および第二の光干渉計の入力側カプラとにそれぞれ接続された2つの導波路を備え、前記2つの導波路はそれぞれ曲げ導波路を含むUターン形状であることを特徴とする請求項13〜15のいずれか一つに記載の復調用遅延回路。
【請求項17】
前記波長板は、前記第一および第二の光干渉計の各アーム導波路の屈折率主軸に対してその主軸が45度傾いた第一の1/2波長板であることを特徴とする請求項1〜16のいずれか一つに記載の復調用遅延回路。
【請求項18】
前記第一および第二の光干渉計の第一の1/2波長板よりも出力側に挿入された、前記各アーム導波路の屈折率主軸に対してその主軸が平行もしくは水平な第二の1/2波長板を備えることを特徴とする請求項17に記載の復調用遅延回路。
【請求項19】
請求項1〜18のいずれか一つに記載の復調用遅延回路と、
前記復調用遅延回路から出力された光信号を受光して電気信号に変換する受光素子と、 を備えることを特徴とする光受信器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6A】
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【図6B】
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【図6C】
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【図6D】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16A】
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【図16B】
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【図16C】
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【図16D】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【公開番号】特開2013−61431(P2013−61431A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−198818(P2011−198818)
【出願日】平成23年9月12日(2011.9.12)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【Fターム(参考)】