説明

微多孔性有機ケイ酸塩材料を有する有機化学センサ

多層光学センサフィルムが開示される。このセンサフィルムは、第一反射層と、この反射層の上にある検出層と、所望によりこの検出層の上にある第二反射層と、を含む。この検出層は、疎水性で、非晶質であり、実質的に微多孔性の、分析質感受性有機ケイ酸塩組成物を含有する。分析質感受性有機ケイ酸塩組成物は、分析質曝露時にフィルムに光学的変化を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、環境下にて有機化学分析質を検出又は監視するのに好適である光学センサなどのセンサ及び検知素子に関する。このセンサ及び検知素子は、微多孔性有機ケイ酸塩材料を含む。
【背景技術】
【0002】
広範な分析質のための強力な化学センサの開発は、環境モニタリング、製品の品質管理、及び化学的線量測定のような用途のための重要な課題として残されている。化学検知に利用できる多くの方法の中で、比色分析技術は、数多くの計測装置に比べて、人間の目が情報伝達に使われ得る点で、優位性を保持している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
比色分析センサは、現在広範な分析質のために存在するが、多くは検出のために染料又は着色した化学指示薬を使用している。この種の化合物は通常選択的で、さまざまな種類の化合物の検出を可能にするには、特定の(意味のある)配置を必要とする。更に、これらのシステムの多くには、光漂白剤又は望ましくない副反応のために寿命が限定される問題がある。表面プラズモン共鳴及びスペクトル・インターフェロメトリーなどの他の視覚的な検知技術は、反応を提供するために相当な情報の伝達用ハードウェアを必要とするので、単純な可視指標に役立たない。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本開示は、多層光学センサフィルムを提供する。このセンサフィルムは、第一反射層と、この第一反射層の上にある検出層と、を含む。いくつかの実施形態では、検出層の上に第二反射層がまた存在してもよい。この検出層は、疎水性で、非晶質であり、実質的に微多孔性の、分析質感受性有機ケイ酸塩組成物を含む。分析質感受性有機ケイ酸塩組成物は、分析質曝露時にフィルムに光学的変化を提供する。いくつかの実施形態では、第一反射層は実質的に連続性であり、第二反射層は、検出層の屈折率とは異なる屈折率を有する半反射層である。第二反射層の少なくとも一部は、分析質に対して透過性である。
【0005】
いくつかの実施形態では、記載されているもののようなセンサの配列が提供される。これらのセンサは、同一であってもよく、又は、分析質に対して異なる感度を有し得るように異なってもよい。
【0006】
いくつかの実施形態では、装置が提供される。これらの装置は、センサと光源とを含む。このセンサは、第一反射層と、この第一反射層の上にある検出層と、を含む。いくつかの実施形態では、検出層の上にある第二反射層も提供され得る。この検出層は、疎水性で、非晶質であり、実質的に微多孔性の、分析質感受性有機ケイ酸塩組成物を含む。この装置はまた、光検出器を含有し得る。
【0007】
分析質の検出方法も開示される。これらの方法は、実質的に連続的な第一反射層と、この第一反射層の上にある検出層と、を含むセンサを提供することを含み、この検出層は、実質的に微多孔性で、非晶質であり、疎水性の、分析質応答性有機ケイ酸塩材料を含む。いくつかの実施形態では、検出層の上にある第二反射層が提供されてもよく、この第二反射層は、検出層の屈折率とは異なる屈折率を有する半反射層であり、第二反射層の少なくとも一部は分析質に対して透過性であり、光源を準備し、分析質を含有し得る媒質とセンサを接触させ、光学特性における変化についてセンサを監視する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本開示の代表的な多層フィルム。
【図2】有機分析質トルエンの様々な曝露レベルにおいて測定された代表的な検知素子の波長変化のプロット。
【図3】有機分析質トルエンの様々な曝露レベルにおいて測定された代表的な検知素子の波長変化のプロット。
【図4】有機分析質アセトンの様々な曝露レベルにおいて測定された代表的な検知素子の波長変化のプロット。
【図5】有機分析質アセトンの様々な曝露レベルにおいて測定された代表的な検知素子の波長変化のプロット。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本開示は、多層光学センサフィルムを提供する。このセンサフィルムは、第一反射層と、この第一反射層の上にある検出層と、を含む。いくつかの実施形態では、検出層の上にある第二反射層も提供され得る。この検出層は、疎水性で、非晶質であり、実質的に微多孔性の、分析質感受性有機ケイ酸塩組成物を含む。分析質感受性有機ケイ酸塩組成物は、分析質曝露時にフィルムに光学的変化を提供する。この多層構造は、一定範囲の種を検出できる様々な化学物質を組み込むための汎用プラットフォームを提供する。このフィルムは、素早い可逆的な(いくつかの場合には恒久的な)応答を提供するように設計することができる。
【0010】
この多層光学センサフィルムは、従来の光学センサ構成体よりも多数の利点を有する。例えば、本開示の多層センサフィルムにおいて、この検出層は、疎水性であり、それゆえに水蒸気は、光学特性において実質的な変化を作り出さない。また、このフィルムは、容易に加工することができる。反射層(1つ又は複数)は蒸着又はスパッタコーティングを介して付着させることができ、一方、検出層は直接コーティング技術を介して付着させることができる。
【0011】
本明細書で使用するとき、用語「分析質」は、化学又は生化学分析において検出される特異的構成成分を意味し、典型的には、分析質は、有機化合物又は有機化合物の混合物である。
【0012】
本明細書で使用するとき、用語「寸法変化」は、検出層の表面に垂直な方向における距離の変化を意味する。
【0013】
本明細書で使用するとき、用語「多孔質材料」は、その体積全体にわたって連続した網状の孔を含有する材料を意味する。微多孔性材料は、2ナノメートル以下の平均孔直径を有する材料である。
【0014】
本明細書で使用するとき、用語「反射性」は、半反射性又は完全反射性を意味する。用語「半反射性」は、完全反射性でも完全透過性でもなく、一般に約30〜約70%の反射性、又は、約40〜約60%の反射性を意味する。
【0015】
本明細書で使用するとき、用語「実質的に連続性」は、材料の層が多孔性ではないが、ひび、結晶粒界、又は材料の層を貫通する経路を作る他の構造を有してもよいことを意味する。「実質的に連続的な」層は、多孔性でなくてもよいが、1つ以上の分析質に透過性である。
【0016】
本明細書で使用するとき、用語「不連続性」は、その間に空間を有する少なくとも2つの分離した異なる島を有し、その間に空間を有するこれらの少なくとも2つの分離した島が、与えられた平面内にある、材料の層を意味する。
【0017】
本明細書で使用するとき、用語「半連続性」は、多孔質であり、液体又は蒸気透過性である材料の層を意味する。半連続的な層は、蒸気透過性であってよいが、液体透過性でなくてよい。
【0018】
本明細書で使用するとき、用語「蒸気透過性」は、一方の側が検出層と流体連通する反射層に関して使用される場合、反射層のもう一方の側が、1000ppmスチレンモノマー蒸気を含有し、20L/分で流れる空気流に15分にわたって曝露されると、十分なスチレンモノマーが反射層を通過して、その結果、検出層において光学的に応答性の変化が起こることを意味する。
【0019】
本明細書で使用するとき、「液体透過性」は、一方の側が検出層と流体連通している反射層に関連して使用される場合、反射層のもう一方の側が、10体積%のアセトンを含有する水溶液に10分にわたって曝露されると、十分なアセトンが反射層を通過して、その結果、検出層において光学的に応答性の変化が起こることを意味する。
【0020】
本明細書で使用するとき、用語「微多孔性」は、約2ナノメートル未満の平均孔直径サイズを有する多孔質材料を指す。
【0021】
本明細書で使用するとき、用語「疎水性」は、水を引き付けない組成物を指す。組成物の疎水性は、所定の相対湿度において所定の時間にわたって水を吸着させることによるなどの様々な方法で測定することができる。このような試験は、実施例の項目で更に詳細に定義する。
【0022】
本明細書で使用するとき、用語「非晶質」は、実質的に結晶質ではない組成物を指す。典型的には、X線回折計で走査されると、組成物は、0.5〜80度(2θ)で走査された場合に、識別可能なX線回折パターンを示さない。
【0023】
本明細書で使用するとき、用語「有機ケイ酸塩」は、いくつかの有機官能基Rと共有結合した三次元シリカ網状組織(−Si−O−Si−)を含有するハイブリッドである組成物を指す(ここで、Rは、少なくとも1個のSi−C結合によりシリカ網状組織に結合された炭化水素又はヘテロ原子置換炭化水素基である)。
【0024】
本明細書で使用するとき、用語「炭化水素基」は、炭素と水素の結合を含有する基を指す。炭化水素基は、直鎖状、分枝状、環状又は芳香族であり得る。炭化水素基の例は、アルキル基及びアリール基である。
【0025】
本明細書で使用するとき、用語「置換炭化水素基」は、酸素、窒素、イオウ、リン、ホウ素、ハロゲン(F、Cl、Br又はI)、ヒ素、スズ又は鉛などの1個以上のヘテロ原子を含有する炭化水素基である。へテロ原子は、側枝又はカテナリーであり得る。
【0026】
本明細書で使用するとき、用語「アルキル」は、飽和炭化水素である、アルカンのラジカルである一価の基を指す。アルキルは、直鎖状、分枝状、環状、又はこれらの組み合わせであることができ、典型的には1〜20個の炭素原子を有する。いくつかの実施形態では、アルキル基は、1〜18個、1〜12個、1〜10個、1〜8個、1〜6個、又は1〜4個の炭素原子を含有する。アルキル基の例としては、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、n−ヘキシル、シクロヘキシル、n−ヘプチル、n−オクチル、及びエチルヘキシルが挙げられるが、これらに限定されない。
【0027】
本明細書で使用するとき、用語「アリール」は、芳香族及び炭素環式である一価の基を指す。アリールは、芳香環に結合又は縮合した、1〜5個の環を有することができる。その他の環状構造は、芳香族、非芳香族、又はこれらの組み合わせであることができる。アリール基の例としては、フェニル、ビフェニル、テルフェニル、アンスリル、ナフチル、アセナフチル、アントラキノニル、フェナンスリル、アントラセニル、ピレニル、ペリレニル、及びフルオレニルが挙げられるが、これらに限定されない。
【0028】
本明細書で使用するとき、用語「アルキレン」は、アルカンのラジカルである二価の基を指す。アルキレンは、直鎖、分枝状、環状、又はこれらの組み合わせであることができる。アルキレンは、多くの場合、1〜20個の炭素原子を有する。いくつかの実施形態では、アルキレンは、1〜18個、1〜12個、1〜10個、1〜8個、1〜6個、又は1〜4個の炭素原子を含有する。アルキレンのラジカル中心は、同一炭素原子上に(すなわち、アルキリデン)、又は異なる炭素原子上にあることができる。
【0029】
本明細書で使用するとき、用語「アリーレン」は、炭素環式及び芳香族である二価の基を指す。この基は、結合している、縮合している、又はこれらの組み合わせである1〜5個の環を有する。その他の環は、芳香族、非芳香族、又はこれらの組み合わせであることができる。いくつかの実施形態では、アリーレン基は、5個以下の環、4個以下の環、3個以下の環、2個以下の環、又は1個の芳香環を有する。例えば、アリーレン基は、フェニレンであることができる。
【0030】
本明細書で使用するとき、用語「アラルキレン」は、式−R−Ar−(式中、Rはアルキレンであり、Arはアリーレンである(すなわち、アルキレンがアリーレンに結合している))の二価の基を指す。
【0031】
本明細書で使用するとき、用語「アルコキシ」は、式−OR(式中、Rは、アルキル、アリール又は置換アルキル基である)の基を指す。
【0032】
本明細書で使用するとき、用語「アセトキシ」は、式−OC(O)CH(式中、C(O)は、カルボニル基C=Oを指す)の基を指す。
【0033】
本明細書で使用するとき、用語「アミノ」は、式−NR(式中、Rは、アルキル、アリール又は置換アルキル基である)の基を指す。
【0034】
本明細書で使用するとき、用語「孔径」は孔の直径を指し、用語「孔体積」は孔の体積を指す。
【0035】
本明細書で使用するとき、用語「ポロゲン」は、多孔質構造の形成を促進する材料を指す。溶媒は典型的には、本文脈においてポロゲンであるとは考えない。
【0036】
本明細書で使用するとき、用語「焼成する」及び「焼成」は、揮発性材料を駆出して、有機ケイ酸塩網状組織を形成させるために、ゾルなどの混合物を融点よりも低い温度に加熱することを指す。
【0037】
本明細書で使用するとき、用語「ゾル」は、焼成すると連続性有機ケイ酸塩網状組織を形成する、溶媒中に反応性有機ケイ酸塩材料を含有する前駆体混合物を指す。
【0038】
この多層センサフィルムは、第一反射層と、この第一反射層の上にある検出層と、を含む。いくつかの実施形態では、検出層の上にある第二反射層が提供される。いくつかの実施形態では、多層光学センサフィルムは表色系であり、光学設備を必要とせずに、視覚的手段を用いて検出を可能にする。これらの実施形態では、センサフィルムは、どちらも金属層であり得る第一反射層と所望による第二反射層との間に少なくとも1つの分析質感受性有機ケイ酸塩検出層を含有する色付きフィルムを含んでもよい。これらの多層フィルムは、視覚的シグナル伝達のための通常手段を提供する。干渉フィルタとしてのフィルム機能は、それゆえに、可視範囲内の特定の波長の反射に起因して強く発色することができる。センサフィルムの色合いは、積層体内の各層の厚さに高度に依存する。
【0039】
本開示の多層センサフィルムの一般的な図を図1に示す。一般に、代表的な多層フィルムセンサ10は、(所望による)基材層12と、第一反射層14と、検出層16と、(所望による)第二反射層18と、を含む。
【0040】
このセンサフィルムは、分析質又は分析質の混合物の、存在及び/又は濃度を検出するために使用することができる。例えば、分析質は、気体(例えば、蒸気)又は液体であってもよい。分析質は、分子、巨大分子、生体分子又は生体巨大分子であることができる。分析質は、気体状媒質(空気など)又は液体媒質(水又は他の液体など)の中に存在し得る。典型的には、分析質は、有機物質である。
【0041】
少なくとも1つの実施形態では、分析質は、その分析質に曝露されたときの分析質感受性有機ケイ酸塩検出層の光学的厚さの変化によって検出される。分析質は、外側の又は第二反射層を通過し、検出層の光学的厚さを変化させる。1つの実施形態では、分析質は、検出層の少なくとも一部の中に吸着する。吸着すると、色変化(多くの場合、鮮やかである)は、分析質の存在を教示することができる。
【0042】
光学的厚さの変化は、典型的には、可視光の範囲内で観察可能であり、補助的手段を使わずにヒトの目で検出され得る。しかし、UV、赤外線、又は近赤外線など、他の光源に曝されたときの光学的厚さの変化を示すように、センサを設計することができる。また、様々な検出機構を使用することもできる。好適な検出メカニズムの例としては、分光光度計、光ファイバー分光光度計、及び例えば、電荷結合デバイス(ccd)、デジタルカメラなどの光検出デバイスが挙げられる。
【0043】
別の実施形態では、分析質は、その存在が近接層からの検出層の相関剥離を引き起こすと、検出される。典型的には、層間剥離は、分析質が検出層と近接層の境界面を湿らし、これにより、界面接着力が低減すると、生じる。層間剥離が生じると、光学的干渉が破壊され、センサは知覚可能な色を失う。このプロセスは、近接層との境界面面積を低減する検出層の形状変化を伴い、センサフィルムの光学特性を恒久的に変化させる材料内での欠損を生じる。
【0044】
多層光学センサは、基材を含んでもよい。この基材は所望によるものであるが、存在する場合には、多層光学センサへの支持を提供可能な任意の材料を含み得る。これは、可撓性であってもよく、又は非可撓性であってもよい。基材材料は、用途に適応させることができる。多くの場合、真空蒸着プロセスにおいて使用するのに好適である。
【0045】
第一反射層は、完全反射又は半反射層を形成する任意の材料を含み得る。典型的には、材料は、約5ナノメートル〜約1マイクロメートルの厚さを有する。いくつかの実施形態では、厚さは、約20〜約200nmである。第一反射層を半反射性にするために、典型的には、より薄い層を用いることができる。第一反射層は、典型的には、第二反射層よりも反射性を大きくされるが、場合によっては、分析質の存在に対する応答をセンサフィルムのいずれかの側から見ることができるように、第一反射層及び第二反射層の反射率を同一にすることが望ましい。
【0046】
第一反射層に好適な材料としては、アルミニウム、クロム、金、ニッケル、ケイ素、銀、チタン、パラジウム及び白金のような金属又は半金属が挙げられる。第一反射層に含まれてもよい他の好適な材料としては、酸化クロム及び酸化チタンなどの金属酸化物が挙げられる。
【0047】
いくつかの代表的な実施形態では、第一反射層は、少なくとも約90%の反射性(すなわち、少なくとも約10%の透過率)であり、いくつかの実施形態では、約99%の反射性(すなわち、約1%の透過率)である。他の代表的な実施形態では、第一反射層は半反射層であり、ここで、第一反射層は少なくとも約20%の反射性であり、例えば、約20〜約90%の反射性、又は約30〜約70%の反射性である。
【0048】
いくつかの実施形態では、第一反射層は基材としても働き、センサのための支持を提供する。第一反射層は、実質的に連続的な層であっても不連続的な層であってもよい。更に、第一反射層は、1つ以上の反射層を含んでもよい。一般に、第一反射層は、単一の反射層を含む。
【0049】
この検出層は、疎水性で、非晶質であり、実質的に微多孔性の、分析質感受性有機ケイ酸塩組成物を含む。たいていの実施形態では、検出層は、分析質に曝露されると、光学的厚さが変化する。光学的厚さにおける変化は、膨張又は収縮による層の物理的厚さにおける変化、あるいは分析質の存在又は化学反応による検出層の屈折率の変化などの、寸法変化により引き起こすことができる。検出層は、ある色から別の色へ、ある色から無色へ、又は無色からある色へ変化することができる。
【0050】
有機ケイ酸塩組成物は、シリカ枠組並びに有機官能基を含有するハイブリッド組成物である。有機ケイ酸塩組成物は、Si−O−Si結合による架橋を介して結合されているRSiO単位を含む(式中、Rは、炭化水素基又は置換炭化水素基であり得る)。R基は、Si−C共有結合によりシリカマトリックスに結合する。
【0051】
本開示の有機ケイ酸塩組成物は、比較的高い有機物含量を有するものとして、説明され得る。有機ケイ酸塩組成物の比較的高い有機物含量は、望ましい特性であるが、それは、下記に示すように、有機ケイ酸塩組成物の疎水性に影響するからである。比較的高い有機物含量は、数々の方法で達成することができる。例えば、高い有機物含量を与えるために、Rがメチル、エチル、プロピルなどの比較的小さな炭化水素基である多数のRSiO単位が存在してもよく、あるいは、Rがアリールなどの比較的大きな炭化水素基である少数のRSiO単位が存在してもよい。
【0052】
非常に様々な有機官能基(RSiO単位におけるR基)が、有機ケイ酸塩組成物における使用に好適である。有機官能基は、メチル、エチル、プロピル、メチレン、エチレン、プロピレン及びこれらに類するものなどの単純なアルキル又はアルキレン基であってもよく、より複雑なアルキル基などであってもよい。有機官能基はまた、アリール、置換アリール又はこれらに類するものなどの芳香族基であってもよい。いくつかの実施形態では、R基は、2個のSiO単位(例えば、−OSi−R−SiO−)に結合するアルキレン又はアリーレン基であり得る。好適なアリール及びアリーレン基の例としては、例えば、フェニル、トリル、ナフチル、フェニレン、トリレン、ビスフェニレン及びこれらに類するものが挙げられる。
【0053】
いくつかの実施形態では、有機ケイ酸塩組成物は、少なくともある程度の芳香族成分(すなわち、アリール及び/又はアリーレン基)を含有し得る。アリーレン基(ここで、アリーレン基は2個のケイ素原子に結合している)は特に好適であるが、それは、剛性芳香環が、望ましい孔構造を提供するのを助けると考えられているからである。中でも特に好適なアリール及びアリーレン基は、フェニル、ナフチル及びビスフェニレンである。
【0054】
有機基が自然に親油性(文字通り「油を好む」)であり、水よりも他の有機官能種と適合性を有することから、有機ケイ酸塩の有機官能性は、組成物を疎水性にする傾向がある。この組成物の疎水性により、これらの材料は、大気からの水分を吸着する傾向が少ない。大気からの水分の吸着は望ましくなく、特に、これらの材料が、有機分子の検知が所望されるセンサー用途に利用される場合には望ましくない。孔が実質的に環境から水分を吸着する場合には、対象とする有機分析質を吸着する孔の能力は、減少する。しかしながら、組成物は疎水性であるので、これにより、環境からの水分に比較的影響されない。
【0055】
疎水性は、様々な方法で測定することができる。特に有用である1つの方法は、疎水性で、非晶質であり、実質的に微多孔性の有機ケイ酸塩組成物を、吸着した水及び大気中の水が平衡に達するように、十分な時間にわたって室温にて相対湿度50%などの所与の相対湿度に曝露することである。この平衡状態は、時間対吸着のグラフをプロットし、プロファイル曲線がプラトーに達する個所を観察することにより、判定することができる。典型的には、フィルムは、平衡において、相対湿度50%にて利用可能な孔体積の75%未満まで水を吸着する。いくつかの実施形態では、フィルムは、平衡において、相対湿度50%にて利用可能な孔体積の65%未満又は更には50%未満まで水を吸着する。いくつかの実施形態では、フィルムは、平衡において、相対湿度50%にて利用可能な孔体積の30%未満まで水を吸着する。
【0056】
有機ケイ酸塩組成物は、非晶質又は実質的に非晶質であり、つまり、これらは結晶化度を有さない又は本質的に有さない。理論に束縛されるものではないが、非晶質有機ケイ酸塩は、より多様な多孔質構造を含有し、それにより、例えば、検知用途において、広範囲の分析質に対して好適になると考えられている。
【0057】
有機ケイ酸塩組成物の非晶質性は、例えば、X線回折計の使用により、判定することができる。典型的には、X線回折計で走査されると、組成物は、0.5〜80度(2θ)で走査された場合に、識別可能なX線回折パターンを示さない。「識別可能なX線回折パターンがない」とは、X線回折データが実質的に無特性であり、構造規則性の存在に対する証拠を全く示さないことを意味する。
【0058】
有機ケイ酸塩組成物は、実質的に微多孔性である。多孔質材料は、多くの異なる方法で分類されている。多孔質材料についてのIUPACの定義は、2ナノメートル未満の平均孔直径を有する多孔質材料は微多孔性として定義し、2〜50ナノメートルの平均孔直径を有する多孔質材料はメソ細孔性として定義し、50ナノメートル超過の平均孔直径を有する多孔質材料はマクロ孔性として定義する。本開示の有機ケイ酸塩組成物では、総孔体積の少なくとも50%は、2.0ナノメートル以下の直径を有する孔を構成する。いくつかの実施形態では、総孔体積の少なくとも50%は、0.6〜1.3ナノメートルの直径を有する孔を構成する。
【0059】
いくつかの実施形態では、本開示の検出層は、有機ケイ酸塩フィルムとして記述することができ、これらの有機ケイ酸塩フィルムは、典型的にはポロゲンを含有しない前駆体混合物から調製される。この文脈では、ポロゲンは、多孔質構造の形成において助けとなる前駆体混合物に添加される化学的化合物を指す。異なる目的で反応混合物に添加される溶媒及び他の成分は、ポロゲンとは考えない。他の実施形態では、所望によるポロゲンは、所望される場合に、添加され得る。
【0060】
典型的には、前駆体混合物は、調製され、基材上にコーティングされ、加熱されて乾燥して、及び/又は、前駆体混合物を焼成して、疎水性で非晶質であり、実質的に微多孔性の有機ケイ酸塩フィルムを形成する。
【0061】
前駆体混合物は、様々な異なる材料を含有し得る。中でも、好適な材料は、溶媒、少なくとも2つの加水分解性シラン、所望によるポロゲン、及び、酸である。いくつかの実施形態では、前駆体混合物は、所望による高分子種を含有してもよく、この高分子種は、それが微多孔性有機ケイ酸塩網状組織の形成を妨げない限り、多孔質であっても多孔質でなくてもよい。このような高分子種の例としては、例えば、ポリフルフリルアルコール、多糖、ポリエーテル、ポリオレフィン、ポリスチレン及びこれらに類するものが挙げられる。
【0062】
典型的には、前駆体混合物は、少なくとも1つの溶媒を含有する。1つ又は複数の溶媒は、反応物質を可溶化し、希釈し、前駆体混合物中で生じる加水分解及び縮合反応のための反応媒質として機能する。溶媒は、少なくとも部分的に反応物質を可溶化することができるべきである。典型的には、溶媒は、水と少なくとも部分的に相溶性であるが、それは、多くの場合、水性酸などの水性試薬が使用されるからである。好適な溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、tert−ブタノールなどのアルコール、アセトン及びメチルエチルケトンなどのケトン、テトラヒドロフランなどのエーテル、エチルアセテートなどのエステル、ジメチルホルムアミドなどのアミド、又はこれらの混合物が挙げられる。
【0063】
前駆体混合物は、少なくとも1つの加水分解性シランを含有する。加水分解性シランは、一般式R−{Si(Z)4−nの化合物である(式中、Rはx価の炭化水素又は置換炭化水素基であり、xは1以上の整数であり、Zは加水分解性基であり、nは1、2又は3の整数である)。好適な加水分解性基としては、アルコキシ、ハロ、アセトキシ及びアミノ基が挙げられる。いくつかの実施形態では、xは1であり、nは1であり、R基は、アルキル又はアリール基などの炭化水素基であり、Zはアルコキシである。他の実施形態では、Xは2であり、nは1であり、Rはアルキレン、アリーレン、アラルカレン基であり、Zはアルコキシである。
【0064】
いくつかの実施形態では、前駆体混合物は、少なくとも2つの加水分解性シランを含有する。いくつかの実施形態では、前駆体混合物は、一般構造R−Si(ORの加水分解性シラン、並びに、一般構造(RO)Si−R−Si(ORの加水分解性シラン(式中、R、R、R及びRはアルキル又はアリール基であり、Rはアルキレン、アリーレン又はアラルキレン基である)を含有する。好適な加水分解性シランの例としては、例えば、メチルトリメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、4,4’−ビス(トリエトキシシリル)−1,1’−ビフェニル及びこれらに類するものが挙げられる。いくつかの実施形態では、前駆体混合物は、フェニルトリメトキシシラン及び4,4’−ビス(トリエトキシシリル)−1,1’−ビフェニルを含有する。
【0065】
前駆体混合物中に存在する加水分解性シランの量は、加水分解性シラン(1つ又は複数)の性質、及び、形成された有機ケイ酸塩組成物の所望の特性に応じて様々である。典型的には、加水分解性シランは、前駆体混合物の総重量に基づいて、約5〜25重量%の範囲で存在する。
【0066】
前駆体混合物は、加水分解性シランの加水分解及び縮合反応を促進するために、酸を含有する。前駆体混合物と相溶性があり、加水分解反応を助ける限り、任意の好適な酸を使用することができる。好適な酸の例としては、例えば、有機酸、ホスホニウム酸、アンモニウム酸及び鉱酸が挙げられる。有機酸としては、例えば、酢酸などのカルボン酸、アルキルスルホン酸などのスルホン酸、一般式RP(O)(OH)(式中、Rはアルキル基である)のアルキルホスホン酸などのホスホン酸、一般式RP(O)(OH)(式中、各Rは独立してアルキル基である)のアルキルホスフィン酸などのホスフィン酸が挙げられる。ホスホニウム酸としては、RPH(式中、各Rは独立して水素又はアルキル又はアリール基である)の型の化合物が挙げられる。アンモニウム酸としては、RNH(式中、各Rは独立して水素又はアルキル又はアリール基である)の型の化合物が挙げられる。鉱酸は、例えば、塩酸、硝酸、硫酸、ホウ酸、リン酸、フッ化水素酸及びこれらに類するものが挙げられる無機酸である。典型的には、鉱酸は、水性形態で使用され、すなわち、酸は水に溶解される。一般に、これらの入手しやすさ及び使用しやすさにより、水性鉱酸が使用される。いくつかの実施形態では、酸は、水性塩酸である。
【0067】
前駆体混合物は、所望により、少なくとも1つのポロゲンを含有してもよい。ポロゲンは、多孔質構造の形成を促進する物質である。ポロゲンは、有機ケイ酸塩組成物に共有結合するようにならず、典型的には、焼成中又は焼成後に有機ケイ酸塩組成物混合物から除去される。一般に、ポロゲンは、前駆体混合物中の反応性種と反応するいかなる官能基も含有しない。
【0068】
好適なポロゲンの例としては、ポリエーテル界面活性剤、アルキルアンモニウム塩、1,3,5−トリメチルベンゼンなどの炭化水素及びこれらに類するものが挙げられる。いくつかの実施形態では、ポロゲンは、例えば、ハロゲン化物対イオンとのアルキルアンモニウム塩などの、アンモニウム塩である。このような塩の例としては、テトラメチルアンモニウムクロリド、テトラエチルアンモニウムクロリド、テトラプロピルアンモニウムクロリド、テトラ−n−ブチルアンモニウムクロリド、オクチルトリメチルアンモニウムブロミド、デシルトリメチルアンモニウムブロミド、セチルトリメチルアンモニウムブロミド及びこれらに類するものが挙げられる。1つの特に好適なポロゲンは、オクチルトリメチルアンモニウムブロミドである。典型的には、ポロゲンは、1〜25重量%の範囲の量で前駆体混合物中に存在する。
【0069】
他の所望による添加物は、微多孔性構造の形成を妨げない限り、前駆体混合物に添加することができる。具体的には、特に水性酸が使用されない場合には、水が前駆体混合物に添加され得る。
【0070】
前駆体混合物は、基材上に付着させて、層を形成することができる。基材は、センサ素子の一部を形成してもよく、あるいは、前駆体が分析質感受性有機ケイ酸塩材料の予備形成フィルムを形成するように、一時的な基材であってもよい。前駆体は、例えば、スピンコーティング、ディップコーティング、ロールコーティング、スプレーコーティングなどの様々なコーティング技術、並びに、例えば、インクジェット印刷及びスクリーン印刷などの印刷技術を用いて、基材上に付着させることができる。スピンコーティングが特に有用である。
【0071】
基材は、その上に有機ケイ酸塩層を調製することが望ましく、並びに、有機ケイ酸塩層を形成するための焼成工程に耐えることができる、任意の好適な基材であり得る。基材の例としては、例えば、金属、金属酸化物板及び箔、ガラス板、セラミックス板及び物品、シリコンウエファー、ポリイミド及びシリコーンなどの焼成工程に耐えることができるポリマー及びこれらに類するものが挙げられる。いくつかの実施形態では、基材は、センサの第一反射層である。
【0072】
いったん基材上に前駆体混合物をコーティングすると、これは、混合物を乾燥及び焼成するために、典型的には、加熱処理にかけられる。加熱工程は、例えば、30〜100℃といったように、比較的低温であり得る。一般に、加熱工程は、より高い温度を伴う。典型的には、コーティングされた前駆体混合物は、約200℃〜約500℃の範囲の温度に加熱される。いくつかの実施形態では、加熱工程は約450℃である。
【0073】
加熱工程に続き、追加的な所望による加工工程が行われてもよい。例えば、処理剤での有機ケイ酸塩フィルムの処理が、望ましいものであり得る。処理剤は、有機ケイ酸塩化フィルムを更に改質して、フィルムを例えば、より疎水性にすることができる。好適な処理剤の例は、ヘキサメチルジシラザンなどのアルキルジシラザンのようなオルガノシラン処理剤である。層をヘキサメチルジシラザンの蒸気に曝露することにより、このような処理を行うことができる。
【0074】
検出層は、所望の任意の全厚を有することができる。望ましくは、検出層は、約50nm超過の、例えば、約100〜約1000nmの範囲といった、全厚を有する。一実施形態では、検出層は、検出層の全体にわたって実質的に同じ層厚を有する。例えば、図1の検出層16を参照されたい。他の実施形態では、検出層は、検出層内の第一の位置から検出層内の1か所以上の他の位置まで変化する層厚を有する。更に、検出層は、不連続性であっても模様付きであってもよい。検出層の上に適用される第二反射層は、検出層の厚さ変異及び/又は模様にぴったり一致するように、適用することができる。
【0075】
所望による第二反射層は、透過性の反射又は半反射層を形成することができると共に検出層とは異なる屈折率を有する任意の材料を含んでもよい。たいていの実施形態では、材料が約5nmの厚さにて半反射性であることが好ましいが、それは、この厚さにて、ほとんどの分析質がこの層を通って検出層に透過することができるからである。所望の厚さは、この層を形成するのに用いられる材料、検出される分析質、及び、分析質を保持する媒質に依存する。
【0076】
好適な材料としては、アルミニウム、クロム、金、ニッケル、ケイ素、銀、チタン、パラジウム及び白金などの金属及び半金属が挙げられる。第二反射層に含まれ得る他の好適な材料としては、酸化アルミニウム、酸化チタン及び酸化クロムなどの酸化物が挙げられる。
【0077】
第一反射層と同様に、第二反射層は、実質的に連続的な層であっても不連続的な層であってもよい。更に、第一反射層と同様に、第二反射層は、1つ以上の反射又は半反射層を含んでもよい。一般に、第二反射層は、単一の半反射層を含むが、これは実質的に連続性又は不連続性のいずれであってもよい。
【0078】
1つの例示的実施形態において、第二反射層は、実質的に連続的な層である。この実施形態において、第二反射層の構造体及び組成物は、第二反射層の上面全体及び第二反射層全体に実質的に一貫性であってもよい。あるいは、第二反射層の構造体及び/又は組成物は、第二反射層の上面全体及び第二反射層全体に可変でもよい。例えば、第二反射層は、第二反射層が、第二反射層上面の第一の位置において所与の分析質に対してより高い分析質透過性を、上面の第二の位置において同一の分析質に対してより低い分析質透過性を有するように、異なる透過性を有することができる。第二反射層の上面上の第一及び第二の位置は、互いに関して無作為に配置されるか、又は模様を上面に形成してもよい。
【0079】
実質的に連続的な第二反射層は、その中に、第二反射層の第一領域が第二反射層の第二領域よりも大きな光反射率を有する模様を有することもできる。第二反射層の第一及び第二領域は、第二反射層の上面上及び第二反射層内部に模様を形成してもよい。模様つき第二反射層は、下側の検出層が分析質に曝露されると、色付きの画像、言葉又はメッセージを形成するように、模様を含んでもよい。第二反射層は、分析質に曝露されると、ユーザーが容易に識別可能な警告を提供することができる。
【0080】
第二反射層の透過性を変化させるために、並びに/又は、第二反射層上及び第二反射層内部に模様を形成するために、任意の数の方法を使用してもよい。好適な方法としては、第二反射層の厚さ又は密度を変えるために第二反射層の付着条件を空間的に制御することが挙げられるが、これらに限定されるものではない。例えば、付着源と基材との間にマスクが配置され、その結果、付着される第二反射層の厚さが、上面の第一の位置から第二の位置にかけて変化してもよい。第二反射層上及び内部の、異なる透過性及び/又は模様はまた、第二反射層のミクロ構造を変化させるためのレーザ処理などの局部的エネルギー入力での第二反射層の後処理によって、作製することができる。
【0081】
上記方法のいずれかを使用して、第二反射層上に1つ以上の模様を作製してもよい。所与の1つの模様又は複数の模様の選択は、分析質又は関連の分析質、半反射材料又は使用材料、もしあれば、ユーザーに表示されるメッセージ、又はこれらの組み合わせが挙げられるがこれらに限定されない多くの要因に依存する可能性がある。
【0082】
実質的に連続的な第二反射層を有する代表的な多層フィルムを図1に示す。1つの代表的な多層フィルムセンサでは、多層フィルムセンサは、検出層の上に実質的に連続的な第二反射層を含み、検出層は、検出層内の1つ以上の孔の存在により、分析質の検出が強力に増強された、増加した表面積を有する。望ましくは、孔を含有する検出層の上に位置する実質的に連続的な第二反射層は、半反射材料の単一層である。
【0083】
更なる代表的実施形態では、第二反射層は、不連続的な層である。この実施形態では、第二反射層の組成物は、第二反射層全体に実質的に一貫性があってよいが、第二反射層は領域によって2つ以上の不連続的な区域に分けられる。不連続的な第二反射層は、曝露領域の「海」の中の半反射島の任意の模様を含んでもよい(つまり、検出層は曝露される)。検出層上の半反射島の寸法及び密度は、所望により可変とすることができ、検出層の上面に均一に分散又は不均一に分散してもよい。典型的には、半反射島は、検出層の上面にわたって均一に分散し、少なくとも約1.0マイクロメートル、望ましくは約10.0〜約100マイクロメートルの少なくとも1つの寸法(すなわち、長さ、幅又は直径)を有するが、任意の半反射島寸法、形状及び密度が使用され得る。更に、曝露領域は、典型的には、約1.0〜約100マイクロメートルの範囲の少なくとも1つの寸法(すなわち、長さ、幅又は直径)を有するが、曝露領域は任意の寸法を有し得る。
【0084】
検出層上にわたって不連続的な第二反射層を提供する1つの好適な方法は、レーザアブレーション方法を含む。第二反射層の部分は、米国特許第6,180,318号及び同第6,396,616号に記載のように、レーザに対してその部分を曝露することにより除去されてもよい。不連続的な第二反射層を製造するために使用され得る別の代表的方法は、光結像方法である。
【0085】
一実施形態では、不連続的な第二反射層は、検出層の上面にわたって均一に分散した多数の半反射島を含み、各半反射島は、少なくとも約1.0マイクロメートル、より望ましくは約10.0〜約100マイクロメートルの長さ、幅又は直径を有する、正方形又は円形の形状の上面領域を有する。各半反射島は、三角形、矩形、星型、ダイヤモンド形などが挙げられるが、これらに限定されない様々な形状と、少なくとも約1.0マイクロメートル、より望ましくは約10.0〜約100マイクロメートルの1つ以上の寸法と、を有する上面領域を有し得ることを理解すべきである。更に、各半反射島は1つ以上の分析質に対して透過性であるか又は非透過性かのいずれかであり得ることを理解すべきである。半反射島が1つ以上の分析質に対して透過性であると、センサは、1つ以上の分析質を、曝露面を通して直接的に、及び、半反射島を通して間接的に、検出層に接触させる。
【0086】
レーザアブレーション方法(米国特許第6,180,318号及び同第6,396,616号)、化学エッチング方法又は別の方法を用い、第二反射層の部分並びに検出層の部分を除去して、第二反射層の上面から検出層に伸び、可能であれば、第一反射層の上面(又は所望による基材の上面)まで伸びる孔を形成することができる。この実施形態では、得られた構造は、同一の検出層組成物と第二反射層組成物とを有する多層フィルム島(例えば、約10マイクロメートルの幅を有する曝露領域の格子内に100マイクロメートルの側方部分を有する正方形の島)の配列を含む。第二反射層はそれぞれ、1つ以上の分析質に対して透過性であるか不透過性であるかのいずれかであり得る。半反射島が1つ以上の分析質に対して透過性である場合には、多層構造は、分析質が検出層の側方部分から並びに検出層の上部から検出層の中に浸透するのを可能にする。得られた構造内の多層フィルム島の寸法、形状及び密度は、上記半反射島と同様に様々であり得る。典型的には、各多層フィルムは、少なくとも約1マイクロメートルの、例えば、約10.0〜約100マイクロメートルの、1つ以上の寸法を有する。
【0087】
上記方法に加えて、多層フィルム島はまた、検出層材料の島を第一反射層上に付着させ、次に第二反射層を各検出層島の上部に付着させることにより、形成してもよい。インクジェット印刷及びコンタクト印刷が挙げられるがこれらに限定されない様々な印刷技術を使用して、島又は模様付けされた形状の中の検出層を第一反射層上に付着させることができる。
【0088】
半連続的な第一又は第二反射層は、金属ナノ粒子を含んでもよい。ナノ粒子金属層(1つ又は複数)は、反射又は半反射層であり得る。例えば、第二反射層は、金属ナノ粒子の希釈コーティング溶液又は懸濁液を検出層に適用して、この溶液又は懸濁液を乾燥させて半連続的な液体透過性又は蒸気透過性の光反射層を形成させることによって形成してもよい。希釈濃度は、例えば、好適な液体透過性又は蒸気透過性の金属ナノ粒子層を提供するコーティング溶液又は懸濁液を供給する程度、例えば、固体濃度が40重量%未満、30重量%未満、20重量%未満、10重量%未満、5重量%未満又は4重量%未満であってもよい。入手したままの市販の金属ナノ粒子製品を追加の溶媒で希釈し、その希釈溶液又は希釈懸濁液を適用して乾燥させることによって、かなり薄い液体透過性層又は蒸気透過性層を得ることも可能である。様々なコーティング法を利用して、金属ナノ粒子溶液又は懸濁液を適用することも可能であり、拭取り、ディップコーティング、ロールコーティング、スピンコーティング、スプレーコーティング、ダイコーティング、インクジェットコーティング、スクリーン印刷(例えば、ロータリースクリーン印刷)、グラビア印刷、フレキソ印刷、及び当業者によく知られた他の方法が挙げられる。スピンコーティングは、他の方法を用いて得られるものよりも薄く、より透過性の高いコーティングを提供する場合がある。したがって、低い固体濃度で入手可能ないくつかの銀ナノ粒子懸濁液(例えば、日本ペイント製の5重量% SVW001銀、又はAdvanced Nano Products製の10重量% SILVERJET DGP−40LT−25C)は、適切に高い速度及び温度で好適な基材にスピンコーティングする場合には、入手したままの形態で、それ以上希釈せずに利用してもよい。金属ナノ粒子層は、適用された後、その焼成が適度な透過性を低下させないのであれば、(例えば、約125〜約250℃に約10分〜約1時間にわたって加熱することによって)焼成させてもよい。得られる反射層は、容易に確認できるナノ粒子をもはや含有していない場合もあるが、それが作製された方法で識別するために、ナノ粒子反射層と呼ばれてもよい。
【0089】
センサフィルムは、追加的な層(1つ又は複数)がセンサフィルムの光学特性に干渉しない限り、上記層のいずれかの間に追加的な層を含んでもよい。追加的な層は、結合層、構造層などを含み得る。
【0090】
センサフィルムはまた、第二反射層の上に追加的な層を含んでもよい。第二反射層を少なくとも部分的に覆い得る好適な追加層としては、透明層又は積層体、及び、1つ以上の分析質への曝露から第二反射層の一部を一時的若しくは恒久的に遮蔽するマスキング層が挙げられるが、これらに限定されない。追加的な層は、第二反射層上に直接適用してもよく、あるいは、結合層若しくは他の接着層を介して、一時的又は恒久的に第二反射層に固着させてもよい。必要な場合には、第二反射層の外表面は、追加層への固着を向上させるために処理されてもよい(例えば、化学エッチング、プライム、放電処理など)。
【0091】
1つの代表的な実施形態では、マスキング層は、第二反射層上に、模様の形状で提供される。この実施形態では、分析質に曝露されると、センサは、模様の形状でシグナルを表示する(すなわち、第二反射層上のマスキング層の逆の模様)。信号模様としては、形状、文字、単語、ユーザーへの特定のメッセージ、ユーザーへの安全に関する注意事項、会社のロゴなどが挙げられるがこれらに限定されない、任意の所望の構成を有してもよい。
【0092】
本開示の多層フィルムは、単独で用いてもよく、あるいは、1つ以上の分析質の存在及び/又は濃度を検出する装置の部分であってもよい。一実施形態では、多層フィルムは、少なくとも部分的にハウジングによって囲まれる。ハウジングは望ましくは、第二反射層の上に配置された少なくとも1つの開口部を含み、その結果、第二反射層は、少なくとも1つの開口部を介して見ることができる。いくつかの実施形態では、ハウジングは、少なくとも1つの開口部を含み、視角によるセンサの可視色変動の可能性(及びセンサ読取値に関するユーザの混同)を最小化するために、少なくとも1つの開口部は、第二反射層の上面に対する制限された視野を提供する。典型的には、制限された視野により、第二反射層の上面の視野が、垂直の視野(すなわち、第二反射層の外表面に対して垂直な位置からの視野)から±30°、より望ましくは±15°の角度内となる。
【0093】
ハウジング(又は上記所望による基材)はまた、本開示の多層フィルムセンサを拘束し、その結果、フィルムが弓状若しくは円筒状の形状になるように、使用してもよい。このような形状により、色の変化を最小限に抑えることで、ユーザーがより広い視角からセンサを観察できる。
【0094】
上記のように、本開示の多層フィルムセンサは、実質的に連続的な第二反射層又は不連続的な第二反射層を有し得る。1つの代表的な実施形態では、センサは、実質的に連続的な第一反射層と、この第一反射層の上にある検出層と、この検出層の上にある実質的に連続的な第二反射層と、を含み、検出層は、実質的に微多孔性で非晶質であり、疎水性で分析質応答性有機ケイ酸塩材料を含み、第二反射層は、検出層の屈折率とは異なる屈折率を有し、所与の分析質に対して透過性である。望ましくは、実質的に連続的な第一反射層、実質的に連続的に第二反射層又はこれらの両方は、いずれか又は両方の層の厚さを最小化して、その結果、1つ以上の分析質がいずれか又は両方の層を透過するように、反射又は半反射性材料の単一層を含む。
【0095】
更なる代表的実施形態では、センサは、第一反射層と、この第一反射層の上にある検出層と、この検出層の上にある不連続的な第二反射層と、を含み、第二反射層は、検出層の屈折率とは異なる屈折率を有する。この代表的実施形態では、センサは、望ましくは、以下の特徴のうちの少なくとも1つを有する。
(a)不連続的な第二反射層は、半反射島の単一層を含む。
(b)不連続的な第二反射層は、10マイクロメートル超過の少なくとも1つの寸法と、半反射島間の曝露領域と、を有する半反射島の単一層を含み、曝露領域は少なくとも1.0マイクロメートルの幅を有する。
(c)検出層は、検出層のなかに一定の深さで伸びる孔を含有する。
【0096】
本開示の多層フィルムは、例えば、米国特許第5,877,895号に記載のプロセスなどの方法を介して作製することができる。検出層はまた、スピンコーティング、溶液コーティング、押し出しコーティング、又は他の好適な当該技術分野において既知の技術により、作製してもよい。第一反射層及び第二反射層は、蒸着、スパッタリング、化学蒸着(CVD)、プラズマ蒸着又は火炎蒸着などの標準的な蒸気コーティング技術により作製してもよい。第一反射層及び第二反射層を作製するための別の方法は、溶液からのめっきである。
【0097】
フィルムセンサは、センサと光源と所望により色の変化についてセンサを監視する手段とを含むシステムにおいて、使用され得る。光源は、天然又は人工光源とすることができる。モニタリングは、さまざまな方法で行うことができる。それは、光探知器、又は他の好適な手段によって、視覚的に行うことができる。
【0098】
分析質は、蒸気又は液体媒質中に存在し得る。例えば、分析質は、空気中又は液体溶媒中に存在してもよい。いずれにせよ、多くの実施形態で、少なくとも分析質の一部は、検出層と相互作用するために、フィルムセンサの第二反射層を通して透過する。
【0099】
2つ以上のフィルムセンサは、配列を形成するために一緒に使用してもよい。配列は、任意の好適な構成であってよい。例えば、配列は、横に並んだ2つ以上のセンサを含んでよく、又はセンサは、基材の両側に取り付けられても、あるいは基材の両側に構築されてもよい。所与の配列中のセンサは、同一又は異なるタイプでもよい。多層フィルムセンサの配列は、化学薬品の存在を検出するだけの場合に対して、配列全体からのユニークな応答識別特性に基づいた分析質の識別に役立つ。
【0100】
多層フィルムセンサの配列は、所与の試料媒質中に1つ以上の分析質の存在及び/又は濃度を検出するように、所与の積層体内に異なる検出層孔寸法分布又は異なる検出層厚又はこれらの組み合わせを有してもよい。
【0101】
いくつかの実施形態では、配列は2つ以上のセンサを含み、配列中の各センサは、(a)共通の第一反射層を共有し、(b)実質的に微多孔性で、非晶質であり、疎水性の分析質応答性有機ケイ酸塩材料を有する検出層と、半反射層組成物を有する第二反射層と、を含む層の積層を含む多層フィルム島を含む。一般に、検出層組成物は、配列中の各センサについて同様であり、半反射性組成物は配列中の各センサについて同様である。
【0102】
本開示のフィルムセンサは、多くの有用な用途を有する。これらは、例えば、広範囲の有機蒸気を検出するために、使用することができる。センサは、溶液又は気体内で所与の分析質の存在及び/又は濃度を検出するために用いることができる。センサ配列は、溶液又は気体内で1つ以上の分析質の存在及び/又は濃度を検出するために用いることができる。1つの可能な用途では、多層フィルムセンサは、単一センサ素子と液体又は気体媒質の相互作用に基づくよりもむしろ、配列と液体又は気体媒質の相互作用に基づいて、ユーザーに色模様全体を提供する。
【0103】
使用前に、多層フィルムセンサは、検出される分析質を実質的に含まない。使用前の「未曝露」多層フィルムセンサは、典型的には、第一色を呈するか、又は、第二反射層を通して見ると無色であるかのいずれかである。1つ以上の分析質に曝露されると、「未曝露」多層フィルムセンサは、分析質含有センサに変わる。分析質含有センサは、第一色とは異なる第二色を呈するか、第一色から無色状態への色変化を経るか、無色状態から色含有状態への色変化を経るか、あるいは、光学的分光法により監視すると最大又は最小スペクトルの波長における変化などのいくつかの他の検出可能な光学的変化を経るかのいずれかである。
【0104】
上記センサ及びセンサの配列のいずれかを使用して、所与の媒質中の1つ以上の分析質を検出してもよい。分析質検出の1つの代表的な方法では、この方法は、分析質の存在又は不在を検出し、ここで、この方法は、センサ(又はセンサの配列)を準備する工程と、光源を準備する工程と、分析質を含有し得る媒質とセンサ(又はセンサの配列)を接触させる工程と、光学特性における変化についてセンサ(又はセンサの配列)を監視する工程と、を含む。上記のように、媒質は、液体又は気体であり得る。更に、1つ以上の分析質は、第二反射層、第一反射層又は両方の層を透過し得る。
【実施例】
【0105】
これらの実施例は単にあくまで例示を目的としたものであり、添付した「特許請求の範囲」の範囲に限定するものではない。本明細書の実施例及びその他の部分におけるすべての部、百分率、比などは特に注記がない限り、重量による。使用される溶媒及び他の試薬は、特に記載のない限り、Sigma−Aldrich Chemical Company;Milwaukee,Wisconsinから入手した。
【0106】
【表1】

【0107】
試験方法
孔径の測定
窒素吸着測定法を用いて、孔径の測定を行った。試験する材料を直径100mmのシリコンウエファー上にコーティングした。実施例に記載のように、繰り返しスピンコーティング法を用いてウエファーをコーティングし、続いて焼成した。フィルムを回収し、窒素吸着測定に用いた。総細孔容積は、74ポイント微小細孔分析を使用して製造業者の指示にしたがって操作される商品名「QUANTACHROME AUTOSORB IC」(Quantachrome Instruments,Boynton Beach,FA)として入手可能な気体吸着分析器を使用する窒素吸着によって測定した。
【0108】
疎水性の測定
コーティングされたセンサー片を、湿度制御試験システムの中に配置し、光学的分光法によりモニターした。Ocean Optics光ファイバープローブ、LS−1光源及びUSB−2000光分析装置を、センサーのモニターに使用した。サーモスタット付き水容器を通して空気を流すことにより、制御された百分率の相対湿度で、気流を発生させた。センサーを2.5リットル/分の流速にて湿った空気に曝露したところ、400nm〜800nmの光学反射スペクトルが観察された。続いて、最大(又は最小)スペクトルの波長の変化を、蒸気の濃度の関数としてプロットした。大きな波長変化ほど、多孔質材料内への水蒸気吸着のより大きな量と相関する。
【0109】
相対湿度50%にて孔を充填する水の量は、以下の手順を用いて測定された。平衡における相対湿度50%での孔の中に存在する水の量を、孔に水が空である場合及び孔が水で本質的に充填されている場合に存在する水の量と比較した。これらの比較を行うために、比較的低い相対湿度(相対湿度およそ5%)で孔は本質的に空になり、相対湿度85%の環境下での平衡において孔は本質的に充填されるという仮定を行った。光学ピーク位置における違いを相対湿度5%、50%及び85%にて測定した。相対湿度5%と50%との間のピーク位置の違いはΔ50%として報告し、相対湿度5%と85%との間のピーク移動の違いはΔ85%として報告する。これらの2つの値の比率Δ50%/Δ85%は、相対湿度50%にて孔の中に存在する水の量を示唆する値を与える。これらの比率に100%を積算すると、平衡において相対湿度50%にて孔が水で充填されている百分率が与えられる。
【0110】
蒸気曝露方法
コーティングされたセンサ片を、蒸気送達システムの中に配置し、光学的分光法により監視した。Ocean Optics光ファイバープローブ、LS−1光源及びUSB−2000光分析装置を、センサーのモニターに使用した。400nm〜800nmで反射光スペクトルが観察された。空気中の制御された濃度の蒸気を、およそ2.5リットル/分の流量にてコーティング部分に導入し、スペクトル応答を監視した。続いて、最大(又は最小)スペクトルの波長の変化を、蒸気の濃度の関数としてプロットした。大きな波長変化ほど、多孔質材料内への蒸気吸着のより大きな量と相関する。
【0111】
有機蒸気検知
有機蒸気検知用途についてのこれらの材料の使用を立証するために、材料を上記蒸気曝露方法により異なる濃度に曝露し、監視した。
【0112】
X線散乱
X線散乱で試料を試験して、試料の非晶質性を判定した。反射配置データは、Philips垂直回折計、銅Kα放射線及び散乱放射線の比例検出器レジストリを使用することにより、測量走査の形態で収集した。回折計には、可変の入射ビームスリット、固定回折ビームスリット、及びグラファイト回折ビームモノクロメータが装着された。測量走査は、0.04度のステップ寸法及び4秒の滞留時間を使用して5〜80度(2θ)で行った。45kV及び35mAのX線発生装置設定を使用した。Huber4サイクル回折計、銅Kα放射線及び散乱放射線のシンチレーション検出器レジストリの使用により、更なる反射配置低角度データを収集した。入射光線の視準を700μmピンポールに合わせ、ニッケルフィルターにかけた。走査は、0.01度のステップ間隔及び60秒の滞留時間を使用して0.5〜15度(2θ)で行った。40kV及び20mAのX線発生装置設定を使用した。
【0113】
合成例:試薬溶液の調製:
以下の実施例で前駆体混合物を調製するために使用された一連の試薬溶液を調製した。
【0114】
溶液1
ポリエチレンびんの中で、OTAB(0.126グラム)、エタノール(2.102グラム)、BTSBP(0.492グラム)及び0.1モルのHCl(水溶液)(0.201グラム)を組み合わせた。
【0115】
溶液2
ポリエチレンびんの中で、OTAB(0.127グラム)、エタノール(2.129グラム)、BTSBP(0.445グラム)、PTMS(0.052グラム)及び0.1モルのHCl(水溶液)(0.199グラム)を組み合わせた。
【0116】
溶液3
ポリエチレンびんの中で、OTAB(0.124グラム)、エタノール(2.106グラム)、BTSBP(0.392グラム)、PTMS(0.102グラム)及び0.1モルのHCl(水溶液)(0.205グラム)を組み合わせた。
【0117】
溶液4
ポリエチレンびんの中で、OTAB(0.126グラム)、エタノール(2.112グラム)、BTSBP(0.352グラム)、PTMS(0.154グラム)及び0.1モルのHCl(水溶液)(0.203グラム)を組み合わせた。
【0118】
溶液5
ポリエチレンびんの中で、OTAB(0.127グラム)、エタノール(2.095グラム)、BTSBP(0.300グラム)、PTMS(0.201グラム)及び0.1モルのHCl(水溶液)(0.201グラム)を組み合わせた。
【0119】
(実施例1〜5):
実施例1〜5のために、表1に示した溶液を使用した。溶液を、直径2センチメートルのチャックを有するHeadway Research EC101 DT−R790スピンコーティング機を使用してシリコンウエファー上にスピンコーティングした。スピンに先立って、各シリコンウエファー部分を数滴の溶液で浸した。スピンコーティングは、1000rpmで60秒にわたって行った。コーティングした部分を箱形炉内で空気中において、450℃の温度までは1℃/分の速度で、450℃にて5分保持し、その後段階的に周囲温度に冷却して、焼成させた。上記の「試験方法」に記載した通りに疎水性試験を行ったが、結果は表3に示す。有機分析質アセトン及びトルエンを用いて上記の「試験方法」を使用して、有機蒸気検知試験を行った。データを図2(トルエン)及び図4(アセトン)に示す。上記の「試験方法」を用いて、実施例4の試料に対してX線散乱分析を行った。試験結果は、構造規則性の存在についての証拠を全く示さなかった。得られた低角度及び広角度データのどちらも本質的に無特性であった。
【0120】
実施例3に使用したコーティング溶液の試料を用いて、孔径測定用試料を調製した。上記「試験方法」に示した孔径測定試験を用いる試験を行った。試験結果は、総孔体積の75%が2.0ナノメートル以下の孔直径を有する孔を含有し、総孔体積の70%が1.5ナノメートル以下の直径を有する孔を含有したことを示した。
【0121】
【表2】

【0122】
(実施例6〜10):
実施例6〜10のために、表2に示した溶液を使用した。溶液を、直径2センチメートルのチャックを有するHeadway Research EC101 DT−R790スピンコーティング機を使用してシリコンウエファー上にスピンコーティングした。スピンに先立って、各シリコンウエファー部分を数滴の溶液で浸した。スピンコーティングは、1000rpmで60秒にわたって行った。コーティングした部分を箱形炉内で空気中において、450℃の温度までは1℃/分の速度で、450℃にて5分保持し、その後段階的に周囲温度に冷却して、焼成させた。実施例のコーティングの各々は、HDMSへの曝露により後処理された。コーティングしたシリコンウエファーをHMDSのリザーバ(1〜2ミリリットル)を有するポリエチレンペトリ皿の中に置いた。ペトリ皿をカバーし、この部分を24時間にわたってHMDS蒸気と反応させておいた。上記の「試験方法」に記載した通りに疎水性試験を行ったが、結果は表3に示す。有機分析質アセトン及びトルエンを用いて上記の「試験方法」を使用して、有機蒸気検知試験を行った。データを図3(トルエン)及び図5(アセトン)に示す。
【0123】
【表3】

【0124】
【表4】

【0125】
(実施例11)
ガラス板の25×25mmの部分上に厚さ10ナノメートルのチタンの層を蒸着することにより、基材を調製した。厚さ20ナノメートルの酸化ケイ素の層を蒸着することにより、チタンをコーティングした。
【0126】
ポリエチレンびんの中で順にOTAB(0.125グラム)、エタノール(2.102グラム)、BTSBP(0.398グラム)、PTMS(0.103グラム)及び0.1モルのHCl(水溶液)(0.201グラム)を組み合わせることにより、コーティング溶液を調製した。
【0127】
このコーティング溶液の試料を使用して、実施例11を調製した。121分後、このコーティング溶液を、直径2センチメートルのチャックを用いてHeadway Research EC101 DT−R790スピンコーティング機を使用して、上記基材上にスピンコーティングした。スピンに先立って、この部分を数滴の溶液で浸した。スピンコーティングは、1000rpmで60秒にわたって行った。コーティングした試料を炉内で空気中で450℃の温度に焼成した。
【0128】
1.0g量のSILVERJETTMD GP 40LT−25C銀ナノ粒子(メタノール中で43.25%、韓国のAdvanced Nano Products Co.から)を2ミリリットルのメタノールに添加したところ、16.8%の固体を含有する希釈懸濁液が得られた。この希釈懸濁液を600rpmにて、焼成試料上の有機ケイ酸塩層上にスピンコーティングした。試料を空気中で1時間にわたって150℃に加熱して、銀粒子を部分焼成した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
実質的に連続的な第一反射層と、
前記第一反射層の上にある検出層と、を含むセンサであって、前記検出層が、実質的に微多孔性で、非晶質であり、疎水性の、分析質応答性有機ケイ酸塩材料を含み、前記実質的に微多孔性で、非晶質であり、疎水性の、分析質応答性有機ケイ酸塩材料が、孔体積を画定する微小孔を含む、センサ。
【請求項2】
前記検出層の上に第二反射層を更に含み、前記第二反射層が、前記検出層の屈折率とは異なる屈折率を有し、前記第二反射層の少なくとも一部が、分析質に対して透過性である、請求項1に記載のセンサ。
【請求項3】
前記実質的に微多孔性で、非晶質であり、疎水性の、分析質応答性有機ケイ酸塩材料が、平衡において、相対湿度50%にて利用可能な孔体積の50%未満まで水を吸着する、請求項1に記載のセンサ。
【請求項4】
前記実質的に微多孔性で、非晶質であり、疎水性の、分析質応答性有機ケイ酸塩材料が、0.5〜80度(2θ)で走査された場合に、識別可能なX線回折パターンを示さない、請求項1に記載のセンサ。
【請求項5】
総孔体積の少なくとも50%が、2.0ナノメートル以下の直径を有する孔を構成する、請求項1に記載のセンサ。
【請求項6】
総孔体積の少なくとも50%が、0.6〜1.3ナノメートルの直径を有する孔を構成する、請求項1に記載のセンサ。
【請求項7】
前記第一若しくは第二反射層のうちの一方又は両方が金属を含む、請求項2に記載のセンサ。
【請求項8】
前記第二反射層が、実質的に連続的な層である半反射層である、請求項2に記載のセンサ。
【請求項9】
前記第二反射層が、前記第二反射層上面の第一の位置においてより高い分析質透過性を有し、前記上面の第二の位置においてより低い分析質透過性を有するような、異なる透過性を有する、請求項2に記載のセンサ。
【請求項10】
前記第一及び第二の位置が、前記第二反射層の前記上面上に模様を形成する、請求項9に記載のセンサ。
【請求項11】
前記第二反射層が、前記第一反射層の反対側の前記検出層の外表面上に半反射材料の単一層を含む、請求項2に記載のセンサ。
【請求項12】
前記第一反射層が反射材料の単一層を含む、請求項11に記載のセンサ。
【請求項13】
前記センサが、前記第二反射層の少なくとも一部の上にマスキング層を更に含む、請求項2に記載のセンサ。
【請求項14】
前記第一反射層が銀を含む、請求項1に記載のセンサ。
【請求項15】
前記検出層が、前記検出層の第一位置における第一厚さと、前記検出層の第二位置における第二厚さと、を有し、前記第二厚さが前記第一厚さとは異なる、請求項1に記載のセンサ。
【請求項16】
前記第一反射層の少なくとも一部が、前記分析質に対して透過性である、請求項1に記載のセンサ。
【請求項17】
前記センサが分析質を実質的に含まず、第一色を呈するか、前記第二反射層を通して見ると無色であるかのいずれかである、請求項2に記載のセンサ。
【請求項18】
2つ以上のセンサを含む配列であって、前記センサが、
実質的に連続的な第一反射層と、
前記第一反射層の上にある検出層と、を含み、前記検出層が、実質的に微多孔性で、非晶質であり、疎水性の、分析質応答性有機ケイ酸塩材料を含み、前記実質的に微多孔性で、非晶質であり、疎水性の、分析質応答性有機ケイ酸塩材料が、孔体積を画定する微小孔を含む、配列。
【請求項19】
前記センサが、
前記検出層の上に第二反射層を更に含み、前記第二反射層が、前記検出層の屈折率とは異なる屈折率を有し、前記第二反射層の少なくとも一部が、分析質に対して透過性である、請求項18に記載の配列。
【請求項20】
前記配列中の少なくとも2つのセンサが、異なる検出層孔径分布、異なる検出層厚又はこれらの組み合わせを有する、請求項18に記載の配列。
【請求項21】
少なくとも部分的にセンサを囲むハウジングを更に含み、前記ハウジングが、前記第二反射層の上に配置された少なくとも1つの開口部を含み、前記少なくとも1つの開口部が前記第二反射層の上面に対する制限された視野を提供し、前記制限された視野により、前記第二反射層の前記上面の視野が垂直の視野から±30°の角度内となる、請求項2に記載のセンサ。
【請求項22】
実質的に連続的な第一反射層と、
前記第一反射層の上にある検出層であって、前記検出層が、実質的に微多孔性で、非晶質であり、疎水性の、分析質応答性有機ケイ酸塩材料を含み、前記実質的に微多孔性で、非晶質であり、疎水性の、分析質応答性有機ケイ酸塩材料が、孔体積を画定する微小孔を含む、検出層と、
光源と、を含む、装置。
【請求項23】
前記検出層の上にある第二反射層を更に含み、前記第二反射層が、前記検出層の屈折率とは異なる屈折率を有し、前記第二反射層の少なくとも一部が、分析質に対して透過性である、請求項22に記載の装置。
【請求項24】
光検出器を更に含む、請求項22に記載の装置。
【請求項25】
分析質の存在又は不在を検出する方法であって、前記方法は、
実質的に連続的な第一反射層と、
前記第一反射層の上にある検出層と、を含むセンサであって、前記検出層が、実質的に微多孔性で、非晶質であり、疎水性の、分析質応答性有機ケイ酸塩材料を含み、前記実質的に微多孔性で、非晶質であり、疎水性の、分析質応答性有機ケイ酸塩材料が、孔体積を画定する微小孔を含む、センサを準備する工程、
光源を準備する工程、
分析質を含有し得る媒質と前記センサを接触させる工程、並びに、
光学特性における変化について前記センサを監視する工程を含む、方法。
【請求項26】
前記センサが、
前記検出層の上に第二反射層を更に含み、前記第二反射層が、前記検出層の屈折率とは異なる屈折率を有し、前記第二反射層の少なくとも一部が、分析質に対して透過性である、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記光学特性における変化が可視的な変化をもたらす、請求項25に記載の方法。
【請求項28】
前記媒質が気体又は液体である、請求項25に記載の方法。
【請求項29】
前記分析質が、前記第二反射層、前記第一反射層又は両方を透過する、請求項26に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2012−513601(P2012−513601A)
【公表日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−543563(P2011−543563)
【出願日】平成21年12月14日(2009.12.14)
【国際出願番号】PCT/US2009/067804
【国際公開番号】WO2010/075014
【国際公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【出願人】(505005049)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (2,080)
【Fターム(参考)】