微小気泡を含有する液体の組成物、および、微小気泡を含有する組成物の製造方法
【課題】 マイクロ・ナノバブルMnbによる細胞操作効果向上を課題とする。
【解決手段】 窒素(N2)、酸素(O2)、二酸化炭素(CO2)等の純度90%以上の単一気体の単独成分ガスを包含したMnbを混合した「Pタイプ」Mnbと、窒素(N2)、酸素(O2)、二酸化炭素(CO2)等を混合して成分調整したガスを包含した「Cタイプ」Mnbとを混合した「P/C混合タイプ」のMnbで細胞操作の効果を向上させた。包含ガスはこれらに限らず、アルゴン(Ar)など対象細胞の自然生育環境に存在する気体種、および/または、一酸化窒素(NO)や一酸化炭素(CO)など対象細胞中の生体反応に寄与する気体種であってもよい。
【解決手段】 窒素(N2)、酸素(O2)、二酸化炭素(CO2)等の純度90%以上の単一気体の単独成分ガスを包含したMnbを混合した「Pタイプ」Mnbと、窒素(N2)、酸素(O2)、二酸化炭素(CO2)等を混合して成分調整したガスを包含した「Cタイプ」Mnbとを混合した「P/C混合タイプ」のMnbで細胞操作の効果を向上させた。包含ガスはこれらに限らず、アルゴン(Ar)など対象細胞の自然生育環境に存在する気体種、および/または、一酸化窒素(NO)や一酸化炭素(CO)など対象細胞中の生体反応に寄与する気体種であってもよい。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイクロバブル、ナノバブル、マイクロ・ナノバブルと呼称される微小気泡を含有する液体の組成物、および、微小気泡を含有する組成物の製造方法に関する。
【0002】
特に本発明は、後述する特許文献1および特許文献2記載の微小気泡技術の不明確部分を補足し、かつ、特許文献1および特許文献2の微小気泡技術の改良発明である。
【0003】
本明細書では、微小気泡をマイクロおよび/またはナノバブルを略した「Mnb」と略記する。通常のミリサイズ以上のバブルを「Mm」と略記する。
【0004】
MnbおよびMnbの利用技術については、特許文献1から特許文献4に記載されているし、以下の参考文献01から22に記載されているので省略する。
【0005】
<参考文献01から22>
01 特開2009−189307号公報「芽胞細菌の殺菌乃至不活化方法」
02 特開2009−131770号公報「二酸化炭素ナノバブル水の製造方法」
03 特開2009−131769号公報「窒素ナノバブル水の製造方法」
04 特開2009−084258号公報「ナノバブルを含む癌の治療又は予防のための薬剤 」
05 特開2009−039600号公報「超微細気泡生成装置」
06 特開2008−259456号公報「魚介類の保存方法」
07 特開2008−237950号公報「水酸基ラジカルを含む水の製造方法および水酸基ラジカルを含む水」
08 特開2008−093612号公報「反応活性種を含む水の製造方法および反応活性種を含む水」
09 特開2008−093611号公報「極微小気泡を含む水の製造方法および極微小気泡を含む水」
10 特開2008−063258号公報「組織保存液」
11 特開2007−275089号公報「長期持続型オゾン水、長期持続型オゾン水を利用した環境殺菌・脱臭浄化方法 」
12 特開2006−223239号公報「酸素ナノバブルを利用した魚介類焙焼有効成分抽出方法およびその抽出方法によって得られた有効成分を添加した魚肉加工品素材」
13 特開2005−246294号公報「酸素ナノバブル水およびその製造方法」
14 特開2005−246293号公報「オゾン水およびその製造方法」
15 特開2005−245817号公報「ナノバブルの製造方法」
16 特開2005−110552号公報「加圧多層式マイクロオゾン殺菌・浄化・畜養殺菌システム」
17 再表2005/030649号公報「微小気泡の圧壊」
18 長雄一郎、村松憲、佐藤健次「酸素ナノバブル水の組織保存性に関する組織学的検討(第1報)」第111回日本解剖学総会・学術集会
19 平成17年度 新エネルギー・産業技術総合開発機構委託調査研究 バイオ分野におけるナノバブル水の産業利用に関する調査 成果報告書 38−40「ナノバブル水を利用した生体組織の保存等に関する評価研究」
10 Hojo Y,et al.“Anti−inflammatory Property of Oxygen Nano−bubbles” Circulation Journal vol.70, supplement I,p276(第70回 日本循環器学会総会・学術集会)
21 平成17年度 新エネルギー・産業技術総合開発機構委託調査研究 バイオ分野におけるナノバブル水の産業利用に関する調査 成果報告書 40−45「細胞の生理機能に対するナノバブル水の影響評価」
22 日本混相流学会混相流レクチャーシリーズ第35回「マイクロ・ナノバブルの特性とのその応用」2009年12月5日(関西大学にて配布)
【0006】
特許文献1および特許文献2の微小気泡技術は、有用な細胞に対する操作または有用な細胞変化の促進を目的とした技術であって、Mnbが従来のMmでは得られない大きな効果を細胞に与えることを利用している。特許文献1および特許文献2の微小気泡技術について以下に説明する。
【0007】
図1が特許文献1および特許文献2の微小気泡技術を説明する模式図である。すなわち、図1は、細胞に与える影響について、マイクロ・ナノバブルMnbがミリサイズ以上のバブルMmのそれよりも大きいことを示す模式図であって、図1(a)は、Mm表面に親水性細胞膜をもつ細胞が集まっているがMnは細胞に大きな影響を与えてはいないことを示す。
【0008】
これに対して図1(b)は、マイクロ・ナノバブルMnbが細胞Cのスケールよりも小さいことを示し、図1(c)は(b)の拡大模式図で、Mnbが細胞膜表面CSにある物質チャネル構成物質CP(細胞膜の蛋白など)に接近または親和性等で結合して影響を与える場合があることを示す。
【0009】
Mnbをなす気体が溶出して、周囲に高濃度ガス溶存状態を形成すれば、拡散によって細胞膜を透過することもある。
【0010】
Mnbをなす気体溶出による拡散現象で細胞膜を透過することを模式的に示す例図が図5および図6である。すなわち、図5が、気孔の二酸化炭素(CO2)吸収に与えるMnbの影響を示す模式図である。
【0011】
ここでMnbは、Young−Laplaceの式[ P = Pl + 2σ/r (P = gas pressure, Pl = liquid pressure, σ = surface tension, r = radius of the bubble)]により、径が縮小するとともに圧力が上昇する。それで、Mnbをなす気体の溶存量がMnbと液体の気液界面で局所的に高まり、気体が液体に溶出する。そのため、気孔近傍に二酸化炭素を包含するMnbがあると気孔近傍に二酸化炭素溶存量が極めて高い状態になって拡散による気孔部位の細胞膜透過量が増えて二酸化炭素吸収量が増大すると考えられる。
【0012】
そして図6が、細胞の酸素(O2)吸収に与えるMnbの影響を示す模式図である。ここでMnbは、図5同様にYoung−Laplaceの式により、径が縮小し、圧力の上昇から包含ガスの溶存量が気液界面で局所的に高まりガス溶出する。そのため、細胞近傍に酸素を包含するMnbがあると細胞近傍に酸素溶存量が極めて高い状態になって拡散による細胞膜透過量が増えて細胞の酸素吸収量が増大すると考えられる。図5・図6に示す「高濃度過飽和ゾーン」が細胞近辺で局所的に高濃度化して細胞膜を透過する気体分子の集合を示す。この気体分子が細胞内に拡散等で取込まれ種々の作用の引き金を引くと考えられる。
【0013】
特許文献1は、図8(a)(b)(c)のタイムチャート模式図で示されるMnb製法を開示している。
【0014】
すなわち、図8(a)は、気体の選択手段で時間的に順次に選択された複数の気体を気体吸引手段から吸引し、該複数の気体を微小気泡となし、液体吐出手段に時間的に順次連続的に吐出される操作で得た複数の気体の微小気泡含有組成物を得る製法である。
【0015】
図8(b)は、複数の微小気泡発生器へ細胞培養液が吸引されるとともに、複数の気体吸引手段から吸引した複数の気体を微小気泡となし、複数の液体吐出手段に連続的に吐出される操作で得た複数の気体の微小気泡含有の細胞培養用組成物の製法である。
【0016】
図8(c)は、図8(b)の製法の装置にて図8(a)の時間的順次の気体切り替えを組み合わせた製法である。
【0017】
これら図8(a)(b)(c)の製法によるMnbは、図2の(a)に示す「Pタイプ」Mnbである。「Pタイプ」のPはピュアガス(純ガス)の意味であって、概ね純度90%以上の単一気体である。具体的には、純度90%以上の窒素(N2)ガス、純度90%以上の酸素(O2)ガス、純度90%以上の二酸化炭素(CO2)ガス等である。
【0018】
図2(a)は、窒素(N2)、酸素(O2)、二酸化炭素(CO2)のそれぞれ該100%の単独成分ガスを包含した「Pタイプ」Mnbを示す図である。
【0019】
一方、特許文献2は、図8(d)のタイムチャート模式図で示されるMnb製法を開示している。
【0020】
すなわち、図8(d)は、気体吸引手段の上流に吸引気体の成分とその濃度を調整制御する手段、および、前記吸引気体の成分とその濃度を調整制御する手段に、該気体成分とその濃度の調整制御目標指令を出す気体成分・濃度調整制御目標指令の出力手段、を具備した装置による製法である。
【0021】
この図8(d)の製法によるMnbは、図2の(b)に示す「Cタイプ」Mnbである。「Cタイプ」のCはコンディションドガス(調整ガス)の意味であって、複数のガス(ピュアガス(純ガス)であってもなくともよい)の混合であって大気の成分の成分比、および、この成分比に近く調整したものであってもよい。より具体的には、通常の大気成分の成分比率に対して5%の変化があると細胞への影響が現れるので、各成分の1つ以上を5%以上の成分変化で混合させるのが好適である。図16が大気成分の比率を示す参考図である。
【0022】
図2(b)は、窒素(N2)、酸素(O2)、二酸化炭素(CO2)を混合して成分調整したガスを包含した「Cタイプ」Mnbを示す図である。
【0023】
図3と図4で「Cタイプ」と「Pタイプ」のMnbを補足説明する。図3が、「Cタイプ」Mnbを説明する模式図である。図3第一行のGas”CA”とGas”CB”とでは、包含ガスの成分比(図3第二行)もバブルの粒度分布(図3第三行)も異なっているので、細胞に与える効果(図3第三行)はGas”CA”とGas”CB”とで異なる。[CA≠CB]
【0024】
図4が、「Pタイプ」Mnbを説明する模式図である。図4第一行のGas”PA”とGas”PB”とでは、包含ガスの成分比(図4第二から四行)もバブルの粒度分布(図4第三行)も異なっているが、包含ガスの成分比(図4第二から四行)は、窒素(N2)単独成分ガス量(図4第二行)、酸素(O2)単独成分ガスの量(図4第三行)、二酸化炭素(CO2)単独成分ガス量(図4第四行)の比率を調整すれば、図3のGas”CA”あるいはGas”CB”と、ほぼ等しくできる。
【0025】
同様に、バブルの粒度分布(図4第三行)も、図3のGas”CA”Gas”CB”とほぼ等しくできる。しかし、それらの効果は等しくはない。(効果CA≠PA、効果CB≠PB)
【0026】
また、特許文献3に、以上説明した特許文献1および特許文献2の微小気泡技術と類似の記載が見られる。すなわち、特許文献3[請求項3]に「前記水素発生手段は、発生する気体の種類に応じた供給比率を変更可能な気体分配手段を含むことを特徴とする請求項1又は2に記載のナノバブル液体製造装置。」とあり、また、特許文献3の[0010]に「(3)前記水素発生手段は、発生する気体の種類に応じた供給比率を変更可能な気体分配手段を含むことを特徴とする上記(1)又は(2)に記載のナノバブル液体製造装置を提供することができる。」とある。また特許文献3の[0011]に「・・・また、気体分配手段は、可変バルブの組合せで各種気体の比率を変えてもよく、それぞれの気体の流量を調整する装置(例えば、マスフローコントローラ)を用いて行ってもよい。」とある。さらに特許文献3の図面に「16a 気体分配手段」の記載もある。
【0027】
しかしながら特許文献3の気体分配や気体比率変更等は、目的や効果について、特許文献1及び特許文献2の記載に比べて不明確である。すなわち特許文献3は、水素を含むナノバブル水と該ナノバブル液体製造装置を開示しているが、水素以外の気体分配手段の説明、水素以外の気体供給手段の記載もなく、微小気泡の包含ガスの調整を具体的に示すものではない。
【0028】
また同様に、特許文献4および特許文献5にも、特許文献1および特許文献2の微小気泡技術と類似の記載が見られるが、その製法手順等、装置構成要素等は異なっている。(詳述略す)
【0029】
さらにまた同様に、特許文献6にも、特許文献1および特許文献2の微小気泡技術と類似の記載が見られる。特許文献6の主眼は「気体を過飽和状態として大量に液体中に溶解させる技術」であるが、過飽和で発生する複数の気体による微小気泡(Mnb)の発生が示されている。(特許文献6[請求項2][請求項11]参照) しかし、特許文献6の製法手順等、装置構成要素等も、詳細には特許文献1および特許文献2の微小気泡技術とは異なるものである。(詳述略す)
【0030】
ここで、図11から図15を用いて、特許文献1および特許文献2の微小気泡技術にて追加補足されるべき技術、および特許文献7の組合せ技術について説明する。
【0031】
図11は、株式会社協和機設のMnb発生装置のデータであって、Mnb発生後にMnb粒径が時間経過とともに縮小していくことを示す模式図である。測定器はベックマンコールター社のコールター方式微細粒子測定器である。
【0032】
この図11が示すMnb粒径の縮小変化は、図5および図6を用いて説明したように、Young−Laplaceの式[ P = Pl + 2σ/r (P = gas pressure, Pl =
liquid pressure, σ = surface tension, r = radius of the
bubble)]で説明される。
【0033】
細胞操作においては、この粒径の時間変化を加味しなければならない。特に、気体の種類によって粒径の時間変化が異なることに注意が必要である。
【0034】
具体的には、二酸化炭素(CO2)は溶解度が酸素・窒素に比べて大きいのでMnb発生後に溶出する量も多い。そのため二酸化炭素(CO2)を包含したMnbは比較的早期に縮小する(図12参照)。
【0035】
図12(a)は、二酸化炭素(CO2)が時間経過と共により多く溶出して包含量が減少することを示す模式図である。図12(b)は、各気体の水に対する溶解度の温度変化を示す参考図である。このような気体種による時間的変化の差異を見込んで実験データを採取して、実験と実際の応用との差が生じないようにする工夫を要する。
【0036】
簡単には、実験でのMnb発生から細胞近傍へのMnb供給の時間と実用装置でのそれとを一致させればよい。もちろん液体温度等の付帯環境条件も一致させる必要がある。
【0037】
実際には、実験でのMnb発生から細胞近傍へのMnb供給の時間と実用装置でのそれとを一致させることは困難であるので、発生させるMnbごとに図11の粒径分布時間変化を実測するとともに、図12の気体種・適用温度ごとの溶存量変化を加味して実用装置内細胞近傍におけるMnb粒径分布・溶存量・気体溶出量などを推定し実施するのが好ましい。
【0038】
図13は参考図で、特許文献1に例示されたMnb発生装置の模式図である。(特許文献1[図2]の修正図) 図13のようなマルチノズルの装置構成で、図8(a)や図8(b)に示した複数の異なった気体を包含したMnbを同時に発生させることができる。ここで、10は、流動体保持容器H、または、流動体保持容器HとTaylorリアクターTR(図14を用いて後述)の組合せであって、容器Hにて細胞培養する場合にはHは細胞培養容器(バイオリアクター)である。
【0039】
図14も参考図で、特許文献2に例示されたMnb発生装置の模式図である。(特許文献2[図4]の修正図) 図14の17、18、18A、30、31は以下である。
【0040】
すなわち、17は、10の液体濁度を透過光または散乱光測定方式で測定するセンサー、18は、10の温度・圧力・水素イオン濃度・生物学的/化学的酸素要求量等の環境の操作手段、18Aは、10の温度・圧力・水素イオン濃度・生物学的/化学的酸素要求量等の環境の制御手段、30は、液体槽の環境を調整制御する手段18Aに、促進環境の調整制御目標指令を出す液体槽環境調整制御目標指令の出力手段、31は、対象細胞について、該細胞自身の変化を促進するのに要する複数の物質それぞれ個別の取込み安さに応じた、それぞれ個別の気体成分とその濃度をあらかじめ実験的に決定する工程によって得られたデータのデータベース、および、該細胞が自身の変化を促進するのに要する複数の物質それぞれ個別の取込み安さを促進する液体槽の環境のデータをあらかじめ実験的に決定する工程によって得られたデータのデータベースである。
【0041】
これら17、18、18A、30、31を兼備した構成で細胞培養やiPS細胞化操作等のバイオリアクター機能が実現される。
【0042】
図15も参考図で、特許文献7に記載されたCT(Couette-Taylor)反応装置(Taylorリアクター)TRと微小気泡発生器とを組み合わせたプロセス装置の模式図である。特許文献1および特許文献2の微小気泡技術を実施する場合、TaylorリアクターTRとの組合せによって、細胞培養やiPS細胞化操作等のバイオリアクター機能をマクロ的に効率化できる。
【0043】
ここで「マクロ的」とは、リアクター内部の流れ環境の均一化を意味するものであって、たとえば前述の図11・図12で説明した細胞近傍へのMnb供給の時間と実用装置でのそれとを一致させる「ミクロ的な」細胞近傍での条件、および、液体温度等の付帯環境条件を一致させる「ミクロ的な」細胞近傍での条件こと、について、マクロ的にリアクター内部のどの位置でも同様に実現することができるということである。(特許文献7参照)
【0044】
以上図11から図15を用いて説明した特許文献1・特許文献2の追加補足技術、および特許文献7の技術は、本発明の実施においても組み合わせて実施することができる。
【特許文献1】特願2009−234683号「細胞変化を促進する微小気泡含有組成物、およびその微小気泡含有組成物を製造する装置、ならびに微小気泡含有組成物を用いた細胞変化促進方法」丸井智敬
【特許文献2】特願2009−282840号「微小気泡を含有する液体組成物で細胞変化を促進する装置、微小気泡を含有する液体組成物で細胞変化を促進する方法」丸井智敬
【特許文献3】特許公開2008−6397号公報「ナノバブル液体製造装置及びナノバブル液体」オプトクリエーション
【特許文献4】特許公開2009−195889号公報「微細気泡発生装置」アイシン精機株式会社
【特許文献5】特許公開2007−75785号公報「水処理方法および水処理装置」シャープ株式会社
【特許文献6】公表特許2009−195889号公報(WO2006/127979)「気体の液体への溶解と同溶解気体の供給のためのシステム及び方法」ユニバーシティ オブ アーカンソー
【特許文献7】特願2010−012727号「CT(Couette-Taylor)反応装置を用いたプロセス装置、該装置と微小気泡発生器とを組み合わせたプロセス装置。」丸井智敬
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0045】
本発明は、特許文献1および特許文献2記載の微小気泡技術の不明確部分を補足し、かつ、特許文献1および特許文献2の微小気泡技術を改良した発明を提案するものである。
【課題を解決するための手段】
【0046】
本発明は、図2の(c)に示す、特許文献1および特許文献2で示された「Pタイプ」「Cタイプ」Mnbを混合した「P/C混合タイプ」Mnbである。本発明を、図7(効果)、図9と図10(本発明タイムチャート)で説明する。
【0047】
まず図7が、「Pタイプ」Mnb・「Cタイプ」Mnb・「P/C混合タイプ」Mnbそれぞれが細胞または生物に与える影響を比較する実験1)から実験6)のまとめ表である。概して「P/C混合タイプ」Mnbが細胞あるいは生物に与える影響が大きいことがわかる。
【0048】
図7の実験1)<酵母増殖> 大気組成よりも酸素の成分を10%大きくした3通りのMnb群を常温培養液に加えた培地で酵母(S. cerevisiae)を48時間増殖させたときのコロニー数の比較である。
【0049】
図7の実験2)<大腸菌増殖> 大気組成よりも酸素の成分を10%大きくした3通りのMnb群を常温培養液に加えた培地で大腸菌(E.Coli)を48時間増殖させたときのコロニー数の比較である。
【0050】
図7の実験3)<気孔吸収>大気組成よりも二酸化炭素の成分を10%大きくした3通りのMnb群を常温蒸留水に加えてミスト化してシロイヌナズナに6時間おきに一定量散布。散布前から30日後の植物体重量変化の比較である。
【0051】
図7の実験4)<メタン発酵>酸素ゼロ、窒素とアルゴン99%、二酸化炭素1%の3通りのMnb群を常温培養液に加え常温でメタン菌を48時間培養したときのメタン発生量の比較である。
【0052】
図7の実験5)<人体血流量>大気組成よりも二酸化炭素の成分を10%大きくした3通りのMnb群を38℃の温浴水に加え、該温浴水に30分全身浴する人体上腕部の血流上昇値の比較である。
【0053】
図7の実験6)<動物細胞増殖>大気組成よりも酸素の成分を10%大きくした3通りのMnb群を常温培養液に加えた培地で標準チャイニーズハムスター(CHO)細胞を48時間増殖させたときの細胞数の比較である。
【0054】
ここで、「P/C混合タイプ」Mnbのほうが「Pタイプ」Mnb、「Cタイプ」Mnbよりも細胞あるいは生物に与える影響が大きいことの理由は現時点では明確ではなく今後の研究によらねばならない。
【0055】
仮説として考えられることは、上記の各実験にて細胞または生物が敏感に作用する気体分子は、実験1)、実験2)では酸素、実験3)では二酸化炭素、実験4)では窒素とアルゴン、実験5)では二酸化炭素、実験6)では酸素等であって、これらの作用気体が細胞近辺に局所的に高濃度で存在し、かつまた、他の気体分子は大気等の通常環境での溶存状態にあったほうがよい。そのため、「Pタイプ」Mnbでは、他の悪影響気体分子の濃度が高すぎるので効果の抑制があり、「Cタイプ」Mnbでは局所高濃度化の程度が低い。それで両者の中間的な「P/C混合タイプ」Mnbが、比較的良好な効果が得られる、ということである。(図5・図6の「高濃度過飽和ゾーン」が細胞近辺の局所高濃度化した作用気体分子の集合を示す)
【0056】
さて、本発明の「P/C混合タイプ」Mnbの製法について、図9と図10で説明する。
【0057】
図9は、本発明の「P/C混合タイプ」Mnbの製法のタイムチャート模式図であって、「Cタイプ」Mnbを発生させた後に、同じ液体容器Hに「Pタイプ」Mnbを発生して混合し「P/C混合タイプ」Mnbを得るものである。
【0058】
図10は、逆に「Pタイプ」Mnbを発生させた後に「Cタイプ」Mnbを発生して混合して「P/C混合タイプ」Mnbを得るものである。このようにすれば「Pタイプ」・「Cタイプ」Mnbの混合タイプの製法は容易である。
【0059】
すなわち、本発明の「P/C混合タイプ」Mnbは、複数の純度90%以上の気体供給手段、該複数気体個別のゼロを含む混合比の設定手段、前記の設定混合比で前記複数気体を混合する気体調整手段、該調整された気体の吸引手段、液体吸引手段、液体吐出手段、および、微小気体を生成する本体を具備した微小気泡発生器を用いて製造すればよい。
【0060】
また、本発明の「P/C混合タイプ」Mnbは、純度90%以上の気体供給手段、複数の気体を混合した気体(プレミックス調整気体)の供給手段、該純度90%以上の気体または該複数の気体を混合した気体(プレミックス調整気体)のいずれかを選択的に吸引する手段、液体吸引手段、液体吐出手段、および、微小気体を生成する本体を具備した微小気泡発生器を用いて製造すればよい。
【0061】
ここで「プレミックス調整気体」のプレミックスは、「Prepared Mix=あらかじめ混合したもの、という意味で、プレミックス調整気体は、とはあらかじめ成分調整された混合気体、または、大気のような容易に入手される既に特定の混合比で混合された気体である。
【0062】
いずれにせよ本発明の組成物である「P/C混合タイプ」Mnbは(請求項1)、微小気泡を含有する液体の組成物であって、該微小気泡は、少なくともその粒径が30μm以下のマイクロバブルを含み、かつ、該微小気泡が包含する気体が少なくとも以下の二種が混在するものである組成物である。 1 気体が、純度90%以上の単一気体である。 2 気体が、複数の気体が混合した混合気体である。
【0063】
そして、本発明の組成物の製法は(請求項4)、複数の純度90%以上の気体供給手段、該複数気体のゼロを含む混合比の設定手段、前記の設定混合比で前記複数気体を混合する気体調整手段、該調整された気体の吸引手段、液体吸引手段、液体吐出手段、および、微小気体を生成する本体を具備した微小気泡発生器を用いた、微小気泡を含有する組成物の製造方法であって、該微小気泡は、少なくともその粒径が30μm以下のマイクロバブルを含み、かつ、少なくとも以下の二工程を有する方法である。 1 前記の混合比の設定手段の設定を複数気体のひとつを除きすべてゼロとして前記気体吸引手段で吸引し、純度90%以上の単一気体を包含した気泡を前記液体吸引手段で吸引した液体内に前記液体吐出手段で吐出して発生する工程。 2 前記の混合比の設定手段の設定を複数気体についてゼロでない設定として前記気体吸引手段で吸引し、複数気体を包含した気泡を前記液体吸引手段で吸引した液体内に前記液体吐出手段で吐出して発生する工程。
【0064】
また、前記プレミックス調整気体を用いた本発明の組成物の製法は(請求項5)、純度90%以上の気体供給手段、複数の気体を混合した気体(プレミックス調整気体)の供給手段、該純度90%以上の気体または該複数の気体を混合した気体のいずれかを選択的に吸引する手段、液体吸引手段、液体吐出手段、および、微小気体を生成する本体を具備した微小気泡発生器を用いた、微小気泡を含有する組成物の製造方法であって、該微小気泡は、少なくともその粒径が30μm以下のマイクロバブルを含み、かつ、少なくとも以下の二工程を有する方法である。 1 前記の純度90%以上の単一気体を前記気体吸引手段で選択吸引し、純度90%以上の単一気体を包含した気泡を前記液体吸引手段で吸引した液体内に前記液体吐出手段で吐出して発生する工程。 2 前記の複数の気体を混合した気体を前記気体吸引手段で選択吸引し、複数の気体を混合した気体を包含した気泡を前記液体吸引手段で吸引した液体内に前記液体吐出手段で吐出して発生する工程。
【0065】
また、本発明の組成物の液体に、特許文献1の[請求項13]ならびにその説明である特許文献1の[0048]から[0050]に記載された細胞変化促進物質を混ぜることで効果を増大することができる。
【0066】
すなわち(請求項2)、請求項1の微小気泡を含有する液体の組成物であって、前記の液体が細胞培養液で、該細胞培養液に対象細胞の自然生育環境に存在する物質、および/または、対象細胞中の生体反応に寄与する物質、および/または、生体物質である以下の1から4の物質が少なくともひとつ混合されているものである組成物が好適である。 1 遺伝子、 2 酵素・補酵素・助酵素、(「・」は、「または」を示す) 3 遺伝子によって生合成されるリコンビナント蛋白質およびアミノ酸・ぺプチド・糖鎖、(「・」は、「または」を示す) 4 ホルモン・フェロモン・植物のアレロパシーを誘発する物質。(「・」は、「または」を示す)
【0067】
細胞変化促進物質を混ぜる工程を付加した製法は(請求項6)、請求項4または請求項5のいずれかの組成物の製造方法であって、前記の液体が細胞培養液で、該細胞培養液に(対象細胞の自然生育環境に存在する物質、および/または、対象細胞中の生体反応に寄与する物質、および/または、生体物質である)以下の1から4の物質を少なくともひとつ混合する工程をさらに含めればよい。 1 遺伝子、 2 酵素・補酵素・助酵素、(「・」は、「または」を示す) 3 遺伝子によって生合成されるリコンビナント蛋白質およびアミノ酸・ぺプチド・糖鎖、(「・」は、「または」を示す) 4 ホルモン・フェロモン・植物のアレロパシーを誘発する物質。(「・」は、「または」を示す)
【0068】
ここで、「アレロパシー(Allelopathy)」とは、ある植物が他の植物の生長を抑える物質(アレロケミカル)を放出したり、あるいは動物や微生物を防いだり、あるいは引き寄せたりする効果の総称で邦訳では「他感作用」である。
【0069】
また、本発明の気体は、より具体的には、特許文献1の[請求項14]、ならびにその説明である特許文献1の[0051][0052]に記載された、「対象細胞の自然生育環境に存在する気体種、および/または、対象細胞中の生体反応に寄与する気体種である」ことが好適である。当然ながら、自然生育環境に存在する気体とは大気であるので、アルゴン(Ar)も含まれる。また、細胞中の生体反応に寄与する気体種には、各種の細胞影響が注目される一酸化窒素(NO)や、有害気体である一酸化炭素(CO)も含まれる。
【0070】
すなわち、組成物としては(請求項3)、請求項1または請求項2の微小気泡を含有する液体の組成物であって、前記の気体が対象細胞の自然生育環境に存在する気体種、および/または、対象細胞中の生体反応に寄与する以下の1から7の気体のいずれかであることが好適である。 1 窒素(N2)、2 酸素(O2)、3 二酸化炭素(CO2)、4 アルゴン(Ar)、5 水素(H2)、6 一酸化窒素(NO)、7 一酸化炭素(CO)。
【0071】
同様にかかる組成物の製法は(請求項7)、請求項4または請求項5のいずれかの組成物の製造方法であって、気体が以下の1から7の気体のいずれかであることが好適である。 1 窒素(N2)、2 酸素(O2)、3 二酸化炭素(CO2)、4 アルゴン(Ar)、5 水素(H2)、6 一酸化窒素(NO)、7 一酸化炭素(CO)。
【0072】
以上説明した本発明の実施に当たって、図11から図14を用いて説明した特許文献1・特許文献2の追加補足技術、および、図15の特許文献7によるTaylorリアクターの利用技術を組み合わせて実施することができる。すなわち、図11と図12に示すようなMnbの粒径分布の時間変化、それに伴う気体分子種ごとの溶出データを実験的に把握して、たとえば、二酸化炭素のような溶出しやすい気体については量を多くしたり、ガス投入を遅らせたりする操作を実施すること、図13の複数の吐出手段による構成を用いること、図14のセンサーとデータベースをもつ制御システムの構成を用いること、図15のCT(Couette-Taylor)反応装置(Taylorリアクター)との組み合わせた構成で細胞操作等のマクロ的均一化効果を得ること、等である。
【発明の効果】
【0073】
本発明は、窒素(N2)、酸素(O2)、二酸化炭素(CO2)等の純度90%以上の単一気体の単独成分ガスを包含したMnbを混合した「Pタイプ」Mnbと窒素(N2)、酸素(O2)、二酸化炭素(CO2)等を混合して成分調整したガスを包含した「Cタイプ」Mnbとを混合した「P/C混合タイプ」のMnbで細胞操作の効果を向上させた。
【0074】
「Pタイプ」Mnbは特許文献1に、「Cタイプ」Mnbは特許文献2に記載されているが、本案はこれらの組合せを明示した。もちろん、包含ガスは窒素(N2)、酸素(O2)、二酸化炭素(CO2)に限らず、アルゴン(Ar)など対象細胞の自然生育環境に存在する気体種、および/または、一酸化窒素(NO)や一酸化炭素(CO)など対象細胞中の生体反応に寄与する(影響を与える)気体種であってもよい。(このことは特許文献1[請求項14]にも記載されている。)
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】細胞に与える影響は、Mnbがミリサイズ以上のバブルMmのそれよりも大きいことを示す模式図。(a)は、Mm表面に親水性細胞膜をもつ細胞が集まっているがMnは細胞に大きな影響を与えてはいないことを示す。 これに対して(b)は、Mnbが細胞Cのスケールよりも小さいことを示し、(c)は(b)の拡大模式図で、Mnbが細胞膜表面CSにある物質チャネル構成物質CP(細胞膜の蛋白など)に接近または親和性等で結合して影響を与える場合があることを示す。
【図2】Mnbの包含ガスの違いを示す模式図。(a)は、窒素(N2)、酸素(O2)、二酸化炭素(CO2)のそれぞれ純度90%以上の単一気体の単独成分ガスを包含した「Pタイプ」Mnbを示す図。(b)は、窒素(N2)、酸素(O2)、二酸化炭素(CO2)を混合して成分調整したガスを包含した「Cタイプ」Mnbを示す図。(c)は、「Pタイプ」「Cタイプ」Mnbを混合した「P/C混合タイプ」Mnbを示す図。
【図3】「Cタイプ」Mnbを説明する模式図。Gas”CA”とGas”CB”は包含ガスの成分比(図3第二行)もバブルの粒度分布(図3第三行)も異なっているので、細胞に与える効果(図3第三行)はGas”CA”とGas”CB”とで異なる。[CA≠CB]
【図4】「Pタイプ」Mnbを説明する模式図。Gas”PA”とGas”PB”は包含したガスの成分比(図4第二から四行)もバブルの粒度分布(図4第三行)も異なっているが、包含ガスの成分比(図4第二から四行)は、窒素(N2)単独成分ガス量(図4第二行)、酸素(O2)単独成分ガスの量(図4第三行)、二酸化炭素(CO2)単独成分ガス量(図4第四行)の比率を調整すれば、Gas”CA”・Gas”CB”と、ほぼ等しくできる。同様に、バブルの粒度分布(図4第三行)も、Gas”CA”Gas”CB”とほぼ等しくできる。しかし、それらの効果は等しくはない。(効果CA≠PA、効果CB≠PB)
【図5】気孔の二酸化炭素(CO2)吸収に与えるMnbの影響を示す模式図。Mnbは、Young−Laplaceの式[ P = Pl + 2σ/r (P = gas pressure, Pl =liquid pressure, σ = surface tension, r = radius of thebubble)]により、径が縮小し、圧力の上昇から包含ガスの溶存量が気液界面で局所的に高まりガス溶出する。そのため、気孔近傍に二酸化炭素を包含するMnbがあると気孔近傍に二酸化炭素溶存量が極めて高い状態になって拡散による気孔部位の細胞膜透過量が増えて二酸化炭素吸収量が増大すると考えられる。
【図6】細胞の酸素(O2)吸収に与えるMnbの影響を示す模式図。Mnbは、Young−Laplaceの式[ P = Pl + 2σ/r (P = gas pressure, Pl =liquid pressure, σ = surface tension, r = radius of thebubble)]により、径が縮小し、圧力の上昇から包含ガスの溶存量が気液界面で局所的に高まりガス溶出する。そのため、細胞近傍に酸素を包含したMnbがあると細胞近傍に酸素溶存量が極めて高い状態になって拡散による細胞膜透過量が増えて細胞の酸素吸収量が増大すると考えられる。
【図7】「Pタイプ」Mnb、「Cタイプ」Mnb、および、「P/C混合タイプ」Mnbのそれぞれが細胞(生物)に与える影響を比較する実験1)から6)のまとめ表。概して「P/C混合タイプ」Mnbが細胞(生物)に与える影響が大きい。
【図8】特許文献1と特許文献2に記載されたMnb含有液体(微小気泡を含有する液体組成物)の製法のタイムチャート模式図。(a)は、気体の選択手段で時間的に順次に選択された複数の気体を気体吸引手段から吸引し、該複数の気体を微小気泡となし、液体吐出手段に時間的に順次連続的に吐出される操作で得た複数の気体の微小気泡含有組成物を得る製法を示す。(b)は、複数の微小気泡発生器へ細胞培養液が吸引されるとともに、複数の気体吸引手段から吸引した複数の気体を微小気泡となし、複数の液体吐出手段に連続的に吐出される操作で得た複数の気体の微小気泡含有の細胞培養用組成物の製法を示す。(c)は、(b)製法装置にて(a)の時間的順次の気体切り替えを組み合わせた製法を示す。(d)は、気体吸引手段の上流に吸引気体の成分とその濃度を調整制御する手段、および、前記吸引気体の成分とその濃度を調整制御する手段に、該気体成分とその濃度の調整制御目標指令を出す気体成分・濃度調整制御目標指令の出力手段、を具備した装置による製法を示す。これら製法によるMnbのタイプを図中に記載した。
【図9】本発明のMnb含有液体(微小気泡を含有する液体組成物)の製法のタイムチャート模式図。「Cタイプ」Mnbを発生させた後に「Pタイプ」Mnbを発生して混合した「P/C混合タイプ」Mnbを得る。
【図10】本発明のMnb含有液体(微小気泡を含有する液体組成物)の製法のタイムチャート模式図。「Pタイプ」Mnbを発生させた後に「Cタイプ」Mnbを発生して混合した「P/C混合タイプ」Mnbを得る。
【図11】株式会社協和機設のMnb発生装置のデータであって、Mnb発生後にMnb粒径が時間経過とともに縮小していくことを示す模式図。測定器はベックマンコールター社のコールター方式微細粒子測定器。
【図12】二酸化炭素(CO2)は溶解度が酸素・窒素に比べて大きいのでMnb発生後に溶出する量も多い。(a)は、二酸化炭素(CO2)が時間経過と共により多く溶出して包含量が減少することを示す模式図。(b)は、各気体の水に対する溶解度の温度変化を示す参考図。
【図13】特許文献1のMnb発生装置の模式図。特許文献1[図2]の修正図である。
【図14】特許文献2のMnb発生装置の模式図。特許文献2[図4]の修正図である。
【図15】特許文献7のCT(Couette-Taylor)反応装置と微小気泡発生器とを組み合わせたプロセス装置の模式図。
【図16】参考図 乾燥空気の主要成分
【符号の説明】
【0076】
1 固定中空円筒体、またはこれを包含する中空回転対称体
2 1の内壁と間隙4を保ちつつ同軸回転する内包円筒体、またはこれを包含する内包回転対称体
3 2の回転手段
4 1の内壁と2の側外壁との間隙
10 流動体保持容器H、または、流動体保持容器HとTaylorリアクターTR。容器Hにて細胞培養する場合にはHは細胞培養容器(バイオリアクター)である。
11 複数の気体供給手段(のひとつ)
12 吸引気体の成分とその濃度を調整制御する手段
12A 吸引気体の成分とその濃度を調整制御する手段12に、気体成分とその濃度の調整制御目標指令を出す気体成分・濃度調整制御目標指令の出力手段
13 成分・濃度を調整制御された吸引気体の供給手段
17 10の液体濁度を透過光または散乱光測定方式で測定するセンサー
18 10の温度・圧力・水素イオン濃度・生物学的/化学的酸素要求量等の環境の操作手段
18A 10の温度・圧力・水素イオン濃度・生物学的/化学的酸素要求量等の環境の制御手段
30 液体槽の環境を調整制御する手段18Aに、促進環境の調整制御目標指令を出す液体槽環境調整制御目標指令の出力手段
31 対象細胞について、該細胞自身の変化を促進するのに要する複数の物質それぞれ個別の取込み安さに応じた、それぞれ個別の気体成分とその濃度をあらかじめ実験的に決定する工程によって得られたデータのデータベース、および、該細胞が自身の変化を促進するのに要する複数の物質それぞれ個別の取込み安さを促進する液体槽の環境のデータをあらかじめ実験的に決定する工程によって得られたデータのデータベース
C1 間隙4の一部に被プロセス材を供給する手段
C2 間隙4の他部から被プロセス材を抽出する手段
C 細胞
CA Cタイプのバブル包含ガスCAの効果
CB Cタイプのバブル包含ガスCBの効果
CS 細胞膜
CT 細胞膜の蛋白などで物質チャネルを構成する物質
D1 微小気泡を含有した気・液混相の流動体を吐出供給する手段
D2 流動体を吸引排出する手段
H 流動体保持容器。容器Hにて細胞培養する場合にはHは細胞培養容器(バイオリアクター)である。
M 微小気泡の発生手段
M4 気体吸引手段
M10 渦流ポンプ
M11 渦流ポンプの内蔵インペラ
Mnb マイクロ・ナノバブル
Mm ミリサイズ以上のバブル
PA Pタイプのバブル包含ガスPAの効果
PB Pタイプのバブル包含ガスPBの効果
TR Taylorリアクター
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイクロバブル、ナノバブル、マイクロ・ナノバブルと呼称される微小気泡を含有する液体の組成物、および、微小気泡を含有する組成物の製造方法に関する。
【0002】
特に本発明は、後述する特許文献1および特許文献2記載の微小気泡技術の不明確部分を補足し、かつ、特許文献1および特許文献2の微小気泡技術の改良発明である。
【0003】
本明細書では、微小気泡をマイクロおよび/またはナノバブルを略した「Mnb」と略記する。通常のミリサイズ以上のバブルを「Mm」と略記する。
【0004】
MnbおよびMnbの利用技術については、特許文献1から特許文献4に記載されているし、以下の参考文献01から22に記載されているので省略する。
【0005】
<参考文献01から22>
01 特開2009−189307号公報「芽胞細菌の殺菌乃至不活化方法」
02 特開2009−131770号公報「二酸化炭素ナノバブル水の製造方法」
03 特開2009−131769号公報「窒素ナノバブル水の製造方法」
04 特開2009−084258号公報「ナノバブルを含む癌の治療又は予防のための薬剤 」
05 特開2009−039600号公報「超微細気泡生成装置」
06 特開2008−259456号公報「魚介類の保存方法」
07 特開2008−237950号公報「水酸基ラジカルを含む水の製造方法および水酸基ラジカルを含む水」
08 特開2008−093612号公報「反応活性種を含む水の製造方法および反応活性種を含む水」
09 特開2008−093611号公報「極微小気泡を含む水の製造方法および極微小気泡を含む水」
10 特開2008−063258号公報「組織保存液」
11 特開2007−275089号公報「長期持続型オゾン水、長期持続型オゾン水を利用した環境殺菌・脱臭浄化方法 」
12 特開2006−223239号公報「酸素ナノバブルを利用した魚介類焙焼有効成分抽出方法およびその抽出方法によって得られた有効成分を添加した魚肉加工品素材」
13 特開2005−246294号公報「酸素ナノバブル水およびその製造方法」
14 特開2005−246293号公報「オゾン水およびその製造方法」
15 特開2005−245817号公報「ナノバブルの製造方法」
16 特開2005−110552号公報「加圧多層式マイクロオゾン殺菌・浄化・畜養殺菌システム」
17 再表2005/030649号公報「微小気泡の圧壊」
18 長雄一郎、村松憲、佐藤健次「酸素ナノバブル水の組織保存性に関する組織学的検討(第1報)」第111回日本解剖学総会・学術集会
19 平成17年度 新エネルギー・産業技術総合開発機構委託調査研究 バイオ分野におけるナノバブル水の産業利用に関する調査 成果報告書 38−40「ナノバブル水を利用した生体組織の保存等に関する評価研究」
10 Hojo Y,et al.“Anti−inflammatory Property of Oxygen Nano−bubbles” Circulation Journal vol.70, supplement I,p276(第70回 日本循環器学会総会・学術集会)
21 平成17年度 新エネルギー・産業技術総合開発機構委託調査研究 バイオ分野におけるナノバブル水の産業利用に関する調査 成果報告書 40−45「細胞の生理機能に対するナノバブル水の影響評価」
22 日本混相流学会混相流レクチャーシリーズ第35回「マイクロ・ナノバブルの特性とのその応用」2009年12月5日(関西大学にて配布)
【0006】
特許文献1および特許文献2の微小気泡技術は、有用な細胞に対する操作または有用な細胞変化の促進を目的とした技術であって、Mnbが従来のMmでは得られない大きな効果を細胞に与えることを利用している。特許文献1および特許文献2の微小気泡技術について以下に説明する。
【0007】
図1が特許文献1および特許文献2の微小気泡技術を説明する模式図である。すなわち、図1は、細胞に与える影響について、マイクロ・ナノバブルMnbがミリサイズ以上のバブルMmのそれよりも大きいことを示す模式図であって、図1(a)は、Mm表面に親水性細胞膜をもつ細胞が集まっているがMnは細胞に大きな影響を与えてはいないことを示す。
【0008】
これに対して図1(b)は、マイクロ・ナノバブルMnbが細胞Cのスケールよりも小さいことを示し、図1(c)は(b)の拡大模式図で、Mnbが細胞膜表面CSにある物質チャネル構成物質CP(細胞膜の蛋白など)に接近または親和性等で結合して影響を与える場合があることを示す。
【0009】
Mnbをなす気体が溶出して、周囲に高濃度ガス溶存状態を形成すれば、拡散によって細胞膜を透過することもある。
【0010】
Mnbをなす気体溶出による拡散現象で細胞膜を透過することを模式的に示す例図が図5および図6である。すなわち、図5が、気孔の二酸化炭素(CO2)吸収に与えるMnbの影響を示す模式図である。
【0011】
ここでMnbは、Young−Laplaceの式[ P = Pl + 2σ/r (P = gas pressure, Pl = liquid pressure, σ = surface tension, r = radius of the bubble)]により、径が縮小するとともに圧力が上昇する。それで、Mnbをなす気体の溶存量がMnbと液体の気液界面で局所的に高まり、気体が液体に溶出する。そのため、気孔近傍に二酸化炭素を包含するMnbがあると気孔近傍に二酸化炭素溶存量が極めて高い状態になって拡散による気孔部位の細胞膜透過量が増えて二酸化炭素吸収量が増大すると考えられる。
【0012】
そして図6が、細胞の酸素(O2)吸収に与えるMnbの影響を示す模式図である。ここでMnbは、図5同様にYoung−Laplaceの式により、径が縮小し、圧力の上昇から包含ガスの溶存量が気液界面で局所的に高まりガス溶出する。そのため、細胞近傍に酸素を包含するMnbがあると細胞近傍に酸素溶存量が極めて高い状態になって拡散による細胞膜透過量が増えて細胞の酸素吸収量が増大すると考えられる。図5・図6に示す「高濃度過飽和ゾーン」が細胞近辺で局所的に高濃度化して細胞膜を透過する気体分子の集合を示す。この気体分子が細胞内に拡散等で取込まれ種々の作用の引き金を引くと考えられる。
【0013】
特許文献1は、図8(a)(b)(c)のタイムチャート模式図で示されるMnb製法を開示している。
【0014】
すなわち、図8(a)は、気体の選択手段で時間的に順次に選択された複数の気体を気体吸引手段から吸引し、該複数の気体を微小気泡となし、液体吐出手段に時間的に順次連続的に吐出される操作で得た複数の気体の微小気泡含有組成物を得る製法である。
【0015】
図8(b)は、複数の微小気泡発生器へ細胞培養液が吸引されるとともに、複数の気体吸引手段から吸引した複数の気体を微小気泡となし、複数の液体吐出手段に連続的に吐出される操作で得た複数の気体の微小気泡含有の細胞培養用組成物の製法である。
【0016】
図8(c)は、図8(b)の製法の装置にて図8(a)の時間的順次の気体切り替えを組み合わせた製法である。
【0017】
これら図8(a)(b)(c)の製法によるMnbは、図2の(a)に示す「Pタイプ」Mnbである。「Pタイプ」のPはピュアガス(純ガス)の意味であって、概ね純度90%以上の単一気体である。具体的には、純度90%以上の窒素(N2)ガス、純度90%以上の酸素(O2)ガス、純度90%以上の二酸化炭素(CO2)ガス等である。
【0018】
図2(a)は、窒素(N2)、酸素(O2)、二酸化炭素(CO2)のそれぞれ該100%の単独成分ガスを包含した「Pタイプ」Mnbを示す図である。
【0019】
一方、特許文献2は、図8(d)のタイムチャート模式図で示されるMnb製法を開示している。
【0020】
すなわち、図8(d)は、気体吸引手段の上流に吸引気体の成分とその濃度を調整制御する手段、および、前記吸引気体の成分とその濃度を調整制御する手段に、該気体成分とその濃度の調整制御目標指令を出す気体成分・濃度調整制御目標指令の出力手段、を具備した装置による製法である。
【0021】
この図8(d)の製法によるMnbは、図2の(b)に示す「Cタイプ」Mnbである。「Cタイプ」のCはコンディションドガス(調整ガス)の意味であって、複数のガス(ピュアガス(純ガス)であってもなくともよい)の混合であって大気の成分の成分比、および、この成分比に近く調整したものであってもよい。より具体的には、通常の大気成分の成分比率に対して5%の変化があると細胞への影響が現れるので、各成分の1つ以上を5%以上の成分変化で混合させるのが好適である。図16が大気成分の比率を示す参考図である。
【0022】
図2(b)は、窒素(N2)、酸素(O2)、二酸化炭素(CO2)を混合して成分調整したガスを包含した「Cタイプ」Mnbを示す図である。
【0023】
図3と図4で「Cタイプ」と「Pタイプ」のMnbを補足説明する。図3が、「Cタイプ」Mnbを説明する模式図である。図3第一行のGas”CA”とGas”CB”とでは、包含ガスの成分比(図3第二行)もバブルの粒度分布(図3第三行)も異なっているので、細胞に与える効果(図3第三行)はGas”CA”とGas”CB”とで異なる。[CA≠CB]
【0024】
図4が、「Pタイプ」Mnbを説明する模式図である。図4第一行のGas”PA”とGas”PB”とでは、包含ガスの成分比(図4第二から四行)もバブルの粒度分布(図4第三行)も異なっているが、包含ガスの成分比(図4第二から四行)は、窒素(N2)単独成分ガス量(図4第二行)、酸素(O2)単独成分ガスの量(図4第三行)、二酸化炭素(CO2)単独成分ガス量(図4第四行)の比率を調整すれば、図3のGas”CA”あるいはGas”CB”と、ほぼ等しくできる。
【0025】
同様に、バブルの粒度分布(図4第三行)も、図3のGas”CA”Gas”CB”とほぼ等しくできる。しかし、それらの効果は等しくはない。(効果CA≠PA、効果CB≠PB)
【0026】
また、特許文献3に、以上説明した特許文献1および特許文献2の微小気泡技術と類似の記載が見られる。すなわち、特許文献3[請求項3]に「前記水素発生手段は、発生する気体の種類に応じた供給比率を変更可能な気体分配手段を含むことを特徴とする請求項1又は2に記載のナノバブル液体製造装置。」とあり、また、特許文献3の[0010]に「(3)前記水素発生手段は、発生する気体の種類に応じた供給比率を変更可能な気体分配手段を含むことを特徴とする上記(1)又は(2)に記載のナノバブル液体製造装置を提供することができる。」とある。また特許文献3の[0011]に「・・・また、気体分配手段は、可変バルブの組合せで各種気体の比率を変えてもよく、それぞれの気体の流量を調整する装置(例えば、マスフローコントローラ)を用いて行ってもよい。」とある。さらに特許文献3の図面に「16a 気体分配手段」の記載もある。
【0027】
しかしながら特許文献3の気体分配や気体比率変更等は、目的や効果について、特許文献1及び特許文献2の記載に比べて不明確である。すなわち特許文献3は、水素を含むナノバブル水と該ナノバブル液体製造装置を開示しているが、水素以外の気体分配手段の説明、水素以外の気体供給手段の記載もなく、微小気泡の包含ガスの調整を具体的に示すものではない。
【0028】
また同様に、特許文献4および特許文献5にも、特許文献1および特許文献2の微小気泡技術と類似の記載が見られるが、その製法手順等、装置構成要素等は異なっている。(詳述略す)
【0029】
さらにまた同様に、特許文献6にも、特許文献1および特許文献2の微小気泡技術と類似の記載が見られる。特許文献6の主眼は「気体を過飽和状態として大量に液体中に溶解させる技術」であるが、過飽和で発生する複数の気体による微小気泡(Mnb)の発生が示されている。(特許文献6[請求項2][請求項11]参照) しかし、特許文献6の製法手順等、装置構成要素等も、詳細には特許文献1および特許文献2の微小気泡技術とは異なるものである。(詳述略す)
【0030】
ここで、図11から図15を用いて、特許文献1および特許文献2の微小気泡技術にて追加補足されるべき技術、および特許文献7の組合せ技術について説明する。
【0031】
図11は、株式会社協和機設のMnb発生装置のデータであって、Mnb発生後にMnb粒径が時間経過とともに縮小していくことを示す模式図である。測定器はベックマンコールター社のコールター方式微細粒子測定器である。
【0032】
この図11が示すMnb粒径の縮小変化は、図5および図6を用いて説明したように、Young−Laplaceの式[ P = Pl + 2σ/r (P = gas pressure, Pl =
liquid pressure, σ = surface tension, r = radius of the
bubble)]で説明される。
【0033】
細胞操作においては、この粒径の時間変化を加味しなければならない。特に、気体の種類によって粒径の時間変化が異なることに注意が必要である。
【0034】
具体的には、二酸化炭素(CO2)は溶解度が酸素・窒素に比べて大きいのでMnb発生後に溶出する量も多い。そのため二酸化炭素(CO2)を包含したMnbは比較的早期に縮小する(図12参照)。
【0035】
図12(a)は、二酸化炭素(CO2)が時間経過と共により多く溶出して包含量が減少することを示す模式図である。図12(b)は、各気体の水に対する溶解度の温度変化を示す参考図である。このような気体種による時間的変化の差異を見込んで実験データを採取して、実験と実際の応用との差が生じないようにする工夫を要する。
【0036】
簡単には、実験でのMnb発生から細胞近傍へのMnb供給の時間と実用装置でのそれとを一致させればよい。もちろん液体温度等の付帯環境条件も一致させる必要がある。
【0037】
実際には、実験でのMnb発生から細胞近傍へのMnb供給の時間と実用装置でのそれとを一致させることは困難であるので、発生させるMnbごとに図11の粒径分布時間変化を実測するとともに、図12の気体種・適用温度ごとの溶存量変化を加味して実用装置内細胞近傍におけるMnb粒径分布・溶存量・気体溶出量などを推定し実施するのが好ましい。
【0038】
図13は参考図で、特許文献1に例示されたMnb発生装置の模式図である。(特許文献1[図2]の修正図) 図13のようなマルチノズルの装置構成で、図8(a)や図8(b)に示した複数の異なった気体を包含したMnbを同時に発生させることができる。ここで、10は、流動体保持容器H、または、流動体保持容器HとTaylorリアクターTR(図14を用いて後述)の組合せであって、容器Hにて細胞培養する場合にはHは細胞培養容器(バイオリアクター)である。
【0039】
図14も参考図で、特許文献2に例示されたMnb発生装置の模式図である。(特許文献2[図4]の修正図) 図14の17、18、18A、30、31は以下である。
【0040】
すなわち、17は、10の液体濁度を透過光または散乱光測定方式で測定するセンサー、18は、10の温度・圧力・水素イオン濃度・生物学的/化学的酸素要求量等の環境の操作手段、18Aは、10の温度・圧力・水素イオン濃度・生物学的/化学的酸素要求量等の環境の制御手段、30は、液体槽の環境を調整制御する手段18Aに、促進環境の調整制御目標指令を出す液体槽環境調整制御目標指令の出力手段、31は、対象細胞について、該細胞自身の変化を促進するのに要する複数の物質それぞれ個別の取込み安さに応じた、それぞれ個別の気体成分とその濃度をあらかじめ実験的に決定する工程によって得られたデータのデータベース、および、該細胞が自身の変化を促進するのに要する複数の物質それぞれ個別の取込み安さを促進する液体槽の環境のデータをあらかじめ実験的に決定する工程によって得られたデータのデータベースである。
【0041】
これら17、18、18A、30、31を兼備した構成で細胞培養やiPS細胞化操作等のバイオリアクター機能が実現される。
【0042】
図15も参考図で、特許文献7に記載されたCT(Couette-Taylor)反応装置(Taylorリアクター)TRと微小気泡発生器とを組み合わせたプロセス装置の模式図である。特許文献1および特許文献2の微小気泡技術を実施する場合、TaylorリアクターTRとの組合せによって、細胞培養やiPS細胞化操作等のバイオリアクター機能をマクロ的に効率化できる。
【0043】
ここで「マクロ的」とは、リアクター内部の流れ環境の均一化を意味するものであって、たとえば前述の図11・図12で説明した細胞近傍へのMnb供給の時間と実用装置でのそれとを一致させる「ミクロ的な」細胞近傍での条件、および、液体温度等の付帯環境条件を一致させる「ミクロ的な」細胞近傍での条件こと、について、マクロ的にリアクター内部のどの位置でも同様に実現することができるということである。(特許文献7参照)
【0044】
以上図11から図15を用いて説明した特許文献1・特許文献2の追加補足技術、および特許文献7の技術は、本発明の実施においても組み合わせて実施することができる。
【特許文献1】特願2009−234683号「細胞変化を促進する微小気泡含有組成物、およびその微小気泡含有組成物を製造する装置、ならびに微小気泡含有組成物を用いた細胞変化促進方法」丸井智敬
【特許文献2】特願2009−282840号「微小気泡を含有する液体組成物で細胞変化を促進する装置、微小気泡を含有する液体組成物で細胞変化を促進する方法」丸井智敬
【特許文献3】特許公開2008−6397号公報「ナノバブル液体製造装置及びナノバブル液体」オプトクリエーション
【特許文献4】特許公開2009−195889号公報「微細気泡発生装置」アイシン精機株式会社
【特許文献5】特許公開2007−75785号公報「水処理方法および水処理装置」シャープ株式会社
【特許文献6】公表特許2009−195889号公報(WO2006/127979)「気体の液体への溶解と同溶解気体の供給のためのシステム及び方法」ユニバーシティ オブ アーカンソー
【特許文献7】特願2010−012727号「CT(Couette-Taylor)反応装置を用いたプロセス装置、該装置と微小気泡発生器とを組み合わせたプロセス装置。」丸井智敬
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0045】
本発明は、特許文献1および特許文献2記載の微小気泡技術の不明確部分を補足し、かつ、特許文献1および特許文献2の微小気泡技術を改良した発明を提案するものである。
【課題を解決するための手段】
【0046】
本発明は、図2の(c)に示す、特許文献1および特許文献2で示された「Pタイプ」「Cタイプ」Mnbを混合した「P/C混合タイプ」Mnbである。本発明を、図7(効果)、図9と図10(本発明タイムチャート)で説明する。
【0047】
まず図7が、「Pタイプ」Mnb・「Cタイプ」Mnb・「P/C混合タイプ」Mnbそれぞれが細胞または生物に与える影響を比較する実験1)から実験6)のまとめ表である。概して「P/C混合タイプ」Mnbが細胞あるいは生物に与える影響が大きいことがわかる。
【0048】
図7の実験1)<酵母増殖> 大気組成よりも酸素の成分を10%大きくした3通りのMnb群を常温培養液に加えた培地で酵母(S. cerevisiae)を48時間増殖させたときのコロニー数の比較である。
【0049】
図7の実験2)<大腸菌増殖> 大気組成よりも酸素の成分を10%大きくした3通りのMnb群を常温培養液に加えた培地で大腸菌(E.Coli)を48時間増殖させたときのコロニー数の比較である。
【0050】
図7の実験3)<気孔吸収>大気組成よりも二酸化炭素の成分を10%大きくした3通りのMnb群を常温蒸留水に加えてミスト化してシロイヌナズナに6時間おきに一定量散布。散布前から30日後の植物体重量変化の比較である。
【0051】
図7の実験4)<メタン発酵>酸素ゼロ、窒素とアルゴン99%、二酸化炭素1%の3通りのMnb群を常温培養液に加え常温でメタン菌を48時間培養したときのメタン発生量の比較である。
【0052】
図7の実験5)<人体血流量>大気組成よりも二酸化炭素の成分を10%大きくした3通りのMnb群を38℃の温浴水に加え、該温浴水に30分全身浴する人体上腕部の血流上昇値の比較である。
【0053】
図7の実験6)<動物細胞増殖>大気組成よりも酸素の成分を10%大きくした3通りのMnb群を常温培養液に加えた培地で標準チャイニーズハムスター(CHO)細胞を48時間増殖させたときの細胞数の比較である。
【0054】
ここで、「P/C混合タイプ」Mnbのほうが「Pタイプ」Mnb、「Cタイプ」Mnbよりも細胞あるいは生物に与える影響が大きいことの理由は現時点では明確ではなく今後の研究によらねばならない。
【0055】
仮説として考えられることは、上記の各実験にて細胞または生物が敏感に作用する気体分子は、実験1)、実験2)では酸素、実験3)では二酸化炭素、実験4)では窒素とアルゴン、実験5)では二酸化炭素、実験6)では酸素等であって、これらの作用気体が細胞近辺に局所的に高濃度で存在し、かつまた、他の気体分子は大気等の通常環境での溶存状態にあったほうがよい。そのため、「Pタイプ」Mnbでは、他の悪影響気体分子の濃度が高すぎるので効果の抑制があり、「Cタイプ」Mnbでは局所高濃度化の程度が低い。それで両者の中間的な「P/C混合タイプ」Mnbが、比較的良好な効果が得られる、ということである。(図5・図6の「高濃度過飽和ゾーン」が細胞近辺の局所高濃度化した作用気体分子の集合を示す)
【0056】
さて、本発明の「P/C混合タイプ」Mnbの製法について、図9と図10で説明する。
【0057】
図9は、本発明の「P/C混合タイプ」Mnbの製法のタイムチャート模式図であって、「Cタイプ」Mnbを発生させた後に、同じ液体容器Hに「Pタイプ」Mnbを発生して混合し「P/C混合タイプ」Mnbを得るものである。
【0058】
図10は、逆に「Pタイプ」Mnbを発生させた後に「Cタイプ」Mnbを発生して混合して「P/C混合タイプ」Mnbを得るものである。このようにすれば「Pタイプ」・「Cタイプ」Mnbの混合タイプの製法は容易である。
【0059】
すなわち、本発明の「P/C混合タイプ」Mnbは、複数の純度90%以上の気体供給手段、該複数気体個別のゼロを含む混合比の設定手段、前記の設定混合比で前記複数気体を混合する気体調整手段、該調整された気体の吸引手段、液体吸引手段、液体吐出手段、および、微小気体を生成する本体を具備した微小気泡発生器を用いて製造すればよい。
【0060】
また、本発明の「P/C混合タイプ」Mnbは、純度90%以上の気体供給手段、複数の気体を混合した気体(プレミックス調整気体)の供給手段、該純度90%以上の気体または該複数の気体を混合した気体(プレミックス調整気体)のいずれかを選択的に吸引する手段、液体吸引手段、液体吐出手段、および、微小気体を生成する本体を具備した微小気泡発生器を用いて製造すればよい。
【0061】
ここで「プレミックス調整気体」のプレミックスは、「Prepared Mix=あらかじめ混合したもの、という意味で、プレミックス調整気体は、とはあらかじめ成分調整された混合気体、または、大気のような容易に入手される既に特定の混合比で混合された気体である。
【0062】
いずれにせよ本発明の組成物である「P/C混合タイプ」Mnbは(請求項1)、微小気泡を含有する液体の組成物であって、該微小気泡は、少なくともその粒径が30μm以下のマイクロバブルを含み、かつ、該微小気泡が包含する気体が少なくとも以下の二種が混在するものである組成物である。 1 気体が、純度90%以上の単一気体である。 2 気体が、複数の気体が混合した混合気体である。
【0063】
そして、本発明の組成物の製法は(請求項4)、複数の純度90%以上の気体供給手段、該複数気体のゼロを含む混合比の設定手段、前記の設定混合比で前記複数気体を混合する気体調整手段、該調整された気体の吸引手段、液体吸引手段、液体吐出手段、および、微小気体を生成する本体を具備した微小気泡発生器を用いた、微小気泡を含有する組成物の製造方法であって、該微小気泡は、少なくともその粒径が30μm以下のマイクロバブルを含み、かつ、少なくとも以下の二工程を有する方法である。 1 前記の混合比の設定手段の設定を複数気体のひとつを除きすべてゼロとして前記気体吸引手段で吸引し、純度90%以上の単一気体を包含した気泡を前記液体吸引手段で吸引した液体内に前記液体吐出手段で吐出して発生する工程。 2 前記の混合比の設定手段の設定を複数気体についてゼロでない設定として前記気体吸引手段で吸引し、複数気体を包含した気泡を前記液体吸引手段で吸引した液体内に前記液体吐出手段で吐出して発生する工程。
【0064】
また、前記プレミックス調整気体を用いた本発明の組成物の製法は(請求項5)、純度90%以上の気体供給手段、複数の気体を混合した気体(プレミックス調整気体)の供給手段、該純度90%以上の気体または該複数の気体を混合した気体のいずれかを選択的に吸引する手段、液体吸引手段、液体吐出手段、および、微小気体を生成する本体を具備した微小気泡発生器を用いた、微小気泡を含有する組成物の製造方法であって、該微小気泡は、少なくともその粒径が30μm以下のマイクロバブルを含み、かつ、少なくとも以下の二工程を有する方法である。 1 前記の純度90%以上の単一気体を前記気体吸引手段で選択吸引し、純度90%以上の単一気体を包含した気泡を前記液体吸引手段で吸引した液体内に前記液体吐出手段で吐出して発生する工程。 2 前記の複数の気体を混合した気体を前記気体吸引手段で選択吸引し、複数の気体を混合した気体を包含した気泡を前記液体吸引手段で吸引した液体内に前記液体吐出手段で吐出して発生する工程。
【0065】
また、本発明の組成物の液体に、特許文献1の[請求項13]ならびにその説明である特許文献1の[0048]から[0050]に記載された細胞変化促進物質を混ぜることで効果を増大することができる。
【0066】
すなわち(請求項2)、請求項1の微小気泡を含有する液体の組成物であって、前記の液体が細胞培養液で、該細胞培養液に対象細胞の自然生育環境に存在する物質、および/または、対象細胞中の生体反応に寄与する物質、および/または、生体物質である以下の1から4の物質が少なくともひとつ混合されているものである組成物が好適である。 1 遺伝子、 2 酵素・補酵素・助酵素、(「・」は、「または」を示す) 3 遺伝子によって生合成されるリコンビナント蛋白質およびアミノ酸・ぺプチド・糖鎖、(「・」は、「または」を示す) 4 ホルモン・フェロモン・植物のアレロパシーを誘発する物質。(「・」は、「または」を示す)
【0067】
細胞変化促進物質を混ぜる工程を付加した製法は(請求項6)、請求項4または請求項5のいずれかの組成物の製造方法であって、前記の液体が細胞培養液で、該細胞培養液に(対象細胞の自然生育環境に存在する物質、および/または、対象細胞中の生体反応に寄与する物質、および/または、生体物質である)以下の1から4の物質を少なくともひとつ混合する工程をさらに含めればよい。 1 遺伝子、 2 酵素・補酵素・助酵素、(「・」は、「または」を示す) 3 遺伝子によって生合成されるリコンビナント蛋白質およびアミノ酸・ぺプチド・糖鎖、(「・」は、「または」を示す) 4 ホルモン・フェロモン・植物のアレロパシーを誘発する物質。(「・」は、「または」を示す)
【0068】
ここで、「アレロパシー(Allelopathy)」とは、ある植物が他の植物の生長を抑える物質(アレロケミカル)を放出したり、あるいは動物や微生物を防いだり、あるいは引き寄せたりする効果の総称で邦訳では「他感作用」である。
【0069】
また、本発明の気体は、より具体的には、特許文献1の[請求項14]、ならびにその説明である特許文献1の[0051][0052]に記載された、「対象細胞の自然生育環境に存在する気体種、および/または、対象細胞中の生体反応に寄与する気体種である」ことが好適である。当然ながら、自然生育環境に存在する気体とは大気であるので、アルゴン(Ar)も含まれる。また、細胞中の生体反応に寄与する気体種には、各種の細胞影響が注目される一酸化窒素(NO)や、有害気体である一酸化炭素(CO)も含まれる。
【0070】
すなわち、組成物としては(請求項3)、請求項1または請求項2の微小気泡を含有する液体の組成物であって、前記の気体が対象細胞の自然生育環境に存在する気体種、および/または、対象細胞中の生体反応に寄与する以下の1から7の気体のいずれかであることが好適である。 1 窒素(N2)、2 酸素(O2)、3 二酸化炭素(CO2)、4 アルゴン(Ar)、5 水素(H2)、6 一酸化窒素(NO)、7 一酸化炭素(CO)。
【0071】
同様にかかる組成物の製法は(請求項7)、請求項4または請求項5のいずれかの組成物の製造方法であって、気体が以下の1から7の気体のいずれかであることが好適である。 1 窒素(N2)、2 酸素(O2)、3 二酸化炭素(CO2)、4 アルゴン(Ar)、5 水素(H2)、6 一酸化窒素(NO)、7 一酸化炭素(CO)。
【0072】
以上説明した本発明の実施に当たって、図11から図14を用いて説明した特許文献1・特許文献2の追加補足技術、および、図15の特許文献7によるTaylorリアクターの利用技術を組み合わせて実施することができる。すなわち、図11と図12に示すようなMnbの粒径分布の時間変化、それに伴う気体分子種ごとの溶出データを実験的に把握して、たとえば、二酸化炭素のような溶出しやすい気体については量を多くしたり、ガス投入を遅らせたりする操作を実施すること、図13の複数の吐出手段による構成を用いること、図14のセンサーとデータベースをもつ制御システムの構成を用いること、図15のCT(Couette-Taylor)反応装置(Taylorリアクター)との組み合わせた構成で細胞操作等のマクロ的均一化効果を得ること、等である。
【発明の効果】
【0073】
本発明は、窒素(N2)、酸素(O2)、二酸化炭素(CO2)等の純度90%以上の単一気体の単独成分ガスを包含したMnbを混合した「Pタイプ」Mnbと窒素(N2)、酸素(O2)、二酸化炭素(CO2)等を混合して成分調整したガスを包含した「Cタイプ」Mnbとを混合した「P/C混合タイプ」のMnbで細胞操作の効果を向上させた。
【0074】
「Pタイプ」Mnbは特許文献1に、「Cタイプ」Mnbは特許文献2に記載されているが、本案はこれらの組合せを明示した。もちろん、包含ガスは窒素(N2)、酸素(O2)、二酸化炭素(CO2)に限らず、アルゴン(Ar)など対象細胞の自然生育環境に存在する気体種、および/または、一酸化窒素(NO)や一酸化炭素(CO)など対象細胞中の生体反応に寄与する(影響を与える)気体種であってもよい。(このことは特許文献1[請求項14]にも記載されている。)
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】細胞に与える影響は、Mnbがミリサイズ以上のバブルMmのそれよりも大きいことを示す模式図。(a)は、Mm表面に親水性細胞膜をもつ細胞が集まっているがMnは細胞に大きな影響を与えてはいないことを示す。 これに対して(b)は、Mnbが細胞Cのスケールよりも小さいことを示し、(c)は(b)の拡大模式図で、Mnbが細胞膜表面CSにある物質チャネル構成物質CP(細胞膜の蛋白など)に接近または親和性等で結合して影響を与える場合があることを示す。
【図2】Mnbの包含ガスの違いを示す模式図。(a)は、窒素(N2)、酸素(O2)、二酸化炭素(CO2)のそれぞれ純度90%以上の単一気体の単独成分ガスを包含した「Pタイプ」Mnbを示す図。(b)は、窒素(N2)、酸素(O2)、二酸化炭素(CO2)を混合して成分調整したガスを包含した「Cタイプ」Mnbを示す図。(c)は、「Pタイプ」「Cタイプ」Mnbを混合した「P/C混合タイプ」Mnbを示す図。
【図3】「Cタイプ」Mnbを説明する模式図。Gas”CA”とGas”CB”は包含ガスの成分比(図3第二行)もバブルの粒度分布(図3第三行)も異なっているので、細胞に与える効果(図3第三行)はGas”CA”とGas”CB”とで異なる。[CA≠CB]
【図4】「Pタイプ」Mnbを説明する模式図。Gas”PA”とGas”PB”は包含したガスの成分比(図4第二から四行)もバブルの粒度分布(図4第三行)も異なっているが、包含ガスの成分比(図4第二から四行)は、窒素(N2)単独成分ガス量(図4第二行)、酸素(O2)単独成分ガスの量(図4第三行)、二酸化炭素(CO2)単独成分ガス量(図4第四行)の比率を調整すれば、Gas”CA”・Gas”CB”と、ほぼ等しくできる。同様に、バブルの粒度分布(図4第三行)も、Gas”CA”Gas”CB”とほぼ等しくできる。しかし、それらの効果は等しくはない。(効果CA≠PA、効果CB≠PB)
【図5】気孔の二酸化炭素(CO2)吸収に与えるMnbの影響を示す模式図。Mnbは、Young−Laplaceの式[ P = Pl + 2σ/r (P = gas pressure, Pl =liquid pressure, σ = surface tension, r = radius of thebubble)]により、径が縮小し、圧力の上昇から包含ガスの溶存量が気液界面で局所的に高まりガス溶出する。そのため、気孔近傍に二酸化炭素を包含するMnbがあると気孔近傍に二酸化炭素溶存量が極めて高い状態になって拡散による気孔部位の細胞膜透過量が増えて二酸化炭素吸収量が増大すると考えられる。
【図6】細胞の酸素(O2)吸収に与えるMnbの影響を示す模式図。Mnbは、Young−Laplaceの式[ P = Pl + 2σ/r (P = gas pressure, Pl =liquid pressure, σ = surface tension, r = radius of thebubble)]により、径が縮小し、圧力の上昇から包含ガスの溶存量が気液界面で局所的に高まりガス溶出する。そのため、細胞近傍に酸素を包含したMnbがあると細胞近傍に酸素溶存量が極めて高い状態になって拡散による細胞膜透過量が増えて細胞の酸素吸収量が増大すると考えられる。
【図7】「Pタイプ」Mnb、「Cタイプ」Mnb、および、「P/C混合タイプ」Mnbのそれぞれが細胞(生物)に与える影響を比較する実験1)から6)のまとめ表。概して「P/C混合タイプ」Mnbが細胞(生物)に与える影響が大きい。
【図8】特許文献1と特許文献2に記載されたMnb含有液体(微小気泡を含有する液体組成物)の製法のタイムチャート模式図。(a)は、気体の選択手段で時間的に順次に選択された複数の気体を気体吸引手段から吸引し、該複数の気体を微小気泡となし、液体吐出手段に時間的に順次連続的に吐出される操作で得た複数の気体の微小気泡含有組成物を得る製法を示す。(b)は、複数の微小気泡発生器へ細胞培養液が吸引されるとともに、複数の気体吸引手段から吸引した複数の気体を微小気泡となし、複数の液体吐出手段に連続的に吐出される操作で得た複数の気体の微小気泡含有の細胞培養用組成物の製法を示す。(c)は、(b)製法装置にて(a)の時間的順次の気体切り替えを組み合わせた製法を示す。(d)は、気体吸引手段の上流に吸引気体の成分とその濃度を調整制御する手段、および、前記吸引気体の成分とその濃度を調整制御する手段に、該気体成分とその濃度の調整制御目標指令を出す気体成分・濃度調整制御目標指令の出力手段、を具備した装置による製法を示す。これら製法によるMnbのタイプを図中に記載した。
【図9】本発明のMnb含有液体(微小気泡を含有する液体組成物)の製法のタイムチャート模式図。「Cタイプ」Mnbを発生させた後に「Pタイプ」Mnbを発生して混合した「P/C混合タイプ」Mnbを得る。
【図10】本発明のMnb含有液体(微小気泡を含有する液体組成物)の製法のタイムチャート模式図。「Pタイプ」Mnbを発生させた後に「Cタイプ」Mnbを発生して混合した「P/C混合タイプ」Mnbを得る。
【図11】株式会社協和機設のMnb発生装置のデータであって、Mnb発生後にMnb粒径が時間経過とともに縮小していくことを示す模式図。測定器はベックマンコールター社のコールター方式微細粒子測定器。
【図12】二酸化炭素(CO2)は溶解度が酸素・窒素に比べて大きいのでMnb発生後に溶出する量も多い。(a)は、二酸化炭素(CO2)が時間経過と共により多く溶出して包含量が減少することを示す模式図。(b)は、各気体の水に対する溶解度の温度変化を示す参考図。
【図13】特許文献1のMnb発生装置の模式図。特許文献1[図2]の修正図である。
【図14】特許文献2のMnb発生装置の模式図。特許文献2[図4]の修正図である。
【図15】特許文献7のCT(Couette-Taylor)反応装置と微小気泡発生器とを組み合わせたプロセス装置の模式図。
【図16】参考図 乾燥空気の主要成分
【符号の説明】
【0076】
1 固定中空円筒体、またはこれを包含する中空回転対称体
2 1の内壁と間隙4を保ちつつ同軸回転する内包円筒体、またはこれを包含する内包回転対称体
3 2の回転手段
4 1の内壁と2の側外壁との間隙
10 流動体保持容器H、または、流動体保持容器HとTaylorリアクターTR。容器Hにて細胞培養する場合にはHは細胞培養容器(バイオリアクター)である。
11 複数の気体供給手段(のひとつ)
12 吸引気体の成分とその濃度を調整制御する手段
12A 吸引気体の成分とその濃度を調整制御する手段12に、気体成分とその濃度の調整制御目標指令を出す気体成分・濃度調整制御目標指令の出力手段
13 成分・濃度を調整制御された吸引気体の供給手段
17 10の液体濁度を透過光または散乱光測定方式で測定するセンサー
18 10の温度・圧力・水素イオン濃度・生物学的/化学的酸素要求量等の環境の操作手段
18A 10の温度・圧力・水素イオン濃度・生物学的/化学的酸素要求量等の環境の制御手段
30 液体槽の環境を調整制御する手段18Aに、促進環境の調整制御目標指令を出す液体槽環境調整制御目標指令の出力手段
31 対象細胞について、該細胞自身の変化を促進するのに要する複数の物質それぞれ個別の取込み安さに応じた、それぞれ個別の気体成分とその濃度をあらかじめ実験的に決定する工程によって得られたデータのデータベース、および、該細胞が自身の変化を促進するのに要する複数の物質それぞれ個別の取込み安さを促進する液体槽の環境のデータをあらかじめ実験的に決定する工程によって得られたデータのデータベース
C1 間隙4の一部に被プロセス材を供給する手段
C2 間隙4の他部から被プロセス材を抽出する手段
C 細胞
CA Cタイプのバブル包含ガスCAの効果
CB Cタイプのバブル包含ガスCBの効果
CS 細胞膜
CT 細胞膜の蛋白などで物質チャネルを構成する物質
D1 微小気泡を含有した気・液混相の流動体を吐出供給する手段
D2 流動体を吸引排出する手段
H 流動体保持容器。容器Hにて細胞培養する場合にはHは細胞培養容器(バイオリアクター)である。
M 微小気泡の発生手段
M4 気体吸引手段
M10 渦流ポンプ
M11 渦流ポンプの内蔵インペラ
Mnb マイクロ・ナノバブル
Mm ミリサイズ以上のバブル
PA Pタイプのバブル包含ガスPAの効果
PB Pタイプのバブル包含ガスPBの効果
TR Taylorリアクター
【特許請求の範囲】
【請求項1】
微小気泡を含有する液体の組成物であって、
該微小気泡は、少なくともその粒径が30μm以下のマイクロバブルを含み、かつ、
該微小気泡の包含気体が少なくとも以下の二種が混在するものである組成物。
1 気体が、純度90%以上の単一気体である。
2 気体が、複数の気体が混合した混合気体である。
【請求項2】
請求項1の微小気泡を含有する液体の組成物であって、
前記の液体が、以下の物質のうち少なくともひとつを含有した細胞培養液である組成物。
1 遺伝子、
2 酵素・補酵素・助酵素、(「・」は、「または」を示す)
3 遺伝子によって生合成されるリコンビナント蛋白質・アミノ酸・ぺプチド・糖鎖、(「・」は、「または」を示す)
4 ホルモン・フェロモン・植物のアレロパシーを誘発する物質。(「・」は、「または」を示す)
【請求項3】
請求項1または請求項2の微小気泡を含有する液体の組成物であって、
前記の微小気泡の包含気体が下記のいずれかである組成物。
1 窒素(N2)、
2 酸素(O2)、
3 二酸化炭素(CO2)、
4 アルゴン(Ar)、
5 水素(H2)、
6 一酸化窒素(NO)、
7 一酸化炭素(CO)。
【請求項4】
複数の純度90%以上の気体供給手段、該複数気体のゼロを含む混合比の設定手段、前記の設定混合比で前記複数気体を混合する気体調整手段、該調整された気体の吸引手段、液体吸引手段、液体吐出手段、および、微小気体を生成する本体を具備した微小気泡発生器を用いた、微小気泡を含有する組成物の製造方法であって、
該微小気泡は、少なくともその粒径が30μm以下のマイクロバブルを含み、かつ、少なくとも以下の二工程を有する方法。
1 前記の混合比の設定手段の設定を複数気体のひとつを除きすべてゼロとして前記気体吸引手段で吸引し、純度90%以上の単一気体を包含した気泡を前記液体吸引手段で吸引した液体内に前記液体吐出手段で吐出して発生する工程。
2 前記の混合比の設定手段の設定を複数気体についてゼロでない設定として前記気体吸引手段で吸引し、複数気体を包含した気泡を前記液体吸引手段で吸引した液体内に前記液体吐出手段で吐出して発生する工程。
【請求項5】
純度90%以上の気体供給手段、複数の気体を混合した気体の供給手段、該純度90%以上の気体または該複数の気体を混合した気体のいずれかを選択的に吸引する手段、液体吸引手段、液体吐出手段、および、微小気体を生成する本体を具備した微小気泡発生器を用いた、微小気泡を含有する組成物の製造方法であって、
該微小気泡は、少なくともその粒径が30μm以下のマイクロバブルを含み、かつ、少なくとも以下の二工程を有する方法。
1 前記の純度90%以上の単一気体を前記気体吸引手段で選択吸引し、純度90%以上の単一気体を包含した気泡を前記液体吸引手段で吸引した液体内に前記液体吐出手段で吐出して発生する工程。
2 前記の複数の気体を混合した気体を前記気体吸引手段で選択吸引し、複数の気体を混合した気体を包含した気泡を前記液体吸引手段で吸引した液体内に前記液体吐出手段で吐出して発生する工程。
【請求項6】
請求項4または請求項5のいずれかの組成物の製造方法であって、
前記の液体が細胞培養液で、該細胞培養液に以下の物質のうち少なくともひとつを混合する工程をさらに含むものである方法。
1 遺伝子、
2 酵素・補酵素・助酵素、(「・」は、「または」を示す)
3 遺伝子によって生合成されるリコンビナント蛋白質・アミノ酸・ぺプチド・糖鎖、(「・」は、「または」を示す)
4 ホルモン・フェロモン・植物のアレロパシーを誘発する物質。(「・」は、「または」を示す)
【請求項7】
請求項4または請求項5のいずれかの組成物の製造方法であって、
前記の気体が下記のいずれかである方法。
1 窒素(N2)、
2 酸素(O2)、
3 二酸化炭素(CO2)、
4 アルゴン(Ar)、
5 水素(H2)、
6 一酸化窒素(NO)、
7 一酸化炭素(CO)。
【請求項1】
微小気泡を含有する液体の組成物であって、
該微小気泡は、少なくともその粒径が30μm以下のマイクロバブルを含み、かつ、
該微小気泡の包含気体が少なくとも以下の二種が混在するものである組成物。
1 気体が、純度90%以上の単一気体である。
2 気体が、複数の気体が混合した混合気体である。
【請求項2】
請求項1の微小気泡を含有する液体の組成物であって、
前記の液体が、以下の物質のうち少なくともひとつを含有した細胞培養液である組成物。
1 遺伝子、
2 酵素・補酵素・助酵素、(「・」は、「または」を示す)
3 遺伝子によって生合成されるリコンビナント蛋白質・アミノ酸・ぺプチド・糖鎖、(「・」は、「または」を示す)
4 ホルモン・フェロモン・植物のアレロパシーを誘発する物質。(「・」は、「または」を示す)
【請求項3】
請求項1または請求項2の微小気泡を含有する液体の組成物であって、
前記の微小気泡の包含気体が下記のいずれかである組成物。
1 窒素(N2)、
2 酸素(O2)、
3 二酸化炭素(CO2)、
4 アルゴン(Ar)、
5 水素(H2)、
6 一酸化窒素(NO)、
7 一酸化炭素(CO)。
【請求項4】
複数の純度90%以上の気体供給手段、該複数気体のゼロを含む混合比の設定手段、前記の設定混合比で前記複数気体を混合する気体調整手段、該調整された気体の吸引手段、液体吸引手段、液体吐出手段、および、微小気体を生成する本体を具備した微小気泡発生器を用いた、微小気泡を含有する組成物の製造方法であって、
該微小気泡は、少なくともその粒径が30μm以下のマイクロバブルを含み、かつ、少なくとも以下の二工程を有する方法。
1 前記の混合比の設定手段の設定を複数気体のひとつを除きすべてゼロとして前記気体吸引手段で吸引し、純度90%以上の単一気体を包含した気泡を前記液体吸引手段で吸引した液体内に前記液体吐出手段で吐出して発生する工程。
2 前記の混合比の設定手段の設定を複数気体についてゼロでない設定として前記気体吸引手段で吸引し、複数気体を包含した気泡を前記液体吸引手段で吸引した液体内に前記液体吐出手段で吐出して発生する工程。
【請求項5】
純度90%以上の気体供給手段、複数の気体を混合した気体の供給手段、該純度90%以上の気体または該複数の気体を混合した気体のいずれかを選択的に吸引する手段、液体吸引手段、液体吐出手段、および、微小気体を生成する本体を具備した微小気泡発生器を用いた、微小気泡を含有する組成物の製造方法であって、
該微小気泡は、少なくともその粒径が30μm以下のマイクロバブルを含み、かつ、少なくとも以下の二工程を有する方法。
1 前記の純度90%以上の単一気体を前記気体吸引手段で選択吸引し、純度90%以上の単一気体を包含した気泡を前記液体吸引手段で吸引した液体内に前記液体吐出手段で吐出して発生する工程。
2 前記の複数の気体を混合した気体を前記気体吸引手段で選択吸引し、複数の気体を混合した気体を包含した気泡を前記液体吸引手段で吸引した液体内に前記液体吐出手段で吐出して発生する工程。
【請求項6】
請求項4または請求項5のいずれかの組成物の製造方法であって、
前記の液体が細胞培養液で、該細胞培養液に以下の物質のうち少なくともひとつを混合する工程をさらに含むものである方法。
1 遺伝子、
2 酵素・補酵素・助酵素、(「・」は、「または」を示す)
3 遺伝子によって生合成されるリコンビナント蛋白質・アミノ酸・ぺプチド・糖鎖、(「・」は、「または」を示す)
4 ホルモン・フェロモン・植物のアレロパシーを誘発する物質。(「・」は、「または」を示す)
【請求項7】
請求項4または請求項5のいずれかの組成物の製造方法であって、
前記の気体が下記のいずれかである方法。
1 窒素(N2)、
2 酸素(O2)、
3 二酸化炭素(CO2)、
4 アルゴン(Ar)、
5 水素(H2)、
6 一酸化窒素(NO)、
7 一酸化炭素(CO)。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
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【図6】
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【図10】
【図11】
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【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2011−244779(P2011−244779A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−123647(P2010−123647)
【出願日】平成22年5月31日(2010.5.31)
【出願人】(596174329)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年5月31日(2010.5.31)
【出願人】(596174329)
【Fターム(参考)】
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