説明

微生物の保存および送達のための組成物および方法

本発明は、細菌学の分野に関する。特に、本発明は、プロバイオティクス微生物の組成物、ならびに例えばカテーテル関連尿路感染症の治療および予防において、かかる組成物を製造および使用するための方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、細菌学およびプロバイオティクス療法の分野に関する。特に、本発明は、新規組成物(例えばプロバイオティクス微生物調製物)および同組成物を使用する方法(例えばカテーテル等の表面を被覆するために)に関する。いくつかの実施形態では、本発明は、生存可能なコロニー形成微生物を含有する、例えば医療用潤滑剤等のゲルを形成するために再構成することができる微生物を含む、凍結乾燥した組成物を含む。
【背景技術】
【0002】
細菌尿症および膿尿症は、尿道留置カテーテルを有する患者内に均一に存在する。抗菌療法は、細菌を一時的に根絶し得るが、細菌尿症はすぐに再発し、感染菌は、抗生物質に対して徐々に耐性を有するようになる。慢性の無症候性感染症を根絶するための、または併発性の臨床的に重要な感染症を予防するための治療方法は、知られていない。
【0003】
カテーテル関連尿路感染症(CAUTI)を予防する、または遅延させることを目的とする世界共通のガイドラインは、以下を含む。不必要なカテーテル挿入の回避、カテーテルの挿入および手入れに対して訓練を受けた専門家の使用、もはや必要ではない場合のカテーテルの迅速な除去、無菌閉鎖ドレナージの維持、良好なドレナージの維持、システムの最小限の操作、尿道カテーテルの代わりのコンドームまたは恥骨上カテーテルの使用、および病院内のカテーテルが挿入された患者の互いおよび他の患者からの分離(NIDRR, “ SCI Nurs 10(2):49−61 January 27− 29, 1992.、Maki, D. G. and P. A. Tambyah, Emerg Infect Dis 7(2):342−7(2001))。試験されてきたほとんどの対策は、無作為化臨床試験において有効性を示してこなかったが、神経因性膀胱を有する患者には当てはまらないものもある。
【0004】
カテーテル挿入時の抗感染性潤滑剤の使用、密閉カテーテル−採取管の接合部または逆流防止弁の使用、トリプルルーメンカテーテルを通る抗感染性溶液でのカテーテルが挿入された膀胱の持続洗浄、および採取バッグへの抗感染性溶液の周期的注入を含む、CAUTIの予防のための技術が試験されてきた。しかしながら、これらの技術は、無作為化臨床試験において有効であることが確認されていない(Maki and Tambyah、上記を参照)。
【0005】
CAUTIの罹患率を低減するための抗感染性カテーテル材料の使用は、研究中である。抗菌剤を含浸したカテーテルは、ある程度の利点を有し得るが、研究の規模が小さかった(Maki and Tambyah、上記を参照)。酸化銀被覆カテーテルは、大規模の無作為化試験において有効性を示さず、銀合金ヒドロゲルカテーテルが感染症を低減させる能力の試験は、矛盾する試験結果をもたらした(Wong, E. and T. Hooton, “Guideline for prevention of catheter−associated urinary tract infections.” Center for Disease Control and Prevention(1981)、Rupp, M. E., T. Fitzgerald, et al. Am J Infect Control 32(8):445−50(2004)。カテーテルが挿入された患者における無症候性尿路感染症(UTI)の抗菌性(例えば、抗生物質および/または防腐剤)治療は、治療されたおよび未治療のカテーテルが挿入された患者が、治療終了の数週間後に同様の感染症有病率、およびUTIの症状を発現する同等の可能性を有するため、有効であることが示されていない(Nicolle, L. E., Drugs Aging 22(8):627−39(2005)。さらに、無症候性CAUTIの抗菌性治療は、薬剤耐性微生物の発生に関連し、症候性感染症が発生した場合に管理を困難にしてきた。
【0006】
長期膀胱カテーテルが挿入されている患者における細菌尿症を根絶することが困難であることを考慮すると、カテーテルに依存した個人における慢性細菌尿症および再発性UTIの問題は、抗菌剤の使用によって解決される可能性は低い。研究は、特定の非病原性大腸菌株を有する膀胱の前コロニー形成が、種々の尿路病原体による導尿カテーテルのコロニー形成のインビトロ発生を予防または低減する、安全かつ有効な方法であることを示してきた。
【0007】
大腸菌83972は、無症候性細菌尿症と関連した臨床分離株であり(Andersson et al., 1991, Infect. Immun. 59:2915−2921)、該株は、ヒトボランティアの膀胱にうまくコロニーを形成するために使用されてきた。欠損したpapG83972遺伝子を有する83972の変異株である、大腸菌HU2117もまた、ヒト対象者の膀胱にうまくコロニーを形成することが示されている(Hull, et al., 2002, Infection and Immunity, 70(11):6481−6481)。
【0008】
しかしながら、尿路の前接種の既存方法は、面倒である。場合によっては、前コロニー形成は、細菌の液体調製物を膀胱に直接導入することによって達成される。この方法を使用して、患者は、最初に、尿を消毒するために適切な抗生物質で処理される。抗生物質を用いない期間の後、患者はカテーテルを挿入され、膀胱は空にされる。30ミリリットルの大腸菌83972(10コロニー形成単位(CFU)/mL)が、膀胱内に注入され、カテーテルは除去される。該手順は、3日間にわたって1日に1回繰り返される。個々の研究プロトコルによると、続いて、尿サンプルを採取して、宿主反応パラメータを評価し、コロニー形成手順の成否を証明する。
【0009】
他のグループは、非病原性微生物を含有する培養液中にカテーテル自体をインキュベートすることによって、前コロニー形成を調査した。例えば、公開されたプロトコルでは、カテーテルは、48時間、細菌懸濁液中に浸漬され、カテーテル上に生物膜を形成させる。得られた生物膜は、概して、1センチメートルのカテーテル管当たり、5×10〜1×10コロニー形成単位(cfu)の大腸菌83972を含有する。次いで、カテーテルは、挿入前に従来のカテーテル潤滑油(例えば、SteriLub潤滑剤、SurgiLube潤滑剤、KY Jelly等)を使用して、挿入される。カテーテル上の生物膜は、膀胱をコロニー形成された状態に保つのに役立つことができる、リザーバとしての機能を果たすと考えられる。
【0010】
プロバイオティクスを膀胱に送達するためのかかる方法は、医師および病院が、微生物の増殖および投与のための、ならびにカテーテルの取り扱いおよび使用のための新しい手順を開発することを必要とする。プロバイオティクス微生物の対象者への送達のための、改善された方法および製剤が必要とされている。また、かかる製剤を製造および使用するための、改善された方法が必要とされている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】NIDRR, “ SCI Nurs 10(2):49−61 January 27− 29, 1992.
【非特許文献2】Maki, D. G. and P. A. Tambyah, Emerg Infect Dis 7(2):342−7(2001)
【非特許文献3】Wong, E. and T. Hooton, “Guideline for prevention of catheter−associated urinary tract infections.” Center for Disease Control and Prevention(1981)
【非特許文献4】Rupp, M. E., T. Fitzgerald, et al. Am J Infect Control 32(8):445−50(2004)
【非特許文献5】Nicolle, L. E., Drugs Aging 22(8):627−39(2005)
【非特許文献6】Andersson et al., 1991, Infect. Immun. 59:2915−2921
【非特許文献7】Hull, et al., 2002, Infection and Immunity, 70(11):6481−6481
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、細菌学およびプロバイオティクス療法の分野に関する。特に、本発明は、新規組成物(例えばプロバイオティクス微生物調製物)、および同組成物を使用する方法(例えばカテーテル等の表面を被覆するために)に関する。いくつかの実施形態では、本発明は、凍結乾燥形態で、プロバイオティクス微生物、薬学的に許容されるゲル化剤、および薬学的に許容される第1の保護剤を含む組成物を提供する。いくつかの実施形態では、該組成物は、薬学的に許容される第2の保護剤をさらに含む。いくつかの実施形態では、単剤が、ゲル化剤および保護剤の両方の機能を果たす。
【0013】
本発明は、特定のプロバイオティクス微生物に限定されない。本発明のいくつかの実施形態では、プロバイオティクス微生物は、大腸菌株を含む。いくつかの好ましい実施形態では、大腸菌株は、大腸菌83972である一方で、いくつかの好ましい実施形態では、該株は、大腸菌HU2117である。
【0014】
本発明は、ゲル化剤を考慮するが、いかなる特定のゲル化剤にも限定されない。いくつかの実施形態では、ゲル化剤は、薬学的に許容されるゲル化剤である。好ましい実施形態では、ゲル化剤は、水性流体中に溶解または懸濁されるとゲルを形成する。本発明のいくつかの実施形態では、ゲル化剤は、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルグアール、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシルメチルセルロースナトリウム、カルボマー、アルギン酸塩、ゼラチン、およびポロキサマーから成る群から選択される。いくつかの好ましい実施形態では、ゲル化剤は、ヒドロキシエチルセルロースである。
【0015】
本発明は、第1の保護剤を考慮するが、いかなる特定の第1の保護剤にも限定されない。好ましい実施形態では、第1の保護剤は、薬学的に許容される保護剤である。いくつかの実施形態では、第1の保護剤は、無脂肪乳固形分、トレハロース、グリセロール、ベタイン、スクロース、グルコース、ラクトース、デキストラン、ポリエチレングリコール、ソルビトール、マンニトール、ポリビニルプロピレン、グルタミン酸カリウム、グルタミン酸1ナトリウム、Tween20洗剤、Tween80洗剤、およびアミノ酸塩酸塩から成る群から選択される。特定の好ましい実施形態では、第1の保護剤は、スクロースである。
【0016】
本発明は、第2の保護剤を含む組成物を考慮するが、いかなる特定の第2の保護剤にも限定されない。好ましい実施形態では、第2の保護剤は、薬学的に許容される保護剤である。第2の保護剤を含むいくつかの実施形態では、第2の保護剤は、第1の保護剤とは異なり、無脂肪乳固形分、トレハロース、グリセロール、ベタイン、スクロース、グルコース、ラクトース、デキストラン、ポリエチレングリコール、ソルビトール、マンニトール、ポリビニルプロピレン、グルタミン酸カリウム、グルタミン酸1ナトリウム、Tween20洗剤、Tween80洗剤、およびアミノ酸塩酸塩から成る群から選択される。いくつかの好ましい実施形態では、第2の保護剤は、グリセロールである。
【0017】
いくつかの実施形態では、本発明は、プロバイオティクス微生物、薬学的に許容されるゲル化剤、および薬学的に許容される第1の保護剤を含む混合物を、水性流体中に提供する工程、該混合物を凍結乾燥させて、乾燥調製物を生成する工程、次いで乾燥調製物を、例えば水性流体等の流体に曝露して、有効量のプロバイオティクス微生物を含むゲルを形成する工程を含む方法によって生成される、組成物を提供する。いくつかの実施形態では、該混合物は、薬学的に許容される第2の保護剤をさらに含む。特定の実施形態では、プロバイオティクス微生物は、大腸菌株である。いくつかの好ましい実施形態では、大腸菌株は、大腸菌83972および/または大腸菌HU2117を含む。
【0018】
本発明の組成物のいくつかの実施形態では、該ゲル化剤は、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルグアール、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシルメチルセルロースナトリウム、カルボマー、アルギン酸塩、ゼラチン、およびポロキサマーから成る群から選択される。特定の好ましい実施形態では、該ゲル化剤は、ヒドロキシエチルセルロースである。
【0019】
いくつかの実施形態では、本発明の方法に従って形成される組成物中に使用される第1の保護剤は、無脂肪乳固形分、トレハロース、グリセロール、ベタイン、スクロース、グルコース、ラクトース、デキストラン、ポリエチレングリコール、ソルビトール、マンニトール、ポリビニルプロピレン、グルタミン酸カリウム、グルタミン酸1ナトリウム、Tween20洗剤、Tween80洗剤、およびアミノ酸塩酸塩から成る群から選択される。特定の好ましい実施形態では、第1の保護剤は、スクロースである。
【0020】
第2の保護剤を含むいくつかの実施形態では、第2の保護剤は、第1の保護剤とは異なり、無脂肪乳固形分、トレハロース、グリセロール、ベタイン、スクロース、グルコース、ラクトース、デキストラン、ポリエチレングリコール、ソルビトール、マンニトール、ポリビニルプロピレン、グルタミン酸カリウム、グルタミン酸1ナトリウム、Tween20洗剤、およびアミノ酸塩酸塩から成る群から選択される。いくつかの好ましい実施形態では、第2の保護剤は、グリセロールである。
【0021】
いくつかの実施形態では、プロバイオティクス微生物の有効量は、1mlのゲル当たり約10〜1011cfuの間である一方で、いくつかの好ましい実施形態では、プロバイオティクス微生物の有効量は、1mlのゲル当たり約10〜1010cfuの間である。いくつかの特に好ましい実施形態では、プロバイオティクス微生物の有効量は、1mlのゲル当たり約10〜10cfuの間であり、特定の特に好ましい実施形態では、微生物の有効量は、1mlのゲル当たり約10cfuである。
【0022】
いくつかの実施形態では、該ゲル化剤は、ゲル中に約0.1%〜10%w/vの間の濃度で存在する一方で、特定の実施形態では、該ゲル化剤は、ゲル中に約0.5%〜5%w/vの間の濃度で存在する。いくつかの好ましい実施形態では、該ゲル化剤は、ゲル中に約1%〜3%w/vの間の濃度で存在する一方で、特に好ましい実施形態では、該ゲル化剤は、ゲル中に約1%〜2%w/vの間の濃度で存在する。
【0023】
いくつかの実施形態では、第1の保護剤は、凍結乾燥前に、プロバイオティクス微生物、ゲル化剤、および第1の保護剤を含む混合物中に、約0.1%〜40%w/vの間の濃度で存在する一方で、特定の実施形態では、第1の保護剤は、混合物中に約0.2%〜20%w/vの間の濃度で存在する。いくつかの好ましい実施形態では、第1の保護剤は、約0.5%〜15%w/vの間の濃度で存在する一方で、いくつかの特に好ましい実施形態では、第1の保護剤は、混合物中に約1%〜10%w/vの間の濃度で存在する。
【0024】
第2の保護剤を含むいくつかの実施形態では、第2の保護剤は、凍結乾燥前に、プロバイオティクス微生物、ゲル化剤、第1の保護剤、および第2の保護剤を含む混合物中に、約0.1%〜40%w/vの間の濃度で存在する一方で、いくつかの実施形態では、第2の保護剤は、該混合物中に約0.2%〜20%w/vの間の濃度で存在する。特定の好ましい実施形態では、第2の保護剤は、該混合物中に約0.5%〜15%w/vの間の濃度で存在し、特定の特に好ましい実施形態では、第2の保護剤は、該混合物中に約1%〜10%w/vの間の濃度で存在する。
【0025】
特定の実施形態では、プロバイオティクス微生物は、大腸菌HU2117または大腸菌83972であり、該ゲル化剤は、ヒドロキシエチルセルロースであり、第1の保護剤は、スクロースであり、第2の保護剤は、グリセロールである。いくつかの実施形態では、プロバイオティクス微生物は、1mlのゲル当たり約10〜10cfuの濃度で存在し、いくつかの実施形態では、ヒドロキシエチルセルロースは、該ゲル中に約2%の濃度で存在する。いくつかの好ましい実施形態では、該スクロースは、凍結乾燥前に、該混合物中に約8.3%w/vの濃度で存在し、いくつかの実施形態では、該グリセロールは、凍結乾燥前に、該混合物中に約1.3%の濃度で存在する。
【0026】
いくつかの実施形態では、本発明は、プロバイオティクス微生物、薬学的に許容されるゲル化剤、および薬学的に許容される保護剤を含む凍結乾燥調製物を提供する工程、凍結乾燥調製物を水性流体に曝露して、有効量のプロバイオティクス微生物を含むゲルを形成する工程、および対象者を該ゲルと接触させる工程を含む、対象者にプロバイオティクス微生物を投与する方法を提供する。いくつかの実施形態では、対象者を該ゲルと接触させる工程は、医療デバイスを該ゲルと接触させて、処理済みデバイスを生成する工程、および対象者を該処理済みデバイスと接触させる工程を含む。
【0027】
本発明は、該デバイスを該ゲルと接触させる、いかなる特定の方法にも限定されない。例えば、いくつかの実施形態では、医療デバイスは表面を備え、処理済みデバイスは、少なくとも部分的に該ゲルで被覆される。
【0028】
本発明は、いかなる特定の医療デバイスでの使用にも限定されないが、いくつかの好ましい実施形態では、医療デバイスは、導尿カテーテルを備える。いくつかの実施形態では、導尿カテーテルは、抗菌性コーティングを備え、該ゲル中の有効量のプロバイオティクス微生物は、抗菌性コーティングの存在下で生存可能のままである。
【0029】
本発明をいかなる特性の製剤にも限定しないが、いくつかの実施形態では、プロバイオティクス微生物は、大腸菌HU2117および/または大腸菌83972を含み、ゲル化剤は、ヒドロキシエチルセルロースを含み、第1の保護剤は、スクロースを含み、第2の保護剤は、グリセロールを含む。特定の好ましい実施形態では、ゲル中のプロバイオティクス微生物は、大腸菌HU2117または大腸菌83972であり、ゲル中のゲル化剤は、ヒドロキシエチルセルロースであり、ゲル中の第1の保護剤は、スクロースであり、ゲル中の第2の保護剤は、グリセロールである。いくつかの好ましい実施形態では、プロバイオティクス微生物は、1mlのゲル当たり約10〜10cfuの濃度で、ゲル中に存在し、いくつかの実施形態では、ヒドロキシエチルセルロースは、約2%w/vの濃度で存在する。いくつかの好ましい実施形態では、該スクロースは、凍結乾燥前に、プロバイオティクス微生物、ゲル化剤、および第1の保護剤を含む混合物中に、約8.3%w/vの濃度で存在し、いくつかの実施形態では、該グリセロールは、凍結乾燥前に、約1.3%の濃度で存在する。本発明は、凍結乾燥形態で、プロバイオティクス微生物、薬学的に許容されるゲル化剤、および薬学的に許容される第1の保護剤を含む組成物を含む、例えば対象者を治療するための、キットを提供する。該キットのいくつかの実施形態では、該組成物は、薬学的に許容される第2の保護剤をさらに含む。
【0030】
いくつかの実施形態では、該キットは、無菌水性流体の容器をさらに備える。本発明をいかなる特定の水性流体にも限定しないが、いくつかの好ましい実施形態では、無菌水性流体は、水および緩衝液から成る群から選択される。いくつかの好ましい実施形態では、本発明のキットは、カテーテルをさらに備える。
【0031】
本発明のキットをいかなる特定の微生物にも限定しないが、いくつかの実施形態では、プロバイオティクス微生物は、大腸菌株である。特定の好ましい実施形態では、大腸菌株は、大腸菌83972および/または大腸菌HU2117を含む。
【0032】
本概要、および参照として本明細書に組み込まれる、以下の(発明を実施するための形態)において、本発明の実施形態を記載する。本発明を特定の実施形態に関連して記載してきたが、(特許請求の範囲)に記載する本発明は、かかる特定の実施形態に過度に限定されるべきではないことを理解されたい。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】実施例3に記載するプロトコルに従って調製される微生物に対する再懸濁後の時間の影響のグラフ表示を示す。
【発明を実施するための形態】
【0034】
定義
本発明の理解を容易にするために、いくつかの用語および句を以下に定義する。
【0035】
本明細書で使用する「対象者」という用語は、本発明の方法または組成物によって治療される個体(例えばヒト、動物、または他の生物)を指す。対象者としては、哺乳動物(例えばマウス、サル、ウマ、ウシ、ブタ、イヌ、ネコ等)が挙げられるがこれに限定されず、最も好ましくは、ヒトが挙げられる。本発明との関連で、「対象者」という用語は、概して、病原性細菌の存在によって特徴付けられる、または病原性細菌への潜在的曝露を予測した状態に対して、治療(例えばプロバイオティクス微生物、および任意で1つまたは複数の他の薬剤の投与)を受けることになっている、または受けてきた個体を指す。
【0036】
本明細書で使用する「診断される」という用語は、その兆候および症状(例えば従来の療法に対する抵抗性)、または遺伝分析、病理学的分析、組織学的分析等による、(例えば病原性細菌の存在によって引き起こされる)疾病の認識を指す。
【0037】
本明細書で使用する「インビトロ」という用語は、人工環境、および人工環境内で発生するプロセスまたは反応を指す。インビトロ環境としては、試験管および細胞培地が挙げられるがこれに限定されない。「インビボ」という用語は、天然環境(例えば動物または細胞)、および天然環境内で発生するプロセスまたは反応を指す。
【0038】
本明細書で使用する「毒性」という用語は、例えば、引き起こされる疾病の重篤度、または対象者の組織に侵入するその能力によって示されるような、微生物の病原性の度合いを指す。毒性は、概して、半数致死量(LD50)または半数感染量(ID50)によって、実験的に測定される。該用語はまた、病理学的効果をもたらす任意の感染因子の能力を指すために使用してもよい。
【0039】
本明細書で使用する「有効量」という用語は、有益なまたは所望の結果をもたらすのに十分な、組成物(例えばプロバイオティクス微生物)の量を指す。有効量は、1つもしくは複数の投与、適用、または投与量で投与することができ、特定の剤形または投与経路に限定されないよう意図される。
【0040】
本明細書で使用する「投与」という用語は、生理系(例えば対象者、またはインビボ、インビトロ、もしくはエクスビボ細胞、組織、および器官)に、薬剤、プロドラッグ、もしくは他の薬剤、または治療的処置(例えば、本発明の組成物)を与える行為を指す。人体への例示的な投与経路は、眼(経眼)、口(経口)、皮膚(経皮)、鼻(経鼻)、肺(吸入)、口腔粘膜(口腔)、耳の経由、注射(例えば静脈内、皮下、腫瘍内、腹腔内等)等によることができる。
【0041】
本明細書で使用する「表面を処理すること」という用語は、本発明の1つもしくは複数の組成物に表面を曝露する行為を指す。表面を処理する方法としては、スプー噴霧、ミスト噴霧、浸漬、および被覆が挙げられるがこれらに限定されない。
【0042】
本明細書で使用する「同時投与」という用語は、対象者への少なくとも2つの薬剤(例えば2つの別々のドナー細菌であり、各々は異なるプラスミドを含む)、または療法の投与を指す。いくつかの実施形態では、2つまたはそれ以上の薬剤または療法の同時投与は、同時である。他の実施形態では、第1の薬剤/療法が、第2の薬剤/療法の前に投与される。使用される種々の薬剤または療法の剤形および/または投与経路が異なり得ることを、当業者は理解する。同時投与のための適切な投与量は、当業者によって容易に決定することができる。いくつかの実施形態では、薬剤または療法が同時投与される場合、それぞれの薬剤または療法は、それらの単独投与に適切な量よりも低い投与量で投与される。したがって、同時投与は、薬剤または療法の同時投与が、潜在的に有害な(例えば毒性)薬剤の必要投与量を減少させる実施形態において、特に望ましい。
【0043】
本明細書で使用する「毒性」という用語は、毒性物質の投与前の同一細胞または組織と比較した場合の、対象者、細胞、または組織に対するいかなる不利または有害な影響をも指す。
【0044】
本明細書で使用する「医薬組成物」という用語は、インビトロ、インビボ、またはエクスビボでの診断または治療上の使用に特に好適な組成物を作る、不活性または活性担体との、活性薬剤(例えばプロバイオティクス微生物)の組み合わせを指す。
【0045】
本明細書で使用する「薬学的に許容される」または「薬理学的に許容される」という用語は、対象者に投与される場合に、有害反応、例えば毒性、アレルギー性、または免疫学的反応を実質的に引き起こさない組成物を指す。
【0046】
本明細書で使用する「局所的に」という用語は、皮膚表面、ならびに粘膜細胞および組織(例えば歯槽、口腔、舌、咀嚼、または鼻粘膜、ならびに中空器官または体腔の内側を覆う他の組織および細胞)への、本発明の組成物の適用を指す。
【0047】
本明細書で使用する「薬学的に許容される担体」という用語は、リン酸緩衝食塩水、水、乳液(例えば油/水または水/油乳液等)、ならびに種々の種類の湿潤剤、あらゆる溶剤、分散媒、コーティング、ラウリル硫酸ナトリウム、等張剤および吸収遅延剤、崩壊錠(例えばジャガイモデンプンまたはデンプングリコール酸ナトリウム)等が挙げられるがこれらに限定されない、標準的な医薬担体のいずれかを指す。該組成物はまた、安定剤および防腐剤を含むことができる。担体、安定剤およびアジュバントの例としては、例えば、Martin, Remington’s Pharmaceutical Sciences, 15th Ed., Mack Publ. Co., Easton, Pa.(1975)を参照されたい。さらに、特定の実施形態では、本発明の組成物は、植物栽培または農業使用のために処方されてもよい。かかる処方設計としては、浸漬、スプレー、種子粉衣、茎部注入、スプレー、およびミストが挙げられる。
【0048】
本明細書で使用する「薬学的に許容される塩」という用語は、標的対象者(例えば哺乳動物対象、および/またはインビボもしくはエクスビボ細胞、組織、もしくは器官)内で生理学的に耐性を有する、本発明の化合物のいかなる塩(例えば酸または塩基との反応によって得られる)をも指す。本発明の化合物の「塩」は、無機または有機の酸または塩基から得てもよい。酸の例としては、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、過塩素酸、フマル酸、マレイン酸、リン酸、グリコール酸、乳酸、サリチル酸、コハク酸、トルエン−p−スルホン酸、酒石酸、酢酸、クエン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、ギ酸、安息香酸、マロン酸、スルホン酸、ナフタレン−2−スルホン酸、ベンゼンスルホン酸等が挙げられるがこれらに限定されない。シュウ酸等の他の酸は、それら自体では薬学的に許容されないが、本発明の化合物およびそれらの薬学的に許容される酸付加塩を得る際に中間体として有用である、塩の調製に採用してもよい。
【0049】
塩基の例としては、アルカリ金属(例えばナトリウム)水酸化物、アルカリ土類金属(例えばマグネシウム)水酸化物、アンモニア、および式NWの化合物(式中、WはC1−4アルキルである)等が挙げられるがこれらに限定されない。
【0050】
塩の例としては、酢酸塩、アジピン酸塩、アルギン酸塩、アスパラギン酸塩、安息香酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、重硫酸塩、酪酸塩、クエン酸塩、樟脳酸塩、樟脳スルホン酸塩、シクロペンタンプロピオン酸塩、二グルコン酸塩、ドデシル硫酸塩、エタンスルホン酸塩、フマル酸塩、フルコヘプタン酸塩、グリセロリン酸塩、ヘミ硫酸塩、ヘプタン酸塩、ヘキサン酸塩、塩化物塩、臭化物塩、ヨウ化物塩、2−ヒドロキシエタンスルホン酸塩、乳酸塩、マレイン酸塩、メタンスルホン酸塩、2−ナフタレンスルホン酸塩、ニコチン酸塩、シュウ酸塩、パルモン酸塩、ペクチン酸塩、過硫酸塩、フェニルプロピオン酸塩、ピクリン酸塩、ピバル酸塩、プロピオン酸塩、コハク酸塩、酒石酸塩、チオシアン酸塩、トシル酸塩、ウンデカン酸塩等が挙げられるがこれらに限定されない。塩の他の例としては、Na、NH、およびNW(式中、WはC1−4アルキル基である)等の好適なカチオンで化合される、本発明の化合物のアニオンが挙げられる。治療上の使用のために、本発明の化合物の塩は、薬学的に許容されると考えられる。しかしながら、薬学的に許容されない酸および塩基の塩もまた、例えば、薬学的に許容される化合物の調製または精製に使用してもよい。
【0051】
本明細書で使用する「医療デバイス」という用語は、例えば、治療(例えば、疾病または損傷のための)の過程で、対象者または患者の身体上、身体内、または身体を通じて使用される、いかなる材料またはデバイスをも含む。医療デバイスとしては、医療用インプラント、創傷処置デバイス、薬物送達デバイス、ならびに体腔および個人保護デバイス等のアイテムが挙げられるがこれらに限定されない。医療用インプラントとしては、導尿カテーテル、血管内カテーテル、透析用シャント、創傷廃液管、皮膚縫合、代用血管、埋め込み型メッシュ、眼内デバイス、心臓弁等が挙げられるがこれらに限定されない。創傷処置デバイスとしては、全般的な創傷包帯、生物移植材料、テープ閉鎖具および包帯、ならびに手術用切開ドレープが挙げられるがこれらに限定されない。薬物送達デバイスとしては、針、薬物送達皮膚パッチ、薬物送達粘膜パッチ、および医療用スポンジが挙げられるがこれらに限定されない。体腔および個人保護デバイスとしては、タンポン、スポンジ、手術および検査用手袋、ならびに歯ブラシが挙げられるがこれらに限定されない。避妊デバイスとしては、子宮内デバイス(IUD)、ダイアフラム、およびコンドームが挙げられるがこれらに限定されない。
【0052】
本明細書で使用する「治療薬」という用語は、病原微生物によって接触された対象者における感染性、罹患率、または死亡発現率を減少させる、または病原微生物によって接触された宿主における感染性、罹患率、または死亡発現率を抑制する組成物を指す。本明細書で使用する治療薬は、病原体への将来起こり得る曝露を考慮して、例えば病原体の非存在下で、予防的に使用される薬剤を包含する。かかる薬剤は、薬学的に許容される化合物(例えばアジュバント、賦形剤、安定剤、希釈剤等)を付加的に含んでもよい。いくつかの実施形態では、本発明の治療薬は、局所用組成物、注射用組成物、摂取用組成物等の形態で投与される。経路が局所的である場合、形態は、例えば溶液、クリーム、オイントメント、軟膏、またはスプレーであってもよい。
【0053】
本明細書で使用する「病原体」という用語は、宿主内の病態(例えば感染症、癌等)を引き起こす、生物因子を指す。「病原体」としては、ウイルス、細菌、古細菌、糸状菌、原生動物、マイコプラズマ、プリオン、および寄生生物が挙げられるがこれらに限定されない。
【0054】
本明細書で使用する「プロバイオティクス」および「プロバイオティクス微生物」という用語は、交換可能に使用され、宿主へ健康効果をもたらすのに適度な量で投与される、生きた微生物を指す。例えばPotential Uses of Probiotics in Clinical Practice, G. Reid, et al, Clinical Microbiology Reviews, Oct. 2003, p658−672(参照として本明細書に組み込まれる)を参照されたい。プロバイオティクスは、いかなる特定の経路によって投与される微生物にも限定されない。人体への例示的な投与経路は、眼(経眼)、口(経口)、皮膚(経皮)、鼻(経鼻)、肺(吸入)、口腔粘膜(口腔)、膣、直腸、尿道、耳の経由、注射(例えば静脈内、皮下、腫瘍内、腹腔内等)等によることができる。本明細書で使用する「プロバイオティクス」という用語としては、自然発生的な生物、およびそれらの派生物、例えば大腸菌83972および大腸菌HU2117が挙げられるがこれらに限定されない。プロバイオティクス生物はまた、変化した特徴を有するように、例えば選択的培養または組み換え技術によって改変されてもよい。例えば、受容細胞を変化させる共役伝達性プラスミドを含有するように構成される、プロバイオティクス微生物(例えば、病原体受容細胞を殺滅するか、またはその病原性を低減するために)もまた、本発明に使用される。例えば米国出願番号第11/137,950号および第11/137,948号(その各々は、その全体が参照として本明細書に組み込まれる)を参照されたい。
【0055】
本明細書で使用する「微生物(microbe)」という用語は、微生物(microorganism)を指し、個々の生物、または任意の数の生物を含む調製物の両方を包含するよう意図される。
【0056】
「細菌(bacteria)」および「細菌(bacterium)」という用語は、原核生物界の門の全てのうちの原核生物を含む、全ての原核生物を指す。該用語は、マイコプラズマ、クラミジア、アクチノミセス、ストレプトミセス、およびリケッチアを含む細菌と見なされる全ての微生物を包含することを目的とする。球菌、桿菌、スピロヘータ、スフェロプラスト、プロトプラスト等を含む全ての形態の細菌が、この定義に含まれる。この用語には、グラム陰性またはグラム陽性の原核生物も含まれる。「グラム陰性」および「グラム陽性」は、当該技術分野でよく知られているグラム染色プロセスを用いた、染色パターンを指す(例えば、Finegold and Martin, Diagnostic Microbiology, 6th Ed., CV Mosby St. Louis, pp.13−15(1982)を参照)。「グラム陽性細菌」は、グラム染色で使用される初期の色素を保持し、それによって染色した細胞は、概して顕微鏡下で濃い青色から紫色に見える。「グラム陰性細菌」は、グラム染色で使用される初期の色素を保持しないが、対比染色によって染色される。したがって、グラム陰性細菌は、概して赤色に見える。
【0057】
本明細書で使用する「微生物」という用語は、細菌、古細菌、糸状菌、原生動物、マイコプラズマ、および寄生生物が挙げられるがこれらに限定されない、いかなる種または種類の微生物も指す。本発明は、その中に包含されるいくつかの微生物が、対象者に対して病原性であることを考慮する。
【0058】
本明細書で使用する「糸状菌」という用語は、二形性糸状菌を含むカビおよび酵母等の真核生物への言及に使用される。
【0059】
「細菌(bacteria)」および「細菌(bacterium)」という用語は、原核生物界の門の全てのうちの原核生物を含む、全ての原核生物を指す。該用語は、マイコプラズマ、クラミジア、アクチノミセス、ストレプトミセス、およびリケッチアを含む細菌と見なされる全ての微生物を包含することを目的とする。球菌、桿菌、スピロヘータ、スフェロプラスト、プロトプラスト等を含む全ての形態の細菌が、この定義に含まれる。この用語には、グラム陰性またはグラム陽性の原核生物も含まれる。「グラム陰性」および「グラム陽性」は、当該技術分野でよく知られているグラム染色プロセスを用いた、染色パターンを指す(例えば、Finegold and Martin, Diagnostic Microbiology, 6th Ed., CV Mosby St. Louis, pp.13−15(1982)を参照)。「グラム陽性細菌」は、グラム染色で使用される初期の色素を保持し、それによって染色した細胞は、概して顕微鏡下で濃い青色から紫色に見える。「グラム陰性細菌」は、グラム染色で使用される初期の色素を保持しないが、対比染色によって染色される。したがって、グラム陰性細菌は、概して赤色に見える。
【0060】
「非病原性細菌(non−pathogenic bacteria)」または「非病原性細菌(non−pathogenic bacterium)」という用語は、全ての既知または未知の非病原性細菌(グラム陽性またはグラム陰性)、ならびに非病原性細菌に変異または変換されたいかなる病原性細菌も含む。さらに、当業者は、いくつかの細菌が、特定の種に対して病原性、および他の種に対して非病原性であり得ることを認識し、したがって、これらの細菌は、それが非病原性であるか、または非病原性であるように変異される種に使用することができる。
【0061】
本明細書で使用する「非ヒト動物」という用語は、齧歯動物、非ヒト霊長類、ヒツジ、ウシ、反芻動物、ウサギ、ブタ、ヤギ、ウマ、イヌ、ネコ、鳥類等の脊椎動物が挙げられるがこれらに限定されない、全ての非ヒト動物を指す。
【0062】
本明細書で使用する「細胞培養」という用語は、例えば原核細胞および真核細胞を含む、細胞のいかなるインビトロ培養をも指す。この用語には、連続継代性細胞株(例えば不死の表現型を有する)、初代細胞培養物、形質転換細胞、有限細胞株(例えば形質転換されていない細胞)、固体または液体培地の中または上での細菌培養物、およびインビトロで維持された任意の他の細胞集団が含まれる。
【0063】
使用する「真核生物」という用語は、「原核生物」と区別できる生物を指す。該用語は、染色体が存在する、核膜によって境界される真核の存在、膜結合型オルガネラの存在、および真核生物において一般的に観察される他の特性等の、真核生物の一般的な特性を示す細胞を有する、全ての生物を包含することを目的とする。したがって、該用語には、糸状菌、原生動物、および動物(例えばヒト)等の生物が挙げられるがこれらに限定されない。
【0064】
本明細書で使用する「キット」という用語は、物質を送達するためのいかなる送達システムをも指す。プロバイオティクス微生物等の反応材料との関連で、かかる送達システムには、適切な試薬(例えば、適切な容器内の細胞、緩衝液、培地、選択試薬等)、および/またはデバイス(例えば、カテーテル、シリンジ、反応管またはプレート、培養管またはプレート)、および/または支持材料(例えば、培地、材料の使用を実行するための取扱説明書等)の、ある場所から他の場所への保存、輸送、または送達を可能にするシステムが挙げられるがこれに限定されない。例えば、キットは、関連する反応試薬および/または支持材料を含有する、1つもしくは複数の筐体(例えば箱、バッグ)を含む。本明細書で使用する「分割されたキット」という用語は、各々が全キット構成要素のサブ部分を含有する、2つまたはそれ以上の別々の容器を備える、送達システムを指す。該容器は、合わせてまたは別々に、対象とする受容側に送達されてもよい。例えば、第1の容器が、特定の使用のためにゲル化剤とともに微生物の乾燥組成物を含有してもよい一方で、第2の容器は、乾燥組成物を溶解または再懸濁するための水または緩衝液等の、無菌液を含有する。「分割されたキット」という用語は、連邦食品・医薬品・化粧品法の第520(e)項によって規制された、分析物特異的試薬(ASR)を含有するキットを包含するよう意図されるが、それに限定されない。実際には、各々が全キット構成要素のサブ部分を含有する、2つまたはそれ以上の別々の容器を備えるいかなる送達システムも、「分割されたキット」という用語に含まれる。対照的に、「組み合わされたキット」は、単一容器(例えば、所望の構成要素の各々を収容する単一箱)での特定の使用のために必要な、反応材料の構成要素の全てを含有する送達システムを指す。「キット」という用語は、分割された、および組み合わされたキットの両方を含む。
【0065】
組成物の凍結乾燥によって生成される乾燥ケーキに関して、「優れた(elegant)」という用語は、割れ、収縮がなく、滑らかな縁およびフワフワした硬度を有する、「完全な」凍結乾燥生成物を説明するために、本文献で使用される。
【0066】
本明細書で使用する「1つ」(「a」および「an」)という用語は、少なくとも1つを意味し、2つ以上を指し得る。
【0067】
本明細書で使用する「細菌の干渉」という用語は、細菌自体を定着させ、それらの環境を支配するための、細菌間の拮抗的相互作用を指す。細菌の干渉は、いくつかの機構、すなわち、拮抗物質の生成、細菌微小環境の変化、および必要な栄養物質の低下を通して作用する。
【0068】
本明細書で使用する「コーティング」という用語は、例えば医療デバイスまたはその一部を覆う材料の層を指す。コーティングは、インプラント材料の表面に塗布するか、またはその中に含浸することができる。
【0069】
「有効量」という用語は、例えば細菌性および/または真菌性生物の増殖を低減、防止、または阻害することによって、宿主に有益な効果をもたらすための、例えばプロバイオティクスまたは抗菌剤等の薬剤の十分な量を意味する。プロバイオティクス微生物または他の治療用組成物の有効量を比較的容易に決定することは、当業者の能力内である。
【0070】
本明細書で使用する「抗菌剤」という用語は、細菌性および/または真菌性生物の増殖を低減、防止、または阻害する、プロバイオティクス以外の組成物を指す。抗菌剤の例としては、例えば抗生物質および防腐剤が挙げられる。
【0071】
本明細書で使用する「防腐剤」という用語は、α.−テルピネオール、メチルイソチアゾロン、塩化セチルピリジニウム、クロロキシレノール、ヘキサクロロフェン、クロルヘキシジンおよび他のカチオンビグアニド、塩化メチレン、ヨウ素およびヨードフォア、トリクロサン、タウリンアミド、ニトロフラントイン、メテナミン、アルデヒド、アジル酸(azylic acid)、銀、ベンジルペルオキシド、アルコール、ならびにカルボン酸およびカルボン酸塩が挙げられるがこれらに限定されない、微生物の作用を阻害する、抗菌性物質として定義される。当業者は、相乗効果もたらすために、これらの防腐剤を2つまたはそれ以上組み合わせて使用することができることを認識している。防腐剤の組み合わせのいくつかの例としては、クロルヘキシジン、クロルヘキシジンおよびクロロキシレノール、クロルヘキシジンおよびメチルイソチアゾロン、クロルヘキシジンおよび.α.−テルピネオール、メチルイソチアゾロンおよびα.−テルピネオール、チモールおよびクロロキシレノール、クロルヘキシジンおよびセチルピリジニウムクロリド、またはクロルヘキシジン、メチルイソチアゾロン、およびチモールの混合物が挙げられる。これらの組み合わせは、種々の生物に対して広い抗菌スペクトルを提供する。
【0072】
本明細書で使用する「抗生物質」という用語は、宿主への損傷なしで微生物の増殖を阻害する物質として定義される。例えば、抗生物質は、細胞壁合成、タンパク質合成、核酸合成を阻害するか、または細胞膜機能を変化させることができる。
【0073】
抗生物質の分類としては、マクロライド(例えばエリスロマイシン)、ペニシリン(例えばナフシリン)、セファロスポリン(例えばセファゾリン)、カルバペネム(例えばイミペネム)、モノバクタム(例えばアズトレオナム)、他のβ−ラクタム抗生物質、β−ラクタム阻害剤(例えばスルバクタム)、オキサリン(例えばリネゾリド)、アミノグリコシド(例えばゲンタマイシン)、クロラムフェニコール、スルホンアミド(例えばスルファメトキサゾール)、グリコペプチド(例えばバンコマイシン)、キノロン(例えばシプロフロキサシン)、テトラサイクリン(例えばミノサイクリン)、フシジン酸、トリメトプリム、メトロニダゾール、クリンダマイシン、ムピロシン、リファマイシン(例えばリファンピン)、ストレプトグラミン(例えばキヌプリスチンおよびダルホプリスチン)、リポタンパク質(例えばダプトマイシン)、ポリエン(例えばアンフォテリシンB)、アゾール(例えばフルコナゾール)、ならびにエキノキャンディン(例えばカスポファンギン酢酸塩)が挙げられるがこれらに限定されない。
【0074】
特定の抗生物質の例としては、エリスロマイシン、ナフシリン、セファゾリン、イミペネム、アズトレオナム、ゲンタマイシン、スルファメトキサゾール、バンコマイシン、シプロフロキサシン、トリメトプリム、リファンピン、メトロニダゾール、クリンダマイシン、テイコプラニン、ムピロシン、アジスロマイシン、クラリスロマイシン、オフロキサシン、ロメフロキサシン、ノルフロキサシン、ナリジクス酸、スパルフロキサシン、ペフロキサシン、アミフロキサシン、ガチフロキサシン、モキシフロキサシン、ゲミフロキサシン、エノキサシン、フレロキサシン、ミノサイクリン、リネゾリド、テマフロキサシン、トスフロキサシン、クリナフロキサシン、スルバクタム、クラブラン酸、アンフォテリシンB、フルコナゾール、イトラコナゾール、ケトコナゾール、およびナイスタチンが挙げられるがこれらに限定されない。参照として本明細書に組み込まれるSakamotoらの米国特許第4,642,104号に記載されるような、抗生物質の他の例は、当業者には容易に連想される。
【0075】
本明細書で使用する、抗菌剤に関連して微生物に適用される「抵抗性」という用語は、抵抗性微生物が、抗菌剤の存在下でプロバイオティクスとして使用可能である、抗菌剤の存在下で十分な生存率を保持する微生物を指す。当業者は、例えば、中程度の抵抗性を有する微生物が、抗菌剤の濃度が低い場合(例えば、前治療からの残留抗菌剤)の用途に使用され得、高度の抵抗性を有する微生物が、抗菌剤の濃度が高い場合(例えば、プロバイオティクスおよび抗菌剤の同時投与)の用途に使用され得るように、微生物の生存率および抗菌剤の濃度の両方が可変であることを理解するであろう。
【0076】
本明細書で使用する、プロバイオティクス組成物に関連して使用される場合の「乾燥した」という用語は、もはや化学反応を支持しないレベルまで、1つまたは複数の溶剤成分を除去することを指す。該用語はまた、乾燥した組成物に関連して使用される(例えば、乾燥調製物または乾燥組成物)。組成物が、凍結乾燥後に、残留溶剤または水分含量をなおも有しながら、「乾燥」した状態であり得るか、または乾燥組成物が、乾燥プロセスの終了後に、例えば大気中から吸湿し得ることを、当業者は理解するであろう。「乾燥した」という用語は、吸湿によって増加した水分含量を有する組成物を包含する。
【0077】
本明細書で使用する「保護剤」という用語は、活性薬剤(例えば酵素、プロバイオティクス微生物)が特定の条件(例えば乾燥、凍結)に曝露される場合の、活性薬剤の活性または完全性を保護する、組成物または化合物を指す。いくつかの実施形態では、保護剤は、凍結プロセス中に生体(例えばプロバイオティクス微生物)を保護する(すなわち、それは「抗凍結剤」である)。保護剤の例としては、無脂肪乳固形分、トレハロース、グリセロール、ベタイン、スクロース、グルコース、ラクトース、デキストラン、ポリエチレングリコール、ソルビトール、マンニトール、ポリビニルプロピレン、グルタミン酸カリウム、グルタミン酸1ナトリウム、Tween20洗剤、Tween80洗剤、およびアミノ酸塩酸塩が挙げられるがこれらに限定されない。
【0078】
本明細書で使用する「ゲル化剤」という用語は、流体(例えば水または緩衝液等の水性流体)中に溶解、懸濁、または分散された場合に、ゼラチン状の半固体(例えば潤滑ゲル)を形成する組成物を指す。ゲル化剤の例としては、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルグアール、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシルメチルセルロースナトリウム、カルボマー、アルギン酸塩、ゼラチン、およびポロキサマーが挙げられるがこれらに限定されない。
【0079】
本明細書で使用する「賦形剤」という用語は、活性成分の調製物に添加される、不活性成分(すなわち、薬学的に活性ではない)を指す。本明細書に記載するゲル化剤および保護剤は、概して「賦形剤」と呼ばれる。
【0080】
本発明は、対象者に、有効量の生存可能なプロバイオティクス微生物を送達するための組成物および方法に関する。いくつかの実施形態では、本発明は、有効量のプロバイオティクス微生物の保存および/または投与のための組成物に関する。いくつかの実施形態では、本発明は、例えば、有効治療量のプロバイオティクス微生物の便利な保存および/または投与のために、微生物の組成物を調製する方法に関する。いくつかの実施形態では、本発明は、プロバイオティクス微生物の調製および/または投与を含む、治療方法に関する。
【0081】
本発明をいかなる特定の構成にも限定しないが、好ましい実施形態では、本発明の方法および組成物が、例えば、ヒトに対して非毒性である治療用送達システムまたは製剤を提供することが認められる。いくつかの特に好ましい実施形態では、本発明の製剤は、FDAによって尿路および/または膀胱での使用が認可されている、物質を使用する。特に好ましい実施形態では、本発明の組成物は、一般的なカテーテル挿入法および手順の変化を最小限に抑えるか、または変化させることなく、医療処置、例えばカテーテル挿入での使用に採用することができる。
【0082】
明確にするために、以下の項において(発明を実施するための形態)を提供する。I.細菌の干渉、II.プロバイオティクス微生物の組成物、III.プロバイオティクス組成物を投与する方法、IV.プロバイオティクス組成物を提供するためのキット。
【0083】
I.細菌の干渉
CAUTIの予防における細菌の干渉の原理が調査されてきた。細菌の干渉は、他の種類の細菌、例えば病原体によるコロニー形成を防止するプロバイオティクスを使用する原理を指す。投与されたプロバイオティクス細菌は、例えば細菌排泄物または栄養競合によって病原性株の増殖を妨げることができるが、細菌の干渉の使用は、いかなる特定の機構にも限定されない。この方法には、優れた理論的裏付けがあり、この方法は、神経因性膀胱における症候性UTIの良好な解決法を提供し得る(Srinivasan, A., T. Karchmer, et al, Infect Control Hosp Epidemiol 27(1):38−43(2006))。
【0084】
細菌の干渉は、不活性または活性のいずれか一方であり得る(Reid, Howard et al. 2001)。UTIおよび神経因性膀胱の場合、不活性の細菌の干渉が、無症候性コロニー形成が未治療のまま放置された場合に、後続のコロニー形成を悪性の微生物で防止するために起こる。活性の干渉は、悪性の株の感染を予防する目的で、特定の細菌株または有益な特性を有する複数の細菌株の膀胱への導入を伴う。
【0085】
これまで、CAUTIの予防のための活性の干渉に関する全ての臨床研究は、非病原性大腸菌株(例えば大腸菌83972)を直接膀胱に接種する方法を使用してきた。しかしながら、この方法は扱いづらく、コロニー形成を誘発するために複数の試行を必要とし得る。見込みがあるように思われる代替方法は、カテーテル上に生物膜を形成するための、大腸菌83972とのカテーテル自体のインキュベーションである。インビトロ研究は、媒体対照で処理されたカテーテルと比較して、大腸菌83972へのカテーテルの前曝露が、挿入後にカテーテルにコロニー形成する尿路病原体の数を有意に低減したことを示した(Roos, V., G. C. Ulett, et al, Infect Immun 74(1):615−24(2006))。神経因性膀胱を有する12人の対象者に挿入された、前処理されたカテーテルの予備的研究からの予備データは、30日後のコロニー形成率が92%であることを示し、よってこのコロニー形成方法が、非常に効率的であり得ることを示唆した(R. Darouiche、個人的対話)。しかしながら、カテーテル使用前に生物膜をもたらすためのカテーテルのインキュベーションは、さらなる設備を必要とし得、導尿カテーテル挿入の通常の手順に大幅な変化を必要とする点で煩わしい。
【0086】
本発明は、プロバイオティクス微生物を投与するための、改善された組成物および方法を提供する。いかなる特定の用途にも限定されないが、該方法および組成物は、カテーテル関連尿路感染症の治療および予防に使用される。本発明は、例えば、カテーテル挿入の標準的なプロトコルの変化を最小限に抑えて、従来の導尿カテーテルで使用するための、プロバイオティクスの製剤を提供する。いくつかの実施形態では、本発明のプロバイオティクス微生物組成物は、防腐剤または抗生物質等の抗菌剤を用いた、デバイスまたは対象者の処理と同時に、またはその後に使用されてもよい。いくつかの好ましい実施形態では、採用されるプロバイオティクス微生物は、使用される抗菌剤に抵抗性を有する。
【0087】
II.プロバイオティクス微生物の組成物
いくつかの実施形態では、本発明は、挿入前のカテーテルへの適用のために処方される、プロバイオティクス微生物の組成物を提供する。特に、特定の実施形態では、本発明は、例えば臨床医によって、投与前にプロバイオティクス生物を培養する必要なく使用されるように構成される、プロバイオティクスを含む組成物を提供する。
【0088】
いくつかの実施形態では、プロバイオティクス微生物は、細菌であり、特定の実施形態では、細菌は、腸内細菌、緑膿菌、ステノトロフォモナスマルトフィリア、バークホルデリアセパシア、ガードネレラ、およびアシネトバクター種から成る群から選択される。いくつかの特定の実施形態では、プロバイオティクス生物は、緑膿菌である。
【0089】
いくつかの好ましい実施形態では、プロバイオティクス細菌は、エシェリキア、赤痢菌、エドワードシエラ、サルモネラ、シトロバクター、クレブシエラ、エンテロバクター、ハフニア、セラシア、プロテウス、モルガネラ、プロビデンシア、エルシニア、エルウィニア、バチアグセラ、セデセア、エウインゲラ、クライベラ、テイタメラ、およびラーネラから成る腸内細菌の群から選択される。
【0090】
いくつかの特に好ましい実施形態では、細菌は、腸内細菌であり、大腸菌83972またはその突然変異体の群から選択される。大腸菌83972は、無症候性細菌尿症に関連した臨床分離株であり(Andersson et al., 1991, Infect. Immun. 59:2915−2921)、該株は、ヒトボランティアの膀胱に成功裏にコロニー形成するために使用されてきた。大腸菌HU2117は、欠失papG83972遺伝子を有する83972の変異株であり、これもまた、ヒト対象者の膀胱に成功裏にコロニー形成することが示されている(Hull, et al, 2002, Infection and Immunity, 70(11):6481−6481)。
【0091】
本発明のいくつかの好ましい実施形態では、プロバイオティクス細菌は、導尿カテーテルに付着する細菌である。いくつかの実施形態では、付着特徴を有する細菌は、プロビデンシア、プロテウス、緑膿菌、および大腸菌から成る群から選択される。
【0092】
本発明の組成物が、単一の種または種類の微生物を含有する組成物に限定されないことを、当業者は理解するであろう。プロバイオティクス生物の組み合わせが、本明細書に開示する方法および組成物で使用され得ることが企図される。
【0093】
いくつかの実施形態では、本発明は、例えば凍結乾燥調製物等、安定した保存のために構成されるプロバイオティクス微生物の調製物を提供する。本発明を実施するために、機構の理解は必要とされないが、また本発明をいかなる特定の機構にも限定しないが、凍結乾燥(freeze−drying)、または「凍結乾燥(lyophilization)」は、概して、もはや化学反応を支持しないレベルまで、1つまたは複数の溶剤成分を除去することによって、製剤を安定化させる。この除去は、最初に製剤を凍結し、それによって溶剤から溶質を分離することによって達成される。次いで、溶剤は、サンプルが凍結されたままである間に、乾燥または昇華によって除去される。いくつかの実施形態では、手順は、一次乾燥、続いて二次乾燥または脱着による溶剤の除去を含む。
【0094】
凍結乾燥のための製剤は、概して、少なくとも活性成分(例えばプロバイオティクス微生物)、および溶剤系(例えば、水性液体の場合、水)を含む。本発明の製剤は、概して、保護剤をさらに含む。
【0095】
生物有機体を含有する製剤の凍結において、細胞内の氷の形成は、細胞膜破裂を引き起こし、したがって該有機体を破壊する。好ましい実施形態では、保護剤が、凍結プロセス中にプロバイオティクス微生物を保護する(すなわち、それは「抗凍結剤」である)。本発明は、いかなる特定の抗凍結剤にも限定されない。本発明の方法および組成物に使用される抗凍結剤としては、例えば無脂肪乳固形分、トレハロース、グリセロール、ベタイン、スクロース、グルコース、ラクトース、デキストランおよびポリエチレングリコール等のポリマー、ソルビトール、マンニトール、ポリビニルプロピレン(PVP)、グルタミン酸カリウム、グルタミン酸1ナトリウム、Tween20洗剤、Tween80洗剤、Nonidet−P40、ならびにプロリン、ヒスチジン、塩酸アルギニン、グリシン、リジン、グルタミン酸、アスパラギン酸等のアミノ酸等が挙げられる。いくつかの好ましい実施形態では、保護剤は、約0.1%〜20%w/vの濃度で、凍結前に製剤に含まれる。
【0096】
本発明の組成物は、単一の保護剤を含有する組成物に限定されないことを、当業者は理解するであろう。保護剤の組み合わせが、本発明の方法および組成物に使用され得ることが企図される。
【0097】
いくつかの実施形態では、保護剤は、増量剤としての機能も果たす。いくつかの製剤は、不十分な構造品質を有するか、または乾燥プロセス中に容器から出るケーキをもたらし得る。マンニトールおよびデキストラン等の増量剤の添加は、ケーキ構造を強化し得る。いくつかの実施形態では、本発明の製剤は、保護剤ではない賦形剤または増量剤をさらに含有し得ることが企図される。
【0098】
好ましい実施形態では、組成物は、再構成された(例えば再懸濁された)組成物の投与を容易にするための薬剤を含む。例えば、凍結乾燥調製物を含む好ましい実施形態では、組成物は、乾燥調製物の再懸濁がゲルをもたらすように、ゲル化剤をさらに含む。ゲルは、潤滑特性、および適用後の耐流動または耐滴下特性が挙げられるがこれらに限定されない、例えばデバイスまたは対象者への組成物の投与に対して、多くの有益な特性を有する。本発明は、いかなる特定のゲル化剤にも限定されない。本発明の方法および組成物に使用されるゲル化剤としては、例えばヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルグアール、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシルメチルセルロースナトリウム、カルボマー、アルギン酸塩、ゼラチン(例えば組み換えおよび/または動物性ゼラチン加水分解物)、およびポロキサマー(例えばLutrol F127)が挙げられる。いくつかの好ましい実施形態では、ゲル化剤は、約0.1%〜20%w/vの濃度で、ゲル組成物中に含まれる。
【0099】
本発明の組成物は、単一のゲル化剤を含有する組成物に限定されないことを、当業者は理解するであろう。ゲル化剤の組み合わせが、本明細書に開示する方法および組成物に使用され得ることが企図される。
【0100】
いくつかの好ましい実施形態では、本発明は、凍結乾燥形態で、プロバイオティクス微生物、薬学的に許容されるゲル化剤、および薬学的に許容される第1の保護剤を含む組成物を提供する。いくつかの実施形態では、該組成物は、薬学的に許容される第2の保護剤をさらに含む。いくつかの好ましい実施形態では、第2の保護剤は、約0.1%〜20%w/vの濃度で、凍結前の製剤中に含まれる。
【0101】
いくつかの実施形態では、本発明は、上に記載する組成物を製造する方法を提供する。いくつかの実施形態では、該諸方法は、プロバイオティクス微生物、保護剤、およびゲル化剤を含む、流体混合物を提供する工程、ならびに該混合物を凍結乾燥させ、乾燥調製物を生成する工程を含む。
【0102】
いくつかの実施形態では、溶剤系は、完全な水溶液であるが、他の実施形態では、溶剤系は、アルコール等の他の溶剤を含有する。いくつかの実施形態では、溶剤系は、凍結乾燥した組成物に乾燥緩衝成分を提供する、緩衝液を含む。
【0103】
特定の実施形態では、溶剤は最初に、凍結マトリクスの温度が、製剤の共晶(共晶温度は、相図上の点であり、その点における系の温度または溶液の濃度は、存在する相の数を変化させることなく、変更することができない)または崩壊温度以下で維持される間に、昇華によって除去される。これは、一次乾燥プロセスである。一次乾燥中のチャンバ圧力ならびに生成物および棚温度は、概して、製剤の共晶または崩壊温度に基づく。
【0104】
好ましい実施形態では、一次乾燥後に、得られたケーキ表面上の残留水分は、もはや生体増殖および化学反応を支持しないレベルまで低減される。このプロセスは、二次乾燥と呼ばれる。二次乾燥中のケーキ中の水分の低下は、概して、棚温度を上昇させ、容器内の水蒸気の分圧を低下させることによって達成される。必要とされる水蒸気の分圧および棚温度は、概して、変化する量の残留水分を有する、凍結乾燥または真空乾燥生成物の安定性研究から確認される。
【0105】
いくつかの実施形態では、凍結乾燥は、基本的に、以下の表1に記載する手順に従って実行される。いくつかの好ましい実施形態では、凍結乾燥は、基本的に、以下の表2に記載する手順に従って実行されるが、特に好ましい実施形態では、凍結乾燥は、基本的に、以下の表3に記載する手順に従って実行される。
【0106】
いくつかの実施形態では、本発明の方法は、乾燥プロバイオティクス組成物を流体中、例えば無菌水等に溶解または再懸濁する工程をさらに含む。好ましい実施形態では、乾燥組成物は、ゲル化剤を含み、流体中のケーキの再懸濁は、ゲルを生成する。
【0107】
III.プロバイオティクス組成物を投与する方法
いくつかの実施形態では、本発明は、対象者に、プロバイオティクス微生物を投与する方法であって、該方法は、プロバイオティクス微生物、ゲル化剤、および保護剤を含む凍結乾燥調製物を提供する工程、上記の凍結乾燥調製物を水性流体に曝露し、有効量の上記のプロバイオティクス微生物を含むゲルを形成する工程、および上記の対象者を上記のゲルと接触させる工程を含む方法を提供する。いくつかの好ましい実施形態では、対象者を上記のゲルと接触させる工程は、デバイス、例えば医療デバイスをゲルと接触させ、次いで、医療デバイスを対象者と接触させる工程を含む。好ましい実施形態では、デバイスは、導尿カテーテルである。
【0108】
本発明の具体的な一実施形態は、医療デバイスを被覆するための方法であって、デバイス表面の少なくとも一部に、被覆されていない医療デバイスと比較して、細菌性および真菌性生物の増殖を阻害するような有効量で存在するプロバイオティクス微生物を含む、ゲル組成物を適用する工程を含む、方法である。
【0109】
いくつかの好ましい実施形態では、プロバイオティクス微生物を含むゲルは、カテーテル挿入前に、従来のカテーテル潤滑剤(例えばSteriLub潤滑剤、SurgiLube潤滑剤、KY Jelly)と併せて使用される。特に好ましい実施形態では、プロバイオティクス微生物を含むゲルは、カテーテル挿入前に、従来のカテーテル潤滑剤の代わりに使用される。
【0110】
IV.プロバイオティクス組成物を提供するためのキット
本発明の一態様は、例えば対象者を治療するための、1つもしくは複数の構成要素を含むキットまたはトレイを提供することである。好ましい実施形態では、キットは、例えば病院、診療所、医療機関等で、医療関係者への容易な配送および医療関係者による容易な使用のために構成される。いくつかの実施形態では、本発明によるキットは、標準的なカテーテル挿入キットまたはトレイを併せて使用されるように構成されるが、他の実施形態では、本発明に従ったキットは、標準的なカテーテル挿入キットまたはトレイに代わるように構成される。好ましい実施形態では、該キットは、本発明の方法に従ったカテーテル挿入のための、全ての必要な構成要素を含む。
【0111】
いくつかの実施形態では、該キットは、プロバイオティクス微生物、薬学的に許容されるゲル化剤、および薬学的に許容される第1の保護剤を含む、凍結乾燥した組成物を、例えば容器内に提供する。該キットのいくつかの実施形態では、該組成物は、薬学的に許容される第2の保護剤をさらに含む。
【0112】
いくつかの実施形態では、該キットは、例えばカテーテル挿入での使用のための潤滑ゲルを形成するために、乾燥組成物を懸濁するための無菌液、例えば水または緩衝液等の水性流体の容器をさらに備える。いくつかの好ましい実施形態では、本発明のキットは、カテーテルをさらに備える。
【0113】
本発明のキットをいかなる特定の微生物にも限定しないが、いくつかの実施形態では、プロバイオティクス微生物は、大腸菌株である。特定の好ましい実施形態では、大腸菌株は、大腸菌83972および/または大腸菌HU2117を含む。本発明によるキットは、カテーテル挿入に関連した構成要素に限定されず、例えば、トレイ、アンダーパッド、綿棒、防腐用ティッシュ、テープ、手袋、ドレープ、検体容器、シリンジ等が挙げられるがこれらに限定されない、患者管理に関連した構成要素等のさらなる構成要素を含んでもよい。
【実施例】
【0114】
実験
本発明の特定の好ましい実施形態および態様を明示し、かつさらに例示するために、以下の実施例を提供し、その範囲を制限すると解釈されないものとする。
【0115】
以下の実験の開示では、以下の略語が適用される。℃(摂氏温度)、cm(センチメートル)、g(グラム)、lまたはL(リットル)、mlまたはmL(ミリリットル)、μlまたはμL(マイクロリットル)、μg(マイクログラム)、μl(マイクロリットル)、μm(マイクロメートル)、μM(マイクロモルの)、μmol(マイクロモル)、mg(ミリグラム)、ml(ミリリットル)、mm(ミリメートル)、mM(ミリモルの)、mmol(ミリモル)、M(モルの)、mol(モル)、ng(ナノグラム)、nm(ナノメートル)、nmol(ナノモル)、N(正常)、pmol(ピコモル)、bp(塩基対)、cfu(コロニー形成単位)。
【0116】
一例として、かつ制限を目的とせず、以下の実験は、大腸菌株HU2117の生存率への異なる賦形剤および凍結乾燥プロトコルの効果を説明する。ゲル化剤を含む組成物中の凍結乾燥した細胞内の有効な生存レベルを維持するように、開始数量を選択した。例えば、いくつかの実施形態では、生存細胞の好ましい濃度は、約10cfu/mlであり得る。本発明の調製物のバイアル(または他の容器)が、例えば10mlの水中に懸濁または溶解される場合には、バイアル内の乾燥ケーキは、最適に、約10個の生存細胞を有し得る。一旦、処理後に生存可能なままである細胞の割合に対して、プロトコルを評価すると、任意の特定の所望の生存細胞数を有するケーキを得るために、開始する細胞の概数を容易に計算することができる。
【0117】
(実施例1)
凍結乾燥大腸菌HU2117の調製、プロトコル1
調査の目的は、HU2117の凍結乾燥のための異なる賦形剤および条件の効果を試験し、ゲル化剤を含む組成物中の凍結乾燥した細胞の有効細胞濃度および生存レベルを維持することである。
【0118】
細胞調製
1mlのシードストックを1Lの変性EZ Rich Definedグリセロール培地に接種した、2つのフラスコ(フラスコAおよびフラスコB)の細胞を各々、250RPMの一定の振盪で、8時間、37±1℃でインキュベートして増殖させた。8時間の終わりに、フラスコAのOD600は、2.53であり、フラスコBのOD600は、1.11であった。
【0119】
8分間、6000RPM、4℃での遠心分離によって、該細胞を採取した。沈降した細胞を0.9%生理食塩水で2回、および10mMのクエン酸緩衝液(pH7.0)で1回洗浄した。各1リットルの培養液から沈降した細胞を、最終体積が約5mlになるように、2〜3mlの10mMのクエン酸緩衝液(pH7.0)中に再懸濁した。
【0120】
プレートカウントを使用して、再懸濁された細胞の濃度を決定した。フラスコA調製物の生存細胞濃度は、2.8±1.2×1011CFU/mlであり、フラスコB調製物の生存細胞濃度は、1.8±0.2×1011cfu/mlであった。フラスコAおよびフラスコBからの細胞を混合し、凍結乾燥試験に使用した。
【0121】
凍結乾燥
各試験に対して、0.5mlの再懸濁された細胞を、以下のリストから選択した1.5mlの賦形剤、および10mlの2%加熱滅菌ヒドロキシエチルセルロース(HEC)と混合した。
【0122】
賦形剤(乾燥ケーキが10mlの最終体積に再懸濁された場合に達成される濃度(w/v)として示す。異なる流体体積がケーキを溶解するために使用される場合は、濃度は比例的に異なる):
(a)緩衝液(賦形剤なし)
(b)2%HEC
(c)2%HEC+1.5%グリセロール
(d)2%HEC+5%トレハロース
(e)2%HEC+5%スクロース
(f)2%HEC+10%トレハロース
(g)2%HEC+10%スクロース
(h)2%HEC+5%トレハロース+1.5%グリセロール
(i)2%HEC+5%スクロース+1.5%グリセロール
(j)2%HEC+10%トレハロース+1.5%グリセロール
(k)2%HEC10%スクロース+1.5%グリセロール
細胞−賦形剤混合物を表1に記載するように凍結乾燥し、乾燥ケーキを生成した。
【表1】

【0123】
昇華は一次乾燥の終わりに完了せず、新しいサイクルを開始し、一次乾燥温度は、18時間、0.5℃/分の制御された平均速度で、−28℃、および二次乾燥温度は、720分間、20℃に設定した。乾燥後、各ケーキを12mlのHOに再懸濁した。
【0124】
上記のプロトコルに従うことによって、以下の見解が得られた。
【0125】
(a)凍結乾燥ケーキは収縮され、上に記載する賦形剤(f)、(g)、(j)、および(k)の存在下を除いて、相分離を示した。
【0126】
(b)ケーキの再構成中の溶解性は、上に記載する賦形剤(c)、(g)、(j)、および(k)の存在下で良好であった。
【0127】
(c)賦形剤の非存在下(すなわち、賦形剤の代わりに単独で使用される緩衝液)の、または10%トレハロースまたは(5%スクロース+1.5%グリセロール)の条件を使用したケーキは、水でケーキを再構成した後に、不溶粒子を有した。
【0128】
再懸濁された細胞の生存率を試験し、その結果を表2に示す。
【表2】


【0129】
本発明をいかなる特定の最低生存率にも限定しないが、これらの実験条件を使用して、1.5%グリセロールの存在下または非存在下の2%HEC+10%スクロースは、凍結乾燥後に、>20%の生存率を可能にしたことが観察される。
【0130】
(実施例2)
凍結乾燥大腸菌HU2117の調製、プロトコル2
細胞調製
1mlのシードストックを1Lの変性EZ Rich Defined グリセロール培地に接種した、2つのフラスコ(フラスコAおよびフラスコB)の細胞を各々、250RPMの一定の振盪で、8時間、37±1℃でインキュベートして増殖させた。8時間の終わりに、フラスコAのOD600は、1.89であり、フラスコBのOD600は、1.53であった。
【0131】
8分間、6000RPM、4℃での遠心分離によって、細胞を採取した。沈降した細胞を0.9%生理食塩水で2回、および10mMのクエン酸緩衝液(pH7.0)で1回洗浄した。
【0132】
各1リットルの培養液から沈降した細胞を、最終体積が約5mlになるように、2〜3mlの10mMのクエン酸緩衝液(pH7.0)中に再懸濁した。
【0133】
プレートカウントを使用して、再懸濁された細胞の濃度を決定した。フラスコAからの再懸濁された細胞の生存細胞濃度は、1.2±0.3×1011CFU/mlであり、フラスコBからの再懸濁された細胞の生存細胞濃度は、7.7±0.3×1010cfu/mlの生存細胞濃度であった。フラスコAおよびフラスコBからの細胞を混合し、凍結乾燥試験に使用した。
【0134】
凍結乾燥
各試験に対して、0.5mlの再懸濁された細胞を、以下のリストから選択した1.5mlの賦形剤、および10mlの1%加熱滅菌ヒドロキシエチルセルロース(HEC)と混合した。
【0135】
賦形剤(乾燥ケーキが10mlの最終体積に再懸濁された場合に達成される濃度(w/v)として示す。異なる流体体積がケーキを溶解するために使用される場合は、濃度は比例的に異なる):
(a)緩衝液
(b)1%HEC
(c)1%HEC+1.5%グリセロール
(d)1%HEC+5%トレハロース
(e)1%HEC+5%スクロース
(f)1%HEC+10%トレハロース
(g)1%HEC+10%スクロース
(h)1%HEC+5%トレハロース+1.5%グリセロール
(i)1%HEC+5%スクロース+1.5%グリセロール
(j)1%HEC+10%トレハロース+1.5%グリセロール
(k)1%HEC+10%スクロース+1.5%グリセロール
(l)2%HEC+10%スクロース
(m)2%HEC+10%スクロース+1.5%グリセロール
表3に記載するように、細胞混合物を凍結乾燥した。
【表3】

【0136】
乾燥後、各乾燥ケーキを12mlのHO中に再懸濁した。
【0137】
上記のプロトコルに従うことによって、以下の見解が得られた。
【0138】
(a)凍結乾燥ケーキは、1%HEC+1.5%グリセロール、および1%HEC+5%スクロース+1.5%グリセロールの条件の使用を除いて、優れていた。
【0139】
(b)ケーキの再構成中の溶解性は、任意の賦形剤の非存在下で、かつ1%HEC+1.5%グリセロールの条件を使用して、良好であった。
【0140】
(c)賦形剤の非存在下(すなわち、賦形剤の代わりに使用される緩衝液)の、または1%HEC+1.5%グリセロールの条件を使用したケーキは、水でケーキを再構成した後に、不溶粒子を有した。
【0141】
再懸濁された細胞の生存率を試験し、その結果を表4に示す。
【表4】


【0142】
本発明をいかなる特定の最低生存率にも限定しないが、これらの実験条件を使用して、1.5%グリセロールの存在下または非存在下の1%HEC+5%および/または10%スクロースは、凍結乾燥後に、>90%の生存率をもたらしたことが観察される。同様に、2%HEC+10%スクロース+1.5%グリセロールの条件も使用は、約80%の生存率を可能にする。
【0143】
(実施例3)
凍結乾燥大腸菌HU2117の調製、プロトコル3
細胞調製
1Lの変性EZ Rich Defined グリセロール培地に接種した1mlのシードストックから、1つの2リットルフラスコの細胞を増殖させ、250RPMでの一定の振盪で、8時間、37±1℃でインキュベートした。8時間の終わりに、OD600は、2.2±0.03であった。
【0144】
8分間、6000RPM、4℃での遠心分離によって、細胞を採取した。沈降した細胞を0.9%生理食塩水で2回、および10mMのクエン酸緩衝液(pH7.0)で1回洗浄した。
【0145】
沈降した細胞を、約10mlの最終体積に対して、2〜3mlの10mMのクエン酸緩衝液(pH7.0)中に再懸濁した。
【0146】
プレートカウントを使用して、再懸濁された細胞の濃度を決定した。再懸濁された細胞の生存細胞濃度は、4.9×1010CFU/mlであった。
【0147】
凍結乾燥
各試験に対して、0.5mlの再懸濁された細胞を、以下のリストから選択した1.5mlの賦形剤、および10mlの2%加熱滅菌ヒドロキシエチルセルロース(HEC)と混合した。
【0148】
賦形剤(乾燥ケーキが10mlの最終体積に再懸濁された場合に達成される濃度(w/v)として示す。異なる流体体積がケーキを溶解するために使用される場合は、濃度は比例的に異なる):
(a)緩衝液
(b)2%HEC
(c)2%HEC+5%スクロース
(d)2%HEC+10%スクロース(12ml)
(e)2%HEC+10%スクロース(10ml)
(f)2%HEC+5%スクロース+1.5%グリセロール
(g)2%HEC+10%スクロース+1.5%グリセロール
表5に記載するように、細胞混合物を凍結乾燥した。
【表5】

【0149】
乾燥後、10mlのHO中に再懸濁した上記の(e)を除いて、各乾燥ケーキを12mlのHO中に再懸濁した。
【0150】
上記のプロトコルに従うことによって、以下の見解が得られた。
【0151】
(a)凍結乾燥後、ケーキは、2%HEC+10%スクロース±1.5%グリセロールの条件を使用して優れていた。
【0152】
(b)ケーキの再構成中の溶解性は、賦形剤の非存在下を除いて、全ての場合において良好であった。
【0153】
(c)賦形剤の非存在下(例えば、賦形剤の代わりに使用される緩衝液)で、または2%HEC+5%スクロースの条件を使用して生成されたケーキは、水での再構成後に、不溶粒子を有した。
【0154】
再懸濁された細胞の生存率を試験し、その結果を表6に示す。
【表6】


【0155】
本発明をいかなる特定の最低生存率にも限定しないが、これらの実験条件を使用して、2%HEC+10%スクロース+1.5%グリセロールは、約80%の生存率を可能にすることが観察される。ケーキの再構成および生存細胞数の決定後に、12mlのHO(d)または10mlのHO(e)中のケーキの再懸濁は、生存率への効果に差がなかったことが観察された。
【0156】
実施例1〜3において上記に報告した生存率試験を、再懸濁後約30分以内に実行した。実施例3における細胞生存率は、再懸濁後の異なる時間間隔(5、20、40、および60分)においても試験した。再懸濁後の時間の効果を図1に示す。
【0157】
上記の実施例は、プロバイオティクス微生物をゲル化剤の存在下で凍結乾燥し、乾燥後に再構成し、生存可能なプロバイオティクス生物を含有するゲルを形成することができることを示す。本明細書に提供される方法および組成物は、例えばCAUTIの予防に使用するための、プロバイオティクス生物の簡易的な送達を提供する。
【0158】
上記の明細書で言及した 全ての出版物および特許は、参照として本明細書に組み込まれる。本発明の範囲および精神から逸脱することなく、記載した本発明の組成物および方法の種々の修正および変更は、当業者に明らかであろう。本発明は、特定の好ましい実施形態に関連して記載してきたが、特許請求の範囲に記載されるような本発明は、かかる特定の実施形態に過度に限定されるべきではないことを理解されたい。実際には、当業者には明らかである、本発明を実行するための記載した方法の種々の修正は、本発明の範囲内であることが意図される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
凍結乾燥形態で、プロバイオティクス微生物と、薬学的に許容されるゲル化剤と、薬学的に許容される第1の保護剤とを含む、組成物。
【請求項2】
薬学的に許容される第2の保護剤をさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記プロバイオティクス微生物が、大腸菌株である、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記大腸菌株が、大腸菌83972である、請求項2に記載の組成物。
【請求項5】
前記大腸菌株が、大腸菌HU2117である、請求項2に記載の組成物。
【請求項6】
前記ゲル化剤が、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルグアール、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシルメチルセルロースナトリウム、カルボマー、アルギン酸塩、ゼラチン、およびポロキサマーから成る群から選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
前記第1の保護剤が、無脂肪乳固形分、トレハロース、グリセロール、ベタイン、スクロース、グルコース、ラクトース、デキストラン、ポリエチレングリコール、ソルビトール、マンニトール、ポリビニルプロピレン、グルタミン酸カリウム、グルタミン酸1ナトリウム、Tween20洗剤、Tween80洗剤、およびアミノ酸塩酸塩から成る群から選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
前記第2の保護剤が、前記第1の保護剤とは異なり、無脂肪乳固形分、トレハロース、グリセロール、ベタイン、スクロース、グルコース、ラクトース、デキストラン、ポリエチレングリコール、ソルビトール、マンニトール、ポリビニルプロピレン、グルタミン酸カリウム、グルタミン酸1ナトリウム、Tween20洗剤、Tween80洗剤、およびアミノ酸塩酸塩から成る群から選択される、請求項2に記載の組成物。
【請求項9】
a) i) プロバイオティクス微生物と、
ii) 薬学的に許容されるゲル化剤と、
iii) 薬学的に許容される第1の保護剤と、
を含む混合物を水性流体中に提供する工程と、
b) 前記混合物を凍結乾燥させて、乾燥調製物を生成する工程と、
c) 前記乾燥調製物を水性流体に曝露して、ゲルを形成する工程であって、前記ゲルは、有効量の前記プロバイオティクス微生物を含む、工程と、
を含む方法によって生成される、組成物。
【請求項10】
前記混合物が、薬学的に許容される第2の保護剤をさらに含む、請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
前記プロバイオティクス微生物が、大腸菌株である、請求項9に記載の組成物。
【請求項12】
前記大腸菌株が、大腸菌83972である、請求項11に記載の組成物。
【請求項13】
前記大腸菌株が、大腸菌HU2117である、請求項11に記載の組成物。
【請求項14】
前記ゲル化剤が、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルグアール、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシルメチルセルロースナトリウム、カルボマー、アルギン酸塩、ゼラチン、およびポロキサマーから成る群から選択される、請求項9に記載の組成物。
【請求項15】
前記第1の保護剤が、無脂肪乳固形分、トレハロース、グリセロール、ベタイン、スクロース、グルコース、ラクトース、デキストラン、ポリエチレングリコール、ソルビトール、マンニトール、ポリビニルプロピレン、グルタミン酸カリウム、グルタミン酸1ナトリウム、Tween20洗剤、Tween80洗剤、およびアミノ酸塩酸塩から成る群から選択される、請求項9に記載の組成物。
【請求項16】
前記第2の保護剤が、前記第1の保護剤とは異なり、無脂肪乳固形分、トレハロース、グリセロール、ベタイン、スクロース、グルコース、ラクトース、デキストラン、ポリエチレングリコール、ソルビトール、マンニトール、ポリビニルプロピレン、グルタミン酸カリウム、グルタミン酸1ナトリウム、Tween20洗剤、Tween80洗剤、およびアミノ酸塩酸塩から成る群から選択される、請求項10に記載の組成物。
【請求項17】
対象者にプロバイオティクス微生物を投与する方法であって、
a)プロバイオティクス微生物と、薬学的に許容されるゲル化剤と、薬学的に許容される保護剤とを含む、凍結乾燥調製物を提供する工程と、
b)前記凍結乾燥調製物を水性流体に曝露して、有効量の前記プロバイオティクス微生物を含むゲルを形成する工程と、
c)前記対象者を前記ゲルと接触させる工程と、
を含む、方法。
【請求項18】
前記対象者を前記ゲルと接触させる工程は、療デバイスを前記ゲルと接触させて、処理済みデバイスをもたらす工程と、前記対象者を前記処理済みデバイスと接触させる工程とを含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記医療デバイスが、導尿カテーテルである、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記プロバイオティクス微生物が、大腸菌HU2117または大腸菌83972である、請求項17に記載の方法。
【請求項21】
凍結乾燥形態で、プロバイオティクス微生物と、薬学的に許容されるゲル化剤と、薬学的に許容される第1の保護剤とを含む組成物を含む、キット。
【請求項22】
前記組成物が、薬学的に許容される第2の保護剤をさらに含む、請求項21に記載のキット。
【請求項23】
無菌水性流体の容器をさらに備える、請求項21に記載のキット。
【請求項24】
前記プロバイオティクス微生物が、大腸菌株である、請求項21に記載のキット。
【請求項25】
前記大腸菌株が、大腸菌83972である、請求項24に記載のキット。
【請求項26】
前記大腸菌株が、大腸菌HU2117である、請求項24に記載のキット。

【図1】
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【公表番号】特表2010−535760(P2010−535760A)
【公表日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−519900(P2010−519900)
【出願日】平成19年9月7日(2007.9.7)
【国際出願番号】PCT/US2007/019520
【国際公開番号】WO2009/020455
【国際公開日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【出願人】(510033594)コンジュゴン,インコーポレーテッド (1)
【Fターム(参考)】