微小炭化水素分析
本発明は、クロマトグラフと質量分析計とを組み合わせて試料を分析する工程と、工程a)からの出力を他の分析測定と調整して炭化水素原料油流れの組成を決定する工程とを含む、少量の炭化水素試料から炭化水素原料油流れの組成を決定する方法に関する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少量の炭化水素試料を分析してその試料の組成を決定する方法に関する。特に、試料は、ガスクロマトグラフおよび電界イオン化飛行時間型質量分析計によって分析する。
【背景技術】
【0002】
石油試料は、パラフィン類、環状パラフィン類、多重環芳香族化合物、およびさまざまなヘテロ原子炭化水素(最も一般的には、O、S、およびN)を含む複雑な炭化水素混合物である。石油の真新しい原油は、揮発性の高いC4炭化水素から不揮発性のアスファルテンまでの、幅広い沸点範囲の分子を含有する。さまざまな沸点範囲の石油組成の分析は、その後の多数のプロセスへの入力に必要である。
【0003】
【非特許文献1】Denn,M.M.、「Optimization by Variational Methods」、第1章、McGraw−Hill、NYC、1969年。
【非特許文献2】Cover,T.M.and J.A.Thomas、「Elements of Information Theory」、18頁、J.Wiley&Sons、1991年。
【非特許文献3】Davis,H.T.、「Statistical Mechanics of Phases,Interphases and Thin Films」、第12章、VCH Publishers、1996年。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、炭化水素試料の組成を決定する方法である。この方法は、クロマトグラフと質量分析計とを組み合わせて試料を分析する工程と、その出力を他の分析測定と調整して前記炭化水素試料の自己矛盾のない組成モデルを生成する工程とを含む。
【0005】
好ましい実施態様では、クロマトグラフと質量分析計を組み合わせたものは、ガスクロマトグラフ電界イオン化飛行時間型質量分析計(GC−FI−TOF−MS)である。質量分析計のデータは、その後、超臨界流体クロマトグラフィー(SFC)、硫黄模擬蒸留(SIMDIS)、模擬蒸留(S−SIMDIS)、NおよびSの元素分析、1H−NMRおよびGC−炎イオン化検出(FID)(直鎖パラフィン類に関するもの)からのデータなど、他の分析測定と調整する。この調整データにより、石油精製プロセスの数理的モデル化のための入力として使用される石油組成物の詳細な同定および定量化(微小炭化水素分析(micro−hydrocarbon analysis)(MHA)と呼ぶ)が行われる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
分子の管理(Molecule Management)は、石油の研究、精製処理、および原料の評価においてますます重要になってきている。原油および中間製油所ストリームの分子組成は、構造指向ランピング(Structure Oriented Lumping)(SOL)プロセスモデル、最適化可能な製油所モデル(Optimizable Refinery Model)(ORM)およびリアルタイム最適化(Real Time Optimization)(RTO)モデルへの重要な入力パラメーターである。これらのモデルは、原油および製油所処理条件に関する工業面の選択の手引きとなるだけでなく、研究開発プログラムの手引きおよびその進歩の両方にとっても役立つものとなってきた。分子組成は、現在のプロセスモデルを発展させ、原油の経済的価値を評価するための基礎となってきた。石油組成を得るための現在の技術は、蒸留および分留のさまざまな段階とその後に続く詳細な分析を伴っている。残念なことに、試料サイズが小さいことおよび迅速に結果を得る必要性があることは、現在の技術水準の分析を使用する場合の重大な障壁となりうる。例えば、接触分解の研究に使用されるアドバンスト・キャタリスト・エバリュエーション(Advanced Catalyst Evaluation)(ACE)試作機では、1グラム未満の全液体生成物(total liquid product)(TLP)が日常的に生成される。十分な量の試料を従来の特性決定に利用できるとしても、それは時間のかかるプロセスであり、試料を分析できる速度に限度がある。
【0007】
微小炭化水素分析(MHA)は、図1に示されているように2つの構成要素からなっている。(I)クロマトグラフ分離、ソフトイオン化(または非フラグメントイオン化(non−fragmenting ionization))、および高分解能の精密質量分析を組み合わせて行う炭化水素組成の測定(分離、同定および定量化)。好ましい実施態様では、クロマトグラフ分離はガスクロマトグラフィー(GC)で実施し、ソフトイオン化は電界イオン化(FI)で行い、高分解能の精密質量分析は飛行時間型質量分析計で実施する。(II)他の分析測定との調整による組成モデルの生成。好ましい実施態様では、他の分析測定には、超臨界流体クロマトグラフィーおよび/または液体クロマトグラフィー(パラフィン、ナフテンおよび芳香環型の測定の場合)、硫黄および窒素の元素分析、模擬蒸留および硫黄模擬蒸留(収率の場合)、プロトンNMR(オレフィン含量の場合)およびガスクロマトグラフィー(直鎖パラフィンの測定の場合)が含まれる。
【0008】
I.GC−FI−TOF質量分析計による組成の測定
GC−FI−TOF質量分析計は、微小炭化水素分析の中心となる構成要素である。この技法では、GCを用いて、使用カラムのタイプに応じて沸点または極性によって炭化水素種を分離する。この技法は、図2に示されているように幅広い沸点範囲に適用される。電界イオン化では、炭化水素分子のソフトイオン化が行える。GCにおける種の共溶出はTOF質量分析計で分離した。TOF−MSは、高質量分解能(M/ΔM>5000)によってアイソバリック分子(見掛け質量は同じであるが、真の質量(exact masse)が異なる分子、例えば、ΔMがそれぞれ93.9mDaおよび90.5mDaであるC/H12およびC2H8/Sのダブレット)を分離する。GCによる分離と組み合わせると、分離するのが難しいペア(C3/SH4(ΔM=3.4mDa)、N/13CH(ΔM=8.2mDa)およびO/CH4(ΔM=36.4)など)を、図3に示されるように完全にまたは部分的に分離できる。イソパラフィン類と直鎖パラフィン類およびオレフィンとシクロパラフィン類の分離は、クロマトグラフの保持時間に基づいている。TOF MSでも、炭化水素成分の質量が(3mDa未満の誤差で)正確に求まる。このようにして塊の元素組成を求めることができる。表1は、パラフィン類および環状パラフィン類の正確な質量分析を示している。
【0009】
【表1】
【0010】
GC−FI−TOFデータの定量化は2通りの方法で行う。最初に、炭素数(または分子量)の応答因子(response factor)を、アルキルベンゼン標準混合物(C7〜C25)を用いて決定した。次に、全炭化水素クラス、パラフィン類、ナフテン類、1環芳香族化合物、2環芳香族化合物および3環+の芳香族化合物を、高分解能の超臨界流体クロマトグラフィーまたは他のクロマトグラフ技法によって決定されたものに標準化した。
【0011】
GC−FI−TOFデータの減少は、さまざまな炭化水素種の定義された保持時間ウィンドウ(retention time window)および正確な質量ウィンドウ(mass window)に基づいている。この測定により、他の分析測定と更に調整されることになる組成が生み出される。
【0012】
MHAの長期間再現性を、アルキルベンゼンの標準および接触分解実験の全液体生成物の両方に関して研究した。GC−FI−TOF測定の不確実性の主な原因は電界イオン化である。FIの感度は、分子量および分子の種類によって異なる。また、実験に使用するエミッターのタイプによっても異なる。実際に使用する場合には、アルキルベンゼン混合物(C7〜C25)を一連の試料の実施の前と後に分析する。炭素数応答因子を較正することに加えて、分析では、GCの保持時間およびMS測定のゆらぎも訂正される。
【0013】
【表2】
【0014】
【表3】
【0015】
II.GC−FI−TOF質量分析計データの調整
微小炭化水素分析の最後の工程は、分析測定を調整して組成モデルにすることである。特に、組成モデルは、分析実施手順(analytical protocol)でのすべての測定値をできるだけ厳密に再現すると共に特性バランスのセット(例えば、質量と元素組成)も満たさなければならない。幾つもの対象(target)がデータ調和(またはデータ調整)に用いられた。全オレフィン含量は、プロトンNMRで測定された含量と調和させる。炭化水素およびSの収率はガスクロマトグラフィー模擬蒸留(SIMDISおよびS−SIMDIS)で実験的に測定された収率と調和させ、NおよびSの計算含量は元素分析で測定された含量と調和させるなどした。
【0016】
この調整手順の1つの実施態様として、条件付き最適化問題としてそれを扱うものがあり、特性バランス制約条件を受ける分析実施手順の試験結果に合わせて組成モデルの忠実度を最適化する。調整手順の別の実施態様は、逐次代入である。これは、反復と反復の間の組成モデルの変化が規定の許容値より小さくなるまで、分析実施手順の結果と一致するように規定の順序で組成モデルを調整する反復手順である。組成モデルおよびデータ調整の詳細な説明は、添付の付録に示されている。
【0017】
III.MHAによる留分組成の生成
MHAの重要な利点の1つは、試料を物理的に蒸留しなくても沸点留分の組成を生成できることである。表4および5は、MHA仮想留分(分子の計算上の沸点に基づく留分)によって予測されたナフサおよび中間留出物の組成および物理的に蒸留された留分の測定値に基づいたナフサおよび中間留出物の組成を示している。結果はよく一致している。
【0018】
【表4】
【0019】
【表5】
【0020】
付録
組成モデル
1.序論
石油ストリームは、幾千もの別個の分子種を含んでいる複雑な炭化水素混合物である。こうしたストリームとしては、石油の分子組成を変化させるプロセスからの任意の炭化水素ストリームがある。ストリームは非常に複雑であり、しかも非常に多数の別個の分子種を含んでいるので、その組成の任意の分子記述は基本的にはモデル(組成モデル)である。
【0021】
2.組成モデルの構成
組成モデルは、最初に、飽和物、芳香族化合物、硫化物および極性分子の4つの主要グループに構成される。オレフィン類は原油中にはまれにしかないものだが、熱分解または接触分解を伴う精製プロセスで生成するものであり、5番目の主要グループを構成する。各主要グループの中では、分子を同族列別に構成する。同族列とは、化学構造(コア)は同じであるが、炭素数、配列および分枝パターンの異なるアルキル側鎖を有する分子グループのことである。図6は、石油中に見出される145の同族列コアを示す。図7は、ベンゼン、ナフタレン、フルオレン、およびジベンゾチオフェンの同族列の例を示す。
【0022】
水素欠損(hydrogen deficiency)によって炭化水素同族列を構成するのが好都合である。水素欠損は、次の式に従って14のクラス(主要なxクラス(x−class))に構成することができる。
x−class=(−14)+mod(MW,14) 1.
【0023】
xクラスは、「名目上の」分子量を14で割った後の剰余である。慣例により、値−12、−13、−14は2 1 0に置き換えるので、xクラスは−11〜2になる。石油中に存在する幾つかの同族列はxクラスが同じであるが、−CH2−基の分子量が14であるので、それぞれの同族列内のすべての分子もxクラスが同じである。
【0024】
飽和物分子
飽和物分子は、脂肪族炭素および水素のみを含み、そのxクラスは偶数の整数−12、−10、−8、−6、−4、−2、0 2をとる。図8は、xクラス別に並べた試料の飽和物を示す。右から左に読むと、分子は0環飽和物、1環飽和物、2環飽和物などである。それぞれのxクラス内に多数の類似の(ただし、関連している)分子が存在することに注目されたい。これらの分子は質量が同じ構造異性体であり、多くの場合、複雑な混合物では分析によって同定するのが非常に難しい。従って、それぞれのxクラスの代表的な構造体(複数の場合もある)が組成モデルになる。好ましい構造体を肉太で示してある。
【0025】
芳香族性分子
芳香族性分子は、芳香環の炭素原子を有する。石油中に見出される芳香族性分子は、多くの場合、硫黄基および非塩基性窒素(−NH−)基を含んでいる。本発明者らは、環クラス(即ち、1、2、3および4+)別に芳香族性分子を構成した。
【0026】
1環芳香族性分子
図9は、xクラス別に並べた1環芳香族性コアを示している。好ましい構造体を肉太になっている。これらのコアの幾つかは、ナフテン環またはアルキル鎖で隔てられた2つの芳香環を実際には含んでいる(図9中のxクラス−4、−2、0)が、性質的にはほとんど1環である。xクラス−4、−2、0のほかの構造体は4、5および6個のナフテン環を有しており、石油中にはまれにしかない。組成モデルでは、チオフェンは芳香環と同等である。チオフェン類(xクラス−4、−2、0)は原油中ではまれなものであるが、熱分解または接触分解を伴う精製プロセスで作られる。
【0027】
2環芳香族性分子
図10に示されている2環芳香族性コアは、偶数の整数−10、−8、−6、−4、−2、0、2をとるxクラスを有する。肉太で示されている好ましい構造体のうちの3つは、ベンゾチオフェン類(xクラス−10、−8、−6)である。組成モデルでは、チオフェン基は芳香環と同等である。ベンゾチオフェンコア(図10中のxクラス−6)を含んでいる分子は、それほど好ましくない構造体(フェニルナフタレン)を含んでいる分子よりも石油中においてはるかに一般的である。ビフェニルコア(xクラス−2)は、テトラヒドロフェナントレンコアよりも石油中に豊富にある。しかし、水素処理された石油ストリーム中では、テトラヒドロフェナントレン類がビフェニル類より豊富にある。
【0028】
3環芳香族性分子
図11に示されている3環芳香族性コアは、偶数の整数−10、−8、−6、−4、−2、0、2をとるxクラスを有する。石油中に豊富にあるジベンゾチオフェン類(xクラス−2、0、2)は、3環芳香族性を有する。フェナントレンおよびアントラセン(xクラス−4)は両方とも3環芳香族化合物である。フェナントレンは石油中で一般的であり、アントラセンは石炭中で一般的である。
【0029】
4環芳香族性分子
図12に示されている4環芳香族性コアは、偶数の整数−10、−8、−6、−4、−2、0、2、および奇数の整数−11、−9、−7、−5、−3、−1、1をとるxクラスを有する。奇数のxクラスコアのそれぞれは、非塩基性窒素基(−NH−)を含んでいる。組成モデルでは、非塩基性窒素を有する芳香族性分子はすべて4環芳香族性を帯びる。幾つかの構造体は、1個または2個のチオフェン硫黄基(thiophenic sulfur group)を有する。ベンゾピレンコア(xクラス0)を含んでいる同族列としては、強力な発がん物質であるベンゾ(a)ピレンなどがある。
【0030】
硫化物分子
硫化物分子は脂肪族硫黄を含むが、酸素および窒素のどちらも含まない。図13に示されているコアは、偶数の整数−10、−8、−6、−4、−2、0、2をとるxクラスを有する。好ましい構造体は肉太になっている。硫化アルキル類(xクラス−8)および硫化ベンジル類(xクラス−2)は、石油中にはまれなので好ましくない。組成モデルの硫化物コアは、1個または脂肪族硫黄基を有する。これらのコアは、脂肪族炭素のみを含むものもあれば、脂肪族炭素と芳香族炭素の両方を含むものもある。
【0031】
極性分子
図14に示されている極性コアは、偶数のXクラスの酸(−10、−8、−6、−4、−2、0、2)、および奇数のXクラスの塩基性窒素分子(−11、−9、−7、−5、−3、−1、1)に分けられている。組成モデルに含まれる酸コアの中には脂肪族硫黄を含むものがある。他の極性酸素化物(polar oxygenate)(例えば、アルコールおよびスルホキシド(図示せず))は酸ほど石油中に豊富になく、組成モデル中に現れていない。奇数のxクラスコアはすべて1個の塩基性窒素基を含んでいる。
【0032】
オレフィン類およびチオフェン類
図15に示されているオレフィンおよびチオフェンのコアは、偶数の整数−10、−8、−6、−4、−2、0、2をとるxクラスを有する。オレフィンおよびチオフェンのコアは図15に現れており、好ましい構造体は肉太になっている。図15の一番上の行のオレフィンコアを作り出すために、好ましい飽和物コア(図8の肉太の構造体を参照)のそれぞれに二重結合を追加した。オレフィン中に存在するそれぞれの二重結合を形成させるには、2個の水素原子を除去する必要がある。従って、これらのモノオレフィンコア(mono−olefin core)のそれぞれのXクラスは、対応する飽和物コアのそれよりも2だけ小さい。同様に、選択した1環芳香族性コア(図9を参照)のそれぞれから、および2環芳香族性コア(図10)から2個の水素原子を除去して、それぞれ図10の第2行と第3行に現れているオレフィンコアを作り出した。チオフェン類(図15の第4行を参照)は、テトラヒドロチオフェンコア(図13の一番上の行を参照)から4個の水素原子を除去することにより作り出す。複数の二重結合を含んでいるオレフィンコア(例えば、ジオレフィン類)は、組成モデルにおいては好ましくない(図15の最下行を参照)。そのような分子は反応性が高い傾向にあり、それゆえに石油中にはまれである。
【0033】
3.分析測定を調整して組成モデルにする
微小炭化水素分析の最後の工程は、分析測定を調整して組成モデルにすることである。特に、組成モデルは、分析実施手順でのすべての測定値をできるだけ厳密に再現すると共に特性バランスのセット(例えば、質量と元素組成)も満たさなければならない。
【0034】
この調整手順の1つの実施態様として、条件付き最適化問題としてそれを扱うものがあり、特性バランス制約条件を受ける分析実施手順の試験結果に合わせて組成モデルの忠実度を最適化する。調整手順の別の実施態様は、逐次代入である。これは、反復と反復の間の組成モデルの変化が規定の許容値より小さくなるまで、分析実施手順の結果と一致するように規定の順序で組成モデルを調整する反復手順である。
【0035】
a)条件付き最適化による調整
条件付き最適化の実施態様では、参照分子塊重量パーセント{wi*}が微小炭化水素分析の実施手順の結果と正確に一致する組成モデルから始める。次に、その参照の重量パーセントとは最小の違いしかなく、しかも上述の特性バランスを満たす新しい重量パーセントのセット{wi}を求める。こうした重量パーセントを見つけるには、次式で定義されるラグランジアンL(例えば、非特許文献1を参照)を最小化する。
【数1】
式(1)の第1項は、参照重量パーセント{wi*}のシャノン情報エントロピー量(Shannon information entropy content)に対する組成モデルの重量パーセント{wi}のシャノン情報エントロピー量である(例えば、非特許文献2を参照)。j番目のバランスの特性の測定値はbjである。分子塊iの特性jの密度はajiである。これらの特性の密度は、それぞれの塊の分子構造から直接計算するか、または既知の組成の試料で行った測定値に互いに関係付ける。λjは、j番目の特性バランス制約条件のラグランジアン乗数である。NPは、調整において考慮している特性バランスの総数である。Nは組成モデルにおける分子塊の数である。以下の定常条件(stationary condition)が満たされるとき、ラグランジアンLは最小となる。
【数2】
∂L/∂λj=0より、特性バランス式
【数3】
が得られる。変分法を用いて汎関数微分δL/δwを求める(例えば、非特許文献3を参照)。式(3)のラグランジアンの場合、定常解は次のようになる。
【数4】
【0036】
次に、定常解(4)を特性バランス式に代入し、未知の重量パーセント{wi}を消去する。
【数5】
ニュートンの方法を用いて、ラグランジアン乗数{λk}に関して非線形代数方程式(4)をディジタル・コンピューターで解く。これらのラグランジアン乗数に関して方程式系(4)を解いたなら、それらを定常解(3)に代入し、調整組成モデルの重量パーセント{wi}を得る。
【0037】
b)逐次代入による調整
上述の条件付き最適化調整法の場合のように、調整手順のこの実施態様でも、参照分子塊重量パーセント{wi*}が微小炭化水素分析の実施手順の結果と正確に一致する組成モデルから始める。重量パーセント{wi*}の調節は順次に行う。即ち、j番目の特性バランスから計算した調整重量パーセント{wi}がj+1番目の特性バランスの参照重量パーセント{wi*}になる。以下に、スカラーおよび分布特性対象用の重量パーセント調節式、および逐次代入調整アルゴリズムについて説明する。
【0038】
a)スカラー特性対象
スカラー特性は試料全体に関して1つの数をとる。
【0039】
単比特性
単比特性は重量パーセントと線形関係にあり、その特性密度ajiは、選択された分子に関してはゼロではなく、その他に関してはゼロに等しい。単比特性の例としては、元素組成がある。単比特性の場合、特性バランスを全質量バランスと組み合わせて次のものを得る。
【数6】
単比特性jを有する分子の重量パーセントを調節した(比例させた)なら、この特性を有していない分子の重量を調節する。
【数7】
【0040】
平均特性
平均特性は、すべての分子塊i=1,...,Nに関して特性密度がaji≠0であるスカラー特性である。そのような平均特性の例としては、API比重、水素含量、オクタン価、および流動点がある。平均特性の場合、式5および6に要約されている比率法は役立たない。その代わりに、本発明者らは対象値がbjと等しい平均特性jの連続関数である因子φを作り出した。この因子は、特性密度ajiが対象bjの特性密度より小さい分子の重量を上方に調節し、特性密度ajiが対象値bjより大きい分子の重量を下方に調節する。その最終的な結果として、重量{wi}の分布が特性制約条件式
【数8】
を満たす分布の側に向かってシフトすることになる。
【0041】
連続因子φは特性値bの三次多項式となる。
φ(b)=A1b3+A2b2+A3b+A4 (7)
次の制約条件を用いて4つの定数A1〜A4を求める。
全重量の保存:
【数9】
平均特性の制約条件:
【数10】
特性jの極値における滑らかさ:
【数11】
式7で定義された因子φjに制約条件(8a〜d)を課した後、因子および調節重量{wi}を以下のようにして計算する。
φ=1+γΔb1 (9)
【数12】
wi=wi*(1+γΔb1) (i=1,...,Nの場合) (12)
【0042】
特性対象範囲(bmin,j,bmax,j)を制限することにより、φ<0となるのを避ける。実際の対象bjがこの範囲の外側にある場合、複数の工程でこの対象にアプローチする。
【0043】
平均特性対象が複数ある場合、それぞれの対象特性jについて別個の重量因子φjを計算できる。とはいえ、本発明者らはすべての平均特性対象の依存性が組み込まれた単一の因子を用いることにより、更にいっそう効果性を高めることができた。この因子により、対象ごとに3つの追加のパラメーターを用いると、すべての三次多項式が式7でまとめられる。式8の制約条件もそれぞれの特性について用いられる。最終因子および重量の調節は、形式的には式9〜12と似ている。
【0044】
b)分布特性対象
一般に、一致させる特性が幾つかの独立変数に伴って変化する場合に分布特性対象が生じる。沸点温度に伴って蒸留される重量の分布(即ち蒸留曲線)は、もっとも頻繁に遭遇する分布対象である。逐次代入法において、本発明者らは以下に説明する調整アルゴリズムのそれぞれの反復の間に参照重量分布{wi*}を効果的に「再蒸留する」因子φを考案している。
【0045】
沸点BPで留去される累積重量パーセントをW(BP)で表すとする。測定される対象分布はWTであり、WDは分子塊の参照重量分布{wi*}から計算される。これらの累積重量分布はどちらも沸点BPの単調増加関数である(図16−aを参照)。実際には、累積重量分布WTはとびとびの沸点で測定される。またそれぞれの分子塊の沸点での分布WDも計算する。とはいえ、累積重量分布の単調増加の性質を維持する滑らかな関数を用いて、これらのとびとびの沸点の間を補間することができる。この補間の後、同じ蒸留沸点において計算分布WDの関数として対象分布WTを求める(図16−bを参照)。最後に、因子φ≡dWT/dWDを沸点の関数として求める(図16−cを参照)。因子φを用いて、以下のようにして参照重量を調節する。
【数13】
上式で、BPiは分子塊iの沸点である。
【0046】
c)逐次代入調整アルゴリズム
図17では、逐次代入調整の典型的な実施態様を示しているが、この中で、参照組成モデルは、1つの分布対象(沸点)および複数のスカラー特性対象と一致するように調節されている。一般に、それぞれの対象と一致するように順次に重量パーセントを調節すると、前の一致が乱されて、その結果として重量パーセントの調節は緩和され(または抑えられ)て、逐次代入アルゴリズムの収束が確実になる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】微小炭化水素分析の全体的な実施手順を示す。
【図2】幅広い沸点範囲におよぶ分子を示すGC−FI−TOF−MSによるn−パラフィン混合物の分析を示す。
【図3】GC−FI−TOF−MSにより異性体およびアイソバリック分子(isobaric molecule)が分離されることを示している。
【図4】GC−FI−TOF−MSで全液体生成物中の約1500の分子が分離されていることを示す。
【図5】炭素数に対してのアルキルベンゼンの相対応答因子(relative response factor)を示す。
【図6】石油中に見出される145の同族列コアを示す。
【図7】ベンゼン、ナフタレン、フッ素、およびジベンゾチオフェンの同族列の例を示す。
【図8】xクラス別に並べた飽和物の例を示す。右から左に読むと、分子は0環飽和物、1環飽和物、2環飽和物などである。
【図9】xクラス別に並べた1環芳香族性コアを示す(好ましい構造体は肉太になっている)。
【図10】偶数の整数−10、−8、−6、−4、−2、0、2をとるxクラスを有する2環芳香族性コアを示す。
【図11】偶数の整数−10、−8、−6、−4、−2、0、2をとるxクラスを有する3環芳香族性コアを示す。
【図12】偶数の整数−10、−8、−6、−4、−2、0、2、および奇数の整数−11、−9、−7、−5、−3、−1、1をとるxクラスを有する4環芳香族性コアを示す。
【図13】偶数の整数−10、−8、−6、−4、−2、0、2をとるxクラスを有する硫化物コアを示す。
【図14】偶数のxクラスの酸(−10、−8、−6、−4、−2、0、2)および奇数のxクラスの塩基性窒素に分けられた極性コアを示す。
【図15】偶数の整数−10、−8、−6、−4、−2、0、2をとるxクラスを有するオレフィンおよびチオフェンのコアを示す。
【図16−a】沸点の関数としての、留去される累積重量パーセントを示す。
【図16−b】沸点の関数としての対象累積分布対計算分布を示す。
【図16−c】沸点の関数としてのφ=dwT/dwDを示す。
【図17】本発明の逐次代入調整アルゴリズムのフローチャートを示す。
【技術分野】
【0001】
本発明は、少量の炭化水素試料を分析してその試料の組成を決定する方法に関する。特に、試料は、ガスクロマトグラフおよび電界イオン化飛行時間型質量分析計によって分析する。
【背景技術】
【0002】
石油試料は、パラフィン類、環状パラフィン類、多重環芳香族化合物、およびさまざまなヘテロ原子炭化水素(最も一般的には、O、S、およびN)を含む複雑な炭化水素混合物である。石油の真新しい原油は、揮発性の高いC4炭化水素から不揮発性のアスファルテンまでの、幅広い沸点範囲の分子を含有する。さまざまな沸点範囲の石油組成の分析は、その後の多数のプロセスへの入力に必要である。
【0003】
【非特許文献1】Denn,M.M.、「Optimization by Variational Methods」、第1章、McGraw−Hill、NYC、1969年。
【非特許文献2】Cover,T.M.and J.A.Thomas、「Elements of Information Theory」、18頁、J.Wiley&Sons、1991年。
【非特許文献3】Davis,H.T.、「Statistical Mechanics of Phases,Interphases and Thin Films」、第12章、VCH Publishers、1996年。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、炭化水素試料の組成を決定する方法である。この方法は、クロマトグラフと質量分析計とを組み合わせて試料を分析する工程と、その出力を他の分析測定と調整して前記炭化水素試料の自己矛盾のない組成モデルを生成する工程とを含む。
【0005】
好ましい実施態様では、クロマトグラフと質量分析計を組み合わせたものは、ガスクロマトグラフ電界イオン化飛行時間型質量分析計(GC−FI−TOF−MS)である。質量分析計のデータは、その後、超臨界流体クロマトグラフィー(SFC)、硫黄模擬蒸留(SIMDIS)、模擬蒸留(S−SIMDIS)、NおよびSの元素分析、1H−NMRおよびGC−炎イオン化検出(FID)(直鎖パラフィン類に関するもの)からのデータなど、他の分析測定と調整する。この調整データにより、石油精製プロセスの数理的モデル化のための入力として使用される石油組成物の詳細な同定および定量化(微小炭化水素分析(micro−hydrocarbon analysis)(MHA)と呼ぶ)が行われる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
分子の管理(Molecule Management)は、石油の研究、精製処理、および原料の評価においてますます重要になってきている。原油および中間製油所ストリームの分子組成は、構造指向ランピング(Structure Oriented Lumping)(SOL)プロセスモデル、最適化可能な製油所モデル(Optimizable Refinery Model)(ORM)およびリアルタイム最適化(Real Time Optimization)(RTO)モデルへの重要な入力パラメーターである。これらのモデルは、原油および製油所処理条件に関する工業面の選択の手引きとなるだけでなく、研究開発プログラムの手引きおよびその進歩の両方にとっても役立つものとなってきた。分子組成は、現在のプロセスモデルを発展させ、原油の経済的価値を評価するための基礎となってきた。石油組成を得るための現在の技術は、蒸留および分留のさまざまな段階とその後に続く詳細な分析を伴っている。残念なことに、試料サイズが小さいことおよび迅速に結果を得る必要性があることは、現在の技術水準の分析を使用する場合の重大な障壁となりうる。例えば、接触分解の研究に使用されるアドバンスト・キャタリスト・エバリュエーション(Advanced Catalyst Evaluation)(ACE)試作機では、1グラム未満の全液体生成物(total liquid product)(TLP)が日常的に生成される。十分な量の試料を従来の特性決定に利用できるとしても、それは時間のかかるプロセスであり、試料を分析できる速度に限度がある。
【0007】
微小炭化水素分析(MHA)は、図1に示されているように2つの構成要素からなっている。(I)クロマトグラフ分離、ソフトイオン化(または非フラグメントイオン化(non−fragmenting ionization))、および高分解能の精密質量分析を組み合わせて行う炭化水素組成の測定(分離、同定および定量化)。好ましい実施態様では、クロマトグラフ分離はガスクロマトグラフィー(GC)で実施し、ソフトイオン化は電界イオン化(FI)で行い、高分解能の精密質量分析は飛行時間型質量分析計で実施する。(II)他の分析測定との調整による組成モデルの生成。好ましい実施態様では、他の分析測定には、超臨界流体クロマトグラフィーおよび/または液体クロマトグラフィー(パラフィン、ナフテンおよび芳香環型の測定の場合)、硫黄および窒素の元素分析、模擬蒸留および硫黄模擬蒸留(収率の場合)、プロトンNMR(オレフィン含量の場合)およびガスクロマトグラフィー(直鎖パラフィンの測定の場合)が含まれる。
【0008】
I.GC−FI−TOF質量分析計による組成の測定
GC−FI−TOF質量分析計は、微小炭化水素分析の中心となる構成要素である。この技法では、GCを用いて、使用カラムのタイプに応じて沸点または極性によって炭化水素種を分離する。この技法は、図2に示されているように幅広い沸点範囲に適用される。電界イオン化では、炭化水素分子のソフトイオン化が行える。GCにおける種の共溶出はTOF質量分析計で分離した。TOF−MSは、高質量分解能(M/ΔM>5000)によってアイソバリック分子(見掛け質量は同じであるが、真の質量(exact masse)が異なる分子、例えば、ΔMがそれぞれ93.9mDaおよび90.5mDaであるC/H12およびC2H8/Sのダブレット)を分離する。GCによる分離と組み合わせると、分離するのが難しいペア(C3/SH4(ΔM=3.4mDa)、N/13CH(ΔM=8.2mDa)およびO/CH4(ΔM=36.4)など)を、図3に示されるように完全にまたは部分的に分離できる。イソパラフィン類と直鎖パラフィン類およびオレフィンとシクロパラフィン類の分離は、クロマトグラフの保持時間に基づいている。TOF MSでも、炭化水素成分の質量が(3mDa未満の誤差で)正確に求まる。このようにして塊の元素組成を求めることができる。表1は、パラフィン類および環状パラフィン類の正確な質量分析を示している。
【0009】
【表1】
【0010】
GC−FI−TOFデータの定量化は2通りの方法で行う。最初に、炭素数(または分子量)の応答因子(response factor)を、アルキルベンゼン標準混合物(C7〜C25)を用いて決定した。次に、全炭化水素クラス、パラフィン類、ナフテン類、1環芳香族化合物、2環芳香族化合物および3環+の芳香族化合物を、高分解能の超臨界流体クロマトグラフィーまたは他のクロマトグラフ技法によって決定されたものに標準化した。
【0011】
GC−FI−TOFデータの減少は、さまざまな炭化水素種の定義された保持時間ウィンドウ(retention time window)および正確な質量ウィンドウ(mass window)に基づいている。この測定により、他の分析測定と更に調整されることになる組成が生み出される。
【0012】
MHAの長期間再現性を、アルキルベンゼンの標準および接触分解実験の全液体生成物の両方に関して研究した。GC−FI−TOF測定の不確実性の主な原因は電界イオン化である。FIの感度は、分子量および分子の種類によって異なる。また、実験に使用するエミッターのタイプによっても異なる。実際に使用する場合には、アルキルベンゼン混合物(C7〜C25)を一連の試料の実施の前と後に分析する。炭素数応答因子を較正することに加えて、分析では、GCの保持時間およびMS測定のゆらぎも訂正される。
【0013】
【表2】
【0014】
【表3】
【0015】
II.GC−FI−TOF質量分析計データの調整
微小炭化水素分析の最後の工程は、分析測定を調整して組成モデルにすることである。特に、組成モデルは、分析実施手順(analytical protocol)でのすべての測定値をできるだけ厳密に再現すると共に特性バランスのセット(例えば、質量と元素組成)も満たさなければならない。幾つもの対象(target)がデータ調和(またはデータ調整)に用いられた。全オレフィン含量は、プロトンNMRで測定された含量と調和させる。炭化水素およびSの収率はガスクロマトグラフィー模擬蒸留(SIMDISおよびS−SIMDIS)で実験的に測定された収率と調和させ、NおよびSの計算含量は元素分析で測定された含量と調和させるなどした。
【0016】
この調整手順の1つの実施態様として、条件付き最適化問題としてそれを扱うものがあり、特性バランス制約条件を受ける分析実施手順の試験結果に合わせて組成モデルの忠実度を最適化する。調整手順の別の実施態様は、逐次代入である。これは、反復と反復の間の組成モデルの変化が規定の許容値より小さくなるまで、分析実施手順の結果と一致するように規定の順序で組成モデルを調整する反復手順である。組成モデルおよびデータ調整の詳細な説明は、添付の付録に示されている。
【0017】
III.MHAによる留分組成の生成
MHAの重要な利点の1つは、試料を物理的に蒸留しなくても沸点留分の組成を生成できることである。表4および5は、MHA仮想留分(分子の計算上の沸点に基づく留分)によって予測されたナフサおよび中間留出物の組成および物理的に蒸留された留分の測定値に基づいたナフサおよび中間留出物の組成を示している。結果はよく一致している。
【0018】
【表4】
【0019】
【表5】
【0020】
付録
組成モデル
1.序論
石油ストリームは、幾千もの別個の分子種を含んでいる複雑な炭化水素混合物である。こうしたストリームとしては、石油の分子組成を変化させるプロセスからの任意の炭化水素ストリームがある。ストリームは非常に複雑であり、しかも非常に多数の別個の分子種を含んでいるので、その組成の任意の分子記述は基本的にはモデル(組成モデル)である。
【0021】
2.組成モデルの構成
組成モデルは、最初に、飽和物、芳香族化合物、硫化物および極性分子の4つの主要グループに構成される。オレフィン類は原油中にはまれにしかないものだが、熱分解または接触分解を伴う精製プロセスで生成するものであり、5番目の主要グループを構成する。各主要グループの中では、分子を同族列別に構成する。同族列とは、化学構造(コア)は同じであるが、炭素数、配列および分枝パターンの異なるアルキル側鎖を有する分子グループのことである。図6は、石油中に見出される145の同族列コアを示す。図7は、ベンゼン、ナフタレン、フルオレン、およびジベンゾチオフェンの同族列の例を示す。
【0022】
水素欠損(hydrogen deficiency)によって炭化水素同族列を構成するのが好都合である。水素欠損は、次の式に従って14のクラス(主要なxクラス(x−class))に構成することができる。
x−class=(−14)+mod(MW,14) 1.
【0023】
xクラスは、「名目上の」分子量を14で割った後の剰余である。慣例により、値−12、−13、−14は2 1 0に置き換えるので、xクラスは−11〜2になる。石油中に存在する幾つかの同族列はxクラスが同じであるが、−CH2−基の分子量が14であるので、それぞれの同族列内のすべての分子もxクラスが同じである。
【0024】
飽和物分子
飽和物分子は、脂肪族炭素および水素のみを含み、そのxクラスは偶数の整数−12、−10、−8、−6、−4、−2、0 2をとる。図8は、xクラス別に並べた試料の飽和物を示す。右から左に読むと、分子は0環飽和物、1環飽和物、2環飽和物などである。それぞれのxクラス内に多数の類似の(ただし、関連している)分子が存在することに注目されたい。これらの分子は質量が同じ構造異性体であり、多くの場合、複雑な混合物では分析によって同定するのが非常に難しい。従って、それぞれのxクラスの代表的な構造体(複数の場合もある)が組成モデルになる。好ましい構造体を肉太で示してある。
【0025】
芳香族性分子
芳香族性分子は、芳香環の炭素原子を有する。石油中に見出される芳香族性分子は、多くの場合、硫黄基および非塩基性窒素(−NH−)基を含んでいる。本発明者らは、環クラス(即ち、1、2、3および4+)別に芳香族性分子を構成した。
【0026】
1環芳香族性分子
図9は、xクラス別に並べた1環芳香族性コアを示している。好ましい構造体を肉太になっている。これらのコアの幾つかは、ナフテン環またはアルキル鎖で隔てられた2つの芳香環を実際には含んでいる(図9中のxクラス−4、−2、0)が、性質的にはほとんど1環である。xクラス−4、−2、0のほかの構造体は4、5および6個のナフテン環を有しており、石油中にはまれにしかない。組成モデルでは、チオフェンは芳香環と同等である。チオフェン類(xクラス−4、−2、0)は原油中ではまれなものであるが、熱分解または接触分解を伴う精製プロセスで作られる。
【0027】
2環芳香族性分子
図10に示されている2環芳香族性コアは、偶数の整数−10、−8、−6、−4、−2、0、2をとるxクラスを有する。肉太で示されている好ましい構造体のうちの3つは、ベンゾチオフェン類(xクラス−10、−8、−6)である。組成モデルでは、チオフェン基は芳香環と同等である。ベンゾチオフェンコア(図10中のxクラス−6)を含んでいる分子は、それほど好ましくない構造体(フェニルナフタレン)を含んでいる分子よりも石油中においてはるかに一般的である。ビフェニルコア(xクラス−2)は、テトラヒドロフェナントレンコアよりも石油中に豊富にある。しかし、水素処理された石油ストリーム中では、テトラヒドロフェナントレン類がビフェニル類より豊富にある。
【0028】
3環芳香族性分子
図11に示されている3環芳香族性コアは、偶数の整数−10、−8、−6、−4、−2、0、2をとるxクラスを有する。石油中に豊富にあるジベンゾチオフェン類(xクラス−2、0、2)は、3環芳香族性を有する。フェナントレンおよびアントラセン(xクラス−4)は両方とも3環芳香族化合物である。フェナントレンは石油中で一般的であり、アントラセンは石炭中で一般的である。
【0029】
4環芳香族性分子
図12に示されている4環芳香族性コアは、偶数の整数−10、−8、−6、−4、−2、0、2、および奇数の整数−11、−9、−7、−5、−3、−1、1をとるxクラスを有する。奇数のxクラスコアのそれぞれは、非塩基性窒素基(−NH−)を含んでいる。組成モデルでは、非塩基性窒素を有する芳香族性分子はすべて4環芳香族性を帯びる。幾つかの構造体は、1個または2個のチオフェン硫黄基(thiophenic sulfur group)を有する。ベンゾピレンコア(xクラス0)を含んでいる同族列としては、強力な発がん物質であるベンゾ(a)ピレンなどがある。
【0030】
硫化物分子
硫化物分子は脂肪族硫黄を含むが、酸素および窒素のどちらも含まない。図13に示されているコアは、偶数の整数−10、−8、−6、−4、−2、0、2をとるxクラスを有する。好ましい構造体は肉太になっている。硫化アルキル類(xクラス−8)および硫化ベンジル類(xクラス−2)は、石油中にはまれなので好ましくない。組成モデルの硫化物コアは、1個または脂肪族硫黄基を有する。これらのコアは、脂肪族炭素のみを含むものもあれば、脂肪族炭素と芳香族炭素の両方を含むものもある。
【0031】
極性分子
図14に示されている極性コアは、偶数のXクラスの酸(−10、−8、−6、−4、−2、0、2)、および奇数のXクラスの塩基性窒素分子(−11、−9、−7、−5、−3、−1、1)に分けられている。組成モデルに含まれる酸コアの中には脂肪族硫黄を含むものがある。他の極性酸素化物(polar oxygenate)(例えば、アルコールおよびスルホキシド(図示せず))は酸ほど石油中に豊富になく、組成モデル中に現れていない。奇数のxクラスコアはすべて1個の塩基性窒素基を含んでいる。
【0032】
オレフィン類およびチオフェン類
図15に示されているオレフィンおよびチオフェンのコアは、偶数の整数−10、−8、−6、−4、−2、0、2をとるxクラスを有する。オレフィンおよびチオフェンのコアは図15に現れており、好ましい構造体は肉太になっている。図15の一番上の行のオレフィンコアを作り出すために、好ましい飽和物コア(図8の肉太の構造体を参照)のそれぞれに二重結合を追加した。オレフィン中に存在するそれぞれの二重結合を形成させるには、2個の水素原子を除去する必要がある。従って、これらのモノオレフィンコア(mono−olefin core)のそれぞれのXクラスは、対応する飽和物コアのそれよりも2だけ小さい。同様に、選択した1環芳香族性コア(図9を参照)のそれぞれから、および2環芳香族性コア(図10)から2個の水素原子を除去して、それぞれ図10の第2行と第3行に現れているオレフィンコアを作り出した。チオフェン類(図15の第4行を参照)は、テトラヒドロチオフェンコア(図13の一番上の行を参照)から4個の水素原子を除去することにより作り出す。複数の二重結合を含んでいるオレフィンコア(例えば、ジオレフィン類)は、組成モデルにおいては好ましくない(図15の最下行を参照)。そのような分子は反応性が高い傾向にあり、それゆえに石油中にはまれである。
【0033】
3.分析測定を調整して組成モデルにする
微小炭化水素分析の最後の工程は、分析測定を調整して組成モデルにすることである。特に、組成モデルは、分析実施手順でのすべての測定値をできるだけ厳密に再現すると共に特性バランスのセット(例えば、質量と元素組成)も満たさなければならない。
【0034】
この調整手順の1つの実施態様として、条件付き最適化問題としてそれを扱うものがあり、特性バランス制約条件を受ける分析実施手順の試験結果に合わせて組成モデルの忠実度を最適化する。調整手順の別の実施態様は、逐次代入である。これは、反復と反復の間の組成モデルの変化が規定の許容値より小さくなるまで、分析実施手順の結果と一致するように規定の順序で組成モデルを調整する反復手順である。
【0035】
a)条件付き最適化による調整
条件付き最適化の実施態様では、参照分子塊重量パーセント{wi*}が微小炭化水素分析の実施手順の結果と正確に一致する組成モデルから始める。次に、その参照の重量パーセントとは最小の違いしかなく、しかも上述の特性バランスを満たす新しい重量パーセントのセット{wi}を求める。こうした重量パーセントを見つけるには、次式で定義されるラグランジアンL(例えば、非特許文献1を参照)を最小化する。
【数1】
式(1)の第1項は、参照重量パーセント{wi*}のシャノン情報エントロピー量(Shannon information entropy content)に対する組成モデルの重量パーセント{wi}のシャノン情報エントロピー量である(例えば、非特許文献2を参照)。j番目のバランスの特性の測定値はbjである。分子塊iの特性jの密度はajiである。これらの特性の密度は、それぞれの塊の分子構造から直接計算するか、または既知の組成の試料で行った測定値に互いに関係付ける。λjは、j番目の特性バランス制約条件のラグランジアン乗数である。NPは、調整において考慮している特性バランスの総数である。Nは組成モデルにおける分子塊の数である。以下の定常条件(stationary condition)が満たされるとき、ラグランジアンLは最小となる。
【数2】
∂L/∂λj=0より、特性バランス式
【数3】
が得られる。変分法を用いて汎関数微分δL/δwを求める(例えば、非特許文献3を参照)。式(3)のラグランジアンの場合、定常解は次のようになる。
【数4】
【0036】
次に、定常解(4)を特性バランス式に代入し、未知の重量パーセント{wi}を消去する。
【数5】
ニュートンの方法を用いて、ラグランジアン乗数{λk}に関して非線形代数方程式(4)をディジタル・コンピューターで解く。これらのラグランジアン乗数に関して方程式系(4)を解いたなら、それらを定常解(3)に代入し、調整組成モデルの重量パーセント{wi}を得る。
【0037】
b)逐次代入による調整
上述の条件付き最適化調整法の場合のように、調整手順のこの実施態様でも、参照分子塊重量パーセント{wi*}が微小炭化水素分析の実施手順の結果と正確に一致する組成モデルから始める。重量パーセント{wi*}の調節は順次に行う。即ち、j番目の特性バランスから計算した調整重量パーセント{wi}がj+1番目の特性バランスの参照重量パーセント{wi*}になる。以下に、スカラーおよび分布特性対象用の重量パーセント調節式、および逐次代入調整アルゴリズムについて説明する。
【0038】
a)スカラー特性対象
スカラー特性は試料全体に関して1つの数をとる。
【0039】
単比特性
単比特性は重量パーセントと線形関係にあり、その特性密度ajiは、選択された分子に関してはゼロではなく、その他に関してはゼロに等しい。単比特性の例としては、元素組成がある。単比特性の場合、特性バランスを全質量バランスと組み合わせて次のものを得る。
【数6】
単比特性jを有する分子の重量パーセントを調節した(比例させた)なら、この特性を有していない分子の重量を調節する。
【数7】
【0040】
平均特性
平均特性は、すべての分子塊i=1,...,Nに関して特性密度がaji≠0であるスカラー特性である。そのような平均特性の例としては、API比重、水素含量、オクタン価、および流動点がある。平均特性の場合、式5および6に要約されている比率法は役立たない。その代わりに、本発明者らは対象値がbjと等しい平均特性jの連続関数である因子φを作り出した。この因子は、特性密度ajiが対象bjの特性密度より小さい分子の重量を上方に調節し、特性密度ajiが対象値bjより大きい分子の重量を下方に調節する。その最終的な結果として、重量{wi}の分布が特性制約条件式
【数8】
を満たす分布の側に向かってシフトすることになる。
【0041】
連続因子φは特性値bの三次多項式となる。
φ(b)=A1b3+A2b2+A3b+A4 (7)
次の制約条件を用いて4つの定数A1〜A4を求める。
全重量の保存:
【数9】
平均特性の制約条件:
【数10】
特性jの極値における滑らかさ:
【数11】
式7で定義された因子φjに制約条件(8a〜d)を課した後、因子および調節重量{wi}を以下のようにして計算する。
φ=1+γΔb1 (9)
【数12】
wi=wi*(1+γΔb1) (i=1,...,Nの場合) (12)
【0042】
特性対象範囲(bmin,j,bmax,j)を制限することにより、φ<0となるのを避ける。実際の対象bjがこの範囲の外側にある場合、複数の工程でこの対象にアプローチする。
【0043】
平均特性対象が複数ある場合、それぞれの対象特性jについて別個の重量因子φjを計算できる。とはいえ、本発明者らはすべての平均特性対象の依存性が組み込まれた単一の因子を用いることにより、更にいっそう効果性を高めることができた。この因子により、対象ごとに3つの追加のパラメーターを用いると、すべての三次多項式が式7でまとめられる。式8の制約条件もそれぞれの特性について用いられる。最終因子および重量の調節は、形式的には式9〜12と似ている。
【0044】
b)分布特性対象
一般に、一致させる特性が幾つかの独立変数に伴って変化する場合に分布特性対象が生じる。沸点温度に伴って蒸留される重量の分布(即ち蒸留曲線)は、もっとも頻繁に遭遇する分布対象である。逐次代入法において、本発明者らは以下に説明する調整アルゴリズムのそれぞれの反復の間に参照重量分布{wi*}を効果的に「再蒸留する」因子φを考案している。
【0045】
沸点BPで留去される累積重量パーセントをW(BP)で表すとする。測定される対象分布はWTであり、WDは分子塊の参照重量分布{wi*}から計算される。これらの累積重量分布はどちらも沸点BPの単調増加関数である(図16−aを参照)。実際には、累積重量分布WTはとびとびの沸点で測定される。またそれぞれの分子塊の沸点での分布WDも計算する。とはいえ、累積重量分布の単調増加の性質を維持する滑らかな関数を用いて、これらのとびとびの沸点の間を補間することができる。この補間の後、同じ蒸留沸点において計算分布WDの関数として対象分布WTを求める(図16−bを参照)。最後に、因子φ≡dWT/dWDを沸点の関数として求める(図16−cを参照)。因子φを用いて、以下のようにして参照重量を調節する。
【数13】
上式で、BPiは分子塊iの沸点である。
【0046】
c)逐次代入調整アルゴリズム
図17では、逐次代入調整の典型的な実施態様を示しているが、この中で、参照組成モデルは、1つの分布対象(沸点)および複数のスカラー特性対象と一致するように調節されている。一般に、それぞれの対象と一致するように順次に重量パーセントを調節すると、前の一致が乱されて、その結果として重量パーセントの調節は緩和され(または抑えられ)て、逐次代入アルゴリズムの収束が確実になる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】微小炭化水素分析の全体的な実施手順を示す。
【図2】幅広い沸点範囲におよぶ分子を示すGC−FI−TOF−MSによるn−パラフィン混合物の分析を示す。
【図3】GC−FI−TOF−MSにより異性体およびアイソバリック分子(isobaric molecule)が分離されることを示している。
【図4】GC−FI−TOF−MSで全液体生成物中の約1500の分子が分離されていることを示す。
【図5】炭素数に対してのアルキルベンゼンの相対応答因子(relative response factor)を示す。
【図6】石油中に見出される145の同族列コアを示す。
【図7】ベンゼン、ナフタレン、フッ素、およびジベンゾチオフェンの同族列の例を示す。
【図8】xクラス別に並べた飽和物の例を示す。右から左に読むと、分子は0環飽和物、1環飽和物、2環飽和物などである。
【図9】xクラス別に並べた1環芳香族性コアを示す(好ましい構造体は肉太になっている)。
【図10】偶数の整数−10、−8、−6、−4、−2、0、2をとるxクラスを有する2環芳香族性コアを示す。
【図11】偶数の整数−10、−8、−6、−4、−2、0、2をとるxクラスを有する3環芳香族性コアを示す。
【図12】偶数の整数−10、−8、−6、−4、−2、0、2、および奇数の整数−11、−9、−7、−5、−3、−1、1をとるxクラスを有する4環芳香族性コアを示す。
【図13】偶数の整数−10、−8、−6、−4、−2、0、2をとるxクラスを有する硫化物コアを示す。
【図14】偶数のxクラスの酸(−10、−8、−6、−4、−2、0、2)および奇数のxクラスの塩基性窒素に分けられた極性コアを示す。
【図15】偶数の整数−10、−8、−6、−4、−2、0、2をとるxクラスを有するオレフィンおよびチオフェンのコアを示す。
【図16−a】沸点の関数としての、留去される累積重量パーセントを示す。
【図16−b】沸点の関数としての対象累積分布対計算分布を示す。
【図16−c】沸点の関数としてのφ=dwT/dwDを示す。
【図17】本発明の逐次代入調整アルゴリズムのフローチャートを示す。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少量の炭化水素試料から炭化水素原料油流れの組成を決定する方法であって、
a)クロマトグラフと質量分析計を組み合わせて前記試料を分析することにより測定値を入手する工程;
b)前記工程a)からの出力を他の分析測定と調整する工程;および
c)前記工程b)からの出力を組成モデルと調整して、前記炭化水素原料油流れの組成を決定する工程
を含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記クロマトグラフがガスクロマトグラフであることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記質量分析計が飛行時間スペクトロメーターなどの高分解能の質量分析計であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記質量分析計への入力がソフトイオン化によって行われることを特徴とする請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記ソフトイオン化が電界イオン化であることを特徴とする請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記他の分析測定が超臨界流体クロマトグラフィーを含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記超臨界流体クロマトグラフィーが炭化水素塊を発生することができることを特徴とする請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記他の分析測定がS−Sim Dist、Sim Dist、1H−NMR、PIONA、GC−FID、硫黄分および窒素分を含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記他の分析測定がS−Sim Distであることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記他の分析測定がSim Distであることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記他の分析測定が1H−NMRであることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記他の分析測定がPIONAであることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記他の分析測定がGC−FIDであることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記他の分析測定が硫黄分および窒素分であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記試料が1ml未満であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記試料が0.2ml未満であることを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項17】
前記組成モデルを最初に主要グループに構成することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項18】
前記主要グループが、パラフィン類、ナフテン類、1環〜4環芳香族化合物、非塩基性窒素分子、塩基性窒素分子、硫化物および酸であることを特徴とする請求項17に記載の方法。
【請求項19】
各主要グループを同族列別に構成することを特徴とする請求項17に記載の方法。
【請求項20】
前記組成モデルが前記工程a)およびb)の測定値を実質的に再現すると共に、特性バランスのセットを満たすように、前記調整工程c)を実行することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項21】
前記調整が条件付き最適化問題であることを特徴とする請求項20に記載の方法。
【請求項22】
特性バランス制約条件を受ける請求項1の前記工程a)およびb)の測定値を生成するように前記組成モデルを最適化することを特徴とする請求項20に記載の方法。
【請求項23】
前記調整が逐次代入手順であることを特徴とする請求項21に記載の方法。
【請求項24】
前記逐次代入が、反復と反復の間の前記組成モデルの変化が規定の値より小さくなるまで、前記組成モデルを請求項1の前記工程a)およびb)の測定値に規定の順序で一致させる反復手順であることを特徴とする請求項21に記載の方法。
【請求項1】
少量の炭化水素試料から炭化水素原料油流れの組成を決定する方法であって、
a)クロマトグラフと質量分析計を組み合わせて前記試料を分析することにより測定値を入手する工程;
b)前記工程a)からの出力を他の分析測定と調整する工程;および
c)前記工程b)からの出力を組成モデルと調整して、前記炭化水素原料油流れの組成を決定する工程
を含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記クロマトグラフがガスクロマトグラフであることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記質量分析計が飛行時間スペクトロメーターなどの高分解能の質量分析計であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記質量分析計への入力がソフトイオン化によって行われることを特徴とする請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記ソフトイオン化が電界イオン化であることを特徴とする請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記他の分析測定が超臨界流体クロマトグラフィーを含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記超臨界流体クロマトグラフィーが炭化水素塊を発生することができることを特徴とする請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記他の分析測定がS−Sim Dist、Sim Dist、1H−NMR、PIONA、GC−FID、硫黄分および窒素分を含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記他の分析測定がS−Sim Distであることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記他の分析測定がSim Distであることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記他の分析測定が1H−NMRであることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記他の分析測定がPIONAであることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記他の分析測定がGC−FIDであることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記他の分析測定が硫黄分および窒素分であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記試料が1ml未満であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記試料が0.2ml未満であることを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項17】
前記組成モデルを最初に主要グループに構成することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項18】
前記主要グループが、パラフィン類、ナフテン類、1環〜4環芳香族化合物、非塩基性窒素分子、塩基性窒素分子、硫化物および酸であることを特徴とする請求項17に記載の方法。
【請求項19】
各主要グループを同族列別に構成することを特徴とする請求項17に記載の方法。
【請求項20】
前記組成モデルが前記工程a)およびb)の測定値を実質的に再現すると共に、特性バランスのセットを満たすように、前記調整工程c)を実行することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項21】
前記調整が条件付き最適化問題であることを特徴とする請求項20に記載の方法。
【請求項22】
特性バランス制約条件を受ける請求項1の前記工程a)およびb)の測定値を生成するように前記組成モデルを最適化することを特徴とする請求項20に記載の方法。
【請求項23】
前記調整が逐次代入手順であることを特徴とする請求項21に記載の方法。
【請求項24】
前記逐次代入が、反復と反復の間の前記組成モデルの変化が規定の値より小さくなるまで、前記組成モデルを請求項1の前記工程a)およびb)の測定値に規定の順序で一致させる反復手順であることを特徴とする請求項21に記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16−a】
【図16−b】
【図16−c】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16−a】
【図16−b】
【図16−c】
【図17】
【公表番号】特表2009−525461(P2009−525461A)
【公表日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−541396(P2008−541396)
【出願日】平成18年11月17日(2006.11.17)
【国際出願番号】PCT/US2006/044843
【国際公開番号】WO2007/061935
【国際公開日】平成19年5月31日(2007.5.31)
【出願人】(390023630)エクソンモービル リサーチ アンド エンジニアリング カンパニー (442)
【氏名又は名称原語表記】EXXON RESEARCH AND ENGINEERING COMPANY
【Fターム(参考)】
【公表日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年11月17日(2006.11.17)
【国際出願番号】PCT/US2006/044843
【国際公開番号】WO2007/061935
【国際公開日】平成19年5月31日(2007.5.31)
【出願人】(390023630)エクソンモービル リサーチ アンド エンジニアリング カンパニー (442)
【氏名又は名称原語表記】EXXON RESEARCH AND ENGINEERING COMPANY
【Fターム(参考)】
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