説明

微地絡検出装置及び微地絡検出方法

【課題】地絡事故が起こる前の予兆となる微地絡を検出し易くすると共に、微地絡の発生箇所を絞り込むことが可能な微地絡検出装置及び微地絡検出方法を提供する。
【解決手段】変圧器11の中性点に発生する微地絡時の零相電流を検出すると共に、フィーダ22a〜22nの夫々に発生する微地絡時の零相電流を検出し、検出されたフィーダ22a〜22nの零相電流から今回の微地絡発生のフィーダ22a〜22nを特定し且つ検出された中性点の零相電流の電流波形から今回の微地絡発生箇所を特定するにあたり、今回の微地絡発生時の中性点の零相電流の電流波形周期と同等の周期の過去の微地絡発生時の中性点の零相電流の電流波形周期を検索し、検出された同等周期の過去の微地絡発生箇所を今回の微地絡発生箇所に特定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微地絡検出装置及び微地絡検出方法に関し、特に地絡事故が起こる前の予兆となる微地絡を検出する方法に適用して好適なものである。
【背景技術】
【0002】
高圧配電系統は、電源に接続された複数の母線に、フィーダと呼ばれる分岐配線が複数接続され、フィーダ単位に遮断器が設けられて管理されている。このような高圧配電系統において、高圧ケーブルの絶縁劣化等の原因で地絡事故が発生することがある。この地絡事故対策として、従来の電力系統では、地絡保護継電器を高圧配電系統に設け、地絡事故発生時に事故設備を系統から切離することが行われている。この地絡保護継電器では、保護対象設備の零相電圧と零相電流を検出し、その大きさが双方共に基準レベルを上回り、地絡が自設備側で発生していることを示している状態が一定期間続いた場合に地絡事故と判定され、トリップ動作が行われる。
【0003】
図12は、従来の地絡事故対策が適用された電力系統の概略構成を示すブロック図である。
図12において、電力系統には、高圧を低圧に変圧する変圧器111が設けられている。そして、変圧器111は、遮断器112を介して高圧配線に接続されると共に、遮断器112を介して低圧配線に接続され、変圧器111の中性点は接地抵抗115を介して接地されている。また、地絡時に変圧器111の中性点に発生する零相電流を検出する変流器123が設けられ、変流器123は地絡過電流継電器119に接続されている。なお、変圧器111は、例えば154kVの高圧を22kVの低圧に変圧することができる。
【0004】
また、変圧器111の低圧配線側には、フィーダ122a〜122nが接続されると共に、計器用変圧器114が接続されている。そして、各フィーダ122a〜122nに流れる零相電流を検出する零相変流器117a〜117nが設けられ、零相変流器117a〜117nは地絡方向継電器118a〜118nに夫々接続されている。また、計器用変圧器114のオープンデルタ回路には地絡過電圧継電器120が接続されている。
【0005】
そして、電力系統に地絡事故が発生すると、変圧器111の中性点には零相電流が流れると共に、計器用変圧器114のオープンデルタ開度には零相電圧が発生する。このうち、変圧器111の中性点に流れた零相電流は変流器123にて検出され、その検出結果が地絡過電流継電器119に入力されると共に、計器用変圧器114のオープンデルタ回路に発生した零相電圧は地絡過電圧継電器120に入力される。地絡過電流継電器119及び地絡過電圧継電器120は、零相電流及び零相電圧が異常値を示した場合、遮断器112、113などを動作させることで、事故設備を電力系統から切離することができる。
【0006】
なお、微地絡などの微弱な電圧/電流変動の検出によって遮断動作を行う必要はなく、誤動作しないように地絡過電流継電器119及び地絡過電圧継電器120が反応しないように、地絡過電流継電器119及び地絡過電圧継電器120を動作させるときの零相電流及び零相電圧を設定することができる。即ち、地絡過電流継電器119及び地絡過電圧継電器120を動作させるときの零相電流及び零相電圧は、完全地絡時の零相電流及び零相電圧の30%感度に設定することができる。
【0007】
例えば、地絡過電流感度は、22kVで完全地絡時の値が100Aであるとすると、30%整定値=30Aに設定することができる。また、地絡過電流感度は、6.6kV又は3.3kVで完全地絡時の値が30Aであるとすると、30%整定値=9Aに設定することができる。また、地絡過電圧感度は、完全地絡時の値が110Vであるとすると、30%整定値=30Vに設定することができる。
【0008】
また、地絡事故の発生時に各フィーダ122a〜122nに流れた零相電流は零相変流器117a〜117nにて夫々検出され、その検出結果が地絡方向継電器118a〜118nに夫々入力される。そして、地絡方向継電器118a〜118nは、零相電流が異常値を示した場合、そのフィーダ122a〜122nを電力系統から夫々切離することができる。
【0009】
ここで、零相電流及び零相電圧が異常値を示した場合においても、地絡事故の発生箇所は上位のトランスから下位のトランスの間としか判別することができない。このため、地絡過電流継電器119及び地絡過電圧継電器120とは別に、地絡方向継電器118a〜118nを設けることで、事故が発生したフィーダ122a〜122nを特定することができる。
【0010】
また、例えば、下記特許文献1には、フーリエ変換によって得られた零相電圧と零相電流の所定周波数成分の大きさと位相にて地絡の予兆検出を行うことで、地絡の予兆を誤検出なく高速に検出して警報を発生すると共に、不良の原因の解析に必要な波形データのみを記録として残し、この解析によって知った不良原因と不良箇所から補修作業を迅速に行わせ、地絡事故を未然に防止する方法が開示されている。
【特許文献1】特開平6−300806号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、従来の電力系統の地絡事故対策では、地絡事故が起こった後に、事故設備を電力系統から切離するので、地絡事故が発生した箇所の機器の損傷に止まることなく、地絡時の過電圧/過電流によって被害が拡大する恐れがあるという問題があった。
また、前記特許文献1に開示された方法では、地絡過電流継電器119及び地絡過電圧継電器120が微地絡などの微弱な電圧/電流変動に反応しないようにするため、商用交流電圧に重畳される地絡時の放電波形が直接観測される。このため、数nsec〜数msecの急峻なパルス波形を検出する必要があり、検出漏れが発生する恐れがあるだけでなく、そのパルス波形を解析しただけでは、微地絡の発生箇所を特定することができないという問題があった。
本発明は、上記のような問題点に着目してなされたものであり、地絡事故が起こる前の予兆となる微地絡を検出し易くすると共に、微地絡の発生箇所を絞り込むことが可能な微地絡検出装置及び微地絡検出方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために、本発明の微地絡検出装置は、変圧器の中性点に発生する微地絡時の零相電流を検出する中性点零相電流検出手段と、電力分岐系統の夫々に発生する微地絡時の零相電流を検出する分岐系統零相電流検出手段と、前記分岐系統零相電流検出手段で検出された分岐系統の零相電流から今回の微地絡発生の分岐系統を特定し且つ前記中性点零相電流検出手段で検出された中性点の零相電流の電流波形から今回の微地絡発生箇所を特定する波形診断装置とを備え、前記波形診断装置は、前記今回の微地絡発生時の中性点の零相電流の電流波形周期と同等の周期の過去の微地絡発生時の中性点の零相電流の電流波形周期を検索し、検出された同等周期の過去の微地絡発生箇所を今回の微地絡発生箇所に特定することを特徴とするものである。
【0013】
また、本発明の微地絡検出方法は、変圧器の中性点に発生する微地絡時の零相電流を検出すると共に、電力分岐系統の夫々に発生する微地絡時の零相電流を検出し、検出された分岐系統の零相電流から今回の微地絡発生の分岐系統を特定し且つ検出された中性点の零相電流の電流波形から今回の微地絡発生箇所を特定するにあたり、前記今回の微地絡発生時の中性点の零相電流の電流波形周期と同等の周期の過去の微地絡発生時の中性点の零相電流の電流波形周期を検索し、検出された同等周期の過去の微地絡発生箇所を今回の微地絡発生箇所に特定することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0014】
而して、本発明の微地絡検出装置及び微地絡検出方法によれば、変圧器の中性点に発生する微地絡時の零相電流を検出すると共に、電力分岐系統の夫々に発生する微地絡時の零相電流を検出し、検出された分岐系統の零相電流から今回の微地絡発生の分岐系統を特定し且つ検出された中性点の零相電流の電流波形から今回の微地絡発生箇所を特定するにあたり、前記今回の微地絡発生時の中性点の零相電流の電流波形周期と同等の周期の過去の微地絡発生時の中性点の零相電流の電流波形周期を検索し、検出された同等周期の過去の微地絡発生箇所を今回の微地絡発生箇所に特定する構成としたため、微地絡発生点で発生した地絡電流が変圧器の中性点に戻るときの比較的穏やかな電流波形によって地絡事故が起こる前の予兆となる微地絡を検出し易くすると共に、微地絡発生時の特徴的な変圧器の中性点の零相電流の電流波形周期から微地絡の発生箇所を絞り込むことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態に係る微地絡検出装置及び微地絡検出方法について図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明の第1実施形態に係る微地絡検出装置が適用された電力系統の概略構成を示すブロック図である。
図1において、電力系統には、高圧を低圧に変圧する変圧器11が設けられている。そして、変圧器11は、遮断器12を介して高圧配線に接続されると共に、遮断器13を介して低圧配線に接続され、変圧器11の中性点は中性点接地抵抗器15を介して接地されている。また、地絡時に変圧器11の中性点に発生する零相電流を検出する変流器23が設けられ、変流器23は微地絡電流センサ16に接続されている。なお、変圧器11は、例えば、154kVの高圧を22kVの低圧に変圧することができる。ここで、微地絡電流センサ16は、変圧器11の中性点に発生する微地絡時の電流波形を検出することができる。
【0016】
また、変圧器11の低圧配線側には、フィーダ22a〜22nが接続されると共に、計器用変圧器14が接続されている。そして、各フィーダ22a〜22nに流れる零相電流を検出する零相変流器17a〜17nが設けられ、零相変流器17a〜17nはフィーダ用微地絡電流センサ18a〜18nに夫々接続されている。ここで、フィーダ用微地絡電流センサ18a〜18nは、各フィーダ22a〜22nに発生する微地絡時の電流波形を夫々検出することができる。
【0017】
また、計器用変圧器14のオープンデルタ回路には微地絡電圧センサ19が接続されている。ここで、微地絡電圧センサ19は、微地絡時に電力系統の母線に発生する電圧波形を検出することができる。
また、電力系統の母線にはカプラ20が接続されている。ここで、カプラ20は、微地絡時に電力系統の母線に発生する各相の電圧変動を検出することができる。なお、カプラ20としては、コンデンサを用いることができる。
【0018】
また、微地絡検出装置には波形診断装置21が設けられ、波形診断装置21には、微地絡電流センサ16、フィーダ用微地絡電流センサ18a〜18n、微地絡電圧センサ19及びカプラ20が接続されている。ここで、波形診断装置21は、微地絡電流センサ16にて検出された微地絡時の電流波形に基づいて、微地絡の発生箇所又は様相を推定することができる。また、波形診断装置21は、フィーダ用微地絡電流センサ18a〜18nにて夫々検出された微地絡時の電流波形に基づいて、各フィーダ22a〜22nに発生した微地絡の発生箇所又は様相を推定することができる。また、波形診断装置21は、地絡電圧センサ19にて検出された微地絡時の電圧波形に基づいて、微地絡の発生箇所又は様相を推定することができる。また、波形診断装置21は、カプラ20にて検出された微地絡時の電圧変動に基づいて、微地絡の発生箇所又は様相を推定することができる。
【0019】
電力系統の何れかの箇所で微地絡が発生すると、その微地絡の発生箇所で発生した微地絡電流は接地点などを介して変圧器11の中性点に戻る。変圧器11の中性点には零相電流が流れると共に、計器用変圧器14のオープンデルタ回路には零相電圧が発生する。変圧器11の中性点に発生した電流波形が微地絡電流センサ16に入力される。そして、変圧器11の中性点に発生した電流波形が微地絡電流センサ16にて検出され、その検出結果が波形診断装置21に入力される。
【0020】
また、微地絡の発生時に計器用変圧器14のオープンデルタ回路に発生した零相電圧は、微地絡電圧センサ19にて検出され、その検出結果が波形診断装置21に入力される。
また、微地絡の発生時に各フィーダ22a〜22nに流れた零相電流は零相変流器17a〜17nにて夫々検出され、フィーダ用微地絡電流センサ18a〜18nに夫々入力される。各フィーダ22a〜22nの電流波形がフィーダ用微地絡電流センサ18a〜18nにて夫々検出され、その検出結果が波形診断装置21に入力される。
また、微地絡の発生時に電力系統の母線の各相に発生した電圧変動は、カプラ20にてコンデンサ共振されながら検出され、その検出結果が波形診断装置21に入力される。
波形診断装置21は、微地絡時の電流波形が微地絡電流センサ16から入力されると、その電流波形に基づいて、微地絡の発生箇所又は様相を推定する。
【0021】
ここで、微地絡電流センサ16にて検出された電流波形から、微地絡の発生箇所又は様相を推定する場合、波形診断装置21は、完全地絡時の零相電流の30%感度より小さな範囲で電流波形を検出することにより、微地絡の発生箇所又は様相を推定することができる。また、波形診断装置21は、過去の微地絡発生時の中性点の零相電流の電流波形、特にその電流波形周期を記憶している。そして、波形診断装置21は、フィーダ用微地絡電流センサ18a〜18nにて検出された各フィーダ22a〜22nの零相電流から今回の微地絡発生のフィーダ22a〜22nを特定し且つ微地絡電流センサ16にて検出された中性点の零相電流の電流波形から今回の微地絡発生箇所を特定する。その際、今回の微地絡発生時の中性点の零相電流の電流波形周期と同等の周期の過去の微地絡発生時の中性点の零相電流の電流波形周期を検索し、検出された同等周期の過去の微地絡発生箇所を今回の微地絡発生箇所に特定する。
【0022】
更に、波形診断装置21は、微地絡電流センサ16にて検出された電流波形による放電の強さ及び電流波形の継続時間に基づいて、微地絡の発生箇所又は様相を推定することができる。
例えば、微地絡電流センサ16にて検出された電流波形による放電の強さが数A程度の場合、遮断器の不揃い(3相の開閉ズレ)が発生していると推定することができる。
【0023】
また、微地絡電流センサ16にて検出された電流波形による放電の強さが数A程度の場合、硝子類の絶縁劣化(トラッキングなど)が発生していると特定することができる。
また、微地絡電流センサ16にて検出された電流波形による放電の強さが数A程度の場合、変圧器やコンデンサなどの内部異常が発生していると推定することができる。
また、微地絡電流センサ16にて検出された電流波形による放電の強さが数mA程度の場合、負荷側(回転機など)の絶縁異常が発生していると推定することができる。
また、微地絡電流センサ16にて検出された電流波形による放電の強さが数μA程度の場合、22kVケーブルの異常が発生していると推定することができる。
【0024】
ここで、微地絡電流センサ16にて電流波形を検出することにより、微地絡発生点で発生した地絡電流が変圧器11の中性点に戻るときの電流波形を検出することができ、検出された電流波形を穏やかなものとする(鈍らせる)ことができる。このため、数nsec〜数msecの急峻なパルス波形を検出することなく、地絡事故が起こる前の予兆を検出することができ、地絡事故が起こる前の予兆となる微地絡を検出し易くすることが可能となると共に、電流波形の形状を検出することが可能となり、微地絡の発生箇所を特定することが可能となる。
【0025】
また、波形診断装置21は、微地絡時の電流波形がフィーダ用微地絡電流センサ18a〜18nから夫々入力されると、その電流波形に基づいて、各フィーダ22a〜22n上での微地絡の発生箇所又は様相を推定する。
ここで、フィーダ用微地絡電流センサ18a〜18nにて電流波形を検出することにより、数nsec〜数msecの急峻なパルス波形を検出することなく、地絡事故が起こる前の予兆を検出することができ、地絡事故が起こる前の予兆となる微地絡を検出し易くすることが可能となると共に、微地絡の発生箇所を各フィーダ22a〜22n上で特定することが可能となる。
【0026】
また、波形診断装置21は、微地絡時の電圧波形が微地絡電圧センサ19から入力されると、その電圧波形に基づいて、微地絡の発生箇所又は様相を推定する。
ここで、微地絡電圧センサ19にて電圧波形を検出することにより、数nsec〜数msecの急峻なパルス波形を検出することなく、地絡事故が起こる前の予兆を検出することができ、地絡事故が起こる前の予兆となる微地絡を検出し易くすることが可能となる。
【0027】
また、波形診断装置21は、微地絡時の電圧変動がカプラ20から入力されると、その電圧変動に基づいて、微地絡の発生箇所又は様相を推定する。
ここで、母線の各相に発生した電圧変動をカプラ20にて検出することにより、コンデンサ共振を起こさせながら電圧変動を検出することができる、数nsecオーダーの急峻なパルス波形を捉えることが可能となることから、電力系統に設けられたケーブルや回転機などの異常を監視することができる。
【0028】
図2は、図1の電力系統の地絡事故点Pにおける放電波形及び変圧器11の中性点は系を示す図である。
図2において、変圧器11は、例えば、154kVの高圧を22kVの低圧に変圧し、100MVAの出力があるものとする。また、例えば、変圧器11のリアクトルの値Lが0.5H、各フィーダ22a〜22nの容量Cが0.9μF、中性点接地抵抗器15の抵抗値Rが127Ωであるとする。
そして、例えば、負荷電流Iが1000Aであるとすると、正常時にはR相電流(a相電流とも言う)、S相電流(b相電流とも言う)、T相電流(c相電流とも言う)がバランスし、変圧器11の中性点に発生する零相電流Iは0Aになる。
【0029】
一方、地絡事故点Pにおいて放電があると、地絡事故点Pに発生した地絡電流は接地点などを介して変圧器11の中性点に戻り、変圧器11の中性点には零相電流Iが流れる。
ここで、地絡事故点Pにて地絡電流を観測すると、50Hzの交流電圧に重畳されたR相放電波形W1が検出され、このR相放電波形W1は数nsec〜数msecの急峻なパルス波形となる。
【0030】
一方、変圧器11の中性点には、そのR相放電波形W1がそのまま現れることなく、電力系統のLCRの回路定数に起因して鈍らせられた中性点波形W2が現れ、この中性点波形W2の放電の強さは5A、継続時間が数十msec程度となる。このため、波形診断装置21は、急峻なパルス波形となるR相放電波形W1を直接検出することなく、電力系統のLCRで鈍らせられた中性点波形W2の周期を、過去の地絡事故で発生した中性点波形の周期と比較することで、地絡事故点Pの位置又は短絡事故の様相を特定することができ、地絡事故が起こる前の予兆となる微地絡を容易に検出することが可能となると共に、微地絡の発生箇所を特定することができる。
【0031】
図3は、図1の微地絡検出装置における微地絡検出範囲を示す図である。図4において、地絡事故が発生すると、三相の電流/電圧バランスが崩れ、零相電流と零相電圧が発生する。微地絡時にも、数μA〜数Aの零相電流波形及び数V〜数kVの零相電圧波形が発生する。そして、正常時には発生しないような零相電流波形及び零相電圧波形を検出し、微地絡の段階でそのような零相電流及び零相電圧の変動の大きさと継続時間を解析することにより、大規模な地絡事故を未然に防止することができる。
【0032】
ここで、正常時には発生しないような零相電流波形又は零相電圧波形から、微地絡の発生箇所又は様相を推定する場合、完全地絡時の零相電流又は零相電圧の30%感度より小さな範囲S1で零相電流波形又は零相電圧波形を検出することにより、微地絡の発生箇所又は様相を推定することができる。これにより、絶縁が劣化して漏れ電流が対地に数μA〜数Aだけ流れ始め、微弱な電圧変動が発生した時点を早期に検出することができ、重大な地絡事故に至る前に異常箇所を保全したり補修したりすることができる。
【0033】
図4は、本発明の一実施形態に係る遮断器において、沿面放電が発生したときに検出された零相電流の波形を示す図である。図4において、放電が発生したときには、変圧器11の中性点には、その放電波形はそのまま現れることなく、電力系統のLCRの回路定数に起因して鈍らせられた波形が現れる。このため、波形診断装置21は、その鈍らせられた波形を検出することで、遮断器に発生した異常箇所又は様相を推定することができる。
【0034】
異常電圧を発生させる要因となる部位としては、以下の1)から9)を挙げることができる。そして、発生する異常電圧の大きさは、1)〜9)の順に小さくなる。このため、波形診断装置21は、異常電圧の大きさを検出することで、異常箇所又は様相を推定することができる。
1)ケーブルの末端の遮断器の不揃い
2)ドライブ装置のコンデンサ成分及び点弧などの不揃い
【0035】
3)高調波
4)硝子などの沿面放電
5)油入変圧器の内部放電
6)PTなどのアクセサリの内部放電
7)回転機や乾式変圧器の放電
8)CVケーブルの部分放電
9)雷・開閉サージ
【0036】
図5は、図2の電力系統の地絡事故点Pから変圧器11の中性点までの等価回路を示す図である。本発明者等は、先に、この等価回路で微地絡事故が発生したときに生じると考えられる中性点波形を、今回の微地絡事故で検出された中性点波形と比較することで、微地絡の発生箇所を特定できるのではないかと考えた。
図5において、地絡事故点Pで放電が起こると、変圧器11の中性点と電力ケーブル間に形成される経路を通して零相電流Iが流れる。この零相電流Iが流れる経路は、電力系統のLCRの回路定数を用いて等価回路で表すことができる。
【0037】
即ち、この等価回路では、電力ケーブルの抵抗R1と電力ケーブルのインダクタンスL2と変圧器11のリアクトルL1と中性点接地抵抗器15とが直列接続される。そして、この直列回路と、電力ケーブルのコンデンサC1とが地絡事故点の放電箇所に並列に接続される。従って、この等価回路上に流れる零相電流Iの波形を計算で求め、図1の微地絡電流センサ16で検出された零相電流Iの波形と比較することで、地絡事故点Pの位置又は地絡事故の様相を推定することができるのではないかとして、検討を重ねた。
【0038】
しかしながら、実際の電力系統のLCRの回路定数を正確に設定することは、実質的に困難であり、これらの回路定数が正確に設定されないと、等価回路上に流れる零相電流Iを正確に求めることもできないので、等価回路上に流れる零相電流Iと、図1の微地絡電流センサ16で検出された零相電流Iの波形とを比較することで、地絡事故点Pの位置又は地絡事故の様相を推定することは困難であることが判明した。
【0039】
そこで、本実施形態では、過去の微地絡発生時の中性点の零相電流の電流波形、特にその電流波形周期を記憶し、フィーダ用微地絡電流センサ18a〜18nにて検出された各フィーダ22a〜22nの零相電流から今回の微地絡発生のフィーダ22a〜22nを特定し且つ微地絡電流センサ16にて検出された中性点の零相電流の電流波形から今回の微地絡発生箇所を特定する。その際、今回の微地絡発生時の中性点の零相電流の電流波形周期と同等の周期の過去の微地絡発生時の中性点の零相電流の電流波形周期を検索し、検出された同等周期の過去の微地絡発生箇所を今回の微地絡発生箇所に特定する。なお、記憶される過去の微地絡発生時の中性点の零相電流の電流波形及びその周期は、事故として発生した微地絡の他に、人工的に発生せしめた微地絡のときのものも含まれる。
【0040】
地絡時に変圧器11の中性点に発生する零相電流の波形周期(共振周波数)は、その検出地点と地絡箇所までの距離に依存する。距離が長いと、波形周期は長くなり、距離が短いと、波形周期は短くなる。この周期は地絡の強度には因らない。
零相電流の波形周期に影響を与えるのは、地絡地点と検出地点までに存在するインダクタンスと抵抗、そして、その地絡が発生した電力系統全体の静電容量である。地絡が発生した電力系統全体、つまり変圧器11から各フィーダ22a〜22nまでの静電容量は一定であるから、検出地点から地絡発生箇所までの距離が長くなるとインダクタンスと抵抗が大きくなり、波形周期が長くなる。逆に、検出地点から地絡発生箇所までの距離が短くなるとインダクタンスと抵抗が小さくなり、波形周期が短くなる。
【0041】
抵抗分は、変圧器11の中性点の接地抵抗15とケーブル、遮断器などの電路に依存する抵抗である。インダクタンス分は、変圧器11の巻線のインダクタンスとケーブルのインダクタンスである。ケーブルの持つ抵抗とインダクタンスは、ケーブルの敷設状況(平行に配列されたケーブルの本数に因る)とケーブル導体の断面積に因る。しかし、抵抗とインダクタンスはケーブルの長さに比例する。従って、敷設状況やケーブルのサイズによって、変圧器11の中性点に発生する零相電流の波形周期は決まるから、過去の微地絡発生時の変圧器11の中性点の零相電流の電流波形周期と、今回検出された変圧器11の中性点の零相電流の電流波形周期とを比較することで、微地絡発生箇所、具体的には変圧器11からの距離を特定することができる。なお、間欠地絡時以外の零相電流波形は、複数の地絡(放電)の波形が重なってゆがみが生じることになるため、波形をフーリエ変換して正確な波形周期を割り出す必要がある。
【0042】
図6は、同じ箇所で、異なる時間に発生した4回の地絡時の変圧器11の中性点の零点電流の電流波形である。前述した零相電流検出値から地絡発生箇所までの距離の関係からは、同じ箇所で発生した地絡時の変圧器11の中性点の零点電流の電流波形は同じになるはずである。しかしながら、例えば沿面放電などの場合、地絡に関与する抵抗分が変化するため、図6に示すように、零点電流の電流波形の振幅も変化している。地絡地点の条件は以下の通りである。
【0043】
電圧:22kV
ケーブル種類:CVケーブル
断面積:200sq
敷設状況:平行4条
中性点から間欠地絡発生場所までの距離:1.1km
中性点接地抵抗:127Ω
変圧器巻線インダクタンス:0.5H
【0044】
これに対し、図7は、図6の4つの零点電流を縦に並べたものであるが、図7から明らかなように、これらの零点電流の周期、特に最大値・最小値間の、所謂ピーク・トゥ・ピーク(p−p)の周期は同じである。図8は、同じフィーダ22a〜22n内の異なる箇所で発生した地絡時の変圧器11の中性点の零点電流を縦に並べたものである。同図から明らかなように、同じフィーダ22a〜22n内でも、発生箇所が異なると、地絡時の変圧器11の中性点の零点電流の周期、特にp−pの周期が異なる。従って、過去に発生した地絡時の変圧器11の中性点の零相電流の電流波形周期を各フィーダ22a〜22n毎に記憶し、フィーダ用微地絡電流センサ18a〜18nで検出された零相電流から微地絡の発生したフィーダ22a〜22nを特定し、今回発生した地絡時の変圧器11の中性点の零相電流の電流波形周期と同じ周期の電流波形周期を過去の中性点零相電流から検索し、検索された変圧器11の中性点の零相電流の電流波形周期の地絡発生点が今回の地絡発生点であると特定することができる。
【0045】
図9は、波形診断装置21内に設けられたコンピュータシステムで、地絡発生箇所を特定するための演算処理のフローチャートである。
この演算処理は、例えば所定のサンプリング周期毎にタイマ割込によって実行され、まずステップS1で、変圧器11の中性点の零相電流から微地絡が発生したか否かを判定し、微地絡が発生した場合にはステップS2に移行し、そうでない場合にはメインプログラムに復帰する。
ステップS2では、フィーダ用微地絡電流センサ18a〜18nで検出された零相電流から微地絡の発生したフィーダ(方向)22a〜22nを特定する。
【0046】
次にステップS3に移行して、微地絡電流センサ16で検出された変圧器11の中性点の零相電流に生じた電流波形の周期(p−p値)を算出する。
次にステップS4に移行して、前記ステップS3で算出された零相電流波形の周期と同等の周期を、過去に生じた中性点の零相電流波形から検索する。
次にステップS5に移行して、前記ステップS3で算出された零相電流波形の周期と同等の周期を、過去に生じた中性点の零相電流波形から検出することができたか否かを判定し、同等の周期を検出できた場合にはステップS6に移行し、そうでない場合にはメインプログラムに復帰する。
【0047】
ステップS6では、前記ステップS4で検出された零相電流波形の周期が同等であった過去の微地絡発生箇所を今回の微地絡発生箇所(距離)として特定してからメインプログラムに復帰する。
このように、本実施形態の微地絡検出装置によれば、変圧器11の中性点に発生する微地絡時の零相電流を検出すると共に、フィーダ22a〜22nの夫々に発生する微地絡時の零相電流を検出し、検出されたフィーダ22a〜22nの零相電流から今回の微地絡発生のフィーダ22a〜22nを特定し且つ検出された中性点の零相電流の電流波形から今回の微地絡発生箇所を特定するにあたり、今回の微地絡発生時の中性点の零相電流の電流波形周期と同等の周期の過去の微地絡発生時の中性点の零相電流の電流波形周期を検索し、検出された同等周期の過去の微地絡発生箇所を今回の微地絡発生箇所に特定することとしたため、微地絡発生点で発生した地絡電流が変圧器11の中性点に戻るときの比較的穏やかな電流波形によって地絡事故が起こる前の予兆となる微地絡を検出し易くすると共に、微地絡発生時の特徴的な変圧器11の中性点の零相電流の電流波形周期から微地絡の発生箇所を絞り込むことができる。
【0048】
図10は、本発明の第2実施形態に係る微地絡検出装置が適用された電力系統の概略構成を示すブロック図である。
図10において、この微地絡検出装置には、前記図1の構成に加え、微地絡時の電流波形の振幅を減衰させる補償回路24が設けられ、補償回路24は変圧器11の中性点に接続されている。なお、補償回路24は、小規模な電力系統を大規模な電力系統に見かけ上変換するために用いることができ、例えば、LCR回路から構成することができる。
【0049】
前記第1実施形態と同様に、電力系統の何れかの箇所で微地絡が発生すると、その微地絡の発生箇所で発生した微地絡電流は接地点などを介して変圧器11の中性点に戻る。変圧器11の中性点に零相電流が流れると、その零相電流は補償回路24を介して中性点接地抵抗器15に流れ、変流器23にて検出された後、微地絡電流センサ16に入力される。変圧器11の中性点に発生した電流波形が微地絡電流センサ16にて検出され、その検出結果が波形診断装置21に入力される。波形診断装置21では、前記第1実施形態と同様にして、微地絡が発生したフィーダ22a〜22nを特定すると共に、そのフィーダ22a〜22n中の微地絡発生箇所(距離)を特定する。
【0050】
ここで、変圧器11の中性点に流れた零相電流を補償回路24を介して微地絡電流センサ16にて検出することにより、振動が減衰された電流波形を検出することができ、電力系統の規模に関わりなく、電流波形の検出を容易にすることができる。
図11は、本発明の第3実施形態に係る微地絡検出装置が適用された電力系統の概略構成を示すブロック図である。
【0051】
図11において、電力系統には、高圧を低圧に変圧する変圧器31が設けられている。そして、変圧器31は、遮断器32を介して高圧配線に接続されると共に、遮断器33を介して低圧配線に接続され、変圧器31の中性点は中性点接地抵抗35を介して接地されている。また、地絡時に変圧器31の中性点に発生する零相電流を検出する変流器43が設けられ、変流器43は、微地絡電流センサ36に接続されると共に、地絡過電流継電器52に接続されている。また、微地絡電流センサ36は、微地絡警報装置51に接続されている。なお、変圧器31は、例えば、154kVの高圧を22kVの定圧に変圧することができる。
【0052】
ここで、微地絡電流センサ36は、変圧器31の中性点に発生する微地絡時の電流波形を検出することができる。また、微地絡警報装置51は、例えば、微地絡電流センサ36にて検出された零相電流が数mAで数msec以上継続した場合に警報を出すことができる。また、地絡過電流継電器52は、完全地絡時の零相電流の30%感度でトリップ動作をすることができ、例えば、22kVで完全地絡時の値が100Aであるとすると、変流器43にて検出された零相電流が30Aに達すると、遮断器32、33を動作させることができる。
【0053】
また、変圧器31の低圧配線側には、遮断器44a〜44nを夫々介してフィーダ42a〜42nが接続されている。各フィーダ42a〜42nに流れる零相電流を検出する零相変流器37a〜37nが設けられ、零相変流器37a〜37nは、フィーダ用微地絡電流センサ38a〜38nに夫々接続されると共に、地絡方向継電器54a〜54nに夫々接続されている。また、フィーダ用微地絡電流センサ38a〜38nは、微地絡警報装置53に接続されている。
【0054】
フィーダ用微地絡電流センサ38a〜38nは、各フィーダ42a〜42nに発生する微地絡時の電流波形を夫々検出することができる。また、微地絡警報装置53は、例えば、フィーダ用微地絡電流センサ38a〜38nの何れかにて検出された零相電流が100mAで100msec以上継続した場合に警報を出すことができる。また、地絡方向継電器54a〜54nは、完全地絡時の零相電流の30%感度で夫々トリップ動作をすることができ、例えば22kVで完全地絡時の値が100Aであるとすると、零相変流器37a〜37nにて夫々検出された零相電流が30Aに達すると、遮断器44a〜44nを夫々動作させることができる。
【0055】
また、電力系統の母線にはカプラ40が接続されている。カプラ40は、微地絡時に電力系統の母線に発生する各相の電圧変動を検出することができる。なお、カプラ40としては、コンデンサを用いることができる。
また、微地絡検出装置には波形診断装置41が設けられ、波形診断装置41には、微地絡警報装置51、53及びカプラ41が接続されている。波形診断装置41は、微地絡警報装置51から出力された微地絡時の電流波形に基づいて、微地絡の発生箇所又は様相を推定することができる。また、波形診断装置41は、微地絡警報装置53から出力された微地絡時の電流波形に基づいて、各フィーダ42a〜42nに発生した微地絡の発生箇所又は様相を推定することができる。また、波形診断装置41は、カプラ40にて検出された微地絡時の電圧変動に基づいて、微地絡の発生箇所又は様相を推定することができる。
【0056】
電力系統の何れかの箇所で微地絡が発生すると、その微地絡の発生箇所で発生した微地絡電流は接地点などを介して変圧器31の中性点に戻る。変圧器31の中性点に零相電流が流れると、変圧器31の中性点に流れた零相電流は変流器43にて検出され、微地絡電流センサ36に入力される。そして、変圧器31の中性点に発生した電流波形が微地絡電流センサ36にて検出され、その検出結果が微地絡警報装置52に入力されると共に、微地絡警報装置52を介して波形診断装置41に入力される。
【0057】
微地絡警報装置52は、微地絡時の電流波形が微地絡電流センサ36から入力されると、微地絡電流センサ36にて検出された零相電流が数mAで数msec以上継続したかどうかを判断し、その零相電流が数mAで数msec以上継続した場合に警報を出す。また、波形診断装置41は、微地絡時の電流波形が微地絡警報装置52から入力されると、その電流波形に基づいて、微地絡の発生箇所又は様相を推定する。
【0058】
また、微地絡の発生時に各フィーダ42a〜42nに流れた零相電流は零相変流器37a〜37nにて夫々検出され、フィーダ用微地絡電流センサ38a〜38nに夫々入力される。そして、各フィーダ42a〜42nの電流波形がフィーダ用微地絡電流センサ38a〜38nにて夫々検出され、その検出結果が微地絡警報装置53に入力されると共に、微地絡警報装置53を介して波形診断装置41に入力される。
【0059】
微地絡警報装置53は、微地絡時の電流波形がフィーダ用微地絡電流センサ38a〜38nから入力されると、フィーダ用微地絡電流センサ38a〜38nにて検出された零相電流が100mAで100msec以上継続したかどうかを判断し、その零相電流が100mAで100msec以上継続した場合に警報を出す。また、波形診断装置41は、微地絡時の電流波形が微地絡警報装置53から入力されると、その電流波形に基づいて、各フィーダ42a〜42n上での微地絡の発生箇所又は様相を推定する。
【0060】
また、微地絡の発生時に電力系統の母線の各相に発生した電圧変動は、カプラ40にてコンデンサ共振されながら検出され、その検出結果が波形診断装置41に入力される。波形診断装置41は、微地絡時の電圧変動がカプラ40から入力されると、その電圧変動に基づいて、微地絡の発生箇所又は様相を推定する。
また、変流器43にて検出された零相電流の検出値は、地絡過電流継電器52に入力される。そして、地絡過電流継電器52は、変流器43にて検出された零相電流が30Aを越えたかどうかを判断し、その零相電流が30Aを越えた場合、遮断器112、113を動作させることで、事故設備を電力系統から切離する。
【0061】
また、各零相変流器37a〜37nにて検出された零相電流の検出値は、地絡方向継電器54a〜54nに夫々入力される。そして、各地絡方向継電器54a〜54nは、零相変流器37a〜37nにて夫々検出された零相電流が30Aを越えたかどうかを判断し、その零相電流が30Aを越えた場合、遮断器44a〜44nを動作させることで、事故設備を電力系統から切離する。
【0062】
微地絡がフィーダ42a〜42nの何れかで発生した場合、波形診断装置41は、前記第1、第2実施形態と同様に、フィーダ用微地絡電流センサ38a〜38nで検出された零相電流から微地絡が発生したフィーダ22a〜22nを特定すると共に、微地絡電流センサ36で検出された変圧器31の中性点の零相電流の電流波形周期と同等の過去の微地絡発生時の零相電流波形周期を検索し、検出された過去の微地絡発生箇所を、そのフィーダ22a〜22n中の微地絡発生箇所(距離)として特定する。
これにより、地絡事故が起こる前の予兆となる微地絡を容易に検出しながら、微地絡の発生箇所を特定することが可能となると共に、地絡事故発生時に事故設備を系統から切離することができ、地絡事故発生時の被害の拡大を防止することが可能となると共に、重大な地絡事故に至る前に異常箇所を保全したり補修したりすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】本発明の第1実施形態に係る微地絡検出装置が適用された電力系統の概略構成を示すブロック図である。
【図2】図1の電力系統の地絡事故点における放電波形及び変圧器の中性点波形を示す説明図である。
【図3】図1の微地絡検出装置における微地絡検出範囲を示す説明図である。
【図4】遮断器に沿面放電が発生したときに検出された零相電圧及び零相電流の波形説明図である。
【図5】図1の電力系統の地絡事故点から変圧器の中性点までの等価回路図である。
【図6】同じ箇所で異なる時間に発生した微地絡時の変圧器中性点零相電流の電流波形図である。
【図7】同じ箇所で異なる時間に発生した微地絡時の変圧器中性点零相電流の電流波形図である。
【図8】異なる箇所で発生した微地絡時の変圧器中性点零相電流の電流波形図である。
【図9】微地絡発生箇所特定のための演算処理を示すフローチャートである。
【図10】本発明の第2実施形態に係る微地絡検出装置が適用された電力系統の概略構成を示すブロック図である。
【図11】本発明の第3実施形態に係る微地絡検出装置が適用された電力系統の概略構成を示すブロック図である。
【図12】従来の地絡事故対策が適用された電力系統の概略構成を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0064】
11、31、111 変圧器
12、13、32、33、112、113 遮断器
14、114 計器用変圧器
15、35、115 中性点接地抵抗器
16、36 微地絡電流センサ
18a〜18n、38a〜38n フィーダ用微地絡電流センサ
17a〜17n、37a〜37n、117a〜117n 零相変流器
19 微地絡電圧センサ
20、40 カプラ
21、41 波形診断装置
22a〜22n、122a〜122n フィーダ
23、43、123 変流器
24 補償回路
51、53 微地絡警報装置
52、119 地絡過電流継電器
54a〜54n、118a〜118n 地絡方向継電器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
変圧器の中性点に発生する微地絡時の零相電流を検出する中性点零相電流検出手段と、電力分岐系統の夫々に発生する微地絡時の零相電流を検出する分岐系統零相電流検出手段と、前記分岐系統零相電流検出手段で検出された分岐系統の零相電流から今回の微地絡発生の分岐系統を特定し且つ前記中性点零相電流検出手段で検出された中性点の零相電流の電流波形から今回の微地絡発生箇所を特定する波形診断装置とを備え、前記波形診断装置は、前記今回の微地絡発生時の中性点の零相電流の電流波形周期と同等の周期の過去の微地絡発生時の中性点の零相電流の電流波形周期を検索し、検出された同等周期の過去の微地絡発生箇所を今回の微地絡発生箇所に特定することを特徴とする微地絡検出装置。
【請求項2】
変圧器の中性点に発生する微地絡時の零相電流を検出すると共に、電力分岐系統の夫々に発生する微地絡時の零相電流を検出し、検出された分岐系統の零相電流から今回の微地絡発生の分岐系統を特定し且つ検出された中性点の零相電流の電流波形から今回の微地絡発生箇所を特定するにあたり、前記今回の微地絡発生時の中性点の零相電流の電流波形周期と同等の周期の過去の微地絡発生時の中性点の零相電流の電流波形周期を検索し、検出された同等周期の過去の微地絡発生箇所を今回の微地絡発生箇所に特定することを特徴とする微地絡検出方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2010−130811(P2010−130811A)
【公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−303738(P2008−303738)
【出願日】平成20年11月28日(2008.11.28)
【出願人】(000001258)JFEスチール株式会社 (8,589)
【Fターム(参考)】