説明

微生物の増殖を制限するための方法

(a)ナノ粒子状チタニアを含む担体媒質上に微細ナノスケール金を含む抗菌剤を提供することであって、微細ナノスケール金が物理的気相堆積法により担体媒質上に堆積させてある、抗菌剤を提供すること、及び(b)少なくとも1つの微生物を抗菌剤に接触させること、を含む、微生物の増殖を制限するための方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本願は、2007年10月3日に出願された米国仮出願第60/977,171号の優先権を主張するものであり、その仮出願の内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
(発明の分野)
本発明は、ウイルス、細菌及び真菌などの微生物の、増殖又は存在を制限するための方法に関する。
【背景技術】
【0003】
唾液、涙、血液及びリンパ液などの生体体液中の、病原性の細菌、ウイルス及び真菌の存在可能性は、医療従事者及び患者にとって重要な関心事である。細菌、ウイルス及び真菌で汚染された表面は、感染の拡大を促進し得る。更に、貴重な食品及び工業製品の有用性は、細菌及びウイルスの存在により破壊され得る。したがって、病原体の伝播を最小化するための方法(例えば、家庭、病院及びデイケアセンターで)は重要である。
【0004】
微生物は、多くの物理的及び化学的方法により、殺す又は静菌化することができる。物理的方法には、熱及び/又は放射線の適用が挙げられる。ウイルス、真菌及び細菌の増殖を制限するのに使用されている化学物質には、アルコール(通常、70体積パーセントの水性エチル又はイソプロピルアルコール)、フェノール及びヘキサクロロフェンなどのフェノール誘導体、ホルムアルデヒド、グルタルアルデヒド、エチレンオキシド、エーテル、洗剤、グルコン酸クロルヘキシジン、銀、金、銅及び水銀などの重金属、マーキュロクロムなどの水銀の有機化合物、並びに、過酸化水素、ヨウ素、次亜塩素酸塩及び塩素などの酸化剤が挙げられる。
【0005】
バシトラシン、セファロスポリン、シクロセリン、ペニシリン、バンコマイシン、クロラムフェニコール、エリスロマイシン、テトラサイクリン、スルホンアミド及びアミノグルコシド(ストレプトマイシン、ネオマイシン及びゲンタマイシンなど)などの抗生物質は、従来、細菌を殺すことができる微生物によって作られる化学物質として定義されている。抗生物質はウイルスには効果を有さない。
【0006】
半導体光触媒(例えば、チタン、ジルコニウム、亜鉛、スズ、鉄、タングステン及びモリブデンの酸化物)が、流体媒質中の有機汚染物質の破壊(光化学的酸化による)のために使用されている。二酸化チタンは、その化学的安定性、紫外線/可視光活性化に好適なバンドギャップ構造、及びその比較的低いコストのために、広く研究されている。共触媒(例えば、白金、パラジウム、銀並びに/又はこれらの金属の酸化物及び硫化物)を二酸化チタンに添加して、その光触媒活性を増大させている。
【0007】
より最近では、ナノサイズの二酸化チタン粒子が利用されており、種々の貴金属でキャップされて(capped)これらの光触媒効率を改善している。金でキャップされた二酸化チタンナノコンポジットは、二酸化チタン溶液と金の塩(例えば、HAuCl)との混合物から、化学的又は光化学的還元方法を使用して、二酸化チタンナノ粒子の表面上の金を還元することによって、形成されている。このようなナノコンポジットは、水性媒質中に分散し、光の存在下での微生物増殖抑制を示している。
【0008】
以上の抗菌剤のそれぞれ(並びに他の既知の抗菌剤)は、それ独自の、利点と欠点との組み合わせを有する。一部のものは、有毒、高コスト、又はそうでなければ日常的な消毒用化合物として非実用的である。一部のものは不安定であり、時間とともに不活性になる。一部のものは、標的微生物がその抗菌剤に対して耐性を発現するように作用する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
それゆえに、特に、特定の病原体のより強い病原性形態の発現という点で、微生物の増殖を制限するための代替的で有効な方法(例えば、ウイルスを不活性化する方法並びに細菌及び真菌の増殖を制限する方法)に対する必要性が存在することが認識される。このような方法は、好ましくは、簡易で、種々の微生物に対して有効、他の生体物質の存在下で有効、及び/又は種々の異なる環境における使用に有効である。
【課題を解決するための手段】
【0010】
つまり、1つの態様では、本発明は、微生物(例えば、細菌、真菌、酵母及びウイルス(無エンベロープウイルス及びエンベロープウイルスのどちらも含む))の増殖を制限するための方法を提供する。この方法は、(a)ナノ粒子状チタニアを含む担体媒質上に微細ナノスケール金を含む抗菌剤を提供することであって、微細ナノスケール金が物理的気相堆積法により(より好ましくは酸化雰囲気中での物理的気相堆積法により)担体媒質上に堆積させてある、抗菌剤を提供すること、及び(b)少なくとも1つの微生物を抗菌剤に接触させること、を含む。
【0011】
ナノ粒子状チタニア上に微細ナノスケール金(すなわち、全ての次元においてサイズが5ナノメートル(nm)以下である金)を物理的気相堆積することにより、強力な抗菌特性を呈する材料が製造できることが発見されている。この材料の抗菌特性は、物理的気相堆積法以外の方法(例えば、化学的又は光化学的方法)によってナノ粒子状チタニア上に堆積した金を含む対応する材料の抗菌特性と比較して、驚異的に強力であり得る。結果として得られる材料は、他の生体物質(例えば、タンパク質)の存在下で及び種々の異なる環境において(例えば、レストラン、病院及びトイレにおいて)、種々の微生物(例えば、グラム陰性細菌及びグラム陽性細菌の両方)に対して有効であり得る。
【0012】
加えて、この材料は、種々の異なる照明条件下で有効であり得る。その固有の抗菌特性により、この材料は、低い光レベルでも又は更には光の非存在下でも有効に作用することができる。更に、この材料は、その抗菌特性を光(可視光及び/又は紫外線)への曝露を介して更に増強することができるので、光触媒の抗菌活性を呈することもできる。
【0013】
本発明の方法は、簡易(複雑な設備又は手順を必要としない)で、比較的費用対効果に優れている(比較的少量の金だけを使用し、結果として得られる材料は、その光曝露が制限され、油及び他の汚染物質との接触が最小化される限り、使用とともにその有効性を失わないようであり、したがって再利用することができるため)。本方法はまた比較的迅速であり得、好ましい実施形態に関しては、試料中又は表面上に存在する微生物の最大約90パーセント又はそれ以上を約2分未満で殺す又は静菌化する。それゆえに、少なくともいくつかの実施形態では、本方法は、簡易で、種々の微生物に対して有効、他の生体物質の存在下で有効、及び/又は種々の異なる環境における使用に有効である代替的な抗菌方法に対する上述の必要性を満たすことができる。
【0014】
別の態様では、本発明はまた、表面を消毒するための方法を提供する。この方法は、ナノ粒子状チタニアを含む担体媒質上に微細ナノスケール金を含む抗菌剤を、少なくとも1つの表面の少なくとも一部に適用することを含み、微細ナノスケール金が物理的気相堆積法により(より好ましくは酸化雰囲気中での物理的気相堆積法により)担体媒質上に堆積させてある。
【図面の簡単な説明】
【0015】
本発明のこれら並びにその他の特徴、態様及び利益は、次の説明、添付した請求項及び添付図面でよりよく理解されるであろう。
【図1】以下の実施例のセクションに記載される本発明の方法の実施形態を行う際の使用のために抗菌剤を調製するのに使用された装置の側断面図。
【図2】図1の装置の透視図。
【0016】
これらの図は、理想化されており、一定の縮尺で描かれてはおらず、単に例証であり、かつ非限定的であることを意図する。
【発明を実施するための形態】
【0017】
定義
本特許出願で使用される場合、
「接触させること」は、本発明の方法で使用される抗菌剤との微生物の直接の物理的接触、並びに、抗菌剤に対する微生物の間接的曝露(例えば、抗菌剤自体との直接の物理的接触の必要なしに微生物に抗菌効果を媒介できる、抗菌剤により形成される拡散性抗菌物質との直接の物理的接触を介する)を含み、
「微細ナノスケール金」は、全ての次元のサイズが5ナノメートル(nm)以下である金(例えば、粒子又は原子クラスタ)を意味し、
「微生物の増殖を制限すること」は、存在する微生物を抑制する、殺す、複製を阻止する、又はその数を低減することを意味し(それゆえに、この用語は「静菌」(すなわち、増殖又は複製を抑制するが、必ずしも殺しはしない、例えば、静細菌又は静真菌)及び「殺菌」(すなわち、殺すこと、例えば、殺細菌又は殺真菌)活性の両方を含む)、
「微生物」は、分析又は検出に好適な遺伝物質を有する任意の細胞を意味し(例えば、細菌及びウイルスが挙げられる)、並びに、
「標的微生物」は、増殖が制限されることが所望される任意の微生物を意味する。
【0018】
抗菌剤
本発明の方法を行うのに使用される抗菌剤は、ナノ粒子状チタニアを含む担体媒質上に微細ナノスケール金を含む。微細ナノスケール金は、物理的気相堆積法により(より好ましくは酸化雰囲気中での物理的気相堆積法により)、担体媒質上に堆積させられるか又は堆積させてある。
【0019】

本明細書で使用するとき、用語「微細ナノスケール金」は、全ての次元のサイズが5ナノメートル(nm)以下である金(例えば、粒子又は原子クラスタ)を意味する。好ましくは、抗菌活性金は、全ての次元(例えば、粒子の直径又は原子クラスタの直径)の平均サイズが最大約5nm(5nm以下)の範囲である(より好ましくは最大約4nmであり、更に好ましくは最大約3nmである)。最も好ましくは、個々の金ナノ粒子において任意の次元のサイズが、約2nm以下である。好ましい実施形態には、少なくとも1つの次元で少なくとも約0.1nmで(より好ましくは少なくとも約0.5nm)、かつ任意の次元において上記の上限値以下である、金ナノ粒子が含まれ得る。
【0020】
最も好ましい実施形態において、金の少なくとも一部分は、超ナノスケールである(すなわち、少なくとも2つの次元においてサイズが0.5nm未満であり、全ての次元においてサイズが1.5nm未満である)。個々の金ナノ粒子のサイズは、当該技術分野において周知であるように、透過電子顕微鏡(TEM)分析によって定量することができる。
【0021】
担体媒質上に供給される金の量は、幅広く変化し得る。金は高価であるため、所望の触媒活性程度を達成するのに妥当に必要な量を超える金は使用しないのが望ましい。更に、ナノスケール金は非常に流動性が高いため、PVDを使用して堆積させる際に、金の使用量が多すぎると、大きい物体に金の少なくとも一部が融合して、活性が損なわれる可能性がある。
【0022】
これらの理由から、担体媒質上の金の質量負荷は、担体媒質と金との合計質量を基準として、好ましくは約0.005(より好ましくは0.05)〜約10質量パーセント、より好ましくは約0.005(更に好ましくは0.05)〜約5質量パーセント、更に好ましくは約0.005(最も好ましくは0.05)〜約4.5質量パーセントの範囲である。
【0023】
金はPVD技法により(例えばスパッタリングにより)堆積させて、担体表面上に、抗菌活性を有する微細ナノスケール粒子又は原子クラスタを形成することができる。金は、主に元素形態で堆積すると考えられるが、他の酸化状態が存在する場合もある。金は流動性が高く、表面の高エネルギー部位に蓄積する傾向があるが、担体のナノ粒子特性は、明らかに、金を不動化すること、並びに、堆積した金粒子及びクラスタを分離又は別々の状態に保ち、好ましくは不連続に維持することに役立っている。このことは、活性を維持するのに役立つことができ、そうでなければこの活性は、金が融合して大きなサイズの物体になった場合には低下してしまうであろう。
【0024】
金に加え、1つ以上の他の金属を、同じ担体及び/又は金含有担体と混合したその他の担体の上に提供することもできる。このような他の金属の例には、銀(好ましい)、パラジウム、白金、ロジウム、ルテニウム、オスミウム、銅、イリジウム及び同等物、並びにこれらの組み合わせが挙げられる。これらの他の金属を使用した場合は、使用する金供給源標的と同一又は異なる標的供給源から、担体上に共析出させることができる。あるいは、このような金属は、金を堆積させた前又は後のいずれかで、担体上に供給され得る。有利な活性化のために熱処理を必要とする他の金属は、金を堆積させる前に担体に適用し、熱処理することもできる。
【0025】
担体媒質
抗菌剤の調製での使用に好適な担体媒質には、ナノ粒子状チタニアを含むものが挙げられる。本明細書で使用するとき、用語「ナノ粒子状チタニア」は、平均直径が50ナノメートル(nm)未満のチタニアナノ粒子を意味し、「直径」はほぼ球形の粒子の直径だけでなく、非球形粒子の最長寸法をも意味する。好ましくは、このナノ粒子は少なくとも2つの次元のサイズが約30nm以下である(より好ましくは約15nm以下、最も好ましくは約10nm以下である)。担体媒質は所望により更に、より大きい粒子(例えば、平均直径が50nm超で100nm未満のナノ粒子、又は更に大きい粒子)を少量(すなわち、担体媒質の総質量の50パーセント未満、より好ましくは約20パーセント未満、最も好ましくは約10パーセント未満)で含むことができる。
【0026】
このような担体を使用すると、より小さな粒子サイズの金及びより高い活性が観察できることから、この担体のナノ粒子特性は、担体表面上に堆積した金の不動化を助けると思われる。担体媒質のチタニアナノ粒子は、好ましくは、何らかの形で会合して、凝集塊を形成する。例えば、ナノ粒子は物理的(例えばロンドン力又は水素結合により)又は化学的(例えば共有結合又はイオン結合により)に会合し得る。結果として得られる凝集塊は好ましくは、全ての次元の平均サイズが約0.1マイクロメートル〜約15マイクロメートルの範囲である。この凝集塊は更に会合して、(例えば、堆積剤の使用の有無を問わず、噴霧乾燥、ゾル−ゲル方法、又はコーティングなどの方法により)、凝集塊ネットワークを形成し得る。
【0027】
この凝集塊は一般に、形成の元となるナノ粒子が不完全に充填されていることから、(たとえ非多孔質のナノ粒子から形成されたとしても)多孔質であり得る。好ましくは、ナノ粒子又は結果として得られる凝集塊のいずれか(又は両方とも)が多孔質である。この凝集塊は比較的強靱であり得(例えば、ナノ粒子状ゾル前駆体を用いたゾル−ゲル方法により形成した場合)、又は比較的脆い性質(例えば、乾燥粉末ベッド内で形成した場合、又は液体中の凝集塊分散液の乾燥により形成した場合)であり得る。ゾル−ゲル形成方法には、乾燥及び/又は熱処理を含めることができ、これにより、中間体ゲル内のナノ粒子の不完全な充填によって生じた多孔性を除去することなく、ナノ粒子同士を固着させ得る。
【0028】
好ましくは、担体媒質は、約0.4を超える(好ましくは約0.5を超える)多孔率(すなわち、担体媒質の総体積に対する孔空隙の体積比)を有する。多孔率は、透過電子顕微鏡(TEM)によって観察及び測定が可能である。
【0029】
より好ましくは、担体媒質はナノ多孔質である(すなわち、多孔率が約0.4を超え、孔の直径サイズが約1nm〜約100nmの範囲である)。最も好ましくは、担体媒質は、以下の式を使用して(例えばTEMによって得られたデータで)計算した場合に、サイズ1〜10nmの範囲の孔のナノ多孔質総容量が、サイズ1〜100nmの範囲の孔の総容量の約20パーセントを超える(すなわち、以下の式を使用して約0.20を超える)。
【0030】
【数1】

【0031】
式中、NPCは担体媒質のナノ多孔質総容量を示し、CPvは、孔半径nでの蓄積孔容量を1グラム当たりの立方センチメートル(cm/g)単位で示し、nはナノメートル単位での孔の半径である。
【0032】
好ましい担体媒質には、担体媒質の外側表面領域がナノ多孔質であり、その深さが、PVDによって堆積される金原子の浸透深さ以上であるものが挙げられる。通常、低表面積の非ナノ多孔質材料は、種々の方法によるナノ多孔性によって特徴づけられる外側表面を有するように、作製することができる(例えば、より大きなホスト材料の表面上にナノ粒子サイズのコロイドのようなナノ多孔質材料を吸着させて複合体を形成すること、材料の表面上で金属アルコキシド又は金属塩を加水分解すること、及び材料の表面上で、金属薄膜を酸化することによる)。後者の場合、金属薄膜はPVD法により堆積させることが可能であり、酸化は、乾燥した又は湿った空気により行って、ナノ多孔質被膜を材料上に生成することができる。
【0033】
有用な担体媒質は、担体材料の種々の形態又は形状(例えば粉末、粒子、ペレット、顆粒、押出成形体、繊維、シェル、ハニカム、プレート、スクリム、布、紙及び同等物、並びにこれらの組み合わせ)を含み得る。粒子は、規則正しい形、不規則のもの、デンドライト状のもの、デンドライト状ではないもの又は同等物があり得る。好ましい担体には、粒子、粉末、及びこれらの組み合わせが挙げられる。
【0034】
チタニアナノ粒子に加え、担体媒質の粒子状の実施形態には、幅広い粒子サイズの範囲のいずれかの粒子が含まれ得る。例えば、チタニアナノ粒子及び/又はナノ粒子凝集塊は、他の粒子状光触媒若しくは抗菌剤、及び/又は濃縮剤(concentration agent)(すなわち、微生物を捕捉又は不動化するように作用し得る既知の又は今後開発される物質)と組み合わせて、担体媒質の特徴を更に変更することができる。このような添加剤は、ナノ粒子又はナノ粒子凝集塊の平均サイズの、例えば約2分の1未満〜約10倍の平均サイズ範囲であり得る。しかしながら、添加剤は、ナノ粒子又はナノ粒子凝集塊に匹敵する平均サイズを有することが多い。
【0035】
担体媒質の構成成分として有用な材料(単独で、又は他の材料と組み合わせて)の代表的な例には、炭素質材料(例えば、活性炭、グラファイト及び同等物)、ケイ素質材料(例えば、シリカ、シリカ−チタニア(シリカナノ粒子とチタニアナノ粒子との混合物、ケイ素とチタンとの両方を含む酸化物のナノ粒子、及び同等物)、シリカ−アルミナ及び同等物)、金属化合物(例えば、金属酸化物及び同等物)及び同等物、並びにこれらの組み合わせが挙げられる。有用な金属酸化物としては、セリウム、アルミニウム、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、ガリウム、イットリウム、ジルコニウム、ニオビウム、モリブデン、鉄、スズ、アンチモン、ランタン、タングステン、及びこれらの組み合わせのうちの1つ以上の酸化物が挙げられる。カルシウム、カリウム、ナトリウム、マグネシウム、ゲルマニウム、ストロンチウム、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、銀、インジウム、バリウム、ハフニウム、タリウム、レニウム、白金、及びこれらの組み合わせのうちの1つ以上の酸化物も、前述の酸化物のうちの1つ以上との混合剤で有用であり得る。
【0036】
担体媒質としての使用に好ましい材料(単独で、又は他の材料と組み合わせて)には、チタニア、チタニア−アルミナ、チタニア−シリカ及び同等物、並びにこれらの組み合わせが挙げられる。チタニアは、ナノ粒子状形態で市販されている。チタニアがより好ましい(最も好ましくは、チタニアの少なくとも一部分がアナターゼ結晶形状になっている)。
【0037】
上述の担体媒質の構成成分の粒子サイズは、現在実施されている従来の又は今後実施される実施方法に従い、適切な任意の方法で測定することができる。例えば、ナノ粒子の平均直径は、TEM情報の検査によって測定することができ、約0.1マイクロメートル〜約25マイクロメートルの範囲のナノ粒子凝集塊の平均直径は、走査電子顕微鏡(SEM)によって測定することができ、より大きな(約5マイクロメートルを超える)粒子又は凝集塊の平均直径は、光学顕微鏡によって測定することができる。
【0038】
堆積方法
物理的気相堆積とは、金含有供給源又は金含有標的から担体媒質への金の物理的な移動を意味する。物理的気相堆積は、原子単位での堆積を伴うものとして見ることができるが、実際の実施では、金が、1物体当たり1つを超える原子から構成される超微細体として移動される場合もある。堆積した金は担体媒質の表面と物理的、化学的、イオン的、及び/ないしは別の方法で相互作用を起こし得る。
【0039】
物理的気相堆積は、好ましくは、金の移動性が高く、何らかの方法(例えば、担体表面上又はそれに非常に近くの場所に付着)で不動化されるまでは、担体媒質の表面上を移動しやすい傾向である、温度及び真空条件で起こる。付着する部位は、表面欠損などの欠陥、段差及び転位などの構造上の不連続性、並びに相の境界面、又は結晶若しくは小さな金クラスタのようなその他の金形態を含むことができる。PVDによって堆積した金は明らかに、金が高レベルの活性を維持できる、十分な不動化が行われている。これに対し、従来の方法ではしばしば、金が融合して大きな形状になり、活性が低下又は更に失われることさえあり得る。
【0040】
物理的気相堆積は、様々な方法で実施することができる。代表的な方法としては、スパッタ堆積法(好ましい)、蒸着法、及び陰極アーク堆積法が挙げられる。これら又は他のPVD方法のいずれかを使用して、本発明の方法を行うのに使用される抗菌剤を調製することができるが、PVD技法の性質は得られる活性に影響し得る。
【0041】
例えば、物理的気相堆積法のエネルギーは、堆積される金の流動性、したがって融合する傾向に影響を与え得る。エネルギーが高くなると、これに応じて金の融合傾向が増大する傾向がある。融合が増大すると、今度は、活性が低下する傾向がある。通常、堆積形態のエネルギーは、蒸着法が最も低く、スパッタ堆積法(衝突金属形態のごく一部はイオン化されており、ある程度のイオン量を含み得る)はより高く、陰極アーク堆積法(イオン含有量は、数十パーセントであり得る)が最も高い。したがって、特定のPVD技法が、所望されるよりも大きな流動性を有する堆積金を生じる場合、代わりにより少ないエネルギーのPVD技法を使用することが有用であり得る。
【0042】
物理的気相堆積法は、担体表面の適切な処理が確実に行われるよう、好ましくは処理する担体媒質が十分に混合された状態(例えば、混転、流動化、粉砕、又は同等の処理)で実施される。PVDによる堆積の粒子混転方法は、米国特許第4,618,525号(チャンバレン(Chamberlain)ら)に記述されており、この記述は参照により本明細書に組み込まれる。特に触媒用に記述された方法については、ワイズ(Wise)著、「RFスパッタリングによる高分散白金触媒(High Dispersion Platinum Catalyst by RF Sputtering)」、ジャーナル・オブ・カタリシス(Journal of Catalysis)83巻、477〜479頁(1983年)及び米国特許第4,046,712号(ケアンズ(Cairns)ら)を参照されたい。これらの記述は参照により本明細書に組み込まれる。
【0043】
微細粒子又は微細粒子凝集塊(例えば、平均直径が約10マイクロメートル未満)にPVDを実施する際、担体媒質は好ましくは、PVD処理の少なくとも一部の実施中に、混合及び微粉砕の両方が行われる(例えば、ある程度まですり潰され、又は粉砕される)。これは、堆積の際に粒子又は凝集塊の分離及び自由流を維持するのに役立ち得る。微細粒子又は微細粒子凝集塊の場合、制御された金の堆積を依然として維持しながら、できるだけ激しく素早く粒子を混合することが有利であり得る。
【0044】
PVDは、この目的で現在使用されている又は今後開発される装置の種類のいずれかを使用することにより行うことができる。しかしながら、好ましい装置10が、図1及び2に示されている。装置10は、粒子攪拌機16を収容する真空槽14を画定するハウジング12を備える。ハウジング12は、所望される場合にはアルミニウム合金から作製することができ、垂直に配向された中空シリンダー(例えば、高さ45cm及び直径50cm)である。基部18は、15.2cm(6インチ)拡散ポンプ24並びに粒子攪拌機16のための担体26が続く高真空ゲートバルブ22のための引き込み口20を含む。真空槽14は、0.13mPa(10−6Torr)の範囲内の背景圧力に排気可能である。
【0045】
ハウジング12の上部は、外部搭載の直径7.6cm(3インチ)の直流(dc)マグネトロンスパッタ堆積供給源30(USガンII(US Gun II)、US社(US, INC.)(カリフォルニア州サンノゼ(San Jose)))と嵌合する、取り外し可能なゴム製Lガスケット密閉プレート28を含む。スパッタ堆積供給源30内に、金スパッタ標的32(例えば、直径7.6cm(3.0インチ)×厚さ0.48cm(3/16インチ))が固定される。スパッタ堆積供給源30は、スパークル(Sparc-le)アーク抑制システム(アドバンスト・エナジー・インダストリーズ社(Advanced Energy Industries, Inc)、コロラド州フォートコリンズ(Fort Collins))が装填された、MDX−10マグネトロンドライブ(Magnetron Drive)(アドバンスト・エナジー・インダストリーズ社(Advanced Energy Industries, Inc)、コロラド州フォートコリンズ)により作動する。
【0046】
粒子攪拌機16は、長方形の開口部34(例えば6.5cm×7.5cm)を有する中空円筒(例えば長さ12cm×水平直径9.5cm)である。開口部34は、金スパッタ標的32の表面36のすぐ下約7cmに位置付けられ、これにより、スパッタリングされた金原子が攪拌機容積38に入ることができる。攪拌機16は、軸を揃えてシャフト40と嵌合する。シャフト40は、混転する担体粒子のための攪拌機構又はパドルホイールを形成する4つの長方形状のブレード42がボルトで固定される長方形状の断面(例えば1cm×1cm)を有する。ブレード42それぞれには2つの孔44(例えば直径2cm)があり、ブレード42及び粒子攪拌機16によって形成される4区分それぞれに収容される粒子容量の間の連通を促進する。ブレード42の寸法は、攪拌機の壁48と側方及び末端との隙間の距離が2.7mm又は1.7mmのいずれかになるように選択される。
【0047】
物理的気相堆積法は、本質的には、非常に幅広い範囲にわたって、任意の所望される温度で実施することができる。しかしながら、金を比較的低い温度(例えば、約150℃未満、好ましくは約50℃未満、より好ましくは室温(例えば約20℃〜約27℃)以下)で堆積すれば、その堆積した金はより高い活性を有することができる(おそらく、欠陥がより多いため、及び/又は流動性及び融合性がより低いため)。周囲条件において実施すると、堆積中に加熱又は冷却が不要となり、有効かつ経済的であるため、一般的に好ましい可能性がある。
【0048】
物理的気相堆積法は、不活性スパッタリングガス雰囲気中(例えば、アルゴン、ヘリウム、キセノン、ラドン、又はこれらの2つ以上の混合物(好ましくはアルゴン)の中)で行うことができるが、所望により物理的気相堆積法は酸化雰囲気中で行われる。好ましくは、この酸化雰囲気には少なくとも1つの酸素含有ガスが含まれる(より好ましくは、酸素含有ガスは、酸素、水、過酸化水素、オゾン、及びこれらの組み合わせから選択され、更に好ましくは、酸素含有ガスは、酸素、水、及びこれらの組み合わせから選択され、最も好ましくは酸素である)。酸化雰囲気には更に、不活性スパッタリングガスが含まれ、これには例えばアルゴン、ヘリウム、キセノン、ラドン、又はこれらの2つ以上の混合物がある(好ましくはアルゴン)。PVD処理中の真空槽内の総気体圧力(全てのガス)は、約0.13Pa(1mTorr)〜約3.3Pa(25mTorr)(好ましくは約0.67Pa(5mTorr)〜約2.0Pa(15mTorr))である。酸化雰囲気は、真空槽内の全てのガスの総質量を基準にして、約0.05質量パーセント〜約60質量パーセントの酸素含有ガス(好ましくは、約0.1質量パーセント〜約50質量パーセント、より好ましくは約0.5質量パーセント〜約25質量パーセント)を含み得る。
【0049】
接触
本明細書で使用するとき、「接触させること」は、本発明の方法で使用される抗菌剤との微生物の直接の物理的接触、並びに抗菌剤に対する微生物の間接的曝露(例えば、抗菌剤自体との直接の物理的接触の必要なしに微生物に抗菌効果を媒介できる、抗菌剤により形成される拡散性抗菌物質との直接の物理的接触を介する)を含む。本発明の方法は、2つの物質の間のこのような接触を提供する既知の又は今後開発される種々の方法のいずれかにより行うことができ、抗菌剤は、汚染された又は汚染され得る材料又は表面とのこのような接触を提供するのに適している任意の形態で(例えば、粒子状形態、あるいは、計深棒、フィルム(例えば、再適用可能な若しくは再配置可能なフィルム)、フィルター、試験管(tube)、ウェル、プレート、ビーズ、膜、又はミクロ流体装置のチャネル、あるいは同等物などの担体に適用されて)使用することができる。好ましくは、抗菌剤は粒子状形態で使用される。
【0050】
例えば、抗菌剤(単独で、あるいは例えば、他の抗菌物質と、又は液体(例えば、水若しくは油)、固体(例えば、布、ポリマー、紙若しくは無機固形物)、ゲル、クリーム、フォーム若しくはペーストの形態のキャリア材料と組み合わせて)は、非多孔性又は多孔性で固体の、微生物に汚染された又は微生物に汚染され得る材料に対して、適用、コーティング、スプレー、表面乾燥(dried onto)、擦りつけ、ディップとしての使用、浸透、調合を行うことができ、あるいは汚染された又は汚染され得る液体に(例えば、直接に又は計深棒若しくはフィルター上のコーティングとして)添加することができる。所望される場合、結合剤、安定剤、界面活性剤、高分子可塑剤又は他の特性改質剤を使用することができる。
【0051】
抗菌剤は、織布又は不織布に適用することができ、種々の固形物(例えば、ヒドロキシアパタイト、シリカ又はガラスなどの無機材料)と組み合わせて、ウイルス、細菌又は真菌による汚染を、抑制、制限、低減及び/又は防止することができる。抗菌剤は、紙、ティッシュ、綿棒、手術衣又はドレープなどの使い捨て表面に、並びに種々の吸収性及び非吸収性材料に適用することができる。好ましい基材には、少なくとも部分的に光透過性であるものが挙げられる。
【0052】
例えば、抗菌剤は、抗菌性拭き取り用品としての使用のために布又は紙キャリア材料に組み込むことができる。布又は多孔質ポリマーへの抗菌剤の組み込みは有利にも、繊維又は材料の劣化を防ぐことができ、また、繊維若しくは材料の中に潜入又は隠れている細菌及び真菌を殺すことができる。
【0053】
抗菌剤は、固体表面に適用して(例えば、キャリア材料を含むペーストの形態で)、微生物の増殖を制限することができる。それゆえに、この作用剤は、例えば、家庭、デイケア、工業及び病院の環境下で、玩具、設備、医療装置、作業表面、ベッドの手すり、コンピュータキーボード、照明スイッチ、ドアノブ及び感染を伝播できる媒介物として既知の他の表面などを含む病院内の表面を洗浄するために、表面滅菌又は消毒用に使用することができる。縫合材、包帯、注射針、(例えば、使い捨て及び再利用可能な)顔面マスク及び呼吸器、手術用ドレープ、医療用衣料(例えば、ガウン、エプロン及び同等物)、外傷用傷当材及び接触層、手術用ガーゼ、容器及び同等物などの種々の設備、使い捨て用品及び装置は、本発明の方法を使用して、滅菌又は消毒することができる。
【0054】
抗菌剤は、単独で、あるいは、殺ウイルス剤、殺細菌剤若しくは静細菌剤、及び/又は殺真菌剤若しくは静真菌剤のような1つ以上の抗菌物質(ポリミキシン、ペニシリン、別の抗菌剤、殺ウイルス剤(例えば、アマンタジン)、アルコール(例えば、エタノール若しくはイソプロパノール)、第四級アンモニウム化合物(例えば、塩化ベンザルコニウム)及び/又は殺真菌剤(例えば、ナイスタチン)など)と組み合わせて、表面に又は固体若しくは液体材料に適用して、ウイルス又は細菌又は真菌の汚染を、増殖制限すること又は防止することができる。あるいは、抗菌剤は、単独で、又は1つ以上の殺ウイルス剤、殺細菌剤若しくは静細菌剤及び/又は殺真菌剤若しくは静真菌剤と組み合わせて、ウイルスを有する又は細菌を有する又は真菌に汚染されている固体又は液体に直接添加することができる。
【0055】
抗菌剤の量、(抗菌剤と汚染された又は汚染され得る材料との間の)接触の程度、及び特定の材料又は環境の中での微生物の増殖を制限するのに十分である接触期間は、(抗菌剤の性質及び形態、任意の光曝露の性質、微生物の種類及び負荷、並びに材料又は環境の性質及び形態に依存して)変動し、当業者により容易に決定することができる。約1〜約30分(好ましくは約2〜約15分、より好ましくは約5〜約10分)の接触時間が有用であり得る。抗菌剤の「有効量」は、微生物の増殖を制限するのに十分である量を意味する。例えば、10ミリグラムの抗菌剤は、多くの場合、10の微生物コロニー形成単位(CFU)を含有する1ミリリットル試料を約2分で効果的に消毒することができる。より低い微生物負荷は、より少ない時間で及び/又はより少ない抗菌剤を使用して消毒することができる。
【0056】
本発明の方法を行う際に、混合(例えば、攪拌又はかき混ぜ)、擦り付け、及び/又はインキュベーションは任意ではあるが、抗菌剤との微生物の接触を増すために、好ましい。好ましい接触方法は、微生物含有材料を抗菌剤と、混合する又は擦り付けること(例えば、約30秒〜約1分)及びインキュベートすること(例えば、約2〜約30分)の両方を含む。抗菌剤が粒子の形態であり、微生物含有材料が流体の形態であるとき、インキュベーション工程は好ましくは、混合すること又は振動させることを含み、好ましくは粒子の沈殿が続く(例えば、約8〜約10分)。
【0057】
キャリア材料が使用されるとき、キャリア材料中の抗菌剤の好ましい濃度は、使用に依存して変動する。好ましい濃度範囲は約0.01μg/mL〜約15mg/mLであることができるが、抗菌剤は低濃度で有効であり得る。
【0058】
任意の方法工程
抗菌剤の抗菌特性は、この作用剤を光に曝露すると、増強されることができる。本発明の範囲の制限を意図するものではないが、細菌、ウイルス及び真菌の増殖の抑制における抗菌剤の作用機序は完全には解明されていないものの、現在入手可能なデータは、この作用剤が、反応性種(例えば、非常に反応性の高い様々な酸素含有種)の形成において少なくとも部分的に触媒として作用して(すなわち、この作用剤は消費されない)、(例えば、酸化によって)微生物の破壊を引き起こすことに適合している。関連する機序に関わらず、本発明の方法で使用される作用剤は、光曝露があっても又はなくても、微生物の増殖を制限することができる。有利なことに、この抗菌剤は再利用可能であり、抗菌剤として再び使用することができる。
【0059】
それゆえに、本発明の方法は、所望により光曝露を含むことができる(好ましくは、上記接触工程の少なくとも一部の間、及び/又は比較的高レベルの微生物汚染を処理するとき)。このような光曝露には、有向光源からの又は周囲光からの曝露を挙げることができる。好ましくは、抗菌剤は、少なくとも約200ナノメートル(nm)かつ約900nm未満の波長の光に曝露される。より好ましくは、光は少なくとも約400nmかつ約850nm未満の波長を有する。
【0060】
便利であり十分な光源は、研究室及びオフィスの蛍光照射に通常使用されるもの、並びに発光ダイオード(LED)源、白熱源、太陽光及びレーザーである。光曝露は、例えば、連続、脈動又は周期的であることができ、一定範囲の強度及び持続時間の光曝露(例えば、約5分にわたる少なくとも約270μW/cmの照射)を使用することができる。好ましい曝露時間は、抗菌剤の量並びに光源の強度及びスペクトル特性に依存して変動する。
【0061】
所望により、本発明の方法は、抗菌剤の隔離、分離及び/又は再利用(例えば、粒子状作用剤の重力沈降若しくは遠心分離器の補助による沈降、それに続いて、結果的に得られた上清を除去するか、あるいはフィルター、カラム、膜若しくはフィルム上に又はパウチ内に作用剤を回収するかによる)を更に含んで、その再使用を可能にすることができる。本発明の方法は、手動で(例えば、バッチ式で)行うことができ、又は(例えば、連続的又は半連続的処理を可能にするように)自動化することができる。
【0062】
微生物
例えば、細菌、真菌、酵母、ウイルス(無エンベロープウイルス及びエンベロープウイルスの両方を含む)及び同等物、並びにこれらの組み合わせ(好ましくは、細菌、ウイルス及びこれらの組み合わせ、より好ましくは細菌)などの種々の微生物の増殖は、本発明の方法を使用することにより制限することができる。本方法は、病原体の増殖制限に有用性を有し、これは、食品安全性にとって、又は医療、環境若しくは対テロリズムという理由のために、重要であり得る。
【0063】
本発明の方法は、病原性細菌、並びに種々の酵母、カビ及びマイコプラズマ(並びにこれらのいずれかの組み合わせ)の増殖制限に特に有用であって、これらのコロニー形成、感染及び/又はホスト材料における複製を防止することができる。例えば、プロテウス・ブルガリス(Proteus vulgaris)、大腸菌(Escherichia coli)、クレブシエラ・ニューモニエ(Klebsiella pneumoniae)、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)及びサルモネラsp(Salmonella sp)、並びにブドウ球菌(Staphylococcus)、連鎖球菌(Streptococcus)、コリネバクテリウム(Corynebacterium)及びリステリア(Listeria)(グラム陽性細菌)、ナイセリア(Neisseria)、腸内細菌科(Enterobacteriaceae)(エシェリキア(Escherichia)属、サルモネラ(Salmonella)属、シゲラ(Shigella)属を含むいわゆる大腸菌群)、カンピロバクター(Campylobacter)及びレジオネラ(Legionella)(グラム陰性細菌)及び同等物、並びにこれらの組み合わせなどの種々の細菌が、本方法により潜在的に増殖制限され得る。大腸菌群は、ヒト及び他の動物の腸管にコロニー形成し病気に関連するグラム陰性桿菌(バシラス)である。
【0064】
本発明の方法は、グラム陰性及びグラム陽性細菌(特に、サルモネラ・エンテリカ(Salmonella enterica)(特に、それぞれ、チフス菌(Salmonella enterica subsp.enterica serovar Typhimurium)及び黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、並びにこれらの組み合わせ)、並びに無エンベロープウイルス(例えば、ノロウイルス、ポリオウイルス、A型肝炎ウイルス、ライノウイルス及びこれらの組み合わせ、特に、大腸菌バクテリオファージがその代理物であるヒト感染腸内ウイルス)並びにこれらの組み合わせの増殖を制限するのに特に有効であり得る。他の微生物についての方法の有効性を評価するための試験手順書は、臨床検査標準書及びマニュアル並びに以下に提供されるガイダンスを見れば、微生物学の技術分野における当業者によって、必要以上の実験なしに容易に作成することができる。
【実施例】
【0065】
本発明の目的及び利点は、以下の実施例によって更に例示されるが、これらの実施例において列挙された特定の材料及びその量は、他の諸条件及び詳細と同様に本発明を過度に制限するものと解釈すべきではない。
【0066】
材料
全ての微生物培養物は、米国培養細胞系統保存機関(The American Type Culture Collection)(ATCC、バージニア州マナッサス(Manassas))から購入された。
【0067】
チタニア上で担持された金ナノ粒子からなる比較試料は、ワールド・ゴールド・カウンシル(World Gold Council)(英国ロンドン)から入手された(ロット番号Au−TiO #02〜6)。試料は、製造者により、約1.5質量パーセントのナノ粒子状金(3.5nmの平均金粒子サイズ、0.91nmの標準偏差)であると記述されていた。触媒は、堆積沈殿法により調製されていると言われた。
【0068】
Fe上で担持された金ナノ粒子からなる比較試料は、ワールド・ゴールド・カウンシル(World Gold Council)(英国ロンドン)から入手された(ロット番号Au−Fe #02〜4)。試料は製造者により、約5質量パーセントのナノ粒子状金(4.0nmの平均金粒子サイズ、0.94nmの標準偏差)であると記述されていた。触媒は共沈法により調製されていると言われた。
【0069】
ホムビカット(Hombikat)UV−100チタニア(シェラー(Scherer)法による10nm未満の平均初期結晶子サイズ、250m/gを超える平均表面積)は、ザハトレーベン・ヒェミー(Sachtleben Chemie)(ドイツ、デュースブルグ(Duisburg))から購入された。300立方センチメートル(cc;135g)のホムビカットUV−100チタニアを150℃で24時間にわたって乾燥させた。結果として得られた乾燥粉末を、本明細書で前述した、ブレード隙間が1.7mmの粒子攪拌機を有するPVD装置に入れた。直径7.62cmの丸い金標的を採用した。次に装置の真空槽を一晩排気して、背景圧力13.3mPa(1×10−4Torr)とした。アルゴンスパッタガスを流量100sccmで真空槽に導入し、真空(拡散)ポンプに開口するゲートバルブを処理圧力1.3Pa(10mTorr)に調節した。金スパッタリングを電力レベル0.10kWで開始し、ブレード回転速度6rpmを使用して本質的には上述のように行った。スパッタリングの持続時間を変更して異なる濃度の堆積した金を提供し、金スパッタ標的の結果的な質量喪失を測定して、チタニア担体上に堆積した金の質量パーセントを判定した。
【0070】
スパッタコーティングの完了後、真空槽について周囲環境との通気を行い、結果として得られた金コーティングされた試料をPVD装置から取り出した。試料に堆積した金の量は、使用した金スパッタリングのターゲットを秤量(堆積処理の前と後の両方)することにより測定された。一般に、標的の質量損失の約20パーセントが、試料に堆積した金の量を表した(誘導結合プラズマ分析に基づく)。
【0071】
200℃に2時間かけて加熱し、次に試料を200℃で1時間にわたって保持することにより、ホムビカット(Hombikat)UV−100チタニア粉末の第2の試料を空気中で200℃に焼成した。この材料の試料(300cc;126g)を150℃で24時間にわたって乾燥させた。結果として得られた乾燥粉末について、先行する段落において記載したのと本質的に同様に、金でスパッタリングを行ったが、スパッタガスは酸素並びにアルゴンを含有していた。アルゴンの流量は100sccmに維持され、酸素の流量は5sccmに維持された。総気体圧力は1.3Pa(10mTorr)であり、0.12kWのスパッタ電力を使用した。金スパッタ標的の結果的な質量喪失は、15.33gであった。
【0072】
透過電子顕微鏡(TEM)検査のために結果として得られる金コーティングされたナノ粒子粉末試料を調製すべく、各粉末をメタノール中に分散させ、結果として得られた分散液の小滴をTEMグリッドと接触させた。過剰なメタノールを除去し、結果として得られた試験試料を完全に乾燥させてから検査を行った。
【0073】
ガタンCCDカメラ及びデジタルマイクログラフソフトウェア(ガタン社(Gatan Inc.)、ペンシルベニア州ウォレントン(Warrenton))を使用して、300KVの加速電圧で、透過電子顕微鏡(TEM、H−9000、日立ハイテクノロジーズアメリカ社(Hitachi High Technologies America)、カリフォルニア州プレザントン(Pleasanton))で、様々な倍率(50,000倍及び100,000倍)での画像が撮られた。代表的な領域(例えば、触媒表面の境界面が試料の表面に対して垂直に鮮明に表示された、選択された領域)を撮像した。数多く(例えば10を超える数)の界面領域が試験された。
【0074】
金ナノ粒子数密度は、TEMで、測定された領域の非常に薄い試料部分にある金ナノ粒子の数を数えることによって測定された。この測定を行うため、適切に薄い(約10nm未満)試料領域が選択され、その領域が200,000倍以上で撮像された。幾何学的に測定された領域内で、全ての次元のサイズが5nm以下の、明確に定義された金ナノ粒子数が計測され、100nmの領域当たりで観察されたナノ粒子の数が判定された。金ナノ粒子数密度は、100nmの領域において計数されたナノ粒子の数として定義された。各測定について、検査の最小面積は300nmであった。
【0075】
金コーティングされた試料のTEM検査では、両方の試料とも、微細ナノスケール金並びに超ナノスケール金を含有していることが示された。酸素含有雰囲気中で調製された試料についての平均金ナノ粒子サイズは1.9nmであり、アルゴン単独の中で調製された試料についての平均金ナノ粒子サイズは1.7nmであることが分かった。両方の試料とも、主にナノスケール金を含み、多くの領域で金ナノ粒子数密度が100nm当たり5を超えるナノ粒子を有することが示された。
【0076】
また、金コーティングされたチタニア粉末は、走査電子顕微鏡(SEM)により検査した。試験試料は、アクリル接着剤で前処理されたアルミニウムSEMスタブ上に粉末を振りかけることによって調製された。SEM試験により、全ての試料が形態学的に本質的に同一であることが見出された。粉末は、主に0.2〜1.0マイクロメートルのチタニアナノ粒子凝集塊と、これら凝集塊のより大きなクラスタとからなっていた。小さな凝集塊は、サイズが約0.05〜約0.2マイクロメートルと見られる小さな粒子からなっていた。凝集塊の大きなクラスタは、サイズが約2〜25マイクロメートルの範囲であった。大小を問わず全ての凝集塊において、孔の格子構造が観察された。凝集塊の大きなクラスタの場合、0.1〜1マイクロメートルの孔が観察され、これらはクラスタを構成する小さな凝集塊の圧縮によって生成されたものであった。小さな凝集塊において、サイズが0.1マイクロメートル未満の孔が観察された。
【0077】
抗菌活性試験方法
分離された微生物コロニーを5mLのBBL(商標)トリプチカーゼ(Trypticase)(商標)大豆ブロス(Soy Broth)(べクトン・ディキンソン(Becton Dickinson)、メリーランド州スパークス(Sparks))に接種し、37℃で18〜20時間にわたってインキュベートした。およそ10コロニー形成単位/mLであるこの一晩培養物をpH7.2の吸着バッファ(5mMのKCl、1mMのCaCl、0.1mMのMgCl及び1mMのKHPOを含有)中に希釈して、希釈液1mL当たり10の微生物を得た。10mgの抗菌剤を含有する標識された滅菌5mLポリプロピレン試験管(BDファルコン(BD Falcon)(商標)、べクトン・ディキンソン(Becton Dickinson)、ニュージャージー州フランクリン・レイクス(Franklin Lakes))に、1.1mL体積の微生物希釈液を加え、サーモライン・マキシミックス・プラス(Thermolyne Maximix Plus)(商標)ボルテックス・ミキサー(バーンステッド・インターナショナル(Barnstead International)、アイオワ州)上で混合した。それぞれキャップした試験管をサーモライン・バリ・ミックス(Thermolyne Vari Mix)(商標)シェイカー・プラットフォーム(バーンステッド・インターナショナル、アイオワ州)上で15分にわたって室温(25℃)でインキュベートした。インキュベーション後、各試験管を10分にわたって実験台上に置いておき、抗菌剤を沈降させた。抗菌剤を有さない1.1mLの微生物希釈液の入った対照試料の試験管を同様に処理した。次に、結果的に沈降した抗菌剤及び/又は上清(及び対照試料)を分析のために使用した。
【0078】
1mLの上清を取り除き、未希釈で、又はある場合には1:10で滅菌バターフィールド緩衝液(pH7.2±0.2リン酸緩衝液;VWRカタログ番号83008−093、VWR、ペンシルバニア州ウェストチェスター(West Chester))中に希釈して、3M(商標)ペトリフィルム(Petrifilm)(商標)生菌数測定用プレート(Aerobic Count Plates)培養培地(乾燥、再水和可能;3M社(3M Company)、ミネソタ州セントポール(St. Paul))上に製造者の取扱説明に従って蒔いた。沈降した抗菌剤を1mLのバターフィールド緩衝液中で再懸濁し、3M(商標)ペトリフィルム(商標)生菌数測定用プレート培養培地上に蒔いた。生菌数測定は、3M(商標)ペトリフィルム(商標)プレートリーダー(Plate Reader)(3M社、ミネソタ州セントポール)を使用して定量化した。
【0079】
上記手順を光曝露(実験室オーバーヘッド蛍光照明)ありとなしの両方で行った。光の非存在下での抗菌活性についての試験は、試料の入った試験管をアルミホイル(レイノルズ・ラップ(Reynolds Wrap)(商標)高荷重耐性(Heavy Duty)、レイノルズ・コンシューマー・プロダクツ、バージニア州リッチモンド(Richmond))で包むことにより、並びにまた、サーモライン・バリ・ミックス(Thermolyne Vari Mix)(商標)シェイカー・プラットフォーム、37℃インキュベーター(VWRモデル1575、VWRインターナショナル(VWR International)、ペンシルバニア州ウェストチェスター(West Chester))及び蒔かれた3M(商標)ペトリフィルム(商標)生菌数測定用プレート培養培地を追加のホイルで覆うことにより、行った。更に、試験実験室領域内の蛍光照明の電源を切った。
【0080】
下式を使用して結果を算出した:
対照パーセント(Percent Control)=
(蒔かれた上清又は蒔かれた再懸濁済み抗菌剤からのCFUの数)/(蒔かれた未処理対照試料からのCFUの数)×100
(式中、CFU=コロニー形成単位であり、これは生存している又は生存可能な微生物の単位である)。
【0081】
次に、下式を使用して、抗菌活性パーセント又は抗菌剤による消毒パーセントで、結果を報告した。
【0082】
抗菌活性パーセント=100−対照パーセント
実施例1〜4及び比較例1〜4
上記抗菌活性試験方法を使用して、10mgの金コーティングされたチタニア抗菌剤(上記のようにアルゴン雰囲気中での物理的気相堆積法により調製して、およそ8質量パーセントの金を含有する試料を提供)及び10mgのホムビカット(Hombikat)UV−100チタニア(金を有さない)を標的微生物、グラム陰性細菌チフス菌(ATCC 35987)及びグラム陽性細菌黄色ブドウ球菌(ATCC 6538)、に対する抗菌活性について別個に試験した。100パーセントの抗菌活性を金コーティングされたチタニア抗菌剤について(標的微生物のどちらにも及び光曝露ありと光の非存在下のどちらにも)観察した。ホムビカットUV−100チタニアについては、(標的微生物のどちらにも及び光曝露ありとなしのどちらにも)10パーセント未満の抗菌活性を観察した(標準偏差は全ての試料について10パーセント未満)。
【0083】
実施例5〜8
上記抗菌活性試験方法を使用して、10mg試料の金コーティングされたチタニア抗菌剤(上記のようにアルゴン雰囲気中での物理的気相堆積法により調製)を標的微生物、グラム陰性細菌チフス菌(ATCC 35987)及びグラム陽性細菌黄色ブドウ球菌(ATCC 6538)、に対する抗菌活性について、生体物質、1mL当たり300マイクログラムのウシ血清アルブミン(以降BSA;シグマ精製画分(Sigma Purified Fraction)V BSA、シグマ・ケミカルズ(Sigma Chemicals)、カタログ番号A3294−50G、ミズーリ州セントルイス(St. Louis);10mg(BSA原液)/mL(滅菌脱イオン水))、の存在下で別個に試験した。100パーセントの抗菌活性を標的微生物のどちらにも及び光曝露ありと光の非存在下のどちらにも観察した(標準偏差は全ての試料について10パーセント未満)。
【0084】
実施例9〜13
上記抗菌活性試験方法を使用して、10mg試料の金コーティングされたチタニア抗菌剤(上記のようにアルゴン雰囲気中での物理的気相堆積法により調製)をグラム陰性細菌チフス菌(ATCC 35987)に対する抗菌活性について、蛍光照明下で、1、2、5、10及び15分の接触時間でそれぞれ別個に試験した。100パーセントの抗菌活性を少なくとも2分の接触時間にわたって、99.57パーセントを1分にわたって、観察した(標準偏差は全ての試料について10パーセント未満)。
【0085】
実施例14〜19
上記抗菌活性試験方法を使用して、微生物汚染試料の体積当たりで様々な質量の金コーティングされたチタニア抗菌剤(それぞれ1mg/mL、5mg/mL及び10mg/mL)(上記のようにアルゴン雰囲気中での物理的気相堆積法により調製)をグラム陰性細菌チフス菌(ATCC 35987)に対する抗菌活性について、別個に試験した。100パーセントの抗菌活性を全ての濃度について、光の存在下と光の非存在下のどちらにも観察した(標準偏差は全ての試料について10パーセント未満)。
【0086】
実施例20〜21
上記抗菌活性試験方法を使用して、20mg試料の金コーティングされたチタニア抗菌剤(上記のようにアルゴン雰囲気中での物理的気相堆積法により調製)をグラム陰性細菌チフス菌(ATCC 35987)に対する抗菌活性について、1mL当たり4×10CFUの濃度で30分のインキュベーションで別個に試験した。99.98パーセント及び100パーセントの抗菌活性をそれぞれ光の存在下及び非存在下で観察した(標準偏差は全ての試料について10パーセント未満)。
【0087】
実施例22及び比較例5〜8
上記抗菌活性試験方法を使用して、10mgの金コーティングされたチタニア抗菌剤(上記のようにアルゴン雰囲気中での物理的気相堆積法により調製;PVD−Au/TiOと称する)並びに上記ワールド・ゴールド・カウンシル(World Gold Council)標準材料(チタニア上の金(WGC−Au/TiOと称する)及び酸化鉄上の金(WGC−Au/Feと称する))それぞれの10mg試料をそれぞれ、グラム陰性細菌チフス菌(ATCC 35987)に対する抗菌活性について別個に試験した。結果を以下の表1に示す(上清中及び沈降した試験材料中で生存しているCFUの数を合計して、各試験材料についての総対照パーセント値を得、100から総対照パーセント値を減ずることによって抗菌活性パーセントを算出した)(標準偏差は全ての試料について10パーセント未満)。
【0088】
【表1】

【0089】
実施例23〜27
上記抗菌活性試験方法を使用して、10mg試料の金コーティングされたチタニア抗菌剤(上記のようにアルゴン雰囲気中での物理的気相堆積法により調製)をグラム陰性細菌サルモネラ菌(ATCC 35987)に対する抗菌活性について光の非存在下で試験した。結果として得られた上清(1mL)を取り出し、上記のように蒔いて、サイクル1(「新鮮な」抗菌剤を使用した)についての抗菌活性パーセントを提供した。結果的に沈降した抗菌剤に対して、1mLの新鮮な微生物希釈液を添加し、試験方法を繰り返した。再利用された抗菌剤(サイクル2〜5)の有効性を試験するために、この方法を全部で5サイクルにわたって行った。結果を以下の表2に示す(蒔いた上清に基づく)(標準偏差は全ての試料について10パーセント未満)。
【0090】
【表2】

【0091】
実施例28
上記抗菌活性試験方法を使用して、10mgの金コーティングされたチタニア抗菌剤(上記のようにアルゴン雰囲気中での物理的気相堆積法により調製して、およそ4.3質量パーセントの金を含有する試料を提供)を標的微生物、グラム陰性細菌チフス菌(ATCC 35987)及びグラム陽性細菌黄色ブドウ球菌(ATCC 6538)、に対する抗菌活性について別個に試験した。100パーセントの抗菌活性を金コーティングされたチタニア抗菌剤について(標的微生物のどちらにも及び光曝露ありと光の非存在下のどちらにも)観察した。
【0092】
実施例29
上記抗菌活性試験方法を使用して、10mgの金コーティングされたチタニア抗菌剤(上記のようにアルゴン雰囲気中での物理的気相堆積法により調製して、およそ1.6質量パーセントの金を含有する試料を提供)をグラム陰性細菌チフス菌(ATCC 35987)に対する抗菌活性について試験した。100パーセントの抗菌活性を金コーティングされたチタニア抗菌剤について(光曝露ありと光の非存在下のどちらにも)観察した。
【0093】
実施例30
上記抗菌活性試験方法を使用して、10mgの金コーティングされたチタニア抗菌剤(本質的には上記のようにアルゴン及び酸素を含む酸化雰囲気中での物理的気相堆積法により調製して、200℃に1時間にわたって焼成しておいたホムビカット(Hombikat)UV100チタニア上におよそ4質量パーセントの金を含有する試料を提供)をグラム陰性細菌チフス菌(ATCC 35987)に対する抗菌活性について試験した。100パーセントの抗菌活性を金コーティングされたチタニア抗菌剤について(光曝露ありと光の非存在下のどちらにも)観察した。
【0094】
実施例31〜34
2つの異なる質量(それぞれ20mg及び50mg)の金コーティングされたチタニア抗菌剤(上記のようにアルゴン雰囲気中での物理的気相堆積法により調製して、およそ4.3質量パーセントの金を含有する試料を提供;PVD−Au/TiOと称する)を標的無エンベロープ細菌感染ウイルス、大腸菌バクテリオファージMS2(ATCC 15597−B1;多くの場合、種々のヒト感染無エンベロープ腸内ウイルスの代理物として使用される)に対する抗菌活性について、光の存在下及び非存在下で、別個に試験した。二重層寒天法(下記)を使用して、宿主として大腸菌(ATCC 15597)を使用して、生存している大腸菌バクテリオファージMS2(ATCC 15597−B1)について分析した。
【0095】
大腸菌バクテリオファージMS2ストックをpH7.2の滅菌1×吸着バッファ(5mMのKCl、1mMのCaCl、0.1mMのMgCl及び1mMのKHPOを含有する)中に逐次10倍に希釈して、1ミリリットル当たり10プラーク形成単位(PFU/mL)を得た。20mg又は50mgの抗菌剤を含有する標識された滅菌5mLポリプロピレン試験管(BDファルコン(BD Falcon)(商標)、べクトン・ディキンソン(Becton Dickinson)、ニュージャージー州フランクリン・レイクス(Franklin Lakes))に、1.0mL体積の結果として得られたバクテリオファージ希釈液を加え、サーモライン・マキシミックス・プラス(Thermolyne Maximix Plus)(商標)ボルテックス・ミキサー(バーンステッド・インターナショナル(Barnstead International)、アイオワ州)上で混合した。キャップした試験管をサーモライン・バリ・ミックス(Thermolyne Vari Mix)(商標)シェイカー・プラットフォーム(バーンステッド・インターナショナル、アイオワ州)上で15分にわたって室温(25℃)でインキュベートした。インキュベーション後、試験管を10分にわたって実験台上に置いておき、抗菌剤を沈降させた。抗菌剤を有さない1.0mLのバクテリオファージ希釈液の入った対照試料試験管を同様に処理した。次に、結果的に得られた、沈降した抗菌剤及び/又は上清(及び対照試料)を分析のために使用した。
【0096】
100マイクロリットルの上清を取り除き、下記の二重層寒天法を使用してバクテリオファージについて分析した。追加の800マイクロリットルの上清を取り除き、廃棄した。100マイクロリットルの沈降した抗菌剤もまたバクテリオファージについて分析した。これらのバクテリオファージ試験試料の試験は、本質的には試験方法のセクションで上述したように、光曝露あり及び光曝露なしで実行された。
【0097】
二重層寒天法:
大腸菌(ATCC 15597)の単一コロニーを25mLの滅菌3質量パーセントトリプシン大豆ブロス(バクト(Bacto)(商標)トリプシン大豆ブロス(Tryptic Soy Broth)、べクトン・ディキンソン社(Becton Dickinson and Company)、メリーランド州スパークス(Sparks);製造者の取扱説明に従って調製)に接種し、250回転/分(rpm)に設定したシェイカー・インキュベーター(イノーバ(Innova)(商標)44、ニュー・ブランズウィック・サイエンティフィク社(New Brunswick Scientific Co., Inc.)、ニュージャージー州エジソン(Edison))内で37℃で一晩インキュベートした。750マイクロリットルのこの一晩培養物を使用して、75mLの滅菌3質量パーセントトリプシン大豆ブロスに接種した。結果として得られた培養物を250rpmに設定したシェイカー・インキュベーター内で37℃でインキュベートして、スペクトラマックス(SpectraMax)M5光分析装置(モレキュラー・デバイセズ(Molecular Devices)、カリフォルニア州サニーベール(Sunnyvale))を使用して550nmにおける吸光度(吸光度値0.3〜0.6)により測定されたとき、対数期にある大腸菌細胞を得た。分析に使用するまで細胞を氷上でインキュベートした。
【0098】
100マイクロリットルの上記バクテリオファージ試験試料を75マイクロリットルの氷冷インキュベートされた(ice-incubated)大腸菌(宿主細菌)細胞と混合し、室温(25℃)で5分にわたってインキュベートした。結果として得られた試料を5mLの滅菌溶融上層寒天(3質量パーセントのトリプシン大豆ブロス、1.5質量パーセントのNaCl、0.6質量パーセントの寒天;その日に調製し、48℃の水槽中で維持)と混合した。次に、この混合物をペトリ皿内の底部寒天(3質量パーセントのトリプシン大豆ブロス、1.5質量パーセントのNaCl、1.2質量パーセントの寒天)の上に注いだ。この混合物の溶融寒天成分を5分にわたって凝固させ、ペトリ皿又はプレートを反転させ、37℃でインキュベートした。結果として得られたプラークを一晩のインキュベーション後に計数し、下式を使用して結果を算出した。
【0099】
対照パーセント=(蒔かれた抗菌剤からのPFUの数)/(蒔かれた未処理対照からのPFUの数)×100(式中、PFU=プラーク形成単位であり、これは感染性バクテリオファージの単位である)。
【0100】
次に、下式を使用して、抗菌剤による抗菌活性パーセントで、結果(蒔かれた作用剤に基づく;以下の表3に示す;標準偏差は全ての試料について10パーセント未満)を報告した。
【0101】
抗菌活性パーセント=100−対照パーセント
【0102】
【表3】

【0103】
本明細書で引用した特許、特許文献、及び公報に含まれる参照された記述内容は、その全体が、それぞれが個々に組み込まれているかのように、参照により組み込まれる。本発明に対する様々な予見できない修正及び変更が、本発明の範囲及び趣旨から逸脱することなく当業者に明らかとなるであろう。本発明は、本明細書に記載した例示的な実施形態及び実施例によって過度に限定されるものではなく、またかかる実施例及び実施形態は、一例として表されているだけであり、本発明の範囲は、以下のように本明細書に記載した請求項によってのみ限定されることを意図するものと理解されるべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)ナノ粒子状チタニアを含む担体媒質上に微細ナノスケール金を含む抗菌剤を提供することであって、前記微細ナノスケール金が、物理的気相堆積法により前記担体媒質上に堆積させてある、抗菌剤を提供すること、及び(b)少なくとも1つの微生物を前記抗菌剤に接触させること、を含む、方法。
【請求項2】
前記物理的気相堆積法が、スパッタ堆積法、蒸着法、陰極アーク堆積法、及びこれらの組み合わせから選択される技法である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記物理的気相堆積法が酸化雰囲気中で行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記酸化雰囲気が、少なくとも1種の酸素含有気体を含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記酸素含有気体が、酸素、水、過酸化水素、オゾン、及びこれらの組み合わせから選択される、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記微細ナノスケール金が、全ての次元においてサイズが4ナノメートル以下である金を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記抗菌剤が、前記微細ナノスケール金と前記担体媒質との合計質量を基準にして0.005〜10質量パーセントの金を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記担体媒質が、少なくとも2つの次元のサイズが30ナノメートル以下であるチタニアナノ粒子を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記担体媒質が、チタニアナノ粒子の凝集塊を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記凝集塊が、全ての次元において平均サイズが0.1マイクロメートル〜15マイクロメートルの範囲である、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記抗菌剤が、少なくとも1つのキャリア材料を更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記抗菌剤が、少なくとも1つの濃縮剤を更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記抗菌剤が、前記担体媒質上に、前記微細ナノスケール金以外に少なくとも1つの抗菌物質を更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記微生物が、細菌、真菌、酵母、ウイルス、及びこれらの組み合わせから選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記微生物が、細菌、ウイルス、及びこれらの組み合わせから選択される、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記方法が光の非存在下で行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記方法が、前記抗菌剤を光に曝露することを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
前記方法が、前記抗菌剤を、隔離すること、分離すること及び再利用することのうちの少なくとも1つを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
(a)ナノ粒子状チタニアを含む担体媒質上に微細ナノスケール金を含む抗菌剤を提供することであって、前記微細ナノスケール金が、スパッタ堆積法により前記担体媒質上に堆積させてある、抗菌剤を提供すること、及び(b)少なくとも1つの細菌、少なくとも1つのウイルス、又はこれらの組み合わせを前記抗菌剤に接触させること、を含む、方法。
【請求項20】
前記スパッタ堆積法が酸化雰囲気中で行われる、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記方法が、前記抗菌剤を光に曝露することを更に含む、請求項19に記載の方法。
【請求項22】
前記細菌が、グラム陰性細菌、グラム陽性細菌、及びこれらの組み合わせから選択され、前記ウイルスが無エンベロープウイルスである、請求項19に記載の方法。
【請求項23】
前記細菌がサルモネラ・エンテリカ、黄色ブドウ球菌、及びこれらの組み合わせから選択され、前記無エンベロープウイルスが、大腸菌バクテリオファージが代用物であるヒト感染腸内ウイルスである、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記方法が、パウチ内で前記抗菌剤を、隔離すること、分離すること及び再利用することのうちの少なくとも1つを更に含む、請求項19に記載の方法。
【請求項25】
ナノ粒子状チタニアを含む担体媒質上に微細ナノスケール金を含む抗菌剤を、少なくとも1つの表面の少なくとも一部に適用することを含む方法であって、前記微細ナノスケール金が、物理的気相堆積法により前記担体媒質上に堆積させてある、方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2010−540651(P2010−540651A)
【公表日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−528099(P2010−528099)
【出願日】平成20年10月1日(2008.10.1)
【国際出願番号】PCT/US2008/078413
【国際公開番号】WO2009/046081
【国際公開日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【出願人】(505005049)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (2,080)
【Fターム(参考)】