説明

循環式水洗トイレ

【課題】人体に悪影響を及ぼす虞のあるオゾン処理を適宜使用して被処理水を安全に浄化処理できる循環式水洗トイレを提供すること。
【解決手段】第1循環水路の所定箇所に設けられ、少なくとも一部の被処理水を分岐可能とする分岐管10と、分岐管10に接続され、被処理水をオゾン処理するオゾン処理室7と、オゾン処理室7でオゾン処理された被処理水を第1循環水路に供給する供給管11と、からなる第2循環水路が構成され、第2循環水路の所定箇所に、第1循環水路内の被処理水を第2循環水路内に導入する導入手段21が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被処理水を移送する移送手段を備え便器の下方に配設された受水槽と、受水槽から移送された被処理水を浄化して排出する浄化装置と、受水槽より上方に配設され浄化装置から導入した被処理水を少なくとも使用時に受水槽に流下させる流下手段を備えた送水槽と、からなる循環水路が構成され、この循環水路内に被処理水を循環送水し浄化処理する循環式水洗トイレに関する。
【背景技術】
【0002】
被処理水としてのトイレ汚水を浄化処理する従来の循環式水洗トイレとして、例えば、公知の浄化装置と、オゾン処理手段とを組合せた循環水路を構成し、この循環水路に被処理水を循環送水し浄化処理する循環式水洗トイレがある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2005−60981号公報(第2頁、第2図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1にあっては、被処理水が、浄化装置及びオゾン処理手段を含め、単一の循環水路を循環移送して常時浄化処理されるため、オゾン処理の要不要に関わらず、被処理水の全量についてオゾン処理手段の通過とともにオゾン処理を行っており、人体に悪影響を及ぼす虞のあるオゾンが常時発生し危険性を伴っていた。
【0005】
本発明は、このような問題点に着目してなされたもので、人体に悪影響を及ぼす虞のあるオゾン処理を適宜使用して被処理水を安全に浄化処理できる循環式水洗トイレを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の請求項1に記載の循環式水洗トイレは、被処理水を移送する移送手段を備え便器の下方に配設された受水槽と、該受水槽から移送された被処理水を浄化して排出する浄化装置と、前記受水槽より上方に配設され前記浄化装置から導入した被処理水を少なくとも使用時に前記受水槽に流下させる流下手段を備えた送水槽と、からなる第1循環水路が構成され、該第1循環水路内に被処理水を循環送水し浄化処理する循環式水洗トイレであって、
前記第1循環水路の所定箇所に設けられ、少なくとも一部の被処理水を分岐可能とする分岐管と、該分岐管に接続され、被処理水をオゾン処理するオゾン処理手段と、該オゾン処理手段でオゾン処理された被処理水を前記第1循環水路に供給する供給管と、からなる第2循環水路が構成され、該第2循環水路の所定箇所に、前記第1循環水路内の被処理水を前記第2循環水路内に導入する導入手段が設けられていることを特徴としている。
この特徴によれば、浄化装置が構成された第1循環水路と、オゾン処理手段が構成された第2循環水路とを組合せ、第2循環水路に被処理水を循環送水可能とする導入手段が設けられていることにより、オゾン処理の要不要に応じて導入手段を起動停止し、人体に悪影響を及ぼす虞のあるオゾン処理を適宜使用して被処理水を安全に浄化処理できる。
【0007】
本発明の請求項2に記載の循環式水洗トイレは、請求項1に記載の循環式水洗トイレであって、予め特定された特定時間帯内において、前記流下手段が被処理水を前記送水槽から前記受水槽に強制的に流下させるとともに、前記導入手段が前記第1循環水路内の被処理水を前記第2循環水路内に導入することを特徴としている。
この特徴によれば、特定時間帯内において、第1循環水路において被処理水を浄化処理するとともに、その被処理水を第2循環水路に導入しオゾン処理できるため、循環移送される被処理水の略全量をオゾン処理することが出来る。
【0008】
本発明の請求項3に記載の循環式水洗トイレは、請求項2に記載の循環式水洗トイレであって、被処理水を分岐可能とする前記分岐管が、前記送水槽に接続されていることを特徴としている。
この特徴によれば、第1循環水路において浄化装置より下流側の送水槽に分岐管が接続されており、浄化装置で一定程度浄化処理された後の被処理水を、第2循環水路に導入しオゾン処理できるため、オゾン処理に掛かる負荷を小さく抑えることが出来る。
【0009】
本発明の請求項4に記載の循環式水洗トイレは、請求項3に記載の循環式水洗トイレであって、前記送水槽の下部に前記分岐管が接続されるとともに、前記送水槽の上部に前記供給管が接続されており、前記流下手段と接続された流下管が、前記分岐管より上方で且つ前記供給管より下方において、前記送水槽に接続されていることを特徴としている。
この特徴によれば、送水槽内における略全量の被処理水をオゾン処理できるばかりか、オゾン処理された被処理水の一部を、第1循環水路におけるデッドエリアとしての流下管より下方領域に滞留水として貯留できため、特定時間帯以外において、第1循環水路を循環移送する被処理水に、オゾン処理された被処理水の脱臭・殺菌効果を長時間に亘って与えることが出来る。
【0010】
本発明の請求項5に記載の循環式水洗トイレは、請求項1ないし4のいずれかに記載の循環式水洗トイレであって、前記オゾン処理手段の上流側に色度検知手段が設けられており、該色度検知手段により検知された被処理水の色度に応じて、前記導入手段が起動停止可能となっていることを特徴としている。
この特徴によれば、色度検知手段により検知された被処理水の色度に応じて、被処理水をオゾン処理手段に導入するか否かを切替できるため、効率的なオゾン処理が可能となる。特に、請求項2を引用した発明においては、オゾン処理が、特定時間帯且つ被処理水の色度が所定値以上の場合に限定して行われるため、更に効率的となる。
【0011】
本発明の請求項6に記載の循環式水洗トイレは、請求項1ないし5のいずれかに記載の循環式水洗トイレであって、前記浄化装置は、少なくとも被処理水を固液分離し排出する固液分離槽を備えており、前記第1循環水路と別に、前記固液分離槽において被処理水を固液分離した後の濃縮物を搬出する搬出手段と、濃縮物を貯留する貯留槽が構成され、該貯留槽の所定高さ位置に、濃縮物を前記第2循環水路に導入可能とする導入管が設けられていることを特徴としている。
この特徴によれば、貯留槽に貯留した濃縮物を第2循環水路に導入し、オゾン処理した後に第1循環水路に戻すことにより、濃縮物として若しくは蒸発して失われていく第1循環水路内の被処理水の水量を、別段の水を供給することなく維持できる。
【0012】
本発明の請求項7に記載の循環式水洗トイレは、請求項6に記載の循環式水洗トイレであって、前記貯留槽における所定水量を検知する水量検知手段と、前記貯留槽の所定高さ位置に設けられた前記導入管を開閉可能とする導入バルブと、が更に設けられており、前記導入手段が前記第1循環水路内の被処理水を前記第2循環水路内に導入しており、且つ前記水量検知手段が前記貯留槽の所定水量を検知したときに、前記導入バルブが開状態となることを特徴としている。
この特徴によれば、濃縮物を貯留槽の所定水量まで貯留できるとともに、被処理水をオゾン処理すると同時に濃縮物を第2循環水路内に導入してオゾン処理し、第1循環水路に戻すことができる。
【0013】
本発明の請求項8に記載の循環式水洗トイレは、請求項6または7に記載の循環式水洗トイレであって、前記貯留槽に堆積した濃縮物をバイオ処理するバイオ処理手段が、更に設けられていることを特徴としている。
この特徴によれば、被処理水の濃縮物をバイオ処理手段によりバイオ処理することで、濃縮物の汲取り処理を大幅に軽減でき、長期的な循環式水洗トイレ単体による浄化処理が可能となる。
【0014】
本発明の請求項9に記載の循環式水洗トイレは、請求項6ないし8のいずれかに記載の循環式水洗トイレであって、前記受水槽には、被処理水の満水位を検知する満水位検知手段が設けられており、濃縮物を搬送する前記搬送手段が、前記満水位検知手段により起動することを特徴としている。
この特徴によれば、トイレの使用により被処理水が所定に増量した場合にのみ、濃縮物を搬送するため、固液分離槽において効率的に被処理水を濃縮できる。
【0015】
本発明の請求項10に記載の循環式水洗トイレは、請求項1ないし9のいずれかに記載の循環式水洗トイレであって、前記送水槽に、被処理水の高水位を検知する第1水位検知手段と低水位を検知する第2水位検知手段とが設けられており、被処理水を移送する前記移送手段が、前記第2水位検知手段により起動し、前記第1水位検知手段により停止することを特徴としている。
この特徴によれば、被処理水を移送する移送手段が、送水槽の水位に応じて起動・停止する間欠運転を行うため、被処理水の循環送水に要する動力を省ける。
【0016】
本発明の請求項11に記載の循環式水洗トイレは、請求項1ないし10のいずれかに記載の循環式水洗トイレであって、前記オゾン処理手段から前記浄化装置に向けてオゾンを導入するオゾン導入管が設けられていることを特徴としている。
この特徴によれば、オゾンの一部を浄化装置側に導入し、オゾン処理することで、浄化装置周辺が脱臭・殺菌処理されて衛生的となる。
【0017】
本発明の請求項12に記載の可搬型循環式水洗トイレは、請求項1ないし11のいずれかに記載の循環式水洗トイレが、可搬型であることを特徴としている。
この特徴によれば、上水道若しくは下水道が設置されていない山間部や離島などにも設置できるばかりか、上水道若しくは下水道の故障により常設のトイレが使用不能となる災害時にあっても、任意の場所に循環式水洗トイレを設置できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明の実施例を以下に説明する。
【実施例】
【0019】
本発明の実施例を図面に基づいて説明すると、先ず図1は、循環式水洗トイレの特定時間帯における浄化処理を示す概略図である。図2は、特定時間帯を除いた時間帯における浄化処理を示す概略図である。図3は、送水槽における被処理水の流動状況を示す斜視図である。図1及び図2において、点線は圧縮空気若しくはオゾンガスの導管を示し、一点鎖線は信号線を示している。
【0020】
先ず図1に示されるように、本実施例における可搬型の循環式水洗トイレ1(以下、トイレ1と省略する)は、被処理水としてのトイレ汚水を、後述する浄化装置2及びオゾン処理手段としてのオゾン処理室7を循環移送することで浄化処理し、処理済水をトイレ洗浄水として再利用するものである。尚、被処理水とは、後述する浄化処理若しくはオゾン処理する前の水、処理中の水、処理済水を全て包含するものとする。
【0021】
トイレ1の装置構成の概略について説明すると、被処理水を移送する移送手段としての第1ポンプ20を備え便器8の下方に配設された受水槽6と、受水槽6より上方に配設され、受水槽6から移送された被処理水を浄化して排出する浄化装置2と、同様に受水槽6より上方に配設され、浄化装置2から導入した被処理水を受水槽6に排出可能とする送水槽3と、送水槽3の略中間高さ位置から内部の被処理水を受水槽6に向かって流下可能とする流下管としての送水管12及び洗浄水管13と、からなる第1循環水路が構成されている(図示白抜矢印参照)。
【0022】
また、送水槽3の最下部に設けられた分岐管10と、この分岐管10に接続され、被処理水をオゾン処理するオゾン処理室7と、オゾン処理室7でオゾン処理された被処理水を上述した第1循環水路に供給する供給管11と、からなる第2循環水路が構成されており、この第2循環水路に被処理水を循環送水可能とする導入手段としての第2ポンプ21が設けられている(図示黒塗矢印参照)。尚、オゾン処理室7は、図示しない区画壁により浄化装置2及び送水槽3と区画されている。
【0023】
更に、送水管12を開閉可能とする送水手段としての送水バルブ12aに、タイマTが接続されており、タイマTに予め特定された特定時間帯において、送水バルブ12aが開閉動作するようになっている。同期して、分岐管10を開閉可能とする分岐バルブ10a及び第2ポンプ21も、タイマTに予め特定された特定時間帯において、開閉動作するようになっている。
【0024】
次に、浄化装置2の構成について説明する。浄化装置2は、仕切壁25で区画され、堰部25aを介して互いに連通した固液分離槽4と微生物処理槽5とから構成されている。
【0025】
固液分離槽4は、堰部25aを被覆する様に設置され導入した被処理水を通過させるスクリーン4aと、スクリーン4aの面に沿って上昇する気泡を発生する散気孔23とを備え、被処理水を固液分離し排出するように成っている。
【0026】
また、微生物処理槽5は、仕切壁26で送水槽3と区画され、導入した被処理水を通過させる微生物固定化担体5aと、微生物固定化担体5aに向かって気泡を発生する曝気孔24と、上部孔27aと下部孔27bとが内部で連通し上下方向に設置されたダクト27とを備え、被処理水を微生物処理し排出するように成っている。
【0027】
次に、特定時間帯としての夜間(例えば、18:00〜6:00の12時間)におけるトイレ1の浄化処理フローについて、図1に基づいて説明する。夜間においては後述する昼間と比較してトイレ1使用は頻繁でなく、昼間にトイレ1使用で発生した被処理水としてのトイレ汚水は、第1循環水路及び第2循環水路を循環移送されるとともに浄化処理される。
【0028】
予めタイマTに特定された特定時間帯(18:00〜6:00)において、タイマTに接続された導入手段としての第2ポンプ21が起動し分岐バルブ10aが開状態となるとともに、同期して送水槽3の送水バルブ12aが開状態となる。この動作により被処理水が、夜間において定常的に第1循環水路及び第2循環水路を循環移送される。
【0029】
先ず、第1循環水路における被処理水の循環移送について説明すると、送水槽3において被処理水は、水頭圧により強制的に送水管12を介して下方に設置された受水槽6に向かって自然流下する。被処理水の流下により送水槽3の水位が下降し、所定の低水位となると、第2水位検知手段28bにより検知された低水位信号により第1ポンプ20が起動し、被処理水が固液分離槽4に移送される。
【0030】
この移送により送水槽3の水位が上昇し、所定の高水位となると、第1水位検知手段28aにより検知された高水位信号により第1ポンプ20が停止する。以降、第1ポンプ20は送水槽3の水位に応じて上述のように、起動・停止を繰り返す間欠運転をするように成っている。
【0031】
このように、被処理水を移送する第1ポンプ20が、送水槽3の水位に応じて起動・停止する間欠運転を行うため、被処理水の循環送水に要する動力を省ける。
【0032】
固液分離槽4において、被処理水は、堰部25aの周囲に配設された細目多孔のスクリーン4aを通過するとともに、固液分離されてスクリーン4aを通過した被処理水が、後述する微生物処理槽5に移動し、固形分はスクリーン4aに捕捉される。
【0033】
スクリーン4aに捕捉された固形分は、ブロア22により散気孔23を介して散気されスクリーン4aの面に沿って上昇する気泡により剥離し、固液分離槽4内部に生じた対流とともに、その重量により下方に沈降し、経時的に濃縮して後述する濃縮物を生成する。
【0034】
次に、固液分離槽4を通過した被処理水は、仕切壁25の堰部25aを通過し、微生物処理槽5内に導入される。
【0035】
微生物処理槽5において、被処理水は、微生物処理槽5内に充填された多数個の微生物固定化担体5aを通過するとともに、上方から下方に向かって流動する。この流動により微生物固定化担体5aに固定付着した微生物が、被処理水に含有された有機分を捕捉し、有機分解処理する。同時に、ブロア22により曝気孔24を介して微生物固定化担体5aに向かって曝気されることで、微生物が活性化し、微生物処理能力が向上できる。
【0036】
このように、微生物処理槽5において、上方から下方に向かって流動した被処理水は、上下方向に設けられたダクト27の下部孔27bからダクト27内部に流入し、上部孔27aを介して送水槽3内に導入される。
【0037】
そして上述したように、送水槽3において被処理水は、水頭圧により強制的に送水バルブ12aを介して下方に設置された受水槽6に向かって自然流下し、第1循環水路を形成する。
【0038】
次に、第2循環水路における被処理水の循環移送について説明すると、タイマTと接続された第2ポンプ21の起動により、送水槽3内の被処理水は、送水槽3の最下部において接続された分岐管10を介してオゾン処理室7に供給され、オゾン発生装置17にて発生するオゾンガスによりオゾン処理される。オゾン処理された被処理水は、送水槽3の上部に接続された供給管11を介して第1循環水路を構成する送水槽3内に供給される。
【0039】
このように、第1循環水路において浄化装置2より下流側の送水槽3に分岐管10が接続されていることで、浄化装置2を構成する固液分離槽4にて固液分離されるとともに微生物処理槽5にて微生物処理されることにより一定程度浄化処理された後の被処理水を、第2循環水路に導入しオゾン処理室7でオゾン処理できるため、オゾン処理に掛かる負荷を小さく抑えることが出来る。
【0040】
また、このようにすることで、送水槽3内における略全量の被処理水をオゾン処理できる。また、上述した第1循環水路を循環移送する浄化処理された被処理水と、第2循環水路を循環移送するオゾン処理された被処理水とが、送水槽3内において流動撹拌することで混合し、浄化効率が高まる。
【0041】
送水槽3内に供給された被処理水は、供給管11より下方において送水槽3と接続された送水管12より、上述したように、受水槽6に自然流下し、第1循環水路を循環移送される。
【0042】
このように、オゾン処理前の被処理水と比較して比重の大きいオゾン処理後の被処理水を、送水管より上方に設けられた供給管より第1循環水路に環流させることで、送水槽内においてオゾン処理された被処理水が効率よく対流し、第1循環水路において循環送水される。
【0043】
また、浄化装置2が構成された第1循環水路と、オゾン処理室7が構成された第2循環水路とを組合せ、第2循環水路に被処理水を循環送水可能とする導入手段としての第2ポンプ21が設けられていることにより、オゾン処理の要不要に応じて第2ポンプ21を起動・停止し、人体に悪影響を及ぼす虞のあるオゾン処理を適宜使用して被処理水を安全に浄化処理できる。
【0044】
更に、第1循環水路において被処理水を浄化処理するとともに、その被処理水を第2循環水路に導入しオゾン処理できるため、循環移送される被処理水の略全量をオゾン処理することが出来る。特に、人体に悪影響を及ぼす虞のあるオゾン処理を、タイマTにより予め任意に特定した特定時間帯内に限定して行うことが出来、特定時間以外である昼間においてはオゾン処理を除いた浄化処理が出来るため、安全性が向上する。
【0045】
更に、分岐管10に接続された色度検知手段としての色度センサ29により検知された被処理水の色度に応じて、第2ポンプ21が起動・停止可能となっている。即ち、被処理水が比較的清浄であることにより色度が所定の設定値より小さい場合には、第2ポンプ21が停止し、第2循環水路における被処理水の流動は止まる。また、被処理水が比較的汚濁していることにより色度が所定の設定値より大きい場合には、第2ポンプ21が起動し、第2循環水路における被処理水の流動は再び始まる。
【0046】
このようにすることで、色度センサ29により検知された被処理水の色度に応じて、被処理水をオゾン処理室7に導入するか否かを切替できるため、効率的なオゾン処理が可能となる。特に、本実施例のように、夜間の特定時間帯においてオゾン処理が行われ、特定時間帯且つ被処理水の色度が所定値以上の場合に限定して行われるため、更に効率的となる。
【0047】
また、オゾン処理室7から浄化装置2側に向けてオゾンを導入するオゾン導入管15が設けられており、このようにすることで、オゾンガスの一部を浄化装置2側に導入し、オゾン処理することで、浄化装置2周辺が脱臭・殺菌処理されて衛生的となる。
【0048】
次に、図2に示されるように、上述した特定時間帯を除いた時間帯としての昼間(例えば、6:00〜18:00の12時間)におけるトイレ1の浄化処理フローについて説明する。昼間においては後述のように、被処理水は、第1循環水路を循環移送されるとともに浄化処理され、第2循環水路には循環移送されない。
【0049】
使用者のトイレ1使用により、被処理水としてのトイレ汚水が、便器8下方の受水槽6に貯留されるとともに、使用者の洗浄水スイッチSの操作により、流下手段としての洗浄水バルブ13aが開状態となり、便器8の洗浄水として上述のように浄化処理した処理済の被処理水が、水頭圧により送水槽3から便器8を介して受水槽6に向かって自然流下し、受水槽6に貯留される。
【0050】
昼間においては頻繁にトイレ1使用がされるため、洗浄水の使用により、送水槽3の水位が下降し、第2水位検知手段28bにより検知された低水位信号により第1ポンプ20が起動し、被処理水が移送管16を介して固液分離槽4に移送される。この移送により送水槽3の水位が上昇し、第1水位検知手段28aにより検知された高水位信号により第1ポンプ20が停止する。そして、上述と同様に、被処理水は、固液分離槽4と微生物処理槽5とからなる浄化装置2を通過するとともに浄化処理され、送水槽3の上部に設けられたダクト27の上部孔27aを介して、送水槽3内に落下して導入される。
【0051】
次に、図3に示されるように、送水槽3内部の被処理水の流動について説明すると、昼間においては、第2循環水路における被処理水の流動が無く、送水槽3の略中央高さ位置に設けられた送水管12よりも下方の下方領域Dはデッドエリアとなるため(図示斜線部参照)、この下方領域Dにおける被処理水は、上述のように夜間においてオゾン処理された被処理水が滞留している。そこへ送水槽3に導入される被処理水の流動により、送水槽3内部に対流が生じ、この対流により、送水槽3に導入される被処理水と、下方領域に滞留していたオゾン処理された被処理水とが、混合された後、洗浄水管13を介して流下するようになる。
【0052】
もし、オゾン処理された被処理水の全部を第1循環水路に循環移送すれば、オゾン処理の効果の持続時間は限られたものとなるが、本実施例のように、オゾン処理された被処理水の一部を、被処理水の第1循環水路におけるデッドエリアとしての送水管12より下方領域Dに滞留水として貯留できるため、特定時間帯以外であるトイレ1の使用頻度が高い昼間において、第1循環水路を循環移送する被処理水に、オゾン処理された被処理水の脱臭・殺菌効果を長時間に亘って与えることが出来る。
【0053】
特に、送水槽3内における被処理水の対流とともに、下方領域Dにおける滞留水と、送水管12よりも上方の上方領域Bにおける被処理水とを混合でき、上述した被処理水の脱臭・殺菌効果がより効率的となる。
【0054】
次に、昼間におけるトイレ1使用により、第1循環水路を流動する被処理水の全水量が増加し、この増加量分は受水槽6に蓄積されるようになる。受水槽6に設けられた満水位検知手段30が、所定の満水位を検知すると、エアバルブ31が開放するとともに、固液分離槽4の下層に蓄積された濃縮物としての被処理水の固形分が、エア管19内に搬出手段としてのブロア22により供給される圧縮空気が流動することによりエアリフト効果で、固液分離槽4から貯留槽9に向かって搬出され、第1循環水路とは別に設けられた貯留槽9内に貯留される。図示しないタイマにより設定した所定時間後、エアバルブ31は閉じて濃縮物の搬出は終了する。このエアリフトによる濃縮物の搬出は、受水槽6の水位に応じて間欠運転するようになっている。
【0055】
このようにすることで、トイレ1の使用により被処理水が所定に増量した場合にのみ、濃縮物を搬送するため、固液分離槽4において効率的に被処理水を濃縮できる。
【0056】
貯留槽9においては、搬出された固形分が経時的に蓄積されるとともに、貯留槽9の下層には濃縮固形分が堆積し、トイレ汚水が含有する物性により、上層にはいわゆるスカム層が発生して、中間層にはいわゆる嫌気層が介在し、全体の層を生成するようになる。この嫌気層には、上述した微生物処理槽5における微生物処理(好気性処理)を経た後の、嫌気性を有する物質が多く介在し、下層と比較して固形分濃度は薄い。
【0057】
上述した夜間におけるオゾン処理を行っているときであって、且つ貯留槽9内に濃縮固形分が蓄積し貯留槽9に設けられた水量検知手段33が所定水量を検知すると、導入バルブ14aが開状態となる。
【0058】
このようにすることで、濃縮物を貯留槽9の所定水量まで貯留できるとともに、被処理水をオゾン処理すると同時に、濃縮物を第2循環水路内に導入してオゾン処理し、第1循環水路に戻すことができる。
【0059】
図示しないタイマにより設定した所定時間後、導入バルブ14aは閉状態となり、オゾン処理室7への導入は終了する。この被処理水のオゾン処理室7への導入は、再び貯留槽9の所定水量に達した場合に間欠運転するようになっている。
【0060】
このようにすることで、貯留槽9に貯留した濃縮物を第2循環水路に導入し、オゾン処理した後に第1循環水路に戻すことにより、第1循環水路から濃縮物として若しくは蒸発して失われていく被処理水の水量を、別段の水を供給することなく維持できる。
【0061】
尚、貯留槽9に設けられる導入管14は、必ずしも貯留槽9の略中間高さに設けられている必要はなく、被処理水の物性に応じて、所定高さに設けられていればよい。
【0062】
更に、貯留槽9の最下部に、貯留槽9の下層を形成する濃縮固形分を排出する排出管18と、排出管18を開閉可能とする排出バルブ18aとが設けられており、排出した濃縮固形分は、図示しないバイオ処理手段によりバイオ処理するようになっている。バイオ処理の一例として、おが屑を利用した処理が挙げられる。おが屑を利用した処理とは、おが屑に含まれている微生物の働きで、濃縮固形分が水と二酸化炭素に分解処理するものである。
【0063】
このように、濃縮固形分をバイオ処理することで、濃縮物の汲取り処理を大幅に軽減でき、長期的な循環式水洗トイレ1単体による浄化処理が可能となる。尚、バイオ処理とは、必ずしも上記おが屑を利用した処理に限られず、濃縮固形分を生物学的に処理するものであればよい。
【0064】
また、上述した循環式水洗トイレ1は、ユニット全体として可搬型の循環式水洗トイレであってもよい。このようにすることで、上水道若しくは下水道が設置されていない山間部や離島などにも設置できるばかりか、上水道若しくは下水道の故障により常設のトイレが使用不能となる災害時にあっても、任意の場所に循環式水洗トイレ1を設置できる。
【0065】
以上、本発明の実施例を図面により説明してきたが、具体的な構成はこれら実施例に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更や追加があっても本発明に含まれる。
【0066】
例えば、上記実施例では、特定時間帯としての夜間において、被処理水のオゾン処理を行っているが、オゾン処理は特定時間帯に限らず、被処理水を第2循環水路に人の操作により任意に流動可能としてもよい。
【0067】
また、上記実施例では、オゾン処理を行う特定時間帯として夜間を設定しているが、トイレ1を頻繁に使用する時間帯を避ければ、特定時間とは夜間でなくてもよく、例えば深夜若しくは早朝であっても構わない。更に、特定時間帯とは、上述のように1日(24時間)単位において特定した時間帯に限られず、例えば、1月(30日)単位において予め特定した日の時間帯であってもよいし、1年(365日)単位において予め特定した時期の時間帯であってもよい。
【0068】
また、上記実施例では、固液分離槽と微生物処理槽とからなる浄化装置により、被処理水を浄化処理しているが、浄化装置は、他の公知の浄化技術を利用した浄化槽からなる装置であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】循環式水洗トイレの特定時間帯における浄化処理を示す概略図である。
【図2】特定時間帯を除いた時間帯における浄化処理を示す概略図である。
【図3】送水槽における被処理水の流動状況を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0070】
1 循環式水洗トイレ
2 浄化装置
3 送水槽
4 固液分離槽
4a スクリーン
5 微生物処理槽
5a 微生物固定化担体
6 受水槽
7 オゾン処理室(オゾン処理手段)
8 便器
9 貯留槽
10 分岐管
10a 分岐バルブ
11 供給管
12 送水管(流下管)
12a 送水バルブ(流下手段)
13 洗浄水管(流下管)
13a 洗浄水バルブ(流下手段)
14 導入管
14a 導入バルブ
15 オゾン導入管
16 移送管
17 オゾン発生装置
18 排出管
18a 排出バルブ
19 エア管
20 第1ポンプ(移送手段)
21 第2ポンプ(導入手段)
22 ブロア(搬出手段)
23 散気孔
24 曝気孔
25 仕切壁
25a 堰部
26 仕切壁
27 ダクト
27a 上部孔
27b 下部孔
28a 第1水位検知手段
28b 第2水位検知手段
29 色度センサ(色度検知手段)
30 満水位検知手段
31 エアバルブ
33 水量検知手段
B 上方領域
D 下方領域
S 洗浄水スイッチ
T タイマ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理水を移送する移送手段を備え便器の下方に配設された受水槽と、該受水槽から移送された被処理水を浄化して排出する浄化装置と、前記受水槽より上方に配設され前記浄化装置から導入した被処理水を少なくとも使用時に前記受水槽に流下させる流下手段を備えた送水槽と、からなる第1循環水路が構成され、該第1循環水路内に被処理水を循環送水し浄化処理する循環式水洗トイレであって、
前記第1循環水路の所定箇所に設けられ、少なくとも一部の被処理水を分岐可能とする分岐管と、該分岐管に接続され、被処理水をオゾン処理するオゾン処理手段と、該オゾン処理手段でオゾン処理された被処理水を前記第1循環水路に供給する供給管と、からなる第2循環水路が構成され、該第2循環水路の所定箇所に、前記第1循環水路内の被処理水を前記第2循環水路内に導入する導入手段が設けられていることを特徴とする循環式水洗トイレ。
【請求項2】
予め特定された特定時間帯内において、前記流下手段が被処理水を前記送水槽から前記受水槽に強制的に流下させるとともに、前記導入手段が前記第1循環水路内の被処理水を前記第2循環水路内に導入することを特徴とする請求項1に記載の循環式水洗トイレ。
【請求項3】
被処理水を分岐可能とする前記分岐管が、前記送水槽に接続されていることを特徴とする請求項2に記載の循環式水洗トイレ。
【請求項4】
前記送水槽の下部に前記分岐管が接続されるとともに、前記送水槽の上部に前記供給管が接続されており、前記流下手段と接続された流下管が、前記分岐管より上方で且つ前記供給管より下方において、前記送水槽に接続されていることを特徴とする請求項3に記載の循環式水洗トイレ。
【請求項5】
前記オゾン処理手段の上流側に色度検知手段が設けられており、該色度検知手段により検知された被処理水の色度に応じて、前記導入手段が起動停止可能となっていることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の循環式水洗トイレ。
【請求項6】
前記浄化装置は、少なくとも被処理水を固液分離し排出する固液分離槽を備えており、前記第1循環水路と別に、前記固液分離槽において被処理水を固液分離した後の濃縮物を搬出する搬出手段と、濃縮物を貯留する貯留槽が構成され、該貯留槽の所定高さ位置に、濃縮物を前記第2循環水路に導入可能とする導入管が設けられていることを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載の循環式水洗トイレ。
【請求項7】
前記貯留槽における所定水量を検知する水量検知手段と、前記貯留槽の所定高さ位置に設けられた前記導入管を開閉可能とする導入バルブと、が更に設けられており、前記導入手段が前記第1循環水路内の被処理水を前記第2循環水路内に導入しており、且つ前記水量検知手段が前記貯留槽の所定水量を検知したときに、前記導入バルブが開状態となることを特徴とする請求項6に記載の循環式水洗トイレ。
【請求項8】
前記貯留槽に堆積した濃縮物をバイオ処理するバイオ処理手段が、更に設けられていることを特徴とする請求項6または7に記載の循環式水洗トイレ。
【請求項9】
前記受水槽には、被処理水の満水位を検知する満水位検知手段が設けられており、濃縮物を搬送する前記搬送手段が、前記満水位検知手段により起動することを特徴とする請求項6ないし8のいずれかに記載の循環式水洗トイレ。
【請求項10】
前記送水槽に、被処理水の高水位を検知する第1水位検知手段と低水位を検知する第2水位検知手段とが設けられており、被処理水を移送する前記移送手段が、前記第2水位検知手段により起動し、前記第1水位検知手段により停止することを特徴とする請求項1ないし9のいずれかに記載の循環式水洗トイレ。
【請求項11】
前記オゾン処理手段から前記浄化装置に向けてオゾンを導入するオゾン導入管が設けられていることを特徴とする請求項1ないし10のいずれかに記載の循環式水洗トイレ。
【請求項12】
請求項1ないし11のいずれかに記載の循環式水洗トイレが、可搬型であることを特徴とする可搬型循環式水洗トイレ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−262767(P2007−262767A)
【公開日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−89743(P2006−89743)
【出願日】平成18年3月29日(2006.3.29)
【出願人】(502080380)株式会社オリエント・エコロジー (4)
【Fターム(参考)】