説明

循環式穀物乾燥機

【課題】乾燥仕上予約時刻を守りながら、灯油燃料の消費量をより低減できる循環式穀物乾燥機を提供する。
【解決手段】本発明の循環式穀物乾燥機は、乾燥運転開始後に、現在の外気条件で送風運転したときの予測乾減率dVを演算し、該予測乾減率dVに基づいて送風乾燥(送風運転)したときの乾燥仕上予測時刻を求め、乾燥仕上予約時刻に対して乾燥時間の時間的な余裕があるときは、該予測乾減率dVが所定値以上か否かを考慮して送風運転に切換えるようにしたので、乾燥仕上予約時刻を守りながら的確でかつ効率的な乾燥を進行することができ、かつ、外気温度の低い時間帯以外の時間帯においても送風運転による灯油燃料の消費量の低減の省エネ効果を得ることが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、籾(もみ)や麦などの穀物を乾燥する循環式穀物乾燥機に係り、特に、乾燥運転を低燃費に行なって省エネルギー化することに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、循環式穀物乾燥機において、穀物の乾燥運転の際に、熱風生成バーナーに使用する灯油燃料の燃焼消費量を低減することを目的としたものが知られている(特許文献1)。この特許文献1のものは、乾燥運転する際に、作業者があらかじめ穀物乾燥の乾燥仕上予約時刻(乾燥仕上り希望時刻)を入力し、乾燥開始後に、乾燥開始時刻から前記乾燥仕上予約時刻までの乾燥所要時間を計算し、該乾燥所要時間が前記乾燥時間に対して時間的に余裕があるときには、乾燥運転途中に熱風生成バーナー等を全停止する休止運転(調質運転)を任意時間行い、この休止運転の間に燃焼しない分だけの灯油量を低減するものであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−132657号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1のものは、前記休止運転する間に休止運転をして燃料消費量を低減する効果はあるが、休止運転するのは穀物水分値が20%以下で、かつ、外気温度の一番低い深夜から朝方の時間帯に限って行なわれるものであるので、穀物水分値が20%まで乾燥されるまでの時間及び前記外気温度の低い時間帯以外のときには何ら燃料消費量を低減する手段が講じられていないものであった。このため、燃料消費量を更に低減して省エネ効果のある手段の開発が望まれている。
そこで、本願発明は上記問題点にかんがみ、乾燥仕上予約時刻を守りながら、灯油燃料の消費量をより低減できる循環式穀物乾燥機を提供することを技術的課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の循環式穀物乾燥機は上記課題を解決するため、
穀物の貯留タンク部と、
該貯留タンク部から流下した穀物を熱風通風して乾燥する乾燥部と、
該乾燥部における穀物を排出する排出部と、
該排出部から排出された穀物をバケット式昇降機及び前記貯留タンク部の上部の上部横搬送手段を介して貯留タンク部に還流する還流部と、
穀物水分を測定する穀物水分測定部と、
該穀物水分測定部で測定された穀物水分値が設定水分値になるまで乾燥運転等を制御するとともに、乾燥仕上予約時刻を入力設定可能にして前記乾燥仕上予約時刻に乾燥が仕上がるように制御する運転制御部と、
を備えた循環式穀物乾燥機において、
前記運転制御部は、運転中に、そのときの外気条件で送風運転したときの予測乾減率dVを演算するとともに、該予測乾減率dVに基づいて前記乾燥仕上予約時刻までに乾燥時間の時間的な余裕があると判断され、かつ、前記予測乾減率dVが所定値以上である場合に送風運転を行う、という技術的手段を講じた。
【0006】
また、前記運転制御部は、測定穀物水分値が所定水分値よりも高いときに前記送風運転への切換えを行い、一方、測定穀物水分値が所定水分値よりも低いときには休止運転に切換えるとよい。これにより、休止運転(全停止)によって、排風機の駆動停止による電力使用量の低減の省エネ効果も得られる。
【0007】
さらに、前記運転制御部は、前記予測乾減率dVが所定値以上のときは送風運転に切換える一方、前記予測乾減率dVが所定値未満のときは乾減率を小さくした乾燥運転に切換えるという。これにより、乾燥仕上予約時刻を守るための乾燥効率(乾燥作用の進行)を確保できる。
【0008】
また、前記運転制御部は、乾燥中に前記乾燥仕上予約時刻までに時間的な余裕がないと判断したときには、乾減率を大きくした乾燥運転に切換えるとよい。これにより、乾燥仕上予約時刻を守るための乾燥効率(乾燥作用の進行)を確保できる。
【0009】
さらに、前記運転制御部は、前記乾燥仕上予約時刻までに乾燥仕上げが間に合わないと判断したときには警告報知するとともに、乾減率を大きくした乾燥運転に切換えるとよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明の循環式穀物乾燥機は、乾燥運転開始後に、現在の外気条件(温度、湿度等)で送風運転したときの予測乾減率dVを演算し、該予測乾減率dVに基づいて送風乾燥(送風運転)したときの乾燥仕上予測時刻を求め、該乾燥仕上予約時刻に対して乾燥時間に時間的な余裕があるときには、該予測乾減率dVが所定値以上か否かを考慮して送風運転に切換えるようにしたので、乾燥仕上予約時刻を守りながら的確でかつ効率的な乾燥を進行することができる。また、外気温度の低い時間帯に限ることなく、全ての時間帯において送風運転による灯油燃料の消費量低減の省エネ効果を得ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の循環式穀物乾燥機における前方斜視図を示す。
【図2】本発明の循環式穀物乾燥機における後方斜視図を示す。
【図3】本発明の循環式穀物乾燥機における正面縦断面図を示す。
【図4】本発明の運転制御部におけるブロック図を示す。
【図5】本発明における省エネ乾燥運転プログラムのフロー図を示す。
【図6(a)】本発明の省エネ乾燥運転プログラムに関係する計算式の一覧表を示す。
【図6(b)】本発明の省エネ乾燥運転プログラムに関係する計算例1を示す。
【図6(c)】本発明の省エネ乾燥運転プログラムに関係する計算例2を示す。
【図7】本発明の省エネ乾燥運転プログラムに関係する予測除水量Wと送風空気吸水可能量Eの関係を表すグラフを示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1は、本発明における循環式穀物乾燥機1の前方上方から見た斜視図、図2は同後方上方から見た斜視図、図3は同正面から見た縦断面図である。循環式穀物乾燥機1は、穀物を貯留する貯留部2、乾燥風を通風して穀物の乾燥を行う乾燥部3及び前記通風を受けた穀物を機外に取出す取出部4を重設して構成し、さらに、前記取出部4には、取出された穀物を前記貯留部2に還流する穀物還流手段5を接続する。該穀物還流手段5とは昇降機5a及び上部搬送部5bのことを指す。前記上部搬送部5bの搬送終端部には、貯留部2内に臨ませた穀物分散装置5cを配設する。前記貯留部2は天井壁や側壁によって囲んで形成する。前記乾燥部3は中央に横設した熱風胴6と、該熱風胴6の両側に横設した穀物流下通路(乾燥室)7と、更に該乾燥室7の各側方に横設した排風胴8とを有する。そして更に、熱風胴6の一端開口部には熱風を供給するように熱風発生手段(バーナー)9を接続する。該熱風発生手段9から熱風胴6に供給された熱風は、熱風胴6、乾燥室7及び排風胴8のそれぞれに形成した有孔板を通風し、排風胴8の排風口に接続して設けた排風機10の吸引作用によって機外に排風されるように構成する。なお、乾燥部3における側板には張込用の開閉蓋3aが備えてある。
【0013】
前記取出部4は、前記左右の穀物流下層7の下端が交わる中央位置に横設したロータリーバルブ11と、該ロータリーバルブ11の下方位置に横設した下部搬送部12と、該下部搬送部12の両側部に横設した漏斗状の集穀板(ダッシュボード)13とから構成し、前記ロータリーバルブ11から繰出された穀物が前記下部搬送部12に集穀されて機外に搬出されるようになっている。なお、前記下部搬送部12の搬送終端側は前記昇降機5aの搬送始端側と接続し、搬出された穀物が前記昇降機5aに搬送されるようになっている。また、前記昇降機5aの側部には公知の穀物水分計15が配設してある。
【0014】
次に、前記循環式穀物乾燥機1の運転を制御する運転制御部14を説明する。該運転制御部14の一例を図4にブロック図で示す。該運転制御部14は、中央演算部(以下「CPU」という)19を構成するとともに、該CPU19とそれぞれ電気的に接続した入出力回路(以下「I/O」という)20、書き込み専用の記憶部21(以下「ROM」という)及び書き込み・読み込み兼用記憶部22(以下「RAM」という)とから構成する。そしてさらに、前記I/O20に電気的に接続した、乾燥運転ボタンや張込運転ボタン、張込量設定ダイヤル、仕上げ水分値設定ダイヤル等からなる運転操作ボタン23も構成する。この運転操作ボタン23には、通常の乾燥運転ボタンや送風運転ボタンのほか、本発明に関する省エネ乾燥運転モードボタンを備える。このほか前記I/O20は、前記穀物水分計15や熱風発生手段9、前記昇降機5aやロータリーバルブ11などの各モータ(図示せず)を駆動させる動力系駆動回路24、乾燥運転条件等を入力設定するための入力設定部18のほか、後述する外気温度センサー16及び外気湿度センサー17と電気的に接続してある。また、運転制御部14には時計機能も備えてある。
【0015】
また、前記運転制御部14の近傍などの任意の箇所に、外気温度センサー16及び外気湿度センサー17が配設してあり、これら外気温度センサー16及び外気湿度センサー17は前述のように運転制御部14に検出信号を送るようにしてある。
【0016】
前記ROM21には、本発明の特徴構成である、いわゆる省エネ乾燥運転プログラム(図5)の一例が記憶してある。
【0017】
作用:
次に、前記循環式穀物乾燥機1の作用を説明する。循環式穀物乾燥機1は、本発明の省エネ乾燥運転を開始する前に、前記入力設定部18から乾燥仕上予約時刻(乾燥仕上希望時刻)T0や乾燥仕上水分値、穀物の張込量等を入力設定するとともに、この外の設定条件を入力設定する。そして、この後、前記運転操作ボタン23の省エネ乾燥運転モードボタンを押すことによって、前記運転制御部14による前記省エネ乾燥運転プログラムの実行が開始される。なお、乾燥原料穀物はあらかじめ張り込み済みとする。
【0018】
ステップ1、2:
前記省エネ乾燥運転モードボタン(運転操作ボタン23)を押して前記省エネ乾燥運転プログラムを実行開始する。該省エネ乾燥運転プログラムを実行開始すると、まず、循環式穀物乾燥機1の循環系である前記穀物還流手段5やロータリーバルブ11、下部搬送部12等が駆動し運転が開始される。
【0019】
ステップ3:
あらかじめ入力設定した前記乾燥仕上予約時刻T0を読み込む。
【0020】
ステップ4:
前記外気温度センサー16及び外気湿度センサー17で外気温度及び外気湿度を測定して各値を読み込む。
【0021】
ステップ5:
次に、前記外気温度値と外気湿度値を基にして外気飽和水蒸気圧及び外気水蒸気分圧を例えば、図6(a)に示した計算式によって求め、次いで、該外気飽和水蒸気圧と外気水蒸気分圧を基にして外気絶対湿度C及び外気飽和絶対湿度Dも求める。そして、さらに、該外気絶対湿度Cと外気飽和絶対湿度Dとに基づいて、外気絶対湿度Cと外気飽和絶対湿度Dの差を演算し、そのときの外気条件において送風乾燥(送風運転)した場合に1kgの外気が今後吸水可能な吸水量である送風空気吸水可能量Eを求める。これらの演算についても、図6(a)に示した計算式によって求めることができる。
【0022】
ステップ6:
次に、現在、調質運転中であるか否かを判定する。前記省エネ乾燥運転プログラム開始直後の当該ステップ6の判断においては、調質運転の外、乾燥運転(熱風乾燥:バーナー燃焼と送風)や外気による送風運転(送風乾燥:送風のみ)は行なっていないので、次のステップ7に進む。一方、調質運転中であるときにはステップ10に進む。
【0023】
ステップ7:
前記穀物水分計15で穀物水分を測定して値を読み込む。
【0024】
ステップ8、9:
前記測定水分値が、前記乾燥仕上水分値となっているか否かを判断し、前記乾燥仕上水分値となっていれば乾燥終了し、一方、前記乾燥仕上水分値に未到達であれば、次のステップ10に進む。
【0025】
ステップ10:
このステップでは、送風乾燥(送風運転)時における予測除水量Wと予測乾減率dVを求める。前記予測除水量Wは、そのときの外気条件において送風乾燥(送風運転)した場合の1時間当たりに除水される水分量の予測値である。前記予測除水量Wは、図7に示したように、現在の外気条件に基づいて求めた前記送風空気吸水可能量E(ステップ5で算出済み)との関係において比例の相関がある。このため、前記予測除水量Wは、前記送風空気吸水可能量Eとの関係において実験的に図6(a)に示した関係式(計算式)を適宜作成し、これにより求めるようにするとよい。このとき図6(a)において、予測除水量Wの計算式における係数は単なる一例である。また、前記送風空気吸水可能量Eについては、図7に示したように、穀物水分値(籾水分)の高・低において変化し、また、穀物の張込量等に応じて適宜決定する送風量Qによっても変化するので、これらの項目も考慮に入れて前記予測除水量Wは求める必要がある。
【0026】
一方、前記予測乾減率dVは、現在の外気条件において送風乾燥(送風運転)した場合の1時間当たりに乾燥される乾減率の予測値である。前記予測乾減率dVの計算は、例えば、図6(b)の計算例1に示したように、まず、現在の外気条件に基づいて求めた上記予測除水量Wを考慮に入れて1時間後の推定籾重量(推定穀物重量)Y(%)=23.7%を求め、次いで、測定水分値24%から23.7%を引き算することにより、計算例1の場合、予測乾減率dVは0.3%/hとして求めることができる。また、図6(c)の計算例2についても同様に予測乾減率dVを求めることができる。
【0027】
ステップ11:
次に、乾燥仕上予測時刻T1を算出する。該乾燥仕上予測時刻T1は、前記ステップ10で算出した、現在の外気条件において送風乾燥(送風運転)した場合の予測乾減率dVと、乾燥仕上水分値とから求める。
【0028】
ステップ12、20、21:
次に、このステップでは、前記乾燥仕上予約時刻T0から前記乾燥仕上予測時刻T1を引き算して、乾燥余裕時間の有無の判断を行なう。そして、この引き算によって求めた時間(乾燥余裕時間)がゼロ時間未満の場合は、送風乾燥を行なった際には、乾燥余裕時間は無く、むしろ前記乾燥仕上予約時刻に乾燥仕上げが間に合わない可能性があるので、この旨を警告報知(ステップ20)するとともに熱風乾燥運転(ステップ21)を開始して前記乾燥仕上予約時刻に乾燥仕上げを間に合わせるよう試みる。そして、該熱風乾燥運転(ステップ21)は、穀物が熱風乾燥によって胴割を生じない範囲内で高速乾燥(乾減率を大きめ)を行なう。一方、前記乾燥余裕時間がゼロ時間でない場合は、現在の外気条件において送風乾燥を行なっても乾燥仕上予約時刻までに時間的余裕があると判断し、ステップ13に進む。なお、前記熱風乾燥運転は、前記バーナー9を駆動して熱風を生成して穀物に通風して乾燥する運転のことである。
【0029】
ステップ13:
このステップでは、前ステップ12において時間的余裕があると判断された場合に、前記乾燥余裕時間がどの程度あるかを判断する。前記乾燥余裕時間が例えば4時間よりも長い場合には、乾燥余裕時間が長いと判断してステップ14に進む。一方、前記乾燥余裕時間が4時間よりも短い場合には、乾燥余裕時間が短いと判断してステップ19に進む。
【0030】
ステップ14、16:
このステップでは、前記ステップ7で測定した穀物水分値が18%未満か否かを判断すし、穀物水分値が18%よりも高い場合は、ステップ15に進んで送風乾燥するか否かの最終的な判断を行なう。一方、穀物水分値が18%よりも低い場合には、ステップ16に進んで調質運転(全停止運転、休止運転)を開始する。該調質運転により、バーナー9の燃焼及び送風機10の駆動が共に停止するので、灯油消費量の低減及び電力使用量の低減による省エネ効果を奏する。
【0031】
ステップ15、17、18:
このステップは、ステップ10で求めた前記予測乾減率dVが所定の乾減率以上か否かを判定して、現在の外気条件において送風乾燥(送風運転)した場合に乾燥作用の進行程度を予測し、送風乾燥するか否かの最終判断を行なう。前記予測乾減率dVが例えば0.2%/h以上である場合には、送風運転しても現在の外気条件において乾燥作用の進行が確保されることが予測されるため、ステップ17に進んで送風乾燥(送風運転)を開始する。一方、前記予測乾減率dVが0.2%/h未満の場合には、送風運転しても現在の外気条件においては乾燥作用の進行の確保ができないことが予測されるため、乾燥仕上予約時刻を確実に守ること及び高水分の乾燥穀物にカビ等を生じさせることがないよう安全な乾燥を行なうことを目的にステップ18に進んで熱風乾燥運転を開始する。そして、該熱風乾燥運転(ステップ18)は、灯油の燃焼量等を抑えて低速乾燥(乾減率を小さめ)で行なう。なお、前記熱風乾燥運転は、前記バーナー9を駆動して熱風を生成して穀物に通風して乾燥する運転のことである。
【0032】
ステップ19:
なお、前記ステップ13において乾燥余裕時間が4時間よりも短いと判断された場合は、乾燥余裕時間がさらにどの程度短いかを判断して、熱風乾燥を高速乾燥で行なうか低速乾燥で行なうかを判断する。このとき、乾燥余裕時間が例えば1時間よりも短い場合には高速で熱風乾燥を行い(前記ステップ21)、一方、乾燥余裕時間が例えば1時間よりも長い場合には低速で熱風乾燥を行う(前記ステップ18)。
【0033】
以上のステップにより、現在の外気条件において、乾燥仕上予約時刻(乾燥仕上希望時刻)に乾燥仕上げを間に合わせ、かつ、バーナー燃焼をできるだけ行わないで灯油燃料の消費量を低減して省エネ効果を得る目的で、送風乾燥(ステップ17)、調質運転(全停止運転)(ステップ16)、熱風乾燥(高速)(前記ステップ21)、熱風乾燥(低速・ゆっくり)(前記ステップ18)のいずれかの運転が選択・実行される。そして、この後、前記ステップ4に戻って、上記と同様の判断・処理が乾燥仕上り停止水分になるまで繰り返し行なわれる。これにより、外気温度や外気湿度の外気条件が変化した場合において、随時、前記送風乾燥した場合の前記予測乾減率dVを求めるとともに穀物水分値も監視し、例えば、乾燥余裕時間が長く又は短く変化したり、穀物水分値が低下等することに伴って、随時、送風乾燥(ステップ17)、調質運転(ステップ16)、熱風乾燥(高速)(前記ステップ21)及び熱風乾燥(低速・ゆっくり)(前記ステップ18)の各運転切換えが的確に実効されることになる。
【0034】
以上のように、本発明は、現在の外気条件に基づいて送風乾燥(乾燥運転)した場合の予測乾減率dVを求め、次いで、該予測乾減率dVに基づいて正確な乾燥仕上時刻を求め、さらに、該乾燥仕上時刻に基づいて送風乾燥した場合に乾燥仕上予約時刻に間に合うか否かの正確な判断をすることができる。このため、乾燥仕上予約時刻を守る目的において、送風乾燥の選択が可能か否かを的確に判断することができる。また、上記で求めた前記乾燥仕上時刻に基づき、該乾燥仕上予約時刻までに乾燥余裕時間がある場合には、前記予測乾減率dVに基づいて、現在の外気条件で送風乾燥した場合の乾燥作用の進行予測の程度を確かめたうえで送風乾燥の選択・実行を行なうので、乾燥作用の進行を確保して効率的な乾燥が行なえ、かつ、灯油燃料の消費量の低減化となり省エネ効果が向上する。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明によれば、循環式穀物乾燥機において、外気条件に基づいて送風乾燥(乾燥運転)した場合の予測乾減率dVを求め、乾燥の進行程度を確認して乾燥仕上予約時刻を守りながら送風運転の選択を実行し、灯油燃料の消費量の低減による省エネ効果を得ることが可能となる。
【符号の説明】
【0036】
1 循環式穀物乾燥機
2 貯留部
3 乾燥部
3a 開閉蓋
4 取出部
5 穀物還流手段
5a 昇降機
5b 上部搬送部
5c 穀物分散装置
6 熱風胴
7 乾燥室
8 排風胴
9 熱風発生手段(バーナー)
10 排風機
11 ロータリーバルブ
12 下部搬送部
13 集穀板
14 運転制御部
15 穀物水分計
16 外気温度センサー
17 外気湿度センサー
18 入力設定部
19 中央演算部(CPU)
20 入出力回路(I/O)
21 書き込み専用記憶部(ROM)
22 書き込み・読み込み兼用記憶部(RAM)
23 運転操作ボタン
24 動力系駆動回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
穀物の貯留タンク部と、
該貯留タンク部から流下した穀物を熱風通風して乾燥する乾燥部と、
該乾燥部における穀物を排出する排出部と、
該排出部から排出された穀物をバケット式昇降機及び前記貯留タンク部の上部の上部横搬送手段を介して貯留タンク部に還流する還流部と、
穀物水分を測定する穀物水分測定部と、
該穀物水分測定部で測定された穀物水分値が設定水分値になるまで乾燥運転等を制御するとともに、乾燥仕上予約時刻を入力設定可能にして前記乾燥仕上予約時刻に乾燥が仕上がるように制御する運転制御部と、
を備えた循環式穀物乾燥機において、
前記運転制御部は、運転中に、そのときの外気条件で送風運転したときの予測乾減率dVを演算するとともに、該予測乾減率dVに基づいて前記乾燥仕上予約時刻までに乾燥時間の時間的な余裕があると判断され、かつ、前記予測乾減率dVが所定値以上である場合に送風運転を行うことを特徴とする循環式穀物乾燥機。
【請求項2】
前記運転制御部は、測定穀物水分値が所定水分値よりも高いときに前記送風運転への切換えを行い、一方、測定穀物水分値が所定水分値よりも低いときには調質運転に切換える請求項1に記載の循環式穀物乾燥機。
【請求項3】
前記運転制御部は、前記予測乾減率dVが所定値以上のときは送風運転に切換える一方、前記予測乾減率dVが所定値未満のときは乾減率を小さくした乾燥運転に切換える請求項1に記載の循環式穀物乾燥機。
【請求項4】
前記運転制御部は、乾燥中に前記乾燥仕上予約時刻までに時間的な余裕がないと判断したときには、乾減率を大きくした乾燥運転に切換える請求項1に記載の循環式穀物乾燥機。
【請求項5】
前記運転制御部は、前記乾燥仕上予約時刻までに乾燥仕上げが間に合わないと判断したときには警告報知するとともに、乾減率を大きくした乾燥運転に切換える請求項1に記載の循環式穀物乾燥機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6(a)】
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【図6(b)】
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【図6(c)】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−153747(P2011−153747A)
【公開日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−14828(P2010−14828)
【出願日】平成22年1月26日(2010.1.26)
【出願人】(000001812)株式会社サタケ (223)
【出願人】(000144898)株式会社山本製作所 (144)
【Fターム(参考)】