説明

微生物回収装置、微生物回収方法および液体菌捕集カートリッジ

【課題】サンプル液から微生物を回収し、高精度に微生物を計数することを可能とする装置と方法の提供。
【解決手段】サンプル液に含まれる微生物を回収する、微生物回収装置10は、サンプル液に加温した希釈バッファ液を添加して攪拌し、サンプル液の粘性を所定値以下に調整する制御部を具えている。該回収装置10は、制御部によって調整したサンプル液に含まれる夾雑物を濾過除去する一次フィルタと、この一次フィルタによって濾過除去したサンプル液に含まれる微生物を捕捉する二次フィルタと、を備えた液体菌捕集カートリッジ20によって、夾雑物を除去して微生物のみを回収可能であり、この液体菌捕集カートリッジ20の回収容器25は、微生物計数装置100にセットされて、高精度に微生物数が計数される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体中の微生物を回収する微生物回収装置、微生物回収方法および液体菌捕集カートリッジに関する。
【背景技術】
【0002】
医薬品工場、食品工場、再生医療施設などに於ける製造現場、研究開発、品質保証に於いては、細菌などの微生物による汚染の有無や繁殖状況を調べる機会が多い。
【0003】
微生物の計数方法として、培養法が知られている。培養法による微生物の計数は、周知のとおり、その作業に多大な時間および労力が必要である。
一方、微生物の計数方法として、微生物から抽出したATP(アデノシン三リン酸)を定量することで微生物を間接的に計数するATP法が知られている。
【0004】
特許文献1には、濾過膜を用いるATP・バイオルミネッセンス法による微生物数の検出法において、微生物以外のノイズ発光点を完全に除去して1個の微生物の有無を確実に判定する発明が記載されている。
【0005】
このATP法では、捕集した微生物にATP抽出試薬を接触させることで微生物に内在するATPを抽出し、このATPに発光試薬を反応させた際の発光強度に応じて微生物を計数する。このATP法によれば、例えば平板培地で培養した微生物のコロニ数によって捕集した微生物を計数する方法では数日間を要するところ、微生物を捕集してからその計数までの時間を1時間ないし数時間程度に飛躍的に短縮することができる。
【0006】
しかしながら、このATP法は、微弱な発光強度に基づいて微生物を計数するために、計数対象となるサンプルに外乱要因となる物質が混入する可能性を極力低減する必要がある。
特許文献2には、多量のサンプル中に含まれる少数の微生物を迅速、高精度、高感度、簡便に検出して定量する発明が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平11−137293号公報
【特許文献2】特開2010−193835号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献2に記載されている発明は、微生物を含んでいるサンプル液(検体液)をメンブレンフィルタで濾過し、メンブレンフィルタ上の微生物をATP法で抽出することが可能である。
【0009】
しかし、サンプル液によっては、微生物以外の夾雑物を多く含んでいることがある。例えば、果汁入り清涼飲料水に於ける果汁成分や、ゼリー入り飲料などである。これらの夾雑物は、微生物を計数する上で外乱要因となる物質である。
また、これらのサンプル液は、粘性が高い場合があり、よってフィルタの濾過処理が充分に行えない虞がある。
【0010】
そこで、本発明は、サンプル液から微生物を回収し、高精度に微生物を検出・計数することを可能とする微生物回収装置、微生物回収方法および液体菌捕集カートリッジを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記課題を解決し、本発明の目的を達成するために、以下のように構成した。
すなわち、本発明の微生物回収装置は、検体液に含まれる微生物を回収する微生物回収装置であって、一次濾過手段によって、前記検体液に含まれる夾雑物を濾過除去し、二次濾過手段によって、夾雑物が濾過除去された検体液に含まれる前記微生物を捕捉する、ことを特徴とする。
その他の手段については、発明を実施するための形態のなかで説明する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、サンプル液から微生物を回収し、高精度に微生物を検出・計数することを可能とする微生物回収装置、微生物回収方法および液体菌捕集カートリッジを提供可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】第1の実施形態に於ける微生物検出システムの構成と動作を示す図である。
【図2】第1の実施形態に於ける微生物回収装置の概略の構成図である。
【図3】第1の実施形態に於けるカートリッジの構成図である。
【図4】第1の実施形態に於ける充填希釈槽の槽体の構成図である。
【図5】第1の実施形態に於ける微生物計数装置の概略の構成図である。
【図6】第1の実施形態に於ける微生物計数装置の搭載部付近を示す斜視図である。
【図7】第1の実施形態に於ける微生物回収処理を示すフローチャートである。
【図8】第1の実施形態に於ける微生物回収処理のシーケンスを示す図である。
【図9】第1の実施形態に於ける微生物回収処理の動作を示す図である。
【図10】第1の実施形態に於ける微生物計数処理を示すフローチャートである。
【図11】第2の実施形態に於けるカートリッジの構成図である。
【図12】第2の実施形態に於ける充填希釈槽の槽体の構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以降、本発明を実施するための形態を、図を参照して詳細に説明する。
【0015】
(第1の実施形態の構成)
図1は、第1の実施形態に於ける微生物検出システムの構成と動作を示す図である。
第1の実施形態の微生物検出システムは、検体液であるサンプル液を格納するサンプル液容器31と、カートリッジ20と、滅菌された希釈バッファ液を格納する希釈バッファ液容器41と、微生物回収装置10と、微生物計数装置100とを有している。カートリッジ20は、液体を保持する槽部である充填希釈槽21と、回収容器25とから構成されている。カートリッジ20は、サンプル液に含まれる微生物を回収する液体菌捕集カートリッジである。
カートリッジ20の充填希釈槽21と回収容器25とは、分離可能に構成されている。これにより、サンプル液の種類に応じて仕様の異なる一次フィルタ23(図2)を備えた充填希釈槽21のユニットに付け替え可能である。更に、充填希釈槽21と分離した回収容器25は、微生物計数装置100に、そのまま設置可能に構成されている。
このカートリッジ20は、回転対象に構成されている。これにより、滑らかに回転駆動させて、充填希釈槽21内部に貯留したサンプル液と希釈バッファ液を攪拌することが可能である。
【0016】
第1の実施形態の微生物検出システムは、サンプル液相互間のコンタミネーション(実験汚染)が分析結果に影響を及ぼすことを抑止するため、カートリッジ20やサンプル液容器31など、サンプル液と接触する部分は全てディスポーサブル品である。
充填希釈槽21と回収容器25とは、エチレンオキサイドガスなどにより滅菌され、それぞれ個別の袋で包装されて滅菌状態が維持され、流通されるものとする。なお、充填希釈槽21と回収容器25とは、エチレンオキサイドガスなどにより滅菌されたのちに連結され、単一の袋で包装されて滅菌状態が維持され、流通されてもよい。
【0017】
微生物回収装置10は、中央部左寄りに設けられた開閉扉11と、表示部12と、操作部13とを有している。この開閉扉11を開けることにより、サンプル液容器31と、カートリッジ20と、希釈バッファ液容器41とを、微生物回収装置10にセットすることが可能である。微生物回収装置10は、検体液に含まれる微生物を回収する。
【0018】
この微生物回収装置10によって、微生物を回収したカートリッジ20は、回収容器25と充填希釈槽21とに分離される。この回収容器25は、微生物計数装置100にセットされる。微生物計数装置100は、この回収容器25に回収されている微生物をATP法によって計数する。この微生物計数装置100は、本出願人が上市しているバイオメイテクター(登録商標)である。
【0019】
図1に基いて、第1の実施形態に於ける微生物検出システムの動作を説明する。
微生物検出システムの処理が開始すると、ステップS10に於いて、検査者は、サンプル液入りのサンプル液容器31と、未使用のカートリッジ20と、希釈バッファ液入りの希釈バッファ液容器41とを、微生物回収装置10に装着する。
【0020】
ステップS11に於いて、微生物回収装置10は、サンプル液容器31に格納されているサンプル液から微生物を回収する微生物回収処理を行う。このステップS11の処理は、後述する図7で詳細に説明する。
【0021】
ステップS12に於いて、検査者は、微生物を回収したカートリッジ20の回収容器25を、微生物回収装置10から取り出し、微生物計数装置100に装着する。
【0022】
ステップS13に於いて、微生物計数装置100は、回収容器25のハウジング26内の微生物の計数処理を行う。ステップS13の処理は、後述する図10で詳細に説明する。
ステップS13の処理が終了すると、図1の処理を終了する。
【0023】
図2は、第1の実施形態に於ける微生物回収装置の概略の構成図である。
微生物回収装置10は、処理ステージ14と、サンプル回収部30と、希釈バッファ供給部40と、カートリッジモータ50と、回転軸51と、回転式希釈槽ホルダ53と、回収容器ホルダ回転部54と、回収容器ホルダ55と、回収容器ヒータ56と、吸引部60と、吸引ヘッド駆動部70と、制御部80とを有している。サンプル液容器31と、カートリッジ20と、希釈バッファ液容器41とは、検査者が処理ステージ14の上に設置する。
【0024】
サンプル回収部30は、サンプル液容器31からサンプル液を一定量分取するために、サンプル液供給パイプ32を、送液ポンプ33にセット可能に構成されている。
サンプル液容器31には、微生物を計数する対象である検体液であるサンプル液が格納されている。検査者は、サンプル液をサンプル液容器31に採取し、微生物回収装置10にセットする。しかし、これに限られず、例えば注射剤を検査する際には、バイアル(製品の容器)をそのままサンプル液の容器に用いることができるよう、サンプル回収部30を構成してもよい。
【0025】
サンプル液供給パイプ32は、樹脂製のチューブであり、サンプル液容器31から充填希釈槽21にサンプル液を送液する経路となる。サンプル液容器31とサンプル液供給パイプ32とは、サンプル液相互間のコンタミネーションを抑止するため、ディスポーサブル品である。サンプル回収部30は、サンプル回収率を向上させ、かつ、コンタミネーションを抑止するため、このサンプル液供給パイプ32が最短の長さになるように構成されている。
【0026】
送液ポンプ33は、サンプル液供給パイプ32をしごいて、サンプル液と非接触で送液するポンプであり、後述する制御部80の流量制御部81によって制御される。この送液ポンプ33の送液量と駆動トルクは、制御部80の流量制御部81に通知される。
【0027】
希釈バッファ供給部40は、希釈バッファ液容器41から希釈バッファ液を一定量供給するために、希釈バッファ液供給パイプ42を、送液ポンプ43とバッファヒータ44とにセット可能に構成されている。
【0028】
希釈バッファ液容器41は、滅菌された希釈バッファ液が格納されている。この希釈バッファ液は、サンプル液を希釈して粘度を制御するバッファ液である。検査者は、希釈バッファ液が格納されている希釈バッファ液容器41を微生物回収装置10にセットする。
【0029】
希釈バッファ液供給パイプ42は、サンプル液供給パイプ32と同様に樹脂製のチューブであり、希釈バッファ液容器41からカートリッジ20の充填希釈槽21に希釈バッファ液を送液する。この希釈バッファ液供給パイプ42は、コンタミネーションを抑止するため、ディスポーサブル品である。
【0030】
送液ポンプ43は、送液ポンプ33と同様に、希釈バッファ液供給パイプ42をしごいて、希釈バッファ液と非接触で送液するポンプであり、後述する制御部80の流量制御部81によって制御される。送液ポンプ43の送液量と駆動トルクは、制御部80の流量制御部81に通知される。
【0031】
バッファヒータ44は、希釈バッファ液供給パイプ42を介し、滅菌された希釈バッファ液と非接触の状態で、この希釈バッファ液を加温するヒータである。これにより、例えばゼリー飲料のように、温度によって粘性が変化するサンプル液に於いて、その粘度を制御可能である。バッファヒータ44が加温する温度範囲は、計測対象の微生物が生存可能な温度範囲である。バッファヒータ44は、後述する制御部80のヒータ制御部82によって制御される。
【0032】
カートリッジ20は、上部に設けられた充填希釈槽21(図1)と、下部に設けられた回収容器25(図1)とを備えている。
充填希釈槽21(図1)は、槽体22と、一次フィルタ23と、一次フィルタ固定リング24とを有している。回収容器25(図1)は、ハウジング26と、二次フィルタ27と、二次フィルタ固定リング28とを有している。これらカートリッジ20の詳細な構造は、後述する図3にて詳細に説明する。
【0033】
カートリッジモータ50は、回転軸51に接続され、この回転軸51を回転させる。回転軸51と回転式希釈槽ホルダ53には、ベルト52が張架されている。このカートリッジモータ50は、後述する制御部80のモータ制御部83によって制御されている。
【0034】
回収容器ホルダ55は、例えば、処理ステージ14に固定されている。回収容器ホルダ55は、回収容器ホルダ回転部54とボールベアリングなどで接触しており、この回収容器ホルダ回転部54を回転可能に支持している。回転式希釈槽ホルダ53は、回収容器ホルダ回転部54に設置されている。これにより、カートリッジモータ50は、回転軸51とベルト52を介して、回転式希釈槽ホルダ53と回収容器ホルダ回転部54を回転させ、これによってカートリッジ20を回転させる。
【0035】
カートリッジモータ50は、回転軸51を回転させる。ベルト52は、回転軸51の回転力を、回転式希釈槽ホルダ53に伝達する。回転式希釈槽ホルダ53は、カートリッジ20の充填希釈槽21を保持して回転させる。カートリッジ20の充填希釈槽21の回転に伴い、カートリッジ20の回収容器25は、回収容器ホルダ回転部54の上で回転する。
【0036】
回収容器ヒータ56は、回収容器25を加温するヒータである。回収容器ヒータ56は、回収容器25内のサンプル液を加温することにより、その粘度を制御する。この回収容器ヒータ56は、サンプル液とは非接触に構成されている。
【0037】
吸引部60は、吸引ヘッド61と、アスピレータポンプ62と、吸引パイプ63とを有している。吸引ヘッド61は、後述する吸引ヘッド駆動部70によって上下に駆動され、回収容器25の下部に圧着して陰圧で吸引する。吸引パイプ63は、吸引ヘッド61とアスピレータポンプ62とを接続して、吸引ヘッド61内の空気をアスピレータポンプ62で吸出し可能としている。アスピレータポンプ62は、ベンチュリ効果によって、サンプル液または粘度を調整したサンプル液を、一次フィルタ23と二次フィルタ27とを介して所定の陰圧で吸引する吸引ポンプである。アスピレータポンプ62は、一次フィルタ23によってサンプル液に含まれる夾雑物を濾過除去すると共に、二次フィルタ27によって夾雑物が濾過除去された検体液に含まれる微生物を捕捉して回収する。
【0038】
吸引ヘッド駆動部70は、吸引ヘッドモータ71と、ナット72と、ボールネジ軸73とを有している。
吸引ヘッドモータ71は、ナット72を回転駆動してボールネジ軸73を上下させる。このボールネジ軸73の上部には、前述した吸引ヘッド61が固定されている。このボールネジ軸73の上下動に応じて、吸引ヘッド61も上下する。吸引ヘッドモータ71は、例えばステッピングモータであり、駆動パルスに応じた回転量だけ回転駆動させることが可能である。吸引ヘッドモータ71は、後述するモータ制御部83によって制御されている。
なお、カートリッジモータ50を回転させるときは、吸引ヘッド61は下方に位置するよう制御され、カートリッジモータ50の自由な回転を阻害しないようになっている。
【0039】
制御部80は、流量制御部81と、ヒータ制御部82と、モータ制御部83と、ポンプ制御部84とを有し、表示部12(図1)と、操作部13(図1)とに接続されている。
【0040】
流量制御部81は、送液ポンプ33と送液ポンプ43とに接続されている。流量制御部81は、送液ポンプ33と送液ポンプ43とを駆動可能であると共に、これらの駆動トルクを計測可能である。流量制御部81は、制御部80の指示に従い、所定のシーケンスで送液ポンプ33と送液ポンプ43とを駆動する。
【0041】
ヒータ制御部82は、バッファヒータ44と回収容器ヒータ56とに接続されている。ヒータ制御部82は、制御部80の指示に従い、所定のシーケンスでバッファヒータ44と回収容器ヒータ56とをオンする。
【0042】
モータ制御部83は、カートリッジモータ50と吸引ヘッドモータ71とに接続されている。モータ制御部83は更に、カートリッジモータ50の駆動トルクを計測可能である。モータ制御部83は、カートリッジモータ50の駆動トルクが所定値になるようにカートリッジモータ50を駆動する。モータ制御部83は更に、吸引ヘッド61が所望の位置になるよう、吸引ヘッドモータ71を所定量だけ回転させる。
【0043】
ポンプ制御部84は、アスピレータポンプ62に接続されている。ポンプ制御部84は、制御部80の指示に従い、所定のシーケンスでアスピレータポンプ62を駆動する。
【0044】
粘性調整手段である制御部80は、流量制御部81の指示によって、サンプル液に希釈バッファ液を添加している。更に、モータ制御部83の指示によって、充填希釈槽21を所定に回転してサンプル液を攪拌し、カートリッジモータ50のトルクを計測することによって、サンプル液の粘性を測定し、この粘度が所定値以下になるよう、希釈バッファ液を充填希釈槽21に滴下するなどして調整する。カートリッジモータ50のトルクは、カートリッジ20と回転式希釈槽ホルダ53と回収容器ホルダ回転部54の質量、充填希釈槽21が貯留しているサンプル液の液量などで左右される。制御部80は、カートリッジモータ50のトルクの情報に、これらの情報を加味して、充填希釈槽21が貯留しているサンプル液の粘性を算出して測定する。
制御部80は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、各種インタフェース、電子回路などを含んで構成されている。制御部80と、流量制御部81と、ヒータ制御部82と、モータ制御部83と、ポンプ制御部84とは、ROMに記録されているソフトウェアプログラムやデータがRAM上に読み出され、CPUによって実行されることによって具現化される。
【0045】
図3は、第1の実施形態に於けるカートリッジの構成図である。この図3は、カートリッジ20を斜め上方から見下ろした際の分解斜視図である。
本実施形態に係るカートリッジ20は、検体液であるサンプル液中の被検出物である微生物を捕集する際には、前述した図2に示す微生物回収装置10に配置されて使用される。回収して捕集した微生物を計数する際には、下部に設けられた回収容器25のみが微生物計数装置100に搭載されて使用される。
カートリッジ20は、上部に設けられた充填希釈槽21と、下部に設けられた回収容器25とを備えている。
この充填希釈槽21は更に、槽体22と、一次フィルタ23と、一次フィルタ固定リング24とを有している。充填希釈槽21は、サンプル液と希釈バッファ液とを混合して粘度を調整する。
槽体22は、充填希釈槽21の外周部を形成しており、上側のテーバ部22aと、下側の円筒部22bとが形成されている。上側のテーバ部22aの内側には、攪拌リブ22dが4枚形成されている。下側の円筒部22bには、係合爪22cが形成されている。係合爪22cは、回収容器25のハウジング26のL字溝26cと係合して、この充填希釈槽21と回収容器25とを着脱自在に連結する。この槽体22の構造は、後述する図4にて更に詳細に説明する。槽体22は、液体を保持する槽部である。
【0046】
一次フィルタ23は、槽体22の円筒部22bの内部と一次フィルタ固定リング24との間に設置される。一次フィルタ23の径は、槽体22の円筒部22bの内径よりも大きく形成されている。一次フィルタ23は、後述する二次フィルタ27と比べて広い濾過面積となるように構成されている。一次フィルタ23は、充填希釈槽21の内部に滴下されたサンプル液から、大粒径の夾雑物を捕捉して除去する。しかし、これに限られず、ATP法の検出を阻害する特定の物質、色素などを特異的または非特異的に除去するものであってもよい。一次フィルタ23は、検体液に含まれる夾雑物を濾過除去する一次濾過手段である。一次フィルタ23は、常圧下(大気圧下)ではサンプル液および希釈バッファ液を濾過せず、所定の陰圧で吸引することでサンプル液および希釈バッファ液を濾過して夾雑物を除去する。
補足すると、一次フィルタ23は、後述する二次フィルタ27よりも目開きは大きく、かつ、全体として疎水性である。一次フィルタ23は、アスピレータポンプ62によって吸引されない限り液体を通過させないように構成されている。
【0047】
一次フィルタ固定リング24は、槽体22の円筒部22bの内径と同一径の中空円筒形であり、上部にリブ部24bを具えている。リブ部24bは、中央部から放射状に延びるリブと、中央部から円形に形成され、前述した放射状のリブに交差するリブとで構成されている。このリブ部24bは、一次フィルタ固定リング24と一次フィルタ23とが槽体22に連結されたとき、この一次フィルタ23を下から支持する。一次フィルタ固定リング24は、このリブ部24bの部位以外は中空であり、液体や気体が通過可能である。
一次フィルタ固定リング24の円筒形の外周側面には、3個の係合爪24aが形成されている。一次フィルタ固定リング24は、3個の係合爪24aによって槽体22の下部に設けられた図示しない3個のL字溝と係合して、槽体22に連結される。一次フィルタ23の外径は、槽体22の円筒部22bの内径、および、一次フィルタ固定リング24の外径よりも大きいので、一次フィルタ23の端部は円筒部22bと一次フィルタ固定リング24との間で挟持されて固定される。
【0048】
回収容器25は更に、ハウジング26と、二次フィルタ27と、二次フィルタ固定リング28とを有している。
ハウジング26は、その上方から下方に向かって、槽体22の円筒部22bの外径と略同じ内径を有する上側円筒部と、この上側円筒部の内径よりも更に縮径した内径を有する下側円筒部と、この下側円筒部の内径から徐々に縮径した内径を有する逆円錐形状のロト部と、このロト部の最下部に形成される排出開口の出口周囲に設けられたフィルタ取付部とが、この順番に一体となるように構成されている。ハウジング26は、下側円筒部の外周側面に4個の係合爪26aが形成され、上側円筒部の内周側面に3個のL字溝26cが形成されている。ハウジング26の逆円錐形状のロト部は、二次フィルタ27で効率良く菌を捕捉するため、テーバ状に形成されている。
【0049】
上側円筒部の内周面には、槽体22の係合爪22cが嵌入するL字溝26cが内周に沿って、係合爪22cと対応する位置に3箇所形成されている。
下側円筒部は、棚部を介して上側円筒部と接続されている。この下側円筒部の外周面には、4個の係合爪26aが形成されている。これら係合爪26aは、下側円筒部の径方向の外側に延出するように、周方向に沿って等間隔に並んで形成されている。4個の係合爪26aは、微生物回収装置10の回収容器ホルダ回転部54(図2)の図示しない4個のL字溝と係合し、回収容器25(ハウジング26)を回収容器ホルダ回転部54に着脱可能に設置する。
ロト部は、下方に向かって内径が徐々に縮径することで、内容物が最下部の排出開口に向かって流下し易くなっている。
フィルタ取付部は、排出開口である出口を塞ぐように配置される二次フィルタ27の形状に合わせて、薄い円盤状の空間を形成する図示しないフィルタ収容部と、二次フィルタ固定リング28を支持する図示しないリング支持部とが一体となって形成されている。
リング支持部の内周面には、図示しない4つのL字溝が形成されている。これら4つのL字溝は、周方向に沿って等間隔に並んで形成されている。これら4つのL字溝は、後述する二次フィルタ固定リング28に形成された係合爪28aが嵌入して係合し、二次フィルタ固定リング28を着脱可能に固定する。
【0050】
ハウジング26は、下側円筒部の外周側面に形成された4個の係合爪26aによって、回収容器ホルダ回転部54(図2)の図示しない4個のL字溝と係合し、微生物回収装置10の処理ステージ14(図2)上に着脱自在に設置される。ハウジング26は更に、下側円筒部の外周側面に形成された4個の係合爪26aによって、微生物計数装置100に設けられた図示しない4個のL字溝と係合し、微生物計数装置100に着脱自在に設置される。
ハウジング26は、上側円筒部の内周側面に形成された3個のL字溝26cによって、前述した槽体22の3個の係合爪22cと係合して、充填希釈槽21を気密性が保たれた状態で着脱自在に連結する。これにより、回収容器25の下部に形成された排出開口から陰圧で吸引することにより、充填希釈槽21の一次フィルタ23に貯留されているサンプル液を吸引して、二次フィルタ27上に微生物を回収して捕捉することが可能となる。このハウジング26は、サンプル液などの液体を保持する液体保持部である。
【0051】
二次フィルタ27は、微生物を捕捉する1枚の菌捕捉フィルタ、または、菌を捕捉する親水フィルタと試薬を保持する疎水フィルタとを重ねあわせた2枚構成のフィルタである。微生物計数装置100による計数を容易かつ高感度に行うために、濾過面積は一次フィルタ23よりも狭い面積であり、かつ、狭い目開きである。二次フィルタ27は、夾雑物が濾過除去された検体液に含まれる微生物を捕捉する二次濾過手段である。
二次フィルタ27を構成する親水性フィルタおよび疎水性フィルタは、上市品を使用することができる。親水性フィルタとしては、例えば、MF−ミリポア(日本ミリポア社製)、Durapore(日本ミリポア社製)、Isopore(日本ミリポア社製)などが挙げられる。
疎水性フィルタとしては、例えば、マイテックス(日本ミリポア社製)、ポリプロピレンプレフィルタ(日本ミリポア社製)などが挙げられる。
二次フィルタ27の外径は、排出開口の内径よりも大きく形成されている。
なお、一次フィルタ23は、当該一次フィルタ23上にサンプル液と希釈バッファ液とを貯留する必要があることから、二次フィルタ27と同様の材質で、目開きの大きなものを使うことが可能である。この一次フィルタ23には、菌を捕捉する機能は不要である。
【0052】
二次フィルタ固定リング28は、ハウジング26(ロト部)に二次フィルタ27を固定する。二次フィルタ固定リング28は、ハウジング26のロト部の排出開口と二次フィルタ27を介して連通する位置に、貫通孔を有している。二次フィルタ固定リング28は、ハウジング26のフィルタ取付部のリング支持部の内径と略同じ外径であるリング本体に、このリング本体の下方に形成されて、リング本体の外径よりも大きい径のフランジ部が形成されている。
また、二次フィルタ固定リング28は、リング本体の上面に一体に形成されて、ハウジング26のフィルタ収容部の内側に嵌入する嵌入部と、この嵌入部での貫通孔の開口周囲に立設された環状リブとを更に備えている。二次フィルタ27は、この環状リブによって排出開口の出口周囲に押し付けられることとなる。
二次フィルタ固定リング28リング本体の周面には、4個の係合爪28aが径方向の外側に延出するように、周方向に沿って等間隔に形成されている。これら係合爪28aは、リング支持部の図示しないL字溝に対応する位置に形成され、これらL字溝に嵌入することで、ハウジング26に、二次フィルタ27と二次フィルタ固定リング28とを着脱自在に連結する。
【0053】
カートリッジ20は、下部の排出開口が常圧で、充填希釈槽21にサンプル液や希釈バッファ液が滴下されたときには、これらの液体を保持して回転により希釈して攪拌する。
カートリッジ20は、下部の排出開口に陰圧が掛けられ、充填希釈槽21に希釈されたサンプル液を貯留しているときには、この液体を一次フィルタ23と二次フィルタ27とで濾過して、微生物を二次フィルタ27の表面に捕集する。
【0054】
微生物を捕集したカートリッジ20は、充填希釈槽21と回収容器25とを分離して、この回収容器25のみが微生物計数装置100に設置され、捕集した微生物が計数される。
以上のような、カートリッジ20は、一次フィルタ23と二次フィルタ27とを除いて成形可能な樹脂で形成することができる。中でもポリプロピレンが望ましい。
【0055】
図4(a),(b)は、第1の実施形態に於ける充填希釈槽の槽体の構成図である。
【0056】
図4(a)は、充填希釈槽21の槽体22の上面図である。
槽体22は、内部に柱状の十字リブ22gを有し、前述した攪拌リブ22dを下から支えている。槽体22は、十字リブ22gと攪拌リブ22dの部位を除いて中空であり、液体や気体などが上下方向に通過可能に構成されている。
【0057】
図4(b)は、充填希釈槽21の槽体22のK0−K1線断面図である。
槽体22は、上側のテーバ部22aと、下側の円筒部22bとを区切る平面に十字リブ22gが形成されている。この十字リブ22gの両端上側には、それぞれ板状の攪拌リブ22dが形成されている。十字リブ22gと、攪拌リブ22dと、回転対象に構成されている。そして槽体22も、回転対象に構成されている。
前述した図3に示す一次フィルタ23は、この十字リブ22gと一次フィルタ固定リング24(図3)によって、挟まれて固定される。
【0058】
図5は、第1の実施形態に於ける微生物計数装置の概略の構成図である。
微生物計数装置100は、サンプルに含まれる微生物をATP法に準拠して計数する装置である。
筐体101内に、回収容器25を搭載する搭載部102と、温水供給部103と、吸引ユニット104と、複数の試薬Rを配置する試薬カートリッジ110と、バッファタンク105と、分注ユニット106と、発光強度測定ユニット107と、制御部108とを備えて構成されている。
なお、図5中、筐体101および試薬カートリッジ110は、作図の便宜上、一点鎖線で示し、回収容器25は記載を省略している。回収容器25の微生物計数装置100へのセットについては、後述する図6で詳細に説明する。
【0059】
温水供給部103は、温水をハウジング26(図3)の内部空間に注入するものであり、図示を省略するが、例えばペリスタポンプでカートリッジヒータからの温水を、フレキシブルチューブなどで形成されたノズルを介して吐出するものが挙げられる。このノズルは、回収容器25を搭載部102に搭載する際に、予めハウジング26の内部空間内に挿入される。なお、温水供給部103は、本実施形態のような回収容器25の微生物の計数処理には省略可能である。
【0060】
吸引ユニット104は、ハウジング26(図3)の内部空間内に注入した温水(注入省略可)や、後記する試薬R、バッファ液などを吸引することで、これらを、二次フィルタ27を介して排出するものである。この吸引ユニット104は、例えば、図示しない吸引ヘッドと、この吸引ヘッドに所定の配管を介して接続される図示しない吸引ポンプと、図示しない廃液タンクとを備えている。この吸引ユニット104の構成は、微生物回収装置10の吸引部60の構成と同様である。
【0061】
本実施形態での吸引ユニット104は、搭載部102に支持されたハウジング26(図3参照)に対して、図示しない吸引ヘッドの連結および離反が可能なように、この吸引ヘッドを上下移動させる図示しない昇降装置を更に備えている。この昇降装置の構成は、微生物回収装置10の吸引ヘッド駆動部70の構成と同様である。
【0062】
試薬カートリッジ110は、ATP法に必要な複数の試薬Rを一纏めに配置したものである。試薬カートリッジ110は、搭載部102の近傍の予め定められた位置に配置されている。この試薬カートリッジ110は、後述する分注ユニット106の分注ノズル106aが、予め定められた順番で試薬Rを、回収容器25(図3)のハウジング26(図3)内、および、発光強度測定ユニット107の発光用チューブ107a内に分注していくことができるように、試薬Rを位置決めしている。つまり、試薬Rの位置(座標)は、後記するように、分注ユニット106を制御する制御部108に記憶されている。
【0063】
なお、ATP法に必要な試薬Rとしては、例えば、捕集した微生物の細胞外に存在するATPを消去するATP消去試薬、微生物に内在するATPを抽出するATP抽出試薬、微生物から抽出したATPを発光させるATP発光試薬、また発光量からATP量を換算するための基準発光量を求めるためのATP標準試薬などが挙げられる。
ATP消去試薬としては、例えば、ATP分解酵素が挙げられる。
ATP抽出試薬としては、例えば、塩化ベンザルコニウム、トリクロロ酢酸、トリス緩衝液などが挙げられる。
ATP発光試薬としては、例えば、ルシフェラーゼ・ルシフェリン試薬が挙げられる。
なお、試薬Rには、発光強度測定ユニット107の補正試薬、滅菌した純水などを含めることができる。
ATP発光試薬としては、例えば、HPLC(High Performance Liquid Chromatography)などで定量されたATPをトリス緩衝液に溶解したものなどが挙げられる。
【0064】
バッファタンク105は、後記するように、フィルタで分離し保持した微生物に加えて、微生物を含むサンプル液を調製するための、例えばリン酸水溶液などのバッファ液を貯留するものである。
【0065】
分注ユニット106は、前記したバッファ液や試薬Rを、回収容器25(図3)のハウジング26(図3)内に分注するものである。また、分注ユニット106は、試薬Rやハウジング26(図3参照)内の後記するATP抽出液を、発光強度測定ユニット107の発光用チューブ107a内に分注するものである。
【0066】
この分注ユニット106は、細管で形成された分注ノズル106aと、分注ノズル106aを3軸方向に移動させるアクチュエータ106bと、分注ノズル106aに所定のフレキシブル配管で接続されたシリンジポンプ106cと、このシリンジポンプ106cを介して分注ノズル106aにバッファ液をバッファタンク105から供給するための図示しない配管などを備えている。
【0067】
発光強度測定ユニット107は、ハウジング26(図3)内から分注された後記するATP抽出液を受け入れて、ATPを発光させる発光用チューブ107aと、このATPの発光強度を検出する光電子増倍管などを有する光検出部本体107bとを備えている。
【0068】
制御部108は、微生物計数装置100を全体的に統括して制御すると共に、回収容器25(図3)を搭載部102に搭載した後、温水供給部103、吸引ユニット104、分注ユニット106、および、発光強度測定ユニット107を次に説明する手順で制御するように構成されている。このような制御部108は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、各種インタフェース、電子回路などを含んで構成されている。
【0069】
図6は、第1の実施形態に於ける微生物計数装置の搭載部付近を示す斜視図である。
試薬カートリッジ110は、図示しない係止部によって装置本体100aの所定の位置に係止される。
【0070】
搭載部102は、回収容器25のハウジング26を収容する凹部102aを有しており、この凹部102aの開口周りには、係合リング102bが更に配置されている。
係合リング102bは、回収容器25のハウジング26に設けられた係合爪26aと係合することで、ハウジング26をサンプル搭載部102に支持するようになっている。係合リング102bは、ハウジング26の係合爪26aが収まるような平面形状の切欠を有すると共に、凹部102aが形成される装置本体100aとの間に係合爪26aを受け入れ可能な厚さで隙間Gを形成している。
【0071】
ハウジング26を凹部102a内に装嵌する際に、係合爪26aを、切欠きを介して凹部102a内に入れ、ハウジング26を回転させて係合爪26aを隙間Gに滑り込ませることで、ハウジング26は係合リング102bと係合する。これにより、回収容器25は、微生物計数装置100にセットされ、回収した微生物を計数可能となる。
【0072】
(第1の実施形態の動作)
【0073】
図7は、第1の実施形態に於ける微生物回収処理を示すフローチャートである。
ステップS20に於いて、検査者は、サンプル液容器31にサンプル液を採取して、開閉扉11を閉じたのち、微生物回収装置10の操作部13の図示しないスイッチをオンして、微生物回収処理を開始させる。
ステップS21に於いて、微生物回収装置10の制御部80は、充填希釈槽21(カートリッジ20)を所定のパターンで回転させる。所定のパターンとは、例えば、高速回転と低速回転とを繰り返し行うパターンや、回転速度を矩形波状に変化させるパターンや、所定回転速度を中心とする正弦波状に回転速度を変化させるパターンなどである。
【0074】
ステップS22に於いて、制御部80は、希釈バッファ液の送液ポンプ43と、サンプル液の送液ポンプ33とを同時に送液を開始し、必要に応じてバッファヒータ44で希釈バッファ液を加温しつつ、充填希釈槽21のテーバ部22aに滴下する。制御部80は、ステップS21で、充填希釈槽21(カートリッジ20)を所定のパターンで回転させているので、攪拌リブ22eによってサンプル液と希釈バッファ液とを効率的に攪拌可能である。
ステップS23に於いて、制御部80は、サンプル液を所定量滴下したか否かを判断する。この所定量とは、予め定められた値である。しかし、これに限られず、検査者が、操作部13によって入力した値であってもよい。
ステップS24に於いて、制御部80は、サンプル液の送液ポンプ33を停止する。
ステップS25に於いて、制御部80は、充填希釈槽21を駆動するカートリッジモータ50の駆動トルク(消費電力)を計測する。この計測は周期的に行われ、制御部80は、この計測値によって、液体の粘性を推定する。
【0075】
ステップS26に於いて、制御部80は、充填希釈槽21を駆動するカートリッジモータ50の駆動トルクが所定値以内であるか否かを判断する。この駆動トルクは、例えばカートリッジモータ50の回転速度を所定時間だけ定速にして測定する。カートリッジモータ50の駆動トルクが所定値以内であったならば(Yes)、ステップS27の処理を行う。カートリッジモータ50の駆動トルクが所定値以内でなかったならば(No)、ステップS25の処理に戻る。しかし、これに限られず、回転速度を変化させたときのトルクを計測してもよい。この計測したトルクによって、液体の粘性が推定され、適正な濾過が可能か否かが判定可能となる。
【0076】
ステップS27に於いて、制御部80は、バッファ液の送液ポンプ43の動作と、バッファヒータ44と、充填希釈槽21の回転動作とを停止し、充填希釈槽21の回転が停止するまで待つ。
ステップS28に於いて、制御部80は、吸引ヘッドモータ71に所定量の駆動パルスを与えることによって吸引ヘッド61を上昇させ、必要に応じて回収容器ヒータ56をオンする。
【0077】
ステップS29に於いて、制御部80は、アスピレータポンプ62を所定時間だけ駆動し、希釈されたサンプル液を濾過回収する。この所定時間は、充填希釈槽21が貯留している液量を、所定の陰圧に於ける二次フィルタ27の時間当たり濾過量で除算した値である。充填希釈槽21が貯留している希釈されたサンプル液は、一次フィルタ23と二次フィルタ27を介して陰圧が加わることにより、一次フィルタ23を濾過してハウジング26内に滴下し、この滴下したサンプル液は更に二次フィルタ27を濾過して吸引ヘッド61内に吸引される。
ステップS30に於いて、制御部80は、吸引ヘッドモータ71に所定量の駆動パルスを与えることによって吸引ヘッド61を下降させ、回収容器ヒータ56をオフする。
【0078】
ステップS31に於いて、制御部80は、再処理が指示されたか否かを判断する。再処理が指示されたならば(Yes)、ステップS21の処理に戻る。再処理が指示されなかったならば(No)、図7の処理を終了する。これにより、検査者は、サンプルの菌量が少ないと思われるような場合、操作部13を操作して再処理を指示可能である。
【0079】
図7の処理により、微生物回収装置10の制御部80は、サンプル液を所定の粘性以下になるよう制御して、一次フィルタ23によって、大粒径の夾雑物を捕捉して除去する。更に、この一次フィルタ23で濾過されたサンプル液から、二次フィルタ27によって微生物を捕捉して回収する。これにより、サンプル液に含まれている微生物以外の夾雑物を除去したのちに、このサンプル液に含まれている微生物を捕捉するので、微生物を計数する上での外乱要因となる物質を除去した後に、微生物を回収することが可能である。
【0080】
図8(a)〜(i)は、第1の実施形態に於ける微生物回収処理のシーケンスを示す図である。
【0081】
図8(a)の縦軸は、充填希釈槽21の液量を示している。図8(b)の縦軸は、ハウジング26の液量を示している。図8(c)の縦軸は、カートリッジモータ50のオン/オフを示している。図8(d)の縦軸は、サンプル液の送液ポンプ33のオン/オフを示している。図8(e)の縦軸は、希釈バッファ液の送液ポンプ43のオン/オフを示している。図8(f)の縦軸は、バッファヒータ44のオン/オフを示している。図8(g)の縦軸は、吸引ヘッド61の位置を示している。図8(h)の縦軸は、回収容器ヒータ56のオン/オフを示している。図8(i)の縦軸は、アスピレータポンプ62のオン/オフを示している。なお、図8に示すオン/オフは概略である。例えばバッファヒータ44と回収容器ヒータ56とは、オン表示の場合であっても、温度が高すぎる場合にはオフとなり、過度の加温を抑止する。
【0082】
微生物回収処理が開始すると、時刻t0に於いて、カートリッジモータ50とサンプル液の送液ポンプ33とバッファ液の送液ポンプ43とバッファヒータ44とがオンする。そののち、充填希釈槽21の液量は次第に増加する。
サンプル液が所定量滴下された時刻t1に於いて、サンプル液の送液ポンプ33が停止(オフ)する。そののち、充填希釈槽21の液量の増加速度は、時刻t0〜t1と比べてやや減少する。
【0083】
カートリッジモータ50の駆動トルクが所定値以内になった時刻t2に於いて、カートリッジモータ50とバッファ液の送液ポンプ43とバッファヒータ44とが停止(オフ)する。そののち、充填希釈槽21の液量は一定量のままである。
所定時間が経過してカートリッジ20の回転が停止した時刻t3に於いて、吸引ヘッドモータ71の駆動により吸引ヘッド61の位置が上昇し始める。
吸引ヘッド61が所定位置に達したならば、時刻t4に於いて、吸引ヘッドモータ71は駆動を停止して吸引ヘッド61は停止し、同時に回収容器ヒータ56がオンする。
【0084】
所定時間が経過した時刻t5に於いて、アスピレータポンプ62がオンする。これにより、吸引ヘッド61内部は陰圧となり、充填希釈槽21に貯留されているサンプル液は、一次フィルタ23と二次フィルタ27とによって濾過される。そののち、充填希釈槽21の液量は次第に減少すると共に、ハウジング26の液量は次第に増加する。
充填希釈槽21の液量がゼロに達した時刻t6に於いて、ハウジング26の液量は最大となる。そののち、ハウジング26の液量は、次第に減少し始める。ハウジング26に滴下したサンプル液は、同時に二次フィルタ27を濾過するので、ハウジング26の最大液量は、充填希釈槽21の最大液量よりも少なくなる。
【0085】
ハウジング26の液量がゼロに達した時刻t7に於いて、アスピレータポンプ62が停止(オフ)する。そののち、吸引ヘッドモータ71の駆動により吸引ヘッド61の位置が下降する。アスピレータポンプ62の駆動時間(時刻t5から時刻t7まで)は、充填希釈槽21の液量を、所定の陰圧に於ける二次フィルタ27の時間当たり濾過量で除算した値である。
吸引ヘッド61の位置が最下端に達した時刻t8に於いて、吸引ヘッドモータ71が停止し、回収容器ヒータ56が停止(オフ)する。
時刻t8に於いて、サンプル液が全て滴下していなかったならば、再び時刻t0〜t8の処理を繰り返す。サンプル液が全て滴下していたならば、図8の処理を終了する。
【0086】
図9(a1)〜(b5)は、第1の実施形態に於ける微生物回収処理の動作を示す図である。
図9(a1)は、図8の時刻t0〜t1に於けるカートリッジ20の状態を示す図である。充填希釈槽21内にはサンプル液とバッファ液とが滴下されている。
【0087】
図9(b1)は、図9(a1)に於ける充填希釈槽21内のサンプル液の状態を示す図である。サンプル液には、微生物200と夾雑物210とが、やや濃い濃度で含まれている。
【0088】
図9(a2)は、図8の時刻t2〜t5に於けるカートリッジ20の状態を示す図である。充填希釈槽21内には、バッファ液で希釈されて、所定の粘度以下となったサンプル液が格納されている。
【0089】
図9(b2)は、図9(a2)に於ける充填希釈槽21内のサンプル液の状態を示す図である。希釈されたサンプル液には、微生物200と夾雑物210とが、やや薄い濃度で含まれている。これにより、一次フィルタ23で夾雑物210を効率良く除去可能となる。
【0090】
図9(a3)は、図8の時刻t5〜t6に於けるカートリッジ20の状態を示す図である。充填希釈槽21内には、バッファ液で希釈されて、所定の粘度以下となったサンプル液が格納されている。ハウジング26内には、一次フィルタ23で夾雑物210が濾過除去されたサンプル液が格納されている。ハウジング26内に滴下したサンプル液は、同時に二次フィルタ27を濾過して吸引ヘッド61に吸引される。
【0091】
図9(b3)は、図9(a3)に於けるハウジング26内のサンプル液の状態を示す図である。一次フィルタ23で濾過されたサンプル液は、微生物200のみが含まれており、夾雑物210は含まれていないことを示している。
【0092】
図9(a4)は、図8の時刻t8に於けるカートリッジ20の状態を示す図である。充填希釈槽21内とハウジング26内には、サンプル液は格納されていない。
図9(b4)は、図9(a4)に於ける一次フィルタ23上の状態を示す図である。一次フィルタ23上には、夾雑物210が濾過されずに残っている。
【0093】
図9(b5)は、図9(a4)に於ける二次フィルタ27上の状態を示す図である。二次フィルタ27上には、微生物200が濾過されずに残っている。この二次フィルタ27上の微生物200を計数することにより、サンプル液に含まれていた微生物200を計数することが可能となる。
【0094】
図10は、第1の実施形態に於ける微生物計数処理を示すフローチャートである。
微生物計数装置100(図5)の制御部108(図5)が実行する手順を説明しながら、この微生物計数装置100の動作および微生物の計数原理について説明する。
【0095】
微生物計数装置100(図5)では、回収容器25(図3)を搭載部102(図5)に搭載した後に、図示しない起動スイッチをオンにすることで、制御部108が次の手順を実行する。
【0096】
ステップS40に於いて、制御部108(図5)は、分注ユニット106(図5)に指令を出力して、バッファタンク105(図5)に貯留されたバッファ液をハウジング26(図3)内に分注させる。その結果、二次フィルタ27(図3)に保持された微生物がバッファ液中に移行し、ハウジング26(図3)内には、捕集した微生物を含むバッファ液が滞留する。
【0097】
ステップS41に於いて、制御部108は、分注ユニット106(図5)に指令を出力して、試薬カートリッジ110のATP消去試薬をハウジング26(図3)内に分注させる。その結果、微生物を含むバッファ液中、微生物の細胞外に存在するATPが消去される。
【0098】
ステップS42に於いて、制御部108(図5)は、吸引ユニット104(図5)に指令を出力して吸引させて、ハウジング26(図3)の内容物をろ過させる。その結果、微生物は、二次フィルタ27(図3)で分離して保持されると共に、ATP消去試薬およびバッファ液は、ろ過されてハウジング26外に排出される。
【0099】
ステップS43に於いて、制御部108(図5)は、分注ユニット106(図5)に指令を出力して、バッファタンク105に貯留されたバッファ液を再びハウジング26(図3参照)内に分注させると共に、吸引ユニット104(図5)に指令を出力して吸引させて、ハウジング26(図3)の内容物をろ過洗浄する。その結果、微生物は、二次フィルタ27(図3)で分離して保持されると共に、ハウジング26内を洗浄したバッファ液は、ろ過されてハウジング26外に排出される。
【0100】
ステップS44に於いて、制御部108は、分注ユニット106(図5)に指令を出力して、バッファタンク105に貯留されたバッファ液を再びハウジング26(図3)内に分注させる。その結果、二次フィルタ27に保持された微生物がバッファ液中に移行し、ハウジング26内には、捕集した微生物を含むサンプル液が調製される。
ステップS45に於いて、制御部108は、発光強度測定ユニット107(図5)に指令を出力して光検出部本体107b(図5)をオンにする。
【0101】
ステップS46に於いて、制御部108は、分注ユニット106(図5)に指令を出力して、試薬カートリッジ110のATP発光試薬を発光用チューブ107a(図5)に分注させる。その結果、発光強度測定ユニット107の光検出部本体107bは、発光用チューブ107aに於けるATP発光試薬のバックグラウンド測定を行う。
【0102】

ステップS47に於いて、制御部108は、分注ユニット106(図5)に指令を出力して、試薬カートリッジ110のATP標準試薬を発光用チューブ107a(図5)に分注させる。その結果、発光強度測定ユニット107の光検出部本体107b(図5)は、発光用チューブ107a(図5)に於けるATP発光試薬のキャリブレーションの測定を行う。
【0103】
ステップS48に於いて、制御部108は、分注ユニット106(図5)に指令を出力して、試薬カートリッジ110(図5)のATP抽出試薬をハウジング26(図3)内に分注させる。その結果、微生物に内在するATPは、サンプル液中に抽出されることで、ハウジング26(図3)内にはATP抽出液が調製される。
【0104】
ステップS49に於いて、制御部108は、分注ユニット106(図5)に指令を出力して、ハウジング26内のATP抽出液を、バックグラウンド測定を行った発光用チューブ107aに分注させる。その結果、発光用チューブ107a内では、ATP抽出液と、ステップS47で先に分注されたATP発光試薬との反応によって発光する。
【0105】
ステップS50に於いて、制御部108は、発光強度測定ユニット107(図5)の光検出部本体107b(図5)がATPの発光を検出して出力した信号をデジタル処理し、単一光子計数法に基づいて発光強度を測定する。
【0106】
ステップS51に於いて、制御部108は、ステップS47のキャリブレーション測定によって求めた、ATP量(amol)と、発光強度(CPS)との換算係数に基づいて、発光用チューブ107aに分注したATP抽出液に含まれるATP量(amol)を演算すると共に、このATP量(amol)、および、ステップS48で調製したサンプル液中のバッファ液量に基づいて、サンプル液に含まれる微生物等量のATP換算値として微生物の計数を行う。
この微生物計数装置100を使用した計数時間は、凡そ1時間程度である。
【0107】
(第1の実施形態の効果)
以上説明した第1の実施形態では、次の(A)〜(E)のような効果がある。
【0108】
(A) 一次フィルタ23により、微生物の検出に不要で、かつ阻害要因となる夾雑物210を除去している。これにより、夾雑物210に左右されない高感度な微生物の計数が可能となる。
【0109】
(B) 一次フィルタ23を備えた充填希釈槽21を着脱可能なユニットとし、対象に応じて仕様の異なる一次フィルタ23を備えた充填希釈槽21のユニットに付け替え可能である。これにより、幅広い種類のサンプル液に含まれている微生物の回収が可能である。
【0110】
(C) サンプル液を希釈バッファ液で希釈している。これにより、粘性の高いサンプル液の濾過と、微生物の回収とが可能である。
【0111】
(D) 粘性調整手段である制御部80は、サンプル液を希釈バッファ液で所定の粘度以下になるように希釈して攪拌している。これにより、幅広い粘性のサンプル液に含まれている微生物を、同一の微生物回収装置10で回収可能である。
【0112】
(E) 希釈バッファ液を加温してサンプル液を希釈している。これにより、温度によって粘度が変化する液体を、所定の粘度以下になるように制御可能である。
【0113】
(第2の実施形態の構成)
図11は、第2の実施形態に於けるカートリッジの構成図である。図3に示す第1の実施形態のカートリッジ20と同一の要素には同一の符号を付与している。
【0114】
第2の実施形態のカートリッジ20Fは、第1の実施形態のカートリッジ20の充填希釈槽21とは異なる充填希釈槽21Fを有している他は、第1の実施形態のカートリッジ20と同様の構成を有している。
【0115】
第2の実施形態の充填希釈槽21Fは、第1の実施形態の充填希釈槽21の槽体22とは異なる槽体22Fを有している他は、第1の実施形態の充填希釈槽21と同様の構成を有している。
【0116】
第2の実施形態の槽体22Fは、第1の実施形態の槽体22とは異なり、内周部の攪拌リブ22dを有しておらず、代わりに中央部に攪拌リブ22eを有している他は、第1の実施形態の槽体22と同様の構成を有している。攪拌リブ22eは、平板が十字型に組み合わされた形状であり、攪拌リブ22eの十字型の中心位置は、槽体22Fの回転中心と一致している。この攪拌リブ22eの固定方法は、後述する図12で詳細に説明する。
【0117】
図12(a),(b)は、第2の実施形態に於ける充填希釈槽の槽体の構成図である。図4に示す第1の実施形態の槽体22と同一の要素には同一の符号を付与している。
【0118】
図12(a)は、充填希釈槽21Fの槽体22Fの上面図である。
槽体22Fは、内部に柱状の十字リブ22gを有し、前述した攪拌リブ22eを下から支えている。槽体22Fは、十字リブ22gと攪拌リブ22eの部位を除いて中空であり、液体や気体などが上下方向に通過可能に構成されている。
【0119】
図12(b)は、充填希釈槽21Fの槽体22FのK2−K3線断面図である。
槽体22Fは、上側のテーバ部22aと、下側の円筒部22bとを区切る平面に十字リブ22gが形成されている。この十字リブ22gの中央部には、第1の実施形態の攪拌リブ22dとは異なる平板状の攪拌リブ22eが形成されている。この攪拌リブ22eは、平板が十字型に組み合わさった形状に形成されている。すなわち、攪拌リブ22eは、サンプル液を攪拌するリブが放射状に構成されている。
十字リブ22gと攪拌リブ22eとは、回転対象に構成されている。そして槽体22Fも、回転対象に構成されている。
前述した図11に示す一次フィルタ23は、この十字リブ22gと図11に示す一次フィルタ固定リング24によって、挟まれて固定される。
【0120】
(第2の実施形態の動作)
第2の実施形態の微生物回収装置10の動作は、第1の実施形態の微生物回収装置10の動作と同一である。充填希釈槽21Fは、中央部に設けられた攪拌リブ22eによって、第1の実施形態の攪拌リブ22eよりも効率良く希釈バッファ液とサンプル液とを攪拌して希釈することが可能である。
第2の実施形態の微生物計数装置100の動作は、第1の実施形態の微生物計数装置100の動作と同一である。
【0121】
(第2の実施形態の効果)
以上説明した第2の実施形態では、次の(F)のような効果がある。
【0122】
(F) 充填希釈槽21Fの中央部に、平板が十字型に組み合わさった形状の攪拌リブ22eを設けた。これにより、内周部に攪拌リブ22dを設けるよりも更に効率良く、希釈バッファ液とサンプル液とを攪拌して希釈することが可能である。
【0123】
(変形例)
本発明は、上記実施形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、変更実施が可能である。この利用形態や変形例としては、例えば、次の(a)〜(i)のようなものがある。
【0124】
(a) 第1の実施形態の充填希釈槽21は、4枚の攪拌リブ22dを内周部に設けている。しかし、これに限られず、回転対象に形成されているならば、攪拌リブ22dを内周部に何枚設けてもよい。
【0125】
(b) 第2の実施形態の充填希釈槽21Fは、4枚の攪拌リブ22eを中央部に設けている。しかし、これに限られず、回転対象に形成されているならば、攪拌リブ22eを中央部に何枚設けてもよい。
【0126】
(c) 第1の実施形態では、充填希釈槽21にサンプル液と希釈バッファ液とを滴下して粘性を制御している。しかし、これに限られず、サンプル液の粘度が充分に低い場合には、充填希釈槽21にサンプル液のみを注入し、一次フィルタ23と二次フィルタ27とで濾過して微生物を回収してもよい。
【0127】
(d) 第1の実施形態では、充填希釈槽21にサンプル液と希釈バッファ液とを滴下して注入している。しかし、これに限られず、サンプル液の粘度が充分に低い場合には、充填希釈槽21にサンプル液のみをデカンテーションして注入し、希釈バッファ液のみを滴下して粘性を制御してもよい。これにより、サンプル液容器31やサンプル液供給パイプ32によるコンタミネーションを抑止すると共に、大粒径の夾雑物をデカンテーションによって除去することが可能である。
【0128】
(e) 第1の実施形態では、充填希釈槽21に定量のサンプル液と希釈バッファ液とを滴下して注入している。しかし、これに限られず、送液ポンプ33の駆動トルクと送液量とを測定してサンプル液の粘度を算出し、この粘度に応じた液量のサンプル液と希釈バッファ液とを滴下して注入してもよい。これにより、サンプル液の粘度が高い場合には少量を滴下するので、常に所定の粘度以下になるように攪拌して希釈することが可能である。
【0129】
(f) 第1の実施形態および第2の実施形態では、回収容器25で捕集した微生物を微生物計数装置100で計数することを想定している。しかし、これに限られず、手作業で試薬Rをハウジング26内に分注してATP法により微生物を計数してもよい。
【0130】
(g) 第1の実施形態および第2の実施形態では、ATP法によって微生物の計数を行っている。しかし、これに限られず、微生物から抽出したDNA(DeoxyriboNucleic Acid)、RNA(Ribo Nucleic Acid)、NAD(Nicotinamide Adenine Dinucleotide)などの生体内物質に励起光を照射して生じさせた蛍光に基いて微生物の計数を行ってもよい。
【0131】
(h) カートリッジ20で、サンプル液に含まれるグラム陰性桿菌を捕集してこれを計数する場合には、その細胞膜に含まれるエンドトキシンを指標とし、エンドトキシンにリムルスを反応させた際の発光強度に基いて微生物数を計数してもよい。
【0132】
(i) 第1の実施形態および第2の実施形態では、充填希釈槽21の液量を、所定の陰圧に於ける二次フィルタ27の時間当たり濾過量で除算した時間だけ、アスピレータポンプ62を駆動している。しかし、これに限られず、アスピレータポンプ62のトルクが所定値以下となったことを検知し、二次フィルタ27の濾過の終了を検知してもよい。
【符号の説明】
【0133】
10 微生物回収装置
11 開閉扉
12 表示部
13 操作部
14 処理ステージ
20,20F カートリッジ(液体菌捕集カートリッジ)
21 充填希釈槽
21F 充填希釈槽
22,22F 槽体(槽部)
22d 攪拌リブ
22e 攪拌リブ
23 一次フィルタ(一次濾過手段)
24 一次フィルタ固定リング
25 回収容器
26 ハウジング(液体保持部)
27 二次フィルタ(二次濾過手段)
28 二次フィルタ固定リング
25 回収容器
30 サンプル回収部
31 サンプル液容器
33 送液ポンプ
40 希釈バッファ供給部
41 希釈バッファ液容器
43 送液ポンプ
44 バッファヒータ
50 カートリッジモータ
51 回転軸
52 ベルト
53 回転式希釈槽ホルダ
54 回収容器ホルダ回転部
55 回収容器ホルダ
56 回収容器ヒータ
60 吸引部
61 吸引ヘッド
62 アスピレータポンプ
63 吸引パイプ
70 吸引ヘッド駆動部
71 吸引ヘッドモータ
80 制御部(粘性調整手段)
81 流量制御部
82 ヒータ制御部
83 モータ制御部
84 ポンプ制御部
100 微生物計数装置
101 筐体
102 搭載部
103 温水供給部
104 吸引ユニット
105 バッファタンク
106 分注ユニット
107 発光強度測定ユニット
108 制御部
110 試薬カートリッジ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
検体液に含まれる微生物を回収する微生物回収装置であって、
一次濾過手段によって、前記検体液に含まれる夾雑物を濾過除去し、
二次濾過手段によって、前記夾雑物を濾過除去した検体液に含まれる前記微生物を捕捉する、
ことを特徴とする微生物回収装置。
【請求項2】
前記一次濾過手段の前に、前記検体液に希釈液を添加して攪拌し、前記検体液の粘性を調整する粘性調整手段を具えた
ことを特徴とする請求項1に記載の微生物回収装置。
【請求項3】
前記粘性調整手段は、
前記検体液が所定の粘性になるまで回転駆動可能な希釈槽を回転して前記希釈液を添加する
ことを特徴とする請求項2に記載の微生物回収装置。
【請求項4】
前記希釈槽は、テーバ状である
ことを特徴とする請求項3に記載の微生物回収装置。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の微生物回収装置は更に、
吸引ポンプを備え、
前記吸引ポンプによって、前記検体液または前記調整した検体液を前記一次濾過手段と前記二次濾過手段とを介して所定の陰圧で吸引し、
前記一次濾過手段によって前記検体液に含まれる前記夾雑物を濾過除去すると共に、
前記二次濾過手段によって前記夾雑物を濾過除去した検体液に含まれる前記微生物を捕捉する
ことを特徴とする微生物回収装置。
【請求項6】
前記一次濾過手段は、
常圧下では前記検体液および前記希釈液を濾過せず、
所定の陰圧で吸引することで前記検体液および前記希釈液を濾過し、前記夾雑物を除去する
ことを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載の微生物回収装置。
【請求項7】
前記一次濾過手段と前記二次濾過手段との間の流路は、テーバ形状である
ことを特徴とする請求項1ないし請求項6のいずれか1項に記載の微生物回収装置。
【請求項8】
検体液に含まれる微生物を回収する微生物回収方法であって、
前記検体液に希釈液を添加して、前記検体液の粘性を調整する粘性調整ステップと、
前記調整した検体液に含まれる夾雑物を、一次フィルタを用いて濾過除去する一次濾過ステップと、
前記濾過除去した検体液に含まれる前記微生物を、二次フィルタ上に捕捉する二次濾過ステップと、
を行うことを特徴とする微生物回収方法。
【請求項9】
前記粘性調整ステップは、
前記検体液が所定の粘性になるまで希釈槽を回転して前記希釈液を添加する
ことを特徴とする請求項8に記載の微生物回収方法。
【請求項10】
検体液に含まれる微生物を回収する液体菌捕集カートリッジであって、
液体を保持する槽部と、
前記槽部の下部に設けられ、前記検体液に含まれる夾雑物を濾過除去すると共に、前記微生物を通過させる一次フィルタと、
液体を保持する液体保持部と、
前記液体保持部の下部に設けられ、前記夾雑物を濾過除去した検体液から前記微生物を捕捉する二次フィルタと、
を備えたことを特徴とする液体菌捕集カートリッジ。
【請求項11】
前記槽部および前記一次フィルタと、前記液体保持部および前記二次フィルタとは、分離可能に構成されている
ことを特徴とする請求項10に記載の液体菌捕集カートリッジ。
【請求項12】
前記槽部と前記液体保持部とは、共にテーバ状であること
を特徴とする請求項10または請求項11に記載の液体菌捕集カートリッジ。
【請求項13】
液体菌捕集カートリッジは、回転対称に構成されている
ことを特徴とする請求項10ないし請求項12のいずれか1項に記載の液体菌捕集カートリッジ。
【請求項14】
前記槽部の内側には、前記検体液を攪拌するリブを回転対象に有している
ことを特徴とする請求項10ないし請求項13のいずれか1項に記載の液体菌捕集カートリッジ。
【請求項15】
前記槽部の中央部には、前記検体液を攪拌するリブが放射状に構成されている
ことを特徴とする請求項10ないし請求項13のいずれか1項に記載の液体菌捕集カートリッジ。
【請求項16】
前記液体保持部は、微生物を計数する微生物計数装置にそのままセット可能である
ことを特徴とする請求項10に記載の液体菌捕集カートリッジ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2013−107(P2013−107A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−137921(P2011−137921)
【出願日】平成23年6月22日(2011.6.22)
【出願人】(000005452)株式会社日立プラントテクノロジー (1,767)
【Fターム(参考)】