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微生物の検査方法
説明

微生物の検査方法

【課題】本発明は、バラスト水等に含まれて生存している微生物の一個体を、簡単な作業工程により正確に検出することができる微生物の検査方法を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明の微生物の検査方法は、微生物の生細胞を蛍光染色剤により染色し、前記微生物の生細胞の蛍光発色により該生細胞の存在を示す蛍光画像、及び前記微生物の形状を示す形状画像を撮像手段により取得し、前記蛍光画像と前記形状画像との比較に基づいて、生細胞をもつ微生物を検出することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微生物の検査方法に関し、特にバラスト水等に含まれて生存しているプランクトン等の微生物を検出するのに適した微生物の検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
荷物を積載していない船舶は、当該船舶を安定させるためにバラスト水を搭載して航行し、荷物を積載する海域において前記バラスト水を排出する。
バラスト水は、通常、搭載する海域と異なる海域に排出されるため、該バラスト水に含まれるプランクトンや細菌等の微生物を本来の生息地以外の海域に運び、生態系を破壊する等の問題を引き起こす虞がある。
【0003】
このような問題に対処するため、バラスト水の規制に関する国際的なルールが策定され、「船舶のバラスト水および沈殿物の規制および管理のための国際条約(バラスト水管理条約)」が採択されている。
【0004】
上記バラスト水管理条約に関連する「バラスト水サンプリングに関するガイドライン(G2)」は、「バラスト水排出基準(D−2)」において、船舶から排出されるバラスト水に含まれて生存している微生物の許容個体数を、例えば、最小サイズが50μm以上の微生物(以下、「Lサイズ生物」という。)については10個/m以下、最小サイズが10μm以上50μm未満の微生物(以下、「Sサイズ生物」という。)については10個/mL以下と、前記微生物の最小サイズにより区分して規定している。
【0005】
また、上記ガイドライン(G2)は、上記排出基準(D−2)における微生物の「最小サイズ」について、「刺、鞭毛あるいは触覚を除く生体の最小寸法を意味するものである」旨定義している。
そのため、近年、上記排出基準(D−2)を満たすよう、バラスト水に含まれる微生物を死滅させるための処理装置の開発が盛んに行われている。
【0006】
ところで、従来、バラスト水中に含まれて生存している微生物を検査する方法が提案されている(特許文献1参照。)。
【0007】
特許文献1に記載された検査方法は、バラスト水を目開きの異なる複数のフィルタに通水し、該フィルタに捕捉された微生物をFDA(Fluorescein diacetate)やカルセインAM(Calcein AM)などの染色剤により染色し、前記微生物に光を照射して該微生物の生細胞に蛍光を発生させ、該微生物の生細胞が発生する蛍光をCCDイメージセンサ等の撮像器により撮像し、該蛍光を画像情報として検出し、該画像情報を画像解析して微生物を計数するものである。
【0008】
上記特許文献1に記載された検査方法によれば、微生物の生細胞が発生する蛍光を撮像器により光学的に検出して画像解析するので、生存する微生物を迅速に計数することができる。
【0009】
ところが、微生物の中には生体の一部分が染色されず、一個体でありながら独立した複数の蛍光を発生するものが存在する。そのため、上記特許文献1に記載された検査方法では、生存する微生物を必ずしも正確に計数できない問題がある。
【0010】
一方、1匹毎の微生物を明確に認識できる微生物の検出方法が提案されている(特許文献2参照。)。
【0011】
特許文献2に記載された検出方法は、レジオネラ菌の固定標本を作製し(第1の工程)、該固定標本をメンブレンフィルタ上に捕集した後、該フィルタをエタノールで脱水し(第2の工程)、前記フィルタから切り取った菌サンプルをDNAプローブ溶液に浸すことで前記固定標本のリボソームRNAにDNAプローブを結合させ(第3の工程)、前記菌サンプル上の未反応の前記DNAプローブを洗浄し(第4の工程)、前記菌サンプルをエタノールで脱水し、その後乾燥させ(第5の工程)、スライドガラス上における菌サンプルのレジオネラ菌捕集部分に微生物輪郭染色液を添加し、その上にカバーガラスを載せ(第6の工程)、蛍光顕微鏡を用いて試料中のレジオネラ菌を検出する(第7の工程)ものである。
【0012】
上記特許文献2に記載された検出方法は、前記第7の工程において、前記DNAプローブが結合したレジオネラ菌のリボソームRNAを蛍光発色させるものであり、前記蛍光顕微鏡による観察により、試料中に存在するレジオネラ菌を検出することができる。
そして、レジオネラ菌等の微生物には、前記リボソームRNAが細胞内に点在する場合があるが、上記特許文献2に記載された検出方法によれば、前記第6の工程において、微生物輪郭染色液を添加することによりレジオネラ菌の細胞膜を赤色に染色するものであるため、1匹毎のレジオネラ菌を明確に区別することができる。
【0013】
しかしながら、特許文献2に記載された検出方法は、リボソームRNAにDNAプローブを結合させるのに加え、微生物の輪郭を染色する必要があり、作業工程が複雑化する問題がある。
また、特許文献2に記載された方法は、必ずしも生存している微生物を検出するものでもない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開2007−135582号公報
【特許文献2】特開2011−172509号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
そこで、本発明は、バラスト水等に含まれて生存している微生物の一個体を、簡単な作業工程により正確に検出することができる微生物の検査方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記目的を達成するため、本発明の微生物の検査方法は、微生物の生細胞を蛍光染色剤により染色し、前記微生物の生細胞の蛍光発色により該生細胞の存在を示す蛍光画像、及び前記微生物の形状を示す形状画像を撮像手段により取得し、前記蛍光画像と前記形状画像との比較に基づいて、生細胞をもつ微生物を検出することを特徴とするものである。
【0017】
本発明の微生物の検査方法は、前記形状画像が、可視画像であることが好ましい。
【0018】
本発明の微生物の検査方法は、前記形状画像が、前記微生物に含まれるクロロフィルの蛍光発色により該微生物の形状を示すクロロフィル自家蛍光画像であることが好ましい。
【0019】
本発明の微生物の検査方法は、前記蛍光画像と前記クロロフィル自家蛍光画像を、同時に一画像として取得することが好ましい。
【0020】
本発明の微生物の検査方法は、前記撮像手段が、画像読み取り装置であることが好ましい。
【0021】
本発明の微生物の検査方法は、バラスト水に含まれる微生物を検査することが好ましい。
【発明の効果】
【0022】
本発明の微生物の検査方法によれば、生体の一部分が染色されず複数の蛍光を発色する微生物であっても、該微生物の一個体を簡単な作業工程により正確に検出することができる。
【0023】
本発明の微生物の検査方法によれば、前記蛍光染色剤として、カルセインAMやFDA等を用いることで、青色励起光の照射により蛍光画像とクロロフィル自家蛍光画像を、同時に一画像として取得することが可能となり、検査時間を短縮することができる。
【0024】
本発明の微生物の検査方法は、前記撮像手段がスキャナ等の画像読み取り装置であれば、日常的な簡易検査に適するものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】蛍光顕微鏡によるプランクトンの画像例。
【図2】微生物の検査方法のフロー図。
【図3】生細胞をもつ微生物の一個体を検出するイメージ図。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。なお、本発明の実施の形態では、バラスト水に含まれて生存している微生物の検査方法を例として説明する。
【0027】
図1は、本発明の実施の形態において検査対象となる微生物の蛍光顕微鏡画像の一例を示す。
図1(a)はフジツボの幼生(動物プランクトン)、(b)はカイアシ類(動物プランクトン)、(c)及び(d)はケイ藻類(植物プランクトン)の画像を示す。
なお、各画像において、矢印で示す部分が、前記バラスト水管理条約のガイドライン(G2)で定義される微生物の「最小サイズ」に対応する。
【0028】
図2は、微生物の検査方法のフローを示す。
本実施の形態において、微生物の検査は、染色工程(S1)、撮像工程(S2)、微生物検出工程(S3)、サイズ判断工程(S4)、計数工程(S5)の各工程を経て行われる。
本実施の形態において使用する微生物の検査装置は、前記染色工程(S1)において微生物の生細胞を染色する染色手段と、前記撮像工程(S2)においてプランクトンを撮像する撮像手段と、前記微生物検出工程(S3)から前記計数工程(S5)の各工程において前記撮像手段により取得される画像データの処理を順次行うデータ処理手段を備える。
ここで、前記撮像手段には、例えば、イメージスキャナや複合機等の画像読み取り装置やその他の各種撮像装置を用いることができる。また、前記データ処理手段には、各種コンピュータ等を用いることができる。
【0029】
(1)染色工程:S1
本工程では、バラスト水の検体をフィルタでろ過し、該フィルタ上に捕捉した微生物の生細胞をカルセインAM(Calcein AM)やFDA(Fluorescein diacetate)等の蛍光染色剤により染色する。前記微生物の染色には適宜の方法を採用することができる。例えば、前記フィルタ上に前記染色剤を滴下又は噴霧してもよいし、前記フィルタを前記染色液に浸漬してもよい。
【0030】
(2)撮像工程:S2
本工程では、前記フィルタ上に捕捉された微生物をスキャナ等の画像読み取り装置により撮像し、該微生物の画像データを取得する。
ここでは、前記染色された微生物の生細胞の蛍光発色により該生細胞の存在を示す蛍光画像の画像データと、前記微生物の形状を示す形状画像の画像データを、同一の位置関係で取得する。前記形状画像は、例えば、前記微生物の可視画像、又は前記微生物(植物プランクトン)に含まれるクロロフィル(光化学系II複合体に結合するクロロフィル)の蛍光発色により該微生物の形状を示すクロロフィル自家蛍光画像とすることができる。
【0031】
前記蛍光画像の画像データは、前記画像読み取り装置において、前記染色された微生物の生細胞を蛍光発色させる波長の光を励起光として照射することで取得できる。
一方、前記形状画像の画像データは、画像の種類に応じた適当な波長の光を照射することで取得できる。前記可視画像の場合には可視光を照射する。また、前記クロロフィル自家蛍光画像の場合には波長400〜480nm付近(紫〜青)の光を励起光として照射する。
前記画像読み取り装置が、前記蛍光画像及び形状画像の各画像データの取得に適した波長の光を照射する二種類の光源を備えるものであれば、前記各画像データを一台の画像読み取り装置で取得することができる。
【0032】
(3)微生物検出工程:S3
本工程では、まず、前記撮像工程(S2)で取得した蛍光画像及び形状画像の各画像データの二値化処理を行い、それぞれ二値画像のデータを取得する。
次に、ラスタスキャンなどの手法により、前記蛍光画像の二値画像データにおいては微生物の生細胞に対応する画素の領域を特定し、前記形状画像の二値画像データにおいては微生物に対応する画素の領域を特定し、前記各二値画像データにおいて、各々の画素の領域が区別できるようにラベリングを行う。ここで、前記画素の領域とは、画素値1の一つの画素が独立した一画素領域、又は画素値1の複数の画素が連結した連結領域のことである。
そして、前記ラベリング処理された蛍光画像と形状画像の両二値画像データを比較することで、前記形状画像の二値画像データにおいて、前記微生物の生細胞に対応する画素の領域を含む前記微生物に対応する画素の領域を抽出し、該抽出した画素の領域を、生細胞をもつ微生物の一個体として検出する。
【0033】
(4)サイズ判断工程:S4
本工程では、前記微生物検出工程(S3)で検出された、前記生細胞をもつ微生物の一個体の最小サイズが50μm以上か否か、又は10μm以上50μm未満か否かを判断する。
前記微生物の最小サイズの判断には、前記形状画像の二値画像データを利用できるものであれば、あらゆる画像解析手法を用いることができる。
【0034】
前記微生物の最小サイズは、前記バラスト水の検体をろ過する際におけるフィルタの目開きの大きさにより判断することもできる。
その場合、前記目開きが50μmのフィルタ上に捕捉された微生物であれば、該微生物の最小サイズは50μm以上であると判断する。また、前記目開きが50μmのフィルタを通過し、前記目開きが10μmのフィルタ上に捕捉された微生物であれば、該微生物の最小サイズは10μm以上50μm未満であると判断する。
【0035】
(5)計数工程:S5
本工程では、前記サイズ判断工程(S4)における判断結果に基づいて、最小サイズが50μm以上の微生物、又は最小サイズが10μm以上50μm未満の微生物を計数する。
【0036】
ここで、図3は、生細胞をもつ微生物の一個体を検出するイメージを示す。
図3(a)は、微生物の生細胞の蛍光発色により該生細胞の存在を示す蛍光画像のイメージ、図3(b)は、微生物の形状を示す形状画像のイメージ、そして、図3(c)は、前記両画像を重ね合わせた状態のイメージを示す。
前記蛍光画像では前記生細胞の存在を示す3個の蛍光発色1〜3が見られるが、前記形状画像と重ね合わせることで、前記3個の蛍光発色1〜3は微生物11の一個体に含まれるものであることが分かる。
このように、本実施の形態によれば、生細胞をもつ微生物の一個体を正確に検出することができる。
【0037】
<本発明の他の実施の形態>
上記本発明の実施の形態では、微生物の生細胞の蛍光発色により該生細胞の存在を示す蛍光画像と、前記微生物の形状を示す形状画像を、それぞれ別個の画像データとして取得することとしたが、両画像を同時に一つの画像データとして取得することもできる。
【0038】
ここでは、前記微生物の形状を示す形状画像を前記クロロフィル自家蛍光画像とする。また、前記微生物の生細胞を染色する蛍光染色剤として、カルセインAMやFDAを用いることとする。
【0039】
植物プランクトンに含まれるクロロフィルの励起波長は400〜480nm付近(紫〜青)であり、カルセインAMやFDAの励起波長は450〜510nm付近(青)である。
一方、前記クロロフィルの蛍光波長は680nm付近(赤)であり、前記カルセインAMやFDAの蛍光波長は500〜550nm付近(緑)である。
画像読み取り装置が、励起光として青色光(430〜510nm付近)を照射する光源を備え、受光側にロングパスフィルター(好ましくは500nm以下をカット)を備えるものであれば、前記蛍光画像と前記クロロフィル自家蛍光画像を同時に一つの画像データとして取得することができる。
【0040】
そして、前記微生物の生細胞が緑色に蛍光発色し、前記クロロフィルが赤色に蛍光発色する性質を利用して、前記同時に取得した一つの画像データを、R(赤)、G(緑)、B(青)の光の三原色に分解し画像解析することで、前記微生物の生細胞に対応する領域を含む前記微生物の形状に対応する領域を抽出し、該抽出した領域を前記生細胞をもつ微生物の一個体として検出することができる。
【0041】
以上、上記各実施の形態では、バラスト水に含まれて生存しているプランクトン等の微生物を検出することを例として説明したが、検出する対象の微生物は、必ずしもバラスト水に含まれるものである必要はない。
【0042】
また、上記実施の形態における微生物の検査方法のフローにおいて、各工程(S1)〜(S5)の処理内容も上記に限定されない。
【0043】
本発明は、上記実施の形態に限るものでなく発明の範囲を逸脱しない限りにおいて、その構成を適宜変更できることはいうまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明の微生物の検査方法は、バラスト水等に含まれて生存している微生物の一個体を、簡単な作業工程により正確に検出することができるため、極めて実用性が高い。
【符号の説明】
【0045】
1 蛍光発色
2 蛍光発色
3 蛍光発色
11 微生物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
微生物の生細胞を蛍光染色剤により染色し、
前記微生物の生細胞の蛍光発色により該生細胞の存在を示す蛍光画像、及び前記微生物の形状を示す形状画像を撮像手段により取得し、
前記蛍光画像と前記形状画像との比較に基づいて、生細胞をもつ微生物を検出することを特徴とする微生物の検査方法。
【請求項2】
前記形状画像は、可視画像である請求項1記載の微生物の検査方法。
【請求項3】
前記形状画像は、前記微生物に含まれるクロロフィルの蛍光発色により該微生物の形状を示すクロロフィル自家蛍光画像である請求項1記載の微生物の検査方法。
【請求項4】
前記蛍光画像と前記クロロフィル自家蛍光画像を、同時に一画像として取得する請求項3記載の微生物の検査方法。
【請求項5】
前記撮像手段は、画像読み取り装置である請求項1乃至4の何れか一項記載の微生物の検査方法。
【請求項6】
バラスト水に含まれる微生物を検査する請求項1乃至5の何れか一項記載の微生物の検査方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−94064(P2013−94064A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−236350(P2011−236350)
【出願日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【出願人】(000001812)株式会社サタケ (223)
【出願人】(504136568)国立大学法人広島大学 (924)
【Fターム(参考)】