説明

循環式トイレ

【課題】サイホン現象によりポンプ停止後も洗浄水が流れ続けるのを防止すると共に洗浄能力を向上させる。
【解決手段】洗浄水槽12と便器2、及び汚水処理槽30間に循環経路を形成し、洗浄水槽12内に配置された水中ポンプ5により配管6を介して便器2に洗浄水31を供給するものであり、便器2は、洗浄水槽12の水位よりも低位置に配置されている。配管6は、水中ポンプ5により洗浄水槽12内の洗浄水31を揚水する揚水管60と、該揚水管60に接続されて洗浄水槽12の水位よりも高位置に配置された調整管61と、該調整管61からの洗浄水31を便器2よりも低位置を経由して該便器2に供給する屈曲管62とを有している。また、調整管61に負圧で大気を取り込むエア取込み弁15を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水中ポンプを用いて洗浄水を洗浄水槽から便器に供給する配管を備えた循環式トイレに関する。
【背景技術】
【0002】
公園やイベント会場、野営地等における屋外の常設及び仮設トイレとして、従来の移動式トイレに代わって循環式トイレが重用されるようになってきている。この種、循環式トイレでは、一度便器洗浄に使用した洗浄水を生物処理等して清浄にした後、再度洗浄水として使用するため、洗浄水としてシステムに加わる水分量の汲み取りが不要であり維持管理が容易であるという特徴を有する。
【0003】
従来、この循環式トイレとして、例えば特許文献1には、便器の下方に配置された汚水槽に連通して複数の浄化槽を配設し、これらの複数の浄化槽に順に汚水を送って浄化させ、浄化された処理水を洗浄水として便器に送水する点が開示されている。この場合、浄化された処理水を給水ポンプとタイマ制御で汲み上げて、水だけで便器を洗浄している。
【0004】
また、特許文献2には、便器の下方に汚物処理槽を設け、便器は大便のみを処理槽に落とし、小便及び洗浄水を便器内で大便と分離させ、分離した小便及び洗浄水を土壌処理槽に導入し、浄化して貯水部に集め、その水を汲み上げて便器の洗浄水として循環使用する点が開示されている。この場合、貯水部から水中ポンプや足踏みポンプで洗浄水を汲み上げて、水だけで便器を洗浄している。
【特許文献1】特開2003−184158号公報(第3頁、図1)
【特許文献2】特開2002−59180号公報(第2−3頁、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1では、洗浄水量を多くすれば便器の洗浄能力は向上するが、汚物等の浄化槽での滞留時間を確保して良好な処理槽能力を維持するには相対的に処理槽の容量を大きくしなければならない。これに対し、洗浄水量を少なくすると処理槽能力は向上するが、便器の洗浄能力は低下してしまうという課題があった。
【0006】
また、特許文献2では、1回の便器の洗浄水量が、例えば300〜500mLと少ないため、便器の洗浄残しが生じてしまうおそれがある。
本発明は、斯かる課題を解決するためになされたもので、その目的とするところは、サイホン現象によりポンプ停止後も洗浄水が便器に流れ続けるのを防止すると共に、配管内に取り込んだ空気を洗浄水と共に噴出させることで便器の洗浄能力を向上させた循環式トイレを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するため、請求項1に係る発明は、
洗浄水槽と便器、及び汚水処理槽の間に循環経路を形成し、前記洗浄水槽内に配置された水中ポンプにより配管を介して前記便器に洗浄水を供給する循環式トイレにおいて、
前記便器は、前記洗浄水槽の水位よりも低位置に配置され、
前記配管は、水中ポンプにより洗浄水槽内の洗浄水を揚水する揚水管と、
該揚水管に接続されて洗浄水槽の水位よりも高位置に配置された調整管と、
該調整管からの洗浄水を、前記便器よりも低位置を経由して該便器に供給する屈曲管と、を有し、
前記調整管に、前記水中ポンプが停止することで該調整管内が負圧になって大気を取り込むエア取込み弁を設けたことを特徴とする。
【0008】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載の循環式トイレにおいて、
エア取込み弁の代わりに電磁弁を設け、
該電磁弁を前記水中ポンプの制御と連動させたことを特徴とする。
【0009】
請求項3に係る発明は、請求項1に記載の循環式トイレにおいて、
前記エア取込み弁の代わりに、大気に連通する逃がし配管を設けたことを特徴とする。
請求項4に係る発明は、請求項1に記載の循環式トイレにおいて、
前記屈曲管を中途部から分岐させて一方を前記便器に接続し、他方を外部に連通する水抜き管を設け、
該水抜き管の出口側に水抜き弁を設けたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、サイホン現象によりポンプ停止後も洗浄水が便器に流れ続けるのを防止することができる。また、配管内に取り込んだ空気を洗浄水と共に噴出させることで、便器の洗浄能力を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、図面に基づき本発明の実施の形態を説明する。
(第1の実施の形態)
図1は、本実施の形態における循環式トイレ1の全体構成を示している。同図において、循環式トイレ1は、トイレ室14と、このトイレ室14に一体的に配設されて洗浄水31を貯留する洗浄水槽(洗浄水タンク)12とを有している。トイレ室14内には、床21に据付けた便器2と、その下方に汚水処理槽30が配置されている。この汚水処理槽30は、汚物を生物処理する生物処理槽7、固形分を沈殿させて水分と分離する沈殿分離槽8、フロート付き水中ポンプ10が収容された移送ポンプ槽9を有している。
【0012】
便器2は、洗浄水槽12の水位よりも低位置に配置されている。洗浄水槽12内には水中ポンプ5が配置されている。この水中ポンプ5は、トイレ室14内に配置された押しボタンスイッチ4と連動可能に構成されている。すなわち、用便後に、押しボタンスイッチ4を押すと水中ポンプ5が駆動されて洗浄水31が便器2に流れ込むようになっている。
【0013】
更に、洗浄水槽12と便器2とは配管6によって接続されている。この便器2は、洗浄水槽12からの洗浄水31が噴出される洗浄水噴出口3と、汚物等が下方に排出される排出口13を有している。また、配管6は、水中ポンプ5により洗浄水槽12内の洗浄水31を揚水する揚水管60と、この揚水管60に接続されて洗浄水槽12の水位よりも高位置に配置された調整管61と、この調整管61からの洗浄水31を、便器2よりも低位置を経由して該便器2内に噴出するように略U字状に屈曲された屈曲管62とを有している。更に、調整管61の中途部には、負圧で大気を取り込むエア取込み弁15が設けられている。
【0014】
また、移送ポンプ槽9と洗浄水槽12とは、戻し管11によって接続されている。この戻し管11は、一端をフロート付き水中ポンプ10に接続され、他端を洗浄水槽12の上方空間に臨むように配置されている。これにより、洗浄水槽12から便器2に送り出された洗浄水31は、生物処理槽7、沈殿分離槽8、移送ポンプ槽9、及び戻し管11を順に移送されて循環する構成になっている。
【0015】
なお、本実施形態では、戻し管11の配管経路として、生物処理槽7や洗浄水槽12等の上方から配管した場合について説明したが、これに限ることなく、例えば生物処理槽7や洗浄水槽12等の側方から配管しても良く、また下方から配管しても良い。
【0016】
以上において、用便を足した後、使用者がトイレ室14内の押しボタンスイッチ4を押すと、押しボタンスイッチ4に内蔵されたタイマ(図示せず)が作動して、その信号が水中ポンプ5に送られ、一定時間(タイマ時間)だけ水中ポンプ5が作動する。
【0017】
この水中ポンプ5の作動により、洗浄水槽12に蓄えられた洗浄水31が、配管6を経由して便器2の洗浄水噴出口3から噴出され便器2内を洗浄する。これにより、汚物は洗浄水31と共に排出口13から生物処理槽7に移送され、該生物処理槽7内で生物処理された後、固形物と水分を分離する沈殿分離槽8、更に移送ポンプ槽9に移送される。
【0018】
この場合において、移送ポンプ槽9内の水位が規定以上に上昇すると、フロート付き水中ポンプ10が自動的に作動して、移送ポンプ槽9内の洗浄水は戻し管11を経由して洗浄水槽12に移送される。なお、その後はこの循環動作を繰り返す。
【0019】
また、押しボタンスイッチ4を押してからタイマ時間が経過すると、水中ポンプ5の作動が停止する。ところで、図1に示すように、洗浄水槽12の水位は、洗浄水噴出口3よりもH1だけ高く設定されているため、後述するエア取込み弁15がないと、水中ポンプ5が停止したとしても、サイホン現象により洗浄水31の便器2側への流れ込みが止まらないおそれが生じる。
【0020】
そこで、本実施形態では、図1及び図2に示すように、調整管61の中途部に、水中ポンプ5が停止することにより、調整管61内が負圧になって開放され大気を取り込むエア取込み弁15を設けている。これにより、水中ポンプ5の作動が停止すると、調整管61内の圧力は水位H2と水位H3の差により負圧になるため、この負圧でエア取込み弁15が開放されて調整管61内に空気32が取り込まれる。こうして、屈曲管62内の水位はA点まで低下し、また、揚水管60側の水位はB点まで低下して洗浄水31の一連の循環動作を終了する。
【0021】
なお、詳しくは後述するが(図6〜図8参照)、調整管61内に取り込まれた空気は、次に押しボタンスイッチ4を押したときに、洗浄水31と共に洗浄水噴出口3から勢い良く噴出される。
【0022】
また、洗浄水槽12や生物処理槽7等においては、洗浄水31は絶えず蒸発等するのが一般的であるが、例えば、多数の使用者により洗浄水槽12内の水位が上昇したときは、不図示の排水弁を開放して洗浄水31の量を調節することができる。
【0023】
本実施の形態によれば、調整管61の中途部に、負圧で開放されるエア取込み弁15を設けたので、水中ポンプ5の停止後もサイホン現象で洗浄水31が便器2側に流れ続けるのを防止することができる。また、調整管61内に取り込まれた空気は、次に押しボタンスイッチ4を押したときに、洗浄水31と共に洗浄水噴出口3から勢い良く噴出されるので、洗浄能力を向上させることができる。
(変形例)
図3は、第1の実施の形態の変形例を示している。なお、第1の実施の形態と同一又は相当する部材には、同一の符号を付してその説明を省略する。
【0024】
この変形例では、エア取込み弁15の代わりに電磁開閉弁16が設けられている。そして、用便後に押しボタンスイッチ4を押すと、タイマ(図示せず)が作動して、そのタイマ信号が水中ポンプ5に送られ、一定時間だけ水中ポンプ5が作動する。これと同時に、電磁開閉弁16にも送られて該電磁開閉弁16は閉じられる。その後、タイマ時間が経過すると水中ポンプ5が停止すると共に、電磁開閉弁16が開放されて調整管61内に空気が取り込まれるようにした。
【0025】
なお、調整管61内に入り込んだ空気が、次に押しボタンスイッチ4を押したときに洗浄水31と共に洗浄水噴出口3から勢い良く噴出されるのは、第1の実施の形態と同様である。
【0026】
その後の動作は、上述した第1の実施の形態と同様である。
本変形例によれば、調整管61の中途部に電磁開閉弁16を設けたので、水中ポンプ5の停止後もサイホン現象で洗浄水31が便器2側に流れ続けるのを防止することができる。また、調整管61内に取り込まれた空気は、次に押しボタンスイッチ4を押したときに、洗浄水31と共に洗浄水噴出口3から勢い良く噴出されるので、洗浄能力を向上させることができる。
(第2の実施の形態)
図4は、本実施の形態における循環式トイレ1の全体構成を示している。なお、第1の実施の形態と同一又は相当する部材には、同一の符号を付してその説明を省略する。
【0027】
同図において、第1の実施の形態とは、エア取込み弁15の代わりに逃がし配管17を設けた点が相違している。
この実施の形態では、水中ポンプ5が作動している間は、該水中ポンプ5から移送される洗浄水は主として配管6を通って便器2の洗浄水噴出口3から噴出して、便器2内の洗浄に用いられる。また、その洗浄水31の一部は、逃がし配管17を経由して洗浄水槽12に戻される。この場合、戻る洗浄水31の量は僅かなので便器2の洗浄性能には影響を及ぼさない。
【0028】
次に、水中ポンプ5が停止すると、図2に示したように、調整管61内の圧力は水位H2と水位H3の差により負圧になるため、この負圧により、逃がし配管17の先端開放口18から空気が調整管61内に取り込まれる。これにより、屈曲管62内の水位はA点まで低下し、また、揚水管60側の水位はB点まで低下して洗浄水31の一連の循環動作を終了する。
【0029】
本実施の形態によれば、調整管61の中途部に逃がし配管17を設けたので、水中ポンプ5の停止後もサイホン現象で洗浄水31が便器2側に流れ続けるのを防止することができる。また、調整管61内に取り込まれた空気は、次に押しボタンスイッチ4を押したときに、洗浄水31と共に洗浄水噴出口3から勢い良く噴出されるので、洗浄能力を向上させることができる。
(第3の実施の形態)
図5は、本実施の形態における循環式トイレ1の全体構成を示している。なお、第1の実施の形態と同一又は相当する部材には、同一の符号を付してその説明を省略する。
【0030】
同図において、例えば冬季に外部の気温が低下したとき、屈曲管62の中で大気に露出しているC部分では、管内の洗浄水が凍結してしまうおそれがある。
このため、本実施の形態では、屈曲管62を中途部から分岐させて一方の連通管62aを便器2に接続し、他方の水抜き管19を外部に連通するようにした。更に、この水抜き管19の出口側に水抜き弁20を設けた。
【0031】
こうして、水抜き弁20を手動にて開くと、洗浄水31を含んだ配管が大気に露出している部分はなくなり、他の部分は温度慣性の大きい水中となるので、凍結のおそれはなくなる。なお、この実施の形態では、調整管61の中途部に逃がし配管17を設けた場合について説明したが、これに限ることなく、エア取込み弁15を用いても良いことは勿論である。
【0032】
本実施の形態によれば、水中ポンプ5を停止したときの配管6内の例えば冬季における凍結を防止することができる。
次に、図6〜図8は、本実施の形態の循環式トイレ1の作用を示している。
【0033】
この実施の形態の循環式トイレ1は、調整管61の中途部にエア取込み弁15を設け、更に凍結防止用の水抜き管19を設けた場合を示している。
すなわち、図6では、使用待ち状態(待機状態)を示しており、この状態では、屈曲管62内の水位はA点まで低下し、また、揚水管60側の水位はB点まで低下しており、調整管61内には空気32が取り込まれている。
【0034】
図7は、用便を済まして押しボタンスイッチ4を押した直後の状態を示している。このとき、調整管61内の空気32は洗浄水31に押されて、便器2の洗浄水噴出口3の近くまで移動している。
【0035】
図8は、調整管61内の空気32が便器2の洗浄水噴出口3から洗浄水31と共に勢い良く噴出して汚物を洗浄中の状態を示している。このとき、便器2に流れ込む調整管61内の空気32により、洗浄水31のみが噴出する場合と比較して便器2内の洗浄性能を向上させることになる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】第1の実施の形態における循環式トイレの全体構成を示す図である。
【図2】同上の調整管内にエア取込み弁から空気が取り込まれた状態を示す図である。
【図3】同上の変形例の循環式トイレの全体構成を示す図である。
【図4】第2の実施の形態における循環式トイレの全体構成を示す図である。
【図5】第3の実施の形態における循環式トイレの全体構成を示す図である。
【図6】循環式トイレの待機状態を示す図である。
【図7】循環式トイレの洗浄開始状態を示す図である。
【図8】循環式トイレの洗浄中の状態を示す図である。
【符号の説明】
【0037】
1 循環式トイレ
2 便器
3 洗浄水噴出口
4 押しボタンスイッチ
5 水中ポンプ
6 配管
7 生物処理槽
8 沈殿分離槽
9 移送ポンプ槽
10 フロート付き水中ポンプ
11 戻し管
12 洗浄水槽
13 排出口
14 トイレ室
15 エア取込み弁
16 電磁開閉弁
17 逃がし配管
18 先端開放口
19 水抜き管
20 水抜き弁
21 床
30 汚水処理槽
31 洗浄水
32 空気
60 揚水管
61 調整管
62 屈曲管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
洗浄水槽と便器、及び汚水処理槽の間に循環経路を形成し、前記洗浄水槽内に配置された水中ポンプにより配管を介して前記便器に洗浄水を供給する循環式トイレにおいて、
前記便器は、前記洗浄水槽の水位よりも低位置に配置され、
前記配管は、前記水中ポンプにより洗浄水槽内の洗浄水を揚水する揚水管と、
該揚水管に接続されて洗浄水槽の水位よりも高位置に配置された調整管と、
該調整管からの洗浄水を、前記便器よりも低位置を経由して該便器に供給する屈曲管と、を有し、
前記調整管に、前記水中ポンプが停止することで該調整管内が負圧になって大気を取り込むエア取込み弁を設けた、
ことを特徴とする循環式トイレ。
【請求項2】
エア取込み弁の代わりに電磁弁を設け、
該電磁弁を前記水中ポンプの制御と連動させた、
ことを特徴とする請求項1に記載の循環式トイレ。
【請求項3】
前記エア取込み弁の代わりに、大気に連通する逃がし配管を設けた、
ことを特徴とする請求項1に記載の循環式トイレ。
【請求項4】
前記屈曲管を中途部から分岐させて一方を前記便器に接続し、他方を外部に連通する水抜き管を設け、
該水抜き管の出口側に水抜き弁を設けた、
ことを特徴とする請求項1に記載の循環式トイレ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−327259(P2007−327259A)
【公開日】平成19年12月20日(2007.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−159597(P2006−159597)
【出願日】平成18年6月8日(2006.6.8)
【出願人】(000111292)ネポン株式会社 (24)
【Fターム(参考)】