説明

微小亀裂耐性の向上した積層品及びその製造方法

【課題】プラスチック基材に対し、耐摩耗性、接着性及び/又は微小亀裂耐性の向上した被覆を提供する。
【解決手段】基材と第一の層とその上に堆積した第二の層とを含む多層品であって、第一の層は、式R2Si(OR’)2のジオルガノジオルガノオキシシラン、式RSi(OR’)3のオルガノトリオルガノオキシシラン又は両者の部分縮合物を含み、式中Rは独立に炭素原子数約1〜3のアルキル基、炭素原子数約6〜13の芳香族基、ビニル基、3,3,3-トリフルオロプロピル基、γ-グリシドキシプロピル基及びγ-メタクリロキシプロピル基からなる群から選択され、R’は独立に炭素原子数約1〜8のアルキル基、炭素原子数6〜20の芳香族基及び水素からなる群から選択される。第二の層はプラズマ中で重合して酸化した有機ケイ素材料を含み、ケイ素、酸素、炭素及び水素を含有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般には、積層品に関し、さらに具体的には、微小亀裂耐性の向上した積層品に関する。
【背景技術】
【0002】
プラスチック及び他のポリマーは、広範な応用に有用な物理的特性及び化学的特性を有する市販材料である。例えば、ポリカーボネートは耐破損性に優れているため、自動車のヘッドランプ、安全シールド、眼鏡類及びウィンドウのような多くの製品でガラスに替わるポリマーとなっている。しかし、多くのポリカーボネートはまた、耐摩耗性が低く、紫外(UV)光への曝露で劣化し易い等のように、応用によっては短所となり得る特性も有している。このため、ポリカーボネートは、紫外光又は研摩環境に曝露される自動車のウィンドウ及び他のウィンドウ等の応用には広くは用いられていない。
【0003】
耐摩耗性が低いこと及びUV劣化という問題点を小さくするために、ポリカーボネートを処理する公知の方法では、耐摩耗性材料及びUV吸収剤の1以上の層をポリカーボネート基材に塗工している。例えば、特許文献1は、シリコーン層のポリカーボネート基材への塗工を記載している。シリコーン層は、シラノールの部分縮合物の低級脂肪族アルコール−水溶液にコロイダルシリカを分散させた分散液を含んでなる。シリコーン層は、例えばポリカーボネートをシリコーン浴に浸漬させるか、又はポリカーボネートにシリコーンを吹き付ける等の湿式法で塗工される。シリコーン層はポリカーボネートに耐摩耗性を付与し、またUV輻射線を吸収する成分を含んでいてもよい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第4842941号
【特許文献2】米国特許第5494712号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に記載されているシリコーン層は、長期の屋外曝露を受けると微小亀裂を生ずる場合がある。接着試験及び延性試験によって測定したシリコーン層の長期安定性及び耐候性にも改善の余地がある。
【0006】
耐摩耗性を付与する別の方法では、プラズマ化学気相堆積法(PECVD)によってプラズマ重合有機ケイ素の被覆(コーティング)を塗工している。例えば特許文献2は、PECVDによってプラズマ重合有機ケイ素材料を含んでなる耐摩耗性層を塗工する方法を記載している。これらの被覆は、沸騰水中で2時間といった短期促進耐候試験に耐え得ると記載されている。しかし、これらの被覆は典型的には、QUV又はキセノンアークウェザロメータ中で数百時間といった強化型耐候性試験の後にはポリカーボネートに接着しなくなる。このように、耐候性の向上した被覆に対する必要性が存在している。
【0007】
従って、耐摩耗性、接着性及び/又は微小亀裂耐性の向上した被覆を提供できると望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0008】
一実施形態によれば、本発明は、基材と第一の層とその上に堆積した第二の層とを含む多層品に関する。第一の層は、式RSi(OR′)のジオルガノジオルガノオキシシラン、式RSi(OR′)のオルガノトリオルガノオキシシラン又は両者の部分縮合物を含んでなり、式中、Rは独立に炭素原子数約1〜3のアルキル基、炭素原子数約6〜13の芳香族基、ビニル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基、γ−グリシドキシプロピル基及びγ−メタクリロキシプロピル基からなる群から選択され、R′は独立に炭素原子数約1〜8のアルキル基、炭素原子数約6〜20の芳香族基及び水素からなる群から選択される。第二の層は、プラズマ中で重合して酸化した有機ケイ素材料を含んでなり、ケイ素、酸素、炭素及び水素を含有している。
【0009】
本発明はまた、多層品の形成方法に関するものでもある。該方法は、基材に第一の層を塗工する工程、及び第一の層の上に第二の層を塗工する工程を備える。第一の層は、式RSi(OR′)のジオルガノジオルガノオキシシラン、式RSi(OR′)のオルガノトリオルガノオキシシラン又は両者の部分縮合物を含んでなり、式中、Rは独立に炭素原子数約1〜3のアルキル基、炭素原子数約6〜13の芳香族基、ビニル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基、γ−グリシドキシプロピル基及びγ−メタクリロキシプロピル基からなる群から選択され、R′は独立に炭素原子数約1〜8のアルキル基、炭素原子数約6〜20の芳香族基及び水素からなる群から選択される。第二の層は、過剰の酸素中で有機ケイ素材料をプラズマ重合することにより第一の層の上に塗工される。
【発明の効果】
【0010】
本発明の実施形態による多層品は、プラスチック基材の耐摩耗性を向上させるとともに微小亀裂耐性を向上させる。後述の実施例に記載する実施形態において、第一の層及び第二の層の組み合わせには驚くべき微小亀裂耐性があり、自然又は模擬的な屋外曝露を受けた後にも良好な接着性を有することが実証される。
【0011】
本発明の他の特徴及び利点は、以下の詳細な説明及び添付の図面から明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施形態による積層品の図である。
【図2】本発明の別の実施形態による積層品の図である。
【図3】本発明の実施形態に従って積層品を形成するのに用いることのできる装置の図である。
【図4】図3の装置と共に用いることのできる電極の一例の図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明は、好適実施形態によれば、基材と中間層と耐摩耗性層とを含んでなる積層品に関する。基材と中間層との間にプライマー層を形成してもよい。プライマー層及び/又は中間層はUV吸収剤を含んでいてもよい。各層は、基材に対して改善された耐候性を付与する。図1は、中間層20及び耐摩耗性層30を含む基材10を示している。図2は、追加のプライマー層15を示している。
【0014】
基材は、本発明の実施形態によれば、典型的にはポリマー樹脂を含んでなる。例えば、基材はポリカーボネートを含んでいてよい。基材の形成に適したポリカーボネートは当技術分野で周知であり、一般には、次式の繰り返し単位を含んでなる。
【0015】
【化1】

【0016】
式中、Rは、ポリマー生成反応に用いられる二価フェノールの二価芳香族基(例えばビスフェノールAとしても公知の2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンの基)、又は有機ポリカルボン酸(例えばテレフタル酸、イソフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、アジピン酸、セバシン酸及びドデカン二酸等)である。これらのポリカーボネート樹脂は、当技術分野で周知のように、1以上の二価フェノールを、ホスゲン、ハロホルメート又はカーボネートエステルのようなカーボネート前駆体と反応させることにより製造することのできる芳香族カーボネートポリマーである。利用可能なポリカーボネートの一例は、General Electric Companyから販売されているLEXAN(登録商標)である。
【0017】
基材はまた、当技術分野で周知のように、カーボネート前駆体、二価フェノール、及びジカルボン酸又はそのエステル形成型誘導体を反応させることにより製造することのできるポリエステルカーボネートを含んでいてもよい。
【0018】
基材はまた、熱可塑性材料又は熱硬化性材料を含んでいてもよい。適当な熱可塑性材料の例には、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリビニルアセテート、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセタール、ポリメタクリレートエステル、ポリアクリル酸、ポリエーテル、ポリエステル、ポリカーボネート、セルロース樹脂、ポリアクリロニトリル、ポリアミド、ポリイミド、ポリ塩化ビニル、含フッ素樹脂及びポリスルホン等がある。適当な熱硬化性材料の例には、エポキシ及び尿素メラミン等がある。
【0019】
当技術分野で周知のアクリルポリマーも基材を形成し得る材料の一つである。アクリルポリマーは、メチルアクリレート、アクリル酸、メタクリル酸、メチルメタクリレート、ブチルメタクリレート及びシクロヘキシルメタクリレート等のような単量体から製造することができる。また、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート及びn−ブチルアクリレートのような置換アクリレート及びメタクリレートも利用してよい。
【0020】
また、ポリエステルを用いて基材を形成してもよい。ポリエステルは当技術分野で周知であり、有機ポリカルボン酸(例えばフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、アジピン酸、マレイン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、セバシン酸及びドデカン二酸等)又はこれらの無水物と、第一級又は第二級のヒドロキシル基を含む有機ポリオール(例えばエチレングリコール、ブチレングリコール、ネオペンチルグリコール及びシクロヘキサンジメタノール)とのポリエステル化によって製造することができる。
【0021】
ポリウレタンも基材の形成に使用し得る材料の一つである。ポリウレタンは当技術分野で周知であり、ポリイソシアネートとポリオールとの反応によって製造される。有用なポリイソシアネートの例には、ヘキサメチレンジイソシアネート、トルエンジイソシアネート、MDI、イソホロンジイソシアネート、並びにこれらのジイイソシアネートのビウレット及びトリイソシアヌレート等がある。有用なポリオールの例には、低分子量脂肪族ポリオール、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール及び脂肪アルコール等がある。
【0022】
基材を形成し得る他の材料の例には、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン、ガラス、VALOX(登録商標。General Electric Co.から販売されているポリブチレンフタレート)、並びにXENOY(登録商標。General Electric Co.から販売されているLEXAN(登録商標)及びVALOX(登録商標)のブレンド)等がある。
【0023】
基材は、従来の態様で、例えば射出成形、押出し、常温成形、真空成形、吹込成形、圧縮成形、トランスファー成形及び熱成形等によって形成することができる。物品は任意の形状であってよく、最終的な商品である必要はなく、すなわち切断、定寸化又は機械的成形を施して最終的な物品とされるようなシート材料又はフィルムであってよい。基材は透明であっても透明でなくてもよい。基材は剛性であっても可撓性であってもよい。
【0024】
図1に示すように、本発明の一実施形態によれば、基材の上に中間層が形成される。中間層20は典型的には、式RSi(OR′)のジオルガノジオルガノオキシシラン、式RSi(OR′)のオルガノトリオルガノオキシシラン又は両者の部分縮合物の脂肪族アルコール−水溶液にコロイダルシリカを分散させた分散液を含んでなる。式中、Rは独立に炭素原子数約1〜3のアルキル基、炭素原子数約6〜13の芳香族基、ビニル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基、γ−グリシドキシプロピル基及びγ−メタクリロキシプロピル基からなる群から選択され、R′は独立に炭素原子数約1〜8のアルキル基、炭素原子数約6〜20の芳香族基及び水素からなる群から選択される。
【0025】
典型的には、ジオルガノジオルガノオキシシラン及びオルガノトリオルガノオキシシランは、それぞれ式RSi(OH)又はRSi(OH)のシラノールへの前駆体である。式中、Rは、炭素原子数1〜3のアルキル基、ビニル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基、γ−グリシドキシプロピル基及びγ−メタクリロキシプロピル基からなる群から選択される。
【0026】
部分縮合物の大部分は典型的には、CHSi(OH)の縮合から得られ、所望に応じて、少量は、CSi(OH)、CSi(OH)、CHCHSi(OH)
【0027】
【化2】

【0028】
又はこれらの混合物との縮合から得られる。典型的には、シラノールの70重量%以上がCHSi(OH)で構成される。
【0029】
部分縮合物は典型的には、コロイダルシリカ分散液及び低級脂肪族アルコール−水共溶媒を含む溶液形態にある。アルコールは典型的には、低級脂肪族アルコールであり、例えば炭素原子数6未満のものである。適当な低級脂肪族アルコールには、例えばメタノール、エタノール、イソプロパノール及びt−ブチルアルコール等がある。かかるアルコールの混合物を用いてもよい。溶媒系は典型的には、約20〜75重量%のアルコールを含有する。
【0030】
コロイダルシリカ分散液中の粒子は一般に粒径5〜150ナノメートルの範囲にある。シリカ分散液は当技術分野で周知の方法によって製造することができ、「Ludox」(Dupont社)及び「Nalcoag」(NALCO Chemical Co.)のような登録商標で市販されている。典型的には、望ましい安定性を有する分散液を得ると共に望ましい光学的特性を有する被覆を形成するために、粒度10〜30ナノメートルのコロイダルシリカが用いられる。
【0031】
分散液は典型的には、固形分10〜50重量%を含有しており、固形分は、コロイダルシリカ10〜70重量%及び部分縮合物30〜90重量%から実質的に成る。
【0032】
中間層組成物は、RSi(OCHのようなトリアルコキシシランをコロイダルシリカのヒドロゾルに加えて、酸の添加によってpHを所望の水準に調整することにより製造することができる。適当なトリアルコキシシランは、メトキシ、エトキシ、イソプロポキシ及びt−ブトキシの各置換基を含むものであり、これらの置換基は、加水分解を受けると対応するアルコールを遊離し、これにより、被覆組成物に存在するアルコールの少なくとも一部を生成する。酸性水性媒体中にシラノールが形成すると、ヒドロキシル置換基の縮合が生じて−Si−O−Si結合が形成する。縮合は完全ではなく、寧ろシロキサンはケイ素結合ヒドロキシル基を相当量で保持しており、これにより、ポリマーを水−アルコール溶媒に可溶にしている。この可溶性部分縮合物は、SiO−単位3当たり1以上のケイ素結合ヒドロキシル基を典型的に有するシロキサノールポリマーとして特徴付けすることができる。基材上での被覆の硬化中に、これらの残存ヒドロキシルが縮合して、シルセスキオキサンRSiO3/2を生ずる。
【0033】
中間層において望ましい特性を得ると共に中間層組成物の急速なゲル化を防ぐために、pHを3.0〜6.0にするのに十分な酸が典型的には存在する。但し、pHが6.0〜8.0の範囲にある組成物を用いてもよい。適当な酸には有機酸及び無機酸の両方が包含され、例えば塩酸、酢酸、クロロ酢酸、クエン酸、安息香酸、ジメチルマロン酸、ギ酸、グルタル酸、グリコール酸、マレイン酸、マロン酸、トルエンスルホン酸及びシュウ酸等がある。
【0034】
酸は、混合が速やかに行われることを条件として、シラン及びヒドロゾルの二つの成分を混合する前にシラン又はヒドロゾルのいずれに添加されてもよい。所望のpHを得るのに必要な酸の量は、シリカのアルカリ金属含有量に依存するが、通常は、組成物の1重量%未満である。シランのアルコキシ置換基の加水分解によってアルコールが生成する。例えば、1モルの−Si(OCの加水分解から3モルのエタノールが生成する。最終的な組成物に望ましい固形分百分率に応じて、追加のアルコール、水又は水混和性溶媒を加えてよい。中間層組成物は典型的には、十分に混合すると共に短時間で熟成させて、部分縮合物の形成を確保する。このようにして得られた中間層組成物は、透明であるか又は僅かに曇りのある低粘度流体であり、数日間安定である。
【0035】
中間層組成物は、流し塗り、吹き付け、刷毛塗り、ロール塗布、カーテン塗布及び浸漬塗布のような従来の方法によって固形基材に塗工して、連続表面を有するフィルムを形成することができる。典型的には、中間層の厚さは1〜15ミクロンであり、さらに典型的には3〜12ミクロン、さらに典型的には5〜10ミクロンである。この組成物は風乾して不粘着状態となるが、部分縮合物中の残留シラノールの縮合を行うために50〜150℃での加熱が必要な場合もある。この最終的な硬化によって、式RSiO3/2のシルセスキオキサンの形成が生ずる。本発明の実施形態と共に用いることのできる中間層組成物についての追加情報は、米国特許第4027073号、同第4419405号及び同第4914143号に開示されており、これらの特許を文献の援用によって本明細書に取り込む。
【0036】
図1に示すように、中間層の上に耐摩耗性層が典型的に塗工される。耐摩耗性層30は積層品の耐引掻性を向上させ、典型的には、ケイ素、水素、炭素及び酸素を含んでおり、一般にSiOと称するプラズマ重合有機ケイ素材料を含んでなる。典型的には、0.5<X<2.4、0.3<Y<1.0及び0.7<Z<4.0である。耐摩耗性層の厚さは典型的には0.5〜5.0ミクロンであり、さらに典型的には1.0〜4.0ミクロンであり、さらに典型的には2.0〜3.0ミクロンである。
【0037】
耐摩耗性層は典型的には、プラズマ物理気相堆積法によって塗工され、この方法では、公知の形式のプラズマ重合設備を用いて容量結合又は誘導結合を利用して系にエネルギを導入する。本発明の実施形態によれば、PECVDを用いて、10〜10ジュール/キログラム(J/Kg)のパワー密度を用いて有機ケイ素化合物及び過剰の酸素の重合反応及び酸化反応を開始する。パワー密度が相対的に高いと亀裂し易いフィルムが生成する場合がある一方、密度が相対的に低いと耐摩耗性の劣るフィルムが生成する場合がある。典型的には、酸素は、有機ケイ素化合物中でケイ素及び炭素のすべてを酸化させるのに化学量論的に見て必要な量を超えた量で存在する。
【0038】
パワー密度は、Wをプラズマのために発生に印加されるJ/秒で表した入力パワーとし、Fをmol/秒で表した反応体ガスの流量とし、MをKg/molで表した反応体の分子量としたときのW/FMの値である。ガスの混合物については、パワー密度はW/ΣFから算出することができ、式中、「i」は混合物中の第「i」のガス成分を示す。このパワー密度の範囲内で過剰の酸素を用いた実施によって、基材表面に単一の重合保護層を形成させて、この層を、実質的に亀裂せず、透明、無色、硬質で且つ基材表面に強力に接着したものとすることができる。
【0039】
このポリマーはさらに、下記の1以上の官能基、並びに捕捉された水を含む高度に橋架けしたポリマーであるものとして特徴付けされる。
【0040】
【化3】

【0041】
図3は、基材の表面上にプラズマ重合フィルムを形成するのに用いることのできる装置100の一例を示す。装置100は電源124を含んでおり、電源124は可変周波数電源を含んでいてよい。装置は反応容器102を含んでおり、有機ケイ素単量体供給源104、酸素供給源106及び不活性ガス供給源108からマスフローコントローラ103、105及び107をそれぞれ介して反応容器102中にガス状の反応体が導入される。所望に応じて、ガス及び蒸気を反応容器に導入する前に、図示の供給源からの異なるガス及び蒸気を混合器110で混合してもよい。反応容器102は、容器を排気する真空系130に接続されている。
【0042】
反応容器102には、一対の対向電極120及び121が設けられている。電極120及び121の間に、処理したい基材122が配置される。典型的には、電極120及び121は可変周波数電源124に接続されている一方、容器102は接地しており、基材122は電気的に浮動している。電極120及び121は、ガス供給線112から容器102の内部へガス反応体を撒布するための多数の流入孔を含むシャワーヘッド型電極であってよい。
【0043】
図4に示すように、各電極は、磁場を生成してプラズマの密度を増大させる一連の磁石144を含んでいてよい。各電極は典型的には、後方プレート140及び前方プレート142を含んでおり、前方プレート142は、容器102にガス反応体を導入するための孔146を含んでいてよい。磁石144は典型的には、各々の磁石144の各々の磁極が、同じ磁石の反対の磁極と共に磁場を生成するように構成される。このようにして、磁場成分が電極表面に対して平行になるように磁石を配列することができる。結果として、E×B力によって、電極の表面から放出された二次電子の閉じ込めが生じ、これにより、プラズマの密度及び一様性が増大する。得られるプラズマはまた、電極からさらに遠距離まで延在する。
【0044】
動作について述べると、耐摩耗性層を形成するには、先ず、ガス反応体を導入する前に真空ポンプ130で反応容器102を排気する。次に、アルゴンのような不活性ガスを所定の流量で容器102に導入する。次いで、プラズマを発生させて、そのまま安定化させる。プラズマが安定化した後に、酸素、及びテトラメチルジシロキサン(TMDSO)のような有機ケイ素を室内に導入する。耐摩耗性層は典型的には、過剰の酸素の存在下でパワーレベルを10〜10J/Kgとして中間層の上に直接堆積し、ケイ素、酸素、炭素及び水素を含むように重合し酸化した有機ケイ素材料を含んでなる。
【0045】
代替的には、耐摩耗性層を順次塗工される二つの副層に分けてもよい。最初の副層を堆積させるときには、先ず、アルゴンのような不活性ガスを所定の流量で容器102に導入する。次いで、プラズマを発生させて、そのまま安定化させる。プラズマが安定化した後に、TMDSOのような有機ケイ素を室内に導入する。典型的には、TMDSO対アルゴンの流量比は約2:1である。次いで、アルゴン及び有機ケイ素流を停止させる。
【0046】
第二の副層を堆積させるときには、先ず、酸素を所定の流量で室102中に導入する。次いで、プラズマを発生させて、そのまま安定化させる。プラズマが安定化した後に、TMDSOのような有機ケイ素を室内に導入する。第二の副層は典型的には、過剰の酸素の存在下でパワーレベルを10〜10J/Kgとして堆積し、ケイ素、酸素、炭素及び水素を含むように重合し酸化した有機ケイ素材料を含んでなる。典型的には、TMDSO対酸素の流量比は約1:1である。第二の副層の厚さは典型的には、第一の副層の厚さの1〜30倍である。例えば、第一の副層は厚さが0.05〜1.5ミクロンであってよく、第二の副層は厚さが0.5〜3.0ミクロンであってよい。
【0047】
代替的には、アルゴン流を次第に減少させながら酸素流を次第に増大させることにより、第一の副層から第二の副層への移行を達成することもできる。
【0048】
プラズマによって、反応体が重合し、基材122上にプラズマ重合フィルムを形成する。フィルム形成材料は典型的には、ガス形態にある。有機ケイ素単量体のようなガス状の反応体は、反応室に入る前に液体形態から気化させられる。
【0049】
典型的に用いられる有機ケイ素化合物は、1以上のケイ素原子が1以上の炭素原子に結合した有機化合物であり、例えばシラン、シロキサン及びシラザンを包含している。これらの有機ケイ素化合物は、個々に用いてもよいし、2種以上組み合わせて用いてもよい。シランの例には、ジメトキシジメチルシラン、メチルトリメトキシシラン、テトラメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、ジエトキシジメチルシラン、メチルトリエトキシシラン、オクタメチルシクロテトラシラン、トリエトキシビニルシラン、テトラエトキシシラン、ジメトキシメチルフェニルシラン、フェニルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、ジエトキシメチルフェニルシラン、トリス(2−メトキシエトキシ)ビニルシラン、フェニルトリエトキシシラン及びジメトキシジフェニルシラン等がある。
【0050】
シロキサンの例には、テトラメチルジシロキサン(TMDSO)、ヘキサメチルジシシロキサン(HMDSO)及びオクタメチルシクロテトラシロキサン(D4)等がある。シラザンの例には、ヘキサメチルジシラザン及びテトラメチルジシラザン等がある。
【0051】
基材10への中間層20の接着を強化するために、中間層20の形成の前に、図2に示すようなプライマー層15を基材10に塗工することができる。プライマー層15は、例えば熱硬化性材料を含んでいてもよいし又は熱可塑性材料を含んでいてもよい。典型的には、プライマー層は厚さが約0.2〜2.0ミクロンであり、さらに典型的には0.4〜1.2ミクロンであり、さらに典型的には0.6〜1.0ミクロンである。プライマー層はまた、UV吸収剤を含んでいてもよい。このことについては後述する。
【0052】
一実施形態によれば、プライマー層材料は、熱硬化性アクリルポリマーを含んでなる熱硬化性プライマーである。熱硬化性アクリルポリマーは、水、炭素原子数1〜4のヒドロキシエーテル又はアルカノール、及び1以上の紫外光吸収化合物(後述する)を共に含むエマルションの一部である。プライマーエマルション組成物は一般には、重量百分率で、熱硬化性アクリル固形分約1〜約10%、1以上の紫外光吸収化合物約1〜約10%、ヒドロキシエーテル又はアルカノール約20〜約40%及び水約40〜約78%を含んでいる。
【0053】
エマルションに用いることのできる熱硬化性アクリルポリマーは当技術分野で周知である。熱硬化性アクリルポリマーの例は、例えば、The Encyclopedia of Polymer Science and Technology、第1巻、Interscience Publishers、John Wiley&Sons,Inc.(1964年)の第273頁以降、及びChemistry of Organic Film Formers、D.H.Solomon著、John Wiley&Sons,Inc.(1977年)の第263頁以降、並びにこれらに引用されている参考文献に記載されている。これらの記載のすべてを文献の援用によって本明細書に取り込む。
【0054】
ヒドロキシエーテルは、下記の一般式によって表される。
【0055】
−O−R−OH
式中、Rは炭素原子数1〜約6のアルキル基又はアルコキシアルキル基であり、Rは炭素原子数1〜約6のアルキレン基であるが、R及びRに存在する炭素原子の数の合計が3〜約10であることを条件とする。炭素原子数1〜4のアルカノールには、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール及びtert−ブタノール等がある。
【0056】
本実施形態に従ってプライマー層を形成する場合には、プライマー組成物の水及びヒドロキシエーテル又はアルカノールの各成分の相当な部分が蒸発により除去されて、得られる熱硬化性アクリルポリマー及び紫外光吸収剤で構成される固形層が熱的に硬化して、紫外光吸収剤を含む熱硬化したアクリルプライマー層を形成する。熱硬化性プライマー材料についての追加記載が米国特許第4242381号に開示されており、この特許を文献の援用によって本明細書に取り込む。また、熱硬化性アクリルポリマーエマルション濃縮物も、例えばペンシルバニア州フィラデルフィアのRohm&Haas社から「Rhoplex」として市販されている。
【0057】
別の実施形態によれば、プライマー層は熱可塑性材料を含んでいてもよい。熱可塑性アクリルポリマーの例は、例えばEncyclopedia of Polymer Science and Technology、第1巻、Interscience Publishers、John Wiley&Sons,Inc.(1964年)の第246頁以降及びそこに引用されている参考文献に記載されている。これらの記載のすべてを文献の援用によって本明細書に取り込む。
【0058】
「熱可塑性アクリルポリマー」という用語は、1以上のアクリル酸エステル単量体及びメタクリル酸エステル単量体の重合によって得られる熱可塑性ポリマーを指す。これらの単量体は、下記の一般式によって表される。
【0059】
CH=CYCOOR
式中、YはH又はメチル基であり、Rはアルキル基であり、好ましくは炭素原子数1〜約20のアルキル基である。
【0060】
熱可塑性アクリルポリマーは一般には、熱可塑性アクリルポリマー及び揮発性溶媒を含むプライマー組成物からプライマーとして塗工される。揮発性溶媒は、性質としては有機系であっても無機系であってもよく、一般には実質的に不活性であり、すなわち被処理基材、例えばポリカーボネートに過度の悪影響を及ぼさないが熱可塑性アクリルポリマーを溶解させることは可能なものとする。一般には、プライマー用組成物での熱可塑性アクリルポリマーの濃度は、約0.5〜約25重量%であり、好ましくは約1〜約15重量%である。適当な溶媒の例としては、エチレングリコールジアセテート、ブトキシエタノール、エトキシエタノール、メトキシプロパノール及びジアセトンアルコール等、又はこれらの混合物がある。
【0061】
熱可塑性プライマー組成物の一様なフィルムは、浸漬塗布、吹き付け及びロール塗布等の任意の公知の方法によって基材、例えばポリカーボネートの表面に塗工される。形成したポリカーボネート部品がプライマー組成物で被覆された後に、揮発性溶媒が蒸発するまで被覆された物品を乾燥させることにより不活性揮発性溶媒を除去することができ、プライマー組成物を塗工したポリカーボネート表面に熱可塑性アクリルポリマーを含むプライマー被覆層を残す。追加の詳細は米国特許第4224378号に開示されており、この特許を文献の援用によって本明細書に取り込む。
【0062】
利用可能な他のプライマーには、B.F.Goodrich Companyによって製造されているものがある。例えば、Hycar237及びHycar256として公知の二つの熱硬化性アクリルエマルションの重量基準で50/50のブレンドを含んでなるアクリル材料を用いることができる。
【0063】
以上に述べたプライマー層15及び/又は中間層20に、様々なUV吸収剤を配合してよい。UV剤は、UV輻射線を吸収することにより、黄変として示される劣化から基材、例えばポリカーボネートを保護する。一実施形態によれば、UV吸収剤は、次式のシリル化ヒドロキシベンゾフェノンを含んでなる。
【0064】
【化4】

【0065】
式中、Xは、
【0066】
【化5】

【0067】
であり、
YはH又はOHであり、
ZはH、OH、OQ又はOWであり、
Qは−CH(CHSi(R(ORであり、
Wは−C2m+1であり、
上式中、Uは0、1又は2であり、Vは1、2又は3であり、U+V=3であり、Rは炭素原子数1〜6のアルキル又はアルカノイルであり、Rは炭素原子数1〜6のアルキルであり、好ましくはメチルであり、nは0、1又は2であり、m=1〜18である。
【0068】
プライマー層用の好ましいUV吸収剤は、2−エチルヘキシル−2−シアノ−3,3−ジフェニルシアノアクリレートであり、上式でYを水素、Zを水素、及びXを
【0069】
【化6】

【0070】
及びWをC17として記述されるものである。この化合物は、GAF CorporationからUvinul N−539(商標)として販売されている。
【0071】
紫外光吸収剤は、例えば、次式の化合物から開始して従来の方法によって製造してよい。
【0072】
【化7】

【0073】
式中、X、Y及びZは上で定義したとおりである。この方法では、上記の化合物1モルを、溶媒中で塩基1モル、例えばナトリウムメチラート1モルと反応させて、塩、例えばモノナトリウム塩を形成し、この塩が、式ClCH(CHSi(R(ORのハロゲン化アルコキシシラン又はアルカノイルオキシシランと反応する。
【0074】
前述のように、UV吸収剤のこの実施形態を、熱硬化性又は熱可塑性プライマー層15ばかりでなく中間層20に配合してもよい。シリル化ヒドロキシベンゾフェノンUV吸収剤の追加の詳細は米国特許第4419405号に開示されており、この特許を文献の援用によって本明細書に取り込む。
【0075】
本発明の別の実施形態によれば、UV吸収剤は、次式の1以上のポリベンゾイルレゾルシノールを含んでなる。
【0076】
【化8】

【0077】
式中、各々のAは独立に置換又は非置換の単環式又は多環式芳香族基であり、置換単環式又は多環式芳香族基は、水素、ハロゲン、アルコキシ基、C1−8アルキル基及びヒドロキシ基からなる群から選択される置換基を有しており、Rは水素、又は炭素原子数約10未満の線状若しくは枝分れ脂肪族鎖である。ポリベンゾイルレゾルシノールは典型的には、4,6−ジベンゾイルレゾルシノール、4,6−ジ(4′−t−ブチルベンゾイル)レゾルシノール、4,6−ジベンゾイル−2−プロピルレゾルシノール及び2,4,6−トリベンゾイルレゾルシノールである。
【0078】
UV吸収剤のこの実施形態は、前述のように、例えば熱硬化性プライマーエマルション組成物の一成分として熱硬化性プライマーに配合することができる。UV吸収剤はまた、熱可塑性プライマー又は前述の中間層に配合することもできる。追加の詳細は米国特許第5869185号に開示されており、この特許を文献の援用によって本明細書に取り込む。
【実施例】
【0079】
以下の実施例は、本発明の様々な実施形態の特徴及び長所をさらに詳細に説明する。
【0080】
実施例1
ポリカーボネートを含んでなる自動車用プライバシーグレードの後部ウィンドウに、アクリル系プライマー層を塗工した。アクリル材料は、B.F.Goodrich Companyによって供給されたHycar237及びHycar256の二つの熱硬化性エマルションの重量基準で50/50のブレンドとした。エマルションを2−エチルヘキシル−2−シアノ−3,3−ジフェニルシアノアクリレート(GAF Corp.から販売されているUvinul N−539(商標)として公知のUV吸収剤)、クエン酸及びブトキシエタノール水溶液と併せて、2−ブトキシエタノール25重量%/水75重量%中で固形分がアクリルポリマー2.56重量%、2−エチルヘキシル−2−シアノ−3,3−ジフェニルシアノアクリレート1.44重量%及びクエン酸0.025重量%からなるようにした。
【0081】
このプライマーをポリカーボネート基材に塗工して、20〜30分間風乾した。風乾に続いて、プライマーを129℃(265°F)で60分間熱硬化させた。厚さは0.5〜1.0ミクロンであった。
【0082】
冷却の後に、中間層を塗工した。中間層は、前記及び米国特許第4419405号に記載されているシリル化ヒドロキシベンゾフェノン紫外光吸収剤約10重量%、並びにメチルトリメトキシシランの加水分解生成物の部分縮合物の脂肪族アルコール−水溶液にコロイダルシリカを分散させた分散液を含んでいた。分散液は、固形分25重量%を含んでおり、pHが約7.5であった。
【0083】
溶媒の爆発限界に到らないように僅かな空気流を保持しながら、被覆部品を約30分間風乾させた。風乾に続いて、中間層を約130℃で1時間硬化させた。硬化した中間層の厚さは4〜10ミクロンであった。フロリダにおいて、1年間にわたって水平位から5°傾けて屋外曝露を行った後には、接着性損失はなかったが、微小亀裂が生じた。接着性は、ASTM D3359−92a、試験方法Bによって指定されたクロスカットテープ試験で測定した。
【0084】
実施例2
第二の後部ウィンドウを製造した。第二の後部ウィンドウは実施例1のウィンドウと同じであったが、前述のような二つの副層を含んでなる耐摩耗性層でさらに被覆した点が異なる。耐摩耗性層は、テトラメチルジシロキサン(TMDSO)のプラズマ重合によって塗工された。プラズマ重合は、図3に示したPECVD装置で行われた。第一の副層については、試薬はTMDSO及びアルゴンであり、流量比を2:1(TMDSO:アルゴン)とした。パワー密度は7×10J/Kgであった。圧力は3ミリトルであり、持続時間は3分間であった。第二の副層については、試薬はTMDSO及び酸素であり、流量比を1:1(TMDSO:酸素)とした。パワー密度は7×10J/Kgであった。圧力は3ミリトルであり、持続時間は73分間であった。二つの副層の合計厚さは約2.5ミクロンであった。
【0085】
フロリダにおいて、1年間にわたって水平位から5°傾けて屋外曝露を行った後には、サンプルはASTM D3359−92a接着性試験に合格し、また微小亀裂もなかった。
【0086】
実施例3
実施例1と同じポリカーボネート/プライマー/中間層のサンプルを製造したが、中間層のpHが5であった点が異なる。サンプルをASTM G26に従ってAtlas Xenon Arc Weatherometerで6875kJ/mの輻射線に曝露した。ASTM G26は、光への連続的曝露及び水噴射への間歇的曝露を指定している。サイクルは、102分間の光の後に、18分の光及び水噴射の1サイクルとした。6875KJ/Mの曝露の後に、サンプルはASTM D3359−92a接着性試験に合格したが、極端な微小亀裂を呈していた。
【0087】
実施例4
実施例3と同じサンプルを製造したが、前述のような二つの副層を含んでなる耐摩耗性層でさらに被覆した点が異なる。耐摩耗性層は、テトラメチルジシロキサン(TMDSO)のプラズマ重合によって塗工された。プラズマ重合は、図3に示したPECVD装置で行われた。第一の副層については、試薬はTMDSO及びアルゴンであり、流量比を2:1(TMDSO:アルゴン)とした。パワー密度は7×10J/Kgであった。圧力は3ミリトルであり、持続時間は約3分間であった。第二の副層については、試薬はTMDSO及び酸素であり、流量比を1:1(TMDSO:酸素)とした。パワー密度は7×10J/Kgであった。圧力は3ミリトルであり、持続時間は約27分間であった。二つの副層の合計厚さは約1ミクロンであった。
【0088】
サンプルをASTM G26に従ってAtlas Xenon Arc Weatherometerで6875kJ/mの輻射線に曝露した。サンプルはASTM D3359−92a接着性試験に合格し、微小亀裂を全く呈さなかった。
【0089】
実施例5
実施例4と同じサンプルを製造したが、耐摩耗性層の厚さが4ミクロンであった点が異なる。サンプルをASTM G26に従ってAtlas XenonArc Weatherometerで6875kJ/mの輻射線に曝露した。サンプルはASTM D3359−92a接着性試験に合格し、微小亀裂を全く呈さなかった。
【0090】
これらの実施例から、開示した中間層及び耐摩耗性層の組み合わせには驚くべき微小亀裂耐性があり、自然又は模擬的な屋外曝露を受けた後にも良好な接着性を有していることが実証される。
【0091】
本発明の他の実施形態は、本明細書の考察又は本書に開示した本発明の実施から当業者には明らかとなろう。これらの明細又は実施例は例示のためのみのものと考えて、本発明の真の範囲及び要旨は特許請求の範囲によって定義されるものとする。
【符号の説明】
【0092】
10 基材
15 プライマー層
20 中間層
30 耐摩耗性層
100 プラズマ重合フィルム形成用装置
102 反応容器
103、105、107 マスフローコントローラ
104 有機ケイ素単量体供給源
106 酸素供給源
108 不活性ガス供給源
110 混合器
112 ガス供給線
120、121 電極
122 基材
140 後方プレート
142 前方プレート
144 磁石
146 孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材(10)と、
式RSi(OR′)のジオルガノジオルガノオキシシラン、式RSi(OR′)のオルガノトリオルガノオキシシラン又は両者の部分縮合物を含んでなる第一の層(20)(式中、Rは独立に炭素原子数約1〜3のアルキル基、炭素原子数約6〜13の芳香族基、ビニル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基、γ−グリシドキシプロピル基及びγ−メタクリロキシプロピル基からなる群から選択され、R′は独立に炭素原子数約1〜8のアルキル基、炭素原子数約6〜20の芳香族基及び水素からなる群から選択される。)と、
プラズマ重合有機ケイ素を含んでなる第二の層(30)であって、過剰の酸素の存在下で10〜10J/Kgのパワーレベルで堆積した第二の層(30)とを含んでなる多層品。
【請求項2】
基材(10)と、
式RSi(OR′)のジオルガノジオルガノオキシシラン、式RSi(OR′)のオルガノトリオルガノオキシシラン又は両者の部分縮合物を含んでなる第一の層(20)(式中、Rは独立に炭素原子数約1〜3のアルキル基、炭素原子数約6〜13の芳香族基、ビニル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基、γ−グリシドキシプロピル基及びγ−メタクリロキシプロピル基からなる群から選択され、R′は独立に炭素原子数約1〜8のアルキル基、炭素原子数約6〜20の芳香族基及び水素からなる群から選択される。)と、
プラズマ重合有機ケイ素を含んでなる第二の層(30)と
を含んでなる多層品であって、当該多層品がキセノンアークウェザロメータ中ASTM G26サイクルで6875kJ/mの輻射線照射後に実質的に微小亀裂のない状態に留まる多層品。
【請求項3】
基材(10)と、
式RSi(OR′)のジオルガノジオルガノオキシシラン、式RSi(OR′)のオルガノトリオルガノオキシシラン又は両者の部分縮合物を含んでなる第一の層(20)(式中、Rは独立に炭素原子数約1〜3のアルキル基、炭素原子数約6〜13の芳香族基、ビニル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基、γ−グリシドキシプロピル基及びγ−メタクリロキシプロピル基からなる群から選択され、R′は独立に炭素原子数約1〜8のアルキル基、炭素原子数約6〜20の芳香族基及び水素からなる群から選択される。)と、
該第一の層の上に堆積した第二の層(30)であって、プラズマ中で重合及び酸化した有機ケイ素材料を含んでなり、ケイ素、酸素、炭素及び水素を含む第二の層(30)とを含んでなる多層品。
【請求項4】
前記ジオルガノジオルガノオキシシラン又は前記オルガノトリオルガノオキシシランがそれぞれ式RSi(OH)又はRSi(OH)のシラノールを含む(式中、Rは炭素原子数1〜3のアルキル基、ビニル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基、γ−グリシドキシプロピル基及びγ−メタクリロキシプロピル基からなる群から選択される。)、請求項3記載の多層品。
【請求項5】
前記第一の層(20)がコロイダルシリカをさらに含んでなる、請求項4記載の多層品。
【請求項6】
前記コロイダルシリカが粒径10〜30ナノメートルの粒子を含んでなる、請求項5記載の多層品。
【請求項7】
前記シラノールの70重量%以上がCHSi(OH)及び(CHSi(OH)を含んでなる、請求項5記載の多層品。
【請求項8】
前記第一の層(20)が前記コロイダルシリカを10〜70重量%及び前記部分縮合物を30〜90重量%含む、請求項5記載の多層品。
【請求項9】
前記第一の層(20)が紫外線吸収剤をさらに含んでなる、請求項5記載の多層品。
【請求項10】
前記紫外線吸収剤がシリル化ヒドロキシベンゾフェノンを含んでなる、請求項9記載の多層品。
【請求項11】
前記紫外線吸収剤が1以上のポリベンゾイルレゾルシノールを含んでなる、請求項9記載の多層品。
【請求項12】
前記第一の層(20)が、流し塗り、吹き付け、浸漬塗布、刷毛塗り、ロール塗布及びカーテン塗布の1以上により塗工される、請求項5記載の多層品。
【請求項13】
前記第二の層(30)が、有機ケイ素単量体のプラズマ化学気相堆積法により形成される、請求項5記載の多層品。
【請求項14】
前記有機ケイ素単量体が、テトラメチルジシロキサン、ヘキサメチルジシロキサン及びオクタメチルシクロテトラシロキサンの1以上を含んでなる、請求項13記載の多層品。
【請求項15】
前記第二の層(30)がプラズマ重合し酸化した式SiOの有機ケイ素材料を含む(式中、0.5<X<2.4、0.3<Y<1.0及び0.7<Z<4.0である。)、請求項3記載の多層品。
【請求項16】
前記第二の層(30)がプラズマ化学気相堆積法により塗工される、請求項3記載の多層品。
【請求項17】
前記第二の層(30)が、過剰の酸素の存在下で10〜10J/Kgのパワーレベルで堆積する、請求項16記載の多層品。
【請求項18】
当該多層品がキセノンアークウェザロメータ中ASTM G26サイクルで6875kJ/mの輻射線照射後に実質的に微小亀裂のない状態に留まる、請求項16記載の多層品。
【請求項19】
前記基材(10)と前記第一の層(20)との間にプライマー層(15)をさらに含んでなる請求項5記載の多層品。
【請求項20】
前記プライマー層(15)が熱可塑性アクリルを含んでなる、請求項19記載の多層品。
【請求項21】
前記プライマー層(15)が熱硬化性アクリルを含んでなる、請求項19記載の多層品。
【請求項22】
前記プライマー層(15)が紫外線吸収剤を含む、請求項19記載の多層品。
【請求項23】
前記第一の層(20)の厚さが1〜15ミクロンである、請求項5記載の多層品。
【請求項24】
前記第一の層(20)の厚さが5〜10ミクロンである、請求項5記載の多層品。
【請求項25】
前記第二の層(30)の厚さが0.5〜5.0ミクロンである、請求項5記載の多層品。
【請求項26】
前記第二の層(30)の厚さが2.0〜3.0ミクロンである、請求項5記載の多層品。
【請求項27】
前記プライマー層(15)の厚さが0.2〜2.0ミクロンである、請求項19記載の多層品。
【請求項28】
前記プライマー層(15)の厚さが0.6〜1.0ミクロンである、請求項19記載の多層品。
【請求項29】
多層品を形成する方法であって、
式RSi(OR′)のジオルガノジオルガノオキシシラン、式RSi(OR′)のオルガノトリオルガノオキシシラン又は両者の部分縮合物を含んでなる第一の層(20)を基材(10)に塗工する工程(式中、Rは独立に炭素原子数約1〜3のアルキル基、炭素原子数約6〜13の芳香族基、ビニル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基、γ−グリシドキシプロピル基及びγ−メタクリロキシプロピル基からなる群から選択され、R′は独立に炭素原子数約1〜8のアルキル基、炭素原子数約6〜20の芳香族基及び水素からなる群から選択される。)と、
第一の層の上に、過剰の酸素中で有機ケイ素材料をプラズマ重合させることにより第二の層(30)を塗工する工程と
を含んでなる方法。
【請求項30】
前記有機ケイ素材料が、10〜10J/Kgのパワーレベルでプラズマ重合する、請求項29記載の方法。
【請求項31】
前記第二の層(30)がプラズマ化学気相堆積法により塗工される、請求項29記載の方法。
【請求項32】
前記第二の層(30)が式SiOのプラズマ重合し酸化した有機ケイ素材料を含んでなる(式中、0.5<X<2.4、0.3<Y<1.0及び0.7<Z<4.0である。)、請求項29記載の方法。
【請求項33】
前記第一の層(20)がコロイダルシリカをさらに含んでなる、請求項29記載の方法。
【請求項34】
前記第一の層(20)が、流し塗り、吹き付け、浸漬塗布、刷毛塗り、ロール塗布及びカーテン塗布の1以上により塗工される、請求項29記載の方法。
【請求項35】
前記第一の層(20)を硬化させる工程をさらに含んでなる請求項29記載の方法。
【請求項36】
前記多層品がキセノンアークウェザロメータ中ASTM G26サイクルで6875kJ/mの輻射線照射後に実質的に微小亀裂のない状態に留まる、請求項29記載の方法。
【請求項37】
前記基材と前記第一の層との間にプライマー層(15)を塗工する工程をさらに含んでなる請求項29記載の方法。
【請求項38】
前記プライマー層(15)が熱可塑性アクリル材料を含んでなる、請求項37記載の方法。
【請求項39】
前記プライマー層(15)が熱硬化性アクリル材料を含んでなる、請求項37記載の方法。
【請求項40】
多層品の形成方法であって、
式RSi(OR′)のジオルガノジオルガノオキシシラン、式RSi(OR′)のオルガノトリオルガノオキシシラン又は両者の部分縮合物を含んでなる第一の層(20)を基材(10)に塗工する工程(式中、Rは独立に炭素原子数約1〜3のアルキル基、炭素原子数約6〜13の芳香族基、ビニル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基、γ−グリシドキシプロピル基及びγ−メタクリロキシプロピル基からなる群から選択され、R′は独立に炭素原子数約1〜8のアルキル基、炭素原子数約6〜20の芳香族基及び水素からなる群から選択される。)と、
前記第一の層の上に第二の層(30)を塗工する工程であって、当該第二の層が酸素なしで有機ケイ素材料をプラズマ重合させて形成した第一の副層と酸素存在下で有機ケイ素材料をプラズマ重合させて形成した第二の副層と
を含む工程とを含んでなる方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−232591(P2012−232591A)
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−149041(P2012−149041)
【出願日】平成24年7月3日(2012.7.3)
【分割の表示】特願2001−542728(P2001−542728)の分割
【原出願日】平成12年11月15日(2000.11.15)
【出願人】(309001610)サビック イノベーティブ プラスチックス イーペー ベスローテン フェンノートシャップ (16)
【Fターム(参考)】