説明

循環器疾患予防改善のための経口用組成物

【課題】 ニンニクや無臭ニンニクが有する優れた高脂血症予防効果に加えて抗酸化活性が相乗的に増強され、過酸化脂質の生成抑制、免疫力の強化、血液流動性の改善等が図られ、これによって高血圧、高脂血症、糖尿病、動脈硬化、癌等の生活習慣病の予防や改善が期待される医薬品、特定保健用食品、健康補助食品等の用途に有用な循環器疾患予防改善のための経口用組成物、及びこれを所定の剤形に製剤して得られる加工食品を提供する。
【解決手段】 ニンニク素材及び/又は無臭ニンニク素材とグルタチオン及びグルタチオンを高濃度に含有するグルタチオン含有素材、あるいはこれらとポリフェノール含有素材とを含む循環器疾患予防改善のための経口用組成物であり、また、これらの経口用組成物を所定の剤形に製剤して得られた加工食品である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ニンニク由来のニンニク素材及び/又は無臭ニンニク由来の無臭ニンニク素材とグルタチオン含有素材とを含む経口用組成物に係り、特に抗酸化活性を相乗的に高め、医薬品、特定保健用食品、健康補助食品等の用途に有用な循環器疾患予防改善のための経口用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ニンニク(Allium sativum L.)は古くから世界中で使われているハーブであって、単に料理用香辛料としてでなく、疲労回復、強壮、食欲増進、風邪予防、整腸健胃等に有効な素材として汎用されている。そして、その効能についても、最近の科学的研究によって、免疫機能亢進、血中コレステロール及び中性脂肪低下作用、血圧降下作用、血小板凝集抑制作用、抗菌作用、抗酸化作用、発ガン抑制作用等が明らかにされている(斎藤 洋監修「ニンニクの科学」朝倉書店、2000年刊)。特に、ニンニクが有する血中コレステロール及び中性脂肪低下作用は優れており、その作用機作はコレステロールや中性脂肪の生合成過程を阻害するためと考えられており(V. Schulz, R. Haensel and V.E. Tyler,“Rational Phytotherapy”, Springer, New York (1996) pp112-113)、実際に欧米では、ニンニク製剤が高脂血症改善薬として扱われている(Edtd by M. Barrett, “The Handbook of Clinically Tested Herbal Remedies”, Haworth Press, New York (2004), pp403-428)。
【0003】
このニンニクの効能に関与している主な成分はアリイン関連化合物やスコルヂニン等の硫黄含有化合物であり、ニンニクはタマネギ、ブロッコリー、カリフラワー、アンズ等と比べて4倍以上の硫黄含有化合物を含んでいる。そして、主な硫黄含有化合物のアリインは、ニンニク生品1g中10mg程度含まれており、ニンニク中の酵素(アリナーゼ)が働くとアリシン等に変化する。また、アリシンやその関連化合物は、効能に関与する一方で、独特のニンニク臭の原因にもなり、ニンニク製剤において最も多い副作用は、呼気にこのニンニク臭が出ることである。
【0004】
そこで、このようなニンニクの持つ欠点をなくすために、ニンニクの近縁種であるジャンボリーキ(Allium ampeloprasum L. Shiro)が無臭ニンニクと称して使用されている。この無臭ニンニクのアリイン含量は、通常のニンニクと同程度であるが、分解酵素のアリナーゼの活性がないため、アリシン等が生成せず、ニンニク臭がほとんど発生しない。また、スコルヂニン含量は通常のニンニクより多く、血中コレステロール及び中性脂肪低下作用(内田あゆみ、Food Style 21, pp59-65(2001))や免疫力強化作用(内田あゆみ、Food Style 21, 2, pp45-48(1998))は通常のニンニクと比較して遜色はないとされている。
【0005】
ところで、ニンニクや無臭ニンニクにはフェノール性化合物がほとんど含まれていないため、その抗酸化活性は主に硫黄含有化合物に由来している。ニンニクの硫黄含有化合物は酵素活性の有無や食品加工時の加熱条件によって様々に変化するので、その抗酸化活性は不安定であり、あまり多くを期待することができない。また、食品に含まれる抗酸化化合物は動脈硬化の原因となる過酸化脂質の生成を抑えたり、マクロファージの活性を高めて血中の過酸化脂質を処理したり、炎症状態における活性酸素の発生を抑えて血小板の活性化を防ぎ、血液の流動性を高める等、血管の正常な機能を保つ上で有用とされている(吉川 敏一 編著、「抗酸化物質のすべて」先端医学社)。
【0006】
そこで、血中コレステロール及び中性脂肪低下作用に優れたニンニクあるいは無臭ニンニクと抗酸化力に優れた食品素材とを組み合わせて併用することにより、脳血管障害や心疾患等の循環器疾患の予防や改善に役立つ医薬品、特定保健用食品、健康補助食品等の提供が可能になると考えられる。そしてその際に、組合せ(又は併用)によって抗酸化活性が相乗的に増加すれば、効果は強化され、ニンニクや無臭ニンニクの用量比率を減らすことも可能になるので、ニンニク臭の発生や胃腸障害といったニンニクあるいは無臭ニンニクの副作用を軽減することもできると考えられる。
【0007】
そして、このような食品素材の組合せによって抗酸化活性を増加させる方法についても、これまでに幾つかの試みが行われている。
例えば、白金族金属コロイドと羅漢果エキスとの組合せ(特開2000-232,865号公報)や、イチョウ葉エキスとグルタチオン又はグルタチオン高含有酵母エキスとの組合せ(特許第3,463,044号公報)では、抗酸化性が相乗的に増大するとされている。
【0008】
また、組合せにより抗酸化性が相乗的に増加するという記述はないものの、抗酸化性物質の組合せと考えられるものとして、フェノール性化合物、含硫化合物、テルペン類を含む脂溶性低分子化合物(精油成分に限定)を組合せた医薬組成物(国際公開WO98/13055号公報)、アスタキサンチン含有物と抗酸化性物質(ニンニク等)、抗酸化性成分(ルチン等)とを組合せた免疫増強剤(特開2002-80,351号公報)、グルタチオン等とビタミンC、ビタミンE、含硫アミノ酸等とを組合せた口腔内抗酸化剤製剤(特許公表2002-507,974号公報)、エストロジェン等の多環式フェノール類とグルタチオン等の抗酸化剤とを組合せた細胞保護効果を強化する組成物(特許公表2002-501,482号公報)、フェノール性化合物やカロチノイドとビタミンC、ビタミンE、β-カロチン等とを組合せた栄養補助食品(特許公表2004-530,407号公報)、ポリフェノール含有素材とニンニク、無臭ニンニクとを組合せた循環器疾患予防用組成物(特許公開2003-95,968号公報)、ニンニク等の植物からの抽出物とグルタチオン等の抗酸化素材とを組合せた化粧料、医薬、食品等の分野で有用なムコ多糖類断片化抑制剤、活性酵素消去剤、抗酸化剤及び化粧料(特開平06-24,937号公報)がある。
【特許文献1】特開2000-232,865号公報
【特許文献2】特許第3,463,044号公報
【特許文献3】国際公開WO98/13055号公報
【特許文献4】特開2002-80,351号公報
【特許文献5】特許公表2002-507,974号公報
【特許文献6】特許公表2002-501,482号公報
【特許文献7】特許公表2004-530,407号公報
【特許文献8】特許公開2003-95,968号公報
【特許文献9】特開平06-24,937号公報
【非特許文献1】斎藤 洋監修「ニンニクの科学」朝倉書店、2000年刊
【非特許文献2】V. Schulz, R. Haensel and V.E. Tyler,“Rational Phytotherapy”, Springer, New York (1996) pp112-113
【非特許文献3】Edtd by M. Barrett, “The Handbook of Clinically Tested Herbal Remedies”, Haworth Press, New York (2004), pp403-428
【非特許文献4】内田あゆみ、Food Style 21, pp59-65(2001)
【非特許文献5】内田あゆみ、Food Style 21, 2, pp45-48(1998)
【非特許文献6】吉川 敏一 編著、「抗酸化物質のすべて」先端医学社
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明者らは、特にニンニクや無臭ニンニクが有する優れた血中コレステロール低下作用や中性脂肪低下作用と、グルタチオン及びグルタチオンを高濃度に含有するグルタチオン含有素材やポリフェノール含有素材が有する抗酸化作用とに着目し、医薬品、特定保健用食品、健康補助食品等の素材としての併用について鋭意検討した結果、これらニンニク及び/又は無臭ニンニクとグルタチオン含有素材との併用により抗酸化活性が相乗的に増強されることを突き止め、また、これらニンニク及び/又は無臭ニンニクとグルタチオン含有素材との組合せに更にポリフェノール含有素材を加えることにより抗酸化活性がより一層相乗的に増強されることを突き止め、ニンニクや無臭ニンニクが有する優れた高脂血症予防効果に加えて、過酸化脂質の生成抑制、免疫力の強化、血液流動性の改善等が図られ、これによって高血圧、高脂血症、糖尿病、動脈硬化、癌等の生活習慣病の予防や改善が期待できることを見出し、本発明を完成した。
【0010】
従って、本発明の目的は、ニンニクや無臭ニンニクが有する優れた高脂血症予防効果に加えて抗酸化活性が相乗的に増強され、過酸化脂質の生成抑制、免疫力の強化、血液流動性の改善等が図られ、これによって高血圧、高脂血症、糖尿病、動脈硬化、癌等の生活習慣病の予防や改善が期待される医薬品、特定保健用食品、健康補助食品等の用途に有用な循環器疾患予防改善のための経口用組成物を提供することにある。
【0011】
また、本発明は、このような循環器疾患の予防と改善に有用な経口用組成物を所定の剤形に製剤して得られる加工食品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
すなわち、本発明は、ニンニク由来のニンニク素材及び無臭ニンニク由来の無臭ニンニク素材から選ばれた1種又は2種以上と、グルタチオン及びグルタチオンを高濃度に含有するグルタチオン含有素材から選ばれた1種又は2種以上とを含むことを特徴とする循環器疾患予防改善のための経口用組成物であり、また、この経口用組成物を所定の剤形に製剤して得られた加工食品である。
【0013】
また、本発明は、ニンニク由来のニンニク素材及び無臭ニンニク由来の無臭ニンニク素材から選ばれた1種又は2種以上と、グルタチオン及びグルタチオンを高濃度に含有するグルタチオン含有素材から選ばれた1種又は2種以上と、ポリフェノール含有素材から選ばれた1種又は2種以上とを含むことを特徴とする循環器疾患予防改善のための経口用組成物であり、また、この経口用組成物を所定の剤形に製剤して得られた加工食品である。
【0014】
本発明において、その抗酸化活性の評価は、DPPHラジカル消去法(Biol.Pharm.Bull.,23巻222〜225頁(2000年))に記載の方法に準拠して行われ、ニンニク素材及び/又は無臭ニンニク素材とグルタチオン含有素材との併用により抗酸化活性が相乗的に増強されることが突き止められ、また、これらニンニク素材及び/又は無臭ニンニク素材とグルタチオン含有素材との組合せに更にポリフェノール含有素材を加えることにより抗酸化活性がより一層相乗的に増強されることが突き止められている。
【0015】
本発明において、ニンニク由来のニンニク素材としては、生ニンニクのほか、例えば、生ニンニクを乾燥後に粉末化して調製されたニンニク乾燥粉末、生ニンニクをスライスして乾燥させたニンニク乾燥スライス、生ニンニクを水で煮たり、油で揚げたりして調製された加熱処理ニンニク、醤油、味噌、酢等に漬け込んで調製された浸漬ニンニク等を挙げることができる。また、無臭ニンニク由来の無臭ニンニク素材としては、生の無臭ニンニクのほか、生の無臭ニンニクを乾燥後に粉末化して調製された無臭ニンニク乾燥粉末、生の無臭ニンニクをスライスして乾燥させた無臭ニンニク乾燥スライス、生の無臭ニンニクを水で煮たり、油で揚げたりして調製された加熱処理無臭ニンニク、醤油、味噌、酢等に漬け込んで調製された浸漬無臭ニンニク等を挙げることができる。これらニンニク素材や無臭ニンニク素材については、そのいずれか1種のみを単独で用いることができるほか、必要により2種以上を組み合わせて用いることもできる。
【0016】
また、上記ニンニク素材や無臭ニンニク素材と併用するグルタチオン含有素材としては、グルタチオンそのもののほか、グルタチオンを比較的高濃度に含有するグルタチオン高含有エキス、グルタチオン高含有酵母等を挙げることができ、これらは必要により2種以上を混合して用いることもできる。グルタチオンは、細胞中に存在して細胞内での酸化還元反応をコントロールしている化合物であり、免疫系の質的変化、すなわち、抗原抗体反応を主体とする液性免疫とNK細胞やT細胞の活動を主体とする細胞性免疫の切り替えに関与しているほか、肝臓においては有毒化合物の無毒化、排泄に関与しており、肝機能改善薬として利用されている。グルタチオンは、グリシン、システイン、グルタミン酸からなるトリペプチドであって、合成品(例えば、和光純薬製等)を入手することができる。また、グルタチオン高含有エキスは、グルタチオンを食品素材として利用するために、グルタチオンを効率良く生産する酵母等を培養してその抽出液を濃縮したものであって、通常グルタチオン含有量が5重量%程度から20重量%程度までのものをいうが、含有量に応じてグルタチオンと同様の抗酸化活性が期待でき、また、例えば、グルタチオン高含有酵母エキス末(株式会社興人製、酵母エキスYH-15)等として容易に入手できる。
【0017】
このグルタチオン含有素材の使用量については、特に制限されるものではないが、使用するニンニク素材及び/又は無臭ニンニク素材の100重量部に対して、グルタチオンとして、通常0.1重量部以上50重量部以下、好ましくは1重量部以上10重量部以下であるのがよく、0.1重量部より少ないと相乗効果が望めないという問題が生じる場合があり、反対に、50重量部より多くなるとグルタチオンの過剰摂取の問題が生じる場合がある。事実、DPPHラジカル消去法を用いた実験では、ニンニク素材100重量部に対して約4重量部の配合割合(配合比:1/25)で、また、無臭ニンニク素材100重量部に対して約0.8重量部の配合割合(配合比:1/125)で、それぞれ相乗効果が認められている。
【0018】
更に、上記ニンニク素材及び/又は無臭ニンニク素材とグルタチオン含有素材とに加えて更に併用されるポリフェノール含有素材としては、例えば、ブドウ種子エキス、ルチン、ブルーベリーエキス、茶カテキン、松類樹皮エキス等が挙げられ、好ましくはブドウ種子エキス及びルチンであり、その1種のみを単独で用いることができるほか、2種以上を組み合わせて用いることもできる。ブドウ種子エキスは、プロアントシアニジン系のタンニン類を主成分として、多様なポリフェノール類を含むエキスであって、全フラバノン含量90重量%の粉末が販売されており(例えば、常磐植物化学研究所製商品名:ビノフェロン)、また、ルチンは、蕎麦、野菜等に広く分布するフラボノイドの配糖体であって、通常、エンジュの花蕾から抽出し、精製したものが販売されており(例えば、常磐植物化学研究所製)、共鳴構造によりラジカルを安定に保持することができるので、強い抗酸化活性を有している。
【0019】
このポリフェノール含有素材の使用量についても、特に制限されるものではないが、使用するニンニク素材及び/又は無臭ニンニク素材の100重量部に対して、通常0.1重量部以上100重量部以下、好ましくは1重量部以上50重量部以下であるのがよく、0.1重量部より少なかったり、反対に、50重量部より多くなると、相乗効果があまり期待できなくなる場合がある。事実、DPPHラジカル消去法を用いた実験では、ブドウ種子エキスは、ニンニク素材100重量部及びグルタチオン4重量部に対して約5重量部の配合割合(重量配合比:100/4/5)で、無臭ニンニク素材100重量部及びグルタチオン1重量部に対して約1重量部の配合割合(重量配合比:100/1/1)で、それぞれ相乗効果が認められており、また、ルチンは、ニンニク素材100重量部及びグルタチオン4重量部に対して約1重量部の配合割合(重量配合比:100/4/1)で、無臭ニンニク素材100重量部及びグルタチオン1重量部に対して約0.2重量部の配合割合(重量配合比:100/1/0.2)で、それぞれ相乗効果が認められている。
【0020】
また、本発明においては、上記ニンニク素材及び/又は無臭ニンニク素材とグルタチオン含有素材との組合せにより得られる経口組成物中に、又は、上記ニンニク素材及び/又は無臭ニンニク素材とグルタチオン含有素材とポリフェノール含有素材との組合せにより得られる経口組成物中に、第三成分素材として、ビタミンE、ビタミンC、ビタミンB6、ビタミンA等の抗酸化ビタミン類や、コエンザイムQ10や、α-リポ酸等の抗酸化性成分を始めとして、免疫力強化活性を有する素材、例えばアガリクス(Agaricus blazei)、メシマコブ(Phellinus linteus)、冬虫夏草(Cordyceps cinensis)、マイタケ(Grifola frondosa)、及び霊芝(Ganoderma lucidum)からなる群から選ばれた少なくとも2種以上の複数の菌類をそれぞれ玄米培地で個別に培養し、得られた複数の菌類培養物をその培地ごと加工素材として組み合せて得られた免疫力強化活性に優れた加工製剤品(特許第3,621,404号公報参照)等を配合してもよい。
【0021】
このような抗酸化性成分や免疫力強化活性に優れた加工製剤品を第三成分素材として配合することにより、マクロファージの活性が一層高められ、過酸化脂質や糖化タンパクの除去が促進され、その結果として循環器疾患の予防改善がより効果的に行われる。この際に用いられる第三成分素材の量は一般的に認められている使用量(例えば、厚生労働省の定める所要量やWHOの推奨摂取量)でもよいが、それより少なくても効果は充分に期待できる。また、特許第3,621,404号明細書に記載された免疫力強化活性素材に関しては、1日当りの推奨量(3g)より少ない1〜2g程度で効果が期待できる。
【0022】
本発明の経口組成物は、ニンニク素材、無臭ニンニク素材、グルタチオン含有素材、ポリフェノール含有素材、及び必要により添加される第三成分素材とを所定の割合で配合してそのまま経口用として用いてもよいほか、例えば必要により第三成分素材あるいはその一部としてデンプン質に富むものを用い、錠剤、顆粒剤、カプセル剤等の剤形に製剤し、加工食品としてもよい。
【発明の効果】
【0023】
本発明の循環器疾患予防改善のための経口用組成物によれば、ニンニクや無臭ニンニクが有する優れた高脂血症予防効果に加えて抗酸化活性が相乗的に増強されるので、過酸化脂質の生成抑制、免疫力の強化、血液流動性の改善等が図られ、これによって高血圧、高脂血症、糖尿病、動脈硬化、癌等の生活習慣病の予防や改善が期待される医薬品、特定保健用食品、健康補助食品等の用途に有用であり、また、ニンニクや無臭ニンニクあるいはグルタチオン等のその他の素材は通常の使用量よりも少量で効果を発揮することになり、これらの素材が有する、例えば呼気のニンニク臭等の副作用が軽減される。また、このような循環器疾患の予防と改善に有用な経口用組成物を所定の剤形に製剤することにより、食し易い、あるいは、飲用し易い特定保健用食品、健康補助食品等の加工食品とすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、実施例に基づいて、本発明の好適な実施の形態を具体的に説明する。
なお、以下の実施例において、抗酸化活性の測定は、517nmに特異的な吸収を有するα,α-ジフェニル-β-ピクリルヒドラジルラジカル(DPPH)を用いてラジカル捕捉型抗酸化物質の抗酸化活性を化学量論的に調べる方法であるDPPHラジカル消去法(Biol. Pharm. Bill., Vol.23, pp222-225 (2000))に準拠し、次のようにして行った。
【0025】
すなわち、0.1M酢酸緩衝液(pH5.5)2mL中にDPPHの500μMエタノール溶液1mLとエタノール2mLとを加え、得られた混合液に試料溶液100μLを加え、室温にて30分間インキュベートし、これを分光光度計にかけて517nmのDPPHの吸光度を測定した。対照として、試料溶液に代えてジメチルスルホキシド(DMSO)100μLを用いたものについても同様に吸光度測定を行い、対照の吸光度から試料溶液を加えた場合の吸光度を引いた値(吸光度差)を求めた。この吸光度差が抗酸化活性の程度を示している。なお、試料溶液は、測定時に約50倍に希釈されることになる。
【0026】
実施例1
〔試料溶液の調製〕
ニンニク乾燥粉末(マコーミック社製ガーリックパウダー)10gを90wt%-エタノール150mLに加え、60℃で6時間インキュベートした後、濾過して得られた抽出液を回収し、得られた抽出液の溶剤を減圧下に留去し、ニンニク抽出物300mgを得た。得られたニンニク抽出物を50wt%-エタノール60mLに溶解し、これを順次希釈して0.01〜0.5wt%の溶液を作成し、試料溶液とした。得られたニンニクの試料溶液の濃度と吸光度差とが直線性を示す範囲は270〜1,500ppm(ニンニク乾燥粉末に換算した値)であった。
【0027】
無臭ニンニク乾燥粉末(オサダ社製ムシューリックパウダーPS-II)10gを90wt%-エタノール150mLに加え、60℃で6時間インキュベートした後、濾過して得られた抽出液を回収し、得られた抽出液の溶剤を減圧下に留去し、無臭ニンニク抽出物510mgを得た。得られた無臭ニンニク抽出物を50wt%-エタノール25mLに溶解し、これを順次希釈して0.1〜2wt%の溶液を作成し、試料溶液とした。得られた無臭ニンニクの試料溶液の濃度と吸光度差とが直線性を示す範囲は800〜7,000ppm(無臭ニンニク乾燥粉末に換算した値)であった。
【0028】
グルタチオン(東京化成社製)50mgをジメチルスルホキシド(DMSO)10mLに溶解し、これを順次希釈して0.5〜0.05wt%の溶液を作成し、試料溶液とした。得られたグルタチオンの試料溶液の濃度と吸光度差とが直線性を示す範囲は10〜40ppmであった。
また、グルタチオン高含有酵母エキス末(株式会社興人製酵母エキスYH‐15)0.5gを水10mLに溶解し、これを順次希釈して5〜0.1wt%の溶液を作成し、試料溶液とした。得られたグルタチオン高含有酵母エキスの試料溶液の濃度と吸光度差とが直線性を示す範囲は100〜300ppmであった。
【0029】
ルチン(常磐植物化学研究所製)10mgをジメチルスルホキシド(DMSO)10mLに溶解し、これを順次希釈して0.1〜0.01wt%の溶液を作成し、試料溶液とした。得られたルチンの試料溶液の濃度と吸光度差とが直線性を示す範囲は2〜13.5ppmであった。
ブドウ種子エキス(常磐植物化学研究所製ビノフェロン)5mgをジメチルスルホキシド(DMSO)10mLに溶解し、これを順次希釈して0.05〜0.001wt%の溶液を作成し、試料溶液とした。得られたブドウ種子エキスの試料溶液の濃度と吸光度差とが直線性を示す範囲は0.85〜5ppmであった。
【0030】
ビタミンE(東京化成製試薬α-トコフェロール)20mgをジメチルスルホキシド(DMSO)10mLに溶解し、これを順次希釈して0.2〜0.01wt%の溶液を作成し、試料溶液とした。得られたビタミンEの試料溶液の濃度と吸光度差とが直線性を示す範囲は3.5〜20ppmであった。
【0031】
ビタミンC(東京化成製試薬アスコルビン酸)10mgをジメチルスルホキシド(DMSO)10mLに溶解し、これを順次希釈して0.1〜0.005wt%の溶液を作成し、試料溶液とした。得られたビタミンCの試料溶液の濃度と吸光度差とが直線性を示す範囲は2〜9ppmであった。
【0032】
以上のニンニク、無臭ニンニク、グルタチオン、グルタチオン高含有酵母エキス、ルチン、ブドウ種子エキス、ビタミンE、及びビタミンCについて得られた各試料溶液を用い、表1{ニンニク(濃度300ppm)との組合せ}、表2{無臭ニンニク(濃度1,500ppm)との組合せ}及び表3{グルタチオン(濃度12ppm)との組合せ}に示す濃度での組合せのものについて、その吸光度差(C)を測定した。なお、組合せ実験での濃度は、吸光度の飽和領域をさけるため、試料溶液の濃度と吸光度差とが直線性を示す範囲の中からできるだけ低濃度のものを選んだ。
【0033】
結果を表1、表2及び表3に示す。この吸光度差(C)が単独のニンニク、無臭ニンニク又はグルタチオンの吸光度差(A)と試料溶液の吸光度差(B)の和(A+B)に等しいとき、すなわち、C/(A+B)≒1の場合は組合せによる相乗効果がなく、C/(A+B)が1より大きければ(試験法の数値のばらつきから最低1.2程度以上)、組合せによる相乗効果があると認められる。
【0034】
【表1】

【0035】
【表2】

【0036】
【表3】

【0037】
ニンニク(濃度300ppm)との組合せを示す表1の結果から明らかなように、ビタミンEやビタミンCではC/(A+B)の値が略1であって相乗効果が認められないのに対し、グルタチオでは1.69を、また、グルタチオン高含有酵母エキスでは2.07の値を示し、組合せによる相乗効果が顕著に認められた。
また、無臭ニンニク(濃度1,500ppm)との組合せを示す表2から明らかなように、ニンニクの場合と同様に、ビタミンEやビタミンCとの組合せでは相加的な値しか示さなかったのに対し、グルタチオでは1.70を、また、グルタチオン高含有酵母エキスでは1.81の値を示し、組合せによる相乗効果が認められた。
【0038】
更に、グルタチオン(濃度12ppm)との組合せを示す表3の結果から明らかなように、グルタチオンは、ルチン及びブドウ種子エキスとの組合せにおいて抗酸化活性が相乗的に増加しており、ニンニクや無臭ニンニクにグルタチオン、ルチン又はブドウ種子エキスを単独で添加するより、グルタチオンを含む複数の組合せで添加する方がより効果的に抗酸化活性を高めることができることが示唆された。
【0039】
実施例2
実施例1の表3に示す結果に基づく示唆を確認するため、実施例1の表1中のニンニク(濃度300ppm)とグルタチオン(濃度12ppm)との組合せに、更にルチン(濃度2.5ppm)を添加し、実施例1の場合と同様に、その吸光度差を測定した。
【0040】
結果は、ニンニク(濃度300ppm)とグルタチオン(濃度12ppm)との組合せの場合が吸光度差0.425であり、また、ルチンの吸光度差が0.124であるのに対し、これらニンニク(濃度300ppm)、グルタチオン(濃度12ppm)及びルチン(濃度2.5ppm)の組合せの場合には吸光度差が0.719となって単純な相加理論値(0.549)の1.31倍に達し、明らかに相乗効果が発現した。
【0041】
同様に、無臭ニンニク(濃度1,500ppm)とグルタチオン(濃度12ppm)との組合せ(吸光度差0.480)に、更にルチン(濃度2.5ppm、吸光度差0.124)を添加し、その吸光度差を測定したところ0.743であった。これは、相加理論値(0.604)の1.23倍であり、相乗効果が発現ししていることが認められた。
【0042】
実施例3
実施例1の表3に示す結果に基づく示唆を確認するため、実施例1の表1中のニンニク(濃度300ppm)とグルタチオン(濃度12ppm)との組合せに、更にブドウ種子エキス(濃度20ppm)を添加し、実施例1の場合と同様に、その吸光度差を測定した。
【0043】
同様に、無臭ニンニク(濃度1,500ppm)とグルタチオン(濃度12ppm)との組合せ(吸光度差0.480)に、更にブドウ種子エキス(濃度20ppm、吸光度差0.122)を添加し、その吸光度差を測定したところ0.728であった。これは、相加理論値(0.602)の1.21倍であり、この場合も相乗効果が発現ししていることが認められた。
【0044】
結果は、ニンニク(濃度300ppm)とグルタチオン(濃度12ppm)との組合せの場合が吸光度差0.425であり、また、ブドウ種子エキスの吸光度差が0.122であるのに対し、これらニンニク(濃度300ppm)、グルタチオン(濃度12ppm)及びブドウ種子エキス(濃度20ppm)の組合せの場合には吸光度差が0.651となって単純な相加理論値(0.547)の1.19倍に達し、この組合せの場合にも相乗効果が発現した。
【0045】
実施例4
無臭ニンニク、グルタチオン高含有酵母エキス、ルチン、ブドウ種子エキス、ビタミンC、ビタミンE、ビタミンB6塩酸塩、及び免疫力強化活性剤として玄米培地菌糸体をそれぞれ70重量部、90重量部、15重量部、15重量部、70重量部、4重量部、15重量部、及び700重量部の割合で配合し、得られた混合物を微粉末にして打錠し、健康補助食品として3錠当り無臭ニンニク70mg、グルタチオン高含有酵母エキス90mg、ルチン15mg、ブドウ種子エキス15mg、ビタミンC70mg、ビタミンE4mg、ビタミンB6塩酸塩15mg、及び玄米培地菌糸体700mgを含む実施例4の錠剤を製造した。なお、玄米培地菌糸体については、特許第3,621,404号公報の実施例1に記載のものを用いた。
【0046】
得られた実施例4の錠剤について、ボランティアーの治験者13名に1日3回、1回当り3錠を2週間に亘って摂食してもらい、その前後における血液を採取して総コレステロール値、中性脂肪値、血中の過酸化脂質の値を測定し、血中コレステロール及び中性脂肪の低下作用と抗酸化活性について調べた。
総コレステロール値の結果を図1に、中性脂肪値の結果を図2に、また、過酸化脂質の結果を図3にそれぞれ示す。
【0047】
図1に示す結果から明らかなように、コレステロール値が高めの治験者6人のうち、5人については数値の低下が認められ、図2に示す結果から明らかなように、中性脂肪値が高めの治験者5人全員について数値の低下、特に数値が高かった人(A)には著しい効果が認められた。
【0048】
更に、過酸化脂質の値は、体内に発生した活性酸素によって細胞膜の構成成分である脂質が過酸化されることによって生成することが多いため、身体の抗酸化活性を計る指標として利用されるが、図3に示す結果から明らかなように、実験開始前の値が1nmol/ml以上(基準値は1.4 nmol/ml以下)の治験者6名について、いずれの被験者も実験前と比べて数値が下がっており、抗酸化活性が奏効したものと思われる。特に数値の高かったものには顕著な効果がみられた。
【0049】
なお、実施例4では、無臭ニンニクの摂取量が1日210mgであり、2週間の摂取で効果が現われている。これは、通常のニンニク製剤が1日900mg程度を必要とし、3ヶ月程度の継続摂取を行うものであることから考えると、極めて少ない摂食量で有効であったことがわかる。すなわち、抗酸化活性が相乗的に強化されると、ニンニクや無臭ニンニクは少量でその効果を発揮することになり、これらの素材が有している副作用の軽減が可能なことを意味している。
【0050】
また、この実施例4では、免疫力強化活性の認められている玄米培地菌糸体等との組合せにより、抗酸化力の強化によって免疫力が一層強化され、例えば、実施例4のボランティアーは実験前後における各種検査結果からNK細胞活性の増強、血液流動性の改善、高めの血圧の降下、高めの血糖値の低下が確認された。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明の循環器疾患予防改善のための経口用組成物は、ニンニクや無臭ニンニクの高脂血症予防改善効果に加えて、抗酸化活性の増強によって過酸化脂質の生成抑制、免疫力の強化、血液流動性の改善の効果を有し、高血圧、高脂血症、糖尿病、動脈硬化、ガン等の生活習慣病の予防、改善が期待できるものであり、老化抑制のための優れた医薬品を始めとして、特定保健用食品、健康補助食品等として極めて有用であり、高齢化社会に貢献できるものである。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】図1は、本発明の実施例4で得られた錠剤について、総コレステロール値に関する治験結果を示すグラフ図である。
【0053】
【図2】図2は、本発明の実施例4で得られた錠剤について、中性脂肪値に関する治験結果を示すグラフ図である。
【0054】
【図3】図3は、本発明の実施例4で得られた錠剤について、過酸化脂質に関する治験結果を示すグラフ図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ニンニク由来のニンニク素材及び無臭ニンニク由来の無臭ニンニク素材から選ばれた1種又は2種以上と、グルタチオン及びグルタチオンを高濃度に含有するグルタチオン含有素材から選ばれた1種又は2種以上とを含むことを特徴とする循環器疾患予防改善のための経口用組成物。
【請求項2】
ニンニク由来のニンニク素材及び無臭ニンニク由来の無臭ニンニク素材から選ばれた1種又は2種以上と、グルタチオン及びグルタチオンを高濃度に含有するグルタチオン含有素材から選ばれた1種又は2種以上と、ポリフェノール含有素材から選ばれた1種又は2種以上とを含むことを特徴とする循環器疾患予防改善のための経口用組成物。
【請求項3】
グルタチオン含有素材が、グルタチオン高含有酵母エキス粉末及び/又はグルタチオン高含有酵母粉末である請求項1又は2に記載の循環器疾患予防改善のための経口用組成物。
【請求項4】
ポリフェノール含有素材が、ブドウ種子エキス、ルチン、ブルーベリーエキス、茶カテキン及び松類樹皮エキスから選ばれた1種又は2種以上である請求項2又は3に記載の循環器疾患予防改善のための経口用組成物。
【請求項5】
請求項1〜5のいずれかに記載の経口用組成物を所定の剤形に製剤して得られた加工食品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−347975(P2006−347975A)
【公開日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−177524(P2005−177524)
【出願日】平成17年6月17日(2005.6.17)
【出願人】(301054287)株式会社バイオソリューションズ (1)
【Fターム(参考)】