説明

微動アクチュエータ及び磁気ヘッドまたは磁気ディスクの検査装置

【課題】共振周波数を高くした微動アクチュエータを提供する、又は微動アクチュエータを使用し、ヘッド位置決め精度の高い或いは変位発生量が大きく、小形で安価な磁気ヘッドまたは磁気ディスクの検査装置を提供する。
【解決手段】固定部1と、固定部に取り付けられた少なくとも1つのリニア駆動素子2と、リニア駆動素子先端側であってリニア駆動素子の伸縮方向の中心線に対して左右に固定部に設けられたヒンジ4a、4bと、それぞれのヒンジが設けられた2つのビーム42a、42bと、ヘッド12が着脱可能であり、2つのビームの先端側に設けられたヘッド固定部5と、2つのビームの少なくとも一方とヘッド固定部とのそれ等も含む間に所定の位置を設け、所定の位置と固定部との間に追加ヒンジ41を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気ヘッド位置決め微動アクチュエータ、リードライトテスタ(磁気ヘッド検査装置及び磁気ディスク検査装置)に関するものである。例えば、磁気ヘッドを磁気ディスク上の目標のトラックへ位置決めをする検査装置に係り、特に磁気ヘッドを精密に位置決めする範囲が大きい場合の検査装置に好適なものである。
【背景技術】
【0002】
磁気ディスクや、磁気ディスクにデータを記録、再生するために使用される磁気ヘッドは、磁気ディスク装置へ組込まれる前に、その特性が検査装置により試験されている(例えば特許文献1)。磁気ヘッドの試験は、ヘッドサスペンションと磁気ヘッドをアセンブルしたヘッドジンバルアセンブリ(HGA)の状態で実施される。試験時には磁気ヘッドをスピンドルにより回転された磁気ディスク上で浮上させながら、磁気ディスクへのデータの記録、再生を行う。
【0003】
磁気ヘッドを精密に位置決めするアクチュエータとして、圧電アクチュエータが良く用いられる。圧電アクチュエータの発生変位は、一般的には数μm〜20μm程度であるため、微動アクチュエータの変位をそれよりも大きくする場合、機械的に拡大する変位拡大機構を用いることが考えられる。変位拡大機構の基本原理としては、梃子が良く知られており、これを応用して圧電素子の変位を拡大することができる(例えば特許文献2)。
【0004】
圧電素子の変位を変位拡大機構で変位を拡大するアクチュエータにおいて、変位拡大機構の中間に減衰材を付与することにより振動を小さくすることができる(例えば特許文献3)。
【0005】
他の変位拡大機構を用いたアクチュエータとして、アームの根元を差動で動かし、前記アームを回動させ、アーム先端で大きな変位を発生させることもできる(例えば特許文献4)。
【0006】
また、アームの根元を差動で動かし、前記アームを回動させ、アーム先端で大きな変位を発生させる変位拡大機構を用いたアクチュエータであって、可動部と固定部に減衰材を付与することにより振動を小さくすることができる(例えば特許文献5)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006−268955号公報
【特許文献2】特開2004−48955号公報
【特許文献3】特許第3612670号公報
【特許文献4】特許第3539332号公報
【特許文献5】特開2010−225247号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
磁気ヘッドの試験を行う検査装置において、HGAは微動アクチュエータ上に固定され、微動アクチュエータが動作することにより、磁気ヘッドは前記磁気ディスク上の目標トラックに追従する。目標トラックは、磁気ディスクの回転中心に対して必ずしも同心円ではなく、回転1次の歪み、すなわち偏心や、それより高い周波数成分の歪みを有す。目標トラックの偏心は、一旦、磁気ディスクに書き込まれた目標トラックの中心が、磁気ディスクをスピンドルに着脱する際の組立誤差などにより、回転中心からずれることにより発生するものや、書き込まれた目標トラックそのものが円ではなく、歪んでいることに起因する。ディスクリートトラックメディア(DTM)やビットパターンドメディア(BPM)など、磁気ディスク上に予め目標トラックが書き込まれた磁気ディスクにおいては、磁気ディスクをスピンドルに搭載する際に発生する目標トラックの中心とスピンドルの回転中心との位置ずれにより偏心が大きくなることが考えられる。その場合、磁気ヘッドを搭載したHGAを駆動する微動アクチュエータのストロークも大きくする必要がある。より大きなストロークを確保のために、変位拡大機構を用いる方法がある。但しストロークを大きくするためには変位拡大機構の剛性を弱める必要があり、微動アクチュエータの共振周波数が低下してしまう。微動アクチュエータの共振周波数の低下はヘッド位置決め精度を悪化させるという課題がある。
また、前記微動アクチュエータは、小形、かつ、低価格に構成する課題がある。
【0009】
本発明の第1の目的は、共振周波数を高くした微動アクチュエータを提供することである。
本発明の第2の目的は、第1の目的を達成する微動アクチュエータを使用しヘッド位置決め精度の高い磁気ヘッドまたは磁気ディスクの検査装置を提供することである。
【0010】
本発明の第3の目的は、変位発生量が大きく、小形で安価な磁気ヘッドまたは磁気ディスクの検査装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、上記の目的を達成するために、少なくとも以下に記す特徴を有する。
本発明は、固定部と、固定部に取り付けられた少なくとも1つのリニア駆動素子と、リニア駆動素子先端側であって前記リニア駆動素子の伸縮方向の中心線に対して左右に前記固定部に設けられたヒンジと、それぞれの前記ヒンジが設けられた2つのビームと、前記ヘッドが着脱可能であり、前記2つのビームの先端側に設けられたヘッド固定部と、前記2つのビームの少なくとも一方と前記ヘッド固定部とのそれ等も含む間に所定の位置を設け、前記所定の位置と前記固定部との間に追加ヒンジを設けたことを第1の特徴とする。
【0012】
また、本発明は、前記ヘッド固定部はアームであり、前記ヘッドと前記2つのビームを結ぶ方向の前記アームの中心線に対して左右に前記2つのビームの先で前記アームの根元に接続された2つのヒンジ接続部とを有することを第2の特徴とする。
さらに、本発明は、前記アームは前記伸縮方向の中心線に対して直角に設けられ、前記結ぶ方向は前記アームの長手方向であり、前記所定の位置は前記アームであることを第3の特徴とする。
【0013】
また、本発明は、前記所定の位置は、前記アームの長手方向の中央位置から前記ヒンジ接続部までの範囲であることを第4の特徴とする。
さらに、本発明は、前記ヘッド固定部は前記2つのビームと直接的又は間接的に接続され、前記2つのビームは前記伸縮方向の中心線に対して平行な部分を有し、前記所定の位置は前記平行な部分であることを第5の特徴とする。
【0014】
また、本発明は、前記ヘッド固定部が前記固定部に取り付けられた減衰材に接していることを第6の特徴とする。
さらに、本発明は、前記リニア駆動素子は、ピエゾアクチュエータであることを第7の特徴とする
また、本発明は、前記ヘッドは磁気ヘッドであり、前記微動アクチュエータと、前記微動アクチュエータを支持して移動する粗動アクチュエータと、円板を回転させるスピンドルと、前記粗動アクチュエータとスピンドルを支持する台座とを有することを第8の特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、共振周波数を高くした微動アクチュエータを提供できる。
また、本発明によれば、上記微動アクチュエータを使用しヘッド位置決め精度の高い磁気ヘッドまたは磁気ディスクの検査装置を提供できる。
さらに、本発明によれば、変位発生量が大きく、小形で安価な磁気ヘッドまたは磁気ディスクの検査装置を提供することである。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】第1の実施例を示す磁気ヘッド位置決め微動アクチュエータの概観図である。
【図2】図1に示した磁気ヘッド位置決め微動アクチュエータの動作説明図である。
【図3】追加ヒンジが無い場合の磁気ヘッド位置決め微動アクチュエータを示す図である。
【図4】追加ヒンジ有り機構部と追加ヒンジ無し機構部の周波数応答解析結果を示す図である。
【図5】ストローク及び共振周波数と追加ヒンジの位置との関係を示す図である。
【図6】本発明の作用効果、動作原理の説明図である。
【図7】第2の実施例を示す磁気ヘッド位置決め微動アクチュエータの概観図である。
【図8】第1の及び第2の実施例の磁気ヘッド位置決め微動アクチュエータの振動周波数特性を示す図である。
【図9】第3の実施例を示す磁気ヘッド位置決め微動アクチュエータの概観図である。
【図10】本発明の第4の実施例を示す磁気ディスク検査装置の機構部概観図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を用いて、本発明の実施の形態を説明する。
【実施例1】
【0018】
図1は、本発明の第1の実施例を示す磁気ヘッド位置決め微動アクチュエータ100の概観図である。図2は、図1に示した磁気ヘッド位置決め微動アクチュエータ100の動作を示す説明図である。
【0019】
図1及び図2に示すように、磁気ヘッド位置決め微動アクチュエータ100は、固定部1に取り付けられた1つのピエゾアクチュエータ2と、ピエゾアクチュエータ2の先端に圧接されているビーム結合部43と、ピエゾアクチュエータ2の伸縮方向の中心線3に対して左右に配置したヒンジ4a、ヒンジ4bと、それぞれのヒンジ4a、4bが設けられ前記ビーム結合部43と結合しているpushビーム42a及びpullビーム42bと、pushビーム42a又はpullビーム42bに接続されているヒンジ接続部8a、8bと、ヒンジ接続部8a、8bの先に接続されているアーム5を有し、さらに、ヒンジ接続部8a、8bの近傍で、アーム5と固定部1との間に追加ヒンジ41を有する。ヒンジ接続部8a、8bはアーム5の根元6においてアーム5の長手方向の中心線7に対して左右に接続されている。また、ヒンジ接続部8a、8b間の距離L9に対しアームの長さL1が大きく、アーム5の先端11にHGA12を着脱可能である。
【0020】
図2に示すように、ピエゾアクチュエータ2が伸びると、pushビーム42a及びpullビーム42bがそれぞれ矢印13a、13bの様に左右に開く。左右に開いたpushビーム42a又はpullビーム42bに接続されたヒンジ接続部8a、8bは、一方が押され、他方は引っ張られ、アーム5が回動し、それに取り付けられたHGA12は矢印15のように変位する。
【0021】
本実施例では、ピエゾアクチュエータ2がニュートラルの状態にあるときは、pushビーム42a及びpullビーム42bは固定部1に対して平行で、且つピエゾアクチュエータ2の伸縮方向の中心線3と直交している。従って、磁気ヘッド位置決めに使用するときは、磁気ヘッド位置決め微動アクチュエータ100を所定のバイアス角度を持って設置する。勿論、ピエゾアクチュエータ2がニュートラルの状態にあるときに、pushビーム42a及びpullビーム42bを、互いに平行で、且つピエゾアクチュエータ2の伸縮方向の中心線3と直交を維持しながら、固定部1に対して所定のバイアス角度を持って設置しても良い。
【0022】
磁気ヘッド位置決め微動アクチュエータ100において、ヒンジ4a、4bを押すアクチュエータとしてピエゾ素子より構成されるピエゾアクチュエータ2を利用する理由は、ピエゾ素子の特徴が位置決め用のアクチュエータとして適しているためである。ピエゾ素子の特徴としては、発生力が大きくかつ小形であることや高い変位分解能を有すること、電磁式と比較して消費電力が小さい、磁界を必要としないため漏洩磁束の問題がないことがある。
【0023】
本実施例においては、追加ヒンジ41を有することにより、磁気ヘッド位置決め微動アクチュエータ100の共振周波数を高めている。図3に追加ヒンジが無い場合の磁気ヘッド位置決め微動アクチュエータ101を示す。そして図4に追加ヒンジ有り機構部100と追加ヒンジ無し機構部101の周波数応答解析結果を示す。追加ヒンジ有り機構部100は、追加ヒンジ無し機構部101と比較して30%以上の高共振周波数を実現している。また、一般的にはHGA12の先端121の移動距離(以下ストロークと呼ぶ)が大幅に低下するところであるが、本実施例では低下を防止できている。ストロークを低下させずに共振周波数を高めることができている理由は、追加ヒンジ41の位置が大きく関係している。
【0024】
ストローク及び共振周波数と追加ヒンジ41の位置との関係を図5に示す。図2に示した追加ヒンジ41位置L2とアームの長さL1の比を横軸、縦軸に共振周波数とストロークを示す。図5の共振周波数とストロークは、図示のそれぞれの最大値を100%と表示している。即ち、共振周波数に対しては追加ヒンジ41をL2=0であるアーム5の先端11に設けたときの共振周波数を、ストロークとしては追加ヒンジ41をL2=L1であるアーム5の根元6に設けたときのストロークを、それぞれ100%としている。
【0025】
図5はアームの長さL1を一定とし、追加ヒンジ位置L2を変化させた結果である。追加ヒンジ位置L2が図1及び図2に示した位置の結果が、図5の横軸が100%の結果である。横軸の数値が小さい状態は、追加ヒンジ41の位置が図1及び図2に示した位置よりもHGAの先端121寄りにシフトしている状態である。
【0026】
図5の横軸が100%の結果に対して、追加ヒンジの位置をHGAの先端121寄りにシフトするに伴って、ストロークが低下している。一方共振周波数は、横軸50%までは上昇するがそれ以降は飽和している。この結果の通り共振周波数を高めるには横軸50〜100%にすることが望ましく、この範囲の中では横軸100%の場合がストロークを大きくすることが可能である。
【0027】
また、ヒンジ接続部8a、8b間の距離L9に対し、アームの長さL1を大きくとると、ピエゾアクチュエータ2の発生変位に対してHGA12の先端121の移動距離を大きくとることができる。ヒンジ接続部8a、8b間の距離L9、アームの長さL1は、ピエゾアクチュエータ2の大きさに関わらず決めることができるので、振動特性が許容される範囲においては、ピエゾアクチュエータ2の大きさに制限されることなく、ストロークを大きくすることが可能である。
【0028】
また、本実施例においては、ピエゾアクチュエータ2の伸縮方向の中心線3とアーム5の長手方向の中心線7とが直交するように構成されている。これにより、ピエゾアクチュエータ2の伸縮力の伝達効率が向上する。
【0029】
また、アーム5の根元6に力を作用させ、アーム5を回動させる磁気ヘッド位置決め微動アクチュエータにおいては、支点と1箇所の力の作用点とによりアーム5を回動させる構成も考えられるが、本実施例では、支点を設けず差動でアーム5を回動させるため、支点での応力集中の問題や、アーム5の回動中心と支点との位置誤差に起因する動作の不安定さを発生させないことが可能である。
【0030】
アーム5の根元に差動で力を作用させるために、2つのアクチュエータを用いても良いが、本実施例においては、1つのピエゾアクチュエータ2を用いることによりアーム5の根元に差動で力を作用させることができているため、2つのアクチュエータを用いる場合に比べ、より安価で、より小形に磁気ヘッド位置決め微動アクチュエータを実現することが可能である。
【0031】
さらに、図6を用いて、本実施例の1つのピエゾアクチュエータ2を用いることにより2方向に力を作用させる動作原理を説明する。図6左側(a)に比較例の構造概略図を示し、図6右側(b)に本発明の構造概略図を示す。比較例の構造では、1つのPZT素子から発生する力(図6中小さい矢印で示す。)は、固定部とヒンジへ作用し、ヒンジ側では、1つの力の伝達方向(図6中大きい矢印で示す。)へ伝達される。一方、本発明の構造では、1つのPZT素子から発生する力(図6中小さい矢印で示す。)は、固定部とヒンジへ作用し、ヒンジ側では、2つの力の伝達方向(図6中大きい矢印で示す。)へ伝達される。これにより次の顕著な効果を奏することができる。(1)アーム5を差動で駆動することで拡大率を高くすることができる。(2)力を複数に分ける=ヒンジを2組に分ける⇒ヒンジ寸法の製作誤差による特性ばらつきが小さくできる(製作誤差によるトータルの特性ばらつきは、複数のヒンジの製作誤差の平均値になる)。
以上説明した本実施例では1つのピエゾアクチュエータ2で2方向に力を作用させたが、複数のピエゾアクチュエータ2の調整など必要であるが、2つのピエゾアクチュエータ2で別々に2方向に力を作用させてもよい。
【実施例2】
【0032】
図7は、本発明の第2の実施例を示す磁気ヘッド位置決め微動アクチュエータ200の概観図である。
【0033】
磁気ヘッド位置決め微動アクチュエータ200は、固定部1に取り付けられた1つのピエゾアクチュエータ2と、ピエゾアクチュエータ2の先端に圧接されているビーム結合部43と、ピエゾアクチュエータ2の伸縮方向の中心線3に対して左右に配置したヒンジ4a、ヒンジ4bと、それぞれのヒンジ4a、4bが設けられ前記ビーム結合部43と結合しているpushビーム42a及びpullビーム42bと、pushビーム42a又はpullビーム42bに接続されているヒンジ接続部8a、8bと、ヒンジ接続部8a、8bの先に接続されているアーム5を有し、さらに、ヒンジ接続部8a、8bの近傍で、アーム5と固定部1との間に追加ヒンジ41を有する。そしてさらに、ヒンジ接続部8a、8b間の距離9に対しアームの長さL1が大きく、アーム5の先端11にHGA12を着脱可能であるアーム5と、アーム5の先端11と固定部1に橋渡しされた制振ゴム21により構成されている。本実施例は、実施例1における磁気ヘッド位置決め微動アクチュエータ100のアーム5の先端11と固定部1に制振ゴム21を橋渡ししたものである。
【0034】
磁気ヘッド位置決め微動アクチュエータ200の動作は、実施例1における磁気ヘッド位置決め微動アクチュエータ100の動作と同じである。
【0035】
図8は、本発明の第1の実施例で示した磁気ヘッド位置決め微動アクチュエータ100と第2の実施例を示す磁気ヘッド位置決め微動アクチュエータ200の振動周波数特性を示す図である。いずれもピエゾアクチュエータ2の入力電圧に対するHGA12の先端121の振動特性である。アーム5の先端11と固定部1に制振ゴム21を橋渡ししたことにより、大きな振動モードのゲインが減衰されており、HGA12のより精密な位置決めが可能となる。
【実施例3】
【0036】
図9は、本発明の第3の実施例を示す磁気ヘッド位置決め微動アクチュエータ300の平面図である。第1の実施例はアーム5の先端にあるHGA12を図2に示す矢印15のように回転させる回転型変位拡大機構であるのに対し、第3の実施例は、図9の矢印115に示すようにHGA12を直線的に動作させる直動型変位拡大機構である。
【0037】
図9に示すように、磁気ヘッド位置決め微動アクチュエータ300は、Uの字状の固定部101に取り付けられた1つのピエゾアクチュエータ2と、ピエゾアクチュエータ2の先端に圧接されているビーム結合部143と、ピエゾアクチュエータ2の伸縮方向の中心線103に対して左右に配置したヒンジ104a、ヒンジ104bと、それぞれのヒンジ104a、104bが設けられ前記ビーム結合部143と結合しているL字状のpushビーム142a及びpushビーム142bと、L字状のpushビーム142a又はpushビーム142bの先に接続されている板バネ145a、145bと、板バネ145a、145bに固定されたHGA固定部150とを有し、さらに、L字状のpushビーム142a及びpushビーム142bと固定部1との間に追加ヒンジ141を有する。HGA12はHGA固定部150に着脱可能に設けられている。
【0038】
本実施例では、図9の矢印120に示すように、ピエゾアクチュエータ2が伸びると、pushビーム142a、142bがそれぞれ矢印113a、113bの様に左右に開き、pushビーム142a、142bの先端側では矢印116a、116bに示すように内部側に移動する。矢印113a、113bの動きは図6に示す動作と同じである。その結果、逆八の字のした板バネ145a、145bを介してHGA12は矢印115に示すように先端側に直動的に移動する。
【0039】
本実施例においても、第1の実施例同様に、追加ヒンジ141を有することにより、pushビーム142a、142bの動きを制約することにより磁気ヘッド位置決め微動アクチュエータ300の共振周波数を高めることができる。
【0040】
追加ヒンジ141の位置としては、pushビーム142a、142bから板バネ145a、145bに間に設けることが可能である。何故ならば、仮に図9に破線で示す楕円108a、108bのところに図1に示すヒンジ接続部8a、8bを設け、その先のpushビーム142a、142bを図1に示すアーム5と考えれば、第1の実施例の考え方を踏襲できる。逆に、第1の実施例においても、pushビーム42a、Pullビーム42bを伸ばし、即ちヒンジ接続部8a、8bをHGA12の根元側(アームの先端側)11に設けることも可能である。その場合は、追加ヒンジ41をpushビーム42a、Pullビーム42bと固定部1との間に設けることになる。
【0041】
従って、第3の実施例においても、第1の実施例同様に、HGA12に近づくほど制振能力が高くなるので共振周波数を高めることができるが、HGA12の可動ストロークは低くなる。この兼ね合いを持って追加ヒンジ141の設置位置を決定する。
【0042】
本発明の第3の実施例においても、第1の実施例と同様な効果を奏することができる。
【0043】
また、第3の実施例においても、第2の実施例同様に、HGA固定部150の先端と固定部101に制振ゴム21を橋渡ししてもよい。その結果、第2の実施例同様に、大きな振動モードのゲインが減衰し、HGA12のより精密な位置決めが可能となる。
【実施例4】
【0044】
図10は、本発明の第4の実施例を示す、磁気ヘッド位置決め微動アクチュエータとしての例として第2の実施例の磁気ヘッド位置決め微動アクチュエータ200を用いた磁気ディスク検査装置400の機構部概観図である。
【0045】
磁気ディスク検査装置は、磁気ディスク31に予め書かれた磁気情報及び、HGA12の先端121に配置される磁気ヘッドで磁気ディスク31に書き込んだ磁気情報を、磁気ヘッドで再生して、磁気ディスク31の特性を検査する装置である。
【0046】
磁気ディスク検査装置400は、磁気ディスク31、台座32、スピンドル33、粗動アクチュエータ34、第2の実施例で示した磁気ヘッド位置決め微動アクチュエータ200及びこれらを制御する図示しない制御部を有する。台座32の上に粗動アクチュエータ34とスピンドル33が固定されている。スピンドル33上には磁気ディスク31が回転可能に、かつ、着脱可能に固定されている。磁気ヘッド位置決め微動アクチュエータ200が、粗動アクチュエータ34の粗動テーブル35上に固定されている。
【0047】
磁気ヘッド位置決め微動アクチュエータ200は、HGA12の先端121の移動距離を大きくすることが可能であるといっても、半径で数十mmにもわたる、磁気ディスク31の情報書き込み領域全体をカバーすることは困難である。そのため、粗動アクチュエータ34により磁気ヘッド位置決め微動アクチュエータ200を磁気ディスク31の所定の位置に大まかに位置決めした上で、磁気ヘッド位置決め微動アクチュエータ200によりHGA12を位置決めする。このことにより、HGA12の先端121に配置された磁気ヘッドを磁気ディスク31の全域にわたって、精度よく位置決めでき、磁気ディスク31の検査を精度良くできる。
【0048】
なお、本実施例においては、HGA12は、粗動アクチュエータ34と磁気ヘッド位置決め微動アクチュエータ200とにより磁気ディスク31の上に位置決めされるが、粗動アクチュエータ34と磁気ヘッド位置決め微動アクチュエータ200の間に第3のアクチュエータを設け、3つの位置決め装置によりHGA12を磁気ディスク31上に位置決めしても、本実施例と同様の効果があるが、更に位置決め制御や位置決め機能の自由度が増すという効果がある。
【実施例5】
【0049】
本発明の第5の実施例は、第4の実施例記載の磁気ヘッド位置決め微動アクチュエータ機構200を用いた磁気ヘッド検査装置である。即ち、磁気ヘッド位置決め微動アクチュエータは、図7記載の構成を有し、磁気ヘッド検査装置機構部は図10の構成を有する。磁気ヘッド検査装置は、磁気ディスク31に予め書かれた磁気情報及び、HGA12の先端121に配置された磁気ヘッドで磁気ディスク18に書き込んだ磁気情報を、HGA12の先端121に配置された磁気ヘッドで再生して、HGA12の特性を検査する装置である。
【0050】
その結果、第5の実施例においても、HGA12の先端121に配置された磁気ヘッドを磁気ディスク31の全域にわたって、精度よく位置決めでき、HGA12の検査を精度良くできる。
【0051】
なお、本実施例においても、HGA12は、粗動アクチュエータ34と磁気ヘッド位置
決め装置機構部200と、により磁気ディスク31の上に位置決めされるが、粗動アクチュエータ34と磁気ヘッド位置決め微動アクチュエータ200の間に第3のアクチュエータを設け、3つの位置決め装置によりHGA12を磁気ディスク31上に位置決めしても本実施例と同様の効果があるが、更に位置決め制御や位置決め機能の自由度が増すという効果がある。
【0052】
また、実施例4又は5によれば、目標トラックの偏心が大きな磁気ディスクの検査や、目標トラックの偏心が大きな磁気ディスクを使った磁気ヘッドの精密な検査を行うことができる磁気ヘッド検査装置及び磁気ディスク検査装置を提供できる。
【0053】
以上、本発明の実施の態様について記載したが、上記に限定されるものではなく、その技術思想の範囲において、種々変形可能である。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本実施例では、磁気ディスク検査装置について説明しているが、磁気ヘッド検査装置用の磁気ヘッド位置決め制御装置や、磁気ヘッド検査にも適用できる。また、磁気ディスク、磁気ヘッドの両方を評価する装置にも適用できる。さらに、微動アクチュエータの使用例として磁気ヘッドまたは磁気ディスク関係の装置を説明したが、他のセンサ等を有するヘッドの微動アクチュエータ機構として用いることも可能である。
【符号の説明】
【0055】
1、101:固定部 2、102:ピエゾアクチュエータ
3、103:ピエゾアクチュエータの伸縮方向の中心線
4a、4b、104a、104b:ヒンジ 5:アーム
6:アームの根元 7:アームの長手方向の中心線
8a、8b:ヒンジ接続部 11:アームの先端
12:HGA 13a、13b、15:矢印
113a、113b、115、116a、116b、120:矢印
21:制振ゴム 31:磁気ディスク
32:台座 33:スピンドル
34:粗動アクチュエータ 35:粗動テーブル
41、141:追加ヒンジ
42a、142a、142b:pushビーム
42b:pullビーム 43、143:ビーム結合部
100、200、300:磁気ヘッド位置決め微動アクチュエータ
121:HGAの先端 145a、145b:板ばね
150:HGA固定部 300:磁気ディスク検査装置機構部
L1:アームの長さ L2:追加ヒンジ位置
L9:ヒンジ接続部間の距離

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定部と、固定部に取り付けられた少なくとも1つのリニア駆動素子と、リニア駆動素子先端側であって前記リニア駆動素子の伸縮方向の中心線に対して左右に前記固定部に設けられたヒンジと、それぞれの前記ヒンジが設けられた2つのビームと、前記ヘッドが着脱可能であり、前記2つのビームの先端側に設けられたヘッド固定部と、前記2つのビームの少なくとも一方と前記ヘッド固定部とのそれ等も含む間に所定の位置を設け、前記所定の位置と前記固定部との間に追加ヒンジを設けたことを特徴とする微動アクチュエータ。
【請求項2】
前記ヘッド固定部はアームであり、前記ヘッドと前記2つのビームを結ぶ方向の前記アームの中心線に対して左右に前記2つのビームの先で前記アームの根元に接続された2つのヒンジ接続部とを有することを特徴とする請求項1に記載の微動アクチュエータ。
【請求項3】
前記アームは前記伸縮方向の中心線に対して直角に設けられ、前記結ぶ方向は前記アームの長手方向であり、前記所定の位置は前記アームであることを特徴とする請求項2に記載の微動アクチュエータ。
【請求項4】
前記2つのヒンジ接続部間の距離に対し前記アームの長さが長いことを特徴とする請求項3に記載の微動アクチュエータ。
【請求項5】
前記所定の位置は、前記アームの長手方向の中央位置から前記ヒンジ接続部までの範囲であることを特徴とする請求項3記載の微動アクチュエータ。
【請求項6】
前記ヘッド固定部は前記2つのビームと直接的又は間接的に接続され、前記2つのビームは前記伸縮方向の中心線に対して平行な部分を有し、前記所定の位置は前記平行な部分であることを特徴とする請求項1に記載の微動アクチュエータ。
【請求項7】
前記ヘッド固定部と前記2つのビームとの間のそれぞれ対称な位置に板ばねを有すること特徴とする請求項6に記載の微動アクチュエータ。
【請求項8】
前記ヘッド固定部の先端が前記固定部に取り付けられた減衰材に接していることを特徴とする請求項1記載の微動アクチュエータ。
【請求項9】
前記リニア駆動素子は、ピエゾアクチュエータであることを特徴とする請求項1または2あるいは6に記載の微動アクチュエータ。
【請求項10】
前記ヘッドは磁気ヘッドであることを特徴とする請求項1または2あるいは6に記載の微動アクチュエータ。
【請求項11】
請求項11の微動アクチュエータと、前記微動アクチュエータを支持して移動する粗動アクチュエータと、円板を回転させるスピンドルと、前記粗動アクチュエータとスピンドルを支持する台座とを有することを特徴とする磁気ヘッドまたは磁気ディスクの検査装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−45488(P2013−45488A)
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−183373(P2011−183373)
【出願日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【出願人】(501387839)株式会社日立ハイテクノロジーズ (4,325)
【Fターム(参考)】