説明

微生物を同定/検出するための反応培地

本発明は、シクロデキストリンにカプセル化された少なくとも一つの活性分子を含む、微生物を同定/検出するための反応培地に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の技術分野は、反応培地の接種による、微生物、例えば特にバクテリアまたは酵母の検出及び同定である。
【0002】
現在、微生物を検出するための非常に多数の反応培地が存在する。この検出は特に、検出することが要求される微生物の酵素に特異的な特定の基質の使用に基づいてもよい。したがって、バクテリアの場合、大腸菌株は、オシダーゼ型の酵素活性、例えばβ‐グルクロニダーゼまたはβ‐ガラクトシダーゼ活性を明らかにすることによって示されることが多い。同様に、リステリア属は、β−グルコシダーゼ活性を示すことによって検出されることができる。また、アミノペプチダーゼ活性は、バクテリアのグループ、属または種を明らかにするために用いられ得る。したがって、例えば、アラニン−アミノペプチダーゼ活性により、グラム陰性菌をグラム陽性菌と区別することができる。また、最後に、特にサルモネラ属を示すためのエステラーゼ活性の検出を挙げることができる。特定の基質の使用に加えて、反応培地による微生物または微生物のグループの同定は、治療的処理に対する微生物の耐性に基づいてもよい。更に、培地は、通常一つ以上の「活性」分子、例えば特に微生物が耐性化しやすい抗生物質を含む。最後に、環境の調整、例えば表面調整に使いやすい培地が存在し、実験台上の微生物の存在を検出することが可能である。抗生物質の生産用の実験室の微生物の存在を検出するためには、実験台に存在するかもしれない残留抗生物質の作用を阻害し、考えられる微生物の増殖と同定を可能にするために、β−ラクタマーゼのような活性分子を含む培地を使用することが可能である。
【0003】
しかしながら、溶液中の活性分子の維持は、複合培地中のそれらの安定性によって又は非常に高い希釈で条件づけられる。それらは物理化学的条件に応じて急速に変性し得るか、または酵素によって分解し得る。例えば、β−ラクタマーゼは、例えば、熱変性(60〜70℃)に影響を受ける。また、抗生物質は熱に影響を受ける。時間に伴うこの分解を補うために、活性分子の初期濃度は非常に高くなければならず、それによって生産コストの問題が起こる。このような活性分子を含む培地の保管は、この分野の活動の主な問題として残っている;継続的な熱への暴露は培地の活性分子、例えば抗生物質、酵素等の変性を誘発することがあるので、通常、周囲温度で保存することができない。
【0004】
さらに、コールドチェーンが保たれる場合であっても、通常、反応培地はその製造後2〜4ヵ月の期間内で使われるべきである。従って、反応培地に存在する活性分子の安定性を増大することは非常に重要である。
【0005】
従って、本発明は、生産コストを減少させ、且つ安定性を改善することによって保存期間を延ばすために、現在市販されている微生物の検出のための反応培地を改善することを提案する。
【0006】
驚くべきことに、発明者はシクロデキストリンへの活性分子のカプセル化が、熱、振盪等のようなさまざまな要因に対する耐久性を活性分子に付与し、反応培地中の活性分子を保護できることを示した。
【0007】
シクロデキストリンまたはシクロアミロースは、よく知られた分子である。それらは、疎水性分子を収容できる疎水性空洞と、シクロデキストリン−疎水性分子錯体を水性溶媒中に溶解可能にしている親水性外層からなる。この無極性空洞のおかげで、シクロデキストリンは、水性溶媒中で、多種多様な疎水性ホスト分子と、包接錯体を形成することができる。この錯体化の結果は、水相に高度に不溶性である疎水性分子の可溶化である。しかしながら、出願人の知るところでは、これらの分子は、反応培地中の活性分子をさまざまな要因(例えば熱、振盪など)から保護することができることは記載されていない。したがって、反応培地中の活性分子/シクロデキストリンカプセル化錯体の使用が、これらの活性分子の安定性を増大し、これらの反応培地の有効期間を延長することを可能にする。
【0008】
本発明の説明を続ける前に、本発明の開示を容易にするために下記の定義を記載する。
「反応培地」なる用語は、微生物の代謝および/または増殖の発現のために必要な全ての要素を含む培地を意味することを目的とする。反応培地は、固体、半固体、又は液体でもよい。「固形培地」なる用語は、例えば、ゲル化された培地を意味することを目的とする。寒天は微生物の培養用の微生物学の通常のゲル化剤であるが、それはゼラチンまたはアガロースを使用することが可能である。一定数の調製物は、例えばコロンビア寒天、トリプケース−ソイ寒天、マッコンキー寒天、サブロー寒天、又はさらに一般的にいえば、微生物学培地ハンドブック(the Handbook of Microbiological Media:CRC出版)に記載されているものは、市販されている。
【0009】
反応培地は、一つ以上の要素、例えばアミノ酸、ペプトン、炭水化物、ヌクレオチド、ミネラル、ビタミン、酵素、抗生物質のような活性分子、界面活性剤、バッファー、リン酸塩、アンモニウム塩、ソーダ塩、金属塩、酵素活性または代謝活性の検出を可能にする一つ以上の基質等を含んでもよい。
【0010】
また、培地は着色剤を含んでもよい。指示薬について、着色剤として、エバンスブルー、ニュートラルレッド、ヒツジ血液、ウマ血液、酸化チタンのような乳白剤、ニトロアニリン、マラカイトグリーン、ブリリアントグリーン等をあげることができる。
【0011】
反応培地は、露出培地(revealing medium)、または培養且つ露出培地であってもよい。第1のケースにおいて微生物は接種の前に培養され、第2のケースにおいて、検出および/または同定培地は、培養培地をも構成する。
【0012】
本発明の目的では、「微生物」なる用語は、バクテリア、特にグラム陰性菌とグラム陽性菌、酵母、さらに一般的にいえば、肉眼では見えず、且つ実験室で増殖及び操作できる生物、通常は単細胞生物を含む。
【0013】
グラム陰性菌について、以下の属のバクテリアを挙げることができる:シュードモナス属、エシェリヒア属、サルモネラ属、赤痢菌属、エンテロバクター属、クレブシェラ属、霊菌属、プロテウス属、カンピロバクター属、ヘモフィルス属、モルガネラ属、ビブリオ属、エルシニア属、アシネトバクター属、ブランハメラ属、ナイセリア属、バークホルデリア属、シトロバクター属、ハフニア属、エドバルシエラ属、エーロモナス属、モラクセラ属、パスツレラ属、プロビデンシア属、アクチノバチルス属、アルカリゲネス属、ボルデテラ属、セデセア属、エルウィニア属、パントエア属、ラルストニア属、ステノトロホモナス属、キサントモナス属及びレジオネラ属。
【0014】
グラム陽性菌について、以下の属のバクテリアを挙げることができる:エンテロコッカス属、ストレプトコッカス属、スタフィロコッカス属、バシラス属、リステリア属、クロストリジウム属、ガルドネレラ属、コクリア属、ラクトコッカス属、ロイコノストック属、球菌、マイコバクテリアとコリネバクテリウム属。
【0015】
酵母について、記載は、以下の属の酵母を挙げることができる:カンジダ属、クリプトコックス属、サッカロミセス属及びトリコスポロン属。
【0016】
「活性分子」なる用語は、微生物に破壊的能力のような作用又は化学反応について触媒作用を生じ、且つ特に熱作用下で、時間と伴に分解される分子を意味することを目的とする。
【0017】
「活性分子」なる用語は、好ましくは抗生物質または酵素を意味することを目的とする。
【0018】
「抗生物質」なる用語は、微生物について破壊的能力を有する化学物質を意味することを目的とする。
【0019】
ペナム類(例えばペニシリン;ビペニシリン(bipenicillin);エクステンシリン(extencillin);オラシリン(oracillin)、オキサシリン;クロキサシリン;アンピシリン;アモキシシリン;バカンピシリン;メタンピシリン(metampicillin);ピバンピシリン;アズロシリン;メズロシリン;ピペラシリン;チカルシリン;ピブメシリナム;オキサペナム;クラブラン酸;スルバクタム);タゾバクタム(tazobactam));ペネム類(例えばイミペネム);セフェム類(第一世代セファロスポリンのような(セファレキシン;セファドロキシル;セファクロル;セファトリジン;セファロチン(cefalotin);セファピリン類(cefapyrine);セファゾリン(cefazoline))、第2世代セファロスポリン(セフォキシチン;セファマンドール;セフォテタン;セフロキシム)、第3世代セファロスポリン(セフォタキシム;セフスロジン;セフォペラゾン;セフォチアム;セフタジジム;セフトリアキソン;セフィキシム;セフポドキシム;ラタモキセフ));モノバクタム系(例えばアズトレオナム)を含む、特にβ−ラクタム系を挙げることができる。
【0020】
また、ホスホマイシン;グリコペプチド類(バンコマイシン;タイコプラニン);ポリミキシン類(コリスチン);グラミシジン類とチロシジン(バシトラシン;タイロスライシン);アミノグリコシド類(ストレプトマイシン;トブラマイシン;アミカシン;シソマイシン;ジベカシン;ネチルマイシン);マクロライド類(スピラマイシン;エリスロマイシン;エリスロシン;ジョサマイシン;ロキシスロマイシン;クラリスロマイシン;アジスロマイシン);リンコサミド類(リンコマイシン;クリンダマイシン);シネルギスチン類(バージニアマイシン;プリスチナマイシン);フェニコール類(クロラムフェニコール;チアンフェニコール);テトラサイクリン類(テトラサイクリン;ドキシサイクリン;ミノサイクリン);フシジン酸;オキサゾリジノンエステル(リネゾリド);リファマイシン類(リファマイシン;リファンピシン);キノロン類(ナリジキシン酸;オキソリン酸;ピペミド酸);フルオロキノロン類(フルメキン;ペフロキサシン;ノルフロキサシン;オフロキサシン;シプロフロキサシン;エノキサシン;レボフロキサシン; モキシフロキサシン);オキシキノリン類(ニトロキソリン;チボキノール);ニトロフラン類(ニトロフラントイン;ニフロキサジド);ニトロイミダゾール類(メトロニダゾール;オルニダゾール);スルファミド類(スルファジアジン;スルファメチソル)、トリメトプリム(トリメトプリム)の系統を挙げることができる。
【0021】
「酵素」なる用語は、天然のタンパク質であり、且つ細胞か細胞外の培地に生じている代謝の生化学反応に触媒する分子を意味することを目的とする。特にオキシドレダクターゼ類(例えばオキシダーゼ、レダクターゼ、ペルオキシダーゼ、オキシゲナーゼ、ヒドロゲナーゼまたはデヒドロゲナーゼ);トランスフェラーゼ類(例えばカイネース;トランスアミナーゼ;ムターゼ);ヒドロラーゼ類(例えばエステラーゼ;ペプチダーゼ;オシダーゼ;グルコシダーゼ);リアーゼ類(例えばデカルボキシラーゼ、アルドラーゼ;デヒドラターゼ);イソメラーゼ類(例えばラセマーゼ;エピメラーゼ);リガーゼ類を挙げることができる。好ましくは、酵素はヒドロラーゼ、さらにより好ましくはβ−ラクタマーゼである。
【0022】
「シクロデキストリン」なる用語はα-(1,4)結合性グルコピラノース・サブユニットから成る環状オリゴ糖の系統であり、実験式C427035又はこの分子の誘導体に対応する分子であって、そのグルコピラノース単位のヒドロキシル基がアミノ化、エステル化またはエーテル化されていてもよい分子を意味することを目的とする特にβ−シクロデキストリン(BCD)、ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリン(HPCD)、メチル−β−シクロデキストリン(MCD)、α−シクロデキストリン(ACD)及びγ−シクロデキストリン(GCD)を挙げることができる。
【0023】
好ましくは、シクロデキストリンはα−シクロデキストリンから選択され、好ましくはシクロマルトヘキサオース(バイオシデックス参照番号 ACD N0; CAS No. 51211-54-9)であり;γ−シクロデキストリン、好ましくはシクロマルトオクタノース(バイオシデックス参照番号 GCD N0; CAS No. 91464-90-3)であり;β−シクロデキストリン、好ましくは2−O−メチル−β−シクロデキストリンまたはランダムに2−O−メチル−シクロマルトヘプタオース(バイオシデックス参照番号 BCD C15)であり;または、好ましくは2−ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリン、またはランダムに2,3,6−O−(2−ヒドロキシプロピル)シクロマルトヘプタオース(バイオシデックス参照番号 BCD R59, CAS No. 128449-35-5)としても知られているものであり;または、好ましくはモノプロパンジアミノ−β−シクロデキストリン、別名6−(3−アミノプロピルアミノ)−6−デオキシシクロマルトヘプタオース(バイオシデックス参照番号 BCD A56)から選択される。概して、本発明のシクロデキストリンは、バイオシデックス社(ポアティエ、フランス)から提供された。指示剤について、シクロマルトヘキサオース及びシクロマルトオクタオースは、Wacker Chemie社から販売されている;シクロマルトヘプタオース、2−O−メチルシクロマルトヘプタオース及びヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリンはRoquette Freres社から販売されており、モノプロパンジアミノ−β−シクロデキストリンはビオシデックスから販売されている。
酵素活性または代謝活性の検出を可能にする発現基質は、直接的または間接的に微生物の酵素活性または代謝活性により検出可能なシグナルを生じることができる任意の分子を意味することを目的とする。
【0024】
この活性が酵素活性である場合、リファレンスは酵素基質に対して行う。「酵素基質」なる用語は微生物の直接的または間接的な検出を可能にする産物を提供するために酵素によって加水分解されることができる任意の基質を意味することを目的とする。この基質は、特に、明らかにされる酵素活性に特異的な第1部分及び標識として働く第2部分(標識部分)を含む。この標識部分は、発色性、蛍光性、発光性などであってもよい。
【0025】
固体支持体(フィルター、寒天、電気泳動ゲル)によく適している発色性基質として、特に、オシダーゼとエステラーゼ活性の検出を可能にするインドキシルとその誘導体に基づく基質、及びヒドロキシキノリンまたはエスクレチンとそれらの誘導体に基づく基質を挙げることができる。
【0026】
インドキシルを基礎とする基質について、特に3-インドキシル、5-ブロモ-3-インドキシル、5-ヨード-3-インドキシル、4-クロロ-3-インドキシル、5-ブロモ-4-クロロ3-インドキシル、5-ブロモ-6-クロロ-3-インドキシル、6-ブロモ-3-インドキシル、6-クロロ-3-インドキシル、6-フルオロ-3-インドキシル、5-ブロモ-4-クロロ-N-メチル-3-インドキシル、N-メチル-3-インドキシルなどを挙げることができる。
【0027】
また、フライボイドを基礎とする基質について、例えば、特に3',4'-ジヒドロキシフラボン-4'-β-D-リボシド、3',4'-ジヒドロキシフラボン-4'-β-D-ガラクトシド、3',4'-ジヒドロキシフラボン-4'-β-D-グルコシド、3-ヒドロキシフラボン-β-D-ガラクトシド、3-ヒドロキシフラボン-β-D-グルコシドまたは3',4'-ジヒドロキシフラボン-3',4'-ジアセテートを挙げることができる。
【0028】
また、ニトロフェノール(オルト−ニトロフェノール、パラニトロフェノールなど)及びニトロアニリン及びそれらの誘導体を基礎とする基質を挙げることができ、ニトロフェノールを基礎とする基質の場合はオシダーゼとエステラーゼ活性を、ニトロアニリンを基礎とする基質の場合はペプチダーゼ活性を検出することができる。
【0029】
最後に、ナフトール及びナフチルアミン及び誘導体を基礎とする基質を挙げることができ、ナフトールによってオシダーゼ及びエステラーゼ活性を、ナフチルアミンによってペプチダーゼ活性を検出することを可能にする。特に、この基質は、オシダーゼ、ペプチダーゼ、エステラーゼなどの活性のような酵素活性の検出を可能にすることができるが、これらの限定されるものではない。
【0030】
また、クマリンと誘導体を基礎とする基質を挙げることができ、ヒドロキシクマリン、特に4‐メチルウンベリフェロンまたはシクロヘキサノエスクレチンを基礎とする基質の場合はオシダーゼとエステラーゼ活性を、アミノクマリン、特に7-アミノ-4-メチルクマリンを基礎とする基質の場合はペプチダーゼ活性を検出することを可能にする。
【0031】
また、オシダーゼ、エステラーゼ及びペプチダーゼ活性を検出することを可能にするアミノフェノール及び誘導体を基礎とする基質を挙げることができる。また、オシダーゼとエステラーゼ活性を検出することを可能にするアリザリンとその誘導体を基礎とする基質を挙げることができる。最後に、ナフトール及びナフチルアミンとそれらの誘導体を基礎とする基質を挙げることができ、ナフトールとナフチルアミンによるペプチダーゼ活性によってオシダーゼとエステラーゼ活性を検出することが可能である。
【0032】
「ナフトールを基礎とする基質」なる用語は、本出願人による特許出願EP1224196に記載のように、α-ナフトール、β‐ナフトール、6-ブロモ-2-ナフトール、ナフトールAS BI、ナフトールAS、またはp-ナフトールベンゼインを基礎とする基質を意味することを目的とする。これは、オシダーゼ、エステラーゼ、フォスファターゼまたはサルファターゼ基質であってもよい。オシダーゼ基質は、特にN-アセチル-β-ヘキソサミニダーゼ、β‐ガラクトシダーゼ、α‐ガラクトシダーゼ、β-グルコシダーゼ、α-グルコシダーゼ、β-グルクロニダーゼ、β-セロビオシダーゼまたはα-マンノシダーゼ基質である。
【0033】
「アリザリンを基礎とする基質」なる用語は、本出願人による特許出願EP1235928に記載されている基質を意味することを目的とする。
【0034】
また、酵素の基質は天然基質であってもよく、その加水分解産物は直接的または間接的に検出される。天然基質として、特に、トリプトファナーゼまたはデアミナーゼ活性を検出するためのトリプトファンを、デアミナーゼ活性を検出するための環状アミノ酸(トリプトファン、フェニルアラニン、ヒスチジン、チロシン)を、ホスホリパーゼ活性を検出するためのフォスファチジルイノシトールなどを挙げることができる。
【0035】
この活性が代謝活性である場合、基質は例えば炭素または窒素源のような代謝基質であり、1つの代謝産物の存在下で呈色を生じるインジケータに連結される。
【0036】
指示剤として、β‐グルクロニダーゼ活性を検出するために使用される基質は、特に4-メチルウンベリフェリル-β-グルクロニド、5-ブロモ-4-クロロ-3-インドリル-β-グルクロニド、5-ブロモ-6-クロロ-3-インドリル-β-グルクロニド、6-クロロ-3-インドリル-β-グルクロニド、アリザリン-β-グルクロニド、シクロヘキサノエスクレチン-β-グルクロニドまたはそれらの塩であってもよい。指示剤として、β‐ガラクトシダーゼ活性を検出するために使用される基質は、特に4-メチルウンベリフェリル-β-ガラクトシド、5-ブロモ-4-クロロ-3-インドリル-β-ガラクトシド、5-ブロモ-6-クロロ-3-インドリル-β-ガラクトシド、6-クロロ-3-インドリル-β-ガラクトシド、アリザリン-β-ガラクトシド、シクロヘキサノエスクレチン-β-ガラクトシドまたはそれらの塩であってもよい。β-グルコシダーゼ活性を検出するために使用する基質は、特に4-メチルウンベリフェリル-β-グルコシド、5-ブルモ-4-クロロ-3-インドリル-β-グルコシド、5-ブルモ-6-クロロ-3-インドリル-β-グルコシド、6-クロロ-3-インドリル-β-グルコシド、アリザリン-β-グルコシド、シクロヘキサノエスクレチン-β-グルコシド、ニトロフェニル-β-グルコシド、ジクロロアミノフェニルグルコシドまたはそれらの塩であってもよい。
【0037】
「生物試料」なる用語は、生体液に由来する臨床試料、又は任意の種類の食品に由来する食品試料を意味することを目的とする。従って、この試料は液体又は固体でもよく、血液、血漿、尿または糞便、鼻、のど、皮膚、傷又は脳脊髄液から採取された試料に由来する臨床試料、水又例えば牛乳または果汁等の飲料の試料;ヨーグルト、肉、卵、野菜、マヨネーズまたはチーズの試料;魚等の試料に由来する食品試料、あるいは、特に動物の餌のような動物飼料に由来する食品試料を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0038】
これに関して、本発明は、シクロデキストリンにカプセル化された少なくとも一つの活性分子を含む、微生物を同定/検出するための反応培地に関する。
【0039】
本発明の好ましい一実施形態によれば、シクロデキストリンはα−シクロデキストリンから選択され、好ましくはシクロマルトヘキサオース(バイオシデックス参照番号 ACD N0; CAS No. 51211-54-9)であり;γ−シクロデキストリン、好ましくはシクロマルトオクタノース(バイオシデックス参照番号 GCD N0; CAS No. 91464-90-3)であり;β-シクロデキストリン、好ましくは2-O-メチル-β-シクロデキストリンまたはランダムに2-O-メチル-シクロマルトヘプタオース(バイオシデックス参照番号 BCD C15)であり;または、好ましくは、2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン、またはランダムに2,3,6-O-(2-ヒドロキシプロピル)シクロマルトヘプタオース(バイオシデックス参照番号 BCD R59, CAS No.128449-35-5)としても知られているものであり;または、好ましくはモノプロパンジアミノ-β-シクロデキストリン、別名6I-(3-アミノプロピルアミノ)-6I-デオキシシクロマルトヘプタオース(バイオシデックス参照番号 BCD A56)から選択される。
【0040】
本発明の好ましい一実施形態によれば、活性分子は抗生物質である。好ましくは、抗生物質は、ペナム系またはセファム系から選択される。抗生物質はセフォキシチンまたはクロキサシリンであることが望ましい。
【0041】
もちろん、本発明による反応培地は、1つの抗生物質または複数の抗生物質を含んでもよい。当業者は、所望の効果に従って抗生物質の濃度を容易に調整する。好ましくは、抗生物質の濃度は、0.01と80mg/lとの間、好ましくは0.05と32mg/lとの間、より好ましくは0.1と8mg/lとの間、さらにより好ましくは0.25と6mg/lとの間である。
【0042】
指示剤について、抗生物質がセフォタキシムである場合、培地中のセフォタキシムの濃度は好ましくは0.25と8mg/lとの間、好ましくは1と2mg/lとの間である;抗生物質がセフォキシチンである場合、培地中のセフォキシチンの濃度は好ましくは0.1と8mg/lとの間、より好ましくは0.25と6mg/lの間である;抗生物質がクロキサシリンである場合、培地中のクロキサシリンの濃度は好ましくは0.1と8mg/lとの間、より好ましくは0.25と6mg/lとの間である;抗生物質がセフタジジムである場合、培地中のセフタジジムの濃度は好ましくは0.25と8mg/lとの間、好ましくは2と2.5mg/lとの間である;抗生物質がセフトリアキソンである場合、培地中のセフトリアキソンの濃度は好ましくは0.25と8mg/lとの間、好ましくは1と2.5mg/lとの間にある;抗生物質がセフポドキシムである場合、培地中のセフポドキシムの濃度は好ましくは0.1と32mg/lとの間、好ましくは0.75と10mg/lとの間、より好ましくは1と6mg/lとの間にある。
【0043】
本発明の好ましい一実施形態によれば、活性分子は酵素、好ましくはβ−ラクタマーゼである。当業者は、所望の効果により、酵素濃度を調整する。好ましくは、培地のβ−ラクタマーゼの濃度は、好ましくは50と500IU/lとの間、好ましくは100と150IU/lとの間にある。
【0044】
本発明の好ましい一実施形態によれば、反応培地は、酵素活性または代謝活性の検出を可能にする少なくとも一つの基質を含む。
【0045】
また、同定が求められる微生物に応じて、培地は基質の組合せを含んでもよい。当業者は、同定が要求される微生物に応じて、基質の濃度を調整する。好ましくは、基質の濃度は25と750mg/lとの間、好ましくは40と200mg/lとの間である。指示剤について、β-グルコシダーゼ酵素活性の検出を可能にする基質5-ブロモ-4-クロロ-3-インドリル-β-D-グルコシドが使われる場合は、濃度は好ましくは25と500mg/lとの間、好ましくは40と150mg/lとの間である。指示剤について、ヘキソサミニダーゼ酵素活性の検出を可能にする基質5-ブロモ-4-クロロ-3-インドリル-N-アセチル-β-D-グルコサミニドが使われる場合は、濃度は好ましくは25と500mg/lとの間、好ましくは40と150mg/lとの間である。指示剤について、フォスファターゼ活性の検出を可能にする5-ブロモ-6-クロロ-3-インドリルホスヘイトが使われる場合は、濃度は好ましくは25と750mg/lとの間、好ましくは40と200mg/lとの間である。
【0046】
また、当業者は、さまざまな基質を含む2つの培地を容易に比較することでき、その上に同じ生物試料が置かれる、バイプレートを使用してもよい。
【0047】
好ましくは、酵素活性または代謝活性の検出を可能にする前記基質は、酵素基質、好ましくは蛍光性又は発色性酵素基質である。
【0048】
好ましくは、酵素活性は、オシダーゼ、エステラーゼ及びペプチダーゼの酵素活性から選択される。より好ましくは、前記の同酵素活性は以下の酵素活性から選択される:β-D-グルコシダーゼ、β-D-ガラクトシダーゼ、α-D-グルコシダーゼ、α-D-ガラクトシダーゼ、α-マンノシダーゼ、β-D-グルクロニダーゼ、N-アセチル-β-D-ヘキソサミニダーゼ、β-D-セロビオシダーゼ、エステラーゼ、フォスファターゼ、ホスホリパーゼ、サルファターゼ及びペプチダーゼ。
【0049】
本発明は、
a) 上に記載の反応培地を用意すること、
b) 培地に試験生物試料を接種すること、
c) インキュベートに共すること、
d) 微生物を検出および/または同定することを含む工程
を含んでなることを特徴とする、微生物を検出および/または同定する方法に関する。
【0050】
微生物の接種は、当業者に知られている任意の接種技術によって実施できる。インキュベーション工程は、検出が要求される酵素活性にとって最適な温度で実行されてもよく、検出される酵素活性に応じて、当業者によって容易に選択できる。工程d)は、目視検査によって、比色法によって、または蛍光測定によって実行できる。
【0051】
また、本発明は、微生物を検出および/または同定するために、上記の反応培地の使用にも関する。
【0052】
また、本発明は、反応培地の安定性を増すためのシクロデキストリンの使用にも関する。当該使用により、反応培地の有効期限を延ばし、より容易に培地を保存するが可能である。
【0053】
好ましくは、使用されるシクロデキストリンはα−シクロデキストリンから選択され、好ましくはシクロマルトヘキサオース(バイオシデックス参照番号 ACD N0; CAS No. 51211-54-9)であり;γ−シクロデキストリン、好ましくはシクロマルトオクタノース(バイオシデックス参照番号 GCD N0; CAS No. 91464-90-3)であり;β−シクロデキストリン、好ましくは2-O-メチル-β-シクロデキストリンまたはランダムに2-O-メチル-シクロマルトヘプタオース(バイオシデックス参照番号 BCD C15)であり;または、好ましくは、2−ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリン、またはランダムに2,3,6-O-(2-ヒドロキシプロピル)シクロマルトヘプタオース(バイオシデックス参照番号 BCD R59, CAS No. 128449-35-5)としても知られているものであり;または、好ましくはモノプロパンジアミノ−β−シクロデキストリン、別名6I-(3-アミノプロピルアミノ)-6I-デオキシシクロマルトヘプタオース(バイオシデックス参照番号 BCD A56)から選択される。
【0054】
また、本発明は、活性分子を反応培地の物理化学的分解、例えば特に熱または振盪から保護するためのシクロデキストリンの使用にも関する。好ましくは、使用されるシクロデキストリンはα−シクロデキストリンから選択され、好ましくはシクロマルトヘキサオース(バイオシデックス参照番号 ACD N0; CAS No. 51211-54-9);γ−シクロデキストリンであり、好ましくはシクロマルトオクタノース(バイオシデックス参照番号 GCD N0; CAS No. 91464-90-3)であり;β−シクロデキストリン、好ましくは2-O-メチル-β-シクロデキストリンまたはランダムに2-O-メチル-シクロマルトヘプタオース(バイオシデックス参照番号 BCD C15)であり;または、好ましくは2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン、またはランダムに2,3,6-O-(2-ヒドロキシプロピル)シクロマルトヘプタオース(バイオシデックス参照番号 BCD R59, CAS No. 128449-35-5)としても知られているものであり;または、好ましくはモノプロパンジアミノ-β-シクロデキストリン、別名6I-(3-アミノプロピルアミノ)-6I-デオキシシクロマルトヘプタオース(バイオシデックス参照番号 BCD A56)から選択される。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】クロキサシリンの熱分解に対するシクロデキストリンの保護効果を示す(−CD:シクロデキストリン無し;クロキサシリン:CDモル比、1:125から1:1)。
【図2】水性培地中のセフォキシチンに対するBCD R59及びBCD C15の保護効果を示す。
【図3】アモキシシリンのHPLC解析を示す(A:未処置のアモキシシリン・コントロール;B:アモキシシリン+非加熱β−ラクタマーゼ;C:アモキシシリン+加熱β−ラクタマーゼ;D:アモキシシリン+加熱β−ラクタマーゼ:BCDA56錯体(1mM)。TRアモキシシリン=5.5分)。
【実施例】
【0056】
下記の実施例は、説明として示すものであり、事実上決して制限するものではない。それらにより、より明らかに本発明を理解することができる。
下記の実施例は、シクロデキストリンへのカプセル化により、3つの活性分子(2つの抗生物質、クロキサシリンとセフォキシチン、及び1つの酵素、β−ラクタマーゼ)を分解から保護することに関する。Solvamax(登録商標)範囲のいくつかのシクロデキストリン(ACD N0、GCD N0、BCD C15、BCD R59、BCD A56)は、活性分子の熱分解を減速する能力を試験された。安定性はHPLCによって評価された。
【0057】
1.クロキサシリンの保護と安定化
クロキサシリン(分子質量475.88)は、β−ラクタム型であり、アエロゲネス菌または大腸菌のような特定の細菌種の増殖を阻害するために使用する抗生物質である。バイオシデックス・ライブラリーのシクロデキストリンは、クロキサシリンと伴に、モル比1:1(濃度=210.12mM)、20℃で、72時間インキュベートされた(暗所での振盪)。それから、残留クロキサシリンの量はHPLCによって分析された。
以下の試験は、分解速度を加速するために、水性培地中で、高温(75℃)で実施された。
【0058】
1.1 ex-situスクリーニング
クロキサシリンのナトリウム塩(Sigma, Ref. C 9393)は、水性培地(100g.L−1)中で高い本質的溶解性を有する。
錯体は、1:16及び1:79のクロキサシリン:シクロデキストリンのモル比で、周囲温度で調製された。0.63mMのクロキサシリン(すなわち300mg.L−1)を含む溶液は、75℃で31時間インキュベートされた。抗生物質の安定性を評価するためのサンプルの分析及びその定量は、P1000XRポンプ、AS3000自動インジェクター、UV1000 UV/visible検出器を備えるThermo Finnigan SpectraSYSTEM HPLCシステムと、メルクChromolith(登録商標)パフォーマンスRP-18エンドキャップドカラム(100-4.6mm)、続いてメルクChromolith(登録商標)RP-18eガードカラム(5-4.6mm)で実施された。
移動相は、トリフルオロ酢酸(100μL/L)で酸性化された水とHPLCグレードのアセトニトリルを使用して調製された。0/100〜100/0のメタノール/水勾配を、12分間作用させた。
【0059】
2分間の安定化後、カラムは開始条件下で再平衡化される。溶出速度は1ml/分であり、温度は22℃であり、検出は220nmで行われる。サンプル注射体積は20μLである。
クロマトグラフデータは、アトラス・ソフトウェア(バージョン2003.1((Thermo Electron Corporation、英国)を使用して処理された。
結果を表Iに示す。
表I:

これらの結果は、シクロデキストリンBCD R59及びBCD C15のクロキサシリンにおける保護効果を示す。クロキサシリン:シクロデキストリンのモル比が最低限1:15の場合、同じ実験条件下でこれらの結果は確認された。この点で、図1はクロキサシリンの熱分解に対するシクロデキストリンの保護効果を示す(−CD:シクロデキストリン無し;クロキサシリン:CDモル比、1:125から1:1)。
シクロデキストリンBCD C15は、低い比率で最高の保護を提供した。モル比1:50を超える場合、類似のパフォーマンス・レベルが、2つのシクロデキストリンで観察された。
クロキサシリンがシクロデキストリンと結合していない場合の0%に対して、加熱の後、天然分子の40%が確認されたので、これらの結果は、BCD R59またはBCD C15のようなシクロデキストリンとのクロキサシリンの錯体化は、抗生物質の分子に、熱処理(75℃で31時間)による失活に対して保護を与えることを示す。
【0060】
2.セフォキシチン錯体化
セフォキシチンはβ−ラクタム系統の抗生物質であり、細菌壁によるムコペプチド合成を阻害する。
2.1 ex-situスクリーニング
0.444mMのセフォキシチン(Sigma, Ref. C4786-5G)及び8.88mmのシクロデキストリン(ACD N0またはGCD N0またはBCD R59またはBCD C15)は、すなわち1:20のモル比で、周囲温度で1時間、撹拌で溶解された。それから、混合物は、90分間、65℃にした。
それから、セフォキシチンの完全性はHPLCによって分析された。抗生物質の安定性を評価するためのサンプルの解析及びその定量は、P1000XRポンプ、AS3000自動インジェクター、UV1000 UV/visible検出器を備えるThermo Finnigan SpectraSYSTEM HPLCシステムと、メルクChromolith(登録商標)パフォーマンスRP-18エンドキャップドカラム(100-4.6mm)、続いてメルクChromolith(登録商標)RP-18eガードカラム(5-4.6mm)で実施された。
移動相は、トリフルオロ酢酸(100μL/L)で酸性化された水とHPLCグレードのアセトニトリルを使用して調製された。0/100〜100/0のメタノール/水勾配を、12分間作用させた。
2分間の安定化後、カラムは、開始条件下で再平衡化する。溶出速度は1ml/分であり、温度は22℃であり、検出は220nmで行われる。
サンプル注射体積は20μLである。クロマトグラフデータは、アトラス・ソフトウェア(バージョン2003.1((Thermo Electron Corporation、英国)を使用して処理された。
結果を表IIに示す。
【0061】
表II:

保護の最適化は、他の条件は変えないまま、セフォキシチン:シクロデキストリン(BCD R59及びBCD C15)のモル比を、1:1から1:216から変化させることによって求めた。この点で、図2は、水性培地中のセフォキシチンに対するBCD R59及びBCD C15の保護効果を示す。安定性の改良は、シクロデキストリン無しのコントロールに比較して算出された。
1:6と1:30との間に及ぶモル比では、シクロデキストリンBCD C15は、最も効果的だった。これについては、2つのシクロデキストリンは等価だった。1:50のモル比は、低温で実質的程度の防護を得るために十分だった。この場合、65℃で90分後のセフォキシチンの安定性は、シクロデキストリン無しのコントロールの38.5%の代わりに47.5%である。
これらの結果は、BCD C15の存在下で、錯体化抗生物質が、単独の分子より、分解が約10%低下するので、シクロデキストリンACD N0、GCD N0、BCD R59及びBCD C15がセフォキシチンを熱変性から保護することを証明する。
【0062】
3.β−ラクタマーゼの保護
3.1 β−ラクタマーゼの安定性
0.375 U.mL−1に等価量のβ−ラクタマーゼ(Genzyme Biochemicals Ref. BELA-70-1431)を、30分間、暗所、周囲温度で、Proteosol(登録商標)のシクロデキストリンBCD A56範囲(1または10mM)と混合した。
次に、混合物は45分間、70℃に加熱された。
次に、β−ラクタマーゼ活性を明らかにする500mg.L−1のアモキシシリン(Glaxo, Ref. 5003)を周囲温度で加えた。25℃の5分間のインキュベーション後、残留アモキシシリンをHPLCによって分析した。アモキシシリンのHPLC解析を示す、得られた分析結果を図3に示す(A:未処置のアモキシシリン・コントロール;B:アモキシシリン+非加熱β−ラクタマーゼ;C:アモキシシリン+加熱β−ラクタマーゼ;D:アモキシシリン+加熱β−ラクタマーゼ:BCDA56錯体(1mM)。TRアモキシシリン=5.5分)。アモキシシリン・ピークは、5.5分に起こった。
β−ラクタマーゼ活性は、アモキシシリン単独のコントロール(図3A)と比較ししたアモキシシリン・ピーク(図3B)の減少によって、及びより短い保持時間における未解決のピークで特徴づけた加水分解産物の出現によって、証明された。β−ラクタマーゼが加熱によって分解した場合、いくらかのその活性を失った。それはアモキシシリン(図3C)のより良好な安定性により反映された。シクロデキストリン(図3D)の存在下の同じ熱処理により、β−ラクタマーゼ活性をアモキシシリン−β−ラクタマーゼ非加熱コントロール(図3B)の活性と同一に維持することができた。
上記の分析結果に基づいて、アモキシシリンの濃度を定量化し、この値をβ−ラクタマーゼ活性につなげることができた。結果を表IIIに示す。
【0063】
表III:

基準としてシクロデキストリンの非存在下と比べると、10mMのBCD A56の存在下ではβ−ラクタマーゼの優れた保護があり、加えて、このシクロデキストリンは、酵素の活性部位と相互に作用しないと結論した。
これらの結果はシクロデキストリンと結合したβ−ラクタマーゼが45分間70℃の加熱後さえ、それが非混合型タンパク質と異なり、酵素の基質であるアモキシシリンを完全に分解する能力を残しているので、その酵素活性の全てを保っていることを証明する。
従って、シクロデキストリンは、熱処理による変性に対して酵素とその活性部位を保護する。
【0064】
4.反応培地:
2つの反応培地(一方はセフォキシチンを有し、他方はシクロデキストリンBCD C15 +複合体を含む)を、ChromIDTMMRSA培地から作成した。後者は、セフォキシチンとシクロデキストリンを浸透水に可溶化し、次に暗所で周囲温度で溶液を撹拌することによって得られた。次に、混合物は寒天と合わせる前にフィルターをかけた。
培地は、19週間、2−8℃で保存し、パフォーマンス・レベル(MRSA:メチシリン耐性黄色ブドウ球菌の増殖、MSSA:メチシリン感受性黄色ブドウ球菌の抑制)を、市販の使用準備済み培地と比較して評価した。
シクロデキストリンによるセフォキシチンの保護は、シクロデキストリンBCD C15を有する培地か、又は有しない培地に、時間に伴うMSSA増殖(活性セフォキシチン)の阻害と比較することで測定される。
MRSA及びMSSA菌株は、スリー・クワッドラント線条接種法に従って、培地に接種し、シャーレは37℃で48時間インキュベートした。
また、菌株の増殖(シャーレ上のコロニーの存在)及びコロニーの色は、24及び48時間のインキュベーション後に観察される。結果を、下記の表に示す:

凡例:
+:増殖
−:増殖なし
(N):増殖した菌株の数/試験された菌株の数
G:緑色
T=0での予想通り、MRSA菌株は緑色のコロニー形成を生じるが、MSSA菌株は正しく阻害される。シクロデキストリンの存在は培地の使用に適合する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シクロデキストリンにカプセル化された少なくとも一つの活性分子を含む、微生物を同定/検出するための反応培地。
【請求項2】
シクロデキストリンが、α−シクロデキストリン、γ−シクロデキストリン、β−シクロデキストリン、2−O−メチル−β−シクロデキストリン、2−ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリン及びモノプロパンジアミノ−β−シクロデキストリンから選択されることを特徴とする、請求項1に記載の反応培地。
【請求項3】
活性分子が抗生物質であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の反応培地。
【請求項4】
抗生物質がペナム系またはセファム系から選択されることを特徴とする、請求項3に記載の反応培地。
【請求項5】
活性分子が酵素、好ましくはヒドロラーゼ、さらにより好ましくはβ-ラクタマーゼであることを特徴とする、請求項1又は2に記載の反応培地。
【請求項6】
酵素活性または代謝活性の検出を可能にする少なくとも一つの基質を含むことを特徴とする、請求項1から5に記載の反応培地。
【請求項7】
酵素活性または代謝活性の検出を可能にする前記基質が酵素基質、好ましくは蛍光性であるか発色性であることを特徴とする、請求項6に記載の反応培地。
【請求項8】
a) 請求項1から7の何れか一項に記載の反応培地を用意すること、
b) 培地に試験生物試料を接種すること、
c) インキュベートに供すること、
d) 微生物を検出および/または同定することを含む工程
を含むことを特徴とする、微生物を検出および/または同定する方法。
【請求項9】
微生物を検出および/または同定するための、請求項1から7の何れか一項に記載の反応培地の使用。
【請求項10】
反応培地の安定性を増やすためのシクロデキストリンの使用。
【請求項11】
反応培地における物理化学的分解から活性分子を保護するためのシクロデキストリンの使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2010−525803(P2010−525803A)
【公表日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−504809(P2010−504809)
【出願日】平成20年4月28日(2008.4.28)
【国際出願番号】PCT/FR2008/050761
【国際公開番号】WO2008/148972
【国際公開日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【出願人】(504238301)ビオメリュー (74)
【出願人】(509302375)
【Fターム(参考)】