説明

微小検体固定装置および微小検体の固定方法

【課題】 微小検体を基台に移す際、静電気による吸着力、原子間力または分子間力等に打ち克って確実に基台上に固定する。
【解決手段】 上面11が親水性を有する基台10上に、開口部31を有する撥水膜30を形成する。加熱冷却ステージ20を冷却モードにして基台30を冷却すると開口部31内に水滴110が結露する。微小検体112を水滴110の近傍に移動すると、メニスカス力により微小検体112が水滴110に取り込まれる。この後は、加熱冷却ステージ20を加熱モードに切り換え、水滴110を揮発させると、水滴110の凝集力により微小検体112が基台1上に固定される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、微小検体固定装置および微小検体の固定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
新機能デバイス、細胞や血球などのバイオ材料の研究開発においては、試作したプロトタイプのデバイスの材料、物性、構造あるいは組成等を評価して改善、改良を繰り返す必要がある。また、半導体デバイス等の製造工程において、半導体デバイスに付着するパーティクル等の微細な異物の材料等を分析して、不良対策を講じることも極めて重要である。このような評価、分析を行う目的で電子顕微鏡等の分析装置が活用される。
【0003】
基台上に異物を固定する方法として、液体材料を充填したガラス製ピペットを異物が付着した半導体ウエハに接触させ、ピペットの後方から窒素等でガスインパクトをかけ、基台上に押し出された液体材料で異物を固定する方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
しかし、半導体ウエハの状態のまま、異物を評価あるいは分析するのは、取り扱いが難しい。そこで、微小検体を半導体ウエハから別の基台に移して固定する方法が検討されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10−307088号公報(図3(a)〜(c))
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
通常、微小検体を基台等に移すには、一般に、ナノピンセットといわれる微小ピンセットを用いる方法が知られている。しかし、このナノピンセットにより微小検体を基台に移す際、ナノピンセットと微小検体間に生じる静電気による吸着力、原子間力または分子間力等により微小検体がナノピンセットから離間せず、基台に移すことが困難であり、また、静電気によって微小検体が飛ばされて紛失しやすい、という課題が生じた。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の微小検体固定装置は、表面の少なくとも一部に親水面を有する基台と、基台上に設けられ、基台の親水面の少なくとも一部を外部に露出する開口部を有する撥水膜と、基台を冷却または加熱する加熱冷却ステージと、加熱冷却ステージを、基台を冷却する冷却モードと基台を加熱する加熱モードに切り換える制御部と、を具備することを特徴とする。
【0008】
本発明の微小検体の固定方法は、表面の少なくとも一部に親水面を有する基台、基台上に設けられ、基台の親水面の少なくとも一部を外部に露出する開口部を有する撥水膜、基台を冷却または加熱する加熱冷却ステージ、および加熱冷却ステージを、基台を冷却する冷却モードと基台を加熱する加熱モードに切り換える制御部を有する微小検体固定装置を準備する工程と、制御部により加熱冷却ステージを冷却モードに設定し、基台を冷却して開口部内の親水面上に水滴を結露する工程と、微小検体を結露した水滴に接触し、メニスカス力により水滴内に取り込む工程と、制御部により加熱冷却ステージを加熱モードに切り換え、基台を加熱して水滴を揮発し、水滴が揮発する際の凝集力により検体を基台の上面に固定する工程と、を具備することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
この発明によれば、微小検体を水滴のメニスカス力により基台上に移すので、微小検体を基台に移す際、静電気による吸着力、原子間力または分子間力等に打ち克って確実に基台上に固定することが可能になるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】この発明の微小検体装置の実施形態1を示す拡大斜視図。
【図2】図1に図示された微小検体を上方からみた平面図。
【図3】図1に図示された微小検体装置の結露前の状態を説明するための平面図。
【図4】図3の同じ部分に水滴が結露した状態を説明するための平面図。
【図5】基台上面の親水面上に検体が固定される様子を説明するための拡大断面図であり、水滴が結露する前の状態を示す。
【図6】図5に続く状態の変化を示し、水滴が結露した状態の拡大断面図。
【図7】図6に続く状態の変化を示し、検体を水滴の近傍に移動した状態を示す拡大断面図。
【図8】図7に続く状態の変化を示し、検体がメニスカス力により水滴中に取り込まれる状態の拡大断面図。
【図9】図8に続く状態の変化を示し、検体が、水滴が揮発した後の凝集力により基台上面に固定された状態の拡大断面図。
【図10】水滴の結露を検出する結露検出回路を示す。
【図11】この発明の実施形態2を示す拡大平面図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(実施形態1)
以下、この発明の微小検体固定装置の実施形態の一例について、図1、図2を参照して説明する。
微小検体固定装置100は、擦りガラス等の板状部材からなる基台10と、基台10の底面に接触して配置された加熱冷却ステージ20と、基台10の上面に形成された撥水膜30とを備える。
【0012】
基台10は、上面11全体が親水性を有している。擦りガラスはその表面が親水性を有しているが、親水性を有していない板状部材の表面に親水膜を形成しても良い。ガラス面に親水膜を形成する方法は種々知られているが、例えば、ガラス面上に酸化錫等の金属酸化物粒子群を形成する方法がある。
【0013】
親水性を有する基台10の上面11の一領域(図1の二点鎖線で囲まれた領域)には、結露検出部50が形成されている。
結露検出部50を含む基台10の上面11上全体は撥水膜30で覆われている。
撥水膜10には平面視で円形の多数の第1の開口部31が形成されており、該第1の開口部31に対応する上面11、すなわち、親水面が露出されている。
ガラス面に撥水膜を形成する方法は、種々、知られているが、例えば、金属酸化物微粒子およびシラン化合物等を含む処理液中に浸漬した後、水、エタノール等で表面を洗浄する方法がある。
【0014】
結露検出部50は、櫛歯型の一方の電極51aと他方の電極51bとの一対の電極からなる結露検出用電極51を含む結露回路部を有し、また、4個の端子91〜94を有している。一方の電極51aと他方の電極51bは、図3に拡大して図示される如く、各櫛歯の歯の部分が、交互に相手方の歯と歯の間の位置するように配置され、且つ、各歯の一部が重なるように相互に組み合わされている。
【0015】
結露検出用電極51は、撥水膜30に形成された、平面視で円形の第2の開口部(別の開口部)32により外部に露出されている。
結露検出部50の2個の端子91および93は、リード線95、96によりDC電源60に接続され、残りの2個の端子92および94は、リード線97、98により制御部70に接続されている。
制御部70は、加熱冷却ステージ20を加熱モードと冷却モードに切り換える切替素子を含むドライブ回路を有しており、リード21、22により加熱冷却ステージ20に接続されている。
【0016】
加熱冷却ステージ20は、例えば、ペルチェ素子等からなるものであり、PN接合部に電流を流すことによりN→P接合部分で生じる吸熱現象により基台10を冷却し、P→N接合部分で生じる放熱現象により基台10を加熱する。加熱と冷却の切り換えは、制御部70のドライブ回路により電流の向きを変更することにより行われる。
また、制御部70は、接続線71により結露表示部80に接続されている。
結露表示部80は、結露状態が検出された際に、制御部70からの信号により結露状態になったことを表示するものである。
【0017】
結露検出部50は、第2の開口部32から外部に露出された結露検出用電極51の他、三個の容量検出用電極52、53、54を有する。各容量検出用電極52、53、54は、結露検出用電極51と同様に、それぞれ、櫛歯型の一方の電極および他方の電極からなる一対の電極を有しており、結露検出用電極51および容量検出用電極52、53、54は、図10に図示されたブリッジ回路を構成する。
【0018】
この微小検体固定装置100は、加熱冷却ステージ20により基台10を冷却することにより、撥水膜30の第1の開口部31および第2の開口部32から露出された基台10の上面11に水滴を結露させることができる。そして、第2の開口部32に水滴が結露されたことを結露検出部50により検出し、第1の開口部31内に微小検体をメニスカス力により取り込み、この後、水滴が揮発することにより、水滴の凝集力で第1の開口部31内に取り込んだ微小検体を基台10上に固定する。
以下、本発明の微小検体固定装置の各部の構成および作用と、その微小検体固定装置を用いた固定方法に関して詳述する。
【0019】
図5〜図8は、本発明の微小検体の固定方法を説明するための、図1におけるV―V線拡大断面図である。
図5は、撥水膜30の第1の開口部31から基台10の親水面である上面11が外部に露出された状態を示す。
図5の状態において、制御部70より、加熱冷却ステージ20に吸熱作用を生じさせる電流を流し、基台10を冷却すると、空気中の水蒸気が、基台10の第1の開口部31から露出された基台10の上面11に水滴110として付着する。
この場合、水滴110は、図4に図示される如く、第2の開口部32内にも形成されるが、撥水膜30で覆われている領域には生じない。
撥水膜30の第2の開口部32内に水滴110が結露されたことは、結露検出部50で検出され、結露表示部80にて表示されるため、作業者は結露発生時を確認することができる。結露検出部50による結露検出動作については後述する。
【0020】
撥水膜30の第1の開口部31内に水滴110が結露されたら(図6参照)、電子顕微鏡等の評価装置により評価あるいは分析する微小検体112を、例えば、ナノピンセット115と言われる微小なピンセットにより把持して、水滴110の近傍に近づける(図7参照)。
【0021】
ナノピンセット115は、一対のアーム116、117を有し、また、図示はしないが、各アーム116、117を駆動するための一組の静電アクチュエータを有する。各静電アクチュエータは、一面に櫛歯を有する固定電極、および固定電極対向側に櫛歯を有する可動電極を有する。各可動電極は、それぞれ、アーム116または117に連結されており、可動電極および固定電極間に電圧を印加することにより、静電気により、可動電極が移動しアーム116、117を開閉する。このように、アーム116および117を開閉することにより微小検体112を把持することができる。
【0022】
そして、微小検体112と水滴110との離間距離がある程度接近するか、あるいは微小検体112が水滴110にかすかに接触すると、図8に図示される如く、水滴110が微小検体112に飛びつき架橋ができる。つまり、メニスカス(液体架橋)が生じる。
このメニスカス力は、微小検体112とナノピンセット115のアーム116、117との間に作用する静電気による吸着力、あるいは原子間力や分子間力よりも大きい。このため、ナノピンセット115のアクチュエータへの電流供給を絶って可動レバー117を開くと、微小検体112は水滴110中に取り込まれる。
【0023】
このように、微小検体112が水滴110中に取り込まれたら、制御部70から加熱冷却ステージ20に冷却時とは逆方向に電流を流し、加熱冷却ステージ20が放熱作用を生じるようにする。
この加熱冷却ステージ20の放熱作用により基台10が加熱され、水滴110が揮発する。水滴が揮発することにより、微小検体112と基台10の上面11との間に凝集力が作用し、微小検体112は、基台10の上面11に固定される。
このような状態とした後、微小検体112が固定された基台10を電子顕微鏡等の評価または分析用装置のステージに取り付けて所望の作業を行う。
【0024】
上述した如く、本発明の微小検体の固定装置によれば、微小検体112を水滴110のメニスカス力により取り込むので、微小検体112とナノピンセット115等の把持具との間に静電気による吸着力、あるいは原子間力や分子間力が作用しても確実に把持具から引き離すことが可能である。また、水滴110中に微小検体112を取り込んだ後、水滴110を揮発して、微小検体112を水滴110の凝集力により基台10に固定するので、微小検体112を何ら損傷することなく固定することが可能である。
また、微小検体112を取り込むための第1の開口部31を、基台10上に多数個形成するので、1つの基台10上に多数の微小検体112を固定することができ、評価や分析を能率的に行うことができるとともに、試料の保管も容易となる。
【0025】
次に、水滴110が結露したことを検出する結露検出部50の回路動作について説明する。
図10は、図2に図示された、結露検出用電極51および三個の容量検出用電極52、53、54を含む結露検出回路図である。
図10の容量式ブリッジ回路において、容量、電流および電流の向き、直流電源電圧Eを図示の通りとする。図10におけるノードA、B、C、Dは、それぞれ、図2の端子93、94、91、92に接続される。
【0026】
図10において、ADBAの閉ループより(式1)が成立する。
【数1】


BDCBの閉ループより(式2)が成立する。
【数2】


EADCEの閉ループより(式3)が成立する。
【数3】

【0027】
また、B点を流れる電流より(式4)が成立する。
1=I2+I5 ・・・・ (式4)
また、D点を流れる電流より(式5)が成立する。
4+I5=I3 ・・・・ (式5)
【0028】
上記(式1)〜(式5)より下記(式6)が得られる。
【数4】

【0029】
ここで、I5の時間変位は一定であるため、単位時間の積分値は(式7)となる。
【数5】



また、電流計の抵抗をRとすると(式8)が成立する。
5=I5R ・・・・ (式8)
【0030】
(式7)および(式8)を(式6)に代入すると(式9)が得られる。
【数6】

【0031】
よって、次の(式10)を満たすとき、(式9)の右辺が0となり、BD間に電流が流れない平衡状態となる。
また、(式10)を満たさないときはBD間に電流が流れる。
13=C24 ・・・・ (式10)
【0032】
そこで、容量検出用電極52、53、54および水滴が結露しない状態の結露検出用電極51から得られる容量を(式10)を満たすように形成しておく。例えば、図3に図示されているように結露検出用電極51の一方の電極51aと他方の電極51b間に水滴110が付着しない状態において結露検出用電極51から得られる容量C4と、他の三個の容量検出用電極52、53、54から得られる容量C1、C2、C3が(式10)を満たすようにしておく。
【0033】
例えば、図3に図示されている水滴110が結露する前の容量は、ガラス基板の比誘電率5.5〜9.9程度の影響を受け、ほぼ2PF程度となる。三個の容量検出用電極52、53、54から得られる容量C1、C2、C3も上記と同じ2PFにしておく。
このような状態では、(式10)が満足されるので、DB間には電流I5は流れず、電流は検出されない。
ここで、結露検出用電極51上に水滴110が付着すると、図4に図示される如く、結露検出用電極51の一方の電極51aと他方の電極51b間には水滴110が介在され、結露検出用電極51における容量C4が増大し、(式10)が満足されなくなる。結露後の結露検出用電極51から得られる容量C4は、例えば、25PF程度となり、結露前の2PF程度から大きく変化する。このため、BD間には(式9)に示す電流I5が流れる。
このBD間に流れる電流I5を検出し、制御部70から結露表示部80に表示制御信号を供給し、結露表示部80にて水滴110が結露したことが表示される。
【0034】
(実施形態2)
実施形態1では、微小検体112を固定する固定領域と、結露検出用電極51を含む結露検出部50が形成される領域とは、同一の基台10上に形成されている。
これに対し、図11に図示される本発明の実施形態2では、微小検体を固定する固定領域と、結露検出用電極を含む結露検出部が形成される領域とは異なる基台に形成するようにしたものである。
以下、本発明の微小検体固定装置の実施形態2について説明する。但し、実施形態1と同一の部材には、同一の図面参照番号を付して、その説明を省略する。
【0035】
図11に示す実施形態2の微小検体固定装置200おいて、第1の基台10a上に、基台10aと同一平面サイズの第1の撥水膜30aが形成されている。第1の基台10aの上面は、実施形態1と同様に親水性を有している。また、第1の撥水膜30aには、第1の基台10aの親水面である上面11を露出する多数の第1の開口部31が形成されている。
【0036】
第2の基台10bの上面は、実施形態1と同様に親水性を有し、親水性を有する上面上に、実施形態1と同様に結露検出部50が形成されている。結露検出部50は、結露検出用電極51と、三個の容量検出用電極52、53、54を有する。また、第2の基台10b上に、第2の基台10bと同一平面サイズの第2の撥水膜30bが形成されている。第2の撥水膜30bには、結露検出用電極51を外部に露出する第2の開口部32が形成されている。三個の容量検出用電極52、53、54は、第2の撥水膜30bによって覆われている。
【0037】
第1の基台10aおよび第2の基台10bは、加熱冷却ステージ20に密着して支持されている。このような、微小検体固定装置200によれば、第1の実施形態1の場合と同様の作用、効果を奏することができる。
【0038】
加えて、実施形態2においては、微小検体を固定する領域が形成された第1の基台10aと結露検出部50が形成された第2の基台10bが分離しているので、第1の基台10aに微小検体を固定した後、この微小検体が固定された第1の基台10aのみを観察または分析するために取り外し、微小検体が未固定の別の第1基台10aを加熱冷却ステージ20上に取り付けて、水滴の結露工程〜微小検体の固定工程を行うことができ、作業の能率化および装置の低コスト化が可能となる。
【0039】
上記実施形態を以下のように変形して実施することができる。
(1)基台10を加熱冷却ステージ20上に搭載する場合で説明した。しかし、加熱して水滴110を揮発するのは、例えば、赤外線等の熱線にて行うことも可能であり、この場合には、基台10と加熱手段とを密着して配置する必要はない。
また、時間的余裕がある場合には、加熱手段を用いることなく揮発させることも可能である。
【0040】
(2)基台10上に、結露検出部50を設けて、水滴の結露発生を検出する場合で説明したが、結露発生を目視で確認することとすれば、結露検出部50を設ける必要がなくなる。
(3)結露検出機能を有するものとする場合でも、基台10または10b上には、結露検出用電極51のみを設け、三個の容量検出用電極52、53、54は別の部材に形成するようにしてもよい。
【0041】
(4)微小検体112を水滴110の近傍に移動する把持具としてナノピンセットを用いる場合で説明したが、静電気が帯電した把持具よって微小検体112を吸着して水滴の近傍に移動するようにしてもよい。例えば、布や皮革で擦ったガラス棒は+に帯電し、エボナイトは−に帯電するので、微小検体をこの静電気で吸着することができる。
【0042】
(5)基台10、10a、10bの上面11上の全面に親水性を持たせる必要はなく、第1の開口部31、第2の開口部32から露出される領域のみ親水性を持たせるようにしてもよい。
(6)結露検出用電極51、容量検出用電極52、53、54上にも親水性を持たせるようにしても良い。
【0043】
その他、本発明の微小検体固定装置は、発明の趣旨の範囲内において、種々、変形して構成することが可能であり、要は、表面の少なくとも一部に親水面を有する基台と、基台上に設けられ、基台の親水面の少なくとも一部を外部に露出する開口部を有する撥水膜と、基台を冷却または加熱する加熱冷却ステージと、加熱冷却ステージを、基台を冷却する冷却モードと基台を加熱する加熱モードに切り換える制御部と、を具備するものであればよい。
【0044】
また、本発明の、微小検体の固定方法は、表面の少なくとも一部に親水面を有する基台、基台上に設けられ、基台の親水面の少なくとも一部を外部に露出する開口部を有する撥水膜、基台を冷却または加熱する加熱冷却ステージ、および加熱冷却ステージを、基台を冷却する冷却モードと基台を加熱する加熱モードに切り換える制御部を有する微小検体固定装置を準備する工程と、制御部により加熱冷却ステージを冷却モードに設定し、基台を冷却して開口部内の親水面上に水滴を結露する工程と、微小検体を結露した水滴に接触し、メニスカス力により水滴内に取り込む工程と、制御部により加熱冷却ステージを加熱モードに切り換え、基台を加熱して水滴を揮発し、水滴が揮発する際の凝集力により検体を基台の上面に固定する工程と、を具備するものであればよい。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明の微小検体固定装置および微小検体の固定方法は、半導体デバイス等の新機能デバイス、細胞や血球などのバイオ関連等の素材の材料、物性、構造あるいは組成等の評価、分析、およびこれらの素材に付着する異物の材料、組成等の評価、分析に適用できるものである。
【符号の説明】
【0046】
10 基台
10a 第1の基台
10b 第2の基台
11 上面(親水面)
20 加熱冷却ステージ
30 撥水膜
30a 第1の撥水膜
30b 第2の撥水膜
31 第1の開口部
32 第2の開口部
50 結露検出部(結露検出回路)
51 結露検出用電極
52、53、54 容量検出用電極
60 DC電源
70 制御部
80 結露表示部
100、200 微小検体固定装置
110 水滴
112 微小検体
115 ナノピンセット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面の少なくとも一部に親水面を有する基台と、
前記基台上に設けられ、前記基台の親水面の少なくとも一部を外部に露出する開口部を有する撥水膜と、
前記基台を冷却または加熱する加熱冷却ステージと、
前記加熱冷却ステージを、前記基台を冷却する冷却モードと前記基台を加熱する加熱モードに切り換える制御部と、を具備することを特徴とする微小検体固定装置。
【請求項2】
請求項1に記載の微小検体固定装置において、前記基台上に水滴の結露を検出するための一対の電極を含む結露検出用電極が設けられていることを特徴とする微小検体固定装置。
【請求項3】
請求項2に記載の微小検体固定装置において、前記結露検出用電極は、前記基台と一体的にまたは別体の基台上に設けられた前記撥水膜の他の開口部内に設けられていることを特徴とする微小検体固定装置。
【請求項4】
請求項2または3に記載の微小検体固定装置において、前記基台上に、前記結露検出用電極を含む結露検出用回路が設けられていることを特徴とする微小検体固定装置。
【請求項5】
請求項4に記載の微小検体固定装置において、前記結露検出用回路は、前記別の開口部内に設けられた前記結露検出用電極の他、前記撥水膜に覆われた三個の容量検出用電極を含み、これらの電極を接続した容量式ブリッジ回路であることを特徴とする微小検体固定装置。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の微小検体固定装置において、前記加熱冷却ステージは、ペルチェ素子を含むことを特徴とする微小検体固定装置。
【請求項7】
表面の少なくとも一部に親水面を有する基台、前記基台上に設けられ、前記基台の親水面の少なくとも一部を外部に露出する開口部を有する撥水膜、前記基台を冷却または加熱する加熱冷却ステージ、および前記加熱冷却ステージを、前記基台を冷却する冷却モードと前記基台を加熱する加熱モードに切り換える制御部を有する微小検体固定装置を準備する工程と、
前記制御部により加熱冷却ステージを冷却モードに設定し、前記基台を冷却して前記開口部内の前記親水面上に水滴を結露する工程と、
微小検体を前記結露した水滴に接触し、メニスカス力により前記水滴内に取り込む工程と、
前記制御部により加熱冷却ステージを加熱モードに切り換え、前記基台を加熱して前記水滴を揮発し、前記水滴が揮発する際の凝集力により前記検体を前記基台の上面に固定する工程と、を具備することを特徴とする微小検体の固定方法。
【請求項8】
請求項7に記載の微小検体の固定方法において、前記基台上に水滴の結露を検出するための一対の電極を含む結露検出用電極が設けられた前記微小検体固定装置を準備する工程を含むことを特徴とする微小検体の固定方法。
【請求項9】
請求項7に記載の微小検体の固定方法において、前記結露検出用電極は、前記基台と一体的に、または別体の基台上に、設けられた前記撥水膜の他の開口部内に設けられていることを特徴とする微小検体の固定方法。
【請求項10】
請求項8または9に記載の微小検体の固定方法において、さらに、前記結露検出用電極を用いて、前記別の開口部内に水滴が結露したことを検出する工程を有することを特徴とする微小検体の固定方法。
【請求項11】
請求項10に記載の微小検体の固定方法において、前記別の開口部内に水滴が結露したことを検出する工程は、前記結露検出用電極を含む前記基台上に設けられた結露検出用回路を用いることを特徴とする微小検体の固定方法。
【請求項12】
請求項7乃至請求項11のいずれか1項に記載の微小検体の固定方法において、前記加熱冷却ステージは、ペルチェ素子を含むことを特徴とする微小検体の固定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−230112(P2012−230112A)
【公開日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−141096(P2012−141096)
【出願日】平成24年6月22日(2012.6.22)
【分割の表示】特願2009−134679(P2009−134679)の分割
【原出願日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【出願人】(390022471)アオイ電子株式会社 (85)
【Fターム(参考)】