説明

微小銀粒子含有組成物、その製造方法、微小銀粒子の製造方法および微小銀粒子を有するペースト

【課題】粒度が均一で微細な描画パターンを形成でき、環境負荷が小さい微小銀粒子含有組成物、その製造方法、微小銀粒子の製造方法および微小銀粒子を有するペーストを提供すること。
【解決手段】還元液を調整する調液工程と、銀反応工程と、ろ過・洗浄工程とを行い微小銀粒子を製造する。反応工程は、40℃から80℃の間に昇温させた還元液に硝酸銀水溶液を添加して行う。硝酸銀水溶液は一挙に添加する。
更に、極性溶媒に前記微小銀粒子含有組成物を分散させて微小銀粒子含有組成物を製造する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ナノオーダーの微小銀粒子の製造方法、微小銀粒子含有組成物およびその製造方法、並びに微小銀粒子を有するペーストに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ナノオーダーの物質は、比表面積が大きく、通常の性質とは異なる特性を示すことが知られている。特に金属の場合は、微細な粒子の表面での反応性が高くなり、融点が下がるといった現象が認められる。こうした特性は、小型かつ廉価で製品を供給できる可能性があるため、特に電子機器の分野で注目されるようになっている。
【0003】
電子機器の小型化は、主として半導体の集積度の向上に依存する。また、プリント基板上で半導体同士を結線するパターンの高集積化も電子機器の小型化には必要である。このような高集積化されたパターンは線幅が狭く、かつ電気伝導度が高いという特性が望まれる。
【0004】
こうした要求特性に応えるものとしては、めっきや真空中での蒸着、スパッタといった積層処理がある。しかし、上記の方法を行おうとするときには、装置が大がかりになることが多く、より微細な描画パターンを描くには不適である。そこで装置がコンパクトでかつ、生産性が高いような金属粒子の描画パターンが形成できるようになれば、大変有用となる。
【0005】
こうした要求を満たすような描画パターンを形成する方法としては、インクジェットやスクリーン印刷といった印刷技術による方法が挙げられる。例えば、印刷技術で基板上での描画パターンを形成するには、微小な金属粉をバインダーに分散させた導電性ペーストを用いる。この場合の問題点は、パターン形成の精細度が低い点と、出来上がったパターンの電気伝導度が、元の金属の特性と比較して低い点にある。
【0006】
従来導電性ペーストは、数十から数百ミクロンの金属粉を有機樹脂バインダーに分散していたので、金属粒子の大きさ以下のパターン形成は困難であった。また、印刷したパターンは、金属粉同士が点で接触する構造となるため、電気伝導度は金属の連続膜の場合と比較して大きく悪化する。
【0007】
このような印刷による導電性膜の有する問題を解決するために、上記ナノオーダーの金属粒子を用いることが考えられている。こうした微小な金属粒子を用いれば、従来より高密度で高精度な描画パターンの形成を行うことも可能になるため、単位体積中での粒子数が増加することで、より連続膜に近づき電気伝導度の向上も期待できる。さらに、粒子そのものの活性が高くなることにより、融点が下がり、従来よりも、より低い焼結温度で、実質的に連続膜を得ることが可能になる。
【0008】
このような観点から、ナノオーダーの金属粒子作製方法も種々検討されてきており、すでにいくつかの報告がなされている。
【0009】
ナノオーダーの金属粒子を作製する方法としては、主として気相法と液相法が知られている。例えば、特許文献1では、真空中で気相法により、銀の超微粒子を作製し、有機溶媒と混合することで、該超微粒子の表面が該有機溶媒で覆われて個々に独立して分散した銀超微粒子独立分散液が得られることが開示されている。
【0010】
特許文献2では液相法によって得られる超微粒子が開示されている。この技術では、水相中の金属イオンを還元生成した金属微粒子が、水相からより安定な有機溶媒相に相間移動することを利用する。つまり、予め有機溶媒中に、保護コロイドを少量存在させておくことにより、水相から有機溶媒層へ相間移動し金属微粒子を安定なコロイド粒子とすることで、有機溶媒相中で金属粒子を高濃度で得ることができると開示されている。
【0011】
特許文献3も液相中での作製法を開示するものである。ここでは、溶媒中で銀の塩を還元することにより銀ナノ粒子を製造するに際して、通常用いられる硝酸銀ではなく、銀の塩として不溶性の塩であるハロゲン化銀(特に塩化銀または臭化銀)を用い、溶媒に溶解し銀に配位性を有する化合物から成る保護剤の存在下に還元を行う方法が開示されている。この方法では、保護剤によって被覆・保護され溶媒中に分散された銀ナノ粒子の単分散液が得られるとされる。なお、溶媒としては極性溶媒を用い、保護剤として好ましい例としては、チオコリンブロミドのようなチオールが好ましいと開示されている。
【0012】
特許文献4も液相法を用いて、極性溶媒中に単分散したナノオーダーの銀微粒子を得る方法を開示している。ここでは、銀の微粒子を得るための出発材料は硝酸銀を用い、保護剤はヘプタン酸を用いることが開示されている。
【特許文献1】特開2001−35255号公報
【特許文献2】特開平11−319538号公報
【特許文献3】特開2003−253311号公報
【特許文献4】US2007/0144305 A1
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
従来導電性ペーストは、印刷によってパターン形成後、金属微粒子を固定化するためにバインダーとして樹脂を含有する。樹脂を含有させるため、溶媒は有機溶媒が使われる。しかし、有機溶媒は、作業時に換気が必要である事、焼結時に蒸発した溶剤を燃焼させる処理が必要である事、また洗浄で生じる廃液を直接環境に廃棄できない事といった、作業性、安全性、対環境性に課題が残る。
【0014】
また、金属微粒子の製造方法としては、産業上の量産性の観点では液相法で行うのが妥当である。また液相中での合成の中でも、とりわけ水を初めとした極性溶媒中で合成できる、また、該合成後の金属微粒子を容易に回収できて乾燥状態でも安定して存在すること、さらには得られた乾燥状態の粒子が極性溶媒に容易に再分散が可能であることが好ましい。特許文献3若しくは4は、このような金属微粒子を得ることができるものであるが、製造の条件などで得られる微粒子の粒度には不安定な部分も多い。また、特許文献4に記載の合成によって得られた乾燥状態の金属微粒子は、極性溶媒への再分散性の点で更に改善が必要なものであった。
【0015】
本発明は、このような従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、粒度が均一で微細な描画パターンを形成でき、環境負荷が小さい微小銀粒子の製造方法、微小銀粒子含有組成物およびその製造方法、並びに微小銀粒子を有するペーストを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明者は、かかる目的を達成するため鋭意研究を重ねた結果、液相中で銀粒子の合成を行うこと、さらに得られる粒子を極性溶媒中に分散させることで安定して存在しうることにより、上記目的が達成できることを見出し、本発明を解決するに至った。
【0017】
即ち、本発明の微小銀粒子含有組成物は、炭素数6以下の直鎖脂肪酸と結合した銀粒子を含むことを特徴とする。
【0018】
また、本発明の微小銀粒子の製造方法は、水とアンモニア水とヘキサン酸とヒドラジン水和水溶液とを含む還元液を調整する工程と、硝酸銀水溶液を前記還元液に添加し反応させる工程と、前記反応工程の生成物を濾過した後、水で洗浄する工程を含むこと、本発明の微小銀粒子含有組成物の製造方法は、前記微小銀粒子の製造方法に、更に極性溶媒に微小銀粒子を分散させる工程を含むことを特徴とする。
【0019】
更に、本発明のペーストは、微小銀粒子含有組成物に含まれる微小銀粒子を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明は、保護剤として炭素数6以下の直鎖脂肪酸を用いることで、水を含む極性溶媒中でも安定して存在しうる微小銀粒子の製造方法、微小銀粒子含有組成物およびその製造方法、並びに微小銀粒子を有するペーストを得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
本発明の説明において、凝集は複数の粒子がそれぞれ別個の粒子として存在しつつも集合しており、適度な分散処理によって再度それぞれの粒子が解離し得る状態のことを意味し、凝結とは複数の粒子が互いに融着し合い1個の粗大粒子を形成しており分散処理を施しても再度解離することはできない状態のことを意味する。
【0022】
本発明の微小銀粒子含有組成物は、炭素数6以下の直鎖脂肪酸と結合した銀粒子を含んでなる。このような構成により、乾燥時においては凝集した状態で安定して存在し、また該乾燥状態の微小銀粒子の極性溶媒への分散時には前記凝集体が別個の粒子へと解離し、安定して存在する。
【0023】
ここで、炭素数6以下の直鎖脂肪酸は、保護剤として機能する。この保護剤は、銀粒子に結合することで、言い換えれば、銀粒子の表面に付着し粒子同士の結合を阻害することで、安定した微小銀粒子を得る効果がある。本発明では、比較的短い直鎖の脂肪酸が好適である。具体的には、ヘキサン酸を用いることが好適である。
【0024】
また、本発明の微小銀粒子含有組成物においては、極性溶媒を含有し、該極性溶媒に微小銀粒子を分散させてもよい。かかる極性溶媒としては、水又は極性基を有する有機溶媒が使用できる。具体的には、水、アルコール、ポリオール、グリコールエーテル、1−メチルピロリジノン、ピリジン、ターピネオール、ブチルカルビトール、ブチルカルビトールアセテート、テキサノール、フェノキシプロパノールなどが例示できる。
【0025】
次に、本発明の微小銀粒子の製造方法について説明する。微小銀粒子の製造方法では、代表的には、原料液及び還元液を調整する調液工程、温度を上昇させる昇温工程、原料液を還元液に添加し反応を進行させる反応工程、液中の金属粒子(特に銀粒子)を成長させる熟成工程、濾過・水洗を繰り返し余分な有機物質を除去する濾過・洗浄工程、及び乾燥により液中の水分を除去する乾燥工程が行われる。
【0026】
ここで前記濾過工程について更に説明すると、従来の多くの銀微粒子反応は、反応後に反応液中で1次粒子に完全に分散するため、反応液中に浮遊し、容易に回収できないものが多かった。このような銀微粒子は通常遠心分離によって液中に沈降させ回収する。しかし、本発明の製造法によれば、ナノオーダーの1次微粒子が緩やかな凝集体を形成し、反応液中に自然に沈降するため、容易に回収できる。すなわち、遠心分離といった処理をすることなく、例えば濾布などを用いた濾過で回収することができる。これは、銀微粒子の量産性、低コスト化に飛躍的に役立つ。
【0027】
本発明では、還元液の調液工程、銀反応工程、濾過・洗浄工程を以下のように行う。具体的には、前記還元液調液工程で用いる還元液には、水とアンモニア水とヘキサン酸とヒドラジン水和水溶液とを含める。前記銀反応工程では、この還元液に硝酸銀水溶液を添加して反応させる。前記濾過・洗浄工程では、反応工程で得られた生成物を濾過回収した後、水で洗浄する。なお、還元液に含めるアンモニア水は、水中に酸を溶解させるための安定化剤として添加するものである。
【0028】
前記銀反応工程では、反応槽中を40℃から80℃の範囲に昇温して反応させるのがよい。このとき、反応槽に添加する硝酸銀水溶液は、反応槽と同じ温度にしておくとより好ましい。なお、反応槽中が前記温度範囲から外れると、40℃未満では、金属の過飽和度が上昇し、核発生が促進されるため、微粒が多くなりやすい。80℃超では、核発生は抑制されるが、粒子成長、粒子凝結が促進されやすい。
【0029】
また、前記銀反応工程では、溶液内の均一反応を実現する観点から、添加すべき硝酸銀水溶液を一挙に添加することが好ましい。一挙に添加しないと溶液内が不均一系になり、核発生と粒子凝集が同時並行的に起こるようになり、結果的に粒度分布の大きな、不均一な銀粒子が得られることがある。したがって、ここでいう「一挙に添加する」とは、還元剤や保護剤の濃度若しくはpH、温度といった反応要因が、硝酸銀水溶液の添加時期によって実質的に変化しない態様であれば、特に限定されるものではない。
【0030】
ここで、前記ヒドラジン水和物は、還元剤として金属を還元可能なものであればよい。ヒドラジン水和物以外の還元剤、具体的には、ヒドラジン、水素化ホウ素アルカリ塩(NaBHなど)、リチウムアルミニウムハイドライド(LiAlH)、アスコルビン酸、第一級アミン、第二級アミン、第三級アミンなどを併用することもできる。
【0031】
なお、本発明にかかる微小銀粒子の比表面積はBET法による測定値にして、5m/g〜20m/gが好ましい。粒子の表面積は分散液の粘度に大きく影響する。そのため、微小銀粒子の表面積を制御することによって、分散液の粘度を制御することができる。表面積の制御方法については、還元剤の量や保護剤の量、反応温度などを適宜調整することによって可能である。ただし、BETが5m/g未満である場合、微小粒子の存在割合が減少し、又は凝結による粗大粒子が過度に増加している可能性があり、粒径等を維持したままBETを制御するのは困難である。このような粒子を用いると、印刷法によってはノズルの目詰まりや微細配線描写に適さないなどの不具合を生じる可能性がある。また、該粗大粒子が過度に増加することにより、後述する濾紙通液評価時に濾紙上に捕集される割合が増加する可能性が考えられる。
【0032】
また、BETの上限を20m/gとしているが、実際に作製することができる現段階での製造限界という意味で設定している。本発明において、より好ましいBET範囲は大スケール反応でも安定して製造できて量産に好適という意味合いで7〜20m/gであり、更に好ましくは10〜20m/gである。なお、BET法による比表面積の測定は25℃、45cc/minのN雰囲気下で前処理を行った後、ユアサアイオニクス製の4S−U2若しくはこの製品の同等品を用いて行った。
【0033】
なお、TAP密度は0.5〜5.0g/cmが好ましい。0.5g/cmより低い場合、膜中の粒子のつまりが不十分で、焼結させた際の膜密度が低くなり抵抗値が悪化する可能性があるからである。より好ましくは1.0〜4.5g/cmであり、更に好ましくは1.5〜4.0g/cmである。なお、TAP密度の測定は、日本特許の特開2007−263860に記載されている測定法を用いて行った。
【0034】
次に銀含量について説明する。本発明の微小銀粒子含有組成物は、電子材料分野などで配線形成などの用途にも使用される場合がある。配線形成用途などの場合、本願微小銀粒子含有組成物を各種印刷法によって基板上に印刷した後、焼成して銀配線を形成することが行われる。このとき、銀を被覆している保護剤量が多い場合には該焼成工程で蒸散する保護剤量が多くなるため、該銀配線の焼成前後における体積収縮率が大きくなり基板作製上好ましくない。配線の剥がれ等の不良が発生するからである。
【0035】
このため、微小銀粒子含有組成物の銀含量は出来る限り100質量%に近いことが望まれ、好ましくは95質量%以上である。95質量%未満である場合、銀粒子を被覆する保護剤量が多すぎることにより、体積収縮率が大きくなってしまうことが考えられる。本発明におけるより好ましい範囲は96質量%以上であり、更に好ましくは96.5質量%以上である。
【0036】
なお、銀含量の測定は、灰分測定用灰皿(角型50×30×10)に乾燥状態の微小銀粒子含有組成物を、厚み1〜2mmとなるように入れ、該灰分測定用灰皿をマッフル炉(ヤマト科学株式会社製FO310)にて焼成し、該焼成前後の質量比から算出した。また、該焼成の条件は大気中で昇温速度10℃/minで25℃から700℃まで昇温し、その後自然冷却して室温まで冷却するという条件である。
【0037】
また、本発明における微小銀粒子の結晶子径としては、1〜30nmの範囲内である。結晶子径が1nm未満である場合、焼結が進むため実質的に存在できない可能性があり、30nmを超える場合は焼成時の焼結性が劣る可能性が考えられる。好ましい範囲は5〜20nmであり、より好ましくは9〜15nmである。なお、本発明における結晶子径の測定方法としては、株式会社リガク製RINT2000にて、Co線源(40kV/30mA)を用いて(111)面を40〜60°/2θの範囲を6回積算で測定した。該測定で得られた半価幅βを次の(1)式で表されるScherrerの式を用いて結晶子径を算出した。
Dhkl=(K・λ)/(β・cosθ)・・・(1)
ここで、各変数は以下の通りである。
D:結晶子径(nm)
λ:測定X線波長(nm)
β:結晶子による回折幅の広がり
θ:回折角のブラッグ角
K:Scherrer定数
なお、上の(1)式中における測定X線波長λは1.79、Scherrer定数Kには0.94を代入した。
【0038】
次に、本発明の微小銀粒子を含む組成物の製造方法では、上述の還元液の調液工程、銀反応工程、濾過・洗浄工程、乾燥工程を行った後に、極性溶媒中に当該微小銀粒子含有組成物を分散させる工程を行うことを特徴とする。ここで分散とは、極性溶媒中に微小粒子が安定に存在する状態をいい、静置した結果、微粒子の一部が沈殿してもよい。
【0039】
このような工程により、銀粒子は、乾燥時には凝集して安定に存在するが、溶媒へ再分散する際には適宜再分散処理を施すことで水を含む極性溶媒中でも安定して存在するようになる。
【0040】
ここで、凝集状態での粒子径を意味する凝集径について説明する。本発明の説明においては、凝集径としてコールター平均径を用いている。本発明の微小銀粒子含有組成物は、前述のように反応時に凝集するため濾過法によって固液分離することができる。そのため、ろ過・洗浄工程、乾燥工程後の乾燥状態では凝集した状態で存在している。また、該乾燥状態の微小粒子を分散液やペーストとして使用する際には溶媒に再分散することができる。
【0041】
この現象を定量化するため、溶媒に再分散させた後の溶媒中での分散粒径を湿式レーザー回折であるコールターで測定した。つまり、コールター平均径は該乾燥状態の微小粒子を溶媒に再分散させた場合の溶媒中での分散粒径を表すものである。
【0042】
コールター平均径の測定法を以下に述べる。純水100質量部に対してSDBS(ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム)20質量部を混合して完全に溶解させることで、SDBS混合水溶液とする。その後、前記純水100質量部に対して乾燥状態の微小粒子を0.9質量部混合したものを1時間超音波処理して測定用試料を作製した。該超音波処理はシャープ株式会社製UT−205Sを用いて、出力100%で行った。該測定用試料をベックマン・コールター株式会社製LS−230を用いて測定した。
【0043】
本発明のナノ粒子の場合、前記コールター平均径の値が5μm以下であることが望ましい。コールター平均径が5μmを超える場合、再分散性が悪いことを意味するため好ましくない。好ましくは3μm以下であり、より好ましくは2μm以下である。本発明においては、通常0.1〜2μm程度の値となるが、分散処理時間を増加させるとより小さな値となる。そのため、本発明のナノ粉は、再分散処理条件によって分散粒径を制御することが可能である。実際にペースト化する際には本発明におけるコールター平均径測定の再分散処理よりもより強い分散処理が行われることが多く、その場合にはより小さな値になるものと考えられる。
【0044】
また、乾燥した微小粒子含有組成物の溶媒への再分散性を量る指標の一つとして、分散液を濾過した際に捕集される粒子質量を測定する方法が一般的に用いられている。これを通液試験と呼ぶ。本発明では該コールター平均径測定試料を保留粒径1μmの濾紙を用いて濾過した場合に、(濾紙上に捕集された粒子質量/濾過前の分散液中の粒子質量)で表される濾紙に捕集される割合によっても再分散性を評価した。本発明においては、該濾紙に捕集される割合が10質量%未満であることが好ましい。さらに好ましくは5質量%未満であり、より好ましくは1質量%未満である。
【0045】
この値が10質量%以上である場合、再分散性が悪いことを意味する。なお、本発明においては、濾紙には保留粒子径1μmのADVANTEC社製NO.5C濾紙(Φ90mm)を用い、濾過はビフネルロートを用いた吸引濾過によって行った。また、通液試験で用いる液量が多過ぎる場合、濾紙の目詰まりによる捕集が起こることが予測されるため、用いる液量としては、150cm以下が好ましい。
【0046】
次に保存安定性について述べる。銀微粒子は通常溶媒に分散し、分散液の状態で使用される。従って、分散液状態でのポットライフは実用上重要である。本発明においては、分散液のポットライフ評価指標として、保管前後の該分散液の粘度変化を用いる。本発明の分散液作製の場合、乾燥状態では凝集して存在しているため、再分散時にある程度の分散処理が必要となる。
【0047】
この際、分散処理によって凝集粒子が分離していくにしたがって粘度が増加していく。この現象は凝集粒子が分離して溶媒と接する面積が大きくなるため、その分フリーな溶媒量が少なくなることに起因すると考えられる。そのため、保管によって分散性が劣化した場合、粒子が再度凝集することによってフリーな溶媒量が増加するため該分散液の粘度は減少することとなる。
【0048】
以上の理由からポットライフの評価指標として分散液粘度の変化を用いることができる。本発明の場合、保管前後において粘度変化がない場合は保管による分散性の劣化はないと解釈することができ、また、保管前後で粘度減少が起こっていれば分散性が劣化したと解釈することができる。
【0049】
以上説明した本発明の微小銀粒子の製造方法及びこれを含む組成物の製造方法では、反応槽として、攪拌の均一性が得られる形状および構造のものを使用するのがよい。これは、微小銀粒子は還元反応によって得られるが、得ようとしている粒子のサイズが非常に小さいため、局所的な濃度やpHの分布が粒度分布に大きく影響するからである。
【0050】
続いて、本発明の微小銀粒子の製造方法の一実施形態について、反応の流れに沿って各製造工程を説明する。
<調液工程>
本工程では、液を二種用意する。一方は還元性を有する物質を溶解させた液I(後には還元液と称する)であり、もう一方は原料である金属塩(特に銀塩)が溶解された液II(後には原料液と称する)である。還元液は、上述の還元剤を純水に溶解させるとともに、保護剤および安定化剤のアンモニア水をそれぞれ添加し、均一になるまで混合することによって得る。また、原料液は金属塩の結晶を純水に溶解させることによって得られる。
<昇温工程>
液をおのおの準備した後に、ウオーターバスもしくはヒーターを用いて液を昇温し、反応温度まで上昇させる。このとき、還元液と反応液は同様に加熱しておけば、反応時において反応の不均一が防止される効果があり、粒子の均一性を保つことができるので好ましい。このときに昇温させる目的の温度(後の反応温度)は、40〜80℃の範囲である。
<銀反応工程>
液がともに目的温度まで上昇すれば、還元液に対して原料液を添加する。添加は突沸に注意した上で、一度に行うことが反応の均一性の面から好ましい。
<熟成工程>
反応液を混合した後、10〜30分程度攪拌を続け、粒子の成長を完結させる。このときの反応は、サンプリングした反応液に対し、ヒドラジンを滴下することにより、未還元銀の反応が生じるかどうか確認することによって、終点を判断する。
<濾過・洗浄工程>
得られたスラリーは濾過法によって固液分離することができる。濾過装置としては、従来から存在するものを適宜使用することが可能であり、数L(リットル)程度の小スケール反応時であればビフネルロートに濾紙を敷いたものを使用することができる。この際に使用できる濾紙の種類は特に限定されるものではなく、保留粒子径が数ミクロンの濾紙でも問題無く使用することができる。
【0051】
また、数十L以上の大スケール反応時であればフィルタープレスなどを使用することができる。洗浄工程においては、該濾過工程で得られたケーキに対して純水を加え、再び該純水を濾過することによって行う。
【0052】
また、得られたスラリーは遠心分離機を用いて粒子を強制的に沈降させ固液分離を行なうこともできる。この場合、遠心分離は3000rpmで30分運動させることにより行なう。固液分離後上澄みを廃棄し、純水を加え、超音波分散機で10分間分散した。遠心分離、上澄み廃棄、純水添加、超音波分散という工程を3回行うことで、粒子に付着している余分な有機物質の除去を行い洗浄工程とする。
〈乾燥工程〉
得られた金属塊(銀塊)を、60℃12時間の乾燥工程を経ることで、乾燥した金属粒子塊が得られる。
【実施例】
【0053】
以下実施例について詳細に説明する。
(実施例1)
反応槽には1Lビーカーを使用した。また攪拌のために、羽根を備えた攪拌棒を反応槽の中心に設置した。反応槽には温度をモニターするための温度計を設置した。また溶液に下部より窒素を供給できるようにノズルを配設した。
【0054】
まず、反応槽に水273gを入れ、残存酸素を除くため反応槽下部から窒素を500mL/分の流量で600秒間流した。その後、反応槽上部から500mL/分の流量で供給し、反応槽中を窒素雰囲気とした。
【0055】
攪拌棒の回転速度が280から320rpmになるように調整した。そして反応槽内の溶液温度が60℃になるように温度調整を行なった。
【0056】
アンモニア水(アンモニアとして30質量%含有する)7.5gを反応槽に投入した後、液を均一にするために1分間攪拌した。
【0057】
次に保護剤としてヘキサン酸(和光純薬工業株式会社製特級試薬)7.5g(銀に対して2.01当量にあたる)を添加し、保護剤を溶解するため10分間攪拌した。なお、保護剤は本発明の実施例と比較例で異なる材料を用いた。その後、還元剤として50質量%のヒドラジン水和物(大塚化学株式会社製)水溶液を20.9g添加した。これを還元液とした。尚、本発明におけるヘキサン酸の銀に対する当量とはモル比のことを意味し、2.01当量とはヘキサン酸/銀のモル比が2.01であることを示す。
【0058】
別の容器に硝酸銀結晶(和光純薬工業株式会社製特級試薬)36gを水175gに溶解した硝酸銀水溶液を用意した。これを原料液とした。なお、硝酸銀水溶液は反応槽内の溶液と同じ60℃に温度調整を行なった。
【0059】
その後、原料液を還元液に一挙添加により加え、還元反応を行った。攪拌は連続して行い、その状態のまま10分間熟成させた。その後、攪拌を止め、濾過・洗浄工程、乾燥工程を経て、微小銀粒子塊を得た。
【0060】
洗浄工程の終了段階で得られた粒子をTEM観察したところ、図4に示すようなヘキサン酸が結合した粒子が得られ、平均粒子径14nmで、比較的粒径の整った微小銀粒子が得られた。なお、TEMによる該1次粒子平均径は、174000倍の視野中に存在する300個以上の粒子の円相当径を測定し、それらの個数平均径を算出することにより行った。
【0061】
また、乾燥品をSEMにより確認したところ図1に示す様な塊状に粒子が得られたが、高倍率で観測すると、極めて小さい微量粒子集合体からなっていることが観察された。また、純水100g、SDBS20g及び乾燥状態の銀微小粒子0.9gを混合し、1時間超音波処理して分散液を作製した。その後、該分散液のコールター径測定及び再分散性の評価として濾紙への通液試験を行った。
(実施例2)
反応温度を50℃とした以外は同じ条件で実施例1の反応を行った。この時のBETは7.1m/gであった。
(比較例1)
ヘキサン酸を、炭素数が7であるヘプタン酸に変更した以外は実施例1と同様にして、銀粒子を合成した。また、実施例1同様の条件で分散液を作製し、コールター平均径及び濾紙への通液試験を行った。
(比較例2)
アンモニア水(アンモニアとして30質量%含有する)7.5gを反応槽に投入した後、液を均一にするために1分間攪拌した。
【0062】
次に保護剤としてヘプタン酸(和光純薬工業株式会社製特級試薬)7.5g(銀に対して2.01当量にあたる)を添加し、保護剤を溶解するため10分間攪拌した。その後、還元剤として50質量%のヒドラジン水和物水溶液を20.9g添加した。これを還元液とした。
【0063】
別の容器に硝酸銀結晶(和光純薬工業株式会社製特級試薬)36gを水175gに溶解した硝酸銀水溶液を用意した。これを原料液とした。なお、硝酸銀水溶液は反応槽内の溶液と同じ60℃に温度調整を行なった。
【0064】
その後、原料液を還元液に5mL/分の添加速度(添加終了までは35分を要した)でチューブポンプを用いて徐々に添加し、還元反応を行った。攪拌は連続して行い、その状態のまま10分間熟成させた。その後、攪拌を止め、濾過・洗浄工程、乾燥工程を経て、微小銀粒子塊を得た。
(比較例3)
実施例1において、ヘプタン酸を添加しない以外は同様にして銀粒子を作製した。
【0065】
次に、本発明の微小銀粒子含有組成物のポットライフを確認するため、下記実施例20〜23を実施した。
【0066】
(実施例20)
本発明の銀微粒子に銀濃度が60質量%になるようにターピネオールを加え分散しペーストを得た。分散は手攪拌を行った後、株式会社シンキー製あわとり練太郎AR−250のミキシングモードで1分間分散処理を行いその後3本ロールを用いて分散処理を行った。
【0067】
このペーストを25℃のインキュベーターに入れ、当日、7日後、13日後保存した後、再分散を行ってレオメーターで粘度を測定した。なお、再分散は前記あわとり練太郎AR−250のミキシングモードで1分間分散処理した後、手攪拌を行い、さらにまたあわとり練太郎AR−250のミキシングモードで1分間行った。
【0068】
(実施例21)
溶媒を2フェノキシ−1プロパノール(以下「ダウノール」と呼ぶ)にした以外は実施例20と同じにした。
【0069】
(実施例22)
溶媒をテキサノールにした以外は実施例20と同じにした。
【0070】
(実施例23)
溶媒をブチルカルビトールアセテート(以下「BCA」と呼ぶ)にした以外は実施例20と同じにした。
【0071】
実施例30〜34はポットライフへの分散剤の影響を調べたものである。
【0072】
(実施例30)
分散剤は銀に対して5質量%のDisperBYK2001(ビックケミー・ジャパン株式会社製)を用いた。以外は実施例20と同じにした。
【0073】
(実施例31)
溶媒をダウノールにした以外は実施例30と同じにした。
【0074】
(実施例32)
溶媒をテキサノールにした以外は実施例30と同じにした。
【0075】
(実施例33)
溶媒をBCAにした以外は実施例30と同じにした。
【0076】
(実施例34)
溶媒をγ―プチロラクトンにした以外は実施例30と同じにした。
【0077】
実験条件について、表1に示した。また、実施例1、及び比較例1で測定したコールター径と通液試験の結果について表2に示した。さらに、実施例20〜34の結果を表3と図8および図9に示した。
【0078】
【表1】

【0079】
各サンプルの走査型電子顕微鏡(FE−SEM)により得られた写真を図1から図3に示し、透過型電子顕微鏡(TEM)により得られた写真を図4から7に示す。図1(a)は倍率が10,000倍、図1(b)は100,000倍である。写真中では、両側矢印が(a)では3.0μm、(b)では300nmである。これは図1から図3を通じて同じである。
【0080】
実施例1(図1)では、10,000倍のSEM観察で、粒度の揃った微小粒子が集まっているのが観察される。100,000倍の観察でも粒子は非常に均一に、しかもそれぞれ独立した状態で作製されているのに対して、比較例2(図2)の粒子は粒子同士の凝集や焼結が多く生じており、粒子径の均一性が得られていないことがわかる。また、保護剤を添加しない比較例3(図3)の粒子は、粒子そのものが焼結しているようにみられ、確認される一次粒子も大きくかつ不定型なものとなっていることがわかる。
【0081】
図4は実施例1により得られた粒子のTEM写真である。図4(a)は30,000倍、(b)は174,000倍である。写真中では、(a)に500nm、(b)に100nmの基準線を入れた。30,000倍では、焼結によって生じる粗大な粒子は存在していないことがわかる。一方、174,000倍に拡大したものでは、30,000倍での確認時には、粒子が塊状になっているように見えたものは、おのおの数個の粒子の集合体より形成されており、それぞれは独立したものであり分離していた。また、粒子径の比較的そろった球状を呈したものが得られていることがわかる。
【0082】
一方、比較例1(図5)では、実施例と同様に粒子同士は凝集しているに過ぎず、単独の粒子同士は独立していることが確認された。しかし、個々の粒子を確認すると粒子径は不均一であり、かつ粒子の形状も不揃いなものとなっていることがわかる。比較例2(図6)でも同様のことがいえ、粒子径のばらつきはより顕著であり、数ナノメートル〜数十ナノメートルまでの幅広い範囲で粒子が存在していることがわかる。比較例3(図7)に至っては、焼結による粒子の粗大化ならびに不定形化が一層進んでおり、保護剤の存在は粒子の独立性を担保するためには必須であることがわかる。
【0083】
以上の結果より、ヘプタン酸であるか、ヘキサン酸であるかを問わず、保護剤が存在しなければ、100nm以下の微粒子は作製できない。すなわち、保護剤の存在なくして、反応槽中で核となる粒子が形成された後の、さらなる還元反応による銀の成長および粒子間の焼結を止めることができず、粒子の秩序のない成長および粗大化を惹起してしまうことを示唆する。言い換えると、保護剤を存在させた状態で銀の還元反応を行なわせれば、保護剤が反応物粒子表面に吸着もしくは結合して存在するようになると言える。
【0084】
次に、実施例1と比較例2との比較より、比較例2の方が粒径の小さな粒子の数が多い。この点は、174,000倍のTEMの写真からわかるだけでなく、SEMの10,000倍の写真で連続的な不定形のように見える点からも高い蓋然性で推測できる。つまりSEMの10,000倍では、数nmの銀粒子は分離して観測することができず、連続物のように見えたと説明できる。
【0085】
保護剤は、反応槽に投入された原料液の銀粒子表面における還元反応による銀の成長を阻害する効果があると考えられるので、ヘキサン酸とヘプタン酸の違いは、粒子形状と粒度分布が均斉となる粒子ができるかどうかを決める主要因であると考えられる。すなわち、ヘプタン酸は粒子形状が均斉な粒子を形成させるには不十分であることを示し、ヘプタン酸の添加を連続添加とした場合に大きな粒子も生成しているのは、反応初期の段階で、保護剤であるヘプタン酸が使用されてしまい、硝酸銀水溶液の投入の終わり頃には反応を保護するに十分なヘプタン酸が存在していなかったと考えられる。したがって、粒子径を比較的均斉なものとするためには、液の添加は一挙に行うことが好ましいことがわかる。
【0086】
従って、保護剤としてヘキサン酸を用いるだけでなく、硝酸銀水溶液の投入を一挙に添加することも、数十nmレベルの均一な微小銀粒子を得るためには、いくらかの寄与があるものと考えられる。
【0087】
次に表2を参照する。実施例1はヘキサン酸を用いた反応によって作製した銀微小粒子及び銀微小粒子含有組成物であるが、コールター平均径が0.201μmと小さく分散液濾過による濾紙上に捕集された割合も非常に少ない。乾燥状態では凝集して存在しているが溶媒に再分散可能なものであることが分かる。
【0088】
【表2】

【0089】
それに対して比較例1のヘプタン酸を用いた反応によって作製した銀微小粒子はコールター平均径が非常に大きくなっており、分散液濾過時の捕集率も66.6質量%と非常に高くなっている。これより、ヘキサン酸を保護剤に用いた場合、乾燥状態粒子の溶媒への再分散性が顕著に改善されることが分かった。
【0090】
次に表3及び図8を参照する。なお、表3中に記載されている粘度は、レオストレスRS600(HAAKE社)を用いて25℃でせん断速度dγ/dt(1/s)が3.038のときに測定した値である。銀微粒子の場合は粒子が分散していると、分散程度に従って、溶媒と接する表面積が大きいためフリーな溶媒が少なくなり、粘度が高くなる。すなわち、粘度の高さが分散性の度合いの指標となる。
【0091】
【表3】

【0092】
表3の実施例20乃至23の粘度をグラフにしたものを図8に示す。横軸は保存日数であり、縦軸は粘度を表わす。上記のように粘度が高い方が分散性が高いと考えられる。すべての実施例で経時変化によって粘度が低下する傾向にあり、分散性は劣化する方向にあった。しかし、ダウノール、ターピネオールは元々の粘度が高く、分散性は高いと判断できる。
【0093】
次にペースト中の分散剤の影響について述べる。ペーストのポットライフは実用上、重要な項目となる。そこで本発明の微小銀微粒子含有組成物に溶媒と分散剤を添加した実施例30乃至34を作製した。表3の実施例30乃至34の粘度の結果を図9に示す。分散剤の影響で、初期粘度からすべての実施例で分散剤がない場合の実施例より粘度が高かった。これよりペースト中に分散剤を入れる効果が分かった。また、実施例30乃至34の全てで7日後の粘度が一定値となり、ペーストに分散剤を含有させることで、ポットライフが長くなることが分かった。
【産業上の利用可能性】
【0094】
本発明により、溶媒への再分散性に優れた微小銀粒子含有組成物、及びその微小銀粒子含有組成物を用いた分散液を得ることができるため、該微小銀粒子含有組成物又は分散液を用いる各用途に好適に利用することができる。例えば、FPD・太陽電池・有機EL用の電極形成、RFIDの配線形成、また微細なトレンチ、ビアホールコンタクトホールなどの埋め込みなどの配線、車や船の塗装用色材、医療、診断、バイオテクノロジー分野での生化学物質を吸着させるキャリア、抗菌作用を利用した抗菌塗料、触媒、導電性接着剤、樹脂との混合により導電性ペーストやそれを用いたフレキシブルプリント回路、高屈曲性シールド、コンデンサ等といった各用途に利用できる。発明により、極性溶媒中に微小銀粒子を均一に単分散した組成物を得ることができるので、粒径がそろっていることにより効果が得られると考えられる用途(例えば反射膜)に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0095】
【図1】本発明の実施例のSEM写真を示す図である。
【図2】比較例2のSEM写真を示す図である。
【図3】保護剤がない場合の比較例のSEM写真を示す図である。
【図4】本発明の実施例のTEM写真を示す図である。
【図5】保護剤をヘプタン酸にした比較例のTEM写真を示す図である。
【図6】比較例2のTEM写真を示す図である。
【図7】保護剤がない場合の比較例のTEM写真を示す図である。
【図8】溶媒と分散性の関係を示すグラフである。
【図9】ポットライフと粘度の関係を示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭素数6以下の直鎖脂肪酸と結合した銀粒子を含む微小銀粒子含有組成物。
【請求項2】
前記直鎖脂肪酸がヘキサン酸である請求項1に記載の微小銀粒子含有組成物。
【請求項3】
前記組成物が、極性溶媒に分散している請求項1又は2に記載の微小銀粒子含有組成物。
【請求項4】
前記極性溶媒が、水、ターピネオールのいずれか一方又は双方である請求項3に記載の微小銀粒子含有組成物。
【請求項5】
水とアンモニア水とヘキサン酸とヒドラジン水和水溶液とを含む還元液を調整する調液工程と、
硝酸銀水溶液を前記還元液に添加し反応させる銀反応工程と、
前記銀反応工程の生成物を回収し水で洗浄するろ過・洗浄工程とを含む微小銀粒子の製造方法。
【請求項6】
前記銀反応工程は、40℃から80℃の間に昇温させた還元液に前記硝酸銀水溶液を添加する工程である請求項5に記載の微小銀粒子の製造方法。
【請求項7】
前記銀反応工程は、添加すべき硝酸銀水溶液を一挙に添加する工程である請求項5又は6に記載の微小銀粒子の製造方法。
【請求項8】
水とアンモニア水とヘキサン酸とヒドラジン水和水溶液とを含む還元液を調整する調液工程と、
硝酸銀水溶液を前記還元液に添加し反応させる銀反応工程と、
前記銀反応工程の生成物を回収して水で洗浄し微小銀粒子を得るろ過・洗浄工程と、
極性溶媒に前記微小銀粒子を分散させる工程とを含む微小銀粒子含有組成物の製造方法。
【請求項9】
前記銀反応工程は、40℃から80℃の間に昇温させた還元液に前記硝酸銀水溶液を添加する工程である請求項8に記載された微小銀粒子含有組成物の製造方法。
【請求項10】
前記銀反応工程は、添加すべき硝酸銀水溶液を一挙に添加する工程である請求項8又は9に記載の微小銀粒子含有組成物の製造方法。
【請求項11】
請求項1〜3のいずれか1つの項に記載の微小銀粒子含有組成物に含まれる微小銀粒子を有するペースト。
【請求項12】
TEM観察から測定した1次粒子平均径が1〜100nmの範囲内にあることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つの項に記載の微小銀粒子含有組成物。
【請求項13】
純水100質量部に対してSDBS20質量部及び乾燥状態の前記微小銀粒子0.9質量部からなる分散液を1時間超音波処理した場合のコールター径が、5μm未満であることを特徴とする請求項12に記載の微小銀粒子含有組成物。
【請求項14】
保留粒径1μmの濾紙に通液させたときに、(捕集された粒子質量/分散液に含まれる粒子質量)で表される該濾紙に捕集された粒子質量の100分率割合が10質量%未満であることを特徴とする請求項12又は13に記載の微小銀粒子含有組成物。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2009−120949(P2009−120949A)
【公開日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−274653(P2008−274653)
【出願日】平成20年10月24日(2008.10.24)
【出願人】(506334182)DOWAエレクトロニクス株式会社 (336)
【Fターム(参考)】