微小流路構造体及び微小流路構造体による溶媒抽出方法
【課題】微小粒子の生成を可能とすると共に、工業的な量産にも対応でき、また、生成した微小粒子の形状を崩さずに微小粒子を生成した直後に微小粒子を硬化させ、微小粒子を媒体から分離することができる微小流路構造体及び微小流路構造体による溶媒抽出方法を提供する。
【解決の手段】分散相を導入するための導入口及び導入流路と、連続相を導入するための導入口及び導入流路と、分散相及び連続相により生成された微小粒子を排出させるための排出流路及び排出口とを備えた微小流路からなることを特徴とする微小流路構造体であって、分散相を導入するための導入流路と連続相を導入するための導入流路とが任意の角度で交わると共に、2つの導入流路が任意の角度で排出流路へと繋がる構造である微小流路構造体及び微小流路構造体による溶媒抽出方法を用いる。
【解決の手段】分散相を導入するための導入口及び導入流路と、連続相を導入するための導入口及び導入流路と、分散相及び連続相により生成された微小粒子を排出させるための排出流路及び排出口とを備えた微小流路からなることを特徴とする微小流路構造体であって、分散相を導入するための導入流路と連続相を導入するための導入流路とが任意の角度で交わると共に、2つの導入流路が任意の角度で排出流路へと繋がる構造である微小流路構造体及び微小流路構造体による溶媒抽出方法を用いる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分取・分離用カラム充填剤に用いられる微小粒子や医薬品、含酵素カプセル、化粧品、香料、表示・記録材料、接着剤、農薬等に利用されるマイクロカプセル、化学反応・溶媒抽出等に用いられる微小粒子の生成方法とその用途であり、また、その微小粒子を生成するための微小流路構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、数cm角のガラス基板上に長さが数cm程度で、幅と深さがサブμmから数百μmの微小流路を有する微小流路構造体を用い、流体を微小流路へ導入することにより化学反応あるいは微小粒子の生成を行う研究が注目されている。なおここでいう微小粒子とは、固体状の微小粒子の他にも微小液滴や微小液滴の表面だけが硬化した微小粒子(以下、「半硬化」という。)や、非常に粘性が高い半固体状の微小粒子も含む。このような微小流路は、微小空間の短い分子間距離および大きな比界面積の効果により、効率の良い化学反応を行なうことができることが示唆されている(例えば非特許文献1参照)。
【0003】
また、界面張力の異なる2種類の液体を、交差部分が存在する流路に導入することにより極めて粒径が均一な微小粒子を生成することができる(例えば、非特許文献2及び特許文献1参照)。例えば、非特許文献2に示されている手法は図1に示すように、微小流路基板(1)の上に、連続相導入口(2)、連続相導入流路(3)、分散相導入口(4)、分散相導入流路(5)、排出流路(7)及び排出口(8)を有したT字型の微小流路構造体であり、導入された連続相と分散相とが合流する部分(以下、「合流部」という。)に合流部(6)が存在する。各流路の深さは100μmであり、分散相を導入する導入流路幅が100μm、連続相を導入する導入流路幅は300〜500μmのT字型微小流路を用いて、分散相と連続相の流れの速さを制御して送液を行うと、合流部において極めて均一な微小粒子の生成が可能となる。また、分散相及び連続相の流量を制御することで生成する微小粒子の粒径を制御することも可能となる。
【0004】
しかしながらこの方法は、連続相の導入流路幅が分散相の導入流路幅に対し、3〜5倍広い導入流路を用いており、分散相及び連続相を同一流速で送液した場合、流路幅が狭い分散相の導入流路内で線速は速くなってしまうため、分散相及び連続相がその合流部以降の流れにおいて層流となってしまうことがあり、結果として合流部において微小粒子生成が出来なくなってしまう課題があった。
【0005】
また、このため、連続相を過剰に供給する必要があるが、微小粒子を生成させて工業的に量産する場合には、分散相の使用量に対し連続相の使用量を過剰にすることが必要となり、低コスト化、あるいは廃液量の低減などの課題があった。
【0006】
また、非特許文献2あるいは特許文献1に示されている手法では、複合カプセルや多重カプセルの作成は困難であり、その改善が求められていた。
【0007】
また、非特許文献2あるいは特許文献1に示されている手法で生成した微小粒子は、粒径のばらつきが比較的小さく均一であるため、微小粒子を形成している化合物を架橋重合させることなどにより硬化させて、分取、分離用カラム充填剤等に用いられる粒径の均一で微小なゲル粒子などに用いることが試みられている。しかしながら、生成した微小粒子を微小流路の外部でビーカーなどに収集し、架橋重合などにより微小粒子を硬化すると、微小粒子を収集してから硬化するまでに、微小粒子の形状が崩れたり、微小粒子同士の合一が生じるため、硬化した微小粒子の粒径のばらつきが大きくなってしまうこと、また、硬化する前の微小粒子を媒体から分離することが難しいため、その改善が求められていた。
【0008】
また、前述した微小空間の短い分子間距離および大きな比界面積の効果により、効率の良い化学反応を行なうことができることや、界面張力の異なる2種類の液体を、交差部分が存在する流路に導入することにより極めて粒子系が均一な微小粒子を生成することができるような微小空間の特性を生かしたまま、微小流路での化学反応、微小粒子を工業生産に適用しようとする試みも行われている。この場合、微小空間の小ささ故に、単一の微小流路では、単位時間当りの生成量が少なくならざるを得ないが、多数の微小流路を並列に配置することができれば、前記微小流路の特性を生かしたまま単位時間当たりの生成量を増加させることができる(例えば非特許文献3参照)。非特許文献3に示されるように、1本の微小流路を有する微小流路基板を、反応溶液の入り口や反応生成物の出口などの共通部分を貫通した縦穴でつないで積層することなどが試みられている。このように、微小空間の特徴を生かしたまま、大量に化学合成や微小粒子の生成を行なう場合には、最小単位である微小流路の集積度を平面的に高める、あるいは立体的に積層することで可能であると言われているが、平面的あるいは立体的に配置された微小流路へ均一に流体を分配することは、従来非常に困難であり、改善が求められていた。
【0009】
また、非特許文献1には、微小空間での短い分子間距離および大きな比界面積の効果による分子のすみやかな拡散により、特別な攪拌操作を行なわなくとも効率の良い化学反応を行なうことができることや、反応によって生じた目的化合物が反応相から抽出相へすばやく抽出、分離されることによって、引き続いて起こる副反応が抑えられることが示唆されている。
【0010】
上記の例等では、図2(a)に示すようにY字状の微小流路(16)に原材料を溶かした有機相(12)と水相(13)を導入し、Y字の合流部で形成される有機相と水相の流体境界(14)で反応や抽出を行なっている。一般的に、マイクロスケールの流路内ではレイノルズ数が1より小さいケースがほとんどであり、よほど流速を大きくしない限りは図2(a)に示すような層流の状態となる。また、拡散時間は微小流路の幅(9)の2乗に比例するので、微小流路の幅を小さくするほど反応液を能動的に混合しなくとも分子の拡散によって混合が進み、反応や抽出が起こりやすくなる。また、一般に反応や抽出は比界面積が大きいほど効率が良い。ここで比界面積とは、相同士が接触することで界面を形成している時の、相の総体積に対する界面の面積比を意味する。反応や抽出において、物質は界面を通してのみ他の相へ移動できるので、比界面積が大きいということは、それだけ反応や抽出の効率が高いことを意味する。
【0011】
以下では、図2(b)を用いて微小流路内の比界面積の計算方法を示す。図2(b)は、図2(a)のY字流路の合一部の一部分を切り出した立体断面図である。微小流路の幅(9)をW[μm]、微小流路の単位長さ(24)をL[μm]、微小流路の深さ(25)をd[μm]とすると、有機相(12)の総体積は、(W/2)×d×L[μm3]となる。また、水相と有機相の流体境界(14)の面積は、d×L[μm2]となる。従って比界面積は、(d×L)/{(W/2)×d×L}=2×104/W[cm−1]となり、微小流路の長さや深さ(d)に関係なく微小流路の幅(W)だけで決まることが分かる。例えば、微小流路の幅が1000[μm]の比界面積は、20[cm−1]であるのに対して、微小流路の幅が100[μm]の比界面積は、200[cm−1]となる。従って、微小流路の幅を小さくするほど比界面積が大きくなり、反応や抽出の効率が良くなる。
【0012】
しかしながら、前述した図2(a)に示すような層流間での反応や抽出の効率は、逆に言えば拡散時間の短縮と流体境界の比界面積の大きさ、すなわち微小流路の幅で制限されることを意味している。すなわち、反応や抽出に使用する微小流路の幅によって拡散時間と流体境界の比界面積が決まってしまい、反応や抽出の効率を微小流路の幅で決定される効率以上に向上させることができない。また、前述したように微小流路の幅を小さくすればさらに拡散時間を短くして比界面積を大きくでき、反応や抽出の効率を向上させることは可能だが、微小流路の幅が小さいほど圧力損失が大きく送液自体が難しくなり現実的でないため微小流路の幅を小さくすることには限界があり、その改善が求められていた。
【0013】
【非特許文献1】H.Hisamoto et.al.(H.ひさもと ら著)「Fast and high conversion phase−transfer synthesis exploiting the liquid−liquid interface formed in a microchannel chip」, Chem.Commun., 2001年発行, 2662−2663頁
【非特許文献2】西迫貴志ら、「マイクロチャネルにおける液中微小液滴生成」、第4回化学とマイクロシステム研究会講演予稿集、59頁、2001年発行
【非特許文献3】菊谷ら、「パイルアップマイクロリアクターによる高収量マイクロチャンネル内合成」、第3回化学とマイクロシステム研究会公演予稿集、9頁、2001年発行
【特許文献1】特許第2975943号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
以上のように従来技術による微小流路内における微小粒子生成の第1の課題は、微小流路において連続相と分散相の合流部で均一な微小粒子を生成する際に分散相及び連続相が層流を形成してしまい合流部において安定して微小粒子を生成することができなくなることである。
【0015】
第2の課題は、合流部で微小粒子を生成させるためには連続相を過剰に供給する必要があり、例えばゲル製造における連続相の低コスト化、工業的な量産、あるいは微小粒子の生成自体が困難なことである。
【0016】
第3の課題は複合カプセルや多重カプセルの生成を可能にすることである。
【0017】
第4の課題は、生成した微小粒子が微小液滴の場合、微小流路の外部でビーカーなどに収集し、架橋重合などにより微小液滴を硬化すると、微小液滴を収集してから硬化するまでに、微小粒子の形状が崩れたり、微小粒子同士の合一が生じるため、硬化した微小粒子の粒径のばらつきが大きくなってしまうことである。また、硬化する前の微小粒子を媒体から分離することが難しいことである。
【0018】
第5の課題は、微小流路構造体に平面的あるいは立体的に配置された複数の微小流路へ均一に流体を分配することは、従来非常に困難なことである。
【0019】
第6の課題は、反応や抽出の効率を微小流路の幅で決定される効率以上に向上させることができないことである。
【0020】
本発明の目的は、上記課題を鑑みてなされたもので、微小流路内での微小粒子生成、複合カプセルや多重カプセルの生成を可能とすると共に、複数の微小流路に均一に流体を分配することにより工業的な量産にも対応でき、また、微小流路を用いて生成した微小粒子の形状を崩さずに微小粒子を生成した直後に微小粒子を硬化させ、微小粒子を媒体から分離することができる微小流路構造体を提供することにある。
【0021】
また、この微小流路構造体を用い、微小流路の幅で決定される以上の拡散時間の短縮と流体境界の比界面積の大きさを得ることによって、微小流路内における抽出の効率を微小流路の幅で決定される効率以上に向上する溶媒抽出方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0022】
上記課題を解決する本発明の微小流路構造体は、分散相を導入するための導入口及び導入流路と、連続相を導入するための導入口及び導入流路と、分散相及び連続相により生成された微小粒子を排出させるための排出流路及び排出口とを備えた微小流路からなることを特徴とする微小流路構造体であって、分散相を導入するための導入流路と連続相を導入するための導入流路とが任意の角度で交わると共に、前記2つの導入流路が任意の角度で排出流路へと繋がる微小流路構造体である。また、多数の前記微小流路を並列化及び/または積層化して微小粒子を大量に生産するための形態としては、流体を導入するための導入口及び流体を排出するための排出口を備え、基板上に前記導入口及び排出口と連通する共通流路と、前記導入口及び排出口とは異なる位置で前記共通流路と連通する1以上の微小流路とを有した微小流路構造体であって、前記共通流路の断面積が導入口との連通位置より排出口との連通位置に向かって次第に大きくなるかあるいは同じである微小流路構造体である。
【0023】
また、本発明の微小粒子製造方法は、分散相を導入するための導入口及び導入流路と、連続相を導入するための導入口及び導入流路と、分散相及び連続相により生成された微小粒子を排出させるための排出流路及び排出口とを備えた微小流路構造体を用いて微小粒子を生成する方法であって、主として分散相と連続相とを合流させる合流部において、分散相を導入するための導入流路と連続相を導入するための導入流路とが交わる角度を変化させて生成する微小粒子の粒径を制御することにより分散相を微小粒子化する微小粒子製造方法である。さらに、上記微小流路構造体を用いることで、微小粒子の中でも、マイクロカプセルやゲルのようなものも製造できる。
【0024】
また、微小流路内において抽出溶媒あるいは被抽出物質含有の流体を微小液滴化した後、前記微小液滴からなる分散相と前記微小液滴を囲む連続相との間で被抽出物質の相間移動により溶媒抽出を行なう溶媒抽出方法として用いることもできる。
【0025】
以下、本発明をさらに詳細に説明する。
<微小粒子製造方法>
本発明において用いられる微小流路とは、一般的に幅500μm以下、深さ300μm以下のサイズの流路を示す。
【0026】
また本発明における微小粒子とは、微小流路内で連続相が分散相をせん断することで生成される微小粒子であり、その微小粒子サイズは、一般的に直径が微小流路の幅あるいは深さよりも小さい。例えば、幅が100μm、深さが50μmの微小流路で生成される微小粒子の大きさは、微小粒子が完全球体であると仮定するとその直径は50μmより小さい。また本発明における微小粒子は、固体状の微小粒子の他にも微小液滴や微小液滴の表面だけが硬化した半硬化の微小粒子や、非常に粘性が高い半固体状の微小粒子も含む。
【0027】
また、本発明において用いられる分散相とは、微小流路構造体により微小粒子を生成させるための液状物であり、例えば、スチレンなどの重合用のモノマー、ジビニルベンゼンなどの架橋剤、重合開始剤等のゲル製造用の原料を適当な溶媒に溶解した媒体を指す。ここで分散相としては、本発明が微小な微小粒子を効率的に生成させることを目的としており、この目的を達成させるためであれば微小流路構造体中の流路を送液できるものであれば特に制限されず、さらに微小粒子を形成させることができればその成分も特に制限されない。また、分散相中に例えば微小な粉末の様な固体状物が混在したスラリー状のものであっても差し支えないし、分散相が複数の流体から形成される層流であっても良いし、複数の流体から形成される混合流体であっても懸濁液(エマルション)であっても良い。
【0028】
本発明において用いられる連続相とは、微小流路構造体により分散相より微小粒子を生成させるために用いられる液状物であり、例えば、ポリビニルアルコールのようなゲル製造用の分散剤を適当な溶媒に溶解した媒体を指す。ここで連続相としては分散相と同様に、微小流路構造体中の流路を送液できるものであれば特に制限されず、さらに微小粒子を形成させることができればその成分は特に制限されない。また、連続相中に例えば微小な粉末の様な固体状物が混在したスラリー状のものであっても差し支えないし、分散相が複数の流体から形成される層流であっても良いし、複数の流体から形成される混合流体であっても懸濁液(エマルション)であっても良い。生成する微小粒子組成の観点から見た場合は、微小粒子の最外層が有機相であれば連続相の最外層は水相となり、微小粒子の最外層が水相であれば連続相の最外層は有機相となる。
【0029】
さらに、分散相と連続相とは微小粒子を生成させるために、実質的に交じり合わないあるいは相溶性がないことが好ましく、例えば、分散相として水相を用いた場合には連続相としては水に実質的に溶解しない酢酸ブチルといった有機相が用いられることとなる。また、連続相として水相を用いた場合にはその逆となる。
【0030】
本発明の微小粒子製造方法は、前述した分散相と連続相とを後述する本発明における微小流路構造体へその導入流路より導入し、両者が合流する合流部で分散相を連続相でせん断し微小粒子を生成させるものであるが、分散相を導入するための導入流路と連続相を導入するための導入流路とが交わる角度を変化させることで、生成する微小粒子の粒径を制御することが可能である。これは、従来の微小流路構造体を使った微小粒子の生成においては、分散相と連続相の導入速度を変えて生成させる場合よりもより制御しやすく、工業的な量産に適している。特に、分散相の導入速度と連続相の導入速度とが実質的に同じであれば、導入装置を1個用意することで足りるなどコスト面においても優れている。尚、ここでいう分散相の導入速度と連続相の導入速度とが実質的に同じとは、導入速度が多少変動があっても生成する微小粒子の粒径には大きな影響を与えないことを意味している。このようにすることで、安定した粒径の微小粒子を生成することができ、連続相を過剰に供給する必要がなくなり、例えばゲル製造における連続相の低コスト化、工業的な量産が可能となる。
【0031】
本発明における連続相と分散相との合流の方式としては、基本的には図3に示すようなY字型の微小流路の連続相導入口(2)から連続相を導入し、分散相導入口(4)から分散相を導入し合流部(6)で分散相を連続相によりせん断して微小粒子(17)を生成する。しかしながら本発明はこの方式に限定されるものではなく、図4に示すように、微小流路(16)で分散相(15)を連続相(10)が挟み込むように接触させて分散相を合流部(6)においてせん断して微小粒子(17)を生成する方式でも良いし、図5に示すように、微小流路(16)で連続相(10)を挟み込むように2以上の分散相(15)が接触し、分散相が連続相で合流部(6)においてせん断して微小粒子(17)を生成する方式でも良いし、図6に示すように、直線状に、微小流路(16)の一方の側より分散相(15)を、もう一方の側より連続相(16)を導入し、合流部(6)において分散相と連続相とを合流させることで微小粒子(17)を生成させ、合流した位置より1又は2以上の任意の方向へ排出させる方式でも良い。このようにすることで、微小粒子をより効率的に生成させることができる。なお、図6の方式の場合、生成した微小粒子を含む流体を、再度合流させて生成した微小粒子を回収することができる。
【0032】
また、図7(a)〜(g)に示すように、1または複数の分散相(15)を導入する分散相導入流路(5)や1または複数の連続相(10)を導入する連続相導入流路(3)を設けることで、分散相や連続相を、複数の流体の層流または混合液または懸濁液(エマルション)とすることができる。このようにすることで、多層構造の微小粒子や、異なった多種の微小粒子を含有した微小粒子を形成することができ、複合マイクロカプセルや多重マイクロカプセルを生成することができる。なお、連続相、分散相あるいはその両者には微小な粉末を含んでいてもよい。
【0033】
また本発明において、微小流路の合流部で生成した微小粒子が微小液滴であって微小液滴を硬化させる場合、微小流路中及び/又は微小流路の外において硬化させるとよい。さらに、硬化した微小粒子の粒径を均一にするために、微小液滴が排出流路を通過して排出部から出た後、微小流路構造体の排出部から微小流路構造体の外部に設けられた微小流路で連続的に硬化しても良い。さらに、硬化した微小粒子の粒径をより均一にするためには、微小流路の合流部で微小液滴が生成した直後に、微小流路構造体中の微小流路すなわち排出流路で硬化させることがより好ましい。
【0034】
本発明における微小液滴を硬化する手段の一つは、微小液滴に光を照射することにより硬化させるものであり、この場合の光は、硬化させる微小液滴の材質を比較的多くの材質から選択できることから、紫外線であることが好ましい。光照射(21)は、図8(a)に示すように微小流路構造体(19)の排出口(8)から微小液滴が微小流路構造体の外部に出た後に行なっても良いが、微小粒子の粒径をより均一にするためには、図8(b)に示すように、微小流路の合流部(6)で微小液滴が生成した直後に光照射(21)を行ない微小流路構造体(19)の中の排出流路(7)で硬化することがより好ましい。しかしながら、微小流路構造体中の排出流路において光照射を行なう場合は、微小液滴が生成される前に分散相に光照射されて硬化しないように、微小液滴が生成される前の排出流路の部分と、光照射して微小液滴を硬化させる排出流路の部分は、図8(b)に示すように、微小流路構造体の必要なところだけに光照射スポット(20)があたるようにマスク(22)を設置しておく必要がある。
【0035】
また本発明における微小液滴を硬化する別の手段は、微小液滴を加熱することにより硬化させる手段を用いた微小粒子製造方法である。図9(a)に示すように微小流路構造体(19)の排出口(8)から微小液滴が微小流路構造体の外部に出た後にヒーター(28)などにより加熱を行なっても良いが、微小粒子の粒径をより均一にするためには、図9(b)に示すように、微小流路の合流部(6)で微小液滴が生成した直後にヒーターなどにより加熱を行ない微小流路構造体中の排出流路(7)で硬化することがより好ましい。しかしながら、微小流路構造体中の排出流路において加熱を行なう場合は、微小液滴が生成される前に分散相が加熱されて硬化しないように、微小液滴が生成される前の排出流路の部分と、加熱して微小液滴を硬化させる排出流路の部分は、断熱材などを微小流路構造体の中に埋め込むなどの既知の断熱手法により熱的に絶縁しておく必要がある。
【0036】
なお、本発明において光照射あるいは加熱により微小液滴を硬化させる場合は、微小液滴全体を硬化させても良いが、半硬化させるなどにより、微小液滴の形状が崩れや微小液滴同士の合一が生じない程度に硬化させても良い。この場合、半硬化させた微小粒子をビーカー等で回収し、再度光照射や加熱により完全に硬化させることで、粒径が均一な微小粒子を得ることができる。
このようにすることで微小流路の合流部で生成した微小粒子が微小液滴の場合、微小流路の外部でビーカーなどに収集し、架橋重合などにより微小液滴を硬化すると、微小液滴を収集してから硬化するまでに、微小粒子の形状が崩れたり、微小粒子同士の合一が生じるため、硬化した微小粒子の粒径のばらつきが大きくなってしまうことが無くなり、粒径が均一な微小粒子を得ることができる。また、微小液滴を硬化することにより媒体から分離することが容易になる。
【0037】
以上のように、本発明の微小粒子製造方法の最も好ましい態様の一つとしては、分散相がゲル製造用原料を含む媒体であり、分散相を導入するための導入口及び導入流路と、連続相がゲル製造用分散剤を含む媒体であり、連続相を導入するための導入口及び導入流路と、分散相及び連続相により生成された微小粒子を排出させるための排出流路及び排出口とを備えた微小流路構造体を用いて微小粒子を生成する方法であって、分散相と連続相とを合流させて分散相を微小粒子化し、前記分散相を導入するための導入流路と前記連続相を導入するための導入流路とが交わる角度を変化させて生成する微小粒子の粒径を制御し、微小粒子を微小流路中及び/又は微小流路の外において、光照射及び/又は加熱により硬化させる方法となる。
【0038】
本発明の微小粒子製造方法において、微小粒子の用途の例として、高速液体クロマトグラフィー用カラムの充填剤、シールロック剤などの接着剤、金属粒子の絶縁粒子、圧力測定フィルム、ノーカーボン(感圧複写)紙、トナー、熱膨張剤、熱媒体、調光ガラス、ギャップ剤(スペーサ)、サーモクロミック(感温液晶、感温染料)、磁気泳動カプセル、農薬、人工飼料、人工種子、芳香剤、マッサージクリーム、口紅、ビタミン類カプセル、活性炭、含酵素カプセル、DDS(ドラッグデリバリーシステム)などのマイクロカプセルやゲルが挙げられる。
<微小流路構造体>
本発明の微小流路構造体は、分散相を導入するための導入口及び導入流路と、連続相を導入するための導入口及び導入流路と、分散相及び連続相により生成された微小粒子を排出させるための排出流路及び排出口とを備えた微小流路からなることを特徴とする微小流路構造体であって、分散相を導入するための導入流路と連続相を導入するための導入流路とが任意の角度で交わると共に、前記2つの導入流路が任意の角度で排出流路へと繋がる構造であることを特徴とする微小流路構造体であり、その形態の例として、図3〜図7に示すような、微小流路構造体である。なお、本発明の微小流路構造体は図3〜図7の例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、任意に変更可能であることは言うまでもない。また、本発明の微小流路構造体の流路断面のアスペクト比(流路の深さ/幅の比)が0.30以上3.0未満であることを特徴とする微小流路構造体である。
【0039】
ここで、分散相を導入するための導入口は分散相を入れるための開口部を意味し、さらに、この導入口に適当なアタッチメントを備えて分散相を連続的に導入する機構としてもよい。同様に、連続相を導入するための導入口についても、連続相を入れるための開口部を意味し、さらに、この導入口に適当なアタッチメントを備えて連続相を連続的に導入する機構としてもよい。
【0040】
分散相を導入するための導入流路は導入口と連通しており、分散相が導入され、この導入流路に沿って送液される。導入流路の形状は微小粒子の形状、粒径を制御するにおいて影響を与えるが、その幅は約300μm以下で、排出流路も含め任意の角度で合流する形状となっておればよい。同様に、連続相を導入するための導入流路についても、導入口と連通しており、連続相が導入され、この導入流路に沿って送液される。導入流路の形状は微小粒子の形状、粒径を制御するにおいて影響を与えるが、その幅は約300μm以下で、排出流路も含め任意の角度で合流する形状となっておればよい。
【0041】
排出流路は上記の2つの導入流路及び排出口と連通しており、分散相と連続相が合流後、この排出流路に沿って送液され、排出口より排出される。排出流路の形状は特に制限されないが、その幅は約300μm以下で、導入流路も含め任意の角度で合流する形状となっておればよい。また、排出流路は任意の角度で合流部から別れた2以上の排出流路であっても良い。排出口は、生成された微小粒子を排出させるための開口部を意味し、さらに、この排出口に適当なアタッチメントを備えて生成された微小粒子を含む相を連続的に排出する機構としてもよい。尚、これら流路は本明細書においては微小流路ということがある。
【0042】
さらに、本発明の微小流路構造体においては、分散相を導入するための導入流路と連続相を導入するための導入流路とが任意の角度で交わると共に、これらの導入流路が任意の角度で排出流路へと繋がる構造であることが好ましい。このような2つの導入流路の交差する角度が任意の角度とすることで、合流部で生成する微小粒子を所望の粒径へと制御することが可能となる。交差角度の設定については、目的とする微小粒子の粒径に応じて適宜決めればよい。
【0043】
導入流路、排出流路の断面形状としては、流路断面のアスペクト比が0.30以上3.0未満であることがこのましい。アスペクト比がこの範囲にあれば、合流部において均一な微小粒子を生成させることができる。この範囲を逸脱して、アスペクト比が0.30未満または3.0以上となると均一な微小粒子を生成させることが困難となることがある。
【0044】
さらに、分散相を導入するための導入流路と連続相を導入するための導入流路の幅及び深さが等しい場合には上記の効果に加え、微小流路構造体の設計が容易となり、また、送液時の制御もより容易となって、工業的量産に好適となる。
【0045】
また、導入流路の幅と排出流路の幅との関係において、導入流路の幅≧排出流路の幅であれば、導入流路の幅<排出流路の幅よりも、送液速度を増加しても合流部において均一な微小粒子の生成が可能となり、微小粒子の生成速度を増加させることができるという効果を奏することができ、好ましい態様となる。
【0046】
排出流路の幅としては、分散相と連続相とが交わる交差部より排出口に至る排出流路中の一部の部位において、排出流路の幅が狭くなっていることが好ましい。すなわち、微小粒子の排出口に至るまでの間の内、導入流路と排出流路の合流部において部分的に狭くする、あるいは分散相流路に沿った流路構成壁を凸状に形成する、あるいは図32(a)〜(e)に示すように流路の底面、上面、側面のいずれか1面あるいは2面以上から1以上の突起を形成することで、送液速度を増加しても合流部において均一な微小粒子の生成が可能でありかつ、送液圧力の上昇を緩和することが可能とすることができ、好ましい態様となる。
【0047】
さらに、この排出流路の幅が狭くなっている部位が、排出流路中の交差部又はその近傍にあることが好ましく、特に、排出流路の幅が狭くなっている部位が、排出流路の交差部の分散相の導入流路側にあることが好ましい。
【0048】
また、本発明の微小流路構造体は、微小流路構造体の中に複数の微小流路を平面的あるいは立体的に配置することで工業的に大量の微小粒子を生成することができる。しかしながら、平面的あるいは立体的に配置された複数の微小流路に均一に流体を分配する必要がある。このため、本発明の微小流路構造体は、流体を導入するための導入口及び流体を排出するための排出口を備えかつ、基板上に導入口及び排出口と連通する共通流路と、導入口及び排出口とは異なる位置で共通流路と連通する微小流路とを有した微小流路構造体であって、前記共通流路の断面積が導入口との連通位置より排出口との連通位置に向かって次第に大きくなるかあるいは同じであることが好ましい。
【0049】
上記微小流路構造体の最も基本的な概念図を図10に示す。共通流路(29)の両端に流体を導入するための共通流路導入口(32)と流体を排出するための共通流路排出口(31)を設け、共通流路導入口と共通流路排出口の間に、共通流路よりも内径(流路幅)が小さい微小流路(16)を基板上に配置した。一般的に、微小流路の内径は、数十〜300μm程度である。これに対し、共通流路の内径は、500μm〜数mm程度であることが望ましい。共通流路導入口と共通流路をつなぐ流路の内径に特に制限はないが、共通流路と同様に500μm〜数mm程度であることが望ましい。共通流路排出口と共通流路をつなぐ流路の内径も特に制限はないが、微小流路と同様に数十〜300μm程度が望ましい。
【0050】
また、微小流路の配置については、共通流路導入口及び共通流路排出口とは異なる位置で共通流路と連通しておれば特に制限はない。この点をさらに具体的に示せば、図10に示すように、共通流路導入口に最も近い微小流路Y1から共通流路排出口に最も近い微小流路Ynまでn本の微小流路が共通流路と連通した微小流路構造体の共通流路において、共通流路導入口との連通位置をX0、共通流路導入口に最も近い微小流路Y1の連通位置をX1、連通位置X0と連通位置X1との間の共通流路に沿った長さをa1、共通流路排出口との連通位置をXn+1、共通流路排出口に最も近い微小流路Ynの連通位置をXn、連通位置Xnと連通位置Xn+1との間の共通流路に沿った長さをan+1としたとき、Y1からYnまでの微小流路に均一に流体を分配でき、さらに微小液滴の生成を効率的に行なうことができるために、a2からanがすべて等しくなる配置とすることが好ましい。さらに、a1〜an+1をすべて等しくすることでこの効果をさらに向上させることができる。
【0051】
また、このような微小流路構造体において、基板上に複数の共通流路を有し、各々の共通流路が微小流路と連通させた構造としてもよい。
【0052】
図11〜図14には、本発明のいくつかの形態の概念図を示す。なお本発明は、これらの形態のみに限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で、任意に変更が可能であることは言うまでもない。
【0053】
図11は、共通流路(19)の内径が共通流路導入口(32)から共通流路排出口(31)に向かって次第に大きくなる例である。この場合、共通流路導入口付近の共通流路の内径(bで示される)は500μm〜1mm程度であり、共通流路排出口付近の共通流路の内径(cで示される)は数mm程度である。
【0054】
図12は、2本の共通流路(29)からY1からYnと示される微小流路(16)を引き出してY字状に合流させた例である。図12に示される微小流路構造体を用いて、2本の共通流路に本発明の微小粒子製造方法に用いる連続相と分散相をそれぞれ導入することで、複数のY字状の微小流路に均等に連続相と分散相を分配することができ、すべての微小流路に同じ条件で、極めて粒子系が均一な微小液滴を生成することができる。この形態は、微小流路基板が角型の基板である場合、平面的に多数の微小流路を集積する際に効果的である。
【0055】
図13は、共通流路(29)を円弧状に配置した例である。この場合、微小流路(16)は円弧の中心から等角度dで放射状に配置した。この形態は、微小流路基板が円盤状の基板である場合、平面的に多数の微小流路を集積する際に効果的である。この場合、図10におけると同様に、共通流路導入口(32)との連通位置をX0、共通流路導入口に最も近い微小流路Y1の連通位置をX1、連通位置X0と連通位置X1との間の共通流路に沿った長さをa1などとしたとき、a1〜an+1とは、円弧状の共通流路の中心に沿った長さを意味する。
【0056】
図14は、微小流路(16)を有する微小流路基板(1)を重ねあわせ、共通流路(29)を前記微小流路基板を貫通させて構成した例である。この形態は、微小流路基板を積層し、立体的に多数の微小流路を集積する際に効果的である。この貫通孔の内径の大きさも、図11と同様に流体の共通流路導入口(32)から流体の共通流路排出口(31)に向かって次第に大きくなっても良い。
【0057】
また、図10〜図14に示した本発明の様々な形態において、共通流路導入口(32)には一般にシリンジポンプなどの送液ポンプを用いて流体を導入するが、共通流路に配置された共通流路排出口(31)から排出された流体を回収し、再び送液ポンプに戻して再度送液できる、すなわち、複数の共通流路の各々が微小流路と連通させ、共通流路排出口から排出された流体を各々の共通流路導入口へ戻す構造としても良く、このようにすることで、導入する連続相及び/または分散相を無駄無く使用することができる。さらに、共通流路の少なくとも1つに分散相を、少なくとも1つに別の共通流路にに連続相を導入し排出することが好ましい。
【0058】
本発明の微小流路構造体は、以上に述べた構造、性能を有しているが、分散相と連続相を導入するための導入部及び導入流路と、導入流路が交わる合流部と、液体を排出させるための排出流路及び排出口を備えた微小流路構造体が、少なくとも一方の面に微小流路が形成された基板と、微小流路が形成された基板面を覆うように、微小流路の所定の位置に、微小流路と微小流路構造体外部とを連通するための小穴が配置されたカバー体とが積層一体化されていてもよい。これにより、微小流路構造体外部から微小流路へ流体を導入し、再び微小流路構造体外部へ流体を排出することができ、流体が微小量であったとしても、流体を安定して微小流路内を通過させることが可能となる。流体の送液は、マイクロポンプなどの機械的手段によって可能となる。
【0059】
微小流路が形成された基板及びカバー体の材質としては、微小流路の形成加工が可能であって、耐薬品性に優れ、適度な剛性を備えたものが望ましい。例えば、ガラス、石英、セラミック、シリコン、あるいは金属や樹脂等であっても良い。基板やカバー体の大きさや形状については特に限定はないが、厚みは数mm以下程度とすることが望ましい。カバー体に配置された小穴は、微小流路と微小流路構造体外部とを連通し、流体の導入口または排出口として用いる場合には、その径が例えば数mm以下であることが望ましい。カバー体の小穴の加工には、化学的に、機械的に、あるいはレーザー照射やイオンエッチングなどの各種の手段によって可能とされる。
【0060】
また本発明の微小流路構造体は、微小流路が形成された基板とカバー体は、熱処理接合あるいは光硬化樹脂や熱硬化樹脂などの接着剤を用いた接着等の手段により積層一体化することができる。
<微小流路構造体による溶媒抽出方法>
本発明の微小流路構造体を用いることで、微小流路内において抽出溶媒あるいは被抽出物質含有の流体を微小液滴化した後、微小液滴からなる分散相と微小液滴を囲む連続相との間で被抽出物質の相間移動により溶媒抽出を行なう溶媒抽出方法としての用途が挙げられる。
【0061】
なお、本発明の溶媒抽出法においては、抽出溶媒あるいは被抽出物質含有の流体のどちらか一方を分散相とし、別の一方を連続相として、任意に選択することができる。ここで、被抽出物質とは抽出対象となる物質を示し、被抽出物質含有の流体とは被抽出物質を溶解している液体を意味する。抽出溶媒とは被抽出物質含有の流体から被抽出物質を抽出する液体を意味し、被抽出物質を溶解でき、被抽出物質含有の流体よりも被抽出物質に対する溶解度が高いことが望まれる。また溶媒抽出とは、被抽出物質が被抽出物質含有の流体から抽出溶媒に相間移動により移動することを意味し、相間移動とは被抽出物質含有の流体の相から抽出溶媒の相への移動を意味する。
【0062】
本発明では、抽出溶媒あるいは被抽出物質含有の流体のどちらか一方を分散相とし、別の一方を連続相として、任意に選択することができる。また、微小液滴のサイズは、一般的に直径が微小流路の幅あるいは深さよりも小さい。例えば、幅が100μm、深さが50μmの微小流路で生成される液滴の大きさは、液滴が完全球体であると仮定するとその直径は50μmより小さい。
【0063】
この溶媒抽出方法が、微小流路の幅で決定される以上の拡散時間の短縮と流体境界の比界面積の大きさを得ることで微小流路内における抽出効率を微小流路の幅で決定される効率以上に向上させることを図15により説明する。
【0064】
図15に示すように球状の微小液滴の直径(33)をD[μm]とすると、微小液滴の総体積は(4π/3)×(D/2)3[μm3]となる。また、微小液滴の表面積は、4π×(D/2)2[μm2]となる。従って、微小液滴(34)とその周囲の媒体との比界面積は、{4π×(D/2)2}/{(4π/3)×(D/2)3}=6×104/D[cm−1]となる。一方、図1に示したように微小流路(16)に形成された流体境界(14)の比界面積は、2×104/W[cm−1]である。一般に、微小流路により形成される微小液滴の直径Dは、微小流路の幅(9)Wよりも小さいので、D<Wであることから、微小流路で微小液滴を生成すればその比界面積は、単に微小流路で形成される流体境界の比界面積よりも大きくなり、かつ微小液滴と周囲の溶媒との拡散時間も、微小流路で単に層流を形成させたときの拡散時間よりも短くなる。従って、微小流路で抽出溶媒あるいは被抽出物質含有の流体の微小液滴を形成すれば、微小流路の幅で決定される以上の拡散時間の短縮と流体境界の比界面積の大きさを得ることができ、微小流路における抽出効率を微小流路の幅で決定される効率以上に向上することができる。
【0065】
また微小液滴化する対象は、抽出溶媒であっても被抽出物質含有の流体であってもよいが、選択的にどちらかを微小液滴化することで、抽出後に抽出相をより分離しやすい様態に合わせて微小液滴化する対象を選択することができる。本発明の微小粒子製造方法では、合一するそれぞれの流体の流速を適切に制御するか、微小流路内壁の親水性、疎水性をそれ自体は公知の方法により変えることで微小液滴化する対象を抽出溶媒にするか被抽出物質含有の流体にするか選択することができ、抽出後に抽出相をより分離しやすい様態に合わせて微小液滴化する対象を選択することができる。また微小液滴の直径は、流速や微小流路の合流部で合一する角度や、微小流路の幅と深さ、あるいはこれらを組合わせることで制御することができ、比界面積をより正確に制御できる。
【0066】
また本発明の溶媒抽出方法は、被抽出物質が2種以上の流体を化学反応させて得られる生成物であり、被抽出物質含有の流体が原材料を含有する2種以上の流体を別々に微小流路に導入し接触させて得られた流体であっても良い。このようにすることで、微小流路内で反応させて得られた生成物を生成直後から速やかに溶媒抽出することができ、副反応の抑制や、平衡反応の制御を行なうことが可能となる。
【0067】
図16は、被抽出物質含有の流体が、原材料を有する流体A(35)と流体B(36)を別々に微小流路(16)に導入し微小流路内の反応相(37)で混合し反応させた流体である場合の概念を示した図である。図16の例では、被抽出物質含有の流体を連続相(10)とし、抽出溶媒(38)を分散相(15)とした。
【0068】
また本発明の溶媒抽出方法は、原材料を含有する2種以上の流体と抽出溶媒を別々に微小流路に導入し、原材料を含有する2種以上の流体を接触させて得られる被抽出物質を抽出溶媒相へと抽出させる方法において、原材料を含有する2種以上の流体は層流を形成しその流体境界で被抽出物質が生成され、抽出溶媒はこの原材料を含有する2種以上の流体で合流部においてせん断されて流体境界上で液滴が形成され、生成された被抽出物質は抽出溶媒の液滴へと抽出という態様をとっても良い。このようにすることで、反応系に用いられている溶媒以外の溶媒を抽出溶媒として導入することができ、例えば生成物の抽出効率がより高い溶媒を抽出溶媒として用いることができる。また、流体境界で生じる反応により生成した生成物を生成直後から速やかに溶媒抽出することができるので、副反応の抑制や平衡反応の制御を行なうことが可能となる。
【0069】
図17は、流体境界(14)で生じる反応により生成物を得るための微小流路(16)において、原材料を有する流体A(35)と流体B(36)を連続相(10)とし、この連続相により、流体境界で抽出溶媒(38)をせん断することにより流体境界に微小液滴(34)を形成することで、流体境界に生成した生成物を抽出する概念を示した図である。
【0070】
また本発明の微小粒子の用途としての溶媒抽出方法は、微小流路内で溶媒抽出を行なったあと、前記微小液滴の少なくとも表面を硬化することにより、連続相と分散相を分離しても良い。このようにすることで、微小液滴の分散相と微小液滴を取り囲む連続相をより容易に分離することができ、抽出溶媒と被抽出物質が含まれていた流体とを容易に分離することができる。
【0071】
例えば、図18に示すように被抽出物質含有の流体を微小液滴化して分散相(15)とし、連続相(10)である抽出溶媒(38)に被抽出物質を相間移動により溶媒抽出(39)を行なったあと、紫外線による光照射(21)により微小液滴(34)の少なくとも表面を硬化することで微小粒子(17)を形成すれば、連続相の液相と微小粒子の固相をろ過等の手法を用いて容易に分離することができ、被抽出物質を容易に回収できる。なお図18の例では、分散相としての被抽出物質含有の流体は、紫外線照射により硬化する液体を選択している。
【0072】
また逆に、図19に示すように被抽出物質含有の流体を連続相(10)とし、微小液滴化して分散相(15)とした抽出溶媒(38)に被抽出物質を相間移動により溶媒抽出(39)を行なったあと、紫外線照射により微小液滴(34)の少なくとも表面を硬化することで微小粒子(17)を形成すれば、同様に連続相の液相と微小粒子の固相をろ過等の手法を用いて容易に分離することができる。この場合は、被抽出物質を内部に有する表面が硬化されて微小粒子の表面を、化学的あるいは機械的などの手法により引き割り、微小粒子内部に存在する被抽出物質を取出せば良い。なお図19の例では、分散相としての抽出溶媒は、紫外線照射により硬化する液体を選択できる。
【0073】
以上の図18、図19の例では、微小液滴の表面を硬化する手段を紫外線照射とした例であるが、紫外線照射の他にも図9に示すような加熱や化学反応により架橋や重合など、硬化させる分散相の材質にあわせて選択すれば良い。
【発明の効果】
【0074】
本発明の微小粒子製造方法は、分散相と連続相を微小流路を有する微小流路構造体へその導入流路より導入し、両者が合流する合流部で分散相を連続相でせん断し微小粒子を生成させるものであり、分散相を導入するための導入流路と連続相を導入するための導入流路とが交わる角度を変化させることで、生成する微小粒子の粒径を制御することが可能である。これは、従来の微小流路構造体を使った微小粒子の生成においては、分散相と連続相の導入速度を変えて生成させる場合よりもより制御しやすく、工業的な量産に適しており、特に、分散相の導入速度と連続相の導入速度とが実質的に同じであれば、導入装置を1個用意することで足りるなどコスト面においても優れている。従って、本発明の微小粒子製造方法により、安定した粒径の微小粒子を生成することが、連続相を過剰に供給する必要がなくなり、例えばゲル製造における連続相の低コスト化、工業的な量産が可能となる。
【0075】
また複数の分散相及び/または連続相を導入する導入流路を設けることで、分散相及び/または連続相を複数の流体の層流、または混合液または懸濁液(エマルション)とすることができ、このようにすることで、多層構造の微小粒子や、異なった多種の微小粒子を含有した微小粒子を形成することができ、複合マイクロカプセルや多重マイクロカプセルを生成することができる。
【0076】
また微小流路の合流部分で生成した微小粒子が微小液滴であって微小液滴を硬化させる場合、硬化した微小粒子の粒径を均一にするために、微小液滴が排出流路を通過して排出部から出た後、微小流路構造体の排出部から微小流路構造体の外部に設けられた微小流路で連続的に逐次硬化しても良く、さらに硬化した微小粒子の粒径をより均一にするためには、微小流路の合流部分で微小液滴が生成した直後に、微小流路構造体中の微小流路すなわち排出流路で硬化してもよくこのようにすることで微小流路の合流部で生成した微小粒子が微小液滴の場合、微小流路の外部でビーカーなどに収集し、架橋重合などにより微小液滴を硬化すると、微小液滴を収集してから硬化するまでに、微小粒子の形状が崩れたり、微小粒子同士の合一が生じるため、硬化した微小粒子の粒径のばらつきが大きくなってしまうことが無くなり、粒径が均一な微小粒子を得ることができる。また、微小液滴を硬化することにより媒体から分離することが容易になる。
また、多数の前記微小流路を並列化及び/または積層化して微小粒子を大量に生産するための形態としては、流体を導入するための導入口及び流体を排出するための排出口を備え、基板上に前記導入口及び排出口と連通する共通流路と、前記導入口及び排出口とは異なる位置で前記共通流路と連通する1以上の微小流路とを有した微小流路構造体であって、前記共通流路の断面積が導入口との連通位置より排出口との連通位置に向かって次第に大きくなるかあるいは同じである微小流路構造体とすることで微小流路構造体に平面的あるいは立体的に配置された複数の微小流路へ均一に流体を分配することが可能となる。
【0077】
また、本発明の微小粒子製造方法により生成される微小粒子の用途の例として、高速液体クロマトグラフィー用カラムの充填剤、シールロック剤などの接着剤、金属粒子の絶縁粒子、圧力測定フィルム、ノーカーボン(感圧複写)紙、トナー、熱膨張剤、熱媒体、調光ガラス、ギャップ剤(スペーサ)、サーモクロミック(感温液晶、感温染料)、磁気泳動カプセル、農薬、人工飼料、人工種子、芳香剤、マッサージクリーム、口紅、ビタミン類カプセル、活性炭、含酵素カプセル、DDS(ドラッグデリバリーシステム)などのマイクロカプセルやゲルが挙げられる。
【0078】
また、本発明の微小流路構造体を用いた溶媒抽出方法は、微小粒子を微小流路内での溶媒抽出に用いることにより、反応や抽出の効率を微小流路の幅で決定される効率以上に向上させることができる。
【0079】
以下では、本発明の実施例を示し、更に詳しく発明の実施の形態について説明する。なお、本発明は以下の実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、任意に変更可能であることは言うまでもない。
【0080】
(実施例1)
本発明の第1の実施例における微小流路を図20に示す。微小流路は70mm×20mm×1t(厚さ)のパイレックス(登録商標)ガラス上に、微小流路に相当する連続相導入流路(2)、分散相導入流路(4)及び排出流路(7)の幅がいずれも220μm、深さ80μm、微小流路のアスペクト比=0.36、排出流路の長さが30mmで、連続相導入流路(3)と分散相導入流路(5)とが44°の角度にて交わる合流部を持ったY字形状の流路を1本形成した。この微小流路の幅及び深さについては、生成する微小粒子の粒径に依存するが、微小流路のアスペクト比が0.30以上3.0未満の範囲を逸脱しなければよい。
この微小流路を有する微小流路構造体は、図21に示すように、厚さ1mmで70mm×20mmのガラス基板の一方の面に、微小流路を一般的なフォトリソグラフィーとウェットエッチングにより形成し、この微小流路が形成されたガラス基板の微小流路を有する面に、微小流路の導入口(11)と排出口(8)にあたる位置に予め直径0.6mmの小穴を、機械的加工手段を用いて設けた厚さ1mmで70mm×20mmのガラス製のカバー体(30)を熱接合し製作した。なお、製作方法および基板材料はこれに限定するものではない。
【0081】
次に本発明の微小粒子製造方法について説明する。図22に示すように微小流路構造体(19)に液体が送液可能なようにホルダー(23)などで保持すると共に、テフロン(登録商標)チューブ(27)及びフィレットジョイント(40)をホルダーに固定する。テフロン(登録商標)チューブのもう一方はマイクロシリンジ(42)に接続する。これで微小流路構造体に液体の送液が可能となる。次に微小粒子を生成するための分散相にジビニルベンゼン、酢酸ブチルの混合溶液を、連続相にポリビニルアルコール3%水溶液をそれぞれのマイクロシリンジに注入し、マイクロシリンジポンプ(41)で送液を行った。送液速度は分散相及び連続相は共に20μl/minである。送液速度が共に安定した状態で、微小流路構造体の分散相及び連続相が交わる合流部にて、図23に示すような微小粒子の生成が観察された。生成された微小粒子を観察すると図24に示すように平均粒径200μm、粒径の分散度を示すCV値(%)は9.8%となり、極めて均一な微小粒子(17)であった。また、送液速度を分散相及び連続相を共に1μl/minで行った場合、生成した微小粒子の平均粒径は230μm、粒径の分散度を示すCV値(%)は9.5%となり、極めて均一な微小粒子であった。これにより分散相と連続相を同一の送液速度にて行っているので、連続相を過剰に送液することなく、均一な微小粒子を生成することが可能となる。
【0082】
(実施例2)
本発明の第2の実施例における微小流路を図25に示す。微小流路は70mm×40mm×1t(厚さ)のパイレックス(登録商標)ガラス上に、微小流路に相当する連続相導入流路(3)、分散相導入流路(5)及び排出流路(7)の幅がいずれも185m、深さ75μm、微小流路のアスペクト比=0.41、排出流路(7)の長さが30mmで、連続相導入流路と分散相導入流路とが22°及び44°の角度にて交わる合流部を持ったY字形状の流路を2本形成した。この微小流路の幅及び深さについては、生成する微小粒子の粒径に依存するが、微小流路のアスペクト比が0.30以上3.0未満の範囲を逸脱しなければよい。この微小流路を有する微小流路構造体は、実施例1と同様な方法で作製した。
【0083】
次に微小流路構造体をホルダーで保持し、実施例1と同様な方法で、微小粒子を生成するための分散相にモノマー(スチレン)、ジビニルベンゼン、酢酸ブチル及び過酸化ベンゾイルの混合溶液を、連続相にポリビニルアルコール3%水溶液をマイクロシリンジに注入し、マイクロシリンジポンプで送液を行い、連続相導入流路と分散相導入流路との交差部角度が44°及び22°における比較を行った。送液速度は分散相及び連続相は共に20μl/minである。流速が共に安定した状態で、微小流路構造体の分散相及び連続相が交わる合流部にて微小粒子の生成が観察された。生成された微小粒子を観察すると、合流部が22°の角度で交わる場合は平均粒径180μm、粒径の分散度を示すCV値(%)は8.7%となり、44°の場合は平均粒径160μm、粒径の分散度を示すCV値(%)は9.2%であった。また、送液速度は分散相及び連続相は共に5μl/minで行った場合の生成させた微小粒子を観察すると、合流部が22°で交わる場合は平均粒径250μm、粒径の分散度を示すCV値(%)は9.4%となり、44°の場合は平均粒径220μmであり、粒径の分散度を示すCV値(%)は8.5%となり、合流部の角度が22°の場合に対し、合流部の角度が44°の場合は0.89倍の粒径となる。これにより導入流路の幅及び深さが一定であると共に、導入する分散相及び連続相の送液速度の条件を変えることなく、導入流路の合流部の角度のみを変えることで粒径をコントロールが可能となる。
【0084】
(比較例1)
比較例1における微小流路を図26に示す。微小流路は70mm×20mm×1t(厚さ)のパイレックス(登録商標)ガラス上に、連続相導入流路(3)、分散相導入流路(5)及び排出流路(7)の幅がいずれも130μm、深さ35μm、微小流路のアスペクト比=0.27、排出流路の長さが30mmで、連続相導入流路と分散相導入流路とが44°の角度にて交わる合流部を持ったY字形状の流路を1本形成した。この微小流路構造体は実施例1と同様な方法で作製した。
【0085】
次に微小流路構造体をホルダーで保持し、実施例1と同様な方法で微小粒子を生成するための分散相にジビニルベンゼン、酢酸ブチルの混合溶液を、連続相にポリビニルアルコール3%水溶液をマイクロシリンジに注入し送液を行った。送液速度は分散相及び連続相は共に5μl/minである。流速が共に安定した状態で、微小流路構造体の分散相及び連続相が交わる合流部を観察すると、微小粒子生成が確認出来るが、排出流路内で分離・合一が発生し、生成された微小粒子を観察すると、粒径の分散度を示すCV値(%)は36.5%となり、分散性の悪い微小粒子であった。このアスペクト比の微小流路構造体で分散性の良好な微小粒子の生成を行う場合には、送液速度を連続相>分散相、具体的には5:1以上の流速比を与えて、連続相を過剰に送液する必要がある。
【0086】
(実施例3)
本発明の第3の実施例における微小流路を図27(a)に示す。微小流路は70mm×40mm×1t(厚さ)のパイレックス(登録商標)ガラス上に、微小流路に相当する連続相導入流路(3)、分散相導入流路(5)及び排出流路(7)の幅がいずれも146μm、深さ55μm、微小流路のアスペクト比=0.38、排出流路の長さが30mmで、連続相導入流路と分散相導入流路とが44°の角度にて交わる合流部を持ち、且つ、分散相導入流路と排出流路との合流部に図27(b)の拡大図に示すような排出流路幅の一部を突起状にしたY字形状の流路を形成した。この微小流路の幅及び深さについては、生成する微小粒子の粒径に依存するが、微小流路のアスペクト比が0.30以上3.0未満の範囲を逸脱しなければよい。また、突起のサイズについては微小粒子の粒径及び導入流路内圧に対するポンプ能力により適宜調整すれば良いが、今回は図27(b)に示すK−K’幅として116μmとした。この微小流路を有する微小流路構造体は、実施例1と同じ方法で作製した。
【0087】
次に微小流路構造体をホルダーで保持し、実施例1と同様な方法で微小粒子を生成するための分散相にジビニルベンゼン、酢酸ブチルの混合溶液を、連続相にポリビニルアルコール3%水溶液をマイクロシリンジに注入し、マイクロシリンジポンプで送液を行い、連続相導入流路と分散相導入流路及び排出流路との交差部位に図27(c)に示す突起の存在しない流路にて比較を行った。送液速度は分散相及び連続相は共に同じとし、微小粒子の生成が可能な流速を計測したところ、突起を有する微小流路構造体における微小粒子の生成可能な流速は10μl/min、図27(c)に示すような突起が無い微小流路構造体においては8μl/minであった。
突起を有する微小流路構造体にて生成された微小粒子を観察すると、平均粒径110μm、粒径の分散度を示すCV値(%)は6.3%となり、良好な粒径分散度が得られている。これにより排出流路内に突起を設けることにより良好な分散度を維持し、且つ生成微する微小粒子の量を増加させることが可能となる。
【0088】
(実施例4)
本発明の第4の実施例における微小流路を図28に示す。微小流路は70mm×20mm×1t(厚さ)のパイレックス(登録商標)ガラス上に、微小流路に相当する2本の連続相導入流路(3)、1本の分散相導入流路(5)及び排出流路(7)の幅がいずれも140μm、深さ60μm、微小流路のアスペクト比=0.43、排出流路の長さが30mmで、連続相導入流路と分散相導入流路とが、2本の連続相導入流路で1本の分散相導入流路を挟む様に、各々22°の角度にて交わる合流部を持った形状の流路を1本形成した。この微小流路の幅及び深さについては、生成する微小粒子の粒径に依存するが、微小流路のアスペクト比が0.30以上3.0未満の範囲を逸脱しなければよい。なお、この微小流路構造体は、実施例1と同様な方法で作製した。
【0089】
次に実施例1と同様に微小流路構造体をホルダーで保持し、実施例1と同様な方法で、微小粒子を生成するための分散相にジビニルベンゼン、酢酸ブチルの混合溶液を、連続相にポリビニルアルコール3%水溶液をマイクロシリンジに注入し、マイクロシリンジポンプで送液を行なった。分散相は、中央の分散相導入流路から、連続相は分散相導入流路の両側にある連続相導入流路から導入した。送液速度は分散相及び連続相は共に6μl/minである。送液速度が共に安定した状態で、微小粒子製造用微小流路構造体の分散相及び連続相が交わる合流部にて微小粒子の生成が観察された。生成された微小粒子を観察すると平均粒径77μm、粒径の分散度を示すCV値(%)は7.0%となり、極めて均一な微小粒子であった。
【0090】
(実施例5)
第5の実施例として、図29に示すような4本の流路を持つ微小流路構造体を製作した。形成した微小流路(16)の幅は100μm、深さは40μmであり、流体導入口A(43)、流体導入口B(44)、流体導入口C(45)、および流体導入口と繋がる層流流路(46)と、層流流路とつながる微小流路は、それぞれ44°の角度で合流させた。この微小流路を有する微小流路構造体を実施例1と同様な方法で製作した。この微小流路の流体導入口Aから分散相として、有機相のジビニルベンゼン、酢酸ブチルの混合溶液を送液し、流体導入口Bから水相のポリビニルアルコール3%水溶液を送液しさらに、流体導入口Cからから連続相として水相のポリビニルアルコール3%水溶液を送液した。送液は、実施例1と同様にマイクロシリンジに流体を注入し、マイクロシリンジポンプで行った。送液速度は流体導入口A及び流体導入口Bからは5μl/min、流体導入口Cからは10μl/minで送液した。送液速度が共に安定した状態で、流体導入口Aと流体導入口Bの層流合流部(47)から、合流部(6)まで層流が観察された。また連続相合流部で微小粒子の生成を確認した。生成された微小粒子を観察すると平均粒径110μm、粒径の分散度を示すCV値(%)は8.2%となり、均一な微小粒子であった。
【0091】
(実施例6)
本発明の第6の実施例における微小流路を図20に示す。微小流路は70mm×20mm×1t(厚さ)のパイレックス(登録商標)ガラス上に、微小流路に相当する連続相導入流路(3)、分散相導入流路(5)及び排出流路(7)の幅がいずれも220μm、深さ80μm、微小流路のアスペクト比=0.36、排出流路の長さが30mmで、連続相導入流路と分散相導入流路とが44°の角度にて交わる合流部を持ったY字形状の流路を1本形成した。この微小流路の幅及び深さについては、生成する液滴あるいは微小粒子の粒子径に依存するが、微小流路のアスペクト比が0.30以上3.0未満の範囲を逸脱しなければよい。
送液は実施例1と同様な方法により、微小粒子を生成するための分散相にジビニルベンゼン、酢酸ブチルの混合溶液を、連続相にポリビニルアルコール3%水溶液をそれぞれのマイクロシリンジに注入し、マイクロシリンジポンプで行った。送液速度は分散相及び連続相は共に2μl/minである。送液速度が共に安定した状態で、微小流路構造体の分散相及び連続相が交わる合流部にて微小粒子の生成が観察された。微小粒子生成後、図8(b)に示すように排出口(8)から10mm離れた排出流路(7)の位置を光照射スポット(20)の中心とし、紫外線による光照射(21)を行ない微小粒子を硬化した。光照射スポットのサイズは直径約10mmとした。光照射スポット以外は光照射されないようにマスク(22)を設置した。排出口からは、ポリビニルアルコールの水溶液を媒体とした微小粒子が排出された。生成された微小粒子を観察すると平均粒径200μm、粒径の分散度を示すCV値(%)は8.5%となり、極めて均一な微小粒子であった。また微小流離内で微小粒子を生成した後、光照射する代わりに、図9(a)に示す排出口(8)から微小流路構造体の外部のテフロン(登録商標)チューブ(27)の部分をヒーター(28)により65℃に加熱して微小粒子を硬化した。ビーカー(26)には、ポリビニルアルコールの水溶液を媒体とした微粒子が排出された。生成された微粒子を観察すると平均粒子径200μmの、粒径の分散度を示すCV値(%)は8.5%となり、極めて均一な粒子であった。
【0092】
(実施例7)
第7の実施例として、図30に示すような微小流路(16)を有する微小流路構造体を製作した。流路深さが80μmで流路幅が共通流路導入口(32)の位置で0.5mm、共通流路排出口(31)の位置で2mmになるように、共通流路導入口の位置から共通流路排出口の位置にむけて徐々に流路幅を大きくした2本の共通流路(29)から幅220μm、深さ80μmの微小流路を引き出してY字状に合流させた微小流路4本を、6mmの等間隔(a1〜a5がすべて6mm)で配置した。このY字状の微小流路の形状は、実施例1と同じである。共通流路導入口は、幅0.5mm、深さ80μmとし、共通流路排出口は、幅200μm、深さ80μmとした。この微小流路を有する微小流路構造体は実施例1と同様な方法で製作した。
【0093】
この微小流路構造体の2本の共通流路のそれぞれの流体導入口に、実施例1と同様な方法で、各共通流路に流速2.5ml/分で純水を5分間送液し、Y字状の微小流路を通過して微小流路の流体排出口から排出された液量を各流路で比較したところ、表1に示す結果が得られ、Y1〜Y4の各微小流路に均一に液体を送液することができた。
【0094】
【表1】
【0095】
また、一方の共通流路にポリビニルアルコールの3%水溶液を、もう一方の共通流路にジビニルベンゼン、酢酸ブチルの混合溶液を実施例1と同様な方法で100μl/minで送液し、各微小流路で生成した10個の微小粒子の粒径を顕微鏡により測定し平均した結果、表2に示す結果が得られ、各微小流路より排出された微小粒子の粒径の平均値が101.0μm、粒径の分散度を示すCV値(%)は8.7%となり、各微小流路で均一な微小粒子を生成することができた。
【0096】
【表2】
【0097】
(比較例2)
第2の比較例として、図31に示すような微小流路(16)を有する微小流路構造体を製作した。流路深さが80μmで流路幅が共通流路導入口(32)の位置で2mm、共通流路排出口(31)の位置で0.5mmになるように、共通流路導入口の位置から共通流路排出口の位置にむけて徐々に流路幅を狭くしたの2本の共通流路(29)から幅220μm、深さ80μmの微小流路を引き出してY字状に合流させた微小流路4本を、6mmの等間隔(a1〜a5がすべて6mm)で配置した。この微小流路の形状は実施例1と同じである。共通流路導入口は、幅0.5mm、深さ80μmとし、共通流路排出口は、幅220μm、深さ80μmとした。この微小流路を有する微小流路構造体は実施例1と同様な方法で製作した。
【0098】
この微小流路構造体の2本の共通流路のそれぞれの流体導入口に、実施例1と同様に送液ポンプを使用して、各共通流路に流速2.5ml/分で純水を5分間送液し、Y字状の微小流路を通過して微小流路の流体排出口から排出された液量を各流路で比較したところ、表1に示す結果が得られ、Y1〜Y4の各微小流路に均一に液体を送液することができなかった。
【0099】
また、一方の共通流路にポリビニルアルコールの3%水溶液を、もう一方の共通流路にジビニルベンゼン、酢酸ブチルの混合溶液をそれぞれ実施例1と同様に送液ポンプで100μl/minで送液し、各微小流路で生成した10個の微小粒子の粒径を顕微鏡により測定し平均した結果、表2に示す結果が得られ、各微小流路で均一な粒径をもつ微小粒子を生成することができなかった。
【0100】
(実施例8)
第8の実施例として、図20に示すような微小流路を有する微小流路構造体を製作した。形成した微小流路の幅Wは220[μm]、微小流路の深さdは80[μm]、微小流路の長さは30[mm]であり、導入口(11)とつながる2本の導入流路(48)は、44°の角度で合流させた。この微小流路を有する微小流路構造体は、実施例1と同様な方法で製作した。
【0101】
実施例1と同様な方法で、この微小流路の流体導入口の一方からフェノールを被抽出物質として含有した水相を送液し、もう一方の流体導入口からは、抽出溶媒として酢酸エチルの有機相を送液した。送液速度を調整することで、層流を形成して酢酸エチル側にフェノールを抽出した場合と、水相により酢酸エチルの有機相を微小粒子化して抽出した場合で実験を行なった。層流を形成したときの送液速度は、水相および有機相とも20μl/minであった。また水相によりジビニルベンゼンの有機相を微小粒子化した場合の送液速度は、水相および有機相とも2μl/minであった。
【0102】
この微小流路では、層流を形成した場合に得られる比界面積は、微小流路の幅Wが約220[μm]であることから、2×104/W[cm−1]=約2×104/220[cm−1]=約90[cm−1]となった。また、水相により酢酸エチルの有機相を微小粒子化した場合の微小粒子の平均粒径を高速カメラを用いて測定し、微小粒子の直径Dを求めたところ約200[μm]であった。この場合の比界面積は、6×104/D[cm−1]=約6×104/200[cm−1]=約300[cm−1]となった。このことから水相により酢酸エチルの有機相を微小粒子化した場合の方が、水相と有機相で層流を形成した場合よりも非界面積が大きくなり、抽出効率が上がるものと推定される。
【0103】
実際に、流体排出口から排出された流体を試験管で回収し、有機相のみを取出して高速液体クロマトグラフィーを用いてフェノールの濃度を測定した。有機相と水相が接している時間が長いほど、抽出される物質の量が多くなることから、測定結果を抽出溶媒である有機相の送液速度から計算される微小流路内滞在時間で割り算して補正した。その結果、酢酸エチルの有機相を微小粒子化して抽出した場合のほうがフェノールの濃度が高かった。以上のことから、抽出溶媒を微小粒子化することで、抽出効率が微小流路の幅で決まる効率以上に向上したことを確認した。
【図面の簡単な説明】
【0104】
【図1】従来の微小粒子を生成する微小流路を示す概略図であり、図1右は、図1左のA−A’、B−B’のA−A’ 断面図、B−B’断面図である。
【図2】図2(a)はY字状微小流路内における層流を示す概念図であり、図2(b)は図2(a)の一部である円内を拡大した立体断面図である。
【図3】微小流路の合流部近傍において連続相が分散相をせん断して微小粒子を形成する方法を示す概念図である。
【図4】微小流路の合流部近傍において両側の連続相が中央の分散相を挟み込むようにをせん断して微小粒子を形成する方法を示す概念図である。
【図5】微小流路の合流部近傍において中央の連続相が両側の分散をせん断して微小粒子を形成する方法を示す概念図である。
【図6】微小流路の合流部近傍において直線状に一方の側より分散相を、もう一方の側より連続相を導入し、分散相を連続相でせん断して微小粒子を生成し、任意の方向へ排出させる方法を示す概念図である。
【図7】複数の分散相及び/または連続相を導入する分散相導入流路)及び/または連続相導入流路を設けて分散相及び/または連続相を複数の流体の層流、または混合液または懸濁液(エマルション)として、微小流路の合流部近傍において分散相を連続相でせん断して微小粒子を形成する方法を示すいくつかの概念図であり、図7(a)〜(g)はそれぞれの態様を示す。
【図8】光照射により微小粒子を硬化させる方法を示した概略図であり、図8(a)は外部に光照射手段を設けた場合、図8(b)はマスクを使って光照射する場合の概略図である。
【図9】加熱により微小粒子を硬化させる方法を示した概略図であり、図9(a)は外部に加熱手段を設けた場合、図9(b)は微小流路構造体内に加熱手段を設けた場合の概略図である。
【図10】平面的あるいは立体的に配置された複数の微小流路に均一に流体を送液する最も基本的な微小流路形状を示した概念図である。
【図11】平面的あるいは立体的に配置された複数の微小流路に均一に流体を送液する微小流路形状のうち、共通流路の断面積が共通流路導入口から共通流路排出口に向かって次第に大きくなる例を示した概念図である。
【図12】平面的あるいは立体的に配置された複数の微小流路に均一に流体を送液する微小流路形状のうち、2本の共通流路からY字上の複数の微小流路に送液した例を示した概念図である。
【図13】平面的あるいは立体的に配置された複数の微小流路に均一に流体を送液する微小流路形状のうち、共通流路を円弧状に配置した例を示した概念図である。
【図14】平面的あるいは立体的に配置された複数の微小流路に均一に流体を送液する微小流路形状のうち、微小流路を有する微小流路基板を重ねあわせ、共通流路を前記微小流路基板を貫通させて構成した例であり、図14上は積層一体化を示す態様、図14下はD−D’、E−E’の断面図である。
【図15】微小流路内での微小粒子を示す概念図である。
【図16】被抽出物質含有の流体が、原材料を有する2つの流体を別々に微小流路に導入し微小流路内の反応相で混合し反応させた流体である場合の本発明における微小粒子の用途としての溶媒抽出方法の概念図である。
【図17】流体境界で生じる反応により生成物を生成する微小流路において、原材料を有する2つの流体を連続相とし、この連続相により流体境界で抽出溶媒をせん断することにより流体境界に微小液滴を形成し分散相とすることで、流体境界に生成した生成物を抽出する概念図である。
【図18】被抽出物質含有の流体を微小液滴化して分散相とし、連続相である抽出溶媒に相間移動を行なって溶媒抽出を行なったあと、微小液滴の少なくとも表面を硬化することで被抽出物質を分離することを示す概念図である。
【図19】被抽出物質含有の流体を連続相とし、微小液滴化して分散相とした抽出溶媒に相間移動を行なって溶媒抽出を行なったあと、微小液滴の少なくとも表面を硬化することで被抽出物質を分離することを示す概念図である。
【図20】実施例1、実施例6、実施例8における微小流路を示す概略図である。
【図21】実施例1における微小流路構造体を示す概略図である。
【図22】実施例1における微小粒子生成法を示す概略図である。
【図23】実施例1における微小粒子生成状況を示す概略図である。
【図24】実施例1における生成した微小粒子を示す図である。
【図25】実施例2における微小流路を示す概略図であり、図25右は、図25左のG−G’のG−G’断面図である。
【図26】比較例1における微小流路を示す概略図であり、図26右は、図26左のH−H’のH−H’断面図である。
【図27】図27(a)は実施例3における微小流路を示す概略図であり、図27(b)および図27(c)は図27(a)の6の部分の拡大図である。
【図28】実施例4における微小流路を示す概略図であり、図28右は、図28左のM−M’のM−M’断面図である。
【図29】実施例5における微小流路を示す概略図であり、図29右は、図29左のN−N’のN−N’断面図である。
【図30】実施例7に示した微小流路形状の概略図である。
【図31】比較例2に示した微小流路形状の概略図である。
【図32】図32(a)〜(e)は、流路の底面、上面、側面のいずれか1面あるいは2面以上から1以上の突起を形成した場合の例を示すいくつかの概念図である。
【符号の説明】
【0105】
1:微小流路基板
2:連続相導入口
3:連続相導入流路
4:分散相導入口
5:分散相導入流路
6:合流部
7:排出流路
8:排出口
9:微小流路の幅
10:連続相
11:導入口
12:有機相
13:水相
14:流体境界
15:分散相
16:微小流路
17:微小粒子
18:微小粒子の直径
19:微小流路構造体
20:光照射スポット
21:光照射
22:マスク
23:ホルダー
24:微小流路の単位長さ
25:微小流路の深さ
26:ビーカー
27:テフロン(登録商標)チューブ
28:ヒーター
29:共通流路
30:カバー体
31:共通流路排出口
32:共通流路導入口
33:微小液滴の直径
34:微小液滴
35:流体A
36:流体b
37:反応相
38:抽出溶媒
39:溶媒抽出
40:フィレットジョイント
41:マイクロシリンジポンプ
42:マイクロシリンジ
43:流体導入口A
44:流体導入口B
45:流体導入口C
46:層流流路
47:層流合流部
48:導入流路
【技術分野】
【0001】
本発明は、分取・分離用カラム充填剤に用いられる微小粒子や医薬品、含酵素カプセル、化粧品、香料、表示・記録材料、接着剤、農薬等に利用されるマイクロカプセル、化学反応・溶媒抽出等に用いられる微小粒子の生成方法とその用途であり、また、その微小粒子を生成するための微小流路構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、数cm角のガラス基板上に長さが数cm程度で、幅と深さがサブμmから数百μmの微小流路を有する微小流路構造体を用い、流体を微小流路へ導入することにより化学反応あるいは微小粒子の生成を行う研究が注目されている。なおここでいう微小粒子とは、固体状の微小粒子の他にも微小液滴や微小液滴の表面だけが硬化した微小粒子(以下、「半硬化」という。)や、非常に粘性が高い半固体状の微小粒子も含む。このような微小流路は、微小空間の短い分子間距離および大きな比界面積の効果により、効率の良い化学反応を行なうことができることが示唆されている(例えば非特許文献1参照)。
【0003】
また、界面張力の異なる2種類の液体を、交差部分が存在する流路に導入することにより極めて粒径が均一な微小粒子を生成することができる(例えば、非特許文献2及び特許文献1参照)。例えば、非特許文献2に示されている手法は図1に示すように、微小流路基板(1)の上に、連続相導入口(2)、連続相導入流路(3)、分散相導入口(4)、分散相導入流路(5)、排出流路(7)及び排出口(8)を有したT字型の微小流路構造体であり、導入された連続相と分散相とが合流する部分(以下、「合流部」という。)に合流部(6)が存在する。各流路の深さは100μmであり、分散相を導入する導入流路幅が100μm、連続相を導入する導入流路幅は300〜500μmのT字型微小流路を用いて、分散相と連続相の流れの速さを制御して送液を行うと、合流部において極めて均一な微小粒子の生成が可能となる。また、分散相及び連続相の流量を制御することで生成する微小粒子の粒径を制御することも可能となる。
【0004】
しかしながらこの方法は、連続相の導入流路幅が分散相の導入流路幅に対し、3〜5倍広い導入流路を用いており、分散相及び連続相を同一流速で送液した場合、流路幅が狭い分散相の導入流路内で線速は速くなってしまうため、分散相及び連続相がその合流部以降の流れにおいて層流となってしまうことがあり、結果として合流部において微小粒子生成が出来なくなってしまう課題があった。
【0005】
また、このため、連続相を過剰に供給する必要があるが、微小粒子を生成させて工業的に量産する場合には、分散相の使用量に対し連続相の使用量を過剰にすることが必要となり、低コスト化、あるいは廃液量の低減などの課題があった。
【0006】
また、非特許文献2あるいは特許文献1に示されている手法では、複合カプセルや多重カプセルの作成は困難であり、その改善が求められていた。
【0007】
また、非特許文献2あるいは特許文献1に示されている手法で生成した微小粒子は、粒径のばらつきが比較的小さく均一であるため、微小粒子を形成している化合物を架橋重合させることなどにより硬化させて、分取、分離用カラム充填剤等に用いられる粒径の均一で微小なゲル粒子などに用いることが試みられている。しかしながら、生成した微小粒子を微小流路の外部でビーカーなどに収集し、架橋重合などにより微小粒子を硬化すると、微小粒子を収集してから硬化するまでに、微小粒子の形状が崩れたり、微小粒子同士の合一が生じるため、硬化した微小粒子の粒径のばらつきが大きくなってしまうこと、また、硬化する前の微小粒子を媒体から分離することが難しいため、その改善が求められていた。
【0008】
また、前述した微小空間の短い分子間距離および大きな比界面積の効果により、効率の良い化学反応を行なうことができることや、界面張力の異なる2種類の液体を、交差部分が存在する流路に導入することにより極めて粒子系が均一な微小粒子を生成することができるような微小空間の特性を生かしたまま、微小流路での化学反応、微小粒子を工業生産に適用しようとする試みも行われている。この場合、微小空間の小ささ故に、単一の微小流路では、単位時間当りの生成量が少なくならざるを得ないが、多数の微小流路を並列に配置することができれば、前記微小流路の特性を生かしたまま単位時間当たりの生成量を増加させることができる(例えば非特許文献3参照)。非特許文献3に示されるように、1本の微小流路を有する微小流路基板を、反応溶液の入り口や反応生成物の出口などの共通部分を貫通した縦穴でつないで積層することなどが試みられている。このように、微小空間の特徴を生かしたまま、大量に化学合成や微小粒子の生成を行なう場合には、最小単位である微小流路の集積度を平面的に高める、あるいは立体的に積層することで可能であると言われているが、平面的あるいは立体的に配置された微小流路へ均一に流体を分配することは、従来非常に困難であり、改善が求められていた。
【0009】
また、非特許文献1には、微小空間での短い分子間距離および大きな比界面積の効果による分子のすみやかな拡散により、特別な攪拌操作を行なわなくとも効率の良い化学反応を行なうことができることや、反応によって生じた目的化合物が反応相から抽出相へすばやく抽出、分離されることによって、引き続いて起こる副反応が抑えられることが示唆されている。
【0010】
上記の例等では、図2(a)に示すようにY字状の微小流路(16)に原材料を溶かした有機相(12)と水相(13)を導入し、Y字の合流部で形成される有機相と水相の流体境界(14)で反応や抽出を行なっている。一般的に、マイクロスケールの流路内ではレイノルズ数が1より小さいケースがほとんどであり、よほど流速を大きくしない限りは図2(a)に示すような層流の状態となる。また、拡散時間は微小流路の幅(9)の2乗に比例するので、微小流路の幅を小さくするほど反応液を能動的に混合しなくとも分子の拡散によって混合が進み、反応や抽出が起こりやすくなる。また、一般に反応や抽出は比界面積が大きいほど効率が良い。ここで比界面積とは、相同士が接触することで界面を形成している時の、相の総体積に対する界面の面積比を意味する。反応や抽出において、物質は界面を通してのみ他の相へ移動できるので、比界面積が大きいということは、それだけ反応や抽出の効率が高いことを意味する。
【0011】
以下では、図2(b)を用いて微小流路内の比界面積の計算方法を示す。図2(b)は、図2(a)のY字流路の合一部の一部分を切り出した立体断面図である。微小流路の幅(9)をW[μm]、微小流路の単位長さ(24)をL[μm]、微小流路の深さ(25)をd[μm]とすると、有機相(12)の総体積は、(W/2)×d×L[μm3]となる。また、水相と有機相の流体境界(14)の面積は、d×L[μm2]となる。従って比界面積は、(d×L)/{(W/2)×d×L}=2×104/W[cm−1]となり、微小流路の長さや深さ(d)に関係なく微小流路の幅(W)だけで決まることが分かる。例えば、微小流路の幅が1000[μm]の比界面積は、20[cm−1]であるのに対して、微小流路の幅が100[μm]の比界面積は、200[cm−1]となる。従って、微小流路の幅を小さくするほど比界面積が大きくなり、反応や抽出の効率が良くなる。
【0012】
しかしながら、前述した図2(a)に示すような層流間での反応や抽出の効率は、逆に言えば拡散時間の短縮と流体境界の比界面積の大きさ、すなわち微小流路の幅で制限されることを意味している。すなわち、反応や抽出に使用する微小流路の幅によって拡散時間と流体境界の比界面積が決まってしまい、反応や抽出の効率を微小流路の幅で決定される効率以上に向上させることができない。また、前述したように微小流路の幅を小さくすればさらに拡散時間を短くして比界面積を大きくでき、反応や抽出の効率を向上させることは可能だが、微小流路の幅が小さいほど圧力損失が大きく送液自体が難しくなり現実的でないため微小流路の幅を小さくすることには限界があり、その改善が求められていた。
【0013】
【非特許文献1】H.Hisamoto et.al.(H.ひさもと ら著)「Fast and high conversion phase−transfer synthesis exploiting the liquid−liquid interface formed in a microchannel chip」, Chem.Commun., 2001年発行, 2662−2663頁
【非特許文献2】西迫貴志ら、「マイクロチャネルにおける液中微小液滴生成」、第4回化学とマイクロシステム研究会講演予稿集、59頁、2001年発行
【非特許文献3】菊谷ら、「パイルアップマイクロリアクターによる高収量マイクロチャンネル内合成」、第3回化学とマイクロシステム研究会公演予稿集、9頁、2001年発行
【特許文献1】特許第2975943号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
以上のように従来技術による微小流路内における微小粒子生成の第1の課題は、微小流路において連続相と分散相の合流部で均一な微小粒子を生成する際に分散相及び連続相が層流を形成してしまい合流部において安定して微小粒子を生成することができなくなることである。
【0015】
第2の課題は、合流部で微小粒子を生成させるためには連続相を過剰に供給する必要があり、例えばゲル製造における連続相の低コスト化、工業的な量産、あるいは微小粒子の生成自体が困難なことである。
【0016】
第3の課題は複合カプセルや多重カプセルの生成を可能にすることである。
【0017】
第4の課題は、生成した微小粒子が微小液滴の場合、微小流路の外部でビーカーなどに収集し、架橋重合などにより微小液滴を硬化すると、微小液滴を収集してから硬化するまでに、微小粒子の形状が崩れたり、微小粒子同士の合一が生じるため、硬化した微小粒子の粒径のばらつきが大きくなってしまうことである。また、硬化する前の微小粒子を媒体から分離することが難しいことである。
【0018】
第5の課題は、微小流路構造体に平面的あるいは立体的に配置された複数の微小流路へ均一に流体を分配することは、従来非常に困難なことである。
【0019】
第6の課題は、反応や抽出の効率を微小流路の幅で決定される効率以上に向上させることができないことである。
【0020】
本発明の目的は、上記課題を鑑みてなされたもので、微小流路内での微小粒子生成、複合カプセルや多重カプセルの生成を可能とすると共に、複数の微小流路に均一に流体を分配することにより工業的な量産にも対応でき、また、微小流路を用いて生成した微小粒子の形状を崩さずに微小粒子を生成した直後に微小粒子を硬化させ、微小粒子を媒体から分離することができる微小流路構造体を提供することにある。
【0021】
また、この微小流路構造体を用い、微小流路の幅で決定される以上の拡散時間の短縮と流体境界の比界面積の大きさを得ることによって、微小流路内における抽出の効率を微小流路の幅で決定される効率以上に向上する溶媒抽出方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0022】
上記課題を解決する本発明の微小流路構造体は、分散相を導入するための導入口及び導入流路と、連続相を導入するための導入口及び導入流路と、分散相及び連続相により生成された微小粒子を排出させるための排出流路及び排出口とを備えた微小流路からなることを特徴とする微小流路構造体であって、分散相を導入するための導入流路と連続相を導入するための導入流路とが任意の角度で交わると共に、前記2つの導入流路が任意の角度で排出流路へと繋がる微小流路構造体である。また、多数の前記微小流路を並列化及び/または積層化して微小粒子を大量に生産するための形態としては、流体を導入するための導入口及び流体を排出するための排出口を備え、基板上に前記導入口及び排出口と連通する共通流路と、前記導入口及び排出口とは異なる位置で前記共通流路と連通する1以上の微小流路とを有した微小流路構造体であって、前記共通流路の断面積が導入口との連通位置より排出口との連通位置に向かって次第に大きくなるかあるいは同じである微小流路構造体である。
【0023】
また、本発明の微小粒子製造方法は、分散相を導入するための導入口及び導入流路と、連続相を導入するための導入口及び導入流路と、分散相及び連続相により生成された微小粒子を排出させるための排出流路及び排出口とを備えた微小流路構造体を用いて微小粒子を生成する方法であって、主として分散相と連続相とを合流させる合流部において、分散相を導入するための導入流路と連続相を導入するための導入流路とが交わる角度を変化させて生成する微小粒子の粒径を制御することにより分散相を微小粒子化する微小粒子製造方法である。さらに、上記微小流路構造体を用いることで、微小粒子の中でも、マイクロカプセルやゲルのようなものも製造できる。
【0024】
また、微小流路内において抽出溶媒あるいは被抽出物質含有の流体を微小液滴化した後、前記微小液滴からなる分散相と前記微小液滴を囲む連続相との間で被抽出物質の相間移動により溶媒抽出を行なう溶媒抽出方法として用いることもできる。
【0025】
以下、本発明をさらに詳細に説明する。
<微小粒子製造方法>
本発明において用いられる微小流路とは、一般的に幅500μm以下、深さ300μm以下のサイズの流路を示す。
【0026】
また本発明における微小粒子とは、微小流路内で連続相が分散相をせん断することで生成される微小粒子であり、その微小粒子サイズは、一般的に直径が微小流路の幅あるいは深さよりも小さい。例えば、幅が100μm、深さが50μmの微小流路で生成される微小粒子の大きさは、微小粒子が完全球体であると仮定するとその直径は50μmより小さい。また本発明における微小粒子は、固体状の微小粒子の他にも微小液滴や微小液滴の表面だけが硬化した半硬化の微小粒子や、非常に粘性が高い半固体状の微小粒子も含む。
【0027】
また、本発明において用いられる分散相とは、微小流路構造体により微小粒子を生成させるための液状物であり、例えば、スチレンなどの重合用のモノマー、ジビニルベンゼンなどの架橋剤、重合開始剤等のゲル製造用の原料を適当な溶媒に溶解した媒体を指す。ここで分散相としては、本発明が微小な微小粒子を効率的に生成させることを目的としており、この目的を達成させるためであれば微小流路構造体中の流路を送液できるものであれば特に制限されず、さらに微小粒子を形成させることができればその成分も特に制限されない。また、分散相中に例えば微小な粉末の様な固体状物が混在したスラリー状のものであっても差し支えないし、分散相が複数の流体から形成される層流であっても良いし、複数の流体から形成される混合流体であっても懸濁液(エマルション)であっても良い。
【0028】
本発明において用いられる連続相とは、微小流路構造体により分散相より微小粒子を生成させるために用いられる液状物であり、例えば、ポリビニルアルコールのようなゲル製造用の分散剤を適当な溶媒に溶解した媒体を指す。ここで連続相としては分散相と同様に、微小流路構造体中の流路を送液できるものであれば特に制限されず、さらに微小粒子を形成させることができればその成分は特に制限されない。また、連続相中に例えば微小な粉末の様な固体状物が混在したスラリー状のものであっても差し支えないし、分散相が複数の流体から形成される層流であっても良いし、複数の流体から形成される混合流体であっても懸濁液(エマルション)であっても良い。生成する微小粒子組成の観点から見た場合は、微小粒子の最外層が有機相であれば連続相の最外層は水相となり、微小粒子の最外層が水相であれば連続相の最外層は有機相となる。
【0029】
さらに、分散相と連続相とは微小粒子を生成させるために、実質的に交じり合わないあるいは相溶性がないことが好ましく、例えば、分散相として水相を用いた場合には連続相としては水に実質的に溶解しない酢酸ブチルといった有機相が用いられることとなる。また、連続相として水相を用いた場合にはその逆となる。
【0030】
本発明の微小粒子製造方法は、前述した分散相と連続相とを後述する本発明における微小流路構造体へその導入流路より導入し、両者が合流する合流部で分散相を連続相でせん断し微小粒子を生成させるものであるが、分散相を導入するための導入流路と連続相を導入するための導入流路とが交わる角度を変化させることで、生成する微小粒子の粒径を制御することが可能である。これは、従来の微小流路構造体を使った微小粒子の生成においては、分散相と連続相の導入速度を変えて生成させる場合よりもより制御しやすく、工業的な量産に適している。特に、分散相の導入速度と連続相の導入速度とが実質的に同じであれば、導入装置を1個用意することで足りるなどコスト面においても優れている。尚、ここでいう分散相の導入速度と連続相の導入速度とが実質的に同じとは、導入速度が多少変動があっても生成する微小粒子の粒径には大きな影響を与えないことを意味している。このようにすることで、安定した粒径の微小粒子を生成することができ、連続相を過剰に供給する必要がなくなり、例えばゲル製造における連続相の低コスト化、工業的な量産が可能となる。
【0031】
本発明における連続相と分散相との合流の方式としては、基本的には図3に示すようなY字型の微小流路の連続相導入口(2)から連続相を導入し、分散相導入口(4)から分散相を導入し合流部(6)で分散相を連続相によりせん断して微小粒子(17)を生成する。しかしながら本発明はこの方式に限定されるものではなく、図4に示すように、微小流路(16)で分散相(15)を連続相(10)が挟み込むように接触させて分散相を合流部(6)においてせん断して微小粒子(17)を生成する方式でも良いし、図5に示すように、微小流路(16)で連続相(10)を挟み込むように2以上の分散相(15)が接触し、分散相が連続相で合流部(6)においてせん断して微小粒子(17)を生成する方式でも良いし、図6に示すように、直線状に、微小流路(16)の一方の側より分散相(15)を、もう一方の側より連続相(16)を導入し、合流部(6)において分散相と連続相とを合流させることで微小粒子(17)を生成させ、合流した位置より1又は2以上の任意の方向へ排出させる方式でも良い。このようにすることで、微小粒子をより効率的に生成させることができる。なお、図6の方式の場合、生成した微小粒子を含む流体を、再度合流させて生成した微小粒子を回収することができる。
【0032】
また、図7(a)〜(g)に示すように、1または複数の分散相(15)を導入する分散相導入流路(5)や1または複数の連続相(10)を導入する連続相導入流路(3)を設けることで、分散相や連続相を、複数の流体の層流または混合液または懸濁液(エマルション)とすることができる。このようにすることで、多層構造の微小粒子や、異なった多種の微小粒子を含有した微小粒子を形成することができ、複合マイクロカプセルや多重マイクロカプセルを生成することができる。なお、連続相、分散相あるいはその両者には微小な粉末を含んでいてもよい。
【0033】
また本発明において、微小流路の合流部で生成した微小粒子が微小液滴であって微小液滴を硬化させる場合、微小流路中及び/又は微小流路の外において硬化させるとよい。さらに、硬化した微小粒子の粒径を均一にするために、微小液滴が排出流路を通過して排出部から出た後、微小流路構造体の排出部から微小流路構造体の外部に設けられた微小流路で連続的に硬化しても良い。さらに、硬化した微小粒子の粒径をより均一にするためには、微小流路の合流部で微小液滴が生成した直後に、微小流路構造体中の微小流路すなわち排出流路で硬化させることがより好ましい。
【0034】
本発明における微小液滴を硬化する手段の一つは、微小液滴に光を照射することにより硬化させるものであり、この場合の光は、硬化させる微小液滴の材質を比較的多くの材質から選択できることから、紫外線であることが好ましい。光照射(21)は、図8(a)に示すように微小流路構造体(19)の排出口(8)から微小液滴が微小流路構造体の外部に出た後に行なっても良いが、微小粒子の粒径をより均一にするためには、図8(b)に示すように、微小流路の合流部(6)で微小液滴が生成した直後に光照射(21)を行ない微小流路構造体(19)の中の排出流路(7)で硬化することがより好ましい。しかしながら、微小流路構造体中の排出流路において光照射を行なう場合は、微小液滴が生成される前に分散相に光照射されて硬化しないように、微小液滴が生成される前の排出流路の部分と、光照射して微小液滴を硬化させる排出流路の部分は、図8(b)に示すように、微小流路構造体の必要なところだけに光照射スポット(20)があたるようにマスク(22)を設置しておく必要がある。
【0035】
また本発明における微小液滴を硬化する別の手段は、微小液滴を加熱することにより硬化させる手段を用いた微小粒子製造方法である。図9(a)に示すように微小流路構造体(19)の排出口(8)から微小液滴が微小流路構造体の外部に出た後にヒーター(28)などにより加熱を行なっても良いが、微小粒子の粒径をより均一にするためには、図9(b)に示すように、微小流路の合流部(6)で微小液滴が生成した直後にヒーターなどにより加熱を行ない微小流路構造体中の排出流路(7)で硬化することがより好ましい。しかしながら、微小流路構造体中の排出流路において加熱を行なう場合は、微小液滴が生成される前に分散相が加熱されて硬化しないように、微小液滴が生成される前の排出流路の部分と、加熱して微小液滴を硬化させる排出流路の部分は、断熱材などを微小流路構造体の中に埋め込むなどの既知の断熱手法により熱的に絶縁しておく必要がある。
【0036】
なお、本発明において光照射あるいは加熱により微小液滴を硬化させる場合は、微小液滴全体を硬化させても良いが、半硬化させるなどにより、微小液滴の形状が崩れや微小液滴同士の合一が生じない程度に硬化させても良い。この場合、半硬化させた微小粒子をビーカー等で回収し、再度光照射や加熱により完全に硬化させることで、粒径が均一な微小粒子を得ることができる。
このようにすることで微小流路の合流部で生成した微小粒子が微小液滴の場合、微小流路の外部でビーカーなどに収集し、架橋重合などにより微小液滴を硬化すると、微小液滴を収集してから硬化するまでに、微小粒子の形状が崩れたり、微小粒子同士の合一が生じるため、硬化した微小粒子の粒径のばらつきが大きくなってしまうことが無くなり、粒径が均一な微小粒子を得ることができる。また、微小液滴を硬化することにより媒体から分離することが容易になる。
【0037】
以上のように、本発明の微小粒子製造方法の最も好ましい態様の一つとしては、分散相がゲル製造用原料を含む媒体であり、分散相を導入するための導入口及び導入流路と、連続相がゲル製造用分散剤を含む媒体であり、連続相を導入するための導入口及び導入流路と、分散相及び連続相により生成された微小粒子を排出させるための排出流路及び排出口とを備えた微小流路構造体を用いて微小粒子を生成する方法であって、分散相と連続相とを合流させて分散相を微小粒子化し、前記分散相を導入するための導入流路と前記連続相を導入するための導入流路とが交わる角度を変化させて生成する微小粒子の粒径を制御し、微小粒子を微小流路中及び/又は微小流路の外において、光照射及び/又は加熱により硬化させる方法となる。
【0038】
本発明の微小粒子製造方法において、微小粒子の用途の例として、高速液体クロマトグラフィー用カラムの充填剤、シールロック剤などの接着剤、金属粒子の絶縁粒子、圧力測定フィルム、ノーカーボン(感圧複写)紙、トナー、熱膨張剤、熱媒体、調光ガラス、ギャップ剤(スペーサ)、サーモクロミック(感温液晶、感温染料)、磁気泳動カプセル、農薬、人工飼料、人工種子、芳香剤、マッサージクリーム、口紅、ビタミン類カプセル、活性炭、含酵素カプセル、DDS(ドラッグデリバリーシステム)などのマイクロカプセルやゲルが挙げられる。
<微小流路構造体>
本発明の微小流路構造体は、分散相を導入するための導入口及び導入流路と、連続相を導入するための導入口及び導入流路と、分散相及び連続相により生成された微小粒子を排出させるための排出流路及び排出口とを備えた微小流路からなることを特徴とする微小流路構造体であって、分散相を導入するための導入流路と連続相を導入するための導入流路とが任意の角度で交わると共に、前記2つの導入流路が任意の角度で排出流路へと繋がる構造であることを特徴とする微小流路構造体であり、その形態の例として、図3〜図7に示すような、微小流路構造体である。なお、本発明の微小流路構造体は図3〜図7の例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、任意に変更可能であることは言うまでもない。また、本発明の微小流路構造体の流路断面のアスペクト比(流路の深さ/幅の比)が0.30以上3.0未満であることを特徴とする微小流路構造体である。
【0039】
ここで、分散相を導入するための導入口は分散相を入れるための開口部を意味し、さらに、この導入口に適当なアタッチメントを備えて分散相を連続的に導入する機構としてもよい。同様に、連続相を導入するための導入口についても、連続相を入れるための開口部を意味し、さらに、この導入口に適当なアタッチメントを備えて連続相を連続的に導入する機構としてもよい。
【0040】
分散相を導入するための導入流路は導入口と連通しており、分散相が導入され、この導入流路に沿って送液される。導入流路の形状は微小粒子の形状、粒径を制御するにおいて影響を与えるが、その幅は約300μm以下で、排出流路も含め任意の角度で合流する形状となっておればよい。同様に、連続相を導入するための導入流路についても、導入口と連通しており、連続相が導入され、この導入流路に沿って送液される。導入流路の形状は微小粒子の形状、粒径を制御するにおいて影響を与えるが、その幅は約300μm以下で、排出流路も含め任意の角度で合流する形状となっておればよい。
【0041】
排出流路は上記の2つの導入流路及び排出口と連通しており、分散相と連続相が合流後、この排出流路に沿って送液され、排出口より排出される。排出流路の形状は特に制限されないが、その幅は約300μm以下で、導入流路も含め任意の角度で合流する形状となっておればよい。また、排出流路は任意の角度で合流部から別れた2以上の排出流路であっても良い。排出口は、生成された微小粒子を排出させるための開口部を意味し、さらに、この排出口に適当なアタッチメントを備えて生成された微小粒子を含む相を連続的に排出する機構としてもよい。尚、これら流路は本明細書においては微小流路ということがある。
【0042】
さらに、本発明の微小流路構造体においては、分散相を導入するための導入流路と連続相を導入するための導入流路とが任意の角度で交わると共に、これらの導入流路が任意の角度で排出流路へと繋がる構造であることが好ましい。このような2つの導入流路の交差する角度が任意の角度とすることで、合流部で生成する微小粒子を所望の粒径へと制御することが可能となる。交差角度の設定については、目的とする微小粒子の粒径に応じて適宜決めればよい。
【0043】
導入流路、排出流路の断面形状としては、流路断面のアスペクト比が0.30以上3.0未満であることがこのましい。アスペクト比がこの範囲にあれば、合流部において均一な微小粒子を生成させることができる。この範囲を逸脱して、アスペクト比が0.30未満または3.0以上となると均一な微小粒子を生成させることが困難となることがある。
【0044】
さらに、分散相を導入するための導入流路と連続相を導入するための導入流路の幅及び深さが等しい場合には上記の効果に加え、微小流路構造体の設計が容易となり、また、送液時の制御もより容易となって、工業的量産に好適となる。
【0045】
また、導入流路の幅と排出流路の幅との関係において、導入流路の幅≧排出流路の幅であれば、導入流路の幅<排出流路の幅よりも、送液速度を増加しても合流部において均一な微小粒子の生成が可能となり、微小粒子の生成速度を増加させることができるという効果を奏することができ、好ましい態様となる。
【0046】
排出流路の幅としては、分散相と連続相とが交わる交差部より排出口に至る排出流路中の一部の部位において、排出流路の幅が狭くなっていることが好ましい。すなわち、微小粒子の排出口に至るまでの間の内、導入流路と排出流路の合流部において部分的に狭くする、あるいは分散相流路に沿った流路構成壁を凸状に形成する、あるいは図32(a)〜(e)に示すように流路の底面、上面、側面のいずれか1面あるいは2面以上から1以上の突起を形成することで、送液速度を増加しても合流部において均一な微小粒子の生成が可能でありかつ、送液圧力の上昇を緩和することが可能とすることができ、好ましい態様となる。
【0047】
さらに、この排出流路の幅が狭くなっている部位が、排出流路中の交差部又はその近傍にあることが好ましく、特に、排出流路の幅が狭くなっている部位が、排出流路の交差部の分散相の導入流路側にあることが好ましい。
【0048】
また、本発明の微小流路構造体は、微小流路構造体の中に複数の微小流路を平面的あるいは立体的に配置することで工業的に大量の微小粒子を生成することができる。しかしながら、平面的あるいは立体的に配置された複数の微小流路に均一に流体を分配する必要がある。このため、本発明の微小流路構造体は、流体を導入するための導入口及び流体を排出するための排出口を備えかつ、基板上に導入口及び排出口と連通する共通流路と、導入口及び排出口とは異なる位置で共通流路と連通する微小流路とを有した微小流路構造体であって、前記共通流路の断面積が導入口との連通位置より排出口との連通位置に向かって次第に大きくなるかあるいは同じであることが好ましい。
【0049】
上記微小流路構造体の最も基本的な概念図を図10に示す。共通流路(29)の両端に流体を導入するための共通流路導入口(32)と流体を排出するための共通流路排出口(31)を設け、共通流路導入口と共通流路排出口の間に、共通流路よりも内径(流路幅)が小さい微小流路(16)を基板上に配置した。一般的に、微小流路の内径は、数十〜300μm程度である。これに対し、共通流路の内径は、500μm〜数mm程度であることが望ましい。共通流路導入口と共通流路をつなぐ流路の内径に特に制限はないが、共通流路と同様に500μm〜数mm程度であることが望ましい。共通流路排出口と共通流路をつなぐ流路の内径も特に制限はないが、微小流路と同様に数十〜300μm程度が望ましい。
【0050】
また、微小流路の配置については、共通流路導入口及び共通流路排出口とは異なる位置で共通流路と連通しておれば特に制限はない。この点をさらに具体的に示せば、図10に示すように、共通流路導入口に最も近い微小流路Y1から共通流路排出口に最も近い微小流路Ynまでn本の微小流路が共通流路と連通した微小流路構造体の共通流路において、共通流路導入口との連通位置をX0、共通流路導入口に最も近い微小流路Y1の連通位置をX1、連通位置X0と連通位置X1との間の共通流路に沿った長さをa1、共通流路排出口との連通位置をXn+1、共通流路排出口に最も近い微小流路Ynの連通位置をXn、連通位置Xnと連通位置Xn+1との間の共通流路に沿った長さをan+1としたとき、Y1からYnまでの微小流路に均一に流体を分配でき、さらに微小液滴の生成を効率的に行なうことができるために、a2からanがすべて等しくなる配置とすることが好ましい。さらに、a1〜an+1をすべて等しくすることでこの効果をさらに向上させることができる。
【0051】
また、このような微小流路構造体において、基板上に複数の共通流路を有し、各々の共通流路が微小流路と連通させた構造としてもよい。
【0052】
図11〜図14には、本発明のいくつかの形態の概念図を示す。なお本発明は、これらの形態のみに限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で、任意に変更が可能であることは言うまでもない。
【0053】
図11は、共通流路(19)の内径が共通流路導入口(32)から共通流路排出口(31)に向かって次第に大きくなる例である。この場合、共通流路導入口付近の共通流路の内径(bで示される)は500μm〜1mm程度であり、共通流路排出口付近の共通流路の内径(cで示される)は数mm程度である。
【0054】
図12は、2本の共通流路(29)からY1からYnと示される微小流路(16)を引き出してY字状に合流させた例である。図12に示される微小流路構造体を用いて、2本の共通流路に本発明の微小粒子製造方法に用いる連続相と分散相をそれぞれ導入することで、複数のY字状の微小流路に均等に連続相と分散相を分配することができ、すべての微小流路に同じ条件で、極めて粒子系が均一な微小液滴を生成することができる。この形態は、微小流路基板が角型の基板である場合、平面的に多数の微小流路を集積する際に効果的である。
【0055】
図13は、共通流路(29)を円弧状に配置した例である。この場合、微小流路(16)は円弧の中心から等角度dで放射状に配置した。この形態は、微小流路基板が円盤状の基板である場合、平面的に多数の微小流路を集積する際に効果的である。この場合、図10におけると同様に、共通流路導入口(32)との連通位置をX0、共通流路導入口に最も近い微小流路Y1の連通位置をX1、連通位置X0と連通位置X1との間の共通流路に沿った長さをa1などとしたとき、a1〜an+1とは、円弧状の共通流路の中心に沿った長さを意味する。
【0056】
図14は、微小流路(16)を有する微小流路基板(1)を重ねあわせ、共通流路(29)を前記微小流路基板を貫通させて構成した例である。この形態は、微小流路基板を積層し、立体的に多数の微小流路を集積する際に効果的である。この貫通孔の内径の大きさも、図11と同様に流体の共通流路導入口(32)から流体の共通流路排出口(31)に向かって次第に大きくなっても良い。
【0057】
また、図10〜図14に示した本発明の様々な形態において、共通流路導入口(32)には一般にシリンジポンプなどの送液ポンプを用いて流体を導入するが、共通流路に配置された共通流路排出口(31)から排出された流体を回収し、再び送液ポンプに戻して再度送液できる、すなわち、複数の共通流路の各々が微小流路と連通させ、共通流路排出口から排出された流体を各々の共通流路導入口へ戻す構造としても良く、このようにすることで、導入する連続相及び/または分散相を無駄無く使用することができる。さらに、共通流路の少なくとも1つに分散相を、少なくとも1つに別の共通流路にに連続相を導入し排出することが好ましい。
【0058】
本発明の微小流路構造体は、以上に述べた構造、性能を有しているが、分散相と連続相を導入するための導入部及び導入流路と、導入流路が交わる合流部と、液体を排出させるための排出流路及び排出口を備えた微小流路構造体が、少なくとも一方の面に微小流路が形成された基板と、微小流路が形成された基板面を覆うように、微小流路の所定の位置に、微小流路と微小流路構造体外部とを連通するための小穴が配置されたカバー体とが積層一体化されていてもよい。これにより、微小流路構造体外部から微小流路へ流体を導入し、再び微小流路構造体外部へ流体を排出することができ、流体が微小量であったとしても、流体を安定して微小流路内を通過させることが可能となる。流体の送液は、マイクロポンプなどの機械的手段によって可能となる。
【0059】
微小流路が形成された基板及びカバー体の材質としては、微小流路の形成加工が可能であって、耐薬品性に優れ、適度な剛性を備えたものが望ましい。例えば、ガラス、石英、セラミック、シリコン、あるいは金属や樹脂等であっても良い。基板やカバー体の大きさや形状については特に限定はないが、厚みは数mm以下程度とすることが望ましい。カバー体に配置された小穴は、微小流路と微小流路構造体外部とを連通し、流体の導入口または排出口として用いる場合には、その径が例えば数mm以下であることが望ましい。カバー体の小穴の加工には、化学的に、機械的に、あるいはレーザー照射やイオンエッチングなどの各種の手段によって可能とされる。
【0060】
また本発明の微小流路構造体は、微小流路が形成された基板とカバー体は、熱処理接合あるいは光硬化樹脂や熱硬化樹脂などの接着剤を用いた接着等の手段により積層一体化することができる。
<微小流路構造体による溶媒抽出方法>
本発明の微小流路構造体を用いることで、微小流路内において抽出溶媒あるいは被抽出物質含有の流体を微小液滴化した後、微小液滴からなる分散相と微小液滴を囲む連続相との間で被抽出物質の相間移動により溶媒抽出を行なう溶媒抽出方法としての用途が挙げられる。
【0061】
なお、本発明の溶媒抽出法においては、抽出溶媒あるいは被抽出物質含有の流体のどちらか一方を分散相とし、別の一方を連続相として、任意に選択することができる。ここで、被抽出物質とは抽出対象となる物質を示し、被抽出物質含有の流体とは被抽出物質を溶解している液体を意味する。抽出溶媒とは被抽出物質含有の流体から被抽出物質を抽出する液体を意味し、被抽出物質を溶解でき、被抽出物質含有の流体よりも被抽出物質に対する溶解度が高いことが望まれる。また溶媒抽出とは、被抽出物質が被抽出物質含有の流体から抽出溶媒に相間移動により移動することを意味し、相間移動とは被抽出物質含有の流体の相から抽出溶媒の相への移動を意味する。
【0062】
本発明では、抽出溶媒あるいは被抽出物質含有の流体のどちらか一方を分散相とし、別の一方を連続相として、任意に選択することができる。また、微小液滴のサイズは、一般的に直径が微小流路の幅あるいは深さよりも小さい。例えば、幅が100μm、深さが50μmの微小流路で生成される液滴の大きさは、液滴が完全球体であると仮定するとその直径は50μmより小さい。
【0063】
この溶媒抽出方法が、微小流路の幅で決定される以上の拡散時間の短縮と流体境界の比界面積の大きさを得ることで微小流路内における抽出効率を微小流路の幅で決定される効率以上に向上させることを図15により説明する。
【0064】
図15に示すように球状の微小液滴の直径(33)をD[μm]とすると、微小液滴の総体積は(4π/3)×(D/2)3[μm3]となる。また、微小液滴の表面積は、4π×(D/2)2[μm2]となる。従って、微小液滴(34)とその周囲の媒体との比界面積は、{4π×(D/2)2}/{(4π/3)×(D/2)3}=6×104/D[cm−1]となる。一方、図1に示したように微小流路(16)に形成された流体境界(14)の比界面積は、2×104/W[cm−1]である。一般に、微小流路により形成される微小液滴の直径Dは、微小流路の幅(9)Wよりも小さいので、D<Wであることから、微小流路で微小液滴を生成すればその比界面積は、単に微小流路で形成される流体境界の比界面積よりも大きくなり、かつ微小液滴と周囲の溶媒との拡散時間も、微小流路で単に層流を形成させたときの拡散時間よりも短くなる。従って、微小流路で抽出溶媒あるいは被抽出物質含有の流体の微小液滴を形成すれば、微小流路の幅で決定される以上の拡散時間の短縮と流体境界の比界面積の大きさを得ることができ、微小流路における抽出効率を微小流路の幅で決定される効率以上に向上することができる。
【0065】
また微小液滴化する対象は、抽出溶媒であっても被抽出物質含有の流体であってもよいが、選択的にどちらかを微小液滴化することで、抽出後に抽出相をより分離しやすい様態に合わせて微小液滴化する対象を選択することができる。本発明の微小粒子製造方法では、合一するそれぞれの流体の流速を適切に制御するか、微小流路内壁の親水性、疎水性をそれ自体は公知の方法により変えることで微小液滴化する対象を抽出溶媒にするか被抽出物質含有の流体にするか選択することができ、抽出後に抽出相をより分離しやすい様態に合わせて微小液滴化する対象を選択することができる。また微小液滴の直径は、流速や微小流路の合流部で合一する角度や、微小流路の幅と深さ、あるいはこれらを組合わせることで制御することができ、比界面積をより正確に制御できる。
【0066】
また本発明の溶媒抽出方法は、被抽出物質が2種以上の流体を化学反応させて得られる生成物であり、被抽出物質含有の流体が原材料を含有する2種以上の流体を別々に微小流路に導入し接触させて得られた流体であっても良い。このようにすることで、微小流路内で反応させて得られた生成物を生成直後から速やかに溶媒抽出することができ、副反応の抑制や、平衡反応の制御を行なうことが可能となる。
【0067】
図16は、被抽出物質含有の流体が、原材料を有する流体A(35)と流体B(36)を別々に微小流路(16)に導入し微小流路内の反応相(37)で混合し反応させた流体である場合の概念を示した図である。図16の例では、被抽出物質含有の流体を連続相(10)とし、抽出溶媒(38)を分散相(15)とした。
【0068】
また本発明の溶媒抽出方法は、原材料を含有する2種以上の流体と抽出溶媒を別々に微小流路に導入し、原材料を含有する2種以上の流体を接触させて得られる被抽出物質を抽出溶媒相へと抽出させる方法において、原材料を含有する2種以上の流体は層流を形成しその流体境界で被抽出物質が生成され、抽出溶媒はこの原材料を含有する2種以上の流体で合流部においてせん断されて流体境界上で液滴が形成され、生成された被抽出物質は抽出溶媒の液滴へと抽出という態様をとっても良い。このようにすることで、反応系に用いられている溶媒以外の溶媒を抽出溶媒として導入することができ、例えば生成物の抽出効率がより高い溶媒を抽出溶媒として用いることができる。また、流体境界で生じる反応により生成した生成物を生成直後から速やかに溶媒抽出することができるので、副反応の抑制や平衡反応の制御を行なうことが可能となる。
【0069】
図17は、流体境界(14)で生じる反応により生成物を得るための微小流路(16)において、原材料を有する流体A(35)と流体B(36)を連続相(10)とし、この連続相により、流体境界で抽出溶媒(38)をせん断することにより流体境界に微小液滴(34)を形成することで、流体境界に生成した生成物を抽出する概念を示した図である。
【0070】
また本発明の微小粒子の用途としての溶媒抽出方法は、微小流路内で溶媒抽出を行なったあと、前記微小液滴の少なくとも表面を硬化することにより、連続相と分散相を分離しても良い。このようにすることで、微小液滴の分散相と微小液滴を取り囲む連続相をより容易に分離することができ、抽出溶媒と被抽出物質が含まれていた流体とを容易に分離することができる。
【0071】
例えば、図18に示すように被抽出物質含有の流体を微小液滴化して分散相(15)とし、連続相(10)である抽出溶媒(38)に被抽出物質を相間移動により溶媒抽出(39)を行なったあと、紫外線による光照射(21)により微小液滴(34)の少なくとも表面を硬化することで微小粒子(17)を形成すれば、連続相の液相と微小粒子の固相をろ過等の手法を用いて容易に分離することができ、被抽出物質を容易に回収できる。なお図18の例では、分散相としての被抽出物質含有の流体は、紫外線照射により硬化する液体を選択している。
【0072】
また逆に、図19に示すように被抽出物質含有の流体を連続相(10)とし、微小液滴化して分散相(15)とした抽出溶媒(38)に被抽出物質を相間移動により溶媒抽出(39)を行なったあと、紫外線照射により微小液滴(34)の少なくとも表面を硬化することで微小粒子(17)を形成すれば、同様に連続相の液相と微小粒子の固相をろ過等の手法を用いて容易に分離することができる。この場合は、被抽出物質を内部に有する表面が硬化されて微小粒子の表面を、化学的あるいは機械的などの手法により引き割り、微小粒子内部に存在する被抽出物質を取出せば良い。なお図19の例では、分散相としての抽出溶媒は、紫外線照射により硬化する液体を選択できる。
【0073】
以上の図18、図19の例では、微小液滴の表面を硬化する手段を紫外線照射とした例であるが、紫外線照射の他にも図9に示すような加熱や化学反応により架橋や重合など、硬化させる分散相の材質にあわせて選択すれば良い。
【発明の効果】
【0074】
本発明の微小粒子製造方法は、分散相と連続相を微小流路を有する微小流路構造体へその導入流路より導入し、両者が合流する合流部で分散相を連続相でせん断し微小粒子を生成させるものであり、分散相を導入するための導入流路と連続相を導入するための導入流路とが交わる角度を変化させることで、生成する微小粒子の粒径を制御することが可能である。これは、従来の微小流路構造体を使った微小粒子の生成においては、分散相と連続相の導入速度を変えて生成させる場合よりもより制御しやすく、工業的な量産に適しており、特に、分散相の導入速度と連続相の導入速度とが実質的に同じであれば、導入装置を1個用意することで足りるなどコスト面においても優れている。従って、本発明の微小粒子製造方法により、安定した粒径の微小粒子を生成することが、連続相を過剰に供給する必要がなくなり、例えばゲル製造における連続相の低コスト化、工業的な量産が可能となる。
【0075】
また複数の分散相及び/または連続相を導入する導入流路を設けることで、分散相及び/または連続相を複数の流体の層流、または混合液または懸濁液(エマルション)とすることができ、このようにすることで、多層構造の微小粒子や、異なった多種の微小粒子を含有した微小粒子を形成することができ、複合マイクロカプセルや多重マイクロカプセルを生成することができる。
【0076】
また微小流路の合流部分で生成した微小粒子が微小液滴であって微小液滴を硬化させる場合、硬化した微小粒子の粒径を均一にするために、微小液滴が排出流路を通過して排出部から出た後、微小流路構造体の排出部から微小流路構造体の外部に設けられた微小流路で連続的に逐次硬化しても良く、さらに硬化した微小粒子の粒径をより均一にするためには、微小流路の合流部分で微小液滴が生成した直後に、微小流路構造体中の微小流路すなわち排出流路で硬化してもよくこのようにすることで微小流路の合流部で生成した微小粒子が微小液滴の場合、微小流路の外部でビーカーなどに収集し、架橋重合などにより微小液滴を硬化すると、微小液滴を収集してから硬化するまでに、微小粒子の形状が崩れたり、微小粒子同士の合一が生じるため、硬化した微小粒子の粒径のばらつきが大きくなってしまうことが無くなり、粒径が均一な微小粒子を得ることができる。また、微小液滴を硬化することにより媒体から分離することが容易になる。
また、多数の前記微小流路を並列化及び/または積層化して微小粒子を大量に生産するための形態としては、流体を導入するための導入口及び流体を排出するための排出口を備え、基板上に前記導入口及び排出口と連通する共通流路と、前記導入口及び排出口とは異なる位置で前記共通流路と連通する1以上の微小流路とを有した微小流路構造体であって、前記共通流路の断面積が導入口との連通位置より排出口との連通位置に向かって次第に大きくなるかあるいは同じである微小流路構造体とすることで微小流路構造体に平面的あるいは立体的に配置された複数の微小流路へ均一に流体を分配することが可能となる。
【0077】
また、本発明の微小粒子製造方法により生成される微小粒子の用途の例として、高速液体クロマトグラフィー用カラムの充填剤、シールロック剤などの接着剤、金属粒子の絶縁粒子、圧力測定フィルム、ノーカーボン(感圧複写)紙、トナー、熱膨張剤、熱媒体、調光ガラス、ギャップ剤(スペーサ)、サーモクロミック(感温液晶、感温染料)、磁気泳動カプセル、農薬、人工飼料、人工種子、芳香剤、マッサージクリーム、口紅、ビタミン類カプセル、活性炭、含酵素カプセル、DDS(ドラッグデリバリーシステム)などのマイクロカプセルやゲルが挙げられる。
【0078】
また、本発明の微小流路構造体を用いた溶媒抽出方法は、微小粒子を微小流路内での溶媒抽出に用いることにより、反応や抽出の効率を微小流路の幅で決定される効率以上に向上させることができる。
【0079】
以下では、本発明の実施例を示し、更に詳しく発明の実施の形態について説明する。なお、本発明は以下の実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、任意に変更可能であることは言うまでもない。
【0080】
(実施例1)
本発明の第1の実施例における微小流路を図20に示す。微小流路は70mm×20mm×1t(厚さ)のパイレックス(登録商標)ガラス上に、微小流路に相当する連続相導入流路(2)、分散相導入流路(4)及び排出流路(7)の幅がいずれも220μm、深さ80μm、微小流路のアスペクト比=0.36、排出流路の長さが30mmで、連続相導入流路(3)と分散相導入流路(5)とが44°の角度にて交わる合流部を持ったY字形状の流路を1本形成した。この微小流路の幅及び深さについては、生成する微小粒子の粒径に依存するが、微小流路のアスペクト比が0.30以上3.0未満の範囲を逸脱しなければよい。
この微小流路を有する微小流路構造体は、図21に示すように、厚さ1mmで70mm×20mmのガラス基板の一方の面に、微小流路を一般的なフォトリソグラフィーとウェットエッチングにより形成し、この微小流路が形成されたガラス基板の微小流路を有する面に、微小流路の導入口(11)と排出口(8)にあたる位置に予め直径0.6mmの小穴を、機械的加工手段を用いて設けた厚さ1mmで70mm×20mmのガラス製のカバー体(30)を熱接合し製作した。なお、製作方法および基板材料はこれに限定するものではない。
【0081】
次に本発明の微小粒子製造方法について説明する。図22に示すように微小流路構造体(19)に液体が送液可能なようにホルダー(23)などで保持すると共に、テフロン(登録商標)チューブ(27)及びフィレットジョイント(40)をホルダーに固定する。テフロン(登録商標)チューブのもう一方はマイクロシリンジ(42)に接続する。これで微小流路構造体に液体の送液が可能となる。次に微小粒子を生成するための分散相にジビニルベンゼン、酢酸ブチルの混合溶液を、連続相にポリビニルアルコール3%水溶液をそれぞれのマイクロシリンジに注入し、マイクロシリンジポンプ(41)で送液を行った。送液速度は分散相及び連続相は共に20μl/minである。送液速度が共に安定した状態で、微小流路構造体の分散相及び連続相が交わる合流部にて、図23に示すような微小粒子の生成が観察された。生成された微小粒子を観察すると図24に示すように平均粒径200μm、粒径の分散度を示すCV値(%)は9.8%となり、極めて均一な微小粒子(17)であった。また、送液速度を分散相及び連続相を共に1μl/minで行った場合、生成した微小粒子の平均粒径は230μm、粒径の分散度を示すCV値(%)は9.5%となり、極めて均一な微小粒子であった。これにより分散相と連続相を同一の送液速度にて行っているので、連続相を過剰に送液することなく、均一な微小粒子を生成することが可能となる。
【0082】
(実施例2)
本発明の第2の実施例における微小流路を図25に示す。微小流路は70mm×40mm×1t(厚さ)のパイレックス(登録商標)ガラス上に、微小流路に相当する連続相導入流路(3)、分散相導入流路(5)及び排出流路(7)の幅がいずれも185m、深さ75μm、微小流路のアスペクト比=0.41、排出流路(7)の長さが30mmで、連続相導入流路と分散相導入流路とが22°及び44°の角度にて交わる合流部を持ったY字形状の流路を2本形成した。この微小流路の幅及び深さについては、生成する微小粒子の粒径に依存するが、微小流路のアスペクト比が0.30以上3.0未満の範囲を逸脱しなければよい。この微小流路を有する微小流路構造体は、実施例1と同様な方法で作製した。
【0083】
次に微小流路構造体をホルダーで保持し、実施例1と同様な方法で、微小粒子を生成するための分散相にモノマー(スチレン)、ジビニルベンゼン、酢酸ブチル及び過酸化ベンゾイルの混合溶液を、連続相にポリビニルアルコール3%水溶液をマイクロシリンジに注入し、マイクロシリンジポンプで送液を行い、連続相導入流路と分散相導入流路との交差部角度が44°及び22°における比較を行った。送液速度は分散相及び連続相は共に20μl/minである。流速が共に安定した状態で、微小流路構造体の分散相及び連続相が交わる合流部にて微小粒子の生成が観察された。生成された微小粒子を観察すると、合流部が22°の角度で交わる場合は平均粒径180μm、粒径の分散度を示すCV値(%)は8.7%となり、44°の場合は平均粒径160μm、粒径の分散度を示すCV値(%)は9.2%であった。また、送液速度は分散相及び連続相は共に5μl/minで行った場合の生成させた微小粒子を観察すると、合流部が22°で交わる場合は平均粒径250μm、粒径の分散度を示すCV値(%)は9.4%となり、44°の場合は平均粒径220μmであり、粒径の分散度を示すCV値(%)は8.5%となり、合流部の角度が22°の場合に対し、合流部の角度が44°の場合は0.89倍の粒径となる。これにより導入流路の幅及び深さが一定であると共に、導入する分散相及び連続相の送液速度の条件を変えることなく、導入流路の合流部の角度のみを変えることで粒径をコントロールが可能となる。
【0084】
(比較例1)
比較例1における微小流路を図26に示す。微小流路は70mm×20mm×1t(厚さ)のパイレックス(登録商標)ガラス上に、連続相導入流路(3)、分散相導入流路(5)及び排出流路(7)の幅がいずれも130μm、深さ35μm、微小流路のアスペクト比=0.27、排出流路の長さが30mmで、連続相導入流路と分散相導入流路とが44°の角度にて交わる合流部を持ったY字形状の流路を1本形成した。この微小流路構造体は実施例1と同様な方法で作製した。
【0085】
次に微小流路構造体をホルダーで保持し、実施例1と同様な方法で微小粒子を生成するための分散相にジビニルベンゼン、酢酸ブチルの混合溶液を、連続相にポリビニルアルコール3%水溶液をマイクロシリンジに注入し送液を行った。送液速度は分散相及び連続相は共に5μl/minである。流速が共に安定した状態で、微小流路構造体の分散相及び連続相が交わる合流部を観察すると、微小粒子生成が確認出来るが、排出流路内で分離・合一が発生し、生成された微小粒子を観察すると、粒径の分散度を示すCV値(%)は36.5%となり、分散性の悪い微小粒子であった。このアスペクト比の微小流路構造体で分散性の良好な微小粒子の生成を行う場合には、送液速度を連続相>分散相、具体的には5:1以上の流速比を与えて、連続相を過剰に送液する必要がある。
【0086】
(実施例3)
本発明の第3の実施例における微小流路を図27(a)に示す。微小流路は70mm×40mm×1t(厚さ)のパイレックス(登録商標)ガラス上に、微小流路に相当する連続相導入流路(3)、分散相導入流路(5)及び排出流路(7)の幅がいずれも146μm、深さ55μm、微小流路のアスペクト比=0.38、排出流路の長さが30mmで、連続相導入流路と分散相導入流路とが44°の角度にて交わる合流部を持ち、且つ、分散相導入流路と排出流路との合流部に図27(b)の拡大図に示すような排出流路幅の一部を突起状にしたY字形状の流路を形成した。この微小流路の幅及び深さについては、生成する微小粒子の粒径に依存するが、微小流路のアスペクト比が0.30以上3.0未満の範囲を逸脱しなければよい。また、突起のサイズについては微小粒子の粒径及び導入流路内圧に対するポンプ能力により適宜調整すれば良いが、今回は図27(b)に示すK−K’幅として116μmとした。この微小流路を有する微小流路構造体は、実施例1と同じ方法で作製した。
【0087】
次に微小流路構造体をホルダーで保持し、実施例1と同様な方法で微小粒子を生成するための分散相にジビニルベンゼン、酢酸ブチルの混合溶液を、連続相にポリビニルアルコール3%水溶液をマイクロシリンジに注入し、マイクロシリンジポンプで送液を行い、連続相導入流路と分散相導入流路及び排出流路との交差部位に図27(c)に示す突起の存在しない流路にて比較を行った。送液速度は分散相及び連続相は共に同じとし、微小粒子の生成が可能な流速を計測したところ、突起を有する微小流路構造体における微小粒子の生成可能な流速は10μl/min、図27(c)に示すような突起が無い微小流路構造体においては8μl/minであった。
突起を有する微小流路構造体にて生成された微小粒子を観察すると、平均粒径110μm、粒径の分散度を示すCV値(%)は6.3%となり、良好な粒径分散度が得られている。これにより排出流路内に突起を設けることにより良好な分散度を維持し、且つ生成微する微小粒子の量を増加させることが可能となる。
【0088】
(実施例4)
本発明の第4の実施例における微小流路を図28に示す。微小流路は70mm×20mm×1t(厚さ)のパイレックス(登録商標)ガラス上に、微小流路に相当する2本の連続相導入流路(3)、1本の分散相導入流路(5)及び排出流路(7)の幅がいずれも140μm、深さ60μm、微小流路のアスペクト比=0.43、排出流路の長さが30mmで、連続相導入流路と分散相導入流路とが、2本の連続相導入流路で1本の分散相導入流路を挟む様に、各々22°の角度にて交わる合流部を持った形状の流路を1本形成した。この微小流路の幅及び深さについては、生成する微小粒子の粒径に依存するが、微小流路のアスペクト比が0.30以上3.0未満の範囲を逸脱しなければよい。なお、この微小流路構造体は、実施例1と同様な方法で作製した。
【0089】
次に実施例1と同様に微小流路構造体をホルダーで保持し、実施例1と同様な方法で、微小粒子を生成するための分散相にジビニルベンゼン、酢酸ブチルの混合溶液を、連続相にポリビニルアルコール3%水溶液をマイクロシリンジに注入し、マイクロシリンジポンプで送液を行なった。分散相は、中央の分散相導入流路から、連続相は分散相導入流路の両側にある連続相導入流路から導入した。送液速度は分散相及び連続相は共に6μl/minである。送液速度が共に安定した状態で、微小粒子製造用微小流路構造体の分散相及び連続相が交わる合流部にて微小粒子の生成が観察された。生成された微小粒子を観察すると平均粒径77μm、粒径の分散度を示すCV値(%)は7.0%となり、極めて均一な微小粒子であった。
【0090】
(実施例5)
第5の実施例として、図29に示すような4本の流路を持つ微小流路構造体を製作した。形成した微小流路(16)の幅は100μm、深さは40μmであり、流体導入口A(43)、流体導入口B(44)、流体導入口C(45)、および流体導入口と繋がる層流流路(46)と、層流流路とつながる微小流路は、それぞれ44°の角度で合流させた。この微小流路を有する微小流路構造体を実施例1と同様な方法で製作した。この微小流路の流体導入口Aから分散相として、有機相のジビニルベンゼン、酢酸ブチルの混合溶液を送液し、流体導入口Bから水相のポリビニルアルコール3%水溶液を送液しさらに、流体導入口Cからから連続相として水相のポリビニルアルコール3%水溶液を送液した。送液は、実施例1と同様にマイクロシリンジに流体を注入し、マイクロシリンジポンプで行った。送液速度は流体導入口A及び流体導入口Bからは5μl/min、流体導入口Cからは10μl/minで送液した。送液速度が共に安定した状態で、流体導入口Aと流体導入口Bの層流合流部(47)から、合流部(6)まで層流が観察された。また連続相合流部で微小粒子の生成を確認した。生成された微小粒子を観察すると平均粒径110μm、粒径の分散度を示すCV値(%)は8.2%となり、均一な微小粒子であった。
【0091】
(実施例6)
本発明の第6の実施例における微小流路を図20に示す。微小流路は70mm×20mm×1t(厚さ)のパイレックス(登録商標)ガラス上に、微小流路に相当する連続相導入流路(3)、分散相導入流路(5)及び排出流路(7)の幅がいずれも220μm、深さ80μm、微小流路のアスペクト比=0.36、排出流路の長さが30mmで、連続相導入流路と分散相導入流路とが44°の角度にて交わる合流部を持ったY字形状の流路を1本形成した。この微小流路の幅及び深さについては、生成する液滴あるいは微小粒子の粒子径に依存するが、微小流路のアスペクト比が0.30以上3.0未満の範囲を逸脱しなければよい。
送液は実施例1と同様な方法により、微小粒子を生成するための分散相にジビニルベンゼン、酢酸ブチルの混合溶液を、連続相にポリビニルアルコール3%水溶液をそれぞれのマイクロシリンジに注入し、マイクロシリンジポンプで行った。送液速度は分散相及び連続相は共に2μl/minである。送液速度が共に安定した状態で、微小流路構造体の分散相及び連続相が交わる合流部にて微小粒子の生成が観察された。微小粒子生成後、図8(b)に示すように排出口(8)から10mm離れた排出流路(7)の位置を光照射スポット(20)の中心とし、紫外線による光照射(21)を行ない微小粒子を硬化した。光照射スポットのサイズは直径約10mmとした。光照射スポット以外は光照射されないようにマスク(22)を設置した。排出口からは、ポリビニルアルコールの水溶液を媒体とした微小粒子が排出された。生成された微小粒子を観察すると平均粒径200μm、粒径の分散度を示すCV値(%)は8.5%となり、極めて均一な微小粒子であった。また微小流離内で微小粒子を生成した後、光照射する代わりに、図9(a)に示す排出口(8)から微小流路構造体の外部のテフロン(登録商標)チューブ(27)の部分をヒーター(28)により65℃に加熱して微小粒子を硬化した。ビーカー(26)には、ポリビニルアルコールの水溶液を媒体とした微粒子が排出された。生成された微粒子を観察すると平均粒子径200μmの、粒径の分散度を示すCV値(%)は8.5%となり、極めて均一な粒子であった。
【0092】
(実施例7)
第7の実施例として、図30に示すような微小流路(16)を有する微小流路構造体を製作した。流路深さが80μmで流路幅が共通流路導入口(32)の位置で0.5mm、共通流路排出口(31)の位置で2mmになるように、共通流路導入口の位置から共通流路排出口の位置にむけて徐々に流路幅を大きくした2本の共通流路(29)から幅220μm、深さ80μmの微小流路を引き出してY字状に合流させた微小流路4本を、6mmの等間隔(a1〜a5がすべて6mm)で配置した。このY字状の微小流路の形状は、実施例1と同じである。共通流路導入口は、幅0.5mm、深さ80μmとし、共通流路排出口は、幅200μm、深さ80μmとした。この微小流路を有する微小流路構造体は実施例1と同様な方法で製作した。
【0093】
この微小流路構造体の2本の共通流路のそれぞれの流体導入口に、実施例1と同様な方法で、各共通流路に流速2.5ml/分で純水を5分間送液し、Y字状の微小流路を通過して微小流路の流体排出口から排出された液量を各流路で比較したところ、表1に示す結果が得られ、Y1〜Y4の各微小流路に均一に液体を送液することができた。
【0094】
【表1】
【0095】
また、一方の共通流路にポリビニルアルコールの3%水溶液を、もう一方の共通流路にジビニルベンゼン、酢酸ブチルの混合溶液を実施例1と同様な方法で100μl/minで送液し、各微小流路で生成した10個の微小粒子の粒径を顕微鏡により測定し平均した結果、表2に示す結果が得られ、各微小流路より排出された微小粒子の粒径の平均値が101.0μm、粒径の分散度を示すCV値(%)は8.7%となり、各微小流路で均一な微小粒子を生成することができた。
【0096】
【表2】
【0097】
(比較例2)
第2の比較例として、図31に示すような微小流路(16)を有する微小流路構造体を製作した。流路深さが80μmで流路幅が共通流路導入口(32)の位置で2mm、共通流路排出口(31)の位置で0.5mmになるように、共通流路導入口の位置から共通流路排出口の位置にむけて徐々に流路幅を狭くしたの2本の共通流路(29)から幅220μm、深さ80μmの微小流路を引き出してY字状に合流させた微小流路4本を、6mmの等間隔(a1〜a5がすべて6mm)で配置した。この微小流路の形状は実施例1と同じである。共通流路導入口は、幅0.5mm、深さ80μmとし、共通流路排出口は、幅220μm、深さ80μmとした。この微小流路を有する微小流路構造体は実施例1と同様な方法で製作した。
【0098】
この微小流路構造体の2本の共通流路のそれぞれの流体導入口に、実施例1と同様に送液ポンプを使用して、各共通流路に流速2.5ml/分で純水を5分間送液し、Y字状の微小流路を通過して微小流路の流体排出口から排出された液量を各流路で比較したところ、表1に示す結果が得られ、Y1〜Y4の各微小流路に均一に液体を送液することができなかった。
【0099】
また、一方の共通流路にポリビニルアルコールの3%水溶液を、もう一方の共通流路にジビニルベンゼン、酢酸ブチルの混合溶液をそれぞれ実施例1と同様に送液ポンプで100μl/minで送液し、各微小流路で生成した10個の微小粒子の粒径を顕微鏡により測定し平均した結果、表2に示す結果が得られ、各微小流路で均一な粒径をもつ微小粒子を生成することができなかった。
【0100】
(実施例8)
第8の実施例として、図20に示すような微小流路を有する微小流路構造体を製作した。形成した微小流路の幅Wは220[μm]、微小流路の深さdは80[μm]、微小流路の長さは30[mm]であり、導入口(11)とつながる2本の導入流路(48)は、44°の角度で合流させた。この微小流路を有する微小流路構造体は、実施例1と同様な方法で製作した。
【0101】
実施例1と同様な方法で、この微小流路の流体導入口の一方からフェノールを被抽出物質として含有した水相を送液し、もう一方の流体導入口からは、抽出溶媒として酢酸エチルの有機相を送液した。送液速度を調整することで、層流を形成して酢酸エチル側にフェノールを抽出した場合と、水相により酢酸エチルの有機相を微小粒子化して抽出した場合で実験を行なった。層流を形成したときの送液速度は、水相および有機相とも20μl/minであった。また水相によりジビニルベンゼンの有機相を微小粒子化した場合の送液速度は、水相および有機相とも2μl/minであった。
【0102】
この微小流路では、層流を形成した場合に得られる比界面積は、微小流路の幅Wが約220[μm]であることから、2×104/W[cm−1]=約2×104/220[cm−1]=約90[cm−1]となった。また、水相により酢酸エチルの有機相を微小粒子化した場合の微小粒子の平均粒径を高速カメラを用いて測定し、微小粒子の直径Dを求めたところ約200[μm]であった。この場合の比界面積は、6×104/D[cm−1]=約6×104/200[cm−1]=約300[cm−1]となった。このことから水相により酢酸エチルの有機相を微小粒子化した場合の方が、水相と有機相で層流を形成した場合よりも非界面積が大きくなり、抽出効率が上がるものと推定される。
【0103】
実際に、流体排出口から排出された流体を試験管で回収し、有機相のみを取出して高速液体クロマトグラフィーを用いてフェノールの濃度を測定した。有機相と水相が接している時間が長いほど、抽出される物質の量が多くなることから、測定結果を抽出溶媒である有機相の送液速度から計算される微小流路内滞在時間で割り算して補正した。その結果、酢酸エチルの有機相を微小粒子化して抽出した場合のほうがフェノールの濃度が高かった。以上のことから、抽出溶媒を微小粒子化することで、抽出効率が微小流路の幅で決まる効率以上に向上したことを確認した。
【図面の簡単な説明】
【0104】
【図1】従来の微小粒子を生成する微小流路を示す概略図であり、図1右は、図1左のA−A’、B−B’のA−A’ 断面図、B−B’断面図である。
【図2】図2(a)はY字状微小流路内における層流を示す概念図であり、図2(b)は図2(a)の一部である円内を拡大した立体断面図である。
【図3】微小流路の合流部近傍において連続相が分散相をせん断して微小粒子を形成する方法を示す概念図である。
【図4】微小流路の合流部近傍において両側の連続相が中央の分散相を挟み込むようにをせん断して微小粒子を形成する方法を示す概念図である。
【図5】微小流路の合流部近傍において中央の連続相が両側の分散をせん断して微小粒子を形成する方法を示す概念図である。
【図6】微小流路の合流部近傍において直線状に一方の側より分散相を、もう一方の側より連続相を導入し、分散相を連続相でせん断して微小粒子を生成し、任意の方向へ排出させる方法を示す概念図である。
【図7】複数の分散相及び/または連続相を導入する分散相導入流路)及び/または連続相導入流路を設けて分散相及び/または連続相を複数の流体の層流、または混合液または懸濁液(エマルション)として、微小流路の合流部近傍において分散相を連続相でせん断して微小粒子を形成する方法を示すいくつかの概念図であり、図7(a)〜(g)はそれぞれの態様を示す。
【図8】光照射により微小粒子を硬化させる方法を示した概略図であり、図8(a)は外部に光照射手段を設けた場合、図8(b)はマスクを使って光照射する場合の概略図である。
【図9】加熱により微小粒子を硬化させる方法を示した概略図であり、図9(a)は外部に加熱手段を設けた場合、図9(b)は微小流路構造体内に加熱手段を設けた場合の概略図である。
【図10】平面的あるいは立体的に配置された複数の微小流路に均一に流体を送液する最も基本的な微小流路形状を示した概念図である。
【図11】平面的あるいは立体的に配置された複数の微小流路に均一に流体を送液する微小流路形状のうち、共通流路の断面積が共通流路導入口から共通流路排出口に向かって次第に大きくなる例を示した概念図である。
【図12】平面的あるいは立体的に配置された複数の微小流路に均一に流体を送液する微小流路形状のうち、2本の共通流路からY字上の複数の微小流路に送液した例を示した概念図である。
【図13】平面的あるいは立体的に配置された複数の微小流路に均一に流体を送液する微小流路形状のうち、共通流路を円弧状に配置した例を示した概念図である。
【図14】平面的あるいは立体的に配置された複数の微小流路に均一に流体を送液する微小流路形状のうち、微小流路を有する微小流路基板を重ねあわせ、共通流路を前記微小流路基板を貫通させて構成した例であり、図14上は積層一体化を示す態様、図14下はD−D’、E−E’の断面図である。
【図15】微小流路内での微小粒子を示す概念図である。
【図16】被抽出物質含有の流体が、原材料を有する2つの流体を別々に微小流路に導入し微小流路内の反応相で混合し反応させた流体である場合の本発明における微小粒子の用途としての溶媒抽出方法の概念図である。
【図17】流体境界で生じる反応により生成物を生成する微小流路において、原材料を有する2つの流体を連続相とし、この連続相により流体境界で抽出溶媒をせん断することにより流体境界に微小液滴を形成し分散相とすることで、流体境界に生成した生成物を抽出する概念図である。
【図18】被抽出物質含有の流体を微小液滴化して分散相とし、連続相である抽出溶媒に相間移動を行なって溶媒抽出を行なったあと、微小液滴の少なくとも表面を硬化することで被抽出物質を分離することを示す概念図である。
【図19】被抽出物質含有の流体を連続相とし、微小液滴化して分散相とした抽出溶媒に相間移動を行なって溶媒抽出を行なったあと、微小液滴の少なくとも表面を硬化することで被抽出物質を分離することを示す概念図である。
【図20】実施例1、実施例6、実施例8における微小流路を示す概略図である。
【図21】実施例1における微小流路構造体を示す概略図である。
【図22】実施例1における微小粒子生成法を示す概略図である。
【図23】実施例1における微小粒子生成状況を示す概略図である。
【図24】実施例1における生成した微小粒子を示す図である。
【図25】実施例2における微小流路を示す概略図であり、図25右は、図25左のG−G’のG−G’断面図である。
【図26】比較例1における微小流路を示す概略図であり、図26右は、図26左のH−H’のH−H’断面図である。
【図27】図27(a)は実施例3における微小流路を示す概略図であり、図27(b)および図27(c)は図27(a)の6の部分の拡大図である。
【図28】実施例4における微小流路を示す概略図であり、図28右は、図28左のM−M’のM−M’断面図である。
【図29】実施例5における微小流路を示す概略図であり、図29右は、図29左のN−N’のN−N’断面図である。
【図30】実施例7に示した微小流路形状の概略図である。
【図31】比較例2に示した微小流路形状の概略図である。
【図32】図32(a)〜(e)は、流路の底面、上面、側面のいずれか1面あるいは2面以上から1以上の突起を形成した場合の例を示すいくつかの概念図である。
【符号の説明】
【0105】
1:微小流路基板
2:連続相導入口
3:連続相導入流路
4:分散相導入口
5:分散相導入流路
6:合流部
7:排出流路
8:排出口
9:微小流路の幅
10:連続相
11:導入口
12:有機相
13:水相
14:流体境界
15:分散相
16:微小流路
17:微小粒子
18:微小粒子の直径
19:微小流路構造体
20:光照射スポット
21:光照射
22:マスク
23:ホルダー
24:微小流路の単位長さ
25:微小流路の深さ
26:ビーカー
27:テフロン(登録商標)チューブ
28:ヒーター
29:共通流路
30:カバー体
31:共通流路排出口
32:共通流路導入口
33:微小液滴の直径
34:微小液滴
35:流体A
36:流体b
37:反応相
38:抽出溶媒
39:溶媒抽出
40:フィレットジョイント
41:マイクロシリンジポンプ
42:マイクロシリンジ
43:流体導入口A
44:流体導入口B
45:流体導入口C
46:層流流路
47:層流合流部
48:導入流路
【特許請求の範囲】
【請求項1】
分散相を導入するための分散相導入口及び分散相導入流路と、連続相を導入するための連続相導入口及び連続相導入流路と、分散相及び連続相により生成された微小粒子を排出させるための排出流路及び排出口とを備えた微小流路構造体であって、分散相導入流路と連続相導入流路と排出流路とがY字型を形成しており、かつ、前記分散相導入流路と連続相導入流路とが交差する交差部より排出口に至る排出流路の交差部において排出流路の幅が狭くなっていることを特徴とする微小流路構造体。
【請求項2】
流路断面のアスペクト比(流路の深さ/幅の比)が0.30以上3.0未満であることを特徴とする請求項1に記載の微小流路構造体。
【請求項3】
排出流路の幅が狭くなっている部位が、排出流路の交差部の分散相の導入流路側にあることを特徴とする請求項1または請求項2記載の微小流路構造体。
【請求項4】
前記分散相導入流路と連続相導入流路とが交差する交差部において、流路の底面、上面及び/または側面から、1以上の突起が形成されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の微小流路構造体。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の微小流路構造体を用いて、微小流路内において抽出溶媒あるいは被抽出物質含有の流体を微小液滴化した後、前記微小液滴からなる分散相と前記微小液滴を囲む連続相との間で被抽出物質の相間移動により溶媒抽出を行なうことを特徴とする溶媒抽出方法。
【請求項6】
前記溶媒抽出方法において、被抽出物質含有の流体を連続相とし、抽出溶媒を分散相とすることを特徴とする請求項5記載の溶媒抽出方法。
【請求項7】
前記溶媒抽出方法において、被抽出物質含有の流体を分散相とし、抽出溶媒を連続相とすることを特徴とする請求項5記載の溶媒抽出方法。
【請求項8】
前記被抽出物質が原材料を含有する2種以上の流体を化学反応させて得られる生成物であることを特徴とする請求項5〜7のいずれか記載の溶媒抽出方法。
【請求項9】
微小流路内で溶媒抽出を行なったあと、請求項1〜4記載の微小流路構造体を用いて微小粒子得て、かつ、この微小粒子に光または紫外線を照射、または微粒子を加熱することのいずれかの方法により、前記微小液滴の少なくとも表面を硬化することにより、連続相と分散相を分離することを特徴とする請求項5〜8のいずれかに記載の溶媒抽出方法。
【請求項1】
分散相を導入するための分散相導入口及び分散相導入流路と、連続相を導入するための連続相導入口及び連続相導入流路と、分散相及び連続相により生成された微小粒子を排出させるための排出流路及び排出口とを備えた微小流路構造体であって、分散相導入流路と連続相導入流路と排出流路とがY字型を形成しており、かつ、前記分散相導入流路と連続相導入流路とが交差する交差部より排出口に至る排出流路の交差部において排出流路の幅が狭くなっていることを特徴とする微小流路構造体。
【請求項2】
流路断面のアスペクト比(流路の深さ/幅の比)が0.30以上3.0未満であることを特徴とする請求項1に記載の微小流路構造体。
【請求項3】
排出流路の幅が狭くなっている部位が、排出流路の交差部の分散相の導入流路側にあることを特徴とする請求項1または請求項2記載の微小流路構造体。
【請求項4】
前記分散相導入流路と連続相導入流路とが交差する交差部において、流路の底面、上面及び/または側面から、1以上の突起が形成されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の微小流路構造体。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の微小流路構造体を用いて、微小流路内において抽出溶媒あるいは被抽出物質含有の流体を微小液滴化した後、前記微小液滴からなる分散相と前記微小液滴を囲む連続相との間で被抽出物質の相間移動により溶媒抽出を行なうことを特徴とする溶媒抽出方法。
【請求項6】
前記溶媒抽出方法において、被抽出物質含有の流体を連続相とし、抽出溶媒を分散相とすることを特徴とする請求項5記載の溶媒抽出方法。
【請求項7】
前記溶媒抽出方法において、被抽出物質含有の流体を分散相とし、抽出溶媒を連続相とすることを特徴とする請求項5記載の溶媒抽出方法。
【請求項8】
前記被抽出物質が原材料を含有する2種以上の流体を化学反応させて得られる生成物であることを特徴とする請求項5〜7のいずれか記載の溶媒抽出方法。
【請求項9】
微小流路内で溶媒抽出を行なったあと、請求項1〜4記載の微小流路構造体を用いて微小粒子得て、かつ、この微小粒子に光または紫外線を照射、または微粒子を加熱することのいずれかの方法により、前記微小液滴の少なくとも表面を硬化することにより、連続相と分散相を分離することを特徴とする請求項5〜8のいずれかに記載の溶媒抽出方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
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【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【公開番号】特開2008−264784(P2008−264784A)
【公開日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−191265(P2008−191265)
【出願日】平成20年7月24日(2008.7.24)
【分割の表示】特願2003−117123(P2003−117123)の分割
【原出願日】平成15年4月22日(2003.4.22)
【出願人】(000003300)東ソー株式会社 (1,901)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年7月24日(2008.7.24)
【分割の表示】特願2003−117123(P2003−117123)の分割
【原出願日】平成15年4月22日(2003.4.22)
【出願人】(000003300)東ソー株式会社 (1,901)
【Fターム(参考)】
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