説明

微生物によるアルコール製造プロセス

【課題】COを含む基質の微生物発酵によるアルコール製造プロセスを提供する。
【解決手段】バイオリアクター内で、COを含む基質の存在下、カルボキシド栄養性細菌株を培養して、アルコールをそれらの対応する酸から製造する方法であって、特定の態様において、酸及び場合によりアルコールを製造する発酵反応は、一つ又は複数の酸の少なくとも一部がアルコールに変換されるように撹乱され、好ましくは酸がアセテートでアルコールがエタノールである、前記製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微生物発酵によるアルコールの製造、特にCOを含む基質の微生物発酵によ
るアルコールの製造に関する。さらに詳しくは、アルコールをそれらの対応する酸から製
造するプロセスに関する。
【背景技術】
【0002】
アルコールは、香料、製薬及び燃料産業を含む多くの産業で利用されている。例えば、
エタノール及びブタノールは、世界中で急速に主要な液体輸送用燃料になりつつある。様
々なアルコールの製造法は知られている。工業的なアルコール製造は大部分は石油化学プ
ロセスに由来する合成法である。しかしながら、微生物発酵も、アルコール、例えばバイ
オ燃料の製造に使用でき、人気上昇中である。
【0003】
輸送用のバイオ燃料はガソリンの魅力的な代替品であり、低濃度ブレンドとして燃料市
場に急速に浸透してきている。天然植物源由来のバイオ燃料は化石資源由来の燃料(例え
ばガソリン)よりも環境的に持続可能で、それらの使用は、燃料燃焼の結果大気中に放出
されるいわゆる化石二酸化炭素(CO)ガスのレベルの低減を可能にする。その上、バ
イオ燃料は多くの地域で地元生産できるので、輸入化石エネルギー資源への依存を削減す
るのにも役立つ。バイオ燃料として使用するのに適切なアルコールは、とりわけエタノー
ル、ブタノール及び2,3−ブタンジオールなどである。
【0004】
エタノールは急速に世界中で主要な水素豊富液体輸送用燃料になりつつある。2005
年におけるエタノールの世界的消費は推定122億ガロンであった。燃料エタノール産業
に関する世界市場も、ヨーロッパ、日本、米国、及びいくつかの発展途上国でエタノール
への関心が高まっているため、将来的に急成長を続けると予測されている。
【0005】
例えば、米国では、エタノールは、エタノール10%混合ガソリンであるE10の製造
に使用されている。E10ブレンドでは、エタノール成分は酸素化剤として作用し、燃焼
効率を改良し、大気汚染物質の生成を削減する。ブラジルでは、エタノールは、ガソリン
にブレンドされる酸素化剤として又はそれ自体でも純燃料として輸送用燃料需要の約30
%を満たしている。ヨーロッパでも、温室効果ガス(GHG)排出の結果を取り巻く環境
的懸念が刺激となり、欧州連合は、加盟国に対して持続可能な輸送用バイオ燃料の消費に
関する義務的目標を設定している。
【0006】
ブタノールも内燃機関の燃料として使用できる。ブタノールは、いくつかの点でエタノ
ールよりもガソリンに類似している。環境的に持続可能な燃料の製造及び応用への関心の
高まりにつれて、ブタノール(バイオブタノールと呼ばれることも多い)を製造するため
の生物学的プロセスへの関心も高まっている。ブタノールは、砂糖大根、トウモロコシ、
小麦及びサトウキビのような作物由来のバイオマスの微生物発酵によって製造できる。し
かしながら、これらの炭水化物原料のコストは、人間の食料又は動物飼料としてのそれら
の価値によって影響され、また、ブタノール製造用のデンプン又はショ糖生産作物の耕作
は、すべての地域で経済的に持続可能とは限らない。そこで、より低コスト及び/又はよ
り豊富な炭素資源を燃料ブタノールに変換するための技術開発に関心が寄せられている。
【0007】
嫌気性細菌、例えばクロストリジウム属(genus Clostridium)の細菌は、アセチルCo
A生化学的経路を介してCO、CO及びHからエタノールを生成することが示されて
いる。例えば、ガスからエタノールを生成する様々なクロストリジウム・リュングダリイ
(Clostridium ljungdahlii)株が、WO00/68407、EP117309、米国特許
第5,173,429号、5,593,886号及び6,368,819号、WO98/
00558及びWO02/08438に記載されている。細菌のクロストリジウム・オー
トエタノゲナム種(Clostridium autoethanogenum sp)もガスからエタノールを生成するこ
とが知られている(Abriniら、Archives of Microbiolog
y 161,pp345−351(1994))。
【0008】
しかしながら、微生物によるガスの発酵によるエタノール生成は通常アセテート及び/
又は酢酸の同時生成を伴う。利用可能な炭素の一部はエタノールではなくアセテート/酢
酸に変換されてしまうので、そのような発酵プロセスを用いるエタノールの製造効率は望
ましいとは言い難い。また、アセテート/酢酸の副産物が何か他の目的に使用できない限
り、それは廃棄物処理問題を提起しうる。アセテート/酢酸は微生物によってメタンに変
換されるので、GHG排出に寄与する可能性もある。酪酸/ブチレートなどのその他の廃
棄物も、よく使用される発酵プロセス中に製造されうる。
【0009】
さらに、典型的には酵母又は細菌を利用する生物学的発酵プロセスは、特定の微生物が
それが増殖する基質(例えば炭水化物又は一酸化炭素を含むガス)から製造可能な1種類
又は2種類のアルコールの製造に限定されうる。異なるアルコールを製造したければ、異
なる微生物の供給が必要とされうる。多くの場合、所望のアルコールを生成可能な細菌を
調達することはできない。そこで、より低コスト及び/又はより豊富な炭素資源、例えば
有機酸を燃料エタノールのような所望生成物に変換するための技術開発に関心が寄せられ
ている。
【0010】
酸をそれらの対応アルコールに微生物変換するための方法は、これまでに米国特許第4
,851,344号;White及びSimon,Arch Microbiol(19
92)158:81−84;Huberら,Arch Microbiol(1995)
164:110−118に記載されている。しかしながら、これらの方法もいくつかの不
利益に苦しんでいる。例えば、それらは化学メディエーターの使用を必要とし、その多く
は有毒及び/又は高価である。さらに、それらの方法は、酸からアルコールへの変換前に
遠沈及び緩衝液への再懸濁が必要な、休眠状態の細胞抽出物、又は単離細胞を使用する。
これらの加工ステップは労働集約的であり(大きな労働を必要とし)、また微生物が酸素
に暴露され、溶解され、又はその他の損傷を受けるリスクを増大する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】WO00/68407
【特許文献2】EP117309
【特許文献3】米国特許第5,173,429号
【特許文献4】米国特許第5,593,886号
【特許文献5】米国特許第6,368,819号
【特許文献6】WO98/00558
【特許文献7】WO02/08438
【特許文献8】米国特許第4,851,344号
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】Abrini et al., Archives of Microbiology 161, pp345-351(1994)
【非特許文献2】White and Simon, Arch Microbiol (1992) 158:81-84
【非特許文献3】Huber et al, Arch Microbiol (1995) 164:110-118
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、当該技術分野で知られている方法の一定の不利益を克服する、又は少なくと
も公衆に有用な選択肢を提供する嫌気的細菌発酵による有益なアルコールの製造プロセス
を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0014】
一つの広い側面において、本発明は、一酸化炭素及び/又は水素を含む基質上で増殖す
る代謝的に活性な細菌を用いて酸をその対応するアルコールに変換するための方法を提供
する。
【0015】
特定の態様において、該方法は、
a.バイオリアクター内でCOを含む基質の存在下、一つ又は複数のカルボキシド栄養
性(carboxydotrophic)細菌株を培養し、一つ又は複数の酸及び場合により一つ又は複数の
アルコールを製造し;そして
b.少なくとも一つの酸が少なくとも一つのアルコールに変換されるように微生物培養
物を撹乱(perturbing)する
ことを含む。
【0016】
典型的には、ステップ(a)で製造された酸の少なくとも一部は、ステップ(b)でア
ルコールに変換される。さらに又は代替的に、追加の酸をステップ(a)及び/又はステ
ップ(b)の最中にバイオリアクターに加えて、少なくとも一つのアルコールに変換する
こともできる。
【0017】
一定の態様において、微生物培養物の撹乱(perturbing)とは、
・微生物培養物を含有する液体栄養培地のpHを変えること;
・微生物培養物を含有する液体栄養培地のORPを変えること;
・一つ又は複数の酸をバイオリアクターに添加すること;
・一つ又は複数の還元剤をバイオリアクターに添加すること;
・微生物培養物を含有する液体栄養培地中のCO濃度を変えること;
・バイオリアクター内のCO分圧を変えること、この場合、COを含む基質はガス状で
ある;
の一つ又は複数を含む。
【0018】
特定の態様において、CO濃度を変えるステップは、液体栄養培地中のCO濃度を少な
くとも1mmol増加させることを含む。
別の広い側面において、本発明は、アルコールの製造法を提供し、該方法は、少なくと
も、
(a)バイオリアクター内で一酸化炭素を含む基質の存在下、一つ又は複数の細菌株を
培養し;
(b)前記一つ又は複数の細菌株が変換相にあるときにバイオリアクターに酸を添加し
、その酸の対応するアルコールを製造させ;ここで、製造されるアルコールは、前記一つ
又は複数の細菌株が前記酸の不在下で前記基質上で増殖した場合に製造することができる
アルコールではない;
ステップを含む。
【0019】
上記側面の特定の態様において、該方法はメディエーターの不在下で実施される。
一態様においては、二つ以上の酸をバイオリアクターに添加して、二つ以上の対応アル
コールを製造する。
【0020】
一定の態様において、一つ又は複数の細菌は、酸をその対応するアルコールに還元する
のにアルデヒドオキシド−レダクターゼ(AOR)経路を使用することができる細菌であ
る。適切な細菌は、クロストリジウム(Clostridia)、ムーレラ(Moorella)、真正細菌(Eub
acterium)、アセトバクテリウム(Acetobacteria)、ブチリバクテリウム(Butyribacterium
)及びデスルホバクテリウム(desulfobacterium)属の種などである。特定の態様において
、細菌はクロストリジウム・オートエタノゲナム (Clostridium autoethanogenum)である

【0021】
典型的には、前記酸はモノカルボン酸又はジカルボン酸である。特定の態様において、
前記酸は、酢酸、プロピオン酸、n−酪酸、n−ペンタン酸、n−ヘキサン酸、及び安息
香酸から選ばれる。
【0022】
特定の態様において、製造されるアルコールは、エタノール、1−プロパノール、1−
ブタノール、1−ペンタノール、1−ヘキサノール、及びベンジルアルコールから選ばれ
る。
【0023】
別の広い側面において、本発明は、ブタノールの製造法を提供し、該方法は、少なくと
も、
(a)バイオリアクター内で一酸化炭素を含む基質の存在下、ブタノール以外のアルコ
ールを製造するように適合された一つ又は複数の細菌株を培養し;
(b)前記一つ又は複数の細菌株がブタノール以外のアルコールを活発に製造している
ときにバイオリアクターにブチレートを添加することによってブタノールを製造させる;
ステップを含む。
【0024】
別の広い側面において、本発明は、ブタノールの製造法を提供し、該方法は、少なくと
も、
(a)バイオリアクター内で一酸化炭素を含む基質の存在下、エタノールを製造するよ
うに適合された一つ又は複数の細菌株を培養し;
(b)前記一つ又は複数の細菌株がエタノールを活発に製造しているときにバイオリア
クターにブチレートを添加することによってブタノールを製造させる;
ステップを含む。
【0025】
別の広い側面において、本発明は、アルコールの製造法を提供し、該方法は、少なくと
も、
(a)バイオリアクター内で一酸化炭素を含む基質の存在下、クロストリジウム・オー
トエタノゲナム(Clostridium autoethanogenum)を培養し;
(b)クロストリジウム・オートエタノゲナムが変換相にあるときにバイオリアクター
に酸を添加し、その酸の対応するアルコールを製造させ;ここで、製造されるアルコール
は、クロストリジウム・オートエタノゲナムが前記酸の不在下で前記基質上で増殖した場
合に製造することができるアルコールではない;
ステップを含む。
【0026】
好適な広い側面において、本発明は、ブタノールの製造法を提供し、該方法は、少なく
とも、
(a)バイオリアクター内で一酸化炭素を含む基質の存在下、クロストリジウム・オー
トエタノゲナムを培養し;
(b)クロストリジウム・オートエタノゲナムが変換相にあるときにバイオリアクター
にブチレートを添加してブタノールを製造させる;
ステップを含む。
【0027】
本発明の方法は典型的にはメディエーターの不在下で実施される。
特定の態様において、本発明の方法に従ってバイオリアクターに添加される酸は、一酸
化炭素を含む基質の微生物発酵によって製造される。
【0028】
一定の態様において、細菌は、酵母エキス及び/又はペプトンの不在下、液体培地中で
培養される。一態様において、前記培地は、以下に記載されるLM23又はLM33であ
る。
【0029】
別の広い側面において、本発明は、一つ又は複数のアルコールの製造法を提供し、該方
法は、少なくとも、
(a)第一のバイオリアクターにおいて、基質を発酵させて一つ又は複数の酸を製造さ
せ;
(b)第二のバイオリアクターにおいて、一酸化炭素を含む基質の存在下、一つ又は複
数の細菌株を培養し;
(c)(a)からの一つ又は複数の酸を、前記一つ又は複数の細菌株が溶媒生成相(sol
ventogenic phase)にあるときに第二のバイオリアクターに導入して、前記一つ又は複数
の酸に対応するアルコールを製造させる;ここで、製造されるアルコールは、前記一つ又
は複数の細菌株が前記酸の不在下で前記基質上で増殖した場合に製造することができるア
ルコールではない;
ステップを含む。
【0030】
特定の態様において、前記方法はメディエーターの不在下で実施される。
一定の態様において、第二のバイオリアクター内の一つ又は複数の細菌株は上記定義の
通りである。
【0031】
本発明の別の側面において、COを含む基質の存在下、バイオリアクター内での酸の嫌
気的細菌発酵によるアルコールの製造法を提供する。
一態様において、基質は、酸からアルコールへの変換が促進されるようなCO濃度で供
給される。
【0032】
一態様において、COの濃度は、酸からアルコールへの変換が促進されるように、十分
な閾値濃度より高い。この十分な閾値濃度より高いCOを発酵に供給することは、酸から
アルコールへの変換は促進しながらも、酸の生成を削減又は防止及び/又は微生物増殖を
削減又は防止する。
【0033】
一態様において、基質は、少なくとも約2.5mmol/Lの発酵培地中CO濃度で供
給される。一態様において、CO濃度は少なくとも約2.75mmol/Lである。一態
様において、CO濃度は少なくとも約3mmol/Lである。一態様において、該濃度は
少なくとも約3.5mmol/Lである。
【0034】
当業者であれば、本開示を考慮すると、発酵培地中のCOの溶解度を増大するための多
くの方法があることは分かるであろう。例えば、温度変化及び/又はオイルなどの可溶化
剤の添加などであるが、これらに限定されない。そのような方法は、発酵培地中の特定の
CO濃度を達成するために、必要に応じて又は所望に応じて、本発明の実施において採用
できる。
【0035】
一態様において、COを含む基質はガス状基質であり、発酵培地中に溶解されるCOの
量は発酵におけるCO分圧に比例する。従って、発酵培地中の十分な閾値濃度は、CO分
圧を増大させることによって達成できる。一態様において、ガス状基質は、CO分圧が少
なくとも約37psiであるように供給される。別の態様において、CO分圧は少なくと
も約47psiである。
【0036】
本発明の方法に従って、追加の酸をバイオリアクターに供給し、アルコールに変換する
ことができる。
本発明の様々な態様において、該方法は、発酵によって生成した一つ又は複数のアルコ
ールを捕捉及び回収するステップを含む。
【0037】
本発明の別の側面において、アルコール及び/又は酸の製造法を提供し、該方法は、バ
イオリアクター内で第一の基質を嫌気的に発酵してアルコール及び/又は酸を含む一つ又
は複数の生成物を製造することを含み、該方法においては、COを含む第二の基質を所望
の時点で添加して、エタノールのようなアルコールの生成がアセテートのような酸に比し
て増大するようにする。
【0038】
一態様において、COを含む第二の基質の添加は、得られる溶解CO濃度が該発酵の十
分な閾値濃度であるか又はそれを上回れば、酸の少なくとも一部のアルコールへの変換を
もたらす。
【0039】
一態様においては、第一の基質もCOを含む。しかしながら、該方法はそのような態様
に限定されない。例えば、一部の態様において、第一の基質は一つ又は複数の炭水化物又
はピルベートを含みうる。適切な炭水化物は、セルロース、セルロース加水分解物、デン
プン、デンプン加水分解物、グルコース、フルクトース、キシロース、アラビノース、又
はラクトースなどでありうるが、これらに限定されない。一部の態様において、炭水化物
はフルクトース又はキシロースである。他の態様において、第一の基質はCO及び/又
はH又は発酵によって酸及び/又はアルコールを製造するのに適切な何らかのその他の
成分を含みうる。
【0040】
様々な態様において、該方法は、発酵によって生成した一つ又は複数のアルコールを捕
捉及び回収するステップを含む。
本発明の別の側面において、アルコール及び/又は酸の製造法を提供し、該方法は、
(a)COを含む基質を第一の濃度で一つ又は複数の微生物の培養物を含有するバイオ
リアクターに供給し;そして
(b)バイオリアクター内の培養物を嫌気的に発酵して前記基質からアルコール及び/
又は酸を含む一つ又は複数の生成物を製造する
ステップを含み、バイオリアクターに供給される基質の濃度は、酸に比してアルコールの
生成が増大するように、所望の時点で場合により増大させることができる。
【0041】
様々な態様において、基質の濃度の増大は、酸の少なくとも一部のアルコールへの変換
をもたらす。及び/又は基質の濃度を、酸の少なくとも一部がアルコールに変換される十
分な閾値より高く増大させることができる。
【0042】
様々な態様において、該方法は、発酵によって生成した一つ又は複数の生成物を捕捉及
び回収するステップを含む。
本発明の別の側面において、アルコール及び/又は酸の製造法を提供し、該方法は、
(a)COを含むガス状基質を第一のCO分圧で一つ又は複数の微生物の培養物を含有
するバイオリアクターに供給し;そして
(b)バイオリアクター内の培養物を嫌気的に発酵して前記基質からエタノール及び/
又は酢酸を含む一つ又は複数の生成物を製造する
ステップを含み、CO分圧は、アセテートに比してエタノールの生成が増大するように、
所望の時点で場合により増大させることができる。
【0043】
一態様において、該方法は、微生物の増殖及び/又は一つ又は複数の生成物の濃度及び
/又はCO濃度をモニターすることを含み、所望の生成物及び/又はCO濃度でCO分圧
を増大させることができる。一態様において、CO分圧は約27psiより上に増大でき
る。
【0044】
様々な態様において、CO分圧の増大は、酸の少なくとも一部のアルコールへの変換を
もたらす。及び/又はCO分圧を、酸の少なくとも一部がアルコールに変換される十分な
閾値より高く増大させることができる。
【0045】
様々な態様において、該方法は、発酵によって生成したアルコールを捕捉及び回収する
ステップを含む。
本発明の別の側面に従って、微生物の増殖及び/又は酸の生成の調節法を提供し、該方
法は、
(a)COを含むガス状基質を第一のCO分圧で一つ又は複数の微生物の培養物を含有
するバイオリアクターに供給し;そして
(b)バイオリアクター内の培養物を嫌気的に発酵して前記基質からエタノール及び/
又は酢酸を含む一つ又は複数の生成物を製造する
ステップを含み、CO分圧は、微生物の増殖及び/又は酸の生成が削減又は実質的に阻害
されるように、所望の時点で増大させることができる。
【0046】
様々な態様において、CO分圧の増大は、酸の少なくとも一部のアルコールへの変換を
もたらす。及び/又はCO分圧を、酸の少なくとも一部がアルコールに変換される十分な
閾値より高く増大させることができる。
【0047】
一態様において、微生物の増殖及び/又は酸の生成は、CO分圧が低下すると、増大/
促進(又は再開)されうる。
様々な態様において、該方法は、発酵によって生成したアルコールを捕捉及び回収する
ステップを含む。
【0048】
本発明の別の側面に従って、アルコール生成の調節法を提供し、該方法は、
(a)COを含むガス状基質を第一のCO分圧で一つ又は複数の微生物の培養物を含有
するバイオリアクターに供給し;
(b)バイオリアクター内の培養物を嫌気的に発酵して前記基質からエタノール及び/
又は酢酸を含む一つ又は複数の生成物を製造し;
(c)CO分圧を、酸の少なくとも一部がエタノールに変換されるように、十分な閾値
より高く増大させ;そして
(d)場合により、その後、CO分圧を、微生物増殖及び酸生成が促進されるように閾
値未満に低下させる
ステップを含む。
【0049】
様々な態様において、アルコール及び酸の生成及び/又は微生物の増殖は、発酵の間ず
っとモニターできる。及び/又はステップ(c)及び(d)は少なくとも1回繰り返され
る。
【0050】
本発明の態様は、COを含むガス状基質の存在下における酸の発酵に特に応用される。
該基質は、産業プロセスの副産物として得られたガスを含みうる。一定の態様において、
産業プロセスは、鉄金属製品製造、非鉄製品製造、石油精製プロセス、バイオマスのガス
化、石炭のガス化、発電、カーボンブラック製造、アンモニア製造、メタノール製造及び
コークス製造からなる群から選ばれる。本発明の一態様において、ガス状基質は合成ガス
である。一態様において、ガス状基質は、製鋼所から得られるガスを含む。
【0051】
CO含有基質は典型的には主要割合のCOを含有する。例えば、少なくとも約20%〜
約100体積%のCO、40%〜95体積%のCO、40%〜60体積%のCO、及び4
5%〜55体積%のCOである。特定の態様において、該基質は、約25%、又は約30
%、又は約35%、又は約40%、又は約45%、又は約50%のCO、又は約55%の
CO、又は約60体積%のCOを含む。6%といった低いCO濃度を有する基質も、特に
及びCOも併存している場合、適切なこともある。
【0052】
様々な態様において、発酵は、一つ又は複数のカルボキシド栄養性細菌株を用いて実施
される。様々な態様において、該カルボキシド栄養性細菌は、クロストリジウム(Clostri
dium)、ムーレラ(Moorella)、オキソバクター(Oxobacter)、ペプトストレプトコッカス(P
eptostreptococcus)、アセトバクテリウム(Acetobacterium)、真正細菌(Eubacterium)又
はブチリバクテリウム(Butyribacterium)から選ばれる。一態様において、カルボキシド
栄養性細菌はクロストリジウム・オートエタノゲナム (Clostridium autoethanogenum)で
ある。
【0053】
本発明の方法は、一酸化炭素を含有する基質、特にガス状基質の存在下、酸の嫌気的発
酵によって、これらに限定されないが、エタノール及び/又はブタノールを含む様々なア
ルコールのいずれかを製造するのに使用できる。本発明の方法は、好気的発酵、これに限
定されないがイソプロパノールを含むその他の生成物の嫌気的又は好気的発酵、及び炭素
含有ガス以外の基質の発酵にも適用できる。
【0054】
本発明は、本願の明細書において言及又は指示された部品、構成要素及び特徴を、個別
にも又は集団的にも、前記部品、構成要素又は特徴の二つ以上のいずれか及びすべての組
合せでも含みうる。また、本明細書中で特定の整数が言及され、それが本発明の関連する
技術分野で公知の等価物を有している場合、そのような公知の等価物もあたかも個別に示
されたかのごとく本明細書に組み込まれると見なされる。
【図面の簡単な説明】
【0055】
あらゆる新規側面において考慮されるべき本発明のこれら及びその他の側面は、添付の
図面に関する下記説明を読むことによって明らかになるであろう。下記説明はほんの一例
として示されたものである。
【図1】図1は、血清ボトル中でのC.オートエタノゲナムによるブチレートからブタノールへの変換を示す。出発条件:アセテート(4.7g/l)及びエタノール(1.2g/l)を生成しているC.オートエタノゲナムの活性培養物。pH5.5。上部空間:CO中95%COの25psig過剰圧。終末条件:pH6.35、アセテート(4.7g/l)、エタノール(3.2g/l)、上部空間:14psig過剰圧。
【図2】図2は、アセテート及び最小のエタノールを生成しているクロストリジウム・オートエタノゲナムのバッチ培養物へのホルメート添加の効果を示す。ホルメート溶液をt=0及びt=30分(約)に添加し、その後t=60分(約)に連続的に添加されるようにした。
【図3】図3は、約6g/L/日のエタノール及び1g/L/日のアセテートを生成しているクロストリジウム・オートエタノゲナムの連続培養物へのアセテート添加の効果を示す。52日目からアセテート(15g/L/日)を連続的に添加した。
【図4】図4は、アセテート及びエタノールを生成しているクロストリジウム・オートエタノゲナムを含む微生物培養物に及ぼすpH変化の効果を示す。約t=3日に、細胞リサイクルを開始して約2時間した後、pHを5.9に調整した。pH変化後、アセテートが消費され、増量したエタノールが生成した。
【図5】図5は、本発明の特定の態様による増殖バイオリアクターと変換バイオリアクターを含むシステムを示す。
【図6】図6は、本発明の特定の態様による複数の増殖バイオリアクターと変換バイオリアクターを含むシステムを示す。
【発明を実施するための形態】
【0056】
以下は、本発明を、その様々な態様を含め、概括的な言葉で記載したものである。本発
明はさらに、本発明を支持する実験データ、本発明の側面の具体的実施例、及び本発明を
実施するための例示的手段を提供する以下の“実施例”の項目の下に与えられた開示の中
でも例証される。
【0057】
酸及びアルコールを含む生成物は、COを含む基質から微生物培養物によって製造でき
る。本発明の方法によれば、微生物培養物を撹乱すると、驚くべきことに、微生物培養物
による酸の消費と同時にアルコールの生成をもたらす。この結果は、発酵ブロス中に存在
する酸の少なくとも一部が直接又は間接的にアルコール、特にエタノールに還元されるた
めであろうと考えられる。これは、発酵反応の“変換相”と呼ぶことができる。本発明の
方法によれば、発酵反応は、微生物増殖が促進され、アルコール及び/又は酸が生成する
生成(又は増殖)相から、微生物培養物を撹乱することによって変換相に切り替えること
ができる。
【0058】
微生物培養物の少なくとも一部は生成相にあるとしても、少なくとも一部は変換相にあ
ると認識されている。しかしながら、撹乱により、生成相にある微生物培養物の少なくと
も一部は変換相に切り替わり、その結果、酸に比してアルコールの生成が増大する。特定
の態様において、酸の総正味消費及びアルコール生成がある。
【0059】
本発明の一態様によれば、COを含む基質からアセテート及び場合によりエタノールな
どの生成物を生成する微生物培養物を撹乱すると、微生物発酵によってエタノールが生成
する。撹乱の後、COの少なくとも一部は酸及び/又はアルコールに変換されうるが、エ
タノールの大部分は、酢酸/アセテートの微生物的還元によって生成する(‘変換’)。
【0060】
COを含む基質を用いてアルコール及び/又は酸を同時に生成する発酵反応の例は多数
ある。しかしながら、そのような例では、生成物比は一般的に酸(すなわち酢酸/アセテ
ート)の方がアルコール(エタノール)よりも優位である。本発明の別の態様において、
特定の発酵条件は酸生成よりもアルコール生成に優位に働く。そのような条件下では、発
酵槽に添加された追加の酸を、微生物培養物によって対応するアルコールに変換させるこ
とができる。例えば、酪酸のような酸を発酵反応に添加して、ブチレートのようなアルコ
ールに変換させることができる。
【0061】
本発明の方法によれば、驚くべきことに、酸からアルコールへの変換を補助するのにメ
チルビオロゲンのようなメディエーターが必要ないことが見出された。実際、メチルビオ
ロゲンは、C.オートエタノゲナムによるブタノール生成に悪影響を及ぼすことが確認さ
れている。このことは、酸からそれらの対応アルコールへの微生物変換にはメディエータ
ーが必要であるという報告とは対照をなす。
【0062】
何らかの特定の理論に拘束されることは望まないが、本発明の方法によるクロストリジ
ウム・オートエタノゲナムによる酸のアルコールへの変換は、酵素のアルデヒドオキシド
−レダクターゼ(AOR)が関与する生化学的経路によって起こると考えられる。AOR
は、非活性化カルボン酸をアルデヒドに還元できる独特のタングステン含有酵素である。
アルデヒドは、アルデヒドデヒドロゲナーゼによってアルコールにさらに還元できる。A
ORは溶媒生成(solventogenesis)経路の重要な分枝である。タングステン補因子は酵素
活性に極めて重要であることが示されている。これらの酵素は、クロストリジウム、デス
ルフィトバクテリウム(Desulfitobacterium)、及びピロコッカス(Pyrococcus)のような発
酵性微生物に見出すことができる。最も良く特徴付けされたAORはピロコッカス・フリ
オサス(Pyrococcus furiosus)に属する。そのゲノムは5個を含有し、そのうちの4個が
特徴付けされている。P.フリオサスの第一のAORは広い基質範囲を有しているが、ア
ミノ酸から誘導されたアルデヒドを好む。その結晶構造から、モリブドプテリンに基づく
タングステン結合部位の存在が明らかになった。第二のAORは、グリセルアルデヒド−
3−リン酸フェレドキシンオキシドレダクターゼ(GFOR)で、グリセルアルデヒド−
3−リン酸のみを利用する。第三のAOR、ホルムアルデヒドフェレドキシンオキシドレ
ダクターゼ(FOR)は1〜3炭素アルデヒドを好む。第四のAORであるWOR5は、
広い基質範囲を有する。AORは、クロストリジウム・フォルミコアセチカム(Clostridi
um formicoaceticum)及びサーモアセチカム(thermoaceticum)からも精製されている。
【0063】
クロストリジウム・オートエタノゲナムは、P.フリオサスのAORと〜56%及びボ
ツリヌス菌(Clostridium botulinum)と〜80%の同一性を共有する二つの推定AOR遺
伝子を含有している。AOR遺伝子は、C.オートエタノゲナムの最も近い配列類縁体ク
ロストリジウム・クルイベリ(Clostridium kluyveri)とは著しい相違をなす。このゲノム
はAOR遺伝子を含有せず、アルコール生成はアセチル−CoAを介して進行する。得ら
れた結果は、クロストリジウム・オートエタノゲナム又はAOR経路を利用できるあらゆ
るその他の細菌を用いて任意のアルコールをその対応酸から製造するのに適用できると考
えられる。
【0064】
このように、その広い側面において、本発明は、微生物培養物を用いて酸をその対応す
るアルコールに変換するための方法を提供する。特定の態様において、微生物培養物は、
CO及び/又はHを含む基質の存在下で酸をアルコールに変換する。
【0065】
定義
特に断りのない限り、本明細書全体にわたって使用される下記の用語は以下のように定
義される。
【0066】
本明細書において“変換相”という用語は、細菌が一つ又は複数の酸を発酵して一つ又
は複数のアルコールを生成している期間のことを言うものとする。典型的には、細菌集団
の少なくとも一部はそのような相にある。しかしながら、集団中の全細菌が活発にアルコ
ールを生成している必要はない。変換相は、発酵ブロス中のアルコールレベルの存在によ
って特徴付けられる。
【0067】
微生物培養物に関して本明細書中で使用される“撹乱する”、“撹乱”という用語は、
微生物培養物に直接的又は間接的に影響する、なされるあらゆる変更を含むものとする。
微生物培養物に対してなされる変更は、pH、CO濃度、ORPなどの発酵運転条件の変
更、又は培養物を含有する液体栄養培地の組成の変更などである。
【0068】
本明細書において“微生物培養物”という用語は、増殖及び/又は代謝産物産生を促進
するのに適切な栄養培地中及び/又は上に支持された少なくとも一つの微生物を含むもの
とする。
【0069】
本明細書中で述べたように、本発明の方法によって“製造されたアルコール”は、一つ
又は複数の細菌株が対応する酸の不在下で基質上で増殖している場合に製造できるアルコ
ールではない。しかしながら、当該方法は、追加の生成物、例えば細菌がそれが培養され
ている基質から発酵する酸又はアルコールも製造しうることは理解されるはずである。当
該方法によって“製造されたアルコール”は、“一次アルコール”又は“一次生成物”と
呼ばれ、何らかの追加的生成物は“副産物”と呼ばれうる。“一次”という用語の使用は
、副産物と比べた特定レベルの生成物を意味すると取るべきではない。
【0070】
本明細書において“酸化還元メディエーター”等は、可逆的な電子供与体及び/又は電
子受容体として作用する電子シャトルのことを言うものとする。メディエーターは、ビオ
ロゲン染料(例えばメチルビオロゲン)、アントラキノン及びその他のキノン染料、トリ
フェニルメタン染料、フタロシアニム(phthalocyanimes)、メチン染料、ピロール染料、
ポルフィリン染料、プテリジン、プテリドン、フラビン、及び二次的VI、VII及びVIII族
の金属複合体などである。
【0071】
本発明に従って培養物又はバイオリアクターに“酸”を添加すると言うときに使用され
る用語“酸(一つ又は複数)”は、あらゆるモノカルボン酸及びジカルボン酸を含めて広
く解釈されるべきである。さらに、“酸”の添加への言及は、等価の塩又は塩と酸の混合
物への言及も含むと解釈されるべきである。同様に、本明細書において特定の酸への言及
は、等価の塩への言及も含むと解釈されるべきである(例えば酪酸とブチレート)(逆も
同様)。発酵ブロス中の分子酸対カルボキシレートの比率は系のpHに依存する。酸の例
は、酢酸、プロピオン酸、n−酪酸、n−ペンタン酸、n−ヘキサン酸、及び安息香酸な
どである。
【0072】
“バイオリアクター”という用語は、一つ又は複数の容器及び/又は塔又は配管からな
る発酵装置を含み、連続撹拌槽リアクター(Continuous Stirred Tank Reactor, CST
R)、固定化細胞リアクター(Immobilized Cell Reactor, ICR)、細流床リアクター
(Trickle Bed Reactor, TBR)、バブルカラム(Bubble Column)、ガスリフト発酵槽(G
as Lift Fermenter)、膜リアクター(Membrane Reactor)、例えば中空繊維膜バイオリアク
ター(Hollow Fiber Membrane Bioreactor,HFMBR)、静的ミキサー(Static Mixer)
、又は気液接触に適切なその他の容器又はその他の装置を含む。
【0073】
本明細書中でさらに説明するように、一部の態様において、バイオリアクターは第一の
増殖リアクターと第二の発酵リアクターを含みうる。従って、一つ又は複数の炭水化物を
バイオリアクター又は発酵反応に添加すると言う場合、必要に応じてこれらのリアクター
のいずれか又は両方に添加することを含むと理解されるべきである。
【0074】
“一酸化炭素を含む基質”という用語は、発酵のためにバイオリアクターに導入できる
COを含有する何らかの固体、液体又は気体材料を含む。“一酸化炭素を含むガス状基質
”は、一酸化炭素を含有するあらゆるガスを含む。ガス状基質は、典型的には、相当割合
のCO、例えば、少なくとも約15%〜約95体積%のCOを含有する。
【0075】
“溶解CO濃度”という用語は、発酵ブロス/培地中に存在するCOの、体積の関数と
しての量を含む。
“CO分圧”などの用語は、CO及び任意の追加のガスを含むガス状基質中のCOによ
って系にかけられる相対圧力を含む。
【0076】
“閾値濃度”、“十分な閾値濃度”などの語句は定量的に定義できるが、異なる微生物
に応じて使用されるような異なる発酵条件下で変動しうる。前記用語は、微生物が、基質
からの実質的なアルコール及び/又は酸生成から、長期間のアルコール生成及び酸消費に
切り替わる濃度又は濃度範囲を含む。
【0077】
文脈上他の意味に解すべき場合を除き、“発酵する”、“発酵プロセス”又は“発酵反
応”などの語句は、本明細書中では、増殖/及び又は微生物による生成物の生合成が関与
するプロセスの増殖相及び生成物生合成相の両方を包含するものとする。
【0078】
本発明の方法によれば、酸及びアルコールを含む生成物は、COを含む基質、例えばC
Oを含むガス状基質から微生物発酵によって製造される。本発明の特定の態様において、
酸及び場合によりアルコールなどの生成物を生成している活発に増殖中の微生物培養物を
撹乱すると、微生物培養物の少なくとも一部が一つ又は複数の酸を消費し、一つ又は複数
の対応するアルコールを生成するようにすることができる。この結果は、発酵ブロス中に
存在する酸の少なくとも一部が直接又は間接的にアルコール、特にエタノールに還元され
ることによるものであろう。これを発酵反応の“変換相”と呼ぶことができる。本発明の
特定の態様によれば、発酵反応は、微生物増殖が促進されアルコール及び/又は酸が製造
される実質的生成相から、発酵反応におけるCO濃度を増大する変換相に切り替えること
ができる。
【0079】
本発明の別の態様において、活発に増殖中の培養物の少なくとも一部はアルコールを生
成中であってよく、撹乱は一つ又は複数の酸を培養物に前記一つ又は複数の酸の少なくと
も一部が一つ又は複数のアルコールに変換されるように添加することを含む。
【0080】
一般的に、本発明の方法は、少なくとも、
(a)バイオリアクター内で一酸化炭素を含む基質の存在下、一つ又は複数の細菌株を
培養し、一つ又は複数の酸及び場合により一つ又は複数のアルコールを製造し;そして
(b)少なくとも一つの酸が少なくとも一つのアルコールに変換されるように培養細菌
を撹乱する
ことを含む。
【0081】
特定の態様において、ステップ(a)の間に細菌によって製造される酸の少なくとも一
部はステップ(b)で対応するアルコールに変換される。しかしながら、特定の態様にお
いて、追加の酸をバイオリアクターに添加して、ステップ(b)で前記追加された酸の少
なくとも一部がアルコールに変換されるようにすることができる。そのような態様におい
て、製造されるアルコールは、一つ又は複数の細菌株が前記酸の不在下で基質上で増殖す
る場合に製造できるアルコールでなくてもよい。当該方法は好ましくはメディエーターの
不在下で実施される。
【0082】
特定の態様において、該方法は、少なくとも、
(a)バイオリアクター内で一酸化炭素を含む基質の存在下、一つ又は複数の細菌株を
培養し、ここで前記細菌はアルコールを生成しており;そして
(b)前記培養細菌に、前記培養物の少なくとも一部がアルコールを製造するための変
換相にあるときに酸を添加する;
ステップを含む。
【0083】
COを含む基質を用いてアルコール及び/又は酸を同時に生成する発酵反応の例は多数
ある。しかしながら、そのような例では、生成物比は一般的に酸(すなわち酢酸/アセテ
ート)の方がアルコール(エタノール)よりも優位である。
【0084】
微生物培養物を生成相から変換相に切り替えるための適切な撹乱は、発酵培地のpH及
び/又はORPの変更;発酵ブロス中のCO濃度の変更(当業者であれば、発酵法に応じ
てこれを達成するための多数の方法があることは分かるであろう。例えばガス組成の変更
、ガス圧の変更、ガス流速の変更、CSTR中の撹拌速度の変更などである);還元剤の
添加;一つ又は複数の酸の添加などであるが、これらに限定されない。
【0085】
従って、本発明の特定の態様において、微生物培養物の撹乱は、
・微生物培養物を含有する液体栄養培地のpHを変える;
・微生物培養物を含有する液体栄養培地のORPを変える;
・一つ又は複数の酸をバイオリアクターに添加する;
・一つ又は複数の還元剤をバイオリアクターに添加する;
・微生物培養物を含有する液体栄養培地中のCO濃度を変える;
・バイオリアクター内のCO分圧を変える、この場合、COを含む基質はガス状である

の一つ又は複数を含む。
【0086】
以下の記載は、本発明の特定の態様に焦点を合わせるが、本発明は代替のアルコールを
それらの対応する酸から製造するのにも適用可能であることは理解されるべきである。ア
ルコールの例は、エタノール、1−プロパノール、1−ブタノール、1−ペンタノール、
1−ヘキサノール、及びベンジルアルコールなどである。対応する酸の例は、それぞれ、
酢酸、プロピオン酸、n−酪酸、n−ペンタン酸、n−ヘキサン酸、及び安息香酸などで
ある。本発明に従って製造できる更なるアルコールの例は、香料、製薬及び燃料産業で使
用されるものなどである。
【0087】
さらに、当該方法は、C.オートエタノゲナム以外の細菌を用いて実施することもでき
る。例えば、クロストリジウム(Clostridia)、ムーレラ(Moorella)、真正細菌(Eubacteri
a)、アセトバクテリウム(Acetobacteria)、ブチリバクテリウム(Butyribacterium)及びデ
スルホバクテリウム(Desulfobacterium)属の細菌種が使用できる。さらに詳しくは、クロ
ストリジウム・リュングダリイ(Clostridium ljungdahlii) 、クロストリジウム・アセチ
カム(Clostridium aceticum)、クロストリジウム・フォルミカセチカム(Clostridium for
micaceticum)、ムーレラ・サーモアセチカ(Moorella thermoacetica)、ムーレラ・サーモ
オートトロフィカ(Moorella thermoautotrophica)、ユーバクテリウム・リモサム(Eubact
erium limosum)、アセトバクテリウム・ウーディイ(Acetobacterium woodii)、ブチリバ
クテリウム・メチロトロフィカム(Butyribacterium methylotrophicum)、及びデスルホバ
クテリウム・オートトロフィカム(Desulfobacterium autotrophicum)が使用できる。
【0088】
本発明の一定の態様は、一つ又は複数の産業プロセスによって生成したガスストリーム
を使用するように適合されている。そのようなプロセスは、製鋼プロセス、特に高CO含
有量又は所定濃度(すなわち5%)より高いCO含有量を有するガスストリームを生成す
るプロセスなどである。そのような態様に従って、好ましくはカルボキシド栄養性細菌が
、酸及び/又はアルコール、特にエタノール又はブタノールを一つ又は複数のバイオリア
クター内で製造するのに使用される。当業者は本開示を考慮すれば、本発明は、様々な産
業又は廃ガスストリーム、例えば内燃機関を有する自動車のそれにも適用できることは分
かるであろう。また、当業者は本開示を考慮すれば、本発明は、同じ又は異なる微生物を
使用するものを含むその他の発酵反応にも適用できることは分かるであろう。従って、本
発明の範囲は、記載された特定の態様及び/又は用途に限定されず、それどころか広義に
理解されるものとする。例えば、ガスストリームの供給源は、その少なくとも一つの成分
が発酵反応に供給するのに使用可能であるという以外の制限はない。本発明は、自動車の
排ガス及び高容量のCO含有産業煙道ガスなどのガス状基質からの総体的炭素捕捉及び/
又はエタノール及びその他のアルコール製造の改良に特に適用可能性がある。
発酵
ガス状基質からのエタノール及びその他のアルコールの製造法は知られている。例示的
方法は、例えば、WO2007/117157、WO2008/115080、米国特許
第6,340,581号、米国特許第6,136,577号、米国特許第5,593,8
86号、米国特許第5,807,722号及び米国特許第5,821,111号に記載さ
れているものなどである。前記特許はそれぞれ引用によって本明細書に援用する。
【0089】
いくつかの嫌気性細菌が、COの、n−ブタノール及びエタノールを含むアルコール、
及び酢酸のような酸への発酵を実行できるとして知られており、本発明のプロセスに使用
するのに適している。本発明に使用するのに適しうるそのような細菌の例は、クロストリ
ジウム属の細菌、例えばクロストリジウム・リュングダリイ(Clostridium ljungdahlii)
(WO00/68407、EP117309、米国特許第5,173,429号、5,5
93,886号、及び6,368,819号、WO98/00558及びWO02/08
438に記載のものを含む)、クロストリジウム・カルボキシジボランス(Clostridium c
arboxydivorans)(Liouら、International Journal of
Systematic and Evolutionary Microbiology
33:pp2085−2091)、クロストリジウム・ラグスダレイ(Clostridium rag
sdalei)(WO/2008/028055)及びクロストリジウム・オートエタノゲナム
(Clostridium autoethanogenum) (Abriniら、Archives of Micr
obiology 161:pp345−351)の株などである。その他の適切な細菌
は、ムーレラ属の細菌、例えばムーレラ種HUC22−1(Moorella sp HUC22-1)(Sa
kaiら、Biotechnology Letters 29:pp1607−161
2)、及びカルボキシドサーマス(Carboxydothermus)属の細菌(Svetlichny,
V.A.,Sokolova,T.G.ら(1991),Systematic and
Applied Microbiology 14:254−260)などである。更
なる例は、ムーレラ・サーモアセチカ(Moorella thermoacetica)、ムーレラ・サーモオー
トトロフィカ(Moorella thermoautotrophica)、ルミノコッカス・プロダクタス(Ruminoco
ccus productus)、アセトバクテリウム・ウーディイ(Acetobacterium woodii)、ユーバク
テリウム・リモサム(Eubacterium limosum)、ブチリバクテリウム・メチロトロフィカム(
Butyribacterium methylotrophicum)、オキソバクター・フェニギイ(Oxobacter pfennigi
i)、メタノサルシナ・バルケリ(Methanosarcina barkeri)、メタノサルシナ・アセチボラ
ンス(Methanosarcina acetivorans)、デスルホトマクルム・クズネツォビイ(Desulfotoma
culum kuznetsovii)(Simpaら、Critical Reviews in Bio
technology,2006 Vol.26.pp41−65)などである。さらに
、当業者には分かる通り、その他のカルボキシド栄養性嫌気性細菌も本発明に適用可能で
あることは理解されるはずである。また、本発明は、二つ以上の細菌の混合培養物に適用
できることも分かるであろう。
【0090】
本発明に使用するのに適切な一つの微生物の例はクロストリジウム・オートエタノゲナ
ム(Clostridium autoethanogenum)である。一態様において、クロストリジウム・オート
エタノゲナムは、German Resource Centre for Biolo
gical Material(DSMZ)に識別寄託番号19630で寄託された株の
識別特徴を有するクロストリジウム・オートエタノゲナムである。別の態様において、ク
ロストリジウム・オートエタノゲナムは、DSMZ寄託番号DSMZ10061の識別特
徴を有するクロストリジウム・オートエタノゲナムである。
【0091】
本発明の方法に使用される細菌の培養は、嫌気性細菌を用いる基質の培養及び発酵のた
めの当該技術分野で公知の様々なプロセスを用いて実施できる。例示的技術は以下の“実
施例”の項に提供されている。更なる例として、発酵にガス状基質を用いる下記文献に一
般的に記載されたプロセスも利用できる。(i)K.T.Klassonら,(1991
).Bioreactors for synthesis gas fermenta
tions resources.Conservation and Recycli
ng,5;145−165;(ii)K.T.Klassonら,(1991).Bior
eactor design for synthesis gas fermenta
tions.Fuel.70.605−614;(iii)K.T.Klassonら,(
1992).Bioconversion of synthesis gas int
o liquid or gaseous fuels.Enzyme and Mic
robial Technology.14;602−608;(iv)J.L.Vega
,ら(1989).Study of Gaseous Substrate Ferm
entation:Carbon Monoxide Conversion to A
cetate.2.Continuous Culture.Biotech.Bioe
ng.34.6.785−793;(v)J.L.Vega,ら(1989).Stud
y of gaseous substrate fermentations:Car
bon monoxide conversion to acetate.1.Bat
ch culture.Biotechnology and Bioengineer
ing.34.6.774−784;(vi)J.L.Vega,ら(1990).Des
ign of Bioreactors for Coal Synthesis Ga
s Fermentations.Resources,Conservation a
nd Recycling.3.149−160;これらはすべて引用によって本明細書
に援用する。
【0092】
発酵は任意の適切なバイオリアクターで実施できる。例えば、連続撹拌槽リアクター(
CSTR)、固定化細胞リアクター、ガスリフトリアクター、バブルカラムリアクター(
BCR)、膜リアクター、例えば中空繊維膜バイオリアクター(HFMBR)又は細流床
リアクター(TBR)などである。また、本発明の一部の態様において、バイオリアクタ
ーは、微生物が培養される第一の増殖リアクター、及び増殖リアクターからの発酵ブロス
が供給され、ほとんどの発酵生成物(例えばエタノール及びアセテート)が製造される第
二の発酵リアクターを含んでいてもよい。
【0093】
基質がガス状である一部の態様においては、生成及び/又は変換相を高めた圧力で実施
するのが望ましいであろう。これは少なくとも数気圧であろう。そのような系は、高めた
圧力に耐えるように適合されたバイオリアクターの使用を採用することになる。多くのタ
イプのバイオリアクターが高圧に耐えるように適合できる。そのようなバイオリアクター
の例は、Buchi AUTOKLAV(登録商標)リアクターである。
【0094】
本発明の一部の態様において、バイオリアクターは、微生物が培養され、場合により酸
が製造される第一の増殖リアクター、及び増殖リアクターからのブロスが供給され、ほと
んどではないにせよ追加のアルコール発酵生成物(例えばエタノール)が製造される第二
の発酵リアクターを含んでいてもよい。前述のように、圧力定格の発酵バイオリアクター
が採用されうる。
【0095】
本発明の様々な態様に従って、発酵反応用の炭素源は、COを含有するガス状基質であ
る。該基質は、産業プロセスの副産物として、又は自動車の排ガスのような何らかの別の
供給源から得られるCO含有廃ガスでありうる。一定の態様において、産業プロセスは、
製鋼所のような鉄金属製品製造、非鉄製品製造、石油精製プロセス、石炭のガス化、発電
、カーボンブラック製造、アンモニア製造、メタノール製造及びコークス製造からなる群
から選ばれる。これらの態様において、CO含有基質は、それが大気中に放出される前に
何らかの好都合な方法を用いて産業プロセスから捕捉されうる。CO含有基質の組成によ
っては、それを発酵に導入する前に何らかの望まざる不純物、例えばダスト粒子を除去す
るために処理するのも望ましいであろう。例えば、ガス状基質を公知の方法を用いてろ過
又はスクラブすることができる。
【0096】
あるいは、CO含有基質はバイオマスのガス化から供給することもできる。ガス化のプ
ロセスは、限られた空気又は酸素の供給下でバイオマスを部分燃焼することを含む。得ら
れるガスは典型的には、主にCO及びHと、少量のCO、メタン、エチレン及びエタ
ンを含む。例えば、サトウキビから砂糖、又はトウモロコシや穀物からデンプンといった
食料の抽出及び加工中に得られるバイオマス副産物、又は林業によって生じる非食料バイ
オマス廃棄物をガス化すると、本発明で使用するのに適切なCO含有ガスを製造すること
ができる。
【0097】
CO含有基質は典型的には主要割合のCO、例えば、少なくとも約20%〜約100体
積%のCO、40%〜95体積%のCO、40%〜60体積%のCO、及び45%〜55
体積%のCOを含有する。特定の態様において、該基質は、約25%、又は約30%、又
は約35%、又は約40%、又は約45%、又は約50%のCO、又は約55%のCO、
又は約60体積%のCOを含む。6%といった低いCO濃度を有する基質も、特にH
びCOも併存している場合、適切なこともある。
【0098】
基質が何らかの水素を含有することは必要ではないが、本発明の方法による生成物の形
成にとってHの存在は無害であるべきである。特定の態様において、水素の存在はアル
コール生成の総体的効率の改良をもたらす。例えば、特定の態様において、基質は約2:
1、又は1:1、又は1:2の比率のH:COを含んでいてよい。他の態様では、基質
ストリームは低濃度のH、例えば5%未満、又は4%未満、又は3%未満、又は2%未
満、又は1%未満の水素を含むか、又は実質的に水素を含まない。基質はまた、いくらか
のCO、例えば約1%〜約80体積%のCO、又は1%〜約30体積%のCOを含
有することもある。
【0099】
典型的には、一酸化炭素は発酵反応にガス状態で添加される。しかしながら、本発明の
方法は、この状態での基質の添加に限定されない。例えば、一酸化炭素は液体で供給する
こともできる。例えば、液体を一酸化炭素含有ガスで飽和し、その液体をバイオリアクタ
ーに添加すればよい。これは標準的な方法論を用いて達成できる。一例を挙げると、マイ
クロバブル分散物発生装置(Hensirisakら、Scale−up of mic
robubble dispersion generator for aerobi
c fermentation;Applied Biochemstry and B
iotechnology Volume 101,Number 3/October
,2002)をこの目的のために使用することができる。
【0100】
本発明の一態様において、生成物は第一の基質及び第二の基質の発酵によって製造され
る。本発明の一特定の態様において、ピルベート又は炭水化物、例えばフルクトース又は
キシロースなどの第一の基質、及びCOを含む基質のような第二の基質が供給された場合
、アルコール及び/又は酸が製造される。発酵を撹乱すると、少なくとも酸(酢酸/アセ
テート)の一部はアルコール(エタノール)に変換される。本開示を考慮すれば、当該技
術分野で公知の、発酵に適切な多数の炭水化物の例、及び本発明の方法に適用可能な、炭
水化物の基質を発酵するのに使用される多数のプロセスタイプの例があることは分かるで
あろう。例を挙げると、適切な基質は、グルコース及びフルクトースのような単糖類、ス
クロース又はラクトースのようなオリゴ糖類、セルロース又はデンプンのような多糖類な
どを含みうるが、これらに限定されない。これらすべての炭水化物基質(及びそれらの混
合物)は本発明の様々な態様において使用するのに適切であるが、より一般的に使用され
うる炭水化物基質は、グルコース、フルクトース、キシロース及びスクロース(及びそれ
らの混合物)などである。
【0101】
当業者は、本開示を考慮すれば、本方法に使用するのに適切な発酵可能な糖は、例えば
米国特許出願公開第2007/0031918号に記載されているように、セルロース及
びリグノセルロース系バイオマスから前処理及び糖化のプロセスを通じて得られることは
分かるであろう。バイオマスは、あらゆるセルロース又はリグノセルロース系材料のこと
を言い、セルロースを含む材料、及び場合によりさらにヘミセルロース、リグニン、デン
プン、オリゴ糖及び/又は単糖を含む材料を含む。バイオマスは、バイオエネルギー作物
、農業廃棄物、都市固形廃棄物、産業固形廃棄物、製紙由来のスラッジ、庭ゴミ、木くず
及び林業廃棄物などであるが、これらに限定されない。
【0102】
本発明の一態様では、市販されているフルクトース又はキシロースが発酵のための任意
の炭素及びエネルギー源として使用される。
細菌の増殖及びCOから生成物への発酵を起こすためには、CO含有基質ガスの他に適
切な液体栄養培地もバイオリアクターに供給する必要があることは分かるであろう。栄養
培地は、使用される微生物の増殖を可能にするための十分なビタミン及びミネラルを含有
している。COを唯一の炭素源として使用するエタノールの発酵に適切な嫌気性培地は当
該技術分野で公知である。例えば、適切な培地は、上述の米国特許第5,173,429
号及び5,593,886号並びにWO02/08438、WO2007/115157
及びWO2008/115080に記載されている。本発明は、微生物の増殖及び/又は
発酵プロセスにおけるアルコール生成を支持するのに増大した効率を有する新規培地を提
供する。この培地については以下でさらに詳細に説明する。
【0103】
発酵は、望ましくは、所望の発酵(例えばCOからエタノール)が起こるのに適切な条
件下で実施されるべきである。考慮されるべき反応条件は、圧力、温度、ガス流速、液体
流速、培地pH、培地の酸化還元電位、撹拌速度(連続撹拌槽リアクターを使用する場合
)、植菌量、液相中のCOが制限的にならないような最大のガス基質濃度、及び生成物抑
制を回避するための最大の生成物濃度などである。適切な条件は、WO02/08438
、WO07/117157及びWO08/115080に記載されている。
【0104】
最適な反応条件は、一部は使用される特定の微生物に左右される。しかしながら、一般
的に、発酵は周囲圧力より高い圧力で実施されるのが好適である。高めた圧力での運転は
、気相から液相へのCO移動速度を著しく増加させる。COは液相で微生物にエタノール
生成のための炭素源として取り込まれる。このことは、ひいては、バイオリアクターが大
気圧ではなく高い圧力に維持された場合、リテンションタイム(バイオリアクター中の液
量÷流入ガス流速として定義される)を削減できることを意味している。
【0105】
また、所定のCO−生成物変換速度は一部は基質のリテンションタイムの関数であり、
所望のリテンションタイムの達成はバイオリアクターの必要容量を決定するので、加圧シ
ステムの使用は必要なバイオリアクターの容量を大きく削減でき、その結果、発酵装置の
資本コストも削減できる。米国特許第5,593,886号に示されている実施例によれ
ば、リアクターの容量はリアクターの運転圧力の増加に線形比例して削減できる。すなわ
ち、10気圧の圧力で運転されるバイオリアクターは、1気圧の圧力で運転されるリアク
ターの容量の10分の1ですむ。
【0106】
ガスからエタノールへの発酵を高圧で実施することの利益は他の場所でも記載されてい
る。例えば、WO02/08438には、30psig及び75psigの圧力下で実施
されたガス−エタノール発酵で、それぞれ150g/l/日及び369g/l/日のエタ
ノール生産性が得られたことが記載されている。しかしながら、類似の培地及び流入ガス
組成を用いて大気圧で実施された発酵例では、1日あたり1リットルにつき10〜20分
の1のエタノールしか生産されないことが分かった。
【0107】
CO含有ガス状基質の導入速度は、液相中のCO濃度が決して制限的にならないような
ものであることも望ましい。なぜならば、COが制限された条件だと、エタノール生成物
が培養物によって消費されるという結果になりうるからである。
【0108】
本発明の特定の態様において、エタノールは、系が密閉容器内で撹乱されると、微生物
発酵によって製造される。本明細書中に提供されているいくつかの実施例において、発酵
のpHは制御されず、酸からアルコールへの変換でpHは増大する。そのような例では、
pHは6.5付近に増大し、変換に対して阻害作用を有しうる。当業者であれば、本発明
の方法は発酵培地のpH制御を含みうることは分かるであろう。
【0109】
生成物回収
本発明の方法による発酵は、栄養培地中に、所望生成物(例えばエタノール及び/又は
ブタノール)及び/又は一つ又は複数の副産物(例えばアセテート及びブチレート)、並
びに細菌細胞を含む発酵ブロスをもたらす。
【0110】
発酵反応の生成物は公知の方法を用いて回収できる。方法の例は、WO07/1171
57、WO08/115080、米国特許第6,340,581号、米国特許第6,13
6,577号、米国特許第5,593,886号、米国特許第5,807,722号及び
米国特許第5,821,111号に記載されている。しかしながら、手短に、単なる例と
して述べると、エタノールは発酵ブロスから、分別蒸留又は蒸発、及び抽出発酵などの方
法によって回収できる。
【0111】
発酵ブロスからエタノールの蒸留によってエタノールと水の共沸混合物(すなわちエタ
ノール95%及び水5%)が得られる。無水エタノールは、その後、当該技術分野で周知
の分子ふるいエタノール脱水技術を用いて得ることができる。
【0112】
抽出発酵法は、発酵生体に対する毒性リスクの低い水混和性溶媒を使用して、エタノー
ルを希釈発酵ブロスから回収する方法である。例えば、オレイルアルコールは、このタイ
プの抽出プロセスに使用できる溶媒である。オレイルアルコールを発酵槽に連続的に導入
すると、この溶媒が上昇し、発酵槽の上部に層を形成する。これを連続的に抽出し、遠心
分離機に供給する。すると、水と細胞は該オレイルアルコールから容易に分離されて発酵
槽に戻されるが、エタノールを含んだ溶媒はフラッシュ蒸発装置に送り込まれる。ほとん
どのエタノールは蒸発し凝結するが、オレイルアルコールは非揮発性なので、発酵での再
使用のために回収される。
【0113】
発酵反応の副産物として生成するアセテートも、当該技術分野で公知の方法を用いて発
酵ブロスから回収できる。
例えば、活性炭フィルターを含む吸着システムが使用できる。この場合、適切な分離装
置を用いてまず微生物細胞を発酵ブロスから除去するのが好ましい。生成物回収のために
無細胞発酵ブロスを作り出す多数のろ過ベースの方法が当該技術分野で知られている。次
に、無細胞エタノール−及びアセテート−含有透過物を活性炭含有カラムに通してアセテ
ートを吸着させる。酸形のアセテート(酢酸)の方が塩(酢酸塩)形よりも活性炭に容易
に吸着される。そこで、活性炭カラムに通す前に発酵ブロスのpHを約3未満に下げてア
セテートの大部分を酢酸形に変換するのが好適である。
【0114】
活性炭に吸着された酢酸は、当該技術分野で公知の方法を用いて溶離によって回収でき
る。例えば、結合したアセテートの溶離にエタノールを使用することができる。一定の態
様において、発酵プロセスそのものから生成したエタノールをアセテートの溶離に使用し
てもよい。エタノールの沸点は78.8℃で酢酸のそれは107℃であるので、エタノー
ルとアセテートは、蒸留のような揮発性ベースの方法を用いて容易に相互分離できる。
【0115】
発酵ブロスからアセテートを回収するためのその他の方法も当該技術分野では公知であ
り、本発明のプロセスに使用できる。例えば、米国特許第6,368,819号及び6,
753,170号は、発酵ブロスから酢酸の抽出に使用できる溶媒及び共溶媒系について
記載している。エタノールの抽出発酵で記載したオレイルアルコールベースの系の例と同
様、米国特許第6,368,819号及び6,753,170号に記載の系は、酢酸生成
物を抽出するために発酵微生物の存在下でも不在下でも発酵ブロスと混合できる水非混和
性の溶媒/共溶媒を表している。次いで、酢酸生成物を含有する溶媒/共溶媒は蒸留によ
ってブロスから分離される。次に、酢酸を溶媒/共溶媒系から精製するために第二の蒸留
ステップを使用することもできる。
【0116】
発酵反応の生成物(例えばエタノール及びアセテート)は、発酵ブロスから、ブロスの
一部を発酵バイオリアクターから連続的に除去し、微生物細胞をブロスから分離し(都合
よくはろ過によって)、そして一つ又は複数の生成物をブロスから同時又は逐次回収する
ことによって回収することができる。エタノールの場合、上記の方法を用いて、蒸留によ
って都合よく回収でき、アセテートは活性炭上への吸着によって回収できる。分離された
微生物細胞は発酵バイオリアクターに戻すのが好ましい。エタノール及びアセテートの除
去後に残った無細胞透過物も発酵バイオリアクターに戻すのが好ましい。バイオリアクタ
ーに戻す前に追加の栄養素(例えばビタミンB類)を無細胞透過物に加えて栄養培地を補
充してもよい。また、酢酸の活性炭への吸着を増強するために上記のようにブロスのpH
を調整した場合、そのpHは、バイオリアクターに戻す前に発酵バイオリアクターのブロ
スのpHと類似したpHに再調整されるべきである。
【0117】
次に、本発明を以下の非制限的実施例を参照しながらさらに詳細に説明する。
酸からアルコールへの変換
特定の広い側面において、本発明は、微生物培養物を用いて酸を対応するアルコールに
変換する方法を提供する。特定の態様において、微生物培養物は、CO及び/又はH
含む基質の存在下で酸をアルコールに変換する。
【0118】
本発明の方法によれば、一つ又は複数のカルボキシド栄養性細菌を含む微生物培養物を
、該微生物培養物が酸をアルコールに変換するように撹乱することができる。本発明の方
法は、COを主要基質として利用し、一つ又は複数の酸及び/又はアルコールを生成する
様々な微生物発酵反応に適用可能である。例えば、アセテート、ブチレート、プロピオネ
ート、カプロエート、エタノール、プロパノール、及びブタノールを製造するための発酵
が本発明の方法に従って実施できる。本発明の方法は水素の製造にも使用できる。これら
の生成物は、例えば、ムーレラ(Moorella)、クロストリジウム(Clostridia)、ルミノコッ
カス/ペプトストレプトコッカス(Ruminococcus/Peptostreptococcus)、アセトバクテリ
ウム(Acetobacterium)、真正細菌(Eubacterium)、ブチリバクテリウム(Butyribacterium)
、オキソバクター(Oxobacter)、メタノサルシナ(Methanosarcina)、メタノサルシナ(Met
hanosarcina)、及びデスルホトマクルム(Desulfotomaculum)属のカルボキシド栄養性微生
物を用いる発酵によって製造できる。
【0119】
特定の態様において、微生物培養物は、典型的にはCOを含む基質を利用してアセテー
ト及び/又はエタノールを含む生成物を生成するクロストリジウム・オートエタノゲナム
(Clostridium autoethanogenum)のような酢酸生成菌を含む。そのような態様においては
、微生物培養物は、増殖及びアセテート生成を促進するために、発酵ブロス中で望ましい
条件下で増殖させることができる。酢酸生成菌の増殖(又は生成)相は、典型的には細胞
物質の増加(バイオマス蓄積)とアセテート生成を伴い、アルコールの同時生成はほとん
ど又は全くない。本発明の特定の態様では、微生物培養物は、発酵ブロス中に存在する酸
が対応するアルコールに変換されるように(例えばアセテートからエタノール及び/又は
ブチレートからブタノール)撹乱される。酸からアルコールへの変換は変換相と呼ぶこと
ができる。
【0120】
本発明の特定の態様において、微生物培養物は、生成相にある培養物によって製造され
た酸がアルコールに変換されるように撹乱することができる。追加的に又は代替的に、微
生物培養物は、生成相にある培養物によって製造されない酸がアルコールに変換されるよ
うに撹乱することもできる。例えば、微生物培養物によって製造されないアルコール(例
えばプロピオネート、ブチレート、バレレート、ヘキサノエート、イソバレレート、2−
メチルブチレート)を発酵ブロスに加えて対応するアルコールに変換することができる。
【0121】
本発明の一態様において、酸は、まず、変換段階の前又は最中の発酵反応に供給又は添
加される。酸は、場合により、所望期間にわたって単回又は複数回のバッチで添加しても
連続的に添加してもよい。バイオリアクターに添加される酸の量は変動しうる。しかしな
がら、発明者らは、発酵ブロス1Lあたり約0.1〜100gの酸の濃度を提供するよう
な量の酸の添加を想定している。さらに好ましくは、酸は、約0.1〜50g/L、又は
1〜20g/Lの濃度を提供する量で添加される。細菌培養物に添加される酸の適切なレ
ベルの更なる例は以下の“実施例”の項に提供する。
【0122】
酸は、バイオリアクターに回分(バッチ)方式、半回分方式(fed-batch)又は連続方式
で添加できる。一態様において、酸は、バイオリアクター内の酸の濃度を上記範囲内に維
持するために半回分方式又は連続方式で添加される。
【0123】
酸は、酸と一つ又は複数のその他の成分、担体、又は希釈剤を含有する組成物などの任
意の適切な形態でバイオリアクターに添加できる。一態様において、酸は、好ましくはp
H5.5に緩衝されたストック溶液として調製され、バイオリアクターに添加される。
【0124】
本発明で有用な酸は、微生物発酵を含む様々な公知法によって製造できる。一態様にお
いて、酸は、例えば炭水化物又は一酸化炭素を含む基質上での微生物発酵によって製造さ
れる。好ましくは、それらは一酸化炭素を含む基質上、さらに好ましくは一酸化炭素を含
むガス状基質上での微生物発酵によって製造される。該酸の製造に有用な細菌の例は、ク
ロストリジウム、ムーレラ及びルミノコッカス属の細菌を含み、真正細菌、ブチリバクテ
リウム、オキソバクター及びアセトバクテリウムがこの目的のために有用である。好適な
態様において、細菌は、クロストリジウム・オートエタノゲナム (Clostridium autoetha
nogenum)、クロストリジウム・リュングダリイ(Clostridium ljungdahlii)、クロストリ
ジウム・アセチカム(Clostridium aceticum)、クロストリジウム・フォルミカセチカム(C
lostridium formicaceticum)、クロストリジウム・テタノモルファム(Clostridium tetan
omorphum)、クロストリジウム・カルボキシジボランス(Clostridium carboxidivorans)、
ムーレラ・サーモアセチカ(Moorella thermoacetica)、ムーレラ・サーモオートトロフィ
カ(Moorella thermoautotrophica)、ルミノコッカス・プロダクタス(Ruminococcus produ
ctus)、ユーバクテリウム・リモサム(Eubacterium limosum)、ブチリバクテリウム・メチ
ロトロフィカム(Butyribacterium methylotrophicum)、オキソバクター・フェンニギイ(O
xobacter pfennigii)、及びアセトバクテリウム・ウーディイ(Acetobacterium woodii)か
ら選ばれる。当業者であれば、本発明に適用可能な、酸の製造に有用な追加の細菌は容易
に分かるであろう。
【0125】
本発明に有用な酸を製造するための微生物発酵法は、当業者には、特に本明細書中に提
供されている情報を考慮すれば、容易に分かるであろう。しかしながら、例を挙げると、
ブチレートは、Grethleinら、1991(Journal of Fermen
tation and Bioengineering,Vol 72、No 1,58
−60)に記載のように、一酸化炭素含有ガスから製造できる。
【0126】
本発明の一態様において、方法は、前述の方法に従って微生物発酵により所望酸を製造
後、該酸を使用してその対応アルコールを製造することをつなぐ半回分(batch-fed)又は
連続プロセスである。この態様において、方法は、少なくとも、a)第一のバイオリアク
ター内で、基質(好ましくは一酸化炭素を含む基質、さらに好ましくは一酸化炭素を含む
ガス状基質)を発酵して一つ又は複数の酸を製造し、b)第二のバイオリアクター内で、
一酸化炭素を含む基質の存在下、一つ又は複数の細菌株を培養し、そしてc)(a)から
の一つ又は複数の酸を第二のバイオリアクターに、前記一つ又は複数の細菌株が変換相に
あるときに導入して前記一つ又は複数の酸に対応するアルコールを製造するというステッ
プを含む。関連の態様においては、更なる増殖リアクターが第一及び/又は第二のバイオ
リアクターに細菌を供給してもよい。
【0127】
特定の態様では細菌は一酸化炭素を含む基質の存在下で培養されるが、代替の態様では
細菌を最初に代替基質、例えば糖又はその他の炭水化物を含む基質上で所望密度に増殖さ
せることもできる。その後、細菌を一酸化炭素を含む基質に移して、酸をそれらの対応す
るアルコールに変換すればよい。この態様は、前述のような二つのリアクターシステムで
実施できる。
【0128】
炭水化物とCOを含むガス状基質のような混合基質を利用する発酵反応を使用してアル
コール及び/又は酸を製造することができる。本発明の方法によれば、そのような発酵反
応を撹乱すると、酸の少なくとも一部が消費されて、アルコール生成が増大する。
【0129】
本発明の方法によれば、アルコール及び/又は酸は、炭水化物のような代替基質の微生
物発酵によって製造することもできる。所定の時点で、又は過剰量の酸が蓄積したら、C
Oをバイオリアクターに添加し、場合により発酵反応をさらに撹乱して、酸の少なくとも
一部をアルコールに変換することができる。
【0130】
本発明に有用な細菌の増殖及び該細菌による変換を支持するために、適切な栄養培地を
バイオリアクターに供給する必要があることは分かるであろう。当業者であれば、本発明
に有用な培地は容易に分かるであろう。しかしながら、一般的に、栄養培地は、COを含
む基質上での細菌の増殖を可能にするのに足るビタミン、ミネラル及び金属を含有する。
特に、該培地は、酸からそれらの対応アルコールへの変換に関与しうる酵素、例えばCO
DH(CO−デヒドロゲナーゼ)及びAOR酵素の活性を補助する一つ又は複数の金属を
含む。本発明の一態様において、該栄養培地はトリプトンも酵母エキスも含有しない。本
発明での使用に適切な嫌気性培地は、以下の“実施例”の項で後述するLM23及びLM
33培地の配合処方を含む。
【0131】
単一タイプの培地を使用して増殖及び生成物の形成を支持してもよいが、二つ以上の培
地を本発明のプロセスに使用できることは理解されるはずである。例えば、プロセスが別
個の増殖及び発酵リアクターを利用する場合、一つの培地を増殖リアクターに利用し、別
の培地を発酵リアクターに利用することができる。
【0132】
細菌の培養は、望ましくは、酸からアルコールへの変換を起こさせる適切な条件下で実
施されるべきである。考慮されるべき反応条件は、圧力、温度、ガス流速、液体流速、培
地pH、培地の酸化還元電位、撹拌速度(連続撹拌槽リアクターを使用する場合)、植菌
量、液相中のCOが制限的にならないような最大のガス基質濃度、及び生成物抑制を回避
するための最大の生成物濃度などである。条件の例は以下の“実施例”の項に提供する。
最適な反応条件は、一部は使用される細菌及び生成するアルコールに依存する。
【0133】
CO含有基質の導入速度は、液相中のCO濃度が決して制限的にならないようなもので
あることも望ましい。なぜならば、COが制限された条件だと、生成物が培養物によって
消費されるという結果になりうるからである。
【0134】
通常技能を有する者には、本開示を考慮すれば、微生物培養物を撹乱して微生物培養物
の少なくとも一部が生成相から変換相に切り替わるようにするために、様々な発酵条件又
はパラメーターを変更できることは分かるであろう。例えば、発酵パラメーターを、酸が
微生物培養物によってアルコールに変換されるように変更することができる。微生物培養
物を生成相から変換相に切り替えるための適切な撹乱は、発酵培地のpH及び/又はOR
Pの変更;発酵ブロス中のCO濃度の変更(発酵法に応じてこれを達成するための多数の
方法がある。例えば、ガス組成の変更、ガス圧の変更、ガス流速の変更、CSTR中の撹
拌速度の変更など);還元剤の添加;一つ又は複数の酸の添加などである。当業者であれ
ば、所望の撹乱を達成するための適切な方法は分かるであろうし、本発明の方法に従って
微生物培養物を撹乱するための追加の方法も分かるであろう。しかしながら、いくつかの
例示的方法を以下の“実施例”の項に記載する。本発明の特定の態様において、一つ又は
複数の酸を発酵ブロスに添加することは、微生物培養物の少なくとも一部が生成相から変
換相に切り替わるための適切な撹乱を提供する。例えば、活発に増殖し、アセテート及び
アルコールを生成している微生物培養物にアセテートを添加すると、培養物は添加された
アセテートの少なくとも一部をエタノールに変換することができる。
【0135】
本発明の一態様において、追加のアセテートは、連続的にアルコール及びアセテートを
生成している発酵反応に約15g/L/日の速度で添加できる。その結果、培養物は、該
アセテートをエタノールに6〜15g/L/日の速度で変換する。
【0136】
代替の態様では、追加の酸を、発酵ブロスのCO濃度の変更又は還元剤の添加といった
少なくとも一つのその他の撹乱と併せて添加することもできる。
本発明の方法に従って任意の適切な還元剤が使用できるが、例を挙げると、亜ジチオン
酸塩(例えば亜ジチオン酸ナトリウム)、硫化物塩(例えば硫化ナトリウム)又はシステ
イン及び場合により追加の酸を発酵反応に添加して、微生物培養物の少なくとも一部を生
成相から変換相に切り替えることができる。こうして酸が対応するアルコールに変換され
る。特定の態様において、主としてアセテートを生成する発酵反応に硫化ナトリウムを加
えると、該アセテートの少なくとも一部がエタノールに変換される。当業者であれば、酸
をアルコールに変換するために系を十分撹乱するのに必要な還元剤の量を決定することは
できるであろう。しかしながら、例を挙げると、還元剤は0.005mM〜10mM又は
0.05mM〜1mMの濃度範囲で添加することができる。本発明の特定の態様において
は、還元剤のほかにメチルビオロゲンのような酸化還元メディエーターを添加する。酸化
還元メディエーターの添加は有害作用があるので、本発明の特定の態様によれば、酸から
アルコールへの変換法は、好ましくは酸化還元メディエーターの不在下で実施される。
【0137】
本発明の別の態様において、微生物培養物を生成相から変換相に切り替えるために、発
酵反応にホルメートを添加する。本発明の特定の態様において、生成相の間に培養物によ
って製造されたアセテートがエタノールに変換されるように、2〜5g/Lのホルメート
を微生物培養物に添加することができる。特定の態様において、ホルメートは、培養物に
よって製造されたアセテートの少なくとも一部がエタノールに変換されるように、約3〜
6g/L/日の速度で添加できる。
【0138】
本発明の別の態様において、微生物培養物は、微生物培養物を含有する発酵培地のpH
及び/又はORP(open redox potential)を変更することによって撹乱することもでき、
その結果、酸がアルコールに変換される。当業者であれば、発酵培地のpH及び/又はO
RPを変更するための手段及び/又は方法は分かるであろう。しかしながら、例を挙げる
と、微生物培養物を含有する液体栄養培地のpHは、酸(例えば塩酸、硫酸又は酢酸)又
は塩基(例えば水酸化ナトリウム)を用いて調整できる。同様に、ORPは、pHと組み
合わせて、又は還元剤の添加によって独自に調整できる。
【0139】
特定の態様において、pH5.5に維持された液体栄養培地のpHは、生成相の間に製
造されたアセテートがエタノールに変換されるように水酸化ナトリウムを添加することに
よって5.9に上昇する。pHが変わると、培地の酸化還元電位は約−430から−47
0mVに低下する。
【0140】
別の態様において、バイオリアクター内のCO濃度の増大は、微生物培養物の少なくと
も一部を生成相から変換相に切り替える。一定の態様において、微生物培養物は、CST
Rのような撹拌バイオリアクター内の液体栄養培地中に確立される。COの溶解度が低い
ため、高細胞密度(例えば0.5〜5g/L)では、液体栄養培地中のCO濃度は、微生
物培養物がCOを、それが溶液中に移動するのとほぼ同じ速度で消費するにつれてゼロに
近づくことが認められている。液体栄養培地のCO濃度は、ヘンリーの法則に従ってCO
分圧の増加によって増大させることができる。従って、本発明の特定の態様に従って、微
生物培養物は、バイオリアクター内のCO分圧を増加させることによって撹乱される。
【0141】
本発明の一態様によれば、エタノールは、発酵培地中のCO濃度が増大すると、微生物
発酵によって製造される。この変換相の間にCOの少なくとも一部は酸及び/又はアルコ
ールに変換されうるが、大部分のエタノールは、酢酸/アセテートの微生物的還元によっ
て製造されうる。一部の発酵反応は、高めたCO分圧で運転できることが認められている
。従って、発酵培地中のCO濃度を増大させるために、CO分圧を、酸がアルコールに変
換されるように、少なくとも15psi、又は少なくとも20psi、又は少なくとも2
5psi、又は少なくとも30psi、又は少なくとも35psi、又は少なくとも40
psi増加させることができる。
【0142】
本発明の一態様において、発酵ブロス中の酸のかなりの部分はアルコールに変換される
。本発明の一部の態様において、CO濃度の増大は、発酵ブロス中で利用可能な酸の少な
くとも60%をアルコールに変換する。他の態様では、酸の少なくとも70%がアルコー
ルに変換される。他の態様では、酸の少なくとも80%がアルコールに変換される。
【0143】
本発明の特定の態様において、CO分圧は、酸が対応するアルコールに変換されるよう
に、約15.9psia、又は少なくとも20psia、又は少なくとも30psia、
又は少なくとも40psia、又は少なくとも50psiaに増大される。そのような態
様においては、ヘンリーの法則に従って、液体栄養培地中のCO濃度は、少なくとも1m
mol、又は少なくとも1.2mmol、又は少なくとも1.4mmol、又は少なくと
も1.6mmol、又は少なくとも1.8mmol、又は少なくとも2.2mmol、又
は少なくとも2.6mmol、又は少なくとも3.2mmolになることが期待される。
【0144】
本発明の一定の態様において、酸は対応するアルコールに、撹乱後の期間(例えば撹乱
後1時間まで、又は2時間まで、又は3時間まで、又は5時間まで)、およそ少なくとも
12g/L/日、又は少なくとも14g/L/日、又は少なくとも16g/L/日、又は
少なくとも18g/L/日、又は少なくとも20g/L/日、又は少なくとも22g/L
/日、又は少なくとも24g/L/日の速度で変換される。特定の態様において、COの
他に水素の存在下で、酸からアルコールへの変換速度は、撹乱後25g/L/日まで、又
は26g/L/日まで、又は27g/L/日まで増大する。しかしながら、変換速度は時
間が経つにつれて低下するので、一定の態様においては酸(例えばアセテート)は発酵反
応の過程中、蓄積を続けることができる。
【0145】
本発明の方法に従ってCOの濃度(又は分圧)を増大させることは、酸の生成及び微生
物の増殖を促進する。しかしながら、CO濃度(又は分圧)が十分な閾値濃度を超えて増
大すると、酸の生成及び/又は微生物の増殖は実質的に抑制される。従って、本発明の方
法によれば、微生物の増殖及び/又は酸の生成をCOの添加によって調節することができ
る。従って、本発明は、アルコール及び/又は酸を含む生成物の製造をCOの微生物発酵
によって制御するための手段を提供する。すなわち、発酵ブロス中に過剰の酸が蓄積した
ら、CO濃度を閾値濃度より上に増大させて、酸の少なくとも一部をアルコールに変換す
ることができる。
【0146】
一態様において、本発明は、酸の嫌気性細菌発酵からアルコールを製造するための方法
を提供する。一態様において、該方法は、少なくとも、COを含む基質、好ましくはCO
を含むガス状基質の存在下で、酸を嫌気的に発酵するステップを含み、前記COの濃度は
十分な閾値濃度より高い。
【0147】
本発明の一態様において、発酵培地中のCO濃度が十分な閾値濃度より高い場合、酢酸
/アセテートの微生物発酵によってエタノールが製造される。一態様において、COを含
む基質は、発酵培地中のCO濃度が少なくとも約2.5mmol/Lの閾値濃度を上回る
ように供給される。他の態様において、CO濃度は少なくとも約2.75mmol/L、
少なくとも約3mmol/L又は少なくとも約3.5mmol/Lの閾値を上回る。
【0148】
本発明の一態様において、COを含む基質はガス状で、該ガス状基質は、COが少なく
とも約37psiの分圧を有するように供給される。一態様において、CO分圧は少なく
とも約47psiである。
【0149】
別の態様において、アルコール及び/又は酸の製造法を提供する。該方法は、バイオリ
アクター内で第一の基質を嫌気的に発酵してアルコール及び/又は酸を含む一つ又は複数
の生成物を製造することを含み、COを含む第二の基質を、アセテートに比してエタノー
ルの生成が増大するように所望の時点で添加することができる。COを含む第二の基質は
、CO濃度が十分な閾値濃度を上回るように供給される。そのような条件下ではアルコー
ルの生成が増大する一方、酸は消費され、COは実質的に未変換でありうる。
【0150】
本発明の一態様において、第一の基質はCOを含有する。しかしながら、該方法はその
ような態様に限定されない。例えば、本発明の一部の態様において、第一の基質はピルベ
ートあるいは一つ又は複数の炭水化物を含みうる。前記一つ又は複数の炭水化物は、例え
ば、セルロース、セルロース加水分解物、デンプン、デンプン加水分解物、グルコース、
フルクトース、キシロース、アラビノース、又はラクトースでありうるが、これらに限定
されない。一態様において、炭水化物はフルクトース又はキシロースである。あるいは、
第一の基質は、CO及び/又はH又は発酵によって酸及び/又はアルコールを製造す
るのに適切な何らかのその他の成分を含んでいてもよい。
【0151】
本発明の更なる態様において、アルコール及び/又は酸の製造法を提供し、該方法は、
少なくとも、
(a)COを含む基質を第一の濃度で一つ又は複数の微生物の培養物を含有するバイオ
リアクターに供給し;そして
(b)培養物を嫌気的に発酵して前記基質からアルコール及び/又は酸を含む一つ又は
複数の生成物を製造する
ステップを含み、バイオリアクターに供給される基質の濃度は、酸に比してアルコールの
生成が増大するように、所望の時点で場合により増大させることができる。
【0152】
一態様において、基質は、(a)で発酵培地中のCO濃度が十分な閾値濃度を下回るよ
うに供給される。CO濃度を増大させる時点では、基質はCO濃度が十分な閾値濃度を上
回るように供給できる。
【0153】
本発明の更なる態様において、該方法は、少なくとも、
(a)COを含むガス状基質を第一のCO分圧で一つ又は複数の微生物の培養物を含有
するバイオリアクターに供給し;そして
(b)培養物を嫌気的に発酵して前記基質からエタノール及び/又は酢酸を含む一つ又
は複数の生成物を製造する
ステップを含み、CO分圧は、アセテートに比してエタノールの生成が増大するように、
所望の時点で場合により増大させることができる。
【0154】
特定の態様において、アルコール及び酸の生成及び/又は微生物の増殖は、発酵プロセ
ス全体を通してモニターされる。そのような条件下で、発酵は、実質的な酸生成から実質
的なアルコール生成の間で、必要に応じて又は場合により容易に変更することができる。
様々な態様において、ステップ(c)及び(d)は、アルコール製造の最適条件を維持す
るために発酵プロセス全体を通じて繰り返すことができる。
【0155】
本発明の方法に従って酸をアルコールに変換するのに、COを含む産業廃ガス、例えば
製鋼所からの廃ガスを用いることができる。さらに、本発明の方法によれば、Hを含み
COを含まないガスも、酸をアルコールに変換するのに使用することができる。
【0156】
本発明は、生成相から変換相、変換相から生成相に切り替えるために、CO濃度を変え
ることによって生成相と変換相を交互に繰り返すための手段も提供する。例えば、実施例
に示されているように、CO濃度を閾値濃度より高くすると、発酵ブロス中で利用可能な
酢酸のかなりの部分が消費され、同時にエタノール生成が増加する。CO濃度を閾値濃度
未満に下げると、生成相で観察されるような微生物の増殖及び酸生成が促進されうる。例
えば、特定の発酵反応を望ましいCO分圧で実施し、酸を含む生成物を製造する。適切な
時点で、又は特定の酸濃度で(例えば20g/Lまで、又は30g/Lまで、又は40g
/Lまで、又は50g/Lまで)、微生物培養物を撹乱して、酸がアルコールに変換され
るようにすることができる。本発明の方法に従って、CO分圧は、酸がアルコールに変換
されるように、少なくとも15psi、又は少なくとも20psi、又は少なくとも25
psi、又は少なくとも30psi、又は少なくとも35psi、又は少なくとも40p
si増加させることができる。変換後、アセテート生成が再開されるように、分圧を少な
くとも15psi、又は少なくとも20psi、又は少なくとも25psi、又は少なく
とも30psi、又は少なくとも35psi、又は少なくとも40psi下げることがで
きる。このプロセスは、アセテートの蓄積を防止し、アルコール濃度を増大するために繰
り返すことができる。
【0157】
代替の態様において、微生物培養物は、撹乱後、1時間まで、又は2時間まで、又は3
時間まで、又は5時間まで酸をアルコールに変換できる。その後、培養物が高いCO分圧
に順応し及び/又はCOを消費してCO濃度が低下すると、培養物は酸生成に戻ることに
なる。
【0158】
数サイクルの間、酸の濃度は低濃度、例えば20g/L未満、又は30g/L未満、又
は40g/L未満、又は50g/L未満のままで、アルコールの濃度は増大すると考えら
れる。
【0159】
二つ(以上)のバイオリアクターシステム
本発明の一部の態様において、発酵反応は、微生物が培養され、場合により酸が製造さ
れる増殖(又は生成)リアクターと、増殖リアクターからのブロスが供給され、製造され
た又は添加された酸がアルコールに変換されるように撹乱を適用される変換リアクターと
を含みうるシステムで、二つ以上の段階で実施することができる。前述のように、圧力定
格発酵バイオリアクターが採用されうる。
【0160】
図5を参照すると、発酵システム100は増殖バイオリアクター1を含む。ここでは、
発酵条件は、微生物バイオマス蓄積又は増殖及び/又は酸生成を促進するように適合させ
ることができる。例えば、液体栄養培地の成分、栄養供給速度、運転圧力、運転pH、基
質の内容及び濃度、基質供給速度、発酵槽撹拌速度(該当する場合)及び細胞密度などの
条件を微生物増殖及び/又は酸生成を促進するために適合できる。定常状態の微生物バイ
オマス及び酸生成を提供するための条件の例は、以下の“実施例”の項に提供する。
【0161】
増殖バイオリアクター1に供給される基質は前述のものから選ぶことができるが、特定
の態様において、基質は炭水化物又はCOであるか又は炭水化物とCOの組合せである。
液体栄養培地は、微生物バイオマス及び/又は酸が所望のレベル及び/又は所望の生成
速度に達するような時間、増殖バイオリアクター1内で実質的に維持されうる。増殖バイ
オリアクター内の微生物バイオマス及び/又は酸生成は、当該技術分野で公知の手段によ
って定期的又は連続的にモニターできる。さらに、増殖バイオリアクター内の条件は、増
殖及び/又は酸生成にとって実質的に最適な条件を維持するように調整されうる。
【0162】
当業者であれば、増殖バイオリアクター内の一定の条件下でアルコールも製造されうる
ことは分かるであろう。しかしながら、特定の態様においては酸が増殖バイオリアクター
における主要生成物となる。
【0163】
所望のバイオマス及び/又は酸のレベル又は速度に到達したら、酸の少なくとも一部及
び場合により微生物バイオマスの少なくとも一部は、適切な管路手段によって、増殖リア
クター1から変換リアクター2に、連続的に又は所望の時点で送られうる。例えば、増殖
バイオリアクター1内の所望の酸濃度、例えば少なくとも5g/L、又は少なくとも10
g/L、又は少なくとも20g/L、又は少なくとも30g/L、又は少なくとも40g
/L、又は少なくとも50g/L、又は少なくとも60g/L、又は少なくとも70g/
L、又は少なくとも80g/L、又は少なくとも90g/L、又は少なくとも100g/
Lで、前記酸及び場合により微生物バイオマスを含む液体栄養培地の一部を変換バイオリ
アクター2に送ることができる。ここで、微生物培養物を撹乱して、酸がアルコールに変
換されるようにすることができる。
【0164】
増殖バイオリアクター1を出る液体栄養培地は、定常状態のバイオマス及び/又は酸生
成のための適切な条件を提供するために典型的には新鮮な液体栄養培地と取り替えられる
。増殖バイオリアクター1内の酸濃度は、特定の微生物の阻害が起こるレベル未満に維持
されるべきである。
【0165】
本発明の特定の態様において、COを含む基質は、液体栄養培地中のCO濃度が少なく
とも約2.5mmol/L又は少なくとも約2.75mmol/L、又は少なくとも約3
mmol/L又は少なくとも約3.5mmol/Lになるように変換バイオリアクター2
に供給される。特定の態様において、COを含む基質はガス状で、CO分圧が少なくとも
約27psi、又は少なくとも約37psi又は少なくとも約47psiになるように供
給されうる。
【0166】
変換バイオリアクター2内の酸消費及び/又はアルコール生成は、当該技術分野で公知
の手段によって定期的又は連続的にモニターできる。液体栄養培地が所望のアルコール濃
度、例えば少なくとも5g/L、又は少なくとも10g/L、又は少なくとも20g/L
、又は少なくとも30g/L、又は少なくとも40g/L、又は少なくとも50g/L、
又は少なくとも60g/L、又は少なくとも70g/L、又は少なくとも80g/L、又
は少なくとも90g/L、又は少なくとも100g/Lに達したら、前記アルコールを含
む液体栄養培地の一部は生成物回収装置3に送ることができる。変換バイオリアクター内
のアルコール濃度は、アルコール生成に使用された微生物培養物の阻害が起こるレベル未
満に維持されるべきである。
【0167】
本発明の一態様において、増殖バイオリアクター1内で培養及び増殖される微生物は、
前述したようなカルボキシド栄養性微生物であり、条件は微生物増殖及び/又は酸生成の
ために最適化される。第二の微生物(同じくカルボキシド栄養性微生物)は変換バイオリ
アクター2に供給でき、条件はアルコール生成のために最適化される。増殖及び変換バイ
オリアクターに供給される微生物培養物は同じでも異なっていてもよい。しかしながら、
特定の態様において、両バイオリアクターに供給される微生物はクロストリジウム・オー
トエタノゲナム(Clostridium autoethanogenum)である。
【0168】
本発明の一定の態様において、増殖バイオリアクター1は、増殖バイオリアクターを出
る液体栄養培地から微生物バイオマスの少なくとも一部を除去し、増殖バイオリアクター
1に戻すことができる細胞リサイクルシステムを含む。あるいは、微生物バイオマスは増
殖リアクターを出る液体栄養培地から除去されず、変換バイオリアクター2に直接送られ
てもよい。
【0169】
特定の態様において、微生物培養物は増殖リアクター1で増殖し、酸を生成する。同じ
微生物培養物の少なくとも一部は、液体栄養培地中の酸と共に変換バイオリアクター2に
連続的に又は断続的に送られる。その場合、前記変換バイオリアクター2内の条件は(例
えば高めたCO濃度)、同じ微生物培養物によるアルコールの生成を促進する。
【0170】
増殖バイオリアクター1における液体栄養培地のリテンションタイムは、バイオマス蓄
積及び/又は酸生成を最適化するために調節できる。例えば、開始時はバイオマス蓄積が
望ましいので、増殖バイオリアクター1に流入及び流出する液体栄養培地の流速を低減し
て、増殖バイオリアクター1中の培地のリテンションタイムを増大させる。こうしてバイ
オマス及び/又は酸を所望レベル又は速度に到達させることが可能になる。
【0171】
バイオマス及び/又は酸生成が所望レベル又は速度に近づいたら又は到達したら、増殖
バイオリアクター1から変換バイオリアクター2への液体栄養培地の流速を増大させるこ
とによって液体リテンションタイムを短くすることができる。一定の態様において、微生
物バイオマス及び/又は酸のレベルはモニターされ、リテンションタイムは、実質的に定
常状態の酸濃度を達成するように調整することができる。さらに、条件は、増殖バイオリ
アクター1中少なくとも5g/L、又は少なくとも10g/L、又は少なくとも20g/
L、又は少なくとも30g/L、又は少なくとも40g/L、又は少なくとも50g/L
、又は少なくとも60g/L、又は少なくとも70g/L、又は少なくとも80g/L、
又は少なくとも90g/L又は少なくとも100g/Lの所望の定常状態の酸濃度を達成
するために調節することもできる。
【0172】
液体栄養培地の液体リテンションタイムは、効率的なアルコール生成を達成するために
変換バイオリアクター2でも調節することができる。例えば、液体栄養培地は一定の速度
で連続的に供給でき、変換バイオリアクター2内の液体栄養培地の容量は、所望のアルコ
ール変換を達成するのに適切なリテンションタイムを提供するように調整することができ
る。本発明の特定の態様において、アルコール変換相における高めたCO濃度でのアルコ
ール生成速度は、増殖及び/又は酸生成速度よりも速い。従って、変換バイオリアクター
2は増殖バイオリアクター1よりも実質的に小さくてよく、ひいては変換バイオリアクタ
ー2における液体リテンションタイムは実質的に短くなる。
【0173】
本開示を考慮すれば、当業者には各バイオリアクターの適切な又は望ましい構成が分か
るであろうが、特定の態様において、微生物培養物、酸及び場合によりアルコールを含む
液体栄養培地の一部は、栓流バイオリアクターとして構成された第二の容器に送られる。
CO分圧は栓流容器中で高めることができるので、液体栄養培地の一部が通過すると、酸
がアルコールに変換される。当業者であれば、バイオリアクターを通る流れを維持するた
めの静的ミキサーのような手段は分かるであろう。さらに、バイオリアクターは、バイオ
リアクター全体にわたって所要及び/又は所望のCO濃度を維持するために、全体に追加
の基質送達手段を含みうる。
【0174】
別の態様において、生成バイオリアクターは少なくとも一つの微生物培養物を含み、変
換バイオリアクターも少なくとも一つの微生物培養物を含む。酸及び/又はアルコールを
含有する発酵ブロスは、生成バイオリアクターから変換リアクターに、及び変換バイオリ
アクターから生成物回収装置に送ることができるが、それぞれの微生物培養物は細胞リサ
イクルシステムによって各バイオリアクターに実質的に保持される。そのような態様にお
いて、微生物は、生成バイオリアクター中の培養物が酸を生成し、変換バイオリアクター
中の培養物が酸をアルコールに変換する限り、異なっていてもよい。特定の態様において
、変換バイオリアクター中の微生物培養物は、高めたCO分圧で酸をアルコールに変換す
る。
【0175】
一定の態様において、他の発酵及び/又は産業プロセスから生成した酸を、場合により
変換バイオリアクターに添加してアルコールに変換することができる。
本発明の別の態様において、複数の増殖バイオリアクターを含み、酸及び場合により微
生物バイオマスを含む液体栄養培地を単一の変換バイオリアクターに供給するように構成
された発酵システムを提供する。例えば図6を参照すると、発酵システム101は、第一
及び第二の増殖バイオリアクター1a及び1bを含み、それぞれ酸を生成するように構成
されうる。増殖バイオリアクター1a及びbからの酸と場合によりバイオマスとを含有す
る液体栄養培地は、アルコール生成のために変換バイオリアクター2に供給できる。ある
いは、第一の増殖バイオリアクター1aを迅速なバイオマス蓄積用に構成し(例えば長い
液体リテンションタイム)、第二の増殖バイオリアクター1bを最適な酸生成用に構成し
てもよい(例えば短い液体リテンションタイム)。各増殖バイオリアクター1a及びbの
液体リテンションタイムは、システム全体にわたって最適なアルコール生成条件を維持す
るためにしかるべく調整することができる。
【0176】
複数の増殖バイオリアクターを含む態様では、アルコール生成に実質的な悪影響なしに
、一つ又は複数の増殖バイオリアクターをある期間(例えばメンテナンスのため)完全に
シャットダウンすることができる。
【実施例】
【0177】
培地の調製:
【0178】
【化1】

【0179】
【化2】

【0180】
培地をpH5.5で以下のように調製した。システインHClを除く全成分を400m
lの蒸留水中に混合した。この溶液を、95%CO、5%COガスの一定流量下で沸騰
するまで加熱し、室温に放冷することによって嫌気性にした。冷却したら、システインH
Clを加え、溶液のpHを5.5に調整した後、容量を1000mlにした。嫌気性は実
験を通して維持された。
【0181】
細菌:
クロストリジウム・オートエタノゲナム(Clostridium autoethanogenum)をGerma
n Resource Centre for Biological Materia
l(DSMZ)から得た。該細菌に付与された受入番号はDSMZ10061である。あ
るいは、使用されたクロストリジウム・オートエタノゲナムは、German Reso
urce Centre for Biological Material(DSMZ
)に寄託され、受入番号19630を割り当てられたものである。
【0182】
連続撹拌槽リアクター(CSTR)での連続発酵(典型的なセットアップ):
5リットル入りのバイオリアクターに、前述のように調製されたLM23又はLM33
培地4.9Lを入れた。ガスを大気圧の95%CO、5%COに切り替えた後、100
mlのクロストリジウム・オートエタノゲナム培養物を植菌した。バイオリアクターを3
7℃に維持し、培養開始時200rpmで撹拌した。増殖相の間、撹拌を400rpmに
上げた。pHは5.5に調整され、5MのNaOHの自動添加によって維持された。新鮮
な嫌気性培地をバイオリアクターに連続的に添加し、バイオリアクター内における規定の
バイオマス及びアセテートレベルを維持した。
【0183】
血清ボトル内、加圧下でのバッチ発酵:
無菌の血清ボトルをCO含有ガス(組成については実施例参照)で3回パージした後、
排気して−5psiの真空にした。バイオマス、アセテート及び微量のエタノールを含有
する大気圧下の活性培養物50mlを連続バイオリアクターから234ml入り血清ボト
ルに直接移した。次に204mlの上部空間を必要な過剰圧になるまでCO含有ガスで満
たした。振盪培養器を使用し、反応温度は37℃に維持した。
【0184】
細胞密度:
これらの実験における細胞密度を測定するためにサンプルの吸光度を600nmで測定
し(分光光度計)、乾燥質量を公表手順に従って計算することによって決定した。代謝産
物のレベルは高速液体クロマトグラフィー(HPLC)及び場合によってはガスクロマト
グラフィー(GC)を用いて特徴付けした。
【0185】
HPLC:
HPLCシステム Agilent 1100シリーズ。移動相:0.0025N 硫
酸。流速及び圧力:0.800mL/分。カラム:Alltech IOA;カタログ番
号9648、150×6.5mm、粒径5μm。カラム温度:60℃。検出器:屈折率。
検出器の温度:45℃。
【0186】
サンプル調製法:
400μLのサンプル及び50μLの0.15M ZnSO及び50μLの0.15
M Ba(OH)をエッペンドルフ管に入れる。該管を12,000rpm、4℃で1
0分間遠心分離する。200μLの上清をHPLCバイアルに移し、5μLをHPLC機
器に注入する。
【0187】
ガスクロマトグラフィー:
炎イオン化検出器を利用するガスクロマトグラフHP 5890シリーズII。キャピラ
リーGCカラム:EC1000−Alltech EC1000 30m×0.25mm
×0.25um。ガスクロマトグラフは、水素の総流速50mL/分及び5mLのパージ
フロー(1:10スプリット)のスプリットモードで運転され、カラムヘッド圧10PI
Sの結果、45cm/秒の線速度が得られた。温度プログラムは60℃で開始し、1分間
保持した後、30℃/分で215℃に上昇させ、2分間保持した。注入器(インジェクタ
ー)温度は210℃、検出器温度は225℃であった。
【0188】
サンプル調製法:
500μLのサンプルを12,000rpm、4℃で10分間遠心分離する。100μ
Lの上清を、200μLの水と100μLの内部標準スパイク溶液(10g/Lのプロパ
ン−1−オール、5g/Lのイソ酪酸、135mMの塩酸)入りのGCバイアルに移す。
該溶液1μLをGC機器に注入する。
【0189】
実施例1:有機酸から対応アルコールへの変換
実施例1A:CSTRでの酪酸からブタノールへの変換
8リットルのリアクターに7200mlの培地LM23を入れ、121℃で30分間オ
ートクレーブした。冷却中、培地にNを散布した。ガスを95%CO、5%COに切
り替えた後、160mlのクロストリジウム・オートエタノゲナム培養物を植菌した。バ
イオリアクターを37℃に維持し、培養開始時200rpmで撹拌した。増殖相の間、撹
拌を500rpmに上げた。pHは5.5に設定し、5MのNaOHの自動添加によって
維持した。20gの酪酸を含有し、pH5.5に緩衝されたn−ブチレート溶液を活発に
増殖中の培養物に直接添加した。発酵ブロスのサンプルを酪酸添加後0、24及び48時
間の時点で採取した(表1参照)。
【0190】
【表1】

【0191】
実施例1B:アセテート及びブチレートから対応アルコールへの変換:
血清バイアルを上記に従って準備した。微生物増殖が確立されたら(生成したアセテー
ト及び少量のエタノールを伴う)、下記化合物を血清ボトル中の50mlの活性培養物に
加えた。すなわち、1mlの亜ジチオン酸ナトリウム10g/l溶液、2mlのn−酪酸
溶液100g/l(pHは5Mの水酸化ナトリウムで5.5に調整)である。気相を25
psig過剰圧の95%CO、5%COガス混合物と交換した。酸の添加後、代謝産物
定量のために1mlのサンプルを様々な時点で採取した(表2参照)。
【0192】
【表2】

【0193】
メディエーターのメチルビオロゲンの存在はn−ブチレートからn−ブタノールへの変
換を著しく阻害している(表2)。さらに、酪酸はブタノールに化学量論的に変換された
(図1)。
【0194】
結果は、酸をそれらの対応アルコールに微生物変換する既報の方法に優るいくつかの重
要な利点を示している。例えば、クロストリジウム・オートエタノゲナム(C.オート)
を用いて標準的な発酵条件下で製造できないことがわかっているアルコールが製造できる
ことを初めて示している。
【0195】
細菌細胞は、所望アルコールを製造するための酸の添加前に取り出す必要はない。酸か
らアルコールへの変換は培地中でそのまま実施される。このことは、細胞の取扱い、遠心
分離及び再懸濁によって発生しうる細胞損傷のリスク、及び酸素汚染のリスクを著しく軽
減する。
【0196】
変換は、メチルビオロゲンのようなメディエーターの使用を必要としない。実際、メチ
ルビオロゲンの添加は、酸からアルコールへの変換速度を阻害又は少なくとも低減するこ
とが示された。そのようなメディエーターは有毒であることが多い。メディエーターの必
要性を排除することは、有毒化学物質の取扱いを軽減し、アルコール製造に伴うコストも
低減する。
【0197】
少なくともC.オートエタノゲナムの場合、細菌細胞は、増殖相及び酸からアルコール
への変換相中同じpH及び温度に維持することが可能である(37℃及びpH5.5)。
このことは、プロセスを単純化し、細胞への衝撃のリスクを低減する。
【0198】
さらに、細菌が変換相にあるときの酸の添加と、細胞が添加された酸を対応アルコール
に変換している間も一酸化炭素を消費し、アセテート及びエタノール(例えば)を製造し
続ける細胞の能力は、いくつかの価値ある生成物を同時に製造できる方法を提供する。
【0199】
実施例1C:様々な酸から対応アルコールへの変換:
血清バイアルを上記に従って準備した。ただし、5mLの酸水溶液を空のバイアルに加
え、NaOHでpHを5.5に調整した。亜ジチオン酸ナトリウム(10g/L水溶液0
.5mL)又はシステイン(6.25g/L水溶液1mL)を植菌の前に加えた。各血清
バイアルを95%COガスで30psigに加圧し、常に振盪しながら37℃でインキュ
ベートした。発酵ブロスのサンプルを72時間時点で採取した(表3参照)。
【0200】
【表3】

【0201】
上から分かるように、クロストリジウム・オートエタノゲナムは、還元剤の存在下で、
様々な酸をそれらの対応するアルコールに変換するのに使用できる。重ねて言うが、上記
酸及びアルコールはC.オートエタノゲナムの天然産生代謝産物でないことがわかってい
るので、このことは特に重要である。
【0202】
実施例2:アルコール生成に及ぼす還元剤濃度の効果
実施例2A:アルコール生成に及ぼす亜ジチオン酸ナトリウム濃度の効果
血清バイアルを上記に従って準備した。ただし、亜ジチオン酸ナトリウム(10g/L
水溶液)を植菌の前に加えた。各血清バイアルを70%CO、15%CO、14%N
、1%Hガスで30psigに加圧し、常に振盪しながら37℃でインキュベートした
。発酵ブロスのサンプルを48時間時点で採取した(表4参照)。
【0203】
【表4】

【0204】
結果は、酸からアルコールへの変換は広い還元剤濃度範囲で起こっているが、約2g/
Lという最適濃度があることを示している。
実施例2B:アルコール生成に及ぼす硫化ナトリウム濃度の効果
無菌の234ml入り血清ボトルを100%Nガスでパージした後、上記処方による
50mlの培地(LM33)を加え、121℃で20分間オートクレーブした。培地をC
r(II)溶液(約0.4mM)で還元し、硫化ナトリウム水溶液を加えた。血清ボトルに
、活発に増殖中のクロストリジウム・オートエタノゲナム培養物2.5mlを連続バイオ
リアクターから植菌した。Nのバックグラウンドを除去するために、184mlの上部
空間を70%CO、1%H、15%CO、及び14%Nガスで3回パージし、排気
して−14psigの真空にし、その後70%CO、1%H、15%CO、及び14
%Nガスを満たして30psigにした。反応温度は37℃に維持した。サンプルを時
々採取した。上部空間はサンプル採取後パージし、リフレッシュして30psigにした
(表5参照)。
【0205】
【表5】

【0206】
結果は、アセテート濃度のわずかな上昇を伴う短い遅滞期はあるが、硫化ナトリウムを
含有する各バイアル中のアセテートは、実験の時間的経過を通してアルコールに変換され
ることを示している。
【0207】
実施例3:CO分圧の効果
実施例3A:アルコール生成に及ぼすCO分圧の効果
血清バイアルを上記に従って準備した。各血清バイアルをCO中95%COのガス混
合物を用いて30又は40又は50psiaに加圧し、常に振盪しながら37℃でインキ
ュベートした。発酵ブロスのサンプルを18時間時点で採取した(表6参照)。
【0208】
【表6】

【0209】
30psi〜40psiのバイオリアクターボトル中で、約2g/lのアセテートと0
.6gのエタノールが生成し、上部空間の圧力降下は約17psiであった。このことは
、相当量のCOがアセテート生成に使用されたことを示している。
【0210】
驚くべきことに、50psiでは、約3g/lのアセテートが消費され、2.6g/l
のエタノールが生成した。この結果は、アセテートからエタノールへの変換が長時間起こ
る最適の閾値CO分圧があることを示している。CO濃度はCO分圧に比例するので、結
果は、C.オートエタノゲナムが酸をアルコールに変換する十分なCO濃度閾値があるこ
とを示している。しかしながら、低い圧力系でも酸をアルコールに変換できることに注意
すべきである。ただし、COが枯渇すると、アセテート生成が主流になる。さらに、特定
のCO(又はH)枯渇条件下では、培養物はアルコールを生成するのにアルコールを再
消費しうる(実施例4参照)。
【0211】
実施例3B:アルコール生成に及ぼすCO分圧の効果
これらの結果に基づいて、類似の発酵を、同じガス状基質を用い、異なる炭素源を補給
した培地で実施した。血清バイアルを上記に従って準備した。各血清バイアルをCO
95%COのガス混合物を用いて40又は50psiaに加圧し、常に振盪しながら37
℃でインキュベートした。対照バイオリアクターボトル(A)は未補給であったが、他の
ボトルにはいくらかのフルクトース(B)、キシロース(C)又はピルベート(D)を補
給した。これらのボトルを常に撹拌しながら37℃でインキュベートした。代謝産物及び
バイオマス濃度のほか、上部空間の過剰圧及びpHを発酵開始時及び40時間後に測定し
た。40psiaでの結果を表7に、50psiaでの結果を表8に示す。
【0212】
【表7】

【0213】
40psiaの全バイオリアクターボトルにおいて、ここで試験した全条件に対し、約
3.5g/lのアセテートと少量のエタノールが生成した。上部空間の圧力降下は約17
psigであった。このことは、相当部分のCOがアセテート生成のために消費されたこ
とを示す。pHは約0.9単位減少して4.6になった。全例において最小の微生物増殖
が見られた。
【0214】
【表8】

【0215】
50psiaの全バイオリアクターボトルにおいて、ここで試験した全条件に対し、相
当量のアセテートが消費され、3g/lを超えるエタノールが生成した。アセテート消費
とエタノール生成との間には強い相関関係がある。アセテート消費/エタノール生成は、
消費されたアセテート各モルに対し、約1モルのエタノールが生成するという方式で起こ
る(表9)。しかしながら、補給された炭水化物(又はピルベート)は実質的に消費され
、光学密度で推定したバイオマスレベルは減少した。どの場合も、上部空間の圧力降下は
10psi未満であった。すべての場合において、pHは約0.9単位上昇して6.4に
なった。
【0216】
【表9】

【0217】
消費されたアセテート/開始時のアセテート(列1)について見てみると、発酵ブロス
中に存在する少なくとも50%、場合によっては75%を超えるアセテートが高めた圧力
で消費されている。生成したエタノール/開始時のアセテート(列2)について見てみる
と、消費された酸の少なくとも60%、場合によっては少なくとも80%がアルコールに
置き換わっている。生成したエタノール/消費されたアセテート(列3)について見てみ
ると、発酵プロセスで消費されたアセテートの量と生成したアルコールとの間には強い相
関がある。40及び50psiaの上部空間過剰圧で培地中に溶解されているCOの理論
的レベルは、ヘンリーの法則に基づいて表10に計算した。
【0218】
【表10】

【0219】
ここに提示した結果は、それを超えるとC.オートエタノゲナムの代謝がCO基質から
のアセテート及びバイオマス生成から、アセテートの少なくとも一部のエタノールへの変
換に実質的に変化するCO分圧があることを示している。従って、CO分圧が37psi
未満の場合、アセテート及びバイオマスがCOガス代謝の主要生成物であり、pHは酸性
になって更なる増殖が阻害される。CO分圧が37psiを超えると、バイオマス増殖及
びアセテート生成は阻害されると見られ、アセテートの消費が起こる。さらに、エタノー
ル生成がわずかなCO消費で起こる。同時に、pHは6.5に達するまで増加する。その
pHで細菌は実質的に阻害され、アセテートからエタノールへの変換が停止するようであ
る。試験した濃度で、フルクトース、キシロース又はピルベートの目立った効果はない。
【0220】
実施例3C:アルコール生成に及ぼすCO分圧の効果
血清バイアルを上記に従って準備した。各血清バイアルを指定のガスで25psig(
40psia)に加圧し、常に振盪しながら37℃でインキュベートした。発酵ブロスの
サンプルを1時間、3時間及び5時間の間隔で採取した(表11参照)。
【0221】
【表11】

【0222】
結果は、酸がアルコールに変換される十分な閾値CO分圧は20psia未満であるこ
とを示している。短い反応時間スケールにわたって(実施例3A〜C参照)、試験したす
べてのCO分圧でアセテートはアルコールに実質的に化学量論的に変換されている。従っ
て、20psiaを超えるCO分圧は、C.オートエタノゲナムが酸をアルコールに変換
するのに十分である。
【0223】
実施例4:ガス組成の効果
実施例4A:アセテートからエタノールへの変換に及ぼす純ガスの効果
血清バイアルを上記に従って準備した。各血清バイアルを指定のガスで25psig(
40psia)に加圧し、常に振盪しながら37℃でインキュベートした。発酵ブロスの
サンプルを1時間、3時間及び5時間の間隔で採取した(表12参照)。
【0224】
【表12】

【0225】
結果は、C.オートエタノゲナムが酸をアルコールに変換するためにはCO又はH
ような還元ガスが必要であることを明らかに示している。酸からアルコールへの代謝経路
はヒドロゲナーゼ酵素を含むので、水素はCOの代わりに使用できると考えられる。さら
に、Hは酸をアルコールに変換するための適切なエネルギー源であるが、エネルギー源
の他に炭素源も必要とする生合成及び/又はアセテート生成には不向きであろうというこ
とも考えられる。
【0226】
実施例4B:エタノール生成に及ぼすガス組成の効果
血清バイアルを上記に従って準備した。ただし、植菌前に、NaOH(水溶液)でpH
5.5に緩衝された酪酸溶液をバイアルに添加(スパイク)した。t=0における初期濃
度は、アセテート6.7g/l及びブチレート0.8g/Lであった(エタノールもブタ
ノールも存在せず)。発酵ブロスのサンプルを24時間時点で採取した(表13参照)。
【0227】
【表13】

【0228】
酪酸及び酢酸のような酸は、混合CO/H基質の存在下でエタノール及びブタノール
を含むアルコールに変換できる。明らかに、Hの不在下では増大されたCO分圧が総体
的変換を改良する。しかしながら、特に高めた分圧でのHの存在も、総体的変換を改良
する。
【0229】
実施例4C:エタノール生成に及ぼすガス組成の効果
血清バイアルを上記に従って準備した。各血清バイアルを指定のガスで35psig(
50psia)に加圧し、常に振盪しながら37℃でインキュベートした。発酵ブロスの
サンプルを18時間時点で採取した(表14参照)。
【0230】
【表14】

【0231】
CO及びHを含む混合基質は、C.オートエタノゲナムの存在下で酸をアルコールに
変換するのに使用することができる。興味深いことに、実験の時間スケール全体を通して
、アセテートが消費されるよりも著しく多いアルコールが生成している。このことは、ア
セテートはエタノールに化学量論的に変換されるが、COが完全に消費されるまでは追加
のアセテートが蓄積し、それがアルコールに変換されうることを示している。
【0232】
実施例4E:アルコール生成に及ぼすCO及びH分圧の効果
血清バイアルを上記に従って準備した。各血清バイアルを指定のガスで35psig(
50psia)に加圧し、常に振盪しながら37℃でインキュベートした。発酵ブロスの
サンプルを1.5時間、3時間、5時間及び24時間の間隔で採取した(表15参照)。
【0233】
【表15】

【0234】
結果は、H濃度が高いと、酸からアルコールへの総体的変換に改良が見られることを
示している。しかしながら、実験の経過に伴ってH濃度が枯渇すると、特にH濃度が
低い場合(例えば20%)、エタノールはアセテートに再変換されると考えられる。
【0235】
実施例4F:製鋼所廃ガス中のCO分圧の効果
血清バイアルを上記に従って準備した。各血清バイアルを製鋼所の廃ガス(約53%C
O;18%CO;26%N;3%H)で25psig(40psia)に加圧し、
常に振盪しながら37℃でインキュベートした。発酵ブロスのサンプルを1時間、3時間
及び5時間の間隔で採取した(表16参照)。
【0236】
【表16】

【0237】
製鋼所の廃ガスは酸をアルコールに変換するのに使用することができる。廃ガス中のC
O分圧の増大は酸変換に有益な効果を有する。
実施例4G:エタノール生成に及ぼすCO分圧の効果
血清バイアルを上記に従って準備した。各血清バイアルを指定のガスで35psig(
50psia)に加圧し、常に振盪しながら37℃でインキュベートした。発酵ブロスの
サンプルを1時間、3時間及び5時間の間隔で採取した(表17参照)。
【0238】
【表17】

【0239】
様々な成分を含有するCOを含む基質は、酸をアルコールに変換するのに使用すること
ができる。しかしながら、増大したCO濃度はアルコール生成にわずかな阻害作用を有
することに注意する。
【0240】
実施例5:ホルメート添加の効果
実施例5A:バッチ容器中のホルメート濃度:
血清バイアルを上記に従って準備した。ただし、ホルメート水溶液を空のバイアルに加
え、NaOHでpHを5.5に調整した後、植菌した。各血清バイアルを50%CO;1
2.5%CO;37.5%Nガスで25psigに加圧し、常に振盪しながら37℃
でインキュベートした。発酵ブロスのサンプルを72時間時点で採取した(表18参照)

【0241】
【表18】

【0242】
ホルメートの不在下ではC.オートエタノゲナムはアセテートと少量のアルコールを製
造し続ける。しかしながら、発酵反応にホルメートを添加すると、アセテートはアルコー
ルに実質的に化学量論的な量で変換される。変換速度は、低いホルメート濃度(2g/L
)で最高となり、高いホルメート濃度では阻害及び/又は有毒作用がありうることを示し
ている。
【0243】
実施例5B:CSTRでのホルメート添加:
5リットル入りCSTR中の5Lの嫌気性発酵培地(上記のようにして調製)に、活発
に増殖中のクロストリジウム・オートエタノゲナム培養物(DSMZ19630)を5%
(v/v)のレベルで植菌した。70%COと15%CO 1%H 14%Nガス
の連続流を拡散スパージャーによって60ml/分の体積流速で発酵容器の底部に導入し
た。発酵槽の初期pHは5.5に維持した。数日間の微生物増殖後、Nを散布した新鮮
な発酵培地を2mL/分の流速でCSTRに導入するポンプのスイッチを入れることによ
って連続培養を確立した。高さ制御装置(level controller)を使用して発酵容器内の培養
物の正確な高さを維持する。これは、発酵容器内の高さが高くなりすぎたら自動的にスイ
ッチが入り、高さが設定の高さに下がるまで容器から培養物を汲み出すレベルプローブと
ポンプを使用することによって行われる。こうすることによって、新鮮培地を培養物に安
定供給し、活発に増殖する高生存性培養物を維持することが可能になる。
【0244】
数日間の連続運転後、新鮮培地の供給を停止し、発酵槽をバッチ構成に戻した。時間=
0(図2)でギ酸(15mL)を添加し、pHをNaOHの添加によって5.5に調整し
た。約30分間の間に発酵培地のpHは6に上昇した。培養物によってアセテートが消費
され、エタノールが生成したためである。そこで、追加のギ酸(3mL)を添加してpH
を5.5に下げ戻した。約t=60分の時点で、ギ酸の導入を、pHが設定点の5.5よ
り高くなると反応容器に自動的に投与するように構成された投与ポンプを使って行うよう
にした。ホルメート投与ポンプは約5時間運転され、この間、培養物によってアセテート
が消費され、エタノールが生成した。
【0245】
結果は、連続的にアセテートを生成している発酵反応を、系の撹乱、例えばホルメート
の添加によって、アセテート生成から、アセテートからアルコールへの変換に切り替えら
れることを示している。変換は、実験の間を通して、実質的に化学量論的である。
【0246】
実施例6:追加のアセテート添加の効果
1L入りCSTR中の1Lの嫌気性発酵培地(上記のように調製、ただし下記の変更あ
り:低濃度ビタミン溶液[0.4ml/Lのパントテン酸非含有LS03及び500ul
/Lのパントテン酸溶液(40mg/L)]をストック溶液に添加した)に、活発に増殖
中のクロストリジウム・オートエタノゲナム培養物(DSMZ19630)を5%(v/
v)のレベルで植菌した。35%COと60%H 5%CHガスの連続流を拡散スパ
ージャーによって10ml/分の体積流速で発酵容器の底部に導入した。発酵槽の初期p
Hは5.5に維持した。数日間の微生物増殖後、ガス流速を20ml/分に上げ、撹拌を
200rpmから500rpmに増大した。新鮮培地(上記のように調製、ただし下記の
変更あり:低濃度ビタミン溶液[0.4ml/Lのパントテン酸非含有LS03及び1m
l/Lのパントテン酸溶液(40mg/L)]をストック溶液に添加した)を、発酵槽内
の培地体積を一定に維持しながら導入することによって連続培養を確立した。新鮮培地の
流速を数週間かけて6ml/時間から54ml/時間に上げた。数週間の連続運転後、ガ
ス供給を35%CO 45%H 15%CH 5%COに変え、数週間運転した。
エタノールの生産性は約6g/L/日に維持された。52日目、連続培養に供給されてい
る新鮮培地に、pH5.5に緩衝された15g/Lの酢酸を2日間補給した。この間、ア
ルコールの生産性は約15g/Lに増大し(53日目−図3)、その後12g/L(54
日目)になった。発酵槽に導入されたアセテートの多くの部分がアルコールに変換された
と考えられる。
【0247】
結果は、連続的にアルコールを生成している発酵反応において、追加の酸を添加するこ
とによってアルコール生産性を改良できることを示している。追加の酸(例えばアセテー
ト)の添加は、発酵反応を撹乱し、添加された酸の相当部分がアルコール、例えばエタノ
ールに変換されるようになる。
【0248】
実施例7:CO含有ガスを用いるエタノール生成に及ぼすpHの効果
1リットル入りCSTR中の1Lの嫌気性LM33発酵培地に、活発に増殖中のクロス
トリジウム・オートエタノゲナム培養物(DSMZ19630)を5%(v/v)のレベ
ルで植菌した。70%COと15%CO 1%H 14%Nガスの連続流を拡散ス
パージャーによって19ml/分の体積流速で発酵容器の底部に導入した。発酵槽の初期
pHは5.5に設定した。大部分の実験で、培養物の酢酸濃度は、細胞リサイクル及び培
地交換システムによって4g/L未満に維持された。細胞をクロスフロー膜Viva 2
00に通してろ液を回収し、細胞を発酵容器に戻した。ろ液は新鮮培地と交換して、反応
器内の培地体積が一定に保たれるよう確保した。3日目、細胞リサイクルシステムのスイ
ッチを切り、3日間約5.6に維持されていたpH(ORPは−400〜−430mVの
間で変動)を上げた。pHは約5.9に調整され、ORPは約−470mVに低下した。
【0249】
結果は、pH5.6でアセテートとエタノールは同時に生成し、アセテートの方が過剰
であることを示している。図4を参照すると、この発酵段階は微生物増殖期間とも関連し
ている。pHを上げるとORPは約−470mVに低下し、アルコール生成速度は約1.
2g/L/日に増大した。この間、多少のアセテートが約0.2g/L/日の速度で消費
された。従って、液体栄養培地のpHを調整することによって、微生物培養物を、アセテ
ートを生成する生成相から、アセテートをエタノールに変換する変換相に切り替えること
ができる。
【0250】
本発明をある好適な態様に関して本明細書中で説明してきたが、それは過度の実験をせ
ずとも読者が本発明を実施できるようにするためである。当業者であれば、本発明は、具
体的に記載されたもの以外にも、変形及び変更が可能であることは分かるであろう。本発
明はすべてのそのような変形及び変更も含むことは理解されるはずである。さらに、表題
、見出しなどは、本文献に対する読者の理解を増進するために提供されるものであって、
本発明の範囲を制限するものとして読まれるべきでない。
【0251】
以上及び以下で引用されたすべての出願、特許及び出版物(もしあるとすれば)の全開
示内容は引用によって本明細書に援用する。
本明細書におけるいずれの先行技術への言及も、その先行技術が世界中のあらゆる国に
おいて共通の一般的知識の一部を形成していることの承認又は何らかの形態の示唆ではな
く、そのように受け取られるべきでもない。
【0252】
本明細書及び以下の請求項の全体を通じて、文脈上他の意味に解すべき場合を除き、“
含む(comprise, comprising)”などの用語は、排他的意味とは反対に、包括的意味、すな
わち“含むが、限定されない”の意味と解釈されるものとする。
【符号の説明】
【0253】
1 増殖バイオリアクター
1a 増殖バイオリアクター
1b 増殖バイオリアクター
2 変換バイオリアクター
3 生成物回収装置
100 発酵システム
101 発酵システム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
CO及び/又はHを含む基質の存在下、微生物培養物を使用して酸を対応するアルコ
ールに変換するための方法。
【請求項2】
前記方法が、
a.バイオリアクター内でCOを含む基質の存在下、一つ又は複数のカルボキシド栄養
性細菌株を培養し、一つ又は複数の酸及び場合により一つ又は複数のアルコールを製造し
;そして
b.少なくとも一つの酸が少なくとも一つのアルコールに変換されるように微生物培養
物を撹乱する
ことを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ステップ(a)で製造された酸の少なくとも一部がステップ(b)でアルコールに変換
される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記酸がアセテートであり、前記アルコールがエタノールである、請求項2又は3に記
載の方法。
【請求項5】
少なくとも一つの追加の酸をステップ(a)及び/又はステップ(b)の最中にバイオ
リアクターに添加でき、少なくとも一つのアルコールに変換することができる、請求項2
〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記酸がモノ又はジ−カルボン酸である、請求項2〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
微生物培養物の撹乱が、
・微生物培養物を含有する液体栄養培地のpHを変えること;
・微生物培養物を含有する液体栄養培地のORPを変えること;
・一つ又は複数の酸をバイオリアクターに添加すること;
・一つ又は複数の還元剤をバイオリアクターに添加すること;
・微生物培養物を含有する液体栄養培地中のCO濃度を変えること;
・バイオリアクター内のCO分圧を変えること、この場合、COを含む基質はガス状で
ある;
の一つ又は複数を含む、請求項2〜6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
添加される酸がホルメート及び/又はアセテートである、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
添加される還元剤が、亜ジチオン酸ナトリウム、システイン及び/又は硫化ナトリウム
である、請求項7又は8に記載の方法。
【請求項10】
CO濃度を変えるステップが、液体栄養培地中のCO濃度を少なくとも1mmol増加
させることを含む、請求項7〜9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
CO分圧を増大させるステップが、分圧を少なくとも15psi増大させることを含む
、請求項7〜10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
CO分圧を増大させるステップが、分圧を少なくとも37psiの十分な閾値より上に
増大させることを含む、請求項7〜11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
ステップ(a)が実質的に第一の増殖バイオリアクターで実施され、ステップ(b)が
実質的に第二の変換バイオリアクターで実施される、請求項2〜12のいずれか1項に記
載の方法。
【請求項14】
一つ又は複数のアルコールの製造法であって、前記方法は、少なくとも、
・第一のバイオリアクターにおいて、基質を発酵させて一つ又は複数の酸を製造させ;
・第二のバイオリアクターにおいて、一酸化炭素を含む基質の存在下、一つ又は複数の
細菌株を培養し;
・第一のバイオリアクターからの一つ又は複数の酸を、前記一つ又は複数の細菌株が変
換相にあるときに第二のバイオリアクターに導入して、前記一つ又は複数の酸に対応する
アルコールを製造させる;ここで、製造されるアルコールは、前記一つ又は複数の細菌株
が前記酸の不在下で前記基質上で増殖した場合に製造することができるアルコールではな
い;
ステップを含む方法。
【請求項15】
前記方法がメディエーターの不在下で実施される、請求項1〜14のいずれか1項に記
載の方法。
【請求項16】
COを含む基質がガス状基質である、請求項1〜15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
COを含む基質が、少なくとも約15%〜約100体積%のCOを含む、請求項16に
記載の方法。
【請求項18】
COを含む基質が、少なくとも約40%〜約70体積%のCOを含む、請求項16又は
17に記載の方法。
【請求項19】
基質が製鋼所から得られたガスを含む、請求項16〜18のいずれか1項に記載の方法

【請求項20】
細菌が、クロストリジウム(Clostridium)、ムーレラ(Moorella)、ピロコッカス(Pyroco
ccus)、真正細菌(Eubacterium)、デスルホバクテリウム(Desulfobacterium)、カルボキシ
ドサーマス(Carboxydothermus)、アセトゲニウム(Acetogenium)、アセトバクテリウム(Ac
etobacterium)、アセトアナエロビウム(Acetoanaerobium)、ブチリバクテリウム(Butyrib
acterium)及びペプトストレプトコッカス(Peptostreptococcus)からなる群から選ばれる
、請求項1〜19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
細菌がクロストリジウム・オートエタノゲナム(Clostridium autoethanogenum)である
、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
発酵システムであって、
・COを含む基質の微生物発酵によって酸及び場合によりアルコールを製造するように
適合された少なくとも一つのバイオリアクター;及び
・酸がアルコールに変換されるように微生物発酵を撹乱するための手段
を含む発酵システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−63081(P2013−63081A)
【公開日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−264362(P2012−264362)
【出願日】平成24年12月3日(2012.12.3)
【分割の表示】特願2010−550626(P2010−550626)の分割
【原出願日】平成21年2月18日(2009.2.18)
【出願人】(510119555)ランザテク・ニュージーランド・リミテッド (6)
【Fターム(参考)】