説明

循環流動床ボイラにおける起動バーナの燃料流量制御装置

【目的】 循環流動床ボイラの起動時に用いる起動バーナの燃料流量の制御を余分な作業員を要することなく行い得るようにし、且つ起動バーナにより加熱される一次空気が迅速に所定の温度になるようにする。
【構成】 起動バーナ19へ燃料21を送給する燃料供給管20中に設けられた燃料流量調節弁23は、燃料21の流量偏差ΔFを基に求めた第1の弁開度指令X1、一次空気2の温度偏差ΔTを基に求めた第2の弁開度指令X2のうち、低いものによって開度調節される。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、省力化及び制御性の向上を図った循環流動床ボイラにおける起動バーナの燃料流量制御装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】循環流動床ボイラにおいては、一次空気ダクト内に設置した起動バーナにより重油を燃焼させ、火炉本体へ送給されてベッド材を流動化させる一次空気の温度を約850℃まで上昇させながら維持させ、火炉下部のベッド材の温度を規定値(550℃)まで上昇させ、しかる後主バーナ(ランスバーナ)を着火させている。
【0003】而して、起動バーナから噴射される燃料の流量の調節は、起動バーナ出口の温度を約850℃に維持する必要があるため作業員が燃料流量調節弁を手動により開操作することにより行っている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、手動による燃料流量調節弁の開閉操作には、余分な作業員が必要となるため省力化を図ることができず、又手動による開閉操作では一次空気が所定の温度を維持するように常時監視を必要とし、制御性も良くない、等の問題がある。
【0005】本発明は、上述の実情に鑑み、省力化が可能で且つ制御性の良好な循環流動床ボイラにおける起動バーナの燃料流量制御装置を提供することを目的としてなしたものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明は、ベッド材の収納された火炉本体と、該火炉本体内へ一次空気を送給する一次空気ダクト内に配置されボイラ起動時に一次空気を加熱する起動バーナと、一次空気により流動化され燃焼ガスに同伴して前記火炉本体から排出された循環燃焼粒子を燃焼ガスから分離して前記火炉本体へ戻す分離器を備えた循環流動床ボイラにおいて、前記起動バーナへ送給される燃料の流量を検出するための流量検出器と、該流量検出器で検出された燃料流量と設定された燃料流量から流量偏差を求める第1の減算器と、該第1の減算器からの流量偏差を基に第1の弁開度指令を求める第1の比例積分調節器と、前記起動バーナにより加熱された一次空気の温度を検出する温度検出器と、該温度検出器で検出された一次空気温度と設定された一次空気温度から温度偏差を求める第2の減算器と、該第2の減算器からの温度偏差を基に第2の弁開度指令を求める第2の比例積分調節器と、第1、第2の比例積分調節器からの第1、第2の弁開度指令のうち低い方の弁開度指令を前記起動バーナへ燃料を送給する燃料供給管に接続された燃料流量調節弁へ出力する低信号選択器を備えてなるものである。
【0007】
【作用】ボイラ起動時には、起動バーナから噴射される燃料が燃焼されて一次空気が加熱され、加熱された一次空気は火炉本体へ送給されてベッド材の流動化が行われる。この際、起動バーナへ送給される燃料の流量が検出され、検出された燃料流量と設定された燃料流量の流量偏差が求められ、該流量偏差を基に第1の弁開度指令が求められ、又加熱された一次空気の温度が検出され、検出された一次空気温度と設定された一次空気温度の温度偏差が求められ、該温度偏差を基に第2の弁開度指令が求められ、第1、第2の弁開度指令のうち低い弁開度により燃料流量調節弁の弁開度が調節される。このため、燃料流量調節弁の開度が急激に変化するのが防止され、燃料流量が大きく変動することはない。
【0008】
【実施例】以下、本発明の実施例を添付図面を参照しつつ説明する。
【0009】図1は本発明の一実施例である。
【0010】図中、1は図示してない一次通風機からの一次空気2が送給される一次空気ダクト、3は一次空気ダクト1から散気板4を通って送給された一次空気2により流動化されるベッド材5が収納された火炉本体、6は火炉本体3下部に散気板4よりも上方に位置するよう配設され、火炉本体3内に燃料7を供給し燃焼させる主バーナ、8は火炉本体3の上部からダクト9を通り排出された燃焼ガス10に同伴された循環燃料粒子を分離するサイクロン、11は中途部にJバルブ12を備え、サイクロン8で分離された循環燃料粒子をサイクロン8から火炉本体3の下部へ戻す循環ダクト、13はサイクロン8を通過した燃焼ガス10がダクト14を介して導入される後部伝熱管、15は後部伝熱部13内に配置された過熱器、16は後部伝熱部13内に過熱器15よりも下方に位置するよう配置された節炭器、17は後部伝熱部13から排出された排ガス18を下流側へ送る排ガスダクトである。
【0011】19は一次空気ダクト1中に配置され、ボイラ起動時に火炉本体3へ供給される一次空気2を加熱するための起動バーナ、20は起動バーナ19へ重油を燃料21として送給する燃料供給管、22は燃料供給管20の中途部に接続された燃料ポンプ、23は燃料供給管20の燃料ポンプ22下流側に接続された燃料流量調節弁、24は燃料供給管20の燃料流量調節弁23下流側に接続され、燃料供給管20を流れる燃料21の流量(燃料流量)Fを検出するための流量検出器、25は起動バーナ19で加熱されて一次空気ダクト1を流れる一次空気2の温度(一次空気温度)Tを検出する検出器である。
【0012】26は流量検出器24で検出された燃料流量Fと予め設定された燃料流量(設定燃料流量)F0を比較し、流量偏差ΔFを求める第1の減算器、27は第1の減算器26からの流量偏差ΔFを比例積分調節し、第1の弁開度指令X1を求める第1の比例積分調節器、28は温度検出器25で検出された一次空気温度Tと予め設定された一次空気温度(設定一次空気温度)T0を比較し、温度偏差ΔTを求める第2の減算器、29は第2の減算器28からの温度偏差ΔTを比例積分調節し、第2の弁開度指令X2を求める第2の比例積分調節器、30は比例積分調節器27,29からの弁開度指令X1,X2のうち小さいものを選択し、出力する低信号選択器、31は低信号選択器30から燃料流量調節弁23の制御部に至るまでの間に設けられた自動手動切換器である。
【0013】循環流動床ボイラの起動時には、設定燃料流量F0が減算器26に、又設定一次空気温度T0が減算器28に、夫々設定されると共に、自動手動切換器31は自動に切換えられており、燃料流量調節弁23は低信号選択器30から出力される弁開度指令X1又はX2に対して所定の開度に開いている。このため、燃料ポンプ22から吐出された燃料21は燃料供給管20を通って起動バーナ19へ送給され、起動バーナ19から噴射された燃料21が燃焼することにより一次空気ダクト1中を流れる一次空気2が加熱され、加熱された一次空気2は一次空気ダクト1を通って火炉本体3内へ送給され、散気板4から吹上げられてベッド材5が流動化される。
【0014】一方、燃料供給管20を流れる燃料21の燃料流量Fは、流量検出器24により検出され、電気信号として減算器26に与えられ、減算器26では、設定燃料流量F0と検出された燃料流量Fの差がとられて流量偏差ΔFが求められ、求められた流量偏差ΔFは、比例積分調節器27に与えられて弁開度指令X1が求められ、弁開度指令X1は、比例積分調節器27から低信号選択器30へ与えられる。又起動バーナ19により加熱された一次空気2の一次空気温度Tは、温度検出器25により検出され、電気信号として減算器28に与えられ、減算器28では、設定一次空気温度T0と検出された一次空気温度Tの差がとられて温度偏差ΔTが求められ、求められた温度偏差ΔTは、比例積分調節器29に与えられて弁開度指令X2が求められ、弁開度指令X2は、比例積分調節器29から低信号選択器30へ与えられる。
【0015】低信号選択器30では、弁開度指令X1,X2のうち低いものが選択されて出力され、低い弁開度指令X1又はX2は自動手動切換器31を経て燃料流量調節弁23の制御弁へ与えられ、燃料流量調節弁23の開度が弁開度指令X1又はX2に対応した所定の開度に調節される。このように、低信号選択器30を設けて弁開度指令X1又はX2のうち低いものにより燃料流量調節弁23の開度を調節するようにしたのは、燃料流量調節弁23の開度が急激に変化するのを防止して燃料流量Fが大きく変動しないようにし、一次空気2の一次空気温度Tを迅速に設定一次空気温度T0に到達させ且つその温度T0に維持させるためである。
【0016】一次空気温度Tが所定の温度に到達し、火炉下部温度が規定値以上になると、その信号は主バーナ6の制御系へ与えられ、主バーナ6が着火され、又燃料流量調節弁23は閉止される。
【0017】主バーナ6が着火され、燃料流量調節弁23が閉止されたら、以後は火炉本体3へは起動バーナ19で加熱されていない一次空気2が送給され、主バーナ6からの燃料7が燃焼することにより燃焼ガス10が生成され、燃焼ガス10はベッド材5の一部を同伴してダクト9からサイクロン8へ導入され、サイクロン8でベッド材5が分離された燃焼ガス10はダクト14から後部伝熱部13へ導入され、後部伝熱部13で過熱器15及び節炭器16に熱を与え、排ガス18として排ガスダクト17へ排出される。又サイクロン8で燃焼ガス10から分離されたベッド材5は循環ダクト11から火炉本体3へ戻される。
【0018】上述のように燃料流量調節弁23を自動的に調節することにより、燃料流量調節弁23を開閉操作するための作業員が不要となって省力化を図ることが可能となり、又火炉本体3へ導入される一次空気2の温度Tを迅速に所定の温度にすることができるため、制御性が良好である。
【0019】なお、本発明は、上述の実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々変更を加え得ることは勿論である。
【0020】
【発明の効果】本発明の循環流動床ボイラにおける起動バーナの燃料流量制御装置によれば、作業員が燃料流量調整弁を開閉する必要がないため、省力化を図ることができ、又火炉本体へ導入される一次空気の温度を迅速に所定の温度にすることができ且つ所定の温度に維持できるため制御性が良好となる、等種々の優れた効果を奏し得る。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の循環流動床ボイラにおける起動バーナの燃料流量制御装置の一実施例を示すブロック図である。
【符号の説明】
1 一次空気ダクト
2 一次空気
3 火炉本体
5 ベッド材
8 サイクロン(分離器)
10 燃焼ガス
19 起動バーナ
20 燃料供給管
21 燃料
23 燃料流量調節弁
24 流量検出器
25 温度検出器
26 第1の減算器
27 第1の比例積分調節器
28 第2の減算器
29 第2の比例積分調節器
30 低信号選択器
F 燃料の流量(燃料流量)
0 設定された燃料流量(設定燃料流量)
ΔF 流量偏差
1 第1の弁開度指令
T 一次空気の温度(一次空気温度)
0 設定された一次空気温度(設定一次空気温度)
ΔT 温度偏差
2 第2の弁開度指令

【特許請求の範囲】
【請求項1】 ベッド材の収納された火炉本体と、該火炉本体内へ一次空気を送給する一次空気ダクト内に配置されボイラ起動時に一次空気を加熱する起動バーナと、一次空気により流動化され燃焼ガスに同伴して前記火炉本体から排出された循環燃料粒子を燃焼ガスから分離して前記火炉本体へ戻す分離器を備えた循環流動床ボイラにおいて、前記起動バーナへ送給される燃料の流量を検出するための流量検出器と、該流量検出器で検出された燃料流量と設定された燃料流量から流量偏差を求める第1の減算器と、該第1の減算器からの流量偏差を基に第1の弁開度指令を求める第1の比例積分調節器と、前記起動バーナにより加熱された一次空気の温度を検出する温度検出器と、該温度検出器で検出された一次空気温度と設定された一次空気温度から温度偏差を求める第2の減算器と、該第2の減算器からの温度偏差を基に第2の弁開度指令を求める第2の比例積分調節器と、第1、第2の比例積分調節器からの第1、第2の弁開度指令のうち低い方の弁開度指令を前記起動バーナへ燃料を送給する燃料供給管に接続された燃料流量調節弁へ出力する低信号選択器を備えてなることを特徴とする循環流動床ボイラにおける起動バーナの燃料流量制御装置。

【図1】
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【公開番号】特開平6−2811
【公開日】平成6年(1994)1月11日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平4−187685
【出願日】平成4年(1992)6月22日
【出願人】(000000099)石川島播磨重工業株式会社 (5,014)