説明

循環式エレクトロスプレーイオン化装置

【課題】従来は、エレクトロスプレー溶液を噴霧する際に、対応するノズルの位置が固定されており、イオン化された検体の一部分のみが質量分析器に到達し、質量分析器が取得する検体に対応した信号の強度及び安定性が相対的に低かった。
【解決手段】駆動機構51とノズル52とを含む循環式エレクトロスプレーイオン化装置5とする。ノズル52は、エレクトロスプレー媒体の液滴を順次形成し、検体をイオン化してイオン化検体を形成するべく液滴に複数の電荷を付与するためにノズル52と受け入れユニット6の間に電位差が印加された際に帯電液滴が移動経路に沿って受け入れユニット6に向かって強制的に移動するように、質量分析計2の受け入れユニット6との間に移動経路を形成する。ノズル軸は、循環軸RCを中心として循環ルートAを前進するべく駆動機構51によって駆動される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2010年3月15日付けで出願された中華民国特許出願第099107458号の優先権を主張する。
【0002】
本発明は、エレクトロスプレーイオン化(ElectroSpray Ionization:ESI)装置に関し、更に詳しくは、動的方式によってエレクトロスプレー媒体の液滴を生成するべく適合された循環式エレクトロスプレーイオン化装置に関する。
【背景技術】
【0003】
質量分析によれば、サンプルから採取された検体の分子量を取得して検体を識別可能である。質量分析計は、一般に、イオン化装置と、質量分析器と、検出器と、を含む。
【0004】
イオン化法の1つは、エレクトロスプレーイオン化(ESI)と呼ばれている。図1に示されているように、従来のエレクトロスプレーイオン化装置11は、エレクトロスプレーイオン化手順を実行し、エレクトロスプレー溶液中に含まれた検体をイオン化する。従来のエレクトロスプレーイオン化装置11は、エレクトロスプレーイオン化質量分析計の質量分析器12の進入側121に向かって開口した開口端部111を具備するノズル112を含む。使用の際には、例えば、2〜5kVの電位差などの電界をノズル112の開口端部111と質量分析器12の進入側121の間に生成する。次いで、エレクトロスプレー溶液が、開口端部111に向かって移動するべく、ノズル112から押し出される。エレクトロスプレー溶液は、ノズル112の開口端部111と質量分析器12の進入側121の間に存在している電界と、開口端部111におけるエレクトロスプレー溶液の表面張力の相乗効果に起因し、ノズル112の開口端部111を通過するのに伴って、電荷によって充填されたテイラーコーン2を形成する。電界の力がノズル112の開口端部111におけるエレクトロスプレー溶液の表面張力を克服するのに伴って、多価電荷及び検体を含む液滴が形成され、これらの液滴は、その進入側121を通じて質量分析器12の内部に強制的に進入する。
【0005】
帯電液滴がノズル112の開口端部111から質量分析器12の進入側121に向かって空気中を移動するのに伴って、帯電液滴のサイズが縮小するように帯電液滴の液体部分が蒸発し、これにより、多価電子が検体に付着して相対的に小さなm/z値(即ち、質量/電荷比であり、ここで、mは、イオン化検体の質量であり、且つ、zは、イオン電荷/素電荷の数である)を有するイオン化検体が形成される。蛋白質分子などの高分子の分子量は、数十万のレベルであるため、イオン化分子を形成するべく高分子のそれぞれのものに付着する電荷は、質量分析器12によって検出できるようにm/z値を十分に小さくするべく、多価であることを要する。エレクトロスプレーイオン化法は、高分子を効率的にイオン化可能であるのみならず、相対的に小さなm/z値を得ることが可能であるため、質量分析器12によって課される検出の限度をも克服する。従って、エレクトロスプレーイオン化質量分析法を使用し、蛋白質分子を考察可能である。
【0006】
過去において、エレクトロスプレーイオン化のために、いくつかの改善が実施されている。図2に示されているように、特許文献1及び特許文献2は、回転ディスク113と、回転ディスク113上に取り付けられると共に複数の異なるエレクトロスプレーサンプル溶液をそれぞれ供給する複数のノズル112と、を含む別の従来のエレクトロスプレーイオン化装置11aを開示している。回転ディスク113は、回転可能であり、従って、エレクトロスプレーサンプル溶液の中の特定のものに対してエレクトロスプレーイオン化の実行を要する際に、選択されたエレクトロスプレーサンプル溶液が質量分析器12の内部に進入できるように、ノズル112の中の選択されたものを質量分析器12との関係において指定された場所に移動させることができる。図3に示されているように、特許文献3は、複数の異なるエレクトロスプレーサンプル溶液をそれぞれ噴霧するノズル112の配列体と、ノズル112と質量分析器12の進入側121の間に配設されると共にアパーチャ115を有するように形成されるべく適合された遮断装置114と、を含む別の従来のエレクトロスプレーイオン化装置11bを開示している。遮断装置114は、アパーチャ115がノズル112の中の選択されたものと一直線上に揃った状態になることができるように、ノズル112との関係において角運動可能である。この結果、毎回、質量分析のために、選択されたエレクトロスプレーサンプル溶液の液滴のみがアパーチャ115を通過可能であり、これにより、質量分析器12の進入側121に向かって前進することになる。換言すれば、従来のエレクトロスプレーイオン化装置11a、11bのそれぞれのものは、複数のエレクトロスプレーサンプル溶液の分析を要する際に便利なエレクトロスプレーイオン化を円滑に実行する。
【0007】
しかしながら、上記のものを含むすべての従来のエレクトロスプレーイオン化装置は、それぞれの単一のエレクトロスプレー溶液のエレクトロスプレーイオン化において、エレクトロスプレー溶液を噴霧する際に、対応するノズル112の位置が固定されているという同一の欠点を具備しており、従って、イオン化された検体の一部分のみが進入側121を介して質量分析器12に到達し、その他の部分は、空間電荷現象に起因して周囲の環境に分散することになる。この結果、質量分析器12が取得する検体に対応した信号の強度及び安定性が相対的に低い。
【0008】
以上の事情に鑑み、質量分析器12に到達するイオン化検体の量を増大させることが可能であれば、エレクトロスプレーイオン化質量分析(ESI−MS)業界にとって非常に有益であろう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許第6,350,617号明細書
【特許文献2】米国特許第6,621,075号明細書
【特許文献3】米国特許第6,066,848号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
従って、本発明の目的は、従来技術における前述の欠点を除去可能なエレクトロスプレーイオン化装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明によれば、検体の分析を目的とする質量分析計内において使用されるべく適合され、且つ、検体のイオン化によって取得可能なイオン化検体をその内部に受けれるべく配設された受け入れユニットを含む循環式エレクトロスプレーイオン化装置が提供される。この循環式エレクトロスプレーイオン化装置は、駆動機構と、少なくとも1つのノズルと、を含む。ノズルは、エレクトロスプレー媒体の液滴を順次生成するべく構成されており、且つ、検体をイオン化してイオン化検体を形成するべく複数の電荷を液滴に付与するためにノズルと受け入れユニットの間に電位差が印加された際に、帯電液滴が移動経路に沿って受け入れユニットに向かって強制的に運動するように、受け入れユニットとの間に移動経路を形成するべく適合されている。ノズルは、ノズル軸を定義しており、且つ、ノズル軸が循環ルートに沿って移動するように、且つ、ノズルを離れた直後に、液滴が協働し、循環ルートによって実質的に取り囲まれた断面を有する実質的に柱状のプルームを形成するように、循環軸を中心とした循環ルートを進むべく駆動機構によって駆動される。
【0012】
又、本発明は、前述の循環式エレクトロスプレーイオン化装置と、検体のイオン化によって取得可能なイオン化検体をその内部に受け入れるべく配設された受け入れユニットと、を含む質量分析計をも提供する。
【0013】
本発明のその他の特徴及び利点については、添付の図面を参照した好適な実施例に関する以下の詳細な説明から明らかとなるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】従来のエレクトロスプレーイオン化装置を示す概略図である。
【図2】米国特許第6,350,617号及び第6,621,075号に開示されている別の従来のエレクトロスプレーイオン化装置の概略図である。
【図3】米国特許第6,066,848号に開示されている更に別の従来のエレクトロスプレーイオン化装置の概略図である。
【図4】本発明による循環式エレクトロスプレーイオン化(RESI)装置の第1の好適な実施例の概略上面図である。
【図5】第1の好適な実施例の概略側面図である。
【図6】本発明による循環式エレクトロスプレーイオン化装置の第2の好適な実施例の概略上面図である。
【図7】第2の好適な実施例の概略側面図である。
【図8】公転ルートの最も低い地点に配設されたノズルを示す第2の好適な実施例の概略正面図である。
【図9】公転ルートの最も右側の地点に配設されたノズルを示す第2の好適な実施例の断片概略正面図である。
【図10】循環式エレクトロスプレーイオン化装置と質量分析計の受け入れユニットの間の異なる構成を示す概略側面図である。
【図11】本発明による循環式エレクトロスプレーイオン化装置の第3の好適な実施例の概略側面図であり、この図には、複数のサブノズルの第1配列体が示されている。
【図12】図11に示されている第3の好適な実施例の概略断面図において複数のサブノズルの第2配列体を示す。
【図13】循環式エレクトロスプレーイオン化装置のノズルと受け入れユニットの質量分析器の間における外部電界の形成を示す概略図である。
【図14】形状が環状である質量分析器の進入側を示す概略図である。
【図15】本発明の循環式エレクトロスプレーイオン化装置を内蔵するエレクトロスプレー支援レーザー脱離イオン化(ELDI)質量分析計の概略図である。
【図16】本発明の循環式エレクトロスプレーイオン化装置を内蔵するレーザー誘起音響脱離(LIAD)質量分析計の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明について更に詳細に説明するに当たり、本開示においては、同一の要素が同一の参照符号によって表記されていることに留意されたい。
【0016】
図4及び図5を参照すれば、本発明による循環式エレクトロスプレーイオン化装置5の第1の好適な実施例は、質量分析計2において使用されるべく適合されている。質量分析計2は、検体の分析を目的としており、且つ、質量分析器3と、検出器4と、を含み、以下においては、これらの質量分析器及び検出器を受け入れユニット6と総称する。更には、質量分析器3の進入側31も、受け入れユニット6の進入側と相互交換可能に呼称することとする。受け入れユニット6は、後続の質量分析による分析のために、検体のイオン化によって取得可能なイオン化検体をその内部に受け入れるべく配設されている。
【0017】
循環式エレクトロスプレーイオン化装置5は、駆動機構51と、少なくとも1つのノズル52と、を含む。ノズル52は、エレクトロスプレー媒体の液滴を順次形成するべく構成されており、且つ、検体をイオン化してイオン化検体を形成するべく複数の電荷を液滴に付与するためにノズル52と受け入れユニット6の間に電位差が印加された際に、帯電液滴が移動経路に沿って受け入れユニット6に向かって強制的に移動するように、受け入れユニット6との間に移動経路を形成するべく適合されている。更には、ノズル52は、ノズル軸(L1)を定義しており、且つ、ノズル軸(L1)が循環ルート(A)に沿って移動するように、且つ、ノズル52を離れた直後に、液滴が協働し、循環ルート(A)によって実質的に取り囲まれた断面を有する実質的に柱状のプルームを形成するように、循環軸(RC)を中心とした循環ルート(A)を進むべく駆動機構51によって駆動される。
【0018】
本実施例においては、循環ルートは、公転ルート(A)であり、且つ、円形の形状として例示されている。当然のことながら、循環ルートは、その他のループ状の形状であってもよいことにここでは留意されたい。極端なケースにおいては、循環ルートは、実質的に往復運動ルートとして構成することも可能である。これは、循環軸との関係において互いに場所が反対であると共に互いに運動方向が反対である循環ルートの2つの半体ルートセグメントを、これらの半分ルートセグメントを互いに近接させることによって循環ルートを実質的に往復運動ルートとするように、直線化することによって実現される。ここでは、以下において、循環軸(RC)を「公転軸(RC)」と呼称するという点に更に留意されたい。
【0019】
駆動機構51は、主駆動モジュール511と、公転駆動モジュール512と、を含む。主駆動モジュール511は、回転軸部(C1)を中心として回転する出力シャフト部513を含む。公転駆動モジュール512は、公転シャフト部514を含み、この公転シャフト部は、既定の距離(R)だけ回転軸部(C1)からオフセットされたシャフト軸部(C2)を定義しており、且つ、回転軸部(C1)を中心として公転するように駆動されるべく出力シャフト部513に対して結合された近端部515と、公転ルート(A)を既定の距離(R)との既定の相関関係に配置するようにノズル52に対して結合された遠端部516と、を具備する。
【0020】
本実施例においては、回転軸部は、1本の回転軸(C1)を含み、且つ、出力シャフト部は、回転軸(C1)を中心として回転する1本の出力シャフト513を含む。更には、シャフト軸部は、既定の距離(R)だけ回転軸(C1)からオフセットされた1本のシャフト軸(C2)を含む。公転シャフト部は、公転シャフト514を含み、この公転シャフトは、シャフト軸(C2)を定義しており、且つ、近端部分515と、遠端部分516と、を含む。近端部分515は、近端部を構成しており、且つ、回転軸(C1)を中心として公転するように駆動されるべく、出力シャフト513に対して結合されている。遠端部分516は、遠端部を構成しており、且つ、公転ルート(A)を既定の距離(R)との既定の相関関係に配置するように、ノズル52に対して結合されている。更には、公転シャフト514は、回転軸(C1)とシャフト軸(C2)の間の既定の距離(R)が調節可能となるように、複数の位置の中の既定のものにおいて近端部分515に対して遠端部分516を結合するための調節ロッド5141を更に含む。
【0021】
尚、本実施例においては、公転軸(RC)が回転軸(C1)と一直線上に揃っていない状態において示されているが、本発明のその他の実施例においては、既定の距離(R)と公転ルート(A)の間の既定の相関関係のみ変化しなければ、公転軸(RC)を回転軸(C1)と一直線上に揃えることが可能であることに留意されたい。
【0022】
更には、本実施例においては、駆動機構51は、主壁518を具備するカプラ517を更に含む。主壁518は、自身に対して垂直の中心線(C3)を定義しており、且つ、中心線(C3)がノズル軸(L1)の方向においてノズル軸(L1)に対して平行に方向付けされるように、自身との関係においてノズル52を固定するべく構成されている。主壁518は、管状軸受け表面(図示されてはいない)をその内部に具備するべく構成されており、この管状軸受け表面は、公転ルート(A)が既定の距離(R)との既定の相関関係に維持されるように、公転シャフト514の遠端部分516に係合するべく構成されている。
【0023】
回転式エレクトロスプレーイオン化装置5は、主壁との関係においてノズル52を固定するように、ノズル52をカプラ517の主壁518に対して結合するべく配設された三路パイプ519を更に含む。三路パイプ519は、ノズル52の上流に配設された第1導管5191と、第1導管5191の上流に配設され、且つ、エレクトロスプレー媒体をその内部に導入するための注入口を具備する第2導管5192と、第2導管5192の下流及び第1導管5191の上流に配設され、且つ、受け入れユニット6との間に電位差を生成するべく電極と嵌合するポートを具備した第3導管5193と、を具備する。本実施例においては、三路パイプ519は、ノズル52がカプラ517の下方に配設されるように、カプラ517の底部表面に取り付けられている。本実施例においては、検体は、エレクトロスプレー媒体中に含まれている。
【0024】
更には、主駆動モジュール511は、主駆動シャフト5112を有するモーター5111と、主駆動シャフト5112の駆動力を伝達して出力シャフト513を駆動するべく配設されたギア列5113と、を更に含む。
【0025】
好ましくは、ノズル52は、エレクトロスプレー媒体の液滴を順次形成するべく構成された排出口を有するように形成された毛細管である。或いは、この代わりに、ノズル52は、インクジェットプリンタにおいて使用されているものに類似した圧電又は熱バブル技術を利用して液滴を形成するべく構成することも可能である。
【0026】
液滴を形成するエレクトロスプレー媒体は、エレクトロスプレーイオン化法において通常使用される溶液であり、この例は、例えば、陽子(H)又はOHなどのイオンを含む溶液を含む。これについては、当業者に周知であるため、簡潔にするべく、この更なる詳細については本明細書において省略することとする。一般には、陽子又はOHイオンを含む溶液がエレクトロスプレー媒体として使用される。陽子は、溶液中に酸を添加することによって取得可能である。電界方向がノズル52から受け入れユニット6の方を指している状態においては、複数の「正に帯電した液滴」を形成可能である。これが、所謂、「正イオンモード」のエレクトロスプレーイオン化質量分析である。逆に、OHイオンは、溶液中に塩基を添加することによって付与可能である。電界方向が受け入れユニット6からノズル52の方を指している状態においては、複数の「負に帯電した液滴」を形成可能である。これが、所謂、「負イオンモード」のエレクトロスプレーイオン化質量分析である。
【0027】
エレクトロスプレーイオン化質量分析(ESI−MS)を通じて結果的に得られる質量スペクトルの解釈を円滑に実行するべく、エレクトロスプレー法を利用した質量分析による分析用としては、通常、陽子(H)を含む帯電液滴を伴う「正イオンモード」が使用されている。従って、好ましくは、エレクトロスプレー媒体は、酸を含む溶液である。更に好ましくは、エレクトロスプレー媒体は、結果的に得られる質量スペクトルを単純化するべく、液滴中の液体部分が、受け入れユニット6がイオン化検体を受け取るよりも前に蒸発することができるように、揮発性の液体を含む溶液である。
【0028】
或いは、この代わりに、非反応性のガスを供給して揮発性液体の蒸発を支援するべく、ガス供給機構(図示されてはいない)を回転式エレクトロスプレーイオン化装置5と受け取りユニット6の間に提供することも可能である。好ましくは、この非反応性ガスは、受け入れユニット6に向かって吹き付けられ、且つ、室温〜325℃の範囲の温度を具備する。好ましくは、非反応性ガスは、窒素ガス、ヘリウムガス、ネオンガス、アルゴンガス、及びこれらの組合せからなる群から選択される。
【0029】
図6及び図7を参照すれば、本発明による回転式エレクトロスプレーイオン化装置5の第2の好適な実施例は、回転式エレクトロスプレーイオン化装置5の回転軸部が2本の回転軸(C1)を含むと共に、回転式エレクトロスプレーイオン化装置5の出力シャフト部がこれらの2本の回転軸(C1)を中心としてそれぞれ回転するように2本の出力シャフト(513)を含んでいるという点が、第1の好適な実施例と異なっている。相応して、回転式エレクトロスプレーイオン化装置5のシャフト軸部は、2本のシャフト軸(C2)を含むと共に、回転式エレクトロスプレーイオン化装置5の公転駆動モジュール512の公転シャフト部は、これらの2本のシャフト軸(C2)をそれぞれ定義する2本の公転シャフト514を含む(2本のシャフト軸(C2)は、図7の視点においては、重なっているものと思われる)。シャフト軸(C2)のそれぞれのものは、既定の距離(R)だけ、回転軸(C1)の中の対応するものからオフセットされている。公転シャフト514のそれぞれのものは、近端部分515と、遠端部分516と、を具備する。公転シャフト514のそれぞれのものの近端部分515は、回転軸(C1)の中の対応するものを中心として公転するべく駆動されるように、出力シャフト513の中の対応するものに対して結合されている。
【0030】
更には、第2の好適な実施例によるカプラ517の主壁518は、2つの管状軸受け表面をその内部に具備するべく構成されており、これらの管状軸受け表面は、主壁518の中心線(C3)から等距離に配設され、且つ、公転ルート(A)が既定の距離(R)との既定の相関関係に維持されるように、2本の公転シャフト514の遠端部分516に係合するべくそれぞれ構成されている。更には、本実施例においては、三路パイプ519は、ノズル52がカプラ517の上方に配設されるように、カプラ517の上部表面に取り付けられている。
【0031】
更には、第2の好適な実施例によれば、駆動機構51の主駆動モジュール511のギア列5113は、2本の出力シャフト513が、同一の周方向において、且つ、それぞれ2つの回転軸(C1)を中心として、回転することを保証するべく、アイドラギア5116を含む。図8及び図9を参照すれば、カプラ517は、公転ルート(A)に沿って公転軸(RC)を中心として公転するようにノズル52を配置しつつ、2本の回転軸(C1)に対して平行であると共に2本の回転軸(C1)を直線の中点において接続する直線が交差する中心軸(C4)を中心として、全体として公転する。本実施例においては、公転シャフト514、カプラ517、及びノズル52のそれぞれのものは、既定の距離(R)に等しい半径を具備する円形の経路に沿って公転する。
【0032】
図8に示されているように、2本の公転シャフト514がそれぞれの対応する円形の経路の最も低い地点に配設された際には、ノズル52は、公転ルート(A)の最も低い地点に配設される。図9に示されているように、2本の公転シャフト514がそれぞれの対応する円形の経路の最も右側の地点に配設された際には、ノズル52は、公転ルート(A)の最も右側の地点に配設される。
【0033】
ここで、ノズル52と受け入れユニット6の間に形成される移動経路は、以上の実施例においては、実質的に真っ直ぐであることに留意されたい。但し、図10に示されているように、エレクトロスプレーイオン化質量分析(ESI−MS)業界においては、ノズル52のノズル軸(L1)は、受け入れユニット6によって定義される進入軸(L2)との間に実質的に垂直の関係を具備することが一般的である。この場合には、ノズル52と受け入れユニット6の間に生成される電位差に起因し、エレクトロスプレー媒体の液滴が辿る移動経路は、真っ直ぐではなく、湾曲している。本発明の回転式エレクトロスプレーイオン化装置5は、このタイプの質量分析計構成に対しても適用可能であろう。
【0034】
図11を参照すれば、本発明による回転式エレクトロスプレーイオン化装置5の第3の好適な実施例によれば、第3の好適な実施例による回転式エレクトロスプレーイオン化装置5のノズル52aは、ノズル軸(L1)に対して平行な複数のサブノズル521に分岐している。図11は、複数のサブノズル521の第1の配列体を示している。サブノズル521の中の少なくとも2つのものは、ノズル軸(L1)との関係において対称である。サブノズル521は、それぞれ、三路パイプ519の第1導管5191から同一のエレクトロスプレー媒体を受け取り、且つ、エレクトロスプレー媒体の液滴を順次形成するべく構成されている。ノズル軸(L1)は、依然として、公転ルート(A)に沿って公転軸(RC)を中心として公転する。但し、単一のサブノズル521の視点において見た場合には、サブノズル521のそれぞれのものは、その独自の公転軸を具備し、且つ、その独自の公転ルートに沿って公転する。
【0035】
或いは、この代わりに、図12に示されているように、ノズル52bは、相互接続された非中空の柱状体522の束を形成することにより、複数のサブノズル521bの第2配列体に分岐することも可能であり、この場合には、非中空の柱状体522の間の空間がサブノズル521bとして機能し、且つ、これにより、エレクトロスプレー媒体が液滴を形成するべく通過可能である。
【0036】
任意選択により、カプラ517は、カプラ517の軸方向の運動をノズル52の公転運動と組み合わせることよって三次元の螺旋状の公転経路を得ることができるように、受け入れユニット6との間において離接するべく運動することも可能である。
【0037】
任意選択により、シリンジポンプによってエレクトロスプレー媒体を回転式エレクトロスプレーイオン化装置5内に導入することも可能である。
【0038】
検体を採取する対象のサンプルが混合物である際には、ノズル52内に検体を導入する前に検体を分離するべく、液体クロマトグラフィ(LC)又はキャピラリ電気泳動(CE)法を使用可能である。
【0039】
ここで、ノズル52と質量分析器3の間に生成される電界の電位差の大きさ及び方向は、エレクトロスプレー媒体が多価帯電液滴を形成することができるように設定されていることに留意されたい。電位差は、正又は負のいずれかであってよく、多価帯電液滴の望ましい電気的特性に応じてユーザーによって決定される。電位差は、例えば、回転式エレクトロスプレーイオン化装置5のノズル52に2kVを上回る電圧を印加すると共に質量分析器3を接地することにより、或いは、ノズル52を接地すると共に質量分析器3に2kVを上回る電圧を印加することにより、質量分析器3の設計との関係において生成するべきである。
【0040】
或いは、この代わりに、回転式エレクトロスプレーイオン化装置5のノズル52と受け入れユニット6の質量分析器3の間に外部電界を生成することも可能である。図13に示されているように、例えば、円筒形の部分(G1)と、椀形状の部分(G2)と、を含むガラスクローシュ8をノズル52と質量分析器3の間に提供し、ノズル52に近接したガラスクローシュ8の円筒形の部分(G1)に0.9kVの電圧を印加し、且つ、質量分析器3に近接したガラスクローシュ8の椀形状の部分(G2)に−0.5kVの電圧を印加する。この結果、ノズル52において形成されたエレクトロスプレー媒体の液滴は、外部電界の影響下において、質量分析器3に向かって強制的に前進する。
【0041】
ここで、質量分析器3の進入側31は、ノズル52のノズル軸(L1)が辿る公転ルート(A)と合致するように構成可能であることに更に留意されたい。例えば、図14に示されている受け入れユニット6の質量分析器3の進入側31は、環状の公転ルート(A)に対応して、形状が環状である。
【0042】
ここでは、更に、図5、図7、図10、及び図10に示されているものは、エレクトロスプレーイオン化質量分析計(ESI−MS)の一般的な構成であるという点にも留意されたい。但し、本発明の回転式エレクトロスプレーイオン化装置5は、エレクトロスプレーイオン化(ESI)法を使用する任意の質量分析計に適用可能であり、その一例は、米国特許出願公開第2007/0176113A1号に開示されているエレクトロスプレー支援レーザー脱離イオン化質量分析計(ELDI−MS)であって、これは、図15に示されている。図15においては、本発明の回転式エレクトロスプレーイオン化装置5及び(質量分析器3及び検出器4からなる)受け取りユニット6に加えて、エレクトロスプレー支援型レーザー脱離イオン化(ELDI)質量分析計は、レーザー脱離装置7を更に含む。ノズル52内のエレクトロスプレー媒体は、検体を含んでおらず、且つ、レーザー脱離装置7は、照射の際に、サンプル(S)内に含まれている検体の中の少なくとも1つのものが脱離されて、エレクトロスプレー媒体の液滴の移動経路と交差する飛行経路に沿って飛行するように、レーザービーム(L)によってサンプルプラットフォーム71上に配設されたサンプル(S)を照射するべく適合されており、この結果、前述の検体の中の少なくとも1つのものを液滴中に閉じ込めることが可能であり、且つ、移動経路に沿って受け入れユニット6に接近する際に液滴のサイズが縮小する結果として、液滴の電荷が前述の検体の中の少なくとも1つのものに対して伝達され、イオン化検体の中の対応するものを形成することになる。
【0043】
又、図16を参照すれば、本発明による回転式エレクトロスプレーイオン化装置5は、レーザー誘起音響脱離(LIAD)質量分析計を形成するべく、レーザー伝送機構91及び基材92を含むレーザー誘起音響脱離(LIAD)装置9を有するように実装することも可能である。基材92は、その上部にサンプル(S)が配置されるサンプル表面921と、サンプル表面921の反対側の被照射表面922と、を具備する。レーザー伝送機構91は、レーザービーム(L)によって基材92の被照射表面922を照射するべく配設されている。基材92は、レーザーエネルギーの伝播を許容する能力を有する材料から製造されており、この結果、レーザー伝送機構91による照射の際に、レーザービーム(L)のレーザーエネルギーが、基材92を介して、サンプル(S)中に含まれる検体の中の少なくとも1つのものに対して伝達され、これにより、検体の中の少なくとも1つのものが脱離されて、エレクトロスプレー媒体の帯電液滴の移動経路と交差する飛行経路に沿って飛行し、この結果、検体の中の少なくとも1つのものを帯電液滴中に閉じ込めることが可能である。LIAD装置9の更なる詳細については、米国特許出願公開第2008/0308722A1号を参照されたい。
【0044】
前述のように、本発明の回転式エレクトロスプレーイオン化装置5は、エレクトロスプレーイオン化(ESI)法の使用を伴う任意の質量分析計に対して適用可能である。従って、本発明にとって好適なサンプルは、固体又は液体のいずれかであってよい。
【0045】
サンプルが切除された組織である際には、サンプルは、脳、心臓、肝臓、肺、胃、腎臓、脾臓、腸、及び子宮からなる群から選択される動物の器官の組織試料であってよい。本発明のいくつかの実施例においては、切除された組織は、脳、心臓、及び肝臓からなる群から選択される動物の器官に由来している。
【0046】
考察対象の液体材料を脱水することによってサンプルが形成される際には、液体材料は、体液、化学溶液、環境サンプリング溶液、又は液体クロマトグラフィからの様々な溶出液などの様々な種類の溶液であってよい。考察対象の液体材料が、生体から分泌された体液である際には、液体材料は、血液、涙液、汗、腸液、脳液、脊髄液、リンパ液、膿、血清、唾液、鼻汁、尿、及び排泄物からなる群から選択可能である。本発明のいくつかの実施例においては、考察対象の液体材料は、血液、血清、及び涙液からなる群から選択される。考察対象の液体材料が化学溶液である際には、液体材料は、本明細書に開示されている実施例のいくつかのものに示されているように、インスリン、ミオグロビン、シトクロムc、又はこれらの組合せから製造された蛋白質溶液であってよい。
【0047】
要すれば、本発明の回転式エレクトロスプレーイオン化装置5は、以下の効果及び利点を具備する。1つ又は複数のノズル52の公転運動により、1つ又は複数のノズル52において順次形成される液滴は、1つ又は複数のノズル52と受け入れユニット6の間の空間内の移動経路に沿って均一に分散される。従って、エレクトロスプレー溶液を噴霧する際のノズルの位置が固定されており、この結果、イオン化検体の中のわずかな部分のみが受け入れユニットに到達し、その他のものが空間電荷現象に起因して分散する従来技術と比較した場合に、液滴から形成されたより多くのイオン化検体が受け入れユニット6に到達することになる。この結果、本発明によれば、受け入れユニット6の質量分析器3が取得する信号の強度及び安定性の両方が増大する。
【0048】
以上、最も実際的且つ好ましい実施例であると考えられるものとの関連において本発明について説明したが、本発明は、開示された実施例に限定されるものではなく、最も広範な解釈の精神及び範囲に含まれる様々な構成を含んでおり、従って、それらの変更及び均等な構成のすべてを包含するべく意図されていることを理解されたい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動機構(51)と、
エレクトロスプレー媒体の液滴を順次形成するべく構成され、且つ、検体をイオン化してイオン化検体を形成するべく前記液滴に複数の電荷を付与するためにノズル(52)と受け入れユニット(6)の間に電位差が印加された際に前記帯電液滴が移動経路に沿って前記受け入れユニット(6)に向かって強制的に移動するように、前記受け入れユニット(6)との間に移動経路を形成するべく適合された少なくとも1つのノズル(52)と、
を備え、
前記ノズル(52)が、ノズル軸(L1)を定義しており、且つ、前記ノズル軸(L1)が循環ルート(A)に沿って移動するように、且つ、前記ノズル(52)を離れた直後に前記液滴が協働し、前記循環ルート(A)によって実質的に取り囲まれた断面を有する実質的に柱状のプルームを形成するように、循環軸(RC)を中心とした循環ルート(A)を進むべく前記駆動機構(51)によって駆動されることを特徴とする、検体の分析を目的としており、且つ、前記検体のイオン化によって取得可能な前記イオン化検体をその内部に受け入れるべく配設された前記受け入れユニット(6)を含む質量分析計(2)において使用されるべく適合された循環式エレクトロスプレーイオン化装置(5)。
【請求項2】
前記循環ルートが、前記循環軸との関係において互いに場所が反対であると共に互いに運動方向が反対である2つの半体ルートセグメントを具備しており、前記半体ルートセグメントは、互いに近接することによって前記循環ルートを実質的に往復運動ルートにするように、直線化されるべく構成されていることを特徴とする請求項1に記載の循環式エレクトロスプレーイオン化装置(5)。
【請求項3】
前記循環ルートが、公転ルート(A)であることを特徴とする請求項1に記載の循環式エレクトロスプレーイオン化装置(5)。
【請求項4】
前記移動経路が、真っ直ぐであることを特徴とする請求項3に記載の循環式エレクトロスプレーイオン化装置(5)。
【請求項5】
前記駆動機構(51)が、
回転軸部(C1)を中心として回転する出力シャフト部(513)を含む主駆動モジュール(511)と、
既定の距離(R)だけ前記回転軸部(C1)からオフセットされたシャフト軸部(C2)を定義しており、且つ、前記回転軸部(C1)を中心として公転するべく駆動されるように前記出力シャフト部(513)に対して結合された近端部(515)と、前記公転ルート(A)を前記既定の距離(R)との既定の相関関係に配置するように前記ノズル(52)に対して結合された遠端部(516)と、を有する公転シャフトユニット(514)を具備する公転駆動モジュール(512)と、
を備えることを特徴とする請求項3に記載の循環式エレクトロスプレーイオン化装置(5)。
【請求項6】
前記回転軸部が、2本の回転軸(C1)を含み、前記出力シャフト部が、前記2本の回転軸(C1)を中心としてそれぞれ回転するように2本の出力シャフト(513)を備え、
前記シャフト軸部が、2本のシャフト軸(C2)を含み、前記公転シャフト部が、前記2本のシャフト軸(C2)をそれぞれ定義する2本の公転シャフト(514)を備え、各前記公転シャフトが、前記既定の距離(R)だけ、前記回転軸(C1)の中の対応する回転軸からオフセットされているとともに、各前記公転シャフト(514)が、遠端部分(516)と、各前記公転シャフト(514)の近端部分(515)が前記回転軸(C1)の中の対応する回転軸を中心として公転するべく駆動されるように、前記出力シャフト(513)の中の対応する出力シャフトに対して結合する近端部分(515)と、を具備し、
前記駆動機構(51)が、主壁(518)を具備するカプラ(517)を更に備え、前記主壁は、自身に対して垂直である中心線(C3)を定義しており、且つ、前記中心線(C3)が前記ノズル軸(L1)の方向において前記ノズル軸(X1)に対して平行に方向付けされるように、自身との関係において前記ノズル(52)を固定するべく構成されており、前記主壁(518)が、2つの管状軸受け表面をその内部に具備するべく構成されており、前記2つの管状軸受け表面は、前記中心線(C3)から等距離に配設されており、且つ、前記公転ルート(A)が前記既定の距離(R)との既定の相関関係に維持されるように、前記2本の公転シャフト(514)の前記遠端部分(516)に対して係合するべくそれぞれ構成されていることを特徴とする請求項5に記載の循環式エレクトロスプレーイオン化装置(5)。
【請求項7】
前記主駆動モジュール(511)が、主駆動シャフト(5112)を有するモーター(5111)と、前記主駆動シャフト(5112)の駆動力を伝達して前記2本の出力シャフト(513)を同期状態において駆動するべく配設されたギア列(5113)と、を更に備えることを特徴とする請求項6に記載の循環式エレクトロスプレーイオン化装置(5)。
【請求項8】
前記ノズル(52)を前記主壁との関係において固定するように、前記ノズル(52)を前記カプラ(517)の前記主壁(518)に対して結合するべく配設されており、前記ノズル(52)の上流に配設される第1導管(5191)と、前記第1導管(5191)の上流に配設され、且つ、前記エレクトロスプレー媒体をその内部に導入するための吸入口を具備する第2導管(5192)と、前記第2導管(5192)の下流及び前記第1導管(5191)の上流に配設され、且つ、前記受け入れユニット(6)との間に前記電位差を生成するための電極と嵌合するポートを具備する第3導管(5193)と、を具備する三路パイプ(519)を更なる特徴とする請求項7に記載の循環式エレクトロスプレーイオン化装置(5)。
【請求項9】
前記ノズル(52)が、前記ノズル軸(L1)に対して平行な複数のサブノズル(521)に分岐しており、前記サブノズル(521)の中の少なくとも2つのものが、前記ノズル軸(L1)との関係において対称であることを特徴とする請求項8に記載の循環式エレクトロスプレーイオン化装置(5)。
【請求項10】
前記既定の距離(R)が調節可能であることを特徴とする請求項5に記載の循環式エレクトロスプレーイオン化装置(5)。
【請求項11】
検体のイオン化によって取得可能なイオン化検体をその内部に受け入れるべく配設された受け入れユニット(6)と、
駆動機構(51)と、エレクトロスプレー媒体の液滴を順次形成するべく構成され、且つ、前記検体をイオン化してイオン化検体を形成するべく前記液滴に複数の電荷を付与するためにノズル(52)と前記受け入れユニット(6)の間に電位差が印加された際に前記帯電液滴が移動経路に沿って前記受け入れユニット(6)に向かって強制的に移動するように前記受け入れユニット(6)との間に移動経路を形成し、ノズル軸(L1)を定義しており、且つ、前記ノズル軸(L1)が循環ルート(A)に沿って移動するように、且つ、前記ノズル(52)を離れた直後に前記液滴が協働し、前記循環ルート(A)によって実質的に取り囲まれた断面を有する実質的に柱状のプルームを形成するように、循環軸(RC)を中心とした前記循環ルート(A)を進むべく前記駆動機構(51)によって駆動される少なくとも1つのノズル(52)と、を含む循環式エレクトロスプレーイオン化装置(5)と、
を特徴とする、検体を分析する質量分析計(2)。
【請求項12】
前記循環ルートが、前記循環軸との関係において反対であると共に運動方向において互いに反対である2つの半体ルートセグメントを具備し、前記半体ルートセグメントは、互いに近接することによって実質的に前記循環ルートを往復運動ルートにするように、直線化されるべく構成されていることを特徴とする請求項11に記載の質量分析計(2)。
【請求項13】
前記循環ルートが、公転ルート(A)であることを特徴とする請求項11に記載の質量分析計。
【請求項14】
前記受け入れユニット(6)が、前記循環ルート(A)に形状が対応するべく構成された進入側(31)を具備することを特徴とする請求項11に記載の質量分析計。
【請求項15】
前記ノズル(52)と前記受け入れユニット(6)の間に配設され、且つ、前記ノズル(52)において形成された前記エレクトロスプレー媒体の前記液滴を前記受け入れユニット(6)に向かって強制的に前進させるための前記電位差として機能する外部電界をその間に生成するべく円筒形の部分(G1)及び椀形状の部分(G2)を含むガラスクローシュ(8)を更なる特徴とする請求項11に記載の質量分析計(2)。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2011−191302(P2011−191302A)
【公開日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−53452(P2011−53452)
【出願日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【出願人】(511064339)ナショナル スン イーシエン ユニバーシティ (1)
【氏名又は名称原語表記】NATIONAL SUN YAT−SEN UNIVERSITY
【Fターム(参考)】