説明

循環補助のためのカテーテルポンプ

【課題】心臓等を補助するために哺乳類の循環系に挿入されるカテーテルポンプを提供する。
【解決手段】カテーテルポンプは、中空カテーテル2と、カテーテルの内腔に配設された駆動ケーブル1と、カテーテルを囲むシース3と、駆動ケーブルによって回転されるように駆動ケーブルの遠位端に接続された駆動シャフト5と、駆動シャフトに配設されたプロペラ4と、プロペラを囲むケージとを備える。プロペラとケージは、カテーテルポンプが約3.3mmの断面寸法を有する折畳み位置から、ケージのサイズが約19.5mmになる展開位置に移動可能である。駆動シャフトは遠位と近位の軸受を備える。パージシステムは、流体を内腔で中空カテーテルに沿って近位軸受まで通過させるように配設される。流体は駆動ワイヤの外側を通って戻る。流体の一部分は、流体を近位軸受から遠位軸受まで通過させるように流路内に送られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば大腿動脈を介して哺乳類の体内に導入し、心臓の循環補助のために例えば大動脈内に配置するように意図されたカテーテルポンプに関する。カテーテルポンプは大動脈の左室弁護後に、または肺動脈の右室弁後に配設することができる。
【背景技術】
【0002】
循環補助のための従来の装置は、本発明と同一発明者を有する米国特許第5,749,855号から公知である。該装置は駆動ケーブルを含み、駆動ケーブルの1端は駆動源に接続可能であり、駆動ケーブルの他端に折畳み式駆動プロペラがある。折畳み式駆動プロペラは、折畳み式駆動プロペラが駆動ケーブル上に折り畳まれた閉構成と、折畳み式駆動プロペラがインペラとして動作するように展開された開構成との間で、調整可能である。折畳み式駆動プロペラの片側と折畳み式駆動プロペラの反対側との間にスリーブが延び、スリーブは折畳み式駆動プロペラの開構成と閉構成との構成間で可動である。格子ケージがプロペラの周りに配設され、プロペラと同時に折り出される。
【0003】
この装置は多くの状況で非常によく動作する。しかし、依然として改善の余地が存在する。例えば、プロペラが折り出される前に格子ケージが折り出されるならば、より安全になるであろう。加えて、プロペラを支持するシャフトは軸受で枢支する必要があり、そのような軸受は潤滑する必要がある。
【0004】
他のカテーテルポンプとしては、米国特許出願公開第2008/0132748号、米国特許出願公開第2008/0114339号、国際公開第03/103745号に記載のものが知られている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、本発明の目的は、上記で明らかにした欠陥および欠点の1つ以上を単独でまたは任意に組み合わせて軽減、緩和、または排除することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様によれば、請求項1に係るカテーテルポンプが提供される。
【0007】
ばね付勢ボルトは、前記プロペラのカム面と協働するように配設されてもよい。一実施形態において、流体を駆動シャフトの近位側の近位軸受に提供するための前記中空カテーテル内の軸線方向内腔と、流体を駆動シャフトの遠位側の遠位軸受に提供するための前記駆動シャフト内の流路と、流体を遠位軸受から周囲に通過させるためのリップシールと、を備えたパージ流体システムが具備される。
【0008】
本発明のさらなる目的、特徴、および利点は、図面に関連する本発明の実施形態についての以下の詳細な説明から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1A】本発明の実施形態に係るシステムの略斜視図である。
【図1B】本発明の実施形態に係る、挿入中の折り畳まれたポンプヘッドを示す断面図である。
【図1C】本発明の実施形態に係る、折りを広げた状態または展開状態のポンプヘッドを示す断面図である。
【図1D】図1Bにおける線D‐Dで切った断面図である。
【図2A】カテーテルポンプヘッドの展開された遠位部を示す部分切欠き斜視図である。
【図2B】図2Aの円2Bで囲んだ中央部分の拡大図である。
【図3A】プロペラシャフトの先端軸受を示す断面図である。
【図3B】プロペラシャフトの本体軸受を示す断面図である。
【図3C】図3Aの一部分の部分切欠き断面図である。
【図4】プロペラシャフトの外面の長手方向流路を示すために外側摺動スリーブの部分が取り外された状態のプロペラシャフトを示す部分切欠き斜視図である。
【図5A】プロペラブレードが折畳み位置から展開位置まで展開される過程における最初の段階を示す斜視図である。
【図5B】展開過程における図5Aの次の段階を示す斜視図である。
【図5C】展開過程における図5Bの次段階を示す斜視図である。
【図5D】展開過程における最後の段階を示す斜視図である。
【図6A】図5A〜5Dに示したプロペラの展開機構を拡大して示す部分図である。
【図6B】図5A〜5Dに示したプロペラの展開機構を拡大して示す部分図である。
【図6C】図5A〜5Dに示したプロペラの展開機構を拡大して示す部分図である。
【図7】どのようにカテーテルポンプを他の治療装置および/または診断ツールと組み合わせて使用することができるかを示す端面斜視図である。
【図8】どのようにカテーテルポンプを他の治療装置および/または診断ツールと組み合わせて使用することができるかを示す端面斜視図である。
【図9】どのようにカテーテルポンプを他の治療装置および/または診断ツールと組み合わせて使用することができるかを示す端面斜視図である。
【図10】どのようにカテーテルポンプを他の治療装置および/または診断ツールと組み合わせて使用することができるかを示す端面斜視図である。
【図11】どのようにカテーテルポンプを他の治療装置および/または診断ツールと組み合わせて使用することができるかを示す端面斜視図である。
【図12】どのようにカテーテルポンプを他の治療装置および/または診断ツールと組み合わせて使用することができるかを示す端面斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下で、図面を参照しながら、本発明の幾つかの実施形態について説明する。これらの実施形態は、当業者が本発明を実行することを可能にするために、かつ最良の形態を開示するために、例示を目的として記載するものである。しかし、そのような実施形態は本発明を制限するものではない。さらに、本発明の範囲内で様々な特徴の他の組合せが可能である。
【0011】
「Reitanカテーテル・ポンプ・システム」は、一実施形態に係る可撓性カテーテルの先端における折畳み式プロペラの概念に基づく一時的循環補助システムである。該システムは、生来の心臓が充分に酸素を含む血液で身体を支えることができないときに、心不全の患者に使用される。該システムの基本原理は、上に示した米国特許第5,749,855号に記載されたものに相当する。
【0012】
幾つかの血液ポンプが市販されているが、それらのほとんどが植設するために大手術を必要とする。したがって、折畳み式プロペラの使用は、挿入中に折り畳まれた状態である間に、高流量の大型双翼プロペラを外科手術の必要なく体内に導入することを可能にするという利点を有する。プロペラはカテーテルの遠位端のポンプヘッドに配設される。プロペラに加えて、ポンプヘッドは、大動脈をプロペラから保護するためにプロペラを囲む6本の線条体から作られたケージをも含む。
【0013】
挿入はイントロデューサシースを通して鼠径部の大腿動脈における穿刺を介して経皮的に達成され、ポンプは、左鎖骨下動脈から約5〜10センチメートル下にポンプヘッドを配置して、胸部大動脈内に前進される。
【0014】
ひとたび位置に着くと、プロペラおよびその保護ケージは展開され、あるいは折りを広げられる。するとポンプはいつでも動作できる状態になる。プロペラの回転は大動脈内部に圧力勾配を発生させる。大動脈の上部に発生する血圧低下は、左室からの血液の駆出を促進する。大動脈の下部の圧力上昇は内部器官、特に腎臓の灌流を促進する。
【0015】
ポンプは、近位端でDCモータに接続された内部回転ワイヤ付きの可撓性カテーテルに取り付けられる。モータは、特別に設計されたコンソールによって監視される調整可能な回転速度で動作する。
【0016】
ポンプは、20%グルコース溶液をプロペラシャフトの近位軸受に輸送する、潤滑およびパージ用の2つの小さい流路を持つパージシステムを有する。この流体の3分の2は患者の循環系に流入し、流体の3分の1は廃液バッグに戻る。戻り流体は駆動ワイヤに沿って通過し、駆動ワイヤは潤滑を受ける。
【0017】
システムを折畳み式にする利点は、大手術無しに大きいプロペラを体内に導入することが可能なことである。折畳み式ポンプヘッドおよび可撓性カテーテルのサイズは直径が約10フレンチ(3.3mm)である。
【0018】
該システムは次の4つの主要な構成要素を含む。
1.カテーテルポンプヘッド
2.駆動ユニット
3.コンソール
4.パージセット
【0019】
カテーテルは、ポンプが下行大動脈の鎖骨下動脈の5〜10cm下に常駐するように、大腿動脈を通して大動脈内に前進するように設計されている。カテーテルポンプヘッドは可撓性の外側カテーテルまたはシースと、内側の中空カテーテルとを備え、それらは保護ケージを展開し、プロペラケージ内でプロペラを開くために、相互に対して摺動する。内側カテーテルの中央内腔内を貫走する可撓性駆動ワイヤが存在する。内側カテーテルはまた、潤滑およびパージのために20%グルコース溶液をポンプヘッドに輸送するための2つの小さい流路をも有する。流体の3分の1は内部駆動シャフト内腔を介して戻り、流体の3分の2は血液プールに加えられる。
【0020】
ポンプヘッドは可撓性カテーテルの遠位端に取り付けられる。プロペラを囲繞する線条体は折り畳み可能であり、プロペラ/ケージシステムが展開されたときに、プロペラの周りに保護ケージを形成する。挿入中の折り畳まれたポンプヘッドは3.3mm(10フレンチ)であるが、展開されたポンプヘッドは約19.5mmである。プロペラの回転は、内側カテーテルの中央内腔に配置された可撓性の駆動ワイヤを介して伝達される。
【0021】
カテーテルの近位端(駆動連結)は磁界を介して、駆動ユニットに配置されたDCモータに接続される。DCモータ、回転ワイヤ、およびプロペラの速度は調整可能であり、コンソールによって監視される。速度は1,000から15,000rpmの間で調整することができる。
【0022】
駆動ユニットは患者のベッドサイドに配置することできるように設計されており、カテーテルポンプに接続するための磁気継手を1端に有する。駆動ユニットの他端は電気ケーブルを介してコンソールに接続される。
【0023】
コンソールの主な機能は、カテーテルポンプおよびパージ流体用の蠕動ポンプの速度を監視および制御することである。システムのための全てのコントロールおよび監視パラメータはタッチスクリーン上に表示される。コンソールはまた、駆動ユニット用のバッテリは電源装置をも含む。パージシステムは、潤滑を行うよう構成され、かつ、ポンプの回転部品内への血液の流入を防止するように構成される。プロペラの回転は外部DCモータから磁気継手およびカテーテルの中央部の可撓性ワイヤを介して伝達される。
【0024】
パージシステムは、20%無菌グルコース溶液を輸送して内部構成要素を潤滑するように、カテーテル内部の小さい流路から構成される。ヘパリンをパージ流体に添加してもよい。流体の3分の1は内側内腔中を逆輸送され、回転ワイヤを潤滑する。グルコース溶液の3分の2は患者の循環系に流入し、駆動シャフトを封鎖する。パージ流体の総量は24時間当たり600ml(毎分約0.4ml)に設定することができ、蠕動ポンプを介して輸送される。コンソールは蠕動ポンプの速度を制御する。図1は、実施形態に係るシステムの概観を示している。該システムは、大腿動脈を介してヒトなどの哺乳類の体内に導入し、心臓の循環補助のために大動脈内に配置するように意図されたカテーテルAを含む。カテーテルは、経皮的導入部位から例えば鼠径部の大腿動脈内、および大動脈弓まで延びることができるように、比較的長い。
【0025】
カテーテルは、以下でさらに詳述するようにプロペラがケージ内に封入されたポンプヘッドを含む。ポンプヘッドは胸部大動脈内の大動脈内バルーン位置に配置することができる。他の位置も同様に使用することができる。
【0026】
カテーテルの他端は近位端で哺乳類から外に延び、同じく以下でさらに詳述する駆動ユニットBに接続される。駆動ユニットBは、バッテリ、タッチ・スクリーン・ディスプレイ、およびコンピュータシステムを含むことのできる制御コンソールCに接続され、それによって制御される。カテーテルの遠位部分、すなわちポンプヘッドを図1Bおよび図1Cに示す。
【0027】
カテーテルは、可撓性であり、かつある程度屈曲することができるが、トルクを伝達することのできる駆動ワイヤ1を含む。駆動ワイヤ1は内側の中空カテーテル2内に封入され、該中空カテーテルは次に外側カテーテルまたはシース3に封入される。
【0028】
本明細書において、表現「遠位」とは、経皮的導入部位とは逆側を向いているという意味を有し、「近位」とは、経皮的導入部位に対して「遠位」より近いという意味を有する。
【0029】
駆動ワイヤ1、中空カテーテル2、およびシース3は、図1Bおよび図1Cに切断線で示すように、カテーテルポンプ全体に沿って延びる。
【0030】
駆動ワイヤ1は遠位端で駆動シャフト5に接続される。折畳み式プロペラ4は、図1Bに示す折畳み位置でシャフトに取り付けられる。
【0031】
図1Dの断面図に示す通り、内側カテーテル2は、中に駆動ワイヤ1が配設された中央内腔6を有するシリンダを含む。加えて、内側カテーテル2は、以下でさらに述べる通り、2つの軸穴7を含む。内側カテーテルは長手方向に比較的剛性であり、横方向に可撓性である。したがってカテーテルは、脈管系に挿入し、独力で所望の位置まで移動するのに充分な剛性を有する。カテーテルはまた、脈管系の湾曲に追従するだけの充分な可撓性をも有する。
【0032】
カテーテルポンプを挿入するためにガイドワイヤを使用する場合、ガイドワイヤは穴7の1つの内側に延びることができる。駆動ワイヤ1は、図1Dに示す通り小さい隙間をおいて中央内腔6内に収まる。隙間は、回転しないカテーテル2内で駆動ワイヤ1が自由に回転することができるように潤滑剤を含むことができる。シース3は隙間をおいて内側カテーテル2を囲繞する。シース3は、下で説明する通り、内側カテーテル2に対して軸線方向に移動可能である。ポンプヘッドでは、駆動ワイヤ1の遠位端は、図1Bに示すように、駆動シャフトの近位端に配設されたニップル5aに取り付けられる。駆動シャフトは、図1B、図3Aおよび図3Bに示す通り、遠位軸受24および近位軸受25に枢支される。近位ハウジング9および遠位ハウジング10は、駆動シャフト5の遠位端および近位端に隣接して配設される。複数本の線条体11がハウジング9とハウジング10との間に配設される。折畳み位置では線条体11は、図1Bおよび3Cに示す通り、駆動シャフト5と平行であり、駆動シャフトに近接して延びる。駆動シャフト5はスリーブ8によって被覆され、該スリーブは駆動シャフト5上を軸線方向に移動可能である。図3Cに示す通り、折畳み位置で、スリーブ8は近位ハウジング9から延び、遠位ハウジングより短い距離27だけ前で終端する。
【0033】
遠位ハウジング10は駆動シャフト5を介して内側カテーテル2および駆動ワイヤ1に取り付けられる。近位ハウジング9は、図2Aから分かるように、外側カテーテルまたはシース3に取り付けられる。外側カテーテル3は、内側カテーテル2に対して軸線方向に移動可能である。外側カテーテル3が図2Aで下向きの方向に移動すると、近位ハウジング9は遠位ハウジング10に向かって前進し、その結果、図2Aに示すようにケージを形成するために、線条体11が屈曲する。線条体11のそのような屈曲は、線条体11の真ん中に近い部分の内側に配設された弱化線26によって促進することができる(図4参照)。
【0034】
ケージが最初に形成されたときに、外側カテーテル3および近位ハウジング9が遠位ハウジング10に向かって連続的に移動する結果、折り畳まれたプロペラは、以下で図5A〜5Dに関連してさらに述べる通り、図2Aに示す位置に広げられる。こうして形成されたケージは、血管20の内壁をプロペラから保護する。ケージはプロペラが展開される前に、プロペラの展開と同じ動きによって展開されるので、プロペラが展開される前にケージが形成されることが確実になる。したがって、プロペラの展開中にも血管はプロペラから保護されるという点で有利である。図2Bに示す通り、プロペラ4は、駆動シャフト5を貫通して延びるプロペラピン13によって枢支される2つのブレード4を含む。さらに、各プロペラブレードは、ばねボルト14およびスリーブ8に取り付けられた作動ピン15と協働するためのカム面12を含む。
【0035】
外側カテーテル3および近位ハウジング9の遠位ハウジング10の方向に向かう完全な移動は、図3Cに示し、上述した短い距離27に対応する。
【0036】
図3Bに示す通り、駆動シャフトの外面に、スリーブ8の内側で駆動シャフト全体に沿って延びる幾つかの流路22が設けられる。
【0037】
潤滑剤およびパージ流体は、経皮的部位で身体から外に延びる内側カテーテル2の端部で、穴7の一方または両方に導入される(図1D参照)。流体は、図3Bに示すようにニップル5aに隣接する穴7から流出する。線28によって示される流体は、軸受をパージし、血液が軸受に逆方向に流入するのを防止するために、ニップル5aを一周して近位軸受25を潤滑し、軸受の外側の血液に送り込む。
【0038】
加えて、流体は流路22に流入し、遠位ハウジングに向かって通過する。さらに、流体の一部分は、図1Dに示すように、内側カテーテル2と中央内腔6の内部の可撓性駆動ワイヤ1との間の隙間内に迂回される。この流体は駆動ワイヤを潤滑し、駆動ワイヤが円滑に動作することを確実にする。この流体は経皮的部位に戻り、回収される。このようにして戻る流体の部分は総流量の約3分の1である。
【0039】
近位ハウジング9で流路22に流入する流体は、図3Aに線29で示すように、遠位ハウジング10で流路22から流出する。流体は遠位軸受24を一周して軸受を潤滑する。流体はスリーブ8の外側を通り、スリーブ8の周囲に配設されたリップシール23の先まで通過する。スリーブ8は、線条体およびプロペラが折り畳まれたときの図3Cに示す位置と、プロペラおよびケージが展開されたときの図3Aに示す位置との間で、リップシール23に対して移動可能である。流体は最終的にリップシール23を介して血管内に流入し、血液が逆方向に通過するのを防止する。
【0040】
この構成によって、近位軸受25および遠位軸受24は両方とも流体によって潤滑され、また、流体は近位ハウジング9および遠位ハウジング10の内側をパージするので、血液はハウジングの内側に流入することができない。図3Cに示す通り、ケージおよびプロペラが折畳み位置にあるときでも、流路22は遠位ハウジングの内側に開いている。したがって、ケージおよびプロペラを展開する前、およびプロペラ推進動作を開始する前に、パージ流体を提供するという点で有利である。
【0041】
代替的にまたは追加的に、流路22は、外側摺動スリーブ8の内面に配置するか、あるいは駆動シャフトの中央の軸穴として配設することができる。駆動シャフト5およびスリーブ8は両方とも共通して回転する。
【0042】
図5A〜5Dを参照しながら、プロペラの展開について説明する。線条体11を持つ展開されたケージは示されていないので、他の細部が明瞭に見える。図5Aおよび6Bから分かるように、プロペラブレード4の折畳み位置で、ばねボルト14はプロペラブレードのカム面12aと係合し、プロペラブレードを折畳み位置に維持する。ばねボルト14はばね16によって付勢される(図6B参照)。
【0043】
2つの作動ピン15がスリーブ8に配設される。ケージを展開するためにスリーブ8が下方に前進すると、作動ピン15が図5Bに示す位置まで移動し、プロペラブレードの第2カム面12bに作用する。
【0044】
スリーブ8が下方にさらに移動すると、カム面12bが下方に移動し、それによって図5Cおよび図6Aに示すようにプロペラブレードがプロペラピン13の周りを枢動する。この動作はばねボルト14によって対抗される。ばねボルトは、図5C、図5Dおよび図6Aに示すように、カムショルダ12cを通過させられる。
【0045】
スリーブ8がさらに下方に移動すると、プロペラが図2Bに示す位置まで開く。反対側の作動ピン15はプロペラブレード4が90度を超えて位置を移動することを防止する。
【0046】
プロペラが完全に展開されると、図2Bから分かるように、ばねボルト14はプロペラブレードのカム面との接触を失う。この位置で、プロペラブレードは作動ピン15によってロックされる。
【0047】
作動ピン15の逆の動きによりプロペラブレードは折畳み位置に後退する。次いで、ケージは折畳み位置に縮閉される。
【0048】
こうして、プロペラが開かれる前に、ケージが開かれ、または展開されることが分かる。プロペラは、部分的にまたは完全に展開されたケージ内で開かれる。これは、プロペラブレードの展開中に、血管の壁を鋭利な刃の危険性から保護する。図7は、線条体の外側の位置で線条体を囲む帯状体17がケージに設けられた、カテーテルポンプの別の実施形態を示す。この構成は、ポンプの動作に影響を及ぼすことなく、あるいはプロペラブレードの回転中にプロペラブレードと接触することなく、カテーテルポンプに通すことのできるガイドワイヤ18の追加を可能にする。
【0049】
代替的にまたは追加的に、ガイドチューブ19を血管20に挿入して、ポンプヘッドを通すことができる。ガイドワイヤ18および/またはガイドチューブ19を用いて、治療装置21を挿入することができる。治療装置21は、冠血管拡張およびステント留置装置、超音波冠動脈装置、薬剤送達装置、左室圧測定装置、圧容積ループ用のコンダクタンスカテーテル、左室の電気生理用のカテーテル、マイクロカメラ、ビデオカメラ、バルーンカテーテル、冠動脈形成術カテーテル等とすることができる。
【0050】
図8は、図7に係る構成を示す端面図である。図9に示す通り、帯状体17は膨張可能なリングとして構成することができる。この方法により、血管20の壁に沿った血液の逆流を軽減することができる。さらに、そのようなリングが無い場合の逆流の流動パターンを図10に示す。図11は、心臓に近い位置の大動脈内に挿入されたカテーテルポンプを示す。ガイドチューブ19はカテーテルポンプの外側に延在する。ガイドチューブ19はガイドワイヤ18の助けを借りて挿入される。少なくともガイドワイヤ18の挿入は、カテーテルポンプの挿入およびケージ11の展開の前に達成することができる。帯状体17は、ガイドワイヤ18のみならずガイドチューブ19がプロペラ4と接触することをも防止する。体外で、カテーテル装置Aは図1に示すように駆動ユニットBに接続される。駆動ユニットは、そのシャフトに配設されたラジアルディスクを有する電動モータを備える。ディスクは、ディスクの表面に取り付けられた複数個の永久磁石を含む。可撓性駆動ワイヤ1は、永久磁石が設けられた同様のディスクで終端する。モータのディスクおよび駆動ワイヤのディスクは、相互に近接位置に運ばれる。すると、磁石は2個のディスクを引き付けて一体に接続させる。このようにして、モータからのトルクを駆動ワイヤに伝達することができる。例えばプロペラが遮断されていることによって駆動ワイヤが回転を阻止される場合、駆動ディスクの磁石は分離する。次いでモータが停止され、ディスクの磁石が整列して引き付けられるようになるまで、モータからトルクは実質的に伝達されない。これは安全対策である。
【0051】
駆動ユニットBはさらに、パージ流体を内側カテーテル2の穴7内に駆動させる蠕動ポンプを備える。パージ流体が別個の流路の内側を近位ハウジング9、およびさらに遠位ハウジング10まで通過するという点が有利である。もしそうではなく、パージ流体が駆動ワイヤの外側を通過するならば、駆動ワイヤの小粒子が遊離して軸受を汚染する可能性があるというリスクがある。
【0052】
パージ流体は、駆動シャフト5に配設された流路22の内側を通過する。したがって、近位ハウジングと遠位ハウジングとの間に別個の部材は必要ない。パージ流体は、リップシール23を介する以外に遠位ハウジングから漏出する方法はない。
【0053】
カテーテルポンプは、左室弁後の大動脈内に、または右室弁後の肺動脈内に配設することができる。カテーテルポンプは心臓弁に隣接して、または大動脈もしくは動脈をさらに下った任意の適切な位置に配設することができる。
【0054】
カテーテルポンプは、患者のニーズに合わせて調整された一定速度で駆動することができる。必要ならば、カテーテルポンプは脈動流または部分的脈動流により、例えば心臓と実質的に同期して、駆動させることができる。
【0055】
カテーテルポンプは拍動する心臓を補助するように意図されている。しかし、カテーテルポンプは心臓手術中に心臓が拍動していないときにも使用することができる。
【0056】
本発明を特定の実施形態に関連して上述したが、本発明を本明細書に記載する特定の形に限定する意図はない。むしろ、本発明は添付の特許請求の範囲によってのみ限定され、特に上述した実施形態以外の実施形態も、添付の特許請求の範囲内で同様に可能である。
【0057】
特許請求の範囲において、用語「備える/備えた」は、他の要素またはステップの存在を除外するものではない。さらに個別に列挙したが、複数の手段、要素、または方法ステップは例えば単一のユニットまたはプロセスによって実現されてもよい。加えて、個々の特徴は異なる請求項に含まれてもよく、これらを組み合わせることが有利であり得、異なる請求項に含まれることは、特徴の組合せが実現不能および/または不利であることを含意するものではない。加えて、単数形の言及は複数形を除外するものではない。語「a」、「an」、「第1」、「第2」等は、複数形を排除するものではない。請求項における参照符号は単に説明を明確にする例として提供するものであって、いかなる形でも特許請求の範囲を限定するものと解釈してはならない。
【符号の説明】
【0058】
1 可撓性駆動ワイヤ
2 中空カテーテル、内側カテーテル
3 シース、外側カテーテル
4 プロペラブレード
5 駆動シャフト
6 中央内腔
7 軸穴、内腔
8 外側摺動スリーブ
9 近位ハウジング
10 遠位ハウジング
11 線条体、ケージ
12 カム面
12a カム面
12b カム面
12c カムショルダ
13 プロペラピン
14 ボルト
15 作動ピン
17 帯状体
18 ガイドワイヤ
19 ガイドチューブ
20 血管
21 治療装置
22 流路
23 リップシール
24 遠位軸受
25 近位軸受
A カテーテル装置
B 駆動ユニット
C 制御コンソール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中空カテーテル(2)と、
前記中空カテーテル(2)を囲繞し、前記中空カテーテル(2)に対して軸線方向に移動可能であるシース(3)と、
前記カテーテル(2)の内腔(6)に配設された駆動ケーブル(1)と、
前記駆動ケーブルによって回転されるように前記駆動ケーブル(1)の遠位端に接続された駆動シャフト(5)と、
前記駆動シャフトに配設されたプロペラ(4)と、
前記駆動シャフト(5)の近位端および遠位端に配設された近位ハウジング(9)および遠位ハウジング(10)と、
前記近位ハウジングと前記遠位ハウジングとの間に延びる複数本の線条体(11)と、
を備える、例えば心臓を補助するために哺乳類の循環系に挿入するように意図されたカテーテルポンプにおいて、
前記近位ハウジング(9)が前記中空カテーテル(2)に接続され、前記遠位ハウジングが前記駆動シャフト(5)に接続され、それによって前記中空カテーテル(2)に対する前記シース(3)の軸線方向の移動の結果、前記遠位ハウジング(10)が前記近位ハウジングに近づき、その結果、前記線条体が展開されてケージを形成すること、
前記プロペラ(4)が前記駆動シャフト(5)と平行である第1折畳み位置と前記プロペラ(4)が前記駆動シャフト(5)と直角になる展開位置との間で前記プロペラ(4)が枢動自在であるように配設されたプロペラピン(13)を前記駆動シャフト(5)が備えること、
前記駆動シャフト(5)がスリーブ(8)によって囲繞され、前記スリーブ(8)が、前記プロペラを展開するために前記プロペラのカム面(12b)と協働するように軸線方向に移動可能である作動ピン(15)を備えること、および
前記シース(3)の前記軸線方向の移動が、第1の移動で前記ケージを展開させ、かつその後の第2の移動で前記プロペラ(4)を展開させる前記カム面(12b)に前記スリーブの前記作動ピン(15)が作動すること、
を特徴とする、カテーテルポンプ。
【請求項2】
前記プロペラ(4)のカム面(12a、12c)と協働するように配設されたばね付勢ボルト(14)を備えることを特徴とする、請求項1に記載のカテーテルポンプ。
【請求項3】
前記作動ピン(15)は、前記プロペラ(4)が垂直位置を超えて移動することを防止するように配設されていることを特徴とする、請求項1又は2に記載のカテーテルポンプ。
【請求項4】
前記ばね付勢ボルト(14)は、前記プロペラが完全に展開されると、前記プロペラのカム面との接触を失うことを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載のカテーテルポンプ。
【請求項5】
前記プロペラ(4)は、完全に展開されると、前記作動ピン(15)によりロックされることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載のカテーテルポンプ。
【請求項6】
前記遠位ハウジング(10)および近位ハウジング(9)に配設された前記駆動シャフト(5)を支えるための遠位軸受(24)および近位軸受(25)と、
前記近位軸受(25)の潤滑およびパージのために流体を前記中空カテーテル(2)に沿って前記近位軸受(25)まで通過させるパージシステムと、
前記遠位軸受の潤滑およびパージのために流体を前記近位軸受から前記遠位軸受(24)まで通過させるよう、回転する前記駆動シャフト(5)内に配設された流路手段(22)と、
を備えることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一項に記載のカテーテルポンプ。
【請求項7】
前記駆動シャフト(5)がスリーブ(8)によって囲繞され、前記流路手段が前記駆動シャフトと前記スリーブとの間に、前記シャフトおよび/または前記スリーブにおける溝として配設されることを特徴とする、請求項6に記載のカテーテルポンプ。
【請求項8】
前記パージシステムが前記中空カテーテルに専用の穴(7)を備え、前記穴が前記流体を前記中空カテーテルの前記近位端からその前記遠位端まで通過させる目的のためにだけ使用されることを特徴とする、請求項6または7に記載のカテーテルポンプ。
【請求項9】
前記遠位軸受がリップシール(23)を介して周囲の空間に接続されることを特徴とする、請求項6〜8のいずれか一項に記載のカテーテルポンプ。
【請求項10】
前記流体が前記内腔(6)内の駆動ワイヤの外側を前記遠位端から前記近位端の方向に通過することを特徴とする、請求項6〜9のいずれか一項に記載のカテーテルポンプ。
【請求項11】

前記プロペラが帯状体(17)によって取り囲まれることを特徴とする、請求項1〜10のいずれか一項に記載のカテーテルポンプ。
【請求項12】
前記帯状体が膨張可能なリングを備えることを特徴とする、請求項11に記載のカテーテルポンプ。

【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【図1D】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図5C】
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【図5D】
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【図6A】
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【図6B】
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【図6C】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2013−63314(P2013−63314A)
【公開日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−267412(P2012−267412)
【出願日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【分割の表示】特願2011−514529(P2011−514529)の分割
【原出願日】平成21年6月22日(2009.6.22)
【出願人】(510315009)カーディオブリッジ ゲーエムベーハー (3)
【Fターム(参考)】