微小試料移送装置及び方法
【課題】微小試料を分離しても微小試料移送具先端の変形が無く、何度も繰り返し使用できる微小試料移送装置を提供する。
【解決手段】微小試料接続具64の先端を平面化して微小試料61と面接触させ、電源68から電圧を印加して微小部で融着を起こさせて微小試料接続具先端に微小試料を保持する。
【解決手段】微小試料接続具64の先端を平面化して微小試料61と面接触させ、電源68から電圧を印加して微小部で融着を起こさせて微小試料接続具先端に微小試料を保持する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、真空試料室内で微小試料を移送する微小試料移送装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体の高集積化や微細化に伴い、動作不良を解析する手段として走査電子顕微鏡(以下、SEMと略記)の持つ像分解能では判別できないほどの欠陥が不良原因となることが多くなり、SEMに代わり透過電子顕微鏡や走査型透過電子顕微鏡(以下、代表してSTEMと略記)が必須となってきた。しかし、STEM観察用の試料作製が容易ではなく、短時間で簡便に目標位置を確実に試料にする手法が望まれている。
【0003】
最近、集束イオンビーム(以下、FIBと略記)と先鋭化した微小試料接続具(以下、微小試料移送具とも言う)を用いて、真空容器内で数cmの小片や直径300mmウェーハを元試料として、そこから10μm程度の微小試料を摘出する方法が多用されるようになってきた。試料の一部をFIB加工と先鋭化した微小試料接続具を用いて微小試料を分離する方法については特許第2774884号公報(特許文献1)に記載されている。また、STEM用の試料台に搭載して観察試料まで仕上げる方法については特許第3547143号公報(特許文献2)に記載されている。特許文献2には、微細試料片と微小試料接続具の接続方法としてデポジション膜を使う方法と、デポジション膜を使わずに静電吸着を用いた接続方法が開示されている。
【0004】
特許文献1には、集束イオンビーム装置の試料室内に先端の尖った微小試料接続具を配置し、FIBで目標位置の周辺を除去加工した後、微小試料接続具の先端を試料表面に接触させ、微小試料接続具先端を含むようにFIBアシストデポジション膜(以下、デポジション膜と略記)を形成して試料と接続して、目標位置を含む微小試料を基板から分離することが記載されている。さらに、特許文献2には分離摘出した微小試料を試料室内に設けた微小試料固定台に固定してSTEM観察しやすいように薄片化加工を施してSTEMが完成することが開示されている。また特許文献2に記載されている静電吸着による接続方法は、微小試料接続具が微小試料に点接触状態になって接続される。
【0005】
特許文献1や2におけるSTEM試料作製方法の大きな利点のひとつは、元試料から微小試料片を摘出してSTEMホルダに固定するとき、摘出した微小試料の姿勢が変わらないために、元試料面とSTEMホルダの試料固定面とを平行にしておくと、微小試料接続具を複雑な操作することなく、STEM観察し易い薄片が作成できることである。つまり、摘出される微小試料の姿勢が崩れないことが重要な点であり、これを実現するためには、無応力で加工できるFIBと、変形しない微小試料接続具と微小試料とのデポジション膜による確実な接続が必須である。
【0006】
また、特開2003−242921号公報(特許文献3)には、SEMなど電子ビームを照射する電子顕微鏡内に剥離用探針と摘出用探針を設置し、試料の被観察面を観察する際に、剥離用探針と摘出用探針に電圧を印加して、微小物体と探針とに働くクーロン引力とクーロン斥力を利用して微小物体を取り出したり落下させたりする方法及び装置が開示されている。
【0007】
【特許文献1】特許第2774884号公報
【特許文献2】特許第3547143号公報
【特許文献3】特開2003−242921号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記特許文献1や2のように、従来の先鋭化した微小試料接続具を微小試料に接続するような装置には次のような問題点を有していることを見出した。
【0009】
(1)微小試料接続具の機械的強度の弱さ
微小試料接続具先端の微小領域への接触を実現するために先端半径を1μm程度まで小さくしなければならない。このために、先端近くの微小試料接続具幅も2μm程度に細くしなければならない。このため機械的剛性が低くなり、高強度物性のタングステンであっても、試料に不用意に接触させると簡単に変形して本来の目的である先端の試料への接触や接続ができなくなる。このような微小試料接続具先端が変形した場合には、微小試料接続具の交換を余儀なくされ、予備微小試料接続具が必要になると共に交換作業、装置の停止時間などの無駄が多くなり、装置使用者に不利益を与える。
【0010】
(2)移送する微小試料の姿勢崩れ
微小試料を微小試料接続具の先端に接続できても、試料基板などの周辺部材との静電気力による引力や斥力のために微小試料の姿勢が崩れ、向きが変わる。微小試料の姿勢の崩れは、例えばこの微小試料の垂直断面加工や、垂直面のSTEM用の薄片加工ができないなどの弊害を生む。更に好ましくないのは、微小試料が微小試料接続具先端以外に付着すると、微小試料接続具から微小試料が分離できなくなり、当初の目的であるSTEM観察が出来なくなる。これらの原因は微小試料接続具の先端が細く、かつ、微小試料と微小試料接続具が先端で点接触となっているために微小試料が周囲の静電場による引力や斥力の影響を受けやすく、点接触部を中心に微小試料が傾くためである。このため、微小試料の移送前後で、その姿勢を維持できない。そのため、STEMで所望箇所が観察できなくなり本来の目的である観察が実現しなくなる。
【0011】
(3)微小試料接続具の切断分離に伴う先端の整形
微小試料接続具先端での微小試料の姿勢維持や脱落防止の観点から、微小試料接続具先端と微小試料をFIBデポジション膜で接続する方法が知られていて、特許文献1,2にも記載されている。この場合、接続強度が高くなり、接続された微小試料の姿勢は崩れない利点があるが、他の箇所への移設後は、微小試料接続具と微小試料とを分離しなければならない。これには微小試料接続具を切断するか、微小試料の一部を切断するか、デポジション膜を除去するかのいずれかの方法が用いられるが、いずれの方法も微小試料接続具先端は接続前の形状と異なり、微小試料接続具と微小試料との分離後に、微小試料接続具先端をFIBによって整形して原形に戻すか微小試料接続具を新規なものと交換しなければならない。微小試料接続具の整形には時間を要するが、この整形も10回程度の繰り返しによって微小試料接続具先端幅が大きくなり、整形時間が長くなって、ついには実用できなくなる。このような事態になると微小試料接続具そのものを交換しなければならなくなる。微小試料接続具交換は作業時間や費用の面から好ましくない。
【0012】
(4)微小試料接続具移動の精度
微小試料接続具と微小試料との接続箇所が例えば直径1μm程度の領域に限定されていると、微小試料接続具駆動機構に高精度な機構系と制御、補正などが必要となり、高価なものとなる。
【0013】
これらの問題点に対して次のような解決策が考えられるが、それにも課題が含まれている。
【0014】
(1)微小試料接続具の変形を防ぐために、微小試料接続具直径を太くして剛性を高めることが最も簡単である。しかしながら、微小試料接続具直径を太くすると先端半径を小さくすることができず、本来の目的である試料の特定微小領域に微小試料接続具を接続できなくなる。
【0015】
(2)接続した微細試料の姿勢を周囲の静電場による引力や斥力に耐えて保持させるためには、接続を強固にする必要がある。そのためにデポジション膜を用いると上記(3)の問題を生じる。
【0016】
(3)デポジション膜を用いずに試料と微小試料接続具の接続として、特許文献2にはFIB照射時に発生する再付着膜や静電気吸着が示されている。再付着膜による接続は、従来のデポジション膜の場合と同様にFIB照射による分離が伴うため微小試料接続具の整形は避けられない。一方、静電気吸着による接続は、先鋭化された1本の微小試料接続具表面先端の1点に絶縁膜を介して静電吸着させる方法が知られている。この方法ではデポジション膜による固定を行なわないので分離時に微小試料接続具形状が保存でき、微小試料接続具の整形が不要の利点がある。しかし、この微小試料接続具を用いて数μm立方程度の微小試料を摘出すると、微小試料は微小試料接続具との接触点を支点にして、不安定に揺動する。最悪の場合、試料面に存在していた微小試料の姿勢を保持できず、傾いた状態になる等の問題を生じる。微小試料接続具と点接触している微小試料が周囲の静電場環境からの影響を敏感に受けるためである。
【0017】
微小試料が姿勢崩れを起こすと、STEMで適正に微小試料の内部を観察するためには、摘出試料の姿勢を適正な向きに調整しなければならない。この微小試料の姿勢調整には、微小試料接続具駆動側に自由度を高めた機構及び制御系を備えるか、サンプルキャリア(微小試料固定具)の駆動自由度を高めた機構及び制御系を備えるか、又は、それら両者を備えるかの手段を講じなければならない。
【0018】
なお、特許文献3での摘出する微小物体は、廃棄するものであって微小試料接続具に付着した微小物体の姿勢の崩れは問題とならず、微小物体の姿勢を維持するための方策については示唆されていない。
【0019】
(4)通常、接触すべき箇所の許容領域は凡そ2μm平方である。この領域内に先鋭化した微小試料接続具を接触させる従来方法であると、微小試料接続具駆動機構には2μm以下の位置精度と0.2μm程度の接触位置分解能が要求される。
【0020】
このような問題点から、先端が変形せず繰り返し使える微小試料接続具、もしくは微小試料の摘出方法、もしくは、これらを実現する微小試料移送装置が望まれていた。
【0021】
本発明の目的は、微小試料を分離しても微小試料移送具先端の変形が無く、何度も繰り返し使用できる微小試料移送装置を提供することである。本発明の別の目的は、微小試料移送具駆動機構に高精度な性能が不要な微小試料移送装置方法及び装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0022】
本発明の微小試料移送装置は、一例として、真空試料室内の微小試料と複数点で接触又は面接触し接続する微小試料接続具と、微小試料接続具を真空試料室内で移動させる駆動機構と、微小試料接続具に電圧を印加する電源とを有する。微小試料と面接触する微小試料接続具は、例えば、微小試料と接続する平板部と、平板部を支える基部から構成するか、集束イオンビームによって微小試料と接続する面積を広める加工を施した形状にする。
【0023】
微小試料接続具と微小試料とは、微小試料接続具と微小試料の接触部を流れる電流によって生じる微小融着で接続される。
【発明の効果】
【0024】
本発明によると、微小試料と接触する微小試料接続具は、先端形状が変形しにくく、摘出した微小試料の姿勢を保持したまま移送でき、従来必要であった微小試料接続具先端のFIBによる整形が不要で繰り返し使用でき、さらには、微小試料接続具駆動精度は従来よりも低い精度で済むようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
【実施例1】
【0026】
図1は、本発明による微小試料移送装置の一実施例を示す概略構成図である。微小試料移送装置1は、試料ステージ2に載置された試料3に集束イオンビームを照射するイオンビーム照射系4、試料などを観察する電子ビーム照射系5、導電性材料から成り試料3の一部の微小試料と接続したり、移設したりする微小試料接続具(プローブとも言う)6、この微小試料接続具6を移動させる微小試料接続具駆動手段7、試料3からの二次電子や後方散乱電子を検出する検出器8、試料面に金属膜を形成したり試料を積極的にエッチングするためのガスを供給するガス供給手段9を有する。ガス供給手段9の先端には、ガスの噴出口の微細な直径を有するノズル10を有している。
【0027】
また、試料ステージ2を動作させる試料ステージ制御部11、集束イオンビーム照射系4を動作させるFIB制御部12、電子ビーム照射系を制御する電子ビーム制御系13、微小試料接続具駆動機構7の動作を制御する微小試料接続具制御部14、検出器8の動作を制御する検出器制御系15、ノズル10からのガス照射を制御するガス供給制御部16、微小試料接続具6に電圧を印加する電源17、微小試料接続具6先端の平板が損傷を受けた場合に交換できるように予備の平板を設置した平板ストッカ18、試料ステージ2などを内蔵する真空試料室19、さらに上記の各種制御部を統括して動作指示や各種データを処理、画像の記憶などを行なう計算処理部20、試料や微小試料、微小試料接続具などの画像や、各種制御部の設定値を表示し、設定する画像表示部21を有している。
【0028】
本実施例による微小試料移送装置1に用いる代表的な微小試料接続具6の形状は、試料との接触部が少なくとも2点以上あり、従来の微小試料接続具の先端が先鋭化された針状形状で試料との接触が1点接触であるのに対して全く異なる。好ましくは三角形の頂点に微小試料接続具先端が位置する形状が良い。
【0029】
本実施例で用いた微小試料接続具について、図2で説明する。微小試料接続具の先端を図2のように2点にする。図2では、少し直径の太い微小試料接続具41に対して先端を42aと42bのように分岐させて、その先端部44aと44bがほぼ同時に微小試料43に接触するように形成する。2個の先端のうち少なくとも1点は物理的に接続し、残りの接触部で微小試料の姿勢の傾きを抑える押さえの役割を果たす。上述のように従来の1点で接続される微小試料接続具では、1点で静電吸着するか、1点でデポジション膜形成されたため、周囲の環境に影響され、接続部を中心にして微小試料の姿勢が崩れたが、本形状では姿勢の崩れは起きない。
【0030】
微小試料接続具の材質はタングステンで、先端部は細線を電解研磨して作製した。このような形状はタングステン細線の切断面に細線軸方向に傷付けておくと二又もしくは三又形状に加工できる。二又もしくは三又形状の先端部は電鋳(エレクトロフォーミング)によっても作製できる。電鋳による方が形状制御性、再現性が良いので好ましい。電解研磨であっても電鋳であっても作製された微小試料接続具の複数個の先端部が揃っていて、同時に試料に接触できる形状であることが重要である。なお、本来所望の接触部と、微小試料の長手方向に離れた位置にもう一点で微小試料接続具と接触すれば、従来の1点に比べて大幅に姿勢保持の効果を示すが、2点を結ぶ線を軸とした姿勢崩れの可能性も残されるので微小試料接続具先端は三角形の頂点に位置する3点に分かれていて、これらがほぼ同時に微小試料に接触することが好ましい。
【0031】
二又もしくは三又形状の先端部のいずれかと試料との接続には通電による微小融着を用いる。微小試料接続具6には電源17を繋ぎ、+5V程度の電圧を印加し、試料は接地電位に維持する。この状態で微小試料接続具先端の2点をほぼ同時に試料に接触させると、僅かに早く接触した一方に電流が流れ、特に接触部の接触面積が小さいために抵抗が高く、高温になって融着する。一方の微小試料接続具先端は通電量が少なく機械的な接触が支配的になるが、他方の微小試料接続具の接続部を中心に微小試料が姿勢を崩しかけた場合に押さえの役割を果たすため、微小試料の姿勢の崩れは大幅に低減される。通電による微小融着によって、従来使っていたデポジション膜形成は不要となり、時間短縮の利点が生まれる。
【0032】
従来技術として、微小試料接続具と試料との接触検知のために、微小試料接続具に繋がった電源の間にブザーを設置しておき、微小試料接続具先端部が導電性試料に接触した時にブザーが鳴るなど、オペレータに接触を知らせる機能がある。ここでは、この電源は別の役割を果たすが、特に、微小試料接続具と試料との過剰な融着や溶断を避けるために、通電電流値や通電時間に上限を設定できるように回路を形成している。
【実施例2】
【0033】
微小試料の接触部に関して別の実施例を説明する。図3、図4は本発明による微小試料移送装置における微小試料接続具の別の実施例を示している。微小試料接続具先端は従来の先鋭化した形状や上述の先端が分岐した形状とも異なり、試料との接触部は平面となっていて面接触するような形状になっていて従来には無い形状である。図3(a)は円柱状細線51に斜断面52を加工して試料53との接触部とした例、図4(a)は太めの微小試料接続具基部67の先端に微小な平板65を固着させた形状のもので、共通点は試料と面接触できることである。
【0034】
まず、斜断面を有する微小試料接続具の実施例について図3(b)〜(d)で説明する。図3(b)は直径3μmの均一細線51を試料面に対して45°傾斜させて設置し、試料面に対して垂直に設置したFIB54で均一細線51を切断する様子を示している。均一細線の切断面52は、図3(c)のように楕円断面(短径:3μm、長径が約4.2μm)となる。切断面を微細FIBで仕上げ、平坦化した後、図3(d)のように微小試料接続具51’を180°軸回転させると、切断面52は試料面に平行になり、接触面積が細線の直交断面積より広くなる。
【0035】
本形状の微小試料接続具51’を作成するためには、均一細線が試料面に対して正確に45°傾斜していること、斜断面形成後の180°回転に軸ぶれなど無いことなどが求められ、満足しない場合、切断面は試料面に面接触しない。これらは微小試料接続具駆動機構に傾斜補正機構を付加しておくことで解決する。
【0036】
次に、図4を用いて平板付き微小試料接続具の構成と、微小試料接続具と微小試料の接続原理を説明する。ここでは説明を判り易くするために、図4において分離される微小試料61と試料基板63とを誇張して記載した。図4(a)において、微小試料61は支持部62を介して試料基板63に機械的、電気的に接続している。微小試料接続具64は平板65がデポジション膜66によって微小試料接続具基部67の先端に固着された形状で、微小試料接続具64全体は外部電源68によって電圧が印加されている。本実施例では、印加電圧は例えば−5Vとした。一方、試料基板63は接地電位である。微小試料接続具64は駆動機構69によって少なくとも直交3軸方向に微動可能で、接続部への移動や、接続した微小試料61の移動が可能である。
【0037】
駆動機構69を制御して、微小試料接続具64を試料基板63の所望の領域に接触させる。ブローブ64の平板65が微小試料61に接触した時点で、接地電位にある試料基板63より−5V低位にある微小試料接続具64の平板65に向かって、接触部を通じて電流が流れる。ここで、平板65と微小試料61とは一見面接触しているようであるが、微視的には平板65や微小試料63の表面には微小な凹凸があるため、互いの凸部が接触点となり電流経路となる。この接触点は実質的な接触面積が10nm平方程度と推定され、非常に小さいため、小さな電流であっても抵抗加熱して融着する。たとえ試料や平板部がシリコンであっても容易に融着する。しかし、電源68の電圧を10V以上に大きく設定すると、流れる電流が大きくなり、最悪の場合、平板65や微小試料61が溶断するので電圧設定が重要である。印加する電圧は、−0.5Vから−10V又は+0.5Vから+10Vの範囲が好ましい。
【0038】
次に、支持部62をFIB(図示せず)で除去すると、図4(b)のように微小試料61と試料基板63は機械的、電気的に分離されるが、微小試料61と平板65の融着によって両者は接続状態を保持し、分離した時点で微小試料61は微小試料接続具電位と同じになる。しかも、微小試料61の姿勢も保持される。つまり、微小試料接続具先端部を積極的に平面にして、対象試料と面接触させることで微細試料片61の姿勢の崩れが抑制され、分離したままの姿勢が維持される。
【0039】
ここで取り扱う微小試料は1辺10μm程度の大きさであるため、融着による接合部は上記程度の接触面積で十分で、平板の残りの領域は姿勢を崩そうとする外力に対抗して微小試料の傾きを抑える役割を果たす。従って、平板の大きさは大きいほど好ましいが、取り扱う試料片の長手方向の寸法が10から20μm程度、幅が1〜5μm程度であるので、無意味に大きくできず、数μm平方程度が試料片や接続箇所が観察でき、また周辺に接触して好ましくない電流経路ができる心配もないので好ましい。また、微小試料接続具電位は絶対値が大きいと流れる電流が大きくなり、接触部が異常に高温して試料を変質させたり、微小試料が融解したりする危険性がある。このため−0.5Vから−10Vもしくは、+0.5から+10V程度が好ましい。
【0040】
逆に、この微小試料接続具64を微小試料61から分離する場合は、微小試料61を、現状の微小試料61と平板65との微小融着力よりも強い固着力で固定し、微小試料接続具64を微小試料61から遠ざけると、微小融着力が負けて両者は容易に分離する。従来のように、分離後の微小試料接続具の整形は不要になり、同じ微小試料接続具を繰り返し使うことができる。ここで、微小試料61の例えば微小試料固定台(図示せず)への固定にはデポジション膜を用いればよい。デポジション膜による接着力は強く、観察や分析に用いる微小試料は一旦固定すると強く固着されていることが望まれるので、デポジション膜による固定が最適である。
【0041】
また、平板65と試料片61との接続面は上述のように試料上面に限定されることはない。図4(c)、図4(d)に示すように、微小試料接続具基部67の先端に平板65を立てて固定し、接触面が垂直になるように固定した微小試料接続具64を用いて、微小試料片61の側面に接触させ、微小融着させて接続してもよい。
【0042】
このように先端に平板を有する微小試料接続具を用いることによって、摘出した微小試料の姿勢を崩すことなく移送することができる。また、通電による微小融着を利用する本実施例の微小試料接続具は、損耗なく繰り返し使用することができる。
【0043】
また、接触すべき箇所の許容領域が2μm平方程度であると、先鋭化した微小試料接続具を微小試料に接触させる従来方法の場合、微小試料接続具駆動機構には2μm以下の位置精度と0.2μm程度の接触位置分解能が要求される。これに対して、本実施例のように微小試料接続具が接触領域より大きい接触面を有する形状なら、微小試料接続具駆動に求められる位置精度と接触位置分解能は大幅に軽減される。例えば、2μm平方の接触領域に対して、3μm平方の接触面とすると、4μm程度の位置精度と0.4μm程度の接触位置分解能で済む。
【実施例3】
【0044】
次に、上述の平板付き微小試料接続具の製造方法について説明する。平板は次の2通りの方法で作製した。第1の方法は、FIB加工と先鋭化した従来微小試料接続具を用いて平板状の微細試料を摘出し、微小試料接続具基部に付け替える方法である。第2の方法は、予め平板となる形状を電鋳によって作製して微小試料移送装置内に準備しておき、必要時に微小試料接続具基部に接続する方法である。
【0045】
まず、図5を参照して第1の方法を詳述する。
(a):微小試料接続具先端の平板となる原材料のシリコン板71に対して、FIB72により2箇所に矩形に穴加工74を施した。2個の矩形穴に挟まれた部分73が最終的に平板となる部分である。厚みは例えば0.5〜1μmである。
(b):試料を傾斜させ、平板となる領域の周囲に溝加工74a,74b,74cを施して、支持部75を残した形状に加工する。
(c):先鋭化された従来の微小試料接続具76を加工した平板の厚み部に接触させ、デポジション膜77で接続する。その後、支持部にFIB72を照射して支持部を切断する。
(d):こうして、おおよそ厚さが均一の微小な平板73が分離できる。このまま微小試料接続具を上昇させることで元試料と完全分離できる。
(e):摘出した平板73を、周囲に干渉箇所の無い試料71面に接触させた状態で、微小試料接続具76と平板73を繋ぐデポジション膜77をFIB72で除去する。
(f):微小試料接続具76から分離した平板73を、試料71に面するように微小試料接続具を調節しながら置く。この時、平板73は任意の向きを向いているので、微小試料接続具基部と所定の関係になるように試料ステージを回転調整する。ここで、試料71面上に置かれた平板73に対して更にFIBで整形しても良く、完成時の凡その大きさは3×4μm、厚さ1μmの直方体になった。
(g):最後に、向きを調整した平板73に対して、上記微小試料接続具76より少し太めの微小試料接続具基部76aを接触させる。例えば、平板73と接触する箇所は直径1μmで、先端から3μm離れた箇所での直径は3μmに太くして剛性を持たせている。接触部にデポジション膜78を付けて、微小試料接続具基部76aと平板73を接続固定する。
(h):このようにして、平板73が固着された平板付き微小試料接続具79が完成し、上昇させると平板73の面は必然的に試料71の表面に平行になっている。
【0046】
このような一連の作業は、注目する試料が試料室に導入されていない時間帯に行なうので、試料面にデポ用のガスが直接照射されることはない。
【0047】
次に、上記第2の方法について説明する。ここでは、微小試料接続具基部の先端に容易に付けることのできる平板を複数個搭載した平板ストッカ80を用いる。図6(a)は平板ストッカ80を示し、複数個の開口パターンによって平板が取りやすくなった構造の金属薄板81である。開口パターン83a、83bの配置によって支持部84a、84bが平板82を支える構造になっている。金属薄板81部の厚さは1μm程度で、開口パターンは縦約3μm、横約4μmの平板82になるように配置されている。全体の大きさは縦4mm、横2mm程度であり、ピンセットを用いて取り扱うことができる。図6では判りやすいように便宜上、全体の大きさに対して開口パターン、支持部、平板を大きく表現した。金属薄板81の裏面は、図6(b)のように厚さ10μm程度の補強部85を有して強度を持たせている。
【0048】
図6(c)、(d)は、平板を微小試料接続具基部に付ける手順を示している。平板82に微小試料接続具基部85を接触させ、接触部にデポジション膜86を形成する。次いで、支持部84a、84bをFIB87でスパッタ除去することで、平板82は金属薄板81から分離され、図6(d)のように、平板付き微小試料接続具88が完成する。ここで、平板82の底面(微小試料との接触面)は、金属薄板81と同じ傾きを有しているので、平板ストッカ80を摘出される試料面と水平に設置しておくことで、平板82は試料に面接触できる。図1の微小試料移送装置1では、ウェーハホルダ2Aの上に試料(ウェーハ)3と共に平板ストッカ18が設置されている。
なお、このような平面ストッカ80は、半導体リソグラフィ技術と電気化学的メッキ(電鋳)技術によって精度良く、安価に作製できる。
【実施例4】
【0049】
上述の微小試料移送装置を用いて、元試料であるウェーハから、注目部をSTEM観察するための試料作成手順について図7、図8、図9を用いて説明する。
【0050】
図7、図8、図9には、工程1から工程11の作業手順をFIBによる画像(SIM像)a1〜a11と、図を理解しやすくするためにFIBとは異なる視点から観た斜視説明図(右列)b1〜b11を併記して示した。
【0051】
(工程1):試料101のうち観察試料として残すべき領域100を挟んで、矩形102,103をFIBによって加工する。矩形102の寸法は、例えば、横幅20μm、縦5μm、深さ15μm、矩形103は横幅20μm、縦10μm、深さ10μmとし、両矩形の間隔、つまり摘出する試料の幅、領域100の厚さは3μmとした。
(工程2):工程1での作業後、試料ステージを傾斜させ、領域100の側面が観えるようにする。次に、摘出する微細試料片の3面をFIB照射によって細矩形104a、104b、104c加工を施す。これら細矩形加工によって、支持部103のみに支持されて残りの部分は他に接していない形状に加工する。図(b2)には、理解し易いようにFIB105の照射方向を示した。
(工程3):試料ステージの傾斜を戻して再度FIBで観察すると、領域100に矩形104によって3面と接していない状況が観える。図(b3)では、支持部103によって支持された領域100が判別できる。
(工程4):ここで、微小試料接続具107を領域に100に接近させる。微小試料接続具107は基部108aが金属性の直径3μm程度のタングステン細線であり、先端にはニッケル製の平板108bが固定されている。この平板108bは後述するように、試料101面に平行になるようにFIBデポジションによって予め固定されている。
(工程5):微小試料接続具107の平板108bを領域100の端に接近させる。領域に接触すると、微小試料移送装置内に予め設置しておいた接触検知手段で接触が確認され、微小試料接続具の移動が停止する。この状態で微小試料接続具を停止保持する。このとき微小試料接続具107と試料の間に通電し、微小試料接続具107の平板108bを領域100に微小融着する。
(工程6):領域100の支持部103を切断するために、矩形領域109にFIB105照射する。支持部の103の実質的厚み(高さ)は3μm程度であるため、FIB照射時間は1分程度で済む。
(工程7):矩形領域109へのFIB105照射によって支持部103が除去され、領域100は試料101から分離し、微小試料110となる。この時、微小試料110は微小試料接続具107の先端の平板108bに接続されている。
(工程8):微小試料接続具107を試料101から遠ざけ(上方に移動させ)、試料ステージを移動させて、視野内に微小試料固定台111を移動させる。微小試料固定台は図1の微小試料移送装置には記載が省略されているが、ウェーハホルダ2A上に設置されている。この微小試料固定台に微小試料片110が接触するように微小試料接続具107を移動させる。図1の微小試料移送装置のように電子ビーム照射系ある装置構成の場合、微小試料110が微小試料固定台111に接近する様子がわかり、接近時に接近速度を減速させることができる。微小試料110が固定台111に接触すると接触検知機が動作し、同時に微小試料接続具駆動機構も停止する。
(工程9):この状態で微小試料110と固定台111に跨るようにデポジション膜(図示せず)を形成すると、微小試料110は固定台111に固着される。
(工程10):ここで、微小試料接続具107を上昇させると、デポジション膜による固着力が、微小試料接続具107と微小試料110との微小融着による接着力より勝るため、微小試料接続具107は微小試料110から離れ、微小試料110は固定台111上に自立する。
(工程11):その後、この微小試料110に対して、各種解析手法にあった形状に更に加工を加えても良く、例えば、STEMやSTEMの場合、厚さ100nm程度にまで薄片化させる。
【0052】
なお、本例では、平板が微小試料接続具先端に固着され、この平板の面が元の試料表面に平行である微小試料接続具を用いて、摘出される微小試料の上面に接触し接続していた。本発明はこれに限ることはなく、試料と接触し接続される微小試料接続具は角柱形状でもよい。この例を図10で説明する。
【0053】
図10は、微小試料接続具駆動機構120に下向き傾斜して接続された微小試料接続具基部121の先端に角柱形状の先端微小試料接続具122がされている。角柱微小試料接続具は基準の水平面に対して傾斜下向きであるため、微小試料接続具の先端は試料と面接触しやすくするために、面取りした形状となっている。角柱部分の寸法例は、一辺2μmの正方形断面で、長さ10μmで、先端は微小試料接続具傾斜角に応じた角度で面取りし、実質の水平面の寸法は凡そ2×1μm程度である。このような形状はFIBによって加工できる。
【0054】
このような微小試料接続具によって、図10(b)、(c)、(d)のように、摘出する微小試料123の上面もしくは側面に面接触し接続できる。試料上面に微小試料接続具を接触させる場合、観察手段である顕微鏡が真上から見る装置構成であると、微小試料接続具先端と試料間の間隔が把握しづらく、安全に微小試料接続具と試料を接触させるためには、技量と時間を要していたが、図10(b)や図10(d)のように試料側面に接触させる場合は、試料と微小試料接続具先端の面間隔が真上からの顕微鏡で把握し易く、安全に素早く接触させることができる。
【0055】
また、これらの微小試料接続具の特徴は、微小試料接続具先端の形状が従来の先鋭化した円錐形状ではなく特異な形状をしているため、試料表面や薄膜を画像化し、その画像から微小試料接続具先端の一部の形状のみを認識し、特定しやすいことも特徴である。画像認識しやすい形状の微小試料接続具先端を採用することによって、試料上の目標箇所に微小試料接続具を移動させる作業を、微小試料接続具先端形状を画像認識し、微小試料接続具先端部に事前に施したマークと試料上のマークとが、予め定めた位置関係になるように微小試料接続具を制御することで、装置操作者が制御するのではなく無人自動で行なうことができる。
【0056】
例えば、図11に示したような作業フローで微小試料接続具制御、ステージ制御、ノズル制御させることで自動的に行なうことができる。つまり、微小試料移送のフローを開始する(S100)。まず、微小試料接続具に所定の電圧の電源を接続する。例えば、−5Vの電源とした(S110)。次に、微小試料接続具を対象とする微小試料に接近させ、面接触させる(S120)。この時、上記のように微小試料接続具の少なくとも一部の形状を登録しておき、微小試料接続具の移動手段と連動させることで、微小試料接続具先端を目標位置に容易に移動させることができる。形状登録には、先端部そのものの形状、もしくは先端部に施したマークを正確に認識させることが重要で、これを確度高く制御するためには試料上に現れにくい人工的、幾何学的形状にすることが重要である。
【0057】
接触確認後、微小試料接続具を試料から離間させ、微小試料を試料基板から分離する。微小試料接続具に微小試料を接続した状態で移動させ、微小試料を移送させる(S130)。微小試料の移設先の部材に微小試料が所望の姿勢で接触するように、微小試料接続具を移送させる(S140)。微小試料が微小試料固定具に接触した後、試料をデポジション膜等の接着手段で固定して、微小試料接続具を微小試料から離間して遠ざける(S150)。このような手順により微小試料の移送が完了し、一連のフローは終了する(S160)。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明による微小試料移送装置の構成例を示す図。
【図2】本発明による微小試料接続具の例を示す図。
【図3】本発明による微小試料接続具の例を示す図。
【図4】本発明による微小試料接続具の例を示す図。
【図5】本発明による平板微小試料接続具の作製方法を説明する図。
【図6】本発明による平板微小試料接続具の別の作製方法を説明する図。
【図7】本発明による試料作製方法の説明図。
【図8】本発明による試料作製方法の説明図。
【図9】本発明による試料作製方法の説明図。
【図10】本発明による微小試料接続具の別の例と試料との接触、接続方法の説明図。
【図11】本発明による試料移送手順を示すフロー図。
【符号の説明】
【0059】
1…微小試料移送装置、2…試料ステージ、3…試料、4…イオンビーム照射系、6…微小試料接続具、7…微小試料接続具駆動機構、17…微小試料接続具電源、18…平板ストッカ、41…微小試料接続具基部、42a,42b…分岐微小試料接続具、43…微小試料、44a,44b…接触点、45…面微小試料接続具基部、46…接触面、51…均一細線、51’…面微小試料接続具、52…接触面、53…試料面、54…集束イオンビーム、61…微小試料、63…試料基板、64…微小試料接続具、65…平板、67…微小試料接続具基部、68…外部電源、69…駆動機構、120…微小試料接続具駆動機構、121…微小試料接続具基部、122…先端微小試料接続具、123…微小試料
【技術分野】
【0001】
本発明は、真空試料室内で微小試料を移送する微小試料移送装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体の高集積化や微細化に伴い、動作不良を解析する手段として走査電子顕微鏡(以下、SEMと略記)の持つ像分解能では判別できないほどの欠陥が不良原因となることが多くなり、SEMに代わり透過電子顕微鏡や走査型透過電子顕微鏡(以下、代表してSTEMと略記)が必須となってきた。しかし、STEM観察用の試料作製が容易ではなく、短時間で簡便に目標位置を確実に試料にする手法が望まれている。
【0003】
最近、集束イオンビーム(以下、FIBと略記)と先鋭化した微小試料接続具(以下、微小試料移送具とも言う)を用いて、真空容器内で数cmの小片や直径300mmウェーハを元試料として、そこから10μm程度の微小試料を摘出する方法が多用されるようになってきた。試料の一部をFIB加工と先鋭化した微小試料接続具を用いて微小試料を分離する方法については特許第2774884号公報(特許文献1)に記載されている。また、STEM用の試料台に搭載して観察試料まで仕上げる方法については特許第3547143号公報(特許文献2)に記載されている。特許文献2には、微細試料片と微小試料接続具の接続方法としてデポジション膜を使う方法と、デポジション膜を使わずに静電吸着を用いた接続方法が開示されている。
【0004】
特許文献1には、集束イオンビーム装置の試料室内に先端の尖った微小試料接続具を配置し、FIBで目標位置の周辺を除去加工した後、微小試料接続具の先端を試料表面に接触させ、微小試料接続具先端を含むようにFIBアシストデポジション膜(以下、デポジション膜と略記)を形成して試料と接続して、目標位置を含む微小試料を基板から分離することが記載されている。さらに、特許文献2には分離摘出した微小試料を試料室内に設けた微小試料固定台に固定してSTEM観察しやすいように薄片化加工を施してSTEMが完成することが開示されている。また特許文献2に記載されている静電吸着による接続方法は、微小試料接続具が微小試料に点接触状態になって接続される。
【0005】
特許文献1や2におけるSTEM試料作製方法の大きな利点のひとつは、元試料から微小試料片を摘出してSTEMホルダに固定するとき、摘出した微小試料の姿勢が変わらないために、元試料面とSTEMホルダの試料固定面とを平行にしておくと、微小試料接続具を複雑な操作することなく、STEM観察し易い薄片が作成できることである。つまり、摘出される微小試料の姿勢が崩れないことが重要な点であり、これを実現するためには、無応力で加工できるFIBと、変形しない微小試料接続具と微小試料とのデポジション膜による確実な接続が必須である。
【0006】
また、特開2003−242921号公報(特許文献3)には、SEMなど電子ビームを照射する電子顕微鏡内に剥離用探針と摘出用探針を設置し、試料の被観察面を観察する際に、剥離用探針と摘出用探針に電圧を印加して、微小物体と探針とに働くクーロン引力とクーロン斥力を利用して微小物体を取り出したり落下させたりする方法及び装置が開示されている。
【0007】
【特許文献1】特許第2774884号公報
【特許文献2】特許第3547143号公報
【特許文献3】特開2003−242921号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記特許文献1や2のように、従来の先鋭化した微小試料接続具を微小試料に接続するような装置には次のような問題点を有していることを見出した。
【0009】
(1)微小試料接続具の機械的強度の弱さ
微小試料接続具先端の微小領域への接触を実現するために先端半径を1μm程度まで小さくしなければならない。このために、先端近くの微小試料接続具幅も2μm程度に細くしなければならない。このため機械的剛性が低くなり、高強度物性のタングステンであっても、試料に不用意に接触させると簡単に変形して本来の目的である先端の試料への接触や接続ができなくなる。このような微小試料接続具先端が変形した場合には、微小試料接続具の交換を余儀なくされ、予備微小試料接続具が必要になると共に交換作業、装置の停止時間などの無駄が多くなり、装置使用者に不利益を与える。
【0010】
(2)移送する微小試料の姿勢崩れ
微小試料を微小試料接続具の先端に接続できても、試料基板などの周辺部材との静電気力による引力や斥力のために微小試料の姿勢が崩れ、向きが変わる。微小試料の姿勢の崩れは、例えばこの微小試料の垂直断面加工や、垂直面のSTEM用の薄片加工ができないなどの弊害を生む。更に好ましくないのは、微小試料が微小試料接続具先端以外に付着すると、微小試料接続具から微小試料が分離できなくなり、当初の目的であるSTEM観察が出来なくなる。これらの原因は微小試料接続具の先端が細く、かつ、微小試料と微小試料接続具が先端で点接触となっているために微小試料が周囲の静電場による引力や斥力の影響を受けやすく、点接触部を中心に微小試料が傾くためである。このため、微小試料の移送前後で、その姿勢を維持できない。そのため、STEMで所望箇所が観察できなくなり本来の目的である観察が実現しなくなる。
【0011】
(3)微小試料接続具の切断分離に伴う先端の整形
微小試料接続具先端での微小試料の姿勢維持や脱落防止の観点から、微小試料接続具先端と微小試料をFIBデポジション膜で接続する方法が知られていて、特許文献1,2にも記載されている。この場合、接続強度が高くなり、接続された微小試料の姿勢は崩れない利点があるが、他の箇所への移設後は、微小試料接続具と微小試料とを分離しなければならない。これには微小試料接続具を切断するか、微小試料の一部を切断するか、デポジション膜を除去するかのいずれかの方法が用いられるが、いずれの方法も微小試料接続具先端は接続前の形状と異なり、微小試料接続具と微小試料との分離後に、微小試料接続具先端をFIBによって整形して原形に戻すか微小試料接続具を新規なものと交換しなければならない。微小試料接続具の整形には時間を要するが、この整形も10回程度の繰り返しによって微小試料接続具先端幅が大きくなり、整形時間が長くなって、ついには実用できなくなる。このような事態になると微小試料接続具そのものを交換しなければならなくなる。微小試料接続具交換は作業時間や費用の面から好ましくない。
【0012】
(4)微小試料接続具移動の精度
微小試料接続具と微小試料との接続箇所が例えば直径1μm程度の領域に限定されていると、微小試料接続具駆動機構に高精度な機構系と制御、補正などが必要となり、高価なものとなる。
【0013】
これらの問題点に対して次のような解決策が考えられるが、それにも課題が含まれている。
【0014】
(1)微小試料接続具の変形を防ぐために、微小試料接続具直径を太くして剛性を高めることが最も簡単である。しかしながら、微小試料接続具直径を太くすると先端半径を小さくすることができず、本来の目的である試料の特定微小領域に微小試料接続具を接続できなくなる。
【0015】
(2)接続した微細試料の姿勢を周囲の静電場による引力や斥力に耐えて保持させるためには、接続を強固にする必要がある。そのためにデポジション膜を用いると上記(3)の問題を生じる。
【0016】
(3)デポジション膜を用いずに試料と微小試料接続具の接続として、特許文献2にはFIB照射時に発生する再付着膜や静電気吸着が示されている。再付着膜による接続は、従来のデポジション膜の場合と同様にFIB照射による分離が伴うため微小試料接続具の整形は避けられない。一方、静電気吸着による接続は、先鋭化された1本の微小試料接続具表面先端の1点に絶縁膜を介して静電吸着させる方法が知られている。この方法ではデポジション膜による固定を行なわないので分離時に微小試料接続具形状が保存でき、微小試料接続具の整形が不要の利点がある。しかし、この微小試料接続具を用いて数μm立方程度の微小試料を摘出すると、微小試料は微小試料接続具との接触点を支点にして、不安定に揺動する。最悪の場合、試料面に存在していた微小試料の姿勢を保持できず、傾いた状態になる等の問題を生じる。微小試料接続具と点接触している微小試料が周囲の静電場環境からの影響を敏感に受けるためである。
【0017】
微小試料が姿勢崩れを起こすと、STEMで適正に微小試料の内部を観察するためには、摘出試料の姿勢を適正な向きに調整しなければならない。この微小試料の姿勢調整には、微小試料接続具駆動側に自由度を高めた機構及び制御系を備えるか、サンプルキャリア(微小試料固定具)の駆動自由度を高めた機構及び制御系を備えるか、又は、それら両者を備えるかの手段を講じなければならない。
【0018】
なお、特許文献3での摘出する微小物体は、廃棄するものであって微小試料接続具に付着した微小物体の姿勢の崩れは問題とならず、微小物体の姿勢を維持するための方策については示唆されていない。
【0019】
(4)通常、接触すべき箇所の許容領域は凡そ2μm平方である。この領域内に先鋭化した微小試料接続具を接触させる従来方法であると、微小試料接続具駆動機構には2μm以下の位置精度と0.2μm程度の接触位置分解能が要求される。
【0020】
このような問題点から、先端が変形せず繰り返し使える微小試料接続具、もしくは微小試料の摘出方法、もしくは、これらを実現する微小試料移送装置が望まれていた。
【0021】
本発明の目的は、微小試料を分離しても微小試料移送具先端の変形が無く、何度も繰り返し使用できる微小試料移送装置を提供することである。本発明の別の目的は、微小試料移送具駆動機構に高精度な性能が不要な微小試料移送装置方法及び装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0022】
本発明の微小試料移送装置は、一例として、真空試料室内の微小試料と複数点で接触又は面接触し接続する微小試料接続具と、微小試料接続具を真空試料室内で移動させる駆動機構と、微小試料接続具に電圧を印加する電源とを有する。微小試料と面接触する微小試料接続具は、例えば、微小試料と接続する平板部と、平板部を支える基部から構成するか、集束イオンビームによって微小試料と接続する面積を広める加工を施した形状にする。
【0023】
微小試料接続具と微小試料とは、微小試料接続具と微小試料の接触部を流れる電流によって生じる微小融着で接続される。
【発明の効果】
【0024】
本発明によると、微小試料と接触する微小試料接続具は、先端形状が変形しにくく、摘出した微小試料の姿勢を保持したまま移送でき、従来必要であった微小試料接続具先端のFIBによる整形が不要で繰り返し使用でき、さらには、微小試料接続具駆動精度は従来よりも低い精度で済むようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
【実施例1】
【0026】
図1は、本発明による微小試料移送装置の一実施例を示す概略構成図である。微小試料移送装置1は、試料ステージ2に載置された試料3に集束イオンビームを照射するイオンビーム照射系4、試料などを観察する電子ビーム照射系5、導電性材料から成り試料3の一部の微小試料と接続したり、移設したりする微小試料接続具(プローブとも言う)6、この微小試料接続具6を移動させる微小試料接続具駆動手段7、試料3からの二次電子や後方散乱電子を検出する検出器8、試料面に金属膜を形成したり試料を積極的にエッチングするためのガスを供給するガス供給手段9を有する。ガス供給手段9の先端には、ガスの噴出口の微細な直径を有するノズル10を有している。
【0027】
また、試料ステージ2を動作させる試料ステージ制御部11、集束イオンビーム照射系4を動作させるFIB制御部12、電子ビーム照射系を制御する電子ビーム制御系13、微小試料接続具駆動機構7の動作を制御する微小試料接続具制御部14、検出器8の動作を制御する検出器制御系15、ノズル10からのガス照射を制御するガス供給制御部16、微小試料接続具6に電圧を印加する電源17、微小試料接続具6先端の平板が損傷を受けた場合に交換できるように予備の平板を設置した平板ストッカ18、試料ステージ2などを内蔵する真空試料室19、さらに上記の各種制御部を統括して動作指示や各種データを処理、画像の記憶などを行なう計算処理部20、試料や微小試料、微小試料接続具などの画像や、各種制御部の設定値を表示し、設定する画像表示部21を有している。
【0028】
本実施例による微小試料移送装置1に用いる代表的な微小試料接続具6の形状は、試料との接触部が少なくとも2点以上あり、従来の微小試料接続具の先端が先鋭化された針状形状で試料との接触が1点接触であるのに対して全く異なる。好ましくは三角形の頂点に微小試料接続具先端が位置する形状が良い。
【0029】
本実施例で用いた微小試料接続具について、図2で説明する。微小試料接続具の先端を図2のように2点にする。図2では、少し直径の太い微小試料接続具41に対して先端を42aと42bのように分岐させて、その先端部44aと44bがほぼ同時に微小試料43に接触するように形成する。2個の先端のうち少なくとも1点は物理的に接続し、残りの接触部で微小試料の姿勢の傾きを抑える押さえの役割を果たす。上述のように従来の1点で接続される微小試料接続具では、1点で静電吸着するか、1点でデポジション膜形成されたため、周囲の環境に影響され、接続部を中心にして微小試料の姿勢が崩れたが、本形状では姿勢の崩れは起きない。
【0030】
微小試料接続具の材質はタングステンで、先端部は細線を電解研磨して作製した。このような形状はタングステン細線の切断面に細線軸方向に傷付けておくと二又もしくは三又形状に加工できる。二又もしくは三又形状の先端部は電鋳(エレクトロフォーミング)によっても作製できる。電鋳による方が形状制御性、再現性が良いので好ましい。電解研磨であっても電鋳であっても作製された微小試料接続具の複数個の先端部が揃っていて、同時に試料に接触できる形状であることが重要である。なお、本来所望の接触部と、微小試料の長手方向に離れた位置にもう一点で微小試料接続具と接触すれば、従来の1点に比べて大幅に姿勢保持の効果を示すが、2点を結ぶ線を軸とした姿勢崩れの可能性も残されるので微小試料接続具先端は三角形の頂点に位置する3点に分かれていて、これらがほぼ同時に微小試料に接触することが好ましい。
【0031】
二又もしくは三又形状の先端部のいずれかと試料との接続には通電による微小融着を用いる。微小試料接続具6には電源17を繋ぎ、+5V程度の電圧を印加し、試料は接地電位に維持する。この状態で微小試料接続具先端の2点をほぼ同時に試料に接触させると、僅かに早く接触した一方に電流が流れ、特に接触部の接触面積が小さいために抵抗が高く、高温になって融着する。一方の微小試料接続具先端は通電量が少なく機械的な接触が支配的になるが、他方の微小試料接続具の接続部を中心に微小試料が姿勢を崩しかけた場合に押さえの役割を果たすため、微小試料の姿勢の崩れは大幅に低減される。通電による微小融着によって、従来使っていたデポジション膜形成は不要となり、時間短縮の利点が生まれる。
【0032】
従来技術として、微小試料接続具と試料との接触検知のために、微小試料接続具に繋がった電源の間にブザーを設置しておき、微小試料接続具先端部が導電性試料に接触した時にブザーが鳴るなど、オペレータに接触を知らせる機能がある。ここでは、この電源は別の役割を果たすが、特に、微小試料接続具と試料との過剰な融着や溶断を避けるために、通電電流値や通電時間に上限を設定できるように回路を形成している。
【実施例2】
【0033】
微小試料の接触部に関して別の実施例を説明する。図3、図4は本発明による微小試料移送装置における微小試料接続具の別の実施例を示している。微小試料接続具先端は従来の先鋭化した形状や上述の先端が分岐した形状とも異なり、試料との接触部は平面となっていて面接触するような形状になっていて従来には無い形状である。図3(a)は円柱状細線51に斜断面52を加工して試料53との接触部とした例、図4(a)は太めの微小試料接続具基部67の先端に微小な平板65を固着させた形状のもので、共通点は試料と面接触できることである。
【0034】
まず、斜断面を有する微小試料接続具の実施例について図3(b)〜(d)で説明する。図3(b)は直径3μmの均一細線51を試料面に対して45°傾斜させて設置し、試料面に対して垂直に設置したFIB54で均一細線51を切断する様子を示している。均一細線の切断面52は、図3(c)のように楕円断面(短径:3μm、長径が約4.2μm)となる。切断面を微細FIBで仕上げ、平坦化した後、図3(d)のように微小試料接続具51’を180°軸回転させると、切断面52は試料面に平行になり、接触面積が細線の直交断面積より広くなる。
【0035】
本形状の微小試料接続具51’を作成するためには、均一細線が試料面に対して正確に45°傾斜していること、斜断面形成後の180°回転に軸ぶれなど無いことなどが求められ、満足しない場合、切断面は試料面に面接触しない。これらは微小試料接続具駆動機構に傾斜補正機構を付加しておくことで解決する。
【0036】
次に、図4を用いて平板付き微小試料接続具の構成と、微小試料接続具と微小試料の接続原理を説明する。ここでは説明を判り易くするために、図4において分離される微小試料61と試料基板63とを誇張して記載した。図4(a)において、微小試料61は支持部62を介して試料基板63に機械的、電気的に接続している。微小試料接続具64は平板65がデポジション膜66によって微小試料接続具基部67の先端に固着された形状で、微小試料接続具64全体は外部電源68によって電圧が印加されている。本実施例では、印加電圧は例えば−5Vとした。一方、試料基板63は接地電位である。微小試料接続具64は駆動機構69によって少なくとも直交3軸方向に微動可能で、接続部への移動や、接続した微小試料61の移動が可能である。
【0037】
駆動機構69を制御して、微小試料接続具64を試料基板63の所望の領域に接触させる。ブローブ64の平板65が微小試料61に接触した時点で、接地電位にある試料基板63より−5V低位にある微小試料接続具64の平板65に向かって、接触部を通じて電流が流れる。ここで、平板65と微小試料61とは一見面接触しているようであるが、微視的には平板65や微小試料63の表面には微小な凹凸があるため、互いの凸部が接触点となり電流経路となる。この接触点は実質的な接触面積が10nm平方程度と推定され、非常に小さいため、小さな電流であっても抵抗加熱して融着する。たとえ試料や平板部がシリコンであっても容易に融着する。しかし、電源68の電圧を10V以上に大きく設定すると、流れる電流が大きくなり、最悪の場合、平板65や微小試料61が溶断するので電圧設定が重要である。印加する電圧は、−0.5Vから−10V又は+0.5Vから+10Vの範囲が好ましい。
【0038】
次に、支持部62をFIB(図示せず)で除去すると、図4(b)のように微小試料61と試料基板63は機械的、電気的に分離されるが、微小試料61と平板65の融着によって両者は接続状態を保持し、分離した時点で微小試料61は微小試料接続具電位と同じになる。しかも、微小試料61の姿勢も保持される。つまり、微小試料接続具先端部を積極的に平面にして、対象試料と面接触させることで微細試料片61の姿勢の崩れが抑制され、分離したままの姿勢が維持される。
【0039】
ここで取り扱う微小試料は1辺10μm程度の大きさであるため、融着による接合部は上記程度の接触面積で十分で、平板の残りの領域は姿勢を崩そうとする外力に対抗して微小試料の傾きを抑える役割を果たす。従って、平板の大きさは大きいほど好ましいが、取り扱う試料片の長手方向の寸法が10から20μm程度、幅が1〜5μm程度であるので、無意味に大きくできず、数μm平方程度が試料片や接続箇所が観察でき、また周辺に接触して好ましくない電流経路ができる心配もないので好ましい。また、微小試料接続具電位は絶対値が大きいと流れる電流が大きくなり、接触部が異常に高温して試料を変質させたり、微小試料が融解したりする危険性がある。このため−0.5Vから−10Vもしくは、+0.5から+10V程度が好ましい。
【0040】
逆に、この微小試料接続具64を微小試料61から分離する場合は、微小試料61を、現状の微小試料61と平板65との微小融着力よりも強い固着力で固定し、微小試料接続具64を微小試料61から遠ざけると、微小融着力が負けて両者は容易に分離する。従来のように、分離後の微小試料接続具の整形は不要になり、同じ微小試料接続具を繰り返し使うことができる。ここで、微小試料61の例えば微小試料固定台(図示せず)への固定にはデポジション膜を用いればよい。デポジション膜による接着力は強く、観察や分析に用いる微小試料は一旦固定すると強く固着されていることが望まれるので、デポジション膜による固定が最適である。
【0041】
また、平板65と試料片61との接続面は上述のように試料上面に限定されることはない。図4(c)、図4(d)に示すように、微小試料接続具基部67の先端に平板65を立てて固定し、接触面が垂直になるように固定した微小試料接続具64を用いて、微小試料片61の側面に接触させ、微小融着させて接続してもよい。
【0042】
このように先端に平板を有する微小試料接続具を用いることによって、摘出した微小試料の姿勢を崩すことなく移送することができる。また、通電による微小融着を利用する本実施例の微小試料接続具は、損耗なく繰り返し使用することができる。
【0043】
また、接触すべき箇所の許容領域が2μm平方程度であると、先鋭化した微小試料接続具を微小試料に接触させる従来方法の場合、微小試料接続具駆動機構には2μm以下の位置精度と0.2μm程度の接触位置分解能が要求される。これに対して、本実施例のように微小試料接続具が接触領域より大きい接触面を有する形状なら、微小試料接続具駆動に求められる位置精度と接触位置分解能は大幅に軽減される。例えば、2μm平方の接触領域に対して、3μm平方の接触面とすると、4μm程度の位置精度と0.4μm程度の接触位置分解能で済む。
【実施例3】
【0044】
次に、上述の平板付き微小試料接続具の製造方法について説明する。平板は次の2通りの方法で作製した。第1の方法は、FIB加工と先鋭化した従来微小試料接続具を用いて平板状の微細試料を摘出し、微小試料接続具基部に付け替える方法である。第2の方法は、予め平板となる形状を電鋳によって作製して微小試料移送装置内に準備しておき、必要時に微小試料接続具基部に接続する方法である。
【0045】
まず、図5を参照して第1の方法を詳述する。
(a):微小試料接続具先端の平板となる原材料のシリコン板71に対して、FIB72により2箇所に矩形に穴加工74を施した。2個の矩形穴に挟まれた部分73が最終的に平板となる部分である。厚みは例えば0.5〜1μmである。
(b):試料を傾斜させ、平板となる領域の周囲に溝加工74a,74b,74cを施して、支持部75を残した形状に加工する。
(c):先鋭化された従来の微小試料接続具76を加工した平板の厚み部に接触させ、デポジション膜77で接続する。その後、支持部にFIB72を照射して支持部を切断する。
(d):こうして、おおよそ厚さが均一の微小な平板73が分離できる。このまま微小試料接続具を上昇させることで元試料と完全分離できる。
(e):摘出した平板73を、周囲に干渉箇所の無い試料71面に接触させた状態で、微小試料接続具76と平板73を繋ぐデポジション膜77をFIB72で除去する。
(f):微小試料接続具76から分離した平板73を、試料71に面するように微小試料接続具を調節しながら置く。この時、平板73は任意の向きを向いているので、微小試料接続具基部と所定の関係になるように試料ステージを回転調整する。ここで、試料71面上に置かれた平板73に対して更にFIBで整形しても良く、完成時の凡その大きさは3×4μm、厚さ1μmの直方体になった。
(g):最後に、向きを調整した平板73に対して、上記微小試料接続具76より少し太めの微小試料接続具基部76aを接触させる。例えば、平板73と接触する箇所は直径1μmで、先端から3μm離れた箇所での直径は3μmに太くして剛性を持たせている。接触部にデポジション膜78を付けて、微小試料接続具基部76aと平板73を接続固定する。
(h):このようにして、平板73が固着された平板付き微小試料接続具79が完成し、上昇させると平板73の面は必然的に試料71の表面に平行になっている。
【0046】
このような一連の作業は、注目する試料が試料室に導入されていない時間帯に行なうので、試料面にデポ用のガスが直接照射されることはない。
【0047】
次に、上記第2の方法について説明する。ここでは、微小試料接続具基部の先端に容易に付けることのできる平板を複数個搭載した平板ストッカ80を用いる。図6(a)は平板ストッカ80を示し、複数個の開口パターンによって平板が取りやすくなった構造の金属薄板81である。開口パターン83a、83bの配置によって支持部84a、84bが平板82を支える構造になっている。金属薄板81部の厚さは1μm程度で、開口パターンは縦約3μm、横約4μmの平板82になるように配置されている。全体の大きさは縦4mm、横2mm程度であり、ピンセットを用いて取り扱うことができる。図6では判りやすいように便宜上、全体の大きさに対して開口パターン、支持部、平板を大きく表現した。金属薄板81の裏面は、図6(b)のように厚さ10μm程度の補強部85を有して強度を持たせている。
【0048】
図6(c)、(d)は、平板を微小試料接続具基部に付ける手順を示している。平板82に微小試料接続具基部85を接触させ、接触部にデポジション膜86を形成する。次いで、支持部84a、84bをFIB87でスパッタ除去することで、平板82は金属薄板81から分離され、図6(d)のように、平板付き微小試料接続具88が完成する。ここで、平板82の底面(微小試料との接触面)は、金属薄板81と同じ傾きを有しているので、平板ストッカ80を摘出される試料面と水平に設置しておくことで、平板82は試料に面接触できる。図1の微小試料移送装置1では、ウェーハホルダ2Aの上に試料(ウェーハ)3と共に平板ストッカ18が設置されている。
なお、このような平面ストッカ80は、半導体リソグラフィ技術と電気化学的メッキ(電鋳)技術によって精度良く、安価に作製できる。
【実施例4】
【0049】
上述の微小試料移送装置を用いて、元試料であるウェーハから、注目部をSTEM観察するための試料作成手順について図7、図8、図9を用いて説明する。
【0050】
図7、図8、図9には、工程1から工程11の作業手順をFIBによる画像(SIM像)a1〜a11と、図を理解しやすくするためにFIBとは異なる視点から観た斜視説明図(右列)b1〜b11を併記して示した。
【0051】
(工程1):試料101のうち観察試料として残すべき領域100を挟んで、矩形102,103をFIBによって加工する。矩形102の寸法は、例えば、横幅20μm、縦5μm、深さ15μm、矩形103は横幅20μm、縦10μm、深さ10μmとし、両矩形の間隔、つまり摘出する試料の幅、領域100の厚さは3μmとした。
(工程2):工程1での作業後、試料ステージを傾斜させ、領域100の側面が観えるようにする。次に、摘出する微細試料片の3面をFIB照射によって細矩形104a、104b、104c加工を施す。これら細矩形加工によって、支持部103のみに支持されて残りの部分は他に接していない形状に加工する。図(b2)には、理解し易いようにFIB105の照射方向を示した。
(工程3):試料ステージの傾斜を戻して再度FIBで観察すると、領域100に矩形104によって3面と接していない状況が観える。図(b3)では、支持部103によって支持された領域100が判別できる。
(工程4):ここで、微小試料接続具107を領域に100に接近させる。微小試料接続具107は基部108aが金属性の直径3μm程度のタングステン細線であり、先端にはニッケル製の平板108bが固定されている。この平板108bは後述するように、試料101面に平行になるようにFIBデポジションによって予め固定されている。
(工程5):微小試料接続具107の平板108bを領域100の端に接近させる。領域に接触すると、微小試料移送装置内に予め設置しておいた接触検知手段で接触が確認され、微小試料接続具の移動が停止する。この状態で微小試料接続具を停止保持する。このとき微小試料接続具107と試料の間に通電し、微小試料接続具107の平板108bを領域100に微小融着する。
(工程6):領域100の支持部103を切断するために、矩形領域109にFIB105照射する。支持部の103の実質的厚み(高さ)は3μm程度であるため、FIB照射時間は1分程度で済む。
(工程7):矩形領域109へのFIB105照射によって支持部103が除去され、領域100は試料101から分離し、微小試料110となる。この時、微小試料110は微小試料接続具107の先端の平板108bに接続されている。
(工程8):微小試料接続具107を試料101から遠ざけ(上方に移動させ)、試料ステージを移動させて、視野内に微小試料固定台111を移動させる。微小試料固定台は図1の微小試料移送装置には記載が省略されているが、ウェーハホルダ2A上に設置されている。この微小試料固定台に微小試料片110が接触するように微小試料接続具107を移動させる。図1の微小試料移送装置のように電子ビーム照射系ある装置構成の場合、微小試料110が微小試料固定台111に接近する様子がわかり、接近時に接近速度を減速させることができる。微小試料110が固定台111に接触すると接触検知機が動作し、同時に微小試料接続具駆動機構も停止する。
(工程9):この状態で微小試料110と固定台111に跨るようにデポジション膜(図示せず)を形成すると、微小試料110は固定台111に固着される。
(工程10):ここで、微小試料接続具107を上昇させると、デポジション膜による固着力が、微小試料接続具107と微小試料110との微小融着による接着力より勝るため、微小試料接続具107は微小試料110から離れ、微小試料110は固定台111上に自立する。
(工程11):その後、この微小試料110に対して、各種解析手法にあった形状に更に加工を加えても良く、例えば、STEMやSTEMの場合、厚さ100nm程度にまで薄片化させる。
【0052】
なお、本例では、平板が微小試料接続具先端に固着され、この平板の面が元の試料表面に平行である微小試料接続具を用いて、摘出される微小試料の上面に接触し接続していた。本発明はこれに限ることはなく、試料と接触し接続される微小試料接続具は角柱形状でもよい。この例を図10で説明する。
【0053】
図10は、微小試料接続具駆動機構120に下向き傾斜して接続された微小試料接続具基部121の先端に角柱形状の先端微小試料接続具122がされている。角柱微小試料接続具は基準の水平面に対して傾斜下向きであるため、微小試料接続具の先端は試料と面接触しやすくするために、面取りした形状となっている。角柱部分の寸法例は、一辺2μmの正方形断面で、長さ10μmで、先端は微小試料接続具傾斜角に応じた角度で面取りし、実質の水平面の寸法は凡そ2×1μm程度である。このような形状はFIBによって加工できる。
【0054】
このような微小試料接続具によって、図10(b)、(c)、(d)のように、摘出する微小試料123の上面もしくは側面に面接触し接続できる。試料上面に微小試料接続具を接触させる場合、観察手段である顕微鏡が真上から見る装置構成であると、微小試料接続具先端と試料間の間隔が把握しづらく、安全に微小試料接続具と試料を接触させるためには、技量と時間を要していたが、図10(b)や図10(d)のように試料側面に接触させる場合は、試料と微小試料接続具先端の面間隔が真上からの顕微鏡で把握し易く、安全に素早く接触させることができる。
【0055】
また、これらの微小試料接続具の特徴は、微小試料接続具先端の形状が従来の先鋭化した円錐形状ではなく特異な形状をしているため、試料表面や薄膜を画像化し、その画像から微小試料接続具先端の一部の形状のみを認識し、特定しやすいことも特徴である。画像認識しやすい形状の微小試料接続具先端を採用することによって、試料上の目標箇所に微小試料接続具を移動させる作業を、微小試料接続具先端形状を画像認識し、微小試料接続具先端部に事前に施したマークと試料上のマークとが、予め定めた位置関係になるように微小試料接続具を制御することで、装置操作者が制御するのではなく無人自動で行なうことができる。
【0056】
例えば、図11に示したような作業フローで微小試料接続具制御、ステージ制御、ノズル制御させることで自動的に行なうことができる。つまり、微小試料移送のフローを開始する(S100)。まず、微小試料接続具に所定の電圧の電源を接続する。例えば、−5Vの電源とした(S110)。次に、微小試料接続具を対象とする微小試料に接近させ、面接触させる(S120)。この時、上記のように微小試料接続具の少なくとも一部の形状を登録しておき、微小試料接続具の移動手段と連動させることで、微小試料接続具先端を目標位置に容易に移動させることができる。形状登録には、先端部そのものの形状、もしくは先端部に施したマークを正確に認識させることが重要で、これを確度高く制御するためには試料上に現れにくい人工的、幾何学的形状にすることが重要である。
【0057】
接触確認後、微小試料接続具を試料から離間させ、微小試料を試料基板から分離する。微小試料接続具に微小試料を接続した状態で移動させ、微小試料を移送させる(S130)。微小試料の移設先の部材に微小試料が所望の姿勢で接触するように、微小試料接続具を移送させる(S140)。微小試料が微小試料固定具に接触した後、試料をデポジション膜等の接着手段で固定して、微小試料接続具を微小試料から離間して遠ざける(S150)。このような手順により微小試料の移送が完了し、一連のフローは終了する(S160)。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明による微小試料移送装置の構成例を示す図。
【図2】本発明による微小試料接続具の例を示す図。
【図3】本発明による微小試料接続具の例を示す図。
【図4】本発明による微小試料接続具の例を示す図。
【図5】本発明による平板微小試料接続具の作製方法を説明する図。
【図6】本発明による平板微小試料接続具の別の作製方法を説明する図。
【図7】本発明による試料作製方法の説明図。
【図8】本発明による試料作製方法の説明図。
【図9】本発明による試料作製方法の説明図。
【図10】本発明による微小試料接続具の別の例と試料との接触、接続方法の説明図。
【図11】本発明による試料移送手順を示すフロー図。
【符号の説明】
【0059】
1…微小試料移送装置、2…試料ステージ、3…試料、4…イオンビーム照射系、6…微小試料接続具、7…微小試料接続具駆動機構、17…微小試料接続具電源、18…平板ストッカ、41…微小試料接続具基部、42a,42b…分岐微小試料接続具、43…微小試料、44a,44b…接触点、45…面微小試料接続具基部、46…接触面、51…均一細線、51’…面微小試料接続具、52…接触面、53…試料面、54…集束イオンビーム、61…微小試料、63…試料基板、64…微小試料接続具、65…平板、67…微小試料接続具基部、68…外部電源、69…駆動機構、120…微小試料接続具駆動機構、121…微小試料接続具基部、122…先端微小試料接続具、123…微小試料
【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料を収容する真空試料室と、
前記試料と複数点で接触する微小試料接続具と、
前記微小試料接続具を前記真空試料室内で移動させる駆動機構と、
前記微小試料接続具と前記試料との間に電圧を印加する電源と、
を有することを特徴とする微小試料移送装置。
【請求項2】
請求項1記載の微小試料移送装置において、前記微小試料接続具は前記試料と面接触することを特徴とする微小試料移送装置。
【請求項3】
請求項1記載の微小試料移送装置において、前記微小試料接続具は、略円柱もしくは略円錐形状の部材を有し、当該部材の先端部が前記試料と面接触する平面になっていることを特徴とする微小試料移送装置。
【請求項4】
請求項1記載の微小試料移送装置において、前記微小試料接続具は、前記試料に面接触する角柱部を有することを特徴とする微小試料移送装置。
【請求項5】
請求項1記載の微小試料移送装置において、前記微小試料接続具は、前記試料と面接触する平板部と、該平板部を支える基部とを有することを特徴とする微小試料移送装置。
【請求項6】
請求項1記載の微小試料移送装置において、前記微小試料接続具は、前記試料との接触部を流れる電流によって生じる微小な融着によって前記試料を保持することを特徴とする微小試料移送装置。
【請求項7】
試料を収容する真空試料室と、
前記試料から分離する微小試料の一部と面接触する平面を有する微小試料接続具と、
前記微小試料を観察することのできる顕微鏡と、
前記微小試料接続具を前記真空試料室内で移動させる駆動機構と、
前記微小試料接続具と前記微小試料との間に電圧を印加する電源と、
を有することを特徴とする微小試料移送装置。
【請求項8】
請求項7記載の微小試料移送装置において、前記微小試料接続具は、略円柱もしくは略円錐形状の部材を有し、当該部材の先端部が前記微小試料と面接触する平面になっていることを特徴とする微小試料移送装置。
【請求項9】
請求項7記載の微小試料移送装置において、前記微小試料接続具は、前記微小試料に面接触する角柱部を有することを特徴とする微小試料移送装置。
【請求項10】
請求項7記載の微小試料移送装置において、前記微小試料接続具は、前記微小試料と面接触する平板部と、該平板部を支える基部とを有することを特徴とする微小試料移送装置。
【請求項11】
請求項7記載の微小試料移送装置において、前記微小試料接続具は、前記微小試料との接触部を流れる電流によって生じる微小な融着によって前記微小試料を保持することを特徴とする微小試料移送装置。
【請求項12】
試料を載置する試料ステージと、
前記試料ステージを収容する真空試料室と、
前記試料から分離した微小試料を保持して移送する微小試料接続具と、
前記微小試料接続具を前記真空試料室内で移動させる駆動機構と、
試料加工用の集束イオンビーム照射系と、
試料観察用の電子ビーム照射系と、
デポジション膜形成用の原料ガスを供給するガス供給手段と、
前記試料ステージに載置された試料と前記微小試料接続具との間に電圧を印加するための電源とを有し、
前記微小試料接続具は前記微小試料と複数点で接触する形状、又は面接触する形状を有することを特徴とする微小試料移送装置。
【請求項13】
請求項12記載の微小試料移送装置において、前記微小試料接続具は、略円柱もしくは略円錐形状の部材を有し、当該部材の先端部が前記微小試料と面接触する平面になっていることを特徴とする微小試料移送装置。
【請求項14】
請求項12記載の微小試料移送装置において、前記微小試料接続具は、前記微小試料に面接触する角柱部を有することを特徴とする微小試料移送装置。
【請求項15】
請求項12記載の微小試料移送装置において、前記微小試料接続具は、前記微小試料と面接触する平板部と、該平板部を支える基部とを有することを特徴とする微小試料移送装置。
【請求項16】
請求項15記載の微小試料移送装置において、前記平板部は予め前記真空試料室内に準備され、前記真空試料室内で前記平板部と前記基部と固着して前記微小試料接続具を形成することを特徴とする微小試料移送装置。
【請求項17】
請求項12記載の微小試料移送装置において、前記微小試料接続具のうち前記微小試料との接触部が導電性材料又はシリコンで構成されていることを特徴とする微小試料移送装置。
【請求項18】
請求項12記載の微小試料移送装置において、前記微小試料接続具は、前記微小試料との接触部を流れる電流によって生じる微小な融着によって前記微小試料を保持することを特徴とする微小試料移送装置。
【請求項19】
請求項12記載の微小試料移送装置において、前記微小試料接続具に保持して移動させた前記微小試料を移設する微小試料設置具を前記真空試料室内に有することを特徴とする微小試料移送装置。
【請求項20】
真空試料室に収容された試料に微小試料接続具の接触面を面接触させ、前記試料と前記微小試料接続具との間に電圧を印加し両者の接触部を流れる電流によって生じる微小な融着によって前記試料を前記微小試料接続具に保持し、前記試料を保持した前記微小試料接続具を移動することによって前記試料を所望位置に移動し、前記試料を前記所望位置に固定し、前記微小試料接続具を前記試料から離れる方向に移動させて前記試料から分離することを特徴とする微小試料移送方法。
【請求項21】
請求項20記載の微小試料移送方法において、前記微小試料接続具を前記試料の側面に面接触させることを特徴とする微小試料移送方法。
【請求項22】
請求項20記載の微小試料移送方法において、前記試料と接触する前記微小試料移送具の接触部材を前記真空試料室内に準備し、前記真空試料室内で前記接触部材を前記微小試料移送具の先端に固着させることを特徴とする微小試料移送方法。
【請求項23】
真空試料室に収容された試料から分離すべき微小試料に微小試料接続具の接触面を面接触させ、前記試料と前記微小試料接続具との間に電圧を印加し両者の接触部を流れる電流によって生じる微小な融着によって前記微小試料を前記微小試料接続具に保持し、前記微小試料を前記試料から分離し、前記微小試料を保持した前記微小試料接続具を駆動して前記微小試料を固定台に接触させ、前記固定台に前記微小試料を固定し、前記微小試料接続具を前記微小試料から離れる方向に移動させて前記微小試料から分離することを特徴とする微小試料移送方法。
【請求項24】
請求項23記載の微小試料移送方法において、前記微小試料接続具を前記微小試料の側面に面接触させることを特徴とする微小試料移送方法。
【請求項25】
請求項23記載の微小試料移送方法において、前記微小試料と接触する前記微小試料移送具の接触部材を前記真空試料室内に準備し、前記真空試料室内で前記接触部材を前記微小試料移送具の先端に固着させることを特徴とする微小試料移送方法。
【請求項26】
真空試料室に収容された試料を集束イオンビームで加工して支持部で接続された状態で前記試料から微小試料を切り出し、前記微小試料に微小試料接続具の接触面を面接触させ、前記試料と前記微小試料接続具との間に電圧を印加し両者の接触部を流れる電流によって生じる微小な融着によって前記微小試料を前記微小試料接続具に接続し、前記支持部に集束イオンビームを照射して切断することによって前記微小試料を前記試料から分離し、前記微小試料を接続した前記微小試料接続具を移動させて前記微小試料を固定台に接触させ、前記微小試料と前記固定台との接触領域にビームアシストデポジション膜を形成して前記微小試料を前記固定台に固定し、前記微小試料接続具を前記微小試料から離れる方向に移動させて前記微小試料から分離することを特徴とする微小試料移送方法。
【請求項27】
請求項26記載の微小試料移送方法において、前記微小試料接続具を前記微小試料の側面に面接触させることを特徴とする微小試料移送方法。
【請求項28】
請求項26記載の微小試料移送方法において、前記微小試料と接触する前記微小試料移送具の接触部材を前記真空試料室内に準備し、前記真空試料室内で前記接触部材を前記微小試料移送具の先端に固着させることを特徴とする微小試料移送方法。
【請求項1】
試料を収容する真空試料室と、
前記試料と複数点で接触する微小試料接続具と、
前記微小試料接続具を前記真空試料室内で移動させる駆動機構と、
前記微小試料接続具と前記試料との間に電圧を印加する電源と、
を有することを特徴とする微小試料移送装置。
【請求項2】
請求項1記載の微小試料移送装置において、前記微小試料接続具は前記試料と面接触することを特徴とする微小試料移送装置。
【請求項3】
請求項1記載の微小試料移送装置において、前記微小試料接続具は、略円柱もしくは略円錐形状の部材を有し、当該部材の先端部が前記試料と面接触する平面になっていることを特徴とする微小試料移送装置。
【請求項4】
請求項1記載の微小試料移送装置において、前記微小試料接続具は、前記試料に面接触する角柱部を有することを特徴とする微小試料移送装置。
【請求項5】
請求項1記載の微小試料移送装置において、前記微小試料接続具は、前記試料と面接触する平板部と、該平板部を支える基部とを有することを特徴とする微小試料移送装置。
【請求項6】
請求項1記載の微小試料移送装置において、前記微小試料接続具は、前記試料との接触部を流れる電流によって生じる微小な融着によって前記試料を保持することを特徴とする微小試料移送装置。
【請求項7】
試料を収容する真空試料室と、
前記試料から分離する微小試料の一部と面接触する平面を有する微小試料接続具と、
前記微小試料を観察することのできる顕微鏡と、
前記微小試料接続具を前記真空試料室内で移動させる駆動機構と、
前記微小試料接続具と前記微小試料との間に電圧を印加する電源と、
を有することを特徴とする微小試料移送装置。
【請求項8】
請求項7記載の微小試料移送装置において、前記微小試料接続具は、略円柱もしくは略円錐形状の部材を有し、当該部材の先端部が前記微小試料と面接触する平面になっていることを特徴とする微小試料移送装置。
【請求項9】
請求項7記載の微小試料移送装置において、前記微小試料接続具は、前記微小試料に面接触する角柱部を有することを特徴とする微小試料移送装置。
【請求項10】
請求項7記載の微小試料移送装置において、前記微小試料接続具は、前記微小試料と面接触する平板部と、該平板部を支える基部とを有することを特徴とする微小試料移送装置。
【請求項11】
請求項7記載の微小試料移送装置において、前記微小試料接続具は、前記微小試料との接触部を流れる電流によって生じる微小な融着によって前記微小試料を保持することを特徴とする微小試料移送装置。
【請求項12】
試料を載置する試料ステージと、
前記試料ステージを収容する真空試料室と、
前記試料から分離した微小試料を保持して移送する微小試料接続具と、
前記微小試料接続具を前記真空試料室内で移動させる駆動機構と、
試料加工用の集束イオンビーム照射系と、
試料観察用の電子ビーム照射系と、
デポジション膜形成用の原料ガスを供給するガス供給手段と、
前記試料ステージに載置された試料と前記微小試料接続具との間に電圧を印加するための電源とを有し、
前記微小試料接続具は前記微小試料と複数点で接触する形状、又は面接触する形状を有することを特徴とする微小試料移送装置。
【請求項13】
請求項12記載の微小試料移送装置において、前記微小試料接続具は、略円柱もしくは略円錐形状の部材を有し、当該部材の先端部が前記微小試料と面接触する平面になっていることを特徴とする微小試料移送装置。
【請求項14】
請求項12記載の微小試料移送装置において、前記微小試料接続具は、前記微小試料に面接触する角柱部を有することを特徴とする微小試料移送装置。
【請求項15】
請求項12記載の微小試料移送装置において、前記微小試料接続具は、前記微小試料と面接触する平板部と、該平板部を支える基部とを有することを特徴とする微小試料移送装置。
【請求項16】
請求項15記載の微小試料移送装置において、前記平板部は予め前記真空試料室内に準備され、前記真空試料室内で前記平板部と前記基部と固着して前記微小試料接続具を形成することを特徴とする微小試料移送装置。
【請求項17】
請求項12記載の微小試料移送装置において、前記微小試料接続具のうち前記微小試料との接触部が導電性材料又はシリコンで構成されていることを特徴とする微小試料移送装置。
【請求項18】
請求項12記載の微小試料移送装置において、前記微小試料接続具は、前記微小試料との接触部を流れる電流によって生じる微小な融着によって前記微小試料を保持することを特徴とする微小試料移送装置。
【請求項19】
請求項12記載の微小試料移送装置において、前記微小試料接続具に保持して移動させた前記微小試料を移設する微小試料設置具を前記真空試料室内に有することを特徴とする微小試料移送装置。
【請求項20】
真空試料室に収容された試料に微小試料接続具の接触面を面接触させ、前記試料と前記微小試料接続具との間に電圧を印加し両者の接触部を流れる電流によって生じる微小な融着によって前記試料を前記微小試料接続具に保持し、前記試料を保持した前記微小試料接続具を移動することによって前記試料を所望位置に移動し、前記試料を前記所望位置に固定し、前記微小試料接続具を前記試料から離れる方向に移動させて前記試料から分離することを特徴とする微小試料移送方法。
【請求項21】
請求項20記載の微小試料移送方法において、前記微小試料接続具を前記試料の側面に面接触させることを特徴とする微小試料移送方法。
【請求項22】
請求項20記載の微小試料移送方法において、前記試料と接触する前記微小試料移送具の接触部材を前記真空試料室内に準備し、前記真空試料室内で前記接触部材を前記微小試料移送具の先端に固着させることを特徴とする微小試料移送方法。
【請求項23】
真空試料室に収容された試料から分離すべき微小試料に微小試料接続具の接触面を面接触させ、前記試料と前記微小試料接続具との間に電圧を印加し両者の接触部を流れる電流によって生じる微小な融着によって前記微小試料を前記微小試料接続具に保持し、前記微小試料を前記試料から分離し、前記微小試料を保持した前記微小試料接続具を駆動して前記微小試料を固定台に接触させ、前記固定台に前記微小試料を固定し、前記微小試料接続具を前記微小試料から離れる方向に移動させて前記微小試料から分離することを特徴とする微小試料移送方法。
【請求項24】
請求項23記載の微小試料移送方法において、前記微小試料接続具を前記微小試料の側面に面接触させることを特徴とする微小試料移送方法。
【請求項25】
請求項23記載の微小試料移送方法において、前記微小試料と接触する前記微小試料移送具の接触部材を前記真空試料室内に準備し、前記真空試料室内で前記接触部材を前記微小試料移送具の先端に固着させることを特徴とする微小試料移送方法。
【請求項26】
真空試料室に収容された試料を集束イオンビームで加工して支持部で接続された状態で前記試料から微小試料を切り出し、前記微小試料に微小試料接続具の接触面を面接触させ、前記試料と前記微小試料接続具との間に電圧を印加し両者の接触部を流れる電流によって生じる微小な融着によって前記微小試料を前記微小試料接続具に接続し、前記支持部に集束イオンビームを照射して切断することによって前記微小試料を前記試料から分離し、前記微小試料を接続した前記微小試料接続具を移動させて前記微小試料を固定台に接触させ、前記微小試料と前記固定台との接触領域にビームアシストデポジション膜を形成して前記微小試料を前記固定台に固定し、前記微小試料接続具を前記微小試料から離れる方向に移動させて前記微小試料から分離することを特徴とする微小試料移送方法。
【請求項27】
請求項26記載の微小試料移送方法において、前記微小試料接続具を前記微小試料の側面に面接触させることを特徴とする微小試料移送方法。
【請求項28】
請求項26記載の微小試料移送方法において、前記微小試料と接触する前記微小試料移送具の接触部材を前記真空試料室内に準備し、前記真空試料室内で前記接触部材を前記微小試料移送具の先端に固着させることを特徴とする微小試料移送方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2007−163277(P2007−163277A)
【公開日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−359321(P2005−359321)
【出願日】平成17年12月13日(2005.12.13)
【出願人】(501387839)株式会社日立ハイテクノロジーズ (4,325)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年12月13日(2005.12.13)
【出願人】(501387839)株式会社日立ハイテクノロジーズ (4,325)
【Fターム(参考)】
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